説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】小さいサイズでラッチアップの発生を防止できる半導体装置を提供する。
【解決手段】第1導電型の半導体基板1と、前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1ウェル領域4と、前記半導体基板内に形成され、第1ウェル領域と隣り合う領域に配置された第2導電型のエピタキシャル領域2と、前記エピタキシャル領域内下方の領域に形成され、前記エピタキシャル領域よりも不純物濃度が高い第2導電型の埋め込み領域6と、第1ウェル領域と前記エピタキシャル領域及び前記埋め込み領域との境界に形成されたトレンチ8と、第1ウェル領域上に形成され、第2導電型のソース及びドレイン領域を有する第1半導体素子と、前記エピタキシャル領域上に形成され、第1導電型のソース及びドレイン領域を有する第2半導体素子と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、CMOS型トランジスタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(相補型MOS)型構造は、Nチャンネル型MOSトランジスタとPチャンネル型MOSトランジスタとを同時に集積する構造であり、多くの半導体装置回路で用いられている。例えば、液晶ドライバーのような高耐圧が要求される回路にもこの構造が採用されている。
【0003】
しかしながら、CMOS型構造は、隣接する領域間で寄生バイポーラトランジスタが形成され、このトランジスタの作用によりラッチアップ(latch up)が生じることが知られている。このため、CMOS型構造の半導体装置回路では、CMOS型構造のラッチアップを防止するレイアウト・構造が採用されている。
【0004】
例えば、Nチャンネル型MOSトランジスタのウェル領域とPチャンネル型MOSトランジスタのウェル領域との境界にウェルガードリングを備えた半導体装置が知られている。また、上記境界にディープトレンチが形成された半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
以下に、図13及び図14を用いて、従来の半導体装置について説明する。図13は、ウェルガードリングを備えた半導体装置を説明するための断面図である。図14は、ディープトレンチが形成された半導体装置を説明するための断面図である。
【0005】
図13に示されるように、ウェルガードリングを備えた半導体装置は、P型半導体基板101上に形成され、PMOSトランジスタ150(Pチャンネル型MOSトランジスタともいう。以下同じ。)が配置されるN型ウェル領域103と、同基板101上に形成され、NMOSトランジスタ151(Nチャンネル型MOSトランジスタともいう。以下同じ。)が配置されるP型ウェル領域104とを備え、N型ウェル領域103とP型ウェル領域104との境界近傍に、ウェルガードリング120,121が形成されている。ウェルガードリング120,121は配線により電源ラインに接続され、ウェルガードリング120にはVDD電位が印加されている。また、ウェルガードリング121にはGND電位(又はVSS電位)が印加されている。このウェルガードリングを備えた半導体装置では、ウェルガードリング120,121を上記電位に固定することにより、ラッチアップの発生を防止している。
【0006】
また、図14に示されるように、ディープトレンチが形成された半導体装置は、P型半導体基板101上に形成され、PMOSトランジスタ150が配置されるN型ウェル領域103と、同基板101上に形成され、NMOSトランジスタ151が配置されるP型ウェル領域104とを備え、N型ウェル領域103とP型ウェル領域104との境界に、これらウェル領域よりも深いディープトレンチ130が形成されている。このディープトレンチが形成された半導体装置では、N型ウェル領域103,P型半導体基板101及びNMOSソース/ドレイン領域113で構成される横型NPNバイポーラトランジスタ200の電流増幅率hFEを小さくすることにより、ラッチアップの発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−227920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のウェルガードリングを備えた半導体装置は、ウェルガードリングを配置するための領域が必要となる。トランジスタの形成領域以外の領域を新たに設ける必要があるので、半導体装置のサイズが大きくなりやすい。このため、より小さいサイズでラッチアップの発生を防止できる半導体装置が望まれている。
例えば、高耐圧が要求される回路(液晶ドライバー等)では、近年、半導体装置回路と同様に高性能化・高機能化とともに、集積される半導体装置の数が飛躍的に増加し、半導体装置のサイズが大型化している。また、ラッチアップの防止レイアウトのほか、静電保護素子等の採用により半導体装置のサイズの大型化がしやすい。このため、高耐圧が要求される回路においても、ラッチアップの発生を防止するとともに、半導体装置のサイズを小さくすることが望まれている。
【0009】
また、上記ディープトレンチが形成された半導体装置は、トランジスタの形成領域以外の領域を新たに設ける必要がないものの、ディープトレンチを設ける領域を大きくする必要があり、高耐圧が要求される回路を用途とする場合には、半導体装置のサイズがあまり小さくならない。すなわち、横型NPNバイポーラトランジスタ200のベース領域の不純物濃度は、P型半導体基板101とP型ウェル領域104とで定まるので、上記ディープトレンチが形成された半導体装置は、高耐圧トランジスタ用途である場合には、これらの不純物濃度を高くできない。このため、ディープトレンチを設ける領域を大きくして、さらにベース領域の幅を広くする必要がある。従って、半導体装置のサイズがあまり小さくならない。
【0010】
また、上記ディープトレンチが形成された半導体装置の場合、P型ウェル領域104,N型ウェル領域103及びPMOSソース/ドレイン領域112で構成される縦型PNPバイポーラトランジスタ300の電流増幅率hFEに、ディープトレンチ130は何ら影響を与えない。このため、ウェルガードリングを設ける等の対策が必要となる。従って、半導体装置のサイズが大きくなりやすい。
以上のように、高耐圧が要求される回路を形成する場合でも、より小さいサイズでラッチアップの発生を防止できる半導体装置が望まれている。
【0011】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、より小さいサイズでラッチアップの発生を防止できる半導体装置を提供するものである。また、高耐圧を維持できる半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によれば、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1ウェル領域と、前記半導体基板内に形成され、第1ウェル領域と隣り合う領域に配置された第2導電型のエピタキシャル領域と、前記エピタキシャル領域内下方の領域に形成され、前記エピタキシャル領域よりも不純物濃度が高い第2導電型の埋め込み領域と、第1ウェル領域と前記エピタキシャル領域及び前記埋め込み領域との境界に形成されたトレンチと、第1ウェル領域上に形成され、第2導電型のソース及びドレイン領域を有する第1半導体素子と、前記エピタキシャル領域上に形成され、第1導電型のソース及びドレイン領域を有する第2半導体素子と、を備え、前記半導体基板は、その不純物濃度が第1ウェル領域よりも高く、前記トレンチが、第1ウェル領域及び前記埋め込み領域よりも深く形成されることにより、第1及び第2半導体素子を電気的に分離し、かつ第1及び第2半導体素子のソース及びドレイン領域の寄生バイポーラトランジスタの電流増幅を小さくすることを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
この発明の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1ウェル領域と、前記半導体基板内に形成され、第1ウェル領域と隣り合う領域に配置された第2導電型のエピタキシャル領域と、前記エピタキシャル領域内下方の領域に形成され、前記エピタキシャル領域よりも不純物濃度が高い第2導電型の埋め込み領域と、第1ウェル領域と前記エピタキシャル領域及び前記埋め込み領域との境界に形成されたトレンチとを備え、前記半導体基板は、第1ウェル領域よりも不純物濃度が高く、前記トレンチは、第1ウェル領域及び前記埋め込み領域よりも深く形成されているので、第1ウェル領域上に形成され、第2導電型であるソース及びドレイン領域と、第1ウェル領域及び前記半導体基板と、前記エピタキシャル領域及び前記埋め込み領域とで構成される横型バイポーラトランジスタのベース領域の不純物濃度を高くすることができる。このため、前記横型バイポーラトランジスタの電流増幅率hFEを低減できる。
【0014】
また、前記エピタキシャル領域上に形成され、第1導電型であるソース及びドレイン領域と、前記エピタキシャル領域及び前記埋め込み領域と、前記半導体基板及び第1ウェル領域とで構成される構成される縦型バイポーラトランジスタのベース領域の不純物濃度も高くすることができる。このため、前記縦型バイポーラトランジスタの電流増幅率hFEも低減できる。
従って、この発明の半導体装置は、第2導電型のソース及びドレイン領域を第1ウェル領域上に形成し、第1導電型のソース及びドレイン領域を前記エピタキシャル領域上に形成した半導体装置において、寄生トランジスタである前記横型及び縦型のバイポーラトランジスタの電流増幅率hFEを小さくしてラッチアップの発生を防止できる。
【0015】
また、この発明の半導体装置は、トランジスタの形成領域以外に新たな領域を設ける必要がなく、かつ、横型バイポーラトランジスタのみならず、縦型バイポーラトランジスタの電流増幅率hFEも低減できるので、より小さいサイズでラッチアップの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の概念的な断面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態に係る半導体装置のダイオードを説明するための回路図である。
【図3】この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図4】この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図5】この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図6】この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の概念的な断面図である。
【図7】この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図8】この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図9】この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図10】この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図11】この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図12】この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図13】この発明の背景技術に係るウェルガードリングを備えた半導体装置を説明するための断面図である。
【図14】この発明の背景技術に係るディープトレンチが形成された半導体装置を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1ウェル領域と、前記半導体基板内に形成され、第1ウェル領域と隣り合う領域に配置された第2導電型のエピタキシャル領域と、前記エピタキシャル領域内下方の領域に形成され、前記エピタキシャル領域よりも不純物濃度が高い第2導電型の埋め込み領域と、第1ウェル領域と前記エピタキシャル領域及び前記埋め込み領域との境界に形成されたトレンチと、第1ウェル領域上に形成され、第2導電型のソース及びドレイン領域を有する第1半導体素子と、前記エピタキシャル領域上に形成され、第1導電型のソース及びドレイン領域を有する第2半導体素子と、を備え、前記半導体基板は、その不純物濃度が第1ウェル領域よりも高く、前記トレンチが、第1ウェル領域及び前記埋め込み領域よりも深く形成されることにより、第1及び第2半導体素子を電気的に分離し、かつ第1及び第2半導体素子のソース及びドレイン領域の寄生バイポーラトランジスタの電流増幅を小さくすることを特徴とする。
【0018】
ここで、第1の導電型とは、N型又はP型の導電型をいい,第2の導電型とは、第1の導電型と異なる導電型をいう。例えば、第1の導電型がN型の導電型の場合、第2の導電型はP型の導電型となり、第1の導電型がP型の導電型の場合、第2の導電型はN型の導電型となる。
例えば、前記半導体基板は、N型半導体基板であってもよいし、また、P型半導体基板であってもよい。
【0019】
また、前記埋め込み領域は、前記エピタキシャル領域内下方の領域に形成されるが、前記埋め込み領域は、前記半導体基板内の、前記エピタキシャル領域下に形成されてもよい。すなわち、ここでいう前記埋め込み領域は、前記半導体基板内にエピタキシャル領域を形成後、このエピタキシャル領域の下部領域に形成されることにより、結果的に、前記半導体基板内の、前記エピタキシャル領域下に形成される形態を含む。
【0020】
また、この発明の実施形態において、前記発明の構成に加え、前記半導体基板は、第1ウェル領域よりもその不純物濃度が3〜10倍高いことが好ましい。また、より好ましくは、この不純物濃度が5〜10倍高い。
この構成によれば、上記横型バイポーラトランジスタのベース領域となる半導体基板の不純物濃度が高いので、この横型バイポーラトランジスタの電流増幅率hFEを低減できる。
例えば、前記半導体基板は、その不純物濃度が5.0×1016〜2.0×1017/cm3であることが好ましく、第1ウェル領域は、その不純物濃度が2.0×1016〜7.0×1016/cm3であることが好ましい。
【0021】
また、この発明の実施形態において、前記発明の構成に加え、前記埋め込み領域は、前記エピタキシャル領域よりもその不純物濃度が100〜1000倍高いことが好ましい。また、より好ましくは、この不純物濃度が300〜600倍高い。
この構成によれば、上記縦型バイポーラトランジスタのベース領域となる半導体基板の不純物濃度が高いので、この縦型バイポーラトランジスタの電流増幅率hFEを低減できる。
例えば、前記埋め込み領域は、その不純物濃度が1.0×1018〜1.0×1019/cm3であることが好ましく,前記エピタキシャル領域は、その不純物濃度が1.0×1016〜1.0×1017/cm3であることが好ましい。
【0022】
また、この発明の実施形態において、前記半導体基板と前記エピタキシャル領域とがダイオードを形成し、第2半導体素子を保護してもよい。
この構成によれば、例えば、第2半導体素子のソース又はドレイン領域のいずれか一方若しくは第2コンタクト領域にサージ電圧が印加された場合に、内部素子である第2半導体素子を保護することができる。このため、新たに静電保護素子を設ける必要がなく、より小さいサイズで静電保護素子を備える半導体装置を提供できる。
すなわち、この構成を備える半導体装置は、過大電圧から半導体素子(回路を含む)を保護する素子(静電気保護素子やESD(electro‐static discharge)素子)として機能する。なお、ここでいう過大電圧は、例えば、静電気や短絡電圧等の異常電圧が含まれる。
【0023】
また、この発明の実施形態において、前記発明の構成に加え、第1ウェル領域内又は前記エピタキシャル領域内に、第1又は第2半導体素子を素子分離するシャロートレンチをさらに備えてもよい。
この構成によれば、第1ウェル領域内又は前記エピタキシャル領域内に形成された素子を絶縁分離できるので、隣接する領域で寄生バイポーラトランジスタが形成されにくい。このため、上記横型及び縦型のバイポーラトランジスタ以外の個所でラッチアップの発生が生じにくい半導体装置が提供される。
【0024】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、第1導電型の半導体基板上に第2導電型のエピタキシャル領域を形成する工程と、前記エピタキシャル領域内に前記エピタキシャル領域よりも深いトレンチを形成する工程と、前記エピタキシャル領域内の、前記トレンチに隣接する領域に、前記半導体基板よりも不純物濃度が低い第1導電型の第1ウェル領域を形成する工程と、前記エピタキシャル領域内下方の、前記トレンチに隣接しかつ第1ウェル領域と前記トレンチを挟む領域に、前記エピタキシャル領域よりも不純物濃度が高い第2導電型の埋め込み領域を形成する工程と、第1ウェル領域上に第2導電型のソース及びドレイン領域を形成する工程と、
前記エピタキシャル領域上に第1導電型のソース及びドレイン領域を形成する工程と、を備え、前記半導体基板は、前記第1ウェル領域を形成する工程で形成される第1ウェル領域よりもその不純物濃度が高いことを特徴とする。
【0025】
この発明の構成によれば、上記横型及び縦型のバイポーラトランジスタの電流増幅率hFEを小さくしてラッチアップの発生を防止できる半導体装置の製造方法が提供される。また、より小さいサイズでラッチアップの発生を防止できる半導体装置の製造方法が提供される。
【0026】
また、この発明の製造方法の実施形態において、前記半導体基板は、前記第1ウェル領域を形成する工程で形成される第1ウェル領域よりもその不純物濃度が3〜10倍高くてもよい。
また、この発明の製造方法の実施形態において、前記埋め込み領域を形成する工程は、前記エピタキシャル領域を形成する工程で形成されたエピタキシャル領域よりも不純物濃度が100〜1000倍高い埋め込み領域を形成する工程であってもよい。
また、この発明の製造方法の実施形態において、前記製造方法の発明の構成に加え、第1ウェル領域内又は前記エピタキシャル領域内に、ソース及びドレイン領域とそれ以外の領域を素子分離するシャロートレンチを形成する工程をさらに備えてもよい。
【0027】
以下、図面に示す実施形態を用いて、この発明を詳述する。
【0028】
(第1の実施形態)
この発明の第1の実施形態に係る半導体装置について図1〜図5を参照して説明する。図1は、この実施形態に係る半導体装置を説明するための断面図である。
図2は、この実施形態に係る半導体装置のダイオードを説明するための回路図である。図3〜図5は、この実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための製造工程図である。
図1に示すように、この実施形態に係る半導体装置は、P型半導体基板1と、P型半導体基板1の一部領域に形成されたP型ウェル領域4と、P型半導体基板1の他の部分領域に形成され、かつP型ウェル領域4と隣り合う領域に配置されたN型エピタキシャル層2と、N型エピタキシャル層2下に形成されたN型埋め込み層6とを備えている。
【0029】
P型半導体基板1は、例えば、P型不純物の不純物濃度が1×1017/cm3である。この濃度は、半導体装置の動作電圧に応じて選択する。例えば、20Vである絶対最大定格を必要とする場合、不純物濃度を1×1017/cm3とする。P型不純物には、例えば、ボロン(B)を用いればよい。
【0030】
P型ウェル領域4は、P型半導体基板1の一部領域に形成され、例えば、P型不純物の不純物濃度が3×1016/cm3である。ところで、この実施形態に係る半導体装置に横型のバイポーラトランジスタ20が寄生する。この横型のバイポーラトランジスタ20の電流増幅率hFEを小さくすることを考慮すると、不純物濃度が高いP型半導体基板1を用いることにより、横型のバイポーラトランジスタのベース濃度を上げる事が望ましい。このため、P型ウェル領域4とP型半導体基板1との不純物濃度の差が3倍以上であることが好ましい。
例えば、P型半導体基板1の不純物濃度が6.0×1016〜2.0×1017/cm3であることが好ましく、P型ウェル領域4の不純物濃度が2.0×1016〜6.0×1016/cm3であることが好ましい。
【0031】
また、P型ウェル領域4は、N型エピタキシャル層2を形成した後に、形成されたN型エピタキシャル層2の一部領域にボロンを注入して形成するので、同様の方法で形成されるN型エピタキシャル層2及びN型埋め込み層6と、その層厚(領域の深さ)が同じである。この層厚、つまり、P型ウェル領域4の深さは、3.0μmに形成されている。
【0032】
N型エピタキシャル層2は、P型半導体基板1の他の部分領域に形成され、ディープトレンチ8を介してP型ウェル領域4と隣り合う領域に配置されている。N型エピタキシャル層2におけるN型不純物の不純物濃度は、例えば、1×1016/cm3である。この不純物濃度は、好ましくは5.0×1015〜5.0×1016/cm3である。
【0033】
また、N型エピタキシャル層2は、その層厚が3.0μmで形成されている。
【0034】
N型埋め込み層6は、N型エピタキシャル層2の下方に、N型エピタキシャル層2と領域を接して配置され、N型埋め込み層6は、N型エピタキシャル層よりも不純物濃度が高い。例えば、N型不純物の不純物濃度を1×1019/cm3とする。 この不純物濃度は、好ましくは5.0×1018〜2.0×1019/cm3である。
ところで、この実施形態に係る半導体装置には、上記横型のバイポーラトランジスタ30のほか、縦型のバイポーラトランジスタ30が寄生する。この縦型のバイポーラトランジスタ30の電流増幅率hFEを小さくすることを考慮すると、N型埋め込み層6とN型エピタキシャル層との不純物濃度の差が100〜1000倍であることが好ましく、300〜600倍であることがより好ましい。
【0035】
また、N型埋め込み層6は、P型半導体基板1上にN型エピタキシャル層が形成された後、形成されたN型エピタキシャル層に不純物を注入して形成されるので、これと同様にして形成されるP型ウェル領域4(P型ウェル領域4も形成されたN型エピタキシャル層に不純物を注入して形成される)と領域の下側境界(下面)が同じ深さになっている。すなわち、N型埋め込み層6とP型半導体基板1との境界は、P型ウェル領域4とP型半導体基板1との境界と同じ深さに配置されている。この実施形態の場合、P型ウェル領域4の深さが3.0μmであり、また、不純物が注入された後のN型エピタキシャル層2の層厚が2.0μmであるので、N型埋め込み層6の層厚は1.0μmである。
【0036】
また、図1に示すように、この実施形態に係る半導体装置は、P型ウェル領域4とN型エピタキシャル層2及びN型埋め込み層6との境界にディープトレンチ8が形成されている。また、N型エピタキシャル層2にPMOSトランジスタが、P型ウェル領域4にNMOSトランジスタが、それぞれ形成されている。
【0037】
ディープトレンチ8は、3〜6μmの深さで形成されている。上記のように、P型ウェル領域4とP型半導体基板1との境界は、P型ウェル領域4とP型半導体基板1との境界と同じ深さであり、また、P型ウェル領域4の層厚と、N型エピタキシャル層2及びN型埋め込み層6の層厚は、同じである。このため、ディープトレンチ8の深さがP型ウェル領域4の層厚(又はN型エピタキシャル層2及びN型埋め込み層6の層厚)よりも大きい場合、ディープトレンチ8は、P型ウェル領域4及びN型埋め込み層6よりも深く形成される。この実施形態では、上記に記載したようにP型ウェル領域4の深さが3.0μmであるので、このディープトレンチ8は、P型ウェル領域4及びN型埋め込み層6よりも深く形成されている。従って、この実施形態では、PMOSトランジスタ領域50とNMOSトランジスタ領域51とが電気的に分離されている。
【0038】
PMOSトランジスタは、N型エピタキシャル層2のチャネル領域を挟むように配置されたPMOSソース/ドレイン電界緩和領域12Aと、このチャネル領域上にゲート酸化膜9を介して配置されたゲート電極11とにより構成されている。また、PMOSソース/ドレイン電界緩和領域12Aには、その表面側の領域内にPMOS高濃度ソース/ドレイン領域12Bが形成され、PMOS高濃度ソース/ドレイン領域12Bは、コンタクトホール16を介してメタル配線17に接続されている。PMOSトランジスタは高耐圧トランジスタであり、メタル配線17からの入出力信号を受けるように構成されている。
【0039】
ここで、PMOSソース/ドレイン電界緩和領域12AのP型不純物の不純物濃度は、4.0×1016〜8.0×1016/cm3である。
【0040】
なお、PMOSトランジスタは、その形成領域がシャロートレンチ7により素子分離されており、例えば、PMOSソース/ドレイン電界緩和領域12Aと素子分離されたコンタクト領域12Cが形成され、コンタクト領域12Cは、シャロートレンチ7により素子分離されている。
【0041】
NMOSトランジスタは、PMOSトランジスタと同様の構成であり、P型ウェル領域4のチャネル領域を挟むように配置されたNMOSソース/ドレイン電界緩和領域13Aと、このチャネル領域上にゲート酸化膜9を介して配置されたゲート電極11とにより構成されている。また、NMOSソース/ドレイン電界緩和領域13Aには、その表面側の領域内にNMOS高濃度ソース/ドレイン領域13Bが形成され、NMOS高濃度ソース/ドレイン領域13Bはコンタクトホール16を介してメタル配線17に接続されている。NMOSトランジスタも高耐圧トランジスタであり、メタル配線17からの入出力信号を受けるように構成されている。
【0042】
ここで、NMOSソース/ドレイン電界緩和領域13AのN型不純物の不純物濃度は、5.0×1016〜1.0×1017/cm3である。
【0043】
また、NMOSトランジスタも、その形成領域がシャロートレンチ7により素子分離されている。PMOSトランジスタと同様に、コンタクト領域13Cがシャロートレンチ7によりNMOSソース/ドレイン電界緩和領域13Aと素子分離されている。
【0044】
これらPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタは、別々に動作する。ディープトレンチ8によりPMOSトランジスタ領域50とNMOSトランジスタ領域51とが電気的に分離されているので、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタとが互いに干渉することなく安定した動作をすることができることになる。
【0045】
この実施形態に係る半導体装置は、以上のような構成を採用している。この実施形態に係る半導体装置は、N型エピタキシャル層の一部領域に不純物を注入することにより形成されたP型ウェル領域4を備えるので、NMOSソース/ドレイン電界緩和領域13A及びNMOS高濃度ソース/ドレイン領域13Bで構成されるエミッタ領域と、P型ウェル領域4及びP型半導体基板1で構成されるベース領域と、N型エピタキシャル層2及びN型埋め込み層6とで構成されるコレクタ領域とからなる横型バイポーラトランジスタ20において、ベース領域の不純物濃度を高くすることができる。このため、この横型バイポーラトランジスタ20の電流増幅率hFEを低減できる。
【0046】
また、この実施形態に係る半導体装置は、N型エピタキシャル層2とN型エピタキシャル層に不純物を注入することにより形成されたN型埋め込み層6とを備えるので、PMOSソース/ドレイン電界緩和領域12A及びPMOS高濃度ソース/ドレイン領域12Bで構成されるエミッタ領域と、N型エピタキシャル層2及びN型埋め込み層6で構成されるベース領域と、P型半導体基板1(及びP型ウェル領域4)で構成されるコレクタ領域とからなる縦型バイポーラトランジスタ30において、ベース領域の不純物濃度も高くすることができる。このため、この縦型バイポーラトランジスタ30の電流増幅率hFEも低減できる。
【0047】
(トランジスタの保護作用)
この実施形態に係る半導体装置におけるP型半導体基板1とN型エピタキシャル層2とは保護ダイオードを形成する。この保護ダイオードは、内部回路をサージから保護する。
【0048】
図2に示すように、VDD端子400とGND端子401との間に、PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタで形成された内部回路155と、ダイオード156とが並列に接続されている。このダイオード156は、P型半導体基板1とN型エピタキシャル層2と構成されている。
この回路のVDD端子からサージ(例えば、電源から入力するノイズ)が加わると、サージは、ダイオード156を介してGND端子401へその電流が流れる。
【0049】
ここで、サージは、例えば、1〜2KVの異常電圧であり、PMOS及びNMOSトランジスタの動作電圧は、20Vである。PMOS及びNMOSトランジスタの実力耐圧を25V程度に設定し、N型エピタキシャル層2とP型半導体基板1とで形成する寄生ダイオードの耐圧を、トランジスタの耐圧以下に設定する事で、トランジスタを保護できる。
【0050】
(製造方法)
次に、この実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図3〜図5は、この第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程図であり、図1と同様にNMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタを製造する場合の製造工程図である。
【0051】
まず、P型半導体基板1を用意する。例えば、不純物濃度が1×1017/cm3であるP型シリコン基板を用意する。不純物は、ボロン(B)等であればよい。
【0052】
次いで、図3(a)に示すように、P型半導体基板1上に、不純物濃度が1×1016/cm3、その層厚が3μmであるN型エピタキシャル層2を成長させる。例えば、CVD法を用いる。
【0053】
次いで、図3(b)に示すように、周知の方法を用いて、N型エピタキシャル層2上にシャロートレンチ7を形成し、N型エピタキシャル層2及びP型半導体基板1上にディープトレンチ8を形成する。同一ウエル内で素子分離として機能させるため、シャロートレンチ7は、例えば250〜500nmの深さとなるように形成する。ウエル領域が形成されたときにウエル間の境界となる個所(図3(b)のPMOSトランジスタが設けられる領域50(以下、PMOSトランジスタ領域50という)とNMOSトランジスタが設けられる領域(以下、NMOSトランジスタ領域51という)との境界)に、ディープトレンチ8を形成する。ディープトレンチ8は、N型エピタキシャル層2を貫通し、P型半導体基板1に達するように、例えば、3.5μmの深さで形成する。この実施形態では、シャロートレンチ7を形成した後、続いてディープトレンチ8を形成しているが、その逆であってもよい。
【0054】
シャロートレンチ7及びディープトレンチ8は、公知のトレンチ形成方法(例えば、STI)で形成する。すなわち、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜のマスクを形成し、このマスクでトレンチエッチングを行う。次に、トレンチの内壁を酸化(シリコン酸化膜の形成)させ、CVD法により酸化シリコンを堆積させてトレンチを埋め込む。そしてCMP法で、P型半導体基板1の酸化シリコンが堆積した面を平坦化する。これにより、シャロートレンチ7及びディープトレンチ8を形成できる。
【0055】
次いで、図3(c)に示すように、P型ウェル領域4をNMOSトランジスタ領域51に形成する。フォトレジストをP型半導体基板1上に塗布し、周知のフォトリソグラフィ工程にて、NMOSトランジスタ領域51が開口されたパターンを上記フォトレジストに形成し、その後、開口部が形成されたフォトレジストをマスクとし、イオン注入法を用いてP型不純物をN型エピタキシャル層2に注入する。例えばP型不純物の不純物濃度が4×1016/cm3となるように、ボロン (B)をN型エピタキシャル層2に注入する。そして、アニール等を行い、P型ウェル領域4をNMOSトランジスタ領域51に形成する。
【0056】
次いで、図4(d)に示すように、PMOSトランジスタ領域50のP型半導体基板1とN型エピタキシャル層2との境界近傍にN型埋め込み層6を形成する。まず上記の図3(c)と同様に周知のフォトリソグラフィ工程を用いて、PMOSトランジスタ領域50上の領域を開口するフォトレジストマスクを形成する。次に、イオン注入法を用いてこのフォトレジストマスク上からN型不純物を注入する。例えばリン(P)の濃度が1×1019/cm3となるように、P型半導体基板1とN型エピタキシャル層2との境界近傍にリンを注入し、その後アニール等を行って、N型埋め込み層6をPMOSトランジスタ領域50に形成する。
【0057】
次いで、図4(e)に示すように、PMOSソース/ドレイン電界緩和領域12A及びNMOSソース/ドレイン電界緩和領域13Aを、PMOSトランジスタ領域50及びNMOSトランジスタ領域51にそれぞれ形成する。周知のフォトリソグラフィ工程を用いて、PMOSソース/ドレイン電界緩和領域12A上の領域を開口するフォトレジストマスクを形成する。そして、これをマスクとして、例えばボロン(B)をイオン注入する。また、同様に、周知のフォトリソグラフィ工程を用いて、NMOSソース/ドレイン電界緩和領域13A上の領域を開口するフォトレジストマスクを形成し、これをマスクとして、例えばリン(P)をイオン注入する。これにより、PMOSトランジスタ領域50のN型エピタキシャル層2表面近傍にPMOSソース/ドレイン電界緩和領域12Aを形成し、またNMOSトランジスタ領域51のP型ウェル領域4表面近傍にNMOSソース/ドレイン電界緩和領域13Aを形成する。
【0058】
次いで、図4(f)に示すように、所定のパターンのゲート酸化膜9及びゲート電極11をPMOSトランジスタ領域50及びNMOSトランジスタ領域51に形成する。まずN型エピタキシャル層2表面及びP型ウェル領域4表面の全面に膜厚が30〜40nmのゲート酸化膜9を成長させ、さらにその上面に膜厚が150〜250nmのポリシリコンを形成する。次に、周知のフォトリソグラフィ工程を用いてゲート酸化膜9及びゲート電極11をエッチングすることにより、所定のパターンのゲート酸化膜9及びゲート電極11を形成する。ここで、ゲート酸化膜9及びゲート電極11の所定のパターンは、ソース電界緩和領域とドレイン電界緩和領域とに挟まれる領域上にゲート酸化膜9及びゲート電極11が配置されるパターンである。
【0059】
なお、この実施形態では、PMOSソース/ドレイン電界緩和領域12A及びNMOSソース/ドレイン電界緩和領域13Aを先に形成して、ゲート酸化膜9及びゲート電極11を形成しているが、周知のMOSトランジスタと同様に、先にゲート酸化膜9及びゲート電極11を形成しその後、PMOSソース/ドレイン電界緩和領域12A及びNMOSソース/ドレイン電界緩和領域13Aを形成してもよい。
【0060】
次いで、図5(g)に示すように、上記工程で形成されたゲート酸化膜9及びゲート電極11の側面にサイドウォール14を形成する。N型エピタキシャル層2表面及びP型ウェル領域4表面の全面にCVD法により酸化膜(例えばシリコン酸化膜)又は窒化膜(例えばシリコン窒化膜)を堆積させ、これをエッチバックすることにより、ゲート酸化膜9及びゲート電極11の側面にサイドウォール14を形成する。
【0061】
次いで、図5(h)に示すように、周知のMOSトランジスタと同様にして、ゲート電極11及びサイドウォール14をマスクにイオン注入して高濃度ソース/ドレイン領域12B及び13B(コンタクト領域12C及び13Cを含む)を形成し、さらに、層間絶縁膜15、コンタクトホール16、メタル配線17及びカバーガラス18を形成する。
以上により、実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0062】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態に係る半導体装置について図6〜図12を参照して説明する。図6は、第2の実施形態に係る半導体装置を説明するための断面図である。図7〜図12は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための製造工程図である。
図6に示すように、第2の実施形態に係る半導体装置は、P型半導体基板1と、P型ウェル領域4と、N型エピタキシャル層2と、N型埋め込み層6と、ディープトレンチ8と、を備え、さらに、N型エピタキシャル層2に形成されたPMOSトランジスタと、P型ウェル領域4に形成されたNMOSトランジスタとを備えている点で、第1の実施形態に係る半導体装置と共通しているが、第2の実施形態に係る半導体装置は、さらに、シャロートレンチ7Aを介して、N型ウェル領域3と、第2のP型ウェル領域5とを備え、これらウェル領域3,5に、PMOS低耐圧トランジスタ、NMOS低耐圧トランジスタが形成されている。
以下、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0063】
N型ウェル領域3は、N型エピタキシャル層2上にシャロートレンチ7Aを介して、PMOSトランジスタ領域50及びNMOSトランジスタ領域51に隣接して形成されている。また、N型ウェル領域3には、PMOS低耐圧トランジスタが形成されている。
【0064】
PMOS低耐圧トランジスタは、N型ウェル領域3のチャネル領域を挟むように配置されたPMOSソース/ドレイン領域12Dと、このチャネル領域上にゲート酸化膜10を介して配置されたゲート電極11とにより構成されている。
なお、ゲート酸化膜10は、低耐圧トランジスタに適した層厚に設定され、N型ウェル領域3は、低耐圧トランジスタに用いられている周知の不純物濃度に設定されている。
【0065】
第2のP型ウェル領域5は、N型ウェル領域3と同様に、N型エピタキシャル層2上に形成され、N型ウェル領域3と隣接する領域に配置されている。また、第2のP型ウェル領域5には、NMOS低耐圧トランジスタが形成されている。
【0066】
NMOS低耐圧トランジスタは、第2のP型ウェル領域5のチャネル領域を挟むように配置されたNMOSソース/ドレイン領域13Dと、このチャネル領域上にゲート酸化膜10を介して配置されたゲート電極11とにより構成されている。このNMOS低耐圧トランジスタもPMOS低耐圧トランジスタと同様に、ゲート酸化膜10が、低耐圧トランジスタに適した層厚に設定され、P型ウェル領域5も、低耐圧トランジスタに用いられている周知の不純物濃度に設定されている。
【0067】
また、図6に示すように、第2の実施形態に係る半導体装置は、N型ウェル領域3と第2のP型ウェル領域5との間に、さらにシャロートレンチ7Bを備えている。
このシャロートレンチ7Bによって、PMOS低耐圧トランジスタとNMOS低耐圧トランジスタとが素子分離されている。
なお、シャロートレンチ7Aとシャロートレンチ7Bは、STI法の構造と同じであり、周知のシャロートレンチである。
【0068】
第2の実施形態に係る半導体装置は、以上の構成を採用している。このため、この実施形態に係る半導体装置は、P型半導体基板1上に高耐圧トランジスタと低耐圧トランジスタとを混載するとともに、第1の実施形態と同様に、寄生トランジスタである横型及び縦型バイポーラトランジスタ20,30の電流増幅率hFEを低減できる。
【0069】
(製造方法)
次に、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図7〜11は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程図であり、高耐圧トランジスタと低耐圧トランジスタとを混載する半導体装置の製造工程図である。
【0070】
まず、第1の実施形態と同様に不純物濃度が1×1017/cm3であるP型半導体基板1を用意する。
【0071】
次いで、図7(a)に示すように、P型半導体基板1上に、不純物濃度が4×1016/cm3、その層厚が3μmであるN型エピタキシャル層2を成長させる。この工程は、第1の実施形態で説明した図3(a)の工程と同様である。
【0072】
次いで、図7(b)に示すように、周知の方法を用いて、N型エピタキシャル層2上にシャロートレンチ7を形成し、N型エピタキシャル層2及びP型半導体基板1上にディープトレンチ8を形成する。この工程も、第1の実施形態と同様であるが、第2の実施形態では、高耐圧トランジスタ領域50,51と、低耐圧トランジスタが設けられる領域(以下、低耐圧トランジスタ領域という)との境界にシャロートレンチ7Aを形成する。また、低耐圧トランジスタ領域内においても、PMOS低耐圧トランジスタが設けられる領域60(以下、PMOS低耐圧トランジスタ領域60という)とNMOS低耐圧トランジスタが設けられる領域(以下、NMOS低耐圧トランジスタ領域61という)との境界に、シャロートレンチ7Bを形成する。
【0073】
次いで、図8(c)に示すように、第1の実施形態と同様に、P型ウェル領域4をNMOSトランジスタ領域51に形成する。この実施形態では、NMOS低耐圧トランジスタ領域61にも、P型不純物をN型エピタキシャル層2に注入してP型ウェル領域4を形成する。この工程で用いるフォトレジストマスクに、NMOS低耐圧トランジスタ領域61上の領域を開口する開口部を形成することでNMOS低耐圧トランジスタ領域61にもP型ウェル領域4を形成する。
【0074】
次いで、図8(d)に示すように、第2のP型ウェル領域5をNMOS低耐圧トランジスタ領域61に形成する。周知のフォトリソグラフィ工程を用いて、NMOS低耐圧トランジスタ領域61上の領域を開口するフォトレジストマスクを形成し、このフォトレジストマスクを用いて、P型不純物をNMOS低耐圧トランジスタ領域61のP型ウェル領域4に注入する。この注入により低耐圧トランジスタ用のウェル領域が形成される。なお、P型不純物の注入は、周知のイオン注入法、アニールを用いる。
【0075】
次いで、図9(e)に示すように、PMOSトランジスタ領域50のP型半導体基板1とN型エピタキシャル層2との境界近傍にN型埋め込み層6を形成する。この工程は、第1の実施形態で説明した図4(d)の工程と同様にして行う。第1の実施形態と同様に、N型埋め込み層6の不純物濃度は、1×1019/cm3である。
【0076】
次いで、図9(f)に示すように、N型ウェル領域3をPMOS低耐圧トランジスタ領域60に形成する。周知のフォトリソグラフィ工程を用いて、PMOS低耐圧トランジスタ領域60上の領域を開口するフォトレジストマスクを形成し、このマスクを用いて、N型不純物を注入する。N型不純物にはリンを用い、周知のイオン注入法、アニールで用いて形成する。
【0077】
次いで、図10(g)に示すように、PMOSソース/ドレイン電界緩和領域12A及びNMOSソース/ドレイン電界緩和領域13Aを、PMOSトランジスタ領域50及びNMOSトランジスタ領域51にそれぞれ形成する。この工程は、第1の実施形態で説明した図4(e)の工程と同様にして行う。
【0078】
次いで、図10(h)に示すように、ゲート酸化膜9をPMOSトランジスタ領域50及びNMOSトランジスタ領域51上に形成する。まずPMOSソース/ドレイン電界緩和領域12A及びNMOSソース/ドレイン電界緩和領域13Aが形成されたP型半導体基板1上全面に、膜厚が30〜40nmのゲート酸化膜9を成長させる。次に、周知のフォトリソグラフィ工程を用いてゲート酸化膜9をエッチングすることにより、PMOS低耐圧トランジスタ領域60及びNMOS低耐圧トランジスタ領域61上のゲート酸化膜9を除去する。エッチングには、HF系薬液を用いる。これにより、PMOSトランジスタ領域50及びNMOSトランジスタ領域51を覆うように配置されたゲート酸化膜9を形成する。
【0079】
次いで、図11(i)に示すように、ゲート酸化膜10をPMOS低耐圧トランジスタ領域60及びNMOS低耐圧トランジスタ領域61上に形成し、また、所定のパターンのゲート電極11を形成する。まず、ゲート酸化膜9が形成されたP型半導体基板1上全面に、膜厚が5〜8nmのゲート酸化膜10を成長させる。次に、ゲート酸化膜10が形成されたP型半導体基板1上の全面に、膜厚が150〜250nmのポリシリコンを堆積させる。次に、周知のフォトリソグラフィ工程を用いてエッチングして、所定のパターンのゲート電極11を形成する。
【0080】
次いで、図11(j)に示すように、ゲート電極11の側面にサイドウォール14を形成する。ゲート電極11が形成されたP型半導体基板1上の全面に、CVD法により酸化膜(例えばシリコン酸化膜)又は窒化膜(例えばシリコン窒化膜)を堆積させ、これをエッチバックすることにより、ゲート電極11の側面にサイドウォール14を形成する。
【0081】
次いで、図12(k)に示すように、周知のMOSトランジスタと同様にして、ゲート電極11及びサイドウォール14をマスクにしてイオン注入を行い、高濃度ソース/ドレイン領域12B及び13B並びにソース/ドレイン領域12D及び13D(コンタクト領域12C、13C、12E及び13Eを含む)を形成し、さらに、層間絶縁膜15、コンタクトホール16、メタル配線17及びカバーガラス18を形成する。
以上により、第2の実施形態に係る半導体装置が完成する。
【0082】
以上の実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合、そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して、単独で又は組み合わせて、本発明に採用することができる。
例えば、第1〜第2の実施形態は、P型半導体基板を用いた形態で説明をしているが、N型半導体基板を用いて容易に形成できることは明らかである。このため、P型及びN型の導電型を入れ替えた構成も、この発明に採用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 P型半導体基板
2 N型エピタキシャル層
3 N型ウェル領域
4 P型ウェル領域
5 第2のP型ウェル領域
6 N型埋め込み層
7 シャロートレンチ
8(ディープトレンチ)
9 ゲート酸化膜(GATE OXIDE)
10 ゲート酸化膜
11 ゲート電極(GATE POLY)
12 PMOSソース/ドレイン領域(PMOS S/D)
12A PMOSソース/ドレイン電界緩和領域
12B PMOS高濃度ソース/ドレイン領域
12C コンタクト領域
12D PMOSソース/ドレイン領域
12E コンタクト領域
13 NMOSソース/ドレイン領域(NMOS S/D)
13A NMOSソース/ドレイン電界緩和領域
13B NMOS高濃度ソース/ドレイン領域
13C コンタクト領域
13D NMOSソース/ドレイン領域
13E コンタクト領域
14 サイドウォール
15 層間絶縁膜
16 コンタクトホール
17 メタル配線
18 カバーガラス
20 横型バイポーラトランジスタ(寄生トランジスタ)
30 縦型バイポーラトランジスタ(寄生トランジスタ)
50 PMOSトランジスタ領域 (PMOS高耐圧トランジスタ)
51 NMOSトランジスタ領域 (NMOS高耐圧トランジスタ)
60 PMOS低耐圧トランジスタ領域
61 NMOS低耐圧トランジスタ領域
101 P型半導体基板
103 N型ウェル領域
104 P型ウェル領域
107 シャロートレンチ
112 PMOSソース/ドレイン領域
113 NMOSソース/ドレイン領域
120 121 ウェルガードリング
130 ディープトレンチ
150 PMOS トランジスタ
151 NMOS トランジスタ
155 内部回路
156 ダイオード
200 横型NPNバイポーラトランジスタ
300 縦型NPNバイポーラトランジスタ
400 VDD端子
401 GND端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1ウェル領域と、
前記半導体基板内に形成され、第1ウェル領域と隣り合う領域に配置された第2導電型のエピタキシャル領域と、
前記エピタキシャル領域内下方の領域に形成され、前記エピタキシャル領域よりも不純物濃度が高い第2導電型の埋め込み領域と、
第1ウェル領域と前記エピタキシャル領域及び前記埋め込み領域との境界に形成されたトレンチと、
第1ウェル領域上に形成され、第2導電型のソース及びドレイン領域を有する第1半導体素子と、
前記エピタキシャル領域上に形成され、第1導電型のソース及びドレイン領域を有する第2半導体素子と、
を備え、
前記半導体基板は、その不純物濃度が第1ウェル領域よりも高く、前記トレンチが第1ウェル領域及び前記埋め込み領域よりも深く形成されることにより、第1及び第2半導体素子を電気的に分離し、かつ第1及び第2半導体素子のソース及びドレイン領域の寄生バイポーラトランジスタの電流増幅を小さくすることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板は、第1ウェル領域よりもその不純物濃度が3〜10倍高い請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記埋め込み領域は、前記エピタキシャル領域よりもその不純物濃度が100〜1000倍高い請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1ウェル領域内又は前記エピタキシャル領域内に、第1又は第2半導体素子を素子分離するシャロートレンチをさらに備える請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板と前記エピタキシャル領域とがダイオードを形成し、
第2半導体素子を保護する請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
第1導電型の半導体基板上に第2導電型のエピタキシャル領域を形成する工程と、
前記エピタキシャル領域内に前記エピタキシャル領域よりも深いトレンチを形成する工程と、
前記エピタキシャル領域内の、前記トレンチに隣接する領域に第1導電型の第1ウェル領域を形成する工程と、
前記エピタキシャル領域内下方の、前記トレンチに隣接しかつ第1ウェル領域と前記トレンチを挟む領域に、前記エピタキシャル領域よりも不純物濃度が高い第2導電型の埋め込み領域を形成する工程と、
第1ウェル領域上に第2導電型のソース及びドレイン領域を形成する工程と、
前記エピタキシャル領域上に第1導電型のソース及びドレイン領域を形成する工程と、
を備え、
前記半導体基板は、前記第1ウェル領域を形成する工程で形成される第1ウェル領域よりもその不純物濃度が高い半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板は、前記第1ウェル領域を形成する工程で形成される第1ウェル領域よりもその不純物濃度が3〜10倍高い請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記埋め込み領域を形成する工程は、
前記エピタキシャル領域を形成する工程で形成されたエピタキシャル領域よりも不純物濃度が100〜1000倍高い埋め込み領域を形成する工程である請求項6又は7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
第1ウェル領域内又は前記エピタキシャル領域内に、ソース及びドレイン領域とそれ以外の領域を素子分離するシャロートレンチを形成する工程をさらに備える請求項6〜8のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−19093(P2012−19093A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155928(P2010−155928)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】