説明

スポンジ様担体マトリックスを用いた非晶質薬物の安定化

本発明は非晶質状態の薬物の安定化のための薬物製剤化に関する。特に、本発明はスポンジ様担体マトリックス、特に高分子電解質複合体または多孔質粒子、を含む医薬組成物に関する。本発明は、また、このような医薬組成物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物製剤の分野に属する。特に、本発明は、スポンジ様担体マトリックスを用いた非晶質状態の薬物の安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解性の低い薬物には、分解およびバイオアベイラビリティーの増強が望まれる。非晶質形態の薬物は、しばしば、結晶形態の同一薬物よりも高いバイオアベイラビリティーを有する。水溶性の乏しい成分の固体の結晶形態は、分解動力学および限界薬物濃度の両者に影響する。しかし、非晶質形態は、克服が必要な格子エネルギーがないため、両パラメーターにおいて最良の結果を出す。非晶質状態の安定化のための技術的概念は、水溶性に乏しい化合物の副反応および分解を引き起こす可能性がある高エネルギーの注入(例えば、ポリマーの溶解押出)に悩まされている。他の場合では、生成物がろう様固体または粘性液体であるので、機械的特性に乏しい。多孔質粒子もまた、粒子表面との相互作用によって、結晶化を妨げるために使用される。この方法では、明らかに負荷量が小さくなり、さらなる適用にも不利である。従って、好適な担体マトリックス材料の選択は、実施上の配慮に不可欠である。タケウチ(Takeuchi)ら(インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファルマシューティクス(Int. J. Pharm.) 293巻 (2005年) 155-164頁)により、インドメタシン(IMC)を有する固体分散粒子の形成のための、多孔質シリカの使用が記載されている。
【0003】
国際特許WO 2005/051358 A1号には、非水溶性薬物のバイオアベイラビリティーを高めるための、多孔質粒子担体および水溶性ポリマーを含む医薬組成物が記載されている。欧州特許EP 0 454 044 B1号には、微粒子形態の高分子電解質複合体を含む、薬理学的組成物が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、スポンジ様担体マトリックスを用いた非晶質状態の薬物の安定化に関する。本明細書では、非晶質状態の薬物は、結晶質構造がないか、または、残留する結晶構造が非常に少ない割合であり、好ましくは約15%未満、より好ましくは約10%未満、さらにより好ましくは約1%未満であり、最も好ましくは残留する結晶質構造がない状態の薬物に関する。薬物または有効成分のサンプル中の非晶質状態および結晶質構造の程度は、粉末X線回折(XRPD)を用いて定量し得る。医薬組成物およびそれらの製造方法が、本発明によって提供される。本発明の医薬組成物のスポンジ様担体マトリックスは、非晶質状態の難溶性薬物の析出の足場として使用し得る。
【0005】
これらの組成物は、非晶質状態の薬物の安定化、レオロジーの改善、および溶解性の向上またはそれらの組み合わせのために使用し得る。上記のスポンジ様担体マトリックスは、ポリアニオンとポリカチオンとの間の静電相互作用によって形成される、高分子電解質複合体(PEC)を含んでいてもよい。また、上記の集合体も無機担体を含んでいてもよい。
【0006】
賦形剤または高分子電解質および活性成分が同一の溶媒または溶媒混合物に溶解性があるか分子分散されるならば、これらの担体は、活性化合物、賦形剤と活性成分の組み合わせ、または高分子電解質と活性成分の組み合わせと共に、負荷し得る。足場(即ち、担体)自身もまた、活性成分との負荷方法の間に形成されていてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
a) 活性成分、
b) スポンジ様担体マトリックス、および
c) 任意に、少なくとも一つの賦形剤
を含む、医薬組成物に関する。
【0008】
第一の特別な様相において、本発明は、
a) 活性成分、
b) 少なくとも一つの賦形剤、および
c) 担体として、高分子電解質複合体
を含む、医薬組成物に関する。
【0009】
高分子電解質複合体は、好ましくは、
i) 等電点を超えるpHで、全体として負に荷電した、ポリアニオンまたは両性電解質、および
ii) 等電点未満のpHで、全体として正に荷電した、ポリカチオンまたは両性電解質
を含む。
【0010】
第二の特定の様相において、本発明は、
a) 活性成分、
b) 担体として、多孔質粒子、および
c) 任意に、少なくとも一つの賦形剤
を含む、医薬組成物に関する。
【0011】
第二の様相は、内表面の大きい担体、特に多孔質粒子を提供する。
【0012】
本発明の第二の様相の、一つの特に好ましい態様において、医薬組成物は1以上の低分子量賦形剤を含む。
【0013】
本発明の第二の様相の、別の特に好ましい態様において、医薬組成物は、さらなる低または高分子量の賦形剤を含まない。
【0014】
また、本発明は、以下の工程
a.) 活性成分および任意にさらなる賦形剤を、有機溶媒に溶解する工程、
b.) 活性成分を含む前記の有機溶媒を、乾燥高分子電解質複合体に添加する工程、
c.) 任意に、有機溶媒を除去する工程
を含む、医薬組成物の第一の様相による医薬組成物の製造方法に関する。
【0015】
高分子電解質複合体は、以下の工程
a.) ポリアニオン化合物およびポリカチオン化合物を混合する工程であって、ポリアニオン化合物および/またはポリカチオン化合物は、水溶液中に溶解されるか、粉末形態である、
b.) ポリカチオン化合物およびポリアニオン化合物が粉末形態である場合に、混合物を水で湿らせて、スラリーを形成する工程、および
c.) 凍結乾燥、噴霧乾燥、ロータリーエバポレーターにおける蒸発、加熱、真空適用またはそれらの組み合わせによって、混合物を乾燥する工程
を含む方法によって、製造し得る。
【0016】
本発明は、以下の工程
a.) 活性成分および任意にさらなる賦形剤を、有機溶媒に溶解する工程、
b.) 活性成分を含む前記の有機溶媒を、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(MAS)、無水第二リン酸カルシウム、微結晶性セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、大豆外皮繊維、および凝集二酸化ケイ素を含む群から選択される担体材料を含む多孔質粒子に添加する工程、
c.) 任意に、有機溶媒を除去する工程
を含む、医薬組成物の第二の様相による医薬組成物の製造方法に関する。
【0017】
また、本発明は、本発明のあらゆる方法によって得られる医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、イトラコナゾールの粉末X線回折(XRPD)スペクトルと比較した、PEGを含む場合(実施例10)および含まない場合(実施例9)の、ノイシリン/イトラコナゾール製剤の粉末X線回折分析の結果を示す。負荷したマトリックスのスペクトルにおいて、明らかな物質の特徴的なピークは全く見られない。このことは、物質が真に非晶質であることを示す。任意の一定値を後者のスペクトルに加えて、可視性を強化した。
【図2】図2は、実施例11の組成物の偏光顕微鏡画像であって、結晶性物質による高強度の反射を示す。
【図3】図3は、実施例12の組成物の偏光顕微鏡画像であって、可視的な結晶性物質の形跡はないことを示す。結晶性物質は、図2に見られるように、高強度の反射を引き起こすであろう。円形の粒子はノイシリン(登録商標)粒子である。
【図4】図4は、実施例13の組成物の偏光顕微鏡画像であって、可視的な結晶性物質の形跡はないことを示す。結晶性物質は、図2に見られるように、高強度の反射を引き起こすであろう。円形の粒子はノイシリン(登録商標)粒子である。
【図5】図5は、実施例14の組成物の偏光顕微鏡画像であって、可視的な結晶性物質の形跡はないことを示す。結晶性物質は、図2に見られるように、高強度の反射を引き起こすであろう。円形の粒子はノイシリン(登録商標)粒子である。
【図6】図6は、カンデサルタン・シレキセチルの粉末X線回折(XRPD)スペクトルと比較した、PEGを含む場合(実施例15)および含まない場合(実施例14)の、ノイシリン/カンデサルタン・シレキセチル製剤の粉末X線回折分析の結果を示す。負荷したマトリックスのスペクトルにおいて、明らかな物質の特徴的なピークは全く見られなかった。このことは、物質が真に非晶質であることを示す。任意の一定値を後者のスペクトルに加えて、可視性を強化した。
【図7】図7は、カンデサルタン・シレキセチルの粉末X線回折(XRPD)スペクトルと比較した、PEGを含む場合(実施例17)、PVPを含む場合(実施例18)およびさらなる賦形剤を含まない場合(実施例16)の、高分子電解質/カンデサルタン・シレキセチル製剤の粉末X線回折分析の結果を示す。負荷したマトリックスのスペクトルにおいて、明らかな物質の特徴的なピークがわずかに見られた。低ピーク強度は、マトリックスにおける、多量の非晶質活性成分を示す。任意の一定値を後者のスペクトルに加えて、可視性を強化した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、
a) 活性成分、
b) スポンジ様担体マトリックス、および
c) 任意に、少なくとも一つの賦形剤
を含む、医薬組成物に関する。
【0020】
スポンジ様担体マトリックスは、本明細書では、単独または賦形剤と共に、非晶質活性成分(即ち、薬物、特に水中で低溶解性の薬物)を安定化し、それによって、活性成分のその標的への送達を促進し、非製剤化薬剤物質と比較して、または既存の担体システムと比較して、バイオアベイラビリティーを増強する。本発明は、第一の様相において、上記で規定した通りの医薬組成物に関し、ここでスポンジ様担体マトリックスは、高分子電解質複合体を含む。第二の様相において、本発明は、上記で規定した通りの医薬組成物に関し、ここでスポンジ様担体マトリックスは、多孔質粒子を含む。多孔質粒子は、好ましくは、孔および/または穴を有する微粒子である。それらは、好ましくは、μmの範囲の大きさであり、好ましくは約1〜700μmの範囲内であり、より好ましくは1〜250μm、さらにより好ましくは1〜250μm、最も好ましくは75〜250μmである。スポンジ様で海綿状の担体マトリックスは、好ましくは、超分子構造、粒子、フレークおよび/またはれんが状塊(例えば、脆弱な性質の非晶質マトリックス)の形態である。本明細書に記載されたスポンジ様担体マトリックスは、好ましくは、薬物製剤のレオロジーを改善する。
【0021】
任意の賦形剤は、低分子量の賦形剤または高分子量の賦形剤であってもよい。低分子量の賦形剤とは、本明細書では、分子量が約1500 Da未満の賦形剤、好ましくは1400 Da未満、より好ましくは1200 Da未満、より好ましくは1000 Da未満、より好ましくは800 Da未満、さらにより好ましくは750 Da未満、最も好ましくは500 Da未満を指す。高分子量の賦形剤とは、本明細書では、分子量が約1500 Daまたは1500 Daを超える賦形剤を指す。ポリマー賦形剤は、1以上のモノマーの間に繰り返しの共有結合を含む。典型的には、各モノマーは、ポリマー中に、統計的またはブロック的な様式で何回も存在する。従って、ポリマーは、典型的には、上記で規定した通りの高分子量賦形剤の分類に属する。合成ポリマーは重合反応を用いて合成されるが、ここで生成物は均一の分子量を持たず、分子量分布を有する。対照的に、タンパク質や核酸等の天然高分子は、通常、一定の構造および分子量を有する。本発明の第二の様相(即ち、多孔質粒子を含む医薬組成物)の文脈において、賦形剤は好ましくは低分子量賦形剤である。
【0022】
低分子量賦形剤は、例えば、ソルビタンモノパルミテート(SPAN)、ポリソルベート(ツイーン(TWEEN)(登録商標))、一般的な界面活性剤、例えばグリセロール等の多価アルコール、マンニトール、単糖類(例えばグルコース、ラクトース)、アミノ酸およびペプチドを含む群から選択される。好ましいポリソルベートは、ツイーン(登録商標)80、ツイーン(登録商標)65、ツイーン(登録商標)60、ツイーン(登録商標)40およびツイーン(登録商標)20を含む群から選択される。低分子量賦形剤は、透過促進剤または可溶化剤であってもよい。
【0023】
高分子量賦形剤は、例えば、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリビニルアルコール、オイドラギットE、およびオイドラギットS、デキストラン、でんぷん、セルロース誘導体またはキトサン等の多糖類、ポリリシン等のポリペプチド、またはアルブミン例えばヒト血清アルブミン(HSA)等のタンパク質を含む群から選択される。
【0024】
賦形剤は、一つの態様において、モノマーであってもよく、別の態様では、繰り返し構造単位を含むポリマーであってもよい。
【0025】
いくつかの特定の態様において、賦形剤は水に不溶性である。さらなる態様において、賦形剤は、水に不溶性であるが、希酸(好ましくはpHが約4.5未満)または希塩基(好ましくはpHが約8を超える)中で可溶性である。
【0026】
医薬組成物中の薬物量に対する、低分子量賦形剤または高分子量賦形剤の割合は、約0〜50%(w/w)、好ましくは50%(w/w)未満、より好ましくは20%(w/w)未満、最も好ましくは5%(w/w)未満であることが好ましい。
【0027】
本発明の文脈における活性成分は、好ましくは、生物薬剤学分類法(Biopharmaceutics Classification System (BCS))(FDA)のグループIIまたはIVによる、難溶解性薬物が好ましい。難溶解性薬物は、以下のFDAの定義により、高溶解性薬物ではない全ての薬物である。薬物物質は、最も高い投与濃度が、pH 1〜7.5の範囲に渡って≦ 250 mlの水に可溶である場合に、高溶解性と見なされる。
【0028】
活性成分は、例えば、以下を含む群から選択してもよい:
− アトルバスタチン、アミオダロン、カンデサルタン・シレキセチル、カルベジロール、硫酸クロピドグレル、ジピリダモール、メシル酸エプロサルタン、エピエレノン(epierenone)、エゼチミブ、フェロジピン、フロセミド、イスラジピン、ロバスタチン、メトラゾン、ニカルジピン、ニソルジピン、オルメサルタン・メドキソミル、塩酸プロパフェノン、キナプリル、ラミプリル、シンバスタチン、テルミサルタン、トランドラプリル、バルサルタンおよび他の心血管系薬物;
− アシクロビル、アデホビル、ジピボキシル、アムホテリシン、アンプレナビル、セフィキシム、セフタジジム、クラリスロマイシン、クロトリマゾール、エファビレンツ、ガンシクロビル、イトラコナゾール、ノルフロキサシン、ナイスタチン、リトナビル、サキナビルおよび、抗菌剤、抗真菌剤および駆虫薬を含む他の抗感染症薬;
− シスプラチン、ドセタキセル、エトポシド、エキセメスタン、イダルビシン、イリノテカン、メルファラン、メルカプトプリン、ミトタン、パクリタキセル、バルルビシンおよび腫瘍学において使用される他の薬剤;
− アザチオプリン、タクロリムス、シクロスポリン、ピメクロリムス、シロリムスおよび他の免疫抑制剤;
− クロザピン、エンタカポン、フルフェナジン、イミプラミン、ネファゾドン、オランザピン、パロキセチン、ピモジド、セルトラリン、トリアゾラム、ザレプロン、ジプラシドンおよび他のCNS適応症用薬剤;
− ダナゾール、デュタステリド、メドロキシプロゲステロン、ラロキシフェン、シルデナフィル、タダラフィル、テストステロン、バルデナフィル、および、リプロダクティブ・ヘルスに使用される他の薬剤;
− セレコキシブ、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、エレトリプタン、メシル酸エルゴロイド、酒石酸エルゴタミン、ナブメトンおよび、関節炎および疼痛に対する他の薬剤;
− ボセンタン、ブデソニド、デスロラタジン、フェキソフェナジン、フルテカゾン、ロラタジン、モメタゾン、キシナホ酸サルメテロール、トリアムシノロン・アセトニド、ザフィルルカストおよび、他の呼吸器系適応症用薬剤;および
− ドロナビノール、ファモチジン、グリブリド、ヒヨスチアミン、イソトレチノイン、メゲストロール、メサラミン、モダフィニル、モサプリド、ニモジピン、ペルフェナジン、プロポフォール、スクラルフェート、サリドマイド、塩酸トリザニジン(Trizaidine)、および、特に胃腸障害、糖尿病および皮膚科学適応症を含む、種々の適応症用の他の薬剤。
【0029】
上記リストの好ましい活性成分は、あらゆるpHで塩を形成しない。
【0030】
本発明の好ましい態様では、医薬組成物中の活性成分の濃度は、0〜90%(w/w)の範囲内であり、好ましくは0〜50%、より好ましくは約5と25%(w/w)の間、さらにより好ましくは約10〜20%(w/w)の範囲内、最も好ましくは約8と20%(w/w)の間である。本明細書では、他に記載がない場合は、全ての濃度パーセントは重量当たりの重量(w/w)を指す。(w/v)は、体積当たりの重量を指す。
【0031】
好ましくは、活性成分は、医薬組成物の多孔質粒子の内表面上に位置し、外表面上には位置しない。
【0032】
好ましくは、残留する有機溶媒、特に、ヨーロッパ薬局方(Ph. Eur.)5(EDQM 2007)、パラグラフ5.4溶媒に規定された通りの、分類3溶媒(低毒性ポテンシャル溶媒)が、5%未満の濃度、4%未満、3%未満、2%未満または1%(w/w)未満の濃度で存在する。
【0033】
本発明の医薬組成物は、特定の投与方法に限定されない。投与は、例えば、筋肉内、皮下、経静脈、眼科用または経口投与であってもよい。
【0034】
上記の通り、第一の様相において、本発明は、
a) 活性成分、
b) 少なくとも一つの賦形剤、および
c) 担体として、高分子電解質複合体
を含む医薬組成物に関する。
【0035】
高分子電解質複合体は、好ましくは、
i) 等電点を超えるpHで、全体として負に荷電した、ポリアニオンまたは両性電解質、および
ii) 等電点未満のpHで、全体として正に荷電した、ポリカチオンまたは両性電解質
を含む。
【0036】
高分子電解質は、その繰り返し単位、または繰り返し単位の少なくとも一つが、電解質基を持つポリマーである。電解質は、好適な培地(例えば、水)中で、反対の電荷のイオンに解離する、あらゆる物質である。ポリマーは、共有化学結合で連結される、繰り返しの構造単位から成る高分子である。ヘテロポリマー(2種以上の構造単位を含む)およびホモポリマー(1種のみの構造単位を含む)がある。高分子電解質は、負および正に荷電した基を含有してもよい。これらの高分子電解質は、両性電解質と呼ばれる。当業者は、水溶液中の両性電解質化合物の正味荷電が、その等電点および溶液のpHに依存することを承知している。ポリカチオンは、全体として正の荷電を有し、正味の正荷電を有する構造単位を含み、一方、ポリアニオンは、全体として負の荷電を有し、正味の負荷電を有する構造単位を含む。また、高分子電解質は、ポリ酸およびポリ塩基を含んでいると考えられてもよい。
【0037】
ポリアニオンは、好ましくは、ポリ硫酸キシラン、硫酸デキストラン、ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸等のポリアミノ酸、でんぷん加水分解物硫酸塩等のポリ硫酸多糖類、イヌリン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリスルホン酸多糖類、ポリリン酸多糖類、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンB、コラーゲン、HSA(ヒト血清アルブミン)または他のアルブミン、オイドラギットSおよびポリリン酸塩を含む群から選択される。
【0038】
ポリカチオンは、好ましくは、ポリ-L-リシン、ポリ-α,β-(2-ジメチルアミノエチル)-D,L-アスパルトアミド、キトサン、リシンオクタデシルエステル、アミノ化デキストラン、アミノ化シクロデキストリン、アミノ化セルロースエーテル、プロタミン(硫酸塩)、ゼラチンA、オイドラギットE、HSA(ヒト血清アルブミン)または他のアルブミン、カゼイン、核酸(例えば、DNA、RNA、LNAまたはPNA)およびアミノ化ペクチンを含む群から選択される。
【0039】
本発明の第一の様相の文脈における好ましい高分子電解質の組み合わせは、
a.) プロタミン/カルボキシメチルセルロース:特に筋肉内、皮下、経静脈、眼科的および経口投与用の担体として
b.) プロタミン/ゼラチンB:特に筋肉内、皮下、経静脈、眼科的および経口投与用の担体として
c.) HSA/ゼラチン:万能の担体として
d.) オイドラギットE/オイドラギットS:特に経口投与用担体として
e.) カゼイン/ポリアニオン:特に経口投与用担体として
である。
【0040】
高分子電解質複合体は、無機または有機イオンおよび/または例えば塩化ナトリウム等の塩、および、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールおよび非複合ポリマー等の消泡剤を、さらに含んでいてもよい。
【0041】
第二の様相において、本発明は、
a) 活性成分、
b) 担体として、多孔質粒子、および
c) 任意に、少なくとも一つの賦形剤
を含む、医薬組成物に関する。
【0042】
本発明の第二の様相の、一つの特に好ましい態様において、医薬組成物は、1以上の低分子量賦形剤を含む。
【0043】
本発明の第二の様相の、別の特に好ましい態様において、医薬組成物は、さらなる低または高分子量賦形剤を含まない。
【0044】
多孔質粒子は、好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(MAS)、無水第二リン酸カルシウム、微結晶性セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、大豆外皮繊維、および凝集二酸化ケイ素を含む群から選択される、担体材料を含む。
【0045】
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、富士化学工業株式会社より、ノイシリン(登録商標)の名前で販売されている。ノイシリンの種々の形態が販売されている。しかし、本発明の文脈において、好ましいメタケイ酸アルミン酸マグネシウム製剤は、ノイシリン(登録商標)US2である。他に記載のない限り、本書において「ノイシリン(登録商標)」および「ノイシリン(登録商標)US」は、特に実施例では、ノイシリン(登録商標)US2を指す。
【0046】
凝集二酸化ケイ素は、エボニックより、商品名アエロジル(登録商標)で販売されている。
【0047】
驚くべきことに、本発明において、多孔質粒子は、さらなる高分子量賦形剤を添加することもなく、または、賦形剤をまったく添加せずに、非晶質薬物を安定化することがわかった。さらに、驚くべきことに、高分子電解質複合体担体は、あらゆるpHで塩を形成せず、および/または、生物薬剤学分類法(Biopharmaceutics Classification System (BCS))(FDA)のグループIIまたはIVによる難溶解性薬物である活性成分を、安定化さえもする。高分子電解質複合体の使用により、このような分類の活性成分の、新たな投与経路が可能になる。高分子電解質の選択により、活性成分の標的化および幅広い活性成分の使用が可能になる。さらに、本発明の医薬組成物は、活性成分のバイオアベイラビリティーを増強する。
【0048】
また、本発明は、本発明の医薬組成物の製造方法に関する。全ての定義および態様、特に活性成分についての定義や態様、賦形剤およびスポンジ様マトリックスは、医薬組成物の製造方法にも適用する。
【0049】
本発明は、以下の工程
a.) 活性成分および任意にさらなる賦形剤を、有機溶媒に溶解する工程、
b.) 活性成分を含む前記の有機溶媒を、乾燥高分子電解質複合体に添加する工程、
c.) 任意に、有機溶媒を除去する工程
を含む、医薬組成物の第一の様相による医薬組成物の製造方法に関する。
【0050】
高分子電解質複合体は、非晶質マトリックスを構築し、これは、製造方法および組成によって、レオロジー挙動、粒子の大きさ、空隙率、細孔径およびそれらの全般的な機械特性が変化する。これらの高分子電解質マトリックスは、他の無機担体と同様に、予め有機溶媒中に溶解した薬物を非晶質状態へ析出するための最適な足場である。これらの組成物は、非晶質状態の薬物を安定化させることに加えて、固体投与形態開発のための好適なフィラー賦形剤であるというさらなる役割も有する。
【0051】
高分子電解質複合体は、以下の工程
a.) ポリアニオン化合物およびポリカチオン化合物を混合する工程であって、ポリアニオン化合物および/またはポリカチオン化合物は、水溶液中に溶解されるか、粉末形態である、
b.) ポリカチオン化合物およびポリアニオン化合物が粉末形態である場合に、混合物を水で湿らせて、スラリーを形成する工程、および
c.) 凍結乾燥、噴霧乾燥、ロータリーエバポレーターにおける蒸発、加熱、真空適用またはそれらの組み合わせによって、混合物を乾燥する工程
を含む方法によって、製造し得る。
【0052】
高分子電解質複合体の特定の製造方法を、実施例1〜8に説明する。ポリアニオンまたはポリカチオン化合物を含む溶液は、例えば塩化ナトリウム等の塩をさらに含んでもよく、好ましくは、イオン強度が約0〜1Mの範囲内、好ましくは約0.01M〜約0.125Mの範囲内である。高分子電解質の水溶液中の濃度は、好ましくは、粘性が加工性を制限しない範囲内であればよく、好ましくは約1〜2%(w/v)の範囲内であればよい。
【0053】
本発明は、以下の工程
a.) 活性成分および任意にさらなる賦形剤を、有機溶媒に溶解する工程、
b.) 活性成分を含む前記の有機溶媒を、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(MAS)、無水第二リン酸カルシウム、微結晶性セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、大豆外皮繊維、および凝集二酸化ケイ素を含む群から選択される担体材料を含む、多孔質粒子に添加する工程、
c.) 任意に、有機溶媒を除去する工程
を含む、医薬組成物の第二の様相による医薬組成物の製造方法に関する。
【0054】
混合は、例えば、撹拌、ボルテックス、湿式ミル、またはホモジナイザーを使用して実施してもよい。
【0055】
第二の様相による医薬組成物の特別の製造方法は、実施例9および10(イトラコナゾールとノイシリン(登録商標))および実施例12〜15(カンデサルタンとノイシリン(登録商標))に説明する(図3、4および5の偏光顕微鏡像でも示される)。実施例11では、比較して、ノイシリン(登録商標)を用いない医薬組成物を示す(図2の偏光顕微鏡像でも示される)。
【0056】
得られる医薬組成物は、好ましくは、特段の(superparticular)構造または複合物を形成しない多孔質微粒子を含む。さらに、本発明の方法により、好ましくは、活性成分(および任意に賦形剤)が粒子の内表面上に位置し、外表面上には位置しない、多孔質粒子が得られる。
【0057】
本発明の方法の間、活性成分(および任意に賦形剤)を含む有機溶媒は、好ましくは、多孔質粒子中に、完全に浸漬される。さらに、本発明の方法により、好ましくは、粉末X線回折スペクトルから判断して、残留する結晶様構造が殆どないか、または全くない、非晶質粒子が得られる。
【0058】
本発明の方法の文脈における有機溶媒は、好ましくはヨーロッパ薬局方(Ph. Eur.)5(EDQM 2007)、パラグラフ5.4に規定された通りの分類3溶媒(低毒性ポテンシャル溶媒)であるか、または、酢酸、ヘプタン、アセトン、酢酸イソブチル、アニソール、酢酸イソプロピル、1-ブタノール、酢酸メチル、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、t-ブチルメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、クメン、2-メチル-1-プロパノール、ジメチルスルホキシド、ペンタナール、エタノール、1-ペンタノール、酢酸エチル、1-プロパノール、エチルエーテル、2-プロパノール、ギ酸エチル、酢酸プロピルおよびギ酸を含む群から選択されるか、または、前記の群から選択される2以上の有機溶媒の混合物である。最終的な医薬組成物において、分類3溶媒ではない溶媒の残留には、厳しい制限が適用される。従って、そのような溶媒はあまり好ましくない。有機溶媒の除去後、残留する溶媒の量は規制上の要件に従う必要がある。しかし、いくつかの態様では、溶媒は低分子量賦形剤と同一であってもよい。この特別な場合では、有機溶媒を除去してはならない。他の全ての場合では、好ましくは溶媒を除去する。当業者には、それを超えると低分子量賦形剤が活性成分の溶媒として働き得る、低分子量賦形剤の融点について認識されている。
【0059】
活性成分は、好ましくは、有機溶媒中の濃度が約20 mg/mlを超えてもよく、より好ましくは約50 mg/mlを超えてもよく、最も好ましくは約100 mg/mlを超えてもよい。
【0060】
低または高分子量賦形剤は、好ましくは、有機溶媒中の濃度が約2 mg/mlを超えてもよく、より好ましくは約15 mg/mlを超えてもよく、最も好ましくは約25 mg/mlを超えてもよい。
【0061】
有機溶媒は、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ロータリーエバポレーターにおける蒸発、加熱、真空適用またはそれらの組み合わせによって、除去してもよい。
【0062】
特別の態様において、活性成分を含む有機溶媒は、一定した混合下、高分子電解質複合体、または担体材料を含む多孔質粒子に滴加する。
【0063】
また、本発明は、本発明のあらゆる方法で得られる、医薬組成物に関する。全ての定義および態様、特に活性成分についての定義や態様、賦形剤およびスポンジ様マトリックスも、上記で概説した通り、医薬組成物の製造方法によって得られる医薬組成物に適用する。
【0064】
特に、本発明は、本発明の第一の様相によれば、以下の工程
a.) 活性成分および任意にさらなる賦形剤を、有機溶媒に溶解する工程、
b.) 活性成分を含む前記の有機溶媒を、乾燥高分子電解質複合体に添加する工程、
c.) 任意に、有機溶媒を除去する工程
を含む方法によって得られる、医薬組成物に関する。
【0065】
高分子電解質複合体は、以下の工程
a.) ポリアニオン化合物およびポリカチオン化合物を混合する工程であって、ポリアニオン化合物および/またはポリカチオン化合物は、水溶液中に溶解されるか、粉末形態である、
b.) ポリカチオン化合物およびポリアニオン化合物が粉末形態である場合に、混合物を水で湿らせて、スラリーを形成する工程、および
c.) 凍結乾燥、噴霧乾燥、ロータリーエバポレーターにおける蒸発、加熱、真空適用またはそれらの組み合わせによって、混合物を乾燥する工程
を含む方法によって、製造し得る。
【0066】
ポリアニオンまたはポリカチオン化合物を含む溶液は、例えば塩化ナトリウム等の塩をさらに含んでいてもよく、好ましくは、イオン強度が約0〜1Mの範囲内、好ましくは約0.01M〜約0.125Mの範囲内である。高分子電解質の水溶液中の濃度は、好ましくは、粘性が加工性を制限しない範囲内であればよい。
【0067】
本発明の第二の様相によれば、本発明は、以下の工程
a.) 活性成分および任意にさらなる賦形剤を、有機溶媒に溶解する工程、
b.) 活性成分を含む前記の有機溶媒を、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(MAS)、無水第二リン酸カルシウム、微結晶性セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、大豆外皮繊維、および凝集二酸化ケイ素を含む群から選択される担体材料を含む、多孔質粒子に添加する工程、
c.) 任意に、有機溶媒を除去する工程
を含む方法によって得られる医薬組成物に関する。
【0068】
本発明の方法によって得られる医薬組成物の文脈における有機溶媒は、好ましくはヨーロッパ薬局方(Ph. Eur.)5(EDQM 2007)、パラグラフ5.4に規定された通りの分類3溶媒(低毒性ポテンシャル溶媒)であるか、または、酢酸、ヘプタン、アセトン、酢酸イソブチル、アニソール、酢酸イソプロピル、1-ブタノール、酢酸メチル、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、t-ブチルメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、クメン、2-メチル-1-プロパノール、ジメチルスルホキシド、ペンタナール、エタノール、1-ペンタノール、酢酸エチル、1-プロパノール、エチルエーテル、2-プロパノール、ギ酸エチル、酢酸プロピルおよびギ酸を含む群から選択されるか、または、前記の群から選択される2以上の有機溶媒の混合物である。最終的な医薬組成物において、分類3溶媒ではない溶媒の残留には、厳しい制限が適用される。従って、そのような溶媒はあまり好ましくない。有機溶媒の除去後、残留する溶媒の量は規制上の要件に従う必要がある。しかし、いくつかの態様では、溶媒は低分子量賦形剤と同一であってもよい。この特別な場合では、有機溶媒を除去してはならない。他の全ての場合では、好ましくは溶媒を除去する。当業者には、それを超えると低分子量賦形剤が活性成分の溶媒として働き得る、低分子量賦形剤の融点について認識されている。
【0069】
活性成分は、好ましくは、有機溶媒中の濃度が約20 mg/mlを超えてもよく、より好ましくは約50 mg/mlを超えてもよく、最も好ましくは約100 mg/mlを超えてもよい。
【0070】
低または高分子量賦形剤は、好ましくは、有機溶媒中の濃度が約2 mg/mlを超えてもよく、より好ましくは約15 mg/mlを超えてもよく、最も好ましくは約25 mg/mlを超えてもよい。
【0071】
有機溶媒は、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ロータリーエバポレーターにおける蒸発、加熱、真空適用またはそれらの組み合わせによって、除去してもよい。
【0072】
特別の態様において、活性成分を含む有機溶媒は、一定した混合下、高分子電解質複合体、または担体材料を含む多孔質粒子に滴加する。
【0073】
以下の実施例により、本発明の特別な態様および様相を説明する。しかし、それらは本発明の範囲を制限していない。
【0074】
実施例1〜8は、高分子電解質複合体の製造方法を説明する。
実施例9および10は、イトラコナゾールの非晶質製剤を説明する。
実施例11〜18は、カンデサルタン・シレキセチルの非晶質製剤を説明する。
【実施例】
【0075】
実施例1
高分子電解質複合体の製造
イオン強度が0.01Mの、2%(w/v)の硫酸プロタミンを含有する溶液を、ウルトラ・トゥラックス(ultra-turrax)(登録商標)による混合下、イオン強度0.01Mの2%(w/v)カルボキシメチルセルロースを含有する溶液に加えた。得られた懸濁液を凍結乾燥し、さらに使用するまで室温で保存した。
【0076】
実施例2
高分子電解質複合体の製造
イオン強度が0.125Mの、2%(w/v)の硫酸プロタミンを含有する溶液を、ウルトラ・トゥラックス(ultra-turrax)(登録商標)による混合下、イオン強度0.125Mの2%(w/v)カルボキシメチルセルロースを含有する溶液に加えた。得られた懸濁液を凍結乾燥し、さらに使用するまで室温で保存した。
【0077】
実施例3
高分子電解質複合体の製造
イオン強度が0.125Mの、2%(w/v)の硫酸プロタミンを含有する溶液を、ウルトラ・トゥラックス(ultra-turrax)(登録商標)による混合下、イオン強度0.125Mの1%(w/v)カルボキシメチルセルロースを含有する溶液に加えた。得られた懸濁液を凍結乾燥し、さらに使用するまで室温で保存した。
【0078】
実施例4
高分子電解質複合体の製造
イオン強度が0.125Mの2%(w/v)硫酸プロタミンおよび濃度1%(w/v)のPPGを含有する溶液を、ウルトラ・トゥラックス(ultra-turrax)(登録商標)による混合下、イオン強度0.125Mの2%(w/v)カルボキシメチルセルロースおよび1%(w/v)PPGを含有する溶液に加えた。得られた懸濁液を凍結乾燥し、さらに使用するまで室温で保存した。
【0079】
実施例5
高分子電解質複合体の製造
イオン強度が0.01Mの2%(w/v)硫酸プロタミンおよび濃度1%(w/v)のPPGを含有する溶液を、ウルトラ・トゥラックス(ultra-turrax)(登録商標)による混合下、イオン強度0.01Mの2%(w/v)カルボキシメチルセルロースおよび1%(w/v)PPGを含有する溶液に加えた。得られた懸濁液を凍結乾燥し、さらに使用するまで室温で保存した。
【0080】
実施例6
高分子電解質複合体の製造
イオン強度が0.01Mの2%(w/v)硫酸プロタミンおよび濃度1%(w/v)のPPGを含有する溶液を、ウルトラ・トゥラックス(ultra-turrax)(登録商標)による混合下、イオン強度0.01Mの1%(w/v)カルボキシメチルセルロースおよび1%(w/v)PPGを含有する溶液に加えた。得られた懸濁液を凍結乾燥し、さらに使用するまで室温で保存した。
【0081】
実施例7
高分子電解質複合体の製造
イオン強度が0.125Mの2%(w/v)硫酸プロタミンおよび濃度1%(w/v)のPPGを含有する溶液を、ウルトラ・トゥラックス(ultra-turrax)による混合下、イオン強度0.125Mの1%(w/v)カルボキシメチルセルロースおよび1%(w/v)PPGを含有する溶液に加えた。得られた懸濁液を凍結乾燥し、さらに使用するまで室温で保存した。
【0082】
実施例8
高分子電解質複合体の製造
イオン強度が0.125Mの2%(w/v)の硫酸プロタミンおよび濃度1%(w/v)のPPGを含有する溶液を、ウルトラ・トゥラックス(ultra-turrax)(登録商標)による混合下、イオン強度0.125Mの2%(w/v)カルボキシメチルセルロースおよび1%(w/v)PPGを含有する溶液に加えた。得られた懸濁液を凍結乾燥し、さらに使用するまで室温で保存した。
【0083】
実施例9
イトラコナゾールのノイシリン(登録商標)負荷
2.5 mlのジクロロメタン中の、500 mgのイトラコナゾールの溶液を調製した。この透明溶液を、一定した混合下、2.5 gのノイシリン(登録商標)USに滴加した。凝集が観察された場合は、ただ溶液の次の一滴を添加するより、微粉末が得られるまで混合を継続した。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。イトラコナゾールの全量をHPLCで分析したところ、17%(w/w)であった。製剤を粉末X線回折(XRPD)の測定により分析した。調製の約1年後でも、結晶性物質は見られなかった。添付の図1を参照のこと。
【0084】
実施例10
イトラコナゾールおよびPEGのノイシリン(登録商標)負荷
2.5 mlのジクロロメタン中の、500 mgのイトラコナゾールおよび200 mgのPEGの溶液を調製した。この透明溶液を、一定した混合下、2.5 gのノイシリン(登録商標)USに滴加した。凝集が観察された場合は、ただ溶液の次の一滴を添加するより、微粉末が得られるまで混合を継続した。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。イトラコナゾールの全量をHPLCで分析したところ、16%(w/w)であった。製剤をXRPDの測定により分析した。調製の約1年後でも、結晶性物質は見られなかった。添付の図1を参照のこと。
【0085】
実施例11
4 mlのアセトン中の、20 mgのオイドラギットE(EuE)および200 mgのカンデサルタン・シレキセチルの溶液を調製した。この透明溶液をロータリーエバポレーターに移し、溶媒を除去した。それぞれの残留分を偏光顕微鏡で調べた(添付の図2参照)。ここで、高強度の領域は結晶性物質に関連している。
【0086】
実施例12
1 mlのアセトン中の、50 mgのオイドラギットEおよび100 mgのカンデサルタン・シレキセチルの溶液を調製した。この透明溶液を、一定した混合下、0.5 gのノイシリン(登録商標)USに滴加した。凝集が観察された場合は、ただ溶液の次の一滴を添加するより、微粉末が得られるまで混合を継続した。偏光顕微鏡画像では、結晶性物質の形跡は見られなかった(添付の図3参照)。
【0087】
実施例13
1 mlのアセトンおよび0.5 mlの2-プロパノール中の、50 mgのオイドラギットS(EuS)および100 mgのカンデサルタン・シレキセチルの溶液を調製した。この透明溶液を、一定した混合下、0.5 gのノイシリン(登録商標)USに滴加した。凝集が観察された場合は、ただ溶液の次の一滴を添加するより、微粉末が得られるまで混合を継続した。偏光顕微鏡画像では、結晶性物質の形跡は見られなかった(添付の図4参照)。
【0088】
実施例14
1 mlのジクロロメタン中の、50 mgのポリ(エチレングリコール)(PEG)および100 mgのカンデサルタン・シレキセチルの溶液を調製した。この透明溶液を、一定した混合下、0.5 gのノイシリン(登録商標)USに滴加した。凝集が観察された場合は、ただ溶液の次の一滴を添加するより、微粉末が得られるまで混合を継続した。偏光顕微鏡画像では、結晶性物質の形跡は見られなかった(添付の図5参照)。同様にXRPD調査を実施し、製剤中に結晶性物質は見られなかった(添付の図6参照)。
【0089】
実施例15
300 mlのジクロロメタン中の、30 mgのカンデサルタン・シレキセチルの溶液を調製した。この透明溶液を、一定した混合下、0.15 gのノイシリン(登録商標)USに滴加した。凝集が観察された場合は、ただ溶液の次の一滴を添加するより、微粉末が得られるまで混合を継続した。XRPD調査では、製剤中に結晶性物質は見られなかった(添付の図6参照)。
【0090】
実施例16
200 mlのジクロロメタン中の、20 mgのカンデサルタン・シレキセチルの溶液を調製した。この透明溶液を、一定した混合下、0.1 gの高分子電解質複合体(PEC)に滴加した。凝集が観察された場合は、ただ溶液の次の一滴を添加するより、微粉末が得られるまで混合を継続した。XRPD調査では、弱い反射のみが見られた(添付の図7参照)。
【0091】
実施例17
200 mlのジクロロメタン中の、20 mgのカンデサルタン・シレキセチルおよび10 mgのPEGの溶液を調製した。この透明溶液を、一定した混合下、0.1 gのPECに滴加した。凝集が観察された場合は、ただ溶液の次の一滴を添加するより、微粉末が得られるまで混合を継続した。XRPD調査では、弱い反射のみが見られた(添付の図7参照)。
【0092】
実施例18
200 mlのジクロロメタン中の、20 mgのカンデサルタン・シレキセチルおよび10 mgのPVPの溶液を調製した。この透明溶液を、一定した混合下、0.1 gのPECに滴加した。凝集が観察された場合は、ただ溶液の次の一滴を添加するより、微粉末が得られるまで混合を継続した。XRPD調査では、弱い反射のみが見られた(添付の図7参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 活性成分、
b) スポンジ様担体マトリックス、および
c) 任意に、少なくとも一つの賦形剤
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記賦形剤が、分子量が約1500 Da未満の低分子量の賦形剤であるか、または前記賦形剤が分子量が約1500 Daまたは1500 Daを超える高分子量の賦形剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記スポンジ様担体マトリックスが高分子電解質複合体または多孔質粒子を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記低分子量賦形剤が、ソルビタンモノパルミテート(SPAN)、ポリソルベート(TWEEN)、グリセロール、多価アルコール、単糖類、アミノ酸およびペプチドを含む群から選択され、前記高分子量賦形剤が、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリビニルアルコール、オイドラギットE、およびオイドラギットS、ポリペプチド、多糖類、およびタンパク質を含む群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物中の前記低分子量賦形剤または高分子量賦形剤の濃度が、約0〜50%(w/w)の範囲である請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記活性成分が、生物薬剤学分類法 (BCS)のグループIIまたはIVによる、難溶解性薬物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記活性成分が、アトルバスタチン、アミオダロン、カンデサルタン・シレキセチル、カルベジロール、硫酸クロピドグレル、ジピリダモール、メシル酸エプロサルタン、エピエレノン(epierenone)、エゼチミブ、フェロジピン、フロセミド、イスラジピン、ロバスタチン、メトラゾン、ニカルジピン、ニソルジピン、オルメサルタン・メドキソミル、塩酸プロパフェノン、キナプリル、ラミプリル、シンバスタチン、テルミサルタン、トランドラプリル、バルサルタン、アシクロビル、アデホビル、ジピボキシル、アムホテリシン、アンプレナビル、セフィキシム、セフタジジム、クラリスロマイシン、クロトリマゾール、エファビレンツ、ガンシクロビル、イトラコナゾール、ノルフロキサシン、ナイスタチン、リトナビル、サキナビル、シスプラチン、ドセタキセル、エトポシド、エキセメスタン、イダルビシン、イリノテカン、メルファラン、メルカプトプリン、ミトタン、パクリタキセル、バルルビシン、アザチオプリン、タクロリムス、シクロスポリン、ピメクロリムス、シロリムス、クロザピン、エンタカポン、フルフェナジン、イミプラミン、ネファゾドン、オランザピン、パロキセチン、ピモジド、セルトラリン、トリアゾラム、ザレプロン、ジプラシドン、ダナゾール、デュタステリド、メドロキシプロゲステロン、ラロキシフェン、シルデナフィル、タダラフィル、テストステロン、バルデナフィル、および、リプロダクティブ・ヘルスに使用される他の薬剤、セレコキシブ、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、エレトリプタン、メシル酸エルゴロイド、酒石酸エルゴタミン、ナブメトン、ボセンタン、ブデソニド、デスロラタジン、フェキソフェナジン、フルテカゾン、ロラタジン、モメタゾン、キシナホ酸サルメテロール、トリアムシノロン・アセトニド、ザフィルルカスト、ドロナビノール、ファモチジン、グリブリド、ヒヨスチアミン、イソトレチノイン、メゲストロール、メサラミン、モダフィニル、モサプリド、ニモジピン、ペルフェナジン、プロポフォール、スクラルフェート、サリドマイド、ならびに塩酸トリザニジンを含む群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物中の活性成分の濃度が、0〜90%(w/w)の範囲内である請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記スポンジ様担体マトリックスが高分子電解質複合体を含み、前記高分子電解質複合体が
a) 等電点を超えるpHで、全体として負に荷電した、ポリアニオンまたは両性電解質、および
b) 等電点未満のpHで、全体として正に荷電した、ポリカチオンまたは両性電解質
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ポリアニオンが、ポリ硫酸キシラン、硫酸デキストラン、ポリ(アミノ酸)、ポリ硫酸多糖類、イヌリン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリスルホン酸多糖類、ポリリン酸多糖類、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンB、オイドラギットS、コラーゲン、アルブミン、およびポリリン酸塩を含む群から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ポリカチオンが、ポリ-L-リシン、ポリ-α,β-(2-ジメチルアミノエチル)-D,L-アスパルトアミド、キトサン、リシンオクタデシルエステル、アミノ化デキストラン、アミノ化シクロデキストリン、アミノ化セルロースエーテル、プロタミン(硫酸塩)、ゼラチンA、オイドラギットE、アルブミン、カゼイン、核酸、およびアミノ化ペクチンを含む群から選択される、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記多孔質粒子が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(MAS)、無水第二リン酸カルシウム、微結晶性セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、大豆外皮繊維、および凝集二酸化ケイ素を含む群から選択される担体材料を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
a) 活性成分および任意にさらなる賦形剤を、有機溶媒に溶解する工程、
b) 活性成分を含む前記の有機溶媒を、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(MAS)、無水第二リン酸カルシウム、微結晶性セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、大豆外皮繊維、および凝集二酸化ケイ素を含む群から選択される担体材料を含む、多孔質粒子に添加する工程、
c.) 任意に、有機溶媒を除去する工程
を含む、請求項12に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項14】
a) 活性成分および任意にさらなる賦形剤を、有機溶媒に溶解する工程、
b) 活性成分を含む前記の有機溶媒を、乾燥高分子電解質複合体に添加する工程、
c) 任意に、有機溶媒を除去する工程
を含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項15】
前記高分子電解質複合体が、
a) ポリアニオン化合物およびポリカチオン化合物を混合する工程であって、ポリアニオン化合物および/またはポリカチオン化合物は、水溶液中に溶解されるか、粉末形態である工程、
b) ポリカチオン化合物およびポリアニオン化合物が粉末形態である場合に、混合物を水で湿らせて、スラリーを形成する工程、および
c) 凍結乾燥、噴霧乾燥、ロータリーエバポレーターにおける蒸発、加熱、真空適用またはそれらの組み合わせによって、混合物を乾燥する工程
を含む方法によって製造される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法により得られる医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−504550(P2012−504550A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514057(P2011−514057)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057688
【国際公開番号】WO2009/153346
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(505040121)カプサルーション ナノサイエンス アクチェン ゲゼルシャフト (7)
【Fターム(参考)】