説明

半導体集積回路

【課題】広い周波数範囲で高調波電流成分を削減して高周波ノイズを低減することのできる半導体集積回路の提供を図る。
【解決手段】クロック信号CKに同期して動作する複数のデジタル回路11,12を含む半導体集積回路であって、前記各デジタル回路は、周波数が同じで位相が異なる第1および第2クロック信号CKa,CKbの一方を受け取り、前記第1および第2クロック信号の位相差は、m,nを自然数として、ほぼ[2m−1]/2nであるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願で言及する実施例は、半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の製造加工精度が向上するのに伴って、半導体基板上への回路の集積度が高くなり、また、様々な回路が同一の半導体チップに搭載されるようになってきている。
【0003】
すなわち、例えば、クロック信号に同期して動作する回路と、そのクロック信号周波数の逓倍の周波数成分を持つ信号を処理する回路が、同一チップに搭載された半導体集積回路が提供されている。
【0004】
ところで、CMOSトランジスタで構成されたデジタル回路の電流消費の時間変動波は、クロック信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジで鋭いピークを持つような波形になることが多い。
【0005】
また、デジタル回路に電力を供給する電源線にはインピーダンスが存在することから、デジタル回路の電流変動は、チップに搭載されたデジタル回路の電源線の電位を変動させることになる。
【0006】
さらに、同一チップに搭載されたデジタル回路の電源線と高周波回路の電源線は、ウエル間のpn接合などにより容量性の結合となっているため、デジタル回路の電位変動は、高周波経路の電源電位変動を引き起こすことになる。
【0007】
また、高周波回路の電源電位変動は、回路の特性を劣化させることになり、特に、信号周波数帯と同じ周波数成分の変動が与える影響が大きくなる。そして、前述したように、デジタル回路はクロック信号エッジでピークを持つことから、クロック信号周波数の高次の高調波成分を含む電位変動を引き起こすことになる。
【0008】
具体的に、例えば、1GHzのキャリア周波数fcを持つ無線通信の信号を送受信する高周波回路と、信号のエンコード/デコードを行うような200MHzのクロック信号周波数fckで動作するデジタル回路が、同一チップに搭載されることがある。
【0009】
このとき、200MHzのクロック信号周波数fckの5倍の高調波の電源変動は、高周波回路における1GHzのキャリア周波数fcの周波数帯と一致するため、信号にノイズを発生することになる。
【0010】
ところで、従来、特定の周波数帯域の高周波ノイズを低減する半導体集積回路としては様々なものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第00/065651号パンフレット
【特許文献2】特開2000−196451号公報
【特許文献3】特開平10−143275号公報
【特許文献4】特開2006−39693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、従来、特定の周波数帯域の高周波ノイズを低減する半導体集積回路が提案されているが、それは、回路の消費電流波形の大きさがピークごとに等しくて電流波形の位相が正確に合わせられたときに、特定の周波数成分をゼロに削減するものである。
【0013】
すなわち、回路の消費電流波形のピークの大きさが異なり、或いは、電流波形の位相が所望の値とずれると、高調波の周波数成分の電流値が大きくなってノイズ低減の効果は極端に小さくなる。
【0014】
この出願は、広い周波数範囲で高調波電流成分を削減して高周波ノイズを低減することのできる半導体集積回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一実施形態によれば、クロック信号に同期して動作する複数のデジタル回路を含む半導体集積回路が提供される。
【0016】
前記各デジタル回路は、周波数が同じで位相が異なる第1および第2クロック信号の一方を受け取り、前記第1および第2クロック信号の位相差は、m,nを自然数として、ほぼ[2m−1]/2nになっている。
【発明の効果】
【0017】
開示の半導体集積回路は、広い周波数範囲で高調波電流成分を削減して高周波ノイズを低減することのできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】半導体集積回路の一例を示すブロック図である。
【図2】図1の半導体集積回路の動作を説明するための図(その1)である。
【図3】図1の半導体集積回路の動作を説明するための図(その2)である。
【図4】第1実施例の半導体集積回路を示すブロック図である。
【図5】図4の半導体集積回路の動作を説明するための図である。
【図6】図4の半導体集積回路の効果を図1の半導体集積回路のものと比較して示す図(その1)である。
【図7】図4の半導体集積回路の効果を図1の半導体集積回路のものと比較して示す図(その2)である。
【図8】第2実施例の半導体集積回路を示すブロック図である。
【図9】図8の半導体集積回路におけるPLL回路の一例を示すブロック図である。
【図10】図9のPLL回路の動作を説明するための図である。
【図11】第2実施例の半導体集積回路の効果を示す図(その1)である。
【図12】第2実施例の半導体集積回路の効果を示す図(その2)である。
【図13】第3実施例の半導体集積回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、実施例を詳述する前に、図1〜図3を参照して、半導体集積回路の一例における問題点を説明する。
【0020】
図1は半導体集積回路の一例を示すブロック図であり、また、図2および図3は図1の半導体集積回路の動作を説明するための図である。図1において、参照符号1はデジタル回路を示している。
【0021】
図1に示すデジタル回路1に対して図2(a)に示すようなクロック信号CKを入力したとき、デジタル回路1に流れる電流Iは図2(b)のようになり、また、デジタル回路1から発生する高調波は図3のようになる。
【0022】
ここで、図2(a)に示されるように、クロック信号CKの周期をTckとし、そのデューティー比(クロック信号CKの周期Tckに対する高電位期間の幅の比率)をαとする。
【0023】
さらに、図2(b)に示されるように、クロック信号CKの立ち上がりエッジに同期して流れる電流をIrとし、クロック信号CKの立ち下がりエッジに同期して流れる電流をIfとする。
【0024】
図3(a)に示されるように、α=0.5でIf/Ir=1のとき、クロック信号周波数(1/Tck)の奇数次の高調波はゼロになる。
【0025】
しかしながら、図3(b)に示すα=0.5でIf/Ir=0.5のときや、図3(c)に示すα=0.45でIf/Ir=1のときには、奇数次の高調波成分も発生しているのが分かる。
【0026】
このような高調波電流は、半導体基板を伝播して同一チップ内の高周波回路の特性を劣化させ、或いは、電源配線から空中に放射されて他の電子機器の性能を劣化させる恐れがある。
【0027】
以下、添付図面を参照して、半導体集積回路の実施例を詳述する。
図4は第1実施例の半導体集積回路を示すブロック図であり、また、図5は図4の半導体集積回路の動作を説明するための図である。
【0028】
図4において、参照符号2は位相制御回路を示し、また、11および12はデジタル回路を示している。さらに、参照符号I1は(第1)デジタル回路11を流れる電流、I2は(第2)デジタル回路12を流れる電流、そして、Iは両方のデジタル回路11,12を流れる電流(I=I1+I2)を示している。
【0029】
図4および図5に示されるように、位相制御回路2は、クロック信号CKを受け取って2つのクロック信号CKaおよびCKbを出力する。
【0030】
ここで、第1クロック信号CKaは、第2クロック信号CKbと周波数(クロック周期Tck)が等しく、立ち上がり位相がβだけ異なる信号となっている。なお、位相差βは、クロック周期Tckに対する第1および第2クロック信号CKa,CKbの立ち上がりタイミングの幅(差)の比率として表される。
【0031】
従って、図5に示されるように、第1クロック信号CKaと第2クロック信号CKbの立ち上がりタイミングの幅(差)は、β*Tckとして表される。
【0032】
デジタル回路11は、位相制御回路2からのクロック信号CKaを受け取って動作し、また、デジタル回路12は、位相制御回路2からのクロック信号CKbを受け取って動作する。なお、図4において、デジタル回路11および12は、それぞれ1つ設けられているが複数であってもよいのはいうまでもない。
【0033】
本第1実施例の半導体集積回路において、第1クロック信号CKaと第2クロック信号CKbの位相差βは、m,nを自然数(1,2,3,…)として、ほぼ(2m−1)/2nとなるようにする。
【0034】
なお、nは、高調波の次数を示し、例えば、4次高調波成分の場合はn=4、また、5次高調波成分の場合はn=5、そして、6次高調波成分の場合はn=6になる。
【0035】
これにより、各電源線に流れる電流I,I1,I2は、図5に示されるような波形になる。ここで、電流Iは、フーリエ変換を用いて表すと、次の(式1)のようになる。なお、以下の各式において、An〜Dnは、フーリエ変換の定数を示している。
【数1】

【0036】
クロック信号CKの周期Tckのn次の高調波成分は、Θ=2πnt/Tckとおくと、次の(式2)のようになる。
【数2】

【0037】
ここで、α=(2k−1)/2n,β=(2m−1)/2nを満たすようにすると、上記(式2)は、(式3)のようになり、AnとBn、CnとDnの差が小さいときにn次高調波成分を低減することができるのが分かる。なお、ある固定値nのもとで、AnはI1r、BnはI2r、CnはI1f、そして、DnはI2fに比例する。
【数3】

【0038】
図6は図4の半導体集積回路の効果を図1の半導体集積回路のものと比較して示す図(その1)であり、(式2)を用いて、n=5のときの5次高調波成分(β=0.1)を、図1の半導体集積回路(β=0)と比較してプロットしたものである。
【0039】
図6から明らかなように、図1の半導体集積回路のように、位相差を持たせない場合(β=0)の場合、立ち上がりと立ち下がりの電流の比(I1f/I1r=Bn/An)が『1』の時は『0』になるが、『1』よりも小さくなるに従って高調波成分は増加する。
【0040】
そこで、1周期の電流値時間積分は変えずに、Ir1とIr2に電流波形を分割し、I1r:Ir2=5:4となるように、位相差β=0.1ずらすようにする。これにより、立ち上がりと立ち下がりの電流の比が異なっていても、位相差を持たない場合と比較して5次高調波の電流成分を約10分の1程度に低減することが可能なのが分かる。
【0041】
図7は図4の半導体集積回路の効果を図1の半導体集積回路のものと比較して示す図(その2)である。この図7は、デューティー比α、および、立ち上がりと立ち下がりの電流の比(I1f/I1r=Bn/An)が理想からずれたときの5次高調波成分の大きさを(式2)で計算した結果を表している。
【0042】
図7(a)中の参照符号R11に示されるように、β=0(図1の半導体集積回路)の場合では、5次高調波成分の強度が0.1以下になる範囲は、非常に限られている。
【0043】
これに対して、図7(b) 中の参照符号R12に示されるように、β=0.1(第1実施例の半導体集積回路)の場合には、5次高調波成分の強度が0.1以下になる範囲が大きく広がっているのが分かる。
【0044】
これは、例えば、半導体チップの製造ばらつき、或いは、温度や電源電圧が広い範囲で変動した場合でも、電流の高調波成分を抑止できることを意味している。
【0045】
図8は第2実施例の半導体集積回路を示すブロック図であり、空中のRF(Radio Frequency)電波(入力信号)をアンテナ31で受信し、その信号を入力して画像信号を出力する半導体集積回路の例を示すものである。
【0046】
図8に示されるように、本第2実施例の半導体集積回路において、アンテナ31を介して入力されたRF信号は、アンプ32で増幅された後、復調回路33で信号周波数帯域(ベースバンド)の信号に復調される。
【0047】
ここで、アンプ32および復調回路33は、電源変動に影響を受けやすいでの他の回路(PLL回路20,ベースバンド処理回路110およびアプリケーション処理回路120)と外部電源が分離されている。
【0048】
復調回路33から出力された信号は、デジタルのベースバンド処理回路110に供給されて復号化などの処理が行われ、デジタルのアプリケーション処理回路120にデータが送られる。
【0049】
アプリケーション処理回路120では、ベースバンド処理回路110からのデータを画像データに変換して半導体集積回路外部へ画像出力信号として出力する。
【0050】
ところで、図8に示す半導体集積回路において、デジタルのベースバンド処理回路110およびアプリケーション処理回路120では、クロック信号に同期した大きな電流が流れる。すなわち、電源線のインピーダンスの影響により、例えば、両デジタル回路110, 120の低電位側の電源線の電位が変動する。
【0051】
そして、このデジタルの低電位側の電源線は、例えば、半導体基板(チップ)における接合容量CPによって、アンプ32および復調回路33を含むアナログ電源の低電位側の電源線に容量接続され、高周波帯では電位変動が伝播する。この電位変動は、アンプ32や復調回路33の特性を劣化させることになる。
【0052】
そこで、本第2実施例の半導体集積回路では、同一チップに搭載されているPLL回路20から、第1実施例で説明した周波数が同じで位相差βが(2m−1)/2nの2つのクロック信号CKa, CKbを出力するようになっている。
【0053】
すなわち、第1クロック信号CKaは、ベースバンド処理回路110に供給され、また、第2クロック信号CKaは、アプリケーション処理回路120に供給され、それぞれのクロック信号に同期して回路を動作させるようになっている。
【0054】
図9は図8の半導体集積回路におけるPLL回路の一例を示すブロック図であり、また、図10は図9のPLL回路の動作を説明するための図である。
【0055】
図9に示されるように、PLL回路20は、位相比較器201,ループフィルタ202,電圧制御発振器(VCO)203およびアンドゲート241, 242を有する。
【0056】
VCO203は、縦列接続された複数段(X個:奇数個)のインバータ230よりなるリングオシレータと、ゲートにループフィルタ202からの制御信号が供給されたpチャネル型MOSトランジスタ231を有する。
【0057】
VCO203のリングオシレータには、4個のノード(タップ)が設けられ、第1〜第4出力CKa1, CKa0, CKb1, CKb0が取り出されるようになっている。
【0058】
位相比較器201は、クロック信号CKおよびリングオシレータの第4出力CKb0の位相を比較し、また、ループフィルタ202は、位相比較器201の出力から交流成分を取り除いてトランジスタ231のゲートに供給するようになっている。
【0059】
ここで、アンドゲート241には、第1出力CKa1および第2出力CKa0が供給され、それらの論理積を取った信号が第1クロック信号CKaとして出力される。
【0060】
また、アンドゲート242には、第3出力CKb1および第4出力CKb0が供給され、それらの論理積を取った信号が第2クロック信号CKbとして出力される。
【0061】
図9に示されるように、VCO203は、縦列接続されたX個のインバータを有する。ここで、第1出力CKa1と第2出力CKa0を出力するタップ間のインバータの個数および第3出力CKb1と第4出力CKb0を出力するタップ間のインバータの個数は、両方とも同じY個に設定されている。
【0062】
また、第2出力CKa0と第4出力CKb0を出力するタップ間のインバータの個数は、Z個に設定されている。そして、インバータ1個あたりの遅延をD0とすると、第1〜第4出力CKa1, CKa0, CKb1, CKb0並びに第1および第2クロック信号CKa, CKbは、図10のような関係になる。
【0063】
すなわち、図10に示されるように、クロック信号CKa,CKb(CK)の周期は、D0*2Xとなる。また、第1出力CKa1は第2出力CKa0よりもD0*Yだけ早く動作(変化)するので、アンドゲート241の出力信号(第1クロック信号CKa)は、高電位期間の幅がD0*(X−Y)となる。
【0064】
さらに、第3出力CKb1は第4出力CKb0よりもD0*Yだけ早く変化するので、アンドゲート242の出力信号(第2クロック信号CKb)は、高電位期間の幅がD0*(X−Y)となる。そして、第1クロック信号CKaと第2クロック信号CKbの遅延差は、D0*Zとなる。
【0065】
図11は、第2実施例の半導体集積回路の効果を示す図(その1)であり、6次高調波成分の強度を、デューティー比αと位相差βを軸にプロットした図である。ここで、α=(X−Y)/2X,β=Z/2X,I2f/I1r=0.8,I1f/I1r=0.8とする。
【0066】
通常、クロック周期に対する立ち上がりから立ち下がりの幅(デューティー比)αは、通常、クロックサイクルの半分(0.5)である。しかしながら、図11中の参照符号R2に示されるように、そのαの値を5/12=0.417とし、βを1/12=0.083とすることで、高調波成分を0.1以下にすることが可能なのが分かる。
【0067】
また、図11から明らかなように、αおよびβともに理想的な(2k−1)/2n,(2m−1)/2nに完全に一致せずに、それらから多少ずれたところでも、0.1以下に抑えることが可能なのが分かる。
【0068】
すなわち、αおよびβは、(2k−1)/2nおよび(2m−1)/2nに完全に一致しなくともほぼ一致すれば、高調波成分を低減することができる。
【0069】
図12は第2実施例の半導体集積回路の効果を示す図(その2)であり、次数の異なる高調波の強度の分布を示すものである。
【0070】
ここで、図12(a)は5次高調波成分の強度、図12(b)は7次高調波成分の強度、図12(c)は8次高調波成分の強度、そして、図12(d)は9次高調波成分の強度を、デューティー比αと位相差βを軸にプロットしたものである。
【0071】
図12に示されるように、α,βが(2k−1)/2n,(2m−1)/2nに完全に一致しなくとも高調波成分低減の効果が発揮されるのは、上述した6次高調波に限定されるものではなく、5次および7〜9次高調波に対しても同様に効果があるのが分かる。
【0072】
すなわち、5次および7〜9次高調波成分の強度に関して、αおよびβが、(2k−1)/2nおよび(2m−1)/2nに完全に一致しなくても、高調波成分低減の効果が発揮されるのが分かる。
【0073】
具体的に、図12(a)〜図12(d)中の参照符号Ra〜Rdに示されるように、各次の高調波成分の強度は、例えば、(2k−1)/2n±1/4nおよび(2m−1)/2n±1/4n程度であれば、0.1程度以下に低減することができるのが分かる。
【0074】
このように、本第2実施例の半導体集積回路によれば、広い範囲で高調波電流成分を低減することができ、アンプ32および復調回路33の特性への影響を小さくすることが可能になる。
【0075】
図13は第3実施例の半導体集積回路を示すブロック図であり、クロック信号に同期して動作するn個のデジタル回路101〜10nを有する半導体集積回路の例を示すものである。
【0076】
図13に示されるように、本第3実施例の半導体集積回路は、デジタル回路101〜10n,PLL回路200,クロック制御回路300,セレクタ401〜40nおよびアンドゲート501〜50nを有する。
【0077】
PLL回路200は、第2実施例のPLL回路20と同様に、クロック信号CKを受け取って第1および第2クロック信号CKaおよびCKbを生成し、セレクタ401〜40nに出力する。
【0078】
セレクタ401〜40nには、クロック制御回路300からの制御信号S1〜Snが供給され、それぞれ第1または第2クロック信号CKa,CKbの一方を選択し、クロック信号CK1〜CKnとしてアンドゲート501〜50nの一方の入力端子に供給するようになっている。
【0079】
アンドゲート501〜50nの他方の入力端子には、それぞれイネーブル信号EN1〜ENnが供給され、デジタル回路101〜10nに供給されるアンドゲート501〜50nの出力信号を制御するようになっている。なお、イネーブル信号EN1〜ENnは、クロック制御回路300にも供給されている。
【0080】
すなわち、例えば、各セレクタ401〜40nは、制御信号S1〜Snが『1』のときクロック信号CK1〜CKnとして第1クロック信号CKaを選択し、制御信号S1〜Snが『0』のときクロック信号CK1〜CKnとして第2クロック信号CKbを選択する。
【0081】
ここで、第1および第2クロック信号CKa,CKbのデューティー比αが(2k−1)/2nを満たし、また、第1および第2クロック信号CKa,CKbの位相差βが(2m−1)/2nを満たしているとする(なお、k,m,nは自然数)。
【0082】
このとき、任意のイネーブル信号ENiおよび制御信号Siがともに『1』のとき、対応するデジタル回路10iには第1クロック信号CKaが供給され、その第1クロック信号CKaの立ち上がりと立ち下がりタイミングに同期した電流が流れる。
【0083】
また、任意のイネーブル信号ENiが『1』で制御信号Siが『0』のとき、対応するデジタル回路10iには第2クロック信号CKbが供給され、その第2クロック信号CKbの立ち上がりと立ち下がりタイミングに同期した電流が流れる。
【0084】
デジタル回路10iの電流の立ち上がり、もしくは、立ち下がりに同期して流れる電流のピーク値をIiとし、次の(式4)を満たすようにイネーブル信号EN1〜ENnからSiを生成する。
【数4】

【0085】
これにより、第1クロック信号CKaの立ち上がりと立ち下がりに同期した電流と、第1クロック信号CKbの立ち上がりと立ち下がりに同期した電流が等しくなる。その結果、高調波電流成分を削減する効果が最も大きくなり、全デジタル回路に流れる電流波形の高調波成分を最も小さくすることが可能になる。
【0086】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに、以下の付記を開示する。
(付記1)
クロック信号に同期して動作する複数のデジタル回路を含む半導体集積回路であって、
前記各デジタル回路は、周波数が同じで位相が異なる第1および第2クロック信号の一方を受け取り、
前記第1および第2クロック信号の位相差は、m,nを自然数として、ほぼ[2m−1]/2nであることを特徴とする半導体集積回路。
【0087】
(付記2)
付記1に記載の半導体集積回路において、
前記第1および第2クロック信号のデューティー比は、kを自然数として、ほぼ[2k−1]/2nであることを特徴とする半導体集積回路。
【0088】
(付記3)
付記2に記載の半導体集積回路において、さらに、
4個所のノードを第1〜第4出力とするリング状の発振器を有し、
前記第1クロック信号は、前記第1および第2出力から生成され、
前記第2クロック信号は、前記第3および第4出力から生成されることを特徴とする半導体集積回路。
【0089】
(付記4)
付記3に記載の半導体集積回路において、
前記第1および第2出力の位相差と前記第3および第4出力の位相差は同じで、当該位相差は、ほぼ[2k−1]/2nであり、
前記第1および第3出力の位相差は、ほぼ[2m−1]/2nであることを特徴とする半導体集積回路。
【0090】
(付記5)
付記2または3に記載の半導体集積回路において、
該半導体集積回路は、PLL回路を有し、
該PLL回路は、
前記クロック信号および前記第4出力の位相を比較する位相比較器と、
該位相比較器の出力から交流成分を取り除くループフィルタと、
該ループフィルタの出力電圧に応じた発振周波数の信号を生成する前記発振器と、を有することを特徴とする半導体集積回路。
【0091】
(付記6)
付記2〜5のいずれか1項に記載の半導体集積回路において、
前記第1および第2クロック信号のデューティー比[2k−1]/2nは、±1/4nの誤差を含むことを特徴とする半導体集積回路。
【0092】
(付記7)
付記1〜6のいずれか1項に記載の半導体集積回路において、
前記第1および第2クロック信号の位相差[2m−1]/2nは、±1/4nの誤差を含むことを特徴とする半導体集積回路。
【0093】
(付記8)
付記1〜7のいずれか1項に記載の半導体集積回路において、
前記複数のデジタル回路は、3個以上のデジタル回路であり、
前記半導体集積回路は、さらに、前記各デジタル回路に対して、制御信号に応じて前記第1および第2クロック信号を選択して供給する選択回路を有することを特徴とする半導体集積回路。
【0094】
(付記9)
付記8に記載の半導体集積回路において、さらに、
前記各デジタル回路のイネーブル信号および前記選択回路で選択された前記第1または第2クロック信号の論理を取って前記各デジタル回路に供給する論理ゲートを有することを特徴とする半導体集積回路。
【0095】
(付記10)
付記1〜9のいずれか1項に記載の半導体集積回路において、
前記第1クロック信号が前記デジタル回路を流れる第1電流、および、前記第2クロック信号が前記デジタル回路を流れる第2電流は、ほぼ等しい値であることを特徴とする半導体集積回路。
【符号の説明】
【0096】
1,11,12,101〜10n デジタル回路
2 位相制御回路
20,200 PLL回路
31 アンテナ
32 アンプ
33 復調回路
110 ベースバンド処理回路
120 アプリケーション処理回路
201 位相比較回路
202 ループフィルタ
203 電圧制御発振器(VCO)
300 クロック制御回路
401〜40n セレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号に同期して動作する複数のデジタル回路を含む半導体集積回路であって、
前記各デジタル回路は、周波数が同じで位相が異なる第1および第2クロック信号の一方を受け取り、
前記第1および第2クロック信号の位相差は、m,nを自然数として、ほぼ[2m−1]/2nであることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体集積回路において、
前記第1および第2クロック信号のデューティー比は、kを自然数として、ほぼ[2k−1]/2nであることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体集積回路において、さらに、
4個所のノードを第1〜第4出力とするリング状の発振器を有し、
前記第1クロック信号は、前記第1および第2出力から生成され、
前記第2クロック信号は、前記第3および第4出力から生成されることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体集積回路において、
前記第1および第2出力の位相差と前記第3および第4出力の位相差は同じで、当該位相差は、ほぼ[2k−1]/2nであり、
前記第1および第3出力の位相差は、ほぼ[2m−1]/2nであることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体集積回路において、
前記複数のデジタル回路は、3個以上のデジタル回路であり、
前記半導体集積回路は、さらに、前記各デジタル回路に対して、制御信号に応じて前記第1および第2クロック信号を選択して供給する選択回路を有することを特徴とする半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−61697(P2011−61697A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211913(P2009−211913)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】