直動装置
【課題】 材料表面が剥離を生じることがなく、スパッタリングやCVD等の高価な装置、処理を不要にでき、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることができる直動装置を低コストで提供する。
【解決手段】 直動装置において、案内軸1の転動体軌道面3、可動体2の転動体軌道面7及び転動体Bの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とPFPEとを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数の凹部からなる油溜まりを形成する処理を施して得られた硬質層20とを備える。
【解決手段】 直動装置において、案内軸1の転動体軌道面3、可動体2の転動体軌道面7及び転動体Bの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とPFPEとを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数の凹部からなる油溜まりを形成する処理を施して得られた硬質層20とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリニアガイド、ボールスプライン、リニアボールベアリング、ボールガイド、リニアローラベアリング及びボールねじ等の直動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアガイドとしては、例えば図15に示すものが知られている。このリニアガイドは、軸方向に延びる案内レール(案内軸)1と、該案内レール1上に軸方向に相対移動可能に跨架されたスライダ(可動体)2とを備える。
【0003】
案内レール1の両側面にはそれぞれ軸方向に延びる転動体転動溝(転動体軌道面)3が形成されており、スライダ2のスライダ本体2Aには、その両袖部4の内側面に、それぞれ転動体転動溝3に対向する転動体転動溝(転動体軌道面)7が形成されている。そして、これらの向き合った両転動体転動溝3,7の間の負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動自在に装填され、スライダ2はこれらのボールBの転動を介して案内レール1上を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
【0004】
この移動につれて、案内レール1とスライダ2との間に介在するボールBは転動してスライダ2の軸方向の端部に移動するが、スライダ2を軸方向に継続して移動させていくためには、これらのボールBを無限に循環させる必要がある。
【0005】
このため、スライダ本体2Aの袖部4内に軸方向に貫通する転動体通路8を形成すると共に、スライダ本体2Aの軸方向両端にそれぞれ略コ字状のエンドキャップ5を例えばねじ12等の固定手段を介して固定し、このエンドキャップ5に上記両転動体転動溝3,7間と上記転動体通路8とを連通する円弧状に湾曲した方向転換路6を形成することにより、転動体無限循環軌道を形成している。なお、図15において、符号11はエンドキャップ5と共にスライダ本体2Aの端面にねじ12等を介して固定されるサイドシール、10はスライダ本体2Aの端面に形成されたねじ12のタップ穴、13は給脂用ニップルである。
【0006】
ところで、クリーンルーム等の清浄環境や真空環境で使用されるリニアガイドは、清浄環境では低発塵グリース、真空環境では低蒸気圧グリース(シリコングリース、フッ素グリース等)及び低蒸気圧オイル(シリコンオイル、フッ素オイル等)等の潤滑剤が用いられるが、これらの潤滑剤は、グリースの油分の蒸発やグリース自体の飛散等によって、潤滑機能の劣化や使用環境の汚染を引き起こす虞れがある。
【0007】
このため、従来においては、図16に示すように、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7、スライダ2の転動体通路8、ボールBの転動面及びエンドキャップ5の方向転換路6に官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を設けると共に、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面に硬質被膜15を設け、これにより、清浄環境下及び真空環境下においても発塵量およびアウトガスを低くすると共に、高面圧下においても耐久性に優れた長寿命なリニアガイドが提案されている。
【0008】
潤滑膜14は、前述のように官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有して流動性を有しているため、比較的大きな荷重が作用するような場合でも、ボールBの負荷により剥離や欠落を生じる可能性が低く、発塵量が小さい。 従って、半導体製造装置等のパーティクルを極端に嫌う環境下において使用されるリニアガイドに好適である。
【0009】
また、潤滑膜14は、含フッ素重合体だけでなくパーフルオロポリエーテル(PFPE)が配合されているため低アウトガスであり、従って、特にウェハの処理プロセスのような有機物による汚染を極端に嫌う用途に適している。
【0010】
さらに、比較的大きな荷重が作用するような場合でも、リニアガイドの転動、摺動する部位において金属同士が無潤滑で接触する状態となりにくく、該部位に常に潤滑剤が付着している状態が維持されるので、該部位において凝着や摩耗が起こる可能性が低く、耐久性に優れ、且つ低発塵である。
【0011】
潤滑膜14は、前述のように官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有しているものであるが、両者を混合したもので潤滑膜を形成しても良いし、官能基を有する含フッ素重合体の層とパーフルオロポリエーテル(PFPE)の層とからなる二層構造としても良い。
【0012】
後者の場合には、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7、ボールBの転動面、及びエンドキャップ5の方向転換路6に、官能基を有する含フッ素重合体の層を設け、その上にパーフルオロポリエーテル(PFPE)の層を設けた二重構造とする必要がある。そうすれば、下層の含フッ素重合体と上層のパーフルオロポリエーテル(PFPE)との濡れ性が良好であるため、パーフルオロポリエーテル(PFPE)が薄く均一に被覆され、リニアガイドの転がりによってパーフルオロポリエーテル(PFPE)が飛散しにくい(低発塵である)。なお、金属面に直接パーフルオロポリエーテル(PFPE)を被覆すると、金属とパーフルオロポリエーテル(PFPE)との濡れ性が悪いので、パーフルオロポリエーテル(PFPE)を均一に被覆することが難しくなる。
【0013】
硬質被膜15は、耐摩耗性、耐焼付き性及び耐凝着性の向上に寄与するもので、リニアガイドの耐久性の向上を図るものとされている。
【0014】
硬質被膜15としては、めっきでは、無電解ニッケルめっき、セラミックカニゼン及びカニボロン等、カーボン系では、GLC(グラファイトライクカーボン)及びDLC(ダイヤモンドライクカーボン)等、フッ素系では、FHC(フッ素重合硬質膜)等、Si系では、SiC等、チタン系では、TiN,TiCN(炭窒化チタン)、TiAlN(窒化チタンアルミニウム)及びTiCrN(窒化チタンクロム)等、クロム系では、CrN等が挙げられる。
【0015】
また、溶射によって形成された硬質被膜15でもよいとされている。溶射材料としては、セラミックス、サーメット、炭化物等が挙げられ、例えば、Cr3 C2 、TiO2 −Al2 O3 、CO−WC、(Ni−Cr)−Cr3 C2 、Al2 O3 、CrC3 、Cr2 C3 −SiO−TiO2 、(CO−WC)−(Ni−Al)等が適している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来のリニアガイドにおいては、硬質被膜15は母材金属の表面をコーティングしているにすぎないため、硬質被膜15の剥離の可能性があり、また、硬質被膜15の生成はスパッタリング、真空蒸着、CVD、あるいはPVD等による場合が少なくないので、処理や装置にコストがかかり、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることが難しいという問題がある。
【0017】
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、材料表面が剥離を生じることがなく、スパッタリングやCVD等の高価な装置、処理を不要にすることができ、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることができる低コストな直動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 転動体軌道面を有する案内軸と、該案内軸の前記転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有して、これらの両転動体軌道面間に挿入される多数の転動体の転動を介して前記案内軸に沿って相対的に移動する可動体とを備える直動装置であって、
前記案内軸の前記転動体軌道面、前記可動体の前記転動体軌道面及び前記転動体の転動面の少なくとも一つの表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数の凹部からなる油溜まりを形成する処理を施して得られる硬質層とを備えることを特徴とする直動装置。
(2) 前記研磨材の粒径が20〜200μmで、且つ該研磨材の噴射速度が50m/sec以上であることを特徴とする(1)に記載の直動装置。
(3) 前記潤滑膜の膜厚は0.3〜2.0μmであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の直動装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の直動装置によれば、案内軸の転動体軌道面、可動体の転動体軌道面及び転動体の転動面の内の少なくとも一つの表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜を備えているので、清浄環境下及び真空環境下においても発塵量およびアウトガスが低くなると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保することができる。
【0020】
また、前記潤滑膜に加えて、硬質被膜ではなく、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数の凹部からなる油溜まりを形成する処理を施して得られた硬質層を備えているので、材料表面が剥離を生じることがないと共に、スパッタリングやCVD等の高価な装置、処理を不要にすることができ、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る直動装置の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明の第1の実施形態では、直動装置としてリニアガイドを、第2の実施形態ではボールスプラインを、第3の実施形態ではリニアボールベアリングを、第4の実施形態ではボールガイドを、第5の実施形態ではリニアローラベアリングを、第6の実施形態ではチューブ循環式ボールねじを、第7の実施形態では循環こま式ボールねじを、第8の実施形態ではエンドキャップ式ボールねじを例に採って説明する。なお、本発明の第1の実施形態では、既に図15で説明したリニアガイドとの相違点についてのみ説明する。
【0022】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態であるリニアガイドは、図1に示すように、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7、スライダ2の転動体通路8、ボールBの転動面及びエンドキャップ5の方向転換路6の表面に、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を備えている。潤滑膜14は、清浄環境下及び真空環境下における発塵量およびアウトガスを低減すると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保している。
【0023】
ここで、潤滑膜14の膜厚は特に限定されるものではないが、低発塵性及び耐久性をより良好とするためには、0.3〜2.0μmが好ましい。潤滑膜14の膜厚が0.3μm未満では潤滑性が不十分となって耐久性が低下する虞れがあり、一方、2.0μmを超えると、潤滑性は十分となるが発塵量が多くなる問題が生じる虞れがある。
【0024】
また、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面は、潤滑膜14に加えて、従来のような硬質被膜ではなく、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20を備えている。
【0025】
このWPC処理により、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面において、次の(i)〜(iii)の組織変化、形状変化が生じる。
(i)残留オーステナイト量が減少して、通常の熱処理よりも著しく微細なマルテンサイト組織が生成される。また、析出硬化と同時に短時間にγ化温度に加熱され、短時間に冷却されるため、表面硬度が上昇し、靱性に富むと共に、表面の内部残留圧縮応力が上昇する。
(ii)また、研磨材の噴射による加工硬化、特に熱の発生と共に塑性加工が行われるため、オースフォームが行われたこととなり、上述したマルテンサイト組織の生成を助長して表面硬度が上昇する。
(iii)更に、表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプルが形成される。
【0026】
これらの(i)〜(iii)により、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面について、組織の微細化及び靱性の向上により疲労強度の向上が図れると共に、組織の微細化により耐衝撃性の向上が図れる。更に、組織の微細化及び表面硬度の上昇により耐摩耗性の向上が図れると共に、無数のディンプルが油溜まりとなって潤滑性の向上が図れる。
【0027】
特に、上記(iii)は、潤滑膜14による潤滑性に加えて、従来の硬質被膜15の耐摩耗性が付加されるというのとは異なり、WPC処理による硬質層20が潤滑膜14そのものの潤滑性を向上させるという相乗効果となる。
【0028】
ここで、前記表面温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に確実に安定して上昇させる研磨材の衝突エネルギーを発生させ、且つ生成されたディンプルが油溜まりとして機能する微小なサイズとするためには、研磨材の粒径が20〜200μm、研磨材の噴射速度が50m/sec以上であることが好ましい。
【0029】
なお、案内レール1、スライダ2及びボールBはいずれも耐食材料で形成されている。
案内レール1及びスライダ2の材料としては、例えは、SUS440Cに代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼、或いはフェライト系ステンレス鋼に適当な熱硬化処理を施したものや、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼、SUS316のようなオーステナイト系ステンレス鋼に表面硬化処理を施したものが挙げられる。
【0030】
ボールBの材料としては、前述のステンレス鋼の他、セラミックス材や超硬合金等のサーメットが挙げられる。なお、セラミックス材としては、窒化けい素(Si3 N4 )を主体とするものの他、アルミナ(Al2 O3 )、炭化けい素(SiC)、ジルコニア(ZrO2 )等を主体とするものが好ましい。
【0031】
このように本実施形態では、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を備えているので、清浄環境下及び真空環境下においても発塵量およびアウトガスが低くなると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保することができる。
【0032】
また、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面は、潤滑膜14に加えて、硬質被膜の代わりに、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20を備えているので、材料表面層を改質した硬質層20は、硬質被膜の場合に発生する可能性のある剥離を生じることがないと共に、スパッタリングやCVD等の高価な装置、処理を不要にすることができ、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図2に示す本発明の第2の実施形態であるボールスプラインは、断面円形の案内レール(案内軸)21と、該案内レール21に軸方向に相対移動可能に嵌合された円筒状のスライダ(可動体)22とを備える。
【0034】
案内レール21の両側部には、それぞれ軸方向に延びる転動体転動溝(転動体軌道面)23が形成されており、スライダ22には転動体転動溝23に対向する転動体転動溝(転動体軌道面)27が形成されている。そして、これらの向き合った両転動体転動溝23,27の間の負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動自在に装填され、これらのボールBの転動を介してスライダ22が案内レール21を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
【0035】
また、スライダ22には、軸方向に貫通する転動体通路28と、上記両転動体転動溝23,27間と上記転動体通路28とを連通する円弧状に湾曲した方向転換路26とが形成されており、両転動体転動溝23,27と併せて転動体無限循環軌道を形成している。
【0036】
なお、本実施形態では、転動体としてボールBを用いているが、ローラであってもよく、その場合、隣接するローラ同士は互いに異なった軌道面と転がり接触するように配設される。
【0037】
そして、本実施形態では、図3に示すように、案内レール21の転動体転動溝23、スライダ22の転動体転動溝27及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
(第3の実施形態)
図4に示す本発明の第3の実施形態であるリニアボールベアリングは、断面円形の案内レール(案内軸)31と、該案内レール31に軸方向に相対移動可能に嵌合された円筒状のスライダ(可動体)32とを備える。
【0039】
案内レール31には、それぞれ軸方向に延びる転動体軌道面33が形成されており、スライダ32には、転動体軌道面33に対向する転動体軌道面37が形成されている。そして、これらの向き合った両転動体軌道面33,37の間の負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが保持器39を介して転動自在に装填され、これらのボールBの転動を介してスライダ32が案内レール31を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。本実施形態は、ボール列が5条である例を示している。
【0040】
また、スライダ32には、保持器39の溝と共に構成する、軸方向に貫通する転動体通路38と、上記両転動体軌道面33,37間と上記転動体通路38とを連通する円弧状に湾曲した方向転換路36とが形成されており、両転動体軌道面33,37と共に、転動体無限循環軌道を形成している。
【0041】
そして、本実施形態では、図5に示すように、案内レール31の転動体軌道面33、スライダ32の転動体軌道面37及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0042】
(第4実施形態)
図6に示す本発明の第4の実施形態であるボールガイドは、断面円形の丸軸である案内レール(案内軸)41と、該案内レール41に軸方向に相対移動可能に嵌合された円筒状のスライダ(可動体)42とを備える。
【0043】
案内レール41の外周面及びスライダ42の内周面は全て転動体軌道面43及び47とされており、案内レール41の転動体軌道面43とスライダ42の転動体軌道面47との間には転動体の一例としての多数のボールBが保持器49を介して転動自在に装填され、これらのボールBの転動を介してスライダ42が案内レール41を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
【0044】
なお、保持器49のポケット1箇所につきボールBは1個装填されており、ボールBは軸方向に1列に整列していて、その列が周方向に等間隔で配設されている。そして、このボールガイドは、スライダ42がボールBの転動に伴い案内レール41に対してボールBの移動距離の2倍量直進する一定のストロークを持った直動装置である。
【0045】
なお、本実施形態は、案内レール41を多角形軸に、スライダ42を多角形状の外筒に、ボールBをローラに、保持器49を多角形保持器に変更して構成してもよい。この場合、スライダ42は軸回りのモーメントを受けることができる。
【0046】
ここで、本実施形態では、図7に示すように、案内レール41の転動体軌道面43、スライダ42の転動体軌道面47及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0047】
(第5の実施形態)
図8に示す本発明の第5の実施形態であるリニアローラベアリングは、直方体の側面に平行な直線部を有するオーバル溝57(転動体軌道面)が設けられたスライダ(可動体)52を備えており、スライダ52のオーバル溝57の対向面には転動体の一例としての複数のローラRがすき間なく装填されている。スライダ52は底面から上面まで削られており、オーバル溝57の直線部に達すると、ローラRが露出して該ローラRの転動面が丸軸である案内レール(案内軸)51の平面部(転動体軌道面)53に転がり接触してスライダ52が案内レール51の平面部53に沿って直進する。ローラRはスライダ52のオーバル溝57内を無限循環する。なお、この例では、ローラRの軸方向中央に設けた溝59に線状部材54を通してローラRの脱落を防止している。また、案内レール51はローラRと対向する平面部を有していればよく、断面の形状は問われない。
【0048】
ここで、この実施形態では、図示は省略するが、案内レール51の平面部53、スライダ52のオーバル溝57及びローラRの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0049】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態であるチューブ循環式ボールねじは、図9に示すように、軸方向に延びるねじ軸(案内軸)61と、該ねじ軸61に軸方向に相対移動可能に螺合されたナット(可動体)62とを備える。
【0050】
ねじ軸61の外周面には螺旋状のねじ溝63(転動体軌道面)が形成されており、ナット62の内周面にはねじ溝63に対応する螺旋状のねじ溝(転動体軌道面)64が形成されている。
【0051】
ナット62のねじ溝64とねじ軸61のねじ溝63とは互いに対向して両者の間に螺旋状の負荷軌道を形成しており、該負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動可能に装填されている。そして、ねじ軸61(又はナット62)の回転により、ナット62(又はねじ軸61)がボールBの転動を介して軸方向に移動するようになっている。
また、ナット62の周方向の側面には両ねじ溝63,64間に連通する2個一組の循環孔65がねじ軸61を跨ぐように形成されており、この一組の循環孔65に内部に方向転換路66を有する略コ字状の循環チューブ67の両端を嵌め込んでいる。これにより、ボールねじは、両ねじ溝63,64間の負荷領域に沿って公転するボールBを循環チューブ67の一方の端部からすくい上げてナット62の外部に導き、他方の端部から前記負荷領域に戻して、転動体無限循環軌道を形成している。
【0052】
そして、本実施形態では、図10に示すように、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を備えている。潤滑膜14は、清浄環境下及び真空環境下における発塵量およびアウトガスを低減すると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保する。
【0053】
ここで、潤滑膜14の膜厚は特に限定されるものではないが、低発塵性及び耐久性をより良好とするためには、0.3〜2.0μmが好ましい。潤滑膜14の膜厚が0.3μm未満では潤滑性が不十分となって耐久性が低下する虞れがあり、一方、2.0μmを超えると、潤滑性は十分となるが発塵量が多くなる問題が生じる虞れがある。
【0054】
また、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面は、潤滑膜14に加えて、従来のような硬質被膜ではなく、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20を備えている。
【0055】
このWPC処理により、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面において、第1の実施形態同様、次の(i)〜(iii)の組織変化、形状変化が生じる。
(i)残留オーステナイト量が減少して、通常の熱処理よりも著しく微細なマルテンサイト組織が生成される。また、析出硬化と同時に短時間にγ化温度に加熱され、短時間に冷却されるため、表面硬度が上昇し、靱性に富むと共に、表面の内部残留圧縮応力が上昇する。
(ii)また、研磨材の噴射による加工硬化、特に熱の発生と共に塑性加工が行われるため、オースフォームが行われたこととなり、上述したマルテンサイト組織の生成を助長して表面硬度が上昇する。
(iii)更に、表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプルが形成される。
これらの(i)〜(iii)により、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面について、組織の微細化及び靱性の向上により疲労強度の向上が図れると共に、組織の微細化により耐衝撃性の向上が図れる。更に、組織の微細化及び表面硬度の上昇により耐摩耗性の向上が図れると共に、無数のディンプルが油溜まりとなって潤滑性の向上が図れる。
【0056】
特に、上記(iii)は、潤滑膜14による潤滑性に加えて、従来の硬質被膜15の耐摩耗性が付加されるというのとは異なり、WPC処理による硬質層20が潤滑膜14そのものの潤滑性を向上させるという相乗効果となる。
【0057】
ここで、前記表面温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に確実に安定して上昇させる研磨材の衝突エネルギーを発生させ、且つ生成されたディンプルが油溜まりとして機能する微小なサイズとするためには、研磨材の粒径が20〜200μm、研磨材の噴射速度が50m/sec以上であることが好ましい。
【0058】
なお、ねじ軸61、ナット62、ボールB及び循環チューブ67はいずれも耐食材料で形成されている。ねじ軸61、ナット62及び循環チューブ67の材料としては、例えは、SUS440Cに代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼、或いはフェライト系ステンレス鋼に適当な熱硬化処理を施したものや、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼、SUS316のようなオーステナイト系ステンレス鋼に表面硬化処理を施したものが挙げられる。
【0059】
ボールBの材料としては、前述のステンレス鋼の他、セラミックス材や超硬合金等のサーメットが挙げられる。なお、セラミックス材としては、窒化けい素(Si3 N4 )を主体とするものの他、アルミナ(Al2 O3 )、炭化けい素(SiC)、ジルコニア(ZrO2 )等を主体とするものが好ましい。
【0060】
このように本実施形態では、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を備えているので、清浄環境下及び真空環境下においても発塵量およびアウトガスが低くなると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保することができる。
【0061】
また、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面は、潤滑膜14に加えて、硬質被膜ではなく、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20を備えているので、材料表面層を改質した硬質層20は、硬質被膜の場合に発生する可能性のある剥離を生じることがないと共に、スパッタリングやCVD等の高価な装置、処理を不要にすることができ、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることができる。
【0062】
(第7の実施形態)
図11に示す本発明の第7の実施形態である循環こま式ボールねじは、軸方向に延びるねじ軸(案内軸)71と、該ねじ軸71に軸方向に相対移動可能に螺合されたナット(可動体)72とを備える。
【0063】
ねじ軸71の外周面には螺旋状のねじ溝73(転動体軌道面)が形成されており、ナット72の内周面にはねじ溝73に対応する螺旋状のねじ溝(転動体軌道面)74が形成されている。
【0064】
ナット72のねじ溝74とねじ軸71のねじ溝73とは互いに対向して両者の間に螺旋状の負荷軌道を形成しており、該負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動可能に装填されている。そして、ねじ軸71(又はナット72)の回転により、ナット72(又はねじ軸71)がボールBの転動を介して軸方向に移動するようになっている。
【0065】
また、ナット72の外周面には循環こま嵌合穴75が設けられており、該嵌合穴75には略S字状の方向転換路76を有する循環こま77が嵌め込まれている。
【0066】
これにより、両ねじ溝73,74間の負荷軌道を転動するボールBは循環こま77の掬い上げ部によりねじ軸71のランド部を乗り越えて循環こま77内部の方向転換路76に案内され、該方向転換路76を介して隣接する両ねじ溝73,74間の負荷軌道に戻されてボールBが無限に循環する転動体無限循環軌道を形成している。
【0067】
ここで、この実施形態では、図12に示すように、ねじ軸71のねじ溝73、ナット72のねじ溝74及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第6の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
(第8の実施形態)
図13に示す本発明の第8の実施形態であるエンドキャップ式ボールねじは、軸方向に延びるねじ軸(案内軸)81と、該ねじ軸81に軸方向に相対移動可能に螺合されたナット(可動体)82とを備える。
【0069】
ねじ軸81の外周面には螺旋状のねじ溝83(転動体軌道面)が形成されており、ナット82の内周面にはねじ溝83に対応する螺旋状のねじ溝(転動体軌道面)84が形成されている。
【0070】
ナット82のねじ溝84とねじ軸81のねじ溝83とは互いに対向して両者の間に螺旋状の負荷軌道を形成しており、該負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動可能に装填されている。そして、ねじ軸81(又はナット82)の回転により、ナット82(又はねじ軸81)がボールBの転動を介して軸方向に移動するようになっている。
【0071】
また、ナット82の周壁部には軸方向に貫通する転動体通路85が形成されており、また、ナット82の軸方向の端面には転動体通路85と前記両ねじ溝83,84間の負荷軌道とを連通するエンドキャップ88がねじ87等の固定手段を介して固定されている。
【0072】
エンドキャップ88は、前記転動体通路85と前記両ねじ溝83,84間の負荷軌道との間を連通する方向転換路86を備えており、該方向転換路86、前記両ねじ溝83,84間の負荷軌道及び前記転動体通路85によって1列の転動体無限循環軌道を形成している。
【0073】
ここで、本実施形態では、図14に示すように、ねじ軸81のねじ溝83、ナット82のねじ溝84及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第6の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0074】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記各実施形態では、転動体としてボールを用いたボールねじやリニアガイド等の直動装置を例に採ったが、転動体としてころを用いたころねじ装置やリニアガイド等の直動装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態であるリニアガイドの要部断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態であるボールスプラインを示し、(a)はその一部を破断した概略図であり、(b)は(a)のII-II線に沿った断面図である。
【図3】図2(b)のIII部詳細図である。
【図4】本発明の第3の実施形態であるリニアボールベアリングを示し、(a)はその一部を破断した概略図であり、(b)は(a)のIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図4(b)のV部詳細図である。
【図6】本発明の第4の実施形態であるボールガイドを示し、(a)はその概略断面図であり、(b)は(a)のVI-VI線に沿った断面図である。
【図7】図6(b)のVII部詳細図である。
【図8】本発明の第5の実施形態であるリニアローラベアリングを示し、(a)はその要部断面図であり、(b)は(a)のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態であるチューブ循環式ボールねじを示し、(a)はその平面図であり、(b)はその断面図である。
【図10】図9(b)のX部詳細図である。
【図11】本発明の第7の実施形態である循環こま式ボールねじを示し、(a)はその平面図であり、(b)はその断面図である。
【図12】図11(b)のXII部詳細図である。
【図13】本発明の第8の実施形態であるエンドキャップ式ボールねじを示し、(a)はその平面図であり、(b)はその断面図である。
【図14】図13(b)のXIV部詳細図である。
【図15】従来のリニアガイドの一例を示し、(a)はその一部を破断した斜視図であり、(b)はスライダ内部の断面図である。
【図16】図16(b)のXVI部詳細図である。
【符号の説明】
【0076】
1,21,31,41,51 案内レール(案内軸)
2,22,32,42,52 スライダ(可動体)
3 転動体転動溝(転動体軌道面:案内レール側)
7 転動体転動溝(転動体軌道面:スライダ側)
B ボール(転動体)
14 潤滑膜
20 硬質層
23,33,43 転動体軌道面:案内レール側
27,37,44 転動体軌道面:スライダ側
53 平面部(転動体軌道面:案内レール側)
57 オーバル溝(転動体軌道面:スライダ側)
R ローラ(転動体)
61,71,81 ねじ軸(案内軸)
62,72,82 ナット(可動体)
63,73,83 ねじ溝(転動体軌道面:案内レール側)
64,74,84 ねじ溝(転動体軌道面:スライダ側)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリニアガイド、ボールスプライン、リニアボールベアリング、ボールガイド、リニアローラベアリング及びボールねじ等の直動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアガイドとしては、例えば図15に示すものが知られている。このリニアガイドは、軸方向に延びる案内レール(案内軸)1と、該案内レール1上に軸方向に相対移動可能に跨架されたスライダ(可動体)2とを備える。
【0003】
案内レール1の両側面にはそれぞれ軸方向に延びる転動体転動溝(転動体軌道面)3が形成されており、スライダ2のスライダ本体2Aには、その両袖部4の内側面に、それぞれ転動体転動溝3に対向する転動体転動溝(転動体軌道面)7が形成されている。そして、これらの向き合った両転動体転動溝3,7の間の負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動自在に装填され、スライダ2はこれらのボールBの転動を介して案内レール1上を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
【0004】
この移動につれて、案内レール1とスライダ2との間に介在するボールBは転動してスライダ2の軸方向の端部に移動するが、スライダ2を軸方向に継続して移動させていくためには、これらのボールBを無限に循環させる必要がある。
【0005】
このため、スライダ本体2Aの袖部4内に軸方向に貫通する転動体通路8を形成すると共に、スライダ本体2Aの軸方向両端にそれぞれ略コ字状のエンドキャップ5を例えばねじ12等の固定手段を介して固定し、このエンドキャップ5に上記両転動体転動溝3,7間と上記転動体通路8とを連通する円弧状に湾曲した方向転換路6を形成することにより、転動体無限循環軌道を形成している。なお、図15において、符号11はエンドキャップ5と共にスライダ本体2Aの端面にねじ12等を介して固定されるサイドシール、10はスライダ本体2Aの端面に形成されたねじ12のタップ穴、13は給脂用ニップルである。
【0006】
ところで、クリーンルーム等の清浄環境や真空環境で使用されるリニアガイドは、清浄環境では低発塵グリース、真空環境では低蒸気圧グリース(シリコングリース、フッ素グリース等)及び低蒸気圧オイル(シリコンオイル、フッ素オイル等)等の潤滑剤が用いられるが、これらの潤滑剤は、グリースの油分の蒸発やグリース自体の飛散等によって、潤滑機能の劣化や使用環境の汚染を引き起こす虞れがある。
【0007】
このため、従来においては、図16に示すように、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7、スライダ2の転動体通路8、ボールBの転動面及びエンドキャップ5の方向転換路6に官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を設けると共に、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面に硬質被膜15を設け、これにより、清浄環境下及び真空環境下においても発塵量およびアウトガスを低くすると共に、高面圧下においても耐久性に優れた長寿命なリニアガイドが提案されている。
【0008】
潤滑膜14は、前述のように官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有して流動性を有しているため、比較的大きな荷重が作用するような場合でも、ボールBの負荷により剥離や欠落を生じる可能性が低く、発塵量が小さい。 従って、半導体製造装置等のパーティクルを極端に嫌う環境下において使用されるリニアガイドに好適である。
【0009】
また、潤滑膜14は、含フッ素重合体だけでなくパーフルオロポリエーテル(PFPE)が配合されているため低アウトガスであり、従って、特にウェハの処理プロセスのような有機物による汚染を極端に嫌う用途に適している。
【0010】
さらに、比較的大きな荷重が作用するような場合でも、リニアガイドの転動、摺動する部位において金属同士が無潤滑で接触する状態となりにくく、該部位に常に潤滑剤が付着している状態が維持されるので、該部位において凝着や摩耗が起こる可能性が低く、耐久性に優れ、且つ低発塵である。
【0011】
潤滑膜14は、前述のように官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有しているものであるが、両者を混合したもので潤滑膜を形成しても良いし、官能基を有する含フッ素重合体の層とパーフルオロポリエーテル(PFPE)の層とからなる二層構造としても良い。
【0012】
後者の場合には、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7、ボールBの転動面、及びエンドキャップ5の方向転換路6に、官能基を有する含フッ素重合体の層を設け、その上にパーフルオロポリエーテル(PFPE)の層を設けた二重構造とする必要がある。そうすれば、下層の含フッ素重合体と上層のパーフルオロポリエーテル(PFPE)との濡れ性が良好であるため、パーフルオロポリエーテル(PFPE)が薄く均一に被覆され、リニアガイドの転がりによってパーフルオロポリエーテル(PFPE)が飛散しにくい(低発塵である)。なお、金属面に直接パーフルオロポリエーテル(PFPE)を被覆すると、金属とパーフルオロポリエーテル(PFPE)との濡れ性が悪いので、パーフルオロポリエーテル(PFPE)を均一に被覆することが難しくなる。
【0013】
硬質被膜15は、耐摩耗性、耐焼付き性及び耐凝着性の向上に寄与するもので、リニアガイドの耐久性の向上を図るものとされている。
【0014】
硬質被膜15としては、めっきでは、無電解ニッケルめっき、セラミックカニゼン及びカニボロン等、カーボン系では、GLC(グラファイトライクカーボン)及びDLC(ダイヤモンドライクカーボン)等、フッ素系では、FHC(フッ素重合硬質膜)等、Si系では、SiC等、チタン系では、TiN,TiCN(炭窒化チタン)、TiAlN(窒化チタンアルミニウム)及びTiCrN(窒化チタンクロム)等、クロム系では、CrN等が挙げられる。
【0015】
また、溶射によって形成された硬質被膜15でもよいとされている。溶射材料としては、セラミックス、サーメット、炭化物等が挙げられ、例えば、Cr3 C2 、TiO2 −Al2 O3 、CO−WC、(Ni−Cr)−Cr3 C2 、Al2 O3 、CrC3 、Cr2 C3 −SiO−TiO2 、(CO−WC)−(Ni−Al)等が適している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来のリニアガイドにおいては、硬質被膜15は母材金属の表面をコーティングしているにすぎないため、硬質被膜15の剥離の可能性があり、また、硬質被膜15の生成はスパッタリング、真空蒸着、CVD、あるいはPVD等による場合が少なくないので、処理や装置にコストがかかり、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることが難しいという問題がある。
【0017】
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、材料表面が剥離を生じることがなく、スパッタリングやCVD等の高価な装置、処理を不要にすることができ、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることができる低コストな直動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 転動体軌道面を有する案内軸と、該案内軸の前記転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有して、これらの両転動体軌道面間に挿入される多数の転動体の転動を介して前記案内軸に沿って相対的に移動する可動体とを備える直動装置であって、
前記案内軸の前記転動体軌道面、前記可動体の前記転動体軌道面及び前記転動体の転動面の少なくとも一つの表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数の凹部からなる油溜まりを形成する処理を施して得られる硬質層とを備えることを特徴とする直動装置。
(2) 前記研磨材の粒径が20〜200μmで、且つ該研磨材の噴射速度が50m/sec以上であることを特徴とする(1)に記載の直動装置。
(3) 前記潤滑膜の膜厚は0.3〜2.0μmであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の直動装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の直動装置によれば、案内軸の転動体軌道面、可動体の転動体軌道面及び転動体の転動面の内の少なくとも一つの表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜を備えているので、清浄環境下及び真空環境下においても発塵量およびアウトガスが低くなると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保することができる。
【0020】
また、前記潤滑膜に加えて、硬質被膜ではなく、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数の凹部からなる油溜まりを形成する処理を施して得られた硬質層を備えているので、材料表面が剥離を生じることがないと共に、スパッタリングやCVD等の高価な装置、処理を不要にすることができ、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る直動装置の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明の第1の実施形態では、直動装置としてリニアガイドを、第2の実施形態ではボールスプラインを、第3の実施形態ではリニアボールベアリングを、第4の実施形態ではボールガイドを、第5の実施形態ではリニアローラベアリングを、第6の実施形態ではチューブ循環式ボールねじを、第7の実施形態では循環こま式ボールねじを、第8の実施形態ではエンドキャップ式ボールねじを例に採って説明する。なお、本発明の第1の実施形態では、既に図15で説明したリニアガイドとの相違点についてのみ説明する。
【0022】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態であるリニアガイドは、図1に示すように、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7、スライダ2の転動体通路8、ボールBの転動面及びエンドキャップ5の方向転換路6の表面に、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を備えている。潤滑膜14は、清浄環境下及び真空環境下における発塵量およびアウトガスを低減すると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保している。
【0023】
ここで、潤滑膜14の膜厚は特に限定されるものではないが、低発塵性及び耐久性をより良好とするためには、0.3〜2.0μmが好ましい。潤滑膜14の膜厚が0.3μm未満では潤滑性が不十分となって耐久性が低下する虞れがあり、一方、2.0μmを超えると、潤滑性は十分となるが発塵量が多くなる問題が生じる虞れがある。
【0024】
また、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面は、潤滑膜14に加えて、従来のような硬質被膜ではなく、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20を備えている。
【0025】
このWPC処理により、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面において、次の(i)〜(iii)の組織変化、形状変化が生じる。
(i)残留オーステナイト量が減少して、通常の熱処理よりも著しく微細なマルテンサイト組織が生成される。また、析出硬化と同時に短時間にγ化温度に加熱され、短時間に冷却されるため、表面硬度が上昇し、靱性に富むと共に、表面の内部残留圧縮応力が上昇する。
(ii)また、研磨材の噴射による加工硬化、特に熱の発生と共に塑性加工が行われるため、オースフォームが行われたこととなり、上述したマルテンサイト組織の生成を助長して表面硬度が上昇する。
(iii)更に、表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプルが形成される。
【0026】
これらの(i)〜(iii)により、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面について、組織の微細化及び靱性の向上により疲労強度の向上が図れると共に、組織の微細化により耐衝撃性の向上が図れる。更に、組織の微細化及び表面硬度の上昇により耐摩耗性の向上が図れると共に、無数のディンプルが油溜まりとなって潤滑性の向上が図れる。
【0027】
特に、上記(iii)は、潤滑膜14による潤滑性に加えて、従来の硬質被膜15の耐摩耗性が付加されるというのとは異なり、WPC処理による硬質層20が潤滑膜14そのものの潤滑性を向上させるという相乗効果となる。
【0028】
ここで、前記表面温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に確実に安定して上昇させる研磨材の衝突エネルギーを発生させ、且つ生成されたディンプルが油溜まりとして機能する微小なサイズとするためには、研磨材の粒径が20〜200μm、研磨材の噴射速度が50m/sec以上であることが好ましい。
【0029】
なお、案内レール1、スライダ2及びボールBはいずれも耐食材料で形成されている。
案内レール1及びスライダ2の材料としては、例えは、SUS440Cに代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼、或いはフェライト系ステンレス鋼に適当な熱硬化処理を施したものや、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼、SUS316のようなオーステナイト系ステンレス鋼に表面硬化処理を施したものが挙げられる。
【0030】
ボールBの材料としては、前述のステンレス鋼の他、セラミックス材や超硬合金等のサーメットが挙げられる。なお、セラミックス材としては、窒化けい素(Si3 N4 )を主体とするものの他、アルミナ(Al2 O3 )、炭化けい素(SiC)、ジルコニア(ZrO2 )等を主体とするものが好ましい。
【0031】
このように本実施形態では、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を備えているので、清浄環境下及び真空環境下においても発塵量およびアウトガスが低くなると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保することができる。
【0032】
また、案内レール1の転動体転動溝3、スライダ2の転動体転動溝7及びボールBの転動面の表面は、潤滑膜14に加えて、硬質被膜の代わりに、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20を備えているので、材料表面層を改質した硬質層20は、硬質被膜の場合に発生する可能性のある剥離を生じることがないと共に、スパッタリングやCVD等の高価な装置、処理を不要にすることができ、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図2に示す本発明の第2の実施形態であるボールスプラインは、断面円形の案内レール(案内軸)21と、該案内レール21に軸方向に相対移動可能に嵌合された円筒状のスライダ(可動体)22とを備える。
【0034】
案内レール21の両側部には、それぞれ軸方向に延びる転動体転動溝(転動体軌道面)23が形成されており、スライダ22には転動体転動溝23に対向する転動体転動溝(転動体軌道面)27が形成されている。そして、これらの向き合った両転動体転動溝23,27の間の負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動自在に装填され、これらのボールBの転動を介してスライダ22が案内レール21を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
【0035】
また、スライダ22には、軸方向に貫通する転動体通路28と、上記両転動体転動溝23,27間と上記転動体通路28とを連通する円弧状に湾曲した方向転換路26とが形成されており、両転動体転動溝23,27と併せて転動体無限循環軌道を形成している。
【0036】
なお、本実施形態では、転動体としてボールBを用いているが、ローラであってもよく、その場合、隣接するローラ同士は互いに異なった軌道面と転がり接触するように配設される。
【0037】
そして、本実施形態では、図3に示すように、案内レール21の転動体転動溝23、スライダ22の転動体転動溝27及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
(第3の実施形態)
図4に示す本発明の第3の実施形態であるリニアボールベアリングは、断面円形の案内レール(案内軸)31と、該案内レール31に軸方向に相対移動可能に嵌合された円筒状のスライダ(可動体)32とを備える。
【0039】
案内レール31には、それぞれ軸方向に延びる転動体軌道面33が形成されており、スライダ32には、転動体軌道面33に対向する転動体軌道面37が形成されている。そして、これらの向き合った両転動体軌道面33,37の間の負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが保持器39を介して転動自在に装填され、これらのボールBの転動を介してスライダ32が案内レール31を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。本実施形態は、ボール列が5条である例を示している。
【0040】
また、スライダ32には、保持器39の溝と共に構成する、軸方向に貫通する転動体通路38と、上記両転動体軌道面33,37間と上記転動体通路38とを連通する円弧状に湾曲した方向転換路36とが形成されており、両転動体軌道面33,37と共に、転動体無限循環軌道を形成している。
【0041】
そして、本実施形態では、図5に示すように、案内レール31の転動体軌道面33、スライダ32の転動体軌道面37及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0042】
(第4実施形態)
図6に示す本発明の第4の実施形態であるボールガイドは、断面円形の丸軸である案内レール(案内軸)41と、該案内レール41に軸方向に相対移動可能に嵌合された円筒状のスライダ(可動体)42とを備える。
【0043】
案内レール41の外周面及びスライダ42の内周面は全て転動体軌道面43及び47とされており、案内レール41の転動体軌道面43とスライダ42の転動体軌道面47との間には転動体の一例としての多数のボールBが保持器49を介して転動自在に装填され、これらのボールBの転動を介してスライダ42が案内レール41を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
【0044】
なお、保持器49のポケット1箇所につきボールBは1個装填されており、ボールBは軸方向に1列に整列していて、その列が周方向に等間隔で配設されている。そして、このボールガイドは、スライダ42がボールBの転動に伴い案内レール41に対してボールBの移動距離の2倍量直進する一定のストロークを持った直動装置である。
【0045】
なお、本実施形態は、案内レール41を多角形軸に、スライダ42を多角形状の外筒に、ボールBをローラに、保持器49を多角形保持器に変更して構成してもよい。この場合、スライダ42は軸回りのモーメントを受けることができる。
【0046】
ここで、本実施形態では、図7に示すように、案内レール41の転動体軌道面43、スライダ42の転動体軌道面47及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0047】
(第5の実施形態)
図8に示す本発明の第5の実施形態であるリニアローラベアリングは、直方体の側面に平行な直線部を有するオーバル溝57(転動体軌道面)が設けられたスライダ(可動体)52を備えており、スライダ52のオーバル溝57の対向面には転動体の一例としての複数のローラRがすき間なく装填されている。スライダ52は底面から上面まで削られており、オーバル溝57の直線部に達すると、ローラRが露出して該ローラRの転動面が丸軸である案内レール(案内軸)51の平面部(転動体軌道面)53に転がり接触してスライダ52が案内レール51の平面部53に沿って直進する。ローラRはスライダ52のオーバル溝57内を無限循環する。なお、この例では、ローラRの軸方向中央に設けた溝59に線状部材54を通してローラRの脱落を防止している。また、案内レール51はローラRと対向する平面部を有していればよく、断面の形状は問われない。
【0048】
ここで、この実施形態では、図示は省略するが、案内レール51の平面部53、スライダ52のオーバル溝57及びローラRの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0049】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態であるチューブ循環式ボールねじは、図9に示すように、軸方向に延びるねじ軸(案内軸)61と、該ねじ軸61に軸方向に相対移動可能に螺合されたナット(可動体)62とを備える。
【0050】
ねじ軸61の外周面には螺旋状のねじ溝63(転動体軌道面)が形成されており、ナット62の内周面にはねじ溝63に対応する螺旋状のねじ溝(転動体軌道面)64が形成されている。
【0051】
ナット62のねじ溝64とねじ軸61のねじ溝63とは互いに対向して両者の間に螺旋状の負荷軌道を形成しており、該負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動可能に装填されている。そして、ねじ軸61(又はナット62)の回転により、ナット62(又はねじ軸61)がボールBの転動を介して軸方向に移動するようになっている。
また、ナット62の周方向の側面には両ねじ溝63,64間に連通する2個一組の循環孔65がねじ軸61を跨ぐように形成されており、この一組の循環孔65に内部に方向転換路66を有する略コ字状の循環チューブ67の両端を嵌め込んでいる。これにより、ボールねじは、両ねじ溝63,64間の負荷領域に沿って公転するボールBを循環チューブ67の一方の端部からすくい上げてナット62の外部に導き、他方の端部から前記負荷領域に戻して、転動体無限循環軌道を形成している。
【0052】
そして、本実施形態では、図10に示すように、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を備えている。潤滑膜14は、清浄環境下及び真空環境下における発塵量およびアウトガスを低減すると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保する。
【0053】
ここで、潤滑膜14の膜厚は特に限定されるものではないが、低発塵性及び耐久性をより良好とするためには、0.3〜2.0μmが好ましい。潤滑膜14の膜厚が0.3μm未満では潤滑性が不十分となって耐久性が低下する虞れがあり、一方、2.0μmを超えると、潤滑性は十分となるが発塵量が多くなる問題が生じる虞れがある。
【0054】
また、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面は、潤滑膜14に加えて、従来のような硬質被膜ではなく、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20を備えている。
【0055】
このWPC処理により、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面において、第1の実施形態同様、次の(i)〜(iii)の組織変化、形状変化が生じる。
(i)残留オーステナイト量が減少して、通常の熱処理よりも著しく微細なマルテンサイト組織が生成される。また、析出硬化と同時に短時間にγ化温度に加熱され、短時間に冷却されるため、表面硬度が上昇し、靱性に富むと共に、表面の内部残留圧縮応力が上昇する。
(ii)また、研磨材の噴射による加工硬化、特に熱の発生と共に塑性加工が行われるため、オースフォームが行われたこととなり、上述したマルテンサイト組織の生成を助長して表面硬度が上昇する。
(iii)更に、表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプルが形成される。
これらの(i)〜(iii)により、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面について、組織の微細化及び靱性の向上により疲労強度の向上が図れると共に、組織の微細化により耐衝撃性の向上が図れる。更に、組織の微細化及び表面硬度の上昇により耐摩耗性の向上が図れると共に、無数のディンプルが油溜まりとなって潤滑性の向上が図れる。
【0056】
特に、上記(iii)は、潤滑膜14による潤滑性に加えて、従来の硬質被膜15の耐摩耗性が付加されるというのとは異なり、WPC処理による硬質層20が潤滑膜14そのものの潤滑性を向上させるという相乗効果となる。
【0057】
ここで、前記表面温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に確実に安定して上昇させる研磨材の衝突エネルギーを発生させ、且つ生成されたディンプルが油溜まりとして機能する微小なサイズとするためには、研磨材の粒径が20〜200μm、研磨材の噴射速度が50m/sec以上であることが好ましい。
【0058】
なお、ねじ軸61、ナット62、ボールB及び循環チューブ67はいずれも耐食材料で形成されている。ねじ軸61、ナット62及び循環チューブ67の材料としては、例えは、SUS440Cに代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼、或いはフェライト系ステンレス鋼に適当な熱硬化処理を施したものや、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼、SUS316のようなオーステナイト系ステンレス鋼に表面硬化処理を施したものが挙げられる。
【0059】
ボールBの材料としては、前述のステンレス鋼の他、セラミックス材や超硬合金等のサーメットが挙げられる。なお、セラミックス材としては、窒化けい素(Si3 N4 )を主体とするものの他、アルミナ(Al2 O3 )、炭化けい素(SiC)、ジルコニア(ZrO2 )等を主体とするものが好ましい。
【0060】
このように本実施形態では、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14を備えているので、清浄環境下及び真空環境下においても発塵量およびアウトガスが低くなると共に、高面圧下においても優れた耐久性を確保することができる。
【0061】
また、ねじ軸61のねじ溝63、ナット62のねじ溝64及びボールBの転動面の表面は、潤滑膜14に加えて、硬質被膜ではなく、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20を備えているので、材料表面層を改質した硬質層20は、硬質被膜の場合に発生する可能性のある剥離を生じることがないと共に、スパッタリングやCVD等の高価な装置、処理を不要にすることができ、更には、十分な潤滑性、疲労強度及び耐衝撃性を得ることができる。
【0062】
(第7の実施形態)
図11に示す本発明の第7の実施形態である循環こま式ボールねじは、軸方向に延びるねじ軸(案内軸)71と、該ねじ軸71に軸方向に相対移動可能に螺合されたナット(可動体)72とを備える。
【0063】
ねじ軸71の外周面には螺旋状のねじ溝73(転動体軌道面)が形成されており、ナット72の内周面にはねじ溝73に対応する螺旋状のねじ溝(転動体軌道面)74が形成されている。
【0064】
ナット72のねじ溝74とねじ軸71のねじ溝73とは互いに対向して両者の間に螺旋状の負荷軌道を形成しており、該負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動可能に装填されている。そして、ねじ軸71(又はナット72)の回転により、ナット72(又はねじ軸71)がボールBの転動を介して軸方向に移動するようになっている。
【0065】
また、ナット72の外周面には循環こま嵌合穴75が設けられており、該嵌合穴75には略S字状の方向転換路76を有する循環こま77が嵌め込まれている。
【0066】
これにより、両ねじ溝73,74間の負荷軌道を転動するボールBは循環こま77の掬い上げ部によりねじ軸71のランド部を乗り越えて循環こま77内部の方向転換路76に案内され、該方向転換路76を介して隣接する両ねじ溝73,74間の負荷軌道に戻されてボールBが無限に循環する転動体無限循環軌道を形成している。
【0067】
ここで、この実施形態では、図12に示すように、ねじ軸71のねじ溝73、ナット72のねじ溝74及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第6の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
(第8の実施形態)
図13に示す本発明の第8の実施形態であるエンドキャップ式ボールねじは、軸方向に延びるねじ軸(案内軸)81と、該ねじ軸81に軸方向に相対移動可能に螺合されたナット(可動体)82とを備える。
【0069】
ねじ軸81の外周面には螺旋状のねじ溝83(転動体軌道面)が形成されており、ナット82の内周面にはねじ溝83に対応する螺旋状のねじ溝(転動体軌道面)84が形成されている。
【0070】
ナット82のねじ溝84とねじ軸81のねじ溝83とは互いに対向して両者の間に螺旋状の負荷軌道を形成しており、該負荷軌道には転動体の一例としての多数のボールBが転動可能に装填されている。そして、ねじ軸81(又はナット82)の回転により、ナット82(又はねじ軸81)がボールBの転動を介して軸方向に移動するようになっている。
【0071】
また、ナット82の周壁部には軸方向に貫通する転動体通路85が形成されており、また、ナット82の軸方向の端面には転動体通路85と前記両ねじ溝83,84間の負荷軌道とを連通するエンドキャップ88がねじ87等の固定手段を介して固定されている。
【0072】
エンドキャップ88は、前記転動体通路85と前記両ねじ溝83,84間の負荷軌道との間を連通する方向転換路86を備えており、該方向転換路86、前記両ねじ溝83,84間の負荷軌道及び前記転動体通路85によって1列の転動体無限循環軌道を形成している。
【0073】
ここで、本実施形態では、図14に示すように、ねじ軸81のねじ溝83、ナット82のねじ溝84及びボールBの転動面の表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜14と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数のディンプル(凹部)からなる油溜まりを形成するWPC処理を施して得られた硬質層20とを備えている。その他の構成及び作用効果については、上記第6の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0074】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記各実施形態では、転動体としてボールを用いたボールねじやリニアガイド等の直動装置を例に採ったが、転動体としてころを用いたころねじ装置やリニアガイド等の直動装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態であるリニアガイドの要部断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態であるボールスプラインを示し、(a)はその一部を破断した概略図であり、(b)は(a)のII-II線に沿った断面図である。
【図3】図2(b)のIII部詳細図である。
【図4】本発明の第3の実施形態であるリニアボールベアリングを示し、(a)はその一部を破断した概略図であり、(b)は(a)のIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図4(b)のV部詳細図である。
【図6】本発明の第4の実施形態であるボールガイドを示し、(a)はその概略断面図であり、(b)は(a)のVI-VI線に沿った断面図である。
【図7】図6(b)のVII部詳細図である。
【図8】本発明の第5の実施形態であるリニアローラベアリングを示し、(a)はその要部断面図であり、(b)は(a)のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態であるチューブ循環式ボールねじを示し、(a)はその平面図であり、(b)はその断面図である。
【図10】図9(b)のX部詳細図である。
【図11】本発明の第7の実施形態である循環こま式ボールねじを示し、(a)はその平面図であり、(b)はその断面図である。
【図12】図11(b)のXII部詳細図である。
【図13】本発明の第8の実施形態であるエンドキャップ式ボールねじを示し、(a)はその平面図であり、(b)はその断面図である。
【図14】図13(b)のXIV部詳細図である。
【図15】従来のリニアガイドの一例を示し、(a)はその一部を破断した斜視図であり、(b)はスライダ内部の断面図である。
【図16】図16(b)のXVI部詳細図である。
【符号の説明】
【0076】
1,21,31,41,51 案内レール(案内軸)
2,22,32,42,52 スライダ(可動体)
3 転動体転動溝(転動体軌道面:案内レール側)
7 転動体転動溝(転動体軌道面:スライダ側)
B ボール(転動体)
14 潤滑膜
20 硬質層
23,33,43 転動体軌道面:案内レール側
27,37,44 転動体軌道面:スライダ側
53 平面部(転動体軌道面:案内レール側)
57 オーバル溝(転動体軌道面:スライダ側)
R ローラ(転動体)
61,71,81 ねじ軸(案内軸)
62,72,82 ナット(可動体)
63,73,83 ねじ溝(転動体軌道面:案内レール側)
64,74,84 ねじ溝(転動体軌道面:スライダ側)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体軌道面を有する案内軸と、該案内軸の前記転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有して、これらの両転動体軌道面間に挿入される多数の転動体の転動を介して前記案内軸に沿って相対的に移動する可動体とを備える直動装置であって、
前記案内軸の前記転動体軌道面、前記可動体の前記転動体軌道面及び前記転動体の転動面の少なくとも一つの表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数の凹部からなる油溜まりを形成する処理を施して得られる硬質層とを備えることを特徴とする直動装置。
【請求項2】
前記研磨材の粒径が20〜200μmで、且つ該研磨材の噴射速度が50m/sec以上であることを特徴とする請求項1に記載の直動装置。
【請求項3】
前記潤滑膜の膜厚は0.3〜2.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の直動装置。
【請求項1】
転動体軌道面を有する案内軸と、該案内軸の前記転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有して、これらの両転動体軌道面間に挿入される多数の転動体の転動を介して前記案内軸に沿って相対的に移動する可動体とを備える直動装置であって、
前記案内軸の前記転動体軌道面、前記可動体の前記転動体軌道面及び前記転動体の転動面の少なくとも一つの表面は、官能基を有する含フッ素重合体とパーフルオロポリエーテル(PFPE)とを含有する潤滑膜と、前記表面と同等かそれ以上の硬度を有する略球状の研磨材を該表面に噴射して前記表面の温度を鉄系金属の場合はA3変態点以上に、非鉄系金属の場合は再結晶温度以上に上昇させると共に、前記表面に微小な断面円弧状をなす無数の凹部からなる油溜まりを形成する処理を施して得られる硬質層とを備えることを特徴とする直動装置。
【請求項2】
前記研磨材の粒径が20〜200μmで、且つ該研磨材の噴射速度が50m/sec以上であることを特徴とする請求項1に記載の直動装置。
【請求項3】
前記潤滑膜の膜厚は0.3〜2.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の直動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−189131(P2006−189131A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2812(P2005−2812)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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