説明

半導体記憶装置およびその製造方法

【課題】隣接セルとの容量を抑制することが可能な半導体記憶装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態の半導体記憶装置は、第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される複数のメモリセルトランジスタを備える。前記メモリセルトランジスタのそれぞれは、半導体基板上に形成される第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に形成される浮遊ゲート電極と、前記浮遊ゲート電極上に形成される第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上に形成される制御ゲート電極と、を有する。前記第1および第2の方向に隣接する2つの前記メモリセルトランジスタの前記浮遊ゲート電極は、前記隣接する方向の側面に括れた領域を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体記憶装置の1つであるNAND型フラッシュメモリは、ストレージカードおよびSSD(Solid State Drive)等、家電製品で幅広く使用されている。このような記憶装置に要求される大容量化および低価格化のため、今後もNAND型フラッシュメモリは微細化が進んでいくと予想される。
【0003】
NAND型フラッシュメモリのメモリセル構造は、浮遊ゲート型構造が一般的である。MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Semiconductor)型構造等、他の構造と比較して、動作ウインドウが広く、電荷保持特性に優れているためである。浮遊ゲート型構造のメモリセルの微細化が進むにつれて、以下のような問題が顕著になる。
【0004】
例えば、隣接セルとの容量によるメモリセルトランジスタの閾値のずれである。微細化により隣接セルとの距離が小さくなると、その距離に反比例して隣接セルの浮遊ゲート電極との容量が増加する。しかも、1つのメモリセルに多値を記憶する場合、2値を記憶するに比べ、メモリセルの閾値のずれのマージンが小さい。その結果、隣接セルとの容量によるメモリセルトランジスタの閾値のずれに起因して読み出しエラーを生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−207695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
隣接セルとの容量を抑制することが可能な半導体記憶装置およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の半導体記憶装置は、第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される複数のメモリセルトランジスタを備える。前記メモリセルトランジスタのそれぞれは、半導体基板上に形成される第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に形成される浮遊ゲート電極と、前記浮遊ゲート電極上に形成される第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上に形成される制御ゲート電極と、を有する。前記第1および第2の方向に隣接する2つの前記メモリセルトランジスタの前記浮遊ゲート電極は、前記隣接する方向の側面に括れた領域を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る半導体記憶装置のメモリセルの等化回路図。
【図2】図1に示す半導体記憶装置のメモリセルの平面図。
【図3】メモリセルトランジスタMTiのワード線WLi方向の断面図(図1のA−A’断面)。
【図4】メモリセルトランジスタMTiのビット線BLj方向の断面図(図1のB−B’断面)。
【図5】半導体記憶装置の製造工程の手順を示す工程図。
【図6】ワード線WLi方向の製造工程断面図。
【図7】ビット線BLj方向の製造工程断面図。
【図8】図6に続く製造工程断面図。
【図9】図7に続く製造工程断面図。
【図10】図8に続く製造工程断面図。
【図11】図9に続く製造工程断面図。
【図12】図10に続く製造工程断面図。
【図13】図11に続く製造工程断面図。
【図14】図12に続く製造工程断面図。
【図15】図13に続く製造工程断面図。
【図16】図14に続く製造工程断面図。
【図17】図15に続く製造工程断面図。
【図18】図16に続く製造工程断面図。
【図19】図17に続く製造工程断面図。
【図20】図18に続く製造工程断面図。
【図21】図19に続く製造工程断面図。
【図22】図20に続く製造工程断面図。
【図23】図21に続く製造工程断面図。
【図24】半導体記憶装置の製造工程の手順を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、半導体記憶装置およびその製造方法の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体記憶装置のメモリセルの等価回路図であり、図2は、図1に示す半導体記憶装置のメモリセルの平面図である。本実施形態では、半導体記憶装置として不揮発性のNAND型フラッシュメモリを例に取って説明する。
【0011】
図1および図2に示すように、NAND型フラッシュメモリは、メモリセルストリングMSj(j=1〜m)と、ワード線(データ選択線)WLi(i=1〜n)と、ビット線(データ転送線)BLjと、ソース線SLと、ソース側選択線SGSと、ドレイン側選択線SGDとを備えている。また、メモリセルストリングMSjのそれぞれは、縦続接続される複数(例えば16個)のメモリセルトランジスタMTiと、選択トランジスタST1,ST2とを有する。
【0012】
ワード線WLiおよびビット線BLjは互いに直交するよう配置される。ソース線SL、ソース側選択線SGSおよびドレイン側選択線SGDは、ワード線WLiと平行に配置される。メモリセルストリングMSj内の各メモリセルトランジスタMTiは、ワード線WLiとビット線BLjとの交差部に配置される。
【0013】
各選択トランジスタST1およびST2のゲート電極にはソース側選択線SGSおよびドレイン側選択線SGDがそれぞれ共通に接続される。また、各メモリセルストリングMSj内のメモリセルトランジスタMTiは、後述するように、浮遊ゲート電極および制御ゲート電極を有する浮遊ゲート型構造である。各メモリセルトランジスタMTiの制御ゲート電極にはワード線WLiが共通に接続される。すなわち、メモリセルトランジスタMTiの制御ゲート電極は隣接するメモリセルストリングMSj内のメモリセルトランジスタMTiの制御ゲート電極と共通している。
【0014】
メモリセルトランジスタMTiは、浮遊ゲート電極に蓄積された電荷量の違いに応じて閾値電圧を変化させることにより、情報を記憶する。記憶する情報はハイおよびロウの2値でもよいが、蓄積電荷量に応じて多値を記憶することにより、大容量化を図れる。
【0015】
図3は、メモリセルトランジスタMTiのワード線WLi方向(第1の方向)の断面図(図1のA−A’断面)であり、図4は、メモリセルトランジスタMTiのビット線BLj方向(第2の方向)の断面図(図1のB−B’断面)である。
【0016】
図3および図4に示すように、図3および図4のメモリセルトランジスタMTiは、例えば、B(ボロン)等の不純物濃度が1014〜1019cm−3のシリコン基板1中に形成され、素子分離用の溝(Shallow Trench Isolation:STI)に埋め込まれた素子分離絶縁膜8により互いに分離される。メモリセルトランジスタMTiは、シリコン基板1上に形成されたトンネル絶縁膜(第1の絶縁膜)2と、トンネル絶縁膜2上に形成された浮遊ゲート電極3と、浮遊ゲート電極3上に形成された電極間絶縁膜(第2の絶縁膜、Interpoly Dielectric膜)9と、電極間絶縁膜9上に形成された制御ゲート電極10と、ビット線WLi方向において浮遊ゲート電極3を挟むように形成されたソース/ドレイン領域13と、浮遊ゲート電極3、電極間絶縁膜9および制御ゲート電極10を覆うスペーサ12とを有する。
【0017】
トンネル絶縁膜2は、例えば、SiO膜(シリコン酸化膜)またはSiON膜(シリコンオキシナイトライド膜)であり、その膜厚は3〜15nmである。浮遊ゲート電極3は、例えば、P(リン)またはAs(ヒ素)の不純物濃度が1018〜1021cm−3のポリシリコンであり、その膜厚は30〜200nmである。電極間絶縁膜9は、Al膜(アルミナ膜)等、SiO膜よりも誘電率が高い高誘電率膜を含む積層膜であり、例えば、総膜厚5〜30nmのSiO/高誘電率膜/SiO積層膜である。制御ゲート電極10は、例えば、P,AsまたはBの不純物濃度が1017〜1021cm−3のポリシリコンであり、その膜厚10〜500nmである。スペーサ12は、例えばSiO膜であり、その膜厚は約10nmである。
【0018】
図3に示すワード線WLi方向の断面における特徴を説明する。
【0019】
図示のように、浮遊ゲート電極3は括れた領域3aを有する。言い換えると、浮遊ゲート電極3は、最も細い領域3aと、その上部にある最も太い領域3bとを有する。また、括れた領域3aはSTIに埋め込まれた素子分離絶縁膜8よりも高い位置にある。括れた領域3aよりも下の部分には太い領域3cが配置されている。この太い領域3cの一部側面は素子分離絶縁膜8の側面に接するように配置されている。
【0020】
浮遊ゲート電極3は矩形ではなく、括れた領域3aを有するので、ワード線WLi方向に隣接するメモリセルトランジスタMTiとの実効的な距離d1を大きくすることができる。そのため、隣接するメモリトランジスタMTiとの容量を小さくできる。また、トンネル絶縁膜2と浮遊ゲート電極3の太い部分3cが接する部分は括れた領域3aよりも太い。その結果、メモリセルトランジスタMTiを流れる電流が小さくなることはない。
【0021】
また、ワード線WLi方向における断面において、電極間絶縁膜9は浮遊ゲート電極3の括れた領域3aの側面に接するように配置されている。すなわち、電極間絶縁膜9は、素子分離絶縁膜8の上面から浮遊ゲート電極3の素子分離絶縁膜8から露出した上部側面に連続して配置されている。また、制御ゲート電極10は浮遊ゲート電極3の括れた領域3aの側面において、空隙を有することなく電極間絶縁膜9と接するように配置されている。
【0022】
ワード線WLi方向において、括れた領域3aは、最も太い領域3bに対して、長さaだけ括れている。この長さaが大きいほど隣接するメモリセルトランジスタMTiとの容量を小さくできる。その一方、長さaが大きすぎると、浮遊ゲート電極3の上部が大きいために、メモリセルトランジスタMTiを形成する工程で浮遊ゲート電極3の加工が困難になるおそれがある。よって、浮遊ゲート電極3の加工が困難ではなく括れた領域を形成できる微細加工技術の限界から、長さaは、例えば、1〜10nmとするのが望ましい。この点は後述する。
【0023】
なお、浮遊ゲート電極3の上部を細くすると、ゲートリーク電流が増加してしまうが、本実施形態では、上部に太い領域3bを設け、その下部に括れた領域3aを設けるため、ゲートリーク電流を抑制しつつ、隣接するメモリセルトランジスタMTiとの容量を小さくできる。
【0024】
また、上部に太い領域3bを設けることで、カップリング比Cを大きくすることもできる。カップリング容量Cは以下の(1)式で表される。
【0025】
=CIPD/(CIPD+COX) ・・・(1)
上記(1)式において、CIPDは浮遊ゲート電極3と制御ゲート電極10との間の電極間容量であり、COXは浮遊ゲート電極3とシリコン基板1との容量である。CIPDは浮遊ゲート電極3および制御ゲート電極10の表面積に比例する。図3のように、浮遊ゲート電極3の上部に太い領域3bを設けることで浮遊ゲート電極3の表面積を大きくでき、カップリング比Cを大きくできる。
【0026】
さらに、浮遊ゲート電極3の上部は丸みを帯びた形状になっている。これにより、浮遊ゲート電極3の上部で曲率半径が大きくなり、電界集中を抑制できる。そのためゲートリーク電流および電極間絶縁膜9の耐圧劣化を抑制できる。
【0027】
また、電極間絶縁膜9は、上述したように高誘電率膜を含む積層膜であるが、高誘電率膜は浮遊ゲート電極3上部の最も太い領域3bよりも、例えば0.5〜15nmだけ外側に設けられる。これにより、製造工程において、ビット線BLj方向に制御ゲート電極10,電極間絶縁膜9および浮遊ゲート電極3の各膜材料をエッチングする際、下部に浮遊ゲート電極3の材料が残るのを防ぐことができる。
【0028】
次に、図4に示すビット線BLj方向の断面における特徴を説明する。
【0029】
浮遊ゲート電極3および電極間絶縁膜9が接する部分の幅は、例えば、5〜100nmである。また、ビット線BLj方向においても、浮遊ゲート電極3はほぼ中央部付近に括れた領域3dを有する。括れた領域3aは、最も太い領域3eに対して、長さbだけ括れており、この長さbは、例えば、1〜10nmである。ここで、最も太い領域3dは浮遊ゲート電極3と電極間絶縁膜9が接する部分に配置される。これにより、ビット線BLj方向に隣接するメモリセルトランジスタMTiとの実効的な距離d2を大きくすることができ、容量を小さくできる。その結果、上記と同様にカップリング容量Cを大きくできる。また、括れた領域3dよりも下の部分には太い領域3fが配置されている。その結果、メモリセルトランジスタMTiのパンチスルー耐圧を向上させることができる。
【0030】
なお、後述するように、ワード線WLi方向の断面と異なり、ビット線BLj方向の浮遊ゲート電極の側壁には電極間絶縁膜9は形成されない。また、スペーサ12はビット線BLj方向にのみ形成される。また、シリコン基板1の主平面において上面視した場合、浮遊ゲート電極の中央部は上部、または、下部に比べて一回り細くなる形状をしている。なお、シリコン基板1の主平面を基準として、括れた領域3aと括れた領域3dの位置は一致していなくても良い。すなわち、シリコン基板1の主平面から垂直方向を「高さ方向」とした場合、括れた領域3aと括れた領域3bの高さ方向の位置は一致していなくても良い。
【0031】
次に、図3および図4の半導体記憶装置の製造方法を説明する。図5は、半導体記憶装置の製造工程の手順を示す工程図であり、図6〜図23は、製造工程断面図である。なお、図6,8,10,12,14,16,18,20,22はワード線WLi方向の工程断面図であり、図7,9,11,13,15,17,19,21,23はビット線BLj方向の工程断面図である。
【0032】
まず、予め所望の不純物がドーピングされたシリコン基板1上にトンネル絶縁膜2となる膜材料(第1の膜材料)2Mを、例えば、熱酸化法により形成し、その上に、浮遊ゲート電極3となる膜材料(第2の膜材料)3M、CMP(Chemical Mechanical Polish)ストッパ膜4およびマスク膜5を、例えば、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により順に堆積する(ステップS1)。CMPストッパ膜4はSiN(窒化シリコン)膜などであり、マスク膜5はSiO膜などである。
【0033】
次に、マスク膜5上にフォトレジスト膜(不図示)を塗布し、通常のリソグラフィ法を用いてフォトレジスト膜をビット線BLi方向に延び、ワード線WLi方向に所定の間隔を置いて配置される複数のライン形状になるようにパターニングする。続いて、パターニングされたフォトレジスト膜をマスク材として、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法によりマスク膜5、CMPストッパ膜4および膜材料3Mの一部を順にエッチングする(ステップS2)。以上により、図6および図7に示す断面構造が得られる。
【0034】
さらに、マスク膜5をマスクとして、例えば、RIE法により、膜材料2Mおよびシリコン基板1をビット線BLj方向に順にエッチングする。これにより、トンネル絶縁膜2の周囲に自己整合的に素子分離溝7が形成される(ステップS3)。素子分離溝7の深さは例えば150nmである。以上により、図8(7A)および図9(7B)に示す断面構造が得られる。
【0035】
その後、素子分離絶縁膜8を、例えば、プラズマCVD法により全面に堆積する。素子分離絶縁膜8は、例えばSiO膜であり、その厚さは400nmである。以上により、図10および図11に示す断面構造が得られる。
【0036】
続いて、CMPストッパ膜4をストッパとして、CMP法により素子分離絶縁膜8およびマスク膜5を平坦化する。その後、例えばリン酸溶液を用いてCMPストッパ膜4を除去する(ステップS4)。さらに、素子分離絶縁膜8の上面が、膜材料3Mの上面より低く、かつ、下面より高くなるよう、素子分離絶縁膜8の一部をエッチングする。なお、このときに膜材料3Mの上部の角も僅かにエッチングされ、丸みを帯びた形状となる。以上により、素子分離溝7に素子分離絶縁膜8が形成され(ステップS5)、図12および図13に示す断面構造が得られる。
【0037】
次に、以下のステップS6,S7により、浮遊ゲート電極3となる膜材料3Mのワード線WLi方向の側面に括れた領域を形成する。
【0038】
まず、酸素雰囲気下、所定温度以下で加熱することにより、膜材料3Mの側壁を酸化する(ステップS6)。この際、バイアスを印加することにより膜材料3Mの中央部を主に酸化させる。また、ストッパ膜4を除去せず、素子分離絶縁膜8を形成した後に異方性を有する酸化、若しくは窒化により膜材料3Mを部分的に酸化若しくは窒化させ、その酸化若しくは窒化部分をエッチングすることで、浮遊ゲート電極3を括れさせることも可能である。例えば、通常の熱酸化による側壁酸化を850度以下で行うと、酸化応力が緩和せず、膜材料3Mの中央部が多く酸化され、トンネル絶縁膜2に接した部分やストッパ膜4に接した部分で少なく酸化される形状が得られる。
【0039】
続いて、例えばBHF(バッファードフッ酸)またはNHF(フッ化アンモニウム)をエッチャントとしてエッチングを行い、酸化した部分を除去する(ステップS7)。これらのエッチャントは未酸化のポリシリコンより、SiOに対するエッチングレートが高いため、主に酸化した部分が除去される。これにより、膜材料3Mのワード線WLi方向の側面に括れた領域3aが形成される。
【0040】
なお、熱酸化ではなく、斜め方向から酸素イオンを注入して、膜材料3Mの側壁を酸化してもよい。また、酸素イオンに代えて窒素イオンを注入して、浮遊ゲート電極3の側壁を窒化してもよく、この場合、例えばホットリン酸をエッチャントとして用いることができる。また、エッチャントを用いたウエットエッチングに代えて、RIE法等のドライエッチングにより酸化または窒化した部分を除去してもよい。
【0041】
以上の工程により、、図14および図15に示す断面構造が得られる。
【0042】
続いて、例えば、ALCVD(Atomic Layer Chemical Vapor Deposition)法により、膜材料3Mの上面と、膜材料3Mの素子分離絶縁膜8から露出した上部側面に接するように、電極間絶縁膜9となる膜材料(第3の膜材料)9Mを形成する。ここで、括れた領域3aの括れた長さaは、例えば、1〜10nmである。すなわち、ワード線WLi方向における断面において、膜材料9Mは膜材料3Mの括れた領域3aの側面に接するように形成することができる。その結果、膜材料9Mは、素子分離絶縁膜8の上面から膜材料3Mの素子分離絶縁膜8から露出した上部側面に連続して形成される。
【0043】
その後、電極間絶縁膜9の膜材料上に、制御ゲート電極10となる膜材料(第4の膜材料)10Mであるポリシリコン層を形成する(ステップS8)。以上により、図16および図17に示す断面構造が得られる。ここで、膜材料10Mは括れた領域3aの側面において、空隙を形成することなく膜材料9Mと接するように形成することができる。膜材料3Mの括れた長さaは、例えば、1〜10nmであるからである。その結果、カップリング比の低下を防止することができる。
【0044】
次に、膜材料10M上に、マスク膜およびワード線WLi方向に延び、ビット線BLi方向に所定の間隔を置いて配置される複数のライン形状のレジストパターン(不図示)を順次形成する。その後、レジストパターンをマスクとして、マスク膜の一部を、例えば、RIE法によりエッチングする。さらに、レジストパターンおよびマスク膜をマスクとして、例えば、RIE法により各膜材料10M,9M,3M,2Mを順にエッチングする(ステップS9)。これにより、スリット部16が形成され、制御ゲート電極10、電極間絶縁膜9、浮遊ゲート電極3およびトンネル絶縁膜2が形成される。以上により、図18および図19に示す断面構造が得られる。
【0045】
次に、例えばステップS6,S7と同様の手法により、浮遊ゲート電極3のビット線BLj方向に括れた領域3aを形成する(ステップS10)。これにより、図20および図21に示す断面構造が得られる。
【0046】
続いて、例えば、熱酸化法およびLPCVD法を用いて、トンネル絶縁膜2、浮遊ゲート電極3、電極間絶縁膜9および制御ゲート電極10の上面と側面と、シリコン基板1の露出表面上に、スペーサ12を形成する。スペーサは、例えば10nmのシリコン酸化膜である。ここで、括れた領域3aの括れた長さaは、例えば、1〜10nmである。すなわち、ビット線BLi方向における断面において、スペーサ12は浮遊ゲート電極3の括れた領域3aの側面に接するように形成することができる。その結果、スペーサ12は、シリコン基板1から浮遊ゲート電極3、電極間絶縁膜9および制御ゲート電極10の側面、並びに、制御ゲート電極10の上面に連続して連続して形成される。なお、ステップS10の後に、シリコン基板1に不純物イオンを注入し、さらに、アニールを行って、シリコン基板の表面にエクステンションを形成することも可能である。
【0047】
さらに、シリコン基板1に不純物イオンを注入し、さらに、アニールを行う。これにより、トンネル絶縁膜2を挟むように、シリコン基板1の表面にソース/ドレイン領域13が形成される。以上により、図22および図23に示す断面構造が得られる。
【0048】
その後、LVCVD法により、層間絶縁膜となるBPSG(Borophosphosilicate Glass)を全面に形成する。続いて、CMP法により、制御ゲート電極10の上面が露出するまで、BPSG膜およびスペーサ12を研磨する。さらに、スパッタ法により、Co(コバルト)膜およびTiN(窒化チタン)膜を全面に順に形成する。次に、RTA(Rapid Thermal Annealing)法により、制御ゲート電極10の上面において、SiとCoとを反応させてCoSi(コバルトシリサイド)を形成する。続いて、薬液処理により、TiN膜および未反応のCo膜を除去する。これにより、CGゲート電極10の上面にCoSi膜が形成される。なお、他の金属シリサイド膜を形成してもよい。
【0049】
以上により、半導体記憶装置が得られる。
【0050】
このように、第1の実施形態では、浮遊ゲート電極3が括れた領域3aを有するため、隣接するメモリセルトランジスタとの実効的な距離を大きくすることができ、容量を抑制できる。
【0051】
また、浮遊ゲート電極の膜厚を厚くすることなくカップリング比を大きくすることができる。浮遊ゲート電極の膜厚を厚くすると、微細化により浮遊ゲート電極の幅は小さくなるため、浮遊ゲート電極のアスペクト比が大きくなり、浮遊ゲート電極が倒壊するおそれがある。一方、第1の実施形態に係る半導体記憶装置においては、浮遊ゲート電極3は括れた領域3aの上部に太い領域3bを有するため、カップリング比を大きくすることができる。さらに、浮遊ゲート電極3の上部が丸みを帯びた形状であるため、ゲートリーク電流および電極間絶縁膜9の耐圧劣化を抑制できる。
【0052】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、浮遊ゲート電極3となる膜材料3Mの一部を酸化または窒化することにより括れた領域3aを形成した。これに対し、以下に説明する第2の実施形態では、浮遊ゲート電極3の不純物濃度を調整して括れた領域3aを形成するものである。
【0053】
図24は、半導体記憶装置の製造工程の手順を示す工程図である。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。トンネル絶縁膜2となる膜材料2Mを形成した後、P、AsまたはB等の不純物を含む浮遊ゲート電極3となる膜材料3Mを形成する(ステップS1’)。このとき、膜材料3Mの上部および下部の不純物濃度が、括れた領域3aとなる中央部の不純物濃度より低くなるようにする。一例として、中央部の不純物濃度を1017〜1021cm−3とし、上部および下部の不純物濃度をその半分以下とする。
【0054】
より具体的には、膜材料3Mを形成する際、下部および上部を形成するときは不純物のガス濃度を低くしておき、中央部を形成するときは不純物のガス濃度を高くしておく。
【0055】
あるいは、浮遊ゲート電極3の下部となる膜材料3Maを形成した後、第1の濃度で不純物イオンを注入し、続いて、中央部となる膜材料3Mbを形成した後、第1の濃度の2倍以上である第2の濃度で不純物イオンを注入し、さらに、上部となる膜材料3Mcを形成した後、第2の濃度の1/2以下である第3の濃度で不純物イオンを注入してもよい。
【0056】
その後、ステップS2〜S5の工程を行う。続いて、第1の実施形態と同様のウエットエッチングまたはドライエッチングを行う。(ステップS7’)。不純物濃度が高いほどエッチングレートが高いため、中央部が主にエッチングされ、膜材料3Mに括れた領域3aが形成される。 以降、第1の実施形態と同様のステップS8,S9の工程を行う
また、ステップS7’と同様にビット線WLi方向において、浮遊ゲート電極3の中央部に括れた領域3dを形成する。ステップ10’の工程においては、ワード線WLi方向の浮遊ゲート電極3の側面は電極間絶縁膜9および制御ゲート電極10によって覆われている。その結果、括れた領域3aが細くなりすぎることが無い。
【0057】
その後第1の実施形態と同様の工程により、半導体記憶装置が得られる。
【0058】
本実施形態では、シリコン基板1の主平面を基準として、括れた領域3aと3dの位置がほぼ等しくなる。すなわち、シリコン基板1の主平面を上面視した場合、浮遊ゲート電極3の系が最も細くなる部分が存在する。その結果、隣接セルとの容量を効果的に小さくすることができる。
【0059】
このように、第2の実施形態でも、浮遊ゲート電極3の不純物濃度を調整して、括れた領域3aおよび3dを形成する。そのため、隣接セルとの容量を小さくすることができ、かつ、カップリング比を大きくできる。
【0060】
(第3の実施形態)
以下に説明する第4の実施形態は、浮遊ゲート電極3となる膜材料3Mを酸化させたり、不純物を注入したりすることなく、RIE法により浮遊ゲート電極3に括れた領域3aを形成するものである。
【0061】
第1の実施形態において、RIE法により浮遊ゲート電極3となる膜材料3Mをエッチングする(図6、図5のステップS2)。この際、サイドエッチングが起こりやすいようRIEの条件をチューニングする。これにより、膜材料3Mのワード線WLi方向の側面に括れた領域3aを形成できる。
【0062】
同様に、RIE法により膜材料10M,9M,3M,2Mをワード線WLi方向に順にエッチングする際(図19、図5のステップS9)、RIEの条件をチューニングすることにより、膜材料3Mのビット線BLj方向の側面に括れた領域3aを形成できる。
【0063】
このように、第4の実施形態では、RIE法の条件をチューニングすることにより、新たな工程を追加することなく、浮遊ゲート電極3に括れた領域3aを形成できる。
【0064】
(第4の実施形態)
以下に説明する第5の実施形態は、ウエットエッチングにより浮遊ゲート電極3に括れた領域3aを形成するものである。
【0065】
第1の実施形態において、図12の断面構造を得た後、TMY、リン酸またはBHF等をエッチャントとしてウエットエッチングを行う。ウエットエッチングでは、粒界に沿ってエッチングされることがあり、これにより膜材料3Mのワード線WLi方向の側面に括れた領域3aを形成できる。
【0066】
なお、素子分離絶縁膜8の上面が浮遊ゲート電極3の上面より低くなるようにする工程(図5のステップS5)をウエットエッチングで行うこともできる。このウエットエッチングの際に、括れた領域3aを形成してもよい。これにより、新たな工程を追加する必要がなくなる。
【0067】
同様に、図19の断面構造を得た後にウエットエッチングを行って、膜材料3Mのビット線BLj方向の側面に括れた領域3aを形成することもできる。
【0068】
以上のように、上述した各実施形態によると、半導体記憶装置において、隣接セルとの容量を抑制し、かつ、カップリング比を大きくすることができる。
【0069】
なお、上述した各実施形態では、ワード線WLi方向およびビット線BLj方向の両方の側面に括れた領域3aを形成したが、いずれか一方にのみ形成してもよい。ワード線WLi方向とビット線BLj方向とで、異なる手法を用いて括れた領域3aを形成してもよい。また、隣接するメモリセルトランジスタMTiのうち、いずれか一方にのみ括れた領域3aを形成してもよい。
【0070】
また、各実施形態で説明した各膜の材料はあくまで一例である。例えば、電極間絶縁膜9は、高誘電率膜のみの単層膜でもよい。この場合、電極間絶縁膜9は浮遊ゲート電極3上部の最も太い領域3bよりも外側でなくても良い。また、他の積層膜として、浮遊ゲート電極3側から、SiN/高誘電率膜/SIN,SiO/高誘電率膜/SiO,SiN/SiO/高誘電率膜/SiO/SiN,SiO/高誘電率膜またはSiN/高誘電率膜等からなる積層膜でもよい。
【0071】
高誘電率膜は、SiN膜、HfAlO膜(ハフニウムアルミネート膜)、Al膜(アルミナ膜)、MgO膜(酸化マグネシウム膜)、SrO膜(酸化ストロンチウム膜)、BaO膜(酸化バリウム膜)、TiO膜(酸化チタン膜)、Ta膜(酸化タンタル膜)、BaTiO膜(チタン酸バリウム膜)、BaZrO膜(ジルコニウム酸バリウム膜)、ZrO膜(酸化ジルコニウム膜)、HfSiO膜(酸化ハフニウム膜)、Y膜(酸化イットリウム膜)、ZrSiO膜(ジルコニウムシリケート膜)、HfSiO膜(ハフニウムシリケート膜)、LaAlO膜(ランタンアルミネート膜)等を用いることができる。
【0072】
トンネル絶縁膜2は、シリコン酸化膜の単膜の他、SiN/SiO,SiO/SiN/SiO,SiO/高誘電率膜/SiO,高誘電率膜/SiOからなる積層膜でもよい。
【0073】
浮遊ゲート電極3は、W(タングステン),TaSiN(タンタルシリコンナイトライド),Ta(タンタル),TiSi(チタンシリサイド),Co,Pt等の金属、あるいは、これらの積層構造でも良い。
【0074】
制御ゲート電極10は、WSi(タングステンシリサイド),NiSi(ニッケルシリサイド),MoSi(モリブデンシリサイド),TiSiまたはCoSiとポリシリコンとのスタック構造でもよい。
【0075】
素子分離絶縁膜8は、NSG(Non Doped Silicate Glass),PSG(Phosphorous Silicon Glass),BSG(Boron Silicon Glass),PSZ(Polysilazane),BPSG(Boron Phosphorous Silicon Glass),HTO(High Temperature Oxide)等を含む絶縁膜でもよい。
【0076】
上述した各実施形態では、シリコン基板上またはpウェル領域中にメモリセルトランジスタMTiが形成される例を示したが、例えばp型SOI(Silicon on Insulator)領域を有するSOI構造の基板にメモリセルトランジスタMTiを形成してもよい。
【0077】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 半導体基板
2 トンネル絶縁膜
3 浮遊ゲート電極
7 素子分離溝
8 素子分離絶縁膜
9 電極間絶縁膜
10 制御ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される複数のメモリセルトランジスタを備え、
前記メモリセルトランジスタのそれぞれは、
半導体基板上に形成される第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成される浮遊ゲート電極と、
前記浮遊ゲート電極上に形成される第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上に形成される制御ゲート電極と、を有し、
前記第1および第2の方向に隣接する2つの前記メモリセルトランジスタの前記浮遊ゲート電極は、前記隣接する方向の側面に括れた領域を有することを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
前記浮遊ゲート電極の上部は丸みを帯びていることを特徴とする請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記浮遊ゲート電極の括れた領域は、前記浮遊ゲート電極の太い領域に対して、1nm乃至10nm括れていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第2の絶縁膜は、前記第1の方向における前記浮遊ゲート電極の前記括れた領域の側面に接しており、
前記制御ゲート電極は、前記第1の方向における前記浮遊ゲート電極の前記括れた領域の側面で、前記第2の絶縁膜と接していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される複数のメモリセルトランジスタを備える半導体記憶装置の製造方法であって、
半導体基板上に第1の絶縁膜となる第1の膜材料を形成する工程と、
前記第1の膜材料上に浮遊ゲート電極となる第2の膜材料を形成する工程と、
前記第2および第1の膜材料と、前記半導体基板の上部を前記第2の方向に順にエッチングして、溝を形成する工程と、
前記溝に素子分離絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の膜材料の前記第1の方向の側面に括れた領域を形成する工程と、
前記第2の膜材料および前記素子分離絶縁膜上に第2の絶縁膜となる第3の膜材料を形成する工程と、
前記第3の膜材料上に制御ゲート電極となる第4の膜材料を形成する工程と、
前記第4、第3、第2および第1の膜材料を前記第1の方向に順にエッチングして、前記第1の絶縁膜と、前記浮遊ゲート電極と、前記第2の絶縁膜と、前記制御ゲート電極と、をそれぞれ形成する工程と、
前記浮遊ゲート電極を形成する工程の後に、前記浮遊ゲート電極の前記第2の方向の側面に括れた領域を形成する第2工程と、を備えることを特徴とする半導体記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−64701(P2012−64701A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206802(P2010−206802)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】