説明

半導体エピ薄膜の成長方法及びこれを用いた半導体発光素子の製造方法

【課題】反応ガスを供給するノズルが詰まる現象を緩和して工程効率及び生産性を向上させた半導体エピ薄膜の成長方法及びこれを用いた半導体発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の半導体エピ薄膜の成長方法は、ウェハーホルダーに積載された複数のウェハーを反応チャンバの内部に配置する段階と、ウェハーの積載方向に沿って延長されて備えられたガス供給部を通じて塩素系有機金属化合物を含む反応ガスをウェハーに噴射し、各ウェハーの表面に半導体エピ薄膜を成長させる段階と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体エピ薄膜の成長方法及びこれを用いた半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物系発光素子は、携帯電話のキーパッド、LCD窓だけでなく、TV用バックライトユニット(BLU)及び照明装置に至るまで爆発的に需要が増加している。このような傾向に対応すべく、発光素子に応用できる窒化物又は酸化物半導体(例えば、GaN、ZnO)をエピ薄膜で成長させるのに用いられるサファイアウェハーを4インチから6インチに変えるなどの大口径サファイアウェハーの導入が研究されている。
【0003】
現在の化学気相蒸着技法では、4インチのサファイアウェハーを一度に約10枚成長させる水準で生産されている。また、大口径ウェハーの場合、窒化物半導体と成長用基板として用いられるサファイア基板との熱膨脹係数の大きな差により発生する大きい熱応力及び薄膜成長時に発生する格子定数の差による固有応力のためにウェハーが曲がる現象(bowing effect)や、クラックが発生するなどの問題、性能の劣化による限界がある。このような問題を解決するために、バッチ型(Batch type)化学気相装置が適用されているが、これも原料ガスが低温分解されるという特性により、高温蒸着に困難がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、工程効率を向上させた半導体エピ薄膜の成長方法及びこれを用いた半導体発光素子の製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、反応ガスを供給するノズルが詰まる現象を緩和することができる半導体エピ薄膜の成長方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、生産性を向上させ、ウェハーの変形を防止することができる半導体エピ薄膜の成長方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による半導体エピ薄膜の成長方法は、ウェハーホルダーに積載された複数のウェハーを反応チャンバの内部に配置する段階と、前記ウェハーの積載方向に沿って延長されて備えられたガス供給部を通じて塩素系有機金属化合物を含む反応ガスを前記ウェハーに噴射し、前記各ウェハーの表面に半導体エピ薄膜を成長させる段階と、を有することを特徴とする。
【0006】
前記塩素系有機金属化合物は、ジメチルガリウムクロライド(DMGaCl)及びジエチルガリウムクロライド(DEGaCl)のうちの少なくとも1つであり得る。
前記半導体エピ薄膜は、GaN薄膜であり得る。
このとき、前記反応ガスは、水素気体を含むキャリアガスと共に噴射されてよい。
本発明の半導体エピ薄膜の成長方法は、前記反応チャンバの外側を包むように配置された加熱手段により前記反応チャンバの内部の温度を調節する段階を更に含んでよい。
本発明の半導体エピ薄膜の成長方法は、前記エピ薄膜が成長している間、前記半導体エピ薄膜の成長温度を変化させる段階を更に含んでよい。
前記ガス供給部から噴射される前記反応ガスが前記各ウェハーの上面及び下面に噴射されて流れることで、前記各ウェハーの両面にエピ薄膜を成長させることができる。
内部空間を有する内部管及び該内部管を覆って密閉する外部管を含む前記反応チャンバの前記内部管と前記ウェハーホルダーとの間に位置する前記ガス供給部を通じて前記反応ガスが噴射されてよい。
このとき、前記反応チャンバの内部に前記反応ガスを供給する少なくとも1つのガスライン及び該ガスラインから延長された複数個の噴射ノズルを含むガス供給部の前記複数個の噴射ノズルにより前記反応ガスが噴射されてよい。
このとき、前記複数個の噴射ノズルは、前記積載されたウェハーの各側面と対向し、前記積載されたウェハーとの間に位置するように前記ウェハーの積載間隔に対応して配列され、前記各ウェハーに前記反応ガスを噴射してよい。
また、本発明の半導体エピ薄膜の成長方法は、前記ガスラインの周りに沿って備えられた冷却ラインの内部に流れる冷媒により前記反応ガスを冷却させる段階を更に含んでよい。
本発明の半導体エピ薄膜の成長方法は、1つ以上備えられた前記ガス供給部を通じて各々同じ反応ガスを供給し、相違する反応ガスを区分して供給する段階を更に含んでよい。
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による半導体発光素子の製造方法は、ウェハーホルダーに積載された複数のウェハーを反応チャンバの内部に配置する段階と、前記ウェハー上に第1導電型半導体層、活性層、及び第2導電型半導体層を含む発光構造物を形成する段階と、を有し、前記発光構造物の少なくとも一部は、前記ウェハーの積載方向に沿って延長されて備えられたガス供給部を通じて塩素系有機金属化合物を含む反応ガスを前記ウェハーに噴射して成長させた半導体層を含むことを特徴とする。
【0008】
前記塩素系有機金属化合物は、ジメチルガリウムクロライド(DMGaCl)及びジエチルガリウムクロライド(DEGaCl)のうちの少なくとも1つであり得る。
本発明の半導体発光素子の製造方法は、前記ウェハーと前記発光構造物との間にバッファ層を形成する段階を更に含んでよい。
このとき、前記発光構造物の少なくとも一部は、前記バッファ層が形成される温度より高い温度で形成されてよい。
また、前記バッファ層の反応ガスは、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、及びトリメチルインジウム(TMIn)のうちの少なくとも1つを含み得、前記発光構造物の反応ガスは、ジメチルガリウムクロライド(DMGaCl)及びジエチルガリウムクロライド(DEGaCl)のうちの少なくとも1つを含み得る。
前記半導体発光素子は、窒化ガリウム系半導体発光素子であってよい。
前記反応ガスは、水素気体を含むキャリアガスと共に噴射されてよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ガス供給部の内部で反応ガスの分解比熱が減少するため、工程効率を向上させた半導体エピ薄膜の成長方法を提供することができる。
また、ガス供給部内に残留する物質をエッチングし、ノズルが詰まる現象を緩和した半導体エピ薄膜の成長方法を提供することができ、応力によるウェハーの変形を防止する半導体エピ薄膜の成長方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による化学気相蒸着装置を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の化学蒸着装置を概略的に示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるエピ薄膜の成長方法に適用される化学気相蒸着装置のガス供給部を概略的に示す図面である。
【図4】本発明の一実施形態によるエピ薄膜の成長方法に適用される化学気相蒸着装置の噴射ノズルが配置される位置を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるエピ薄膜の成長方法に適用される化学気相蒸着装置のガス供給部に対する他の例を概略的に示す図面である。
【図6】本発明の一実施形態によるエピ薄膜の成長方法に適用される化学気相蒸着装置のガス供給部に対する更に他の例を概略的に示す図面である。
【図7】本発明の一実施形態による半導体発光素子の製造方法により製造された発光構造物の構造を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供するものである。従って、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張することがあり、図面上に同じ符号で示す要素は同じ要素である。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による化学気相蒸着装置を概略的に示す断面図であり、図2は、図1の化学蒸着装置を概略的に示す平面図である。本発明の一実施形態による半導体エピ薄膜の成長方法は、ウェハーホルダー20に積載された複数のウェハーWを反応チャンバ10の内部に配置する段階と、ウェハーWの積載方向に沿って延長されて備えられたガス供給部30を通じて塩素系有機金属化合物を含む反応ガスをウェハーWに噴射し、各ウェハーWの表面に半導体エピ薄膜を成長させる段階と、を含む。
【0014】
本実施形態に適用される化学気相蒸着装置1は、いわゆる、縦型又は炉型(furnace type)化学気相蒸着装置であり、ウェハーが高温のサセプタ(susceptor)上に配置されるのではなく、噴射ノズルを通じて噴射された反応ガスが複数のウェハーWの間に流れるように複数のウェハーWが縦方向に所定間隔を置いてウェハーホルダーに積載される構造を有する。
【0015】
具体的に、図1及び図2を参照すると、本実施形態に適用される化学気相蒸着装置1の反応チャンバ10は、内部空間を有する内部管11及び内部管11を覆って密閉する外部管12を含み、内部管11内に配置されたウェハーホルダー20に複数のウェハーWを所定間隔で配置する。また、ウェハーWに反応ガスを噴射するガス供給部30は、内部管11とウェハーホルダー20との間に配置され、ウェハーWの積載方向に沿って垂直に延長されるように備えられる。具体的には、反応チャンバ10は円筒状の内部管11及び内部管11を覆って密閉するように下部が開放された外部管12の二重構造で構成され、内部管11の下部にはベースプレート13が開閉可能に備えられる。内部管11、外部管12、及びベースプレート13は、熱に強い石英(quartz)又は炭化ケイ素(SiC)からなる。
【0016】
ウェハーホルダー20には薄膜成長のための複数個のウェハーWが所定間隔で積載されて備えられ、ウェハーWが積載されたウェハーホルダー20は、ベースプレート13の開閉により内部管11内に配置され、外部に排出される。ウェハーホルダー20は、高温及び高圧雰囲気の反応チャンバ10内で熱変形しないように石英などの材質からなるが、これに制限されない。このような縦型化学気相蒸着装置を用いた半導体エピ薄膜の成長方法は、ウェハーホルダー20に数百枚のウェハーWを所定間隔で積載するため、従来のようにサセプタ上にウェハー数枚のみを装着して成長させるものより、大量生産が可能である。
【0017】
一方、図1に示したように、ウェハーホルダー20と連結されてウェハーホルダー20を回転させる回転駆動部50を更に含み、ウェハーホルダー20は、断熱板により保護される回転駆動部50と連結され、回転駆動部50から加えられる回転力により内部管11内で回転する。回転駆動部50によりウェハーホルダー20が回転することで、ウェハーW上に成長するエピ薄膜がウェハーの全表面に亘ってより均一に形成される。
【0018】
また、反応チャンバ10の周りに沿って加熱手段60が備えられるため、反応チャンバ10の内部を加熱して高温に保持することができる。図1及び図2に示したように、加熱手段60は、反応チャンバ10の外側を包む形態で配置され、外部電源の供給を受け、ニクロムのような熱線を用いて反応チャンバ10の内部の温度を上昇させて均一に保持することができる。また、加熱手段60により半導体エピ薄膜を成長させる間に反応チャンバ10の内部の温度を変化させることで、原料又は薄膜特性によって、エピ薄膜を異なる温度で成長させることもできる。
【0019】
ガス供給部30は、ウェハーの表面に半導体エピ薄膜を成長させるように、反応チャンバ10の内部に、外部から反応ガスを供給する少なくとも1つのガスライン31と、ガスライン31と連通して反応ガスをウェハーWに噴射する複数個の噴射ノズル33とを含む(図3参照)。
【0020】
本実施形態による半導体エピ薄膜の成長方法によると、内部空間を有する内部管11及び内部管11を覆って密閉する外部管12を有する反応チャンバ10の内部管11内に配置されるウェハーホルダー20に、複数のウェハーWを所定間隔で積載し、内部管11とウェハーホルダー20との間にウェハーWの積載方向に沿って垂直に延長されて備えられたガス供給部30を通じて塩素を含む有機金属化合物を含む反応ガスをウェハーに噴射することで、複数のウェハーWの表面に半導体エピ薄膜を成長させることができる。
【0021】
縦型化学気相蒸着装置の場合、ウェハーWのそれぞれに対して反応ガスを噴射する複数個の噴射ノズル33を備えたガス供給部30が反応チャンバ10の内部に位置し、反応チャンバ10の外側に加熱手段60が配置されるため、反応ガスは複数個のウェハーWの積載方向に沿って垂直に延長されて備えられたガス供給部30内へと移動する間に高温にさらされる。GaN系半導体エピ薄膜を製造するために一般的に適用されるTMGa、TeGaなどの反応ガスは、300℃〜500℃の比較的低温で分解されるため、1000℃以上の高温に保持される反応チャンバ10のガス供給部30の外に噴射される前にノズル内で分解され、工程効率が低下し、分解された原料がガス供給部30のノズルを詰まらせるという問題がある。
【0022】
しかし、本実施形態によると、半導体エピ薄膜を成長させるための反応ガスとして塩素を含む有機金属化合物を適用することで、ノズル内で反応ガスが分解される比率を減少させ、ノズルが詰まる現象を緩和させることができる。例えば、GaN薄膜を成長させるためのGaソースガスとしてジメチルガリウムクロライド(Dimethyl gallium chloride、(CHGaCl)又はジエチルガリウムクロライド(Diethyl gallium chloride、(CGaCl)を適用することができ、該物質は高い温度でもあまり分解が起こらない(700℃〜800℃以上で分解が起こる)。よって、ガス供給部30の内部における反応ガスの分解の比率が減少し、反応ガスがガス供給部30から噴射され、ウェハーWの表面、即ち内部管11の内部空間で分解される比率が増加するため、工程効率が向上する。また、反応ガスが塩素を含むため、塩素(Cl)と水素(H)の化合物である塩化水素(HCl)気体が生成され、ガス供給部30内に残留する物質をエッチングし、ノズルが詰まる現象を緩和させることができる。
【0023】
具体的には、上記の例に挙げたジメチルガリウムクロライドとジエチルガリウムクロライドの分解反応式は下記の通りである。
【0024】
DEGaCl(ジエチルガリウムクロライド):(CGaCl→GaCl(g)+2C(g)+H(g)
DMGaCl(ジメチルガリウムクロライド):(CHGaCl→GaCl(g)+2C(g)+H(g)
【0025】
即ち、ジエチルガリウムクロライド又はジメチルガリウムクロライドが分解されて生成されたGaClのClが、分解生成物であるHと反応するか、或いは反応ガスを運搬するためのキャリアガス(carrier gas)として適用される水素ガス(H)と反応し、エッチングガスである塩化水素(HCl)ガスを生成する。このように生成された塩化水素(HCl)ガスは、ガス供給部30のガスライン31又は噴射ノズル33内でエッチングガスとして作用し、ガス供給部30内で一部分解された残留物質を除去する機能をする。
【0026】
一方、ガス供給部30から噴射された反応ガスは、各ウェハーWの表面に沿って流れ、GaCl(g)+NH3(g)→GaN(s)+HCl(g)+H(g)のような反応式により複数個の各ウェハーWの表面にGaNエピ薄膜を形成する。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態によるエピ薄膜の成長方法に適用される化学気相蒸着装置のガス供給部を概略的に示す図面である。図3を参照すると、ガス供給部30は、ウェハーの表面に半導体エピ薄膜を成長させるように反応チャンバ10の内部に外部から反応ガスGを供給する少なくとも1つのガスライン31と、ガスライン31と連通して反応ガスGをウェハーWに噴射する複数個の噴射ノズル33とを含む。また、反応ガスGを冷却させるためにガスライン31の周りに沿って備えられる冷却ライン32を更に含む。
【0028】
具体的に、ガスライン31と冷却ライン32を含むガス供給部30は、内部管11とウェハーホルダー20との間にウェハーWの積載方向に沿って垂直に延長されて備えられ、冷却ライン32の内部にガスライン31が配置される二重構造である。即ち、反応ガスGが流れるガスライン31を冷媒Cが流れる冷却ライン32が包む形態を有することで、反応ガスGを冷却するため、反応ガスGが高温雰囲気下でガスライン31に沿って反応チャンバ10の内部に供給される間に反応を起こしてガスライン31の内部で蒸着されることを防止することができる。噴射ノズル33は、複数個がガス供給部30、具体的に冷却ライン32の長さ方向に沿って冷却ライン32の表面から突出して各ウェハーWの位置と対応する位置に備えられ、それぞれがガスライン31と連通される。但し、これは本発明の一実施形態によるエピ薄膜の成長方法に適用される化学気相蒸着装置の一例に過ぎず、冷却ライン32の内部に流れる冷媒により反応ガスを冷却させる段階は、必要に応じて省略してもよい。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態によるエピ薄膜の成長方法に適用される化学気相蒸着装置の噴射ノズルが配置される位置を示す断面図である。先ず、図4(a)を参照すると、複数個の噴射ノズル33は、積載されたウェハーWの各側面と対向するようにウェハーWの積載間隔に対応して配列される。また、図4(b)に示したように、複数個の噴射ノズル33は、積載されたウェハーWとウェハーWとの間に位置するように配列されてもよく、噴射ノズル33は、複数個のウェハーWの表面に反応ガスGを噴射し、各ウェハーWの表面にエピ薄膜を形成させる。
【0030】
具体的に、噴射ノズル33は、各ウェハーWの一面、即ち上面に反応ガスGを噴射してウェハーWの上面のみにエピ薄膜80を形成させるか、或いは各ウェハーWの上面及び下面に反応ガスGを噴射して各ウェハーWの上面と下面にエピ薄膜80を同時に形成させることもできる。即ち、複数個の噴射ノズル33の各々は、積載された各々のウェハーWと対応して配置され、各ウェハーWの上面と下面に反応ガスGが流れるように噴射し、各ウェハーWの上面と下面の両面にそれぞれエピ薄膜80を成長させることができる。ウェハーWの両面にエピ薄膜80が形成される場合、単一のウェハーWから、2つのエピ薄膜からなる発光構造物80’が得られるため、生産性が向上する。
【0031】
また、このようなウェハーWの両面でのエピ薄膜80の成長は、応力fによるウェハーWの変形を防止することができる。即ち、従来の化学気相蒸着装置のように、ウェハーWの一面のみにエピ薄膜80が成長すると、エピ薄膜に強い応力fが作用し、凹んだ形状となる曲がり現象(bowing effect)が生じる。このような現象は、大口径化するほどひどくなり、ウェハーが破損したり、性能劣化したりするような問題点が発生するおそれがある。しかし、本実施形態のようにウェハーWの両面にエピ薄膜80を成長させると、ウェハーWの上面と下面で発生する応力fが互いに相殺されるため、従来の問題点を解決することができる。
【0032】
図5及び図6は、本発明の一実施形態によるエピ薄膜の成長方法に適用される化学気相蒸着装置のガス供給部の他の実施形態を概略的に示す図面である。先ず、図5を参照すると、ガス供給部30’は第1反応ガスG1を供給する第1ガスライン31−1と、第2反応ガスG2を供給する第2ガスライン31−2とを含み、第1及び第2ガスライン31−1、31−2は冷却ライン32の内部に配置される。即ち、図3に示した実施形態とは異なり、2個以上のガスライン31−1、31−2が冷却ライン32の内部に備えられ、第1反応ガスG1と第2反応ガスG2を区分して供給することができ、上述のように、発光構造物の一部に異なるソースガスが適用される場合、ガス供給部30’の第1及び第2ガスライン31−1、31−2により分離されて供給される。
【0033】
また、図6に示したように、2個以上のガス供給部30が内部管11とウェハーホルダー20との間にウェハーWの積載方向に沿って垂直に延長されて備えられてもよい。ここで、各ガス供給部30は異なる反応ガスを区分して供給することができ、各ガス供給部30は単一又は複数のガスラインを含んでもよい。但し、このような構成は、本発明の一実施形態による半導体エピ薄膜の成長方法に適用される化学気相蒸着装置の例示に過ぎず、化学気相蒸着装置の具体的な構成は多様に変更され得る。
【0034】
図7は、本発明の一実施形態による半導体発光素子の製造方法により製造された発光構造物の構造を概略的に示した図面である。本実施形態によると、ウェハーホルダーに積載された複数のウェハーWを反応チャンバ10の内部に配置する段階と、ウェハーW上に第1導電型半導体層81、活性層82、及び第2導電型半導体層83を含む発光構造物80’を形成する段階と、を含み、発光構造物80’の少なくとも一部は、ウェハーWの積載方向に沿って延長されて備えられたガス供給部30を通じて塩素系有機金属化合物を含む反応ガスをウェハーWに噴射して成長させた半導体層を含む。
【0035】
図7を参照すると、ウェハーWの表面に、第1導電型半導体層81、活性層82、及び第2導電型半導体層83を順に成長させて発光構造物80’を形成する。発光構造物80’を形成する第1及び第2導電型半導体層81、83は、それぞれn型及びp型半導体層であり、窒化物半導体からなってもよい。本実施形態の場合、これに制限されないが、第1及び第2導電型はそれぞれn型及びp型を意味するものと理解することができる。
【0036】
第1及び第2導電型半導体層81、83は、AlInGa(1−x−y)N組成式(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1である)を有し得、例えば、GaN、AlGaN、InGaNなどの物質がこれに該当する。第1及び第2導電型半導体層81、83との間に形成される活性層82は、電子と正孔の再結合により所定のエネルギーを有する光を放出し、量子井戸層と量子障壁層が交互に積層された多重量子井戸層(MQW)構造、例えばInGaN/GaN構造を用いることができる。一方、第1導電型半導体層81はSi、Ge、Se、Te又はCなどの不純物でドーピングされ得、第2導電型半導体層83はMg、Zn又はBeなどの不純物でドーピングされ得る。
【0037】
第1及び第2導電型半導体層81、83上には、第1及び第2導電型半導体層81、83のそれぞれと電気的に連結される第1及び第2導電型電極84、85が形成される。図7に示したように、第1導電型電極84は、第2導電型半導体層83、活性層82、及び第1導電型半導体層81の一部がエッチングされて露出した第1導電型半導体層81上に形成され、第2導電型電極85は、第2導電型半導体層83上に形成される。この場合、第2導電型半導体層83と第2導電型電極85とのオーミックコンタクト機能を向上させるためにITO、ZnOなどのような透明電極86を更に備えてもよい。
【0038】
このとき、反応ガスには、窒化ガリウム系化合物半導体(Ga(Al、In)N)のソースガスとしてトリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、トリエチルインジウム(TEIn)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)などを適用することができ、n型半導体層のSiドーピング原料としてモノシラン(SiH)、ジシラン(Si)を、Geドーピング原料としてゲルマンガス(GeH)、テトラメチルゲルマニウム((CHGe)、テトラエチルゲルマニウム((CGe)などの有機ゲルマニウム化合物を適用することができる。また、p型半導体層のMgドーピング原料としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)、ビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCpMg)などを適用することができる。一方、本実施形態の場合、発光構造物を成長させる過程で、Gaの反応ガスとして、塩素を含む有機金属化合物、例えばジメチルガリウムクロライド、ジエチルガリウムクロライドを含む。
【0039】
このような原料物質を含む反応ガスにより成長させた窒化ガリウム系化合物半導体は、Al、Ga、及びInの他に3族元素を含み得、必要に応じて、Ge、Si、Mg、Ca、Zn及びBeなどのドーパント元素を含み得る。また、意図的に添加した元素に限らず、成膜条件などにより必然的に含まれる不純物、原料、及び反応管の材質に含まれる微量の不純物を含むこともある。
【0040】
本実施形態では、塩素を含む有機金属化合物を含む反応ガスにより、発光構造物80’の全体が形成されると説明したが、これとは異なり、発光構造物80’の一部、例えば基板、バッファ層、n型半導体層、活性層、及びp型半導体層のうちの少なくとも1つを形成してもよい。具体的には、ウェハーWと発光構造物80’との間に窒化物などからなるバッファ層(図示せず)を成長させてもよく、低温(500℃)で、TMGa、TEGaなどをソースガスとしてバッファ層を成長させた後、加熱手段60で反応チャンバ10の温度を上昇させ、高温で成長速度の速いジメチルガリウムクロライド(DMGaCl)又はジエチルガリウムクロライド(DEGaCl)をソースガスとしてn型又はp型半導体層を成長させることもできる。但し、塩素系有機金属化合物を含む反応ガスは、発光構造物80’の一部を成長させる時のみに適用されるのではなく、上述した例とは逆に、バッファ層を形成する時又はGaN基板を形成する時のみに適用されるなど、多様な方法及び手順で適用されてもよい。
【0041】
また、具体的には図示しなかったが、本発明の一実施形態によるエピ薄膜の成長方法を用いて、基板(ウェハー)の上面にバッファ層、GaN薄膜、ソース(source)、ゲート(gate)、ドレーン(drain)を形成することで、発光構造物だけでなく、窒化系電界効果トランジスタ又はその一部を製造することもできる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 化学気相蒸着装置
10 反応チャンバ
11 内部管
12 外部管
13 ベースプレート
20 ウェハーホルダー
30、30’ ガス供給部
31 ガスライン
31−1 第1ガスライン
31−2 第2ガスライン
32 冷却ライン
33 噴射ノズル
50 回転駆動部
60 加熱手段
80 エピ薄膜
80’ 発光構造物
81 第1導電型半導体層
82 活性層
83 第2導電型半導体層
84 第1導電型電極
85 第2導電型電極
86 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハーホルダーに積載された複数のウェハーを反応チャンバの内部に配置する段階と、
前記ウェハーの積載方向に沿って延長されて備えられたガス供給部を通じて塩素系有機金属化合物を含む反応ガスを前記ウェハーに噴射し、前記各ウェハーの表面に半導体エピ薄膜を成長させる段階と、を有することを特徴とする半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項2】
前記塩素系有機金属化合物は、ジメチルガリウムクロライド(DMGaCl)及びジエチルガリウムクロライド(DEGaCl)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項3】
前記半導体エピ薄膜は、GaN薄膜であることを特徴とする請求項2に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項4】
前記反応ガスは、水素気体を含むキャリアガスと共に噴射されることを特徴とする請求項1に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項5】
前記反応チャンバの外側を包むように配置された加熱手段により前記反応チャンバの内部の温度を調節する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項6】
前記エピ薄膜が成長している間、前記半導体エピ薄膜の成長温度を変化させる段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項7】
前記ガス供給部から噴射される前記反応ガスが前記各ウェハーの上面及び下面に噴射されて流れることで、前記各ウェハーの両面にエピ薄膜を成長させることを特徴とする請求項1に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項8】
内部空間を有する内部管及び該内部管を覆って密閉する外部管を含む前記反応チャンバの前記内部管と前記ウェハーホルダーとの間に位置する前記ガス供給部を通じて前記反応ガスが噴射されることを特徴とする請求項1に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項9】
前記反応チャンバの内部に前記反応ガスを供給する少なくとも1つのガスライン及び該ガスラインから延長された複数個の噴射ノズルを含むガス供給部の前記複数個の噴射ノズルにより前記反応ガスが噴射されることを特徴とする請求項1に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項10】
前記複数個の噴射ノズルは、前記積載されたウェハーの各側面と対向し、前記積載されたウェハーとの間に位置するように前記ウェハーの積載間隔に対応して配列され、前記各ウェハーに前記反応ガスを噴射することを特徴とする請求項9に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項11】
前記ガスラインの周りに沿って備えられた冷却ラインの内部に流れる冷媒により前記反応ガスを冷却させる段階を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項12】
1つ以上備えられた前記ガス供給部を通じて各々同じ反応ガスを供給し、相違する反応ガスを区分して供給する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体エピ薄膜の成長方法。
【請求項13】
ウェハーホルダーに積載された複数のウェハーを反応チャンバの内部に配置する段階と、
前記ウェハー上に第1導電型半導体層、活性層、及び第2導電型半導体層を含む発光構造物を形成する段階と、を有し、
前記発光構造物の少なくとも一部は、前記ウェハーの積載方向に沿って延長されて備えられたガス供給部を通じて塩素系有機金属化合物を含む反応ガスを前記ウェハーに噴射して成長させた半導体層を含むことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記塩素系有機金属化合物は、ジメチルガリウムクロライド(DMGaCl)及びジエチルガリウムクロライド(DEGaCl)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項13に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記ウェハーと前記発光構造物との間にバッファ層を形成する段階を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記発光構造物の少なくとも一部は、前記バッファ層が形成される温度より高い温度で形成されることを特徴とする請求項15に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記バッファ層の反応ガスは、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、及びトリメチルインジウム(TMIn)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項16に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項18】
前記発光構造物の反応ガスは、ジメチルガリウムクロライド(DMGaCl)及びジエチルガリウムクロライド(DEGaCl)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項19】
前記半導体発光素子は、窒化ガリウム系半導体発光素子であることを特徴とする請求項13に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項20】
前記反応ガスは、水素気体を含むキャリアガスと共に噴射されることを特徴とする請求項13に記載の半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−21333(P2013−21333A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156425(P2012−156425)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】