説明

半導体パワーモジュール

【課題】
Pbフリーはんだの高温系はんだとして、Sn−(5〜10)Sb(融点:235〜243℃)が一般に知られている。この組成では階層用としては235℃で制約されるので、公知のSn−Ag−Cu系Pbフリーはんだを235℃以内で接続することは難しい。例え接続できたとしても、この系のはんだは耐クリープ性はあっても、クリープ変形ができず、残留応力が高く、パワーモジュールの#2はんだとしての温度サイクル寿命が短いことが分かった。
【解決手段】
Pbフリーの階層はんだで高信頼性とはんだ付けプロセスを両立する方法として、高温系はんだとして、Sn−(11〜20)Sb(固相線温度は246℃)、低温系はんだとして240℃以下での接続が可能なSn−3Ag−0.5Cu−5Inを用いること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体パワーモジュールに係り、特に、IGBT,パワーMOSFETなどの接続に適用する技術に好適な半導体パワーモジュール関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パワーモジュールは、SiチップとAlN,Al23,Si34等の絶縁基板及び熱伝導性に優れたCu,Alベース基板等とがはんだ付けされ、シリコーンゲルで充填される構成が主流である。今までは、SiチップとAlN,Al23,Si34等の絶縁基板の電極とがPb系高温はんだで接続された後、チップを搭載した絶縁基板は、大型のCuベース基板等に低温系のPb−Sn共晶系はんだではんだ付けされる構成である。
【0003】
近年、環境の問題でPbフリーはんだの使用が必須になり、国内では、低温側のSn−37Pb共晶はんだ代替用としてSn−3Ag−0.5Cuはんだが民生,コンピュータ,通信用に広範囲に使用されている。
【0004】
しかし、Sn−3Ag−0.5Cuはんだは、ベース基板のような大型基板接続用として高信頼性を確保されるまでには至っていない状況にある。仮に、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ(融点;217〜221℃)が低温用として用いられた場合、温度階層接続可能な高温系Pbフリーはんだとして、Sn系で最も融点の高いSn−(5〜10)Sb(融点:235〜243℃)が知られている。ところが、この組合せではSn−3Ag−0.5Cuのはんだ付け温度を225〜230℃以下で行う必要があるので、温度ばらつきが少なく、特殊な条件でないと接続できない状況にある。即ち、この温度ではぬれ性を確保できない状態である。
【0005】
尚、Sn−Ag−Cu−In系はんだ組成特許としては、米国特許第5520752号公報が知られている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5520752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Pbフリーの2階層はんだを用いた高信頼パワーモジュールを目的として、特に産業用,車両用高出力チップ搭載を対象にした構造がある。
【0008】
これまでの低温用PbフリーはんだのSn−3Ag−0.5Cuは耐クリープ性は大であっても、自身のクリープ変形ができ難いため、パワーモジュール等の大型基板端部での大変形に対応できず、結局、応力が高いため、寿命が短くなることが分かった。
【0009】
また、これまでの高温用Sn−(5〜10)Sb(融点;235〜243℃)では、低温側Pbフリーはんだ〔Sn−3Ag−0.5Cu(融点;217〜221℃)〕付け時に、両者の融点が近いため、先に接合した高温側はんだを溶かす恐れがあり、十分な温度マージンがとれない状況にある。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的は、低温系Pbフリーはんだで大型基板に対し信頼性を確保した接合ができて、かつ温度階層接続を可能とする高温系Pbフリーはんだとの組合せ構造を可能とした半導体パワーモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
Pbフリーの階層はんだで高信頼性とはんだ付けプロセスを両立させる方法として、高温側はんだとして、Sn−(11〜20)Sb(一例としてSn−15Sbの融点;246〜290℃)を用いる構成を考えた。
【0012】
パワーモジュール構造の場合、幸い耐熱性の部品で構成されているため、高温用はんだを用いる時は、はんだ付け温度を十分に上げて、ぬれ性を確保することが可能である。Sn−(11〜20)SbはSn−(5〜10)Sbと比べ、多少ぬれ性は劣るがはんだ付け温度を上げることで、ぬれ性を向上させることができる。また、Sn−(5〜10)Sbと比べ、短所とされるはんだの硬さ,変形性に劣るとしても、SiチップとAlN基板間の熱膨張係数の差が少ない構成であることからはんだの歪が小さく、温度サイクルにも耐えられる。
【0013】
Sn−15Sbの特徴を更に生かすためには、はんだとチップ周囲を物性を特定化したエポキシ樹脂で被覆すると、樹脂により、はんだの変形を拘束することで寿命向上が図れる。更に、メタライズとの反応については、Sn−Ag−Cu系も同様であるが、化合物成長は活発である。このため、後述するようにSn−Sbはんだ中にCu,Ni等を添加することで、メタライズ膜との組合せ、熱処理条件等を考慮し、厳しい条件にも対応できる。
【0014】
他方、Pbフリーの低温側はんだとして、大型Cuベース基板に対して、端部での大変形に比較的耐えられるはんだ組成として、Sn−3Ag−0.5Cu−5In(203〜212℃)を見出した。このはんだは、Sn−3Ag−0.5Cu(217〜221℃)よりはんだ付け温度を約10℃下げられるので、階層接続用としての作業温度マージンを広げることができる。Sn−3Ag−0.5Cu−5Inのはんだ付け温度は230〜240℃で十分可能である。
【0015】
これより、高温用としてSn−15Sb(246〜290)℃、低温用としてSn−3Ag−0.5Cu−5In(203〜212℃)の組合せを用いることで、Pbフリーはんだでの温度階層接続と、接続部の信頼性を確保できるパワーモジュールが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半導体パワーモジュールとすることにより、低温系Pbフリーはんだで大型基板に対し信頼性を確保した接合ができて、かつ温度階層接続を可能とする高温系Pbフリーはんだとの組合せ構造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
低温系Pbフリーはんだで大型基板に対し信頼性を確保した接合ができて、かつ温度階層接続を可能とする高温系Pbフリーはんだとの組合せ構造を可能とした半導体パワーモジュールを提供するという目的を、簡単なはんだ構成で実現できた。
【0018】
(実施例1)
パワーモジュールのチップを接続する高温系はんだの場合、はんだ付け温度は400℃近くまで可能である利点を生かして、意図的にはんだ付け温度を高めて、ぬれ性を確保することを考えた。更に、パワーモジュールのPbフリーはんだにおいては、部品の耐熱性の問題はないので、チップ下はんだ接続時に、はんだ付け温度を少しでも上げられることが、ボイド対策,ぬれ性確保等の接続の歩留まり向上に繋がる。使える可能性のあるはんだの中で融点が最も高いものは、Sn−Sb系であり、これまではSb;5〜10%の組成の範囲で検討されてきたので、階層接続用としては固相線温度の235℃で制約される。
【0019】
これに対し、Sb;10%を超える組成選定を視野に入れれば、固相線温度は246℃であり、低温側をSn−3Ag−0.5Cu−5In(203〜212℃)を用いることで、240℃以下での低温側はんだの接続は十分可能である。また、Sn−3Ag−0.5Cu−5Inはセラミック基板と大型Cuベース基板との温度サイクル試験における信頼性は、Sn−3Ag−0.5Cuに比べて高く、高信頼性を確保できる。はんだ付けは、高温系も低温系も水素炉もしくは真空と水素雰囲気を組合せた真空はんだ付け炉を用いた。
【0020】
(1)半導体チップ側接続用高温系Pbフリーはんだ
1−1)Sn−Sb組成の選定
Sn−(5〜10)SbはCuパイプの接続等に使われてきた組成であり、伸び、強度はSn−3.5Ag並みである。Sb;10%を過ぎると、徐々に伸びは低下してくるが、急激に低下するものではない。150℃での引張試験では、Sbが10%過ぎると、引張強さは上昇するが飽和気味になる。また、伸びは10%過ぎて低下するが、Sb;15%における伸びはSn並みであることから、特性として問題はないと思われる。これらの事実から、機械特性として、Sb;10%過ぎると徐々に硬くなる傾向になるが、20%までは使える範囲と考えた。従って、Sbの適正範囲は、11%以上,20%以下とした。
【0021】
チップ下接続用はんだとして、多少、硬くなっても使える理由、及びSbの適正組成範囲については以下のように考える。高出力チップに対し、熱伝導性に優れるAlN基板が一般に使用されている。AlN(4.3×10-6/℃)とSiチップ(2×10-6/℃)の熱膨張係数の差は小さいので、多少はんだは硬くても温度変化で発生する歪は小さいので、チップ寸法,パワーの程度等のレベルの問題は多少考えられるが、チップ寸法を小さくする、出力を下げる対策が可能であれば対応でき、信頼性で大きな問題にはならないと思われる。Sn−15Sbの低サイクル疲労寿命は、変位が小さいとSn−3.5Sb以上の寿命を呈している。
【0022】
しかし、変位が大きいと硬くなるためか寿命が低下する。即ち、あまり硬くなることは、チップに大きな応力が作用するので、好ましくない。そこで、理想的な領域ではないが、Sb:10%以上で、良好な範囲として、12〜15%(液相線温度;約290℃)を選定した。即ち、330〜350℃位のはんだ付け温度(はんだ付けは水素を含む還元雰囲気で行う場合、意図的に高くすることで、還元され易くなり、ボイド低減化につながる)で接続できる。Sb;20%の場合、はんだの液相線温度は325℃であり、水素中でぬれ性を確保するため、水素による還元力を高める手段として、液相温度から十分離れた高温の380℃で接続しても、部品への熱影響の問題は生じない。そこで、Sbの範囲として11〜20%を選定した。
【0023】
1−2)Sn−Sbはんだへの微量元素添加量(Cu,Ni,Ge他)
Sn系はんだの高温でのはんだ付け、及び高温での長時間の使用になるので、電極,基板へのアタック作用は強い。Cuベース基板,Cu電極を用いる場合、Cuをはんだ中に1〜5%入れることにより基板,電極に対するSnによるくわれ防止及び高温長時間放置に対しても化合物層を安定化させる役割を果たす。表面にNiめっき,Ni/Auフラッシュ等の場合、同様にはんだ中にCu,Niを添加することはCu電極の場合と同様な効果がある。Ni添加の場合は、はんだ中に固溶され難いので0.1〜0.5%程度で良い。また、Sn−Sb結晶粒の粗大化防止のため、Ge:0.01〜0.1%添加は微細化による改質及び酸化防止によるボイド低減化に効果が期待できる。この他、0.1%以上,1%以下のZn,Al,Ag,P,Bi添加もはんだ及び反応層改質の可能性がある。
【0024】
(2)ベース基板とセラミック絶縁基板接続用Pbフリー低温系はんだ
2−1)Sn−Ag−Cu−In系におけるIn量の選定
セラミック絶縁基板と大型Cuベース基板との接続用Pbフリー低温系はんだ組成選定のため、可能性のある有望な組成についてのモデル試験片を用いた温度サイクル試験(−55〜125℃)によるはんだ寿命評価を行った。ある程度、予備実験ではんだ組成は絞った。ボイドの多いZn添加のはんだ(Sn−Zn系、及びSn−Ag−Cu系にZnの微量添加)は、現状プロセスではボイド率の目標をクリアできず、評価しても悪い結果になり、除外せざるを得なかった。Sn系はんだへの添加元素についての基本的な見方は、Sn中に固溶すると内部歪が増し更に硬くなるので、基板接続用はんだとして期待される変形性がなくなるので、Snより柔らかいIn以外の元素では難しいと考えている。
【0025】
0.3mmCu貼りアルミナ基板(t0.3)と大型のCuベース基板(t4)間に150μmの各種圧延はんだ箔を置いて、還元雰囲気中でmax245℃のはんだ付け温度でリフローを行った。はんだ箔は、絞り込んだ組成として、表1に示した性質が異なり、有望な7種類の組成に絞り込んで、モジュール構造での温度サイクル試験を行った。
【0026】
組成はSn−Ag−Cu系にInを5%入れることで、低温系の後付けはんだ用としてベースとなるSn−3Ag−0.5Cuに比べ、約10℃下げられ、かつ接合界面での十分な強度確保を考慮したものである。In添加はBi添加と異なり、微量添加による各種メタライズに対する接合強度,バルク材の機械的性質に及ぼす悪影響は少ないことが知られている。また、Sn晶への固溶なので、Sn−Inの共晶を生成させない範囲では、高温に対する信頼性はSn−Ag−Cu並みである。
【0027】
しかし、In量を多く入れることはSnマトリクス中に更にInを固溶させることになるので、内部歪が増し、伸び難くなる。Inの場合は素地のSnより柔らかい元素のためか、強度上昇は少なく、伸びの低下も少なく、In添加により機械的強度への影響は少ないことが知られている。Inを5%以上入れると、接合界面での強度低下が始まる。
【0028】
また、In添加が多くなると、融点が下がるので、温度階層接続ではより有利になるが、長期高温放置試験での界面での合金層(Cu6Sn5,Cu3Sn)が成長し易くなり、強度低下が起こる。7%までは、強度低下が少ないことを確認したので、Inの上限を7%とした。他方、Inが少ないと、Sn−3Ag−0.5Cuに近づくことになり、温度サイクル試験の寿命が問題になる。Inは1%でも固溶体の性質を多少変える効果は期待できるので、Inの下限としては1%とした。
【0029】
表1は−55〜125℃,2500サイクル経過後に、断面観察により、継手全長に対するクラック長を測定し、クラック進展率を整理したものである。
【0030】
【表1】

【0031】
これらの結果、及び断面におけるクラック進展状況の観察、更にはメカニズム解明実験により、以下の新たな知見が得られた。
1.In;5%入れることで、Sn系はんだのクラック進展率が低下する。
2.Sn系はんだでも3%Ag入り((i))が、0%((ii)),1.5%入り((iii))より優れる。
3.Sn系のはんだは、従来のSn−37Pb共晶はんだに比べ、クラック進展率が大幅に増加する。
【0032】
結論として、Sn系はんだは針状Ag3Snのネットワークが堅固に発達した系にInが入った組成が優れていることが分かった。この内容はこれまでの一般的知識では予測できない事実である。特に高温保持,低温保持の長い温度サイクル試験特有なクリープが強く支配する劣化現象と思われる。
【0033】
2−2)Sn系のはんだにInが添加されることで寿命が向上する理由
Inが添加されることで寿命が向上する理由は、クラック進展の断面観察によると、感覚的ではあるが、InなしのSn系においてはクラックが一平面上を直線的に進む傾向が強い(直感的にシャープな進展に見える)。引張試験において、一箇所に集中するネッキング現象が起き易いこと、また、ねじり試験においてはねじった方向(試験片に直角方向に)に直線的な破壊が起きる傾向があることからも、クラックが一箇所に集中する間接的証明である。一平面上をクラックが直線的に進む傾向、即ち、クラックパス部以外のはんだは応力緩和が少ないことを意味する。Inを入れることで、Snマトリクス全域はInがくまなく固溶しているので、周辺の応力状態はこのマトリクスを介して隣接のマトリクスに伝えられる。また、応力集中部でもミクロ的な応力分散効果が期待される。その結果、本来のSn系はんだの強さ,粘っこさが欠け,クラック進行方向以外にも応力を分散・開放することで、クラックの直線的進展を緩和することで、遅延効果が生まれるものと思われる(鋭さが欠けた進展に見える)。
【0034】
材料の内部減衰性が確認できる衝撃試験(シャルピー)においても、Sn系はんだにInを添加することで、衝撃吸収エネルギーが低下することを確認している。約5%Inを添加することで、Sn−37Pb共晶並みになることを確認した。衝撃試験結果が必ずしも、クラック進展に直接に関係しているかは不明であるが、材料の衝撃エネルギーを吸収できる減衰能が、間接的ではあるが、Sn晶にInが固溶することで現れると考える。
【0035】
2−3)In添加した系で、Agが十分入った系が優れる理由及びAgの適正範囲
Agが多い系はAg3Snの針状のネットワークを形成するので、高温でも強く、安定している針状のAg3Snが複合材の補強効果として存在している。この影響がクラック進展を阻止しているものと考える。この結果、(v)Sn−0.5Cu−5In,(vi)Sn−1.5Ag−0.5Cu−5Inは、Ag添加量の多い(iv)Sn−3Ag−0.5Cu−5Inより、クラック進展が速くなったと推定する。クラック進展防止にはAg量の効果より、In量の効果が顕著に優れるので、Ag添加の下限は0.1%とした。Ag添加の上限はコスト等を考慮し、実用的な範囲の4.5%とした。
【0036】
2−4)Sn−Ag−In系で、Cuの適正範囲
Sn−Ag系にCuの適正値選定と同様である。即ち、Cuは1%以上入ると伸びが大きく低下することが知られている。ベース基板とセラミック絶縁基板接続用はんだの場合、チップ下はんだと異なり、通常、150℃以上での使用は少ないことが予想される。このため、Cuとの反応を抑える手段として、Cuの上限として2%とし、下限値として0.1%とした。下限が少なくて良い理由は、Cu板の溶け込みは必然的に起こるためである。合金層反応阻止より、大変形に対応できるためにはんだの機械特性を劣化させないことで選定した。
【0037】
2−5)Sn−Ag−Cu−In系で、Bi添加の適正範囲
高信頼性が要求されるパワーモジュールとしては、添加すると急激に脆くなることが知られているBiは入れないことが基本である。しかし、約5%Inの中にBiを僅かに入れることで、作業性が改善(流動性が良くなり、ボイド低減化に繋がり、信頼性向上にも繋がる)される場合がある。その場合のBiの適正添加量は0.5〜1%程度である。Bi:1%以上では信頼性に影響を及ぼす脆さが現れるので、大変形に対応できなくなる。特にマイナス側の低温での衝撃吸収エネルギーの低下が顕著になる。
【0038】
(3)Sn−Ag−Cu系はんだがSn−37Pb共晶はんだに比べ、対温度サイクル性が低下する理由
民生品,家電品を対象にした場合、低サイクル疲労試験ではSn−3Ag−0.5CuがSn−37Pb共晶より優れることは公知〔例えば、苅谷;はんだ材料の非線形特性と熱疲労信頼性,エレクトロニクス実装学会,Vol.8 No.2(2005)〕とされている。そこで、パワーモジュールの絶縁基板とベース基板とのはんだの温度サイクル試験で、Sn系はんだの寿命が大幅に低下する理由を考察した。パワーモジュールのはんだを挟むセラミック絶縁基板及びCuベース基板表面に歪ゲージを貼り付け、温度サイクル中における歪速度の測定を行った。
【0039】
その結果、高温から低温への変化時に最大歪速度で、1.5〜2×10-6/sを示し、非常に遅いことが分かった。
【0040】
これまでは、民生用品の部品継手では、歪速度が遅いとされる分野でも、遅くても10-4/sレベルと見なされていた。パワーモジュールの絶縁基板及びベース基板の歪速度が遅い理由は、パワーモジュール固有のCuベース基板等の大きな熱容量のためである。急激な温度変化に対して、チップ部分は表面からの冷却に影響されるが、Cuベース基板近傍のはんだの歪速度は1.5〜2×10-6/s以上にはなり難く、大部分はそれより更に遅い歪速度で変化していることになる。
【0041】
従って、この歪速度及びこの歪速度以下におけるはんだの機械的特性,金属組織的特性を比較するとSn−3Ag−0.5CuとSn−37Pb共晶との明らかな違いが現れることが分かった。即ち、Sn−37Pb共晶の場合は、歪速度;10-4/sレベル以下で伸びは急激に増し、それに伴って応力は急激に低下する超塑性現象を呈する。
【0042】
このため、はんだクラック起点であり、最大歪が発生するはんだ端部においては、モジュールの大変形に追従できて、はんだは破壊し難く、金属組織的にはα−Pb晶とβ−Sn晶の相互拡散が活発で、粒子間はミクロクラックが発生し難く、クリープしても劣化が少ないので、損傷を受けない性質があると思われる。これと対照的にSn−3Ag−0.5Cuは比較的硬めで強いβ−Sn晶の集合体であり、クリープ変形が起きると、β−Sn晶は成長し、粒内が変形し、粒界がすべることでミクロクラックを発生する。
【0043】
結果として、劣化が顕著であることからクリープ損傷を回復できないことが予想される。Sn−3Ag−0.5Cuがクラック進展を早める他の要因として、はんだ端部で応力が一箇所に集中し易い性質を持つことも上げられる。即ち、応力が一箇所に集中し易い性質の傍証として、引張試験において、ネッキングを起こし易いこと、またねじり試験において、破壊がねじり方向と平行に直線的に生じていることである。他方、Sn−37Pb共晶ははんだ層全体で変形する様相を呈し、引張試験でも、一箇所に集中することなく、評点間距離全体で変形する挙動が観察される。
【0044】
この結果、パワーモジュールの低温用Pbフリーはんだとして、温度サイクル試験において、Sn−3Ag−0.5Cuよりもかなりの寿命向上が期待できる代表組成として、Sn−3Ag−0.5Cu−5Inを選定した。
【0045】
(実施例2)
Sn−15Sbは硬めのはんだであることから、接続後の信頼性に課題がある。解決策として、はんだの熱膨張係数を下げることができれば、実装後、はんだに作用する応力,歪を下げることができる。そこで、低熱膨張係数で、熱伝導性に優れたカーボン繊維との複合構造にすることで高信頼化を図った。
【0046】
Sn−15Sb中に、カーボンにCuもしくはNiめっきを施して熱処理した低熱膨張の繊維(例えば、径;約8μm,長さ;直径の2〜10倍程度)をガス放出の邪魔にならない程度(5〜20vol%)にはんだ中に散りばめることで、カーボン繊維は強度が大でアスペクト比が大なので、はんだを拘束することができ、はんだ全体の低熱膨張化を可能にする。
【0047】
これによりSiチップに作用する応力が低減できるので、信頼性を向上させることができる。低熱膨張化できる他の金属,非金属繊維として、インバー,石英,W,Mo,SiC,SiN,AlN等があるが、熱伝導性,軽量化,加工性等を考慮するとカーボン繊維が優れる。メタライズがはんだにぬれて周囲にボイドを残さず、かつ、はんだ付けに耐えられる強固なメタライズである必要がある。メタライズされた適度な長さの繊維(例えば50〜100μm)をはんだボールの中に混ぜて、ペースト化して使用する方法は最も簡単に作れる複合はんだである。はんだボールとメタライズされた繊維を混ぜて溶かして、不活性雰囲気で圧延して箔にする方法もある。
【0048】
はんだ箔の場合、メタライズされた長いカーボン繊維をクロス状に配置して、はんだ中に埋め込んだ構造、あるいはメッシュ状に編んだ網構造も可能である。はんだ厚さを100μm程度とすれば、25μm程度のクロスの網が1枚はんだ層に埋め込まれていれば、低熱膨張による信頼性向上の効果は十分期待できる。クロスに編んだ網は短い繊維より剛性の効果が大きいので、より低熱膨張になり信頼性への影響は大きい。
【0049】
(実施例3)
1)間隙制御用金属ボール分散はんだ箔(基板側はんだ)
低温系Pbフリーはんだ箔を用いて、セラミック絶縁基板をCuベース大型基板にはんだ付けする場合、被接合体の重さも影響し、高温時につぶれ気味に傾いて接続される恐れがある。傾いて接続されないように、最小はんだ厚の確保のため、できる限り均一に分散されるように熱伝導性に優れた硬めのCuボール(微量元素添加)、はんだに食われにくく、かつ、ぬれ易くしたNi/Auフラッシュめっきを施した硬めのCuボール(例えば、径;50〜80μm)を、10mm□当たり約20個程度分散させる。
【0050】
これにより、はんだ付け時だけでなく、温度サイクル時の基板の変形,長期高温試験に対しても、はんだのクリープ変形を阻止させ、はんだ厚を長時間確保し、寿命低減を抑える効果がある。ボール表面はぬれ性に優れる表面処理を施してあるので、ボール近傍でボイドを形成することはない。また、散発的な分散なので、はんだ内部で形成されたボイドの放出に邪魔になることはない。更に、Cu系ボールの熱伝導率ははんだより高いので、熱的な問題は起き難い。Cuボールが変形する場合は、微量元素を添加して硬くしたCuボール,Niボールでも良い。
【0051】
(実施例4)
次に、セラミック絶縁基板とCuベース基板の接続部の温度サイクル寿命を、更に向上させる手段として、適正物性を有するエポキシ系樹脂で接合外周部を部分補強する方法を提案するものである。これにより、破壊メカニズムを変えさせ、はんだクラックの発生を阻止,遅延させることで、温度サイクルの寿命を大幅に向上させることができる。
【0052】
図1(a)は、AlN絶縁基板8端部を樹脂で部分補強しない通常の構造で、Pbフリーはんだを用いたモジュールの断面構造である。図1(b)はAlN絶縁基板8端部を樹脂3で部分補強した例で、Pbフリーはんだを用いたモジュールの断面構造である。図1(a),図1(b)共にシリコーンゲル20封止構造である。
【0053】
AlN絶縁基板8−Cuベース基板11構成において、Siチップ1とリード電極5間の接続は従来通りのAl線6のワイヤボンド方式の例で、チップのはんだ付けはSn−15Sbの第1のはんだ4である高温系はんだを用いた。AlN基板のCu電極7はCuもしくはAl(Alの場合、はんだとのぬれ性のため表面にNiもしくはNi/Auめっきが施される)である。端部補強樹脂3は、第3のはんだ10である基板側はんだ付け部の4周辺をできるだけ均一に塗布することが望ましいので、エポキシ系で、低熱膨張係数の塗布し易いポッテイング用樹脂が用いられる。端部補強樹脂3は、基板側はんだ付け部周辺で適度なフィレットが形成されるように塗布されるのが望ましい。図1(b)はAlN絶縁基板8端部及びはんだ端部を包むように樹脂を塗布したものである。樹脂の塗布形状として、フィレット部が図1(b)の塗布構造に限定されるものではなく、AlN基板下側だけでも効果がある。樹脂とCuベース基板間の密着力を増すためにCuベース基板11に設けた末広状のデインプル穴14は全周囲に巡らせても良い。また、デインプル穴14は応力的に厳しいAlN絶縁基板の4隅の部分のみ設ける場合、AlN絶縁基板の4隅の部分と辺の中央部に設ける場合もある。樹脂に要求される条件として、AlN絶縁基板周辺端部での応力的負担を担うので、(i)樹脂の密着力は必須であり、(ii)強いヤング率と変形できる柔軟性を備えていること、(iii)線膨張係数としてはCuに近いか、熱応力的バランスではCu(α=17.5×10-6/℃)とAlN(α=4.3×10-6/℃)の間であること、更に、(iv)高温での安定性(Tgが高い)に優れること等である。
【0054】
なお、樹脂物性としては、少なくともヤング率;300〜3000kgf/mm2,線膨張係数;6〜25×10-6/℃の範囲で、望ましくはヤング率;1000〜1500kgf/mm2,線膨張係数;8〜17×10-6/℃の範囲である。ヤング率下限値;300kgf/mm2は樹脂による拘束力不足を意味し、ヤング率上限値;3000kgf/mm2はAlN端部界面の応力集中による破壊を意味する。ここでは、AlN破壊が起きない設計が重要であり、樹脂製造上からは矛盾する見方であるが、熱膨張係数をAlNに近づけ、かつ、極力、ヤング率を下げる対応が必要となる。特に、AlNコーナー部においては、応力集中の影響が避けられない場合(チップ周辺部の対応同様)、ポリイミドを塗布してキュア後、樹脂で部分補強することで、AlN破壊防止効果がある。ポリイミドのヤング率は低いので、AlN隅部の変形をポリイミド層で吸収してくれる。
【0055】
(実施例5)
図2はAlN絶縁基板8−Cuベース基板11構成において、Siチップ1とリード電極5間の接続は従来通り、Al線6のワイヤボンド方式で、チップのはんだ付けはSn−15Sbの第1のはんだ4である高温系はんだを、AlN基板のCu電極とCuベース基板との接続にはSn−3Ag−0.5Cu−5Inはんだを用いた構造である。ここでは実施例4で示したAlN基板周囲だけでなく、チップ下高温系Sn−15Sbはんだの変形を物性を特定化したエポキシ系樹脂19で抑え、はんだに作用する歪を小さくすることで、寿命向上が期待できる高信頼化構造とした。樹脂物性としては、AlN保護がSiチップ保護に換わっただけで、樹脂の機能は実施例4に示したものと同じである。Siチップの場合はSiチップ表面の素子部部の保護が重要なので、Siチップ周囲を塗布することになる。また、チップごとの個別実装とすることで、モジュール全体封止に比べ、樹脂,モジュールへの応力的負担を軽減する構造でもある。モジュールが小型であれば、ポッテイング,モールド方式でモジュール全体を樹脂封止することが、コストの面でも望ましい。しかし、チップが離れている場合、または大型構造の場合、個別チップ樹脂補強実装もしくはチップ周辺の部品を含む樹脂補強実装で高信頼性を確保することも必要になる。
【0056】
(実施例6)
図3(a)(b)は更に高出力パワー半導体素子が使用される場合の例である。Alのワイヤボンドの代わりに、Siチップ1の裏面(上側)とCu冷却板17とをはんだ15で接続する。図3(a)は該Cu冷却板がベローズ状の応力緩和機能を有したリード構造で、図3(b)はリードを2段にして曲げ変形による応力緩和機能を有するリード構造である。リード構造は端子の関係で、分割される場合がある。リード他端はAlN基板上の他のCu電極上に第2のはんだ16ではんだ付けされる。チップ上の熱は一部、このバイパス回路を経てチップ下から離れたAlN基板の他のCu電極7上に伝わるので、全体として熱効率は優れる。はんだ組成はチップ下をSn−15Sbはんだ、基板側をSn−3Ag−0.5Cu−5Inはんだとし、Cuリード部とCu電極との接続はSn−3Ag−0.5Cuはんだのペーストを用いた後付けも可能である。Cuリード部が後付けの場合は、基板側のSn−3Ag−0.5Cu−5Inはんだは再溶融するが、はんだ中の金属ボールで再溶融後のはんだ厚さは確保される。Cuリード部は低温の基板側はんだと同時に接続することも可能である。チップ上はんだ15は、Sn−15Sbはんだで同時に接続することも可能である。また、低温の基板側はんだと同時に、Sn−3Ag−0.5CuもしくはSn−3Ag−0.5Cu−5In、もしくはSn−Cu系(融点;228℃)等での接続も可能である。素子の温度上昇が高く厳しい場合は、Sn−15Sbはんだを用い、チップ下はんだと同時に接続するのが望ましい。
【0057】
しかし、はんだで接続しただけではチップ上部及びチップ周辺部の信頼性を確保することはできない。そこで、チップ下は当然のこと、チップ上も同時にはんだ付け部の信頼性を向上させるため、Cu冷却板17とはんだ付けしたチップ周囲を同様のエポキシ系樹脂19で被覆した構造とした。この樹脂によりはんだ,チップが拘束され、はんだの寿命は向上する。エポキシ系樹脂19だけでは、チップの拘束力が強い場合、素子,チップ端部への応力的悪影響も考えられる。そこで、応力を開放したい箇所を予めポリイミドで薄く塗布,キュア後にエポキシ系樹脂をその上から被覆することもできる。応力,寿命等の信頼性を優先する場合、ポリイミド塗布は効果がある。ポリイミド塗布は応力集中部等の特に保護したい場所だけ塗ってもその効果はある。大きな変位,応力が発生する場所にポリイミドを塗ることで、その上を樹脂で被覆した場合、ポリイミドはヤング率が適度に低いので、ポリイミド層内で応力,変形を逃がすことができる(解析でも確認している)。このため、応力集中に起因した不良から開放されることで信頼性は高まる。
【0058】
なお、低熱膨張係数で、かつ熱伝導性に優れるCu−C,Al−C複合材(アルミナ並みの熱膨張係数)を冷却板として用いると、応力負担は少なくなり、信頼性は高まる。
【0059】
(実施例7)
図4は高出力パワー半導体素子を両面から水冷却する構造の断面構造を示す。パワー半導体素子の高い発熱密度に対応したパワーモジュールをPbフリー階層はんだを用い、高信頼で実装するための具体例を示す。第1のSiチップ1a及び第2のSiチップ2aの両面にSn−15Sbはんだ箔を搭載もしくは敷いて、AlN絶縁基板8のCu電極7に位置決めし、治具で固定し、水素炉を用いてリフローさせる。その際、Cuのリード電極5とCu電極7のはんだ付けも同時に接続しても良い。Sn−15Sbはんだで同時に接続できれば、Cuベース基板11とAlN絶縁基板8間を低温系はんだでの温度階層接続が可能になる。後付けするなら、低温系はんだで、Cuベース基板11とAlN絶縁基板8のCu電極7とのリフロー時に、同時に同一低温系はんだで接続しても良い。なお、低温系はんだのピーク温度を235〜240℃にすることは可能なので、Cuのリード電極5とCu電極7のはんだ付け用の組成は汎用的に用いられているSn−3Ag−0.5Cuでも可能である。この場合、Cuベース基板11とAlN絶縁基板8のCu電極7間はSn−3Ag−0.5Cu−5Inで、Cuのリード電極5とCu電極7とはSn−3Ag−0.5Cuを用いて、同時に後付けすることになる。なお、図4では2本のCuのリード電極7間が狭く見えるが、実際は奥行き方向にずらせるので、間隙の問題はない。Cuのリード電極5とCu電極7とはペースト(洗浄レスのペースト接続法も可能な状況にある)での接続が可能である。
【0060】
はんだ付け後、溶剤で薄めたポリイミドをチップ周囲に塗布させ、応力が集中するチップ端部・周辺に20〜100μm厚程度付着させ、キュア後、ガラス転移温度(Tg)が高く、密着力がある低熱膨張係数のエポキシ樹脂(熱膨張係数;約10×10-6/℃)で、約15000MPaのヤング率(Siチップへの応力的負担を少なくする意味で、可能な限り低熱膨張係数でヤング率が低い樹脂が望ましいが、材料系固有の限界がある。塗布されたポリイミド膜が一部、この機能を受け持つことになる)が望ましい。
【0061】
これより、特定な物性を有するエポキシ系樹脂(予めポリイミド塗布を行う場合もある)によりチップ周囲を強く拘束することで、はんだの変形を少なく抑えることができる。このため、Sn−15Sbはんだでも高信頼性を確保できる。
【0062】
なお、チップ,絶縁基板が低熱膨張係数であることから、樹脂で拘束する構造でより高信頼性を確保するには、ベース基板として熱膨張係数が比較的低くて、熱伝導性に優れるCu−C,Al−C部材は構造上優れた構成になる。
【0063】
そして、図4の構造においても、チップ周辺のみ部分樹脂補強した構造及びAlN基板とベース基板を接続したはんだ周囲を覆うように部分樹脂補強した構造(AlN基板のはんだ付け側とは反対方向は覆わず、応力を開放できるようにした構造)との樹脂を分離させた構造が信頼性上からは望ましい。ベース基板を低熱膨張係数のCu−C材が使えれば、低熱膨張部材で一体化できる(Cu電極は軟化しているので応力による影響は小さい)ので、トランスファーモールド方式で一体化することがコスト面でも有利になる。なお、両面冷却高出力パワー半導体素子構造は上下がほぼ対称的なので、相対的な変位,歪は小さく、従って、作用する応力はかなり低下することを解析で確認している。従って、信頼性とコストと作業性が絡んだ構造の選択が必要になる。
【0064】
Pbフリーはんだでパワーモジュールの温度階層接続を可能にしたのは、(i)部品の耐熱性に問題がないこと、(ii)高温系はんだのはんだ付け温度を上げられること、(iii)Inを入れることで低温系はんだの融点を約10℃下げて、(iv)信頼性を向上させることができたこと等が組合わされて、はんだ付けの温度マージンを確保できたことによる。この構成は、パワーモジュールに限らず、温度階層接続が要求されるモジュール,耐熱性に厳しい製品、例えばオルターネートダイオード等にも応用できる。特に素子を熱伝導性に優れる絶縁基板に接続する構成の場合、共に熱膨張係数差が小さいことから、はんだに多少硬さがあるSn−15Sb系でも十分使える可能性がある。更に樹脂による部分補強効果を併用することで、より信頼性を向上させることが可能である。
【0065】
なお、本実施例ではAlN基板の例を示したが、Si34基板等でも同様の効果が期待できる。特にSi34基板の場合は、AlN基板と比べ熱特性には多少劣るものの、曲げ,衝撃等に対する耐機械的特性に優れ、反りも少なく、継手の信頼性も上がるので、厳しい使用環境下においては有望である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(a)AlN絶縁基板とCuベース基板構造(2種類)のパワーモジュールの断面図、(b)は図1(a)に絶縁基板周辺を樹脂補強したパワーモジュールの断面図。
【図2】AlN絶縁基板とCuベース基板構造(2種類)モジュールの断面図。
【図3】チップ上にCu冷却板を搭載したパワーモジュール構造の断面図。
【図4】両面冷却パワーモジュール構造の断面図。
【符号の説明】
【0067】
1 Siチップ
1a 第1のSiチップ
2a 第2のSiチップ
3 端部補強樹脂
4 第1のはんだ
5 リード電極
6 Al線
7 Cu電極
8 AlN絶縁基板
9 樹脂
10 第3のはんだ
11 Cuベース基板
12 冷媒(水)
13 ヒートシンク
14 デインプル穴
15 チップ上はんだ
16 第2のはんだ
17,18 Cu冷却板
19 エポキシ系樹脂
20 シリコーンゲル
21 樹脂接着
22 樹脂ケース
23 アルミナ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板とセラミック絶縁基板及び半導体チップがはんだで接続されてなるパワーモジュールにおいて、
前記半導体チップとセラミック絶縁基板とのはんだ付けに、Sb:11〜20mass%、残りSnからなる高温系鉛フリーはんだを用い、前記セラミック絶縁基板とベース基板とのはんだ付けに、Ag:0.1〜4.5mass%,Cu:0.1〜5.0mass%,In:3〜7mass%、残りSnからなる低温系鉛フリーはんだを用いたことを特徴とする半導体パワーモジュール。
【請求項2】
前記高温系Sn−Sb系はんだにCuが0.1〜5mass%含まれていることを特徴とする請求項1に記載の半導体パワーモジュール。
【請求項3】
前記高温系Sn−Sb系はんだにBi,Zn,Ge,Ni,Al,Ag,P,Inが少なくとも1種類以上、0.01〜1mass%含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体パワーモジュール。
【請求項4】
前記低温系はんだにBi,Zn,Ge,Ni,Al,Sb,Pが少なくとも1種類以上、0.01〜1mass%含まれていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の半導体パワーモジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の鉛フリーはんだで、シリコーンゲル等の柔らかい樹脂で充填されてなる半導体パワーモジュールにおいて、
前記セラミック絶縁基板とベース基板とのはんだ付け端部周囲、及びその周囲の前記セラミック絶縁基板の周囲とその周囲の前記ベース基板表面の一部を包むようにエポキシ系樹脂を部分被覆したことを特徴とする半導体パワーモジュール。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかに記載の鉛フリーはんだで、シリコーンゲル等の柔らかい樹脂で充填されてなる半導体パワーモジュールにおいて、
前記セラミック絶縁基板とベース基板とのはんだ付け端部周囲、及びその周囲の該セラミック絶縁基板の周囲とその周囲のデインプル溝加工が施された前記ベース基板表面の一部等を包むようにエポキシ系樹脂を部分被覆したことを特徴とする半導体パワーモジュール。
【請求項7】
前記半導体チップ及びチップ周辺は、エポキシ系樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の半導体パワーモジュール。
【請求項8】
請求項7において、
前記半導体チップ及びチップ周辺は、エポキシ系樹脂で塗布前にポリイミド系等の樹脂を予め薄く塗布されていることを特徴とする半導体パワーモジュール。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかにおいて、
前記半導体チップ上面に冷却板リードをはんだ付けし、前記半導体チップと一体化して樹脂補強、もしくはチップ周辺部を予めポリイミドを塗布後に樹脂補強することを特徴とする半導体パワーモジュール。
【請求項10】
前記請求項1乃至9の何れかにおいて、
前記高温系Sn−Sb系はんだの中に、低熱膨張繊維を5〜20vol%含ませたことを特徴とする半導体パワーモジュール。
【請求項11】
前記請求項1乃至10の何れかにおいて、
前記低温系はんだ中に50〜100μmのCu粒子、もしくは表面にNi,Ni/Auフラッシュめっきを施したCu粒子、もしくはNi粒子等を分散させたことを特徴とする半導体パワーモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−70863(P2009−70863A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234862(P2007−234862)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】