説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】シリサイド層を設ける場所に応じて適切な特性を有するシリサイド層を備える半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極上に形成された第1のシリサイド層と、前記ゲート電極下方の前記半導体基板内に形成されたチャネル領域と、前記半導体基板内の前記チャネル領域を挟んだ領域に形成されるソース・ドレイン領域と、前記ソース・ドレイン領域上に形成されて前記第1のシリサイド層よりも結晶粒径の平均値が小さい、または結晶粒内の組成境界数の平均値が多い第2のシリサイド層と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置として、ゲート電極とソース・ドレイン領域のコンタクト抵抗を低下させるために、ゲート電極とソース・ドレイン領域の表面に金属シリサイド層を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この半導体装置によると、半導体基板上に形成された第1の金属層と、第1の金属層を被覆するように第2の金属層を形成し、第1の熱処理を行った後、シリサイド化されなかった第1の金属層および第2の金属層をエッチングによって除去した後に第1の熱処理よりも高い温度で第2の熱処理を行って、第1の金属層と第2の金属層の少なくとも一方とSiを含む半導体領域をシリサイド化することにより、グレインサイズが小さく均一な金属シリサイド層が得られる。
【特許文献1】特開2007−214269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、シリサイド層を設ける場所に応じて適切な特性を有するシリサイド層を備える半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、半導体基板と、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極上に形成された第1のシリサイド層と、前記ゲート電極下方の前記半導体基板内に形成されたチャネル領域と、
前記半導体基板内の前記チャネル領域を挟んだ領域に形成されるソース・ドレイン領域と、前記ソース・ドレイン領域上に形成されて前記第1のシリサイド層よりも結晶粒径の平均値が小さい、または結晶粒内の組成境界数の平均値が多い第2のシリサイド層と、を有することを特徴とする半導体装置を提供する。
【0006】
また、本発明の他の一態様は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極上に第1のシリサイド層を選択的に形成する工程と、前記ゲート電極下方の前記半導体基板内にチャネル領域を形成する工程と、前記半導体基板内の前記チャネル領域を挟んだ領域にソース・ドレイン領域を形成する工程と、前記ソース・ドレイン領域上に前記第1のシリサイド層よりも結晶粒径の平均値が小さい、または結晶粒内の組成境界数の平均値が多い第2のシリサイド層を選択的に形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シリサイド層を設ける場所に応じて適切な特性を有するシリサイド層を備える半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
〔第1の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。この半導体装置1は、Si基板2上に形成されたウェル20と、Si基板2上にゲート絶縁膜3を介して形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の上面に形成された第1のシリサイド層5と、ゲート電極4の側面に形成されたゲート側壁6と、Si基板2内のゲート電極4の下方に形成されたチャネル領域7と、Si基板2の表面近傍に形成されたエクステンション領域8aを含むソース・ドレイン領域8と、ソース・ドレイン領域8の上面に形成された第2のシリサイド層9と、Si基板2内に形成された素子分離領域10と、を有して概略構成される。
【0009】
ゲート絶縁膜3は、例えば、SiO、SiN、SiONや、高誘電材料(例えば、HfSiON、HfSiO、HfO等のHf系材料、ZrSiON、ZrSiO、ZrO等のZr系材料、Y等のY系材料)からなる。
【0010】
ゲート電極4は、例えば導電型不純物を含む多結晶シリコンまたは多結晶シリコンゲルマニウムからなる。導電型不純物には、p型トランジスタの場合はB、BF等のp型不純物イオン、n型トランジスタの場合はAs、P等のn型不純物イオンが用いられる。また、ゲート電極4の上面には、V、Ti、Co、Ni等の金属とシリコンとの化合物である第1のシリサイド層5が形成されている。
【0011】
ゲート側壁6は、例えばSiNからなる単層構造や、SiN、SiO、TEOS(Tetraethoxysilane)等の複数種の絶縁材料からなる2層構造、更には3層以上の構造であってもよい。
【0012】
エクステンション領域8aを含むソース・ドレイン領域8は、p型トランジスタの場合はB、BF等のp型不純物イオン、n型トランジスタの場合はAs、P等のn型不純物イオンをSi基板2の表面近傍に注入することにより形成される。
【0013】
素子分離領域10は、例えば、SiO等の絶縁材料からなる。
【0014】
第2のシリサイド層9を構成する結晶粒は、例えば、V、Ti、Co、Ni等の第1の金属元素とSiからなる結晶子と、Pd、Pt、Rh、In、Ir、Ru等の第2の金属元素とSiからなる結晶子を含む。
【0015】
第1のシリサイド層5を構成する結晶粒は、例えば、V、Ti、Co、Ni等の第1の金属元素とSiからなる結晶子を含む。なお、第1のシリサイド層5はゲート電極4の上部をシリサイド化することにより形成されるが、ゲート電極4の全てをシリサイド化して、フルシリサイドゲート電極を形成してもよい。
【0016】
ここで、第2のシリサイド層9を構成する結晶粒については、第2の金属元素が第1の金属元素と同じシリサイド構造を有し、第1の金属元素に対して原子半径が大で、かつ周期律表で1段以上離れたものを選択することが好ましい。
【0017】
なお、第2のシリサイド層9に含まれる第2の金属元素の元素濃度は、ベースとなる第1の金属元素に対して10〜50原子%であることが好ましい。また、第2の金属元素を加えることで得られるシリサイドの結晶粒径は100nm以下が好ましく、より好ましくはソース・ドレイン領域8の上面に形成された第2のシリサイド層9の80%以上の領域で20nm以下の結晶粒径を有することである。
【0018】
第1のシリサイド層5は、AC特性を劣化させないために低抵抗のシリサイド層であることが好ましい。このことからゲート電極4上のシリサイドは第2の金属元素の元素濃度が小であるシリサイド層とすることが好ましい。また、第2の金属元素を含む場合は、第1のシリサイド層5に含まれる第2の金属元素の元素濃度は、第1の金属元素に対して5原子%以下であることが好ましい。さらに、第2の金属元素は、実質的に含まないことがより好ましい。
【0019】
図2(a)は、第2のシリサイド層を構成する結晶粒90の概念図である。この結晶粒90は、第1の結晶子(Niシリサイド)91と第2の結晶子(Irシリサイド)92とを含んでいる。ここで、図2(b)に示すように、隣接する第1の結晶子91の群と、隣接する第2の結晶子92の群との境界を組成境界93とする。
【0020】
図2(c)に示すように、シリサイド層に含まれる第2の金属元素の元素濃度が大になると、結晶粒90の粒径が小さくなる傾向にある。結晶粒径が小さくなると、結晶粒境界が増加する。そのため、シリサイド層に含まれる第2の金属元素やドーパント等の不純物の拡散が促進され、シリサイド層とソース・ドレイン領域の界面に偏析しやすくなる。また、結晶粒90の粒径が小さくなることにより、成膜性に優れたシリサイド層が得られる。
【0021】
また、図2(d)に示すように、シリサイド層に含まれる第2の金属元素の元素濃度が大になると、結晶粒90の含有する第2の結晶子92の割合が増加する場合がある。同図に示すように、結晶粒90内の第2の結晶子92の割合が大きくなると、図2(e)に示すように組成境界93の数が増加する。シリサイド層に含まれる第2の金属元素やドーパント等の不純物は組成境界93や結晶粒境界に沿って拡散するため、各結晶粒90の組成境界93の数が増加すると、不純物の拡散が促進され、シリサイド層とソース・ドレイン領域の界面に偏析しやすくなる。
【0022】
図3は、シリサイド層への第2の金属元素混入濃度に対する結晶粒径の変化と抵抗値の変化の一例を示したグラフである。ここではNi等の第1の金属元素、Ir等の第2の金属元素を混入させた第2のシリサイド層9について示している。
【0023】
図3に示すように、第1の金属元素に対して第2の金属元素の元素濃度が大になると、結晶粒の微細化が促進され、これに伴い結晶粒径のばらつきも小になる。シリサイド層の結晶粒が微細化することで、シリサイドの成膜異常が抑制され、リーク電流経路の形成を抑制できる一方、シリサイド層内の抵抗値は増大する傾向を示す。
【0024】
図4(a)および(b)は、ソース・ドレイン領域におけるシリサイド層周辺の寄生抵抗(Rpara)の変化を示すグラフである。図4(a)はシリサイド層の界面抵抗(Rc)について、図4(b)はシリサイド層のシート抵抗(Rs)について示している。ここでシート抵抗とは、第2のシリサイド層9内における任意の2点間の抵抗値を示す。上記したように、Si基板2と第2のシリサイド層9との界面に第2の金属元素、ソース・ドレイン領域8に含まれる導電型不純物、さらにSi基板2内に不可避的に含まれる不純物が偏析すると、抵抗Rcが小になり、そのことによってシリサイド層の周囲の寄生抵抗(Rpara)を低下させる。この寄生抵抗(Rpara)の低減は、図4(b)に示すようにシリサイド層のシート抵抗を低減させた場合よりも顕著に現れる。つまり、第2の金属元素を加えることによる結晶粒の微細化により、第2のシリサイド層9のシート抵抗が増大したとしても、第2の金属元素やドーパント等の不純物の拡散が促進され、Si基板2と第2のシリサイド層9との界面に偏析することによって界面における仕事関数が変化し、界面抵抗(Rc)の低減が図られる。このことによってシリサイド層周辺の寄生抵抗(Rpara)を低減することができる。
【0025】
(半導体装置の製造)
図5A(a)〜(c)および図5B(d)〜(f)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0026】
まず、図5A(a)に示すように、半導体基板2上に素子分離領域10、ゲート絶縁膜3、ゲート電極4、エクステンション領域8aを含むソース・ドレイン領域8、ゲート側壁6等を形成し、ゲート電極4上にSiとエッチング時の加工上選択性を有する、例えばSiOからなる酸化膜やSiNからなる窒化膜等のマスク膜11を形成する。次に、ソース・ドレイン領域8の上面、素子分離領域10の上面、ゲート側壁6の上面、およびマスク膜11の上面の露出部分を覆うように第1の金属元素であるNiとIr等の第2の金属元素からなる第1の金属膜12をスパッタリングにより堆積させる。次に、400〜500℃のRTA(Rapid Thermal Annealing)を行い、第1の金属膜12とソース・ドレイン領域8とをシリサイド化反応させることで、ソース・ドレイン領域8の上面に第2のシリサイド層9を形成する。
【0027】
次に、図5A(b)に示すように、シリサイド化反応において未反応の第1の金属膜12を、硫酸と過酸化水素水の混合溶液により除去する。
【0028】
次に、図5(c)に示すように、第2のシリサイド層9を形成されたソース・ドレイン領域8の上面、素子分離領域10の上面、ゲート側壁6の上面、およびマスク膜11の上面の露出部分を覆うようにSiO等の絶縁膜13をCVD(Chemical Vapor Deposition)法等によって堆積させる。次に、絶縁膜13をCMP(Chemical Mechanical Polishing)等により、マスク膜11が露出するまで平坦化する。
【0029】
次に、図5B(d)に示すように、ゲート電極4の上面を覆うマスク膜をRIE(Reactive Ion Etching)法等によって除去することにより、絶縁膜13に溝14を形成する。
【0030】
次に、図5B(e)に示すように、溝14および絶縁膜13の上面を覆うようにNi等からなる第2の金属膜15をスパッタリングにより堆積させる。この第2の金属膜15は、第1の金属膜12と異なり、第2の金属元素を含まない金属膜である。
【0031】
次に、図5B(f)に示すように、400〜500℃のRTAを行って第2の金属膜15とゲート電極4とをシリサイド化反応させることで、ゲート電極4の上面に第1のシリサイド層5を形成する。この場合、第1のシリサイド層5は実質的に第2の金属元素を含まない。次に、シリサイド化反応において未反応の第2の金属膜15を硫酸と過酸化水素水の混合溶液により除去し、絶縁膜13をRIE法によって除去することにより、図1に示した半導体装置1を得る。
【0032】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態によれば、ソース・ドレイン領域8の上面に設けられる第2のシリサイド層9と、ゲート電極4の上面に設けられる第1のシリサイド層5とで第2の金属元素の元素濃度を変えることにより、ゲート電極4上に低抵抗の第1のシリサイド層5が設けられ、ソース・ドレイン領域8上に成膜性に優れる第2のシリサイド層9が設けられるので、シリサイド層を設ける場所に応じて適切な特性を有するシリサイド層を備えた半導体装置1が得られる。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
図6(a)〜(c)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。第2の実施の形態では、スパッタリングによる第1の金属膜12および第2の金属膜15の形成に代えて、CVD法により第2の金属元素を含まないNi等の第1の金属元素からなる第2の金属膜15を形成し、更に第2の金属膜15を覆うようにCVD法により第2の金属元素からなる第3の金属膜16を設ける点において第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、簡単のために説明を省略する。
【0034】
まず、図6(a)に示すように、ソース・ドレイン領域8の上面、素子分離領域10の上面、ゲート側壁6の上面、およびマスク膜11の上面の露出部分を覆うようにNi等からなる第2の金属膜15をCVD法により形成する。次に、第2の金属膜15の上面を覆うようにIr等の第2の金属元素からなる第3の金属膜16をCVD法により形成する。次に、400〜500℃のRTAを行って第2の金属膜15および第3の金属膜16とソース・ドレイン領域8とをシリサイド化反応させることで、ソース・ドレイン領域8の上面に第2のシリサイド層9を形成する。この後、第1の実施の形態と同様に未反応の金属膜の除去、絶縁膜13の堆積、および絶縁膜13への溝14の形成を行う。
【0035】
次に、図6(b)に示すように、ゲート電極4上の溝および絶縁膜13の上面を覆うようにNi等からなる第2の金属膜15をスパッタリングにより堆積させる。次に、400〜500℃のRTAを行って第2の金属膜15とゲート電極4の上面をシリサイド化反応させることで、ゲート電極4の上面に第1のシリサイド層5を形成する。
【0036】
次に、図6(c)に示すように、次に、シリサイド化反応において未反応の第2の金属膜15を硫酸と過酸化水素水の混合溶液により除去し、絶縁膜13をRIE法によって除去する。
【0037】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様にシリサイド層を設ける場所に応じて適切な特性を有するシリサイド層を備えた半導体装置1が得られる。
【0038】
なお、第2の実施の形態では、ソース・ドレイン領域8の上面、素子分離領域10の上面、ゲート側壁6の上面、およびマスク膜11の上面の露出部分を覆うようにNiからなる第2の金属膜15を形成した後、Ir等の第2の金属元素からなる第3の金属膜16をCVD法により形成する工程について説明したが、第3の金属膜16を先に成膜し、その上面を覆うように第2の金属膜15を形成した後にRTAを行って第3の金属膜16および第2の金属膜15とソース・ドレイン領域8とをシリサイド化反応させることも可能である。
【0039】
〔第3の実施の形態〕
図7(a)〜(c)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。第3の実施の形態は、ソース・ドレイン領域8の上面およびゲート電極4の上面に第2の金属元素を含まない第2の金属膜15を設けてシリサイド層を形成した後、ソース・ドレイン領域8にイオン注入によって第2の金属元素を混入させる点において第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、簡単のために説明を省略する。
【0040】
まず、図7(a)に示すように、ソース・ドレイン領域8の上面、素子分離領域10の上面、ゲート側壁6の上面、およびゲート電極4の上面の露出部分を覆うようにNiからなる第2の金属膜15をCVD法により形成する。次に、400〜500℃のRTAを行って第2の金属膜15とゲート電極4の上面、および第2の金属膜15とソース・ドレイン領域8をシリサイド化反応させることで、ゲート電極4の上面およびソース・ドレイン領域8の上面に第1のシリサイド層5を形成する。
【0041】
次に、図7(b)に示すように、未反応の第2の金属膜15を除去し、ゲート電極4の上面に設けられる第1のシリサイド層5を覆うようにマスク膜11を形成する。次に、ソース・ドレイン領域8に対してIr等の第2の金属元素をイオン注入することによってソース・ドレイン領域8上に第2のシリサイド層9を形成する。
【0042】
次に、図7(c)に示すように、ゲート電極4の第1のシリサイド層5上に設けられるマスク膜11を除去する。
【0043】
(第3の実施の形態の効果)
本発明の第3の実施の形態によれば、ゲート電極4およびソース・ドレイン領域8に対するシリサイド層の形成後に、ソース・ドレイン領域8に選択的に第2の金属元素をイオン注入することによって、第1の実施の形態と同様にシリサイド層を設ける場所に応じて適切な特性を有するシリサイド層を備えた半導体装置1が得られる。
【0044】
なお、第3の実施の形態では、ソース・ドレイン領域8に形成された第1のシリサイド層5に対してイオン注入により第2の金属元素を混入させるものとしたが、例えば、マスク膜11の上面、ソース・ドレイン領域8の上面、素子分離領域10の上面、およびゲート側壁6の上面の露出部分を覆うようにIr等の第2の金属元素からなる第3の金属膜16をCVD法により形成した後にRTAを行って第3の金属膜16とソース・ドレイン領域8とをシリサイド化反応させることも可能である。
【0045】
〔第4の実施の形態〕
図8(a)〜(c)は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。第4の実施の形態では、ゲート電極4の上面にマスク膜11を形成し、第2の金属元素からなる第3の金属膜16の成膜に基づくソース・ドレイン領域8の上面のシリサイド化反応を行った後、第2の金属膜15の成膜に基づくゲート電極4の上面およびソース・ドレイン領域8の上面のシリサイド化反応を行う点において第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、簡単のために説明を省略する。
【0046】
まず、図8(a)に示すように、ゲート電極4の上面を覆うようにマスク膜11を形成する。次に、ゲート電極4上のマスク膜11の上面、ソース・ドレイン領域8の上面、素子分離領域10の上面、およびゲート側壁6の上面の露出部分を覆うようにIr等の第2の金属元素からなる第3の金属膜16をCVD法により形成する。次に、RTAを行って第3の金属膜16とソース・ドレイン領域8とをシリサイド化反応させることにより、ソース・ドレイン領域8の上面に第3のシリサイド層18を形成する。次に、シリサイド化反応において未反応の第3の金属膜16を硫酸と過酸化水素水の混合溶液により除去し、ゲート電極4上のマスク膜11を除去する。
【0047】
次に、図8(b)に示すように、第3のシリサイド層18を有するソース・ドレイン領域8の上面、素子分離領域10の上面、ゲート側壁6の上面、およびゲート電極4の上面の露出部分を覆うようにNiからなる第2の金属膜15をCVD法により形成する。次に、400〜500℃のRTAを行って第2の金属膜15とゲート電極4の上面、および第2の金属膜15と第3のシリサイド層18をシリサイド化反応させる。このことにより、ゲート電極4の上面に第1のシリサイド層5を形成し、ソース・ドレイン領域8の上面に第2のシリサイド層9を形成する。
【0048】
次に、図8(c)に示すように、次に、シリサイド化反応において未反応の第2の金属膜15を硫酸と過酸化水素水の混合溶液により除去する。
【0049】
(第4の実施の形態の効果)
本発明の第4の実施の形態によれば、Ir等の第2の金属元素からなる第3の金属膜16によってソース・ドレイン領域8に対する第3のシリサイド層18を形成した後に、第2の金属膜15によるシリサイド化反応をゲート電極4の上面およびソース・ドレイン領域8に対して行うことで、第1の実施の形態と同様にシリサイド層を設ける場所に応じて適切な特性を有するシリサイド層を備えた半導体装置1が得られる。
【0050】
〔他の実施の形態〕
本発明は、上記各実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0051】
また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図2】(a)から(e)は、第2のシリサイド層を構成する結晶粒の概念図。
【図3】シリサイド層への第2の金属元素混入濃度に対する結晶粒径の変化と抵抗値の変化の一例を示したグラフ。
【図4】(a)および(b)は、ソース・ドレイン領域におけるシリサイド層周辺の寄生抵抗の変化を示すグラフ。
【図5A】(a)〜(c)は、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図5B】(d)〜(f)は、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6】(a)〜(c)は、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図7】(a)〜(c)は、第3の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図8】(a)〜(c)は、第4の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【符号の説明】
【0053】
1 半導体装置。 2 Si基板。 3 ゲート絶縁膜。 5 第1のシリサイド層。 7 チャネル領域。 9 第2のシリサイド層。 10 素子分離領域。 90 結晶粒。 91 第1の結晶子。 92 第2の結晶子。 93 組成境界。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成された第1のシリサイド層と、
前記ゲート電極下方の前記半導体基板内に形成されたチャネル領域と、
前記半導体基板内の前記チャネル領域を挟んだ領域に形成されるソース・ドレイン領域と、
前記ソース・ドレイン領域上に形成されて前記第1のシリサイド層よりも結晶粒径の平均値が小さい、または結晶粒内の組成境界数の平均値が多い第2のシリサイド層と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1および第2のシリサイド層を構成する結晶粒の少なくとも一部は、第1の金属元素およびSiからなる結晶子と第2の金属元素およびSiからなる結晶子とを含み、
前記第2のシリサイド層に含まれる前記第2の金属元素の元素濃度は、前記第1のシリサイド層に含まれる前記第2の金属元素の元素濃度よりも大であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2のシリサイド層は、前記第2の金属元素の元素濃度が前記第1の金属元素に対して10〜50原子%であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2のシリサイド層を構成する結晶粒の少なくとも一部は、第1の金属元素およびSiからなる結晶子と第2の金属元素およびSiからなる結晶子とを含み、
前記第1のシリサイド層は、前記第2の金属元素を含まないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極上に第1のシリサイド層を選択的に形成する工程と、
前記ゲート電極下方の前記半導体基板内にチャネル領域を形成する工程と、
前記半導体基板内の前記チャネル領域を挟んだ領域にソース・ドレイン領域を形成する工程と、
前記ソース・ドレイン領域上に前記第1のシリサイド層よりも結晶粒径の平均値が小さい、または結晶粒内の組成境界数の平均値が多い第2のシリサイド層を選択的に形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−239172(P2009−239172A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86029(P2008−86029)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】