説明

洗浄方法及び洗浄装置

【課題】有機溶剤を含んだ二酸化炭素を超臨界状態の洗浄剤として、この洗浄剤を洗浄チャンバー内に配された被洗浄物に接触させることにより、前記被洗浄物の洗浄を行う洗浄方法及び洗浄装置において、洗浄時間の短縮化を図ること。
【解決手段】界面活性剤と有機溶剤と超臨界状態の二酸化炭素を混合し、混合流体を被洗浄物に接触させて洗浄する洗浄方法において、前記混合を管内混合手段で行い、該管内混合手段の直後に被洗浄物を配置するとともに、前記混合流体においての重量割合は、二酸化炭素に占める有機溶剤の重量割合を20%以下とし、かつ界面活性剤の重量比率を有機溶剤と略同重量としたことを特徴とする洗浄方法及び洗浄装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄方法及び洗浄装置に関する。より詳しくは、有機溶剤を含んだ二酸化炭素を超臨界状態の洗浄剤として、この洗浄剤を洗浄チャンバー内に配された被洗浄物に接触させることにより、前記被洗浄物の洗浄を行う方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示パネルの製造工程では、透明基板上に透明電極層を形成後、この透明電極層上に有機発光層を成膜し、その後、この有機発光層上に金属電極層を形成する。有機発光層は、例えば複数の発光材料を含む有機EL材料からなる。有機発光層は、発光画素に対応する1層以上の薄膜であり、通常は、メタルマスクを用いて、真空蒸着法により形成する。このメタルマスクは、目的とするパターンに応じた微細なスリット(孔)を有する。
【0003】
上記のように真空蒸着法により、所定の透明電極層上に有機発光層を形成した場合、それと同時にメタルマスクに有機EL材料が付着する。このような有機EL材料が付着したメタルマスクを使用し続けると、その堆積によりスリットの一部または全体が塞がるなどの不具合が生じ、高精度のパターン形成ができなくなる。このため、メタルマスクを繰り返して使用するためには、定期的にメタルマスクを洗浄し、付着した有機EL材料を取り除くことが必要である。このときの洗浄方法としては、人手により有機溶剤を用いて拭き取ったり、有機溶剤中に浸してこの有機溶剤を攪拌したりするものがある。
【0004】
ところで、一般に有機EL表示パネルの製造工程で用いるメタルマスクは、厚さが例えば30μm程度と薄い。このため、上記の洗浄方法を用いた場合、次のような不都合が生じやすい。例えば、人手により無理な力が加わってメタルマスクが切れたり、メタルマスクを有機溶剤中から引き上げたときに、溶剤の液の表面張力による応力により、メタルマスクが歪んだりする。パターン形成時にメタルマスクに必要とされる位置精度は、数μmオーダーと高いため、上記のような変形は回避されなければならない。
【0005】
この問題を解消する発明として、例えば特許文献1では、有機溶剤を含んだ二酸化炭素を超臨界状態の洗浄剤として、この洗浄剤を洗浄チャンバー内に配された被洗浄物に接触させることにより、前記被洗浄物の洗浄を行う技術を開示している。有機溶剤を含んだ超臨界状態の二酸化炭素は、液体とは異なり、メタルマスクに無理な力を加えずに有機EL材料を溶解・剥離させることができるため、液体応力によるメタルマスクの変形等の不都合を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−228036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法によると、有機溶剤と二酸化炭素との混合が速やかに行われず、長時間を要していた。その結果、洗浄時間が非常に長くなるという問題があった。本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、有機溶剤を含んだ二酸化炭素を超臨界状態の洗浄剤として、この洗浄剤を洗浄チャンバー内に配された被洗浄物に接触させることにより、前記被洗浄物の洗浄を行う洗浄方法及び洗浄装置において、洗浄時間の短縮化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の本発明により達成される。
【0009】
請求項1の発明は、
界面活性剤と有機溶剤と超臨界状態の二酸化炭素を混合し、混合流体を被洗浄物に接触させて洗浄する洗浄方法において、前記混合を管内混合手段で行い、該管内混合手段の直後に被洗浄物を配置するとともに、前記混合流体においての重量割合は、二酸化炭素に占める有機溶剤の重量割合を20%以下とし、かつ界面活性剤の重量比率を有機溶剤と略同重量としたことを特徴とする洗浄方法である。
【0010】
請求項2の発明は、
混合流体を被洗浄物に向けて均一の流量で供給することを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法である。
【0011】
請求項3の発明は、
洗浄チャンバー内の圧力を7.3MPa以上、温度を31°C〜100°Cに保つ請求項1または請求項2に記載の洗浄方法である。
【0012】
請求項4の発明は、
洗浄チャンバー内の二酸化炭素、有機溶剤および界面活性剤を循環させること特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の洗浄方法である。
【0013】
請求項5の発明は、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の洗浄方法を第1洗浄ステップとし、当該第1洗浄ステップに続く第2洗浄ステップを有し、当該第2洗浄ステップでは、二酸化炭素を超臨界状態として、洗浄チャンバー内に配された被洗浄物に接触させることにより、再度被洗浄物を洗浄することを特徴とする洗浄方法である。
【0014】
請求項6の発明は、
第2洗浄ステップにおいて、洗浄チャンバー内の超臨界状態の二酸化炭素を循環させることを有する請求項5に記載の洗浄方法である。
【0015】
請求項7の発明は、
界面活性剤と有機溶剤と超臨界状態の二酸化炭素を混合し、混合流体を被洗浄物に接触させて洗浄する洗浄装置において、前記混合を管内混合手段で行い、該管内混合手段の直後に被洗浄物を配置するとともに、前記有機溶剤の混合流体に占める重量割合を20%以下とし、かつ界面活性剤の重量比率を有機溶剤と略同重量としたことを特徴とする洗浄装置である。
【0016】
請求項8の発明は、
混合流体を被洗浄物に向けて均一の流量で供給する供給手段を有することを特徴とする請求項7記載の洗浄装置である。
【0017】
請求項9の発明は、
洗浄チャンバー内の洗浄剤を循環させる循環手段を有する請求項7および請求項8に記載の洗浄装置である。
【0018】
請求項10の発明は、
洗浄チャンバー内の二酸化炭素、有機溶剤および界面活性剤を循環させるライン内に、管内混合手段を有する請求項9に記載の洗浄装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、有機溶剤を含んだ二酸化炭素を超臨界状態の洗浄剤として、この洗浄剤を洗浄チャンバー内に配された被洗浄物に接触させることにより、前記被洗浄物の洗浄を行う洗浄方法及び洗浄装置において、洗浄時間の短縮化を図ることができる。
【0020】
請求項1,7の発明によると、界面活性剤が、二酸化炭素と有機溶剤との混合を促進させる役目を果たすため、両者が容易に混合される。これにより、混合により得られた混合流体を超臨界状態にして得られる第1洗浄剤の単位量あたりの洗浄力(溶解・剥離作用)を増強することができる。その結果、洗浄効率を高めることができ、洗浄時間の短縮化を図ることができる。また、流体を混合するための流路を備えた混合器を用いるため、精密な混合を短時間で実現でき、混合の効率化を図ることができる。
【0021】
請求項2、8の発明によると、第1洗浄剤および第2洗浄剤を被洗浄物に向けて均一の流量で供給することで、被洗浄物に効率的に第1洗浄剤および第2洗浄剤を接触させることができるため、洗浄時間の更なる短縮化を図ることができる。
【0022】
請求項3の発明によると、洗浄チャンバー内で二酸化炭素を超臨界状態にでき、且つ被洗浄物を使用不能な程に熱変形させることがない。ここで、7.3MPaというのは、二酸化炭素が超臨界状態となるときの圧力下限値であり、31°Cというのは、二酸化炭素が超臨界状態となるときの温度下限値である。また、100°Cというのは、被洗浄物の熱変形の許容温度を想定している。
【0023】
請求項4,6,9の発明によると、第1洗浄剤および第2洗浄剤が洗浄チャンバー内で循環することで、該洗浄剤の消費量を抑えることができ、効率的である。
【0024】
請求項5の発明によると、洗浄チャンバーを減圧して第1洗浄剤を排出したときに、溶解していた有機EL材料が析出され、被洗浄物に再付着したものを洗い流すことができるリンス作用を奏する。
【0025】
請求項10の発明によると、循環ライン内に混合器を備えることで、時間経過とともに分離する界面活性剤と有機溶剤と二酸化炭素が循環手段により強制的に混合され、洗浄力を保持したまま洗浄に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る洗浄装置の構成概要を示す図である。
【図2】整流板とメタルマスクとの配置形態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る洗浄装置によるメタルマスクの洗浄工程の概略を示すフローチャートである。
【図4】第1洗浄ステップの詳細を示すフローチャートである。
【図5】第2洗浄ステッの詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明に係る洗浄装置1の構成概要を示す図、図2は整流板29とメタルマスク80との配置形態を示す斜視図である。なお、図2においてA図はメタルマスク80の横置形態を示し、B図はメタルマスク80の縦置形態を示す。洗浄装置1は、有機溶剤を含んだ二酸化炭素を超臨界状態の第1洗浄剤として、当該第1洗浄剤を洗浄チャンバー内に配されたメタルマスクに接触させることにより、前記メタルマスクの洗浄を行う装置であり、図1に示すように、洗浄チャンバー2、混合器3、二酸化炭素供給部4、有機溶剤供給部5、活性剤供給部6及び廃液回収部7などを備える。
【0028】
洗浄チャンバー2は、洗浄対象となるメタルマスク80を収容可能な空間を内部に有する。その側面には開閉自在な扉22を有する。扉22を閉めてロック状態とすることにより、洗浄チャンバー2内の気密状態を確保できるようになっている。
【0029】
洗浄チャンバー2内には保持部材23及び整流板29を有する。保持部材23は、メタルマスク80に付着した有機EL材料81のほぼ全面が超臨界状態の洗浄剤に曝されるように、メタルマスク80を保持可能とする。この保持形態は、図2(A)のよう横置形態でも、図2(B)のように縦置形態でもよい。整流板29は、図2に示すように、厚さ方向に貫通する複数の微細孔29hを有するプレート体であり、保持部材23に保持されたメタルマスク80近傍に設けられる。これにより洗浄剤は、複数の微細孔29hから均一な流量で出て、整流された状態となってメタルマスク80に向けて供給されるようになっている。
【0030】
洗浄チャンバー2には、内部の圧力をモニターするための圧力計24、内部の温度をモニターするための温度計25、メタルマスク80を収容したときに入った空気を抜くためのベントバルブ26、洗浄チャンバー2内を所定の温度に加熱するためのヒータ27a、及び内部の超臨界洗浄剤を循環させる循環ポンプ28などが設けられる。洗浄チャンバー2は、混合器3を介して二酸化炭素供給部4、有機溶剤供給部5及び活性剤供給部6に配管接続される。また、開閉バルブ72を介して廃液回収部7に配管接続される。
【0031】
二酸化炭素供給部4は、液体状の二酸化炭素を貯留する貯留タンク41、この液体状の二酸化炭素を混合器3に向けて圧送する加圧ポンプ42、背圧弁431により液体状の二酸化炭素の供給圧力を調整するための戻り管43、貯留タンク41と加圧ポンプ42との間に設けられた開閉バルブ44a、加圧ポンプ42と混合器3との間に設けられた開閉バルブ44b、加圧ポンプ42の入口ポート側の圧力を測定するための圧力計45、加圧ポンプ42の出口ポート側の圧力を測定するための圧力計46、及び加圧ポンプ42の出口ポートに設けられたベントバルブ47などを備える。
【0032】
有機溶剤供給部5は、液体状の有機溶剤を貯留する貯留タンク51、有機溶剤を混合器3に向けて圧送する加圧ポンプ52、背圧弁531により有機溶剤の供給圧力を調整するための戻り管53、加圧ポンプ52と混合器3との間に設けられた開閉バルブ54、及び加圧ポンプ52の出口ポート側の圧力を測定するための圧力計55などを備える。有機溶剤としては、例えばN−メチル2−ピロリドン(NMP)等を使用することができる。
【0033】
活性剤供給部6は、液体状の界面活性剤を貯留する貯留タンク61、界面活性剤を混合器3に向けて圧送する加圧ポンプ62、背圧弁631により界面活性剤の供給圧力を調整するための戻り管63、加圧ポンプ62と混合器3との間に設けられた開閉バルブ64、及び加圧ポンプ62の出口ポート側の圧力を測定するための圧力計65などを備える。界面活性剤としては、上記有機溶剤と親和性のあるものが好ましく、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0034】
混合器3は、二酸化炭素供給部4から供給される液体状の二酸化炭素と、有機溶剤供給部5から供給される液体状の有機溶剤と、活性剤供給部6から供給される液体状の界面活性剤とを混合して、この混合液を洗浄チャンバー2に導入する部位である。具体的には、二酸化炭素供給部4と有機溶剤供給部5と界面活性剤供給部6に接続される入口ポート31に連通する流路32、及びこの流路32に連通すると共に洗浄チャンバー2に接続される出口ポート33を備える。出口ポート33は流路34を通り洗浄チャンバー2に接続される。混合器3の周囲には、流路32内で混合された混合液を加熱するためのヒータ27bを備える。該混合器3とは配管内にミキサが配置されたものであり、流体が進行していくことで、強制的に混合されるものことを想定しているが、配管内に攪拌機などを配置し、その回転により各液体状の流体を混合してもよい。
【0035】
次に、図3,4,5も参照して、上のように構成された洗浄装置1による洗浄動作について説明する。図3は洗浄装置1による洗浄工程の概略を示すフローチャート、図4は第1洗浄ステップS2の詳細を示すフローチャート、図5は第2洗浄ステップS3の詳細を示すフローチャートである。以下の説明では、洗浄装置1は次に示す初期状態にあるものとする。即ち、各加圧ポンプ42,52,62はオフ、ヒータ27a,27bはオン、洗浄チャンバー2の内圧は大気圧、各バルブ44a,44b,54,64,72は閉、循環ポンプ28はオフである。
【0036】
図3に示すように、本発明に係る洗浄装置1による洗浄工程は、メタルマスクセットステップS1、第1洗浄ステップS2、第2洗浄ステップS3及びメタルマスク取出しステップS4の順でなされる。各ステップについて、順を追って詳述する。
【0037】
〔メタルマスクセットステップS1〕
操作者は、洗浄チャンバー2の扉22を開け、洗浄チャンバー2内へ洗浄対象となるメタルマスク80を搬入する。そして、保持部材23によりメタルマスク80を保持し、扉22を閉めてロック状態とする。メタルマスク80には、洗浄すべき有機EL材料81が付着している。この有機EL材料81は、例えば次に示す複数の発光材料を含んでいる。即ち、主要を占めるホスト材料であるアルミノキノール錯体(Alq3)、ベンゾキノリールベリリュウム錯体(Bebq2)、アルミノベンゾキノリノール誘導体(Alph3)、オキサジアゾール誘導体(EM2)、ピラゾロキノリン(PZ10)、シロール誘導体(2PSP)などである。
【0038】
〔第1洗浄ステップS2〕
操作者は、先ず開閉バルブ44a,44bを開き、続いて加圧ポンプ42を作動させる。これにより、液体状の二酸化炭素が貯留タンク41から送出されて混合器3に供給される。このとき、圧力計46を見ながら背圧弁431を調節することよって、二酸化炭素の圧力を、予め設定された圧力にする(図4のステップS21)。
【0039】
二酸化炭素の供給動作と並行して、開閉バルブ54を開き、続いて加圧ポンプ52を作動させる。これにより、液体状の有機溶剤が貯留タンク51から送出されて混合器3に供給される。このとき、圧力計55を見ながら背圧弁531を調節することよって、有機溶剤の圧力を、予め設定された圧力にする(ステップS21)。
【0040】
有機溶剤の供給動作と並行して、開閉バルブ64を開き、続いて加圧ポンプ62を作動させる。これにより、液体状の界面活性剤が貯留タンク61から送出されて混合器3に供給される。このとき、圧力計65を見ながら背圧弁631を調節することよって、界面活性剤の圧力を、予め設定された圧力にする(ステップS21)。
【0041】
以上のステップにより、二酸化炭素と有機溶剤と界面活性剤は、混合器3に供給される。そして、流路32内で混合を進行させていく。流路32内では、界面活性剤が、二酸化炭素と有機溶剤との混合を促進させる役目を果たすため、容易に両者が混合される。そして、二酸化炭素に有機溶剤を混合した混合液が出口ポート33を通った後、洗浄チャンバー2内に供給される。ここで、供給される各流量は二酸化炭素に占める有機溶剤の重量割合は20%以下とし、かつ界面活性剤の重量比率は有機溶剤の80〜120%とする。
【0042】
洗浄チャンバー2内に上記混合液が供給される段階で、操作者は、圧力計24及び温度計25を見ながら洗浄チャンバー2内の圧力がP1、温度がT1を保つように、加圧ポンプ42,52,62及びヒータ27a,27bを調節する(ステップS22)。この圧力値及び温度値は、洗浄チャンバー2内の混合液を超臨界状態とするための設定条件であり(以降、この超臨界状態となった混合液を第1洗浄剤と呼ぶ)、具体的には、圧力を7.3MPa以上、温度を31°C〜100°Cの設定値とする。ここで、7.3MPaというのは、二酸化炭素が超臨界状態となるときの圧力下限値である。31°Cというのは、二酸化炭素が超臨界状態となるときの圧力下限値である。また、100°Cというのは、メタルマスク80の熱変形の許容温度である。このような調節により、上記混合液は第1洗浄剤になる。
【0043】
上記圧力値及び温度値が安定したら(ステップS23でイエス)、各加圧ポンプ42,52,62を停止させると共に各バルブ44a,44b,54,64を閉じる(ステップS24)。その後、循環ポンプ28を作動させ、第1洗浄剤を循環させる(ステップS25)。この状態をt1の所定時間維持しておく。このとき洗浄チャンバー2内の第1超臨界洗浄剤は、メタルマスク80に付着した有機EL材料81に接触し、これを溶解させると共に剥離させることで洗浄を行う。このとき第1洗浄剤は、整流板29における複数の微細孔29hから均一な流量で出て、整流された状態となってメタルマスク80に向けて供給される。しかも第1洗浄剤は、循環ポンプ28により循環しているため、第1洗浄剤の消費量を抑えることができ、効率的に洗浄を行うことができる。
【0044】
また、混合器3での混合に際し、界面活性剤の作用により、二酸化炭素と有機溶剤とが容易に混合される。従って、この混合により得られた混合液を超臨界状態にして得られる第1洗浄剤の単位量あたりの洗浄力(溶解・剥離作用)を増強することができる。その結果、洗浄効率を高めることができ、洗浄時間の短縮化を図ることができる。また、時間とともに分離する二酸化炭素と有機溶剤と界面活性剤は、循環ラインの中のメタルマスク80の直前に配置される混合器3により、第1洗浄剤がメタルマスク80に接触する直前で強制的に混合されることで洗浄力を保持したままメタルマスク80に第1洗浄剤が接触し、これによりメタルマスク80の洗浄が効率的になされる。
【0045】
所定時間t1が経過したら(ステップS26でイエス)、循環ポンプ28を停止させる(ステップS27)。そして、開閉バルブ72を開け、洗浄チャンバー2内の第1洗浄剤を廃液タンク71に排出させる(ステップS28)。
【0046】
〔第2洗浄ステップS3〕
次に第2洗浄ステップS3に進む。操作者は、先ず開閉バルブ44a,44bを開き、続いて加圧ポンプ42を作動させる。これにより、液体状の二酸化炭素が貯留タンク41より送出されて混合器3に供給される。このとき、圧力計46を見ながら背圧弁431を調節することよって、有機溶剤の圧力を、予め設定された圧力にする(図5のステップS31)。
【0047】
このステップS31により、二酸化炭素は、混合器3を通って洗浄チャンバー2内に供給される。操作者は、洗浄チャンバー2内の圧力がP2、温度がT2を保つように、加圧ポンプ42及びヒータ27a,27bを調節する(ステップS32)。この圧力値及び温度値は、洗浄チャンバー2内の二酸化炭素を超臨界状態とするための設定条件である(以降、この超臨界状態となった二酸化炭素を第2洗浄剤と呼ぶ)。なお、必要に応じて、有機溶剤と界面活性剤を添加してもよい。それらの添加の割合(濃度比)は、第1洗浄剤に用いたときに対して、異なるものとしてもよい。
【0048】
上記圧力値及び温度値が安定したら(ステップS33でイエス)、加圧ポンプ42を停止させると共に各バルブ44a,44bを閉じる(ステップS34)。その後、循環ポンプ28を作動させ、第2洗浄剤を循環させる(ステップS35)。この状態をt2の所定時間維持しておく。このとき洗浄チャンバー2内の第2洗浄剤は、第1洗浄ステップS2でメタルマスク80に再付着した付着物を洗い流す。この付着物は、次のようにして再付着される。即ち、第1洗浄ステップS2におけるステップS35で循環している第1洗浄剤には、メタルマスク80から溶解・剥離した有機EL材料81が含まれており、ステップS28で開閉バルブ72を開けることで洗浄チャンバー2内が減圧されたときに、その一部がメタルマスク80に再付着する。なお、このとき第2洗浄剤は、整流板29における複数の微細孔29hから均一な流量で出て、整流された状態となってメタルマスク80に向けて供給される。しかも第2洗浄剤は、循環ポンプ28により循環しているため、第2洗浄剤の消費量を抑えることができ、効率的に洗浄を行うことができ、上記再付着した付着物の洗い流しが効率的になされる。このように第2洗浄ステップS3はリンス作用を奏する。
【0049】
t2の所定時間が経過したら(ステップS36でイエス)、循環ポンプ28を停止させる(ステップS37)。そして、開閉バルブ72開け、洗浄チャンバー2内の第2超臨界洗浄剤を廃液タンク71に排出させ(ステップS38)、その後、ベントバルブ26を開けて、圧力を大気圧に戻す。
【0050】
〔メタルマスク取出しステップS4〕
操作者は、洗浄チャンバー2の扉22を開け、洗浄済みのメタルマスク80を取り出す。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明を行ったが、上に開示した実施形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。例えば、上述の実施形態では、操作者が手動で各バルブ等の調整を行う構成としたが、コンピュータを用いてこれらを自動的に制御するようにしてもよい。
【実施例1】
【0052】
上記実施形態において、次に示す設定を行い、第1洗浄及び第2洗浄を行った。
P1=20MPa、T1=40°C、t1=20分とした。
P2=20MPa、T2=40°C、t2=10分とした。
供給量の割合は、二酸化炭素を80wt%、NMPを10wt%、界面活性剤を10wt%とした。
メタルマスク80は綺麗に洗浄されていた。
【実施例2】
【0053】
上記実施形態において、次に示す設定を行い、第1洗浄及び第2洗浄を行った。
P1=30MPa、T1=40°C、t2=15分とした。
P2=30MPa、T2=40°C、t2=5分とした。
供給量の割合は、二酸化炭素を80wt%、NMPを10wt%、界面活性剤を10wt%とした。
メタルマスク80は実施例1と同じ程度に綺麗に洗浄されていた。
実施例2は、圧力を高くすれば、短い時間で同じ程度の洗浄効果があることを示している。
【符号の説明】
【0054】
1 洗浄装置
2 洗浄チャンバー
3 混合器
4 二酸化炭素供給部(洗浄剤原料供給手段)
5 有機溶媒供給部(洗浄剤原料供給手段)
6 活性剤供給部(洗浄剤原料供給手段)
28 循環ポンプ(循環手段)
29 整流板(均一供給手段)
29h 微細孔
27a ヒータ(洗浄剤生成手段)
27b ヒータ(洗浄剤生成手段)
34 流路
42 加圧ポンプ(洗浄剤生成手段)
52 加圧ポンプ(洗浄剤生成手段)
62 加圧ポンプ(洗浄剤生成手段)
80 メタルマスク(被洗浄物)
S2 第1洗浄ステップ
S3 第2洗浄ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤と有機溶剤と超臨界状態の二酸化炭素を混合し、混合流体を被洗浄物に接触させて洗浄する洗浄方法において、前記混合を管内混合手段で行い、該管内混合手段の直後に被洗浄物を配置するとともに、前記混合流体においての重量割合は、二酸化炭素に占める有機溶剤の重量割合を20%以下とし、かつ界面活性剤の重量比率を有機溶剤と略同重量としたことを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
混合流体を被洗浄物に向けて均一の流量で供給することを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
洗浄チャンバー内の圧力を7.3MPa以上、温度を31°C〜100°Cに保つ請求項1または請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
洗浄チャンバー内の二酸化炭素、有機溶剤および界面活性剤を循環させること特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の洗浄方法を第1洗浄ステップとし、当該第1洗浄ステップに続く第2洗浄ステップを有し、当該第2洗浄ステップでは、二酸化炭素を超臨界状態として、洗浄チャンバー内に配された被洗浄物に接触させることにより、再度被洗浄物を洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【請求項6】
第2洗浄ステップにおいて、洗浄チャンバー内の超臨界状態の二酸化炭素を循環させることを有する請求項5に記載の洗浄方法。
【請求項7】
界面活性剤と有機溶剤と超臨界状態の二酸化炭素を混合し、混合流体を被洗浄物に接触させて洗浄する洗浄装置において、前記混合を管内混合手段で行い、該管内混合手段の直後に被洗浄物を配置するとともに、前記有機溶剤の混合流体に占める重量割合を20%以下とし、かつ界面活性剤の重量比率を有機溶剤と略同重量としたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項8】
混合流体を被洗浄物に向けて均一の流量で供給する供給手段を有することを特徴とする請求項7記載の洗浄装置。
【請求項9】
洗浄チャンバー内の洗浄剤を循環させる循環手段を有する請求項7および請求項8に記載の洗浄装置。
【請求項10】
洗浄チャンバー内の二酸化炭素、有機溶剤および界面活性剤を循環させるライン内に、管内混合手段を有する請求項9に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−232600(P2010−232600A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81190(P2009−81190)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】