研削装置及びスクラッチ検出装置
【課題】ウエーハのスクラッチ検出装置及びスクラッチ検出装置を備えた研削装置を提供する。
【解決手段】ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削ホイールを有する研削手段とを備えた研削装置であって、ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出手段を更に具備し、スクラッチ検出手段は、ウエーハ11に対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタ108と、光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段110とから構成される。
【解決手段】ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削ホイールを有する研削手段とを備えた研削装置であって、ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出手段を更に具備し、スクラッチ検出手段は、ウエーハ11に対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタ108と、光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段110とから構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ研削面のスクラッチを検出可能なスクラッチ検出装置及び該スクラッチ検出装置を具備した研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の数多くのデバイスが表面に形成され、且つ個々のデバイスが分割予定ライン(ストリート)によって区画された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、ダイシング装置によって分割予定ラインを切削して個々のデバイスに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ウエーハの裏面を研削する研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削砥石が配設された研削ホイールを回転可能に支持する研削手段と、研削領域に研削水を供給する研削水供給手段とを具備しており、ウエーハを所定の厚みに加工することができる。
【0004】
ところで、ウエーハの厚みが100μm以下、更には50μm以下と薄くなると、ウエーハの裏面に生じた研削歪がデバイスの抗折強度を低下させる原因にもなり、抗折強度を向上させるためにエッチング等で歪を除去すると、今度はウエーハの内部で遊動する重金属を裏面側に保持するゲッタリング効果がなくなりデバイスの品質を著しく低下させることになる。
【0005】
そこで、本出願人は、主に仕上げ研削用砥石として、研削歪を抑制して抗折強度を維持できるとともに、ゲッタリング効果も維持できるビトリファイドボンド砥石を特開2006−1007号公報で提案した。
【特許文献1】特開2006−1007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に開示されたビトリファイドボンド砥石を使用して研削したウエーハの研削面を観察すると、40〜50枚に1枚の割合でスクラッチの入ったウエーハが存在することがあり、かかるウエーハにおいてはスクラッチの入った部分での抗折強度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出可能なスクラッチ検出装置及び該スクラッチ検出装置を具備した研削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明によると、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削ホイールを有する研削手段とを備えた研削装置であって、ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出手段を更に具備し、該スクラッチ検出手段は、ウエーハに対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタと、光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、該フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段とを含むことを特徴とする研削装置が提供される。
【0009】
好ましくは、チャックテーブルは、ウエーハを着脱する着脱位置とウエーハを研削手段で研削する研削位置との間で移動可能であり、スクラッチ検出手段は着脱位置又は研削位置の何れかに配設されている。
【0010】
請求項3記載の発明によると、ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出装置であって、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該ウエーハに対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタと、光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、該フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際、スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段と、を具備したことを特徴とするスクラッチ検出装置が提供される。
【0011】
好ましくは、集光部は、対物レンズと、対物レンズによって取り込まれた反射光を集光する集光レンズと、集光レンズの焦点の位置にピンホールが位置付けられるピンホールマスクとから構成され、フォトディテクタはピンホールを通過した光ビームを捉えるように配設されている。
【0012】
代替案として、好ましくは、前記光ビーム照射手段は、レーザダイオードと、該レーザダイオードから出射されたレーザビームの一部をウエーハの研削面に向けて反射するハーフミラーとから構成され、前記集光手段は、前記ウエーハの研削面により反射された反射光の一部を透過する前記ハーフミラーと、該ハーフミラーを透過した反射光を集光する集光レンズと、該集光レンズの焦点の位置にピンホールが位置付けられるピンホールマスクとから構成され、前記フォトディテクタは該ピンホールを通過した光ビームを捉えるように配設されている。
【0013】
好ましくは、前記ハーフミラーで反射されたレーザビームが透過する透過窓を有しウエーハ側に開放した枠体と、該枠体内に水を供給する水供給手段とを更に具備し、該枠体とウエーハとで仕切られる空間が水で満たされている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の研削装置によると、研削装置にスクラッチ検出手段を設けてウエーハの研削面からスクラッチを検出して、スクラッチが有る場合は研削を続行し、又はスクラッチ除去研削を遂行してスクラッチの無いウエーハを次工程に搬送するようにしたので、スクラッチの無いウエーハを効率良く生産することができる。
【0015】
また、スクラッチ検出時に検出領域が水没している水没式のスクラッチ検出装置によると、スクラッチ検出装置をウエーハの研削位置に位置付けて、ウエーハの研削時にリアルタイムでスクラッチの有無を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明実施形態のウエーハの研削方法及び研削装置を図面を参照して詳細に説明する。図1は所定の厚さに加工される前の半導体ウエーハの斜視図である。図1に示す半導体ウエーハ11は、例えば厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面11aに複数のストリート13が格子状に形成されているとともに、該複数のストリート13によって区画された複数の領域にIC,LSI等のデバイス15が形成されている。
【0017】
このように構成された半導体ウエーハ11は、デバイス15が形成されているデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周余剰領域19を備えている。また、半導体ウエーハ11の外周には、シリコンウエーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチ21が形成されている。
【0018】
半導体ウエーハ11の表面11aには、保護テープ貼着工程により保護テープ23が貼着される。従って、半導体ウエーハ11の表面11aは保護テープ23によって保護され、図2に示すように裏面11bが露出する形態となる。
【0019】
以下、このように構成された半導体ウエーハ11の裏面11bを所定厚さに研削する研削装置2を、図3を参照して説明する。研削装置2のハウジング4は、水平ハウジング部分6と、垂直ハウジング部分8から構成される。
【0020】
垂直ハウジング部分8には上下方向に伸びる1対のガイドレール12,14が固定されている。この一対のガイドレール12,14に沿って研削手段(研削ユニット)16が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット16は支持部20を介して一対のガイドレール12,14に沿って上下方向に移動する移動基台18に取り付けられている。
【0021】
研削ユニット16は、支持部20に取り付けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22中に回転可能に収容されたスピンドル24と、スピンドル24を回転駆動するサーボモータ26を含んでいる。
【0022】
図6に最も良く示されるように、スピンドル24の先端部にはマウンター28が固定されており、このマウンター28には研削ホイール30がねじ止めされている。例えば、研削ホイール30はホイール基台32の自由端部に粒径0.3〜1.0μmのダイヤモンド砥粒をビトリファイドボンドで固めた複数の研削砥石34が固着されて構成されている。よって、研削面は鏡面となる。
【0023】
研削手段(研削ユニット)16にはホース36を介して研削水が供給される。好ましくは、研削水としては純水が使用される。図6に示すように、ホース36から供給された研削水が、スピンドル24に形成された研削水供給穴38、マウンター28に形成された空間40及び研削ホイール30のホイール基台32に形成された複数の研削水供給ノズル42を介して研削砥石34及びチャックテーブル54に保持されたウエーハ11に供給される。
【0024】
図3を再び参照すると、研削装置2は、研削ユニット16を一対の案内レール12,14に沿って上下方向に移動する研削ユニット送り機構44を備えている。研削ユニット送り機構44は、ボールねじ46と、ボールねじ46の一端部に固定されたパルスモータ48から構成される。パルスモータ48をパルス駆動すると、ボールねじ46が回転し、移動基台18の内部に固定されたボールねじ46のナットを介して移動基台18が上下方向に移動される。
【0025】
水平ハウジング部分6の凹部10には、チャックテーブルユニット50が配設されている。チャックテーブルユニット50は、図4に示すように、支持基台52と、支持基台52に回転自在に配設されたチャックテーブル54を含んでいる。チャックテーブルユニット50は更に、チャックテーブル54を挿通する穴を有したカバー56を備えている。
【0026】
チャックテーブルユニット50は、チャックテーブル移動機構58により研削装置2の前後方向に移動される。チャックテーブル移動機構58は、ボールねじ60と、ボールねじ60のねじ軸62の一端に連結されたパルスモータ64から構成される。
【0027】
パルスモータ64をパルス駆動すると、ボールねじ60のねじ軸62が回転し、このねじ軸62に螺合したナットを有する支持基台52が研削装置2の前後方向に移動する。よって、チャックテーブル54もパルスモータ64の回転方向に応じて、前後方向に移動する。
【0028】
図3に示されているように、図4に示した一対のガイドレール66,68及びチャックテーブル移動機構58は蛇腹70,72により覆われている。すなわち、蛇腹70の前端部は凹部10を画成する前壁に固定され、後端部がカバー56の前端面に固定されている。また、蛇腹72の後端は垂直ハウジング部分8に固定され、その前端はカバー56の後端面に固定されている。
【0029】
ハウジング4の水平ハウジング部分6には、第1のウエーハカセット74と、第2のウエーハカセット76と、ウエーハ搬送手段78と、ウエーハ仮載置手段80と、ウエーハ搬入手段82と、ウエーハ搬出手段84と、洗浄手段86が配設されている。更に、ハウジング4の前方にはオペレータが研削条件等を入力する操作手段88が設けられている。
【0030】
また、水平ハウジング部分6の概略中央部には、チャックテーブル54を洗浄する洗浄水噴射ノズル90が設けられている。この洗浄水噴射ノズル90は、チャックテーブルユニット54がウエーハ搬入・搬出領域に位置づけられた状態において、チャックテーブル54に保持された研削加工後のウエーハに向けて洗浄水を噴出する。
【0031】
チャックテーブルユニット50は、チャックテーブル移動機構58のパルスモータ64をパルス駆動することにより、図3に示した装置奥側の研削領域と、ウエーハ搬入手段82からウエーハを受け取りウエーハ搬出手段84にウエーハを受け渡す手前側のウエーハ搬入・搬出領域との間で移動される。
【0032】
ウエーハ搬入・搬出領域(ウエーハ着脱領域)の上方にはスクラッチ検出装置94が配設されている。スクラッチ検出装置94は、図7に示すように、ハウジング96と、ハウジング96の先端部に取り付けられたレーザダイオード(LD)98と、ウエーハ11からの反射光をコリメートビームにする対物レンズ100と、集光レンズ102と、集光レンズ102の焦点位置にピンホール104が位置付けられたピンホールマスク106と、フォトディテクタ108と、フォトディテクタ108に接続されたスクラッチ判定部110とから構成される。
【0033】
LD98から出射されたレーザビームが対物レンズ100直下のウエーハ11に照射されるようにLD98がハウジング96に取り付けられている。図示の実施形態では、2個のLD98が設けられているが、LD98は1個でも又は3個以上配設するようにしても良い。
【0034】
このように構成された研削装置2の研削作業について以下に説明する。第1のウエーハカセット74中に収容されるウエーハは、保護テープが表面側(回路が形成されている側の面)に装着された半導体ウエーハであり、従ってウエーハは裏面が上側に位置する状態で第1のカセット74中に収容されている。このように複数の半導体ウエーハを収容した第1のウエーハカセット74は、ハウジング4の所定のカセットを搬入領域に載置される。
【0035】
そして、カセット搬入領域に載置された第1のウエーハカセット74に収容されていた研削加工前の半導体ウエーハが全て搬出されると、空のウエーハカセット74に変えて複数個の半導体ウエーハを収容した新しい第1のウエーハカセット74が手動でカセット搬入領域に載置される。
【0036】
一方、ハウジング4の所定のカセット搬出領域に載置された第2のウエーハカセット76に所定枚数の研削加工後の半導体ウエーハが搬入されると、かかる第2のウエーハカセット76は手動で搬出されて、新しい空の第2のウエーハカセット76がカセット搬出領域に載置される。
【0037】
第1のウエーハカセット74に収容された半導体ウエーハは、ウエーハ搬送手段78の上下動作及び進退動作により搬送され、ウエーハ仮載置手段80に載置される。ウエーハ仮載置手段80に載置されたウエーハは、ここで中心合わせが行われた後にウエーハ搬入手段82の旋回動作によって、ウエーハ搬入・搬出領域に位置せしめられているチャックテーブルユニット50のチャックテーブル54に載置され、チャックテーブル54によって吸引保持される。
【0038】
このようにチャックテーブル54がウエーハを吸引保持したならば、チャックテーブル移動機構58を作動して、チャックテーブルユニット54を移動して装置後方の研削領域に位置づける。
【0039】
チャックテーブルユニット50が研削領域に位置づけられると、チャックテーブル54に保持されたウエーハの中心が研削ホイール30の外周円を僅かに超えた位置に位置づけられる。
【0040】
次に、チャックテーブル54を例えば100〜300rpm程度で回転し、サーボモータ26を駆動して研削ホイール30を4000〜7000rpmで回転するとともに、研削ユニット送り機構44のパルスモータ48を正転駆動して研削ユニット16を下降させる。
【0041】
そして、図6に示すように、研削ホイール30の研削砥石34をチャックテーブル54上のウエーハ11の裏面(被研削面)に所定の荷重で押圧することにより、ウエーハ11の裏面が研削される。このようにして所定時間研削することにより、ウエーハ11が所定の厚さに研削される。
【0042】
研削が終了すると、チャックテーブル移動機構58を駆動してチャックテーブル54を装置手前側のウエーハ搬入・搬出領域に位置付ける。チャックテーブル54がウエーハ搬入・搬出領域に位置付けられたならば、洗浄水噴射ノズル90から洗浄水を噴射して、チャックテーブル54に保持されている研削加工されたウエーハ11の被研削面(裏面)を洗浄する。
【0043】
このようにウエーハ11の被研削面(裏面)を洗浄した後、チャックテーブル54を回転しながらLD98を駆動してウエーハ11にレーザビームを照射する。ウエーハ11の研削面は鏡面となっているため、ほとんどの反射光は鏡面加工されたウエーハ11により反射されて対物レンズ100に入らないが、僅かばかりの散乱光が符号112で示すように対物レンズ100に入射し、対物レンズ100でコリメートビームに変換される。
【0044】
このコリメートビームは集光レンズ102により集光されて、ピンホールマスク106のピンホール104を通してフォトディテクタ108に入力され、入力された光量に応じて電流値に変換されてスクラッチ判定部110に出力される。
【0045】
スクラッチ判定部110では、図8に示すように、この散乱光はバックグラウンド電流114として検出される。LD98から出射されたレーザビームがスクラッチを検出すると、レーザビームはスクラッチにより大きく散乱されて対物レンズ100に入力される。
【0046】
よって、スクラッチ判定部110では、スパイク電流118,120として検出される。116はスクラッチ有り無しを判定するための所定の閾値であり、これより電流値が大きい場合にはスクラッチ有りと判定し、小さい場合にはスクラッチ無しと判定する。
【0047】
スクラッチ判定部110でブロック122に示すようにスクラッチ無しと判定されると、ブロック124に示すウエーハ洗浄工程を遂行する。すなわち、チャックテーブル54に保持されているウエーハの吸引保持が解除されてから、ウエーハはウエーハ搬出手段84により洗浄手段86に搬送される。
【0048】
洗浄手段86に搬送されたウエーハは、ここで洗浄されると共にスピン乾燥される。次いで、ウエーハがウエーハ搬送手段78により第2のウエーハカセット76の所定位置に収納される。
【0049】
スクラッチ判定部110でブロック126で示すようにスクラッチ有りと判定された場合には、ブロック128のスクラッチ除去研削工程を実施する。すなわち、チャックテーブル移動機構58を駆動してチャックテーブル54を再度研削領域に位置付け、研削ホイール30による粒径約1μm研削を実施する。
【0050】
研削が終了したウエーハは、チャックテーブル移動機構58により再度ウエーハ搬入・搬出領域に位置付けられて、ブロック130のスクラッチ検出工程が実施される。すなわち、チャックテーブル54によりウエーハ11を回転させながらLD98からレーザビームをウエーハ11に照射して、スクラッチ判定部110でスクラッチの有り無しを再度判定する。そして、最終的にスクラッチ無しと判定された場合に、ブロック124のウエーハ洗浄工程を実施する。
【0051】
図9を参照すると、本発明第2実施形態のスクラッチ検出装置94Aの縦断面図が示されている。本実施形態では、レーザダイオード(LD)98から出射されたレーザビームをハーフミラー132で反射させてチャックテーブル54により回転されているウエーハ11に入射する。
【0052】
ウエーハ11の研削面(裏面)は鏡面加工されているので、ほとんどのレーザビームはウエーハ11により反射されて、反射された光量の概略半分がハーフミラー132を透過し、集光レンズ102により集光されてピンホールマスク106のピンホール104を通してフォトディテクタ108に入力され、フォトディテクタ108で電流値に変換されてスクラッチ判定部110´に入力される。
【0053】
図10に示したスクラッチ判定部110´では、ウエーハ11に照射されたレーザビームのほとんどが反射されるため、比較的電流値の高いバックグランド電流134として観察される。
【0054】
ウエーハ11の研削面に形成されたスクラッチにレーザビームが照射されると、レーザビームはスクラッチにより散乱されるため、ウエーハ11により反射されてフォトディテクタ108に入力される戻り光は少なくなる。よって、スクラッチ判定部136では、電流値の谷部138,140として検出される。
【0055】
136はスクラッチを検出するための所定の閾値であり、これより電流値が大きい場合にはスクラッチ無しと判定され、小さい場合にはスクラッチ有りと判定される。本実施形態のこれ以降の動作は、図8を参照して説明した第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0056】
図11を参照すると、本発明第3実施形態のスクラッチ検出装置94Bの縦断面図が示されている。本実施形態のスクラッチ検出装置94Bは、ウエーハ11がチャックテーブル54により研削領域に位置付けられて、ウエーハ11の研削を実施しながらリアルタイムでスクラッチの有無を検出する。
【0057】
スクラッチ検出装置94Bのハウジング96´はその下方が小径ハウジング97に形成されていて、ガラス等のレーザビーム透過窓144を有する隔壁142によりウエーハ11と小径ハウジング97との間に水充填室146が画成されている。
【0058】
管路148の一端148aは水源150に接続され、他端148bは水充填室146に開口している。152は切替弁、154は水圧計である。小径ハウジング97の先端97aとウエーハ11との間の間隔は約0.5〜1mmに維持するのが好ましい。
【0059】
尚、隔壁142と小径ハウジング97の先端97aとを同一面に配置し、水充填室という概念を無くしてウエーハ11と隔壁142との間に連続的に水を供給するようにしても良い。
【0060】
本実施形態のスクラッチ検出装置94Bでウエーハ11に形成されたスクラッチの検出を行うには、まず、水源150から水充填室146に水を供給し、水充填室146を水で充満する。
【0061】
ウエーハ11と小径ハウジング97の先端97aとの間には僅かな隙間があるため、この隙間から流れ出た水を常に補給するために水源150から常に一定量の水を水充填室146に供給する。
【0062】
この状態で、チャックテーブル54によりウエーハ11を回転させながらLD98からレーザビームを出射する。このレーザビームの一部はハーフミラー132により反射されて窓144及び水充填室146内の水を通してウエーハ11に照射される。
【0063】
ウエーハ11の研削は研削水を供給しながら実施されるため、研削を実行するとウエーハ11の研削面は汚染されるが、本実施形態では常に水充填室146内に水を満たしながらスクラッチの検出を行うため、水充填室146内に充填された水はあまり汚染されていないきれいな水である。
【0064】
よって、ウエーハ11が鏡面加工されているため、ウエーハ11に照射されたレーザビームはそのほとんどが入射ビームと同一光路に反射され、窓144を透過した後その一部がハーフミラー132を透過し、集光レンズ102で集光されてピンホールマスク106のピンホール104を介してフォトディテクタ108に入力される。フォトディテクタ108で入射光がその光量に応じて電流値に変換され、図10に示したスクラッチ判定部110´に入力される。
【0065】
ウエーハ11上にスクラッチがあると、上述した第2実施形態と同様に、照射されたレーザビームがスクラッチにより大きく散乱され、フォトディテクタ108に入力される反射光が少なくなるため、図10に示した谷部138,140のように電流値が急激に減少する。よって、この電流値の急激な減少によりスクラッチ有りと判定される。
【0066】
スクラッチ無しと判定された場合には、図10にブロック124で示すウエーハ洗浄工程を遂行する。すなわち、チャックテーブル54をウエーハ搬入・搬出領域に位置付けてから、チャックテーブル54に保持されているウエーハの吸引保持を解除し、ウエーハをウエーハ搬出手段84により洗浄手段86に搬送する。
【0067】
洗浄手段86に搬送されたウエーハは、ここで洗浄されるとともにスピン乾燥される。次いで、ウエーハがウエーハ搬送手段78により第2のウエーハカセット76の所定位置に収納される。
【0068】
スクラッチ有りと判定された場合には、スクラッチの検出無しと判定されるまでウエーハ11の研削を続行する。最終的にスクラッチ無しと判定されると、研削を終了してウエーハ洗浄工程を遂行する。
【0069】
尚、本実施形態のスクラッチ検出装置94Bによるウエーハのスクラッチの検出は、ウエーハ11の研削中常に行う必要はなく、ウエーハ研削の仕上げ工程で実施するようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】半導体ウエーハの表側斜視図である。
【図2】保護テープが貼着された半導体ウエーハの裏面側斜視図である。
【図3】本発明実施形態に係る研削装置の外観斜視図である。
【図4】チャックテーブルユニット及びチャックテーブル送り機構の斜視図である。
【図5】下側から見た研削ホイールの斜視図である。
【図6】研削ホイールの縦断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るスクラッチ検出装置の縦断面図である。
【図8】第1実施形態のスクラッチ判定部及びスクラッチ判定後の工程を示すブロック図である。
【図9】本発明第2実施形態のスクラッチ検出装置の縦断面図である。
【図10】第2実施形態のスクラッチ判定部及びスクラッチ判定後の工程を示すブロック図である。
【図11】本発明第3実施形態のスクラッチ検出装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0071】
2 研削装置
11 半導体ウエーハ
16 研削手段(研削ユニット)
24 スピンドル
26 サーボモータ
30 研削ホイール
34 研削砥石
50 チャックテーブルユニット
54 チャックテーブル
94,94A,94B スクラッチ検出装置
96 レーザダイオード(LD)
100 対物レンズ
102 集光レンズ
106 ピンホールマスク
108 フォトディテクタ
110,110´ スクラッチ判定部
132 ハーフミラー
142 隔壁
144 レーザビーム透過窓
146 水充填室
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ研削面のスクラッチを検出可能なスクラッチ検出装置及び該スクラッチ検出装置を具備した研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の数多くのデバイスが表面に形成され、且つ個々のデバイスが分割予定ライン(ストリート)によって区画された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、ダイシング装置によって分割予定ラインを切削して個々のデバイスに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ウエーハの裏面を研削する研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削砥石が配設された研削ホイールを回転可能に支持する研削手段と、研削領域に研削水を供給する研削水供給手段とを具備しており、ウエーハを所定の厚みに加工することができる。
【0004】
ところで、ウエーハの厚みが100μm以下、更には50μm以下と薄くなると、ウエーハの裏面に生じた研削歪がデバイスの抗折強度を低下させる原因にもなり、抗折強度を向上させるためにエッチング等で歪を除去すると、今度はウエーハの内部で遊動する重金属を裏面側に保持するゲッタリング効果がなくなりデバイスの品質を著しく低下させることになる。
【0005】
そこで、本出願人は、主に仕上げ研削用砥石として、研削歪を抑制して抗折強度を維持できるとともに、ゲッタリング効果も維持できるビトリファイドボンド砥石を特開2006−1007号公報で提案した。
【特許文献1】特開2006−1007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に開示されたビトリファイドボンド砥石を使用して研削したウエーハの研削面を観察すると、40〜50枚に1枚の割合でスクラッチの入ったウエーハが存在することがあり、かかるウエーハにおいてはスクラッチの入った部分での抗折強度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出可能なスクラッチ検出装置及び該スクラッチ検出装置を具備した研削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明によると、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削ホイールを有する研削手段とを備えた研削装置であって、ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出手段を更に具備し、該スクラッチ検出手段は、ウエーハに対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタと、光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、該フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段とを含むことを特徴とする研削装置が提供される。
【0009】
好ましくは、チャックテーブルは、ウエーハを着脱する着脱位置とウエーハを研削手段で研削する研削位置との間で移動可能であり、スクラッチ検出手段は着脱位置又は研削位置の何れかに配設されている。
【0010】
請求項3記載の発明によると、ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出装置であって、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該ウエーハに対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタと、光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、該フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際、スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段と、を具備したことを特徴とするスクラッチ検出装置が提供される。
【0011】
好ましくは、集光部は、対物レンズと、対物レンズによって取り込まれた反射光を集光する集光レンズと、集光レンズの焦点の位置にピンホールが位置付けられるピンホールマスクとから構成され、フォトディテクタはピンホールを通過した光ビームを捉えるように配設されている。
【0012】
代替案として、好ましくは、前記光ビーム照射手段は、レーザダイオードと、該レーザダイオードから出射されたレーザビームの一部をウエーハの研削面に向けて反射するハーフミラーとから構成され、前記集光手段は、前記ウエーハの研削面により反射された反射光の一部を透過する前記ハーフミラーと、該ハーフミラーを透過した反射光を集光する集光レンズと、該集光レンズの焦点の位置にピンホールが位置付けられるピンホールマスクとから構成され、前記フォトディテクタは該ピンホールを通過した光ビームを捉えるように配設されている。
【0013】
好ましくは、前記ハーフミラーで反射されたレーザビームが透過する透過窓を有しウエーハ側に開放した枠体と、該枠体内に水を供給する水供給手段とを更に具備し、該枠体とウエーハとで仕切られる空間が水で満たされている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の研削装置によると、研削装置にスクラッチ検出手段を設けてウエーハの研削面からスクラッチを検出して、スクラッチが有る場合は研削を続行し、又はスクラッチ除去研削を遂行してスクラッチの無いウエーハを次工程に搬送するようにしたので、スクラッチの無いウエーハを効率良く生産することができる。
【0015】
また、スクラッチ検出時に検出領域が水没している水没式のスクラッチ検出装置によると、スクラッチ検出装置をウエーハの研削位置に位置付けて、ウエーハの研削時にリアルタイムでスクラッチの有無を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明実施形態のウエーハの研削方法及び研削装置を図面を参照して詳細に説明する。図1は所定の厚さに加工される前の半導体ウエーハの斜視図である。図1に示す半導体ウエーハ11は、例えば厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面11aに複数のストリート13が格子状に形成されているとともに、該複数のストリート13によって区画された複数の領域にIC,LSI等のデバイス15が形成されている。
【0017】
このように構成された半導体ウエーハ11は、デバイス15が形成されているデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周余剰領域19を備えている。また、半導体ウエーハ11の外周には、シリコンウエーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチ21が形成されている。
【0018】
半導体ウエーハ11の表面11aには、保護テープ貼着工程により保護テープ23が貼着される。従って、半導体ウエーハ11の表面11aは保護テープ23によって保護され、図2に示すように裏面11bが露出する形態となる。
【0019】
以下、このように構成された半導体ウエーハ11の裏面11bを所定厚さに研削する研削装置2を、図3を参照して説明する。研削装置2のハウジング4は、水平ハウジング部分6と、垂直ハウジング部分8から構成される。
【0020】
垂直ハウジング部分8には上下方向に伸びる1対のガイドレール12,14が固定されている。この一対のガイドレール12,14に沿って研削手段(研削ユニット)16が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット16は支持部20を介して一対のガイドレール12,14に沿って上下方向に移動する移動基台18に取り付けられている。
【0021】
研削ユニット16は、支持部20に取り付けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22中に回転可能に収容されたスピンドル24と、スピンドル24を回転駆動するサーボモータ26を含んでいる。
【0022】
図6に最も良く示されるように、スピンドル24の先端部にはマウンター28が固定されており、このマウンター28には研削ホイール30がねじ止めされている。例えば、研削ホイール30はホイール基台32の自由端部に粒径0.3〜1.0μmのダイヤモンド砥粒をビトリファイドボンドで固めた複数の研削砥石34が固着されて構成されている。よって、研削面は鏡面となる。
【0023】
研削手段(研削ユニット)16にはホース36を介して研削水が供給される。好ましくは、研削水としては純水が使用される。図6に示すように、ホース36から供給された研削水が、スピンドル24に形成された研削水供給穴38、マウンター28に形成された空間40及び研削ホイール30のホイール基台32に形成された複数の研削水供給ノズル42を介して研削砥石34及びチャックテーブル54に保持されたウエーハ11に供給される。
【0024】
図3を再び参照すると、研削装置2は、研削ユニット16を一対の案内レール12,14に沿って上下方向に移動する研削ユニット送り機構44を備えている。研削ユニット送り機構44は、ボールねじ46と、ボールねじ46の一端部に固定されたパルスモータ48から構成される。パルスモータ48をパルス駆動すると、ボールねじ46が回転し、移動基台18の内部に固定されたボールねじ46のナットを介して移動基台18が上下方向に移動される。
【0025】
水平ハウジング部分6の凹部10には、チャックテーブルユニット50が配設されている。チャックテーブルユニット50は、図4に示すように、支持基台52と、支持基台52に回転自在に配設されたチャックテーブル54を含んでいる。チャックテーブルユニット50は更に、チャックテーブル54を挿通する穴を有したカバー56を備えている。
【0026】
チャックテーブルユニット50は、チャックテーブル移動機構58により研削装置2の前後方向に移動される。チャックテーブル移動機構58は、ボールねじ60と、ボールねじ60のねじ軸62の一端に連結されたパルスモータ64から構成される。
【0027】
パルスモータ64をパルス駆動すると、ボールねじ60のねじ軸62が回転し、このねじ軸62に螺合したナットを有する支持基台52が研削装置2の前後方向に移動する。よって、チャックテーブル54もパルスモータ64の回転方向に応じて、前後方向に移動する。
【0028】
図3に示されているように、図4に示した一対のガイドレール66,68及びチャックテーブル移動機構58は蛇腹70,72により覆われている。すなわち、蛇腹70の前端部は凹部10を画成する前壁に固定され、後端部がカバー56の前端面に固定されている。また、蛇腹72の後端は垂直ハウジング部分8に固定され、その前端はカバー56の後端面に固定されている。
【0029】
ハウジング4の水平ハウジング部分6には、第1のウエーハカセット74と、第2のウエーハカセット76と、ウエーハ搬送手段78と、ウエーハ仮載置手段80と、ウエーハ搬入手段82と、ウエーハ搬出手段84と、洗浄手段86が配設されている。更に、ハウジング4の前方にはオペレータが研削条件等を入力する操作手段88が設けられている。
【0030】
また、水平ハウジング部分6の概略中央部には、チャックテーブル54を洗浄する洗浄水噴射ノズル90が設けられている。この洗浄水噴射ノズル90は、チャックテーブルユニット54がウエーハ搬入・搬出領域に位置づけられた状態において、チャックテーブル54に保持された研削加工後のウエーハに向けて洗浄水を噴出する。
【0031】
チャックテーブルユニット50は、チャックテーブル移動機構58のパルスモータ64をパルス駆動することにより、図3に示した装置奥側の研削領域と、ウエーハ搬入手段82からウエーハを受け取りウエーハ搬出手段84にウエーハを受け渡す手前側のウエーハ搬入・搬出領域との間で移動される。
【0032】
ウエーハ搬入・搬出領域(ウエーハ着脱領域)の上方にはスクラッチ検出装置94が配設されている。スクラッチ検出装置94は、図7に示すように、ハウジング96と、ハウジング96の先端部に取り付けられたレーザダイオード(LD)98と、ウエーハ11からの反射光をコリメートビームにする対物レンズ100と、集光レンズ102と、集光レンズ102の焦点位置にピンホール104が位置付けられたピンホールマスク106と、フォトディテクタ108と、フォトディテクタ108に接続されたスクラッチ判定部110とから構成される。
【0033】
LD98から出射されたレーザビームが対物レンズ100直下のウエーハ11に照射されるようにLD98がハウジング96に取り付けられている。図示の実施形態では、2個のLD98が設けられているが、LD98は1個でも又は3個以上配設するようにしても良い。
【0034】
このように構成された研削装置2の研削作業について以下に説明する。第1のウエーハカセット74中に収容されるウエーハは、保護テープが表面側(回路が形成されている側の面)に装着された半導体ウエーハであり、従ってウエーハは裏面が上側に位置する状態で第1のカセット74中に収容されている。このように複数の半導体ウエーハを収容した第1のウエーハカセット74は、ハウジング4の所定のカセットを搬入領域に載置される。
【0035】
そして、カセット搬入領域に載置された第1のウエーハカセット74に収容されていた研削加工前の半導体ウエーハが全て搬出されると、空のウエーハカセット74に変えて複数個の半導体ウエーハを収容した新しい第1のウエーハカセット74が手動でカセット搬入領域に載置される。
【0036】
一方、ハウジング4の所定のカセット搬出領域に載置された第2のウエーハカセット76に所定枚数の研削加工後の半導体ウエーハが搬入されると、かかる第2のウエーハカセット76は手動で搬出されて、新しい空の第2のウエーハカセット76がカセット搬出領域に載置される。
【0037】
第1のウエーハカセット74に収容された半導体ウエーハは、ウエーハ搬送手段78の上下動作及び進退動作により搬送され、ウエーハ仮載置手段80に載置される。ウエーハ仮載置手段80に載置されたウエーハは、ここで中心合わせが行われた後にウエーハ搬入手段82の旋回動作によって、ウエーハ搬入・搬出領域に位置せしめられているチャックテーブルユニット50のチャックテーブル54に載置され、チャックテーブル54によって吸引保持される。
【0038】
このようにチャックテーブル54がウエーハを吸引保持したならば、チャックテーブル移動機構58を作動して、チャックテーブルユニット54を移動して装置後方の研削領域に位置づける。
【0039】
チャックテーブルユニット50が研削領域に位置づけられると、チャックテーブル54に保持されたウエーハの中心が研削ホイール30の外周円を僅かに超えた位置に位置づけられる。
【0040】
次に、チャックテーブル54を例えば100〜300rpm程度で回転し、サーボモータ26を駆動して研削ホイール30を4000〜7000rpmで回転するとともに、研削ユニット送り機構44のパルスモータ48を正転駆動して研削ユニット16を下降させる。
【0041】
そして、図6に示すように、研削ホイール30の研削砥石34をチャックテーブル54上のウエーハ11の裏面(被研削面)に所定の荷重で押圧することにより、ウエーハ11の裏面が研削される。このようにして所定時間研削することにより、ウエーハ11が所定の厚さに研削される。
【0042】
研削が終了すると、チャックテーブル移動機構58を駆動してチャックテーブル54を装置手前側のウエーハ搬入・搬出領域に位置付ける。チャックテーブル54がウエーハ搬入・搬出領域に位置付けられたならば、洗浄水噴射ノズル90から洗浄水を噴射して、チャックテーブル54に保持されている研削加工されたウエーハ11の被研削面(裏面)を洗浄する。
【0043】
このようにウエーハ11の被研削面(裏面)を洗浄した後、チャックテーブル54を回転しながらLD98を駆動してウエーハ11にレーザビームを照射する。ウエーハ11の研削面は鏡面となっているため、ほとんどの反射光は鏡面加工されたウエーハ11により反射されて対物レンズ100に入らないが、僅かばかりの散乱光が符号112で示すように対物レンズ100に入射し、対物レンズ100でコリメートビームに変換される。
【0044】
このコリメートビームは集光レンズ102により集光されて、ピンホールマスク106のピンホール104を通してフォトディテクタ108に入力され、入力された光量に応じて電流値に変換されてスクラッチ判定部110に出力される。
【0045】
スクラッチ判定部110では、図8に示すように、この散乱光はバックグラウンド電流114として検出される。LD98から出射されたレーザビームがスクラッチを検出すると、レーザビームはスクラッチにより大きく散乱されて対物レンズ100に入力される。
【0046】
よって、スクラッチ判定部110では、スパイク電流118,120として検出される。116はスクラッチ有り無しを判定するための所定の閾値であり、これより電流値が大きい場合にはスクラッチ有りと判定し、小さい場合にはスクラッチ無しと判定する。
【0047】
スクラッチ判定部110でブロック122に示すようにスクラッチ無しと判定されると、ブロック124に示すウエーハ洗浄工程を遂行する。すなわち、チャックテーブル54に保持されているウエーハの吸引保持が解除されてから、ウエーハはウエーハ搬出手段84により洗浄手段86に搬送される。
【0048】
洗浄手段86に搬送されたウエーハは、ここで洗浄されると共にスピン乾燥される。次いで、ウエーハがウエーハ搬送手段78により第2のウエーハカセット76の所定位置に収納される。
【0049】
スクラッチ判定部110でブロック126で示すようにスクラッチ有りと判定された場合には、ブロック128のスクラッチ除去研削工程を実施する。すなわち、チャックテーブル移動機構58を駆動してチャックテーブル54を再度研削領域に位置付け、研削ホイール30による粒径約1μm研削を実施する。
【0050】
研削が終了したウエーハは、チャックテーブル移動機構58により再度ウエーハ搬入・搬出領域に位置付けられて、ブロック130のスクラッチ検出工程が実施される。すなわち、チャックテーブル54によりウエーハ11を回転させながらLD98からレーザビームをウエーハ11に照射して、スクラッチ判定部110でスクラッチの有り無しを再度判定する。そして、最終的にスクラッチ無しと判定された場合に、ブロック124のウエーハ洗浄工程を実施する。
【0051】
図9を参照すると、本発明第2実施形態のスクラッチ検出装置94Aの縦断面図が示されている。本実施形態では、レーザダイオード(LD)98から出射されたレーザビームをハーフミラー132で反射させてチャックテーブル54により回転されているウエーハ11に入射する。
【0052】
ウエーハ11の研削面(裏面)は鏡面加工されているので、ほとんどのレーザビームはウエーハ11により反射されて、反射された光量の概略半分がハーフミラー132を透過し、集光レンズ102により集光されてピンホールマスク106のピンホール104を通してフォトディテクタ108に入力され、フォトディテクタ108で電流値に変換されてスクラッチ判定部110´に入力される。
【0053】
図10に示したスクラッチ判定部110´では、ウエーハ11に照射されたレーザビームのほとんどが反射されるため、比較的電流値の高いバックグランド電流134として観察される。
【0054】
ウエーハ11の研削面に形成されたスクラッチにレーザビームが照射されると、レーザビームはスクラッチにより散乱されるため、ウエーハ11により反射されてフォトディテクタ108に入力される戻り光は少なくなる。よって、スクラッチ判定部136では、電流値の谷部138,140として検出される。
【0055】
136はスクラッチを検出するための所定の閾値であり、これより電流値が大きい場合にはスクラッチ無しと判定され、小さい場合にはスクラッチ有りと判定される。本実施形態のこれ以降の動作は、図8を参照して説明した第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0056】
図11を参照すると、本発明第3実施形態のスクラッチ検出装置94Bの縦断面図が示されている。本実施形態のスクラッチ検出装置94Bは、ウエーハ11がチャックテーブル54により研削領域に位置付けられて、ウエーハ11の研削を実施しながらリアルタイムでスクラッチの有無を検出する。
【0057】
スクラッチ検出装置94Bのハウジング96´はその下方が小径ハウジング97に形成されていて、ガラス等のレーザビーム透過窓144を有する隔壁142によりウエーハ11と小径ハウジング97との間に水充填室146が画成されている。
【0058】
管路148の一端148aは水源150に接続され、他端148bは水充填室146に開口している。152は切替弁、154は水圧計である。小径ハウジング97の先端97aとウエーハ11との間の間隔は約0.5〜1mmに維持するのが好ましい。
【0059】
尚、隔壁142と小径ハウジング97の先端97aとを同一面に配置し、水充填室という概念を無くしてウエーハ11と隔壁142との間に連続的に水を供給するようにしても良い。
【0060】
本実施形態のスクラッチ検出装置94Bでウエーハ11に形成されたスクラッチの検出を行うには、まず、水源150から水充填室146に水を供給し、水充填室146を水で充満する。
【0061】
ウエーハ11と小径ハウジング97の先端97aとの間には僅かな隙間があるため、この隙間から流れ出た水を常に補給するために水源150から常に一定量の水を水充填室146に供給する。
【0062】
この状態で、チャックテーブル54によりウエーハ11を回転させながらLD98からレーザビームを出射する。このレーザビームの一部はハーフミラー132により反射されて窓144及び水充填室146内の水を通してウエーハ11に照射される。
【0063】
ウエーハ11の研削は研削水を供給しながら実施されるため、研削を実行するとウエーハ11の研削面は汚染されるが、本実施形態では常に水充填室146内に水を満たしながらスクラッチの検出を行うため、水充填室146内に充填された水はあまり汚染されていないきれいな水である。
【0064】
よって、ウエーハ11が鏡面加工されているため、ウエーハ11に照射されたレーザビームはそのほとんどが入射ビームと同一光路に反射され、窓144を透過した後その一部がハーフミラー132を透過し、集光レンズ102で集光されてピンホールマスク106のピンホール104を介してフォトディテクタ108に入力される。フォトディテクタ108で入射光がその光量に応じて電流値に変換され、図10に示したスクラッチ判定部110´に入力される。
【0065】
ウエーハ11上にスクラッチがあると、上述した第2実施形態と同様に、照射されたレーザビームがスクラッチにより大きく散乱され、フォトディテクタ108に入力される反射光が少なくなるため、図10に示した谷部138,140のように電流値が急激に減少する。よって、この電流値の急激な減少によりスクラッチ有りと判定される。
【0066】
スクラッチ無しと判定された場合には、図10にブロック124で示すウエーハ洗浄工程を遂行する。すなわち、チャックテーブル54をウエーハ搬入・搬出領域に位置付けてから、チャックテーブル54に保持されているウエーハの吸引保持を解除し、ウエーハをウエーハ搬出手段84により洗浄手段86に搬送する。
【0067】
洗浄手段86に搬送されたウエーハは、ここで洗浄されるとともにスピン乾燥される。次いで、ウエーハがウエーハ搬送手段78により第2のウエーハカセット76の所定位置に収納される。
【0068】
スクラッチ有りと判定された場合には、スクラッチの検出無しと判定されるまでウエーハ11の研削を続行する。最終的にスクラッチ無しと判定されると、研削を終了してウエーハ洗浄工程を遂行する。
【0069】
尚、本実施形態のスクラッチ検出装置94Bによるウエーハのスクラッチの検出は、ウエーハ11の研削中常に行う必要はなく、ウエーハ研削の仕上げ工程で実施するようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】半導体ウエーハの表側斜視図である。
【図2】保護テープが貼着された半導体ウエーハの裏面側斜視図である。
【図3】本発明実施形態に係る研削装置の外観斜視図である。
【図4】チャックテーブルユニット及びチャックテーブル送り機構の斜視図である。
【図5】下側から見た研削ホイールの斜視図である。
【図6】研削ホイールの縦断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るスクラッチ検出装置の縦断面図である。
【図8】第1実施形態のスクラッチ判定部及びスクラッチ判定後の工程を示すブロック図である。
【図9】本発明第2実施形態のスクラッチ検出装置の縦断面図である。
【図10】第2実施形態のスクラッチ判定部及びスクラッチ判定後の工程を示すブロック図である。
【図11】本発明第3実施形態のスクラッチ検出装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0071】
2 研削装置
11 半導体ウエーハ
16 研削手段(研削ユニット)
24 スピンドル
26 サーボモータ
30 研削ホイール
34 研削砥石
50 チャックテーブルユニット
54 チャックテーブル
94,94A,94B スクラッチ検出装置
96 レーザダイオード(LD)
100 対物レンズ
102 集光レンズ
106 ピンホールマスク
108 フォトディテクタ
110,110´ スクラッチ判定部
132 ハーフミラー
142 隔壁
144 レーザビーム透過窓
146 水充填室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削ホイールを有する研削手段とを備えた研削装置であって、
ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出手段を更に具備し、
該スクラッチ検出手段は、ウエーハに対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、
光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタと、光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、該フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段とを含むことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
前記チャックテーブルは、ウエーハを着脱する着脱位置とウエーハを前記研削手段で研削する研削位置との間で移動可能であり、
前記スクラッチ検出手段は該着脱位置又は該研削位置のいずれかに配設されていることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出装置であって、
ウエーハを保持するチャックテーブルと、
該ウエーハに対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、
光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタと、
光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、
該フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際、スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段と、
を具備したことを特徴とするスクラッチ検出装置。
【請求項4】
前記集光手段は、対物レンズと、該対物レンズによって取り込まれた反射光を集光する集光レンズと、該集光レンズの焦点の位置にピンホールが位置付けられるピンホールマスクとから構成され、
前記フォトディテクタは該ピンホールを通過した光ビームを捉えることを特徴とする請求項3記載のスクラッチ検出装置。
【請求項5】
前記光ビーム照射手段は、レーザダイオードと、該レーザダイオードから出射されたレーザビームの一部をウエーハの研削面に向けて反射するハーフミラーとから構成され、
前記集光手段は、前記ウエーハの研削面により反射された反射光の一部を透過する前記ハーフミラーと、該ハーフミラーを透過した反射光を集光する集光レンズと、該集光レンズの焦点の位置にピンホールが位置付けられるピンホールマスクとから構成され、
前記フォトディテクタは該ピンホールを通過した光ビームを捉えることを特徴とする請求項3記載のスクラッチ検出装置。
【請求項6】
前記ハーフミラーで反射されたレーザビームが透過する透過窓を有しウエーハ側に開放した枠体と、該枠体内に水を供給する水供給手段とを更に具備し、
該枠体とウエーハとで仕切られる空間が水で満たされていることを特徴とする請求項5記載のスクラッチ検出装置。
【請求項7】
前記ハーフミラーで反射されたレーザビームが透過する透過窓を有する枠体と、該枠体とウエーハとの間に水を供給する水供給手段とを更に具備し、
該枠体とウエーハとの間が水で満たされていることを特徴とする請求項5記載のスクラッチ検出装置。
【請求項1】
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削ホイールを有する研削手段とを備えた研削装置であって、
ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出手段を更に具備し、
該スクラッチ検出手段は、ウエーハに対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、
光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタと、光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、該フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段とを含むことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
前記チャックテーブルは、ウエーハを着脱する着脱位置とウエーハを前記研削手段で研削する研削位置との間で移動可能であり、
前記スクラッチ検出手段は該着脱位置又は該研削位置のいずれかに配設されていることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
ウエーハの研削面に生じるスクラッチを検出するスクラッチ検出装置であって、
ウエーハを保持するチャックテーブルと、
該ウエーハに対して光ビームを照射する光ビーム照射手段と、
光ビームが照射される領域の上部に配設されたフォトディテクタと、
光ビームが照射される領域からの反射光を集光して該フォトディテクタに導く集光手段と、
該フォトディテクタで検出される光量が所定の閾値を超えた際、スクラッチ有りと判定するスクラッチ判定手段と、
を具備したことを特徴とするスクラッチ検出装置。
【請求項4】
前記集光手段は、対物レンズと、該対物レンズによって取り込まれた反射光を集光する集光レンズと、該集光レンズの焦点の位置にピンホールが位置付けられるピンホールマスクとから構成され、
前記フォトディテクタは該ピンホールを通過した光ビームを捉えることを特徴とする請求項3記載のスクラッチ検出装置。
【請求項5】
前記光ビーム照射手段は、レーザダイオードと、該レーザダイオードから出射されたレーザビームの一部をウエーハの研削面に向けて反射するハーフミラーとから構成され、
前記集光手段は、前記ウエーハの研削面により反射された反射光の一部を透過する前記ハーフミラーと、該ハーフミラーを透過した反射光を集光する集光レンズと、該集光レンズの焦点の位置にピンホールが位置付けられるピンホールマスクとから構成され、
前記フォトディテクタは該ピンホールを通過した光ビームを捉えることを特徴とする請求項3記載のスクラッチ検出装置。
【請求項6】
前記ハーフミラーで反射されたレーザビームが透過する透過窓を有しウエーハ側に開放した枠体と、該枠体内に水を供給する水供給手段とを更に具備し、
該枠体とウエーハとで仕切られる空間が水で満たされていることを特徴とする請求項5記載のスクラッチ検出装置。
【請求項7】
前記ハーフミラーで反射されたレーザビームが透過する透過窓を有する枠体と、該枠体とウエーハとの間に水を供給する水供給手段とを更に具備し、
該枠体とウエーハとの間が水で満たされていることを特徴とする請求項5記載のスクラッチ検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−95903(P2009−95903A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267846(P2007−267846)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]