説明

サセプタ装置および気相成長装置

【課題】
多品種の成長基板上の成膜における反り量に対応可能なサセプタ装置を提供する。
【解決手段】
成長基板が載置される搭載領域を有するサセプタ装置は、搭載領域を分割して得られた区分領域の各々に配されかつ各々が成長基板に対向する熱輻射面を有し、成長基板の厚さ方向に可動である複数の熱輻射部からなる搭載部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置製造装置に関し、特に、半導体結晶のエピタキシャル成長を行う気相成長装置に関し、特に、成長基板を保持するサセプタ装置およびこれを用いた気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主に光半導体素子(発光ダイオード)に用いられるIII−V族成長基板は、MOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて製造(結晶成長)されるのが一般的である。具体的には、反応炉内において、ヒータにより加熱されたサセプタ上に載置された成長基板の表面に反応ガスを噴きつけ、成長基板上で反応ガスを分解、反応させることで半導体膜を成長基板上に積層させている(特許文献1、参照)。このようなMOCVD装置による製造法では成長基板の反りに起因した不均一な温度分布の発生により素子特性のバラツキが大きくなり、素子製造歩留まりが低下する問題があった。すなわち、結晶成長中に成長基板が反ることでサセプタから成長基板が浮いて周囲よりも表面温度が低下し、成長基板表面の一部で反応ガスの分解、反応効率が異なるため、所望の膜厚や組成を得られずに素子製造歩留まりが低下していた。
【0003】
一方で成長基板の反りの問題は、特にIII族窒化物半導体、AlInGaN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)の成長基板を製造においては以下のような原因から避けられないのが現状である。第1に、半導体膜の熱膨張係数はAlInGaN層の組成により異なり、それらが複数積層される。各層における最適な結晶成長温度も異なるのでそれぞれの最適温度で結晶成長が行われる。複数の組成の異なるAlInGaN層が約400〜1200℃の範囲で変化する間、各層の熱膨張率の違いにより成長基板(ウエハともいう)に反りが生じる。特にIII族窒化物半導体は、安価でエピタキシャル成長が可能なサファイヤやSiCを材料とした成長基板が多く用いられる(へテロ基板、異種基板)。これらは積層させるAlInGaN層とは熱膨張率がさらに異なるため、結晶成長中のウエハの反りが発生しやすい(各層の熱膨張係数の違い)。第2に、エピタキシャル膜は各層が原子レべルで結合しているため、格子定数が異なると、内部応力が発生する。そのため、一定の温度下でもウエハは反る。格子定数は前記の異種基板とAlInGaN層との間でも異なり、また、各層の組成でも異なる(各層の格子定数の違い)。第3に、成長基板はサセプタからの熱を効率よく受けることや特定の層の結晶成長中にウエハが平坦になるようにする目的で裏面(設置面)を一定の粗さに調整することがある。一方、成長基板の表面(半導体膜が積層される成長面)では、エピタキシャル成長に必要な粗さ、すなわち前記裏面の粗さよりも滑らかなものが要求される。この粗さ(設置面と成長面の表面積)の違いにより成長基板単体でも温度の変化により反りが発生する(成長基板の表裏の面処理の違い)。
【0004】
以上のように、ウエハの反りの大きさは、選択する成長基板、半導体膜の層構成(積層数、各層の厚さ、組成)などの様々な要因で変化するので、高い素子製造歩留まりを得るためには、結晶成長中にウエハが反っても全体に亘って均一に加熱し、反応ガスの分解、反応の効率を一定とする必要がある。
【0005】
これらの問題を鑑みて、従来技術では、図1(a)に示すように、ウエハと基板ホルダ(またはサセプタ)との間に予め凹部を設けることで上述のウエハの反りによる温度分布の発生を抑えることが提案されている(特許文献2、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2628404公報
【特許文献2】特開2010−080614公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術においては、結晶成長中、例えば図1(b)に示すように、ウエハが反って中央部が沈むと基板ホルダ(またはサセプタ)との間隔がウエハの中央と周縁で異なり、図2に示すようなウエハの温度分布が発生する。このように従来技術によっても素子製造歩留まりの向上が不十分な場合があった。
【0008】
さらに、従来技術においては、図1(c)に示すように、結晶成長中にウエハが反って変形したときにウエハと基板ホルダとの間隔がほぼ全表面で一定とするため結晶成長中のウエハの反り形状と同形状の湾曲凹部を有する基板ホルダを提案している(特許文献2、参照)。これにより、上記の温度分布が改善されるが、前述のようにウエハの反りの大きさは成長基板とその上に積層する半導体膜の種類だけではなく、半導体膜の層構成すなわち積層数、積層順序、各層の組成、各層の厚さなどにも依存するので、上記の温度分布均一化のためには、少なくとも製造するウエハの種類や、半導体膜の積層数、積層順序、各層の組成、もしくは各層の厚さに応じて凹部形状の異なる複数のサセプタまたは基板ホルダを準備する必要がある。従って、従来技術においては、部品コストがかかっていた。また、前述のように温度によってもウエハの反りの大きさが変化するため、1つのウエハのための基板ホルダでも全半導体層の結晶成長中に対して温度分布を最適化することは難しかった。
【0009】
そこで、上記問題を鑑みて、本発明は、多品種の成長基板上の成膜における反り量に対応可能なサセプタ装置およびこれを用いた気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による成長基板が載置される搭載領域を有するサセプタ装置は、搭載領域を分割して得られた区分領域の各々に配されかつ各々が成長基板に対向する熱輻射面を有し、成長基板の厚さ方向に可動である複数の熱輻射部からなる搭載部を有することを特徴とする。
【0011】
かかるサセプタ装置においては、熱輻射部は成長基板から離れる方向すなわち成長基板の厚さ方向に伸長する脚部を有し、脚部を離間して取り囲む熱拡散部と、を備えることができる。
【0012】
かかるサセプタ装置においては、熱拡散部は脚部よりも高い熱伝導率を有する材料で形成されることができる。熱輻射部の脚部および該脚部を取り囲むように熱伝導率の高い材料からなる熱拡散部を設けているので、サセプタ中央にある脚部および搭載部にも素早く熱を伝達可能としている。これにより搭載部を複数の熱輻射部に分けてもサセプタの外側(熱拡散部を取り囲む加熱部に近い側)と中央で温度差が生じない。
【0013】
かかるサセプタ装置においては、複数の熱輻射部において成長基板に接する少なくとも3つの突起が設けることができる。
【0014】
かかるサセプタ装置においては、搭載領域は同心円状またはセクタ状または格子状に分割されるようにすることができる。
【0015】
本発明による気相成長装置においては、反応炉内において成長基板が載置される上記のサセプタ装置と、成長基板上に原料ガスを供給するガス噴射管と、成長基板の表面の反り量分布を検知する基板反り量測定装置と、基板反り量測定装置からの成長基板の表面の反り量分布の信号に応じて、熱輻射部を成長基板の厚さ方向に駆動する駆動機構を有することを特徴とする。結晶成長中にサセプタ凹部(すなわち熱輻射面)の形状を変形可能としたことで、半導体膜を構成する全ての層に対してウエハ面内の温度分布が均一となるような結晶成長を行える。これによりウエハ面内での膜厚や組成のバラツキが減り素子製造歩留まりが向上する。
【0016】
かかる気相成長装置においては、駆動機構は、脚部下方の全てまたは複数に接続されたサセプタ保持薄板部と、該サセプタ保持薄板部下方に接続され成長基板の厚さ方向に伸縮可能な変形機構と、で構成することができる。かかる気相成長装置においては、駆動機構は、脚部それぞれの下方に接続され成長基板の厚さ方向に伸縮可能な変形機構で構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による気相成長装置においては、結晶成長中にウエハとサセプタとの間隔が常にほぼ全面積で一定となるようにサセプタの凹部の形状を変形させることでウエハ面内での温度分布をより均一化し、素子製造歩留まりを向上できる。本発明によれば、異種基板を用いて結晶成長を行うIII族窒化物成長基板製造用などのMOCVD装置を構成可能となる。
【0018】
結晶成長中にサセプタ凹部の形状を変形可能としたことで、半導体膜を構成する全ての層に対してウエハ面内の温度分布が均一となるような結晶成長を行える。これによりウエハ面内での膜厚や組成のバラツキが減り素子製造歩留まりが向上する。
【0019】
既知の測定方法にて結晶成長中のウエハの反り量を測定し、その値をサセプタの駆動機構にフィードバックすることで各層に最適なサセプタの凹部形状に変形させることが可能になる。従来のように製品毎に凹部形状の異なる基板ホルダなどを準備する必要もないため装置のコストも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ウエハと基板ホルダを模式的に示す概略断面図である。
【図2】ウエハ中心からの距離に対するウエハの温度分布を模式的に示すグラフである。
【図3】本発明による実施形態のサセプタ装置が設けられた反応炉を有するMOCVD装置の概略構成を示す概略断面図である。
【図4】同実施形態のサセプタ装置の搭載部の概略断面図である。
【図5】同実施形態のサセプタ装置の熱輻射面側から見た搭載部の概略平面図である。
【図6】同実施形態のサセプタ装置の搭載部の概略斜視図である。
【図7】本発明による他の実施形態のサセプタ装置の搭載部の概略平面図である。
【図8】本発明による実施形態のサセプタ装置の搭載部と脚部の組立体の概略斜視図である。
【図9】同実施形態の脚部側から見た図8の線AAに沿った概略断面図である。
【図10】同実施形態のサセプタ装置の熱拡散部の概略斜視図である。
【図11】本発明による実施形態のサセプタ装置の搭載部と脚部と熱拡散部の組立体の概略斜視図である。
【図12】同実施形態の脚部側から見た図11の線BBに沿った概略断面図である。
【図13】本発明による他の実施形態のサセプタ装置のサセプタ保持薄板部の概略平面図である。
【図14】本発明による他の実施形態のサセプタ装置の要部の概略構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明による実施形態のサセプタ装置を用いた気相成長装置、すなわちMOCVD装置と、これを用いた結晶成長法について、図面を用いて説明する。
【0022】
図3は、実施形態のサセプタ装置の一例が内部に設けられた反応炉を有するMOCVD装置の概略構成を示す。図3中、1がサセプタ装置を、2が反応炉を、3がフローチャネルを、5がウエハを、6が測定ユニットを、示す。
【0023】
反応炉2内のフローチャネル3は、サセプタ装置1の搭載部上に載置された成長基板(ウエハ)5を露出させるための開口部を有し、原料ガスをウエハ5上に導く。フローチャネル3は、石英ガラス、SiCなどから構成されている。なお、測定ユニット6によりレーザ光を用いてウエハ5表面を観測するため、フローチャネル3のウエハ5上部および反応炉2上部の窓部Wは透光性材料で形成されている。また、フローチャネル3は、ガス噴射管Ginとガス排気管Goutを有しており、ガス噴射管とガス排気管の間の窓部Wの下に開口部が形成されている。この開口部を介してサセプタ装置1の搭載部10上にウエハ5は載置され、ガス噴射管Ginから供給され原料ガスおよびキャリアガスに晒されるように保持される。この例では、結晶成長中は成長基板3の側方のガス噴射管Ginから原料ガスおよびキャリアガスが供給され、結晶成長が行われるが、これに限定されず、装置構成によっては上方から原料ガスおよびキャリアガスが供給されてもよい。
【0024】
測定ユニット6はウエハ5の上方の反応炉2の外に取り付けられている。測定ユニット6は、レーザ光源61および検知部62を含み、レーザ光を窓部Wを介してウエハ5の表面に照射し、同じく反応炉上部の窓Wから反射光を検知部62で検出し、反射光の拡散からウエハ5の表面の反り量を測定する。測定ユニット6は例えば、LayTec社のEpiCurveTT(登録商標)などの基板反り量測定装置を利用することで反りを測定し、そのデータを抽出する。測定ユニット6は制御部Contに接続され、反り量のデータを制御部Contに送る。
【0025】
サセプタ装置1は、ウエハ5を保持する可動サセプタである搭載部10(後述する分割された複数の熱輻射部)と、搭載部に接続された複数の脚部20と、脚部を介して搭載部10を動かす駆動機構Drとを含む。
【0026】
サセプタ装置1は、さらに、脚部20を離間して加熱する熱拡散部30と、を含む。熱拡散部30の周囲に離間してこれを囲んで加熱する加熱部Hが設けられている。
【0027】
サセプタ装置1の脚部20の下方に取り付けられた駆動機構Drは脚部20それぞれを上下に動かす機構であり、サセプタ保持薄板部40とピエゾアクチュエータ41とを含む。サセプタ保持薄板部40は例えば数mmの厚さを有する円形の金属板などを用いる。サセプタ保持薄板部40の形状は脚部20を保持可能かつピエゾアクチュエータ41により変形可能であれば単純な板状でも構わない。
【0028】
サセプタ保持薄板部40および熱拡散部30はカップ形状の支持部42に周縁部に設けられた段差によりそれぞれ所定の位置に保持される。支持部42の底にピエゾアクチュエータ41が搭載される。ピエゾアクチュエータ41は制御部Contに接続され制御部Contからの信号により駆動される。
【0029】
複数の熱輻射部それぞれは脚部20を介してサセプタ保持薄板部40に接続される。サセプタ保持薄板部40の中心部がピエゾアクチュエータ41の駆動部に接続される。サセプタ保持薄板部40の外周部が支点として設置される。サセプタ保持薄板部40はピエゾアクチュエータ41の伸縮に応じてたわみ、脚部20を介して接続されている搭載部10の熱輻射面形状をウエハ5の反りに合せて変形させる。
【0030】
制御部Contは、測定ユニット6からの上記反りの大きさのデータに基づきサセプタ装置1の脚部20の下方に取り付けられた駆動機構Drをフィードバック制御し、熱輻射部の各々の高さを制御することでウエハ5の形状に合せて搭載部10を変形させる。駆動機構Drは測定ユニット6により検知した反り量に応じてピエゾアクチュエータ41の伸縮変形させて、上記搭載部の熱輻射部の各々の高さを上下動可能にしている。
【0031】
サセプタ装置1、加熱部Hおよび支持部42は断熱材IMで離間して囲まれることが好ましい。支持部42も断熱材で形成され加熱部Hからの熱を極力受けないようにすることが好ましい。
【0032】
支持部42を含みサセプタ装置1は、外部に設けたサセプタ回転機構部(図示せず)によって任意の回転数で回転させることができる。ウィルソンシール、Oリングシール、ベローズシール、磁気カップリングシール、磁気流体シールなどを用いた気密シール機構43を介して、支持部42を含みサセプタ装置1は、反応炉2外のサセプタ回転機構部に接続されている。サセプタ装置1は、原料ガスの供給量分布(ガス流の分布)の影響を低減するため結晶成長中回転されてもよい。
【0033】
以下に、上記のサセプタ装置1の構成要素を詳細に説明する。
【0034】
−−搭載部−−
図4は、本発明が適用された実施形態のサセプタ装置1の搭載部10の断面図を示す。搭載部10は、ウエハ5に対向する円形の搭載領域Pを中央から同心円状に分割して得られた区分領域P1、P2、P3、P4のそれぞれに配された複数の熱輻射部10a、10b、10c、10dからなる。すべての熱輻射部がウエハ5に対向する熱輻射面RAを有する。よって、図5の平面図に示すように、搭載部10は、中央の円柱形状の熱輻射部10aに対して、円管形状の間隙を空け入れ子構造のように順に遊嵌する円管形状の熱輻射部10b、熱輻射部10c、熱輻射部10dからなる。搭載部10の熱輻射部10a、10b、10c、10d各々は、ウエハ5に対向してウエハの厚さ方向TKに可動であり、図6(a)の斜視図に示すように、中央の熱輻射部10aから外側の円管形状の熱輻射部10dすべて同一高さのサセプタ面を形成することができ、図6(b)の斜視図に示すように、中央の熱輻射部10aを最も下に動かし内側から外側への順に管状熱輻射部10b、10c、10dの熱輻射面の深さを階段状になすことができる。具体的には、図6(b)に示すようにサセプタ装置1の結晶成長中にウエハ5を載置する搭載部10を複数の熱輻射部に区分けし、各熱輻射部を独立して上下可動としてあるので、結晶成長中のウエハ5に合せていわゆるサセプタ凹部の形状を変化させることができる。これによりウエハのほぼ全面で搭載部10とウエハ5の間隔が一定となり、温度分布が均一となりやすい。
【0035】
好ましくは、搭載部10の少なくとも一部の熱輻射部に円錐、多角錘または半球状の突起Ptを設けることができる。これによりウエハ5を点で支持できるので、搭載部10からの熱伝導による加熱の影響を低減でき、更に温度分布が均一となる。突起Ptは搭載部10と一体に形成してもよいが、搭載部10よりも熱伝導率の低い別の材料により構成するのが上記熱伝導の影響を低減でき、さらに好ましい。複数の熱輻射部10a、10b、10c、10dにおいてウエハ5に接する少なくとも3つの突起Ptが設けられていればよい。これは、少なくとも3つの突起Ptがあれば、それらの接触点にて確定される1つの平面にてウエハ5を支持できるからである。ウエハ5と熱輻射部との間を非接触とすることで接触による熱伝導の有無による反りの影響を受け難くなり、ウエハ5を全体に亘って均一な温度とすることが可能になる。
【0036】
一般的な成長基板、例えばC面サファイヤ基板を用いる場合は、結晶成長中お椀状に変形するため、上記例では搭載部10を同心円状に区分けしたが、搭載部10の各熱輻射部の形状は同心円状に限らず、例えば、図7(a)(b)(c)(d)の平面図に示すように、それぞれ矩形熱輻射面を含む熱輻射部Recとなるような格子状(図7(a)(b))や、それぞれ扇形熱輻射面を有する熱輻射部Secとなるようなセクタ状(図7(c))や、それぞれ正六角形熱輻射面を有する熱輻射部Hexとなるようなハニカム状(図7(d))などに区分けして、より複雑なウエハ5の変形に対応可能なように構成しても良い。
【0037】
搭載部10の材料は通常のMOCVD装置用のサセプタに使用されるもので良い。例えば、III族窒化物成長基板の製造では、カーボン、石英(シリカ)、アルミナ、Si、SiC、窒化ホウ素などが一般的に用いられる。搭載部10は表面を白色塗装、白色の窒化ホウ素で形成、周囲に断熱材を設置するなどして加熱部Hからの熱を極力受けないようにするのが好ましい。
【0038】
−−脚部−−
図8に示すように、搭載部10の熱輻射部10a、10b、10c、10dの各々はウエハ5から離れるウエハ5の厚さ方向TKに平行に伸長する脚部20が設けられている。図9に示すように、脚部20は、搭載部10の区分けされた熱輻射部10a、10b、10c、10d毎に少なくとも1つ接続されている。例えば、中央の熱輻射部10aには1本の円形断面の脚部20が、その周りの熱輻射部10bには4本、10cには8本、10dには8本のセクタ形状断面の脚部20がそれぞれ接続されている。脚部20は搭載部10を上下させる駆動の役割と、熱拡散部30からの熱を搭載部10へと伝達する役割を有する。脚部20はそれぞれ熱輻射部10a、10b、10c、10d同士の間隙よりも広い間隔を空け、それぞれの脚部20が熱拡散部30で囲まれ得るように形成されている。これにより脚部の表面積が大きくなり、時間当たりに熱拡散部30から受け取れる熱量が多くなる。脚部20に用いられる材料は、上記通常のMOCVD装置用のサセプタに使用されるものであればいずれも使用できるが、熱拡散部30からの熱を効率よく吸収するために特にカーボン、SiCなどの黒色の材料が好ましい。脚部20は、熱拡散部30と一体としても別体としても形成できる。
【0039】
−−熱拡散部−−
熱拡散部30は加熱部Hからの熱を一旦受け、全体に熱を均一に拡散させてから各脚部20に熱を伝える役割を有する。図10に示すように、円柱形の熱拡散部30の本体には脚部20に平行な貫通孔31が設けられ、図11に示すように、貫通孔31は全ての脚部20が遊嵌して通過できるような断面形状で穿孔されており、この貫通孔31の側面から上記の各脚部20へと熱が伝えられる。
【0040】
図12は熱拡散部30の断面を示し、加熱部Hから遠い熱拡散部30の中心部まで熱を素早く伝えるため、示すように、熱拡散部30は中心から外側に向かって放射状に広がる肉厚の厚い熱伝達部HTを形成することが好ましい。
【0041】
熱拡散部30は例えば脚部20よりも熱伝導率の高い材料で構成されていることが好ましい。熱拡散部30には例えばタングステンなどの耐熱性金属、カーボン、カーボンに人工ダイヤモンドなどの高熱伝導材料を混合した混合物などを利用できる。
【0042】
これらにより、サセプタ中央にある脚部および搭載部にも素早く熱を伝達可能としている。従って、搭載部を複数の熱輻射部に分けてもサセプタの外側(加熱部Hに近い側)と中央で温度差が生じることがない。
【0043】
図12に示すように、サセプタ装置1(搭載部10)を温めるための加熱部Hは熱拡散部30の側方を囲むように形成され、熱拡散部30内で十分に熱が拡散されてから貫通孔31を介して各熱輻射部に接続された脚部20へと熱が移る。これにより、搭載部10を複数に区分けしても内側と外側にある熱輻射部をほぼ同時に加熱することが可能となり、温度分布が更に均一となる。熱輻射部がなくて搭載部10の側方を加熱部Hが囲むように形成すると内側にある熱輻射部まで熱が伝導され難く温度分布が不均一となりやすいが、上記構成ではかかる問題は生じない。
【0044】
−−駆動機構−−
駆動機構Drは脚部20それぞれを上下に動かす伸縮可能な変形機構である。図3に示す例ではピエゾアクチュエータ41がサセプタ保持薄板部40を変形させて、変形したサセプタ保持薄板部40が脚部20それぞれを上下に動かす。
【0045】
サセプタ保持薄板部40は図3に示す円形金属板他、図13に示すように脚部20の配列とウエハの変形を考慮して円形金属板の外周から熱伝達部HTに沿って中心に向う切り込みNotchを入れると、よりウエハの形状に合せた変形が可能になり好ましい。
【0046】
図3に示すピエゾアクチュエータ41は、ウエハ上部に取り付けた測定ユニット6からのウエハの「反り」の情報に基づき制御部Contによりフィードバック制御される。
【0047】
ピエノアクチュエータは一例であって限定されることはないが、その他の電磁気アクチュエータなどの電気的駆動システムを用いてもよい。
【0048】
さらに、ピエゾアクチュエータ41をサセプタ保持薄板部40の中心に1つ配置する形態に限らず、搭載部10毎または脚部20毎に1つ準備するなど、複数用いてもよい。複数のピエゾアクチュエータ41を個々またはグループ毎に高さを調整することでより複雑なウエハの変形に対応可能となる。この場合、サセプタ保持薄板部40は省略することもできる。例えば、図14に示すように、搭載部10の熱輻射部毎に1本の脚部20を設けそれぞれに1つのピエゾアクチュエータ41を接続させて、ピエゾアクチュエータ41をそれぞれ独立に制御部Contによりフィードバック制御される以外、上記実施形態構成と同様に構成できる。
【符号の説明】
【0049】
サセプタ装置1
2 反応炉
3 フローチャネル
5 ウエハ
6 測定ユニット
10 搭載部
10a、10b、10c、10d 熱輻射部
20 脚部
30 熱拡散部
31 貫通孔
41 ピエゾアクチュエータ
40 サセプタ保持薄板部
42 支持部
43 サセプタ回転機構部
61 レーザ光源
62 検知部
Cont 制御部
H 加熱部
Dr 駆動機構
Pt 突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長基板が載置される搭載領域を有するサセプタ装置であって、
前記搭載領域を分割して得られた区分領域の各々に配されかつ各々が前記成長基板に対向する熱輻射面を有し、前記成長基板の厚さ方向に可動である複数の熱輻射部からなる搭載部を有することを特徴とするサセプタ装置。
【請求項2】
前記熱輻射部は前記成長基板から離れる前記成長基板の厚さ方向に伸長する脚部を有し、前記脚部を離間して取り囲む熱拡散部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のサセプタ装置。
【請求項3】
前記熱拡散部は前記脚部よりも高い熱伝導率を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項2に記載のサセプタ装置。
【請求項4】
前記複数の熱輻射部において前記成長基板に接する少なくとも3つの突起が設けられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載のサセプタ装置。
【請求項5】
前記搭載領域は同心円状またはセクタ状または格子状に分割されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1に記載のサセプタ装置。
【請求項6】
反応炉内において成長基板が載置される請求項2乃至5の何れか1に記載のサセプタ装置と、
前記成長基板上に原料ガスを供給するガス噴射管と、
前記成長基板の表面の反り量分布を検知する基板反り量測定装置と、
前記基板反り量測定装置からの前記成長基板の表面の反り量分布の信号に応じて、前記熱輻射部を前記成長基板の厚さ方向に駆動する駆動機構を有することを特徴とする気相成長装置。
【請求項7】
前記駆動機構は、前記脚部下方の全てまたは複数に接続されたサセプタ保持薄板部と、該サセプタ保持薄板部下方に接続された前記成長基板の厚さ方向に伸縮可能な変形機構と、で構成されたことを特徴とする請求項6に記載の気相成長装置。
【請求項8】
前記駆動機構は、前記脚部それぞれの下方に接続された前記成長基板の厚さ方向に伸縮可能な変形機構で構成されたことを特徴とする請求項6に記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−156196(P2012−156196A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12062(P2011−12062)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】