説明

III族窒化物半導体の製造方法,III族窒化物半導体素子の製造方法,III族窒化物半導体とIII族窒化物半導体素子

【課題】 III族窒化物半導体の結晶層を含む半導体素子において品質低下を防止可能であり、かつ製造効率に優れたIII族窒化物半導体の製造方法、III族窒化物半導体素子の製造方法、III族窒化物半導体およびIII族窒化物半導体素子を提供する。
【解決手段】
下地層の上面にIII族窒化物の非結晶層を形成する非結晶層形成工程(A)と、
前記非結晶層の上面に保護層を形成する保護層形成工程(B)と、
前記非結晶層の一部をエッチングにより除去するエッチング工程(C)と、
前記保護層が形成された状態で前記非結晶層を熱処理して結晶化することによりIII族窒化物半導体の結晶層に変換する半導体結晶層形成工程(D)と、を含むことを特徴とするIII族窒化物半導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体の製造方法、III族窒化物半導体素子の製造方法、III族窒化物半導体およびIII族窒化物半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体材料は、禁制帯幅が充分大きく、バンド間遷移も直接遷移型である等の優れた性質を有する。このため、III族窒化物半導体は、短波長発光素子等の各種半導体素子への適用が盛んに検討されている。例えば、III族窒化物半導体を用いた紫外から青および緑色の波長領域の発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)は、1990年代半ば頃から性能が急激に向上した。このため、前記LEDは、照明や各種ディスプレイ用途等への適用範囲が格段に広がり、非常に大きな市場を形成している。また、III族窒化物半導体は、例えば、高密度光ディスク用光源やディスプレイに用いる半導体レーザ用の材料としても重要である。なお、半導体レーザは、Semiconductor LaserまたはLaser Diodeとも呼ばれ、「LD」と略称されることもある。
【0003】
半導体レーザ等の半導体素子にIII族窒化物半導体を用いる場合、しばしば、III族窒化物半導体を含む層の一部を除去することがある。一例として、特許文献1〜5等に記載のインナーストライプ型レーザが挙げられる。このインナーストライプ型レーザは、レーザビーム形状制御性と横モード制御性に優れた高出力レーザとして用いることができる。前記インナーストライプ型レーザは、例えば、活性層と、p型クラッド層と、電流狭窄層とを含む。前記電流狭窄層は、前記活性層の上に設けられている。前記電流狭窄層の一部はエッチング等により除去されている。前記p型クラッド層は、前記電流狭窄層および前記電流狭窄層除去部分の上に設けられている。前記電流狭窄層除去部分の上では、前記p型クラッド層が前記電流狭窄層除去部分に埋め込まれ、前記p型クラッド層が前記活性層上面に接している。前記電流狭窄層は、例えば、低屈折率でかつ絶縁性に優れたAlN等から形成されている。例えば特許文献1には、2.0μm程度の開口幅(ストライプ幅)を有するAlNがp型クラッド層の下に電流狭窄および横モード制御のために埋め込まれたインナーストライプ型GaN系レーザが記載されている。
【0004】
III族窒化物半導体層の一部を除去する方法としては、例えば以下のような方法がある(特許文献1〜3)。すなわち、まず、前記活性層の上に、低温(例えば200〜700℃)で、III族窒化物(例えばAlN)の非結晶層を堆積させる。つぎに、エッチング(例えばフォトリソグラフィーとウェットエッチング)によって前記III族窒化物非結晶層の一部を除去し、開口部(ストライプ)を形成する。続いて前記III族窒化物非結晶層を高温(例えば700〜1300℃)で熱処理し、III族窒化物を非結晶から半導体結晶に変換してIII族窒化物半導体結晶層とする。その後、前記III族窒化物半導体結晶層および前記開口部の上に、前記p型クラッド層(例えばp型AlGaNクラッド層)を形成(再成長)する。この方法によれば、III族窒化物半導体層をまず非結晶層として形成してからエッチングし、それから結晶化させるので、結晶層を直接エッチングするよりもエッチング速度が速くて加工しやすい。このため、製造効率(歩留まり)が良く、エッチングの際の制御性にも優れるという利点がある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−78215号公報
【特許文献2】特開2006−121107号公報
【特許文献3】特開2007−067432号公報
【特許文献4】特開2007−251119号公報
【特許文献5】国際公開パンフレットWO2007/066644号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1〜3に示す方法においては、高温での熱処理によりIII族窒化物半導体層を非結晶から結晶に変換する際、マストランスポート(熱により半導体表面の原子が移動して形状が変化する現象)により表面平坦性が悪化する可能性がある。これを防止するために、特許文献1においては、前記熱処理による結晶化に先立ち、前記III族窒化物非結晶層の表面を酸化する工程を採用することで、マストランスポートの抑制を図っている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1〜3の方法では、III族窒化物非結晶層の表面を酸化した際に、酸素濃度が不均一になり、半導体素子の品質低下につながるおそれがある。例えば、AlN非結晶層表面における酸素濃度が不均一であると、前記熱処理による結晶化の際にAlN表面に形成される酸窒化アルミニウム(AlN1−x)の組成に斑(むら)が発生する。この上にp型クラッド層等の半導体層を堆積させると、AlN1−xの酸素濃度の高い領域と低い領域とで成長速度に差が生じ、ピットや凹凸の原因となるおそれがある。
【0008】
また、半導体レーザ以外の半導体素子でも、III族窒化物非結晶層表面の不純物濃度を改善できれば、半導体素子の品質向上につながると考えられる。しかし、そのためには、半導体素子の製造において前記不純物濃度を制御する必要がある。この不純物濃度の制御工程が煩雑であると、製造効率および製造コストの低下につながる。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するために、III族窒化物半導体の結晶層を含む半導体素子において品質低下を防止可能であり、かつ製造効率に優れたIII族窒化物半導体の製造方法、III族窒化物半導体素子の製造方法、III族窒化物半導体およびIII族窒化物半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明のIII族窒化物半導体の製造方法は、
下地層の上面にIII族窒化物の非結晶層を形成する非結晶層形成工程と、
前記非結晶層の上面に保護層を形成する保護層形成工程と、
前記非結晶層の一部をエッチングにより除去するエッチング工程と、
前記保護層が形成された状態で前記非結晶層を熱処理して結晶化することによりIII族窒化物半導体の結晶層に変換する半導体結晶層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のIII族窒化物半導体素子の製造方法は、III族窒化物半導体を含む半導体素子の製造方法であり、前記本発明のIII族窒化物半導体の製造方法により前記III族窒化物半導体を製造することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明のIII族窒化物半導体は、III族窒化物半導体の結晶層を含み、前記結晶層は一部が除去されており、前記結晶層が不純物を含み、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が内部の不純物濃度の平均値以下であり、前記本発明のIII族窒化物半導体の製造方法により製造されることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明のIII族窒化物半導体素子は、前記本発明のIII族窒化物半導体素子の製造方法により製造され、前記本発明のIII族窒化物半導体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、III族窒化物半導体の結晶層を含む半導体素子において、品質低下を防止可能であり、かつ製造効率に優れたIII族窒化物半導体素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のIII族窒化物半導体の製造方法、本発明のIII族窒化物半導体素子の製造方法、本発明のIII族窒化物半導体および本発明のIII族窒化物半導体素子について、さらに詳細に説明する。
【0016】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法は、前述の通り、
下地層の上面にIII族窒化物の非結晶層を形成する非結晶層形成工程と、
前記非結晶層の上面に保護層を形成する保護層形成工程と、
前記非結晶層の一部をエッチングにより除去するエッチング工程と、
前記保護層が形成された状態で前記非結晶層を熱処理して結晶化することによりIII族窒化物半導体の結晶層に変換する半導体結晶層形成工程と、を含むことを特徴とする。これ以外には、本発明のIII族窒化物半導体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下の通りである。
【0017】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法において、前記半導体結晶層形成工程後、前記保護層を除去する保護層除去工程をさらに含むことが好ましい。また、前記保護層除去工程が、熱エッチングで前記保護層を除去する工程であることがより好ましい。前記保護層除去工程における熱エッチング温度は、前記半導体結晶層形成工程における熱処理温度よりも高温であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法において、前記保護層がIII族窒化物から形成された層であることが好ましい。また、前記結晶層が、InGaAl1−a−bN(0≦a<1、0≦b<1、0≦a+b<1)の組成を有するIII族窒化物半導体から形成され、前記保護層が、InGaAl1−c−dN(0≦c≦1、0≦d≦1、0<c+d≦1)の組成を有するIII族窒化物から形成され、かつ、前記結晶層のIn組成比aと前記保護層のIn組成比cとが、下記数式(1)および(2)の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
【0019】
a=0 (1)
a<c (2)
【0020】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法において、前記保護層が、InGa1−xN(0≦x≦1)の組成を有するIII族窒化物から形成されていることが好ましい。また、前記保護層が、InNから形成されていることが特に好ましい。前記結晶層は、AlNから形成されていることが特に好ましい。
【0021】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法において、前記結晶層が、2層以上の層を含むことが好ましい。また、前記結晶層が、AlNから形成された下層とGaNから形成された上層とを含むことがより好ましい。
【0022】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法において、前記結晶層が不純物を含む場合、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が内部の不純物濃度の平均値以下であることが好ましい。前記結晶層において、前記上面部は、例えば前記結晶層の上面から深さ50nmまでの部分であり、前記内部は、例えば前記上面部以外の部分である。前記不純物は、特に制限されないが、例えば酸素である。また、前記結晶層において、前記上面部の酸素濃度の平均値が5×1018cm−3以下であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法は、前記結晶層の上に、他のIII族窒化物半導体含有層を形成する他のIII族窒化物半導体含有層形成工程をさらに含むことが好ましい。この場合において、本発明のIII族窒化物半導体の製造方法は、前記半導体結晶層形成工程後、前記保護層を除去する保護層除去工程を含み、前記保護層除去工程が、熱エッチングで前記保護層を除去する工程であり、前記他のIII族窒化物半導体含有層形成工程において、前記保護層除去工程における熱エッチング温度以上の温度で前記他のIII族窒化物半導体含有層を形成することがより好ましい。
【0024】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法は、前記下地層が、III族窒化物半導体を含む層であることが好ましい。
【0025】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法において、前記保護層に代えてIII族窒化物から形成された層を形成しても良い。この場合において、前記III族窒化物から形成された層の機能はなんら制限されず、例えば、保護層としての機能を有していなくても良い。
【0026】
次に、本発明のIII族窒化物半導体素子の製造方法は、前述の通り、III族窒化物半導体を含む半導体素子の製造方法であり、前記本発明の半導体の製造方法により前記III族窒化物半導体を製造することを特徴とする。
【0027】
本発明のIII族窒化物半導体素子の製造方法において、前記III族窒化物半導体素子は、特に制限されないが、例えば、半導体レーザ、電界効果トランジスタ、またはフォトニック結晶面発光レーザであることが好ましい。例えば、前記III族窒化物半導体素子が、半導体レーザであり、前記結晶層が、電流狭窄層であることがより好ましい。また、例えば、前記III族窒化物半導体素子が、電界効果トランジスタであり、前記結晶層が、コンタクト層であることがより好ましい。また、例えば、前記III族窒化物半導体素子が、フォトニック結晶面発光レーザであり、前記結晶層が、フォトニック結晶層であることがより好ましい。
【0028】
次に、本発明のIII族窒化物半導体は、前述の通り、III族窒化物半導体の結晶層を含み、前記結晶層は一部が除去されており、前記結晶層が不純物を含み、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が内部の不純物濃度の平均値以下であり、前記本発明のIII族窒化物半導体の製造方法により製造されることを特徴とする。前記上面部は、例えば、前記結晶層の上面から深さ50nmまでの部分であり、前記内部は、例えば、前記上面部以外の部分である。前記不純物は、特に制限されないが、例えば酸素である。また、前記結晶層において、前記上面部の酸素濃度の平均値が5×1018cm−3以下であることがより好ましい。
【0029】
本発明のIII族窒化物半導体において、前記結晶層が、AlNから形成された層であることが好ましい。また、前記結晶層が、2層以上の層を含むことが好ましい。さらに、前記結晶層が、AlNから形成された下層とGaNから形成された上層とを含むことがより好ましい。
【0030】
本発明のIII族窒化物半導体は、例えば、前記結晶層の上に、他のIII族窒化物半導体含有層をさらに含んでいても良い。また、本発明のIII族窒化物半導体は、前記下地層をさらに含んでいても良い。前記下地層は、III族窒化物半導体を含む層であることが好ましい。
【0031】
次に、本発明のIII族窒化物半導体素子は、前述のとおり、前記本発明のIII族窒化物半導体素子の製造方法により製造され、前記本発明のIII族窒化物半導体を含むことを特徴とする。
【0032】
本発明のIII族窒化物半導体素子は、特に制限されないが、例えば、半導体レーザ、電界効果トランジスタ、またはフォトニック結晶面発光レーザである。例えば、本発明のIII族窒化物半導体素子が半導体レーザであり、前記結晶層が、電流狭窄層であることが好ましい。また、例えば、本発明のIII族窒化物半導体素子が電界効果トランジスタであり、前記結晶層が、コンタクト層であることが好ましい。また、例えば、本発明のIII族窒化物半導体素子がフォトニック結晶面発光レーザであり、前記結晶層が、フォトニック結晶層であることが好ましい。
【0033】
[実施形態1]
次に、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。なお、以下において、本発明のIII族窒化物半導体の製造方法および本発明のIII族窒化物半導体素子の製造方法を、まとめて「本発明の製造方法」ということがある。
【0034】
本発明のIII族窒化物半導体の製造方法は、前述の通りである。すなわち、本発明のIII族窒化物半導体の製造方法は、下記工程(A)〜(D)を含む製造方法である。なお、以下、本発明のIII族窒化物半導体の製造方法における各工程、または本発明のIII族窒化物半導体素子の製造方法における各工程に、便宜上、(A)、(B)、(C)、(D)などの符号を付して説明する場合がある。
【0035】
(A)下地層の上面にIII族窒化物の非結晶層を形成する非結晶層形成工程
(B)前記非結晶層の上面に保護層を形成する保護層形成工程
(C)前記非結晶層の一部をエッチングにより除去するエッチング工程
(D)前記保護層が形成された状態で前記非結晶層を熱処理して結晶化することによりIII族窒化物半導体の結晶層に変換する半導体結晶層形成工程
【0036】
本発明の製造方法では、前述の通り、保護層をIII族窒化物非結晶層の上面に別途形成し、その状態で前記非結晶層を熱処理して前記III族窒化物半導体結晶層に変換する。このためIII族窒化物非結晶層表面における酸素等の不純物濃度の不均一に起因してピットや凹凸等が生じることがない。これにより、III族窒化物半導体素子の特性のばらつきや寿命の低下を防止することが可能である。すなわち、本発明の製造方法によれば、不純物濃度の制御等に煩雑な操作やチェックを要することなくピットや凹凸の発生等の品質低下を抑制することができるので、品質の良いIII族窒化物半導体素子を効率よく製造することができる。なお、本発明において、前記保護層は特に制限されない。好ましくは、前記保護層は、マストランスポート防止層としての機能を有する。前記保護層がマストランスポート防止層としての機能を有することにより、例えば、前記III族窒化物半導体結晶層の表面平坦性悪化を防止することができる。
【0037】
前記工程(A)〜(D)を含むこと以外には、本発明の製造方法は特に制限されないが、例えば以下の通りである。
【0038】
図1の断面図に、前記工程(A)〜(D)を模式的に示す。図1(A)は前記非結晶層形成工程(A)を示し、図1(B)は前記保護層形成工程(B)を示し、図1(C)は前記エッチング工程(C)を示し、図1(D)は前記半導体結晶層形成工程(D)を示す。すなわち、まず、図1(A)に示すとおり、下地層11の上面にIII族窒化物非結晶層12’を形成する(前記工程(A))。つぎに、図1(B)に示すとおり、非結晶層12’の上面に保護層13を形成する(前記工程(B))。さらに、図1(C)に示すとおり、非結晶層12’の一部をエッチングにより除去する(前記工程(C))。これにより、同図に示すとおり、開口部12Aが形成される。なお、図1(C)では、非結晶層12’の除去部分の上面に形成された保護層13も、非結晶層12’の一部とともにエッチングで除去している。そして、保護層13が形成された状態で非結晶層12’を熱処理してIII族窒化物半導体結晶層12に変換する(前記工程(D))。このようにして、図1(D)に示すように、III族窒化物半導体を含む構造体10を製造することができる。図示の通り、この構造体10は、下地層11の上面にIII族窒化物半導体結晶層12および保護層13がこの順番で積層され、結晶層12および保護層13の一部はエッチングで除去されて開口部12Aが形成されている。
【0039】
なお、本発明において、Xという構成要素とYという構成要素が存在する場合、「Xの上にY」は、特に断らない限り、Xの上面にYが直接接触している状態でも良いし、Xの上面とYとの間に他の構成要素等が存在し、Xの上面とYとが直接接触していない状態でも良い。同様に、「Xの下にY」は、特に断らない限り、Xの下面にYが直接接触している状態でも良いし、Xの下面とYとの間に他の構成要素等が存在し、Xの下面とYとが直接接触していない状態でも良い。また、「Xの上面にY」は、Xの上面にYが直接接触している状態を指す。同様に、「Xの下面にY」は、Xの下面にYが直接接触している状態を指す。
【0040】
本発明においては、前記III族窒化物非結晶層上面と前記保護層とは直接接触しており、前記下地層上面と前記III族窒化物非結晶層とは直接接触している。また、本発明のIII族窒化物半導体および本発明のIII族窒化物半導体素子において、前記保護層の上および前記下地層の下には、それぞれ他の層などの任意の構成要素が存在していても良いし、存在していなくても良い。
【0041】
また、本発明の製造方法、本発明のIII族窒化物半導体およびIII族窒化物半導体素子において、III族窒化物非結晶層またはIII族窒化物半導体結晶層の一部が除去されている状態は、例えば以下の状態を指す。すなわち、例えば図1(C)および(D)に示すように、前記除去部分において、III族窒化物非結晶層またはIII族窒化物半導体結晶層が完全に除去され、貫通口が形成された状態でも良い。また、例えば、前記除去部分において、III族窒化物非結晶層またはIII族窒化物半導体結晶層の下部が除去されずに残った状態でも良い。これらは、例えば、製造されるIII族窒化物半導体素子に必要な特性等に応じて適宜選択することができる。
【0042】
図1(D)に示す構造体10は、そのままIII族窒化物半導体素子として使用可能であれば、そのまま用いても良い。例えば、保護層13を電極金属と合金化させるなどにより、図1(D)に示す構造体10をそのまま電界効果トランジスタとして用いることができる。この場合、III族窒化物半導体結晶層12は、例えば、前記電界効果トランジスタのコンタクト層となる。
【0043】
また、図1(D)に示す構造体10は、前記工程(A)〜(D)以外の他の工程によってさらに処理し、目的とするIII族窒化物半導体またはIII族窒化物半導体素子を製造しても良い。すなわち、本発明の製造方法は、前記工程(A)〜(D)以外の工程を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。前記工程(A)〜(D)以外の工程としては、特に制限されないが、例えば、後述する保護層の除去、他の層の積層等が挙げられる。また、前記工程(A)〜(D)以外の工程は、必要に応じ、前記工程(A)〜(D)の前に実施しても、後に実施しても、同時に実施しても良い。
【0044】
下地層11は、特に制限されないが、例えば、III族窒化物半導体を含む層であっても良い。下地層11は、例えば、製造されるIII族窒化物半導体またはIII族窒化物半導体素子の一部を構成しても良い。また、下地層11の下には、前述の通り、さらに他の層が存在していても存在していなくても良い。前記他の層は、製造されるIII族窒化物半導体またはIII族窒化物半導体素子の一部を構成しても良いし、構成しなくても良い。また、結晶層12は、特に制限されないが、例えば、半導体レーザの電流狭窄層であることが好ましい。結晶層12は、例えば、電界効果トランジスタのコンタクト層、フォトニック結晶面発光レーザのフォトニック結晶層等であっても良い。
【0045】
なお、図1では、前記保護層形成工程(B)を前記エッチング工程(C)よりも先に実施しているが、本発明の製造方法では、前記工程(B)と前記工程(C)とは、どちらを先に実施しても良い。しかしながら、例えば後述する理由により、前記工程(B)を前記工程(C)よりも先に実施することが好ましい。
【0046】
本発明の製造方法は、例えば、前記半導体結晶層形成工程(D)後、前記保護層を除去する工程(E)をさらに含むことが好ましい。前記保護層除去工程(E)は、特に制限されないが、例えば、熱エッチングで前記保護層を除去する工程であることがより好ましい。また、前記保護層除去工程(E)における熱エッチング温度が、前記半導体結晶層形成工程(D)における熱処理温度よりも高温であれば、前記工程(D)の後、温度上昇によりスムーズに前記工程(E)に移行できるため、特に好ましい。前記半導体結晶層形成工程(D)における熱処理温度は、特に制限されないが、例えば500〜900℃、好ましくは600〜800℃、より好ましくは650〜750℃である。また、前記保護層除去工程(E)における熱エッチング温度は、特に制限されないが、例えば700〜1300℃、好ましくは800〜1200℃、より好ましくは900〜1100℃である。
【0047】
また、本発明の製造方法は、例えば、前記結晶層の上に、他のIII族窒化物半導体含有層を形成する他のIII族窒化物半導体含有層形成工程(F)をさらに含むことが好ましい。前記他のIII族窒化物半導体含有層としては、特に制限されないが、例えば、p型クラッド層等が挙げられる。また、本発明の製造方法が前記他のIII族窒化物半導体含有層形成工程(F)を含む場合、例えば、前記保護層除去工程(E)をさらに含み、その後に前記他のIII族窒化物半導体含有層形成工程(F)を実施することが好ましい。この場合、各工程における温度は特に制限されない。しかしながら、例えば、前記工程(F)において、前記工程(E)における熱エッチング温度以上の温度で前記他のIII族窒化物半導体含有層を形成すると、より好ましい。このようにすれば、前記工程(E)から前記工程(F)にスムーズに移行することができるためである。ただし、これに限定されず、例えば、前記工程(E)における熱エッチング温度の方が前記工程(F)における前記他のIII族窒化物半導体含有層形成温度より高くても良い。前記保護層除去工程(E)における熱エッチング温度は、特に制限されないが、例えば前述の通りである。また、前記他のIII族窒化物半導体含有層形成工程(F)における熱処理温度は、特に制限されないが、例えば700〜1300℃、好ましくは800〜1200℃、より好ましくは900〜1100℃である。
【0048】
なお、前記保護層形成工程(B)を前記エッチング工程(C)よりも先に実施することが好ましい理由は、例えば以下の通りである。すなわち、まず、前記エッチング工程(C)を実施する方法は、特に制限されないが、例えば、一般的なエッチング方法と同様、前記III族窒化物非結晶層上にSiOなどのマスクを形成して実施することが好ましい。このとき、前記非結晶層上に直接マスクを形成すると、ケイ素、炭素等の元素が前記非結晶層上面に不純物として残留する可能性がある。これら残留不純物の濃度に斑(むら)が発生すると、それが原因でIII族窒化物半導体素子の性能が低下するおそれがある。例えば、前記工程(F)により他のIII族窒化物半導体含有層を形成する場合、前記残留不純物濃度の分布に起因して前記結晶層表面での二次元結晶核の発生頻度に斑(むら)が生じ、ピットや凹凸の原因となる可能性がある。このため、前記エッチング工程(C)において、前記III族窒化物非結晶層上にSiOなどのマスクを直接形成した場合は、マスク除去後に、前記非結晶層上の残留不純物をも十分に除去することが好ましい。
【0049】
しかしながら、前記保護層形成工程(B)を先に実施し、その後に前記エッチング工程(C)を実施すれば、前記保護層の上にマスクを形成してエッチングを実施することができる。すなわち、前記マスクを前記III族窒化物非結晶層上に直接形成するのを回避することができる。このため、前記マスク由来の不純物が前記マスク除去後に前記III族窒化物非結晶層上に残留することを、防止することが可能である。したがって、前記不純物に起因するピットや凹凸の問題をも防止できる。
【0050】
なお、前記エッチング工程(C)におけるエッチング方法は、特に制限されず、例えば、ウェットエッチングでも良いし、ドライエッチングでも良い。しかしながら、ウェットエッチングの方が、例えば非結晶層と結晶層の間でのエッチング選択性が良く、エッチング深さの制御がしやすい等の理由により好ましい。すなわち、ウェットエッチングによれば、例えば前記下地層がIII族窒化物半導体結晶から形成された層である場合、前記下地層の好ましくないエッチングを防止し、その上面に形成された前記III族窒化物非結晶層を選択的にエッチングしやすい。
【0051】
本発明の製造方法では、例えば、前記III族窒化物半導体の結晶層が不純物を含む場合、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が前記結晶層内部の不純物濃度の平均値以下(内部の不純物濃度の平均値と同等か、それよりも小さい)であることが好ましい。前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が前記結晶層内部の不純物濃度の平均値以下であれば、例えば、前記結晶層上に他のIII族窒化物含有層を形成する際に、二次元結晶核の発生頻度の斑(むら)が抑制されピットや凹凸が発生しにくい。また、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が前記結晶層内部の不純物濃度の平均値以下であれば、前記結晶層開口部を前記他のIII族窒化物含有層で埋め込んで開口埋め込み部とした際に、埋め込み形状が安定する。例えば、前記結晶層上に、前記他のIII族窒化物含有層を形成する直前まで前記保護層を除去せずに配置しておくことにより、前記結晶層上面部の不純物による汚染をきわめて効果的に防止することができる。前記不純物は、特に制限されないが、例えば酸素である。前記III族窒化物の結晶層において、上面部の酸素濃度の平均値が内部の酸素濃度の平均値以下であると、前記上面部において酸素濃度の斑(むら)が発生しにくいため、前記のような効果が特に得られやすい。さらに好ましくは、前記結晶層において、前記上面部の酸素濃度が5×1018cm−3以下である。前記上面部の酸素濃度が5×1018cm−3以下であると、前記他のIII族窒化物半導体含有層の成長速度が酸素濃度分布の影響をほとんど受けなくなるため、平坦性が向上し、前記結晶層開口埋め込み部の埋め込み形状の安定化に極めて効果的である。前記III族窒化物半導体結晶層上面部の不純物濃度を高くしないためには、例えば、前記III族窒化物非結晶層を酸化しないことや、前記エッチング用のマスクを前記III族窒化物非結晶層の上に直接形成しないことにより、不純物の残留を防げば良い。
【0052】
なお、前記結晶層において、前記「上面部」は、例えば前記結晶層の上面から深さ50nmまでの部分であり、好ましくは前記上面から深さ30nmまでの部分であり、より好ましくは前記上面から深さ20nmまでの部分である。前記「内部」は、例えば前記「上面部」以外の部分である。また、本発明において、「酸素濃度」は、特に断らない限り、単体としての酸素(O)の濃度ではなく、酸素原子の濃度(単位体積当たりの酸素原子の個数)をいう。例えば、前記結晶層において「酸素濃度の平均値が5×1018cm−3以下である」は、前記結晶層1cm中に存在する酸素原子の個数が5×1018個以下であることを指す。酸素以外の元素の濃度についても同様である。
【0053】
前記III族窒化物半導体の結晶層およびその上に形成される前記保護層の組成は、特に制限されない。前記保護層は、好ましくは、III族窒化物から形成された層である。前記保護層がIII族窒化物から形成された層であれば、例えば、本発明におけるIII族窒化物半導体素子製造工程において、前記保護層が不純物としてIII族窒化物半導体素子中に拡散しない等の効果を得ることができる。また、本発明の製造方法では、例えば、前述の通り、前記保護層に代えて、III族窒化物から形成された層を形成しても良い。前記保護層に代えてIII族窒化物から形成された層を形成する場合、その層の機能は何ら制限されず、例えば保護層としての機能を有していなくても良い。
【0054】
また、本発明においては、例えば前述のとおり、
前記III族窒化物半導体の結晶層が、InGaAl1−a−bN(0≦a<1、0≦b<1、0≦a+b<1)の組成を有するIII族窒化物半導体から形成され、
前記保護層が、InGaAl1−c−dN(0≦c≦1、0≦d≦1、0<c+d≦1)の組成を有するIII族窒化物から形成され、かつ、
前記結晶層のIn組成比aと前記保護層のIn組成比cとが、下記数式(1)および(2)の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
【0055】
a=0 (1)
a<c (2)

前記式(1)および(2)の少なくとも一方を満たすことは、すなわち、前記III族窒化物半導体結晶層のIn組成比が、ゼロであるか、または前記保護層のIn組成比よりも小さいことを意味する。この組成であれば、例えば前記結晶層およびその上に形成された前記保護層をともに加熱した場合、後者の方が蒸発しやすいので、後者を選択的に熱エッチングで除去することができる(前記工程(E))。なお、熱エッチングする場合、前記保護層由来の不純物が前記結晶層上面に残留しなくなるまで十分に熱処理することが好ましい。このようにすれば、例えば、前記結晶層の上に、他のIII族窒化物半導体含有層を形成した場合に(前記工程(F))、前記不純物に起因するピットや凹凸の問題をも防止することができる。また、前記結晶層が熱エッチングされにくいため、前記結晶層の層厚および開口埋め込み部の埋め込み形状も安定する。
【0056】
また、前記保護層は、InGa1−xN(0≦x≦1)の組成を有するIII族窒化物から形成されていると熱エッチング速度がさらに高く、InNから形成されていると特に熱エッチング速度が高くなる。前記保護層の熱エッチング速度が高いことにより、前記保護層の熱エッチングによる除去効率がさらに向上し、前記保護層由来不純物の除去効率もさらに高くなる。また、前記保護層の熱エッチング速度が高いと、熱エッチングの選択性(熱エッチング速度の選択比)もさらに高くなる。熱エッチングの選択性が高いと、前記結晶層がさらに熱エッチングされにくく、前記結晶層の層厚および開口埋め込み部の埋め込み形状もさらに安定する。また、前記結晶層がAlNから形成されていると、特に熱エッチングされにくいため、前記結晶層の層厚および開口埋め込み部の埋め込み形状も特に安定する。前記結晶層は、AlN以外には、例えば、GaN、AlGaInN混晶等であっても良い。
【0057】
本発明の製造方法において、前記III族窒化物非結晶層の組成は特に制限されないが、例えば、前記III族窒化物半導体結晶層の組成と同じで良い。前記III族窒化物非結晶層の組成をそのままの組成で結晶化させれば、前記III族窒化物半導体結晶層に変換することができるからである。
【0058】
また、本発明の製造方法においては、前記III族窒化物非結晶層またはそれを前記工程(D)において結晶化させて得られる前記III族窒化物半導体結晶層は、1層でも良いが、2層以上の層を含んでいても良い。すなわち、例えば前記工程(A)において前記III族窒化物非結晶層を2層以上形成し、前記工程(B)において保護層を前記2層以上の非結晶層の上に形成し、前記工程(C)において前記2層以上の非結晶層をまとめてエッチングし、前記工程(D)において前記2層以上の非結晶層をまとめて結晶層に変換しても良い。前記非結晶層(前記工程(D)において結晶層に変換する)を2層以上とすることにより、III族窒化物半導体素子の品質をさらに向上させることができる。具体的には、例えば、エッチングにより形成される開口部幅のばらつきや、前記工程(F)において前記開口部の上に形成する他のIII族窒化物半導体含有層の層厚のばらつきをさらに抑える等の効果を得ることも可能である。前記非結晶層または前記結晶層が2層以上である場合、その組成は特に制限されないが、例えば、AlNから形成された下層とGaNから形成された上層とを含んでいても良い。例えば、前記非結晶層または前記結晶層は、AlNから形成された下層とGaNから形成された上層のみからなっていても良いし、他の層を適宜含んでいても良い。
【0059】
なお、本発明における前記結晶層、前記保護層等の各構成要素において、例えば「InGa1−xN(0≦x≦1)の組成を有するIII族窒化物から形成されている」は、本発明の目的および効果を達成することができる限り、In、GaおよびN以外の元素(不純物)を含んでいても良い。前記各構成要素がInGa1−xN(0≦x≦1)以外の他の組成を有する場合においても同様である。さらに、同様に、前記各構成要素が、例えば「InNから形成されている」は、本発明の目的および効果を達成することができる限り、InおよびN以外の元素(不純物)を含んでいても良い。前記各構成要素がInN以外から形成されている場合においても同様である。なお、前記III族窒化物半導体の結晶層においては、前述の通り、上面部の不純物濃度の平均値が内部の不純物濃度の平均値以下(内部の不純物濃度の平均値と同等か、それよりも小さい)であることが好ましい。それ以外の各構成要素がIII族窒化物半導体から形成されている場合、導電性、絶縁性等の観点から、不純物を適宜ドープしても良いし、逆に、なるべく不純物を少なくするようにしても良い。
【0060】
つぎに、本発明のIII族窒化物半導体素子は、前述の通り、前記本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物半導体素子であり、III族窒化物半導体の結晶層を含み、前記結晶層は一部が除去されており、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が内部の不純物濃度の平均値以下である。すなわち、本発明のIII族窒化物半導体素子は、前記本発明の製造方法により製造されることで、前記III族窒化物半導体結晶層は一部が除去されており、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が内部の不純物濃度の平均値以下であるという構成を得ることができる。しかしながら、本発明のIII族窒化物半導体素子は、この構成を有する限り、製造方法は特に制限されず、どのような方法でも良い。ただし、前記本発明の製造方法により製造することが、前述した品質向上等の観点から好ましい。また、前記本発明の製造方法は、前述の通り、前記工程(A)〜(D)を含む以外は特に制限されない。すなわち、本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物半導体素子の構成は特に制限されず、どのような構成でも良い。ただし、前記III族窒化物半導体結晶層は一部が除去されており、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が前記結晶層内部の不純物濃度の平均値以下であるという前述の構成を有していることが好ましい。
【0061】
本発明のIII族窒化物半導体素子の前記結晶層において、前記「上面部」は、例えば前記結晶層の上面から深さ50nmまでの部分であり、好ましくは前記上面から深さ30nmまでの部分であり、より好ましくは前記上面から深さ20nmまでの部分である。前記「内部」は、例えば前記上面部以外の部分である。前記不純物は、特に制限されないが、例えば酸素である。また、前記結晶層において、前記上面部の酸素濃度の平均値は、好ましくは、5×1018cm−3以下である。
【0062】
前記III族窒化物半導体結晶層は、特に制限されないが、例えば半導体レーザの電流狭窄層が好ましい。また、前記結晶層の組成も特に制限されないが、AlNから形成された層であることが特に好ましい。前記結晶層がAlNから形成されていると、絶縁性が高いため電流狭窄層として優れる等の効果が得られる。
【0063】
また、本発明のIII族窒化物半導体素子は、前記III族窒化物半導体結晶層以外の構成要素を適宜含んでいても良い。具体的には、例えば、前記結晶層の上に、他のIII族窒化物半導体含有層をさらに含んでいても良い。また、例えば、前記本発明の製造方法により製造される場合には、前記下地層を、本発明のIII族窒化物半導体素子の一部としてさらに含んでいても良い。前記下地層は、例えば、III族窒化物半導体を含む層であっても良い。
【0064】
前記本発明のIII族窒化物半導体、本発明のIII族窒化物半導体素子、または前記本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物半導体もしくはIII族窒化物半導体素子は、例えば、以下のような構成を有していても良い。すなわち、前記III族窒化物半導体またはIII族窒化物半導体素子は、例えば、第一の層(例えば前記下地層)、第二の層(前記「III族窒化物半導体結晶層」)、および第三の層(前記「他のIII族窒化物半導体含有層」)を少なくとも含み、前記第一、第二および第三の層は、それぞれIII族窒化物半導体を含んでいても良い。前記第二の層(前記「III族窒化物半導体結晶層」)は、前記第一の層(例えば前記下地層)上に設けられ、一部が除去されている。前記第二の層の一部が除去されている状態は、前述のように、前記除去部分において、前記第二の層が完全に除去され、貫通口が形成された状態でも良いし、前記第二の層の下部が除去されずに残った状態でも良い。第三の層(前記「他のIII族窒化物半導体含有層」)は、前記第二の層および前記開口部の上に設けられている。前記開口部は前記第三の層により埋め込まれて開口埋め込み部となっている。前記開口埋め込み部においては、例えば目的とする半導体素子の特性等に応じて、前記第三の層が前記第一の層の上面に接していても良いし、接していなくても良い。ただし、この構成は例示であり、前記本発明のIII族窒化物半導体、本発明のIII族窒化物半導体素子、または前記本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物半導体もしくはIII族窒化物半導体素子は、この構成に限定されない。なお、このような構成を有するIII族窒化物半導体素子としては、特に制限されないが、例えば、インナーストライプ型GaN系レーザ、フォトニック結晶面発光レーザ等が挙げられる。
【0065】
前記III族窒化物半導体結晶層の直下の層(前記「下地層」または「第一の層」)および直上の層(前記「他のIII族窒化物半導体含有層」または「第三の層」)もIII族窒化物半導体から形成されていれば、III族窒化物半導体素子の製造工程において、前記III族窒化物半導体結晶層または非結晶層が不純物となって拡散することがない。また、前記第一の層および前記第三の層がIII族窒化物半導体から形成されていれば、熱処理による前記非結晶層の結晶化(前記工程(D))も比較的容易に行なうことができる。さらに、前述の通り、保護層もIII族窒化物から形成された層とすることで、保護層が不純物として拡散することがない。また、これにより、熱処理による保護層除去(前記工程(E))を比較的容易に実施することができる。
【0066】
本発明のIII族窒化物半導体素子または本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物半導体素子は、例えば、半導体レーザ、電界効果トランジスタ、またはフォトニック結晶面発光レーザであるが、これに限定されず、どのようなIII族窒化物半導体素子でも良い。
【0067】
[実施形態2]
次に、本発明の別の実施形態について説明する。具体的には、本実施形態においては、半導体レーザおよびその製造方法の例について説明する。本実施形態では、インナーストライプ型半導体レーザおよびその製造方法の例について特に詳しく説明する。
【0068】
図2は、本発明の製造方法によるIII族窒化物半導体素子の製造の一例を示す模式図である。同図(a)〜(d)に示す順で製造工程を進行させ、同図(d)に示すIII族窒化物半導体素子を製造する。図2(a)は、活性層の成長工程における断面図である。図2(b)は、開口部(ストライプ)を形成する工程における断面を示す図である。図2(c)は、p型クラッド層を再成長させる工程を示す断面図である。図2(d)は、電極形成工程を経て完成したIII族窒化物半導体素子を示す断面図である。なお、同図に示すIII族窒化物半導体素子は、半導体レーザである。
【0069】
まず、図2(d)に示す半導体レーザ(III族窒化物半導体素子)について説明する。この半導体レーザは、前記本発明のIII族窒化物半導体素子である。また、この半導体レーザは、後述するように、前記本発明の製造方法にしたがって製造することができる。図示のとおり、この半導体レーザ100は、それぞれIII族窒化物半導体層である第一の層(p型GaNガイド層107)と、第二の層(電流狭窄層114)と、第三の層(p型クラッド層108)とを主要構成要素とする。第一の層(p型GaNガイド層107)は、前記「下地層」に相当する。第二の層(電流狭窄層114)は、前記「III族窒化物半導体の結晶層」に相当する。第三の層(p型クラッド層108)は、前記「他のIII族窒化物半導体含有層」に相当する。第二の層(電流狭窄層114)は、第一の層(p型GaNガイド層107)の上に設けられ、開口埋め込み部114A’が形成されている。第三の層(p型クラッド層108)は、第二の層(電流狭窄層114)および開口埋め込み部114A’の上に設けられている。開口埋め込み部114A’の上では、第三の層(p型クラッド層108)が開口埋め込み部114A’に埋め込まれ、第三の層(p型クラッド層108)が第一の層(p型GaNガイド層107)上面に接している。すなわち、第三の層(p型クラッド層108)と第一の層(p型GaNガイド層107)との界面は、開口埋め込み部114A’底部に存在する。第三の層(p型クラッド層108)と第一の層(p型GaNガイド層107)との界面は、第二の層(電流狭窄層114)と第一の層(p型GaNガイド層107)との界面と、ほぼ同一平面上にある。また、p型クラッド層108の上面(後述するp型コンタクト層109側の面)は、ほぼ平坦である。第二の層(電流狭窄層114)上面部(第二の層上の第三の層との界面)の不純物濃度の平均値は、第二の層内部の不純物濃度の平均値と同等またはそれ以下である。
【0070】
つぎに、この半導体レーザ100の全体の構成について説明する。図2(d)に示すとおり、この半導体レーザ100は、101、102、103、104、105、106、107、114、108および109の符合で表される各層が、この順番で下から上に積層されている。より具体的には、半導体レーザ100は、半導体基板としてのn型GaN基板101と、n型GaN基板101上に設けられたSiドープn型GaN層102と、Siドープn型GaN層102上に設けられたn型クラッド層103と、n型クラッド層103上に設けられたn型光閉じ込め層104と、n型光閉じ込め層104上に設けられた活性層としての3周期多重量子井戸(MQW)層105と、3周期多重量子井戸(MQW)層105上に設けられたキャップ層106と、キャップ層106上に設けられたp型GaNガイド層107と、p型GaNガイド層107上に設けられた電流狭窄層114と、電流狭窄層114上に設けられたp型クラッド層108と、p型クラッド層108上に設けられたp型コンタクト層109とを有する。主要構成要素である第一の層(下地層、p型GaNガイド層107)、第二の層(III族窒化物半導体の結晶層、電流狭窄層114)および第三の層(他のIII族窒化物半導体含有層、p型クラッド層108)の位置および結合関係は、前述の通りである。さらに、n型GaN基板101の下面(裏面)側にはn電極112が設けられ、p型コンタクト層109上には、p電極113が設けられている。
【0071】
前述の通り、n型GaN基板101の表面(上面)側には各半導体層102、103、104、105、106、107、114、108および109がこの順番で積層され、裏面(下面)側にはn電極112が設けられている。Siドープn型GaN層102は、例えば、Si濃度4×1017cm−3であり、厚さは、1μmである。n型クラッド層103は、例えば、Siドープn型Al0.05Ga0.95Nから構成される層であり、例えば、Si濃度4×1017cm−3、厚さ2μmである。n型光閉じ込め層104は、例えば、Siドープn型GaNから形成され、例えば、Si濃度4×1017cm−3、厚さ0.1μmである。さらに、3周期多重量子井戸(MQW)層105は、例えば、In0.1Ga0.9N(たとえば、厚さ3nm)井戸層とアンドープGaN(例えば、厚さ10nm)バリア層とを含んで構成される。キャップ層106は、例えば、Mgドープp型Al0.2Ga0.8Nから形成されている。p型GaNガイド層107は、例えば、Mgドープp型GaNから形成され、例えば、Mg濃度1×1019cm−3、厚さ0.1μmである。電流狭窄層114およびp型クラッド層108の組成および厚さについては後述する。p型コンタクト層109は、Mgドープp型GaN(例えば、Mg濃度2×1020cm−3以下、厚さ0.02μm)から形成されている層である。このp型コンタクト層109上には、前述の通り、p電極113が設けられている。
【0072】
つぎに、この半導体レーザ(III族窒化物半導体素子)100を製造する方法について、図2(a)〜(d)に基づき説明する。
【0073】
本発明の前記工程(A)〜(F)の実施に先立ち、基板上に、前記「下地層」およびその他の層を積層させる。すなわち、まず、n型GaN基板101上に、Siドープn型GaN層102、n型クラッド層103、n型光閉じ込め層104、3周期多重量子井戸(MQW)層105、キャップ層106、p型GaNガイド層107を、例えば、有機金属気相成長法(以下MOVPE法)により積層する。前述の通り、p型GaNガイド層107が「下地層」となる。
【0074】
次に、図2(a)に示すとおり、p型GaNガイド層107(下地層)上に、III族窒化物非結晶層114’を形成し(前記工程(A))、さらにその上に、保護層115を形成する(前記工程(B))。
【0075】
III族窒化物非結晶層114’の組成は特に制限されないが、前述の通り、例えばInGaAl1−a−bN(0≦a<1、0≦b<1、0≦a+b<1)の組成を有するIII族窒化物半導体から形成されていることが好ましい。保護層115の組成も特に制限されないが、前述の通り、例えばInGaAl1−c−dN(0≦c≦1、0≦d≦1、0<c+d≦1)の組成を有するIII族窒化物半導体から形成されていることが好ましい。非結晶層114’のIn組成比は、前述の通り、ゼロまたは保護層115のIn組成比よりも小さいことが好ましい。例えば、非結晶層114’は、例えば厚さ0.1μmのAlN層であっても良く、保護層115は、例えば厚さ0.01μmのInNであっても良い。
【0076】
非結晶層114’(例えば非結晶AlN)および保護層115(例えば非結晶InN)は、例えば、有機金属気相成長法(以下MOVPE法)により600℃以下の低温で堆積させる。なお、例えばMOVPE法によりp型GaNガイド層107上に高温で単結晶AlN層を作製すると、堆積時にAlN層にクラックが発生しやすい。本発明では、III族窒化物半導体層(AlN等)を、下地層の上に非結晶層として形成し、エッチング後に結晶化させるので、このようなクラック発生が起こりにくく、エッチングもしやすいという利点がある。
【0077】
保護層115の堆積温度は特に制限されず、例えば、非結晶層114’の堆積温度より高く設定しても良い。ただし、保護層115の堆積温度が高すぎると、非結晶層114’(例えば非結晶AlN)の結晶化が進み次のエッチング工程(C)でのエッチング速度が低下する可能性がある。したがって、保護層115の堆積温度は、例えば前述の通り、600℃以下が好ましい。
【0078】
さらに、保護層115(例えば非結晶InN)の上に、SiOなどのマスク(図示せず)を形成する。そして、図2(b)に示すとおり、前記マスクでカバーされていない領域の保護層115および非結晶層114’をエッチングにより除去し、開口部114Aを設ける(前記工程(C))。エッチング方法は特に制限されないが、例えば、フォトリソグラフィーとウェットエッチング等により実施することができる。エッチング液も特に制限されず、例えば、リン酸含有液等、一般的なエッチング液を適宜用いることができる。前記エッチング液は、例えば、リン酸と硫酸を体積比1:1の割合で混合した90℃の溶液であっても良い。エッチングマスクも特に制限されないが、エッチング液等により侵されにくい材料が好ましい。前記エッチングマスクとしては、SiO以外には、例えば、SiNxや、レジストを含む有機物等が挙げられる。
【0079】
つぎに、図2(b)に示す積層体(半導体レーザウェハ)をMOVPE炉に再投入し、徐々に基板温度を上昇させる。昇温中にIII族窒化物非結晶層114’は結晶層(電流狭窄層)114に変換される(前記工程(D))。このとき、電流狭窄層114の表面は保護層115で保護されているため、マストランスポート等による表面平坦性の悪化を防止することができる。電流狭窄層114の結晶化がある程度進んだ後、さらにp型クラッド層108の成長温度まで昇温すると、保護層115は蒸発する(前記保護層除去工程(E))。このように、p型クラッド層108の再成長を開始するまでの間に保護層115を熱エッチングによって除去することで、極めて清浄な電流狭窄層114表面が現れる。この上にp型クラッド層108の再成長を実施することができるため、ピットや凹凸のない極めて平坦なp型クラッド層108を得ることができる。なお、例えば、電流狭窄層114が結晶化した後、p型クラッド層の再成長開始前にHガスを導入して熱処理することは、熱エッチングの効率向上や残留不純物濃度低減に有効である。
【0080】
さらに、図2(c)に示すとおり、保護層115を完全に除去した清浄な電流狭窄層114の表面上にp型クラッド層108を積層し(前記他のIII族窒化物半導体含有層形成工程(F))、さらに、p型コンタクト層109を積層する。p型クラッド層108は、開口部114Aを埋め込んで開口埋め込み部114A’を形成するように積層(再成長)させる。p型クラッド層108は、例えば、Mgドープp型Al0.05Ga0.95Nから形成されている層であり、例えば、Mg濃度1×1019cm−3、厚さ0.5μmとする。
【0081】
その後さらに、図2(d)に示すとおり、p型コンタクト層109の上にp電極113を設け、n型GaN基板101裏面(下面)にn電極112を設ける。これにより、半導体レーザ100を得ることができる。
【0082】
このような半導体レーザ100では、例えば、電流狭窄層114とp型クラッド層108との界面に珪素、酸素、炭素などの残留不純物が少なく、電流狭窄層114内部の不純物濃度の平均値以下であることが好ましい。より具体的には、例えば、電気狭窄層上面部における酸素濃度の平均値、珪素濃度の平均値、炭素濃度の平均値がいずれも5×1018cm−3程度以下であることがより好ましい。これによれば、電流狭窄層114表面にp型クラッド層108を再成長させる場合、二次元結晶核の発生頻度の斑(むら)が抑制されピットや凹凸が発生しにくく、厚みのばらつきが抑制された非常に平坦なp型クラッド層108を得ることができる。p型クラッド層108が非常に平坦であることで、半導体レーザ100の動作電圧のばらつきを防止することができる。さらに、p型クラッド層108の開口埋め込み部114A’近傍の厚みおよび埋め込み形状のばらつきが防止できるので、光閉じ込め構造の設計とのずれを防止することができ、閾値や、キンクレベルなどの特性のばらつきを抑制することができる。
【0083】
インナーストライプ型GaNレーザにおいて、特にAlN開口埋め込み部近傍にピットが発生すると、ピット部で未消費の成長原料が表面拡散などによりその周辺部へ供給される。このため、前記AlN開口埋め込み部の層厚が部分的に増大し、前記AlN開口埋め込み部の埋め込み形状がばらつく一因となってしまう。前記AlN開口埋め込み部の埋め込み形状がばらつくと、動作電圧等のLD特性が悪化したり、レーザ光の放射角や放射パターンが変化するため、わずかな成長条件やプロセス条件のずれによってLDの歩留まりが悪化したりするおそれがある。しかしながら、本発明によれば、これらの問題を効果的に解決することができる。本発明によるこれらの問題の解決は、GaNレーザ以外のインナーストライプ型レーザにも、電流狭窄層がAlN以外の材質から形成されている場合にも、効果的である。さらに、本発明によれば、インナーストライプ型レーザにおいて、電流狭窄層を一部除去した部分(開口埋め込み部)の埋め込み形状が安定化することにより、素子抵抗の増大を抑制することも可能である。インナーストライプ型レーザの素子抵抗増大が抑制されれば、素子の発熱も抑制され、これによりキャリアのオーバーフロー等も抑制することができる。したがって、本発明によれば、インナーストライプ型レーザのキャリアの注入効率を高め、これにより前記インナーストライプ型レーザの高出力化の効果を得ることも可能である。
【0084】
なお、電流狭窄層114としては、前述の通りAlN層が特に好ましい。電流狭窄層114を2元化合物とすることで、多元混晶と比べて、結晶化した際に平坦な表面が得られやすい。また、AlNは、III族窒化物半導体中で最も大きなバンドギャップと、最も小さな屈折率とを有するため、高い絶縁性能と、充分な光閉じ込め性能を有する電流狭窄層を実現することができる。
【0085】
また、保護層115としては、特に好ましいのは、前述の通りInN層である。InNは、III族窒化物半導体中でもっとも容易に熱分解し、またH雰囲気下での熱エッチング速度が非常に速い。このため、保護層115がInN層であると、電流狭窄層114の結晶化工程後にp型クラッド層108の再成長温度まで昇温した際に、キャリアガスにHを導入することなどにより完全に再蒸発させることができる。したがって、極めて清浄な電流狭窄層114表面上に再成長をおこなうことが出来るため、極めて平坦性の良いp型クラッド層108が形成できる。
【0086】
さらに、開口埋め込み部(ストライプ)114A’の幅は、特に制限されないが、例えば2μm以下が好ましい。これにより、開口部114Aを埋め込んで開口埋め込み部114A’とする際に容易に埋め込まれ、より厚みのばらつきが少なく表面が平坦なp型クラッド層108が得られやすい。
【0087】
なお、本発明において、半導体レーザの構造は、特に制限されず、どのような構造でも良い。電流狭窄層を有する半導体レーザすなわちインナーストライプ型半導体レーザの場合は、例えば、基板の上に、n型クラッド層、活性層、電流狭窄層およびp型クラッド層がこの順番で積層され、前記電流狭窄層は一部が除去され、除去部分が前記p型クラッド層により埋め込まれて開口埋め込み部が形成され、前記基板の下および前記p型クラッド層の上にそれぞれ電極が形成されていても良い。前記基板は、例えばn型基板である。前記基板の下の電極は、例えばn電極である。前記p型クラッド層の上の電極は、例えばp電極である。前記各層は、それらの間に他の構成要素が存在せず、直接接触していても良いし、前記各層の間に他の層等の構成要素がさらに存在していても良い。このようなインナーストライプ型半導体レーザの構造の一例としては、前述の図1(D)に示した構造がある。さらに、本発明において、インナーストライプ型半導体レーザの構造は、これに限定されず、どのような構造でも良い。
【0088】
[実施形態3]
次に、本発明のさらに別の実施形態について説明する。具体的には、本実施形態においては、電界効果トランジスタ(以下、FETという)およびその製造方法の例について説明する。
【0089】
本発明において、III族窒化物半導体素子がFETである場合、その構造は特に制限されない。前記FETの構造は、例えば、前記実施形態1で述べた構造(図1(D))でも良いし、その他の任意の構造でも良い。前記FETは、例えば、以下、本実施形態において述べるような構造でも良い。
【0090】
図5に、本実施形態に係るFETの断面の構造を模式的に示す。図示の通り、このFET400は、基板401、バッファ層402、キャリア走行層403、スペーサ層404およびキャリア供給層405が下から上にこの順番で積層され、その上に、さらに、ショトキ層406、ソース電極407、ドレイン電極408、ゲート電極409、およびコンタクト層410を有する。コンタクト層410は、キャリア供給層405上の左右に1つずつ配置されている。左側のコンタクト層410の上にはソース電極407が配置され、右側のコンタクト層410上にはドレイン電極408が配置されている。左右のコンタクト層410の間の中央部分は、コンタクト層410が除去されて開口部410Aが形成され、キャリア供給層405の上面が露出している。ショトキ層406は、開口部410Aにおけるキャリア層405の上に配置され、ゲート電極409は、ショトキ層406の上に配置されている。すなわち、同図に示すFETは、ソース電極407およびドレイン電極408の直下に、それぞれコンタクト層410を設けた、いわゆるワイドリセス構造を採用している。各層の材質等は特に制限されないが、例えば、基板401としてc面((0001)面)サファイア基板を用い、バッファ層402としてAlN低温成長バッファ層(膜厚20nm)、キャリア走行層403としてGaN動作層(膜厚1500nm)、スペーサ層404としてAlGaNスペーサ層(膜厚5nm)、キャリア供給層405としてAlGaN層(Al組成比0.2、膜厚20nm、Si添加量5×1018cm−3)、ショットキ層406としてInGaN(In組成比0.05、膜厚10nm)、コンタクト層410としてGaN層(膜厚20nm)をそれぞれ用いてもよい。
【0091】
例えば、プレーナ型のトランジスタでは、ソース・ドレイン電極直下のコンタクト層がゲート電極下にも延在して形成される。このため、ソース・ドレイン電極下のキャリア濃度を高くしてコンタクト抵抗を低減しようとすると、同時にゲート電極下のキャリア濃度も高くなってしまい、設計通りの素子特性を得ることが困難となる場合がある。これに対してワイドリセス構造を採用した場合、ソース・ドレイン電極直下のコンタクト層はゲート電極下には存在しない形態となり、コンタクト層のキャリア濃度を、ゲート電極下の層とは独立に自由に設定できる。このため、コンタクト層の導電性を改善し、コンタクト抵抗を有効に低減することができる。また、ワイドリセスの採用により、ゲート電極下の電界集中を緩和でき、トランジスタの耐圧特性等を改善することができる。
【0092】
本実施形態において、図5における前記各層の形成方法は、特に制限されないが、例えば、前記実施形態2と同様、有機金属気相エピタキシャル(MOVPE)法により形成することができる。この場合、MOVPE法による成長温度は、特に制限されないが、例えば以下の通りである。
バッファ層401:400〜500℃(例えば450℃)
スペーサ層404、キャリア供給層405(AlGaN層):1040〜1100℃(例えば1080℃)
ショットキ層406(InGaN層):800〜900℃(例えば840℃)
コンタクト層410(GaN層):200〜500℃(例えば350℃)
【0093】
図5に示すFETは、より具体的には、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、基板401上に、バッファ層402、キャリア走行層403、スペーサ層404およびキャリア供給層405を、下から上にこの順番で積層させる。次に、キャリア供給層405を下地層とし、その上面の全体に、III族窒化物の非結晶層を形成する(前記非結晶層形成工程(A))。この非結晶層が、コンタクト層410の前駆層となる。前記非結晶層(コンタクト層410前駆層)の形成方法は特に制限されないが、例えば、成膜温度を200〜500℃、好ましくは300〜400℃としてGaNの非結晶層を低温成長させ、これを前記非結晶層(コンタクト層410前駆層)としても良い。次に、前記非結晶層(コンタクト層410前駆層)の上面全体に、保護層(図示せず)を形成する(前記保護層形成工程(B))。前記保護層の材質は特に制限されないが、III族窒化物から形成されることが好ましく、例えば、熱エッチングの選択性の観点から、前記実施形態2で述べた材質と同様の材質がより好ましい。
【0094】
次に、前記非結晶層(コンタクト層410前駆層)と前記保護層の一部をエッチングにより除去して開口部410Aを形成する(前記エッチング工程(C))。エッチング方法は特に制限されず、ウェットエッチングでもドライエッチングでも良いが、例えば、フォトリソグラフィー(フォトレジストを塗布し、露光および現像によりエッチングパターンを形成する方法)およびウェットエッチングを用いた方法が好ましい。エッチング液としてはリン酸含有液が好ましく、適宜硫酸等の他の酸を混合してもよい。リン酸含有量は特に制限されないが、例えば、エッチング液全体に対し、体積基準で10〜90%とする。エッチング後、前記保護層が形成された状態で、前記非結晶層(コンタクト層410前駆層)を熱処理してIII族窒化物半導体結晶層(コンタクト層410)に変換する(前記半導体結晶層形成工程(D))。前記熱処理の温度は特に制限されないが、前記非結晶層(コンタクト層410前駆層)がGaNの場合、例えば700〜1300℃、好ましくは900〜1200℃である。
【0095】
例えば、前記保護層を形成せずに、前記非結晶層(コンタクト層410前駆層)をエッチングして開口部を形成すると、開口部形成工程中に、前記非結晶層(コンタクト層410前駆層)表面が不純物により汚染されるおそれがある。前記不純物汚染が起こると、FETのコンタクト層上面に不純物濃度のばらつきが生じ、それによりコンタクト抵抗の上昇やばらつき等の問題が発生する可能性がある。しかし、本発明によれば、不純物濃度に起因するそれらの問題を解決し、優れた品質を有するワイドリセス型FETを製造することができる。
【0096】
そして、前記半導体結晶層形成工程(D)によりコンタクト層410を形成した後、前記保護層を、熱エッチングにより除去する(前記保護層除去工程(E))。前記熱エッチングの温度も特に制限されないが、例えば、前記実施形態2と同様でも良い。さらに、開口部410Aにおけるキャリア供給層405上面にショトキ層406を形成する。そして、左側のコンタクト層410の上面にソース電極407を、右側のコンタクト層410の上面にドレイン電極408を、ショトキ層406の上面にゲート電極409をそれぞれ形成し、図5に示すワイドリセス型FET(電界効果トランジスタ)を製造することができる。
【0097】
なお、ショトキ層406の形成方法は特に制限されないが、例えば、開口部410Aを全て埋め込むようにIII族窒化物半導体層(InGaN層等)を形成した後、不要部分を除去し、残った部分をショトキ層406としても良い。前記不要部分の除去方法も特に制限されないが、例えば、Clガスを用いたドライエッチング(ECR法)でも良い。ソース電極407、ドレイン電極408およびゲート電極409の形成方法も特に制限されないが、例えば以下のようにする。すなわち、まず、ショトキ層406形成後、第一の金属としてTi/Al(Ti層の膜厚10nm、Al層の膜厚200nm)を、電子銃蒸着により、左右のコンタクト層410の上面に形成する。その第一の金属層をしてソース電極407およびドレイン電極408を形成する。第二の金属としてNi/Au(Ni層の膜厚10nm、Au層の膜厚200nm)を電子銃蒸着によりショトキ層406上面に形成し、リフトオフすることによりゲート電極409を形成する。
【0098】
図5に示すようなワイドリセス型FETは、プレーナ型のFETよりもコンタクト層の導電性が優れている。このため、ワイドリセス型FETによれば、例えば、コンタクト抵抗が顕著に低減する、ゲート電極下の電界集中が有効に緩和され、耐圧特性等が改善される、等の効果を得ることができる。さらに、ワイドリセス型FETを本発明のIII族窒化物半導体素子の製造方法で製造することにより、あるいはワイドリセス型FETが本発明のIII族窒化物半導体素子であることにより、前述の通り、コンタクト層上面不純物濃度に起因するコンタクト抵抗の上昇やばらつき等の問題を解決できる。
【0099】
なお、本発明において、電界効果トランジスタ(FET)の構造は、特に制限されない。ワイドリセス型FETの場合は、例えば、下地層の上にコンタクト層が形成され、前記コンタクト層の一部が除去されて開口部が形成され、前記コンタクト層の上に電極が形成されていれば良い。すなわち、図5において、キャリア供給層405およびその下の層は、他の任意の構造に置き換えても良い。ショトキ層406およびゲート電極409も、他の任意の構造に置き換えても良いし、または省略しても良い。さらに、本発明において、ワイドリセス型FETの構造は、これに限定されず、どのような構造でも良い。
【0100】
[実施形態4]
次に、本発明のさらに別の実施形態について説明する。本実施形態では、具体的には、フォトニック結晶面発光レーザの例について説明する。
【0101】
図6に、本実施形態のフォトニック結晶面発光レーザの断面の構造を模式的に示す。図示の通り、このフォトニック結晶面発光レーザ500は、基板501の上に、n型クラッド層502、活性層503、フォトニック結晶層505およびp型クラッド層508がこの順番で積層されている。フォトニック結晶層505は、一部がエッチングにより除去され、多数の開口埋め込み部505A’が規則的に形成されている。開口埋め込み部505A’は、p型クラッド層508により埋め込まれている。基板501の下には、電極512が形成されている。p型クラッド層508の上には、電極513が形成されている。基板501は、例えばn型基板である。基板501の下の電極512は、例えばn電極である。p型クラッド層508の上の電極513は、例えばp電極である。
【0102】
なお、図6においては、開口埋め込み部505A’は、フォトニック結晶層505下部を完全に除去せずに残している。活性層503とp型クラッド層508とは直接接触しておらず、フォトニック結晶層505により隔てられている。しかし、本発明のフォトニック結晶面発光レーザの構造はこれに限定されず、例えば、開口埋め込み部においてフォトニック結晶層が完全に除去されて貫通口が形成され、活性層(下地層)上面とp型クラッド層とが直接接触していても良い。
【0103】
本実施形態において、図6における前記各層の材質、厚み等は特に制限されず、例えば、既存のフォトニック結晶面発光レーザ等に準じて適宜選択することができる。図6における各層の形成方法も特に制限されないが、例えば、前記各実施形態と同様、有機金属気相エピタキシャル(MOVPE)法により形成することができる。MOVPE法による成長温度も特に制限されず、適宜設定することができる。
【0104】
図6に示すフォトニック結晶面発光レーザは、より具体的には、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、基板501の上に、n型クラッド層502および活性層503をこの順番で積層させる。次に、活性層503を下地層とし、その上面の全体に、III族窒化物の非結晶層を形成する(前記非結晶層形成工程(A))。この非結晶層が、フォトニック結晶層505の前駆層となる。前記非結晶層(フォトニック結晶層505前駆層)の形成方法も特に制限されないが、例えば、前記各実施形態におけるGaNの非結晶層と同様でも良い。次に、前記非結晶層(フォトニック結晶層505前駆層)の上面全体に、保護層(図示せず)を形成する(前記保護層形成工程(B))。前記保護層の材質は特に制限されないが、III族窒化物から形成されることが好ましい。前記保護層の材質は、例えば、熱エッチングの選択性の観点から、前記実施形態2で述べた材質と同様の材質がより好ましい。
【0105】
次に、前記非結晶層(フォトニック結晶層505前駆層)と前記保護層の一部をエッチングにより除去して開口部を形成する(前記エッチング工程(C))。エッチング方法は特に制限されず、ウェットエッチングでもドライエッチングでも良いが、例えば、フォトリソグラフィーおよびウェットエッチングを用いた方法が好ましい。エッチング液その他のエッチング条件も特に制限されないが、例えば、前記各実施形態と同様でも良い。エッチング後、前記保護層が形成された状態で、前記非結晶層(フォトニック結晶層505前駆層)を熱処理してIII族窒化物半導体結晶層(コンタクト層410)に変換する(前記半導体結晶層形成工程(D))。前記熱処理の温度は特に制限されないが、例えば、前記各実施形態と同様でも良い。
【0106】
例えば、前記保護層を形成せずに、前記非結晶層(フォトニック結晶層505前駆層)をエッチングして開口部を形成すると、開口部形成工程中に、前記非結晶層(フォトニック結晶層505前駆層)表面が不純物により汚染されるおそれがある。前記不純物汚染が起こると、フォトニック結晶面発光レーザのフォトニック結晶層上面に不純物濃度のばらつきが生じ、それにより発光特性の低下等の問題が発生する可能性がある。しかし、本発明によれば、不純物濃度に起因するそれらの問題を解決し、優れた品質を有するフォトニック結晶面発光レーザを製造することができる。
【0107】
そして、前記半導体結晶層形成工程(D)によりフォトニック結晶層505を形成した後、前記保護層を、熱エッチングにより除去する(前記保護層除去工程(E))。前記熱エッチングの温度も特に制限されないが、例えば、前記各実施形態と同様でも良い。さらに、フォトニック結晶層505上面の全体にp型クラッド層508を形成する。前記開口部は、p型クラッド層508により埋め込まれ、開口埋め込み部505A’となる。そして、基板501の下に電極512を、p型クラッド層513の上に電極513をそれぞれ形成し、図6に示すフォトニック結晶面発光レーザを形成することができる。
【0108】
なお、本発明において、フォトニック結晶面発光レーザの構造は、特に制限されない。例えば、図6における各層は、それらの間に他の構成要素が存在せず、直接接触していても良いし、前記各層の間に他の層等の構成要素がさらに存在していても良い。さらに、本発明において、フォトニック結晶面発光レーザの構造は、これに限定されず、どのような構造でも良く、例えば、従来のフォトニック結晶面発光レーザの構造に適宜準じた構造でも良い。
【0109】
前記実施形態1〜4で説明したようにして本発明を実施することができるが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、適宜変更を加えても良い。具体的には、例えば、前記各実施形態の製造方法における処理温度、エッチング液組成等の各種条件はどのように変更しても良く、前記工程(A)〜(D)を含む限り本発明の製造方法に含まれる。本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物半導体またはIII族窒化物半導体素子の構成も、前記各実施形態の構成に限定されず、前述の通りどのような構成でも良い。例えば、前記各層の厚さ、層の数、組成等は、必要に応じ適宜変更しても良い。なお、本発明のIII族窒化物半導体およびIII族窒化物半導体素子は、前述の通り、III族窒化物半導体の結晶層を含み、前記結晶層は一部が除去されており、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が内部の不純物濃度の平均値以下である。これ以外には、本発明のIII族窒化物半導体およびIII族窒化物半導体素子の構成は限定されず、どのような構成でも良いし、また、どのような方法により製造しても良い。
【0110】
本発明は、例えば、前述の通りインナーストライプ型半導体レーザに適用可能であり、特に、前記実施形態2において説明したようなインナーストライプ型GaN系レーザに好ましく適用することができる。インナーストライプ型レーザは、横シングルモード光出力の上限を支配するストライプ形状の制御性や放熱性、電気抵抗などの面でドライエッチングを用いたリッジストライプ型レーザに比べ優れている。このため、インナーストライプ型レーザは、高出力レーザ向きの構造として非常に有望である。しかしながら、本発明は、インナーストライプ型半導体レーザに限定されず、あらゆるIII族窒化物半導体素子に適用可能である。例えば、リッジストライプ型レーザに本発明を適用しても良い。また、本発明は、半導体レーザには限定されず、前述のように、電界効果トランジスタ、フォトニック結晶面発光レーザ等にも適用可能である。電界効果トランジスタとしては、例えば、実施形態3において説明したようなワイドリセス型トランジスタでも良いし、その他にも、プレーナ型等、どのようなトランジスタでも良い。さらに、本発明は、これら以外のどのようなIII族窒化物半導体素子にも適用することができる。
【0111】
本発明のIII族窒化物半導体素子、または本発明の製造方法により製造されるIII族窒化物半導体素子の適用用途としては、特に制限されず、どのような用途でもよい。例えば、半導体レーザの場合、光ディスク用光源に用いる半導体レーザ、ディスプレイ用光源に用いる半導体レーザ等、あらゆる用途に用いることができる。光ディスク用光源としては、次世代の高密度光ディスク用光源に特に有用であり、例えば、発振波長405nmの半導体レーザ(LD)に用いても良い。ディスプレイ用としては、例えば、青色(波長:約450nm)、緑色(波長:約530nm)領域で発振するIII族窒化物半導体レーザとして用いても良い。
【0112】
光ディスク応用における書き込み速度の高速化には、LDの高出力化が重要である。またレーザビームをスポット状に絞り込むためにビーム形状を整える必要があり、横モードの制御が重要となる。さらに、光ディスクの転送速度高速化にともない高周波特性が重要となっており、素子抵抗の低減とともに素子の寄生容量をできるだけ小さくする必要もある。ディスプレイにおいては、大画面化に対応するためにLDの高出力化が求められる他、レーザビーム形状制御の点で横モード制御が重要である。本発明によれば、前述の通り、ピットや凹凸の発生等を抑制し、品質の良いIII族窒化物半導体素子を効率よく製造することができるので、これらの要求を適宜充足することが可能である。
【実施例】
【0113】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0114】
(実施例1)
前述の図2(a)〜(d)に示した工程に従い、同図(d)に示す構造のIII族窒化物半導体素子(半導体レーザ)を製造した。基板にはn型キャリア濃度が1×1018cm−3程度のn型GaN(0001)基板101を用いた。素子構造の作製には300hPaの減圧MOVPE装置を用いた。キャリアガスには水素と窒素の混合ガスを用い、Ga、Al、Inソースとしてそれぞれトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMIn)、n型ドーパントにシラン(SiH)、p型ドーパントにビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いた。
【0115】
まず、図2(a)に示したとおり、活性層、n型クラッド層、n型およびp型クラッド層、電流狭窄層となるIII族窒化物非結晶層の各層の成長を実施した。以下、これらの工程をまとめて「活性層成長工程」という。
【0116】
すなわち、まず、n型GaN基板101を減圧MOVPE装置に投入後、NHを供給しながらn型GaN基板101を昇温し、成長温度まで達した時点で前記各層の成長を開始した。これにより、Siドープn型GaN層102(Si濃度4×1017cm−3、厚さ1μm)、Siドープn型Al0.05Ga0.95N(Si濃度4×1017cm−3、厚さ2μm)から形成されているn型クラッド層103、Siドープn型GaN(Si濃度4×1017cm−3、厚さ0.1μm)から形成されているn型光閉じ込め層104、In0.1Ga0.9N(厚さ3nm)井戸層およびアンドープGaN(厚さ10nm)バリア層から形成されている3周期多重量子井戸(MQW)層105、Mgドープp型Al0.2Ga0.8Nから形成されているキャップ層106、Mgドープp型GaN(Mg濃度2×1019cm−3、厚さ0.1μm)から形成されているp型GaNガイド層107を順次堆積した。GaN成長は基板温度1080℃、TMG供給量58μmol/min、NH供給量0.36mol/minで実施し、AlGaN成長は、基板温度1080℃、TMA供給量36μmol/min、TMG供給量58μmol/min、NH供給量0.36mol/minで実施した。InGaN MQW成長は、基板温度850℃、TMG供給量8μmol/min、NH供給量0.36mol/minで実施した。なお、TMIn供給量は井戸層で48μmol/minとした。
【0117】
つぎに、基板温度を400℃程度まで降温し、前記p型GaNガイド層107(下地層)の上に非結晶AlN層114’(後に結晶化して電流狭窄層114となる)を堆積させた(前記非結晶層形成工程(A))。さらに、その上に、非結晶InN層(保護層)115を堆積させた(前記保護層形成工程(B))。非結晶AlN層114’堆積時のTMAおよびNH供給量はそれぞれ36μmol/min、0.36mol/minであり、堆積膜厚は0.1μmであった。また非結晶InN層(保護層)115堆積時のTMIおよびNH供給量はそれぞれ96μmol/min、0.36mol/minであり、堆積膜厚は0.01μmであった。
【0118】
以上のようにして、図2(a)に示した活性層成長工程を実施した。
【0119】
次に、図2(b)に示すとおり、非結晶AlN層114’および非結晶InN層(保護層)115の一部をエッチングにより除去してストライプ状の開口部114Aを形成した。この工程は、前記エッチング工程(C)に相当するが、以下、「ストライプ形成工程」とも言うことがある。
【0120】
すなわち、まず、非結晶InN層(保護層)115上にSiOを100nm堆積し、SiO層を形成した。このSiO層上面にレジストを塗布した後、フォトリソグラフィーにより幅1.5μmのストライプパターンを前記レジスト上に形成した。次に、バッファードフッ酸により前記レジストをマスクとして前記SiO層をエッチングした。その後、前記レジストを有機溶媒により除去し、水洗した。非結晶InN層(保護層)115は、バッファードフッ酸、有機溶媒、水洗の各工程でエッチングまたは損傷を受けることはなかった。次に、前記SiO層をマスクとして非結晶InN層(保護層)115および非結晶AlN層114’のエッチングを実施した。エッチング液としては、リン酸と硫酸を体積比1:1の割合で混合した溶液を用いた。具体的には、前記SiOマスクでカバーされていない領域の非結晶InN層(保護層)115および非結晶AlN層114’を、90℃に保持した前記溶液中で9分間のエッチングにより除去した。これにより、開口部114Aが形成された。その後、マスクとして用いた前記SiO層をバッファードフッ酸で除去した。このようにして、ストライプ形成工程(エッチング工程(C))を実施することができた。
【0121】
なお、本実施例では、非結晶InN層(保護層)115上のエッチングマスクとしてSiOを用いた。しかしながら、このエッチングマスクは、非結晶InNおよび非結晶AlNのウェットエッチング時にエッチング液に侵されない材料であれば特に制限されない。例えば、前述のように、SiNxやレジストを含む有機物をエッチングマスクとして用いても良い。
【0122】
つぎに、前記非結晶AlN層114’を熱処理により結晶層(電流狭窄層)114に変換した(前記半導体結晶層形成工程(D))。さらに、保護層115を熱エッチングにより除去した(前記保護層除去工程(E))。その後、図2(c)に示すとおり、前記ストライプ形成工程(前記エッチング工程(C))により形成された開口部114Aを埋め込んで開口埋め込み部114A’を形成するようにp型クラッド層108を積層し(前記他のIII族窒化物半導体含有層形成工程(F))、さらにp型コンタクト層109を堆積した。以下、これらの工程をまとめて「p型クラッド再成長工程」ということがある。
【0123】
すなわち、まず、前記ストライプ形成工程(前記エッチング工程(C))により開口部114Aが形成された半導体レーザウェハを、MOVPE装置に投入した。続いて、前記MOVPE装置内部を、NH供給量0.36mol/min、Nキャリアガス供給量0.9mol/minで700℃程度まで昇温した。そのまま700℃で10分間アニールすることにより、前記非結晶AlN層114’を結晶層(電流狭窄層)114に変換した(前記半導体結晶層形成工程(D))。その後、キャリアガスの一部をHに切り換え、NH供給量0.36mol/min、Nキャリアガス供給量0.45mol/min、Hガス供給量0.45mol/minでp型クラッド層の成長温度である1100℃まで再び昇温した。この昇温工程が熱エッチングの役割をして保護層115は蒸発により除去され(前記保護層除去工程(E))、極めて清浄な電流狭窄層114表面が現れた。その後、基板温度を1100℃に保ったまま、Mgドープp型Al0.05Ga0.95N(Mg濃度1×1019cm−3、厚さ0.5μm)から形成されているp型クラッド層108を堆積した(前記他のIII族窒化物半導体含有層形成工程(F))。そして、基板温度を1080℃に下げてからMgドープp型GaN(Mg濃度1×1020cm−3、厚さ0.02μm)から形成されているp型コンタクト層109を堆積した。なお、AlGaN、GaNの堆積条件は、ドーパントの違いを除いて前記活性層成長工程と同様とした。このようにして、p型クラッド再成長工程を実施することができた。
【0124】
なお、前記p型クラッド再成長工程後に走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、開口埋め込み部114A’上でもAlN電流狭窄層114上でも、埋め込み再成長表面には、クラックやピットなどの欠陥は見られなかった。すなわち、AlN層(電流狭窄層114)が結晶化し、p型クラッド層108により、平坦に埋め込まれていたことが確認できた。なお、AlN電流狭窄層114上の埋め込み再成長表面をさらに詳しく観察すると、うねりの様なモフォロジーがごくわずかに観測されたが、実用上全く問題のないレベルであった。このモフォロジーの原因は明らかではないが、例えば、AlN電流狭窄層114とp型AlGaNクラッド層108間の格子不整合を緩和するために発生した転位等によるものと推察される。さらに、二次イオン質量分析装置を用いてp型クラッド層から電流狭窄層114にかけての残留不純物の分析を行った。その結果、電流狭窄層114中の酸素濃度は3×1018cm−3程度で、p型クラッド層108との界面(電流狭窄層114上面)近傍でもほぼ一定のままであった。
【0125】
以上のようにして得られた構造体は、図2(c)に示すとおり、n型GaN基板101、Siドープn型GaN層102、n型クラッド層103、n型光閉じ込め層104、3周期多重量子井戸(MQW)層105、キャップ層106、p型GaNガイド層107、電流狭窄層114、p型クラッド層108、p型コンタクト層109を有する。
【0126】
この図2(c)の構造体のn型GaN基板101裏面(下面)にn電極112を、p型コンタクト層109上面にp電極113を、それぞれ真空蒸着法により形成した(図2(d))。以下、この工程を「電極形成工程」ということがある。そして、電極形成工程後の試料(構造体)を、開口埋め込み部(ストライプ)114A’の長手方向に直交する方向に劈開し、III族窒化物半導体素子100とした。なお、素子長は500μmとした。
【0127】
前記III族窒化物半導体素子100をヒートシンクに融着し発光特性を調べたところ、平均で電流密度2.8kA/cm、電圧4.1Vでレーザ発振した。また、250mW出力時の平均寿命は10000時間以上であった。すなわち、本実施例で製造したIII族窒化物半導体素子100は、良好な特性を有し、しかも長寿命であった。
【0128】
以上の通り、本実施例によれば、特性が良好で寿命が長い高品質のIII族窒化物半導体素子を、効率よく(高い歩留まりで)製造することができた。
【0129】
(実施例2)
本実施例では、前述の図2(a)〜(d)に示した工程に従い、同図(d)に示す構造のIII族窒化物半導体素子(半導体レーザ)100を製造した。製造条件は、下記(i)および(ii)以外は実施例1と同様にした。
(i)保護層115として、非結晶InN層に代えて非結晶In0.5Ga0.5N層を非結晶AlN層114’の上に堆積させた。
(ii)半導体結晶層形成工程(D)における非結晶AlN層114’の熱処理温度を750℃とした。
【0130】
すなわち、まず、図2(a)に示す、活性層、n型クラッド層、n型およびp型クラッド層、電流狭窄層となるIII族窒化物非結晶層の各層の成長を実施した(活性層成長工程)。この活性層成長工程は、前記条件(i)以外は、実施例1と全く同様の条件で実施した。
【0131】
つぎに、図2(b)に示すとおり、実施例1と同様の「ストライプ形成工程(前記エッチング工程(C))を行い、非結晶AlN層114’および非結晶In0.5Ga0.5N層(保護層)115に、ストライプ状の開口部114Aを形成した。この「ストライプ形成工程」は、実施例1と全く同様の条件で実施した。
【0132】
つぎに、実施例1と同様の「p型クラッド再成長工程」を実施した。このp型クラッド再成長工程は、前記条件(ii)以外は、実施例1と全く同様の条件で実施した。
【0133】
前記p型クラッド再成長工程後に走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、実施例1と同様、開口埋め込み部114A’上でもAlN電流狭窄層114上でも、埋め込み再成長表面には、クラックやピットなどの欠陥は見られなかった。すなわち、AlN層(電流狭窄層114)が結晶化し、p型クラッド層108により、平坦に埋め込まれていたことが確認できた。なお、AlN電流狭窄層114上の埋め込み再成長表面をさらに詳しく観察すると、うねりの様なモフォロジーがごくわずかに観測されたが、実用上全く問題のないレベルであった。このモフォロジーの原因については明らかではないが、実施例1で述べたように推察される。さらに、二次イオン質量分析装置を用いてp型クラッド層から電流狭窄層114にかけての残留不純物の分析を行った。その結果、電流狭窄層114中の酸素濃度は3×1018cm−3程度で、p型クラッド層108との界面(電流狭窄層114上面)近傍でもほぼ一定のままであった。
【0134】
以上のようにして得られた構造体は、図2(c)に示す構造を有する。図2(c)の構造については、実施例1で説明した通りである。
【0135】
さらに、前記構造体に対し、実施例1と同様にして図2(d)に示す「電極形成工程」を実施した。そして、電極形成工程後の試料(構造体)を、開口埋め込み部(ストライプ)114A’の長手方向に直交する方向に劈開し、III族窒化物半導体素子(半導体レーザ)100とした。なお、素子長は500μmとした。
【0136】
III族窒化物半導体素子(半導体レーザ)100をヒートシンクに融着し発光特性を調べたところ、平均で電流密度2.8kA/cm、電圧4.1Vでレーザ発振した。また、250mW出力時の平均寿命は10000時間以上であった。
【0137】
(実施例3)
本実施例では、前述の図2(a)〜(d)に示した工程に従い、同図(d)に示す構造のIII族窒化物半導体素子(半導体レーザ)100を製造した。製造条件は、下記(iii)〜(v)以外は実施例1と同様にした。
(iii)III族窒化物非結晶層114’として、非結晶AlN層に代えて非結晶Al0.9Ga0.1N層をp型GaNガイド層107の上に堆積させた。
(iv)保護層115として、非結晶InNに代えて非結晶In0.5Ga0.5N層を前記非結晶Al0.9Ga0.1N層114’の上に堆積させた。
(v)半導体結晶層形成工程(D)における前記非結晶Al0.9Ga0.1N層114’の熱処理温度を750℃とした。
【0138】
すなわち、まず、図2(a)に示す、活性層、n型クラッド層、n型およびp型クラッド層、電流狭窄層となるIII族窒化物非結晶層の各層の成長を実施した(活性層成長工程)。この活性層成長工程は、前記条件(iii)および(iv)以外は実施例1と同様にした。
【0139】
つぎに、図2(b)に示すとおり、実施例1と同様の「ストライプ形成工程(前記エッチング工程(C))を行い、非結晶Al0.9Ga0.1N層114’および非結晶In0.5Ga0.5N層(保護層)115に、ストライプ状の開口部114Aを形成した。この「ストライプ形成工程」は、実施例1と全く同様の条件で実施した。
【0140】
つぎに、実施例1と同様の「p型クラッド再成長工程」を実施した。このp型クラッド再成長工程は、前記条件(v)以外は実施例1と全く同様の条件で実施した。
【0141】
前記p型クラッド再成長工程後に走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、開口埋め込み部114A’上でもAl0.9Ga0.1N電流狭窄層114上でも、埋め込み再成長表面には、クラックやピットなどの欠陥は見られなかった。すなわち、Al0.9Ga0.1N層(電流狭窄層114)が結晶化し、p型クラッド層108により、平坦に埋め込まれていたことが確認できた。また、Al0.9Ga0.1N電流狭窄層114上の埋め込み再成長表面をさらに詳しく調べると、実施例1および実施例2の場合と比べてうねりの様なモフォロジーがさらに低減されており、より平坦性が改善されている様子が観察された。この原因は明らかではないが、例えば、電流狭窄層114がAl0.9Ga0.1Nに変更されたことにより、電流狭窄層114とp型AlGaNクラッド層108との間の格子不整合度の緩和のために発生する転位等が、低減したためと推察される。さらに、二次イオン質量分析装置を用いてp型クラッド層から電流狭窄層114にかけての残留不純物の分析を行った。その結果、電流狭窄層114中の酸素濃度は2.7×1018cm−3程度で、p型クラッド層108との界面(電流狭窄層114上面)近傍でもほぼ一定のままであった。
【0142】
以上のようにして得られた構造体は、図2(c)に示す構造を有する。図2(c)の構造については、実施例1で説明した通りである。
【0143】
さらに、前記構造体に対し、実施例1と同様にして図2(d)に示す「電極形成工程」を実施した。そして、電極形成工程後の試料(構造体)を、開口埋め込み部(ストライプ)114A’の長手方向に直交する方向に劈開し、III族窒化物半導体素子(半導体レーザ)100とした。なお、素子長は500μmとした。
【0144】
本実施例の半導体素子100をヒートシンクに融着し発光特性を調べたところ、平均で電流密度2.8kA/cm、電圧4.1Vでレーザ発振した。また、250mW出力時の平均寿命は10000時間以上であった。
【0145】
(実施例4)
本実施例では、図3(d)に示す半導体レーザ200を製造した。この半導体レーザ200は、電流狭窄層が、下部層(AlN結晶層)214および上部層(GaN結晶層)215の2層の積層構造からなる以外は実施例1の半導体レーザ100と同様である。
【0146】
この半導体レーザ200は、図3(a)〜(d)の模式図(断面図)に示す製造方法に基づいて製造した。具体的には以下の通りである。
【0147】
まず、図3(a)に示すとおり、活性層、n型クラッド層、n型およびp型クラッド層、電流狭窄層となるIII族窒化物非結晶層の各層の成長を実施した(活性層成長工程)。すなわち、まず、実施例1と同様に、n型GaN基板101上に、Siドープn型GaN層102、n型クラッド層103、n型光閉じ込め層104、3周期多重量子井戸(MQW)層105、キャップ層106、p型GaNガイド層107を堆積した。次に、p型GaNガイド層107(下地層)上に、非結晶AlN層214’(後に結晶化し電流狭窄層の下部層214となる)を堆積し、続けて、非結晶AlN層214’と同じ成長温度で非結晶GaN層215’(後に結晶化し電流狭窄層の上部層215となる)を堆積した(前記非結晶層形成工程(A))。さらにその上に、非結晶InN層(保護層)216の堆積を実施した(前記保護層形成工程(B))。なお、非結晶AlN層214’の成長条件は、実施例1における非結晶AlN層114’と同じである。また、非結晶GaN堆積時のTMGおよびNH供給量はそれぞれ12μmol/min、0.36mol/min、堆積膜厚は0.01μmとした。非結晶InN層(保護層)の成長条件は、実施例1と同じである。
【0148】
次に、図3(b)に示すとおり、実施例1と同様の「ストライプ形成工程(前記エッチング工程(C))」を行い、非結晶AlN層214’、非結晶GaN層215’および非結晶InN層(保護層)216に、ストライプ状の開口部214Aを形成した。
【0149】
すなわち、まず、非結晶InN層(保護層)216上にSiOを100nm堆積し、SiO層を形成した。このSiO層上面にレジストを塗布した後、フォトリソグラフィーにより幅1.5μmのストライプパターンを前記レジスト上に形成した。次に、バッファードフッ酸により前記レジストをマスクとして前記SiO層をエッチングした。その後、前記レジストを有機溶媒により除去し、水洗した。非結晶AlN層214’、非結晶GaN層215’、および非結晶InN層216は、いずれも、バッファードフッ酸、有機溶媒、水洗の各工程でエッチングまたは損傷を受けることはなかった。次に前記SiO層をマスクとして非結晶InN層216、非結晶GaN層215’および非結晶AlN層214’のエッチングを実施した。エッチング液としては、リン酸と硫酸を体積比1:1の割合で混合した溶液を用いた。具体的には、前記SiOマスクでカバーされていない領域の非結晶InN層216、非結晶GaN層215’および非結晶AlN層214’を、90℃に保持した前記溶液中での10分間のエッチングにより除去した。これにより、開口部114Aが形成された。その後、マスクとして用いた前記SiO層をバッファードフッ酸で除去した。このようにして、ストライプ形成工程(前記エッチング工程(C))を実施することができた。
【0150】
なお、エッチングマスクは、実施例1で述べた通り、特に制限されず、例えば、前述のように、SiNxやレジストを含む有機物をエッチングマスクとして用いても良い。
【0151】
つぎに、前記非結晶AlN層214’および前記非結晶GaN層215’を熱処理により結晶層(電流狭窄層)214および215に変換した(前記半導体結晶層形成工程(D))。さらに、保護層216を熱エッチングにより除去した(前記保護層除去工程(E))。その後、図3(c)に示すとおり、前記ストライプ形成工程(前記エッチング工程(C))により形成された開口部214Aを埋め込んで開口埋め込み部214A’を形成するようにp型クラッド層108を積層し(前記他のIII族窒化物半導体含有層形成工程(F))、さらにp型コンタクト層109を堆積した。これら「p型クラッド再成長工程」は、実施例1と全く同様の条件で実施した。
【0152】
p型クラッド再成長工程後に走査型電子顕微鏡観察を行なった。その結果、実施例1の場合と同様に、表面にクラックやピットなどの欠陥は見られず、AlN結晶層(下部層)214およびGaN結晶層(上部層)215は、ともに結晶化し平坦に埋め込まれていることが確認できた。GaN結晶層(上部層)215上の埋め込み再成長表面をさらに詳しく観察すると、実施例1および実施例2の場合と比べてうねりの様なモフォロジーがいっそう低減されており、より平坦性が改善されている様子が観測された。この原因は明らかではないが、例えば、AlN電流狭窄層(下部層)214とp型AlGaNクラッド層108の間にGaN結晶層(上部層)215が挿入されたことにより、格子不整合度がいっそう小さくなり、緩和のために発生する転位等の欠陥がさらに低減したためと推察される。
【0153】
さらに、二次イオン質量分析装置を用いてp型クラッド層108からAlN結晶層下部層214にかけての残留不純物の分析を行った。その結果、電流狭窄層214および215のうち、AlN結晶層(下部層)214中の酸素濃度は3×1018cm−3程度と一定であった。さらに、GaN結晶層(上部層)215中の酸素濃度は1×1018cm−3以下であり、p型クラッド層108との界面近傍でも1×1018cm−3以下のままであった。
【0154】
さらに、実施例1と同様にして「電極形成工程」を実施した。すなわち、n型GaN基板101裏面(下面)にn電極112を、p型コンタクト層109上面にp電極113を、それぞれ真空蒸着法により形成した(図3(d))。そして、電極形成工程後の試料(構造体)を、開口埋め込み部(ストライプ)214A’の長手方向に直交する方向に劈開し、III族窒化物半導体素子200とした。なお、素子長は500μmとした。
【0155】
このIII族窒化物半導体素子200の特性を実施例1と同様に確認したところ、閾電流密度、動作電圧、出力光の放射角ともに実施例1と同等であり、良好であった。さらに、III族窒化物半導体素子200全体での特性のばらつきは、実施例1の場合に比べてさらに約2割改善されていることが確認できた。この原因は明らかではないが、例えば、GaN結晶層(上部層)215の導入により、「p型クラッド再成長工程」における開口部214Aでのp型クラッド層108の再成長層厚や開口埋め込み部214A’の幅のばらつきのウエハ面内分布がさらに改善されたためと考えられる。
【0156】
以上の通り、本実施例によれば、実施例1と同様に、特性が良好で寿命が長い高品質のIII族窒化物半導体素子を、効率よく(高い歩留まりで)製造することができた。また、III族窒化物半導体素子の特性のばらつきを実施例1よりもさらに改善することができた。
【0157】
(比較例)
図4(d)に示す半導体レーザ300を製造した。この半導体レーザ300は、実施例1の電流狭窄層114が314に置き換わっているが、電流狭窄層314は、電流狭窄層114と同じくAlN結晶層である。それ以外の各構成要素の材質、位置関係等も実施例1の半導体レーザ100と同様であるが、図示の通り、電流狭窄層314の上層の平坦性が悪く、また、ピット110等の欠陥が存在した。
【0158】
この半導体レーザ300は、図4(a)〜(d)の模式図に示す工程に従って製造した。製造条件は実施例1とほぼ同じであるが、非結晶AlN層314’(結晶化により電流狭窄層314となる)の上に保護層を形成せずに製造した点で大きく異なっていた。
【0159】
半導体レーザ300の製造は、より具体的には、以下のようにした。すなわち、まず、図4(a)に示したとおり、活性層、n型クラッド層、n型およびp型クラッド層、電流狭窄層の各層の成長を実施した。非結晶AlN層314’の上に保護層を形成しなかった以外は、実施例1における前記「活性層成長工程」(図2(a))と全く同様であった。なお、非結晶AlN層314’は、図2(a)の非結晶AlN層114’と全く同じ層であり、その他の各構成要素も図2(a)と全く同じである。
【0160】
つぎに、図4(b)に示すとおり、非結晶AlN層314’の一部をエッチングし、開口部(ストライプ)314Aを形成した。具体的には、非結晶AlN層314’上に直接SiOマスクを形成し、リン酸と硫酸を体積比1:1の割合で混合した溶液により90℃で8.5分間のエッチングを行い、開口部314Aを形成した。その他の条件は、実施例1における前記「ストライプ形成工程」(図2(b))と同様である。
【0161】
さらに、図4(c)に示すとおり、電流狭窄層314および開口部314Aの上に、開口部314Aを埋め込んで開口埋め込み部314A’を形成するようにp型クラッド層108を積層し、さらにp型コンタクト層109を積層した。具体的には、前記エッチングにより開口部314Aが形成された試料(図4(b))をMOVPE装置に投入後、NH供給量0.36mol/min、Nキャリアガス供給量0.45mol/min、Hガス供給量0.45mol/minのガス条件下で昇温を開始し、途中待機することなくp型クラッド層の成長温度である1100℃まで昇温した。他の条件は、実施例1における前記「p型クラッド再成長工程」と同様である。
【0162】
p型クラッド層108およびp型コンタクト層109形成後に走査型電子顕微鏡観察を行なったところ、AlN電流狭窄層314上の埋め込み再成長表面には、ところどころにピットなどの欠陥がみられた。特に、開口埋め込み部314A’近傍の埋め込み再成長表面には、図4(c)に示すとおり多数のピット110が観測された。また、開口埋め込み部314A’付近は、図4(c)に示すとおり、AlN電流狭窄層314上に比べて埋め込み層厚が厚くなり、平坦性が悪いことが確認された。
【0163】
次に、二次イオン質量分析装置を用いてp型クラッド層108から電流狭窄層314にかけての残留不純物の分析を行った。その結果、電流狭窄層314中の酸素濃度は、p型GaNガイド層107側の界面近傍では3×1018cm−3程度であったが、p型クラッド層108側の界面近傍では1×1020cm−3以上に跳ね上がっていることが確認された。この不純物濃度の高さの原因は明らかではないが、例えば、AlN電流狭窄層314表面が酸窒化アルミニウム(AlN1−x)になっているためと考えられる。すなわち、p型クラッド層再成長前の昇温時にAlN1−xの組成斑が発生し、上記ピット100の原因となったと推察される。
【0164】
さらに、実施例1における前記「電極形成工程」と同様にして、n型GaN基板101裏面(下面)にn電極112を、p型コンタクト層109上面にp電極113を、それぞれ真空蒸着法により形成した(図4(d))。そして、電極形成工程後の試料(構造体)を、開口埋め込み部(ストライプ)314A’の長手方向に直交する方向に劈開し、III族窒化物半導体素子300とした。しかしながら、比較例の半導体レーザ300は、平均の閾電流密度は3.2kA/cm、平均の閾値電圧4.5V、250mW出力時の平均寿命は2000時間程度と、その特性が実施例1〜4の半導体レーザに比べ大幅に劣っていた。さらに、比較例の半導体レーザ300は、素子特性のばらつきが実施例1〜4の半導体レーザの倍以上大きく、信頼性が大きく劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の製造方法の一実施形態における各工程を示す模式図である。図1(A)は、III族窒化物非結晶層形成工程(A)を示す。図1(B)は、保護層形成工程(B)を示す。図1(C)は、エッチング工程(C)を示す。図1(D)は、半導体結晶層形成工程(D)を示す。
【図2】本発明の別の実施形態および実施例におけるIII族窒化物半導体素子の製造工程と完成素子の断面を示す図である。図2(a)は活性層成長工程、図2(b)はストライプ形成工程、図2(c)はp型クラッド再成長工程、図2(d)は電極形成工程および完成素子の断面を表す図である。
【図3】本発明のさらに別の実施形態および別の実施例におけるIII族窒化物半導体素子の製造工程と完成素子の断面を示す図である。図3(a)は活性層成長工程、図3(b)はストライプ形成工程、図3(c)はp型クラッド再成長工程、図3(d)は電極形成工程および完成素子の断面を表す図である。
【図4】比較例のIII族窒化物半導体素子の製造工程と完成素子の断面を示す図である。図4(a)は活性層成長工程、図4(b)はストライプ形成工程、図4(c)はp型クラッド再成長工程、図4(d)は電極形成工程および完成素子の断面を表す図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態におけるIII族窒化物半導体素子の断面を示す図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態におけるIII族窒化物半導体素子の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0166】
11 下地層
12’ III族窒化物非結晶層
12 III族窒化物半導体結晶層
13 保護層(またはIII族窒化物から形成された層)
100、200、300 半導体レーザ(III族窒化物半導体素子)
101 基板
102 GaN層
103 n型クラッド層
104 n型光閉じ込め層
105 多重量子井戸層
106 キャップ層
107 p型GaNガイド層(下地層または第一の層)
108 p型クラッド層(他のIII族窒化物半導体含有層または第三の層)
109 p型コンタクト層
110 ピット
112 n電極
113 p電極
114A、214A、314A、414A 開口部
114A’、214A’、314A’、514A’ 開口埋め込み部
114、314 電流狭窄層(III族窒化物半導体結晶層または第二の層)
115、216 保護層(またはIII族窒化物から形成された層)
214 電流狭窄層(III族窒化物半導体結晶層または第二の層)の下部層
215 電流狭窄層(III族窒化物半導体結晶層または第二の層)の上部層
114’ III族窒化物非結晶層
214’ III族窒化物非結晶層の下部層
215’ III族窒化物非結晶層の上部層
400 電界効果トランジスタ(III族窒化物半導体素子)
401 基板
402 バッファ層
403 キャリア走行層
404 スペーサ層
405 キャリア供給層
406 ショトキ層
407 ソース電極
408 ドレイン電極
409 ゲート電極
410 コンタクト層
500 フォトニック結晶面発光レーザ(III族窒化物半導体素子)
501 基板
502 n型クラッド層
503 活性層
505 フォトニック結晶層
508 p型クラッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層の上面にIII族窒化物の非結晶層を形成する非結晶層形成工程と、
前記非結晶層の上面に保護層を形成する保護層形成工程と、
前記非結晶層の一部をエッチングにより除去するエッチング工程と、
前記保護層が形成された状態で前記非結晶層を熱処理して結晶化することによりIII族窒化物半導体の結晶層に変換する半導体結晶層形成工程と、を含むことを特徴とするIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項2】
前記半導体結晶層形成工程後、前記保護層を除去する保護層除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項3】
前記保護層除去工程が、熱エッチングで前記保護層を除去する工程であることを特徴とする請求項2記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項4】
前記保護層除去工程における熱エッチング温度が、前記半導体結晶層形成工程における熱処理温度よりも高温であることを特徴とする請求項3記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項5】
前記保護層がIII族窒化物から形成された層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項6】
前記結晶層が、InGaAl1−a−bN(0≦a<1、0≦b<1、0≦a+b<1)の組成を有するIII族窒化物半導体から形成され、
前記保護層が、InGaAl1−c−dN(0≦c≦1、0≦d≦1、0<c+d≦1)の組成を有するIII族窒化物から形成され、かつ、
前記結晶層のIn組成比aと前記保護層のIn組成比cとが、下記数式(1)および(2)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。

a=0 (1)
a<c (2)
【請求項7】
前記保護層が、InGa1−xN(0≦x≦1)の組成を有するIII族窒化物から形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項8】
前記保護層が、InNから形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項9】
前記結晶層が、AlNから形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項10】
前記結晶層が、2層以上の層を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項11】
前記結晶層が、AlNから形成された下層とGaNから形成された上層とを含むことを特徴とする請求項10記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項12】
前記結晶層が不純物を含み、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が内部の不純物濃度の平均値以下であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項13】
前記結晶層において、前記上面部は、前記結晶層の上面から深さ50nmまでの部分であり、前記内部は、前記上面部以外の部分であることを特徴とする請求項12記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項14】
前記不純物が、酸素であることを特徴とする請求項12または13記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項15】
前記結晶層において、前記上面部の酸素濃度の平均値が5×1018cm−3以下であることを特徴とする請求項14記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項16】
前記結晶層の上に、他のIII族窒化物半導体含有層を形成する他のIII族窒化物半導体含有層形成工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項17】
前記半導体結晶層形成工程後、前記保護層を除去する保護層除去工程を含み、前記保護層除去工程が、熱エッチングで前記保護層を除去する工程であり、前記他のIII族窒化物半導体含有層形成工程において、前記保護層除去工程における熱エッチング温度以上の温度で前記他のIII族窒化物半導体含有層を形成することを特徴とする請求項16記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項18】
前記下地層が、III族窒化物半導体を含む層であることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項19】
前記保護層に代えてIII族窒化物から形成された層を形成することを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体の製造方法。
【請求項20】
III族窒化物半導体を含む半導体素子の製造方法であり、請求項1から19のいずれか一項に記載の製造方法により前記III族窒化物半導体を製造することを特徴とするIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項21】
前記III族窒化物半導体素子が、半導体レーザ、電界効果トランジスタ、またはフォトニック結晶面発光レーザであることを特徴とする請求項20に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項22】
前記III族窒化物半導体素子が、半導体レーザであり、前記結晶層が、電流狭窄層であることを特徴とする請求項21に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項23】
前記III族窒化物半導体素子が、電界効果トランジスタであり、前記結晶層が、コンタクト層であることを特徴とする請求項21に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項24】
前記III族窒化物半導体素子が、フォトニック結晶面発光レーザであり、前記結晶層が、フォトニック結晶層であることを特徴とする請求項21に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項25】
III族窒化物半導体の結晶層を含み、前記結晶層は一部が除去されており、前記結晶層が不純物を含み、前記結晶層上面部の不純物濃度の平均値が内部の不純物濃度の平均値以下であり、請求項1から19のいずれか一項に記載の製造方法により製造されることを特徴とするIII族窒化物半導体。
【請求項26】
前記結晶層において、前記上面部は、前記結晶層の上面から深さ50nmまでの部分であり、前記内部は、前記上面部以外の部分であることを特徴とする請求項25記載のIII族窒化物半導体。
【請求項27】
前記不純物が、酸素であることを特徴とする請求項25または26記載のIII族窒化物半導体。
【請求項28】
前記結晶層において、前記上面部の酸素濃度の平均値が5×1018cm−3以下であることを特徴とする請求項27記載のIII族窒化物半導体。
【請求項29】
前記結晶層が、AlNから形成された層であることを特徴とする請求項25から28のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体。
【請求項30】
前記結晶層が、2層以上の層を含むことを特徴とする請求項25から30のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体。
【請求項31】
前記結晶層が、AlNから形成された下層とGaNから形成された上層とを含むことを特徴とする請求項30記載のIII族窒化物半導体。
【請求項32】
前記結晶層の上に、他のIII族窒化物半導体含有層をさらに含むことを特徴とする請求項25から31のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体。
【請求項33】
前記下地層をさらに含むことを特徴とする請求項25から32のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体。
【請求項34】
前記下地層が、III族窒化物半導体を含む層であることを特徴とする請求項33記載のIII族窒化物半導体。
【請求項35】
請求項20から24のいずれか一項に記載の製造方法により製造され、請求項25から34のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体を含むことを特徴とするIII族窒化物半導体素子。
【請求項36】
半導体レーザ、電界効果トランジスタ、またはフォトニック結晶面発光レーザであることを特徴とする請求項35に記載のIII族窒化物半導体素子。
【請求項37】
半導体レーザであり、前記結晶層が、電流狭窄層であることを特徴とする請求項36に記載のIII族窒化物半導体素子。
【請求項38】
電界効果トランジスタであり、前記結晶層が、コンタクト層であることを特徴とする請求項36に記載のIII族窒化物半導体素子。
【請求項39】
フォトニック結晶面発光レーザであり、前記結晶層が、フォトニック結晶層であることを特徴とする請求項36に記載のIII族窒化物半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−114238(P2010−114238A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285107(P2008−285107)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/ディスプレイ用可視光半導体レーザの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】