説明

車輪の制動力推定装置、及び、該装置を備えた車両の運動制御装置

【課題】
摩擦部材の摩擦係数に変動があっても、適正に各車輪の制動力を推定できる車輪の制動力推定装置を提供する。また、該装置によって推定された制動力に基づいて、車両の運動を安定化する車両の運動制御装置を提供する。
【解決手段】
車輪の制動力推定装置は、車両の各車輪に制動力を発生させる制動手段の摩擦部材の押付量を取得する押付量取得手段と、前記車両の前後加速度を取得する前後加速度取得手段と、前記前後加速度に基づいて前記車両に作用する減速力を演算し、該減速力及び前記押付量に基づいて前記制動力を推定する。前記推定手段は、前記車両の全ての車輪の前記押付量の総和に対する前記車両の1つの車輪の前記押付量の比率を、前記減速力に乗じることにより前記制動力を推定する。さらに、前記推定制動力に基づいて、制動制御及び操舵制御のうち少なくとも一方を実行して前記車両の運動を安定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の制動力推定装置、特に、各車輪の発生する制動力を演算する装置と、この装置を用いた車両の運動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の各車輪に付与される制動力を推定し、推定した制動力に基づき、左右の車輪に付与される制動力の差を推定し、この左右制動力差に応じて、アシスト操舵トルクを付与し、カウンタステア時の操作をアシストすることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、左右輪にそれぞれ作用する横力の和Fya#を、車両横方向についての力の釣合方程式、及び、車輪制動力(前後力)の左右差に起因するヨーモーメントMfxを含む車両ヨー運動についての回転運動方程式を利用して、横加速度Gy、及びヨーレイトの時間微分値dYrに基づいて演算し、この横力の和Fya#に基づいて車両安定化制御を行うことが記載されている。
【0004】
上述の特許文献1、及び、特許文献2に記載されるような車両の運動制御装置においては、車輪に作用する制動力を推定することが必要となる。
【0005】
特許文献3には、マスタシリンダ圧に取り付けた圧力センサの測定結果を基に、各輪のホイールシリンダ圧を推定することが記載されている。具体的には、測定された供給圧力(マスタシリンダ圧)及びバルブ動作時間から各輪のホイールシリンダ圧を求めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−291838号公報
【特許文献2】特開2009−241721号公報
【特許文献3】特開平7−186918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
摩擦ブレーキ装置では、摩擦部材(ブレーキパッド等)の摩擦力によって車輪に制動力を発生させる。摩擦部材の摩擦係数は各種の条件下で変化するため、各車輪に圧力センサが設けられて、正確なホイールシリンダ圧(制動液圧)が得られたとしても、制動液圧(即ち、摩擦部材を押付ける力)から演算される制動力には誤差が含まれる。本発明の目的は、摩擦部材の摩擦係数に変動があっても、適正に各車輪の制動力を推定できる車輪の制動力推定装置を提供することである。また、該装置によって推定された制動力に基づいて制動制御及び操舵制御のうち少なくとも一方の制御を行って車両の運動を安定化する車両の運動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車輪の制動力推定装置は、車両の各車輪(WH[**])に制動力(Fxa[**])を発生させる制動手段の摩擦部材(PD[**])の押付量(Pwa[**])を取得する押付量取得手段(PWA)と、前記車両の前後加速度(Gxa)を取得する前後加速度取得手段(GXA)と、前記前後加速度(Gxa)に基づいて前記車両に作用する減速力(Fgx)を演算し、該減速力(Fgx)、及び、前記押付量(Pwa[**])に基づいて前記制動力(Fxa[**])を推定する推定手段(FXE)とを備える。
【0009】
前記推定手段(FXE)は、前記車両の全ての車輪の前記押付量の総和(ΣPwa[**])に対する前記車両の1つの車輪の前記押付量の比率(Pwa[**]/ΣPwa[**])を、前記減速力(Fgx)に乗じることにより前記制動力(Fxa[**])を推定することが望ましい。
【0010】
車輪の制動力推定装置は、前記車両に作用する走行抵抗(Grr)を取得する走行抵抗取得手段(GRR)を備え、前記推定手段(FXE)は、前記前後加速度(Gxa)から前記走行抵抗(Grr)を除いて前記減速力(Fgx)を演算することができる。車輪の制動力推定装置は、前記車両の走行速度(Vxa)を取得する車速取得手段(VXA)を備え、前記走行抵抗取得手段(GRR)は、前記走行速度(Vxa)に基づいて前記走行抵抗(Grr)を演算してもよい。さらに、車輪の制動力推定装置は、前記車両の操舵角(Saa)を取得する操舵角取得手段(SAA)と、車両の横加速度(Gya)を取得する横加速度取得手段(GYA)とを備え、前記走行抵抗取得手段(GRR)は、前記操舵角(Saa)、及び、前記横加速度(Gya)に基づいて前記走行抵抗(Grr)を演算することができる。
【0011】
車輪の制動力推定装置は、前記車両の各車輪の接地荷重(Fza[**])を取得する接地荷重取得手段(FZA)と、前記車両の走行する路面の摩擦係数(μmax)を取得する摩擦係数取得手段(MMX)とを備え、前記推定手段(FXE)は、前記接地荷重(Fza[**])、及び、前記路面の摩擦係数(μmax)に基づいて前記制動力(Fxa[**])に制限(上限値)を設けることができる。
【0012】
走行中の車両の運動を安定化する車両の運動制御装置において、前記の各車輪(WH[**])に制動力(Fxa[**])を発生させる制動手段の摩擦部材(PD[**])の押付量(Pwa[**])を取得する押付量取得手段(PWA)と、前記車両の前後加速度(Gxa)を取得する前後加速度取得手段(GXA)と、前記制動手段(MBR)の制動部材の押付量(Pwa[**])を取得する押付量取得手段(PWA)と、前記前後加速度(Gxa)に基づいて前記車両に作用する減速力(Fgx)を演算し、該減速力(Fgx)、及び、前記押付量(Pwa[**])に基づいて前記制動力(Fxa[**])を推定し、推定制動力(Fxe[**])とする推定手段(FXE)と、前記推定制動力(Fxe[**])に基づいて、前記車両に対し制動制御及び操舵制御のうち少なくとも一方を実行して前記車両の運動を安定化する制御手段(CTL)とを備える構成にできる。前記推定手段(FXE)は、前記車両の全ての車輪の前記押付量の総和(ΣPwa[**])に対する前記車両の1つの車輪の前記押付量の比率(Pwa[**]/ΣPwa[**])を、前記減速力(Fgx)に乗じることにより前記推定制動力(Fxe[**])を演算することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
車輪の制動力推定装置においては、前後加速度取得手段(前後加速度センサ)の信号によって車両に作用する減速力(全車輪の制動力の合計)が演算されて、これに基づいて各車輪の制動力が推定されるため、摩擦ブレーキ装置の摩擦部材(例えば、制動パッド)の摩擦係数(μpad)が変動しても、適切に各車輪の制動力が推定され得る。各車輪ブレーキの条件(例えば、摩擦部材の温度、ブレーキ液の粘性)は概ね同等と考えられるため、各車輪の押付量の比率で前記減速力を各車輪に配分することによって精度良く各車輪の制動力が推定され得る。
【0014】
前後加速度取得手段(例えば、車体に固定された前後加速度センサ)の信号には、走行抵抗(転がり抵抗、空気抵抗、コーナリング抵抗等)による成分が含まれている。車輪の制動力推定装置においては、走行抵抗取得手段によって前後加速度取得手段の信号に含まれる走行抵抗成分が推定され、これが補償されることで、精度良く各車輪の制動力が推定され得る。
【0015】
前後スリップが所定の範囲内(所謂、μ−S特性においてμピーク値以下の範囲)にある場合、車輪(空気入りタイヤ)に付与される制動トルク(即ち、摩擦部材の押付力)と発生する制動力とは線形関係にある。しかし、前後スリップが過大である場合には、摩擦部材の押付量(例えば、制動液圧)の増加に対応して制動力が減少する特性となる。車輪の制動力推定装置においては、接地荷重(Fza[**])、及び、路面摩擦係数(μmax)に基づいて、各車輪の制動力を発生し得る最大制動力(=μmax・Fza[**])に制限する(最大制動力を上限値とする)ことによって、前後スリップが過大である場合にも、適正に制動力が推定され得る。
【0016】
各車輪の制動力を推定し、この制動力に基づいて車両安定化制御(制動制御、操舵制御)を実行する車両の運動制御装置においては、摩擦部材の摩擦係数等が変動しても各輪制動力が精度良く推定できるため、車両安定化制御が適切に実行され得る。上述と同様に、各車輪の押付量(例えば、制動液圧)の比率で前記減速力を各車輪に配分することによって精度良く各車輪の制動力が推定され、車両安定化制御が適切に実行され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車輪の制動力推定装置、及び、該装置を備えた車両の運動制御装置を備えた車両の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車輪の制動力推定装置について説明するための機能ブロック図である。
【図3】図2における修正加速度の演算処理を説明するための機能ブロック図である。
【図4】図3における第1走行抵抗値を演算するマップ(特性)について説明するための図である。
【図5】図3における第2走行抵抗値の演算処理を説明するための機能ブロック図である。
【図6】図3における第2走行抵抗値の演算処理を説明するための他の機能ブロック図である。
【図7】図2における推定制動力に制限を設けて演算するための機能ブロック図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車輪の制動力推定装置によって推定された推定制動力に基づく車両の運動制御装置について説明するための機能ブロック図である。
【図9】図8における制動制御演算ブロックについて説明するための機能ブロック図である。
【図10】図8における操舵制御演算ブロックについて説明するための機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る車輪の制動力推定装置、及び、該装置を利用する車両の運動制御装置を備えた車両の全体構成を示す図である。
【0019】
なお、各種記号等の末尾に付された添字[**]は、各種記号等が4輪のうちの何れかに関するものであるかを示す。「f」は前輪、「r」は後輪、「m」は車両進行方向に対して右側車輪、「h」は左側車輪を示す。したがって、「fh」は左前輪、「fm」は右前輪、「rh」は左後輪、「rm」は右後輪を示す。また、車両の加速・減速は、一般的には正負の符号が付され、例えば、加速が正符号として表され、減速が負符号として表される。しかし、値の大小関係、或いは、値の増加・減少を説明する際にその符号を考慮すると非常に煩雑となる。そのため、説明においては、特に限定がない場合には、絶対値の大小関係、絶対値の増加・減少を表す。また、所定値は正の値とする。
【0020】
車両には、車輪速度Vwa[**]を検出する車輪速度センサWS[**]と、ステアリングホイールSWの(車両の直進走行に対応する操舵装置の中立位置「0」からの)回転角度θswを検出するステアリングホイール角センサSAと、操向車輪(前輪)の操舵角δfaを検出する前輪舵角センサSBと、運転者がステアリングホイールSWを操作する際のトルクTswを検出する操舵トルクセンサSTと、車両に作用する実際のヨーレイトYraを検出するヨーレイトセンサYRと、車体前後方向における前後加速度Gxaを検出する前後加速度センサGXと、車体横方向における横加速度Gyaを検出する横加速度センサGYと、後述する押付量(例えば、ホイールシリンダWC[**]の制動液圧)Pwa[**]を検出する押付量センサ(例えば、ホイールシリンダ圧力センサ)PW[**]と、エンジンEGの回転速度Neaを検出するエンジン回転速度センサNEと、エンジンのスロットル弁の開度Tsaを検出するスロットル位置センサTSが備えられる。
【0021】
そして、運転者の運転操作を検出する手段として、運転者の加速操作部材(例えば、アクセルペダル)APの操作量Asaを検出する加速操作量センサASと、運転者の制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPの操作量Bsaを検出する制動操作量センサBSと、変速操作部材SFのシフト位置Hsaを検出するシフト位置センサHSとが備えられている。
【0022】
また、車両には、制動液圧を制御するブレーキアクチュエータBRKと、スロットル弁を制御するスロットルアクチュエータTHと、燃料の噴射を制御する燃料噴射アクチュエータFIと、変速を制御する自動変速機ATとが備えられている。
【0023】
加えて、車両には、上述の各種アクチュエータ(BRK等)、及び上述の各種センサ(WS[**]等)と電気的に接続された電子制御ユニットECUが備えられている。電子制御ユニットECUは、相互に通信バスCBで接続された、複数の独立した電子制御ユニットECU(ECUb,ECUs,ECUe,ECUa)から構成されたマイクロコンピュータである。電子制御ユニットECU内の各系の電子制御ユニット(ECUb等)は、専用の制御プログラムをそれぞれ実行する。各種センサの信号(センサ値)、及び、各電子制御ユニット(ECUb等)内で演算される信号(内部演算値)は、通信バスCBを介して共有される。
【0024】
本装置は、電子制御ユニットECU内に備えられる。例えば、ブレーキアクチュエータBRKを制御するブレーキ系電子制御ユニットECUb内に備えられている。本装置では、修正前後加速度Gxs(走行抵抗による影響が除かれた前後加速度)が、前後加速度センサGXによって検出される実際の前後加速度Gxaと、車両速度Vxa等に基づいて演算される。ここで、前後加速度Gxaは、車両速度Vxaを微分して演算され得る。更に、修正前後加速度Gxsに基づいて、車両の積載状態によって変動する車両諸元(重量、重心位置、慣性質量等)が推定される。
【0025】
ブレーキ系電子制御ユニットECUbでは、車輪速度センサWS[**]、ヨーレイトセンサYR、横加速度センサGY等からの信号に基づいて、アンチスキッド制御(ABS制御)、トラクション制御(TCS制御)等のスリップ抑制制御(前後力制御)が実行される。また、車輪速度センサWS[**]によって検出された各車輪の車輪速度Vwa[**]に基づいて、周知の方法によって、車両の走行速度Vxaが演算される。
【0026】
操舵系電子制御ユニットECUsでは、操舵トルクセンサST等からの信号に基づいて、電動パワーステアリング制御(EPS制御)が実行される。また、ブレーキ系電子制御ユニットECUbにて演算される車速Vxaに基づいて可変ステアリングギヤ比制御(VGR制御)が実行される。
【0027】
エンジン系電子制御ユニットECUeでは、加速操作量センサAS等からの信号Asaに基づいて、スロットルアクチュエータTH、燃料噴射アクチュエータFIの制御が実行される。トランスミッション系電子制御ユニットECUaでは、自動変速機ATの変速比の制御が実行される。
【0028】
ブレーキアクチュエータBRKは、複数の電磁弁(液圧調整弁)、液圧ポンプ、電気モータ等を備えた周知の構成を有している。ブレーキ制御の非実行時では、ブレーキアクチュエータBRKは、運転者による制動操作部材BPの操作に応じた制動液圧を各車輪のホイールシリンダWC[**]にそれぞれ供給し、各車輪に対して制動操作部材(ブレーキペダル)BPの操作に応じた制動トルクをそれぞれ与える。アンチスキッド制御(ABS制御)、トラクション制御(TCS制御)、或いは、車両のアンダステア、オーバステアを抑制する車両安定性制御(ESC制御)等のブレーキ制御の実行時には、ブレーキアクチュエータBRKは、ブレーキペダルBPの操作とは独立してホイールシリンダWC[**]毎の制動液圧を制御し、制動トルクを車輪毎に調整できる。
【0029】
各車輪には、制動手段として、周知のホイールシリンダWC[**]、ブレーキキャリパBC[**]、ブレーキパッドPD[**]、及び、ブレーキロータRT[**]が備えられる。ブレーキキャリパBC[**]に設けられたホイールシリンダWC[**]に制動液圧が与えられることにより、ブレーキパッドPD[**]がブレーキロータRT[**]に押付けられ、その摩擦力によって、各車輪に制動トルクが与えられる。なお、制動トルクの制御は、制動液圧によるものに限らず、電気ブレーキ装置を利用して行うことも可能である。
【0030】
前輪操舵制御機構STRでは、運転者に操作されるステアリングホイールSWが、アッパステアリングシャフトUSS、ステアリングギヤ比可変機構VGR、ロアステアリングシャフトLSSを介して電動パワーステアリング機構EPSに接続されている。これにより、ステアリングホイールSWの回転がEPSに伝達されるようになっている。
【0031】
電動パワーステアリング機構EPSは、電気モータ、ラック&ピニオン等を備えた周知の構成の一つにより構成されている。ロアステアリングシャフトLSSの回転運動をロッドRDの車体左右方向の並進運動に変換するとともに、ロアステアリングシャフトLSSから受ける回転トルクを助勢する方向にロッドRDを駆動するアシスト力を電気モータ(図示せず)により発生するようになっている。以上より、運転者によりステアリングホイールSWが回転操作されると、運転者の操舵トルクがアシスト力により助勢されながら、操向車輪である前輪WH[fm]、WH[fh]が転舵されるようになっている。
【0032】
ステアリングギヤ比可変機構VGRは、電気モータ、減速機等を備えた周知の構成の一つにより構成されている。電気モータ(図示せず)の回転角度を制御することで、ステアリングホイールの回転角度と独立して前輪(操向車輪)WH[fm]、WH[fh]の舵角が制御できるようになっている。可変ステアリングギヤ比制御では、前輪WH[fm]、WH[fh]の舵角に対するステアリングホイールSWの回転角度の比率(ステアリングギヤ比)が変更可能に構成されている。
【0033】
図2は、本発明の実施形態を説明するための図であり、推定制動力Fxe[**]を演算するための機能ブロック図である。これらの演算処理は、電子制御ユニットECU内(例えば、ブレーキ系電子制御ユニットECUb内)にプログラムされている。
【0034】
各輪押付量取得演算ブロックPWAにて、各輪の押付量Pwa[**]が演算される。押付量Pwa[**]は、ブレーキパッドPD[**]がブレーキロータRT[**]に押付けられる力(押付力)に相当する値であり、例えば、ホイールシリンダWC[**]内の制動液圧である。押付量Pwa[**]は、PW[**]の検出信号に基づいて演算される。或いは、押付量Pwa[**]は、ブレーキアクチュエータBRKの複数電磁弁の作動状態に基づいて推定され得る。
【0035】
押付量総和演算ブロックPWSにて、押付量Pwa[**]に基づいて押付量総和Pwsが演算される。押付量総和Pwsは、各車輪の押付量Pwa[**]の総合計であり、Pws=ΣPwa[**] によって演算される。
【0036】
押付量比率演算ブロックHPWにて、押付量Pwa[**]、及び、押付量総和Pwsに基づいて押付量比率Hpw[**]が演算される。押付量比率Hpw[**]は、押付量総和Pwsに対する各車輪の押付量Pwa[**]の比率であり、Hpw[**]=Pwa[**]/Pws によって演算される。
【0037】
前後加速度取得演算ブロックGXAにて、前後加速度Gxaが取得される。前後加速度Gxaは、前後加速度センサGXによって検出される信号に基づいて演算される。また、車輪速度センサWS[**]によって検出される車輪速度Vwa[**]に基づいて演算される車両の走行速度(車両速度)Vxaを微分することによって、前後加速度Gxaが演算され得る。
【0038】
車両減速力演算ブロックFGXにて、前後加速度Gxaに基づいて、車両減速力Fgxが演算される。車両減速力Fgxは、車両を減速させる力であり、各車輪の発生する制動力の総和であり、Fgx=Mvh・Gxa によって演算される。ここで、Mvhは車両重量(所定値)である。前後加速度Gxaに代えて、前後加速度Gxaから走行抵抗(車輪の転がり抵抗等)を除去した値(修正加速度)Gxsが用いられ得る。修正加速度Gxsの演算方法については後述する。
【0039】
各輪制動力推定演算ブロックFXEにて、減速力Fgx、及び、押付量比率Hpw[**]に基づいて、各車輪の推定制動力Fxe[**]が演算される。推定制動力Fxe[**]は、Fxe[**]=Hpw[**]・Fgx によって演算される。
【0040】
前後加速度Gxaに応じた減速力(車両を減速させる前後力)Fgxが、各車輪の押付量の比率Hpw[**]に基づいて、各車輪に分配されて推定制動力Fxe[**]が演算される。各車輪の制動力は、ブレーキパッドPD[**]の摩擦係数μpad(具体的には、μpad・Pwa[**])に応じた値であるため、摩擦係数μpadの変動によって制動力は変化する。ブレーキパッド摩擦係数μpadの実際値と、推定制動力Fxe[**]の演算に用いられる値(演算処理において予め設定された所定値)との間に差が生じると、推定制動力Fxe[**]の誤差が増大する。前後加速度Gxaに基づいて車両全体に作用する制動力(減速力Fgx)が演算されるため、上述の誤差の拡大が抑制され得る。
【0041】
また、電磁弁の作動状態に基づく制動液圧の推定演算(即ち、押付量Pwa[**]をBRKの電磁弁の作動状態から推定する演算)では、ホイールシリンダWC[**]への制動液の移動量(即ち、ホイールシリンダWC[**]へ移動する制動液の体積)を推定して液圧が演算される。制動液圧推定は、制動液の温度(具体的には、温度による制動液の粘性)の影響を受ける。さらに、制動液の移動量は、積分演算によって求められるため、演算を開始するタイミング(具体的には、積分演算時間の長さ)の影響を受ける。推定された押付量Pwa[**]の絶対値には、上述の粘性、積分時間等の誤差が含まれる。しかし、押付量総和Pwsに対する相対量である押付量比率Hpw[**]が推定制動力Fxe[**]の演算に用いられるため、それらの誤差の影響は補償され得る。
【0042】
図3を用いて、走行抵抗に基づいて前後加速度Gxaを修正演算して求められる修正加速度Gxsの演算処理の機能ブロック図である。ここで、修正加速度Gxsは、車輪の発生する前後力によって生じる前後加速度であり、走行抵抗に起因する前後加速度成分が補償された値である。これらの演算処理は、電子制御ユニットECU内(例えば、ブレーキ系電子制御ユニットECUb内)にプログラムされている。
【0043】
前後加速度取得演算ブロックGXAにて、前後加速度Gxaが取得される。前後加速度Gxaは、前後加速度センサGXによって検出される信号に基づいて演算される。また、車輪速度センサWS[**]によって検出される車輪速度Vwa[**]に基づいて演算される車両速度Vxaを微分することによって、前後加速度Gxaが演算され得る。
【0044】
横加速度取得演算ブロックGYAにて、横加速度Gyaが演算される。横加速度Gyaは、横加速度センサGYによって検出される信号に基づいて演算される。また、ヨーレイトセンサYRによって検出されるヨーレイトYraに基づいて演算され得る。
【0045】
操舵角取得演算ブロックSAAにて、操舵角Saaが演算される。操舵角Saaは、ステアリングホイール角度センサSAによって検出される信号(ステアリングホイールSWの回転角度であるステアリングホイール角度θsw)に基づいて演算される。また、前輪舵角センサFSによって検出される前輪舵角δfaに基づいて演算され得る。即ち、操舵角Saaは、ステアリングホイール角度θsw、及び、前輪舵角δfaのうちの少なくとも一方に基づいて演算され得る。
【0046】
車両速度取得演算ブロックVXAにて、車両速度Vxaが演算される。車両速度Vxaは、車輪速度センサWS[**]によって検出される車輪速度Vwa[**]に基づいて演算される。
【0047】
走行抵抗取得手段GRRにて、車輪の転がり抵抗、車体の空気抵抗、車輪のコーナリング抵抗等の走行抵抗を表す走行抵抗値Grk、Grc、Grrが演算される。走行抵抗取得手段GRRは、第1走行抵抗演算ブロックGRK、第2走行抵抗演算ブロックGRC、及び、加算手段CXSによって構成される。
【0048】
第1走行抵抗演算ブロックGRKにて、第1走行抵抗値Grkが演算される。第1走行抵抗値Grkは、前後加速度Gxaに含まれる車輪の転がり抵抗、及び、車体の空気抵抗による成分である。なお、転がり抵抗には、車輪(空気入りタイヤ)そのものの転がり抵抗の他、車軸の摩擦抵抗、摩擦ブレーキの引き摺り抵抗が含まれる。第1走行抵抗値Grkは、車両速度Vxaに基づいて図4に示す演算マップ(特性)に基づいて演算される。第1走行抵抗値Grkは、車両速度Vxaが極低速の場合には所定値gk1と演算され、車両速度Vxaの上昇に従って増加される。
【0049】
第2走行抵抗演算ブロックGRCにて、第2走行抵抗値Grcが演算される。第2走行抵抗値Grcは、前後加速度Gxaに含まれる、車輪が発生する横力の車両前後方向に対応する成分である。第2走行抵抗値Grcの演算については、後述する。
【0050】
加算手段CXSにて、第1走行抵抗値Grkと第2走行抵抗値Grcとが加算されて調整走行抵抗値Grrが演算される。調整走行抵抗値Grrは、前後加速度センサGX等によって検出される前後加速度Gxaを調整して、修正加速度Gxsを演算するための値である。そして、修正加速度演算ブロックGXSにて、前後加速度Gxaから調整走行抵抗値Grrが除かれて(減算されて)修正加速度Gxsが演算される。即ち、修正加速度(修正後の前後加速度)Gxsは、前後加速度センサGX等の信号から走行抵抗成分が除去された値であり、車輪の前後力のみによって車両に生じる前後加速度である。
【0051】
第1走行抵抗演算ブロックGRK、及び、第2走行抵抗演算ブロックGRCの何れか一方が省略され得る。第1走行抵抗演算ブロックGRKが省略された場合には、第2走行抵抗値Grcが、そのまま調整走行抵抗値Grrとされる。第2走行抵抗演算ブロックGRCが省略された場合には、第1走行抵抗値Grkが、そのまま調整走行抵抗値Grrとされる。
【0052】
前後加速度取得手段(例えば、車体に固定された前後加速度センサGX)の信号には、車輪の転がり抵抗、車体の空気抵抗、車輪のコーナリング抵抗等の走行抵抗による成分が含まれるが、修正手段GRR(GRC、GRK、CXS)によって演算された走行抵抗値(Grc、Grk、Grr)に基づいて、走行抵抗成分が除去されるため、車輪の前後力(制・駆動力)のみによって発生する前後加速度が精度良く得られる。
【0053】
図5は、図3の第2走行抵抗演算ブロックGRCにおける第2走行抵抗値Grcの演算を説明するための機能ブロック図である。
【0054】
車体スリップ角演算ブロックBTAにて、ヨーレイトYra、車両速度Vxa、操舵角Saa、横加速度Gya、及び、公知の演算方法に基づいて車体スリップ角βaが演算される。例えば、車体スリップ角速度dβを演算し、dβを積分した値(=∫(Yra−Gya/Vxa)dt)と、操舵角Saa、車両速度Vxa、及び、車両モデルに基づいて演算される値とに基づいてβaが演算され得る。
【0055】
前後輪スリップ角演算ブロックALFにて、車体スリップ角βa、及び、操舵角Saaに基づいて前輪スリップ角αfa、及び、後輪スリップ角αraが演算される。例えば、前輪スリップ角αfaは、αfa=βa+Saa によって演算され、後輪スリップ角αraは、αra=βa によって演算され得る。
【0056】
横加速度前後輪成分演算ブロックGFRにて、横加速度の前輪成分(前輪が発生させている横加速度)Gyf、及び、後輪成分(後輪が発生させている横加速度)Gyrが演算される。例えば、横加速度の前輪成分Gyfは、Gyf=Gy・Lr/L によって演算され、横加速度の後輪成分Gyrは、Gyr=Gy・Lf/L によって演算され得る。ここで、Lはホイールベース、Lfは重心から前輪軸までの距離、Lrは重心から後輪軸までの距離である。
【0057】
前後方向成分演算ブロックGYMにて、横加速度の前後輪成分Gyf、Gyr、及び、前後輪スリップ角αfa、αraに基づいて第2走行抵抗値Grcが演算される。例えば、Grc=Gyf・sin(αfa)+Gyr・sin(αra) に基づいて演算され得る。
【0058】
図6は、図3の第2走行抵抗演算ブロックGRCにおける第2走行抵抗値Grcの演算を説明するための他の機能ブロック図である。コーナリング抵抗は概ね旋回状態に応じた値となるため、予め設定された特性(演算マップ)を用いて、横加速度Gya、及び、操舵角Saaに基づいて第2走行抵抗値Grcが演算され得る。第2走行抵抗値Grcは、横加速度Gya、及び、操舵角Saaの少なくとも一方の増加に従って増大するように演算される。
【0059】
図7は、本発明の他の実施形態を説明するための図であり、推定制動力Fxe[**]に制限(上限値)を設けて演算するための機能ブロック図である。前後力(制・駆動力)は、車輪の前後スリップによって発生するが、所定の前後スリップ(例えば、スリップ率が15%程度)において、前後力はピーク値をとる。このピーク値は、接地荷重(垂直荷重)と路面摩擦係数の影響を受ける。
【0060】
各輪接地荷重取得演算ブロックFZAにて、各輪の接地荷重Fza[**]が演算される。接地荷重Fza[**]は、各車輪に備えられた荷重センサ(図示せず)の出力信号に基づいて演算される。また、前後加速度センサGX、及び、横加速度センサGYの出力(前後加速度Gxa、及び、横加速度Gya)のうちの少なくとも何れか一方、及び、公知の方法に基づいて荷重変動(静的荷重(予め設定されている所定値)からの変動量)が演算されることによって、接地荷重Fza[**]が決定され得る。路面摩擦係数取得演算ブロックMMXにて、車輪と路面との間の摩擦係数(路面摩擦係数)μmaxが演算される。路面摩擦係数μmaxは、前後加速度Gxa、及び、横加速度Gyaのうちの少なくとも何れか一方、及び、公知の方法に基づいて演算される。
【0061】
制限演算ブロックLMTにて、接地荷重Fza[**]、及び、路面摩擦係数μmaxに基づいて、推定制動力Fxe[**]に制限が与えられ、制限後の推定制動力Fxe[**]が演算される。具体的には、各輪制動力推定演算ブロックFXEにて演算された推定制動力Fxe[**]とμmax・Fza[**]とを比較し、大きい方の値が制限後の推定制動力Fxe[**]として演算される。推定制動力Fxe[**]が、接地荷重Fza[**]、路面摩擦係数μmaxに基づいて演算される前後力のピーク値(上限値)に制限されるため、推定制動力Fxe[**]の演算精度が向上され得る。
【0062】
次に、機能ブロック図である図8を用いて、上記車輪制動力推定装置によって推定された推定制動力Fxe[**]に基づいて、制動制御、及び、操舵制御のうちの少なくとも何れか一方を実行する車両の運動制御装置について説明する。
【0063】
制御手段CTLにて、ブレーキアクチュエータBRK、電動パワーステアリング機構EPS、及び、ステアリングギヤ比可変機構VGRのうちの少なくとも1つを制御する目標値が、推定制動力Fxe[**]に基づいて演算される。制御手段CTLには、各車輪の制動力を個別に制御するための制動制御演算ブロックBFCと、ステアリングホイールSWに付与される操舵トルク、及び、操向車輪舵角(前輪舵角)のうちの少なくとも何れか一方を制御するための操舵制御演算ブロックSTCとが含まれている。制動制御演算ブロックBFC、及び、操舵制御演算ブロックSTCのうちの何れか一方が省略され得る。
【0064】
図9の機能ブロック図を参照して、制動制御演算ブロックBFCについて説明する。
【0065】
制動制御目標値演算ブロックFXTにて、操舵角Saa(ステアリングホイール角度θsw、前輪舵角δfa)、車両速度Vxa、及び、旋回状態量Taaに基づいて、車両を安定化する車両安定化制御における制動力の目標値Fxt[**]が演算される。ここで、旋回状態量TaaはヨーレイトYra、横加速度Gya等の車両の旋回運動を表す状態量である。操舵角Saa、車両速度Vxa、及び、旋回状態量Taaに基づいて、車両のステア特性が過度のオーバステアであると判定されると、少なくとも車両の旋回外側前輪の制動力目標値Fxt[**]が増加される。また、操舵角Saa、車両速度Vxa、及び、旋回状態量Taaに基づいて、車両のステア特性が過度のアンダステアであると判定されると、少なくとも車両の旋回内側後輪の制動力目標値Fxt[**]が増加される。そして、制動制御目標値演算ブロックFXTにて演算された制動力目標値Fxt[**]に基づいてブレーキアクチュエータBRKが制御される。
【0066】
横力実際値演算ブロックFYAにて、推定制動力Fxe[**]、及び、旋回状態量Taaに基づいて、各輪の横力実際値Fya[**]が演算される。具体的には、車両横方向、及び、重心回りの力の釣合式を用いて、横加速度Gya、ヨーレイトYraを微分したヨー角加速度dYr、及び、推定制動力Fxe[**]から求められる左右制動力差ΔFxに基づいて横力実際値Fya[**]が演算される。
【0067】
横力規範値演算ブロックFYKにて、操舵角Saa、及び、車両速度Vxaに基づいて、横力規範値Fyk[**]が演算される。横力規範値Fyk[**]は、車両速度Vxaにて操舵角Saaの操舵操作が行われたときに、車両の旋回運動に必要とされる車輪横力の目標となる値である。横力規範値Fyk[**]の演算では、路面摩擦係数μmaxが考慮され得る。
【0068】
比較手段DFYにて、横力実際値Fya[**]と横力規範値Fyk[**]とが比較され、その比較結果(横力偏差)ΔFy[**](=Fya[**]−Fyk[**])が出力される。制動制御目標値演算ブロックFXTでは、横力偏差ΔFy[**]に基づいて、制動力目標値Fxt[**]の調整が行われる。具体的には、横力偏差ΔFy[**]が所定値dfy1以下となった場合に、制動力目標値Fxt[**]の増加が制限される。即ち、車輪の実際の横力が低下した場合に、制動力目標値Fxt[**]の増加の程度が減少されて、必要な横力が確保され得る。
【0069】
各輪の横力偏差ΔFy[**]に代えて、車軸における横力偏差ΔFy[#]が用いられ得る。ここで、添字[#]は、前輪軸、及び、後輪軸のうちの何れかに関するものであることを示し、[f]は前輪軸、[r]は後輪軸を示す。横力偏差ΔFy[#]は、車両横方向、及び、重心回りの力の釣合式を用いて、横加速度Gya、ヨーレイトYraを微分したヨー角加速度dYr、及び、推定制動力Fxe[**]から求められる左右制動力差ΔFxに基づいて車軸毎の横力実際値Fya[#]は演算される。
【0070】
図10の機能ブロック図を参照して、操舵制御演算ブロックSTCについて説明する。
【0071】
制動力左右差演算ブロックDFXにて、推定制動力Fxe[**]に基づいて、制動力の左右差ΔFxが演算される。左右制動力差ΔFxの演算は、車両がμスプリット路面(左右車輪において摩擦係数の異なる路面)を走行し、ABS制御(車輪速度に基づいて車輪ロックを防止する制御)が実行された場合に行われ得る。
【0072】
操舵トルク目標値演算ブロックTSTにて、左右制動力差ΔFxに基づいて操舵トルク目標値Tstが演算される。具体的には、操舵トルク目標値Tstは左右制動力差ΔFxが所定値dfx1以上の場合に制動力差によって発生される車両偏向(ヨーイング運動)を抑制する操舵方向へステアリングホイールSWが動かされるように操舵トルク目標値Tstが演算される。そして、操舵トルク目標値Tstに基づいて電動パワーステアリング機構EPSが制御される。
【0073】
操舵角目標値演算ブロックVGTにて、左右制動力差ΔFxに基づいて操舵角目標値Vgtが演算される。具体的には、操舵角目標値Vgtは左右制動力差ΔFxが所定値dfx2以上の場合に制動力差によって発生される車両偏向(ヨーイング運動)を抑制する操舵方向へ操向車輪(前輪)が操舵されるように操舵角目標値Vgtが演算される。そして、操舵角目標値Vgtに基づいてステアリングギヤ比可変機構VGRが制御される。
【0074】
μスプリット路面を走行中に、ABS制御が実行されると、車両は路面摩擦係数が高い側の方向に偏向する。操舵制御は、操舵トルク付与によって運転者に対してカウンタステア操作(車両偏向を抑制するステアリング操作)を促し、操向車輪の舵角調整によって自動的にカウンタステアを実行する。さらに、走行抵抗が除去された前後加速度(修正加速度)Gxsに基づいて演算された左右制動力差ΔFxに基づいて、操舵制御が実行されるため、高精度な操舵制御が行われ得る。なお、操舵トルク目標値演算ブロックTST、及び、操舵角目標値演算ブロックVGTのうちの何れか一方は省略され得る。
【符号の説明】
【0075】
ECU…電子制御ユニット、GX…前後加速度センサ、GY…横加速度センサ、WS[**]…車輪速度センサ、YR…ヨーレイトセンサ、PW[**]…押付量センサ、SW…ステアリングホイール、SA…ステアリングホイール角センサ、FS…前輪舵角センサ、PD[**]…摩擦部材、BRK…ブレーキアクチュエータ、EPS…電動パワーステアリング機構、VGR…ステアリングギヤ比可変機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の各車輪に制動力を発生させる制動手段の摩擦部材の押付量を取得する押付量取得手段と、
前記車両の前後加速度を取得する前後加速度取得手段と、
前記前後加速度に基づいて前記車両に作用する減速力を演算し、該減速力、及び、前記押付量に基づいて前記制動力を推定する推定手段と
を備えたことを特徴とする車輪の制動力推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載される車輪の制動力推定装置において、
前記推定手段は、前記車両の全ての車輪の前記押付量の総和に対する前記車両の1つの車輪の前記押付量の比率を、前記減速力に乗じることにより前記制動力を推定することを特徴とする車輪の制動力推定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載される車輪の制動力推定装置であって、
前記車両に作用する走行抵抗を取得する走行抵抗取得手段を備え、
前記推定手段は、前記前後加速度から前記走行抵抗を除いて前記減速力を演算することを特徴とする車輪の制動力推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載される車輪の制動力推定装置であって、
前記車両の走行速度を取得する車速取得手段を備え、
前記走行抵抗取得手段は、前記走行速度に基づいて前記走行抵抗を演算することを特徴とする車輪の制動力推定装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載される車輪の制動力推定装置であって、
前記車両の操舵角を取得する操舵角取得手段と、
車両の横加速度を取得する横加速度取得手段とを備え、
前記走行抵抗取得手段は、前記操舵角、及び、前記横加速度に基づいて前記走行抵抗を演算することを特徴とする車輪の制動力推定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載される車輪の制動力推定装置であって、
前記車両の各車輪の接地荷重を取得する接地荷重取得手段と、
前記車両の走行する路面の摩擦係数を取得する摩擦係数取得手段とを備え、
前記推定手段は、前記接地荷重、及び、前記路面の摩擦係数に基づいて前記制動力に制限を設けることを特徴とする車輪の制動力推定装置。
【請求項7】
走行中の車両の運動を安定化する車両の運動制御装置において、
前記の各車輪に制動力を発生させる制動手段の摩擦部材の押付量を取得する押付量取得手段と、
前記車両の前後加速度を取得する前後加速度取得手段と、
前記制動手段の制動部材の押付量を取得する押付量取得手段と、
前記前後加速度に基づいて前記車両に作用する減速力を演算し、該減速力、及び、前記押付量に基づいて前記制動力を推定し、推定制動力とする推定手段と、
前記推定制動力に基づいて、前記車両に対し制動制御及び操舵制御のうち少なくとも一方を実行して前記車両の運動を安定化する制御手段と
を備えたことを特徴とする車両の運動制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載される車両の運動制御装置において、
前記推定手段は、前記車両の全ての車輪の前記押付量の総和に対する前記車両の1つの車輪の前記押付量の比率を、前記減速力に乗じることにより前記推定制動力を演算することを特徴とする車両の運動制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−143884(P2011−143884A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8141(P2010−8141)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】