説明

膜パターンの形成方法、デバイスの製造方法、デバイス、電気光学装置、及び電子機器

【課題】所望位置に所望状態で機能液を供給し、膜パターンを良好に形成することができ
る膜パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】機能液を基板上に供給して膜パターンを形成する際、基板上にバンクを形成
するための感光材を塗布する工程と、膜パターンに応じて感光材を露光する工程と、露光
された感光材を現像してバンクを形成する工程と、現像により形成されたバンクの上面を
撥液性にする工程と、バンクによって区画された領域に機能液を供給する工程と、バンク
を焼成する工程とを経て形成する。現像し、バンクの上面を撥液性にした後、焼成する前
に、機能液を供給する動作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜パターンの形成方法、デバイスの製造方法、デバイス、電気光学装置、及
び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に配線パターン等の膜パターンを形成するための方法として、例えば下記特許文
献に開示されているような、液滴吐出ヘッドにより機能液の滴を基板上に供給する液滴吐
出法(インクジェット法)が提案されている。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2000−216330号公報
【特許文献3】特開2005−12181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基板上に機能液を供給して膜パターンを形成する際、機能液を基板上の所望位置に所望
状態で供給することが重要である。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、所望位置に所望状態で機能液
を供給し、膜パターンを良好に形成することができる膜パターンの形成方法を提供するこ
とを目的とする。また、その膜パターンの形成方法を用いてデバイスを製造するデバイス
の製造方法、デバイス、電気光学装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
【0006】
本発明の第1の観点によると、機能液を基板上に供給して膜パターンを形成する方法に
おいて、前記基板上にバンクを形成するための感光材を塗布する工程と、前記膜パターン
に応じて前記感光材を露光する工程と、前記露光された前記感光材を現像してバンクを形
成する工程と、前記現像により形成されたバンクの上面を撥液性にする工程と、前記バン
クによって区画された領域に前記機能液を供給する工程と、前記バンクを焼成する工程と
を有し、前記現像し、前記バンクの上面を撥液性にした後、前記焼成する前に、前記機能
液を供給する動作を行う膜パターンの形成方法が提供される。
【0007】
本発明によれば、現像してバンクを形成し、そのバンクの上面を撥液性にした後、焼成
する前に、機能液を供給する動作を行うことで、機能液を基板上の所望位置に所望状態で
供給することができる。
【0008】
本発明の膜パターンの形成方法において、前記現像により、前記基板の上面と前記バン
クの側面とをほぼ直角又は鋭角にする。これにより、バンクの側面に撥液性物質が配置さ
れることを抑え、バンクによって区画された領域に機能液で良好に供給することができる

【0009】
本発明の膜パターンの形成方法において、前記バンクの側面の撥液性物質の量を抑えた
状態で前記機能液を供給するために、前記現像した後、前記焼成する前に、前記バンクの
上面を撥液性にするための処理を行う。これにより、バンク間に供給された機能液をバン
クの側面に密着させることができる。
【0010】
本発明の膜パターンの形成方法において、フッ素を含む処理ガス雰囲気下でプラズマ処
理することで、前記バンクの上面を撥液性にする。これにより、バンクの上面を良好に撥
液性にすることができ、機能液をバンクによって区画された領域に良好に供給することが
できる。
【0011】
本発明の膜パターンの形成方法において、前記バンクはシロキサン結合を主鎖とした無
機材料を含む。これにより、バンクの上面に撥液性物質を良好に配置することができると
ともに、バンクの側面の撥液性物質の量を抑えることができ、バンクによって区画された
領域に機能液を良好に供給することができる。
【0012】
本発明の膜パターンの形成方法において、液滴吐出法を用いて前記機能液を前記基板上
に供給する。これにより、膜パターンを形成するための工程を簡略化することができると
ともに、基板上に供給する機能液の量、位置等の制御を良好に行うことができる。
【0013】
本発明の膜パターンの形成方法において、前記基板上に、前記バンクによって第1の幅
を有する第1の溝を形成するとともに、前記第1の溝に接続し、第2の幅を有する第2の
溝を形成し、前記第1の溝に前記機能液を供給し、前記第1の溝に供給された前記機能液
の自己流動によって前記機能液を前記第2の溝に供給する。これにより、第2の溝にバン
ク上より機能液を供給し難い状況であっても、機能液を第2の溝に円滑に供給することが
できる。
【0014】
本発明の膜パターンの形成方法において、前記第2の幅は前記第1の幅以下である。こ
れにより、狭い幅の第2の溝に対してバンク上より機能液を供給しなくても、広い幅の第
1の溝に機能液を供給することで、第2の溝に機能液を円滑に供給することができ、膜パ
ターンの細線化(微細化)を実現することができる。
【0015】
本発明の第2の観点によると、上記記載の形成方法により基板上に膜パターンを形成す
る工程を有するデバイスの製造方法が提供される。
【0016】
本発明によれば、所望の性能を有するデバイスを製造することができる。
【0017】
本発明のデバイスの製造方法において、前記膜パターンはスイッチング素子の少なくと
も一部を含む。これにより、スイッチング素子を良好に形成することができる。
【0018】
本発明の第3の観点によると、上記記載のデバイスの製造方法を用いて製造されたデバ
イスが提供される。また、本発明の第4の観点によると、上記記載のデバイスを備えた電
気光学装置が提供される。また、本発明の第5の観点によると、上記記載の電気光学装置
を備えた電子機器が提供される。
【0019】
本発明によれば、所望の性能を有するデバイス、電気光学装置、電子機器が提供される
。ここで、電気光学装置とは、電界により物質の屈折率を変化させて光の透過率を変化さ
せる電気光学効果を有する装置、及び電気エネルギーを光学エネルギ−に変換する装置の
少なくとも一方を含む。具体的には、電気光学装置としては、例えば、電気光学物質とし
て液晶を用いる液晶表示装置、電気光学物質として有機EL(Electro-Luminescence)を用
いる有機EL装置、無機ELを用いる無機EL装置、電気光学物質としてプラズマ用ガス
を用いるプラズマディスプレイ装置等が挙げられる。更に、電気光学装置としては、例え
ば、電気泳動ディスプレイ装置(EPD:Electrophoretic Display)、フィールドエミ
ッションディスプレイ装置(FED:電界放出表示装置:Field Emission Display)等が
挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明にお
いては、必要に応じてXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各
部材の位置関係について説明する。
【0021】
図1は膜パターンの形成方法の一実施形態を概念的に示す図である。本実施形態の膜パ
ターンの形成方法は、基板P上にバンクBを形成する工程と、バンクBによって区画され
た領域に機能液Lを供給する工程と、基板P上のバンクB及び機能液Lを焼成する工程と
を有している。バンクBによって区画された領域に機能液Lが供給され、この機能液Lが
乾燥、焼成されることにより、基板P上に膜パターンFが形成される。バンクBによって
膜パターンFの形状が規定されるため、例えば隣接するバンクB、B間の幅を狭くする等
、バンクBを適切に形成することにより、膜パターンFの微細化、細線化を実現すること
ができる。なお、膜パターンFが形成された後、基板PからバンクBを除去してもよく、
そのまま基板P上に残してもよい。
【0022】
基板Pとしては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、及び金属
板等、種々のものを用いることができる。更に、これら基板の表面に半導体膜、金属膜、
誘電体膜、有機膜等の下地膜が形成されていてもよい。
【0023】
バンクBを形成するための材料(以下、バンク材料、と称する)には、種々の材料を用
いることができる。例えば、ポリシラザン、ポリシロキサン、ポリシラン等を主成分とし
た無機質の材料を用いることができる。バンク材料が無機質の材料を含むことにより、バ
ンクBの耐熱性が高くなり、バンクBと基板Pとの間の熱膨張率の差が小さくなる。その
ため、機能液の乾燥時の熱等によるバンクBの劣化が抑制され、膜パターンFが良好な形
状で形成される。
【0024】
本実施形態においては、バンク材料として、例えば特許第2890893号公報に開示
されているような、シロキサン結合を主鎖とした材料が用いられる。例えば、バンク材料
としては、シロキサン結合を主鎖とし、−H、−OH、−(CHCHO)H、−C
OOH、−COOK、−COONa、−CONH、−SOH、−SONa、−SO
K、−OSOH、−OSONa、−OSOK、−PO、−PONa
−PO、−NO、−NH、−NHCl、−NHBr、≡HNCl、及び≡
NHBrのうち、少なくとも1つを側鎖とする材料を用いることができる。また、側鎖の
一部に、アルキル基、アルケニル基、及びアリール基のうち少なくとも1つを有する材料
であってもよい。
【0025】
バンクBを形成する方法としては、例えば、各種コート法やCVD法(化学的気相成長
法)等を用いて基板P上に上述のバンク材料からなる層を形成した後、フォトリソグラフ
ィ法等の所定のパターニング手法を用いて、所定の形状のバンクBを形成することができ
る。
【0026】
機能液(インク)Lとしては、種々のものを用いることができる。機能液とは、液中に
含まれる膜成分を膜化することによって所定の機能を有する膜(機能膜)を形成し得るも
のをいう。係る機能としては、電気・電子的機能(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘
電性等)、光学的機能(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍
光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的機能(硬磁性、
軟磁性、非磁性、透磁性等)、化学的機能(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝
導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的機能(耐摩耗性
等)、熱的機能(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体的機能(生体適合性、抗血栓
性等)等の種々の機能がある。
【0027】
本実施形態においては、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて、機能液Lの滴をバ
ンクBによって区画された領域に供給する。液滴吐出法を用いることにより、スピンコー
ト法などの他の塗布技術に比べて機能液の消費の無駄を少なくすることができる。また、
液滴吐出法は、基板上に供給する機能液の量、位置の制御を容易に行うことができる。
【0028】
本実施形態においては、機能液Lとして、配線パターンを形成するための導電性材料を
含む機能液が用いられる。これにより、基板上に導電性を有する膜パターンを形成するこ
とができる。この導電性の膜パターンは、配線として各種デバイスに適用される。
【0029】
配線パターンを形成するための機能液Lとしては、導電性微粒子を分散媒に分散させた
分散液、有機銀化合物、酸化銀ナノ粒子を溶媒(分散媒)に分散した溶液等を用いること
ができる。導電性微粒子としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのう
ちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電
導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表
面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
【0030】
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmよ
り大きいと、後述する液体吐出ヘッドのノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、
1nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーテイング剤の体積比が大きくなり、得ら
れる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0031】
分散媒としては、上述の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであ
れば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブ
タノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラ
デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロ
ナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、
またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチ
レングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチ
レングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2
−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエー
テル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−
ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極
性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出
法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物
、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を
挙げることができる。
【0032】
機能液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ま
しい。液滴吐出法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、機能
液のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/m
を超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミング
の制御が困難になる。表面張力を調整するため、機能液には、基板との接触角を大きく低
下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添
加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、機能液の基板に対する濡れ性を向上させ、
機能膜のレベリング性を改良し、機能膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものであ
る。表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有
機化合物を含んでもよい。
【0033】
機能液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出
法を用いて機能液の滴を吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺
が機能液の流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノ
ズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0034】
液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気
熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、機能液に帯電電極で電荷
を付与し、偏向電極で機能液の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。ま
た、加圧振動方式は、材料に30kg/cm 程度の超高圧を印加してノズル先端側に
機能液を送出するものであり、制御電圧をかけない場合には機能液が直進してノズルから
吐出され、制御電圧をかけると機能液に静電的な反発が起こり、機能液が飛散してノズル
から吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電
気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって機能
液を貯留した空間に可撓性の部材を介して圧力を与え、この空間から機能液を押し出して
ノズルから吐出させるものである。
【0035】
また、電気熱変換方式は、機能液を貯留した空間内に設けたヒータにより、機能液を急
激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の機能液を吐出さ
せるものである。静電吸引方式は、機能液を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに
機能液のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから機能液を引き出すもので
ある。また、この他に、電場による機能液の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ば
す方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、機能液の使用に無駄が少なく、しか
も所望の位置に所望の量の機能液を的確に供給できるという利点を有する。なお、液滴吐
出法により吐出される機能液の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0036】
図2は基板上に機能液を供給する液滴吐出装置(インクジェット装置)IJの概略構成
を示す斜視図である。図2において、液滴吐出装置IJは、基台9と、基台9上に設けら
れ、基板Pを支持可能なステージ7と、ステージ7に支持されている基板P上に機能液L
の滴を吐出する液滴吐出ヘッド1と、液滴吐出ヘッド1を移動するための駆動モータ2と
、ステージ7を移動するための駆動モータ3と、液滴吐出装置IJの動作を制御する制御
装置CONTとを備えている。
【0037】
液滴吐出ヘッド1は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッド
であり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド
1の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1は、吐出ノズ
ルより、ステージ7に支持されている基板Pに対して機能液の滴を吐出する。
【0038】
駆動モータ2は、液滴吐出ヘッド1を移動するためのものである。液滴吐出ヘッド1に
はX軸方向駆動軸4が接続されており、駆動モータ2は、駆動軸4を回転することにより
、液滴吐出ヘッド1をX軸方向に移動可能である。
【0039】
駆動モータ3は、ステージ7を移動するためのものである。ステージ7にはY軸方向駆
動軸5が接続されており、駆動モータ3は、駆動軸5を回転することにより、ステージ7
をY軸方向に移動可能である。
【0040】
制御装置CONTは、駆動モータ2、3を制御し、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持す
るステージ7とを相対的に移動しつつ、基板P上に液滴を供給する。
【0041】
また、本実施形態の液滴吐出装置IJはクリーニング機構8を備えている。クリーニン
グ機構8は、液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであり、不図示の駆動モータによ
り、Y軸方向に移動可能である。制御装置CONTは、クリーニング機構8と液滴吐出ヘ
ッド1とを相対的に移動することによって、クリーニング機構8と液滴吐出ヘッド1とを
近づけ、そのクリーニング機構8を用いて液滴吐出ヘッド1をクリーニングすることがで
きる。
【0042】
また、本実施形態の液滴吐出装置IJは、基板Pを熱処理するためのヒータ15を備え
ている。ヒータ15は、例えば基板P上の機能液に含まれる溶媒の蒸発、乾燥を行うこと
ができる。
【0043】
図3はピエゾ方式による機能液の吐出原理を説明するための図である。図3において、
機能液を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21に
は、機能液を収容するタンクを含む供給系23を介して機能液が供給される。ピエゾ素子
22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧
を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、ノズル25か
ら機能液が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子2
2の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子
22の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材
料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0044】
〔第1実施形態〕
次に、膜パターンの形成方法の第1実施形態について図4〜図6を参照しながら説明す
る。図4は本実施形態に係る膜パターンの形成方法の一例を示すフローチャート図、図5
、図6は形成手順を示す模式図である。本実施形態では、配線パターンを形成する場合を
例にして説明する。
【0045】
本実施形態に係る配線パターンの形成方法は、上述した配線パターンを形成するための
機能液を基板上に供給し、基板上に配線パターン(導電膜)を形成するものであって、基
板上にバンクを形成するためのバンク材料を塗布する工程と、配線パターンに応じてバン
ク材料からなる膜を露光する工程と、現像することでバンクを形成する工程と、現像によ
り形成されたバンクの上面を撥液性にする工程と、バンクによって区画された領域に機能
液を供給する工程と、基板上の機能液及びバンクを焼成する工程とを有している。以下、
各工程毎に詳細に説明する。本実施形態では基板Pとしてガラス基板が用いられる。
【0046】
(親液処理工程)
まず、図5(A)に示すように、バンクを形成する前に、基板Pの表面を親液性にする
親液化処理が行われる(親液化処理工程S1)。親液化処理は、基板P上に供給される機
能液が基板Pの表面に良好に濡れるようにするために行われる。親液化処理は、例えば基
板Pの表面にTiO等の親液性の高い膜を形成する、あるいは、基板Pの表面を粗面化
することで基板Pの表面を親液性にしてもよい。
【0047】
(バンク形成工程)
次に、基板P上にバンクを形成する処理が行われる。バンクは、例えばフォトリソグラ
フィ法や印刷法等、所定の手法を用いて形成される。例えば、フォトリソグラフィ法を用
いる場合には、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコ
ート等の所定の方法で、図5(B)に示すように、基板P上にバンク材料を塗布すること
によって、そのバンク材料からなる膜31が形成される(バンク膜形成工程S2)。上述
のように、本実施形態のバンク材料は、例えば特許第2890893号公報に開示されて
いるような、シロキサン結合を主鎖とした材料である。本実施形態では、膜31は、バン
ク材料をスピンコートすることで形成される。
【0048】
そして、図5(C)に示すように、バンク材料がプリべークされる(プリベーク工程S
3)。プリベークは、例えばホットプレートを用いて、95℃で2分間加熱することで行
われる。
【0049】
次に、図5(D)に示すように、マスクを用いて膜31が露光される(露光工程S4)
。マスクには、形成しようとするバンクに応じたパターンが形成されており、マスクのパ
ターンに応じた膜31上の領域に露光のための光が照射される。本実施形態では、バンク
材料として、シロキサン結合を主鎖とした材料と光酸発生剤(PAG)とを含む感光性の
材料を用いており、露光のための光を照射し、後述の現像処理を行うことで、バンク材料
を直接パターニングできるようになっている。
【0050】
(現像工程)
次に、図6(A)に示すように、現像処理が行われる(現像工程S5)。なお、現像処
理の条件は、現像液:TMAH2.38%、温度:25℃、現像時間:80秒とする。こ
れにより、バンクB、Bが形成され、バンクB、B間には凹部34が形成される。ここで
、現像により、凹部34の内側の基板Pの上面とバンクBの側面とはほぼ直角(又は鋭角
)となるように、現像条件等を含むバンク形成条件が設定されている。
【0051】
次に、必要に応じて、バンクB、B間の残渣処理を行う。残渣処理としては、フッ酸溶
液で残渣部分をエッチングするフッ酸処理を採用することができる。フッ酸処理では、バ
ンクB、Bがマスクとして機能し、バンクB、B間に形成された凹部34の底部35に残
ったバンク材料等が除去される。なお、残渣処理としては、凹部34の底部35に紫外光
を照射する紫外光(UV)照射処理、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするOプラズマ
処理などを採用することもできる。
【0052】
(撥液化処理工程)
次に、図6(B)に示すように、バンクBの上面を撥液性する撥液化処理が行われる(
撥液化処理工程S6)。撥液化処理としては、例えば大気雰囲気中でテトラフルオロメタ
ンを処理ガスとするプラズマ処理法(CFプラズマ処理法)を採用することができる。
なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(四フッ化炭素)に限らず、他のフルオ
ロカーボン系のガスを用いることもできる。このような撥液化処理を行なうことにより、
バンクBの上面にフッ素基が導入され、バンクBの上面に高い撥液性が付与される。
【0053】
図7はCFプラズマ処理する際に用いるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図で
ある。図7に示すプラズマ処理装置は、交流電源141に接続された電極142と、接地
電極であるテーブル140とを有している。テーブル140は基板Pを支持しつつY軸方
向に移動可能となっている。電極42の下面には、移動方向と直交するX軸方向に延在す
る2本の平行な放電発生部144、144が突設されているとともに、放電発生部144
を囲むように誘電体部材145が設けられている。誘電体部材145は放電発生部144
の異常放電を防止するものである。そして、誘電体部材145を含む電極142の下面は
略平面状となっており、放電発生部144及び誘電体部材145と基板Pとの間には僅か
な空間(放電ギャップ)が形成されるようになっている。また、電極142の中央にはX
軸方向に細長く形成された処理ガス供給部の一部を構成するガス噴出口146が設けられ
ている。ガス噴出口146は、電極内部のガス通路147及び中間チャンバ148を介し
てガス導入口149に接続している。
【0054】
ガス通路147を通ってガス噴出口146から噴射された処理ガスを含む所定ガスは、
前記空間の中を移動方向(Y軸方向)の前方及び後方に分かれて流れ、誘電体部材145
の前端及び後端から外部に排気される。これと同時に、交流電源141から電極142に
所定の電圧が印加され、放電発生部144、144とテーブル140との間で気体放電が
発生する。そして、この気体放電により生成されるプラズマで所定ガスの励起活性種が生
成され、放電領域を通過する基板Pの上に形成されたバンク膜31の表面全体が連続的に
処理される。
【0055】
所定ガスは、処理ガスである四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)と、大気圧近傍の
圧力下で放電を容易に開始させ且つ安定に維持するためのヘリウム(He)、アルゴン(
Ar)等の希ガスや窒素(N)等の不活性ガスとを混合したものを用いることができる

【0056】
本実施形態においては、バンクBは、シロキサン結合を主鎖とした無機材料であり、凹
部34の内側の基板Pの上面とバンクBの側面とはほぼ直角(又は鋭角)となっており、
CFプラズマ処理法により、バンクBの上面にはフッ素基が円滑に導入されるが、バン
クBの側面(内側面)にはフッ素基が導入され難くなっている。すなわち、シロキサン結
合を主鎖とした材料は、比較的フッ素基が導入され難い材料であり、また、基板Pの上面
とバンクBの側面とが直角であると、バンクBに対して上方から供給されるフッ素基(フ
ッ素を含む処理ガス)がバンクBの側面に導入され難くなっている。したがって、本実施
形態においては、バンクBに対して上方から供給されるフッ素基(フッ素を含む処理ガス
)はバンクBの上面に円滑に導入されるものの、バンクBの側面には導入され難くなって
いる。そのため、機能液を供給する前において、バンクBの側面の撥液性物質(フッ素基
)の量は抑えられ、撥液性が抑えられた状態となっている。
【0057】
(機能液供給工程)
次に、図2を参照して説明したような液滴吐出装置IJを用いて、配線パターンを形成
するための機能液Lを、基板P上のバンクB、Bによって区画された領域、すなわちバン
クB、B間の凹部34に供給(吐出)する(機能液供給工程S7)。機能液供給工程では
、図6(C)に示すように、液滴吐出ヘッド1から配線パターンを形成するための材料を
含む機能液Lを滴にして吐出する。吐出された液滴は、基板P上のバンクB、B間の凹部
34を満たす。
【0058】
液滴が供給される凹部34はバンクB、Bに囲まれているので、液滴が所定位置以外に
拡がることを阻止することができる。また、上述の撥液化処理工程において、膜31の上
面(バンクB、Bの上面)は撥液性となっている。したがって、バンクB、B間の凹部3
4に向けて吐出された機能液の一部が、凹部34から外れてバンクBの上面にかかったと
しても、撥液性を有するバンクBの上面で弾かれて凹部34に流れ込むことができる。ま
た、上述のように、バンクBの上面には撥液性が付与されているが、バンクBの側面の撥
液性物質(フッ素基)の量が抑えられているので、すなわちバンクBの側面の撥液性は低
いので、凹部34に供給された機能液は、凹部34の側面に良好に濡れることができる。
また、底部35にも撥液性は付与されていないので、凹部34に供給された機能液Lは、
凹部34全体を良好に満たすことができる。これにより、バンクB、Bによって区画され
た領域(すなわち凹部34)は機能液で均一に満たされる。
【0059】
なお、凹部34に機能液Lを供給した後、焼成工程の前に、基板P全体に露光処理を施
すようにしてもよい。これにより、バンク中に残留している光酸発生剤(PAG)を反応
(除去)することができ、例えば光酸発生剤(PAG)に起因してバンクBが着色してい
る場合でも、その色を消すことができる。
【0060】
(焼成工程)
そして、図6(D)に示すように、基板上の機能液及びバンクを焼成する(焼成工程S
8)。焼成を行うことにより、基板上の機能液の膜に導電性を発現させるとともに、バン
クB、Bを硬化させる。
【0061】
焼成を行うことにより、機能液の溶媒(分散媒)が除去され、基板P上の機能液Lの膜
は、図6(D)に示すように、導電性を有する膜パターンFに変換される。また、機能液
Lの導電性材料が例えば有機銀化合物の場合、熱処理を行い、有機銀化合物の有機分を除
去し、銀粒子を残留させることによって、導電性が発現される。
【0062】
以上説明したように、バンクBを形成するために膜31を現像し、バンクBの上面を撥
液性にした後、焼成する前に、機能液Lを凹部34に供給するようにしたので、凹部34
の内側に、機能液Lを円滑に満たすことができる。
【0063】
例えば、膜31を露光し、現像することによってバンクBを形成し、そのバンクBを焼
成した後、バンクBに対してCFプラズマ処理を施し、その後、凹部34に機能液Lを
供給する場合について考える。図8(A)の模式図に示すように、露光後の膜31を現像
した後、焼成することにより、焼成時の熱に起因して、凹部34の内側の基板Pの上面と
バンクBの内側面とが鈍角となる可能性がある。すなわち、焼成により、バンクB、B間
の凹部34が、上方に向かって漸次拡がるテーパ状となる可能性がある。そのような状態
で、バンクBの上面を撥液性にするためにCFプラズマ処理を施した場合、バンクBの
内側面は斜め上方に向いているため、図8(B)の模式図に示すように、そのバンクBの
内側面にも多くのフッ素基が導入される可能性がある。そのようなバンクB、B間に対し
て機能液Lを供給した場合、図8(C)の模式図に示すように、バンクB、B間に供給さ
れた機能液Lは、撥液性を有するバンクBの内側面に良好に密着できなくなる(良好に濡
れなくなる)可能性がある。
【0064】
本実施形態では、バンクBの内側面のフッ素基の量を抑えた状態で機能液Lを供給する
ために、現像した後、焼成する前に、バンクBの上面を撥液性にするための処理を行って
いる。図9(A)の模式図に示すように、現像直後においては、凹部34の内側の基板P
の上面とバンクBの内側面とはほぼ直角(又は鋭角)なので、その状態でバンクBに対し
てCFプラズマ処理を施しても、バンクBの内側面にはフッ素基は導入され難く、図9
(B)の模式図に示すように、フッ素基は主に、バンクBの上面に導入される。したがっ
て、そのようなバンクB、B間に対して機能液Lを供給した場合、バンクB、B間に供給
された機能液Lは、図9(C)の模式図に示すように、撥液性を有しないバンクBの内側
面に良好に密着(良好に濡れる)ことができる。そして、その後、機能液LとバンクBと
を一緒に焼成することで、所望の膜パターンF及びバンクBを得ることができる。
【0065】
〔第2実施形態〕
次に第2実施形態について図10を参照しながら説明する。以下の説明において、上述
の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若し
くは省略する。
【0066】
本実施形態のパターン形成方法は、基板P上にバンクBを形成するバンク形成工程と、
バンクBによって区画された線状の領域Aに機能液Lを供給する機能液供給工程とを有し
ている。バンク形成工程は、上述の第1実施形態で説明した手順と同等である。
【0067】
本実施形態のパターン形成方法では、バンクBによって区画された線状領域Aに機能液
Lが供給され、この機能液Lが例えば乾燥されることにより、基板P上に線状のパターン
Fが形成される。この場合、バンクBによってパターンFの形状が規定されることから、
例えば隣接するバンクB、B間の幅を狭くするなど、バンクBを適切に形成することによ
り、パターンFの微細化や細線化が図られる。この場合、バンクBの内側面は機能液Lに
対して濡れ性の良い状態であることが望ましいが、上述したように、バンクBの内側面は
撥液化されていないので、バンクB,B間の幅を狭くしても機能液Lは毛管現象等により
バンクB,B内にスムーズに入り込むことができる。なお、パターンFが形成された後、
基板PからバンクBを除去してもよく、そのまま基板P上に残してもよい。
【0068】
また、本実施形態のパターン形成方法では、基板P上にバンクBを形成する際、バンク
Bによって区画される線状領域Aについて、一部の幅を広くする。すなわち、線状領域A
の軸方向に関する所定の位置に、他の領域の幅Wに比べて広い幅Wp(Wp>W)からな
る部分(以後、必要に応じて幅広部Asと称す)を、単数あるいは複数設ける。
【0069】
本実施形態のパターン形成方法では、バンクBによって区画された線状領域Aの幅が部
分的(幅広部As)に広く形成されていることにより、機能液Lの配置時、この幅広部A
sに機能液Lの一部が退避し、バンクBからの機能液Lの溢れが防止される。
【0070】
一般に、線状領域に液体を配置する際、液体の表面張力の作用などによってその領域に
液体が流入しにくかったり、その領域内で液体が広がりにくい場合がある。これに対して
、本実施形態のパターン形成方法では、線幅に差が設けられている部分での液体の動きが
誘因となり、線状領域Aへの機能液Lの流入あるいは線状領域A内での機能液Lの拡がり
が促進され、バンクBからの機能液Lの溢れが防止される。なお、機能液Lの配置に際し
て、線状領域Aに対する機能液の供給量が適宜設定されることは言うまでもない。
【0071】
このように、本実施形態のパターン形成方法では、機能液Lの供給時におけるバンクB
からの機能液Lの溢れが防止されることから、パターンFが所望の形状に正確に形成され
る。したがって、細い線状のパターンFを、精度よく安定的に形成することができる。
【0072】
また、本実施形態では、バンクBの形成を上述の第1実施形態で示した方法で行なって
いるため、バンクBの上面のみ撥液化し、バンクBの内側面を撥液化しない状態とするこ
とができる。このため、微細なパターンFを形成する場合でも、バンクB,B内に機能液
Lがスムーズに入り込めるようになり、膜の均一性も向上する。
【0073】
ここで、バンクBによって区画される線状領域Aにおいて、幅広部Asの幅Wpは、他
の部分の幅Wの110〜500%であるのが好ましい。これにより、機能液の配置時にお
けるバンクからの機能液の溢れが確実に防止される。なお、上記割合が110%未満であ
ると、幅の広い部分に機能液が十分に退避しないおそれがあるので好ましくない。また、
500%を超えると、基板上のスペースの有効利用を図る上で好ましくない。
【0074】
なお、線状領域Aの形状は図10に示したものに限らず他の形状でもよい。線状領域A
における幅広部Asの個数や大きさ、配置位置、配置ピッチなどはパターンの材質や幅、
あるいは要求精度に応じて適宜設定される。
【0075】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について図11及び図12を参照しながら説明する。図11において
、基板P上には、バンクBによって第1の幅H1を有する第1溝部34A(幅広領域)と
、その第1溝部34Aに接続するように第2の幅H2を有する第2溝部34B(幅狭領域
)とが形成されている。第1の幅H1は機能液の滴の飛翔径よりも大きく形成されている
。第2の幅H2は第1の幅H1よりも狭くなっている。換言すれば、第2の幅H2は第1
の幅H1以下である。また、第1溝部34Aは図11中、X軸方向に延びるように形成さ
れ、第2溝部34BはX軸方向とは異なる方向のY軸方向に延びるように形成されている
。このバンクBは第1実施形態の方法により形成されたものである。
【0076】
上述した溝部34A、34BにパターンFを形成するためには、まず、図12(A)に
示すように、パターンFを形成するための機能液Lの液滴を液滴吐出ヘッド1により第1
溝部34Aの所定位置に供給する。機能液Lの液滴を第1溝部34Aに供給するときには
、第1溝部34Aの上方より液滴吐出ヘッド1を使って液滴を第1溝部34Aに吐出する
。本実施形態においては、図12(A)に示すように、機能液Lの液滴は、第1溝部34
Aの長手方向(X軸方向)に沿って所定間隔で配置される。このとき、機能液Lの液滴は
、第1溝部34Aのうち第1溝部34Aと第2溝部34Bとが接続する接続部37近傍(
交差領域)にも供給される。
【0077】
図12(B)に示すように、第1溝部34Aに供給された機能液Lは、自己流動により
第1溝部34A内において濡れ拡がる。更に、第1溝部34Aに供給された機能液Lは、
自己流動によって第2溝部34Bにも濡れ拡がる。これにより、第2溝部34B上より直
接的に第2溝部34Bに対して液滴を吐出することなく、第2溝部34Bにも機能液Lを
満たすことができる。この場合、バンクBの側面は機能液Lに対して濡れ性の良い状態で
あることが望ましいが、本実施形態においてもバンクBの内側面が撥液化されていないの
で、バンクB,B間の幅を狭くしても機能液Lは毛管現象等によりバンクB,B内にスム
ーズに入り込むことができる。
【0078】
このように、第1溝部34Aに機能液Lを供給することで、その第1溝部34Aに供給
された機能液Lの自己流動(毛管現象)によって機能液Lを第2溝部34Bに満たすこと
ができる。したがって、狭い幅H2の第2溝部34Bに対してバンクB上より機能液Lの
液滴を吐出しなくても、広い幅H1の第1溝部34Aに機能液Lの液滴を吐出することで
、第2溝部34Bに機能液Lを円滑に供給することができる。特に、第2溝部34Bの幅
H2が狭く、液滴吐出ヘッド1より吐出された液滴径(飛翔中の液滴径)が幅H2よりも
小さい場合であっても、機能液Lの自己流動によって第2溝部34Bに機能液Lを円滑に
満たすことができる。そして、第2溝部34Bの幅H2は狭いので、機能液Lは毛管現象
によって第2溝部34Bに円滑に供給される。したがって、所望の形状を有するパターン
を形成することができる。そして、狭い幅の第2溝部34Bに機能液Lを円滑に供給でき
るので、パターンの細線化(微細化)を実現することができる。一方、第1溝部34Aの
幅H1は広いので、第1溝部34Aに対してバンクB上より機能液Lの液滴を吐出しても
、バンクBの上面38に機能液Lの一部がかかって残渣が残る不具合を回避できる。した
がって、所望の特性を発揮するパターンFを安定して形成することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、第1溝部34Aのうち第1溝部34Aと第2溝部34Bと
が接続する接続部37近傍に機能液Lが供給されるため、機能液Lが濡れ拡がる際に容易
に第2溝部34Bに流れ込ませることができ、より円滑に第2溝部34Bに機能液Lを供
給することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態では、バンクBの形成を第1実施形態で示した方法で行なっているた
め、バンクBの上面のみ撥液化し、バンクBの側面を撥液化しない状態とすることができ
る。このため、微細なパターンFを形成する場合でも、バンクB,B内に機能液Lがスム
ーズに入り込めるようになり、膜の均一性も向上する。
【0081】
第1溝部34A及び第2溝部34Bに機能液Lを供給した後、上述した第1実施形態同
様、焼成工程等を経ることによって、パターンFを形成することができる。
【0082】
なお、図13に示すように、第2溝部34Bに機能液の溶媒のみからなる機能液Laを
供給しておいてから機能液Lを上述のように供給しても良い。このように、第2溝部34
Bに機能液Lを供給しておくことによって、第2溝部34Bに機能液Lが流れ込み易くな
り、より円滑に第2溝部34Bに機能液Lを満たすことができる。なお、機能液Laは導
電性微粒子を含んでいないため導電性を有していない。このため、バンクB上に機能液L
の残渣が残った場合であってもパターンFの所望の特性を変化させることはない。
【0083】
なお、図11〜図13においては、広い幅H1を有する第1溝部34Aの延在方向と狭
い幅H2を有する第2溝部34Bの延在方向とは互いに異なっているが、図14に示すよ
うに、広い幅H1を有する第1溝部34Aの延在方向と狭い幅H2を有する第2溝部34
Bの延在方向とは同じであってもよい。その場合においても、図14(A)に示すように
、第1溝部34Aに機能液Lを供給することによって、その機能液Lの自己流動によって
、図14(B)に示すように、機能液Lを第2溝部34Bに満たすことができる。また、
この場合においては、第1溝部34Aと第2溝部34Bとの接続部37を、第1溝部34
Aから第2溝部34Bに向かって漸次窄まるようなテーパ形状にすることで、第1溝部3
4Aに供給した機能液Lを第2溝部34Bに円滑に流入させることができる。
【0084】
<薄膜トランジスタ>
本発明の膜パターンの形成方法は、図15に示すようなスイッチング素子としての薄膜
トランジスタ(TFT)及びそれに接続する配線を形成するときに適用可能である。図1
5において、TFTを有するTFT基板P上には、ゲート配線40と、このゲート配線4
0に電気的に接続するゲート電極41と、ソース配線42と、このソース配線42に電気
的に接続するソース電極43と、ドレイン電極44と、ドレイン電極44に電気的に接続
する画素電極45とを備えている。ゲート配線40はX軸方向に延びるように形成され、
ゲート電極41はY軸方向に延びるように形成されている。また、ゲート電極41の幅H
2はゲート配線40の幅H1よりも狭くなっている。これらゲート配線40及びゲート電
極41を、上述の実施形態で説明した膜パターンの形成方法で形成することができる。
【0085】
また、上述の実施形態で説明した膜パターンの形成方法を用いて、TFT(薄膜トラン
ジスタ)のゲート配線のみならず、ソース電極、ドレイン電極、画素電極などの他の構成
要素を製造することも可能である。以下、TFTを製造する方法について図16を参照し
ながら説明する。
【0086】
図16(A)に示すように、まず、洗浄したガラス基板610の上面に、1画素ピッチ
の1/20〜1/10の溝611aを設けるための第1層目のバンク611が、上述の実
施形態の方法を用いて形成される。
【0087】
第1層目のバンク形成工程に続くゲート走査電極形成工程では、バンク611で区画さ
れた領域である溝611a内を満たすように、導電性材料を含む機能液の液滴を供給する
ことで、ゲート走査電極612が形成される。ゲート走査電極612は、バンク611に
十分な撥液性が予め与えられているので、溝611aからはみ出ることなく形成される。
【0088】
以上の工程により、基板610上には、バンク611とゲート走査電極612からなる
平坦な上面を備えた第1の導電層が形成される。
【0089】
また、溝611a内に液滴を良好に満たすためには、図16(A)に示すように、この
溝611aの形状として準テーパ(吐出元に向かって開く向きのテーパ形状)を採用する
のが好ましい。これにより、吐出された液滴を十分に奥深くまで入り込ませることが可能
となる。
【0090】
次に、図16(B)に示すように、プラズマCVD法によりゲート絶縁膜613、活性
層610、及びコンタクト層609が連続して成膜される。ゲート絶縁膜613として窒
化シリコン膜、活性層610としてアモルファスシリコン膜、コンタクト層609として
n+型シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることにより形成する。
【0091】
半導体層形成工程に続く第2層目のバンク形成工程では、図16(C)に示すように、
ゲート絶縁膜613の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10でかつ溝611aと交
差する溝614aを設けるための2層目のバンク614を、フォトリソグラフィ法に基づ
いて形成する。
【0092】
上記第2層目のバンク形成工程に続くソース・ドレイン電極形成工程では、バンク61
4で区画された描画領域である溝614a内を満たすように、導電性材料を含む液滴を供
給することで、図16(D)に示すように、ゲート走査電極612に対して交差するソー
ス電極615及びソース電極616が形成される。
【0093】
また、ソース電極615及びドレイン電極616が形成された溝614aを埋めるよう
に絶縁材料617が形成される。以上の工程により、基板610上には、バンク614と
絶縁材料617からなる平坦な上面620が形成される。
【0094】
そして、絶縁材料617にコンタクトホール619を形成するとともに、上面620上
にパターニングされた画素電極(ITO)618を形成し、コンタクトホール619を介
してドレイン電極616と画素電極618とを接続することで、TFTが形成される。
【0095】
<電気光学装置>
次に電気光学装置の一例として、液晶表示装置について説明する。図17は本実施形態
に係る液晶表示装置について各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、
図18は図17のH−H’線に沿う断面図である。また、図19は液晶表示装置の画像表
示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回
路図で、図20は液晶表示装置の部分拡大断面図である。なお、以下の説明に用いた各図
においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材
毎に縮尺を異ならせてある。
【0096】
図17及び図18において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、
対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52
によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、
保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されて
なり、液晶注入口を備えず、封止材にて封止された痕跡がない構成となっている。
【0097】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成
されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子20
2がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿
って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画
像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線2
05が設けられている。また、対向基板20のコーナーの少なくとも1箇所においては、
TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材20
6が配設されている。
【0098】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上
に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bondi
ng)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して
電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、
使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super T
wisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラック
モードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を
省略する。
【0099】
また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20にお
いて、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)
、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0100】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図19に示す
ように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素1
00aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されて
おり、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電
気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この
順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎
に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続
されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、G
mをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0101】
画素電極19は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子
であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給され
る画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにし
て画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Sn
は、図18に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保
持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対
向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例え
ば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積
容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の
高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0102】
図20はボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であ
って、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板Pには、上述の実施形態で説明したよ
うな膜パターンの形成方法により、導電性膜としてのゲート配線61が形成されている。
【0103】
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリ
コン(a−Si)層からなる半導体層63が積層されている。このゲート配線部分に対向
する半導体層63の部分がチャネル領域とされている。半導体層63上には、オーミック
接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積層されて
おり、チャネル領域の中央部における半導体層63上には、チャネルを保護するためのS
iNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲート絶
縁膜62、半導体層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジスト塗
布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニングさ
れる。
【0104】
さらに、接合層64a、64b及びITOからなる画素電極19も同様に成膜するとと
もに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパターニングされる。そして
、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上にそれぞれバンク66…
を突設し、これらバンク66…間に上述した液滴吐出装置IJを用いて、銀化合物の液滴
を吐出することでソース線、ドレイン線を形成することができる。
【0105】
本実施の形態の液晶表示装置は、上記膜パターンの形成方法により、微細化や細線化が
図られた導電膜が、精度よく安定して形成されることから、高い品質や性能が得られる。
【0106】
なお、上記実施形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチン
グ素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロル
ミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無
機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子お
よび正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ
、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子であ
る。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性
材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔
注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光
フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明におけるデバイス(電気光学装
置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものである。
【0107】
図21は、液滴吐出装置IJにより一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面
図である。図21を参照しながら、有機EL装置の概略構成を説明する。
【0108】
図21において、有機EL装置401は、基板411、回路素子部421、画素電極4
31、バンク441、発光素子451、陰極461(対向電極)、および封止基板471
から構成された有機EL素子402に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動I
C(図示略)を接続したものである。回路素子部421は、アクティブ素子であるTFT
60が基板411上に形成され、複数の画素電極431が回路素子部421上に整列して
構成されたものである。そして、TFT60を構成するゲート配線61が、上述した実施
形態の配線パターンの形成方法により形成されている。
【0109】
各画素電極431間にはバンク441が格子状に形成されており、バンク441により
生じた凹部開口444に、発光素子451が形成されている。なお、発光素子451は、
赤色の発光をなす素子と緑色の発光をなす素子と青色の発光をなす素子とからなっており
、これによって有機EL装置401は、フルカラー表示を実現するものとなっている。陰
極461は、バンク441および発光素子451の上部全面に形成され、陰極461の上
には封止用基板471が積層されている。
【0110】
有機EL素子を含む有機EL装置401の製造プロセスは、バンク441を形成するバ
ンク形成工程と、発光素子451を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子
451を形成する発光素子形成工程と、陰極461を形成する対向電極形成工程と、封止
用基板471を陰極461上に積層して封止する封止工程とを有している。
【0111】
発光素子形成工程は、凹部開口444、すなわち画素電極431上に正孔注入層452
および発光層453を形成することにより発光素子451を形成するもので、正孔注入層
形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入
層452を形成するための機能液を各画素電極431上に吐出する第1吐出工程と、吐出
された機能液を乾燥させて正孔注入層452を形成する第1乾燥工程とを有している。ま
た、発光層形成工程は、発光層453を形成するための機能液を正孔注入層452の上に
吐出する第2吐出工程と、吐出された機能液を乾燥させて発光層453を形成する第2乾
燥工程とを有している。なお、発光層453は、赤、緑、青の3色に対応する材料によっ
て3種類のものが形成されるようになっており、したがって前記の第2吐出工程は、3種
類の材料をそれぞれに吐出するために3つの工程からなっている。
【0112】
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層
形成工程における第2吐出工程とで液滴吐出装置IJを用いることができる。
【0113】
図22は液晶表示装置の別の実施形態を示す図である。図22に示す液晶表示装置(電
気光学装置)901は、大別するとカラーの液晶パネル(電気光学パネル)902と、液
晶パネル902に接続される回路基板903とを備えている。また、必要に応じて、バッ
クライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル902に付設されている。
【0114】
液晶パネル902は、シール材904によって接着された一対の基板905a及び基板
905bを有し、これらの基板905bと基板905bとの間に形成される間隙、いわゆ
るセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板905a及び基板905bは、
一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板905a
及び基板905bの外側表面には偏光板906a及び偏光板906bが貼り付けられてい
る。なお、図22においては、偏光板906bの図示を省略している。
【0115】
また、基板905aの内側表面には電極907aが形成され、基板905bの内側表面
には電極907bが形成されている。これらの電極907a、907bはストライプ状ま
たは文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極90
7a、907bは、例えばITO等の透光性材料によって形成されている。基板905a
は、基板905bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子9
08が形成されている。これらの端子908は、基板905a上に電極907aを形成す
るときに電極907aと同時に形成される。したがって、これらの端子908は、例えば
ITOによって形成されている。これらの端子908には、電極907aから一体に延び
るもの、及び導電材(不図示)を介して電極907bに接続されるものが含まれる。
【0116】
回路基板903には、配線基板909上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素
子900が実装されている。なお、図示は省略しているが、半導体素子900が実装され
る部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されてい
てもよい。配線基板909は、例えばポリイミド等の可撓性を有するベース基板911の
上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン912を形成することに
よって製造されている。
【0117】
本実施形態では、液晶パネル902における電極907a、907b及び回路基板90
3における配線パターン912が、上述の実施形態で説明したような膜パターンの形成方
法によって形成されている。
【0118】
なお、前述した例はパッシブ型の液晶パネルであるが、アクティブマトリクス型の液晶
パネルとしてもよい。すなわち、一方の基板に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各
TFTに対し画素電極を形成する。また、各TFTに電気的に接続する配線(ゲート配線
、ソース配線)を上記のようにインクジェット技術を用いて形成することができる。一方
、対向する基板には対向電極等が形成されている。このようなアクティブマトリクス型の
液晶パネルにも本発明を適用することができる。
【0119】
また、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズ
マディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流す
ことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能で
ある。
【0120】
<電子機器>
次に電子機器の具体例について説明する。図23(A)は、携帯電話の一例を示した斜
視図である。図23(A)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形
態の例えば液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
【0121】
図23(B)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図
である。図23(B)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力
部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の例えば液晶表示装置を備えた液晶表
示部を示している。
【0122】
図23(C)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図23(C)におい
て、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の例えば液晶表示装置を備えた液晶
表示部を示している。
【0123】
図23(A)〜(C)に示す電子機器は、上記実施形態の表示装置を備えたものである
ので、高い品質や性能が得られる。
【0124】
なお、本実施形態の電子機器は液晶表示装置を備えるものとしたが、有機エレクトロル
ミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とす
ることもできる。
【0125】
次に、本発明の膜パターンの形成方法によって形成される膜パターンを、アンテナ回路
に適用した例について説明する。
【0126】
図24は本実施形態に係る非接触型カード媒体を示しており、非接触型カード媒体40
0は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ
408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電
容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行なう
ようになっている。
【0127】
本実施形態では、上記アンテナ回路412が、上述の実施形態で説明したような膜パタ
ーンの形成方法に基づいて形成されている。そのため、上記アンテナ回路412の微細化
や細線化が図られ、高い品質や性能を得ることができる。
【0128】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、
本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成
部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において
設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】膜パターンの形成方法を概念的に示す図である。
【図2】液滴吐出装置の概略斜視図である。
【図3】ピエゾ方式による機能液の吐出原理を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係る膜パターンの形成方法を説明するためのフローチャート図である。
【図5】膜パターンの形成手順を示す工程図である。
【図6】図5に続く工程図である。
【図7】プラズマ処理装置の一例を説明するための図である。
【図8】バンクの側面に撥液性物質が設けられている状態での機能液供給動作を説明するための模式図である。
【図9】第1実施形態の作用を説明するための模式図である。
【図10】第2実施形態に係る膜パターンの形成方法を説明するための図である。
【図11】第3実施形態に係る膜パターンの形成方法を説明するための図である。
【図12】第3実施形態に係る膜パターンの形成方法を説明するための図である。
【図13】第3実施形態に係る膜パターンの形成方法を説明するための図である。
【図14】第3実施形態に係る膜パターンの形成方法を説明するための図である。
【図15】薄膜トランジスタを有する基板の一例を示す模式図である。
【図16】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図17】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図18】図17のH−H’線に沿う断面図である。
【図19】液晶表示装置の等価回路図である。
【図20】液晶表示装置の部分拡大断面図である。
【図21】有機EL装置の部分拡大断面図である。
【図22】液晶表示装置の他の形態を示す図である。
【図23】本発明の電子機器の具体例を示す図である。
【図24】非接触型カード媒体の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0130】
B…バンク、F…膜パターン、L…機能液、P…基板、30…スイッチング素子、31
…膜、34…凹部、100…液晶表示装置、400…非接触型カード媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液を基板上に供給して膜パターンを形成する方法において、
前記基板上にバンクを形成するための感光材を塗布する工程と、
前記膜パターンに応じて前記感光材を露光する工程と、
前記露光された前記感光材を現像してバンクを形成する工程と、
前記現像により形成されたバンクの上面を撥液性にする工程と、
前記バンクによって区画された領域に前記機能液を供給する工程と、
前記バンクを焼成する工程とを有し、
前記現像し、前記バンクの上面を撥液性にした後、前記焼成する前に、前記機能液を供
給する動作を行う膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記現像により、前記基板の上面と前記バンクの側面とをほぼ直角又は鋭角にする請求
項1記載の形成方法。
【請求項3】
前記バンクの側面の撥液性物質の量を抑えた状態で前記機能液を供給するために、前記
現像した後、前記焼成する前に、前記バンクの上面を撥液性にするための処理を行う請求
項1又は2記載の形成方法。
【請求項4】
フッ素を含む処理ガス雰囲気下でプラズマ処理することで、前記バンクの上面を撥液性
にする請求項1〜3のいずれか一項記載の形成方法。
【請求項5】
前記バンクはシロキサン結合を主鎖とした無機材料を含む請求項1〜4のいずれか一項
記載の形成方法。
【請求項6】
液滴吐出法を用いて前記機能液を前記基板上に供給する請求項1〜5のいずれか一項記
載の形成方法。
【請求項7】
前記基板上に、前記バンクによって第1の幅を有する第1の溝を形成するとともに、前
記第1の溝に接続し、第2の幅を有する第2の溝を形成し、
前記第1の溝に前記機能液を供給し、前記第1の溝に供給された前記機能液の自己流動
によって前記機能液を前記第2の溝に供給する請求項1〜6のいずれか一項記載の形成方
法。
【請求項8】
前記第2の幅は前記第1の幅以下である請求項7記載の形成方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項記載の形成方法により基板上に膜パターンを形成す
る工程を有するデバイスの製造方法。
【請求項10】
前記膜パターンはスイッチング素子の少なくとも一部を含む請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
請求項8又は9記載の製造方法を用いて製造されたデバイス。
【請求項12】
請求項11記載のデバイスを備えた電気光学装置。
【請求項13】
請求項12記載の電気光学装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−103760(P2007−103760A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293322(P2005−293322)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】