説明

膜成長装置および発光ダイオード

【課題】
結晶膜のCVD装置において、成長させる基板数を多くしたい。特に有機金属原料から成長させるGaNなどのバンドギャップの大きい化合物半導体の結晶成長CVD装置において、その要求が強い。
【解決手段】
中心に排気シリンダーを備えたサセプタを積層させ、当該サセプタに基板を載せて、加熱したサセプタの間にCVDの原料ガスを通す。ガスの消費効率を向上させるとともに積層させたサセプタに枚数に比例して一度に成長させる基板の枚数が増える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード製造技術に係る。
【背景技術】
【0002】
有機金属(Metal Organic:MO)原料ガスや水素化ガス、ハロゲン化ガスを熱分解反応させて気相から薄膜を成長させる技術がある。これを化学気相成長(CVD:Chemical Vapour Deposition)という。この反応を行う装置をCVD装置という。
【0003】
特にMO原料ガスを用いるCVDをMOCVDと呼ぶ。
【0004】
反応させて成長させる膜には化合物半導体がある。例えば、GaAs、GaInP,GaN、AlN、SiCがある。とりわけ、GaNはバンドギャップエネルギーが大きく青色発光結晶材料として注目されて、これを用いた青色発光ダイオードの市場が急速に成長している。
【0005】
GaNの結晶成長にはGa元素の供給源として有機金属のTMG(トリメチルガリューム)やTEG(トリエチルガリューム)が用いられる。N元素の供給にはアンモニアNHが用いられる。
【0006】
バンドギャップの制御にはAlやInの元素を含む有機金属が用いられ、p型n型の不純物制御にはMgの有機金属やSiを含むガスが用いられる。Mgは水素と結合しているとp型を示さない特性があるので、窒素でアニールして水素を除く。このとき窒素が雰囲気ガスとして用いられる。
【0007】
基板としてサファアーが用いられる。Siウエハを基板として用いることもある。またSiの拡散を防止するためにSiCの薄膜を成長させたSi基板を用いることも可能である。
【0008】
上記基板の上に成長させたGaNなどの結晶膜を用いたLED(Light Emitting Diode)の市場が成長している。製造コストに結晶成長の工程が支配的である。これら基板の上に有機金属ガスとアンモニアガスからGaNを成長させるときの装置(MOCVD装置)のスループット(時間当たりの成長可能な基板枚数、または指標として1バッチ当たりの処理基板枚数)が装置の性能指標となる。
【0009】
現在の装置の構造は、自転する小型サセプタ(基板を載せる台)の上にウエハ基板が搭載されて、この自転小型サセプタが公転する1枚の大型サセプタの同心円上に配置されている。
【0010】
その装置の典型構造を公知の特許(特許文献1を参照)より転載して模式的に図1に示す。
【0011】
円盤状のサセプタ12に形成された円形開口内に設けられた軸受部材13と、軸受部材に回転可能に載置された均熱板14と、均熱板上に載置された外歯車部材15と、該外歯車部材に噛合する内歯車を備えたリング状の固定内歯車部材17と、外歯車部材に保持された基板18をサセプタの裏面側から加熱する加熱手段19を備えた自公転機構を有する横形気相成長装置がその構造である。
【0012】
自転と公転をさせる装置は構造上、複雑になり高価になる。また歯車の回転に伴い粒子が発生して結晶欠陥を作る。また1枚の大型サセプタを用いるので、基板の処理枚数を増やすには、当該サセプタを大きくするしか方法がなく、この開発には大きな開発資金を必要とする。これらは課題である。
【0013】
当該構造においてはサセプタに載せる基板枚数(バッチ枚数)はサセプタ12の大きさで制限される
【0014】
処理する基板枚数(バッチ枚数)を増やす構造が既に公開されている(特許文献2を参照)。当該特許の主要構造を転写して模式的に図2に示す。
【0015】
基板201がサセプタ202の両面に固定されていて、当該サセプタが複数枚、内筒204の中心軸に沿って配置されている。当該内筒204には孔203が備えられ、CVDに用いるガス1、ガス2(207,208)はこの孔203を通して供給され、基板201に接触する。サセプタ202は外筒205を取り巻くワークコイル206に誘導電流を通じることにより、高温に誘導加熱される。温度は誘導加熱の電力で制御されて、室温から1000℃以上の温度にわたり、自由に制御できる。
【0016】
加熱された基板201の上で、接触したCVDガスが加熱され分解し、基板の上に膜を成膜する。反応が進み、分解したガスは排気口209より排気される。
【0017】
以上は、複数枚のサセプタを用いることにより、バッチ枚数を増やす構造を示している。1枚のサセプタの中心に基板を配置する構造であるので、ガスの流れは基板の上で均一ではないので、基板の中心と周辺では、膜厚の違いがあり、一定以上にこれを調整することは困難である。
【0018】
この課題を解決する構造例が開示されている。(特許文献3参照)。特許文献3の主要図を転載して図3に模式的に示した。この構造は半導体製造に用いる縦型炉の構造と概念は同じである。この開示された構造においては、基板301を搭載した複数のサセプタ302と排気のための孔308を複数もつガス排気管307と、当該サセプタに挟まれた空間にCVDガスを導入できる複数の独立したガス供給管306a, 306b, 306c, 306dがあり、当該ガス供給管306と当該排気管307が当該サセプタ302の外周に対向して配置されてある。
【0019】
複数の当該サセプタ302は、それを貫く連結棒309で連結されて上下に積層されて、回転軸303の回転により回転する。サセプタ302はサセプタを収納する石英外管304の外にまかれたワークコイル305により誘導加熱されるのは、図2に示した従来例と同じである。
【0020】
ガス吹き出し口310を備えたガス供給管306から導入されたCVDガスは加熱されたサセプタの間を通り、対向して置かれた排気管308に向かって流れる。サセプタ302が回転しているので、サセプタの中心に置かれた基板301の中心が、当該CVDガスと接触する時間が長いので、基板中心の膜厚が周辺より薄いという図2に示した従来例の課題が解決する。
【0021】
しかし、サセプタ302の外周とサセプタを収納する石英外管304の間の間隔よりサセプタ間隔を広くする必要があるので、サセプタ枚数を装置の上下高さの制限から自由に増やせないという課題があった。即ち、サセプタとサセプタの間隔を小さく出来ないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2010-272708
【特許文献2】特開昭59−125616(特許1739436)
【特許文献3】特開平03−142823
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
図1、図2、図3に示した従来例のCVD装置構造の課題を整理して述べる。図1に示したサセプタ1枚式の装置の課題は、1)サセプタの大きさに制限がある、2)サセプタからの放熱が大きくなり対向面の保温対策が大掛かりになる、3)サセプタの製造コストが高額になる、などである。サセプタを切り出す大型の等方性グラファイトが必要であり、SiCのCVDコーティングも必要であり、それぞれ高額なコストとなる。
【0024】
1枚サセプタ装置の構造課題を解決する装置構造として、複数枚のサセプタを用いる図2、図3に示した構造の課題は4)CVDガスをサセプタ中心部に導くことが困難であることである。基板面内の膜厚は中心が薄いので、これを一定以上に均一にするためにはサセプタ同士の間隔を狭められないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述の課題を解決するために、本発明は、有機金属原料ガスを反応室に導き、当該ガスを熱分解させて基板に膜を成長させる装置であって、当該基板を載せるサセプタが縦方向に複数枚積層させてある構造を備えると共に、複数の当該サセプタの中心を貫いて排気管を備え、当該排気管を通して当該原料ガスが排気されることを特徴とする膜形成装置を提案するものである。
【0026】
前記サセプタは回転する。
【0027】
また、前記サセプタの周りに赤外線を発射するランプを並べて備え、または誘導加熱するためのワークコイルを備えてある。
【0028】
前記サセプタはグラファイトで構成される。
【0029】
基板を載せた前記サセプタを挟むように上下にグラファイト、または石英、またはセラミクスで構成された断熱サセプタを備えることもできる。
【0030】
反応室が減圧に制御される。
【0031】
前記サセプタの周囲には、サセプタ間の隙間にガスを供給するガス供給管を複数備え、当該ガス供給管は水冷される。
【0032】
複数の前記サセプタの中心を貫いて排気管を備え、当該排気管の中に加熱ヒーターと熱電対を備えた筒を挿入してある。
【0033】
本願第二の発明は、前記装置を用いて成長させたGa,Al,In、N、Cの元素を含む半導体結晶を用いたことを特徴とするLEDである。
【0034】
サファイアーまたはシリコン基板を用いることができる。
【0035】
以下、図面を参照し、詳述する。図4に課題を解決する本発明の基本構造を模式的に示す。
【0036】
サセプタS41,S42,S43,S44,S45,S46の中心には孔があけてあり、形はドーナツ型である。ド-ナツ型のサセプタは従来からシリコンエピタキシャル装置で使用されている。ドーナツの孔に石英管を通し、この石英管からCVDガスを供給する方式が良く用いられる。
【0037】
複数の当該サセプタを上下に一定間隔で積層し、孔を貫くように排気のための排気管411を設け、当該サセプタ間のガスを中心にある当該排気管411で排気すると、サセプタの外からのガスの流路はサセプタ中心に向う流れに限定されて、淀みが作られずサセプタ間を一定に流れる。
【0038】
この流れはサセプタの間隔の影響を受けずに必ず基板403の上を通過するので、従来あった、サセプタ中心に置かれた基板中心にCVDガスが供給しにくい、という課題が解決する。
【0039】
さらに具体的に説明する。反応室401にはド-ナツ状のサセプタS41、S42,S43,S44、S45,S46が一定間隔で積層されて備えられている。図3に示した公知例のように、当該サセプタは誘導加熱ワークコイル402で加熱される。上下のサセプタは互いに放熱防止と保温の役割をする。
【0040】
内部のサセプタには基板403が載せられる。複数のCVD原料ガスとキャリアーガスが複数の管で供給される。ここでは、CVDガス404a、404bがガス導入管405a、405bから導入されて内筒407の孔408からサセプタの間を通り排気管411に開けた孔409を通り、流路410に沿って流れ、減圧に制御された排気管411の排気口412に向かい流れる。この流れは方向が一定であり淀まない。ガスを淀ませないので、反応室の一点に注目するとガスは常に置換されている。
【0041】
本発明の構造においては、サセプタ枚数は自由に設計で増やすことができる。即ち、処理できる基板の枚数は設計で拡張可能である。
【0042】
排気管411をグラファイトで形成すると、サセプタと同様に誘導加熱される。
【0043】
またサセプタで加熱されたガスが、当該排気管を加熱する。サセプタと同じ温度になる方向に排気管411の加熱が進むのでサセプタ間の空間は同じ温度なろうとする。加熱された排気管上にもサセプタと同様に残のCVDガスから膜が成長する。
【0044】
これにより未反応の原料ガスを当該排気管で消費することが可能となり、分解生成物のポンプや排気系配管への付着を減少させ、ダウンタイムを減少させる。
【0045】
ここでは、図2に示した従来例のように、内筒にあけた孔からCVDガスを導入する例を示した。図3に示した従来例のように屈曲した吹き出し口309を備えたガス供給管を用い、サセプタ間に吹き込むように独立にガスを供給し制御することは可能である。
【0046】
このとき、本発明では図3に示した公知例と違いサセプタ周辺の連結棒309に相当するものがない。従って、ガス供給管306の先を回転するサセプタの間にまで進入させて、さらにガスの吹き出す方向を制御して均一性の調整が可能になる。
【0047】
当該ガス供給管を外筒406と内筒407の間に備え、基板の載せるサセプタの枚数に対応して、当該ガス供給管を同心円上に配置するとともに、それぞれのガス供給管を水冷して、過熱を防ぐことも可能である。内筒407はこのとき断熱材として作用させることが望まれるので石英で作製することも可能である。CVD膜の剥がれを防ぐために、グラファイトで作製することも可能である。
【0048】
ガス供給管の遮熱と水冷は、特にMOCVDのガスの供給においては必須になる。その中でもインジュームの有機金属のCVDガスは低温で分解しやすいので、この水冷は必須である。
【0049】
図4には本発明の構造原理を説明したが、図3に示した公知例のように、サセプタを回転させる構造にすること、また基板のローディングとアンローディングを容易にするために、サセプタ全体を内筒407から引き抜く機構を設けることは自由に設計できる。
【0050】
そして、請求項1に係る発明は、有機金属原料ガスを反応室に導き、当該ガスを熱分解させて基板に膜を成長させる装置であって、当該基板を載せるサセプタが縦方向に複数枚積層させてある構造であって、複数の当該サセプタの中心を貫いて排気管を備え、当該排気管を通して当該原料ガスが排気されることを特徴とする膜成長の装置である。
【0051】
請求項2に係る発明は、前記サセプタが回転することを特徴とする請求項1記載の装置である。
【0052】
請求項3に係る発明は、前記サセプタの周りに赤外線を発射するランプを並べて備えてあること、または誘導加熱するためのワークコイルを備えてあることを特徴とする請求項1、2記載の装置である。
【0053】
請求項4に係る発明は、前記サセプタがグラファイトで構成されてあることを特徴とする請求項1、2、3記載の装置である。
【0054】
請求項5に係る発明は、基板を載せた前記サセプタを挟むように上下にグラファイト、または石英、またはセラミクスで構成された断熱サセプタを備えたことを特徴とする請求項4記載の装置である。
【0055】
請求項6に係る発明は、反応室が減圧に制御されたことを特徴とする請求項2、3、4、5記載の装置である。
【0056】
請求項7に係る発明は、前記サセプタの周囲にサセプタ間の隙間にガスを供給するガス供給管を複数備え、当該ガス供給管は水冷されてあることを特徴とする請求項1ないし6記載の装置である。
【0057】
請求項8に係わる発明は、複数の前記サセプタの中心を貫いて排気管を備え、当該排気管の中に加熱ヒーターと熱電対を備えた筒を挿入してあることを特徴とする請求項1ないし7記載の装置である。
【0058】
請求項9に係る発明は、前記装置を用いて成長させたGa,Al,In、N、Cの元素を含む半導体結晶を用いたことを特徴とするLEDである。
【0059】
請求項10に係る発明は、サファイアーまたはシリコン基板を用いたことを特徴とする請求項9のLEDである。
【発明の効果】
【0060】
本発明はMOCVD装置により基板の上に半導体結晶膜を成長させるとき、一度に搭載可能な基板の枚数を増やすことが可能である。一枚当たりの成長コストが下がるので市場を成長させる効果がある。
【0061】
請求項1〜4に係わる発明によれば、多数の基板を温度が1000℃以上に加熱して結晶膜を成長させることが可能である。一枚のサセプタの直径が45cm以上なら2インチ基板は20枚以上搭載可能である。また4インチ、6インチなら、それぞれ8枚以上、4枚以上が搭載可能であるので、サセプタ枚数に応じて装置の処理枚数は増える。1枚のサセプタしかもたない装置ならこれが最高のバッチ枚数になるが、本発明の積層構造なら3枚積層で2インチならそれは60枚以上となる。
【0062】
加熱は内熱式であるので、真空を保つ外側の筒(本発明では石英管)は前記サセプタより低温に維持され、膜も成長しにくいので、反応室の清浄さが維持されて。清浄さの維持は装置の運転条件再現性を維持する効果がある。
【0063】
請求項5に係わる発明によれば、基板搭載サセプタを保温するので、温度の均一性が単純な構造で達成できる。サセプタの中心にある排気管もサセプタに近い温度となる。未反応になった原料ガスは当該排気管でも分解成長する。このことで、未反応生成物の排気装置への付着を防止して安定稼動の時間を長くする。また結晶膜として成長させることで、粒子の生成を抑制するので、結晶品質を向上させる。これらはデバイスの歩留まりを改善する効果がある。
【0064】
請求項6に係わる発明によれば、減圧に制御することで、淀みの無い高速の流れを作り出す。これは不純物の反応室内停滞を抑止するので、結晶膜の急峻な接合形成が可能になる。不純物は基板からも再揮発する。これが基板の上に漂うと成長前の層と成長後の層の物理的区別(冶金学的区別)が曖昧になる。理想とする量子井戸形成の発光デバイス製造には高流速と減圧が必要である。
【0065】
請求項7に係わる発明の装置によれば、サセプタの回転が無接触で可能になる。回転は均一性の改善になる。
【0066】
請求項8に係わる発明の装置によれば、CVDガスが排気管の中で消費されて、排気系や排気ホ゜ンフ゜に溜まる粒子ゴミを減少させて、稼働率を向上させる。また排気管の中の温度を独立に制御できるので、サセプタの半径方向の温度分布を調整できる。
【0067】
請求項9、10に係わる発明の装置によればサファイアーやSi基板の上にバンドギャップの大きい結晶材料GaN、InN、AlN、SiCの結晶と混晶を一度に沢山の処理枚数で成長させることが可能である。装置の処理枚数が大きいので、この方法で成長させた結晶で光らせるLEDの製造原価が下げられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は特開2010-272708のCVD装置の反応室主要部の断面である。この断面は種類のある自転と公転の構造の一例である。
【図2】図2は複数のサセプタを用いる発明である特開昭59−125616(特許1739436)の主要図の転写模式図である。
【図3】図3は複数のサセプタを用いる発明である特開平03−142823の主要図の転載模式図である。
【図4】図4は複数のサセプタを用いる本発明の基本構造の模式図である。
【図5】図5は本発明の実施例1の装置構造の模式図である。
【図6】図6は本発明の実施例2の装置構造の模式図である。
【図7】図7は本発明の実施例3の装置構造の模式図である。
【図8】図8は本発明に実施例4の装置構造の模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、これら添付図面中、同一または相当部分には同一符号を付した。
【0070】
実施例1を図5で説明する。
【0071】
真空に排気できる反応室501の中に基板502がリング状に搭載されたサセプタS43とS44と基板を搭載しないS41とS42、S45、S46がある。サセプタの厚みは1cm、直径は450cmである。2インチのサファイアー基板が20枚以上同心円状にサセプタ上面に配置できる。サセプタはグラファイトで構成され表面はSiCで被覆されている。
【0072】
サセプタは一定間隔で積層されている。サセプタの形は中心に孔のある環状(ドーナツ状)である。当該サセプタの当該孔は排気シリンダー503で貫通されて、それらの位置が固定されている。当該排気シリンダー周囲にはスリット状の孔504が設けられ、当該孔504を通してサセプタ間に供給されたガス505が排気される。その流路506が破線で示されてある。
【0073】
排気シリンダー503の底面は回転機構507に接続されている。デジタルデータで駆動される回転機構507によりサセプタの回転は制御される。排気シリンダーの底面には孔が開けられ、パージガス配管508より導入したパージガス(水素または窒素ガス)はセプタS41より下の反応室501をバージして排気される。
【0074】
誘導加熱ワークコイル509は上下の放熱を補償するために両端は密にする。
【0075】
サセプタは内筒510と7mmの間隔をおき、その中心にある。内筒はSiCを被覆したグラファイトで形成した。サセプタとサセプタの間にガスを供給する内筒孔511が周囲に配置されてある。CVDガスの供給はガス供給管512,513で行う。ガス供給管の先には吹き出し口514が連結されてあり、連結口からのガスは内筒孔511よりサセプタ間の空間に吹き出す。ここでは単純に示したが、ガスの冷却のために当該供給管512,513は水冷されている。
【0076】
ガス供給管からのCVDガス流量は独立に制御される。当該ガス供給管から導入するCVDガスは水素、窒素、アンモニア、TMG、TEG,TMI,Cp2Mg,SiH分を含むガスである。GaNを成長させるとき水素、アンモニア、TMGを用いた。
【0077】
流量を独立して制御する水冷のガス供給管はここでは2本示した。基板を搭載するサセプタの数に応じて、不足ならばガス供給管は増やすことは自由である。
【0078】
一番上のサセプタ(S46)とマニホールド518の空間はガス導入管515より導入するパージガス(水素や窒素)でバージされ、排気管516と排気シリンダー503の隙間から排気される。
【0079】
マニホールド517は図示しない上下移動機構に連結されており、当該マニホールドを下方に移動させることで、サセプタが反応室501から外に移動し基板の搭載と回収が可能になる。
【0080】
排気管516はグラファイトでその表面はSiCで被覆されている。未反応の原料ガスがここにも成長する。高温で結晶膜として成長するので粒子にならない。粒子発生を抑える効果と排気系装置の排気配管に生成物が付着するのを抑制して装置のアップタイムを長くする。
【0081】
内筒510と大気遮断の石英管である外筒500の隙間空間を通り、当該空間をバージしながら排気管516に排気されるガスをマニホールド514,517より図示しないガス導入管から導入する。当該のパージガスには水素または窒素を用い、当該空間に淀みを作らない。反応室からのガスを追い返すキャリアーガスとして排気されるので、このガスは外筒500の内部を清浄に保つ。
【0082】
以上の装置を用いGaNの結晶膜を成長させた。一枚のサセプタの同心円上に20枚の2インチのサファイアー基板を2枚のサセプタに搭載した。
【0083】
毎分10000Lの排気量のポンプの回転数を制御しながら減圧にして、窒素を流入させて大気を窒素で置き換える。次に、窒素を水素で置き換える。
【0084】
パージガス導入管508、515より30SLM,CVDガス導入管512,513を通してそれぞれ20SLMの水素を流しながら温度を上昇させた。1000℃に到達させ5分保持して基板表面のクリニングを行う。
【0085】
500℃まで温度を下げて、CVDガスをアンモニアに切り替え、それを20SLMの流量でCVDガス導入管からそれぞれ導入する。TMGを水素300SCCMでバブリングしてCVDガス導入管に加えて3分間導入する。この工程でアモルファスのGaN層が形成される。
【0086】
TMGを止めたあと再び水素に切り替え再び温度を1000℃まで上昇させる。アンモニアを50SLMの流量で、また窒素を5SLMそれぞれのCVDガス導入管より導入する。パージガス導入管からは水素を流し続ける。
【0087】
これにTMGを300SCCMの水素でバブリングして追加してそれぞれのガス導入管より導入する。GaNを1時間成長させた後、TMGとアンモニアのCVDガスを停止して温度を下げる。水素を止めて、窒素で室温と常圧にもどす。基板ウエハを回収して調べた。成長した膜はカソードルミネッセンスでバンド端発光を示した。膜厚は2枚のサセプタの40枚の基板で測定したところ、全体で+/−7%以内であった。
【0088】
カソードルミネッセンスが確かめられたので、この上にSiドープのn型GaN層、5層のInGaN/GaNの量子井戸層、Mgドープのp型GaN層を成長させて、上から電極を形成してダイオードに電流を通したところ、発光してLEDの動作が確認された。
【0089】
以上はサファイアー基板を用いたがシリコン基板の上にSiC層を成長させた基板でも良い。
【0090】
実施例2を図6で説明する。
【0091】
図6は反応室の上面模式図である。内筒510と外筒500の間にガス供給管512,513とパージガス導入管602、603がある。当該供給管は単純に筒で示したが、図示してない構造で水冷されている。ガス供給管の先にはガスの吹き出し口514が備えられ、この吹き出し口は吹き出し口スリットを通して内筒510の内部にまで入る。当該供給管は首をふる機構を備え、その入り具合を調整する。
【0092】
この調整によりガスの吹き出す方向を制御して、サセプタ上での成長速度分布を調整する。当該吹き出し口は円筒状の形を例として示したが、矩形であっても、吹き出し口を複数にしても良い。
【0093】
当該ガス供給管からは水素、窒素で希釈された前術のCVDガス(水素、窒素、アンモニア、TMG、TEG,TMI,Cp2Mg,SiHを含むガス)を導入する。
【0094】
吹き出し口は高温にさらされるので、SiCを被覆したグラファイトで作製したが、セラミクスや石英でも良い。またガス供給管は2本の例を示したが3本以上でも1本でも良い。
【0095】
パージガス導入管602、603管も図示しない機構で水冷されている。このパージガスは水素、窒素を用いる。外筒500と内筒510に挟まれた空間605を効率よく埋めるために、この管にはガスが吹きでる孔があけてある。
【0096】
この構造でパージガスを導入することによって、当該空間605を充満して定常の流れを作ることにより、CVDガスの流入を防止する。このことにより、当該空間の清浄度が維持され、低温で形成する剥がれやすい粒子付着を防止する。また膜の付着が防止できるので、膜による保温効果の時間経過依存がない。
【0097】
実施例3を図7で説明する。
【0098】
図7は実施例3の装置模式図である。排気シリンダー503の中に排気加熱ヒーターケース704が進入して備えられる。サセプタを通り過ぎてCVDガスが加熱分解して排気管706から排気される。加熱分解は基板403とサセプタの上で起きるが、全部のCVDガスは分解して消費されない。分解されないガスはサセプタを過ぎた低温部で堆積するが、サセプタより低温で堆積された膜は剥がれやすく、粒子ゴミになり、排気系の配管と排気ホ゜ンフ゜を汚す。この汚れは、メンテナンスで取り除くので、ダウンタイム増加となる。
【0099】
これを避けるために、実施例3では中心の排気経路の中に加熱ヒーターを備えた。ヒーター702は3つのヒーターに別れ、給電線の対H1,H2,H3から給電される。熱電対703の温度は熱電対端子T1,T2より測定される。熱電対703、排気加熱ヒーター702は石英の排気加熱器ヒーターケース704に収納されてある。当該ケース704は表面をSiCで被覆したグラファイトの排気加熱器カバー705でカバーされてある。
【0100】
熱電対の温度がサセプタの温度と同じ程度か、それ以上の温度に制御される。CVDガスは分解して当該カバーの上に堆積して消費される。当該カバー表面はCVDガスの加熱分解除去の役目を果たし、排気系の粒子ゴミによる汚れを防止する。取り除けなかった粒子ゴミは排気管706の排気管カバー707の上にも付着するので、定期的にこれを洗う。
【0101】
本実施例では3つのヒーターと2つの熱電対の例を示した。ヒーターの種類や数、温度の測定点の数は自由に設計できる。
【0102】
実施例4を図8で説明する。
【0103】
図8は実施例4の装置の断面模式図である。サセプタの加熱を誘導加熱でなく、赤外線ランプで行う。この加熱方法はシリコンのエピタキシャル装置で30年以上前からよく使用されている。サセプタがバレル型に配置された装置(例えば、アプライドマテリアルズ社製装置AMC7800)で使用されている。
【0104】
本発明はこの加熱方法を本発明の構造である多層に積層したサセプタの中心を貫いて排気シリンダーを備えた構造に使用した。もし、サセプタが1枚ならば横に配置したランプでサセプタを加熱することは光の利用効率が低い。
【0105】
しかし、多数枚のサセプタを積層した本発明の構造においては、光を吸収できる面積が大きいのでこの欠点はなくなる。サセプタの間を通過した光は排気シリンダー503で吸収される。サセプタ表面に斜めに入射した光も吸収される。サセプタ中心部が単位面積当たり最も光を吸収するので、高温になる。中心の温度が高くなることは、ガスの排気ガス中のCVDガスの消費効率を上げるので、ゴミ粒子の発生を抑止する。
【0106】
ランプはこの実施例では、上下三段に配置した。外筒500の周囲にはランプ部品ユニットを複数列配置できる。m列番目の3段のランプはLm1、Lm2,Lm3と記した。ランプの背後には光をサセプタ中心に向かって反射する金めっきの鏡801が備えられている。ランプは自分自身の光で電極部が加熱するので、複数配置した冷却ファン802で空冷されている。この空冷は水冷でも良い。上下のランプLm1,Lm3は傾けてあり、基板を載せたサセプタが多くの光を吸収できる配置とした。この方法で、赤外線温度計で測定したサセプタ温度は1000℃以上に制御できた。
【0107】
以上、多数枚の基板にLEDを作るための装置の構造の実施例を示した。基板の直径は2インチ、4インチでも良い。4インチの大きさになると、1枚サセプタの装置においては、基板の表裏の温度差のために、反りが生じる。反りは基板の温度差を生み出す。本装置は上下にあるサセプタで基板を保温する構造であるために、反りが生じにくい。このため、予想される基板の大型化に耐える固有の装置構造をもっている。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明はGaN結晶成長の処理基板枚数を増やす装置の発明である。枚数を増やすことにより、1枚当りのコストを下げ、LEDのコストを下げる。これにより、省エネルギー照明の市場を拡大させる可能性がある。
【符号の説明】
【0109】
12 サセプタ13 軸受け部材
14 均熱板
15 外歯車部材
17 固定内歯車部材
18 基板
19 加熱手段
201 基板
202 グラファイトサセプタ
203 孔
204 内筒
205 外筒
206 ワークコイル
207 ガス1
208 ガス2
209 排気口
301 基板
302 サセプタ
303 回転軸
304 外筒
305 ワークコイル
306a,
306b, 306c, 306d, 吹き出し口をしなえたガス供給管
307 ガス排気管
308 孔
309 連結棒
310 吹き出し口
401 反応室
402 誘導加熱ワークコイル
403 基板
404a,
404b CVDガス
405a,
405b ガス導入管
406 外筒
407 内筒
408.409 孔
410 流路
411 排気管
412 排気口
500 石英管である外筒
501 反応室
503 排気シリンダー
504 孔
505 サセプタ間ガス
506 流路
507 回転機構
508,515 パージガス導入管
509 誘導加熱ワークコイル
510 内筒
511 内筒孔
512,513 ガス供給管
514 吹き出し孔
516 排気管
517,518 マニホールド
601 サセプタ
602,603 パージガス導入管
604 吹き出し口スリット
605 外筒と内筒に挟まれた空間
701 排気加熱ヒータマニホールド
702 排気加熱器ヒーター
703 熱電対
704 排気加熱器ヒ-ターケース
705 排気加熱器カバー
706 排気管
707 排気管カバー
801 鏡
802 冷却ファン
S31,S32,S33,S34,S35,S36,S37,S38,S39,S40,S41 サセプタ
T1,T2 熱電対端子
H1,H2、H3 給電線の対
Lm1,Lm2、Lm3 外筒の周りに配置したm列番目の1段目、2段目、3段目のランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属原料ガスを反応室に導き、当該ガスを熱分解させて基板に膜を成長させる装置であって、当該基板を載せるサセプタが縦方向に複数枚積層させてある構造であって、複数の当該サセプタの中心を貫いて排気管を備え、当該排気管を通して当該原料ガスが排気されることを特徴とする膜成長の装置。
【請求項2】
前記サセプタが回転することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記サセプタの周りに赤外線を発射するランプを並べて備えてあること、または誘導加熱するためのワークコイルを備えてあることを特徴とする請求項1、2記載の装置。
【請求項4】
前記サセプタがグラファイトで構成されてあることを特徴とする請求項1、2、3記載の装置。
【請求項5】
基板を載せた前記サセプタを挟むように上下にグラファイト、または石英、またはセラミクスで構成された断熱サセプタを備えたことを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
反応室が減圧に制御されたことを特徴とする請求項2、3、4、5記載の装置。
【請求項7】
前記サセプタの周囲にサセプタ間の隙間にガスを供給するガス供給管を複数備え、当該ガス供給管は水冷されてあることを特徴とする請求項1ないし6記載の装置。
【請求項8】
複数の前記サセプタの中心を貫いて排気管を備え、当該排気管の中に加熱ヒーターと熱電対を備えた筒を挿入してあることを特徴とする請求項1ないし7記載の装置。
【請求項9】
前記装置を用いて成長させたGa,Al,In、N、Cの元素を含む半導体結晶を用いたことを特徴とするLED。
【請求項10】
サファイアーまたはシリコン基板を用いたことを特徴とする請求項9のLED。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−243861(P2012−243861A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110532(P2011−110532)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】