説明

半導体記憶装置及びその製造方法

【課題】メモリセルアレイおよび周辺回路領域の素子分離領域の深さを調節しつつ、周辺回路部の素子分離領域に形成されるマイクロトレンチ形状の影響を抑制し、信頼性の高い半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置は、半導体基板上に設けられデータを記憶する複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、半導体基板上に設けられメモリセルアレイを制御する周辺回路部とを備えている。素子分離部は、複数のメモリセルおよび周辺回路部が形成されるアクティブエリア間に設けられている。側壁膜は、周辺回路部におけるアクティブエリアの側面に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的に書き換え可能で且つ高集積化が可能な不揮発性半導体記憶装置として、NAND型フラッシュEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)が知られている。NAND型フラッシュEEPROMは、データを記憶可能な複数のメモリセルを備えるメモリセルアレイ領域と、メモリセルアレイを制御する周辺回路領域とを備えている。ワード線方向に隣接するメモリセル間には、素子分離部としてSTI(Shallow Trench Isolation)が設けられている。STIは、周辺回路領域において、隣接する素子(例えば、トランジスタ)間や隣接するウェル間にも設けられている。
【0003】
STIのトレンチは、トンネル絶縁膜の材料およびフローティングゲートの材料を半導体基板上に堆積した後、フローティングゲートの材料、トンネル絶縁膜の材料および半導体基板を連続してエッチングすることにより形成される。STIのトレンチの平面レイアウトには、メモリセルアレイ領域における微細なパターン(数10nm)と、周辺回路領域における比較的大きなパターン(数100nm〜数μm)とがあり、これらは同時に形成される。このため、メモリセルアレイと周辺回路領域との粗密形状差によって、メモリセルアレイと周辺回路領域とにおいてSTIの深さに差が生じやすい。
【0004】
さらに、NAND型フラッシュメモリでは、書き込みのために20V近くの高電圧を用いる。このような高電圧の生成および転送を行うトランジスタおよびキャパシタは、高耐圧を有する必要がある。トランジスタおよびキャパシタを高耐圧型にするためには、ゲート絶縁膜をメモリセルのトンネル絶縁膜よりも厚く形成する必要がある。STIのトレンチ加工では、ゲート絶縁膜およびトンネル絶縁膜の厚みの違いによっても、メモリセルアレイ領域と周辺回路領域とにおいてSTIのトレンチの深さに差が生じやすい。この場合、STIの密度の低い周辺回路領域では、STIのトレンチの深さがメモリセルアレイ領域のSTIのトレンチの深さよりも深くなる。そのがめ、周辺回路領域のトレンチの側面と底面との境界部にマイクロトレンチ形状が形成される場合がある。
【0005】
マイクロトレンチ形状は、トレンチの側面と底面との境界部に形成されたエッチングによる窪み(または抉れ)である。マイクロトレンチ形状は、その後に堆積するシリコン酸化膜の被覆性を悪化させるだけでなく、シリコン酸化膜によって生じる応力が集中する原因となる。周辺回路領域のSTIには、メモリセルアレイ領域のSTIよりも多くのシリコン酸化膜が用いられる。従って、周辺回路領域のSTIに印加される応力は、メモリセルアレイ領域のSTIに印加される応力よりも大きい。このため、周辺回路領域では、その後の熱工程において欠陥が生じる可能性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−294759号公報
【特許文献2】特開2006−080310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メモリセルアレイ領域および周辺回路領域の素子分離部の深さを調節しつつ、周辺回路領域の素子分離部に形成されるマイクロトレンチ形状の影響を抑制し、信頼性の高い半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態による半導体記憶装置は、半導体基板上に設けられデータを記憶する複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、半導体基板上に設けられメモリセルアレイを制御する周辺回路部とを備えている。素子分離部は、複数のメモリセルおよび周辺回路部が形成されるアクティブエリア間に設けられている。側壁膜は、周辺回路部におけるアクティブエリアの側面に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に従った半導体記憶装置の構成を示す図。
【図2】ビット線BLの延伸方向に沿ったメモリの断面図。
【図3】ワード線WLの延伸方向に沿ったメモリおよび周辺回路領域の断面図。
【図4】第1の実施形態によるメモリの製造方法を示す断面図。
【図5】図4に続く、メモリの製造方法を示す断面図。
【図6】図5に続く、メモリの製造方法を示す断面図。
【図7】図6に続く、メモリの製造方法を示す断面図。
【図8】第2の実施形態によるワード線WLの延伸方向に沿ったメモリおよび周辺回路領域の断面図。
【図9】第2の実施形態によるメモリの製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る第1の実施形態に従った半導体記憶装置の構成を示す図である。半導体記憶装置は、例えば、NAND型フラッシュメモリ(以下、単にメモリとも言う)である。メモリは、複数のメモリセルMCをマトリクス状に二次元配置したメモリセルアレイ1と、メモリセルアレイ1を制御する周辺回路領域2とを備えている。
【0012】
メモリセルアレイ1は、複数のブロックBLKを備え、各ブロックBLKは、複数のメモリセルユニット(以下、単にセルユニットとも言う)CUを備える。ブロックBLKは、データの消去単位である。セルユニットCUは、直列に接続された複数のメモリセルMCを備える。セルユニットCUの両端のメモリセルMCは、選択トランジスタSTに接続されている。一端のメモリセルMCは、選択トランジスタSTを介してビット線BLに接続されており、他端のメモリセルMCは、選択トランジスタSTを介してセルソースCELSRCに接続されている。
【0013】
ワード線WLは、ロウ方向に配列されたメモリセルMCのコントロールゲートCGに接続されている。選択ゲート線SGS、SGDは、選択トランジスタSTのゲートに接続されている。ワード線WLおよび選択ゲート線SGS、SGDは、ロウデコーダおよびワード線ドライバWLDにより駆動される。
【0014】
各ビット線BLは、選択トランジスタSTを介してセルユニットCUに接続されている。また、各ビット線BLは、センスアンプ回路SAに接続されている。尚、一つのワード線に接続された複数のメモリセルMCが、一括したデータ読出しおよびデータ書込みの単位であるページを構成する。
【0015】
選択ゲート線SGS、SGDが選択トランジスタSTを駆動することによって、セルユニットCUがビット線BLとセルソースCESRCとの間に接続される。そして、ワード線ドライバWLDが非選択ワード線WLを駆動することによって、選択メモリセルMC以外のメモリセルMCをオン状態にする。これにより、センスアンプSAがビット線BLを介して選択メモリセルMCに電圧を印加することができる。これにより、センスアンプSAは、選択メモリセルMCのデータを検出し、あるいは、選択メモリセルMCにデータを書き込むことができる。
【0016】
図2は、ビット線BLの延伸方向に沿ったメモリの断面図である。メモリセルMCおよび選択トランジスタSTは、半導体基板10上に形成されている。破線枠で示すセルユニットCUは、例えば拡散層40によって直列に接続された複数のメモリセルMCを備える。
【0017】
ビット線BLは、ドレイン側の選択トランジスタSTの一方の拡散層40aにビット線コンタクトBLCを介して接続されている。セルソースCELSRCは、ソース側の選択トランジスタSTの一方の拡散層40bにソース線コンタクトSLCを介して接続されている。
【0018】
ワード線WLとして機能するコントロールゲートCGおよびセルソースCELSRCは、ビット線BLと直交する方向(図2の紙面に対して垂直方向(ロウ方向))に延伸している。
【0019】
ビット線BLの延伸方向(カラム方向)に隣接する複数のセルユニットCUは、ビット線コンタクトBLCまたはソース線コンタクトSLCのいずれかを共有している。
【0020】
図3(A)〜図3(C)は、ワード線WLの延伸方向に沿ったメモリセルアレイ領域および周辺回路領域の断面図である。図3(A)がメモリセルMCの断面図を示し、図3(B)が周辺回路領域の低耐圧トランジスタTLVの断面図を示し、さらに、図3(C)が周辺回路領域の高耐圧トランジスタTHVの断面図を示す。
【0021】
図3(A)に示すように、ワード線WLの延伸方向(ロウ方向)に隣接するメモリセルMCは、素子分離部STIによって分離されている。素子分離部STIは、ロウ方向に隣接するアクティブエリアAA間に設けられている。アクティブエリアAAは、素子分離部STIとともにカラム方向に延伸しており、その表面上にメモリセルMCが形成される。
【0022】
各メモリセルMCは、拡散層40と、トンネル絶縁膜20aと、フローティングゲートFGと、ゲート絶縁膜30と、コントロールゲートCG(ワード線WL)とを備えている。拡散層40は、図2に示すように半導体基板10のアクティブエリアAAの表面に形成されている。トンネル絶縁膜20aは、半導体基板10のアクティブエリアAA上に設けられている。フローティングゲートFGは、トンネル絶縁膜20a上に設けられており、ロウ方向およびカラム方向において各メモリセルMCごとに分離されている。ゲート絶縁膜(IPD(Inter-Polysilicon Dielectric))30は、フローティングゲートFGの上面および側面に形成さており、フローティングゲートFGとコントロールゲートCGとの間を分離している。コントロールゲートCGは、ゲート絶縁膜30を介して、フローティングゲートFGの上方および側方に設けられている。コントロールゲートCGは、ロウ方向に延伸しており、同一ページに含まれる複数のメモリセルMCに共有されている。また、コントロールゲートCGは、ワード線WLとしての機能も有する。コントロールゲートCG上には、層間絶縁膜ILDが設けられている。
【0023】
図3(B)および図3(C)に示すように、周辺回路領域の低耐圧トランジスタTLVおよび高耐圧トランジスタTHVは、ともにアクティブエリアAA上に形成されている。隣接するアクティブエリアAAは、素子分離部STIによって分離されている。
【0024】
低耐圧トランジスタTLVは、ゲート絶縁膜20bと、ゲート電極Gとを備えている。ゲート絶縁膜20aは、アクティブエリアAA上に設けられている。ゲート電極Gは、ゲート絶縁膜20a上に設けられている。絶縁膜30は、フローティングゲートの材料上において一部除去されている。これにより、フローティングゲートとコントロールゲートとは、電気的に接続されており、一体としてゲート電極Gを構成する。
【0025】
低耐圧トランジスタTLVと高耐圧トランジスタTHVとは、ゲート絶縁膜の厚みにおいて相違する。高耐圧トランジスタTHVのゲート絶縁膜20cは、低耐圧トランジスタTLVのゲート絶縁膜20bよりも厚く形成されている。高耐圧トランジスタTHVのその他の構成は、低耐圧トランジスタTLVの構成と同様でよい。
【0026】
図3(A)から図3(C)に示すように、アクティブエリアAA間には素子分離部STIが設けられている。素子分離部STIのトレンチ内には、絶縁膜(例えば、シリコン酸化膜)が充填されている。素子分離部STI内の絶縁膜は、CVD法および/または塗布によりトレンチ内に充填される。
【0027】
図3(A)に示すようにメモリセルアレイの領域では、素子分離部STIのトレンチの内側面には、側壁膜(スペーサ)が設けられていない。即ち、メモリセルアレイにおけるアクティブエリアAAの側面には、側壁膜が設けられていない。
【0028】
一方、図3(B)および図3(B)に示すように周辺回路領域の素子分離部STIのトレンチの内側面には、側壁膜(スペーサ)100が設けられている。即ち、周辺回路領域におけるアクティブエリアAAの側面には、側壁膜100が設けられている。
【0029】
メモリセルアレイ領域における素子分離部STIの幅(アクティブエリアAA間の幅)は、非常に微細化されており、周辺回路領域の素子分離部STIの幅(アクティブエリアAA間の幅)に比べて狭い。従って、メモリセルアレイ領域における素子分離部STI(アクティブエリアAA)の平面レイアウトの密度は、周辺回路領域における素子分離部STI(アクティブエリアAA)のそれと比べて高い。
【0030】
このように、メモリセルアレイ領域と周辺回路領域とにおいて、素子分離部STIおよびアクティブエリアAAの密度が相違すると、メモリセルアレイ領域および/または周辺回路領域において、平面レイアウトの粗密差に起因する形状差、あるいは、マイクロトレンチ構造が生じる。例えば、素子分離部STI(アクティブエリアAA)の密度が低い周辺回路領域では、メモリセルアレイ領域よりも素子分離部STIの深さが深くなり、マイクロトレンチ110がアクティブエリアAAと素子分離部STIとの境界部に形成される場合がある。マイクロトレンチ110は、アクティブエリアAAの側面の下方(素子分離部STIの端部)に形成された微細なトレンチである。素子分離部STIを埋め込むCVD膜および/または有機塗布膜がマイクロトレンチ110を含むSTI全体に充填されると、そのCVD膜または有機塗布膜の応力がマイクロトレンチ110に印加される。これは、アクティブエリアAAまたは素子分離部STIの欠陥に繋がり、メモリ全体の信頼性を損ねる可能性がある。
【0031】
これに対し、本実施形態では、CVD膜または有機塗布膜が素子分離部STIのトレンチを充填する前に、側壁膜100がアクティブエリアAAの側面を被覆し、かつ、マイクロトレンチ110を充填している。これにより、素子分離部STIのトレンチがCVD膜または有機塗布膜により充填される前に、マイクロトレンチ110が側壁膜100によって充填されるので、CVD膜または有機塗布膜による応力がマイクロトレンチ110に直接印加されない。また、周辺回路領域において、各素子分離部STIに充填されるCVD膜または有機塗布膜の量(体積)が少なくなり、周辺回路領域の素子分離部STIに印加される応力が低減する。その結果、周辺回路領域におけるアクティブエリアAAまたは素子分離部STIの欠陥を抑制し、メモリ全体の信頼性の向上に繋がる。
【0032】
図4から図7は、第1の実施形態によるメモリの製造方法を示す断面図である。図4から図7の(A)は、図3(A)に示すメモリセルアレイ領域の断面に対応しており、図4から図7の(B)および(C)は、図3(B)および図3(C)に示す周辺回路領域の断面に対応している。
【0033】
まず、半導体基板(例えば、シリコン基板)10上にトンネル絶縁膜20a、ゲート絶縁膜20b、20cを形成する。トンネル絶縁膜20a、ゲート絶縁膜20b、20cは、例えば、シリコン酸化膜を用いる。
【0034】
次に、トンネル絶縁膜20a、ゲート絶縁膜20b、20c上にフローティングゲートFGの材料31を堆積する。フローティングゲートFGの材料31は、例えば、ポリシリコンを用いる。続いて、フローティングゲートFGの材料31上にキャップ材33を堆積する。キャップ材料33は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜を用いる。これにより、図4(A)から図4(C)に示す構造が得られる。
【0035】
メモリセルアレイ領域では、材料31は、後にフローティングゲートFGして機能する。一方、周辺回路領域では、材料31は、後にコントロールゲートCGと電気的に接続されるため、トランジスタTLV、THVのゲート電極Gとして機能する。
【0036】
次に、リソグラフィおよびRIE(Reactive Ion Etching)を用いてマスク材としてのキャップ材33をアクティブエリアAAのパターンに加工する。尚、キャップ材33とは別に、マスク材(図示せず)をキャップ材33上に堆積し、そのマスク材をアクティブエリアAAのパターンに加工してもよい。
【0037】
そして、キャップ材33(またはマスク材)をマスクとして用いて、フローティングゲートFGの材料31、トンネル絶縁膜20a、ゲート絶縁膜20b、20c、および、半導体基板10をRIE法でエッチングする。これにより、図5(A)から図5(C)に示すように、素子分離領域にトレンチTRm、TRpが同時に形成される。
【0038】
このとき、メモリセルアレイ領域と周辺回路領域とにおけるアクティブエリアAAのパターンの粗密差によって、周辺回路領域のトレンチTRpの端部にマイクロトレンチ110が形成されることがある。
【0039】
そこで、CVD法等を用いて、図6(B)および図6(C)に示すように、周辺回路領域におけるトレンチTRpの内側面を被覆するように絶縁膜(スペーサ絶縁膜)100を堆積する。このとき、図6(A)に示すように、スペーサ絶縁膜100は、メモリセルアレイ領域におけるトレンチTRmの内側面を完全には被覆せず、トレンチTRmの開口部を閉塞するように堆積する。
【0040】
より詳細には、スペーサ絶縁膜100は、ロウ方向の開口幅の狭いメモリセルアレイ領域のトレンチTRmの内側面を完全には被覆せず、かつ、ロウ方向の開口幅の広い周辺回路領域のトレンチTRpの内側面を被覆することができるような被覆率の悪い条件で堆積される。被覆率を悪くするためには、例えば、CVD法において、高温もしくは高圧条件のもと、半導体基板10の温度を下げる。これによって、堆積される原子の移動を半導体基板10に達してから意図的に妨げ、堆積原子の供給を律速の状態にする。これにより、開口部の狭いトレンチTRmは、その内側面にスペーサ絶縁膜100が厚く堆積される前に、その開口部がスペーサ絶縁膜100によって閉塞される。開口部の広いトレンチTRpの内側面には、スペーサ絶縁膜100が堆積される。その結果、トレンチTRpの端部に形成されたマイクロトレンチ110は、スペーサ絶縁膜100によって充填される。
【0041】
スペーサ絶縁膜100は、例えば、シリコン酸化膜を用いる。スペーサ絶縁膜100の膜厚は、マイクロトレンチ110を埋め込むために充分な厚みでよい。マイクロトレンチ110の大きさおよび深さは、製造されるメモリのパターン(デバイスの種類)、トレンチTRm、TRpの深さ、および、製造ライン等によって異なるため一概に特定できない。従って、スペーサ絶縁膜100の膜厚は、製造されるデバイスおよび製造ライン等によって個別に設定すればよい。
【0042】
次に、RIE法を用いて、スペーサ絶縁膜100を異方的にエッチングすることによって、周辺回路領域におけるトレンチTRpの内側面を被覆するスペーサ絶縁膜100をスペーサとして残置させたまま、メモリセルアレイ領域におけるスペーサ絶縁膜100を除去する。これにより、図7(A)に示すように、スペーサ絶縁膜100は、メモリセルアレイ領域から除去される。一方、図7(B)および図7(C)に示すように、スペーサ絶縁膜100は、周辺回路領域のアクティブエリアAAの側面に残置され、マイクロトレンチ110を充填した状態を維持する。以下、スペーサ絶縁膜100は、側壁膜100とも呼ぶ。
【0043】
上記スペーサ絶縁膜100のエッチングにおいて、トレンチTRpの底部の半導体基板10が抉られ、トレンチTRpの底部がガウジングを起こした形状になる場合がある。この形状は、素子分離部STIの端部の形状を滑らかにするので、素子分離部STIを充填する絶縁膜の応力を緩和するのに役立つ。
【0044】
フローティングゲートFGの材料31は、キャップ材33で被覆されているため、スペーサ絶縁膜100のエッチングにおいてダメージを受けない。
【0045】
その後、既知の工程を用いて、素子分離部STIを形成する。例えば、LP−CVD(Low-Pressure CVD)法、CVD法および塗布を用いて、トレンチTRm、TRp内に絶縁膜を充填し、あるいは、CVD法および塗布のみを用いて、トレンチTRm、TRp内に絶縁膜を充填してもよい。なお絶縁膜の充填に先立って、図示しないライナー絶縁膜を用いて、トレンチTRm、TRp内を薄く被覆しても構わない。ライナー絶縁膜の形成は、例えば、CVD法を用いてシリコン酸化膜を堆積し形成する。
【0046】
素子分離部STIをエッチングバックし、キャップ材33を除去した後、既知の方法を用いて、ゲート絶縁膜30、コントロールゲートCG、拡散層40、層間絶縁膜ILDおよび配線を形成することによって、図3(A)から図3(C)に示すメモリが完成する。
【0047】
本実施形態によれば、周辺回路領域のトレンチTRpを絶縁膜で充填する前に、側壁膜(スペーサ)100が、トレンチTRp内に形成されるマイクロトレンチ110を充填する。側壁膜100に残存する応力は、トレンチTRm、TRp内に充填される絶縁膜より小さい。これにより、周辺回路領域の素子分離部STIの端部における絶縁膜からの応力を緩和することができる。これは、素子分離部STIの端部における欠陥を抑制し、メモリの信頼性の向上に繋がる。
【0048】
また、周辺回路領域およびメモリセルアレイ領域において、素子分離部STI(アクティブエリアAA)のレイアウトパターンの密度の相違、素子分離部STIの深さの相違等によって、マイクロトレンチ110が形成されたとしても、側壁膜100が、マイクロトレンチ110を予め充填し、欠陥を抑制する。これにより、本実施形態は、周辺回路領域およびメモリセルアレイ領域におけるレイアウトパターン、および、素子分離部STIの深さ等を任意に設定することができる。例えば、周辺回路領域における素子分離部STIのマイクロトレンチ110に関わらず、メモリセルアレイ領域における素子分離部STIの深さを所望の深さに形成することができる。
【0049】
さらに、周辺回路領域における比較的体積の大きいトレンチTRpに側壁膜100を設け、メモリセルアレイ領域における比較的堆積の小さいトレンチTRmに側壁膜100を設けていない。これにより、トレンチTRp内に充填される絶縁膜の体積とトレンチTRm内に充填される絶縁膜の体積との差が小さくなる。即ち、周辺回路領域の素子分離部STIにかかる応力とメモリセルアレイ領域の素子分離部STIにかかる応力との差が小さくなる。これは、周辺回路領域およびメモリセルアレイ領域における素子分離部STIの粗密差を軽減し、これらの素子分離部STIを同時に形成することを可能にする。
【0050】
(第2の実施形態)
図8(A)から図8(C)は、第2の実施形態によるワード線WLの延伸方向に沿ったメモリおよび周辺回路領域の断面図である。図8(A)がメモリセルMCの断面図を示し、図8(B)が周辺回路領域の低耐圧トランジスタTLVの断面図を示し、図8(C)が周辺回路領域の高耐圧トランジスタTHVの断面図を示す。
【0051】
第2の実施形態では、側壁膜100でマイクロトレンチ110を充填した後、さらに、素子分離部STIのトレンチTRp、TRmを深くするために、半導体基板10をエッチングしている。これにより、メモリセルアレイ領域および周辺回路領域における素子分離部STIの深さを所望の深さまで形成することができる。
【0052】
例えば、メモリセルアレイ領域のトレンチTRmの開口部が狭く、周辺回路領域のトレンチTRpの開口部が広い場合、トレンチTRmおよびトレンチTRpを同時に形成すると、メモリセルアレイ領域のトレンチTRpは、周辺回路領域のトレンチTRmよりも深く形成される。この場合、周辺回路領域のトレンチTRpにマイクロトレンチ110が形成されやすくなる。マイクロトレンチ110の形成を抑制するためには、逆にトレンチTRp、TRmを浅くすることが考えられる。しかし、この場合には、メモリセルアレイ領域のトレンチTRmが所望の深さまでエッチングできなくなる恐れがある。
【0053】
そこで、第2の実施形態では、側壁膜100でマイクロトレンチ110を充填した後、さらに、素子分離部STIのトレンチTRp、TRmを深くするために、半導体基板10を再度エッチングしている。
【0054】
従って、図8(B)および図8(C)に示すように、周辺回路領域におけるアクティブエリアAAの側面は、側壁膜100の底部において段差または窪みSTPを有している。そして、周辺回路領域における素子分離部STIは、側壁膜100の底部の段差または窪みSTPよりも深く形成されている。一方、図8(A)に示すように、メモリセルアレイにおけるアクティブエリアAAの側面は、段差または窪みを有さない。
【0055】
第2の実施形態のその他の構成は、第1の実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0056】
図9(A)から図9(C)は、第2の実施形態によるメモリの製造方法を示す断面図である。図4から図7を参照して説明した製造工程の後、さらに、トレンチTRm、TRpの底部の半導体基板10をエッチングする。即ち、スペーサ絶縁膜100でマイクロトレンチ110を充填した後、半導体基板10をさらにエッチングすることによって、トレンチTRm、TRpの深さを調節する。
【0057】
その後、既知の工程を用いて、素子分離部STIを形成する。例えば、LP−CVD(Low-Pressure CVD)法、CVD法および塗布を用いて、トレンチTRm、TRp内に絶縁膜を充填し、あるいは、CVD法および塗布のみを用いて、トレンチTRm、TRp内に絶縁膜を充填してもよい。
【0058】
素子分離部STIをエッチングバックし、キャップ材33を除去した後、既知の方法を用いて、ゲート絶縁膜30、コントロールゲートCG、拡散層40、層間絶縁膜ILDおよび配線を形成することによって、図8(A)から図8(C)に示すメモリが完成する。
【0059】
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を有する。さらに、第2の実施形態では、側壁膜100の形成前と側壁膜100の形成後とに分けて、素子分離部STIのトレンチTRm、TRpを複数回エッチングしている。これにより、周辺回路領域の素子分離部STIにマイクロトレンチ110が形成されたとしても、周辺回路領域の素子分離部STIに欠陥が発生することを抑制しながらメモリセルアレイ領域の素子分離部STIおよび/または周辺回路領域の素子分離部STIの深さを所望の深さに形成することができる。
【0060】
上記、第1、第2の実施形態は、NAND型フラッシュメモリに関する形態であるが、上記実施形態は、STIのレイアウトについて粗密差を有する他のデバイスに適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・メモリセルアレイ領域、2・・・周辺回路領域、MC・・・メモリセル、FG・・・フローティングゲート、CG・・・コントロールゲート、TLV・・・耐圧トランジスタ、THV・・・高耐圧トランジスタ、WL・・・ワード線、BL・・・ビット線、CELSRC・・・セルソース、STI・・・素子分離部、AA・・・アクティブエリア、10・・・半導体基板、20a・・・トンネル絶縁膜、20b、20c・・・ゲート絶縁膜、30・・・ゲート絶縁膜(IPD)、40・・・拡散層、100・・・側壁膜(スペーサ)、110・・・マイクロトレンチ、TRm、TRp・・・トレンチ、STP・・・段差または窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に設けられデータを記憶する複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、
前記半導体基板上に設けられ前記メモリセルアレイを制御する周辺回路部と、
前記複数のメモリセルおよび前記周辺回路部が形成されるアクティブエリア間に設けられた素子分離部と、
前記周辺回路部における前記アクティブエリアの側面に設けられている側壁膜とを備えた半導体記憶装置。
【請求項2】
前記側壁膜は、前記周辺回路部における前記アクティブエリアの側面の下方に形成された微細トレンチを埋め込んでいることを特徴とする請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記周辺回路部における前記アクティブエリアの側面は、前記側壁膜の底部において段差または窪みを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記周辺回路部における前記素子分離部は、前記側壁膜の底部の段差または窪みよりも深く形成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記メモリセルアレイにおいて隣接する前記素子分離部間の間隔は、前記周辺回路部において隣接する前記素子分離部間の間隔よりも狭いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
半導体基板上に設けられデータを記憶する複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、前記半導体基板上に設けられ前記メモリセルアレイを制御する周辺回路部とを備えた半導体記憶装置の製造方法であって、
半導体基板の上方にマスク材料を堆積し、
前記マスク材料をアクティブエリアのパターンに加工し、
前記マスク材料をマスクとして用いて前記半導体基板をエッチングしてトレンチを形成し、
前記周辺回路部における前記トレンチの内側面を被覆し、かつ、該メモリセルアレイにおける前記トレンチの開口部を塞ぐようにスペーサ絶縁膜を堆積し、
前記スペーサ絶縁膜をエッチングすることによって、前記周辺回路部における前記トレンチの内側面を被覆する前記スペーサ絶縁膜をスペーサとして残置させたまま、前記メモリセルアレイにおける前記スペーサ絶縁膜を除去し、
前記トレンチ内に絶縁膜を充填することによって前記素子分離部を形成することを具備する半導体記憶装置の製造方法。
【請求項7】
前記周辺回路部における前記トレンチの内側面に前記スペーサを形成した後、
前記半導体基板をさらにエッチングすることによって、前記トレンチの深さを調節することをさらに具備したことを特徴とする請求項6に記載の半導体記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−146693(P2012−146693A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1354(P2011−1354)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】