説明

パターン配線、およびパターン配線の形成方法、並びに電気光学装置、電子機器

【課題】 所定領域内における膜厚分布の均一性が良好なパターン配線、およびその形成方法、並びに、当該パターン配線を備える電気光学装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】 下層バンク10で区画された区画領域内に、機能液50を充填し、乾燥工程を経て成膜を行う。主配線部領域40と電極部領域41との接続領域42は、電極部領域41の幅よりも狭く形成されており、この接続領域42における毛細管現象によって、電極部領域41内における機能液50の液位が均一化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン配線およびその形成方法、並びに電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気回路におけるパターン配線の形成において、液滴吐出法(インクジェット法)を用いた成膜技術が利用されるようになってきている。この成膜技術は、機能性材料を含んだ液状体(機能液)をインクジェットプリンタのような描画装置を用いて基板上にパターン配置し、当該配置された機能液を乾燥等させて膜化するものであり、プロセスが簡単であるなど大変有効であるとされている。例えば、特許文献1には、TFTアレイのパターン配線について、液滴吐出法を用いて形成する例が開示されている。
【0003】
特許文献1では、主配線部と電極部とを含むパターン配線(ゲート配線)の形成にあたり、図13に示すように、バンク301(ハッチング領域で図示)で区画領域302,303をあらかじめ形成しておき、液滴吐出法を用いて当該区画領域302,303内に機能液の充填を行うという方法を採用している。この方法によれば、描画装置だけではパターニング制御が困難な微細な配線であっても、高精度にパターニングを行うことが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2005−12181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の方法でパターン配線を形成する場合、電極部内における膜厚分布を均一化することが困難である。これは、機能液を充填する工程において、電極部に係る区画領域302内で、図のY軸方向に沿って液位の勾配が生じてしまうことが原因の一つとなっている。
【0006】
このような機能液の勾配を生じさせる原因は、電極部に係る区画領域302の非対称性によるものと考えられる。すなわち、当該区画領域302は、一端側の領域302aが開いた状態に、他端側の領域302bがバンク301で閉じられた状態になっているため、バンク内壁301aとの濡れの作用に関して当該領域302内でアンバランスが生じ、液位の勾配が発生するものである。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、所定領域内における膜厚分布の均一性が良好なパターン配線、およびその形成方法、並びに、当該パターン配線を備える電気光学装置、電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1領域と前記第1領域と接続する第2領域とを含んでなるパターンで、バンクで区画された区画領域内に形成されたパターン配線であって、前記第1領域と前記第2領域との接続領域が、当該第2領域よりも実質的に狭い幅とされていることを特徴とする。
【0009】
この発明のパターン配線は、第1領域と第2領域との接続領域が第2領域よりも狭い幅となるように形成されている。このような接続領域に係る区画領域は、第1領域と第2領域に係る区画領域を接続する流路としての役割を果たしながら、毛細管現象により濡れの作用に関して擬似的に区画の境界と同様の働きをなす。これにより、当該区画領域内における濡れの作用のバランスが均一化され、当該区画領域内に機能液を充填して成膜を行う場合において、第2領域内における膜厚分布が好適に均一化される。
【0010】
また好ましくは、前記機能性膜において、前記第2領域を挟んで前記接続領域と対向する位置に、前記接続領域と略同幅の付加領域を有することを特徴とする。
この発明のパターン配線は、第2領域の他端側に一端側の接続領域と略同幅の付加領域を備えているため、第2領域に係る区画領域の形状の対称性が良い。このため、当該区画領域内に機能液を充填して成膜を行う場合において、第2領域内における膜厚分布が好適に均一化される。
【0011】
本発明の電気光学装置は、前記パターン配線を備えることを特徴とする。
この発明の電気光学装置は、第2領域における膜厚分布の均一性が良好な上記パターン配線を備えているので、高品質である。
【0012】
本発明の電子機器は、前記電気光学装置を備えることを特徴とする。
この発明の電子機器は、上記電気光学装置を備えているので、高品質である。
【0013】
本発明は、第1領域と前記第1領域と接続する第2領域とを含んでなるパターンを有するパターン配線の形成方法であって、前記パターンに対応する区画領域をバンクで形成する区画工程と、前記区画領域内に機能液を充填する充填工程と、前記区画領域内に充填された機能液を膜化させる膜化工程と、を有し、前記区画工程において、前記第1領域と前記第2領域との接続領域に係る区画領域が、前記第2領域よりも実質的に狭い幅とされていることを特徴とする。
【0014】
この発明のパターン配線の形成方法では、第1領域と第2領域との接続領域に係る区画領域が、第2領域よりも実質的に狭い幅で形成されている。このような接続領域に係る区画領域は、第1領域と第2領域に係る区画領域を接続する流路としての役割を果たしながら、毛細管現象により濡れの作用に関して擬似的に区画の境界と同様の働きをなす。これにより、当該区画領域内における濡れの作用のバランスが均一化され、当該区画領域内に機能液を充填して成膜を行うことで、第2領域内において膜厚分布のムラが少ないパターン配線を形成することができる。
【0015】
また好ましくは、前記成膜方法において、前記充填工程は、液滴吐出法により行われることを特徴とする。
この発明のパターン配線の形成方法によれば、液滴吐出法を用いて、簡単なプロセスで上記パターン配線を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、以下の説明で参照する図では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材の縮尺は実際のものとは異なるように表している。
【0017】
(電気光学装置)
まずは、図1、図2、図3を参照して、本発明に係る電気光学装置について、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELとする)表示装置を例に説明する。図1は、有機EL表示装置の要部構成を示す断面図である。図2は、駆動回路部の要部構成を示す平面図である。図3は、TFT素子およびその周辺構造を示す図2のA−A断面図である。
【0018】
図1に示すように、電気光学装置100は、素子基板2と、素子基板2上に形成された駆動回路部101と、駆動回路部101上に形成された発光素子部102と、素子基板2と対向して駆動回路部101および発光素子部102を封止するための封止基板103と、を備えている。素子基板2には、透過性を有するガラス基板が好適に用いられる。また、封止基板103によって封止された封止空間104には、不活性ガスが充填されている。
【0019】
発光素子部102は、バンク120で区画された複数の区画領域を有しており、当該区画領域内に形成された発光素子121の個々が、画像を形成するための階調要素を構成している。バンク120は、アクリル樹脂やポリイミド樹脂などを用いて形成された区画構造体であり、基板面法線方向(図の上下方向)から見たときに、上記区画領域が所定の配列をなすようにパターン形成されている。また、バンク120と駆動回路部101との間には、階調要素間の干渉を防ぐための遮光膜125が、クロムやその酸化物等で形成されている。
【0020】
発光素子121は、駆動回路部101の出力端子であるセグメント電極(陽極)7と、共通電極(陰極)124との間に、正孔輸送膜122と有機EL膜123とが積層されて構成されている。
【0021】
セグメント電極7には、インジウム錫酸化物(ITO)などの光透過性の導電材料が、共通電極124には、カルシウム金属層とそれを保護する銀−マグネシウム合金層の三層膜などが用いられている。正孔輸送膜122は、有機EL膜123に正孔を注入するための役割を果たしており、ポリチオフェン誘導体のドーピング体(以下、PEDOTとする)などの高分子導電体で形成されている。有機EL膜123には、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の有機EL材料、例えば、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体などが用いられている。
【0022】
上述の構成において、駆動回路部101を介した駆動制御によりセグメント電極7と共通電極124との間に電圧が印加されると、正孔輸送膜122から有機EL膜123に正孔が注入され、当該正孔が共通電極124側からの電子と結合して発光する。この発光は正孔輸送膜122と有機EL膜123の界面付近で発生する。
【0023】
尚、図1に示す発光素子121の構成に加えて、有機EL膜123とセグメント電極7との間に、オキサジアゾール誘導体等から成る電子輸送膜を備えるようにしてもよい。この電子輸送膜は、有機EL膜123に電子を注入するためのものである。
【0024】
図2に示すように、駆動回路部101は、平面構造的には、素子基板2(図1参照)上にマトリクス状に配されたパターン配線としてのゲート配線3およびソース配線4と、両配線3,4の交差領域付近に形成されたTFT素子1と、を備えている。
【0025】
ゲート配線3は、X軸方向に伸長する第1領域としての主配線部3aと、主配線部3aと直交して袋小路に形成された第2領域としてのゲート電極部3bと、を備えている。主配線部3aは、ソース配線4と交差する領域がくびれて形成されており、これは、当該交差領域に発生する配線間容量を小さく抑えるための措置である。また、主配線部3aとゲート電極部3bとの接続領域3cは、ゲート電極部3bよりも狭い幅とされている。
【0026】
ソース配線4は、ゲート配線3と直交してY軸方向に伸長する主配線部4aと、主配線部4aと直交して袋小路状に形成されたソース電極部4bと、を備えている。主配線部4aは、ゲート配線3と交差する領域がくびれて形成されており、これは、当該交差領域に発生する配線間容量を小さく抑えるための措置である。
【0027】
TFT素子1は、シリコン膜5と、ゲート電極部3bと、ソース電極部4bと、ドレイン電極6とを備えている。ドレイン電極6は、スルーホール17(図3参照)を介して上述したセグメント電極7と接続されており、この構成において、ゲート配線3に走査信号が、ソース配線4に階調信号が供給されて、セグメント電極7についての供給電圧制御が行われる。
【0028】
図3に示すように、駆動回路部101は、断面構造的には、素子基板2の表面に形成された下層バンク10と、下層バンク10で区画された区画領域内に形成されたゲート配線3と、ゲート配線3を被覆する絶縁層11と、を備えている。下層バンク10は、上述したバンク120(図1参照)と同様の手法で形成される。また、絶縁層11は、CVD法などを用いて窒化シリコン等で形成されている。
【0029】
ゲート配線3は、図示するように三層膜となっており、最下層がMn、中間層がAg、最上層がNiで形成されている。ここで、最下層(Mn層)は素子基板2の表面との密着性向上のための下地層としての、中間層(Ag層)は導電層としての、最上層(Ni層)は、絶縁層11との界面拡散を抑えるためのバリア層としての役割を、それぞれ担うものである。これらの各層は、液滴吐出法を用いて下層から順番に形成される。
【0030】
駆動回路部101は、絶縁層11上に、上層バンク16と、ソース配線4と、ドレイン電極6と、絶縁層11を介してゲート電極部3bと対向するシリコン膜5と、ソース配線4およびドレイン電極6を被覆する絶縁層15と、ドレイン電極6から絶縁層15の上面までを貫通するスルーホール17と、を備えている。
【0031】
シリコン膜5は、アモルファスシリコンからなるチャネル層12と、平面視方向において所定の間隙を介して対向するn+型アモルファスシリコンからなる接合層13,13と、を備えている。そして、接合層13,13には、ソース電極部4b、ドレイン電極6がそれぞれ接続されている。
【0032】
ソース配線4およびドレイン電極6は、図示するように三層膜となっており、最下層および最上層がNi、中間層がAgで形成されている。ここで、中間層(Ag層)は導電層としての、最下層ないし最上層(Ni層)は絶縁層11,15との界面拡散を抑えるためのバリア層としての役割を、それぞれ担うものである。
【0033】
シリコン膜5は、絶縁層11上に、CVD法とフォトリソグラフィ法を用いて形成される。ソース配線4およびドレイン電極6は、上層バンク16およびチャネルバンク14で区画された区画領域内に、液滴吐出法を用いて形成される。尚、チャネルバンク14は、接合層13,13間の間隙領域に一時的に形成されるバンクであって、後に除去される。
【0034】
(液滴吐出装置)
次に、図4を参照して、液滴吐出法において用いる液滴吐出装置について説明する。図4は、液滴吐出装置の構成の一例を示す模式図である。
【0035】
図4において、液滴吐出装置200は、一面に複数のノズル212を配した吐出ヘッド201と、吐出ヘッド201と対向する位置に基板202を載置するための載置台203とを備えている。また、吐出ヘッド201を、基板202との距離を保ったまま縦横に移動(走査)させる走査手段204と、吐出ヘッド201に機能液を供給する機能液供給手段205と、吐出ヘッド201の吐出制御を行う吐出制御手段206と、を備えている。
【0036】
吐出ヘッド201には、複数に枝分かれした微細な流路が形成されており、当該流路の端部は、圧力室(キャビティ)211、ノズル212となっている。圧力室211の外郭の一面は、圧電素子210によって変形可能となっており、吐出制御手段206からの駆動信号によって圧力室211内に圧力を発生させることで、ノズル212から液滴213が吐出される。尚、吐出技術としては、この例のような電気機械方式の他に、電気信号を熱に変換して圧力を発生させるいわゆるサーマル方式などもある。
【0037】
上述の構成において、吐出ヘッド201の走査と同期したノズル212毎の吐出制御を行うことにより、基板202上に所望のパターンで機能液を配置することが可能となっている。尚、液滴吐出装置200は、一走査中において複数種の機能液を吐出可能なように構成することもできる。
【0038】
(ゲート配線の形成方法)
次に、図3、図5、図6、図7、図8を参照してゲート配線の形成方法について説明する。図5は、ゲート配線の形成工程を示すフローチャートである。図6は、ゲート配線の形成工程の一過程を示す平面図である。図7は、ゲート配線の形成工程の一過程を示す平面図である。図8は、図7(d)のB−B断面図である。
【0039】
まずは、ゲート配線3を形成するための機能液として、導電性材料を微粒子化して分散媒中に分散させたもの、本実施形態では、ゲート配線3の各層に対応して、Mn,Ag,Niの各分散液が用意される。これらの材料の微粒子は、分散性を向上させるためその表面に有機物(クエン酸など)をコーティングして用いることもできる。
【0040】
機能液を構成する分散媒は、上述の微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。具体的には、水の他に、メタノール、エタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、トルエンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系化合物、更にプロピレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドンなどの極性化合物を挙げることができる。これらは、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用することができる。
【0041】
また、機能液は、液滴吐出装置200(図4参照)における吐出特性や目詰まり性、分散の安定性、吐出後における基板上での動的特性や乾燥速度などに鑑みて、分散媒の蒸気圧、分散質濃度、表面張力、粘度、比重などについて適切な調整がされている。このため、機能液には、界面活性剤や保湿剤、粘度調整剤などを添加することができる。
【0042】
ゲート配線3は、素子基板2上に下層バンク10を形成して所定の区画領域を設け(図5の区画工程S1〜S4)、当該区画領域内への機能液を充填(図5の工程S5,S7,S9)し、乾燥(焼成)により当該機能液を膜化させて(図5の工程S6,S8,S10)得られる。以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
【0043】
工程S1では、下層バンク10の基礎となるレジスト層を、スピンコート法等を用いて素子基板2上の全面に形成し、所定のパターンのマスクを用いて露光処理を行う。
【0044】
工程S2では、上記レジスト層の表面に対して、テトラフルオロメタン(CF4)プラズマ処理などにより撥液化処理を行う。この処理により、レジスト層の表面にフッ素基が導入され、当該表面は撥液性を有するようになる。
【0045】
工程S3では、エッチングによりレジスト層の所定領域(上記露光処理におけるマスクパターンに対応する領域)を除去し、図6(a)に示すような下層バンク10(ハッチング領域で図示)を形成する。下層バンク10によって区画された区画領域は、図示するように、主配線部3a(図2参照)に対応する主配線部領域40と、ゲート電極部3b(図2参照)に対応する電極部領域41と、主配線部領域40と電極部領域41との接続領域42とから構成されている。また、主配線部領域40は、比較的幅の広い幅広領域40aと、ソース配線4(図2参照)との交差領域において幅が狭められた幅狭領域40bとから構成されている。
【0046】
本実施形態においては、幅広領域40aは幅25μmの矩形領域、電極部領域41は幅10μmの矩形領域とされている。また、接続領域42は、幅5μm×長さ5μmの正方領域とされている。
【0047】
工程S4では、素子基板2(図2参照)の上面側に対して、紫外線照射処理や酸素プラズマ処理などによる清浄化処理を行う。この清浄化処理によって、工程S3で除去できなかったレジスト層の残渣が除去され、区画領域内において露出された基板表面や下層バンク10の内壁面が親液化される。
【0048】
充填工程S5では、図6(b)に示すように、液滴吐出法により、幅広領域40aに液滴状態の機能液50を所定間隔で滴下する。このとき、区画領域を外れて下層バンク10の上面に滴下された機能液50は、当該上面の撥液性によって区画領域内に誘導される。また、幅広領域40aに滴下された機能液50は、図7(c)に示すように、幅狭領域40b、接続領域42、電極部領域41の各領域に濡れ広がり、さらに図7(d)に示すように区画領域全体に充填される。
【0049】
図8に示すように、電極部領域41内における機能液50の液面51は、接続領域42付近における一端側領域41aや、バンク内壁面10aとの境界における他端側領域41bにおいて、やや高くなっている。他端側領域41bにおいて液面51が高くなっているのは、バンク内壁面10aとの濡れによるためであり、また、一端側領域41aにおいて液面51が高くなっているのは、バンク内壁面10b,10cとの濡れによるためである。
【0050】
図8に仮想線で示すのは、従来技術に係る機能液50の液面の状態である。接続領域42の幅が電極部領域41と同幅とされている従来技術においては、バンク内壁面との濡れの影響が接続領域42近傍において十分に及ばず、図示するような傾いた液面の状態となる。
【0051】
上述の説明からわかるように、本実施形態にあっては、バンク内壁面10b,10cとの濡れ現象(毛細管現象)によって、接続領域42が擬似的に区画の境界と同様の働きをなし、一端側領域41aから他端側領域41bにかけての液面51の液位バランスが好適に平衡化される。かくして、次の工程S6を経て、電極部領域41内で膜厚が好適に均一化された膜を得ることができる。
【0052】
膜化工程S6では、乾燥処理により機能液50中の揮発成分を除去し、区画領域内の機能液50を膜化させる。乾燥処理は、ホットプレート等による加熱処理や、減圧乾燥処理によるものの他、ランプアニールよっても行うことができる。
【0053】
充填工程S7、膜化工程S8によるゲート配線3の中間層(Ag層)の形成、充填工程S9、膜化工程S10によるゲート配線3の最上層(Ni層)の形成は、上述した充填工程S5、膜化工程S6と同様の手順で行われる。尚、膜化工程S10は、Mn,Ag,Niの各微粒子間の電気的接触を良くするために残留する揮発成分を完全に除去する必要があるため、高温での焼成処理によって行われる。
【0054】
かくして、上述の工程S1〜S10を経て形成されたゲート配線3は、ゲート電極部3bに係る膜厚の均一性が良好であり、また、このようなゲート配線3を備えるTFT素子1は、優れた動作特性を示す。さらに、このようなTFT素子1を備える電気光学装置100(図1参照)は、優れた表示特性を示す。
【0055】
(電子機器)
次に、図9を参照して、電子機器の具体例を説明する。図9は、電子機器の一例を示す概略斜視図である。
【0056】
図9に示す電子機器としての携帯型情報処理装置700は、キーボード701と、本体部703と、表示部702と、を備えている。このような携帯型情報処理装置700のより具体的な例は、ワープロ、パソコンである。この携帯型情報処理装置700は、表示部702として上記の電気光学装置100(図1参照)を備えており、高性能である。
【0057】
(変形例1)
次に、図10を参照して、本発明の変形例1について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。図10は、変形例1に係る区画領域を示す平面図である。
【0058】
変形例1におけるゲート配線に係る区画領域は、主配線部領域40と、電極部領域41と、接続領域42と、付加領域43と、から構成されている。付加領域43は、電極部領域41を挟んで接続領域42と対向する位置に形成された、当該接続領域42と同幅の区画領域である。このような付加領域43を設けることにより、電極部領域41に係る区画領域形状の対称性が良くなるので、機能液が充填された際の液位の均一性をさらに向上させることができる。
【0059】
(変形例2)
次に、図11を参照して、本発明の変形例2について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。図11は、変形例2に係る区画領域を示す平面図である。
図示するように、変形例2に係る接続領域44は、平面視方向でL字状に屈曲して形成されており、電極部領域41の長辺側において接続されている。
【0060】
(変形例3)
次に、図12を参照して、本発明の変形例3について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。図12は、変形例3に係る区画領域を示す平面図である。
図示するように、変形例3に係る接続領域45は幅が一様ではなく、平面視方向でV字状にされたバンク内壁を有している。
【0061】
変形例2や変形例3のように、接続領域に係る形状や位置は、本発明の趣旨を変えない範囲で自由な変更が可能である。
【0062】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば、ソース配線4について、主配線部4aとソース電極部4bとの接続領域をソース電極部4bよりも実質的に狭い幅とすることで、上述のゲート配線3の場合と同様の効果を得ることができる。
また、各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略したり、図示しない他の構成と組み合わせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】有機EL表示装置の要部構成を示す断面図。
【図2】駆動回路部の要部構成を示す平面図。
【図3】TFT素子およびその周辺構造を示す図2のA−A断面図。
【図4】液滴吐出装置の構成の一例を示す模式図。
【図5】ゲート配線の形成工程を示すフローチャート。
【図6】ゲート配線の形成工程の一過程を示す平面図。
【図7】ゲート配線の形成工程の一過程を示す平面図。
【図8】図7(d)のB−B断面図。
【図9】電子機器の一例を示す概略斜視図。
【図10】変形例1に係る区画領域を示す平面図。
【図11】変形例2に係る区画領域を示す平面図。
【図12】変形例3に係る区画領域を示す平面図。
【図13】従来技術におけるパターン配線の区画領域を示す平面図。
【符号の説明】
【0064】
1…TFT素子、2…素子基板、3…パターン配線としてのゲート配線、3a…第1領域としての主配線部、3b…第2領域としてのゲート電極部、3c…接続領域、4…パターン配線としてのソース配線、4a…主配線部、4b…ソース電極部、5…シリコン膜、6…ドレイン電極、7…セグメント電極、10…下層バンク、10a〜10c…バンク内壁面、11…絶縁層、12…チャネル層、13…接合層、14…チャネルバンク、15…絶縁層、16…上層バンク、17…スルーホール、40…主配線部領域、40a…幅広領域、40b…幅狭領域、41…電極部領域、41a…一端側領域、41b…他端側領域、42…接続領域、43…付加領域、44…接続領域、45…接続領域、50…機能液、51…液面、100…電気光学装置、101…駆動回路部、102…発光素子部、103…封止基板、104…封止空間、120…バンク、121…発光素子、122…正孔輸送膜、123…有機EL膜、124…共通電極、125…遮光膜、700…携帯型情報処理装置、701…キーボード、702…表示部、703…本体部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と前記第1領域と接続する第2領域とを含んでなるパターンで、バンクで区画された区画領域内に形成されたパターン配線であって、
前記第1領域と前記第2領域との接続領域が、当該第2領域よりも実質的に狭い幅とされていることを特徴とするパターン配線。
【請求項2】
前記第2領域を挟んで前記接続領域と対向する位置に、前記接続領域と略同幅の付加領域を有することを特徴とする請求項1に記載のパターン配線。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパターン配線を備える電気光学装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学装置を備える電子機器。
【請求項5】
第1領域と前記第1領域と接続する第2領域とを含んでなるパターンを有するパターン配線の形成方法であって、
前記パターンに対応する区画領域をバンクで形成する区画工程と、
前記区画領域内に機能液を充填する充填工程と、
前記区画領域内に充填された機能液を膜化させる膜化工程と、を有し、
前記区画工程において、前記第1領域と前記第2領域との接続領域に係る区画領域が、前記第2領域よりも実質的に狭い幅とされていることを特徴とするパターン配線の形成方法。
【請求項6】
前記充填工程は、液滴吐出法により行われることを特徴とする請求項5に記載のパターン配線の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−95729(P2007−95729A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279255(P2005−279255)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】