説明

パターニングデバイスの洗浄方法、基板への層系の堆積方法、パターニングデバイスの洗浄システム及び基板に層系を堆積するためのコーティングシステム

【課題】少なくとも有機コーティング材料(OLED材料)がその上に堆積されたパターニングデバイスの洗浄方法である。
【解決手段】この方法は、パターニングデバイスからコーティング材料をプラズマエッチング処理により除去するための洗浄プラズマを供給する工程を含む。コーティング材料をパターニングデバイスから除去する工程中、パターニングデバイスの温度はパターニングデバイスに損傷を生じさせる臨界温度を超えず、プラズマエッチング速度は少なくとも0.2μm/分、特には0.5μm/分、特には1μm/分、特には2.5μm/分、特には5μm/分で維持される。パルス洗浄プラズマを発生させるために、パルスエネルギーを供給する。本方法は直接プラズマエッチング法又は遠隔プラズマエッチング法によって実行することが可能である。異なるエッチング法を組み合わせても、連続的に実行してもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、少なくとも有機コーティング材料(OLED材料)がその上に堆積されたパターニングデバイスの洗浄方法と、好ましくは有機発光半導体材料(OLED材料)を含む少なくとも1つの層を含む層系を基板上に堆積するための方法と、その上に少なくとも有機コーティング材料(OLED材料)が堆積されたパターニングデバイスを洗浄するためのシステムと、好ましくは有機発光半導体材料(OLED材料)を含む少なくとも1つの層を含む層系を基板上に堆積するためのコーティングシステムに関する。
【従来技術の説明】
【0002】
多くの技術用途において、基板への層又は多層系の堆積が必要とされている。例えば、いわゆるOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ又はスクリーンの製造において、各層系はガラス等の透明基板上に堆積された有機、エレクトロルミネセント材料(OLED材料)を含む少なくとも1つの発光層を有する。発光有機材料の典型例はAlqである。
【0003】
OLED層は、例えば発光を目的として対応する電極層によって駆動される画素を設けるための微細構造を有している場合がある。微細構造はパターニングデバイス、例えばシャドーマスクによって形成され、パターニングデバイスはOLED層の微細構造に対応する/相補する構造を有している。
【0004】
微細構造を有するOLED材料は、通常、真空コーティング法を用いて基板上に堆積される。シャドーマスクは基板表面と、基板表面上に堆積する有機コーティング材料を供給する材料供給源との間の基板上に置かれる。
【0005】
コーティング処理中にコーティング粒子がマスク上にも意図せずして堆積されてしまうことを回避することはできないため、寸法の小さい微細構造を有するマスクは汚染されてしまい、1回以上のコーティングサイクル後に取り外し、洗浄しなくてはならない。このため、最先端技術では既定の使用時間を越えたら真空コーティングチャンバからOLEDマスクを取り外している。その後、湿式化学洗浄処理を大気圧下で実行する。従って、湿式化学洗浄処理を用いる場合、OLEDコーティング処理を複数のコーティングチャンバから構成されるインライン式装置において中断し、マスクを各真空コーティングチャンバから除去しなくてはならない。
【0006】
更に、酸素/アルゴン(O/Ar)混合物の線形イオン供給源をマスクの洗浄に使用する実験を行ったが、この方法を商業用途に用いるには、マスク洗浄のサイクル時間が長すぎた。加えて、金属マスクの温度の著しい上昇が起こり、高温負荷、熱応力及びマスクへの損傷が生じた。
【発明の目的】
【0007】
本発明の目的は、洗浄方法と、OLEDコーティング方法と、洗浄システムと、インライン式OLEDコーティング装置の連続稼動を円滑に行うOLEDコーティングシステムを提供することである。
【発明の概要】
【0008】
この目的は、請求項1記載のパターニングデバイスを洗浄するための方法と、請求項11記載の基板上に層系を堆積するための方法と、請求項12記載のパターニングデバイスを洗浄するためのシステムと、請求項17記載の基板上に層系を堆積するためのコーティングシステムを提供することで解決される。好ましい実施形態の構成は、従属請求項に記載される。
【0009】
本発明によるパターニングデバイスの洗浄方法は、その上に少なくとも有機コーティング材料(OLED材料)を含む層が堆積されたパターニングデバイスを洗浄するためのものである。本方法は、プラズマエッチング処理によりパターニングデバイスからコーティング材料を除去するための洗浄プラズマを提供する工程を含む。
【0010】
発明者は、マスクを真空雰囲気中で洗浄すると、インライン式OLEDコーティング装置における連続コーティング処理が円滑に行われることを発見した。OLEDコーティング装置のコーティングチャンバ、処理チャンバ又は搬送チャンバの換気の必要性を回避することが可能である。プラズマエッチング処理は真空雰囲気中で実行することから、マスクはコーティングチャンバそれ自体の中又は好ましくはコーティングシステムに連結された別の洗浄用真空チャンバ内で洗浄することができる。
【0011】
前記コーティング材料を前記パターニングデバイスから除去する前記工程中、前記パターニングデバイスの温度は120℃、特には100℃、特には80℃を越えないことが好ましい。
【0012】
通常、パターニングデバイスとは金属材料から成る又は少なくとも金属材料を含むマスクであるため、(少なくとも特定の時間内に)特定の温度を超えると、マスクへの損傷を免れることはできない。当然のことながら、最高温度は材料、用いるエッチング法の種類等によって異なるが、最高温度は120℃、110℃、100℃、90℃、80℃又はもっと低いものであってもよい。
【0013】
好ましくは、前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する前記工程の間、前記パターニングデバイスの温度は前記パターニングデバイスに損傷を生じさせる臨界温度を超えない。
【0014】
前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する工程中、プラズマエッチング速度を少なくとも0.2μm/分、特には0.5μm/分、特には1μm/分、特には2.5μm/分、特には5μm/分で維持することが好ましい。
【0015】
これは、有機コーティング材料をマスクからエッチングにより除去するのに必要とされる時間が非常に短いことを意味している。例えば、処理した基板をインライン式OLEDコーティング装置の次の真空チャンバに輸送しながら、コーティングサイクル後にマスクを洗浄することが可能である。エッチング速度が速いことから、マスクを1組しか必要としない。
【0016】
エッチング速度は、インライン式OLEDコーティング装置のサイクル時間に匹敵するサイクル時間が得られるに十分なだけ速くなくてはならない。例えば、インライン式コーティング装置の中断のない連続稼動を確保するには、1分のサイクル時間で十分である。その一方で、当然ながら、マスクのエッチングが起きてはならない。
【0017】
従って、洗浄システムの要件とは、エッチング速度が連続的なインライン式OLEDコーティング処理を確保するに十分な速さでありながら、エッチング処理中、マスク温度が低く、マスクのエッチングが行われないことである。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、パターニングデバイスからコーティング材料を除去するために使用されるプラズマは、前記プラズマを発生させるための活性化ガスを活性化ゾーンで活性化させることで発生する。パターニングデバイスはコーティング材料のパターニングデバイスからの除去過程の間、活性化ゾーンの外側に置かれる。この実施形態においては、エッチング処理に遠隔プラズマを使用する。
【0019】
基本的に、プラズマを基板と直接接触させて発生させることで基板処理を行う。従って、反応性ガスは基板表面に隣り合った活性化ガスによって活性化される。しかしながら、本発明では、反応性ガスの活性化、つまり反応性分子の発生は基板表面から離れた位置でも起こすことができる。このプラズマは遠隔プラズマ、ダウンストリームプラズマ又はアフターグロープラズマと称される。
【0020】
高エッチング速度での熱負荷は、反応性エッチング粒子を活性化させるためのゾーンを基板表面近くのエッチングゾーンとは分離することで軽減することができる。「遠隔」活性化ゾーンにおいて、反応性粒子はエッチング領域外で発生/活性化され、エッチング領域には強力なガス流によって運ばれる。「遠隔」プラズマエッチング処理の別の利点は、この処理が、イオンの寿命がマスクに衝突する前にその崩壊が起こるほどに短い作動圧力で行われることである。
【0021】
例えば、遠隔プラズマCVD法においては、活性化された原子/分子、つまりO、H、NOを発生させるために、活性化ガスを放電ゾーンに通す。活性化ゾーンの下流に位置するアフターグローゾーンにおいて、活性化ガスはエッチングガス又は複数のエッチングガスの混合物と、活性化ゾーンとは離れた基板表面付近で混合される。
【0022】
エッチングガスもまた、活性化ガスの活性化ゾーンとは別の活性化ゾーンを通過してもよい。
【0023】
混合ゾーンにおいて、活性化ガス及びエッチングガスは相互作用を起こす。励起エネルギーは活性化ガスの分子/原子からエッチングガスの分子/原子へと移動し、均質な前反応を起こす。更なる反応において、エッチング分子/原子がマスクと反応し、有機コーティング粒子がマスクから除去される。
【0024】
遠隔プラズマエッチング法を用いることで、高いエッチング速度での効果的なプラズマエッチング処理を、マスクを処理中に高温に曝すことなく行うことができる。更に、マスクが高エネルギーを有する活性化ガスの分子/原子によって損傷されることがない。基板、つまりマスクの温度はマスク表面への高エネルギーの活性化ガス(混合物)の衝突によって著しく上昇する。遠隔プラズマ供給源を使用すると、高エッチング速度を維持しながら、イオン衝撃を軽減してマスクが曝される熱負荷を低下可能なことが、発明者によって認められている。
【0025】
加えて、遠隔プラズマ供給源を使用するとマスクは活性ガス分子/原子用のRF又はマイクロ波励起放射線に曝露されないが、これは活性化ゾーンがマスク表面から離れた位置にあるからである。マスクはプラズマ活性化ゾーンの外側に置かれる。
【0026】
本発明の方法には、1つ以上のエッチング法を組み合わせて又は連続的に用いることが含まれる。
【0027】
特に、本発明はパルスエネルギーを供給して、前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する工程中にパルス洗浄プラズマを発生させることを含む。
【0028】
この実施形態は、直接プラズマエッチング法において、マスク表面に隣接したプラズマ発生ゾーンにパルスエネルギーを供給する、又は遠隔プラズマエッチング法において、パルスエネルギーをマスク表面とは離れたゾーンに供給することを含む。パルスエネルギーを供給することで、マスクに供給される電力を供給エネルギーの周波数と電力レベルによって制御することができる。従って、マスク温度の上昇を効果的に制御することができる。
【0029】
実際、パルスプラズマエッチング処理を用いる場合、パルス長、周波数及び電力を設定し最適化することで、基板つまりマスクの熱応力を、エッチング速度を十分に高く維持したまま軽減することができる。反応性粒子は1エネルギーパルス(例えばマイクロ波又はRF放射線)の間に発生する。パルスにより、2つのエネルギー供給パルスの間の時間であっても、反応性粒子が使い果たされるまで続く化学反応過程が開始される。
【0030】
好ましい実施形態において、洗浄プラズマはRF及び/又はHF及び/又はマイクロ波放射線をプラズマ活性化ゾーンに導入することで発生させる。上述したように、プラズマ活性化ゾーンはマスク近く(直接プラズマエッチング法)に位置させても、マスクから離れて(遠隔プラズマエッチング法)位置させてもよい。放射線は、活性化ガス及び/又は反応性ガス混合物に適切な照射速度で結合される。
【0031】
前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する過程を洗浄チャンバで実行するのが好ましく、前記洗浄チャンバは内圧10mbar未満、特には5mbar未満、特には1mbar未満、特には0.1mbar未満である。マスク洗浄処理を真空雰囲気内で実行し、連続的なインライン式OLEDコーティング処理が確保することが重要である。洗浄処理はコーティング又は処理チャンバ内で実行することができる。
【0032】
或いは、好ましい実施形態において、前記方法はOLEDコーティングチャンバから離れた洗浄チャンバ内で行われる。洗浄チャンバはOLEDコーティングチャンバと連結していてもよい。マスクをOLEDコーティングチャンバから洗浄チャンバへと輸送する場合、どのチャンバの圧力も大きく変更する必要はない。更に、マスクを洗浄する前にコーティングシステムからマスクを取り外し、洗浄後にマスクをシステムに戻すためにチャンバをロック及び/又はロック解除する必要がない。
【0033】
洗浄プラズマは少なくとも酸素(O)とハロゲン化物含有分子との混合物から発生させたプラズマであってもよい。例えば、OとCHF、又はSFとOを含有するプラズマを用いることで良好な結果が得られている。
【0034】
基板上に層系、好ましくは有機発光半導体材料(OLED材料)を含む少なくとも1つの層を含む層系を堆積する本発明の方法は、前記基板上に堆積するコーティング材料を供給するための供給源を有しているコーティングチャンバ内に前記基板を配置し、パターニングデバイスを前記基板と前記供給源との間に設置し、前記基板上に有機発光半導体材料を含む層を堆積し、前記パターニングデバイスを前記コーティングチャンバから取り外し、前記パターニングデバイスを洗浄チャンバ内に配置し、上述の洗浄法を実行してコーティング材料を前記パターニングデバイスから除去する工程を含む。
【0035】
本方法を実行する際、基板上にはすでに1つ以上の層が堆積されていてもよい。更に、マスクを1つ以上のOLEDコーティングサイクルに使用してから洗浄してもよい。OLEDコーティング処理は全種類のコーティング方法、特にはPVD(物理気相蒸着)、CVD(化学気相蒸着)、PECVD(プラズマ化学気相蒸着)、気化法、スパッタリング等を含んでいてもよい。特に、基板をコーティングチャンバ内に配置し、有機発光半導体材料を含む層を基板上に堆積する工程は、パターニングデバイスをコーティングチャンバから取り外し、プラズマ洗浄処理を実行する前にn回繰り返してもよく、n=0、1、2、3・・・である。これは、マスクを運転毎又はn回の運転毎に洗浄することを意味している。
【0036】
パターニングデバイスは基板とコーティング材料の材料供給源との間に設置される。パターニングデバイスの設置とは、パターニングデバイスをコーティングチャンバ内に配置することを意味している。コーティング処理を開始する前に、パターニングデバイス及び/又は基板を互いに及び/又はコーティング材料供給源に対して整列させてもよい。
【0037】
少なくとも有機コーティング材料(OLED材料)を含む層がその上に堆積されたパターニングデバイスを洗浄するための本発明のシステムは、前記コーティング材料を前記パターニングデバイスからプラズマエッチング処理により除去するための洗浄プラズマを供給するためのプラズマ供給源を備えている。
【0038】
好ましくは、前記システムは前記パターニングデバイスの温度を120℃未満、特には100℃未満、特には80℃未満に維持するための手段を備えている。処理中、プラズマエッチング速度は少なくとも0.2μm/分、特には0.5μm/分、特には1μm/分、特には2.5μm/分、特には5μm/分に維持される。
【0039】
更に、前記システムは前記パターニングデバイスの温度を前記パターニングデバイスへの損傷を引き起こす臨界温度より低く維持するための手段を備えていることが好ましい。特に、有機分子をマスクから除去する過程において、前記パターニングデバイスの溶融温度を長時間に亘って越えることはない。
【0040】
前記プラズマ供給源は活性化ゾーンにおいて活性化ガスを活性化させる遠隔プラズマ供給源であってもよく、前記パターニングデバイスは前記エッチング処理中、前記プラズマ活性化ゾーンの外側に置かれる。活性化ガスは希ガス、O、H、NO等であってもよい。活性化ガス分子/原子は活性化ゾーン内で励起される。その後、活性化ガス分子/原子は混合・プラズマ発生ゾーンへと送られる。このゾーン内にて、活性化ガス分子/原子はエッチングガスと混合される。エッチングガスの原子/分子は活性化ガス原子/分子によって励起される。活性化ガス分子/原子及びエッチングガスの活性化された原子/分子がエッチングプラズマを構成する。混合・プラズマ発生ゾーンは、マスク表面の処理を目的として、マスク表面に隣接して位置されている。この実施形態において、活性化ゾーンは、洗浄処理中、活性化ゾーンとパターニングデバイスとの間の距離が活性化ゾーンで発生したイオンがその寿命の間にパターニングデバイスに衝突することを防ぐに十分なだけ大きくなるように、つまり洗浄システムの作動圧力が低すぎて活性化されたイオンがパターニングデバイスの表面には届かないだけ、パターニングデバイスから離れている。
【0041】
プラズマ供給源がパルスプラズマ供給源であることが好ましい。
【0042】
基板上に層系、好ましくは有機発光半導体材料(OLED材料)を含む少なくとも1つの層を含む層系を堆積するための本発明のコーティングシステムは、基板上にコーティング層を堆積するための少なくともコーティングチャンバと、コーティング粒子が前記基板の特定の表面領域上に堆積されるのを選択的及び/又は局所的に阻止して、少なくとも前記有機発光半導体材料を含む構造化層を形成するための少なくとも1つのパターニングデバイスと、上述したように前記パターニングデバイスを洗浄するためのシステムを備えている。
【0043】
好ましくは、前記パターニングデバイスを洗浄するためのシステムは、前記(真空)コーティングチャンバから分離したチャンバとして構成された(真空)洗浄チャンバを備えている。洗浄チャンバの圧力レベルはコーティングチャンバの圧力レベルと同一又は同様であってもよい。このため、圧力差の補正に時間を費やさなくてもよい。或いは、洗浄用システムを前記(真空)コーティングチャンバ内に設けてもよい。
【0044】
好ましい実施形態において、前記コーティングシステムはインライン式OLEDコーティングシステムである。
【具体的な実施形態の説明】
【0045】
図は本発明のマスク洗浄システム1を表している。この実施形態において、マスク洗浄システム1は遠隔プラズマ供給源を備えている。矢印Aで図示の活性化ガス又はガス混合物は活性化ゾーン2へと送られ、活性化ゾーン2は金属マスク3の表面とは離れて位置している。マスク3の表面にはプラズマエッチング処理にて除去しなくてはならない有機粒子が堆積している。活性化ガスAの原子/分子は、パルスRF又はマイクロ波放射線供給源(図示せず)によって供給されたパルスRF又はマイクロ波放射線Rによって活性化ゾーン2で活性化される。
【0046】
活性化後、矢印Aで示される活性化ガス原子/分子はマスク3の表面近くに又は隣接して位置する混合・励起ゾーン4に進入する。このゾーン4において、活性化された原子/分子Aは矢印Pで示される処理ガス分子/原子(エッチング分子/原子)と混合される。活性化された分子/原子Aによってゾーン4内で処理ガス原子/分子Pが励起され、エッチングプラズマがこのゾーン4で発生する。エッチングプラズマはマスク3の表面と接触しているため、マスク3をかなりの速度で洗浄する。使用済みのガス混合物は、矢印Eで示されるように、マスク3の表面から除去される。
【0047】
(a)プラズマがパルスプラズマである、(b)活性化ガスAの活性化がマスク3の表面から離れたゾーン2で行われるという事実により、金属マスク3の温度はマスク3への温度による損傷とそのエッチングが防止されるに十分な低さに維持される。
【0048】
本発明の更なるパラメータは、以下の実施例において開示する。
【実施例1】
【0049】
本発明の洗浄システムにおいては、有機材料、例えばAlq分子でコーティングされたシャドーマスクを真空チャンバ内に生じたプラズマゾーンに対して既定の距離を置いて載置する。
【0050】
システムはマスク洗浄用のエッチングプラズマを発生、維持するためのプラズマ発生供給源を備えている。この実施例において、プラズマ発生ガス混合物はSF/Oの混合物を流量200sccm〜400sccm(質量流量制御装置により設定)で含む。
【0051】
プラズマ発生供給源は2.45GHzのマイクロ波放射線を放射し、ガス/ガス混合物を解離してプラズマを発生させるマイクロ波供給源を備えている。電力は、周波数666Hzの6kW電力パルスで供給される。真空洗浄チャンバ内の総圧力は0.1mbarである。Alq分子はエッチング速度240nm/分でマスクから除去される。マスク温度は100℃未満に維持され、マスク温度上昇は数度にすぎず、金属マスクのエッチングは発生しない。
【0052】
エッチング処理は、直接プラズマ又は遠隔プラズマを用いて行うことができる。更なるエッチング処理は前記エッチング法と組み合わせても、連続的に行ってもよい。
【実施例2】
【0053】
CHF/Oのプラズマ発生ガス混合物を用いることで、非常に良好な結果が得られた。0.5μm/分に上るエッチング速度と1分未満のサイクル時間が、マスク温度の大きな上昇を招くことなく得られた。この結果、OLEDインライン式コーティング装置の連続運転を達成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
更なる目的及び利点は、図と関連した具体的な実施形態についての説明から得られる。
【0055】
【図1】本発明のマスク洗浄システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機コーティング材料(OLED材料)がその上に堆積されたパターニングデバイスを洗浄するための方法において、
前記パターニングデバイスから前記コーティング材料をプラズマエッチング処理によって除去するための洗浄プラズマを供給する工程を含むことを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する前記工程中、前記パターニングデバイスの温度が120℃、特には100℃、特には80℃を越えないことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する前記工程中、前記パターニングデバイスの温度が前記パターニングデバイスに損傷を引き起こす臨界温度を越えないことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する工程中、プラズマエッチング速度が少なくとも0.2μm/分、特には0.5μm/分、特には1μm/分、特には2.5μm/分、特には5μm/分に維持されることを特徴とする前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する際に使用する前記プラズマが、前記プラズマを発生させるための活性化ガスを活性化ゾーンで活性化させることで発生し、前記パターニングデバイスが前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する過程の間、前記活性化ゾーンの外側に置かれることを特徴とする前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する前記工程中に、パルスエネルギーを供給してパルス洗浄プラズマを発生させることを含むことを特徴とする前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記洗浄プラズマを、RF及び/又はHF及び/又はマイクロ波放射線をプラズマ活性化ゾーンに導入することで発生させることを特徴とする前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去する前記過程を洗浄チャンバ内で実行し、前記洗浄チャンバの内圧が10mbar未満、特には5mbar未満、特には1mbar未満、特には0.1mbar未満であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記方法をOLEDコーティングチャンバとは分離した洗浄チャンバ内で実行することを特徴とする前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄プラズマが、少なくとも酸素(O)とハロゲン化物含有分子との混合物から発生したプラズマであることを特徴とする前記請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
好ましくは有機発光半導体材料(OLED材料)を含む少なくとも1つの層を含む層系を基板上に堆積するための方法であり、
前記基板上に堆積するコーティング材料を供給するための供給源を有しているコーティングチャンバ内に前記基板を配置し、
パターニングデバイスを前記基板と前記供給源との間に設置し、
前記基板上に有機発光半導体材料を含む層を堆積し、
前記パターニングデバイスを前記コーティングチャンバから取り外し、前記パターニングデバイスを洗浄チャンバ内に配置し、
先行の請求項1〜10のいずれか1項記載の洗浄法を実行してコーティング材料を前記パターニングデバイスから除去する工程を含むことを特徴とする堆積方法。
【請求項12】
少なくとも有機コーティング材料(OLED材料)がその上に堆積されたパターニングデバイスを洗浄するためのシステムであり、プラズマエッチング処理により前記パターニングデバイスから前記コーティング材料を除去するための洗浄プラズマを供給するためのプラズマ供給源を備えているシステム。
【請求項13】
前記システムが前記パターニングデバイスの温度を120℃未満、特には100℃未満、特には80℃未満に維持するための手段を備えていることを特徴とする請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記システムが前記パターニングデバイスに損傷を引き起こす臨界温度より低い前記パターニングデバイスの温度を維持するための手段を備えていることを特徴とする請求項12又は13記載のシステム。
【請求項15】
前記プラズマ供給源が、少なくとも活性化ガスを活性化ゾーンで活性化する遠隔プラズマ供給源であり、前記パターニングデバイスが前記エッチング処理中、前記活性化ゾーンの外側に置かれることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項記載のシステム。
【請求項16】
前記プラズマ供給源がパルスプラズマ供給源であることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項記載のシステム。
【請求項17】
好ましくは有機発光半導体材料(OLED材料)を含む少なくとも1つの層を含む層系を基板上に堆積するためのコーティングシステムであり、
基板上にコーティング層を堆積するための少なくともコーティングチャンバと、
コーティング粒子が前記基板の特定の表面領域上に堆積されるのを選択的及び/又は局所的に阻止して、少なくとも前記有機発光半導体材料を含む構造化層を形成するための少なくとも1つのパターニングデバイスと、
先行の請求項12〜16のいずれか1項記載の前記パターニングデバイスを洗浄するためのシステムを備えているコーティングシステム。
【請求項18】
前記パターニングデバイスを洗浄するための前記システムが前記コーティングチャンバとは分離したチャンバとして構成された洗浄チャンバを備えていることを特徴とする請求項17記載のコーティングシステム。
【請求項19】
前記コーティングシステムがインライン式OLEDコーティングシステムであることを特徴とする請求項17又は18記載のコーティングシステム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−10350(P2009−10350A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−132880(P2008−132880)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】