説明

表面検査装置及び方法

【課題】複数の角度位置での試料画像に含まれる各欠陥を表す部分を単一の画像に集約させて表し、欠陥の属性(位置、形状、大きさ、数等)をより正確に判断することができるようにした検査装置及び方法を提供することである。
【解決手段】表面検査装置及び方法は、回転される半導体ウエーハ10の表面を前記撮像カメラ30にて撮影して得られる複数の角度位置での半導体ウエーハ画像のそれぞれから所定の基準画像を差し引いて差分画像を生成し、前記複数の角度位置での差分画像を角度位置の補正を行いつつ合成して合成画像を生成し、該合成画像から前記試料表面の欠陥を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の板状の試料表面を光学的に検査する表面検査装置及び方法に係り、詳しくは、光源装置から試料の表面に光を照射した状態で試料表面の画像を取得し、その画像に基づいて試料表面の欠陥(キズ、汚れ、埃等)を検出するようにした表面検査装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハの表面のキズを検出する表面検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来の表面検査装置は、単一の光源から検査光が照射される半導体ウエハの表面を暗視野環境のもとで撮像装置により撮影し、その撮像装置により得られた画像に基づいて半導体ウエハ表面のキズを検出している。半導体ウエハ表面の微細なキズに検査光が照射されると、その検査光がその照射方向(光軸方向)に対してある方向に偏った強度分布となる光となってそのキズから進み出る。そのような光が撮像装置に入射すると、撮像装置にて得られる画像にキズに対応した輝点が現れる。その画像内の輝点に基づいて半導体ウエハ表面の欠陥を検出することができる。
【0003】
このように半導体ウエハ表面の微細なキズに検査光が照射された際にそのキズから進み出る光の強度分布は、そのキズに対する検査光の照射方向(光軸方向)に依存することから、半導体ウエハと光源及び撮像装置の位置関係を固定的にしておくと、半導体ウエハ表面のキズのうち検出できないものがでてきてしまう。そこで、前記従来の表面検査装置では、半導体ウエハ表面に対する検査光の入射角(検査光の光軸と半導体ウエハ表面とのなす角度)を一定に保持した状態で半導体ウエハを所定角度(例えば、9度)ずつ回転させるようにしている。そして、複数の回転位置において撮像装置により得られた複数の画像内の輝点の状態からキズを検出している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−82603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体ウエハ表面のキズ等の欠陥が微細になればなるほど(例えば、結晶性欠陥)、その欠陥に検査光が照射された際にそのキズから進み出る光の強度分布の検査光に対する角度依存性が高くなる(純粋な回折現象に近くなる)。このため、前述したような従来の表面検査装置において微細な欠陥に対する検出精度を上げようとすると、半導体ウエハの回転角度ピッチを小さくしてより多くの角度位置にて半導体ウエハの画像を取得しなければならない。このようにより多くの角度位置にて半導体ウエハの画像を取得するようにすると、撮像のために半導体ウエハを停止させる回数が増加すると共にその画像処理の回数も増加してしまい、その結果、検査時間が長くなるという問題がある。
【0006】
また、従来の表面検査装置では、半導体ウエハを回転させることにより半導体ウエハ表面内での検査光の照射方向は変化するものの、半導体ウエハ表面に対する検査光の入射角は固定されている。このため、従来の表面検査装置では、前述したように半導体ウエハの回転角度ピッチをどんなに小さくしても、まだ捕捉し得ない欠陥が存在する可能性がある。
【0007】
このような問題を解決するため、半導体ウエハの傾きを変えることのできるチルト機構を備えたものが知られている。このようなチルト機構により、光源の位置が固定されていたとしても、検査光の照射方向を半導体ウエハ表面に垂直な面内において変えることができるようになる。しかし、このようなチルト機構を設けた場合、表面検査装置の構造が複雑になるという問題があり、また、半導体ウエハを複数の傾き角度にて検査しなければならず、前記と同様に検査時間が長くなるという問題がある。
本発明は、前述したような問題を解決するためになされたもので、構造を複雑にすることなく、効率的により精度良く欠陥の検出ができるようにした表面検査装置及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表面検査装置は、板状の試料をその表面を所定方向に向けた状態で回転させる試料回転機構と、前記試料回転機構の駆動制御を行う駆動制御手段と、前記試料の表面に対して所定の位置関係にて設置され、前記試料表面を撮影する撮像装置と、検査光を前記試料表面に照射する複数の光源と、前記駆動制御手段の制御のもと前記試料回転機構により回転される前記試料の表面を前記撮像装置にて撮影して得られる複数の試料画像から前記試料表面の欠陥を検出する欠陥検出手段とを備え、前記複数の光源をそれらからの検査光の光軸が平行にならないように設置した構成となる。
【0009】
このような表面検査装置では、光軸が平行とならずに検査光が複数の光源から試料表面に照射されるので、試料表面の各欠陥からは複数の検査光のそれぞれに対してある角度依存性をもって光が進み出るようになる。従って、各欠陥から進み出る光の検査光に対する角度依存性が高くなっても、撮像装置にてより多くの欠陥から進み出る光を同時に捕捉できるようになる。
【0010】
また、各検査光の光軸の試料表面との交点が試料の回転と共に試料表面を移動せずに安定した条件で試料表面に対する各検査光の照射が可能となるという観点から、前記複数の光源をそれらからの検査光の光軸が前記試料表面の回転中心で交わるように設置した構成とすることが好ましい。
【0011】
また、前記複数の光源は、前記試料表面に平行な面に対する各検査光の光軸の投影線のなす角度がゼロより大きい所定の角度となるという水平方向条件を満たすように設置された2つの光源を少なくとも含むように構成することができる。
【0012】
このような構成により、試料表面内での検査光の照射方向が実質的に少なくとも2つとなるので、前記試料を回転させる回転角度ピッチをより大きくすることができるようになる。
【0013】
前記水平方向条件を満たす少なくとも2つの光源は、それらからの検査光の前記試料表面に対する入射角が同じになるように設置された構成とすることもできる。
【0014】
また、前記水平方向条件を満たす少なくとも2つの光源が設置される表面検査装置において、前記駆動制御手段は、前記所定の角度に前記水平方向条件を満たす光源の数を乗じて得られる角度単位に前記試料を回転させるよう前記試料回転機構を制御するように構成することができる。
【0015】
このような構成により、単一の検査光を試料表面に照射した状態で前記試料を前記水平方向条件における前記所定の角度単位に回転させた場合と同等の精度にて欠陥の検出が可能となる。即ち、試料を回転させる角度ピッチをより大きくすることができる。
【0016】
更に、前記複数の光源は、少なくとも前記試料表面に対する各検査光の入射角が異なるという垂直方向条件を満たすように設置された2つの光源を含むように構成することができる。
【0017】
このような構成により、試料の傾きを変えなくても撮像装置にてより多くの欠陥から進み出る光を捕捉できるようになる。
【0018】
前記垂直方向条件を満たす少なくとも2つの光源は、それらの光軸が前記試料表面に垂直な同一平面内に含まれるように設置されるように構成することができる。
【0019】
前記欠陥検出手段は、回転される前記試料の表面を前記撮像装置にて撮影して得られる複数の角度位置での試料画像から角度補正を行いつつ単一の試料画像に対応した合成画像を生成する画像合成手段を有するように構成することができる。
【0020】
このような構成により、複数の角度位置での試料画像に含まれる各欠陥を表す部分が合成画像に集約されるので、欠陥の属性(位置、形状、大きさ、数等)をより正確に判断することができるようになる。
【0021】
更に、前記画像合成手段は、回転される前記試料の表面を前記撮像装にて撮影して得られる複数の角度位置での試料画像のそれぞれから所定の基準画像を差し引いて差分画像を生成する差分画像生成手段と、前記差分画像生成手段にて得られた前記複数の角度位置での差分画像を角度位置の補正を行いつつ合成して前記合成画像を生成する差分画像合成手段とを備えるように構成することができる。
【0022】
このような構成により、差分画像が基準画像を基準にした欠陥部分を表すことになるので、より明確に欠陥部分を表した合成画像を得ることができるようになる。
【0023】
前記所定の基準画像として、所定の良品試料を前記撮像装置にて撮影して得られた良品試料画像を用いた構成とすることができる。
【0024】
このような構成により、差分情報が良品試料を撮影して得られた良品試料画像を基準にした欠陥部分を表すことになるので、良品試料に対する欠陥を容易に検出できるようになる。
【0025】
また、前記所定の基準画像として、前記複数の角度位置での試料画像のそれぞれから所定低周波帯域成分を抽出して得られた画像を用いた構成とすることができる。
【0026】
欠陥は強い輝度レベルとしての輝点として試料画像に含まれることになるので、前記試料画像のそれぞれから所定低周波帯域成分を抽出して得られた画像は、欠陥部分が除去されたものとなる。このような画像を基準画像とすることにより、差分画像は前記除去された欠陥部分を表すことになる。
【0027】
試料表面の欠陥の状態をオペレータが視覚的に確認できるという観点から、本発明に係る表面検査装置は、前記合成画像を検査結果として出力する検査結果出力手段を有するように構成することができる。
【0028】
また、オペレータが実際の試料との比較が容易にできるという観点から、本発明に係る表面検査装置は、前記合成画像と所定の良品試料を前記撮像装置にて撮影して得られた良品試料画像とを重ね合わせた画像を欠陥検査結果として出力する検査結果出力手段を有するように構成することができる。
【0029】
更に、オペレータが試料表面の欠陥の属性を容易に確認できるという観点から、本発明に係る表面検査装置は、前記合成画像に基づいて欠陥の属性を表す情報を生成する欠陥情報生成手段と、前記欠陥の属性を表す情報を検査結果として出力する検査結果出力手段とを有するように構成することができる。
【0030】
本発明に係る表面検査方法は、表面を所定の方向に向けた状態で回転される板状の試料の当該表面にそれぞれ光軸が平行とならないように設置された複数の光源から検査光を照射し、前記回転される試料の表面を撮像装置にて撮影して得られる複数の試料画像から前記試料表面の欠陥を検出するように構成することができる。
【0031】
更に、本発明に係る表面検査装置は、板状の試料をその表面を所定方向に向けた状態で回転させる試料回転機構と、前記試料回転機構の駆動制御を行う駆動制御手段と、前記試料の表面に対して所定の位置関係にて設置され、前記試料表面を撮影する撮像装置と、検査光を前記試料表面に照射する光源と、前記駆動制御手段の制御のもと前記試料回転機構により回転される前記試料の表面を前記撮像装置にて撮影して得られる複数の試料画像から前記試料表面の欠陥を検出する欠陥検出手段とを備え、前記欠陥検出手段は、回転される前記試料の表面を前記撮像装置にて撮影して得られる複数の角度位置での試料画像のそれぞれから所定の基準画像を差し引いて差分画像を生成する差分画像生成手段と、前記差分画像生成手段にて得られた前記複数の角度位置での差分画像を角度位置の補正を行いつつ合成して合成差分画像を生成する画像合成手段とを有するように構成される。
【発明の効果】
【0032】
本願発明によれば、光軸が平行とならない検査光が複数の光源から試料表面に照射されるので、試料表面の各欠陥からは複数の検査光のそれぞれに対してある角度依存性をもって光が進み出るようになる。このため、各欠陥から進み出る光の検査光に対する角度依存性が高くなっても、撮像装置にてより多くの欠陥から進み出る光を同時に捕捉できるようになり、チルト機構などの特別な機構を設けなくても、あるいは、試料をより小さな角度ピッチにて回転させなくても精度良く試料表面の欠陥を検出できるようになる。即ち、構造を複雑にすることなく、効率的により精度良く欠陥の検出ができるようにした表面検査装置及び方法を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の一形態に係る表面検査装置の基本的な構成は図1に示すようになっている。この表面検査装置は、半導体ウエハを検査対象の試料としてその表面の欠陥を検出するものである。
【0034】
図1において、この表面検査装置は、検査対象となる半導体ウエハ10を格納したカセット200、試料搬入ロボット機構300、アライナ100、試料搬出ロボット400を有している。アライナ100には試料となる半導体ウエハ10の周縁の所定位置を把持して回転させるターンテーブル20(試料回転機構に対応)が設置されている。このような構成により、試料搬入ロボット機構300によりカセット200から取り出された半導体ウエハ10がターンテーブル20上にセットされ、その半導体ウエハ10の表面欠陥の検査がなされる。そして、その検査終了後に、半導体ウエハ10が試料搬出ロボット機構400によってターンテーブル20上から取り出され、目視検査台(図示略)に移動される。
【0035】
前記表面検査装置において、更に、ターンテーブル20の上方にCCDカメラ等の撮像カメラ30(撮像装置に対応)、黒色のシェード40及び光源ユニット50(光源に対応)が配置される。なお、撮像カメラ30、シェード40及び光源ユニット50の具体的な支持構造については後述する。撮像カメラ30は、シェード40に形成された穴を介してターンテーブル20上の半導体ウエハ10の表面を撮影できるように配置されている。また、光源ユニット50は、ターンテーブル20上の半導体ウエハ10の斜め上方から検査光を照射するように配置されている。光源ユニット50のターンテーブル20を挟んだ反対側には、反射ミラー60が所定の傾きをもって設置されている。これにより、光源ユニット50から照射される検査光が半導体ウエハ10表面にて鏡面反射された際の当該反射光が反射ミラー60に入射して所定の方向に逃がされ、撮像カメラ30に対する暗視野環境が保持されるようになっている。
【0036】
撮像カメラ30は検査処理装置500(欠陥検出手段に対応する機能を有する)に接続されている。検査処理装置500は、半導体ウエハ10表面を撮影する撮像カメラ30からの撮影信号から半導体ウエハ10表面を表す画像データを生成し、その画像データを所定の手順に従って処理することにより半導体ウエハ10表面の欠陥を表す情報を生成する。この検査処理装置500の具体的な構成及び処理については後述する。
【0037】
前述したような構成の表面検査装置の処理系は、図2に示すように構成される。
図2において、この処理系は、前述した検査処理装置500、前記試料搬入ロボット機構300及び試料搬出ロボット機構400の駆動制御を行うロボット制御装置600、前記ターンテーブル20の駆動制御を行うターンテーブル駆動制御装置700(駆動制御手段に対応)及び統括制御装置800を有している。統括制御部800は、検査処理装置500、ロボット制御装置600及びターンテーブル駆動制御装置700に対するタイミング制御などの統括的な制御を行う。
【0038】
検査処理装置500は、画像処理部501、入力処理部502、メモリユニット503及びモニタユニット504を有している。入力処理部502は、撮像カメラ30から、例えば、画素単位にシリアルに送られてくる撮影信号から画素単位のパラレルの画像データに変換するなどの処理を行う。画像処理部501は、入力処理部502から送られてくる画像データを所定の手順に従って処理し、半導体ウエハ10表面の欠陥を抽出する。メモリユニット503は、画像処理部501の処理の過程で種々の画像データを格納する。モニタユニット504は、画像処理部501での処理により得られた半導体ウエハ10表面の欠陥を表す種々の情報を表示する。
【0039】
ターンテーブル駆動制御装置700は、ステッピングモータ701及び駆動回路702を有している。統括制御装置800からのタイミング制御信号に基づいて駆動回路702がステッピングモータ701を所定角度単位に回転させる。このステッピングモータ701の回転に伴ってターンテーブル20が回転する。
【0040】
前述した撮像カメラ30、シェード40及び光源ユニット50の具体的な支持機構について、図3、図4及び図5を参照して説明する。なお、図3は、支持機構を側方から見た図、図4は、支持機構を上方から見た図、図5は、支持機構を正面から見た図である。
【0041】
前方支柱41、43及び後方支柱42、44で囲まれる空間にアライナ100が配置されるように、当該前方支柱41、43及び後方支柱42、44が装置設置面に立設されている。これらの前方支柱41、43及び後方支柱42、44によってカメラ取付け部材35が固定支持されている。カメラ取付け部材35のアライナ100に対向する面にシェード40が貼設されている。撮像カメラ30は、カメラ取付け部材35の上面側にその光学系の焦点がアライナ100上のターンテーブル20にセットされるべき半導体ウエハ10の回転中心になるように配置、固定される。
【0042】
前方支柱41、43には、張出し腕部材45、46の一端が固定され、それら張出し腕部材45、46の他端が連結部材47にて接続固定されている。円弧形状の第一の光源取付けプレート48の一端が前記カメラ取付け部材35に固定具36によって固定されると共に、その他端が張出し腕部材45と連結部材47の接合部に固定されている。また、円弧状の第二の光源取付けプレート49が第一の光源取付けプレート48に略平行になるように配置され、その第二の光源取付けプレート49の一端が前記固定具36によってカメラ取付け部材35に固定されると共に、その他端が張出し腕部材46と接続部材47の接合部に固定されている。
【0043】
光源ユニット50は、4つの光源51a、51b、52a、52bから構成されている。光源51a及び51bは、第一の光源取付けプレート48に取り付けられ、また、光源52a及び52bは、第二の光源取付けプレート49に取付けられ、それぞれターンテーブル20にセットされた半導体ウエハ10表面に対して検査光を照射する。なお、これら光源51a、51b、52a、52bのターンテーブル20を挟んだ反対側の前記前方支柱41、43及び後方支柱42、44で囲まれる領域外には、反射ミラー60が支持具65に所定の傾きを持って固定されている。これにより、各光源51a、51b、52a、52bから照射される検査光が半導体ウエハ10表面にて鏡面反射された際の当該反射光反射ミラー60に入射して所定の方向に逃がされ、その反射光が前記前方支柱41、43及び後方支柱42、44で囲まれる領域に侵入しないようにしている。
【0044】
前記4つの光源51a、51b,52a、52bの配置について更に詳細に説明する。
【0045】
前記4つの光源51a、51b、52a、52bは、それらの光軸OA1a、OA1b、OA2a、OA2bが、それぞれ平行とならず、かつ、ターンテーブル20にセットされた半導体ウエハ10表面の回転中心で交わるように配置される。また、第一の光源取付けプレート48に取り付けられる光源51aと第二の光源取付けプレート49に取り付けられる光源52aとの位置関係は、図6に示すようになる。
【0046】
図6において、ターンテーブル20にセットされた半導体ウエハ10表面に平行な面に対する光源51aの光軸OA1aの投影線と光源52aの光軸OA2aの投影線とのなす角度がαに設定される。この角度αは、第一の光源取付けプレート48と第二の光源取付けプレート49との間隔を調整することにより調整され、例えば、5度に設定される。第一の光源取付けプレート48と第二の光源取付けプレート49とは平行になっているので、光源51bと光源52bとの位置関係も、前記光源51aと光源52aとの位置関係と同じである。また、光源51aと光源52bとの位置関係、及び光源51bと光源52aとの位置関係も前記位置関係と同じである。
【0047】
即ち、4つの光源51a、51b、52a、52bは、前記条件(水平方向条件:図6参照)を満足するように第一の光源取付け部材48及び第二の光源取付け部材49に取付け固定される。このように前記水平方向条件を満足するような位置関係にて4つの光源51a、51b、52a、52bが配置されるので、半導体ウエハ10を前記角度αの2倍の角度(2α)回転させる毎に撮像カメラ30から得られる画像に基づいて欠陥を検出するようにしても、単一光源からの検査光に照射される半導体ウエハ10を前記角度α回転させる毎に撮像カメラ30から得られる画像に基づいて欠陥を検出する場合と同等の精度を得ることができる。即ち、半導体ウエハ10の撮影回数を減らすことができ、検査時間の短縮を図ることができるようになる。また、単一光源の場合と同じ回転角毎に画像を取得して欠陥を検出するようにすれば、更に、微細な欠陥の検出が可能となり欠陥の検出精度を向上させることができるようになる。
【0048】
第一の光源取付けプレート48に取り付けられる光源51aと光源51bとの位置関係は、図7に示すようになる。
【0049】
図7において、光源51aの光軸OA1aと光源51bの光軸OA1bがターンテーブル20にセットされる半導体ウエハ10表面に垂直な同一の平面(第一の光源取付けプレート48で決まる)に含まれ、かつ、光源51aから照射される検査光(光軸OA1a)の前記半導体ウエハ10表面に対する入射角γ1と光源51bから照射される検査光(光軸OA1b)の前記半導体ウエハ10表面に対する入射角γ2は異なる。なお、一般に光線の平面に対する入射角は、その光線と平面の法線のなす角で定義されるが、図7においては、光源51aの光軸OA1aと光源51bの光軸OA1bとが前記半導体ウエハ10表面に垂直な同一の平面内に含まれることから、それらの入射角は光軸と半導体ウエハ10表面とのなす角で表されている。
【0050】
第二の光源取付けプレート49に取り付けられる光源52aと光源52bとの位置関係も、図7に示す光源51aと光源51bとの位置関係と同様である。ただし、光源52aから照射される検査光の前記半導体ウエハ10表面に対する入射角は光源51aから照射される検査光の入射角(γ1)とは異なり、光源52bから照射される検査光の前記半導体ウエハ10表面に対する入射角は光源51bから照射される検査光の入射角(γ2)とは異なる(図3参照)。なお、光源52aから照射される検査光の前記入射角を光源51aから照射される検査光の前記入射角(γ1)と同じに設定し、光源52bから照射される検査光の前記入射角を光源51bから照射される検査ひかりの前記入射角(γ2)と同じに設定することもできる。
【0051】
即ち、各光源51a、51b、52a、52bは、前述した入射角の条件(垂直方向条件:図7参照)を満足するように、第一の光源取付け部材48及び第二の光源取付け部材49に取付け固定される。このように前記垂直方向条件を満足するような位置関係にて4つの光源51a、51b、52a、52bが配置されるので、半導体ウエハ10のチルト機構を設けなくても、同等の精度で半導体ウエハ10表面の欠陥を検出できるようになる。
【0052】
次に、半導体ウエハ10表面の欠陥を検出するための処理について説明する。前述したように配置される4つの光源51a、51b、52a、52bから検査光がターンテーブル20にセットされた半導体ウエハ10表面に照射された状態で、統括制御装置800(図2参照)からのタイミング制御信号に基づいてターンテーブル駆動制御装置700のステッピングモータ701が、前記光源51aと光源52a(光源51bと光源52b)との位置関係を表す前記角度αの2倍となる角度2α単位に回転される。このステッピングモータ701の駆動により、半導体ウエハ10は前記角度2α単位に回転される。この角度2αの間隔をおいた各角度位置において、撮像カメラ30は、半導体ウエハ10表面の撮影を行う。そして、検査処理装置500は、統括制御装置800の制御のもと撮像カメラ30からの撮影信号を取り込む。
【0053】
検査処理装置500において、入力処理部502が撮像カメラ30からの撮影信号を画素単位の輝度レベルを表す画像データに変換して画像処理部501に供給する。画像処理部501は、入力処理部502からの画像データを半導体ウエハ10表面の画像を表す1フレーム分の画像データにして原画像データとしてメモリユニット503に格納する。このような処理がターンテーブル20の回転に同期してなされることにより、各角度位置において撮像カメラ30にて撮影された半導体ウエハ10表面の画像を表す原画像データがその撮影回数N分メモリユニット503に蓄積される。
【0054】
半導体ウエハ10表面の欠陥(キズなど)に対して前記4つの光源51a、51b、52a、52bからの検査光が照射されると、その欠陥からその4つの検査光それぞれの照射方向(光軸の方向)に対してある方向に偏った強度分布となる4つの光が進み出る。このように各欠陥からは前記4つの検査光の照射方向のそれぞれに依存した方向(強度分布のピークの方向)に光が進み出るので、各欠陥からの光を撮像カメラ30にて捕捉できる確率が高くなる。そして、欠陥から進み出た上記各光のうちのいずれかが撮像カメラ30に入射すると、撮像カメラ30からの撮影信号に基づいて生成された原画像データにおけるそのキズの位置に対応した画素の輝度レベルが他の画素の輝度レベルより高くなる。
【0055】
前述したようにN枚の原画像に対応した原画像データがメモリユニット503に蓄積されると、画像処理部501は、図8に示す手順に従って処理を行う。
【0056】
図8において、画像処理部501は、メモリユニット503に格納したI番目(初期値1)の原画像データRiを取得する(S1)。メモリユニット503には、予め良品と判定された半導体ウエハの表面を撮影して得られた良品画像データ(以下、この処理の説明において、各種画像データを単に画像と表現する)が格納されており、画像処理部501は、前記取得した原画像Riと良品画像(基準画像に対応)との差分画像Siを作成する(S2:差分画像生成手段及び差分画像生成ステップに対応する機能)。具体的には、原画像Riの各画素における輝度レベルから良品画像の対応する画素の輝度レベルを減算する。その減算の結果得られた輝度レベルの各画素にて差分画像Siが構成される。従って、差分画像Siにおいて比較的高い輝度レベルの画素は、良品画像に無い欠陥対応したものと予想される。このように作成された差分画像Siは、メモリユニット503に格納される。
【0057】
画像処理部501は、上記のように得られた差分画像Siの各画素の輝度レベルに対して閾値処理を行うことにより、ノイズを除去して欠陥に対応することが予想される輝度レベルの領域(画素の集合)を抽出する(S3)。その後、画像処理部501は、メモリユニット503に蓄積された全ての原画像(N枚の原画像)に対する処理が終了したと判定するまで(S4)、次の原画像を指定(I=I+1)してその原画像に対して前述したのと同様の処理(差分画像Siの生成)を繰り返し実行する(S1、S2、S3、S4)。
【0058】
メモリユニット503に蓄積された全ての原画像に対する前記処理が終了したとの判定がなされると(S4でYES)、画像処理部501は、その時点でメモリユニット503に蓄積されているN枚の差分画像を合成して合成差分画像を生成する(S5:画像合成手段及び画像合成ステップに対応する機能)。具体的には、各差分画像に対応した原画像を得た際の角度位置に基づいて各差分画像の角度合わせを行う。そして、各差分画像における同じ位置のN個の画素の輝度レベルから所定閾値以上の輝度レベルを抽出し、その抽出された輝度レベルのうちの最大レベルをその位置の画素に対する輝度レベルとして決定する。このような処理を行うことにより、必要な欠陥情報を劣化させることなく、合成画像に取り込むことができるようになる。
【0059】
上記のようにして合成差分画像が生成されると、画像処理部501は、前記合成画像から欠陥領域を抽出する。(S6)。この欠陥領域を抽出するための処理は次のようにしてなされる。第一の輝度レベルL1以上の画素を探索する。更に、その画素を核として、前記第一の輝度レベルより小さい第二の輝度レベルL2(<L1)以上となる画素の集合領域を欠陥領域として検出する。これにより、ノイズ(第二の輝度レベルL2より小さい)を除去できると共に、欠陥の正確なサイズ(ピークを持つ第二の輝度レベルL2以上の領域)の測定が可能となる。
【0060】
次いで、画像処理部501は、1枚の半導体ウエハに対応した1枚の合成差分画像から前述したように抽出された欠陥領域(画素の集合形状)から、半導体ウエハ表面に存在する欠陥の位置、形状、大きさ、数等を表す欠陥情報(テキストデータ)を作成する(S7)。そして、画像処理部501は、その欠陥情報をモニタユニット504に送り、そのモニタユニット504に検査した半導体ウエハ10表面の欠陥の属性(位置、形状、大きさ、数等)が、例えば、表形式にて表示される。オペレータは、モニタユニット504に表示される欠陥情報を見て、検査対象となる半導体ウエハ10の良否を判定することができるようになる。
【0061】
画像処理部501は、更に、前述した処理(S5)にて得られた合成差分画像をモニタユニット504に送り、その合成差分画像をモニタユニット504に表示させることができる。この場合、オペレータは、欠陥領域として可能性の高い領域を視認することができるようになる。また、画像処理部501は、前記合成差分画像と前述した良品画像とを重ね合わせた合成画像を生成してモニタユニット504に送り、その合成画像をモニタユニット504に表示させることもできる。この場合、オペレータが実際の検査対象となる半導体ウエハ10の状態とモニタユニット504に表示された合成画像とを比較することにより、半導体ウエハ10の目視検査が容易に行えるようになる。
【0062】
前述したような画像処理部501での処理では、各原画像と良品画像との差分を表す差分画像に断片的に含まれる欠陥の情報を、全ての差分画像を合成して合成差分画像を生成することにより、つながりや広がりをもって表すことができるようになる。このため、より精度の良い欠陥検出が可能となる。更に、1枚の合成差分画像から欠陥を抽出すればよいので、その処理も簡単になる。
【0063】
前述した例では、光源ユニット50を4つの光源51a、51b、52a、52bにて構成したが、光源ユニット50の構成はこれに限られない。5つ以上の光源を配置することもできる。ただし、光源の数は、撮像カメラ30の性能と検査精度との関係等から決まる暗視野環境が保持できる範囲に決められる。特に、半導体ウエハ10表面に沿って配置される光源の数は、前記暗視野環境に影響を与えやすいので、あまり多くすることは好ましくない。
【0064】
前述した例では、差分画像を得るために良品画像を用いたが、差分画像を得るための基準となる画像(基準画像)はこれに限定されない。例えば、原画像から所定低周波帯域成分を抽出して得られる画像をその基準画像とすることもできる。一般に、原画像の欠陥に対応した部位は輝点として現れるので非常に周波数成分が高くなる。従って、原画像から抽出された所定低周波帯域成分には欠陥に対応した成分は含まれなくなり、差分画像を生成するための基準画像として適したものとなる。
【0065】
また、複数の光源の配置関係についても、各光源からの検査光がその光軸が平行でない状態で検査対象となる半導体ウエハ10の表面に照射されるものであれば特に限定されない。例えば、光源51aと光源52bや光源51bと光源52aのような斜めに配置される関係のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の一形態に係る表面検査装置の基本的構成を示す図である。
【図2】図1に示す表面検査装置の処理系の構成例を示すブロック図である。
【図3】撮像カメラ、シェード、光学ユニットの支持機構を示す図(その1)である。
【図4】撮像カメラ、シェード、光学ユニットの支持機構を示す図(その2)である。
【図5】撮像カメラ、シェード、光学ユニットの支持機構を示す図(その3)である。
【図6】図1に示す表面検査装置における各光源の満たすべき光学的条件(その1)を示す図である。
【図7】図1に示す表面検査装置における各光源の満たすべき光学的条件(その2)を示す図である。
【図8】図1に示す表面検査装置において半導体ウエハ表面の欠陥を検出するための処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10 半導体ウエハ
20 ターンテーブル
30 撮像カメラ
35 カメラ取付け部材
36 固定具
40 シェード
41、43 前方支柱
42、44 後方支柱
45、46 張出し腕部材
47 連結部材
48 第一の光源取付けプレート
49 第二の光源取付けプレート
50 光源ユニット
51a、51b、52a、52b 光源
60 反射ミラー
65 支持具
100 アライナ
200 カセット
300 試料搬入ロボット機構
400 試料搬出ロボット機構
500 検査処理装置
501 画像処理部
502 入力処理部
503 メモリユニット
504 モニタユニット
600 ロボット制御装置
700 ターンテーブル駆動制御装置
701 ステッピングモータ
702 駆動回路
800 統括制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の試料をその表面を所定方向に向けた状態で回転させる試料回転機構と、
前記試料回転機構の駆動制御を行う駆動制御手段と、
前記試料の表面に対して所定の位置関係にて設置され、前記試料表面を撮影する撮像装置と、
検査光を前記試料表面に照射する光源と、
前記駆動制御手段の制御のもと前記試料回転機構により回転される前記試料の表面を前記撮像装置にて撮影して得られる複数の試料画像から前記試料表面の欠陥を検出する欠陥検出手段とを備え、
前記欠陥検出手段は、回転される前記試料の表面を前記撮像装置にて撮影して得られる複数の角度位置での試料画像のそれぞれから所定の基準画像を差し引いて差分画像を生成する差分画像生成手段と、
前記差分画像生成手段にて得られた前記複数の角度位置での差分画像を角度位置の補正を行いつつ合成して合成差分画像を生成する画像合成手段とを有する表面検査装置。
【請求項2】
板状の試料をその表面を所定の方向に向けた状態で回転させ、
前記試料表面に検査光が照射された状態で当該試料表面を撮像装置にて撮影し、
回転される前記試料の表面を前記撮像装置にて撮影して得られる複数の試料画像から前記試料表面の欠陥を検出する表面検査方法であって、
回転される前記試料の表面を前記撮像装置にて撮影して得られる複数の角度位置での試料画像のそれぞれから所定の基準画像を差し引いて差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
前記差分画像生成ステップにて得られた前記複数の角度位置での差分画像を角度位置の補正を行いつつ合成して合成差分画像を生成する画像合成ステップとを有し、
該合成差分画像から前記試料表面の欠陥を検出するようにした表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−241716(P2008−241716A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97421(P2008−97421)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【分割の表示】特願2002−276160(P2002−276160)の分割
【原出願日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】