説明

検査装置

【課題】カメラもしくは検査対象物を移動させ、移動させながら得られた時系列の映像から、使用したカメラの画素分解能よりも高い画素分解能の画像を作成し、使用したカメラとほぼ同様のサンプリング速度により画像を出力し表示することができる検査装置を提供する。
【解決手段】高精細画像作成装置により作成した高精細画像と局所カメラから出力された画像とを比較して高精細画像の復元度を求め、この復元度に基づいて高精細画像作成装置を制御することにより、この高精細画像作成装置により作成される高精細画像を制御する画像比較装置5bと、高精細画像作成装置により作成した高精細画像を表示する表示装置5fと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作のカメラにより検査対象を撮影し、その撮影画像を検査対象から離れた場所に設置したモニタに出力し、この映像を基に検査員が目視等で確認する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電プラントやプロセスプラント等の工業プラントなどでは、プラント機器の安全性を維持するために定期的な検査が実施されている。このプラントなどの検査方法としては、遠隔から操作したカメラにより検査対象を撮影し、その撮影画像を、検査対象から離れた場所に設置したモニタにカメラの映像を出力し、この映像を検査員が目視で確認するといった方法が多く用いられる(例えば、特許文献1参照)。これは、例えば原子力発電所の放射線管理区域のような危険性の高い区域で各種検査や作業する人(作業者や検査員)の数を安全性向上のために可及的に抑制し、作業時間の短縮を目的としたものである。
【特許文献1】特開2003−202921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の検査方法では、カメラの映像を基に検査員が目視により検査対象の欠陥を探すため、カメラの画素分解能が検出すべき欠陥に対して不十分である場合、欠陥が発見しにくくなり、見落としが発生してしまう。このような欠陥の見落としを回避するためには、カメラの撮影範囲を狭くして検査を行なうのが一般的であるが、これでは広域な検査範囲を全て撮影範囲の狭いカメラで撮影するには時間がかかり過ぎる。その結果、検査時間が長時間化するといった問題がでてくる。
【0004】
また、カメラの撮影範囲を狭くすることなくカメラの画素分解能を確保する方法としては、高分解能なカメラを利用する方法もある。しかし、高分解能なカメラは、サンプリング速度が遅く遠隔でカメラを操作するには操作性が悪くなるという課題がある。また、時間あたりに検査できる検査範囲が狭くなり前述した方法と同様に検査時間が長時間化するといった課題もある。また、高分解能なカメラ自体が高価なために検査コストが高くなってしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、カメラもしくは検査対象物を移動(走査)させ、移動させながら得られた時系列の映像から、使用したカメラの画素分解能よりも高い画素分解能の画像を作成し、使用したカメラとほぼ同様のサンプリング速度により画像を出力し表示することができる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検査対象を広域的に撮影する広域カメラ、この広域カメラの撮影範囲内で前記検査対象を局所的に撮影する局所カメラ、前記検査対象からの光を前記広域カメラおよび前記局所カメラに導光する光学系を備えた撮影装置と、前記検査対象に前記撮影装置を走査させる撮影駆動装置と、この撮影駆動装置の走査による移動量を計測する移動量計測装置と、前記撮影装置から出力される画像を蓄積する画像蓄積装置と、この画像蓄積装置が蓄積している画像と前記移動量計測装置で計測した前記撮影駆動装置の移動量とに基づいて、前記広域カメラの画素分解能よりも高い画素分解能の高精細画像を作成する高精細画像作成装置と、高精細画像作成装置により作成した高精細画像と前記局所カメラから出力された画像とを比較して高精細画像の復元度を求め、この復元度に基づいて前記高精細画像作成装置を制御することにより、この高精細画像作成装置により作成される高精細画像を制御する画像比較装置と、この高精細画像作成装置により作成した高精細画像を表示する表示装置と、を備えたことを特徴とする検査装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検査対象の検査を迅速かつ高精度で行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係わる実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、添付図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0009】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる検査装置1の構成図である。この検査装置1は、検査対象2を撮影する撮影装置3、撮影装置3を走査するために駆動する撮影駆動装置4、検査対象2の欠陥を検出する画像検査装置5を具備している。撮影装置3は、検査対象2を撮影する広域カメラ3aおよびこの広域カメラ3aの撮影範囲の一部を局所的に撮影する局所カメラ3bと、半透過ミラー3cおよび全反射ミラー3dとを有する光学系を備えている。
【0010】
図2に示すように撮影駆動装置4は、撮影装置3により検査対象2の検査面に沿って走査し、連続的に検査対象2を撮影するように駆動する。図2は撮影駆動装置4により撮影装置3の撮影視点を走査するための走査の一例を示しており、図中3eは撮影装置3の走査方向を示している。この例ではテレビモニタなどの走査方法と同様に、水平方向に走査した後、再び走査始点に戻り、ここで、その水平方向の位置を垂直方向下方へ所定距離ずらし再度水平方向を走査する。この繰返しにより検査対象2の全面を撮影装置3により撮影する。
【0011】
撮影装置3では、検査対象2の広域な範囲を広域カメラ3aにより撮影させ、広域カメラ3aの撮影範囲の一部を局所的に局所カメラ3bにより撮影させ、他方、半透過ミラー3cにより検査対象2からの光の一部を透過させて広域カメラ3aに導光して入力させ、残りの光を反射する。この反射させた光を全反射ミラー3dにより反射させ局所カメラ3bに導光して入力させるものである。
【0012】
局所カメラ3bの撮影範囲は、後に説明する高精細画像作成装置5aにより広域カメラ3aが撮影した画像から作成する高精細画像の画素分解能に等しい画素分解能を有し、局所カメラ3bの画素数と前記画素分解能から算出された範囲とする。
【0013】
このように、半透過ミラー3cおよび全反射ミラー3dの光学機器を利用した光学系に構成することにより、広域カメラ3aと同一の撮影位置から局所カメラ3bにより検査対象2を撮影することが容易に可能となる。仮に、これら光学機器を利用しない場合には、広域カメラ3aと局所カメラ3bの撮影位置を同一にすることは物理的に困難であり、設置位置をずらす必要がある。その場合、広域カメラ3aと局所カメラ3bの視点(撮影)位置が異なるため、広域カメラ3aにより撮影した検査対象2の画像に対して、局所カメラ3aにより撮影した検査対象2の画像が歪んでしまい、後に述べる画像比較装置5bによる画像間の比較が難しくなる。
【0014】
また、広域カメラ3aと局所カメラ3bとにおいて検査対象2から入力される光の光量に相違がでるために、両画像間に明るさの相違が発生し、前述の問題と同様に画像比較装置5bによる画像間の比較が難しくなる。
【0015】
図3(a)〜(c)は撮影装置3により撮影する画像の一例を示した。図3(a)は検査対象2の画像を示している。図3(b)は撮影装置3の走査により得られる広域カメラ3aの撮影画像を時間軸に沿った順に画像31a,31b,31cと順次図示している。
【0016】
図3(b)は、図3(a)の検査対象2に対して撮影装置3を左側から右側に水平方向に走査した場合の撮影画像を示しており、検査対象2が左側から順次撮影されている。
【0017】
また、図3(b)中、範囲32a,32b,32cは、広域カメラ3aの画像31a,31b,31cのそれぞれにおける局所カメラ3bの撮影範囲を示しており、広域カメラ3aの撮影範囲を局所的に撮影している。
【0018】
図3(c)は、局所カメラ3bの撮影範囲が32a,32b,32cの場合における局所カメラ3bの画像を示したものである。なお、図3では、局所カメラ3bの撮影範囲を広域カメラ3aの画像の中央部に設定した場合を示しているが、中央部に限定されるものでなく、例えば左上や右下のような他の所要の位置でもよい。
【0019】
図1に示すように画像検査装置5は高精細画像作成装置5a、画像比較装置5b、移動量計測装置5c、画像蓄積装置5d、展開画像作成装置5e、表示装置5fを具備している。移動量計測装置5cは撮影駆動装置4により走査させた撮影装置3の移動量を、広域カメラ3aの撮影画像に画像処理を施し計測するものである。
【0020】
図4は、移動量計測装置5cによる画像処理手順の一例のフローチャートである。図4に示すように移動量計測装置5cは、まず広域カメラ3aからの撮影画像データに1次式を当てはめた線形補間法や3次元多項式を当てはめた3次元補間法などにより画像を拡大する画像拡大処理(S1)を実行する。この画像拡大処理を初めに実施することで、画像中における撮影装置3の移動量を1画素以下のサブピクセル精度で計測することができる。
【0021】
次にブロックマッチング処理(S2)を実行する。図5に示すようにブロックマッチング処理は、広域カメラ3aの例えば2枚の画像に画像拡大処理を実行した後の例えば2画像100a,100bにおいて、一方の画像100aの各画素の移動位置を他方の画像100bから求める処理である。この具体的な画像処理方法の一例を以下に説明する。
【0022】
まず一方の画像100aの移動位置を求める画素101を中心とした所要大の矩形ブロック102を設定し、さらに、この矩形ブロック102内の輝度の分散を求める。次に、矩形ブロック102内の輝度の分散が所定のしきい値以上である場合には、他方の画像100bに対してブロック走査103を行い、輝度の差を用いた方法や輝度の相関を用いた方法などにより、最も矩形ブロック102に類似した位置を求める。前処理で最も矩形ブロック102に類似した位置と判断した位置が、一方の画像100aの移動位置を求める画素101の画像100bにおける移動位置となる。ブロックマッチング処理は、この処理を一方の画像100aの全画素に対して実行する。
【0023】
しかし、矩形ブロック102内の輝度の分散が所定のしきい値未満の画素については画像処理が実行されないために、他方の画像100bに対する移動位置が求まらない。このように実行されない画素については、実行された周辺の画素の結果から他方の画像100bに対する移動位置を推定する。
【0024】
その推定方法の一例としては、移動位置を推定する画素を囲む、画像処理が実行された最低3画素を検索する。次に、画像の横方向をX軸、縦方向をY軸として、前記3画素のXY軸上の位置と、X軸およびY軸の移動位置をZ軸とした2つの3次元空間に3画素の値からそれぞれ3つの点をプロットする。
【0025】
この後、この3点を結ぶ3次元空間における平面を計算で求め、推定する画素の点がこの平面上にあるとして、推定する画素のXY軸の位置からZ軸の値を計算する。この計算で求めたZ軸の値が移動位置となる。なお、この例では、3点を用いた平面を仮定したが3点以上を利用して計算できる多項式の面でもよい。
【0026】
以上で説明したブロックマッチング処理の例では、輝度の分散の高い矩形ブロック102にのみ当該処理を実行する。輝度の分散が高いということは画像のテクスチャが特徴的であり、マッチング処理に適しているということである。逆に輝度の分散が低いということは、画像のテクスチャが一様であり特碑的でないためにマッチング処理を実行した結果が間違った移動位置を計測する可能性が高くなる。このように矩形ブロックについてマッチング処理の実行の是非を判断することにより信頼性の高い計測が可能となる。また、輝度の分散以外に画像のテクスチャの特徴性を評価できる情報を用いて判断してもよい。
【0027】
なお、移動量計測装置5cは上記移動量計測方法以外に、検査対象2と撮影装置3との位置関係や、広域カメラ3aの視野角および、撮影駆動装置4の移動情報などを基に幾何学的に計測する方法により移動量を計測するように構成してもよい。
【0028】
画像蓄積装置5dは、広域カメラ3aの撮影画像と移動量計測装置5cの計測データを、後述する高精細画像作成装置5aに必要となる情報数を蓄積するものである。
【0029】
図6は広域カメラ3aの画像と移動量計測装置5cの計測データとを共に図示しており、例えば蓄積できる情報数としては3つとしている。画像情報を蓄積する画像蓄積装置5dには画像情報が入力される入口5daと、出力される出口5dbを備えている。
【0030】
図6(a)は、所定時間tの開始時点の画像蓄積装置5dの状態を表しており、画像蓄積装置5dには、その入口5da側から出口5dbに向けて時間t−Δt(所要の微小時間)の画像情報200b、時間t−Δ2tの画像情報200c、時間t−Δ3tの画像情報200dの順に3つの画像が蓄積されている。この後、時間tの画像情報200aが広域カメラ3aと移動量計測装置5cから送られてくると画像蓄積装置5dは、その出口5db側にある時間t−Δ3tの画像情報200dを選択する。
【0031】
次に、選択した時間t−Δ3tの画像情報200dを消去し、画像蓄積装置5dに蓄積していた情報を出口5db側へずらし、広域カメラ3aと移動量計測装置5dから送られてきた時間tの画像情報200aを画像蓄積装置5dの入口5daから画像蓄積装置5dへ与えて蓄積する。この状態を表したのが図6(b)である。
【0032】
このような手順にて画像情報を蓄積することにより、蓄積している画像情報の中で最も過去の画像情報を破棄し、最も新しい画像情報を常時、順に蓄積することが可能となり、広域カメラ3aにより検査対象2を撮影してから最小の遅延時間で、過去から現在までの画像を高精細画像作成装置5aに送ることができる。
【0033】
高精細画像作成装置5aは、画像蓄積装置5dに蓄積された広域カメラ3aの画像と移動量計測装置5cの計測データから、広域カメラ3aが有する画素分解能よりも高い画素分解能を有した高精細画像を作成する装置である。
【0034】
図7に示すように高精細画像作成装置5aは、画像蓄積装置5dに蓄積されている最も新しい画像300aを基準として高精細画像302を作成処理する。ここで、高精細画像302とは、例えばその画素分解能を、最新画像300aと、画像蓄積装置5dに蓄積されている他の画像300bの画像に対して2倍にしてある。
【0035】
そして、最新画像300aの画素301aが例えば高精細画像302の座標1A,2A,1B,2Bの画素だとすると、画像300bの画素301bは、移動量計測装置5dにより計測した移動位置を基に画像300aからの相対移動位置を計算し、高精細画像302における座標を計算する。この例では、座標を2B,3B,2C,3Cとする。この処理を画像蓄積装置5dに蓄積された全画像の全画素に対して実行する。
【0036】
次に、高精細画像302の輝度を計算する。すなわち、図7に示すように、高精細画像302の座標2Bは、画像300aの画素301aと画像300bの画素301bが重複した座標であり、高精細画像302の座標2Bの輝度は、画素301aと画素301bの輝度の平均値により計算される。高精細画像作成装置5aでは、この処理を高精細画像302の全ての画素に対して実行し、高精細画像302の輝度を決定する。この処理段階で作成された高精細画像302は、平均輝度で作成されているためコントラストの悪い画像である。
【0037】
そこで、次に画像のコントフストを上げるコントラスト改善処理を実行する。
【0038】
図8は高精細画像作成装置5aにより高精細画像のコントラストを改善するためのコントラスト改善処理の説明図である。すなわち、図8に示すように例えば画素400のコントラストを上げる場合、まず、画素400を中心とする所要大の中央範囲401と、その周辺の周辺範囲402を同心状に設定する。このとき、周辺範囲402は、中央範囲401よりも広い範囲でなければならない。図8では、例えば中央範囲401の画素が3行3列(3×3)、周辺範囲402の画素が5行5列(5×5)で図示してある。
【0039】
次に、中央範囲401、周辺範囲402の各々の平均輝度を求め、中央範囲401の平均輝度から周辺範囲402の平均輝度を差し引く。この差し引いた輝度がプラスの場合には、中央範囲401の方が周辺範囲402よりも明るく、逆にマイナスの場合には中央範囲401の方が周辺範囲402よりも暗いことになる。
【0040】
そこで、この差し引いた値を画素400の輝度に加算することにより、中央範囲401が周辺範囲402よりも明るい場合には、画素400を更に明るく、中央範囲401が周辺範囲402よりも暗い場合には、画素400を更に暗くし、画素400のコントラストを強調改善する。
【0041】
画像比較装置5bは、広域カメラ3aの撮影範囲の一部を、局所的に撮影した局所カメラ3bの画像と、高精細画像作成装置5aにより作成した高精細画像と、を比較し、高精細画像作成装置5aを制御する。局所カメラ3bの画像の画素分解能は、高精細画像作成装置5aにより作成した高精細画像の画素分解能と等しくなるように局所カメラ3bの撮影範囲が設定されており、半透過ミラー3cおよび全反射ミラー3dの光学機器(光学系)を利用することによりカメラの視点位置も同一にすることができる。
【0042】
したがって、図9に示すように、広域カメラ3aの画像500の撮影範囲503を撮影した局所カメラ3bの画像502は、広域カメラ3aの画像500から作成した高精細画像501の撮影範囲503の領域の画像と等しい画像であり、局所カメラ3bの画像502と高精細画像501の撮影範囲503の画像とを比較することにより、高精細画像作成装置5aにより作成した高精細画像501の復元度を評価することができる。
【0043】
また、撮影装置3が前述した光学機器を用いた構成としているため、画像間の比較が容易にできる。画像比較装置5bは、局所カメラ3aの画像502と高精細画像501の撮影範囲503の画像を比較評価し、評価値が一定のしきい値以下の場合にはコントラスト改善処理を再度繰り返すように高精細画像作成装置5aに指示する。画像の比較評価は、輝度の差を用いる方法や、輝度の相関を評価する方法などを利用する。
【0044】
このように、局所カメラ3aと画像比較装置5bにより高精細画像作成装置5aを制御することで、高精細画像の復元度を高品質に維持することが可能となる。
【0045】
展開画像作成装置5eは、高精細画像作成装置5aにより作成した高精細画像を検査対象2の形状から平面に座標変換し、移動量計測装置5cにより計測した撮影装置3の移動量を基に平面に座標変換した高精度画像を合成して、検査対象2の全面を1度に見ることが可能な平面展開画像を作成する。この平面展開画像を表示装置5fに出力し検査員などに提供することで、検査対象2の正常な箇所と、正常な箇所とは異なる箇所を比較しながら欠陥箇所を検出する比較検査ができる。
【0046】
また、撮影装置3が移動することにより得られた時系列の画像から広域カメラ3aの画素分解能よりも高い画素分解能を有した高精細画像を広域カメラ3aのサンプリング速度と同等の時間間隔で得ることができ、この高精細画像により高精度の検査が可能となる。さらに、広域カメラ3aの撮影領域の一部を局所的に光学機器を用いて局所カメラ3aにより撮影することにより、容易に画像比較装置5bにより画像間の比較ができ、高品質の高精度画像を提供することが可能である。
【0047】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る検査装置1Aの構成図である。この検査装置1Aは、図1で示す第1の実施形態に係る検査装置1に対し、撮影装置3を走査させる撮影駆動装置4に代えて、検査対象2自体を移動させることにより撮影装置3を走査させる検査体駆動装置6を設けた点に特徴があり、これ以外は図1で示す検査装置1とほぼ同様の構成である。
【0048】
すなわち、第2の検査装置1Aは撮影装置3を駆動せずに固定する一方、検査体駆動装置6により検査対象2を駆動することにより走査させて撮影装置3により連続的に検査対象2を撮影させる。
【0049】
この検査装置1Aによれば、検査対象2を走査させることにより前記第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
図11は本発明の第3の実施形態に係わる検査装置1Bの構成図である。この検査装置1Bは、図1で示す第1の実施形態に係る検査装置1に対して、欠陥検査装置5gを追加した点に特徴があり、これ以外は図1で示す検査装置1と同様である。
【0051】
欠陥検査装置5gは、展開画像作成装置5eにより作成された平面展開画像に対して図12に示すような画像処理を適用して、自動で検査対象2の欠陥箇所を認識して検査する装置である。
【0052】
すなわち、図12に示すように欠陥検査装置5gは、まず欠陥の輪郭線を求めるために展開画像作成装置5eからの平面展開画像に微分処理(S11)を施し、次に微分成分の大きさが所定のしきい値以上の領域を抽出する2値化処理(S12)を行なう。この2値化処理にて抽出した結果は、欠陥の輪郭線であるため輪郭線で囲まれた領域を欠陥領域とする閉領域埋込み処理(S13)を実行する。
【0053】
次に、この閉領域埋込み処理により抽出した領域の面積が所定のしきい値以上のものを選択するノイズ除去処理(S14)を実行し、欠陥を検出する。また、展開画像作成装置5eにより作成した平面展開画像について、欠陥検査装置5gにより自動認識した欠陥領域を色等を変えてオーバーレイ表示し、検査員が視覚的に識別しやすい情報として表示装置5fに出力する。
【0054】
したがって、この検査装置1Bによれば、前記第1の実施形態の検査装置1と同様の効果が得られると共に、検査対象2の欠陥を高精度に自動検出することができる。
【0055】
図13は本発明の第4の実施形態に係わる検査装置1Cの構成図である。この検査装置1Cは、上記第1の実施形態に係る検査装置1において、検査対象2が一端面が開口した筒状であり、その筒状検査対象2aの内部を、その開口端から照明する照明装置7を設けた点に主な特徴がある。
【0056】
照明装置7は、撮影装置3の広域カメラ3aの受光側前面に配設され、筒状検査対象2a内に、その開口端2aaから挿入し得る外径を有する透明円筒体7a、所要の照明光を出力する光源装置7b、この光源装置7bからの光を筒状検査対象2a内に投光して、その内面を照明する一方、筒状検査対象2aの内面からの光を撮影装置3の受光部、すなわち、広域カメラ3aの入光部に案内する光学系7cを具備している。
【0057】
光学系7cは透明円筒体7aに配設された光源装置7bからの投光を透明円筒体7aの挿入先端部(図13中左端部)側へ反射させる照明用半透過ミラー7caと、透明円筒体7aの挿入先端部(図13中左端部)の内部に配設されて照明用半透過ミラー7caからの光を遠心方向ヘリング状に反射させる円錐ミラー7cbを具備している。
【0058】
また、撮影駆動装置4aは透明円筒体7aを、筒状検査対象2a内に軸方向に挿脱すると共に、透明円筒体7aをその中心軸周りに回動させるように構成されている。
【0059】
したがって、この筒状検査対象2aの内面を撮影する場合は、まず、撮影駆動装置4aを駆動して透明円筒体7aを筒状検査対象2a内へその開口端から内方へ適宜位置まで挿入する。この挿入状態において、光源装置7bからの照明光が照明用半透過ミラー7caで反射されて円錐ミラー7cb側に向けて照射される。さらに、その照明光は、円錐ミラー7cbの外周面にてリング状に反射され、この反射光が筒状検査対象2aの内周面2bに照射されて照明される。一方、この内周面2bで反射した光は、再び円錐ミラー7cbの外周面にて反射され、その反射光は再度照明用半透過ミラー7ca側に反射される。この照明用半透過ミラー7caは、円錐ミラー7cb側からの光の一部を透過させるため、筒状検査対象2aの内周面2bからの反射光は、広域カメラ3aおよび局所カメラ3bに入力される。
【0060】
そして、撮影装置3は、撮影駆動装置4aにより、筒状検査対象2aの軸方向と周方向にも走査される。これにより、撮影装置3には2次元で走査された画像が得られ、高精度画像作成装置5aによる高精度画像の作成時において、同一の画素の重なりを持つ画素が発生するのを防止または低減できる。
【0061】
そして、この検査装置1Cによっても前記第1の実施形態の検査装置1と同様に広域カメラ3aの撮影画像から高精度画像が作成されると共に、局所カメラ3bの画像と画像比較することにより、高品質の高精度画像を得ることができる。
【0062】
また、この検査装置1Cによれば、通常では検査対象の外側から撮影することが困難な筒状検査対象2aの内周面2bにおいても広域,局所カメラ3a,3bによる撮影が可能となり、前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る検査装置の構成図。
【図2】図1で示す撮影装置の走査例を示す図。
【図3】(a),(b),(c)は図1で示す撮影装置の画像例をそれぞれ示す図。
【図4】図1で示す移動量計測装置が実行するブロックマッチング処理のフローチャート。
【図5】図4で示すブロックマッチング処理の説明図。
【図6】図1で示す画像蓄積装置の説明図。
【図7】図4で示す高精度画像作成装置による高精度画像の作成方法の説明図。
【図8】図1で示す高精度画像作成装置による高精度画像のコントラスト改善処理の説明図。
【図9】図1で示す画像比較装置による画像比較処理の説明図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る検査装置の構成図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る検査装置の構成図。
【図12】図11で示す欠陥検査装置による欠陥検査処理のフローチャート。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る撮影装置の構成図。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B,1C,… 検査装置
2 検査対象
2a 筒状検査対象
3 撮影装置
3a 広域カメラ
3b 局所カメラ
3c 半透過ミラー
3d 全反射ミラー
4,4a 撮影駆動装置
5 画像検査装置
5a 高精細画像作成装置
5b 画像比較装置
5c 移動量計測装置
5d 画像蓄積装置
5e 展開画像作成装置
5f 表示装置
6 検査体駆動装置
7 照明装置
7a 透明円筒体
7b 光源装置
7ca 照明用半透過ミラー
7cb 円錐ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を広域的に撮影する広域カメラ、この広域カメラの撮影範囲内で前記検査対象を局所的に撮影する局所カメラ、前記検査対象からの光を前記広域カメラおよび前記局所カメラに導光する光学系を備えた撮影装置と、
前記検査対象に前記撮影装置を走査させる撮影駆動装置と、
この撮影駆動装置の走査による移動量を計測する移動量計測装置と、
前記撮影装置から出力される画像を蓄積する画像蓄積装置と、
この画像蓄積装置が蓄積している画像と前記移動量計測装置で計測した前記撮影駆動装置の移動量とに基づいて、前記広域カメラの画素分解能よりも高い画素分解能の高精細画像を作成する高精細画像作成装置と、
高精細画像作成装置により作成した高精細画像と前記局所カメラから出力された画像とを比較して高精細画像の復元度を求め、この復元度に基づいて前記高精細画像作成装置を制御することにより、この高精細画像作成装置により作成される高精細画像を制御する画像比較装置と、
この高精細画像作成装置により作成した高精細画像を表示する表示装置と、
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の検査装置において、前記撮影駆動装置に代えて前記検査対象を移動させる検査体駆動装置を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の検査装置において、前記移動量計測装置は、前記撮影駆動装置または前記検査体駆動装置の走査による移動量を前記広域カメラの画像における移動量として求める画像処理手段を有することを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置において、前記移動量計測装置は、前記撮影駆動装置または前記検査体駆動装置の走査による移動量を、前記広域カメラの画像における移動量として、前記検査対象の形状情報と、前記検査対象と前記撮影装置の位置情報と、前記撮影駆動装置または検査体駆動装置の走査情報から計測する計測手段を有することを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の検査装置において、前記高精細画像作成装置により作成した高精細画像を、前記移動量計測装置により計測した前記撮影駆動装置もしくは前記検査体駆動装置の移動量と、前記検査対象の形状とを基に平面画像に座標変換し、複数の前記高精細画像を合成した平面展開画像を作成する展開画像作成装置を有することを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の検査装置において、前記高精細画像作成装置により作成した高精細画像もしくは前記展開画像作成装置により作成した平面展開画像に画像処理を施すことにより、前記検査対象の欠陥を自動で識別検査する画像検査装置を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の検査装置において、検査対象が筒状であって、その筒状の内部に少なくとも一部が挿脱可能に構成され、その挿入時、筒状検査対象の内部を照明する一方、この内部からの光を前記光学系に導光する光学系を有する照明装置を備えたことをと特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項7記載の検査装置において、前記筒状検査対象の内部にて周方向に前記照明装置と、前記撮影装置を走査させる撮影駆動装置を備えたことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−333639(P2007−333639A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167732(P2006−167732)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】