説明

射出成形方法及び装置

【課題】射出成形加工時に表面を全体的又は選択的に改質された成形品を製造する方法及びを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を射出成形することによって成形品を製造する方法であって、金型内に前記熱可塑性樹脂を溶融樹脂として導入する第1の導入工程と、前記第1の導入工程の後又は同時に行われ、前記金型内に溶解物質が溶解した超臨界流体を導入する第2の導入工程と、前記溶融樹脂を固化し、前記溶解物質を前記成形品の表面に配置させる工程とを有することを特徴とする方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂(又は溶融樹脂)からなる射出成形を利用した成形品の表面改質に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形により作製されるプラスチック成形品は多々あるが、可塑化溶融される樹脂材料によってその物性は決まる。また、プラスチック成形品は用途によっては、各種の印刷や塗装、導電体や金属膜の形成、成形品同士の接合、その他の後加工が施される場合がある。こうした後加工を施す必要のある場合には、通常、加工性向上のため、プラスチック成形品の表面を活性化させて表面改質することが一般に行われている。
【0003】
一方、プラスチック成形品よりなる電子機器の表面に金属導電膜を形成する手段として、無電解メッキが広く採用されている。プラスチックの無電解メッキ工程は材料等により多少異なるが、一般的には図15に示すフローで行われる。
【0004】
まず成形品の「脱脂」により表面の油等を取り除き、次に「エッチング」により表面の粗面化を行う。エッチングにはクロム酸溶液やアルカリ金属水酸化物溶液などを用いるが、これらエッチング液は「中和」等の後処理が必要のため、コスト高の要因となっている他、毒性の高いエッチャントを用いることによる取り扱い上の問題がある。次に、界面活性剤水溶液で処理することによる「湿潤化」により濡れ性を改善した後、「キャタリスト(触媒付与)」によりプラスチック表面に触媒を付着させる。「キャタリスト」プロセスでは、例えば、パラジウム触媒の場合、塩化スズと塩化パラジウムの塩酸酸性水溶液にプラスチックを含浸させる。「キャタリスト」の後は、「アクセレーター(触媒活性化)」により硫酸、塩酸などの酸に接触させてメッキ用触媒を活性化させる。以上のプロセスを経た後、はじめて「無電解メッキ」が可能になる。
【0005】
エッチングによる粗面化の必要のないプロセスは、従来から幾つか提案されている(例えば、特許文献1及び2)。これらはメッキ触媒の含有する薄膜を有機バインダーや紫外線硬化樹脂によりプラスチック表面に形成するものである。更に、アミン化合物等のガス雰囲気で紫外線レーザーをプラスチック表面に照射し改質する技術も既に提案されている(例えば、特許文献3)。これ以外でもコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線処理等による改質技術は従来から知られている。
【0006】
一方、無電解メッキや電解メッキにより回路基板上に配線を形成する方法としてセミアディティブ法が知られている。このフローを図16に示す。かかる方法は、まず、前記と同様なプロセスで「無電解メッキ」により基板全体に1〜2μmのメッキ層を形成する。次に「感光性フィルムやレジスト」を形成した後、マスキングして「露光及び現像」を行うことで配線パターンが設けられたフィルムやレジストの層を形成する。さらに「電解メッキ」プロセスにより前記パターン化によって露出した無電解メッキ層上に電解メッキを形成する。次にフィルムやレジストを除去した後、ソフトエッチングにより配線部以外の無電解メッキ層を除去することでメッキ配線は完成する。銅メッキの場合、樹脂との密着性が悪いことから「黒化処理」と呼ばれる(酸化)銅に微細突起を作り樹脂とのアンカー作用を強化する後処理も行われることもある。
【0007】
成形品に立体回路を設ける方法も従来から提案されている(例えば、特許文献4及び5)。かかる方法では、まず立体的な回路基板のプラスチックを樹脂成形により形成する。次に、表面を粗面化及び触媒付与した後、全面に無電解メッキを形成し、フォトレジストを全面塗着する。そしてフォトマスクを被せて露光した後に現像し、回路パターン形成部以外を除去する。この上に電解メッキさらにNiやAuの無電解メッキを形成した後、フォトレジストを剥離するとともに無電解メッキの不要部分をエッチング除去する。立体構造体に均一なフォトレジストを形成するのは困難である。特許文献4は、電着レジストを使用することを提案しているが、かかるレジストは耐アルカリ性が低いという欠点を有している。
【0008】
射出成形を利用した回路形成方法として、次のような方法が開示されている(例えば、特許文献6)。特許文献6によれば、まず、金型表面における回路形成面にRa1〜5μm程度の粗面化した面を設け、射出成形前に触媒核を金型の全面に付着させた後、回路基板を射出成形で形成することで触媒核を全面転写させる。触媒核の密着性の強い粗面化された成形面のみ無電解メッキが強固に密着し、それ以外の粗面化されていない個所は密着性が弱いため、電解メッキ後における回路以外の無電解メッキ層を除去するエッチングの際に核触媒と共に除去することができる。
【特許文献1】特開平9−59778号公報
【特許文献2】特開2001−303255号公報
【特許文献3】特開平6−87964号公報
【特許文献4】特開平4−76985号公報
【特許文献5】特開平1−206692号公報
【特許文献6】特開平6−196840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、射出成形の成形加工時において同時に表面改質のできる応用範囲の広い技術は提案されていない。また、従来のプラスチックの無電解メッキプロセスは複雑でコスト高の上、有害物質を多く使わなければならず廃液の処理にも問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、射出成形加工時に表面を全体的又は選択的に改質された成形品を製造する方法及び装置を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面としての成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂を射出成形することによって成形品を製造する方法であって、金属元素を超臨界流体に溶解させる工程と、金型内に、前記熱可塑性樹脂と前記金属元素を溶解させた超臨界流体を導入する工程と、前記金型内で前記熱可塑性樹脂を固化し成形品を得る際に、前記金属元素を前記成形品の表面に析出させる工程とを有することを特徴とする。
【0012】
成形品は、熱可塑性樹脂からなる成形品であって、前記成形品は前記熱可塑性樹脂とは異なる有機物質、又は金属元素を内部に含み、前記有機物質または金属元素は、前記成形品の表面近傍から表面に配置(即ち、偏析、局所的に存在)してもよい。かかる成形品は、有機物質等を内部及び表面に含有するので、リソグラフィなどで形成するよりも表面から剥がれにくいなど、安定性が高い。有機物質等は前記表面の全面に形成されても特定の位置に形成されてもよい。「表面近傍」の範囲は、表面改質の目的及び使用する材料により適宜選択することができるが、好ましくは、表面から100μm以下、更に好ましくは、表面から10μm以下の範囲をいう。また、表面改質の目的及び使用する材料によっては表面からナノスケール厚みの改質も可能である。前記成形品は、前記金属元素を核として形成されたメッキ層を更に有してもよい。前記メッキ層は、電気配線パターンを形成してもよい。前記成形品は、前記熱可塑性樹脂の内部に発泡体を更に有してもよい。
【0013】
例えば、前記有機物質は有機金属錯体である。また、金属元素は、金属粒子又は金属微粒子であってもよい。更に、前記金属元素は、前記有機金属錯体の一部又は全部の配位子が外れることにより生成した金属元素であってよい。有機金属錯体又は金属元素を樹脂表面に全体的又は選択的に配置させることで、全体的又は局所的に導電性を付与したり、磁性を高めたりすることができる。樹脂を用いて、例えば、簡単にバイオチップの封止を行うことができる。つまり、流体の流路となる微細な凹凸を有したプラスチックをガラス基板等と貼り合わせ、該ガラス基板裏面から磁力を発生させることによって、ガラス基板と該プラスチックを簡便に封止することが可能となる。また、金属元素を全体的又は部分的に表面に偏析させることで、その部分の機械的特性が異なる成形品を作ることも可能である。金属元素を偏析させた部分は、他の部分と比較して耐摺動性、硬度等が向上する。更に、磁性を有する金属を用いて、磁気回路パターンを形成することもできる。金属錯体として、希土類錯体などの蛍光物質を使用すれば、蛍光パターンを表面に有する成形品も成形することができる。これは、表示素子としての応用が考えられる。
【0014】
金属錯体の種類は任意であるが、Pd錯体、Ni錯体、Co錯体、Pt錯体等が望ましい。より具体的には、白金ジメチル(シクロオクタジエン)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトネート)パラジウム等が望ましい。前記金属元素を核として形成された無電解メッキ層を更に有してもよい。これにより、簡単にメッキ層を選択位置に形成することができる。前記メッキ層は、例えば、電気配線パターンを構成する。つまり、本発明の成形体は電気配線基板として用いることができる。また、前記プラスチック成形品は、発泡セルを更に有してもよい。これにより、プラスチック成形品を軽量にし、断熱効果を高め、かつ、剛性対重量比の高めることができる。
【0015】
もちろん、有機物質は有機金属錯体に限定されない。有機物質にポリプロピレングリコールを用いることでポリエチレンテレフタレート等の疎水性プラスチック表面を選択式に親水化することができる。また同様にフッソ化合物を用いることで選択的な撥水処理や屈折率の低減を図ることができる。
【0016】
本発明の別の側面としての製造方法は、熱可塑性樹脂を射出成形することによって成形品を製造する方法であって、金型内に前記熱可塑性樹脂と、超臨界流体及び当該超臨界流体に溶解させた物質を注入する工程を有し、前記成形品の表面を改質することを特徴とする。かかる製造方法は、超臨界流体を使用して物質を熱可塑性樹脂の表面及び内部に浸透させることができるので、上述のように、エッチングなどで表面に形成するよりも物質の安定性に優れた成形品を製造することができる。
【0017】
使用可能な超臨界流体は、空気、CO、ブタン、ペンタン、メタノール等任意であるが、n−ヘキサン並の溶解度を有し、ある種の熱可塑性樹脂材料へ可塑剤として働き、射出成形や押し出し成形で実績の多いCOが望ましい。また、超臨界流体に溶解させる物質は特に制限されるものではないが、例えば、金属錯体(白金ジメチル(シクロオクタジエン)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトネート)パラジウム)、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。特に金属錯体を用いることでプラスチックの無電解メッキ密着性を選択的に向上させることができる。
【0018】
また、熱可塑性樹脂は、特に制限されるものではなく、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテン、非晶質ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、スチレン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリアセタール等やそれらを複合種混合したもの、これらを主成分とするポリマーアロイやこれらに各種の充填剤を配合したものを用いることができる。
【0019】
前記注入工程は、前記超臨界流体及び前記物質を、射出充填時における前記熱可塑性樹脂の流動先端部としてのフローフロントに導入する工程を含んでもよい。かかる方法によれば、金型内における流動樹脂のファウンテンフロー現象(噴水効果)により、フローフロント部の熱可塑性樹脂は金型表面に引っ張られながら表面層を形成していくので、超臨界流体に溶解し、樹脂内のフローフロントに浸透した物質が金型に接する表面近傍の層に配置する。超臨界流体にある程度の溶解性を有する物質であれば成形品の表面のみに均一に分散配置することができる。よって様々なプラスチック表面の改質技術への応用が期待できる。超臨界流体としてCOを使用すれば上述のように可塑剤として働くので、熱可塑性樹脂の流動性を向上させることや金型に接する表面での固化層の成長抑制も可能となる。前記注入工程は、前記超臨界流体及び前記物質を前記熱可塑性樹脂の充填開始部分に含ませてもよい。
【0020】
前記注入工程は、前記超臨界流体及び前記物質を、射出充填時の前記金型内に、射出された熱可塑性樹脂の流動方向とは反対に圧力を印加するカウンタープレッシャーとして導入してもよい。カウンタープレッシャーにより、成形品表面近傍に溶解物質を配置することができる。カウンタープレッシャーは発泡剤として超臨界流体のCOやNガスを熱可塑性樹脂内に混練した場合、射出時において熱可塑性樹脂の内圧が金型内で急減圧し、発泡セル径が拡大することや、表面にスワルマークと呼ばれる模様が形成され表面性が悪化することを抑制できる。それと同時に、上述のようにファウンテンフロー現象により表面のみに超臨界流体と溶解物質を配置させることができる。
【0021】
前記注入工程は、前記熱可塑性樹脂の流動先端部としてのフローフロント以外には前記物質が溶解しない前記超臨界流体を前記熱可塑性樹脂に導入する工程と、前記超臨界流体を利用して前記金型内に注入された前記熱可塑性樹脂の内部に発泡体を形成する工程とを有してもよい。かかる方法によれば、樹脂表面の改質を行うと同時に内部は微細発泡セルを形成することにより材料の低誘電化を図ることも可能となる。高周波電気回路用基板やMID(Mold Interconnect Device)、ミリ波アンテナ等の平面アンテナに好適である。
【0022】
前記注入工程は、前記金型内に前記熱可塑性樹脂を充填する工程と、前記金型内の特定の位置に前記超臨界流体及び前記物質を導入する工程とを有してもよい。特定の位置近傍で前記物質を前記樹脂の表面及びその近傍に分散させることにより、樹脂成形品の表面を局所的に改質することができる。前記金型の圧力及び/又は温度を調節することによって前記特定の位置において前記物質を前記熱可塑性樹脂に配置する工程を更に有してもよい。これにより、凹凸のない成形品表面の部分的な表面改質が可能となる。
【0023】
前記物質は、例えば、有機物質又は金属元素である。前記有機物質は有機金属錯体、前記金属元素は、前記有機金属錯体の配位子を除いた金属粒子である。金属錯体は超臨界流体にある程度溶解するので表面性を悪化させることなく成形品の表面に配置することが可能である。また、金属錯体の有機部分を外し金属の元素を析出させることにより無電解メッキの触媒核と働かせることができるので前処理なしで樹脂表面のメッキ密着性が向上する。
【0024】
前記物質は、有機金属錯体の配位子を除いた金属元素であってもよく、前記方法は、無電解メッキにより、前記金属元素が析出した部位にメッキ層からなるパターンを形成する工程を更に有してもよい。無電解メッキにより、金属導電膜を簡単に形成することができる。前記パターンは凹凸を含み、前記形成工程後に前記パターンの凸部を除去する工程を更に有してもよい。また、前記部位は凹凸を含み、前記形成工程前に前記部位の凸部を除去する工程を更に有してもよい。いずれの方法によっても、所望のパターンを形成することができる。
【0025】
前記方法は、前記注入工程後に、前記熱可塑性樹脂を圧縮する工程と、当該圧縮工程後に、前記金型のキャビティの容積を増大させて前記熱可塑性樹脂を発泡させる工程とを更に有してもよい。かかる方法によれば、プラスチック表面の選択的改質を行うと同時に内部は微細発泡セルを形成することにより材料の低誘電化を図ることも可能となる。高周波電気回路用基板やMID(Mold Interconnect Device)、ミリ波アンテナ等の平面アンテナに好適である。
【0026】
前記注入工程は、前記充填された前記熱可塑性樹脂に押圧され、前記熱可塑性樹脂に押圧される第1の面に所定のパターンが形成され、前記第1の面に対向する第2の面に前記パターンに連通する孔が前記特定の位置に設けられたスタンパを利用してもよい。パターンをスタンパ化することで配線回路を容易に変更可能となる。また、特定の位置にパターンを形成することによって、所望の回路パターンを形成することができる。
【0027】
金型は、熱可塑性樹脂を射出成形することによって成形品を製造するのに使用される金型であって、前記金型内に、超臨界流体及び当該超臨界流体に溶解した物質をカウンタープレッシャーとして導入する機構を有してもよい。かかる金型は、超臨界流体及び物質をカウンタープレッシャーとして使用するので上述の方法と同様の作用を奏する。
【0028】
また、金型は、熱可塑性樹脂を射出成形することによって成形品を製造するのに使用される金型であって、前記金型のキャビティ形成表面には特定位置に凹部又は凸部が形成され、前記凹部又は凸部には、外部から超臨界流体及び当該超臨界流体に溶解させた物質を注入するための導入路が接続されていてもよい。凹型又は凸型により、物質の局所的付着を高めることができる。
【0029】
また、射出成形装置は、熱可塑性樹脂を充填するためのキャビティを形成する金型と、前記熱可塑性樹脂を前記金型の前記キャビティ内に導入するための可塑化シリンダーと、前記可塑化シリンダーに超臨界流体と当該超臨界流体に溶解した物質を導入して前記熱可塑性樹脂の流動先端部としてのフローフロントに前記超臨界流体と前記物質を含ませる機構とを有してもよい。かかる射出成形装置は、超臨界流体及び物質を樹脂のフローフロントに含ませるので上述の方法と同様の作用を奏する。
【0030】
また、射出成形装置は、熱可塑性樹脂を充填するためのキャビティを形成する金型と、前記熱可塑性樹脂を前記金型の前記キャビティ内に導入するための可塑化シリンダーと、前記可塑化シリンダー内の前記熱可塑性樹脂の流動先端部としてのフローフロント以外の部位に超臨界流体を導入する機構とを有してもよい。かかる射出成形装置は、超臨界流体を樹脂のフローフロント以外の部位に含ませて内部発泡体などの効果を得ることができるので上述の方法と同様の作用を奏する。
【0031】
また、射出成形装置は、熱可塑性樹脂を充填するためのキャビティを形成する金型と、超臨界流体と当該超臨界流体に溶解した物質をカウンタープレッシャーとして前記金型内に導入する機構とを有してもよい。かかる射出成形装置は、超臨界流体及び物質をカウンタープレッシャーとして使用するので上述の方法と同様の作用を奏する。
【0032】
また、射出成形装置は、熱可塑性樹脂を充填するキャビティを形成し、当該キャビティの特定の位置に連通する導入路を有する金型と、超臨界流体と当該超臨界流体に溶解させた物質を前記導入路を介して前記キャビティ内に導入する機構を有してもよい。かかる射出成形装置は、特定の位置近傍で前記物質を前記樹脂の表面及びその近傍に分散させることにより、樹脂成形品の表面を局所的に改質することができる。
【0033】
また、射出成形装置は、熱可塑性樹脂を充填するキャビティを形成する金型と、前記キャビティに充填された前記熱可塑性樹脂に押圧され、前記熱可塑性樹脂に押圧される第1の面に所定のパターンが形成され、前記第1の面に対向する第2の面の特定の位置に、前記第1の面の前記パターンに連通する孔が設けられたスタンパと、超臨界流体に溶解させた有機物質を前記スタンパの前記孔を介して前記キャビティ内に導入する機構とを有してもよい。パターンをスタンパ化することで配線回路を容易に変更可能となる。また、特定の位置にパターンを形成することによって、所望の回路パターンを形成することができる。
【0034】
本発明の他の目的及び更なる特徴は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態により明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一側面によれば、射出成形時に成形品や金型の表面を粗面化することなくプラスチック表面を改質することができる。例えば、射出成形時にプラスチック表面における無電解メッキの密着性を向上することができる。さらに、安価にプラスチック表面に無電解メッキによる微細配線を形成することができる。また、本発明の別の側面によれば、射出成形加工時に表面を粗面化することなく表面が選択的に改質されたプラスチック成形品、その製造方法及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の一実施形態としてのプラスチックの無電解メッキ配線のフローを図2に示す。本実施形態の無電解メッキ法によれば、まず、成形品の表面を射出成形によって全体的又は選択的に改質する(ステップ1100)。
【0037】
ある実施形態では、金型内に溶融樹脂と超臨界流体及びそれに溶解した物質(有機物質又は金属元素、ここでは、有機金属錯体)を、流動先端部としてのフローフロントとして、充填すると共にカウンタープレッシャーとして超臨界流体及び前記物質を導入する。ここでカウンタープレッシャーとは、金型内で、射出された溶融樹脂の流動方向とは反対に、圧力を印加したガスのことである。
【0038】
金型内における流動樹脂のファウンテンフロー現象(噴水効果)により、フローフロント部の溶融樹脂は金型表面に引っ張られながら表面層を形成していくので、超臨界流体に溶解し樹脂内のフローフロントに浸透した物質が金型に接する表面近傍の層に配置する。超臨界流体にある程度の溶解性を有する物質であれば成形品の表面のみに均一に分散配置することができる。よって様々なプラスチック表面の改質技術への応用が期待できる。
【0039】
熱可塑性樹脂は特に制限されるものではなく、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテン、非晶質ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、スチレン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリアセタール等やそれらを複合種混合したもの、これらを主成分とするポリマーアロイやこれらに各種の充填剤を配合したものを用いることができる。
【0040】
使用可能な超臨界流体は、空気、CO、ブタン、ペンタン、メタノール等任意であるが、n−ヘキサン並の溶解度を有し、ある種の熱可塑性樹脂材料へ可塑剤として働き、射出成形や押し出し成形で実績の多いCOが望ましい。
【0041】
次に、プラスチック成形品の凸部に配置した有機金属錯体の配位子を加熱や還元反応で除去し、金属微粒子を析出させる(ステップ1200)。その後、無電解メッキを行い(ステップ1300)、凸部にのみ無電解メッキを形成する。
【0042】
本実施形態の無電解メッキ配線においては、射出成形後、金属錯体の有機部分と金属部分の結合を切断するため、還元反応や加熱による後処理が必要な場合もある。しかし、ある種の金属錯体は高温な溶融樹脂と接触する間に樹脂の熱により該結合が切断され数nm〜数十μmの金属微粒子が自動的に析出するので後処理も不要となる。金属錯体の種類は任意であるが、Pd錯体、Ni錯体、Co錯体、Pt錯体等が望ましい。より具体的には白金ジメチル(シクロオクタジエン)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトネート)パラジウム等が望ましい。還元反応不要という観点からは、Pd錯体、Pt錯体が望ましい。射出成形品表面に金属微粒子を析出させた後は、無電解メッキ(ステップ1300)は、公知のいかなる技術をも使用することができるので、ここでは詳しい説明は省略する。無電解メッキ層を利用して、例えば、電気配線パターンを構成することができる。
【0043】
本実施形態においては、射出成形におけるプラスチック表面の改質技術を応用して、無電解メッキによる微細配線を安価にそしてクリーンに形成できるが、そのフローを図3に示した。本発明においては、上記射出成形方法を応用すると共に成形品表面に配線を形成する凹凸を転写し、該凹凸を利用してメッキ配線を形成することを特徴とするが、例えば、図3のフローに示すように2種類の方法が提供できる。これら2種類の方法を、図8、図9を用いて更に説明する。
【0044】
図8に本発明におけるメッキ配線方法の一例の概念図を示す。該方法によれば成形品136の全面に触媒核として働く金属微粒子104を図8(a)のように析出させた後、成形品表面に図8(b)のように無電解メッキ138を積層し、次に図8(c)に示す通り凸部の無電解メッキ部分を研磨等で除去することで凹部にのみ無電解メッキが残る配線パターンが形成可能となる。本発明におけるパターン凸部の除去方法は任意であるが、研磨やラップ等により除去することができる。
【0045】
図9に本発明におけるメッキ配線方法の別の例の概念図を示す。まず、上記射出成形方法により表面近傍に金属錯体もしくは金属微粒子を配置させると共に金型もしくはスタンパ表面の凹凸を転写させた成形品を作製した後、場合によっては熱処理や還元反応により金属錯体の有機物を完全に外す。さらに、該成形品表面の凸部を除去した後、図9(b)に示すように凹部にのみメッキの触媒核として働く金属微粒子104が配置した状態になるので、成形品136全体に無電解メッキを施すことで図9(c)に示す通り無電解メッキ138が選択的に積層される。これら、図8及び図9に示す方法により、プラスチック表面に無電解メッキによる微細配線を安価に形成する目的を達成することができる。
【0046】
ステップ1100は、別の実施形態では、金型内に溶融樹脂を充填した後で金型の凹部内に超臨界流体及び物質を溶解する。超臨界流体に接触した樹脂の粘性は低下し、樹脂表面より超臨界流体に溶解した有機物が浸透する。
【0047】
その後、保圧や型締め圧等によって樹脂内圧を上昇させることで凹部内に樹脂が行き渡り、成形体表面に有機物が配置した凸部が形成される。かかる方法によれば超臨界流体にある程度の溶解性を有する有機物質であれば成形品表面の凸部のみに均一に分散配置させることができる。よって様々なプラスチック表面の改質技術への応用が期待できる。超臨界流体にCOを用いれば上述のように可塑剤として働くので、凹凸のピッチがサブミクロンオーダーと微細であっても容易に微細転写が可能となる。
【0048】
超臨界流体及びそれに溶解させた有機金属錯体を注入した後で、溶融樹脂表面より金属錯体もしくは金属錯体の配位子の外れた金属微粒子の少なくともどちらか一方を該金型凹部より浸透させる。これにより、金型内の凹部に充填された個所、つまりプラスチック成形品の凸部のみに金属錯体もしくは金属微粒子が選択的に配置する。本方法によれば金型表面を粗面化する必要もなく、微細な領域に選択的に金属錯体等を配置させることができる。
【0049】
樹脂が極性基を持たず強固な無電解メッキ層の形成が困難な材料であっても触媒核となる金属微粒子を材料内に容易に埋め込むことができるので、任意の選択個所のみに密着性に優れた高品質な無電解メッキ膜を形成することができる。本実施形態の無電解メッキの配線プロセスは従来法と比べ無害で前処理工程が著しく少なくて済む。
【0050】
なお、本発明は、このように無電解メッキ法に限定されるものではない。即ち、本発明は射出成形法(ステップ1100)のみでも十分に有益な成形品を製造することができる。例えば、金属微粒子をプラスチック表面に全体的又は選択式に配置させることで、全体的又は局所的に導電性を付与したり、磁力との密着性を高めたりすることができる。かかるプラスチックを用いて、例えば、簡単にバイオチップの封止を行うことができる。つまり、流体の流路となる微細な凹凸を有したプラスチックをガラス基板等と貼り合わせ該ガラス基板裏面から磁力を発生させることでガラス基板と該プラスチックを簡便に封止することが可能となる。
【0051】
もちろん、本発明が射出成形法(ステップ1100)において使用する有機物質は有機金属錯体に限定されない。例えば、有機物質にポリプロピレングリコールを用いることでポリエチレンテレフタレート等の疎水性プラスチック表面を選択式に親水化することができる。プラスチックで作製されたバイオッチップにおける流路表面を全体的に又は局所的な個所で親水化もしくは撥水化することによりチップ内における混合流体の層流状態をより高効率化することや、タンパク質を該個所にトラップすることにより分析等を行うことが可能となる。同様にフッソ化合物を用いることで全体的又は選択的な撥水処理や屈折率の低減を図ることができる。
【0052】
更に、本発明は、溶融樹脂を保圧・型締めなどによって圧縮した後で、キャビティの容積を増大させて溶融樹脂を発泡させる工程とを更に有してもよい。これにより、プラスチック表面の選択的改質を行うと同時に内部は微細発泡セルを形成することにより材料の低誘電化を図ることも可能となる。この場合、平均セル径が30μm以下で発泡倍率が1.5倍以上の発泡状態が望ましい。これにより、プラスチック成形品を軽量にし、断熱効果を高め、かつ、剛性重量比の高めることができる。かかる成形品は、高周波電気回路用基板やMID(Mold Interconnect Device)、ミリ波アンテナ等の平面アンテナに好適である。
【0053】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0054】
本発明の第1の実施例に用いた金型及び射出成形装置の要部断面図を図1に示す。本発明における超臨界流体は任意であるが、本実施例ではCOを用いた。また本発明において超臨界流体に溶解させる物質は任意であるが、本実施例ではPt錯体である白金ジメチル(シクロオクタジエン)を用いた。
【0055】
超臨界流体に物質を溶解させる方法は任意であるが、本実施例ではCOボンベ137から供給されるCOを超臨界流体発生装置101にて超臨界状態にした後、混合槽103中で貯蔵容器102から供給される物質を超臨界流体に溶解させた。
【0056】
本発明において、物質が溶解した超臨界流体の圧力や温度及び、溶融樹脂のフローフロント部への導入方法は任意であるが、本実施例においては120℃、10Mpaの超臨界COを溶解物質と共にキャビティ内に、射出された熱可塑性樹脂の流動方向とは反対に圧力を印加するカウンタープレッシャーとして導入すると共に、可塑化シリンダー140内で溶融樹脂のフローフロント部に含浸させている。カウンタープレッシャーの圧力の大きさは、スプールから入る樹脂に対して充填時の樹脂圧より低い。この場合の樹脂圧とは、実際の金型内での樹脂圧を意味するが、通常モニターしていない。通常、樹脂圧というと、スクリューを押し出す成形機の圧力を指す。後者は100〜200MPa程度でカウンタープレッシャーよりはるかに大きな力であって、前者は20MPa程度である。カウンタープレッシャーの圧力を定義するとすれば、実際に金型にガスが入ったときの圧力が超臨界状態にあればよい(COであれば約7MPa以上)。また、上限は樹脂が充填できる圧力以下でそれは材料や成形条件に左右させる、ということになる。本発明における、超臨界流体とそれに溶解した物質を金型のキャビティ117内にカウンタープレッシャーとして導入する方法は任意であるが、本実施例ではキャビティ117を閉鎖した後射出充填開始と同時に電磁弁111の開放により混合槽103より流路112を経て導入した。
【0057】
本発明における、超臨界流体とそれに溶解した物質を可塑化シリンダー140内にて可塑化計量後における溶融樹脂のフローフロント部に浸透させる方法は任意であるが、本実施例における方法について図1、図7を用いて説明する。可塑化計量とは、スクリュー回転により樹脂のペレットを短時間で可塑化しつつ、次のショットで充填射出する量を一定の容積にしてスクリュー前に溜める工程である。
【0058】
まず、バンドヒーター139にて温度制御された可塑化シリンダー140内でスクリュー107が図7(a)中の矢印の向きに回転することにより熱可塑性樹脂のペレット135がホッパー121より供給され可塑化されながらスクリュー107の前方に押し出されていくので、それに伴いスクリュー107は後退していく。計量位置にてスクリュー107の後退が停止することでスクリュー107とシャットオフノズル105の間に溶融樹脂116が可塑化計量される。シャットオフノズル105は、シリンダーの内圧が高まっても溶融樹脂が金型に混入しないようにする金型とシリンダーとの流動路を開閉する機構である。スクリュー107は、ペレットを可塑化溶融する働きと射出する働きとを有する(インラインスクリューとも呼ばれる)。そして、可塑化計量完了後、図7(b)に示すように、スクリュー107をサックバックにより後退させることで溶融樹脂のフロント部を減圧状態にするとともに、シャットオフノズル105とスクリュー107の間に設けた混合体の供給口106より電磁弁108の開放により超臨界流体とその溶解物を導入した。さらに電磁弁を閉じた後、スクリュー107を10Mpaの圧力で加圧前進することで溶融樹脂のフローフロント部に超臨界流体とその溶解物を浸透させた。その後、ただちに射出充填を行った。
【0059】
本発明において、用いることのできる熱可塑性樹脂は任意であるが、本実施例ではガラス転移温度約230℃のポリエーテルイミド(GEプラスチック社製ウルテム1010)を用いた。可塑化シリンダーの温度は380℃とした。
【0060】
本発明における射出成形方法においては溶融樹脂の流動先端部としてのフローフロントに超臨界流体とその溶解物を含浸させること以外はなんら制約を受けるものではないが、本実施例においては充填時にはキャビティを開き充填直後に型締め圧縮を行う射出圧縮成形を用いた。そして超臨界流体をカウンタープレッシャーとして導入した状態でキャビティが開いても超臨界流体が漏れない金型シール機構を考案した。成形方法及び金型構造によりガラス転移温度が高い難成形材料や樹脂が流動しにくい薄肉品であっても微細な転写が可能となる。
【0061】
次に本実施例における成形方法を図1、図4及び図5を用いて詳細に説明する。図1のA部における金型の要部拡大図を図4、図5に示した。本実施例においては製品形状が縦50mm×横60mm×厚み0.5mmの板状の製品を2個取りで成形した。金型142の固定金型143及び可動金型129はそれぞれ図示しない温調回路を流れる冷却水によって温度制御されるが、本実施例においては140℃にて温調した。
【0062】
図1に示す通り、金型142における各キャビティ117はスプール119を中心に上下に分かれており、固定金型143上にはそれぞれのキャビティ117に対応した四角形のスタンパ118が設置されている。スタンパ118の表面にはラインアンドスペースの凹凸パターンが設けられている。スタンパは下記のように作製した。まず、シリコン基板上にフォトリソグラフィを用いてレジストによって凹凸を形成した後、無電解メッキ及び電解メッキにて厚み0.4mmのNiをレジストパターン上に形成した。そしてレジストよりNiを剥がし、スタンパの形状に加工した。
【0063】
図4に示す通りスタンパ118のスプール119側における1辺はスタンパ押さえ爪141によって機械的に固定金型143に固定されており、それ以外の3辺はバキューム溝131からの真空吸引によって固定金型143上に吸着されている。スタンパ押さえ爪141上にはスプール119につながり溶融樹脂が通るランナー用溝130が設けられている。ランナー溝130に対峙した可動金型129上には溝130内部に嵌合する凸部131が設けられており、キャビティ117がある程度開いてもランナー用溝130から充填樹脂がはみ出すことがない。
【0064】
スタンパ118に対峙した可動金型129には製品の外周部を規制する外周枠123がキャビティ開閉方向に独立駆動可能な状態で設置されている。外周枠123は段付きになっておりエッジ123Aが製品外周部を規制する。外周枠123における充填開始方向であるスプール側の1辺においては、ランナー用溝130につながる溝132が設けられており、溶融樹脂はゲート144通過後、溝132よりキャビティ117内に充填される。
【0065】
本実施例においては、溶融樹脂の充填時には図5に示すようにキャビティの厚みTが3.0mmになるように開き、充填時にはその開き量が一定になるように型締め圧を制御した。また充填開始と同時に上述のように電磁弁111の開放により超臨界流体及びその溶解物を流路112より、図5中矢印125の圧力で金型及びキャビティ117内に導入した。それと同時に図1中の電磁弁113を開放し、超臨界流体のみを金型内に流路114を通じ導入することで、図5中矢印126の圧力で可動突き当てリング122及び外周枠123の裏面を加圧し、超臨界流体の圧力125及び126を平衡状態にした。また可動突き当てリング122及び外周枠123の裏面にはバネ128、127が設けてあるため該部品は該バネ力によって固定金型143側に突き当てられる。この機構により金型が開いてもシール性が維持されるので、高圧の超臨界流体が金型より漏れず、また製品の外周を規制する外周枠123より充填樹脂がはみでることはない。
【0066】
カウンタープレッシャーとして圧力125にて導入した超臨界流体及びその溶解物は外周枠123における通過孔124及びスタンパ118と外周枠123のクリアランスtを通り、キャビティ117内に充填される。本実施例において該クリアランスtは10μmとした。
【0067】
フローフロント部に超臨界流体及びその溶解物が含浸した溶融樹脂は、図1中シャットオフノズル105の開放直後にスクリュー107が前進することでスプール119を経て図5に示すように開放されたキャビティ117内に充填される。充填中の樹脂の様子を模式的に図6に示すが、矢印134方向に流れる溶融樹脂116のフローフロント133ではファウンテンフロー現象により超臨界流体及びそれに溶解した物質115がスタンパ118及び可動金型129の壁面に配置していく。予め樹脂内に含浸された超臨界流体の溶解物質もカウンタープレッシャーとして導入された同物質も同じ効果で成形品表面に選択的に配置していく。
【0068】
充填樹脂に予め超臨界流体が浸透されている場合、超臨界流体や加圧COをカウンタープレッシャーとして導入することで、樹脂内部の超臨界流体の減圧及びそれに伴う発泡を抑制することができる。よって、可塑化時に溶融樹脂のフロント部のみに超臨界流体及びそれの溶解物質を含浸させておく場合においても、超臨界流体のみのカウンタープレッシャーをキャビティ内に導入することが望ましい。またカウンタープレッシャーを用いない場合、金型表面やスタンパ離面にポリイミド等の低熱伝導材料を形成することにより断熱化することも、同様に樹脂粘度の上昇及び超臨界流体の圧力低下を抑制できるので望ましい。
【0069】
なお、図6に模式的に示したスタンパ118の凹凸パターンは本実施例においては幅W;2μm、W2;5μm、深さD;30μmとした。本実施例において、射出充填時には、図6に示すように高アスペクト比のパターンを十分に転写できていないと思われるが、充填直後にキャビティ開き量T3.0mmを製品厚みである0.5mmまで型締め圧40トンにて圧縮することで、完全に転写させることができた。
【0070】
本実施例の成形方法においては、充填時にキャビティを開くことで、金型内における溶融樹脂の流動抵抗を低減し、キャビティ内における流動長を短くすることができる。さらに充填直後にキャビティを体積圧縮することで、射出充填の際に減圧された超臨界流体の圧力を再度高めることができ、それにより、樹脂の表面粘度を低い状態に維持できる。さらに微細パターン内に残存しやすいカウンタープレッシャーにより導入された超臨界流体を溶融樹脂内部により浸透させることができる。これら方法によって難成形材料や難成形構造体においても微細な転写が可能となりキャビティ内における圧力分布が均一になる。
【0071】
本実施例においては、射出圧縮後、図1中の電磁弁145及び136を開放することでキャビティ及び樹脂内部さらに金型内部のCOをリークし溶融樹脂を金型内にて固化させた後、金型を開き製品を取り出した。本実施例で作製した成形品表面には超臨界流体への溶解物であるPt錯体及び錯体より有機物が外れたPtの微粒子が配置していることが確認された。また成形品の中心部には該溶解物がほとんど含有されていないことを確認した。
【0072】
本発明においては上記方法により成形品表面に金属錯体等の超臨界流体溶解物を配置させた後、加熱や還元反応等の後処理を行ってもよいが、本実施例においては、無電解メッキまでに後処理は行わなかった。
【0073】
本実施例では、上記射出成形方法で作製した成形品に、下記方法にて無電解銅メッキを行った。まず、無電解銅メッキ用水溶液(奥野製薬工業製「OPC700A」100ミリリットル/リットル+奥野製薬工業製「OPC700B」100ミリリットル/リットル)の入った容器に入れ室温、60分間攪拌し銅メッキ処理した。さらに洗浄後、無電解銅メッキ用水溶液(奥野製薬工業製「OPCカッパーT1」60ミリリットル/リットル+奥野製薬工業製「OPCカッパーT2」12ミリリットル/リットル+奥野製薬工業製「OPCカッパーT3」100ミリリットル/リットル)の入った容器に入れ60℃、120分間攪拌及び空気攪拌を行い銅メッキ処理した。純水及びメタノールにて超音波洗浄した後、成形品全面に厚み10μmの銅メッキ膜を形成した。また該メッキ膜は膜厚が均一であり、ふくれがなく、ピール試験においても実用上問題ない密着強度が得られていることを確認した。
【0074】
さらに図8に示す模式図のように図8(b)に示す成形品のパターン形成面における表面を20μm研磨し図8(c)のように凸部を除去し凹部にのみ無電解メッキ層を残し配線パターンを形成した。本実施例における成形品においては幅2μmの無電解銅メッキの配線が欠落なく形成されたことを確認した。また隣接配線同士の絶縁性も良好であることを確認した。
【実施例2】
【0075】
成形品作製後の無電解メッキを図9に示すように行った以外は、実施例1と同様に射出成形及び無電解メッキによる配線を行った。本実施例における成形品においては幅2μmの無電解銅メッキの配線が欠落なく形成されたことを確認した。また隣接配線同士の絶縁性も良好であることを確認した。
【実施例3】
【0076】
フローフロント部以外における溶融樹脂に超臨界COを含浸させ、成形品内部を発泡体にした以外は実施例1と同様に射出成形を行った。本実施例においては下記のように内部発泡体を作製した。
【0077】
まず、図1に示す超臨界流体の導入口109より電磁弁110の開放により超臨界COをスクリュー107のベント部120に導入し、フロント部以外は金属錯体が溶解していない超臨界COを溶融樹脂に含浸させた。射出充填及び射出圧縮による転写については実施例1と同様に行った後、キャビティ内COを大気に開放することなく高圧型締め力を5トンに減圧し内部を発泡させ成形品を得た。なお金型に導入した超臨界流体は発泡と同時に電磁弁136を開放することで大気に逃がした。
【0078】
本実施例の成形品は上述の射出圧縮の効果によりキャビティ内における圧力分布が均一化されるため、全面均一な微細発泡体が得られた。また本実施例における成形品に実施例1と同様に無電解メッキを施し配線パターンを作製したところ、配線が欠落なく形成されたことを確認した。また隣接配線同士の絶縁性も良好であることを確認した。
(比較例)
超臨界流体に溶解物であるPt錯体を溶解させなかった以外は、実施例1と同様な方法で射出成形及び無電解メッキを行った。本比較例の成形品においては無電解メッキを行うことができなかった。
【実施例4】
【0079】
本実施例に用いた金型及び成形装置の要部断面構造図を図10に示す。本発明における超臨界流体は任意であるが、本実施例ではCOを用いた。また本発明において超臨界流体に溶解させる物質は任意であるが、本実施例ではPd錯体であるビス(アセチルアセトネート)パラジウムを用いた。
【0080】
超臨界流体に物質を溶解させる方法は任意であるが、本実施例においては、COボンベ201から供給されるCOを超臨界流体発生装置202にて超臨界状態にした後、混合槽203中で貯蔵容器204から供給される超臨界流体に溶解させる有機物質を所定の濃度になるように溶解させた。本実施例で混合槽203は、100℃、12MPaの雰囲気に維持した。
【0081】
本発明では、有機物質が溶解した超臨界流体の金型内部への導入方法は任意であるが、本実施例においては電磁弁207の開放により流路216を経て固定金型214内の微細流路206より固定金型214と可動金型215により形成されるキャビティ205に注入した。本実施例において固定金型214内における微細流路206の直径はΦ0.3mmとした。
【0082】
次に、図10及び図11を参照して、本実施例における射出成形方法について詳細に説明する。まず可塑化及び充填は公知の方法を使用する。図10において、スクリュー219の回転によりホッパー217よりバンドヒーター218を介して可塑化シリンダー220内に充填された図示しない樹脂ペレットは、可塑化溶融されてスクリュー219前方に計量される。スクリュー219前方の内圧が上昇することによってスクリュー219が後退する。射出時はスクリュー219が前進することで計量された溶融樹脂は金型のキャビティ205内に充填される。キャビティ205は図示しない温調回路により温度制御された固定金型214及び可動金型215によって形成されており、溶融樹脂がノズル221及び金型のスプール222を経て充填される。
【0083】
本発明において、使用可能な熱可塑性樹脂は任意であるが、本実施例ではガラス転移温度約230℃のポリエーテルイミド(GEプラスチック社製ウルテム1010)を用いた。本実施例において可塑化シリンダーの温度は380℃とした。また金型内を流れる温調回路内の媒体温度は125℃とした。
【0084】
本実施例における固定金型214表面には、流路206に通じる凹凸が設けられている。本発明では、金型表面の凹凸形状及びそのピッチや深さ等は任意であるが、本実施例においては深さ一定でピッチや幅がランダムなラインアンドスペースの溝パターン209を設けた。該溝の深さは2mm、幅は0.9mm、ピッチは最小0.6mmとした。
【0085】
溝パターン209が設けられた金型キャビティ205の図10におけるC部拡大図を図11に示す。以下、図11を参照して、溝209への樹脂充填の方法を説明する。図11(a)における充填前のキャビティ205空間に図11(b)に示すように溶融樹脂212が充填される。このとき、1次充填では樹脂内圧が十分に高くないので金型の溝209の内部には十分に充填できず凸部210が形成される。この未充填の状態にて、有機金属錯体の溶解した超臨界流体208を、溝部209に注入した。この際、樹脂内圧及び型締め圧によって該超臨界流体及びその溶解物が、該溝209より漏れないように制御した。超臨界COが溶融樹脂に接触することで、溝209部における樹脂の凸部210は軟化するので、より金属錯体213は樹脂内に浸透しやすくなる。さらに図11(d)に示すように、保圧及び型締め圧を高くすることで、溝209内に樹脂がほぼ完全に充填される。それによって成形体の凸部210表面にのみ有機金属錯体213が配置する。
【0086】
本発明では前記方法により成形品表面に金属錯体等の超臨界流体溶解物を配置させた後、加熱や還元反応等の後処理を行ってもよいが、本実施例においては200℃の高温槽内に1時間放置し完全に有機金属錯体の配位子を外した。本実施例では、前記射出成形方法で作製した成形品に、下記方法にて無電解銅メッキを行った。まず、無電解銅メッキ用水溶液(奥野製薬工業製「OPC700A」100ミリリットル/リットル+奥野製薬工業製「OPC700B」100ミリリットル/リットル)の入った容器に入れ室温、60分間攪拌し銅メッキ処理した。さらに洗浄後、無電解銅メッキ用水溶液(奥野製薬工業製「OPCカッパーT1」60ミリリットル/リットル+奥野製薬工業製「OPCカッパーT2」12ミリリットル/リットル+奥野製薬工業製「OPCカッパーT3」100ミリリットル/リットル)の入った容器に入れ60℃、120分間攪拌及び空気攪拌を行い銅メッキ処理した。純水及びメタノールにて超音波洗浄した後、成形品全面に厚み10μmの銅メッキ膜を形成した。また該メッキ膜は膜厚が均一であり、ふくれがなく、ピール試験においても実用上問題ない密着強度が得られていることを確認した。また配線に導通させた抵抗測定により低抵抗の配線が断線することなく形成されていることを確認した。隣接配線同士の絶縁性も良好であることを確認した。
【実施例5】
【0087】
本実施例は、金型における凹凸パターンをNiスタンパ上に設けた図12に示す金型を用いた以外は実施例4と同様な成形装置を用いて射出成形を行った。金型は固定金型214及び可動金型215より形成されており、可動金型215上にはNiスタンパ228がスタンパ押さえ枠225によって保持されている。スタンパ押さえ枠225は、額縁形状であり、固定金型214と型締めによって密閉されることにより板状のキャビティ205が形成される。
【0088】
超臨界流体及びそれに溶解した有機物質は流路216よりスタンパ離面に導入される。
【0089】
次に、図12に示すD部の拡大図である図13(a)及び(b)を用いて、本実施例におけるスタンパ形状及び成形方法を説明する。
【0090】
本実施例におけるスタンパ228は次のように作製した。まずフォトリソグラフィによってシリコン基板上に設けられたレジストにパターンニングを行い、該レジストをマスクにしてドライエッチングを行うことで高アスペクト比の凹凸形状を有するシリコン製の鋳型を作製した。次に、電鋳によって光ディスクのスタンパ作製プロセスと同様な方法で厚みTが0.3mmのNiスタンパ228を作製した。スタンパ228における溝部209におけるパターン幅Lは0.05mm、深さdは0.1mmであった。そしてスタンパ228の裏面より機械加工により直径0.1mm、深さ0.2mmの穴226を適材個所に設けた。穴226は各溝部209の孤立個所に通じるように設けた。例えば、溝部のグループ229は各溝部が同一穴226に通じている。穴226はレーザー加工によりさらに微細で深い穴が形成可能でありパターンの微細化にも対応可能である。パターン幅Lがサブミクロンオーダーであっても穴226の深さは同じで径をΦ10μm以下に形成可能となる。
【0091】
成形は下記のように行った。実施例4と同様に射出後、流路216より金属錯体の溶解した超臨界流体を金型内に注入した。図13(b)に示すように、超臨界流体は、弾性率の高いスタンパ228及び溶融樹脂212を押し上げ、スタンパ裏面にわずかなクリアランス227をつくり穴226より樹脂凸部210より浸透する。スタンパ裏面の金型表面に微細なスリットを形成し該スリットを超臨界流体の通過路としてもよい。その後、実施例1と同様に超臨界流体を減圧し樹脂の保圧を高くすることで、スタンパ228と可動金型215を再度密着させるとともに凸部210における転写及び金属錯体の注入を完了した。
【0092】
本実施例の成形方法によれば、配線形成パターンをスタンパ化することで配線回路を容易に変更可能となる。更に、スタンパを薄肉化することで金型の曲面部もスタンパを保持することが可能となり、3次元回路の形成が容易になる。また、スタンパのパターン作製にあたってはフォトリソグラフィ等の微細加工技術を用いることができるのでサブミクロンオーダーの微細パターンも形成可能となる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はその要旨の範囲内で様々な変形及び変更が可能である。例えば、図11においては、溝部209に樹脂が充填され、結果として成形品には凸部が形成されており、凸部の表面が改質されているが、図14に示すように、表面に凹凸のない成形品表面を選択的に改質することができる。ここで、図14は、図11に示す実施例の変形例である。図14においては、固定金型214aと可動金型215aからなる金型の溝部209aが平坦な溶融樹脂(又は成形品)212aの特定位置に配置している。溝部209aの矢印に示すように金属錯体が溶解した超臨界流体を導入し、射出成形時の圧力及び/又は温度を調節する(例えば、下げる)ことによって、成形品表面へ局所的に金属錯体を配置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施例の射出成形装置の要部断面図である。
【図2】本発明におけるプラスチック表面への無電解メッキ方法のフローである
【図3】図2に示す方法において、プラスチック表面への微細メッキ配線方法のフローである。
【図4】図1に示すA部拡大図である。
【図5】図4に示す構造の動作を説明するための断面図である。
【図6】図5に示すB部の、射出充填時におけるフローフロントの様子を説明するための拡大模式図である。
【図7】図1に示す射出成形装置の射出機構の拡大断面図である。
【図8】図2に示す無電解メッキ方法の一例を説明するための金型の部分拡大断面図である。
【図9】図2に示す無電解メッキ方法の別の例を説明するための金型の部分拡大断面図である。
【図10】本発明の別の実施例の射出成形装置の断面図である。
【図11】図10に示す射出成形装置の部分拡大断面図である。
【図12】本発明の更に別の実施形態の射出成形装置の部分断面図である。
【図13】図12に示す射出成形装置の部分拡大断面図である。
【図14】図11に示す実施例の変形例を示す金型の部分断面図である。
【図15】従来の無電解メッキ法を示すフローチャートである。
【図16】従来のメッキ配線方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
101 超臨界流体発生装置
102 貯蔵容器
103 混合槽
104 金属微粒子
105 シャットオフノズル
112 流路
115 超臨界流体の溶解物質
117 キャビティ
133 フローフロント
138 無電解メッキ層
205 キャビティ
206 微細流路
208 超臨界流体
209 溝
210 凸部
212 溶融樹脂
213 有機金属錯体
214 固定金型
215 可動金型
220 可塑化シリンダー
226 穴
228 スタンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を射出成形することによって成形品を製造する方法であって、
金型内に前記熱可塑性樹脂を溶融樹脂として導入する第1の導入工程と、
前記第1の導入工程の後に行われ、前記金型内に溶解物質が溶解した超臨界流体を導入する第2の導入工程と、
前記溶融樹脂を固化し、前記溶解物質を前記成形品の表面に配置させる工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を射出成形することによって成形品を製造する方法であって、
金型内に前記熱可塑性樹脂を溶融樹脂として導入する第1の導入工程と、
前記第1の導入工程と同時に行われ、前記金型内に溶解物質が溶解した超臨界流体を導入する第2の導入工程と、
前記溶融樹脂を固化し、前記溶解物質を前記成形品の表面に配置させる工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂を射出成形することによって成形品を製造する方法であって、
前記熱可塑性樹脂を溶融樹脂とする工程と、
溶解物質が溶解された超臨界流体を、前記溶融樹脂のフローフロント部に浸透させた後で、前記溶融樹脂を射出によって金型内に導入する工程と、
前記溶融樹脂を固化し、前記溶解物質を前記成形品の表面に配置させる工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂を、スクリューを有する可塑化シリンダー内で可塑化計量して前記溶融樹脂とする工程と、
前記可塑化シリンダー内の前記溶融樹脂に、前記溶解物質を溶解させた超臨界流体を浸透する工程と、
前記溶融樹脂を前記可塑化シリンダーから前記金型内に射出する工程とを有すること特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂の流動先端部としてのフローフロント以外には前記溶解物質が溶解しない前記超臨界流体を前記熱可塑性樹脂に導入する工程と、
前記超臨界流体を利用して前記金型内に導入された前記熱可塑性樹脂の内部に発泡体を形成する工程とを更に有することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記溶解物質が溶解した前記超臨界流体を、前記金型内に、射出された熱可塑性樹脂の流動方向とは反対に圧力を印加するカウンタープレッシャーとして導入することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記第2の導入工程は、前記金型内の特定の位置に前記溶解物質が溶解した前記超臨界流体を導入することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項8】
前記金型の圧力及び/又は温度を調節する工程を更に有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記溶解物質は、有機金属錯体であることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記溶解物質は、有機金属錯体であり、前記方法は、無電解メッキにより、前記成形品の表面を改質した部位にメッキ層を形成する工程を更に有する請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記成形体は表面に凹凸部を含み、
前記メッキ層形成工程後に凸部を除去する工程を更に有する請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記成形体は表面に凹凸部を含み、
前記メッキ層形成工程前に前記部位の凸部を除去する工程を更に有する請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び第2の導入工程後に前記溶融樹脂を圧縮する工程と、
当該圧縮工程後に、前記金型のキャビティの容積を増大させて前記熱可塑性樹脂を発泡させる工程とを更に有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記第2の導入工程は、前記溶融樹脂に押圧されるスタンパを利用した工程であり、
前記スタンパは、前記溶融樹脂に押圧される第1の面とそれに対向する第2の面とを有し、前記第1の面には、所定のパターンが形成され、前記第2の面の特定の位置には、前記第1の面の前記パターンへ連通する孔が設けられていることを特徴とする請求項7又は8記載の方法。
【請求項15】
熱可塑性樹脂を射出成形することによって成形品を製造するのに使用される金型であって、
前記金型のキャビティ形成表面には、溶解物質が溶解した超臨界流体を前記キャビティの特定の位置に導入するための導入路が形成されていることを特徴とする金型。
【請求項16】
熱可塑性樹脂の射出成形装置であって、
前記熱可塑性樹脂を充填するためのキャビティを形成する金型と、
前記熱可塑性樹脂を前記金型の前記キャビティ内に導入するための可塑化シリンダーと、
前記可塑化シリンダーに溶解物質が溶解した超臨界流体を導入する機構とを有する射出成形装置。
【請求項17】
熱可塑性樹脂の射出成形装置であって、
前記熱可塑性樹脂を充填するキャビティを形成し、当該キャビティの特定の位置に連通する導入路を有する金型と、
溶解物質が溶解した超臨界流体を前記導入路を介して前記キャビティ内に導入する機構とを有することを特徴とする射出成形装置。
【請求項18】
熱可塑性樹脂の射出成形装置であって、
熱可塑性樹脂を充填するキャビティを形成する金型と、
前記キャビティに充填された前記熱可塑性樹脂に押圧され、前記熱可塑性樹脂に押圧される第1の面に所定のパターンが形成され、前記第1の面に対向する第2の面に前記パターンに連通する孔が設けられたスタンパと、
溶解物質が溶解した超臨界流体を前記スタンパの前記孔を介して前記キャビティ内に導入する機構とを有することを特徴とする射出成形装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−335072(P2006−335072A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209396(P2006−209396)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【分割の表示】特願2006−84914(P2006−84914)の分割
【原出願日】平成15年5月20日(2003.5.20)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】