説明

電界効果トランジスタおよびそれを用いたメモリおよび半導体回路

【課題】微細化した半導体集積回路において用いられる、オフ電流の小さな電界効果トランジスタ(FET)を提供する。
【解決手段】絶縁表面に略垂直に形成された厚さが1nm以上30nm以下の薄片状の酸化物半導体と、前記酸化物半導体を覆って形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を覆って形成されたストライプ状の幅10nm以上100nm以下のゲートを有する電界効果トランジスタ。この構成では、薄片状の酸化物半導体の三方の面をゲートが覆うこととなるため、ソース、ドレインから注入される電子を効率的に排除し、ソースとドレインの間をほぼ空乏化領域とでき、オフ電流を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタおよびそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路等に用いられる電界効果トランジスタ(以下、FET)はシリコン等の半導体によって形成されてきた(例えば、非特許文献1参照)。近年、バンドギャップが2.5電子ボルト以上の酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタが報告されている。特に、半導体層中のドナー濃度を極めて低くすることにより、そのオフ電流を通常の方法では測定できないレベルにまで低下できることが明らかとなった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、シリコンを用いたFETでは、チャネル幅1μmあたりのオフ電流は通常、1×10−15A/μm以上であるのに対し、インジウム−ガリウム−亜鉛系酸化物(In−Ga−Zn系酸化物)半導体を用いたFETでは1×10−18A/μm以下とすることができる。これはバンドギャップが大きいために真性半導体では熱励起キャリアが極めて低濃度となるためであり、バンドギャップが3電子ボルト以上であると、理論的なオフ電流の下限は1×10−31A/μm以下となる。
【0004】
このようなオフ電流が極めて低いFETを、1つのFETと1つのキャパシタにより構成されるダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(1T1C型DRAM)に用いれば、リフレッシュの間隔を十分に長くすることができる。理想的にはリフレッシュを半永久的におこなわなくても、データを保持できる(特許文献2参照)。
【0005】
また、2つのトランジスタと1つのキャパシタとにより構成されるゲインセル型メモリ(特許文献3参照)に用いれば、半永久的に不揮発なメモリとできる。なお、これまで提案されてきたゲインセル型メモリは大容量のキャパシタが不要であるため、1T1C型DRAMの欠点を補うものとして考えられてきたが、多くの場合、オフ電流を十分に小さくすることができないため、実用化されることはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公開第2011/0148455号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2011/0156027号明細書
【特許文献3】米国特許第7468901号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hisamoto et al. ”A Folded−channel MOSFET for Deep−sub−tenth Micron Era”, IEDM Tech. Dig., pp.1032―1034, 1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者の研究の結果、このような極めて低いオフ電流は、チャネル長が十分に長い場合にこそ達成できるが、チャネル長が100nm以下となると、短チャネル効果により実現が困難であることがわかった。
【0009】
その理由を図10を用いて説明する。図10(A)はチャネル長が十分に長い場合である。膜状の酸化物半導体201aには、オーミック接触するソース204a、ドレイン205aより電子(キャリア)が注入される。しかしながら、ゲート203aの仕事関数を5.2電子ボルト以上とすることにより、それらの電子を酸化物半導体201aより排除して、広い領域にわたって電子の無い空乏化領域206aを形成することができる。
【0010】
空乏化領域206aが存在することにより、ソース204aとドレイン205a間の電流を阻止でき、その結果、極めて低いオフ電流を実現できる。このような電子を排除する作用は、ゲート絶縁膜202aが薄く、誘電率が高いほど、また、ゲート203aの仕事関数が大きいほど効果的である。
【0011】
図10(B)は、酸化物半導体の厚さを変えずに、チャネル長のみを短くした場合である。この場合には、特に酸化物半導体201bの下の部分(ゲート絶縁膜202bの反対側)において、ゲートの作用が及ばず、電子の濃度を十分に小さくできない。すなわち、酸化物半導体201bのうち、ゲート203b側には空乏化領域206bが形成されるが、酸化物半導体201bの下の部分にまでおよばない。その結果、ソース204bとドレイン205b間の電流を十分に阻止できないのである。
【0012】
このような問題は、酸化物半導体201bを可能な限り薄くする方法によって解決できることがある。しかしながら、厚さが1nm未満であると酸化物半導体201bの半導体特性に問題が生じることがある。特に、酸化物半導体201bが何らかの結晶構造を有する場合には、必要な結晶性が得られないこともある。
【0013】
シリコンを用いたFETでも、チャネル長が短くなることによるオフ電流の上昇やサブスレショールド特性の悪化は短チャネル効果として知られているが、酸化物半導体ではより顕著となる。それは、シリコンを用いたFETでは、ソースとチャネル形成領域、あるいはドレインとチャネル形成領域の間をPN接合によって分離することができるが、酸化物半導体ではチャネルをソースもしくはドレインから分離するためにPN接合を形成することが困難なためである。
【0014】
一般に、シリコンを用いたFETでは、例えば、ソースとドレインを高濃度なN型とする場合、チャネル形成領域も適当な濃度のP型とする。このようにして形成されるPN接合によって、ソースやドレインからチャネルに電子が注入されることを防止できる。チャネル形成領域のP型不純物の濃度が高ければ、電子の注入を防止する作用が強くなる。このため、シリコンを用いたFETでは、チャネル長が短くなればチャネル形成領域の不純物濃度を高くして短チャネル効果を抑制できる。
【0015】
これに対し、多くの場合、酸化物半導体では、シリコンのようにドーピングによって半導体の型(導電型)を制御することは困難で、例えば、酸化インジウム等のインジウムを含む酸化物、あるいは酸化亜鉛のように亜鉛を含む酸化物では、N型半導体は作製できるが、P型半導体は作製できない。したがって、シリコンを用いたFETのようにチャネル形成領域を高濃度なP型とするような手法は採用できない。
【0016】
微細化を進めるにあたっては、チャネル長を短くすることは必須であり、短チャネルでも十分に低いオフ電流が得られることが望まれる。本発明の一態様は上記のような短チャネル化に伴うオフ電流の上昇を回避することのできるFETを提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、十分に微細化されたFETを提供することを課題とする。また、本発明の一態様はFETを有する半導体装置を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、FETあるいは半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。本発明では以上の課題の少なくとも1つを解決する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、厚さが1nm以上30nm以下、好ましくは3nm以上5nm以下で、高さが最小加工線幅(Feature Size)の1倍以上で、絶縁表面に略垂直に形成された薄片状の酸化物半導体と、酸化物半導体を覆って形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を覆って形成されたストライプ状の幅10nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下のゲートを有するFETである。なお、本明細書において「略垂直」とは、対象となる面に対して、70°以上110°以下の角度を有する場合をいう。
【0018】
また、本発明の一態様は、厚さが1nm以上30nm以下、好ましくは3nm以上5nm以下で、高さが最小加工線幅の1倍以上で、絶縁表面に略垂直に形成された薄片状の酸化物半導体と、酸化物半導体の少なくとも3つの面に接するソースおよびドレインと、酸化物半導体を覆って形成されたゲート絶縁膜とを有するFETである。ここで、ソースとドレインの間隔は10nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下のFETとするとよい。
【0019】
上記において、酸化物半導体は、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫を用いることができる。また、二元系金属酸化物である、例えば、In−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Sn系酸化物、あるいはIn−Ga系酸化物などを用いることもできる。ここで、例えば、In−Ga系酸化物とは、インジウム(In)とガリウム(Ga)をそれぞれ5原子%以上含む酸化物という意味であり、その他の元素が含まれていてもよい。
【0020】
例えば、In−Zn系酸化物を用いる場合、インジウム(In)と亜鉛(Zn)をIn/Zn=0.5〜50、好ましくはIn/Zn=1〜20、さらに好ましくはIn/Zn=1.5〜15の比率で含む酸化物ターゲットを用いて酸化物半導体を形成することができる。なお、In−Zn系酸化物の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=x:y:zのとき、z>1.5x+yとするとよい。なお、インジウムの比率を高くすることにより、FETの移動度を向上させることができる。
【0021】
同様に、酸化物半導体として、三元系金属酸化物である、In−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、あるいはSn−Al−Zn系酸化物などを用いることができる。また、四元系金属酸化物である、In−Sn−Ga−Zn系酸化物を用いてもよい。
【0022】
ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、インジウム(In)とガリウム(Ga)と亜鉛(Zn)をそれぞれ3.3原子%以上含む酸化物という意味であり、その他の元素が含まれていてもよい。また、In−Sn−Ga−Zn系酸化物では、インジウム(In)と錫(Sn)とガリウム(Ga)と亜鉛(Zn)をそれぞれ、2.5原子%以上含む酸化物という意味であり、その他の元素が含まれていてもよい。
【0023】
また、上記において酸化物半導体は結晶性を有する領域を有してもよい。また、その領域の結晶は、c軸が酸化物半導体面に略垂直であるとよい。特にFETのチャネルが形成される領域(表面上にゲートが設けられる領域あるいはゲートが覆う領域)は、結晶性を有することが好ましい。
【0024】
このような結晶は、ab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、又は正六角形の原子配列を有し、且つ、c軸方向に金属原子が層状に配列した相、又はc軸方向に金属原子と酸素原子が層状に配列した相を有してもよい。このように表面に対し、c軸が略垂直である結晶を有する酸化物半導体をC Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor(CAAC−OS)という。
【0025】
また、上記において酸化物半導体の一部は、窒素、硼素あるいはリンを有する領域を有してもよく、特に、それらの領域は、イオン注入法等の手段によりゲートをマスクとして自己整合的に形成されてもよい。また、酸化物半導体の全部あるいは一部にはニッケルもしくは銅のような電子を吸収する作用を有する金属元素あるいは過酸化物を形成する作用を有する金属元素を0.1原子%乃至5原子%有してもよい。
【0026】
また、上記において、ゲート絶縁膜は酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、珪酸ハフニウム、酸窒化シリコン、窒化シリコンから選ばれた1つ以上の材料を含んでもよい。
【0027】
また、上記において、ゲート絶縁膜は、構成する酸素以外の元素のうちの50原子%以上がシリコン、タンタル、ハフニウム、アルミニウム、イットリウム、ランタンから選ばれた1つ以上の元素である酸化物よりなってもよい。
【0028】
なお、本明細書で金属元素とは、希ガス元素、水素、ホウ素、炭素、窒素、16族元素(酸素等)、17族元素(フッ素等)、シリコン、燐、ゲルマニウム、砒素、アンチモン以外の全ての元素のことである。また、酸化物とは、金属元素以外の元素に占める酸素の比率が50原子%以上の化合物のことである。
【0029】
本発明の他の一態様は、上記のFETを1つ以上用いたメモリである。メモリとしては1T1C型RAMおよびゲインセル型メモリを挙げることができる。また、本発明の他の一態様は、上記のFETを用いて形成されたレジスタを有する中央演算処理回路(CPU)、あるいはその他の半導体集積回路(LSI)等の半導体回路である。
【発明の効果】
【0030】
上記の構成では、薄片状の酸化物半導体の三方の面をゲートが覆うこととなる。このため、ソース、ドレインから酸化物半導体に注入される電子を効率的に排除し、ソースとドレインの間の部分のほとんどを空乏化領域とでき、オフ電流を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【図2】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【図3】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【図4】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【図5】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【図6】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【図7】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【図8】本発明の一態様のFETの作製方法の例を説明する図である。
【図9】本発明の一態様のFETの作製方法の例を説明する図である。
【図10】従来の一態様のFETの例を説明する図である。
【図11】本発明の一態様を説明する図である。
【図12】本発明の一態様を説明する図である。
【図13】本発明の一態様のFETと従来のFETの特性の比較を説明する図である。
【図14】本発明の一態様の応用例を説明する図である。
【図15】本発明の一態様の応用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0033】
(実施の形態1)
図1乃至図4に本実施の形態のFETの形状の概念図を示す。図1はFETの斜視図であり、図2は面Xでの断面図、図3は面Yでの断面図、図4は面Zでの断面図である。図1乃至図4に示すFETは絶縁表面100に接して、厚さtが1nm以上30nm以下、好ましくは3nm以上5nm以下、高さhが、5nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下の薄片状の酸化物半導体101を有する。
【0034】
酸化物半導体101は結晶構造を有することが好ましく、上述のCAAC−OSであることが好ましい。この場合、酸化物半導体101は、底面以外に少なくとも複数の面を有するが、それぞれの面に垂直になるように複数の結晶が配置することが好ましい。このような結晶状態を得るには、薄片状の非晶質の酸化物半導体を形成した後、適切な温度および雰囲気で加熱処理するとよい。
【0035】
また、酸化物半導体101の一部には、ソース104、ドレイン105が接して設けられる。ソース104、ドレイン105には、アルミニウム、マグネシウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの金属材料、あるいはこれらの金属材料を主成分とする合金材料の層を用いることができる。合金材料の層としては、例えばCu−Mg−Al合金材料の層を用いることができる。またはそれらの金属窒化物を用いてもよい。
【0036】
そして、酸化物半導体101、ソース104、ドレイン105を覆い、酸化物半導体101と接して設けられるゲート絶縁膜102を有する。ゲート絶縁膜102は単層あるいは2層以上の積層構造を有し、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、珪酸ハフニウム、酸窒化シリコン、窒化シリコンから選ばれた材料を用いて形成すればよい。
【0037】
ゲート103は、ゲート絶縁膜102を覆って形成され、ゲート絶縁膜102に接してもよいし、接しなくてもよい。また、ゲート103はストライプ状であり、本実施の形態のFETではソース104、ドレイン105の一部と重なるように形成する。このFETのチャネル長はソース104とドレイン105の間の間隔L1で定義できる(図2および図3参照)。
【0038】
また、チャネル幅は酸化物半導体101の3つの面の長さの和(ほぼ、2h+t)で定義できる(図4参照)。hは回路の最小加工線幅とは無関係に大きくできるので、チャネル幅はチャネル長に比べて十分に大きくできる。そのため、FETのオン電流が大きくなる。
【0039】
ゲート103は単層あるいは2層以上の積層構造を有し、白金、パラジウム、オスミウム、等の白金系貴金属あるいはタングステン、モリブデン、チタンから選ばれた金属、あるいはそれらの窒化物、インジウムを有する金属窒化物あるいは金属酸窒化物、亜鉛を有する金属窒化物あるいは金属酸窒化物、p型シリコン等を用いればよい。特に、その仕事関数が5.2電子ボルト以上の材料をゲート絶縁膜102に面して形成することが好ましい。例えば、窒化インジウムは仕事関数が5.6電子ボルトであるので好適である。
【0040】
このような仕事関数の大きな材料は抵抗率が高いものが多いが、そのような場合には、仕事関数の大きな材料をゲート絶縁膜102に面して形成し、その上により導電性の良好な材料(導電体)を適切な厚さで形成すればよい。より導電性の良好な材料に対しては仕事関数に関する制約はない。
【0041】
図4に示すように、酸化物半導体101はゲート103により三方の面をゲートにより囲まれている。このため、ソース、ドレインから酸化物半導体101に注入される電子を効率的に排除し、ソースとドレインの間に空乏化領域106を形成でき、オフ電流を低減できる。また、FETの占有する面積に関らず、FETのチャネル幅を大きくできるので、集積度を高く保ったまま、高速な半導体回路を構成できる。
【0042】
(実施の形態2)
図5に本実施の形態のFETを示す。図5(A)は図2に相当するX面での断面図であり、図5(B)は図3に相当するY面での断面図である。なお、本実施の形態のFETの図4に相当するZ面での断面図は図4と同じである。
【0043】
本実施の形態のFETは絶縁表面100に接する酸化物半導体101を有する。また、酸化物半導体101の一部には、ソース104、ドレイン105が接して設けられる。そして、酸化物半導体101、ソース104、ドレイン105を覆い、酸化物半導体101と接して設けられるゲート絶縁膜102を有する。さらに、ゲート絶縁膜102を覆ってゲート103が形成される。本実施の形態では、ゲート103がソース104およびドレイン105と重ならないように形成する点で実施の形態1に示すFETと異なる。
【0044】
図5に示すFETでは、ゲート103がソース104ともドレイン105とも重ならない構造としたが、いずれか一方のみが重なる構造であってもよい。図5に示すFETでも、チャネル長はソース104とドレイン105の間隔L2で定義されるが、チャネル長には、ソース104とゲート103あるいはドレイン105とゲート103が重なっていない部分(オフセット領域)も含まれる。図5(B)に示すオフセット領域の幅xはゲート103とソース104およびゲート103とドレイン105の間のリーク電流を防止する上では10nm以上であることが好ましい。
【0045】
一般にソースとドレインの間にオフセット領域が設けられると、オン電流が低下するが、本実施の形態のFETは、実施の形態1のFETと同様に、チャネル幅Wが回路の最小加工線幅とは無関係に大きくでき、オン電流が十分大きいので、オフセット領域による減少分を相殺できる。
【0046】
また、特に、オフセット領域の幅xが10nm以上30nm以下、好ましくは10nm以上20nm以下であれば、オン電流の減少は十分に小さい。さらに、上記の大きさのオフセット領域を設けることで、空乏化領域106を広げることができ、より短チャネル効果を抑制できる。さらには、ゲート103とソース104あるいはドレイン105との寄生容量を削減できる。
【0047】
なお、ゲート絶縁膜が薄い場合においても、上記の構造のFETではゲート103とソース104あるいはゲート103とドレイン105間のオフ状態でのリーク電流を削減できる。この場合のリーク電流は主としてトンネル効果によるものであるので、以下ではトンネル電流という。図5に示すように、空乏化領域106がゲート103とソース104あるいはゲート103とドレイン105の中間ぐらいまで広がっている。
【0048】
このような状況では、例えば、ソース104とゲート103の間のトンネル電流は空乏化領域106とゲート絶縁膜102という2つの障壁を越える必要がある。ソース104から見た空乏化領域106の障壁高さは、酸化物半導体101のバンドギャップの半分あるいはそれ以上であり、例えば、酸化物半導体のバンドギャップが3.2電子ボルトであれば、1.6電子ボルトである。
【0049】
これは、典型的な絶縁物である酸化シリコンの障壁高さ(4電子ボルト程度あるいはそれ以下)と比較すると小さいが、トンネル電流を削減するには、障壁が長いことは障壁が高いことと同じくらいあるいはそれ以上に有効であるため、空乏化領域106が十分に広がって、障壁が長い場合にはトンネル電流は十分に低減できる。
【0050】
例えば、実施の形態1のFETではオフセット領域が設けられていないので、ソース104とゲート103の間のトンネル電流はゲート絶縁膜102の厚さによって決定される。したがって、トンネル電流をソースとドレイン間に流れる電流と同等あるいはより小さくするには、ゲート絶縁膜102の物理的な厚さを5nm以上とすることが求められる。ゲート絶縁膜102の厚さが5nm未満では、トンネル電流の寄与が大きくなり、トンネル電流を含めたオフ電流を低減できなくなる。
【0051】
特に、実施の形態1のFETではソース104とゲート103の重なっている面積が大きいため、現実的にはゲート絶縁膜102の物理的な厚さを10nm以上とすることが求められる。このように、ゲート絶縁膜102が厚くなるとFETのオン電流(すなわち、スイッチング速度)が低下する。
【0052】
一方、本実施の形態のFETでは、(1)図5(B)に示すように、空乏化領域106の端からゲート103の端部までの距離yとゲート絶縁膜102の厚さの和が5nm以上であること、あるいは、(2)空乏化領域106の端からゲート103までの距離が5nm以上であることという、いずれかの条件を満たせばよい。
【0053】
例えば、距離yが5nmであれば、ゲート絶縁膜102の厚さは0であっても、オフ状態でのソース104とゲート103の間のトンネル電流を十分に阻止できる。もっとも、オン状態ではゲート絶縁膜102の厚さが有限でないと、FETの正常な動作ができないため、現実的には、ゲート絶縁膜102の厚さは0.5nm以上5nm未満、好ましくは0.5nm以上2nm以下とすればよい。
【0054】
ゲート絶縁膜102の厚さはオン状態でのリーク電流の大きさを勘案して決定すればよい。消費電力を抑制する上では、ゲート絶縁膜102を厚くすることが望まれ、また、高速動作が必要な場合は、ゲート絶縁膜を薄くすることが望まれる。例えば、メモリのように、オン状態の期間がオフ状態の期間の1万分の1以下の用途であれば、ゲート絶縁膜を薄くしても消費電力が格段に増加することはない。
【0055】
(実施の形態3)
図6に本実施の形態のFETを示す。図6(A)は図2に相当するX面での断面図であり、図6(B)は図3に相当するY面での断面図である。なお、本実施の形態のFETの図4に相当するZ面での断面図は図4と同じである。本実施の形態のFETは絶縁表面100に接する酸化物半導体101を有する。
【0056】
また、酸化物半導体101の一部には、ソース104、ドレイン105が接して設けられる。そして、酸化物半導体101、ソース104、ドレイン105を覆い、酸化物半導体101と接して設けられるゲート絶縁膜102を有する。さらに、ゲート絶縁膜102を覆ってゲート103が形成される。また、ゲート103がソース104およびドレイン105と重ならないように形成する点で実施の形態2に示すFETと同じである。
【0057】
本実施の形態のFETは、酸化物半導体101中に、N型領域107およびN型領域108を有する点で、実施の形態2のFETと異なる。N型領域107およびN型領域108はゲート103、ソース104、ドレイン105をマスクとして、窒素、硼素、リン等をイオン注入法等の手段で酸化物半導体101に導入すればよい。また、N型領域107およびN型領域108中の窒素、硼素あるいはリンの濃度は1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下、好ましくは1×1018cm−3以上1×1020cm−3以下とするとよい。
【0058】
図6に示すFETでは、2つのN型領域を有する構造としたが、いずれか一方のみを有する構造であってもよい。図6に示すFETでは、チャネル長は、実質的にはゲートの幅L3で定義できる。本実施の形態のFETは実施の形態2のFETよりもオン電流を大きくでき、また、実施の形態1のFETよりもゲート103とソース104あるいはドレイン105との寄生容量を削減できる。
【0059】
(実施の形態4)
図7に本実施の形態のFETを示す。図7(A)は図2に相当するX面での断面図であり、図7(B)は図3に相当するY面での断面図である。なお、本実施の形態のFETの図4に相当するZ面での断面図は図4と同じである。本実施の形態のFETは絶縁表面100に接する酸化物半導体101を有する。
【0060】
また、酸化物半導体101の一部には、ソース104、ドレイン105が接して設けられる。また、酸化物半導体101の一部を覆うゲート絶縁膜102を有する。ゲート絶縁膜102の端部はソース104あるいはドレイン105と接してもよい。
【0061】
さらに、ゲート絶縁膜102を覆ってゲート103が形成される。また、ゲート103の端部に接して側壁絶縁物109および側壁絶縁物110が設けられ、側壁絶縁物109はソース104と、側壁絶縁物110はドレイン105と接するように設けられる。側壁絶縁物109および側壁絶縁物110は、それぞれ、ソース104およびドレイン105がゲート103と接触することを防ぐ。
【0062】
本実施の形態のFETは、酸化物半導体101中に、N型領域107およびN型領域108を有する。N型領域107およびN型領域108はゲート103をマスクとして、窒素、硼素、リン等をイオン注入法等の手段で酸化物半導体101に導入すればよい。また、N型領域107およびN型領域108中の窒素、硼素あるいはリンの濃度は1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下、好ましくは1×1018cm−3以上1×1020cm−3以下とするとよい。
【0063】
図7に示すFETでは、チャネル長は、実質的にはゲートの幅L4で定義できる。本実施の形態のFETは、酸化物半導体101のうちソース104あるいはドレイン105が重なっている部分もN型領域107およびN型領域108となっているため、実施の形態3のFETよりもオン電流を大きくでき、また、実施の形態1のFETよりもゲート103とソース104あるいはドレイン105との寄生容量を削減できる。
【0064】
図7に示すFETと図10(C)に示す平面型(プレーナ型)FETの特性(ドレイン電流(I)のゲート電位(V)依存性)を計算した結果を以下に示す。ここで、図7に示すFETにおいてはL4=t=x1=x2=30nm、h=50nmとした。すなわち、図7に示すFETではチャネル長は30nmであり、チャネル幅は130nmである。また図10(C)に示すFETにおいてL5=x1=x2=30nm、酸化物半導体201cの厚さdを30nm、チャネル幅は130nmとした。
【0065】
また、図7に示すFETと図10(C)に示すFETにおいて、ゲート絶縁膜102およびゲート絶縁膜202cの比誘電率は4.1、ゲート絶縁膜102およびゲート絶縁膜202cの厚さは5nm、ゲート103およびゲート203cの仕事関数は5.5電子ボルト、酸化物半導体101および酸化物半導体201cのバンドギャップを3.15電子ボルト、酸化物半導体101および酸化物半導体201cの電子親和力を4.6電子ボルト、酸化物半導体101および酸化物半導体201cの比誘電率を15、N型領域107、N型領域108、N型領域207およびN型領域208の抵抗率を0.3Ω・cm、ソース104およびソース204cおよびドレイン105およびドレイン205cの仕事関数を4.6電子ボルトとした。
【0066】
計算はシノプシス社(Synopsys, Inc.)製デバイスシミュレータ、Sentaurus Deviceを使用した。計算結果を図13(A)に示す。なお、ソースの電位は0V、ドレインの電位は+1Vである。図13(A)において、構造Aは図10(C)に示すFETのものであり、構造Bは図7に示すFETのものである。
【0067】
図から明らかなように、構造AのFETでは、特にオフ電流を十分に小さくできず、ゲートの電位を−3Vとしてもドレイン電流は10−14A以上である。これに対し、構造Bではゲートの電位を−1Vとしたとき、ドレイン電流は10−18A以下となり、十分にオフ電流を小さくできる。
【0068】
同じ計算をFETのサイズを変えておこなった。図7に示すFETにおいてはL4=x1=x2=30nm、t=5nm、h=15nmとした。すなわち、図7に示すFETではチャネル長は30nmであり、チャネル幅は35nmである。また図10(C)に示すFETにおいてL5=x1=x2=30nm、d=5nm、チャネル幅は35nmとした。その結果を図13(B)に示す。なお、ソースの電位は0V、ドレインの電位は+1Vである。
【0069】
図13(B)において、構造Aは図10(C)に示すFETのものであり、構造Bは図7に示すFETのものである。酸化物半導体201cの(チャネル長に対する)薄膜化によって、構造AのFETでもオフ電流が低下しつつあるが、それでも構造Bよりは大きく、例えば、ゲートの電位が0Vの場合、構造Bではドレイン電流が10−20A以下であるのに対し、構造Aではドレイン電流が10−18A程度である。
【0070】
チャネル長と酸化物半導体101あるいは酸化物半導体201cの厚さtの比率(L/t)は、図13(A)では1であるのに対し、図13(B)では6である。構造AのFETが図13(B)に示すようにそれなりに良好な特性を示したのは、酸化物半導体201cのチャネル長が変わらないまま、薄くなったことにより短チャネル効果が緩和されたためである。
【0071】
構造BのFETにおいても、このような酸化物半導体101の相対的な薄膜化により短チャネル効果は緩和できる。加えて、プレーナ型FETでは、十分な特性が得られないようなL/tが2以下の構造においても、構造BのFETでは十分な特性が得られることが特徴である。
【0072】
(実施の形態5)
図8および図9を用いて本実施の形態のFETの作製方法を説明する。図8および図9は、FETの各作製工程における3つの断面を表記したものであり、非特許文献1のFig.1に相当する。なお、以下の説明では、公知の半導体作製技術あるいは特許文献1、特許文献2を参照できる。
【0073】
まず、図8(A)に示すように絶縁表面100上に薄片状の酸化物半導体101を形成する。酸化物半導体の厚さtは1nm以上30nm以下、好ましくは3nm以上5nm以下、高さhは、5nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とするとよい。また、幅wは任意の値とできるが、集積度を高める上では、最小加工線幅Fの2倍乃至5倍とするとよい。なお、1つの酸化物半導体101に複数のFETを設ける場合はこの限りではない。
【0074】
図8(A)に示す酸化物半導体101は、薄片状の直方体であり、6つの面を有する。このうち、1つの面(底面)は絶縁表面100に含まれる。また、1つの面は絶縁表面100と全く接していない。以下、この面をα面と呼ぶ。さらに、他の4つの面は面の一部(1つの辺)が絶縁表面100と接しているが、このうち、面積の大きな2つの面をβ面、他の2つの面をγ面と呼ぶ。
【0075】
なお、図8(A)では酸化物半導体101を完全な直方体として描いているが、その他の形状であってもよい。例えば、酸化物半導体101のいずれかの断面においてコーナーが特定の曲率半径を有する曲面であってもよい。その場合、α面とβ面、γ面間の境界は判然としないこともある。また、底面がα面よりも広くてもよいし、あるいは底面がα面より狭くてもよい。
【0076】
酸化物半導体101を形成後、250℃乃至750℃で熱処理をおこなってもよい。この熱処理は、好ましくは、水蒸気濃度が極めて低い超乾燥空気(露点が−60℃以下、好ましくは−80℃以下)や、高純度の酸素ガス、高純度の窒素ガス(いずれも純度が6N以上(不純物濃度は1ppm以下)、好ましくは7N以上(不純物濃度は0.1ppm以下))雰囲気下、あるいは1Pa以下の高真空環境下でおこなうことが好ましい。
【0077】
このような雰囲気で熱処理をおこなうと、酸化物半導体101より水素が脱離する。水素は、特にバンドギャップが3電子ボルト以上で、電子親和力が4電子ボルト以上である酸化物半導体においてはドナーとなるので、その濃度を低くすることがFETのオフ電流を小さくする上で好ましい。
【0078】
酸化物半導体101の材料によっては、上記の熱処理により、各面に対してc軸が垂直な結晶構造を呈することがある。
【0079】
なお、酸化物半導体101を高真空のような還元的な雰囲気で熱処理すると、水素と同時に酸素の一部も失われる。酸化物半導体においては、酸素欠損もドナーとなるので、これを補うことが好ましく、そのためには、引き続いて、酸化性雰囲気で熱処理することが好ましい。
【0080】
また、酸素欠損によるキャリア(この場合は電子)濃度の上昇を抑制するためには、酸化物半導体101に電子を吸収する性質のあるニッケルや銅を0.1原子%乃至5原子%含有させておいてもよい。
【0081】
次に酸化物半導体101を覆ってゲート絶縁膜102を形成する。ゲート絶縁膜102の厚さおよび誘電率はトランジスタの特性を決定する上で重要な要素であり、0.5nm以上20nm以下、好ましくは0.5nm以上10nm以下とするとよい。実施の形態2で説明したように適切な長さのオフセット領域を設けた場合には、トンネル電流を抑制できるため、ゲート絶縁膜102の物理的な厚さを2nm以下とできる。
【0082】
ゲート絶縁膜102には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル等の公知の材料を用いればよい。
【0083】
その後、ゲート絶縁膜102を覆って、第1の導電性材料膜を形成する。第1の導電性材料膜のうち、ゲート絶縁膜102に接する部分には、仕事関数が5.2電子ボルト以上の材料(例えば、白金、オスミウム、パラジウム等の白金系貴金属や窒化インジウムあるいは酸窒化インジウム(In−O−N)、酸窒化インジウムガリウム(In−Ga−O−N)、酸窒化インジウム亜鉛(In−Zn−O−N)、酸窒化インジウムガリウム亜鉛(In−Ga−Zn−O−N)等)を用いるとよい。また、第1の導電性材料膜のその他の部分はアルミニウム、銅、チタン、タングステン等の導電性の高い金属材料を主成分とする材料で構成すればよい。
【0084】
さらに、第1の導電性材料膜の上に第1の絶縁性材料膜を形成する。第1の縁性材料膜には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム等を用いればよい。
【0085】
そして、図8(B)に示すように、第1の導電性材料膜および第1の絶縁性材料膜をエッチングして、ストライプ状で、酸化物半導体101のα面の一部およびβ面の一部を覆うゲート103およびゲート103上のバリア絶縁物111を形成する。
【0086】
その後、イオン注入法等の手段により、ゲート103およびバリア絶縁物111をマスクとして、酸化物半導体101にリンを注入する。リンの代わりに窒素や硼素を注入してもよい。いずれの場合も酸化物半導体101はN型を呈する。必要に応じて、イオンを注入した後、250℃乃至750℃で熱処理してもよい。最適な熱処理の温度および雰囲気は注入する元素によって異なる。
【0087】
酸化物半導体101の高さhが100nmを超える場合には、酸化物半導体101にこれらのイオンを均質に注入できないことがあるため、酸化物半導体101の高さは100nm以下とすることが好ましい。なお、実施の形態2で説明したオフセット領域を設ける場合には、このイオン注入工程を省略する。
【0088】
その後、ゲート絶縁膜102およびゲート103、バリア絶縁物111を覆って、第2の絶縁性材料膜を形成する。第2の絶縁性材料膜は第1の絶縁性材料膜に用いる材料あるいはそれらと同様な材料から選べばよいが、第1の絶縁性材料膜とは、エッチングレートが異なることが好ましい。また、第2の絶縁性材料膜は、ゲート絶縁膜102とエッチング特性が似ていることが好ましい。
【0089】
その後、異方性エッチング法により、図9(A)に示すように、ゲート103およびバリア絶縁物111の側面に側壁絶縁物109および側壁絶縁物110を形成する。側壁の幅は5nm以上、好ましくは10nm以上とするとよい。この際、ゲート絶縁膜102のうち側壁絶縁物109および側壁絶縁物110、ゲート103で覆われていない部分もエッチングし、酸化物半導体101を露出させる。
【0090】
このとき、図9(A)に示すように酸化物半導体101(N型領域107およびN型領域108)もその上部がエッチングされること(オーバーエッチング)がある。これは第2の絶縁性材料膜と酸化物半導体101のエッチングレート比を十分に大きくできないためである。
【0091】
特に、第2の絶縁性材料膜を酸化シリコン、酸窒化シリコンとする場合には、ドライエッチングでのエッチングレートがインジウムを含む酸化物半導体あるいは亜鉛を含む酸化物半導体と大差ないので、どうしても酸化物半導体101がエッチングされてしまう。
【0092】
このことは本実施の形態で扱うFETに限らず、図10(C)に示すプレーナ型のFETにおいても、同様に問題となる。特に、図10(C)に示すプレーナ型FETでは、上述の通り、オフ電流を十分に低くするためには、酸化物半導体201cを極めて薄くすることが求められる。その場合には、エッチング条件の許容範囲が厳しくなり、許容範囲から外れると側壁絶縁物やゲート203cで覆われた部分以外のほとんどの部分の酸化物半導体201cが失われることもある。
【0093】
一方、本実施の形態のFETでは、例えば、酸化物半導体101の高さを十分に大きくできるので、多少、酸化物半導体101がエッチングされたとしても、FETの作製を失敗することはない。
【0094】
一般に、一定の拡がりのある面内でのエッチングでは、エッチング速度が部分によって異なることがある。図10(C)に示すプレーナ型FETでは、その面内の全ての場所で、酸化物半導体201cのオーバーエッチングを酸化物半導体201cの厚さに対して十分に小さくすることは極めて難しく、歩留まりの低下の大きな要因となる。
【0095】
本実施の形態のFETでは、酸化物半導体101のオーバーエッチングは酸化物半導体101の厚さtではなく、高さhに対して十分に小さくすればよく、高さhは厚さtの数倍あるいはそれ以上となるので、エッチング条件がより緩やかであり、歩留まりも高い。
【0096】
次に、第2の導電性材料膜を形成し、これをエッチングして、図9(B)に示すように、ソース104、ドレイン105を形成する。ソース104、ドレイン105は露出した酸化物半導体101に接して形成される。図9(B)では、ソース104、ドレイン105は酸化物半導体101のα面、β面およびγ面に接するように形成されるが、必ずしもγ面に接する必要はない。
【0097】
酸化物半導体101は大気に触れると水を吸収し劣化するため、FETが外気と接触することを防止するためにバリア性のある適切な絶縁性材料(窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等)の膜を形成してもよい。なお、以上示したFETでは、酸化物半導体101のほとんどの部分がゲート103、ソース104およびドレイン105に覆われる構造となるため、プレーナ型FETに比べると耐久性が高い。
【0098】
(実施の形態6)
以上の実施の形態では、FETを絶縁表面上に形成する例を示したが、一部が導電性である表面の上にFETを形成してもよい。その場合には、下層と電気的な接続が可能となる。図11にそのようなFETとそれを利用した半導体回路(メモリセル)の例を示す。
【0099】
図11には、1つのトランジスタと1つのキャパシタよりなるランダム・アクセス・メモリ(RAM)の構造の例を示したものである。同じ回路をシリコン半導体を用いたFETで構成した場合には、1T1C型DRAMと呼ばれる。シリコン半導体を用いたFETでは、オフ電流が大きいため、数十ミリ秒ごとにデータを再書き込み(リフレッシュ)する必要があるためである。
【0100】
しかしながら、上述のように、酸化物半導体を用いたFETでは、オフ電流がシリコン半導体を用いたFETより十分に小さくできるため、実質的にはリフレッシュが不要な場合がある。その場合、DRAMと称することは差支えがあるため、以下では単にRAMあるいは、他の構造のRAMと区別する意味では、1T1C型RAMと称する。
【0101】
図11に示すRAMのメモリセルおよびその他の回路の構成を説明する。図11に示す半導体回路は、シリコン半導体基板表面に形成された単結晶シリコン半導体を用いたトランジスタを有するドライバ回路部114、メモリセルのセルトランジスタ115、メモリセルのキャパシタ116、およびメモリセルとドライバ回路部の間に設けられたビット線113を有する。ビット線113は各種導電性材料を用いて構成すればよい。ビット線113はドライバ回路部114と電気的に接続される。
【0102】
メモリセルのセルトランジスタには、実施の形態2で示したオフセット領域を有するFETを使用する。その作製方法および詳細な構造は実施の形態5も参照できる。ここでは、図5(B)に示す断面図に相当する断面図を表示するが、他の面での断面図は実施の形態2を参照にすればよい。なお、実施の形態2に示すFETに限らず、その他の実施の形態で示したFETを使用してもよい。
【0103】
FETは層間絶縁物112、およびビット線113と電気的に接続する導電性領域113a上に形成され、酸化物半導体101、ゲート絶縁膜102、ゲート103、ソース104、ドレイン105を有する。酸化物半導体101の一部、およびソース104の一部は導電性領域113aと接する。導電性領域113aの表面は平坦であることが好ましい。一方、ドレイン105は導電性領域113aとは接しない。また、ドレイン105は、接続電極117を介して、キャパシタ116に接続される。
【0104】
キャパシタ116は下部電極118、キャパシタ絶縁膜119、上部電極120により構成される。なお、キャパシタの構成に関しては、これに限らず、公知の各種スタック型キャパシタの構造を適用できる。下部電極118、キャパシタ絶縁膜119、上部電極120の材料や厚さ、大きさ等に関しても、公知の各種スタック型キャパシタのものを適用できる。
【0105】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態2のFETをいわゆるゲインセル型メモリに適用した例について説明する。なお、使用するFETは、実施の形態2のものに限らず、実施の形態1、実施の形態3乃至5のものを用いてもよい。
【0106】
ゲインセル型メモリとは、例えば、特許文献3に記載されているメモリで、典型的には、2つのトランジスタ(書き込みトランジスタと読み出しトランジスタ)と1つのキャパシタよりなる。その他に3つのトランジスタよりなるもの、1つのトランジスタと1つのダイオードと1つのキャパシタよりなるもの、等がある。
【0107】
2つのトランジスタと1つのキャパシタよりなるもののメモリセルの回路図は図12(B)に示される。すなわち、書き込みトランジスタ127のゲートは書き込みワード線に、キャパシタ126の一方の電極は読み出しワード線に、書き込みトランジスタ127のソースと読み出しトランジスタ128のソースはビット線に、書き込みトランジスタ127のドレインとキャパシタ126の他方の電極は読み出しトランジスタ128のゲートに、そして、読み出しトランジスタ128のドレインは電源線に接続される。
【0108】
なお、ゲインセル型メモリにおいても、シリコン半導体を用いたFETで構成した場合には、頻繁なリフレッシュが必要であったため、通常はゲインセル型DRAMと称されている。
【0109】
ゲインセル型メモリはキャパシタ126の容量をDRAMのキャパシタに比べて十分に小さくできるとして研究が進められた。DRAMでは必要なキャパシタの容量がビット線の寄生容量の相対比で決定されるのに対し、ゲインセル型メモリでは、読み出しトランジスタ128のゲート容量との相対比で決定される。
【0110】
キャパシタ126の容量が小さくできれば、その充放電に要する時間、すなわち、スイッチング時間が短縮できる。DRAMではキャパシタの充放電が律速となって、動作スピードの制約があるのに対し、ゲインセル型メモリではデザインルールの縮小と共に読み出しトランジスタ128のゲート容量とキャパシタ126の容量が同じ比率で小さくなるため、非常に高速で応答するメモリが作製できる。
【0111】
具体的には、デザインルールが1/10になれば(FETの寸法が縦・横・高さとの1/10になれば)、キャパシタ126の容量は1/10となり、FETのオン抵抗も1/10となるため、スイッチングに要する時間は1/100となる。一方、DRAMではFETのオン抵抗が1/10となっても、キャパシタの容量は変わらないので、スイッチング時間は1/10となるにとどまる。すなわち、ゲインセル型メモリではDRAMより10倍の高速化が可能である。
【0112】
このように優れた特性が期待されるゲインセル型メモリであるが、FETのオフ電流を十分に抑制できないために、実用に至っていない。一般にデザインルールが1/10となってもFETのオフ電流が1/10となることはなく、むしろ、他のさまざまな要因によって、リーク電流は増加することがある。
【0113】
例えば、オフ状態でPN接合を用いて、ソースドレイン間を絶縁するFETであれば、微細化とともにPN接合におけるバンド間トンネルによるリークが顕著となる。また、バンドギャップが小さな(1.5電子ボルト未満)の半導体では、熱励起キャリアの影響も無視できない。オフ電流を抑制できなければキャパシタの容量を減らすことは難しい。
【0114】
ゲインセル型メモリの書き込みトランジスタ127を公知のシリコン半導体を用いたFETで構成した場合にはトランジスタを2つ用いることの効果は消失する。例えば、キャパシタ126の容量が通常のDRAMのように10fF程度であるとすると、シリコン半導体を用いたFETではオフ時のリーク電流は最低でも10−14A程度であるため、1秒ほどでキャパシタ126に蓄積された電荷は消失する。そのため、通常のDRAMと同様に1秒間に十数回のリフレッシュ動作が必要となる。
【0115】
DRAMより1つ余分にトランジスタを設けるのに同じ容量のキャパシタを使うのではコストに見合わないので、キャパシタの容量を低減する必要がある。DRAMではビット線の寄生容量との相対比の関係からキャパシタの容量を小さくすると、読み出しでエラーが生じるが、ゲインセル型メモリでは、キャパシタの容量を1/10にしても、データを読み出せる。
【0116】
しかしながら、シリコン半導体を用いたFETでは、比較的オフ電流が大きいため、キャパシタの容量が1/10になると、リフレッシュの間隔も1/10になる。その分、消費電力が増大する上、メモリへのアクセスも制約を受ける。同様にキャパシタの容量が1/100になると、リフレッシュの間隔が1/100となり、実用的ではない。従来は、書き込みトランジスタ127のリーク電流を十分に低減する手段がなかったため、このようなゲインセル型メモリが実用化されることはなかった。
【0117】
書き込みトランジスタ127を、酸化物半導体をチャネルに用いたFETで形成すると、そのオフ電流が極めて小さくなる。オフ電流が十分に小さくなると、ゲインセル型メモリは非常に有望なメモリセルとなる。すなわち、キャパシタ126の容量は、書き込みトランジスタ127や読み出しトランジスタ128のゲート容量と同程度まで小さくできるので、DRAMのような特殊な形状(スタック型やトレンチ型)のキャパシタを設ける必要はなく、設計の自由度が拡がり、工程も簡単となる。そして、上述のように高速動作の可能なメモリとなる。
【0118】
例えば、オフ電流をシリコントランジスタの場合の100万分の1(10−20A程度)とすれば、仮にキャパシタがDRAMの千分の1であったとしても、リフレッシュの間隔はDRAMの千倍(すなわち、1分に1度)で済む。オフ電流がより小さく、例えば、10−24A以下であれば、数日に一度のリフレッシュで済む。
【0119】
書き込みに際しては、上記のようにDRAMに比べて格段に小さな容量のキャパシタへの充電であるから、書き込みトランジスタ127の特性はそれほど優れたものでなくとも現在のDRAMと同程度あるいはそれ以上のものとなる。例えば、キャパシタ126の容量が、DRAMのキャパシタの容量の千分の1であれば、書き込みトランジスタ127もオン電流(あるいは移動度)はDRAMのトランジスタの千分の1でよい。
【0120】
仮に書き込みトランジスタ127の移動度がシリコン半導体を用いたトランジスタの1/100の移動度であっても、通常のDRAMの10倍の速度で書き込みが実行できる。上述のように、高速性はデザインルールの縮小とともに顕著になる。
【0121】
なお、書き込みトランジスタ127のオフ電流が十分に小さくなり、リフレッシュが実質的に不要となると、不揮発性メモリとしての側面も強くなる。リフレッシュが不要であれば、RAMとしてだけではなく、ゲインセル型メモリをNAND構造を有するメモリに適用できる。NAND構造により集積度を高めることも可能となる。
【0122】
本実施の形態のゲインセル型メモリの概要を図12(A)に示す。読み出しトランジスタ128はゲート121とソース123、ドレイン122を有する。ドレイン122は電源線として機能するか、電源線に接続され、好ましくはワード線方向に延在する。また、ソース123は書き込みトランジスタ127のソース104と接続する。
【0123】
書き込みトランジスタ127は実施の形態2で説明したFETを用いる。しかし、これに限らず、実施の形態1、実施の形態3乃至実施の形態5で説明したFETを用いてもよい。また、図12(A)に示す図面は、図5(B)に相当するものである。
【0124】
書き込みトランジスタ127は、層間絶縁物112上に、酸化物半導体101、ゲート絶縁膜102、ゲート103、ソース104、ドレイン105を有し、ドレイン105は読み出しトランジスタ128のゲート121と接する。なお、ゲート103は書き込みワード線あるいはその一部として機能する。読み出しトランジスタ128のゲート121は、書き込みトランジスタ127のドレイン105と電気的に接続し、書き込みトランジスタ127のゲート103とソース104とは電気的に接続しない構造とすることが好ましい。
【0125】
また、ソース104にはビット線を接続する。さらに、ドレイン105に重なるようにして、ゲート絶縁膜102を介して読み出しワード線124が設けられる。読み出しワード線124とドレイン105とゲート絶縁膜102でキャパシタ126が形成される。読み出しワード線124はゲート103と同様に、酸化物半導体101の側面をドレイン105上から覆う形状となる。
【0126】
このため、読み出しワード線124の幅をL6とすると、キャパシタ126の面積(読み出しワード線124とドレイン105の重なる部分の面積)は(2h+t)×L6より大きくなる。一方、読み出しトランジスタ128のゲート121のゲート面積はL6×L6程度である。酸化物半導体の高さhは回路の最小加工線幅に制約されることなく大きくできるので、結果として、キャパシタ126の容量を、読み出しトランジスタ128のゲート容量の2倍あるいはそれ以上とできる。このことは、データの読み出しをおこなう際にエラーが起こりにくくなることを意味する。
【0127】
図12(A)に示す構造のメモリセルを作製するには以下のようにおこなうとよい。まず、単結晶シリコン半導体を用いて、読み出しトランジスタ128のゲート121、ソース123、ドレイン122を作製し、その上に層間絶縁物112を形成する。そして、その表面を平坦化して、ゲート121を露出させる。
【0128】
その後、薄片状の酸化物半導体101を形成し、層間絶縁物112に読み出しトランジスタ128のソース123に達するコンタクトホールを形成する。そして、酸化物半導体101の一部を覆って、ソース104、ドレイン105を形成する。ドレイン105は読み出しトランジスタ128のゲート121と、ソース104は同じくソース123と接するようにする。
【0129】
そして、ゲート絶縁膜102を形成する。さらに、ゲート絶縁膜102を覆って、ゲート103、読み出しワード線124を形成する。その後、ソース104に達するコンタクトホールを設け、ビット線125を形成する。
【0130】
本実施の形態で説明したゲインセル型メモリは、DRAMとは異なり、データの読み出しの際に信号の増幅過程やそのための回路が不要であることを利用して、各種半導体回路のレジスタ(一時的にデータを記憶するメモリ装置)として利用できる。
【0131】
通常の半導体回路中のレジスタは6つのトランジスタを用いたフリップフロップ回路で構成される。そのため、レジスタの占有面積が大きくなるが、本実施の形態で説明したゲインセル型メモリは2つのトランジスタと1つのキャパシタより形成され、加えて、2つのトランジスタは立体的に配置されるため、従来のレジスタよりも占有面積が小さくなる。
【0132】
また、フリップフロップ回路を用いたレジスタは電源が途絶するとデータを消失し、電源が復旧した後も元の状態を再現できないのに対し、本実施の形態で説明したゲインセル型メモリは一定の期間、データを保持できるので、電源が復旧した後、速やかに元の状態を再現できる。
【0133】
この特性を利用すれば、半導体回路として演算をしない時間がわずかでもあれば、即座に電源の供給を停止し、演算が必要となった場合に再び電源を供給することにより、消費電力を低減できる。例えば、画像処理および出力回路においては、17ミリ秒に一度、画像データを処理し、送出するが、それに必要な時間は1ミリ秒以下であり、残りの16ミリ秒以上の時間は回路の電源を切っておいてもよい。このようにすることで、回路の消費電力を低減できる。
【0134】
より大規模な半導体回路であるCPUでは複数の回路がそれぞれ演算をおこなうが、常時、全ての回路が演算をおこなっているわけではなく、待機しているだけの回路も多い。そういう回路には電源を供給しないことにより消費電力を大幅に低減できる。そういった回路のレジスタは本実施の形態で説明したゲインセル型メモリを用いて構成することにより、瞬時に回路への電源の供給および遮断を実行できる。
【0135】
(実施の形態8)
以下では、実施の形態6あるいは実施の形態7で説明したメモリの利用例について図14を参照して説明する。図14は、マイクロプロセッサの構成例を示すブロック図である。図14に示すマイクロプロセッサは、CPU301、メインメモリ302、クロックコントローラ303、キャッシュコントローラ304、シリアルインターフェース305、I/Oポート306、端子307、インターフェース308、キャッシュメモリ309等が形成されている。勿論、図14に示すマイクロプロセッサは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のマイクロプロセッサはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0136】
CPU301をより高速に動作させるには、それに見合う程度の高速なメモリを必要とする。しかし、CPU301の動作スピードにあったアクセスタイムをもつ高速の大容量メモリを使用した場合、一般的にコストが高くなってしまう。そこで大容量のメインメモリ302の他に、メインメモリ302よりも小容量であるが高速のメモリであるSRAMなどのキャッシュメモリ309を、CPU301とメインメモリ302の間に介在させる。CPU301がキャッシュメモリ309にアクセスすることにより、メインメモリ302のスピードによらず、高速で動作することが可能となる。
【0137】
図14に示すマイクロプロセッサでは、メインメモリ302に上述したメモリを用いることができる。上記構成により、集積度の高いマイクロプロセッサ、信頼性の高いマイクロプロセッサを実現することができる。
【0138】
なお、メインメモリ302には、CPU301で実行されるプログラムが格納されている。そして例えば実行初期において、メインメモリ302に格納されているプログラムは、キャッシュメモリ309にダウンロードされる。ダウンロードされるプログラムは、メインメモリ302に格納されているものに限定されず、他の外付のメモリからダウンロードすることもできる。キャッシュメモリ309は、CPU301で実行されるプログラムを格納するだけでなく、ワーク領域としても機能し、CPU301の計算結果等を一時的に格納する。
【0139】
なお、CPUは単数に限られず、複数設けていても良い。CPUを複数設け、並列処理を行なうことで、動作速度の向上を図ることができる。その場合、CPU間の処理速度がまちまちだと処理全体で見たときに不都合が起きる場合があるので、スレーブとなる各CPUの処理速度のバランスを、マスターとなるCPUでとるようにしても良い。
【0140】
なお、ここではマイクロプロセッサを例示したが、上述したメモリは、マイクロプロセッサのメインメモリにその用途が限られるわけではない。例えば表示装置の駆動回路に用いられるビデオRAMや、画像処理回路に必要となる大容量メモリとしての用途も好ましい。その他、様々なシステムLSIにおいても、大容量もしくは小型用途のメモリとして用いることができる。
【0141】
(実施の形態9)
本実施の形態では、実施の形態6あるいは実施の形態7で説明したメモリを有する半導体装置の例について説明する。当該半導体装置は、本発明の一態様に係るメモリを用いることで、小型化を実現することが可能である。特に、携帯用の半導体装置の場合、本発明の一態様に係るメモリを用いることで小型化が実現されれば、使用者の使い勝手が向上するというメリットが得られる。
【0142】
本発明の一態様に係るメモリは、表示装置、ノート型パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。
【0143】
その他に、本発明の一態様に係るメモリを用いることができる半導体装置として、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら半導体装置の具体例を図15に示す。
【0144】
図15(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体401、筐体402、表示部403、表示部404、マイクロホン405、スピーカー406、操作キー407、スタイラス408等を有する。本発明の一態様に係るメモリは、携帯型ゲーム機の駆動を制御するための集積回路に用いることができる。携帯型ゲーム機の駆動を制御するための集積回路に本発明の一態様に係るメモリを用いることで、コンパクトな携帯型ゲーム機を提供することができる。なお、図15(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部403と表示部404とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
【0145】
図15(B)は携帯電話であり、筐体411、表示部412、音声入力部413、音声出力部414、操作キー415、受光部416等を有する。受光部416において受信した光を電気信号に変換することで、外部の画像を取り込むことができる。本発明の一態様に係るメモリは、携帯電話の駆動を制御するための集積回路に用いることができる。携帯電話の駆動を制御するための集積回路に本発明の一態様に係るメモリを用いることで、コンパクトな携帯電話を提供することができる。
【0146】
図15(C)は携帯情報端末であり、筐体421、表示部422、操作キー423等を有する。図15(C)に示す携帯情報端末は、モデムが筐体421に内蔵されていても良い。本発明の一態様に係るメモリは、携帯情報端末の駆動を制御するための集積回路に用いることができる。携帯情報端末の駆動を制御するための集積回路に本発明の一態様に係るメモリを用いることで、コンパクトな携帯情報端末を提供することができる。
【符号の説明】
【0147】
100 絶縁表面
101 酸化物半導体
102 ゲート絶縁膜
103 ゲート
104 ソース
105 ドレイン
106 空乏化領域
107 N型領域
108 N型領域
109 側壁絶縁物
110 側壁絶縁物
111 バリア絶縁物
112 層間絶縁物
113 ビット線
113a 導電性領域
114 ドライバ回路部
115 セルトランジスタ
116 キャパシタ
117 接続電極
118 下部電極
119 キャパシタ絶縁膜
120 上部電極
121 ゲート
122 ドレイン
123 ソース
124 読み出しワード線
125 ビット線
126 キャパシタ
127 書き込みトランジスタ
128 読み出しトランジスタ
201a 酸化物半導体
201b 酸化物半導体
201c 酸化物半導体
202a ゲート絶縁膜
202b ゲート絶縁膜
202c ゲート絶縁膜
203a ゲート
203b ゲート
203c ゲート
204a ソース
204b ソース
204c ソース
205a ドレイン
205b ドレイン
205c ドレイン
206a 空乏化領域
206b 空乏化領域
207 N型領域
208 N型領域
301 CPU
302 メインメモリ
303 クロックコントローラ
304 キャッシュコントローラ
305 シリアルインターフェース
306 I/Oポート
307 端子
308 インターフェース
309 キャッシュメモリ
401 筐体
402 筐体
403 表示部
404 表示部
405 マイクロホン
406 スピーカー
407 操作キー
408 スタイラス
411 筐体
412 表示部
413 音声入力部
414 音声出力部
415 操作キー
416 受光部
421 筐体
422 表示部
423 操作キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面に略垂直に形成された厚さが1nm以上30nm以下で高さが最小加工線幅の1倍以上の薄片状の酸化物半導体と、前記酸化物半導体を覆って形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を覆って形成されたストライプ状の幅10nm以上100nm以下のゲートを有する電界効果トランジスタ。
【請求項2】
絶縁表面に略垂直に形成された厚さが1nm以上30nm以下で高さが最小加工線幅の1倍以上の薄片状の酸化物半導体と、前記酸化物半導体を覆って形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を覆って形成され、前記酸化物半導体の少なくとも3つの面と面するゲートを有する電界効果トランジスタ。
【請求項3】
絶縁表面に略垂直に形成された厚さが1nm以上30nm以下で高さが最小加工線幅の1倍以上の薄片状の酸化物半導体と、前記酸化物半導体を覆って形成され、少なくとも3つの面と接する2つの離間した導電体と、前記酸化物半導体を覆って形成されたゲート絶縁膜を有する電界効果トランジスタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記酸化物半導体が、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、In−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Sn系酸化物、In−Ga系酸化物、In−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Ga−Zn系酸化物より選ばれた1つである電界効果トランジスタ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項のいずれか一において、前記酸化物半導体は結晶性を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記酸化物半導体の一部は、窒素、硼素あるいはリンを有する領域を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6記載の電界効果トランジスタをセルトランジスタとして有するランダム・アクセス・メモリ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6記載の電界効果トランジスタを書き込みトランジスタとして有するメモリ。
【請求項9】
請求項7あるいは請求項8記載のメモリを有する半導体回路。
【請求項10】
前記ゲート絶縁膜上にゲートを有し、前記ゲートは前記2つの離間した導電体と重ならないことを特徴とする請求項3に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項11】
前記酸化物半導体にはN型領域が設けられ、前記N型領域は前記ゲートと前記2つの離間した導電体と重ならないことを特徴とする請求項10に記載の電界効果トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−216802(P2012−216802A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67049(P2012−67049)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】