プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
【課題】被処理材に到達する荷電粒子を十分に抑制したうえで、ラジカルのみを効率的に供給できるリモート式のプラズマ処理装置とプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、前記一対の電極のうち第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、前記一対の電極のうち第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われている。
【解決手段】前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、前記一対の電極のうち第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、前記一対の電極のうち第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電によって発生した活性粒子を、放電領域の外側に配置された処理室に供給することで、被処理材を処理するプラズマ処理装置、及びプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化、高機能化に伴い、半導体製造工程の中核を担うプラズマプロセスにおける荷電粒子の影響が問題となっている。プラズマ中に被処理基板を配置する一般的なプラズマ処理装置においては、高エネルギーイオン衝突による基板損傷、基板チャージアップによるデバイス特性のばらつきなどが問題となっている。そこで、基板に到達する荷電粒子を抑制し、電気的に中性な活性粒子(以下、ラジカルと記載)のみによるプロセスの実現が重要な課題となっている。
【0003】
一方、半導体デバイスの生産性向上と製造コスト削減の観点から、基板サイズは年々増加傾向にある。また、液晶テレビに代表されるフラットパネルディスプレイの大型化や、太陽電池の普及に伴い、メートル級の大型基板の処理が必要となっている。これに伴い、大面積の均一処理を可能とするプラズマ処理方法が求められている。これらの課題を解決する手段として、プラズマ発生部と基板処理部を多孔板などで分離するリモートプラズマプロセスや、大気圧近傍放電を用いて基板を処理する大気圧プラズマプロセスが注目されている。
【0004】
そこで、プラズマ生成領域と基板処理領域を、ラジカル通過孔を有する閉じ込め電極により分離するプラズマCVD装置が提案されている。このプラズマCVD装置においては、酸素プラズマ生成領域と基板処理領域が、プラズマ閉じ込め多孔板によって仕切られている。そして、高周波放電によりプラズマを生起し、発生した酸素ラジカルを、プラズマ閉じ込め多孔板を通して基板処理領域に供給している。プラズマ閉じ込め多孔板は中空構造であり、その内部からモノシランガスを供給することで酸素ラジカルと反応させ、基板上に酸化シリコン膜を形成する。このとき、プラズマ閉じ込め多孔板に形成された細孔によりガス流のコンダクタンスを制限することで、プラズマ生成領域の圧力を基板処理領域の圧力よりも高く保持する。
【0005】
このプラズマCVD装置によれば、プラズマ閉じ込め多孔板が荷電粒子の通過を抑制するため、基板に到達する荷電粒子数が低減される。さらに、処理領域の圧力がプラズマ生成領域の圧力より低いため、モノシランガスがプラズマ領域に拡散せず、形成される酸化シリコン膜の膜質が向上するという効果がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、大気圧近傍放電を用いたリモートプラズマプロセス装置が提案されている。このリモートプラズマプロセス装置においては、誘電体を介して対向する高圧電極と接地電極の間に電圧を印加することで、大気圧近傍で放電プラズマを発生させる。接地電極には多数のガス噴出し部が設けられており、放電プラズマで生成した反応ガスを被処理基材に照射することで、洗浄、改質処理を行なう。
【0007】
そして、このリモートプラズマプロセス装置においては、大気圧近傍のリモートプラズマ処理であるため、反応ガス中の荷電粒子の多くは被処理基材に到達する前に消失し、荷電粒子によるダメージを抑制することができる。また、ガス噴出し部を多数設けたことで、大型基板の均一な処理が可能となる(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、数Torr程度の圧力で動作する誘電体バリア放電型プラズマ発生部と、真空チャンバーを組み合わせたプラズマ処理装置が提案されている。このプラズマ処理装置においては、ガラス管の外周に形成された金属電極と、ガラス管端部に接続されるノズル付きの金属電極の間に交流電圧を印加し、ガラス管内部で放電を発生させる。ノズルの出口側は真空チャンバーに接続されており、ノズルによりガス流のコンダクタンスを制限するとともに、真空チャンバー側から真空排気することで、放電部を数102Paに保持し、真空チャンバー内を10−3Pa程度の高真空まで減圧する。
【0009】
そして、このプラズマ処理装置によれば、真空チャンバー内の圧力を放電部より低くすることで、放電部で発生したラジカルを効率的に引き出すことが可能となる。また、真空チャンバー内は高真空に保持されているため、輸送に伴うラジカルの減衰を抑制できる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3366301号明細書
【特許文献2】特開2007−26981号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】田中正明、他3名、「無声放電式活性酸素発生機と酸化薄膜形成に於ける酸化力」、電学論A、2007年、第127巻、第2号、p.66
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来技術には以下のような問題がある。すなわち、特許文献1に記載されるプラズマCVD装置では、真空下でプラズマを発生させるため、ガス密度が低く荷電粒子の衝突頻度が低いため、荷電粒子の寿命が長い。従って一部の荷電粒子はプラズマ閉じ込め多孔板を通過し、基板まで到達する。
【0013】
また、特許文献2に記載される大気圧プラズマ処理装置においては、空間での粒子間の衝突頻度が高く、再結合やクエンチング反応によるラジカルの失活速度が極めて高い。さらに、活性ガスが、狭い流路からなる噴出し孔を通過する際、流路を形成する壁面との接触によりラジカルが失活する。従って、被処理材に到達するまでにラジカルの数が大幅に減衰し、効率の悪いプロセスとなる。
【0014】
また、非特許文献1に記載されるプラズマ処理装置を用いて大面積基板を処理するには、ガラス管を太くしてノズルを多数形成するか、細い放電管を多数用いる必要がある。前者の場合、管壁付近のプラズマ密度が高く、中心付近の密度が低くなるため、ラジカルフラックスが不均一になる。後者の場合、多数の放電管を配置したうえで、それぞれに所定量のガスを供給し、給電する必要が生じることから、組み立ての手間や装置コストを考慮すると現実的ではない。
【0015】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、被処理材に到達する荷電粒子を十分に抑制したうえで、ラジカルのみを効率的に供給できるリモート式のプラズマ処理装置とプラズマ処理方法を提供することである。また別の目的は、大面積基板を均一に処理可能なリモート式のプラズマ処理装置とプラズマ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係るプラズマ処理装置は、内部に一対の電極を有する放電部が、内部に被処理材を設置する処理室に、複数の貫通孔を有する仕切り板を介して接続され、前記放電部に接続されたガス供給手段から前記放電部にガスが供給され、前記処理室に接続された真空ポンプにより前記処理室からガスが排気され、前記一対の電極に電圧が印加されて放電が生起され、前記放電により生じた活性粒子が前記処理室に供給されることで前記被処理材を処理するプラズマ処理装置であって、前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、前記一対の電極のうち第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、前記一対の電極のうち第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われている。
【0017】
また、この発明に係る別のプラズマ処理装置は、内部に複数の対の電極を有する放電部が、内部に被処理材を設置する処理室に、複数の貫通孔を有する仕切り板を介して接続され、前記放電部に接続されたガス供給手段から前記放電部にガスが供給され、前記処理室に接続された真空ポンプにより前記処理室からガスが排気され、前記複数の対の電極に電圧が印加されて放電を生起させ、前記放電により生じた活性粒子が前記処理室に供給されることで前記被処理材を処理するプラズマ処理装置であって、前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、前記複数の対の電極のそれぞれの第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、前記複数の対の電極のそれぞれの第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われている。
【0018】
また、この発明に係るプラズマ処理方法は、処理室の内部に被処理材を配置し、放電部の内部にガス供給手段からガスを供給し、上記放電部の内部に設置された一対の電極に電圧を印加して放電を生起し、前記処理室に接続された真空ポンプにより上記処理室のガスを排気して前記放電により生じた活性粒子を仕切り板に設けられた複数の貫通孔を通過させて上記処理室に供給して上記被処理材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、前記放電部の圧力を大気圧近傍に維持し、前記処理室の圧力を前記放電部の圧力より低く維持し、前記一対の電極のうち第一電極を、内面が誘電体で覆われた細孔が前記複数の貫通孔に連なるようにしながら誘電体で覆われた面の反対の面を前記仕切り板に重ね合わせて気密接続し、前記一対の電極のうち第二電極を、誘電体で覆われた面が前記第一電極の誘電体に覆われた面に所定の空隙を介して対向するようにして配置する。
【0019】
また、この発明に係る別のプラズマ処理方法は、処理室の内部に被処理材を配置し、放電部の内部にガス供給手段からガスを供給し、上記放電部の内部に設置された複数の対の電極に電圧を印加して放電を生起し、前記処理室に接続された真空ポンプにより上記処理室のガスを排気して前記放電により生じた活性粒子を仕切り板に設けられた複数の貫通孔を通過させて上記処理室に供給して上記被処理材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、前記放電部の圧力を大気圧近傍に維持し、前記処理室の圧力を前記放電部の圧力より低く維持し、前記複数の対の電極のうち第一電極を、内面が誘電体で覆われた細孔が前記複数の貫通孔に連なるようにしながら誘電体で覆われた面の反対の面を前記仕切り板に重ね合わせて気密接続し、前記複数の対の電極のうち第二電極を、誘電体で覆われた面が前記第一電極の誘電体に覆われた面に所定の空隙を介して対向するようにして配置する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、放電部を大気圧近傍、処理室の圧力を放電部の圧力以下としたことで、被処理材に到達する荷電粒子の数を一般的なプラズマプロセス装置と比べて大幅に低減でき、有用な活性粒子を効率的に被処理材まで輸送できる。
また、放電部と処理室の圧力差は、第一電極が有する細孔によって形成され、且つ細孔の内面が誘電体で被覆されているため、細孔通過時の活性粒子の消滅が抑制され、効率的に被処理材まで輸送される。
また、放電部で生じた活性粒子が細孔を通過する際に、圧力差により急速に拡散するため、別途シャワープレートなどを設置しなくても、大型の被処理材を均一性良く処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置を示す斜視図である。
【図3】窒素原子の空間再結合速度の圧力依存性を示す図である。
【図4】窒素原子の表面再結合速度の材料依存性を示す図である。
【図5】窒素原子の表面再結合速度の材料面粗度依存性を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るプラズマ処理装置を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係るプラズマ処理装置を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態4に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態5に係るプラズマ処理装置を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態6に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態7に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態8に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図13】アルミナ表面での窒素原子の再結合速度の温度依存性を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態9に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態10に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態11に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態12に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のプラズマ処理装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、チャンバー1は、複数の貫通孔11を有する仕切り板2によって放電部3と処理室4とに隔てられている。放電部3にはガス供給手段5が、処理室4には真空ポンプ6がそれぞれ接続されている。
放電部3には一対の電極、すなわち第一電極7と第二電極8が、所定の距離の空隙9を介して対向して配置されている。そして、第一電極7は仕切り板2の放電部3に面する表面に重ねて配置されている。第一電極7には複数の細孔10が形成されている。
【0023】
チャンバー1と仕切り板2、及び仕切り板2と第一電極7は、それぞれ気密接続され、チャンバー1と仕切り板2はいずれも電気的に接地されている。
第二電極8の空隙9と反対側の表面には導電層12が形成され、導電層12には交流高電圧電源13が接続されている。
処理室4の内部にはサセプタ14が配置され、サセプタ14の上には被処理材である基板15が仕切り板2と平行になるように置かれている。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の第一電極7、第二電極8、及び仕切り板2を示す斜視図である。
以下、図2を参照して実施の形態1に係るプラズマ処理装置の放電部3の構造を説明する。
第二電極8は円盤形状の1枚のアルミナセラミックにより構成され、空隙9に対して反対側の面の、外縁部を除いた領域には導電層12が形成されている。
第一電極7は円盤形状の一枚のアルミナセラミックにより構成され、複数の細孔10が形成されている。
第一電極7と第二電極8の間には、図1において記載を省略した所定の厚さを有するスペーサー20が4箇所に配置され、空隙9の距離を決めている。
第一電極7は、仕切り板2に重ねて配置され、両者は気密接続されており、仕切り板2には、第一電極7に形成された細孔10と中心軸を同じくする位置に貫通孔11が形成されている。貫通孔11の孔径は、第一電極7に面する表面においては細孔10の孔径より大きく、第一電極7から遠ざかるに従ってその径が増加するテーパー構造となっている。
【0025】
次に、図1を用いて実施の形態1に係るプラズマ処理装置の動作を説明する。ここでは、窒素ガスを原料として、放電により原子状窒素(以下、「N原子」と称する)を発生させ、N原子を基板15に接触させることで窒化処理を行なう場合について説明する。
【0026】
図1において、ガス供給手段5から放電部3に、毎分1リットル程度の流量で窒素ガスを供給するとともに、真空ポンプ6により処理室4から毎分約760リットルの速度で排気する。第一電極7に形成された細孔10の直径は0.1mmであり、細孔数は13個である。この条件においては、排気ガス流量が供給ガス流量よりも多く、且つ細孔10によってガス流のコンダクタンスが制限されるため、処理室4の圧力が放電部3の圧力よりも低く保持される。具体的には、放電部3の圧力が1.0×105Pa程度(大気圧近傍)、処理室4の圧力が1.3×102Pa程度となる。このとき、圧力差によって生じる応力は、仕切り板2の有する機械強度によって保持される。従って、ガス流のコンダクタンスを第一電極7の細孔10で制御し、圧力差で生じる応力は仕切り板2で保持する構造となっている。
【0027】
放電部3に供給された窒素ガスは、第一電極7と第二電極8の外周部より空隙9内に流れ込む。導電層12に交流の高電圧を印加することで、空隙9に誘電体バリア放電を生起させ、N原子を発生させる。発生したN原子は、細孔10及び貫通孔11を通って処理室4に供給され、基板15に触れることで窒化処理を行なう。
【0028】
本実施の形態1に係るプラズマ処理装置によれば、基板15に到達する荷電粒子数を大幅に抑制するとともに、窒化に有用なN原子のみを効率的に基板15に照射することができる。以下、基板15に到達する荷電粒子を抑制できる理由を説明する。
一般に大気圧近傍の誘電体バリア放電において、放電場の荷電粒子密度は、時間、空間平均値として109乃至1011(cm−3)である。また、大気圧近傍での電子の平均自由行程は1μm以下であり、放電場を通過した後の荷電粒子は、頻繁な粒子間衝突に伴う再結合により急速に消滅する。従って本実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、放電場を出たガスが細孔10を通過するまでの間に、荷電粒子密度が大幅に減少する。
【0029】
さらに、処理室4の圧力が放電部3の圧力の760分の1程度であることから、細孔10を通過する前の荷電粒子密度は、細孔10を通過した後には少なくとも760分の1に低下する。以上の機構により、基板15に到達する荷電粒子の密度は、最大でも106(cm−3)程度まで低減する。なお、プラズマプロセスに広く用いられる容量結合型プラズマの荷電粒子密度は1010(cm−3)程度であるから、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置では荷電粒子が大幅に抑制されることになる。
【0030】
次に、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、N原子を効率的に基板に照射される理由を説明する。
大気圧近傍の誘電体バリア放電では、窒素分子が高エネルギー電子と衝突して解離されることで、N原子が生成される。生成されたN原子は空間再結合や、電極や輸送部壁面での表面再結合により消滅する。放電場では、N原子の生成と消滅が同時に進行し、両者の釣り合いによって正味のN原子発生密度が決まる。一般に大気圧近傍の誘電体バリア放電では、最大で1015(cm−3)程度のN原子を発生できる。
一方、放電場から取り出されたN原子密度は、空間再結合、及び表面再結合に伴い時間と共に減少する。従って、放電場と処理室が分離したリモートプラズマプロセスによる窒化処理においては、N原子の空間再結合と表面再結合を抑制し、高い密度で基板に照射することが重要となる。
【0031】
まず、空間再結合によるN原子の減衰について説明する。空間再結合の反応レートは式(1)で示される。ここで、LV(cm−3s−1)は、単位体積、単位時間当たりに起こる反応回数、kr(cm6/s)は反応速度係数(4.4×10−33)、[N](cm−3)はN原子密度、[N2](cm−3)は窒素分子密度である。
【0032】
【数1】
【0033】
図3は、式(1)に基づいて計算した空間再結合によるN原子密度減衰特性の圧力依存性を示す。
図3の破線で示すとおり、圧力が1.0×105Paにおいては、初期密度1×1015(cm−3)から100ミリ秒後にはN原子密度が20分の1程度まで減少する。従って、大気圧においてリモートプラズマプロセスを実施する場合、基板15に到達する前にN原子密度が大幅に減少し、極めて効率の悪いプロセスとなる。
一方、図3の実線で示すとおり、圧力が1.0×103Paにおいては、100ミリ秒の間にN原子密度に大きな減衰は生じない。これは、減圧下では式(1)の窒素分子密度が少ないためである。つまり、実施の形態1に係るプラズマ処理装置のように、処理室4を減圧することで、N原子の空間再結合を抑制し、効率的に輸送することができる。
【0034】
次に、表面再結合によるN原子の減衰について説明する。放電で発生したN原子の一部は、粒子拡散によって電極表面やラジカル輸送部に露出した固体表面に到達し、その一部が式(2)で示される表面再結合反応によって失われる。ここで、式(2)中のSは固体表面を表す。
【0035】
【数2】
【0036】
当該発明者等は、式(2)の反応速度が固体材料に大きく依存することを、大気圧下の実験により確認した。以下に実験の概要と結果を説明する。
誘電体バリア放電型のN原子発生装置の下流に、所定の断面積のガス流路を有する表面損失評価装置を取り付け、N原子の減衰速度を比較した。ガス流路の形状は、幅20mm、高さ1mmとし、流路を構成する材料を変え、ガス流方向に複数箇所でN原子密度を測定することで、N原子の減衰速度を比較した。
この実験において、例えば「G.Oinuma他著,「Method for real−time measurement of nitrogen atom density in atmospheric pressure post−discharge flows」,J.Phys.D:Appl.Phys.41,155204,2008」に示されたNO混合による間接測定法を用いてN原子密度を測定した。
【0037】
図4に、N原子表面再結合速度の材料依存性の測定結果を示す。縦軸が測定されたN原子密度(cm−3)、横軸は測定までの経過時間(ミリ秒)を示す。ガス流路の材料が、窒化ホウ素、ガラス、アルミナなどの誘電体で構成される場合、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料と比べてN原子の減衰が緩やかである。
一方、式(2)から明らかなように、固体表面に到達するN原子数も、表面再結合速度に大きく影響する。つまり、N原子を含むガスが、狭い流路を長距離輸送される場合、壁面に到達するN原子数が増加し、表面再結合速度が大幅に増大することになる。従って、表面再結合を抑制するには、接ガス面に適切な材料を選択すると共に、壁面に到達するN原子数を、極力少なくする流路形状を構成することが重要である。
【0038】
本実施の形態1に係るプラズマ処理装置のように、放電電極や細孔を誘電体で構成することで、固体表面でのN原子の再結合が抑制される。また、ガス流のコンダクタンスを細孔で制限し、放電部3と処理室4の圧力差に伴う応力は、仕切り板2によって保持される構造により、N原子と壁面の接触が極力抑制され、効率的なN原子輸送が可能となる。
【0039】
以上に述べた特徴により、実施の形態1に係るプラズマ処理装置によれば、放電部3を大気圧近傍とし、処理室4を減圧とすることで、基板15に到達する荷電粒子の数を一般的なプラズマプロセス装置と比べて大幅に低減できる。
また、基板処理に有用なN原子の空間再結合を抑制し、効率的に輸送することができる。
また、第一電極7、及び第二電極8の放電に接する部分と、細孔10をいずれも誘電体で形成したことにより、N原子の表面再結合を抑制し、効率的なN原子発生と輸送が可能となる。
また、ガス流のコンダクタンスを細孔10で制限し、放電部3と処理室4の圧力差に伴う応力は、仕切り板2によって保持される構造により、N原子と壁面の接触が極力抑制され、効率的なN原子輸送が可能となる。以上の効果により、基板15を処理する際の荷電粒子によるダメージを抑制し、高速かつ高効率な窒化処理が可能となる。
【0040】
また別の効果として、誘電体バリア放電を用いるため、広い面積に均一な放電を得られることに加え、放電部3で生じたN原子が細孔10を通過する際に、圧力差により急速に拡散するため、別途シャワープレートなどを設置しなくても、大面積の基板15に対して均一性の高いN原子フラックスが得られる。
【0041】
なお、実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、放電ガスを窒素とし、放電によりN原子を発生させ、処理室4にN原子を供給することで基板15の窒化を行なった。一方、本発明の効果はN原子を用いた窒化に限定されるものではない。誘電体バリア放電は、原理的に大気圧近傍であらゆるガス種に対して安定な放電を形成できる。また、大気圧近傍で荷電粒子の寿命が短いことは、放電ガス種に関わらず一般的に成り立つ事象である。
また、減圧下ではラジカルの空間再結合速度やクエンチング反応速度が低減されることも、一般的に成り立つ事象である。従って、荷電粒子を抑制し、ラジカルのみを効率的に活用するリモートプラズマプロセスを実現するという目的において、本発明はいかなるガス種にも用いることができる。中でも、原子状窒素、原子状水素、原子状酸素などの原子状ラジカルは、大気圧近傍の放電で比較的高い密度で発生し、処理対象に照射することで酸化、窒化、還元、親水化、洗浄など様々な効果を発揮するため、本発明の適用が有効である。
【0042】
また、実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、放電部3を大気圧近傍、処理室4を1.3×102Pa程度とした。ここで、大気圧近傍とは、絶対圧力で1×104Pa〜3×105Paを意味する。放電部3の圧力を1×104Pa以下とすると、荷電粒子の寿命が延び、細孔10を通過して基板15まで到達する数が増加する。また、3×105Pa以上とすると、粒子間の衝突頻度が高まり、処理に必要とされるラジカルの寿命が短縮され、細孔10を通過するまでにその密度が大幅に減衰する。
従って、上記の範囲において、供給するガス種、発生させるラジカル種、処理対象や処理目的などに応じて、適切な圧力を選択することが好ましい。
【0043】
また、実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、窒素ガス供給量を毎分約1リットル、真空排気速度を毎分約760リットル、細孔10の孔径を0.1mm、細孔10の数を13として、放電部3の圧力を大気圧近傍、処理室4の圧力を1.3×102Pa程度としたが、供給ガス流量、排気速度、細孔10の孔径、細孔10の数は、適宜選択できる。
供給ガス流量と圧力の関係は、式(3)によって決まる。ここで、Q(Pa・m3/s)は供給ガスの質量流量、C(m3/s)は系のコンダクタンス、PH(Pa)は放電部3の圧力、PL(Pa)は処理室4の圧力である。
【0044】
【数3】
【0045】
供給ガス流量と、系のコンダクタンスと排気速度を設定することで、式(3)に基づいて放電部3と処理室4の圧力を決めることができる。一般に、放電部3と処理室4の間に圧力差を形成するという目的においては、細孔10の孔径を0.05mm乃至1.0mmとすることが好ましい。
【0046】
また、実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、第一電極7に形成される細孔10の間隔、及び基板15と仕切り板2の間隔を調節することにより、基板15に照射されるラジカルの均一さを調節することができる。細孔10の間隔を狭めるほど、また仕切り板2と基板15の間隔を広げるほど、ラジカルのフラックスは均一化し、均一な基板処理が行なわれる。
一方、細孔10の間隔を広げるほど、また仕切り板2と基板15の間隔を狭くするほど、ラジカルのフラックスは不均一化し、局所的な処理が可能となる。
【0047】
また、同じコンダクタンスを形成するにあたって、小さな孔径の細孔10を多数形成した場合は、ラジカルフラックスが均一化し、逆に大きな孔径の細孔10を少数形成した場合は、ラジカルフラックスが不均一化する。また、細孔10の孔径をそれぞれ異ならせることにより、ラジカルのフラックスに分布を形成することもできる。
【0048】
また、実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、仕切り板2は放電部3と処理室4を隔てる機能と、放電部3と処理室4の圧力差を保持する機能と、第一電極7の空隙9と反対側の面に接地電位を与える機能を有している。従って、チャンバー1及び第一電極7と気密接続され、放電部3と処理室4の圧力差を保持しうる機械強度を有し、且つ電気的に接地されている。
また、仕切り板2に形成された貫通孔11の孔径は、細孔10の孔径と比べて、同じがそれ以上とする。これにより、ラジカルが仕切り板2の表面に接触して、表面再結合により消滅する量を抑制できる。また、貫通孔11は必ずしもテーパー状としなくてもよく、任意の形状を選択することができる。
【0049】
また、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、第一電極7、第二電極8の空隙9側表面を覆う誘電体の厚さは、印加電圧、電源周波数、投入電力、誘電体の比誘電率、材料強度などを考慮して決定することができるが、実用上は0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。誘電体を厚くすると誘電体部での電圧降下が大きくなり、放電を発生させる際に高い電圧を印加する必要が生じる。一方、誘電体を薄くすると、絶縁耐力が低下することに加え、機械的な強度が低下し破損しやすくなる。
【0050】
また、スペーサー20によって規定される空隙9の長さは、放電部3の圧力、放電ガス組成、発生活性種などを考慮して決定される。空隙9の長さを短くすると空隙9の電界強度が増加し、高エネルギー電子が効率的に生成されるため、ラジカルの生成速度が向上する。一方、放電部3の容積に対する電極表面積の割合が増大し、ラジカルの表面再結合が増大する。従って、最適な空隙長は各種条件によって大きく異なる。加工の容易性、放電形成の容易性なども考慮すると、空隙長は0.05mm乃至5mmの間、より好ましくは0.1mm乃至2.0mmの間とするとよい。
また、スペーサー20の材料に制限は無いが、耐スパッタリング性能に優れる誘電体を用いることが、金属コンタミネーション抑制の観点から好ましい。また、スペーサー20の数は必ずしも4個である必要は無く、一定の空隙長を保持し且つガス流路を確保できれば、その数、形状は任意に決定することができる。
【0051】
実施の形態1に係るプラズマ処理装置のガス供給手段5は、制御しながら所望のガスを放電部3に供給する手段である。代表的なものとして、ボンベから供給されるガスを、マスフローコントローラーで所望の流量に調節して放電部3に供給する手段や、ボンベから供給されるガスを、圧力調節器を通して、放電部3の圧力が一定になる流量に調節して供給する手段が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
また、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、電極間に交流電圧を印加することで誘電体バリア放電を生起させている。一方、誘電体バリア放電を発生させるには、必ずしも交流である必要は無く、時間とともに極性が変わる電圧を印加すればよい。具体的には、両極性のパルス電圧や、鋸波や、これらを重層させた電圧波形が挙げられる。
また、電源の周波数は、安定に放電を形成できる範囲で任意に選択することができるが、1kHz以上100MHz以下であることが望ましい。周波数が1kHz以下だと、高い放電電力を投入する際に印加電圧を高くする必要が生じ、電源コストの増加や、絶縁距離増加に伴う装置の大型化などの問題が生じる。一方、周波数を100MHz以上とすると、アーク放電が形成されやすく、局所的に高いエネルギーが投入され、電極の破損を引き起こしやすくなる。
【0053】
また、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、第一電極7、および第二電極8には、それぞれアルミナセラミックを使用しているが、窒化ホウ素、ガラスなど他の誘電体材料を使用することもできる。誘電体材料を用いることで、前述の通りラジカルの表面再結合が抑制され、さらにイオンスパッタリングに伴う金属コンタミネーションの発生を抑制することができる。
また、金属等材料の表面に誘電体を被覆することでも、電極を形成することができる。誘電体の被覆方法として、セラミックの溶射、ガラスライニング、CVD(Chemical Vapour Deposition)やPVD(Physical Vapour Deposition)による表面のコーティング等が挙げられる。
【0054】
一方、ラジカルの表面再結合速度は、材料表面の粗さに依存する。当該発明者等は、前述の表面損失評価装置を用いることで、アルミニウム表面でのN原子の表面再結合速度と、材料の面粗度の関係を評価した。図5に、大気圧におけるN原子減衰速度の面粗度(算術平均粗さRa)依存性の実験結果を示す。Raの値1近辺を境に、減衰速度が増大する結果であり、このことから電極材料の表面は滑らかであることが望ましい。一般に、溶射によって形成されるセラミック膜は面粗度が高いため、実施の形態1に係るプラズマ処理装置のように、バルク状の誘電体や、CVDやPVDで形成されるような面粗度の低い被覆材を電極材料に用いることが好ましい。
【0055】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係るプラズマ処理装置の仕切り板2、第一電極7、第二電極8を示す斜視図である。
本発明の実施の形態2に係るプラズマ処理装置において、第二電極8の表面に形成された導電層12の一部に隙間31を有する点が実施の形態1に係るプラズマ処理装置と異なる。以下、図6を用いて実施の形態2に係るプラズマ処理装置を説明する。第二電極8の空隙9と反対側表面に形成された導電層12は、第二電極2と第一電極7とを重ね合わせたとき第一電極7の細孔10の中心軸が延びる位置を中心に、細孔10の孔径より大きい径の円形の隙間31を有する。
【0056】
前述の実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、空隙長や放電ガス種や圧力条件などによっては、空隙9で生じた放電が細孔10を経由して拡がり、第二電極8と仕切り板2の間で異常放電を起こすことがある。この問題は、空隙長が短い場合や、希ガスなどの低い電圧で放電開始するガスを用いた場合や、圧力が低い場合に生じやすい。仕切り板2で放電が生じると、金属材料がエッチングされ、コンタミネーションを引き起こすことがある。
【0057】
実施の形態2に係るプラズマ処理装置においては、導電層12に隙間31を形成したことで、空隙9の細孔10近傍に放電が発生しない。従って、空隙9で生じた放電が細孔10を経由して仕切り板2にまで拡がることはなく、金属コンタミを発生させない効果を奏する。
なお、本実施の形態2に係るプラズマ処理装置において、隙間31の大きさは、空隙長や放電ガス種や圧力などを考慮し、放電が仕切り板2に拡がらない大きさとする。
【0058】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3に係るプラズマ処理装置の仕切り板2、第一電極7、第二電極8を示す斜視図である。なお、第二電極8は、その構造を明確にするために、円盤の手前側半分は垂直方向に部分切断した図を示している。
本発明の実施の形態3に係るプラズマ処理装置は、導電層12が第二電極8の内部に埋設されている点が実施の形態1及び2に係るプラズマ処理装置と異なる。
以下、図7を用いて実施の形態3に係るプラズマ処理装置を説明する。導電層12は、第二電極8の内部に埋設されており、且つ、第二電極2と第一電極7とを重ね合わせたとき第一電極7の細孔10の中心軸が延びる位置を中心に、細孔10の孔径より大きい径の円形の隙間31を有する。第二電極8には、図7には記載を省略したが、その一部に導電層12を露出させた給電部が形成されており、該給電部に、同じく図7には記載を省略した交流高電圧電源13を接続する。
【0059】
前述の実施の形態1及び2に係るプラズマ処理装置においては、導電層12の外周と第一電極7、または導電層12の外周と仕切り板2との間で沿面放電が発生するのを防止するために、第二電極8の所定の幅の外縁部に導電層12を形成しなかった。一方、大面積基板の処理を行なう際には、電極を有効に使い極力広い面積で放電を発生させることが望ましい。
【0060】
図7に示すとおり、実施の形態3に係るプラズマ処理装置において、導電層12を第二電極8の内部に埋設したことにより、導電層12の外周部を基点とした沿面放電が抑制され、導電層12を第二電極8の外周から僅かに内側まで設けることができる。その結果、同じ第二電極8の面積は従来通りでも、放電領域を広くすることができる。
なお、実施の形態3に係るプラズマ処理装置においては、細孔10と中心軸を同じくする位置に、導電層の隙間31を形成している。一方、仕切り板2との間で異常放電が生じない条件や、少量の金属コンタミネーションが問題とならない条件においては、隙間31は必ずしも必要ではない。
【0061】
実施の形態4.
図8は、本発明の実施の形態4に係るプラズマ処理装置の仕切り板2を示す断面図である。
実施の形態4に係るプラズマ処理装置は、金属で形成される仕切り板2の、貫通孔11の内面と処理室側の表面の少なくとも一部が絶縁膜51で覆われる点が実施の形態1乃至3に係るプラズマ処理装置と異なる。以下、図8を参照して、実施の形態4に係るプラズマ処理装置を説明する。
仕切り板2には、第一電極7に形成された細孔10と中心軸を同じくする位置に貫通孔11が形成されている。貫通孔11の孔径は、第一電極側表面においては細孔10の孔径より大きく、第一電極から離れるに従って径が増加するテーパー構造となっている。仕切り板2の貫通孔11の内面、及び第一電極7と反対側の表面が、絶縁膜51によりコーティングされている。
【0062】
実施の形態4に係るプラズマ処理装置によれば、仕切り板2の貫通孔11の内面と第一電極7と反対側の表面が絶縁膜51によりコーティングされているため、ラジカル輸送過程での貫通孔11の内面での表面再結合が抑制される。さらに、仕切り板2と第二電極8との間の異常放電を抑制できる。
なお、実施の形態4に係るプラズマ処理装置の絶縁膜51は、例えば金属の仕切り板2の表面へのセラミックの溶射、ガラスライニング、CVDやPVD等により形成できるが、金属表面に絶縁膜を形成しうる手法であればこれらに限定されるものではない。
【0063】
実施の形態5.
図9は、本発明の実施の形態5に係るプラズマ処理装置の仕切り板2、第一電極7、第二電極8を示す斜視図である。なお、第一電極7は、その構造を明確にするために、円盤の手前側半分は垂直方向に部分切断した図を示している。
実施の形態5に係るプラズマ処理装置は、接地導電層41が第一電極7の内部に埋設されており、仕切り板2が誘電体材料からなる点が実施の形態1に係るプラズマ処理装置と異なる。
【0064】
以下、図9を用いて実施の形態5に係るプラズマ処理装置を説明する。接地導電層41が、第一電極7の内部に埋設されており、且つ接地導電層41は細孔10の中心軸と中心が同じで、細孔10の孔径より大きい径の円形の接地隙間42を有する。第一電極7には、図9には記載を省略したが、一部に接地導電層41を露出させた給電部が形成されており、該給電部は電気的に接地されている。また、仕切り板2は誘電体材料で形成されている。
実施の形態1乃至4に係るプラズマ処理装置においては、仕切り板2が、第一電極7の空隙9と反対側の面に接地電位を与える役目を担っており、従って電気的に接地した金属材料で形成する必要があった。一方、本実施の形態5に係るプラズマ処理装置においては、第一電極7が電気的に接地された接地導電層41を内包しているため、仕切り板2によって接地電位を与える必要がない。
【0065】
実施の形態5に係るプラズマ処理装置によれば、接地導電層41を第一電極7の内部に埋設することで、仕切り板2により接地電位を与える必要が無くなる。これにより、仕切り板2を誘電体で形成でき、輸送過程でのラジカルの貫通孔11の内面における表面再結合が抑制される。また、仕切り板2と第二電極8との間の異常放電を抑制できる。
また、仕切り板2により接地電位を与える必要が無いため、仕切り板2の形状とは関係なく、放電領域を形成できる。これにより、貫通孔11の寸法を大きくでき、仕切り板2の加工精度、及び第一電極7との接合精度の要求が緩和される。
【0066】
なお、本実施の形態5に係るプラズマ処理装置では接地導電層41を第一電極7の内部に埋設しているが、接地導電層41は第一電極7の仕切り板2側表面に形成しても構わない。
また、接地導電層41を電気的に接地し、かつ仕切り板2を金属で構成しても良い。この場合、貫通孔11におけるラジカル表面再結合の抑制と、仕切り板2と第二電極8間の異常放電抑制の効果は得られないが、仕切り板2により第一電極7に設置電位を与える必要がなくなる。これにより、仕切り板2の貫通孔11を大きくできるなどの効果が得られる。
【0067】
実施の形態6.
図10は、本発明の実施の形態6に係るプラズマ処理装置の断面図である。
図10を用いて実施の形態6に係るプラズマ処理装置を説明する。第一電極7と第二電極8は空隙9を介して対向しており、空隙9の側面は絶縁体25によって密閉されている。第二電極8にはガス供給孔26が形成されており、ガス供給手段5によって放電部3に供給されたガスは、ガス供給孔26を通って空隙9に到達し、放電にさらされる。その他の部分は実施の形態1に係るプラズマ処理装置と同様である。
【0068】
本実施の形態6に係るプラズマ処理装置によれば、第一電極7と第二電極8の間の空隙9の側面が絶縁体25により塞がれ、放電領域が密閉されているため、荷電粒子の外周からの回りこみによる金属表面での放電を抑制できる。
また、第一電極7と第二電極8を一体化できることから、装置構成が簡素化される。
また、第二電極8を通ってガスが空隙9に供給されるため、空隙9の外周部からガスを供給する場合と比べて、ガスが放電にさらされる時間が均一化され、発生するラジカル密度の面内均一性が向上する。
【0069】
なお、図10において、第二電極8に形成されたガス供給孔26は中心付近に一箇所としているが、これを複数個としても構わない。前述の通り、ガス供給孔26を第二電極8上に複数配置することで、放電部3から空隙9に向けてガスが均一に供給され、発生するラジカルの密度が面内で均一化される効果がある。
【0070】
実施の形態7.
図11は、本発明の実施の形態7に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本実施の形態7に係るプラズマ処理装置では、放電部3を独立のユニットとして構成する点が実施の形態1乃至6に係るプラズマ処理装置と異なる。以下、図11を用いて実施の形態7に係るプラズマ処理装置を説明する。本実施の形態7に係るプラズマ処理装置では、仕切り板2、第一電極7および第二電極8が放電ユニット40を構成する。放電ユニット40はそれ自身が独立しており、チャンバー1と切り離し可能な構造となっている。例えば仕切り板2を真空フランジにより構成することで、チャンバー1と放電ユニット40は、ガスケットやOリングによって接続する構造とする。
【0071】
本実施の形態7に係るプラズマ処理装置によれば、放電部3がチャンバーから切り離し可能な構造であるため、既存のチャンバーに放電ユニット40を取り付けるのみで、リモートプラズマ処理を行なえる。また、大型のチャンバーに対して複数の放電ユニット40を備え付けることで、大面積基板の処理を行なうことができる。
【0072】
実施の形態8.
図12は、本発明の実施の形態8に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。実施の形態8に係るプラズマ処理装置は、仕切り板の内部に冷媒流路を有する点が実施の形態1乃至7に係るプラズマ処理装置と異なる。以下、図12を用いて実施の形態8に係るプラズマ処理装置を説明する。
仕切り板2内に形成された冷媒流路50に冷媒を流通させ、仕切り板2を冷却することで放電に伴う第一電極7、及び第二電極8の温度上昇を抑制する。電極の温度上昇が抑制されることで、冷却しない場合と比べてラジカルの発生密度が高まる。
【0073】
以下、冷却を行なわない場合と比べてラジカルの発生密度が高まる理由を説明する。
当該発明者等は、前述の表面損失評価装置を用いて、アルミナセラミック表面でのN原子表面再結合速度と、材料温度の関係を評価した。
図13は、大気圧におけるN原子減衰速度の材料温度依存性の実験結果を示す。
アルミナセラミックの温度上昇に伴い、N原子の表面再結合速度は単調に増加する結果となった。以上の実験結果から、実施の形態8に係るプラズマ処理装置によれば、冷媒流路50に冷媒を流通させることで仕切り板2を冷却し、第一電極7、及び第二電極8の温度上昇を抑制することにより、電極表面でのN原子の再結合が軽減され、ラジカルの発生密度が向上し、基板の処理速度、及び処理効率が向上する。
なお、前述の冷媒として、空気、水などが挙げられるが、冷媒流路50内を流通し、仕切り板2を冷却する機能を有するものであれば、これらに限定されるものではない。
【0074】
実施の形態9.
図14は、本発明の実施の形態9に係るプラズマ処理装置の断面図である。
実施の形態1乃至8に係るプラズマ処理装置では、放電部3に一対の電極を配置したが、本実施の形態9に係るプラズマ処理装置においては、複数の対の電極を配置して、基板15の処理を行なう。
図14において、チャンバー1は、複数の貫通孔11を有する仕切り板2によって放電部3と処理室4とに隔てられている。放電部3にはガス供給手段5が、処理室4には真空ポンプ6がそれぞれ備えられている。放電部3には一対の電極が二組、すなわち第一電極7(a)と第二電極8(a)、及び第一電極7(b)と第二電極8(b)が、所定の距離だけ離間して空隙9(a)、9(b)を介して対向して配置されている。
【0075】
また、第一電極7(a)、7(b)には、それぞれ複数の細孔10(a)、10(b)が形成されており、いずれも一枚の仕切り板2の放電部側表面に配置されている。
チャンバー1と仕切り板2、及び仕切り板2と第一電極7(a)、7(b)は、それぞれ気密接続され、またチャンバー1と仕切り板2はいずれも電気的に接地されている。
第二電極8(a)、8(b)の空隙9(a)、9(b)と反対側の表面には導電層12(a)、12(b)が形成され、交流高電圧電源13に対して並列に接続されている。
処理室4の内部にはサセプタ14が配置され、サセプタ14の上には被処理材である基板15が仕切り板2と平行な面に置かれている。
【0076】
本実施の形態9に係るプラズマ処理装置によれば、放電部3に複数の組の電極を配置したことにより、広い領域の処理室4にラジカルを供給することができ、大面積基板を処理できる。大面積基板を処理する構造として、一対の電極の寸法を大きくすることでも原理的には対応できるが、一般に一枚の大型の誘電体材料を製造する場合と比べて、複数枚の小型の誘電体材料を製造する方が、合計面積が同じであっても安価である。
また、一枚の大型電極を用いた場合、放電に伴う温度分布により破損する可能性が高まることや、取り回しの悪さなどといった問題が生じる。
【0077】
一方、本実施の形態9に係るプラズマ処理装置では、実施の形態1に係るプラズマ処理装置で示した一対の電極構造から、設計を大きく変更することなく、大面積基板の処理に対応できる。
なお、実施の形態9に係るプラズマ処理装置では、二対の電極を用いたが、本実施の形態を用いる上で、電極の対の数に制限はない。また、それぞれの電極形状は任意に決めることができ、たとえば正方形型や長方形型の電極を採用することで、広い面積の仕切り板に隙間無く配置でき、均一な基板処理が実現できる。
【0078】
実施の形態10.
図15は、本発明の実施の形態10に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本実施の形態10に係るプラズマ処理装置は、複数の被処理材61(a)〜61(c)を1台のプラズマ処理装置により一度に処理するものである。
以下、図15を参照して、実施の形態10に係るプラズマ処理装置を説明する。
実施の形態10に係るプラズマ処理装置では、被処理材が一枚の基板ではなく、3枚の被処理材61(a)、61(b)、61(c)で示す複数の処理対象物である。
また、仕切り板2に形成される貫通孔11は、被処理材61(a)〜61(c)の近傍に開口部を有し、被処理材61(a)〜61(c)に集中的にラジカルを照射する構造となっている。
【0079】
本実施の形態10に係るプラズマ処理装置によれば、貫通孔11の開口部を被処理材61(a)〜61(c)の近傍に配置することにより、所望の位置にのみラジカルを照射することができ、被処理材61(a)〜61(c)の局所的な改質、洗浄、エッチングなどが行なわれる。
また、被処理材61(a)〜61(c)の数、形状などに応じて、細孔10及び貫通孔11の配置、数量を決めることで、一台のプラズマ処理装置により複数の被処理材61(a)〜61(c)の処理を一括して行うことができる。
【0080】
実施の形態11.
図16は、本発明の実施の形態11に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本実施の形態11に係るプラズマ処理装置は、仕切り板2と基板15の間に中空構造のシャワープレート72を配置し、放電部3からラジカルを供給すると共に、シャワープレート72を通じて原料ガスを供給するものである。
以下、図16を用いて実施の形態11に係るプラズマ処理装置を説明する。
放電部3でラジカルを発生させ、細孔10及び貫通孔11を通って処理室4に供給することは、実施の形態1に係るプラズマ処理装置と同様である。本実施の形態11に係るプラズマ処理装置では、仕切り板2と基板15の間にシャワープレート72を配置する。シャワープレート72は中空構造となっており、その内部を通って、原料ガス供給手段71から供給される原料ガスを、基板15に向けて放出する。同時に、放電部3から供給されるラジカルは、シャワープレート72を通過して基板方向に照射される。シャワープレート72と基板15の間では、放電部3から供給されるラジカルと、シャワープレートから供給される原料ガスが反応し、基板15に作用する。
【0081】
本実施の形態11に係るプラズマ処理装置の適用例として、例えば、放電部3に酸素ガスを供給し、放電により原子状酸素を発生させるとともに、シャワープレート72を通じてモノシランガスを供給することで、基板15表面にシリコン酸化膜を形成するプロセスが挙げられる。同様に放電による原子状水素の生成と、モノシランガスの組み合わせによるシリコン薄膜の形成、放電によるN原子の生成と、有機シリコン系ガスの組み合わせによるシリコン窒化膜の形成などが挙げられる。
また、放電部3に希ガスを供給し、放電で生じた希ガスの励起種と原料ガスを反応させ、基板15を洗浄、改質することも可能である。
前述の通り誘電体バリア放電は、原理的にいかなるガスであっても安定な放電が形成できることから、上記のガス種以外にも、放電ガスと原料ガスの組み合わせにより、多種多様な基板処理が実施できる。
【0082】
また、実施の形態11に係るプラズマ処理装置においては、仕切り板2と基板15の間にシャワープレート72を設置しているが、仕切り板2自体を中空構造とすることで、シャワープレート72としての機能を併せ持たせることもできる。この場合、装置構成が簡略化できることに加え、シャワープレート72の表面でのラジカル減衰が生じないため、放電部3で発生したラジカルを効率的に利用することができる。
【0083】
実施の形態12.
図17は、本発明の実施の形態12に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本実施の形態12に係るプラズマ処理装置は、チャンバー1と仕切り板2をフレキシブル材料80で接続したものである。
以下、図17を参照して、実施の形態12を説明する。
実施の形態12に係るプラズマ処理装置では、チャンバー1と仕切り板2をフレキシブル材料80で接続し、仕切り板2が少なくとも一方向に動作可能となっている。
【0084】
本実施の形態12に係るプラズマ処理装置によれば、仕切り板2を所望の速度で動かすことにより、ラジカル噴出し位置を時間的に任意に変えることができる。これにより、定位置からラジカルを照射する場合と比べて、基板15に対して均一なフラックスでラジカルを照射できる。
また、貫通孔11の開口部を、基板15におけるラジカルを照射したい部位に沿って動かすことで、所望の部位のみの選択的なプラズマ処理が可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1 チャンバー、2 仕切り板、3 放電部、4 処理室、5 ガス供給手段、6 真空ポンプ、7、7(a)、7(b) 第一電極、8、8(a)、8(b) 第二電極、9 、9(a)、9(b)空隙、10、10(a)、10(b) 細孔、11 貫通孔、12、12(a)、12(b) 導電層、13 交流高電圧電源、14 サセプタ、15 基板、20 スペーサー、25 絶縁体、26 ガス供給孔、31 隙間、40 放電ユニット、41 接地導電層、42 接地隙間、50 冷媒流路、51 絶縁膜、61(a)〜61(c) 被処理材、71 原料ガス供給手段、72 シャワープレート、80 フレキシブル材料。
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電によって発生した活性粒子を、放電領域の外側に配置された処理室に供給することで、被処理材を処理するプラズマ処理装置、及びプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化、高機能化に伴い、半導体製造工程の中核を担うプラズマプロセスにおける荷電粒子の影響が問題となっている。プラズマ中に被処理基板を配置する一般的なプラズマ処理装置においては、高エネルギーイオン衝突による基板損傷、基板チャージアップによるデバイス特性のばらつきなどが問題となっている。そこで、基板に到達する荷電粒子を抑制し、電気的に中性な活性粒子(以下、ラジカルと記載)のみによるプロセスの実現が重要な課題となっている。
【0003】
一方、半導体デバイスの生産性向上と製造コスト削減の観点から、基板サイズは年々増加傾向にある。また、液晶テレビに代表されるフラットパネルディスプレイの大型化や、太陽電池の普及に伴い、メートル級の大型基板の処理が必要となっている。これに伴い、大面積の均一処理を可能とするプラズマ処理方法が求められている。これらの課題を解決する手段として、プラズマ発生部と基板処理部を多孔板などで分離するリモートプラズマプロセスや、大気圧近傍放電を用いて基板を処理する大気圧プラズマプロセスが注目されている。
【0004】
そこで、プラズマ生成領域と基板処理領域を、ラジカル通過孔を有する閉じ込め電極により分離するプラズマCVD装置が提案されている。このプラズマCVD装置においては、酸素プラズマ生成領域と基板処理領域が、プラズマ閉じ込め多孔板によって仕切られている。そして、高周波放電によりプラズマを生起し、発生した酸素ラジカルを、プラズマ閉じ込め多孔板を通して基板処理領域に供給している。プラズマ閉じ込め多孔板は中空構造であり、その内部からモノシランガスを供給することで酸素ラジカルと反応させ、基板上に酸化シリコン膜を形成する。このとき、プラズマ閉じ込め多孔板に形成された細孔によりガス流のコンダクタンスを制限することで、プラズマ生成領域の圧力を基板処理領域の圧力よりも高く保持する。
【0005】
このプラズマCVD装置によれば、プラズマ閉じ込め多孔板が荷電粒子の通過を抑制するため、基板に到達する荷電粒子数が低減される。さらに、処理領域の圧力がプラズマ生成領域の圧力より低いため、モノシランガスがプラズマ領域に拡散せず、形成される酸化シリコン膜の膜質が向上するという効果がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、大気圧近傍放電を用いたリモートプラズマプロセス装置が提案されている。このリモートプラズマプロセス装置においては、誘電体を介して対向する高圧電極と接地電極の間に電圧を印加することで、大気圧近傍で放電プラズマを発生させる。接地電極には多数のガス噴出し部が設けられており、放電プラズマで生成した反応ガスを被処理基材に照射することで、洗浄、改質処理を行なう。
【0007】
そして、このリモートプラズマプロセス装置においては、大気圧近傍のリモートプラズマ処理であるため、反応ガス中の荷電粒子の多くは被処理基材に到達する前に消失し、荷電粒子によるダメージを抑制することができる。また、ガス噴出し部を多数設けたことで、大型基板の均一な処理が可能となる(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、数Torr程度の圧力で動作する誘電体バリア放電型プラズマ発生部と、真空チャンバーを組み合わせたプラズマ処理装置が提案されている。このプラズマ処理装置においては、ガラス管の外周に形成された金属電極と、ガラス管端部に接続されるノズル付きの金属電極の間に交流電圧を印加し、ガラス管内部で放電を発生させる。ノズルの出口側は真空チャンバーに接続されており、ノズルによりガス流のコンダクタンスを制限するとともに、真空チャンバー側から真空排気することで、放電部を数102Paに保持し、真空チャンバー内を10−3Pa程度の高真空まで減圧する。
【0009】
そして、このプラズマ処理装置によれば、真空チャンバー内の圧力を放電部より低くすることで、放電部で発生したラジカルを効率的に引き出すことが可能となる。また、真空チャンバー内は高真空に保持されているため、輸送に伴うラジカルの減衰を抑制できる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3366301号明細書
【特許文献2】特開2007−26981号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】田中正明、他3名、「無声放電式活性酸素発生機と酸化薄膜形成に於ける酸化力」、電学論A、2007年、第127巻、第2号、p.66
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来技術には以下のような問題がある。すなわち、特許文献1に記載されるプラズマCVD装置では、真空下でプラズマを発生させるため、ガス密度が低く荷電粒子の衝突頻度が低いため、荷電粒子の寿命が長い。従って一部の荷電粒子はプラズマ閉じ込め多孔板を通過し、基板まで到達する。
【0013】
また、特許文献2に記載される大気圧プラズマ処理装置においては、空間での粒子間の衝突頻度が高く、再結合やクエンチング反応によるラジカルの失活速度が極めて高い。さらに、活性ガスが、狭い流路からなる噴出し孔を通過する際、流路を形成する壁面との接触によりラジカルが失活する。従って、被処理材に到達するまでにラジカルの数が大幅に減衰し、効率の悪いプロセスとなる。
【0014】
また、非特許文献1に記載されるプラズマ処理装置を用いて大面積基板を処理するには、ガラス管を太くしてノズルを多数形成するか、細い放電管を多数用いる必要がある。前者の場合、管壁付近のプラズマ密度が高く、中心付近の密度が低くなるため、ラジカルフラックスが不均一になる。後者の場合、多数の放電管を配置したうえで、それぞれに所定量のガスを供給し、給電する必要が生じることから、組み立ての手間や装置コストを考慮すると現実的ではない。
【0015】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、被処理材に到達する荷電粒子を十分に抑制したうえで、ラジカルのみを効率的に供給できるリモート式のプラズマ処理装置とプラズマ処理方法を提供することである。また別の目的は、大面積基板を均一に処理可能なリモート式のプラズマ処理装置とプラズマ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係るプラズマ処理装置は、内部に一対の電極を有する放電部が、内部に被処理材を設置する処理室に、複数の貫通孔を有する仕切り板を介して接続され、前記放電部に接続されたガス供給手段から前記放電部にガスが供給され、前記処理室に接続された真空ポンプにより前記処理室からガスが排気され、前記一対の電極に電圧が印加されて放電が生起され、前記放電により生じた活性粒子が前記処理室に供給されることで前記被処理材を処理するプラズマ処理装置であって、前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、前記一対の電極のうち第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、前記一対の電極のうち第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われている。
【0017】
また、この発明に係る別のプラズマ処理装置は、内部に複数の対の電極を有する放電部が、内部に被処理材を設置する処理室に、複数の貫通孔を有する仕切り板を介して接続され、前記放電部に接続されたガス供給手段から前記放電部にガスが供給され、前記処理室に接続された真空ポンプにより前記処理室からガスが排気され、前記複数の対の電極に電圧が印加されて放電を生起させ、前記放電により生じた活性粒子が前記処理室に供給されることで前記被処理材を処理するプラズマ処理装置であって、前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、前記複数の対の電極のそれぞれの第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、前記複数の対の電極のそれぞれの第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われている。
【0018】
また、この発明に係るプラズマ処理方法は、処理室の内部に被処理材を配置し、放電部の内部にガス供給手段からガスを供給し、上記放電部の内部に設置された一対の電極に電圧を印加して放電を生起し、前記処理室に接続された真空ポンプにより上記処理室のガスを排気して前記放電により生じた活性粒子を仕切り板に設けられた複数の貫通孔を通過させて上記処理室に供給して上記被処理材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、前記放電部の圧力を大気圧近傍に維持し、前記処理室の圧力を前記放電部の圧力より低く維持し、前記一対の電極のうち第一電極を、内面が誘電体で覆われた細孔が前記複数の貫通孔に連なるようにしながら誘電体で覆われた面の反対の面を前記仕切り板に重ね合わせて気密接続し、前記一対の電極のうち第二電極を、誘電体で覆われた面が前記第一電極の誘電体に覆われた面に所定の空隙を介して対向するようにして配置する。
【0019】
また、この発明に係る別のプラズマ処理方法は、処理室の内部に被処理材を配置し、放電部の内部にガス供給手段からガスを供給し、上記放電部の内部に設置された複数の対の電極に電圧を印加して放電を生起し、前記処理室に接続された真空ポンプにより上記処理室のガスを排気して前記放電により生じた活性粒子を仕切り板に設けられた複数の貫通孔を通過させて上記処理室に供給して上記被処理材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、前記放電部の圧力を大気圧近傍に維持し、前記処理室の圧力を前記放電部の圧力より低く維持し、前記複数の対の電極のうち第一電極を、内面が誘電体で覆われた細孔が前記複数の貫通孔に連なるようにしながら誘電体で覆われた面の反対の面を前記仕切り板に重ね合わせて気密接続し、前記複数の対の電極のうち第二電極を、誘電体で覆われた面が前記第一電極の誘電体に覆われた面に所定の空隙を介して対向するようにして配置する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、放電部を大気圧近傍、処理室の圧力を放電部の圧力以下としたことで、被処理材に到達する荷電粒子の数を一般的なプラズマプロセス装置と比べて大幅に低減でき、有用な活性粒子を効率的に被処理材まで輸送できる。
また、放電部と処理室の圧力差は、第一電極が有する細孔によって形成され、且つ細孔の内面が誘電体で被覆されているため、細孔通過時の活性粒子の消滅が抑制され、効率的に被処理材まで輸送される。
また、放電部で生じた活性粒子が細孔を通過する際に、圧力差により急速に拡散するため、別途シャワープレートなどを設置しなくても、大型の被処理材を均一性良く処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置を示す斜視図である。
【図3】窒素原子の空間再結合速度の圧力依存性を示す図である。
【図4】窒素原子の表面再結合速度の材料依存性を示す図である。
【図5】窒素原子の表面再結合速度の材料面粗度依存性を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るプラズマ処理装置を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係るプラズマ処理装置を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態4に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態5に係るプラズマ処理装置を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態6に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態7に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態8に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図13】アルミナ表面での窒素原子の再結合速度の温度依存性を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態9に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態10に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態11に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態12に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のプラズマ処理装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、チャンバー1は、複数の貫通孔11を有する仕切り板2によって放電部3と処理室4とに隔てられている。放電部3にはガス供給手段5が、処理室4には真空ポンプ6がそれぞれ接続されている。
放電部3には一対の電極、すなわち第一電極7と第二電極8が、所定の距離の空隙9を介して対向して配置されている。そして、第一電極7は仕切り板2の放電部3に面する表面に重ねて配置されている。第一電極7には複数の細孔10が形成されている。
【0023】
チャンバー1と仕切り板2、及び仕切り板2と第一電極7は、それぞれ気密接続され、チャンバー1と仕切り板2はいずれも電気的に接地されている。
第二電極8の空隙9と反対側の表面には導電層12が形成され、導電層12には交流高電圧電源13が接続されている。
処理室4の内部にはサセプタ14が配置され、サセプタ14の上には被処理材である基板15が仕切り板2と平行になるように置かれている。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の第一電極7、第二電極8、及び仕切り板2を示す斜視図である。
以下、図2を参照して実施の形態1に係るプラズマ処理装置の放電部3の構造を説明する。
第二電極8は円盤形状の1枚のアルミナセラミックにより構成され、空隙9に対して反対側の面の、外縁部を除いた領域には導電層12が形成されている。
第一電極7は円盤形状の一枚のアルミナセラミックにより構成され、複数の細孔10が形成されている。
第一電極7と第二電極8の間には、図1において記載を省略した所定の厚さを有するスペーサー20が4箇所に配置され、空隙9の距離を決めている。
第一電極7は、仕切り板2に重ねて配置され、両者は気密接続されており、仕切り板2には、第一電極7に形成された細孔10と中心軸を同じくする位置に貫通孔11が形成されている。貫通孔11の孔径は、第一電極7に面する表面においては細孔10の孔径より大きく、第一電極7から遠ざかるに従ってその径が増加するテーパー構造となっている。
【0025】
次に、図1を用いて実施の形態1に係るプラズマ処理装置の動作を説明する。ここでは、窒素ガスを原料として、放電により原子状窒素(以下、「N原子」と称する)を発生させ、N原子を基板15に接触させることで窒化処理を行なう場合について説明する。
【0026】
図1において、ガス供給手段5から放電部3に、毎分1リットル程度の流量で窒素ガスを供給するとともに、真空ポンプ6により処理室4から毎分約760リットルの速度で排気する。第一電極7に形成された細孔10の直径は0.1mmであり、細孔数は13個である。この条件においては、排気ガス流量が供給ガス流量よりも多く、且つ細孔10によってガス流のコンダクタンスが制限されるため、処理室4の圧力が放電部3の圧力よりも低く保持される。具体的には、放電部3の圧力が1.0×105Pa程度(大気圧近傍)、処理室4の圧力が1.3×102Pa程度となる。このとき、圧力差によって生じる応力は、仕切り板2の有する機械強度によって保持される。従って、ガス流のコンダクタンスを第一電極7の細孔10で制御し、圧力差で生じる応力は仕切り板2で保持する構造となっている。
【0027】
放電部3に供給された窒素ガスは、第一電極7と第二電極8の外周部より空隙9内に流れ込む。導電層12に交流の高電圧を印加することで、空隙9に誘電体バリア放電を生起させ、N原子を発生させる。発生したN原子は、細孔10及び貫通孔11を通って処理室4に供給され、基板15に触れることで窒化処理を行なう。
【0028】
本実施の形態1に係るプラズマ処理装置によれば、基板15に到達する荷電粒子数を大幅に抑制するとともに、窒化に有用なN原子のみを効率的に基板15に照射することができる。以下、基板15に到達する荷電粒子を抑制できる理由を説明する。
一般に大気圧近傍の誘電体バリア放電において、放電場の荷電粒子密度は、時間、空間平均値として109乃至1011(cm−3)である。また、大気圧近傍での電子の平均自由行程は1μm以下であり、放電場を通過した後の荷電粒子は、頻繁な粒子間衝突に伴う再結合により急速に消滅する。従って本実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、放電場を出たガスが細孔10を通過するまでの間に、荷電粒子密度が大幅に減少する。
【0029】
さらに、処理室4の圧力が放電部3の圧力の760分の1程度であることから、細孔10を通過する前の荷電粒子密度は、細孔10を通過した後には少なくとも760分の1に低下する。以上の機構により、基板15に到達する荷電粒子の密度は、最大でも106(cm−3)程度まで低減する。なお、プラズマプロセスに広く用いられる容量結合型プラズマの荷電粒子密度は1010(cm−3)程度であるから、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置では荷電粒子が大幅に抑制されることになる。
【0030】
次に、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、N原子を効率的に基板に照射される理由を説明する。
大気圧近傍の誘電体バリア放電では、窒素分子が高エネルギー電子と衝突して解離されることで、N原子が生成される。生成されたN原子は空間再結合や、電極や輸送部壁面での表面再結合により消滅する。放電場では、N原子の生成と消滅が同時に進行し、両者の釣り合いによって正味のN原子発生密度が決まる。一般に大気圧近傍の誘電体バリア放電では、最大で1015(cm−3)程度のN原子を発生できる。
一方、放電場から取り出されたN原子密度は、空間再結合、及び表面再結合に伴い時間と共に減少する。従って、放電場と処理室が分離したリモートプラズマプロセスによる窒化処理においては、N原子の空間再結合と表面再結合を抑制し、高い密度で基板に照射することが重要となる。
【0031】
まず、空間再結合によるN原子の減衰について説明する。空間再結合の反応レートは式(1)で示される。ここで、LV(cm−3s−1)は、単位体積、単位時間当たりに起こる反応回数、kr(cm6/s)は反応速度係数(4.4×10−33)、[N](cm−3)はN原子密度、[N2](cm−3)は窒素分子密度である。
【0032】
【数1】
【0033】
図3は、式(1)に基づいて計算した空間再結合によるN原子密度減衰特性の圧力依存性を示す。
図3の破線で示すとおり、圧力が1.0×105Paにおいては、初期密度1×1015(cm−3)から100ミリ秒後にはN原子密度が20分の1程度まで減少する。従って、大気圧においてリモートプラズマプロセスを実施する場合、基板15に到達する前にN原子密度が大幅に減少し、極めて効率の悪いプロセスとなる。
一方、図3の実線で示すとおり、圧力が1.0×103Paにおいては、100ミリ秒の間にN原子密度に大きな減衰は生じない。これは、減圧下では式(1)の窒素分子密度が少ないためである。つまり、実施の形態1に係るプラズマ処理装置のように、処理室4を減圧することで、N原子の空間再結合を抑制し、効率的に輸送することができる。
【0034】
次に、表面再結合によるN原子の減衰について説明する。放電で発生したN原子の一部は、粒子拡散によって電極表面やラジカル輸送部に露出した固体表面に到達し、その一部が式(2)で示される表面再結合反応によって失われる。ここで、式(2)中のSは固体表面を表す。
【0035】
【数2】
【0036】
当該発明者等は、式(2)の反応速度が固体材料に大きく依存することを、大気圧下の実験により確認した。以下に実験の概要と結果を説明する。
誘電体バリア放電型のN原子発生装置の下流に、所定の断面積のガス流路を有する表面損失評価装置を取り付け、N原子の減衰速度を比較した。ガス流路の形状は、幅20mm、高さ1mmとし、流路を構成する材料を変え、ガス流方向に複数箇所でN原子密度を測定することで、N原子の減衰速度を比較した。
この実験において、例えば「G.Oinuma他著,「Method for real−time measurement of nitrogen atom density in atmospheric pressure post−discharge flows」,J.Phys.D:Appl.Phys.41,155204,2008」に示されたNO混合による間接測定法を用いてN原子密度を測定した。
【0037】
図4に、N原子表面再結合速度の材料依存性の測定結果を示す。縦軸が測定されたN原子密度(cm−3)、横軸は測定までの経過時間(ミリ秒)を示す。ガス流路の材料が、窒化ホウ素、ガラス、アルミナなどの誘電体で構成される場合、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料と比べてN原子の減衰が緩やかである。
一方、式(2)から明らかなように、固体表面に到達するN原子数も、表面再結合速度に大きく影響する。つまり、N原子を含むガスが、狭い流路を長距離輸送される場合、壁面に到達するN原子数が増加し、表面再結合速度が大幅に増大することになる。従って、表面再結合を抑制するには、接ガス面に適切な材料を選択すると共に、壁面に到達するN原子数を、極力少なくする流路形状を構成することが重要である。
【0038】
本実施の形態1に係るプラズマ処理装置のように、放電電極や細孔を誘電体で構成することで、固体表面でのN原子の再結合が抑制される。また、ガス流のコンダクタンスを細孔で制限し、放電部3と処理室4の圧力差に伴う応力は、仕切り板2によって保持される構造により、N原子と壁面の接触が極力抑制され、効率的なN原子輸送が可能となる。
【0039】
以上に述べた特徴により、実施の形態1に係るプラズマ処理装置によれば、放電部3を大気圧近傍とし、処理室4を減圧とすることで、基板15に到達する荷電粒子の数を一般的なプラズマプロセス装置と比べて大幅に低減できる。
また、基板処理に有用なN原子の空間再結合を抑制し、効率的に輸送することができる。
また、第一電極7、及び第二電極8の放電に接する部分と、細孔10をいずれも誘電体で形成したことにより、N原子の表面再結合を抑制し、効率的なN原子発生と輸送が可能となる。
また、ガス流のコンダクタンスを細孔10で制限し、放電部3と処理室4の圧力差に伴う応力は、仕切り板2によって保持される構造により、N原子と壁面の接触が極力抑制され、効率的なN原子輸送が可能となる。以上の効果により、基板15を処理する際の荷電粒子によるダメージを抑制し、高速かつ高効率な窒化処理が可能となる。
【0040】
また別の効果として、誘電体バリア放電を用いるため、広い面積に均一な放電を得られることに加え、放電部3で生じたN原子が細孔10を通過する際に、圧力差により急速に拡散するため、別途シャワープレートなどを設置しなくても、大面積の基板15に対して均一性の高いN原子フラックスが得られる。
【0041】
なお、実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、放電ガスを窒素とし、放電によりN原子を発生させ、処理室4にN原子を供給することで基板15の窒化を行なった。一方、本発明の効果はN原子を用いた窒化に限定されるものではない。誘電体バリア放電は、原理的に大気圧近傍であらゆるガス種に対して安定な放電を形成できる。また、大気圧近傍で荷電粒子の寿命が短いことは、放電ガス種に関わらず一般的に成り立つ事象である。
また、減圧下ではラジカルの空間再結合速度やクエンチング反応速度が低減されることも、一般的に成り立つ事象である。従って、荷電粒子を抑制し、ラジカルのみを効率的に活用するリモートプラズマプロセスを実現するという目的において、本発明はいかなるガス種にも用いることができる。中でも、原子状窒素、原子状水素、原子状酸素などの原子状ラジカルは、大気圧近傍の放電で比較的高い密度で発生し、処理対象に照射することで酸化、窒化、還元、親水化、洗浄など様々な効果を発揮するため、本発明の適用が有効である。
【0042】
また、実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、放電部3を大気圧近傍、処理室4を1.3×102Pa程度とした。ここで、大気圧近傍とは、絶対圧力で1×104Pa〜3×105Paを意味する。放電部3の圧力を1×104Pa以下とすると、荷電粒子の寿命が延び、細孔10を通過して基板15まで到達する数が増加する。また、3×105Pa以上とすると、粒子間の衝突頻度が高まり、処理に必要とされるラジカルの寿命が短縮され、細孔10を通過するまでにその密度が大幅に減衰する。
従って、上記の範囲において、供給するガス種、発生させるラジカル種、処理対象や処理目的などに応じて、適切な圧力を選択することが好ましい。
【0043】
また、実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、窒素ガス供給量を毎分約1リットル、真空排気速度を毎分約760リットル、細孔10の孔径を0.1mm、細孔10の数を13として、放電部3の圧力を大気圧近傍、処理室4の圧力を1.3×102Pa程度としたが、供給ガス流量、排気速度、細孔10の孔径、細孔10の数は、適宜選択できる。
供給ガス流量と圧力の関係は、式(3)によって決まる。ここで、Q(Pa・m3/s)は供給ガスの質量流量、C(m3/s)は系のコンダクタンス、PH(Pa)は放電部3の圧力、PL(Pa)は処理室4の圧力である。
【0044】
【数3】
【0045】
供給ガス流量と、系のコンダクタンスと排気速度を設定することで、式(3)に基づいて放電部3と処理室4の圧力を決めることができる。一般に、放電部3と処理室4の間に圧力差を形成するという目的においては、細孔10の孔径を0.05mm乃至1.0mmとすることが好ましい。
【0046】
また、実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、第一電極7に形成される細孔10の間隔、及び基板15と仕切り板2の間隔を調節することにより、基板15に照射されるラジカルの均一さを調節することができる。細孔10の間隔を狭めるほど、また仕切り板2と基板15の間隔を広げるほど、ラジカルのフラックスは均一化し、均一な基板処理が行なわれる。
一方、細孔10の間隔を広げるほど、また仕切り板2と基板15の間隔を狭くするほど、ラジカルのフラックスは不均一化し、局所的な処理が可能となる。
【0047】
また、同じコンダクタンスを形成するにあたって、小さな孔径の細孔10を多数形成した場合は、ラジカルフラックスが均一化し、逆に大きな孔径の細孔10を少数形成した場合は、ラジカルフラックスが不均一化する。また、細孔10の孔径をそれぞれ異ならせることにより、ラジカルのフラックスに分布を形成することもできる。
【0048】
また、実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、仕切り板2は放電部3と処理室4を隔てる機能と、放電部3と処理室4の圧力差を保持する機能と、第一電極7の空隙9と反対側の面に接地電位を与える機能を有している。従って、チャンバー1及び第一電極7と気密接続され、放電部3と処理室4の圧力差を保持しうる機械強度を有し、且つ電気的に接地されている。
また、仕切り板2に形成された貫通孔11の孔径は、細孔10の孔径と比べて、同じがそれ以上とする。これにより、ラジカルが仕切り板2の表面に接触して、表面再結合により消滅する量を抑制できる。また、貫通孔11は必ずしもテーパー状としなくてもよく、任意の形状を選択することができる。
【0049】
また、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、第一電極7、第二電極8の空隙9側表面を覆う誘電体の厚さは、印加電圧、電源周波数、投入電力、誘電体の比誘電率、材料強度などを考慮して決定することができるが、実用上は0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。誘電体を厚くすると誘電体部での電圧降下が大きくなり、放電を発生させる際に高い電圧を印加する必要が生じる。一方、誘電体を薄くすると、絶縁耐力が低下することに加え、機械的な強度が低下し破損しやすくなる。
【0050】
また、スペーサー20によって規定される空隙9の長さは、放電部3の圧力、放電ガス組成、発生活性種などを考慮して決定される。空隙9の長さを短くすると空隙9の電界強度が増加し、高エネルギー電子が効率的に生成されるため、ラジカルの生成速度が向上する。一方、放電部3の容積に対する電極表面積の割合が増大し、ラジカルの表面再結合が増大する。従って、最適な空隙長は各種条件によって大きく異なる。加工の容易性、放電形成の容易性なども考慮すると、空隙長は0.05mm乃至5mmの間、より好ましくは0.1mm乃至2.0mmの間とするとよい。
また、スペーサー20の材料に制限は無いが、耐スパッタリング性能に優れる誘電体を用いることが、金属コンタミネーション抑制の観点から好ましい。また、スペーサー20の数は必ずしも4個である必要は無く、一定の空隙長を保持し且つガス流路を確保できれば、その数、形状は任意に決定することができる。
【0051】
実施の形態1に係るプラズマ処理装置のガス供給手段5は、制御しながら所望のガスを放電部3に供給する手段である。代表的なものとして、ボンベから供給されるガスを、マスフローコントローラーで所望の流量に調節して放電部3に供給する手段や、ボンベから供給されるガスを、圧力調節器を通して、放電部3の圧力が一定になる流量に調節して供給する手段が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
また、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、電極間に交流電圧を印加することで誘電体バリア放電を生起させている。一方、誘電体バリア放電を発生させるには、必ずしも交流である必要は無く、時間とともに極性が変わる電圧を印加すればよい。具体的には、両極性のパルス電圧や、鋸波や、これらを重層させた電圧波形が挙げられる。
また、電源の周波数は、安定に放電を形成できる範囲で任意に選択することができるが、1kHz以上100MHz以下であることが望ましい。周波数が1kHz以下だと、高い放電電力を投入する際に印加電圧を高くする必要が生じ、電源コストの増加や、絶縁距離増加に伴う装置の大型化などの問題が生じる。一方、周波数を100MHz以上とすると、アーク放電が形成されやすく、局所的に高いエネルギーが投入され、電極の破損を引き起こしやすくなる。
【0053】
また、本実施の形態1に係るプラズマ処理装置において、第一電極7、および第二電極8には、それぞれアルミナセラミックを使用しているが、窒化ホウ素、ガラスなど他の誘電体材料を使用することもできる。誘電体材料を用いることで、前述の通りラジカルの表面再結合が抑制され、さらにイオンスパッタリングに伴う金属コンタミネーションの発生を抑制することができる。
また、金属等材料の表面に誘電体を被覆することでも、電極を形成することができる。誘電体の被覆方法として、セラミックの溶射、ガラスライニング、CVD(Chemical Vapour Deposition)やPVD(Physical Vapour Deposition)による表面のコーティング等が挙げられる。
【0054】
一方、ラジカルの表面再結合速度は、材料表面の粗さに依存する。当該発明者等は、前述の表面損失評価装置を用いることで、アルミニウム表面でのN原子の表面再結合速度と、材料の面粗度の関係を評価した。図5に、大気圧におけるN原子減衰速度の面粗度(算術平均粗さRa)依存性の実験結果を示す。Raの値1近辺を境に、減衰速度が増大する結果であり、このことから電極材料の表面は滑らかであることが望ましい。一般に、溶射によって形成されるセラミック膜は面粗度が高いため、実施の形態1に係るプラズマ処理装置のように、バルク状の誘電体や、CVDやPVDで形成されるような面粗度の低い被覆材を電極材料に用いることが好ましい。
【0055】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係るプラズマ処理装置の仕切り板2、第一電極7、第二電極8を示す斜視図である。
本発明の実施の形態2に係るプラズマ処理装置において、第二電極8の表面に形成された導電層12の一部に隙間31を有する点が実施の形態1に係るプラズマ処理装置と異なる。以下、図6を用いて実施の形態2に係るプラズマ処理装置を説明する。第二電極8の空隙9と反対側表面に形成された導電層12は、第二電極2と第一電極7とを重ね合わせたとき第一電極7の細孔10の中心軸が延びる位置を中心に、細孔10の孔径より大きい径の円形の隙間31を有する。
【0056】
前述の実施の形態1に係るプラズマ処理装置においては、空隙長や放電ガス種や圧力条件などによっては、空隙9で生じた放電が細孔10を経由して拡がり、第二電極8と仕切り板2の間で異常放電を起こすことがある。この問題は、空隙長が短い場合や、希ガスなどの低い電圧で放電開始するガスを用いた場合や、圧力が低い場合に生じやすい。仕切り板2で放電が生じると、金属材料がエッチングされ、コンタミネーションを引き起こすことがある。
【0057】
実施の形態2に係るプラズマ処理装置においては、導電層12に隙間31を形成したことで、空隙9の細孔10近傍に放電が発生しない。従って、空隙9で生じた放電が細孔10を経由して仕切り板2にまで拡がることはなく、金属コンタミを発生させない効果を奏する。
なお、本実施の形態2に係るプラズマ処理装置において、隙間31の大きさは、空隙長や放電ガス種や圧力などを考慮し、放電が仕切り板2に拡がらない大きさとする。
【0058】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3に係るプラズマ処理装置の仕切り板2、第一電極7、第二電極8を示す斜視図である。なお、第二電極8は、その構造を明確にするために、円盤の手前側半分は垂直方向に部分切断した図を示している。
本発明の実施の形態3に係るプラズマ処理装置は、導電層12が第二電極8の内部に埋設されている点が実施の形態1及び2に係るプラズマ処理装置と異なる。
以下、図7を用いて実施の形態3に係るプラズマ処理装置を説明する。導電層12は、第二電極8の内部に埋設されており、且つ、第二電極2と第一電極7とを重ね合わせたとき第一電極7の細孔10の中心軸が延びる位置を中心に、細孔10の孔径より大きい径の円形の隙間31を有する。第二電極8には、図7には記載を省略したが、その一部に導電層12を露出させた給電部が形成されており、該給電部に、同じく図7には記載を省略した交流高電圧電源13を接続する。
【0059】
前述の実施の形態1及び2に係るプラズマ処理装置においては、導電層12の外周と第一電極7、または導電層12の外周と仕切り板2との間で沿面放電が発生するのを防止するために、第二電極8の所定の幅の外縁部に導電層12を形成しなかった。一方、大面積基板の処理を行なう際には、電極を有効に使い極力広い面積で放電を発生させることが望ましい。
【0060】
図7に示すとおり、実施の形態3に係るプラズマ処理装置において、導電層12を第二電極8の内部に埋設したことにより、導電層12の外周部を基点とした沿面放電が抑制され、導電層12を第二電極8の外周から僅かに内側まで設けることができる。その結果、同じ第二電極8の面積は従来通りでも、放電領域を広くすることができる。
なお、実施の形態3に係るプラズマ処理装置においては、細孔10と中心軸を同じくする位置に、導電層の隙間31を形成している。一方、仕切り板2との間で異常放電が生じない条件や、少量の金属コンタミネーションが問題とならない条件においては、隙間31は必ずしも必要ではない。
【0061】
実施の形態4.
図8は、本発明の実施の形態4に係るプラズマ処理装置の仕切り板2を示す断面図である。
実施の形態4に係るプラズマ処理装置は、金属で形成される仕切り板2の、貫通孔11の内面と処理室側の表面の少なくとも一部が絶縁膜51で覆われる点が実施の形態1乃至3に係るプラズマ処理装置と異なる。以下、図8を参照して、実施の形態4に係るプラズマ処理装置を説明する。
仕切り板2には、第一電極7に形成された細孔10と中心軸を同じくする位置に貫通孔11が形成されている。貫通孔11の孔径は、第一電極側表面においては細孔10の孔径より大きく、第一電極から離れるに従って径が増加するテーパー構造となっている。仕切り板2の貫通孔11の内面、及び第一電極7と反対側の表面が、絶縁膜51によりコーティングされている。
【0062】
実施の形態4に係るプラズマ処理装置によれば、仕切り板2の貫通孔11の内面と第一電極7と反対側の表面が絶縁膜51によりコーティングされているため、ラジカル輸送過程での貫通孔11の内面での表面再結合が抑制される。さらに、仕切り板2と第二電極8との間の異常放電を抑制できる。
なお、実施の形態4に係るプラズマ処理装置の絶縁膜51は、例えば金属の仕切り板2の表面へのセラミックの溶射、ガラスライニング、CVDやPVD等により形成できるが、金属表面に絶縁膜を形成しうる手法であればこれらに限定されるものではない。
【0063】
実施の形態5.
図9は、本発明の実施の形態5に係るプラズマ処理装置の仕切り板2、第一電極7、第二電極8を示す斜視図である。なお、第一電極7は、その構造を明確にするために、円盤の手前側半分は垂直方向に部分切断した図を示している。
実施の形態5に係るプラズマ処理装置は、接地導電層41が第一電極7の内部に埋設されており、仕切り板2が誘電体材料からなる点が実施の形態1に係るプラズマ処理装置と異なる。
【0064】
以下、図9を用いて実施の形態5に係るプラズマ処理装置を説明する。接地導電層41が、第一電極7の内部に埋設されており、且つ接地導電層41は細孔10の中心軸と中心が同じで、細孔10の孔径より大きい径の円形の接地隙間42を有する。第一電極7には、図9には記載を省略したが、一部に接地導電層41を露出させた給電部が形成されており、該給電部は電気的に接地されている。また、仕切り板2は誘電体材料で形成されている。
実施の形態1乃至4に係るプラズマ処理装置においては、仕切り板2が、第一電極7の空隙9と反対側の面に接地電位を与える役目を担っており、従って電気的に接地した金属材料で形成する必要があった。一方、本実施の形態5に係るプラズマ処理装置においては、第一電極7が電気的に接地された接地導電層41を内包しているため、仕切り板2によって接地電位を与える必要がない。
【0065】
実施の形態5に係るプラズマ処理装置によれば、接地導電層41を第一電極7の内部に埋設することで、仕切り板2により接地電位を与える必要が無くなる。これにより、仕切り板2を誘電体で形成でき、輸送過程でのラジカルの貫通孔11の内面における表面再結合が抑制される。また、仕切り板2と第二電極8との間の異常放電を抑制できる。
また、仕切り板2により接地電位を与える必要が無いため、仕切り板2の形状とは関係なく、放電領域を形成できる。これにより、貫通孔11の寸法を大きくでき、仕切り板2の加工精度、及び第一電極7との接合精度の要求が緩和される。
【0066】
なお、本実施の形態5に係るプラズマ処理装置では接地導電層41を第一電極7の内部に埋設しているが、接地導電層41は第一電極7の仕切り板2側表面に形成しても構わない。
また、接地導電層41を電気的に接地し、かつ仕切り板2を金属で構成しても良い。この場合、貫通孔11におけるラジカル表面再結合の抑制と、仕切り板2と第二電極8間の異常放電抑制の効果は得られないが、仕切り板2により第一電極7に設置電位を与える必要がなくなる。これにより、仕切り板2の貫通孔11を大きくできるなどの効果が得られる。
【0067】
実施の形態6.
図10は、本発明の実施の形態6に係るプラズマ処理装置の断面図である。
図10を用いて実施の形態6に係るプラズマ処理装置を説明する。第一電極7と第二電極8は空隙9を介して対向しており、空隙9の側面は絶縁体25によって密閉されている。第二電極8にはガス供給孔26が形成されており、ガス供給手段5によって放電部3に供給されたガスは、ガス供給孔26を通って空隙9に到達し、放電にさらされる。その他の部分は実施の形態1に係るプラズマ処理装置と同様である。
【0068】
本実施の形態6に係るプラズマ処理装置によれば、第一電極7と第二電極8の間の空隙9の側面が絶縁体25により塞がれ、放電領域が密閉されているため、荷電粒子の外周からの回りこみによる金属表面での放電を抑制できる。
また、第一電極7と第二電極8を一体化できることから、装置構成が簡素化される。
また、第二電極8を通ってガスが空隙9に供給されるため、空隙9の外周部からガスを供給する場合と比べて、ガスが放電にさらされる時間が均一化され、発生するラジカル密度の面内均一性が向上する。
【0069】
なお、図10において、第二電極8に形成されたガス供給孔26は中心付近に一箇所としているが、これを複数個としても構わない。前述の通り、ガス供給孔26を第二電極8上に複数配置することで、放電部3から空隙9に向けてガスが均一に供給され、発生するラジカルの密度が面内で均一化される効果がある。
【0070】
実施の形態7.
図11は、本発明の実施の形態7に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本実施の形態7に係るプラズマ処理装置では、放電部3を独立のユニットとして構成する点が実施の形態1乃至6に係るプラズマ処理装置と異なる。以下、図11を用いて実施の形態7に係るプラズマ処理装置を説明する。本実施の形態7に係るプラズマ処理装置では、仕切り板2、第一電極7および第二電極8が放電ユニット40を構成する。放電ユニット40はそれ自身が独立しており、チャンバー1と切り離し可能な構造となっている。例えば仕切り板2を真空フランジにより構成することで、チャンバー1と放電ユニット40は、ガスケットやOリングによって接続する構造とする。
【0071】
本実施の形態7に係るプラズマ処理装置によれば、放電部3がチャンバーから切り離し可能な構造であるため、既存のチャンバーに放電ユニット40を取り付けるのみで、リモートプラズマ処理を行なえる。また、大型のチャンバーに対して複数の放電ユニット40を備え付けることで、大面積基板の処理を行なうことができる。
【0072】
実施の形態8.
図12は、本発明の実施の形態8に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。実施の形態8に係るプラズマ処理装置は、仕切り板の内部に冷媒流路を有する点が実施の形態1乃至7に係るプラズマ処理装置と異なる。以下、図12を用いて実施の形態8に係るプラズマ処理装置を説明する。
仕切り板2内に形成された冷媒流路50に冷媒を流通させ、仕切り板2を冷却することで放電に伴う第一電極7、及び第二電極8の温度上昇を抑制する。電極の温度上昇が抑制されることで、冷却しない場合と比べてラジカルの発生密度が高まる。
【0073】
以下、冷却を行なわない場合と比べてラジカルの発生密度が高まる理由を説明する。
当該発明者等は、前述の表面損失評価装置を用いて、アルミナセラミック表面でのN原子表面再結合速度と、材料温度の関係を評価した。
図13は、大気圧におけるN原子減衰速度の材料温度依存性の実験結果を示す。
アルミナセラミックの温度上昇に伴い、N原子の表面再結合速度は単調に増加する結果となった。以上の実験結果から、実施の形態8に係るプラズマ処理装置によれば、冷媒流路50に冷媒を流通させることで仕切り板2を冷却し、第一電極7、及び第二電極8の温度上昇を抑制することにより、電極表面でのN原子の再結合が軽減され、ラジカルの発生密度が向上し、基板の処理速度、及び処理効率が向上する。
なお、前述の冷媒として、空気、水などが挙げられるが、冷媒流路50内を流通し、仕切り板2を冷却する機能を有するものであれば、これらに限定されるものではない。
【0074】
実施の形態9.
図14は、本発明の実施の形態9に係るプラズマ処理装置の断面図である。
実施の形態1乃至8に係るプラズマ処理装置では、放電部3に一対の電極を配置したが、本実施の形態9に係るプラズマ処理装置においては、複数の対の電極を配置して、基板15の処理を行なう。
図14において、チャンバー1は、複数の貫通孔11を有する仕切り板2によって放電部3と処理室4とに隔てられている。放電部3にはガス供給手段5が、処理室4には真空ポンプ6がそれぞれ備えられている。放電部3には一対の電極が二組、すなわち第一電極7(a)と第二電極8(a)、及び第一電極7(b)と第二電極8(b)が、所定の距離だけ離間して空隙9(a)、9(b)を介して対向して配置されている。
【0075】
また、第一電極7(a)、7(b)には、それぞれ複数の細孔10(a)、10(b)が形成されており、いずれも一枚の仕切り板2の放電部側表面に配置されている。
チャンバー1と仕切り板2、及び仕切り板2と第一電極7(a)、7(b)は、それぞれ気密接続され、またチャンバー1と仕切り板2はいずれも電気的に接地されている。
第二電極8(a)、8(b)の空隙9(a)、9(b)と反対側の表面には導電層12(a)、12(b)が形成され、交流高電圧電源13に対して並列に接続されている。
処理室4の内部にはサセプタ14が配置され、サセプタ14の上には被処理材である基板15が仕切り板2と平行な面に置かれている。
【0076】
本実施の形態9に係るプラズマ処理装置によれば、放電部3に複数の組の電極を配置したことにより、広い領域の処理室4にラジカルを供給することができ、大面積基板を処理できる。大面積基板を処理する構造として、一対の電極の寸法を大きくすることでも原理的には対応できるが、一般に一枚の大型の誘電体材料を製造する場合と比べて、複数枚の小型の誘電体材料を製造する方が、合計面積が同じであっても安価である。
また、一枚の大型電極を用いた場合、放電に伴う温度分布により破損する可能性が高まることや、取り回しの悪さなどといった問題が生じる。
【0077】
一方、本実施の形態9に係るプラズマ処理装置では、実施の形態1に係るプラズマ処理装置で示した一対の電極構造から、設計を大きく変更することなく、大面積基板の処理に対応できる。
なお、実施の形態9に係るプラズマ処理装置では、二対の電極を用いたが、本実施の形態を用いる上で、電極の対の数に制限はない。また、それぞれの電極形状は任意に決めることができ、たとえば正方形型や長方形型の電極を採用することで、広い面積の仕切り板に隙間無く配置でき、均一な基板処理が実現できる。
【0078】
実施の形態10.
図15は、本発明の実施の形態10に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本実施の形態10に係るプラズマ処理装置は、複数の被処理材61(a)〜61(c)を1台のプラズマ処理装置により一度に処理するものである。
以下、図15を参照して、実施の形態10に係るプラズマ処理装置を説明する。
実施の形態10に係るプラズマ処理装置では、被処理材が一枚の基板ではなく、3枚の被処理材61(a)、61(b)、61(c)で示す複数の処理対象物である。
また、仕切り板2に形成される貫通孔11は、被処理材61(a)〜61(c)の近傍に開口部を有し、被処理材61(a)〜61(c)に集中的にラジカルを照射する構造となっている。
【0079】
本実施の形態10に係るプラズマ処理装置によれば、貫通孔11の開口部を被処理材61(a)〜61(c)の近傍に配置することにより、所望の位置にのみラジカルを照射することができ、被処理材61(a)〜61(c)の局所的な改質、洗浄、エッチングなどが行なわれる。
また、被処理材61(a)〜61(c)の数、形状などに応じて、細孔10及び貫通孔11の配置、数量を決めることで、一台のプラズマ処理装置により複数の被処理材61(a)〜61(c)の処理を一括して行うことができる。
【0080】
実施の形態11.
図16は、本発明の実施の形態11に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本実施の形態11に係るプラズマ処理装置は、仕切り板2と基板15の間に中空構造のシャワープレート72を配置し、放電部3からラジカルを供給すると共に、シャワープレート72を通じて原料ガスを供給するものである。
以下、図16を用いて実施の形態11に係るプラズマ処理装置を説明する。
放電部3でラジカルを発生させ、細孔10及び貫通孔11を通って処理室4に供給することは、実施の形態1に係るプラズマ処理装置と同様である。本実施の形態11に係るプラズマ処理装置では、仕切り板2と基板15の間にシャワープレート72を配置する。シャワープレート72は中空構造となっており、その内部を通って、原料ガス供給手段71から供給される原料ガスを、基板15に向けて放出する。同時に、放電部3から供給されるラジカルは、シャワープレート72を通過して基板方向に照射される。シャワープレート72と基板15の間では、放電部3から供給されるラジカルと、シャワープレートから供給される原料ガスが反応し、基板15に作用する。
【0081】
本実施の形態11に係るプラズマ処理装置の適用例として、例えば、放電部3に酸素ガスを供給し、放電により原子状酸素を発生させるとともに、シャワープレート72を通じてモノシランガスを供給することで、基板15表面にシリコン酸化膜を形成するプロセスが挙げられる。同様に放電による原子状水素の生成と、モノシランガスの組み合わせによるシリコン薄膜の形成、放電によるN原子の生成と、有機シリコン系ガスの組み合わせによるシリコン窒化膜の形成などが挙げられる。
また、放電部3に希ガスを供給し、放電で生じた希ガスの励起種と原料ガスを反応させ、基板15を洗浄、改質することも可能である。
前述の通り誘電体バリア放電は、原理的にいかなるガスであっても安定な放電が形成できることから、上記のガス種以外にも、放電ガスと原料ガスの組み合わせにより、多種多様な基板処理が実施できる。
【0082】
また、実施の形態11に係るプラズマ処理装置においては、仕切り板2と基板15の間にシャワープレート72を設置しているが、仕切り板2自体を中空構造とすることで、シャワープレート72としての機能を併せ持たせることもできる。この場合、装置構成が簡略化できることに加え、シャワープレート72の表面でのラジカル減衰が生じないため、放電部3で発生したラジカルを効率的に利用することができる。
【0083】
実施の形態12.
図17は、本発明の実施の形態12に係るプラズマ処理装置の断面図である。
本実施の形態12に係るプラズマ処理装置は、チャンバー1と仕切り板2をフレキシブル材料80で接続したものである。
以下、図17を参照して、実施の形態12を説明する。
実施の形態12に係るプラズマ処理装置では、チャンバー1と仕切り板2をフレキシブル材料80で接続し、仕切り板2が少なくとも一方向に動作可能となっている。
【0084】
本実施の形態12に係るプラズマ処理装置によれば、仕切り板2を所望の速度で動かすことにより、ラジカル噴出し位置を時間的に任意に変えることができる。これにより、定位置からラジカルを照射する場合と比べて、基板15に対して均一なフラックスでラジカルを照射できる。
また、貫通孔11の開口部を、基板15におけるラジカルを照射したい部位に沿って動かすことで、所望の部位のみの選択的なプラズマ処理が可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1 チャンバー、2 仕切り板、3 放電部、4 処理室、5 ガス供給手段、6 真空ポンプ、7、7(a)、7(b) 第一電極、8、8(a)、8(b) 第二電極、9 、9(a)、9(b)空隙、10、10(a)、10(b) 細孔、11 貫通孔、12、12(a)、12(b) 導電層、13 交流高電圧電源、14 サセプタ、15 基板、20 スペーサー、25 絶縁体、26 ガス供給孔、31 隙間、40 放電ユニット、41 接地導電層、42 接地隙間、50 冷媒流路、51 絶縁膜、61(a)〜61(c) 被処理材、71 原料ガス供給手段、72 シャワープレート、80 フレキシブル材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一対の電極を有する放電部が、内部に被処理材を設置する処理室に、複数の貫通孔を有する仕切り板を介して接続され、前記放電部に接続されたガス供給手段から前記放電部にガスが供給され、前記処理室に接続された真空ポンプにより前記処理室からガスが排気され、前記一対の電極に電圧が印加されて放電が生起され、前記放電により生じた活性粒子が前記処理室に供給されることで前記被処理材を処理するプラズマ処理装置であって、
前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、
前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、
前記一対の電極のうち第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、
前記一対の電極のうち第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、 前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
内部に複数の対の電極を有する放電部が、内部に被処理材を設置する処理室に、複数の貫通孔を有する仕切り板を介して接続され、前記放電部に接続されたガス供給手段から前記放電部にガスが供給され、前記処理室に接続された真空ポンプにより前記処理室からガスが排気され、前記複数の対の電極に電圧が印加されて放電を生起させ、前記放電により生じた活性粒子が前記処理室に供給されることで前記被処理材を処理するプラズマ処理装置であって、
前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、
前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、
前記複数の対の電極のそれぞれの第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、
前記複数の対の電極のそれぞれの第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、
前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記仕切り板は、金属材料により構成され、
前記第一電極は、一枚の誘電体材料からなり、
前記第二電極は、前記空隙と反対側表面の少なくとも一部に導電層を有する一枚の誘電体材料からなり、
前記仕切り板を接地電位にするとともに前記導電層に電圧を印加することで前記空隙に誘電体バリア放電を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記仕切り板は、金属材料により構成され、
前記第一電極は、一枚の誘電体材料からなり、
前記第二電極は、内部に導電層を有する一枚の誘電体材料からなり、
前記仕切り板を接地電位にするとともに前記導電層に電圧を印加することで前記空隙に誘電体バリア放電を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記仕切り板は、前記貫通孔の内面と前記処理室側の表面の少なくとも一部が、絶縁膜で覆われていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第一電極は、一枚の誘電体材料からなるとともに前記誘電体材料の内部または前記仕切り板側の表面に導電層が形成され、
前記導電層を接地電位にすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第二電極は、1つ以上のガス供給孔を有し、
前記空隙の外周部が絶縁体で覆われることで前記空隙が外周から閉鎖されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記仕切り板、前記第一電極および前記第二電極が一つの放電ユニットを形成し、
前記放電ユニットと前記処理室はそれぞれ独立の真空気密構造を有し、
前記放電ユニットと前記処理室が着脱可能な構造を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記仕切り板の内部に冷媒流路が形成され、
前記冷媒流路に冷媒を流通させることで前記仕切り板を冷却する機構を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記仕切り板と前記被処理材の間にガス供給手段がさらに設けられてなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記仕切り板が少なくとも一方向に動作可能であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
処理室の内部に被処理材を配置し、放電部の内部にガス供給手段からガスを供給し、上記放電部の内部に設置された一対の電極に電圧を印加して放電を生起し、前記処理室に接続された真空ポンプにより上記処理室のガスを排気して前記放電により生じた活性粒子を仕切り板に設けられた複数の貫通孔を通過させて上記処理室に供給して上記被処理材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、
前記放電部の圧力を大気圧近傍に維持し、
前記処理室の圧力を前記放電部の圧力より低く維持し、
前記一対の電極のうち第一電極を、内面が誘電体で覆われた細孔が前記複数の貫通孔に連なるようにしながら誘電体で覆われた面の反対の面を前記仕切り板に重ね合わせて気密接続し、
前記一対の電極のうち第二電極を、誘電体で覆われた面が前記第一電極の誘電体に覆われた面に所定の空隙を介して対向するようにして配置することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項13】
処理室の内部に被処理材を配置し、放電部の内部にガス供給手段からガスを供給し、上記放電部の内部に設置された複数の対の電極に電圧を印加して放電を生起し、前記処理室に接続された真空ポンプにより上記処理室のガスを排気して前記放電により生じた活性粒子を仕切り板に設けられた複数の貫通孔を通過させて上記処理室に供給して上記被処理材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、
前記放電部の圧力を大気圧近傍に維持し、
前記処理室の圧力を前記放電部の圧力より低く維持し、
前記複数の対の電極のうち第一電極を、内面が誘電体で覆われた細孔が前記複数の貫通孔に連なるようにしながら誘電体で覆われた面の反対の面を前記仕切り板に重ね合わせて気密接続し、
前記複数の対の電極のうち第二電極を、誘電体で覆われた面が前記第一電極の誘電体に覆われた面に所定の空隙を介して対向するようにして配置することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項1】
内部に一対の電極を有する放電部が、内部に被処理材を設置する処理室に、複数の貫通孔を有する仕切り板を介して接続され、前記放電部に接続されたガス供給手段から前記放電部にガスが供給され、前記処理室に接続された真空ポンプにより前記処理室からガスが排気され、前記一対の電極に電圧が印加されて放電が生起され、前記放電により生じた活性粒子が前記処理室に供給されることで前記被処理材を処理するプラズマ処理装置であって、
前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、
前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、
前記一対の電極のうち第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、
前記一対の電極のうち第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、 前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
内部に複数の対の電極を有する放電部が、内部に被処理材を設置する処理室に、複数の貫通孔を有する仕切り板を介して接続され、前記放電部に接続されたガス供給手段から前記放電部にガスが供給され、前記処理室に接続された真空ポンプにより前記処理室からガスが排気され、前記複数の対の電極に電圧が印加されて放電を生起させ、前記放電により生じた活性粒子が前記処理室に供給されることで前記被処理材を処理するプラズマ処理装置であって、
前記放電部の圧力が大気圧近傍に維持され、
前記処理室の圧力が前記放電部の圧力より低く維持され、
前記複数の対の電極のそれぞれの第一電極は、前記仕切り板に重ね合わせて気密接続されるとともに前記複数の貫通孔にそれぞれ連なる細孔が設けられ、
前記複数の対の電極のそれぞれの第二電極は、前記第一電極と所定の空隙を介して対向配置され、
前記第一電極の前記空隙側の表面且つ前記第二電極の前記空隙側の表面および前記細孔の内面が誘電体で覆われていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記仕切り板は、金属材料により構成され、
前記第一電極は、一枚の誘電体材料からなり、
前記第二電極は、前記空隙と反対側表面の少なくとも一部に導電層を有する一枚の誘電体材料からなり、
前記仕切り板を接地電位にするとともに前記導電層に電圧を印加することで前記空隙に誘電体バリア放電を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記仕切り板は、金属材料により構成され、
前記第一電極は、一枚の誘電体材料からなり、
前記第二電極は、内部に導電層を有する一枚の誘電体材料からなり、
前記仕切り板を接地電位にするとともに前記導電層に電圧を印加することで前記空隙に誘電体バリア放電を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記仕切り板は、前記貫通孔の内面と前記処理室側の表面の少なくとも一部が、絶縁膜で覆われていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第一電極は、一枚の誘電体材料からなるとともに前記誘電体材料の内部または前記仕切り板側の表面に導電層が形成され、
前記導電層を接地電位にすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第二電極は、1つ以上のガス供給孔を有し、
前記空隙の外周部が絶縁体で覆われることで前記空隙が外周から閉鎖されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記仕切り板、前記第一電極および前記第二電極が一つの放電ユニットを形成し、
前記放電ユニットと前記処理室はそれぞれ独立の真空気密構造を有し、
前記放電ユニットと前記処理室が着脱可能な構造を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記仕切り板の内部に冷媒流路が形成され、
前記冷媒流路に冷媒を流通させることで前記仕切り板を冷却する機構を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記仕切り板と前記被処理材の間にガス供給手段がさらに設けられてなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記仕切り板が少なくとも一方向に動作可能であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
処理室の内部に被処理材を配置し、放電部の内部にガス供給手段からガスを供給し、上記放電部の内部に設置された一対の電極に電圧を印加して放電を生起し、前記処理室に接続された真空ポンプにより上記処理室のガスを排気して前記放電により生じた活性粒子を仕切り板に設けられた複数の貫通孔を通過させて上記処理室に供給して上記被処理材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、
前記放電部の圧力を大気圧近傍に維持し、
前記処理室の圧力を前記放電部の圧力より低く維持し、
前記一対の電極のうち第一電極を、内面が誘電体で覆われた細孔が前記複数の貫通孔に連なるようにしながら誘電体で覆われた面の反対の面を前記仕切り板に重ね合わせて気密接続し、
前記一対の電極のうち第二電極を、誘電体で覆われた面が前記第一電極の誘電体に覆われた面に所定の空隙を介して対向するようにして配置することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項13】
処理室の内部に被処理材を配置し、放電部の内部にガス供給手段からガスを供給し、上記放電部の内部に設置された複数の対の電極に電圧を印加して放電を生起し、前記処理室に接続された真空ポンプにより上記処理室のガスを排気して前記放電により生じた活性粒子を仕切り板に設けられた複数の貫通孔を通過させて上記処理室に供給して上記被処理材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、
前記放電部の圧力を大気圧近傍に維持し、
前記処理室の圧力を前記放電部の圧力より低く維持し、
前記複数の対の電極のうち第一電極を、内面が誘電体で覆われた細孔が前記複数の貫通孔に連なるようにしながら誘電体で覆われた面の反対の面を前記仕切り板に重ね合わせて気密接続し、
前記複数の対の電極のうち第二電極を、誘電体で覆われた面が前記第一電極の誘電体に覆われた面に所定の空隙を介して対向するようにして配置することを特徴とするプラズマ処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−154973(P2011−154973A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17253(P2010−17253)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】
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