説明

成膜装置及び成膜方法

【課題】第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を効果的に抑制することにより、回転テーブルの回転速度の増大を通してスループットの向上を図る。
【解決手段】本成膜装置は、回転テーブルの中心と外周上の異なる2つの点とをカバーするように延び第1及び第2の領域に分ける分離領域であり、第1分離ガスで分離領域を第1及び第2の領域より高圧に維持可能な分離領域;第1分離ガスの回転テーブルの中心から外周への流れを抑制して、分離領域を第1及び第2の領域より高圧に制御する圧力制御部;第1の領域にて回転テーブルへ第1反応ガスを供給する第1反応ガス供給部;第2の領域にて回転テーブルへ第2反応ガスを供給する第2反応ガス供給部;第1反応ガスと分離領域からの第1分離ガスとの両方を合流して第1の領域を通して排気する第1排気口;及び第2反応ガスと分離領域からの第1分離ガスとの両方を合流して第2の領域を通して排気する第2排気口を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜方法として、ALD(Atomic Layer Deposition)又はMLD(Molecular Layer Deposition)と呼ばれる方法(以下、ALD法と呼ぶ)が知られている。ALD法では、真空容器内に第1の反応ガスを供給して基板表面に第1の反応ガスを吸着させる第1反応ガス吸着ステップと、真空容器内から第1の反応ガスをパージする第1パージステップと、第2の反応ガスを供給して基板表面に第2の反応ガスを吸着させる第2反応ガス吸着ステップと、真空容器内から第2の反応ガスをパージする第2パージステップとを有するサイクルを多数回行うことにより、基板上への成膜が行われる。基板表面に交互に吸着する両反応ガスの反応により1層又は複数層の原子層や分子層が形成されるため、サイクル数に応じて膜厚を高精度に制御することができるとともに、膜質の面内均一性も良好な点で、半導体デバイスの微細化に有効な手法として期待されている。
【0003】
このような成膜方法を実施するための成膜装置として、下記の特許文献1に、反応容器内に設けられ、円板状の形状を有する回転可能なサセプタと、このサセプタと対向するように配置されるガス噴出部とを備える薄膜蒸着装置が開示されている。このガス噴出部は、反応容器の上部中央に配置される1個の円形の中央シャワーヘッドと、ほぼ扇形の形状を有し、中央シャワーヘッドを取り囲むように反応容器の円周方向に配列される10個の扇状シャワーヘッドとを有している。中央シャワーヘッドに対して対称に配置される2つの扇状シャワーヘッドの一方から第1原料ガスが供給され、他方の扇状シャワーヘッドから第2原料ガスが供給され、残りの扇状シャワーヘッド及び中央シャワーヘッドからパージガスが供給される。また、反応容器の内周壁に沿って複数の排気口が配列され、各シャワーヘッドから供給されるガスは、反応容器の中心から内周壁に向かう方向に放射状に流れて、複数の排気口から排気される。このようにして反応容器内での第1原料ガスと第2原料ガスとの混合を低減しつつ、サセプタの回転によって基板に吸着するガスを切り替えるため、パージステップが不要となる。
【0004】
また、下記の特許文献2には、チャンバ内に設けられ、4枚の基板が支持される回転可能かつ上下動可能な基板支持プラットフォームと、基板支持プラットフォームの上方に画成される4つの反応スペースとを備える成膜装置が開示されている。この成膜装置においては、基板支持プラットフォームは、支持する基板が各反応スペースの下方に位置するように回転し、静止すると、上方へ移動して、各基板を反応スペースに露出させる。次いで、4つの反応スペースの少なくとも一つの反応スペースに一の反応ガスが所定の期間(パルス状に)供給され、他の反応スペースに他の反応ガスが所定の期間(パルス状に)供給される。その後、反応スペースがパージガスでパージされ、パージを継続しつつ、基板支持プラットフォームが下方に移動し、回転して、各基板を次の反応スペースの下方へ位置させる。次いで、支持基板プラットフォームが上方へ移動して、以下、同じ動作が繰り返される。すなわち、時間軸で見れば、反応ガスとパージガスのいずれかを選択的に流し、反応スペースを同時に流れることがない。また、反応スペースに基板が露出するときには、チャンバの天板部材から下方に延びる下方部材により基板支持プラットフォームがシールされるため、反応スペースに供給される反応ガスは、基板には吸着するが、基板支持プラットフォームに吸着することがない。これにより、基板支持プラットフォーム上への堆積が防止され、パーティクルの発生が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2001−254181号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0215036号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示される成膜装置においては、反応容器の内周壁に沿って複数の排気口を配置することによってガスを放射状に流そうとしても、サセプタの回転によってガスが回転方向へ流れてしまうため、特に回転速度を高くした場合には、第1原料ガスと第2原料ガスとの混合を十分に抑えることができない。このため、ALD成膜を実現できない事態ともなる。このような事情のため、特許文献1においては、サセプタの回転速度として3rpmから10rpmが例示されているに過ぎない。これでは、スループットの向上という点で十分とは言えない。
【0007】
また、特許文献2に開示される成膜方法においては、反応スペースのパージに時間がかかり、基板支持プラットフォームの回転/静止及び上下動が繰り返され、反応ガスとパージガスが間欠的に供給されるため、スループットを向上することは難しい。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされ、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を効果的に抑制することによって、回転テーブルの回転速度を増大しても混合抑制効果を維持することができ、もってスループットの向上に寄与し得る、回転テーブル式の分子層成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置が提供される。この成膜装置は、容器内に回転可能に設けられ、基板が載置される基板載置領域を含む回転テーブル;回転テーブルの中心と外周上の異なる2つの点とをカバーするように延びて容器内を少なくとも第1の領域及び第2の領域に分ける分離領域であって、当該分離領域に供給される第1の分離ガスにより、分離領域の圧力を第1の領域及び第2の領域の圧力よりも高い圧力に維持可能に構成される当該分離領域;第1の分離ガスが回転テーブルの中心から外周の方向へ流れるのを抑制することにより、分離領域の圧力を第1の領域及び第2の領域の圧力よりも高い圧力に制御する圧力制御部;第1の領域に配置され、回転テーブルに向けて第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部;第2の領域に配置され、回転テーブルに向けて第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部;第1の領域に供給される第1の反応ガスと、分離領域からの第1の分離ガスとの両方を合流して第1の領域を通して排気するための第1の排気口;及び第2の領域に供給される第2の反応ガスと、分離領域からの第1の分離ガスとの両方を合流して第2の領域を通して排気するための第2の排気口を備える。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜方法が提供される。この成膜方法は、容器内に回転可能に設けられ、基板が載置される基板載置領域を含む回転テーブルに基板を載置し、回転テーブルの中心と外周上の異なる2つの点とをカバーするように延びて容器内を少なくとも第1の領域及び第2の領域に分ける分離領域に対して第1の分離ガスを供給して、分離領域の圧力を第1の領域及び第2の領域の圧力よりも高い圧力に維持し、第1の領域に配置される第1の反応ガス供給部から回転テーブルに向けて第1の反応ガスを供給し、第2の領域に配置される第2の反応ガス供給部から回転テーブルに向けて第2の反応ガスを供給し、第1の領域に供給される第1の反応ガスと、分離領域からの第1の分離ガスとの両方を合流させて第1の領域を通して排気し、第2の領域に供給される第2の反応ガスと、分離領域からの第1の分離ガスとの両方を合流させて第2の領域を通して排気する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を効果的に抑制することによって、回転テーブルの回転速度を増大しても混合抑制効果を維持することができ、もってスループットの向上に寄与し得る、回転テーブル式の分子層成膜装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による成膜装置の断面図である。
【図2】図1の成膜装置の内部の概略構成に示す斜視図である。
【図3】図1の成膜装置の平面図である。
【図4】図1の成膜装置における分離領域、第1の領域及び第2の領域の一例を示す断面図である。
【図5】図1の成膜装置に設けられる、分離ガスが回転テーブルの中心から外周へ流れるのを抑制する屈曲部を示す説明図である。
【図6】分離領域のサイズを説明するための図である。
【図7】図1の成膜装置の分離領域における圧力について行ったシミュレーションの結果を示す図である。
【図8】図1の成膜装置の分離領域における圧力の分布を模式的に示す図である。
【図9】図1の成膜装置の他の断面図である。
【図10】図1の成膜装置を示す一部破断斜視図である。
【図11】図1の成膜装置における反応ガスノズル及びノズルカバーの構成図である。
【図12】図11のノズルカバーが取り付けられた反応ガスノズルを説明する図である。
【図13】図1の成膜装置の真空容器内のガスフローパターンを示す他の説明図である。
【図14】図1の成膜装置の他の断面図である。
【図15】図1の成膜装置のまた別の断面図である。
【図16】図1の成膜装置で使用され得る整流板を示す平面図である。
【図17】図16に示す整流板を示す断面図である。
【図18】図1の成膜装置の分離領域における圧力について行ったシミュレーションの結果を示す図であり、排気口の相違による圧力分布を比較する図である。
【図19】図1の成膜装置における反応ガスノズル及び分離ガスノズルの変形例を示す図である。
【図20】図1の成膜装置における反応ガスノズル及び分離ガスノズルの他の変形例を示す図である。
【図21A】図1の成膜装置における分離領域の他の変形例を示す図である。
【図21B】図21AにおけるE−E線に沿った断面図である。
【図22】図21の変形例の更なる変形例を示す図である。
【図23】図21の変形例の更なる変形例を示す図である。
【図24】図1の成膜装置における分離領域の他の変形例を示す図である。
【図25】図1の成膜装置における分離領域の他の変形例を示す図である。
【図26】図1の成膜装置における分離領域の変形例を示す図である。
【図27】図1の成膜装置における分離領域の他の変形例を示す図である。
【図28】図11のノズルカバーの変形例を示す図である。
【図29】反応ガスノズルの変形例を示す図である。
【図30】反応ガスノズルの他の変形例を示す図である。
【図31】本発明の他の実施形態による成膜装置の断面図である。
【図32】本発明の実施形態による成膜装置を含む基板処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0014】
本発明の実施形態による成膜装置は、図1(図3のA−A線に沿った断面図)及び図2に示すように、概ね円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備える。真空容器1は、容器本体12と、これから分離可能な天板11とから構成されている。天板11は、例えばOリングなどの封止部材13を介して容器本体12に取り付けられ、これにより真空容器1が気密に密閉される。天板11及び容器本体12は、例えばアルミニウム(Al)で作製することができる。
【0015】
図1を参照すると、回転テーブル2は、中央に円形の開口部を有しており、開口部の周りで円筒形状のコア部21により上下から挟まれて保持されている。コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は容器本体12の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。この構成により、回転テーブル2はその中心軸を回転中心として回転することができる。なお、回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分を介して真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、これにより、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離されている。
【0016】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2の上面に、それぞれウエハWが載置される複数(図示の例では5つ)の円形凹部状の載置部24が等角度間隔で形成されている。ただし、図3ではウエハWを1枚のみを示している。
【0017】
図4(a)を参照すると、載置部24と載置部24に載置されたウエハWとの断面が示されている。図示のとおり、載置部24は、ウエハWの直径よりも僅かに(例えば4mm)大きい直径と、ウエハWの厚さに等しい深さとを有している。載置部24の深さとウエハWの厚さがほぼ等しいため、ウエハWが載置部24に載置されたとき、ウエハWの表面は、回転テーブル2の載置部24を除く領域の表面とほぼ同じ高さになる。仮に、ウエハWとその領域との間に比較的大きい段差があると、その段差によりガスの流れに乱流が生じ、ウエハW上での膜厚均一性が影響を受ける。この影響を低減するため、2つの表面がほぼ同じ高さにある。「ほぼ同じ高さ」は、高さの差が約5mm以下であって良いが、加工精度が許す範囲でできるだけゼロに近いと好ましい。
【0018】
図2から図4を参照すると、回転テーブル2の回転方向(例えば図3の矢印RD)に沿って互いに離間した2つの凸状部4が設けられている。図2及び図3では天板11を省略しているが、凸状部4は、図4に示すように天板11の下面に取り付けられている。また、図3から分かるように、凸状部4は、ほぼ扇形の上面形状を有しており、その頂部は真空容器1のほぼ中心に位置し、円弧は容器本体12の内周壁に沿って位置している。さらに、図4(a)に示すように、凸状部4は、その下面44が回転テーブル2から高さh1(後述)に位置するように配置される。これにより、凸状部4と回転テーブル2との間には、空間Hが形成されている。
【0019】
また、図4を参照すると、凸状部4は、凸状部4が二分割されるように半径方向に延びる溝部43を有し、溝部43には分離ガスノズル41(42)が収容されている。溝部43は、本実施形態では、凸状部4を二等分するように形成されるが、他の実施形態においては、例えば、凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が広くなるように溝部43を形成しても良い。分離ガスノズル41(42)は、図3に示すように、容器本体12の周壁部から真空容器1内へ導入され、その基端部であるガス導入ポート41a(42a)を容器本体12の外周壁に取り付けることにより支持されている。
【0020】
分離ガスノズル41(42)は、分離ガスのガス供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスはNガスや不活性ガスであって良く、また、成膜に影響を与えないガスであれば、分離ガスの種類は特に限定されない。本実施形態においては、分離ガスとしてチッ素(N)ガスが利用される。また、分離ガスノズル41(42)は、回転テーブル2の表面に向けてNガスを吐出するための吐出孔40(図4)を有している。吐出孔40は、長さ方向に所定の間隔で配置されている。本実施形態においては、吐出孔40は、約0.5mmの口径を有し、分離ガスノズル41(42)の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。なお、分離ガスノズル41(42)は、吐出孔40に代わり、回転テーブル2に向かって開口し、分離ガスノズル41(42)の長手方向に延びるスリットを有してもよい。
【0021】
図1から図3を再び参照すると、上述の凸状部4は、コア部21を取り囲むように天板11の下面に取り付けられた環状の突出部5に結合されている。これにより、回転テーブル2の外縁端から中心を通って他の外縁端にまで広がり、真空容器1内を第1の領域48A及び第2の領域48B(図2及び図3参照)に分ける分離部材が構成されている。突出部5は回転テーブル2と対向し、これにより突出部5と回転テーブル2との間に上述の空間Hと連通する狭い空間50が形成されている。本実施形態においては、空間50の下面の回転テーブル2からの高さh15(図5参照)は、空間Hの高さh1よりも僅かに低い。なお、他の実施形態においては、高さh15とh1は等しくても良く、また、突出部5と凸状部4は一体に形成されても、別体として形成されて結合されても良い。なお、図2及び図3は、凸状部4を真空容器1内に残したまま天板11を取り外した真空容器1の内部を示している。
【0022】
図5は、図3のB−B線に沿った断面の約半分を示す図である。図示のとおり、コア部21と真空容器1の天板11との間に空間52が形成されている。空間52は、上記の空間50と連通しており、これにより、2つの凸状部4の下方の空間Hは空間50及び52を通して互いに連通している。また、天板11の中心部には、分離ガス供給管51が接続されており、これにより、天板11とコア部21との間の空間52にNガスが供給される。
【0023】
再び図2及び図3を参照すると、第1の領域48Aにおいて容器本体12の周壁部から回転テーブル2の半径方向に反応ガスノズル31が導入され、第2の領域48Bにおいて容器本体12の周壁部から回転テーブル2の半径方向に反応ガスノズル32が導入されている。これらの反応ガスノズル31,32は、分離ガスノズル41,42と同様に、基端部であるガス導入ポート31a,32aを容器本体12の外周壁に取り付けることにより支持されている。なお、反応ガスノズル31,32は、半径方向に対して所定の角度をなすように導入されてもよい。第1の領域48A及び第2の領域48Bは、図4に示すように、凸状部の下面(天井面44)よりも高い天井面45(天板11の下面)を有している。
【0024】
図示を省略するが、反応ガスノズル31は、第1の反応ガスのガス供給源に接続され、反応ガスノズル32は、第2の反応ガスのガス供給源に接続されている。第1の反応ガス及び第2の反応ガスとしては後に述べる組み合わせを始めとして種々のガスを使用できるが、本実施形態においては、第1の反応ガスとしてビスターシャルブチルアミノシラン(BTBAS)ガスが利用され、第2の反応ガスとしてオゾン(O)ガスが利用される。なお、以下の説明において、反応ガスノズル31の下方の領域を、BTBASガスをウエハに吸着させるための処理領域P1といい、反応ガスノズル32の下方の領域を、Oガスをウエハに吸着したBTBASガスと反応(酸化)させるための処理領域P2という場合がある。
【0025】
また、反応ガスノズル31,32は、回転テーブル2の上面(ウエハの載置部24がある面)に向けて反応ガスを吐出するための複数の吐出孔33を有している(図4参照)。本実施形態においては、吐出孔33は約0.5mmの口径を有し、反応ガスノズル31,32の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。反応ガスノズル31(32)は、吐出孔33に代わり、回転テーブル2に向かって開口し、反応ガスノズル31(32)の長手方向に延びるスリットを有してもよい。また、反応ガスノズル31にはノズルカバー34が取り付けられている。ノズルカバー34ついては、後に説明する。
【0026】
以上の構成において、分離ガスノズル41(42)からNガスが吐出されると、このNガスは凸状部4と回転テーブル2との間の空間Hへ至り、空間Hの圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高く維持することができる。これに加えて、分離ガスノズル51から空間52へNガスが供給されると、このNガスは空間52から突出部5と回転テーブル2との空間50へ至り、空間50の圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bによりも高く維持することができる。このようにして、回転テーブル2及び突出部5の間の空間50と、コア部21及び天井板11の間の空間52と、これらによって連通する、2つの凸状部4及び回転テーブル2の間の2つの空間Hとからなり、高い圧力を有して第1の領域48Aと第2の領域48Bとを分ける分離空間が提供される。以下、説明の便宜上、第1の領域48Aに対して回転テーブル2の回転方向上流側に位置する凸状部4に対応する領域を分離領域D1、第1の領域48Aに対して回転テーブル2の回転方向下流側に位置する凸状部4に対応する領域を分離領域D2、突出部5に対応する円形の領域を中心分離領域Cと呼ぶ(図2及び3等参照)。
【0027】
ここで、上記の構成において、分離領域D1,D2及び中心分離領域Cの下方の分離空間の圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高く維持することを確認するため、真空容器1内の圧力分布についてシミュレーションを行った。このシミュレーションは、
・分離ガスノズル41,42からのNガスの供給量: 各12,500sccm
・分離ガス供給管51からのNガスの供給量: 5,000sccm
・回転テーブル2の回転速度: 240rpm
という条件で行った。
【0028】
図7に示すとおり、供給されるNガスにより、分離領域D1,D2及び中心分離領域Cにおいては、第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力に比べて圧力が高くなっている。また、例えば分離領域D1においては、回転テーブル2の周方向に沿って中央に向かう方向に沿って圧力が高くなっており、反応ガスノズル41の直下かつ回転テーブル2の外周付近での圧力が最も高くなっている。なお、添付の図7においては、カラー表示を白黒表示に変換したため、圧力の高い範囲(例えば52.8Pa)と低い範囲(例えば5.23Pa)とが同じ白色にて表示されているが、カラー表示によるシミュレーションの結果は、上述のとおりである。
【0029】
また、図8に模式的に示すように、分離領域D1の空間Hでは、分離ガス供給ノズル31の直下で圧力が最も高く、第1の領域48A及び第2の領域48Bへ向かう方向に沿って圧力が徐々に低下する。それでもなお、例えば図8(b)に示すように、第1の領域48AにBTBASガスを供給することにより第1の領域48Aの圧力がPとなり、第2の領域48BにOガスを供給することにより第2の領域48Bの圧力がPとなった場合であっても、空間Hの圧力を超えることは殆ど無く、したがって、この高い圧力を乗り越えてBTBASガスが第2の領域48Bに到達することはできず、Oガスが第1の領域48Aに到達することはできない。故に、BTBASガスとOガスとの気相中における混合を抑制することが可能となる。
【0030】
また、分離領域D1,D2の空間Hと中心分離領域Cの空間50の圧力が第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高いことから、Nガスは、分離領域D1,D2及び中心分離領域Cから第1の領域48A及び第2の領域48Bへ向かって流れる。言い換えると、凸状部4及び突出部5は、分離ガスノズル41,42及び分離ガス供給管51からのNガスを第1の領域48A及び第2の領域48Bへ案内する。このようにして、本実施形態では、分離空間の圧力をNガスにより高くしてBTBASガス及びOガスに対する圧力障壁を提供するとともに、分離領域D1,D2及び中心分離領域Cから第1の領域48A及び第2の領域48Bへ流れるNガスによってBTBASガス及びOガスに対するカウンターフローを提供することにより、両反応ガスの分離が実現されている。これにより、回転テーブル2が例えば約200rpmから300rpmの範囲の回転速度で回転した場合であっても、BTBASガスとOガスとをより確実に分離することができることが確認されている。すなわち、回転テーブル2の回転速度を速くすることにより、スループットを向上することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、主に天井面44及び45の高さの相違により、空間H及び空間50の容積は第1の領域48A及び第2の領域48Bの容積よりも小さくなっている。これも、分離空間の圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力より高く維持することに寄与している。
【0032】
ここで、低い天井面44の回転テーブル2の上面から測った高さh1(図4(a))等の具体的な寸法を例示する。高さh1は、分離ガスノズル41(42)からのNガスの供給量にもよるが、空間Hの圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高くできるように設定される。高さh1は例えば0.5mmから10mmであると好ましく、できる限り小さくすると更に好ましい。ただし、回転テーブル2の回転ぶれによって回転テーブル2が天井面44に衝突するのを避けるため、高さh1は3.5mmから6.5mm程度であって良い。また、突出部5の回転テーブル2の上面から測った高さh15もまた例えば0.5mmから10mmであると好ましく、できる限り小さくすると更に好ましい。回転テーブル2の中心部近傍での回転ぶれが小さいことを考慮すれば、高さh15は高さh1よりも小さくて良い。具体的には、高さh15は1.0mmから3.0mm程度であって良い。さらに、回転テーブル2の上面から、凸状部4の溝部43に収容される分離ガスノズル41(42)の下端までの高さh2(図4(a))は0.5mmから4mmであって良い。
【0033】
また、凸状部4は、図6(a)及び(b)に示すように、例えば、ウエハ中心WOが通る経路に対応する円弧の長さLがウエハWの直径の約1/10〜約1/1、好ましくは約1/6以上であると好ましい。これにより、分離空間を確実に高い圧力に維持することが可能となる。なお、本実施形態では、分離ガスノズル41(42)は、Nガスの供給量を考慮して約13mm(外径)のパイプを用いており、そのため、凸状部4の溝部43の幅は約13mmから15mmである。このように溝部43の幅をも考慮して上記の長さLを決定するとより好ましい。また、回転テーブル2の外周に近いほど大きい遠心力が働くため、例えば、BTBASガスは、回転テーブル2の外周に近い部分において、大きい速度で分離領域Dへ向かう。したがって、回転テーブル2の外周縁に近い部分では凸状部4の下方の空間HにBTBASガスが侵入する可能性が高い。このため、凸状部4の幅(回転方向に沿った長さ)を回転テーブル2の外周に向うほど広くすると好ましい。
【0034】
再び図5を参照すると、凸状部4は、その外縁においてL字状に屈曲する屈曲部46を有している。屈曲部46は、回転テーブル2と容器本体12との間の空間を概ね埋めている。屈曲部46と容器本体12との間の隙間、及び屈曲部46と回転テーブル2との間の隙間は、例えば、回転テーブル2から凸状部4の天井面44までの高さh1と同じかこれより小さくて良い。ただし、容器本体12と回転テーブル2の間の間隔は、回転テーブル2の熱膨張を考慮し、回転テーブル2が後述のヒータユニットにより加熱された場合にh1程度となるように設定することが好ましい。このような構成により、第1の領域48Aにおいて反応ガスノズル31から供給されたBTBASガスが、真空容器12の内周面と回転テーブル2との間の空間を通して第2の領域48Bへ流れるのが阻止され、逆にOガスが第2の領域48Bから当該空間を通して第1の領域48Aへ流れるのを阻止される。また、屈曲部46があるため、分離ガスノズル41,42(図3等)からのNガスは、回転テーブル2の外側に向かっては流れ難い。すなわち、屈曲部46は、分離空間の圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力より高く維持することに寄与している。なお、屈曲部46の下方にブロック部材71bを設ければ、分離ガスが回転テーブル2の下方まで流れるのを更に抑制することができるため、更に好ましい。
【0035】
一方、第1の領域48A及び第2の領域48Bにおいては、容器本体12の内周壁は、図3、図9及び図10に示すように外方側に窪み、排気領域6が形成されている。この排気領域6の底部には、例えば排気口61,62が設けられている。これら排気口61,62は各々排気管63を介して真空排気装置である例えば共通の真空ポンプ64に接続されている。これにより、主として第1の領域48A及び第2の領域48Bが排気される。すなわち、このような排気口61,62の配置により、分離空間の圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高くし易くなる。
【0036】
再び図1を参照すると、排気管63には圧力調整器65が設けられ、これにより真空容器1内の圧力が調整される。複数の圧力調整器65を、対応する排気口61,62に対して設けてもよい。また、排気口61,62は、排気領域6の底部(真空容器1の底部14)に限らず、真空容器の容器本体12の周壁部に設けても良い。また、排気口61,62は、排気領域6における天板11に設けても良い。ただし、天板11に排気口61,62を設ける場合、真空容器1内のガスが上方へ流れるため、真空容器1内のパーティクルが巻き上げられて、ウエハWが汚染されるおそれがある。このため、排気口61,62は、図示のように底部に設けるか、容器本体12の周壁部に設けると好ましい。また、排気口61,62を底部に設ければ、排気管63、圧力調整器65、及び真空ポンプ64を真空容器1の下方に設置することができるため、成膜装置のフットプリントを縮小する点で有利である。
【0037】
図1、図5及び図9等に示すように、回転テーブル2と容器本体12の底部14との間の空間には、加熱部としての環状のヒータユニット7が設けられ、これにより、回転テーブル2上のウエハWが、回転テーブル2を介して所定の温度に加熱される。また、ブロック部材71aが、回転テーブル2の下方及び外周の近くに、ヒータユニット7を取り囲むように設けられるため、ヒータユニット7が置かれている空間がヒータユニット7の外側の領域から区画されている。ブロック部材71aより内側にガスが流入することを防止するため、ブロック部材71aの上面と回転テーブル2の下面との間に僅かな間隙が維持されるように配置される。ヒータユニット7が収容される領域には、この領域をパージするため、複数のパージガス供給管73が、容器本体12の底部を貫通するように所定の角度間隔をおいて接続されている。なお、ヒータユニット7の上方において、ヒータユニット7を保護する保護プレート7aが、ブロック部材71aと、後述する隆起部Rとにより支持されており、これにより、ヒータユニット7が設けられる空間にBTBASガスやOガスが仮に流入したとしても、ヒータユニット7を保護することができる。保護プレート7aは、例えば石英から作製すると好ましい。
【0038】
図9を参照すると、底部14は、環状のヒータユニット7の内側に隆起部Rを有している。隆起部Rの上面は、回転テーブル2及びコア部21に接近しており、隆起部の上面Rと回転テーブル2の裏面との間、及び隆起部の上面とコア部21の裏面との間に僅かな隙間を残している。また、底部14は、回転軸22が通り抜ける中心孔を有している。この中心孔の内径は、回転軸22の直径よりも僅かに大きく、フランジ部20aを通してケース体20と連通する隙間を残している。パージガス供給管72がフランジ部20aの上部に接続されている。
【0039】
このような構成により、図9に矢印で示すように、回転軸22と底部14の中心孔との間の隙間、コア部21と底部14の隆起部Rとの間の隙間、及び底部14の隆起部Rと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して、パージガス供給管72から回転テーブル2の下の空間へNガスが流れる。また、パージガス供給管73からヒータユニット7の下の空間へNガスが流れる。そして、これらのNガスは、ブロック部材71aと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して排気口61へ流れ込む。このように流れるNガスは、BTBASガス(Oガス)の反応ガスが回転テーブル2の下方の空間を回流してOガス(BTBASガス)と混合するのを防止する分離ガスとして働く。
【0040】
なお、図9は、図3のA−A線に沿った断面図である図1の左半分に相当し、第1の領域48Aを示しているため、凸状部4が無い。一方、突出部5は、図9においても図示されており、回転テーブル2の中央近傍において第1の領域48Aを区画している。この場合においても、突出部5と回転テーブル2との間の空間50の圧力は、分離ガス供給管51からのNガスによって、第1の領域48Aの圧力よりも高く維持される。これにより、図9中に矢印で示すように空間50から第1の領域48Aに向かって回転テーブル2の上面に沿ってNガスが流出する。
【0041】
図2、図3及び図10を参照すると、容器本体12の周壁部には搬送口15が形成されている。ウエハWは、搬送口15を通して搬送アーム10により真空容器1の中へ、又は真空容器1から外へと搬送される。この搬送口15にはゲートバルブ(図示せず)が設けられ、これにより搬送口15が開閉される。また、凹部24の底面には3つの貫通孔(図示せず)が形成されており、これらの貫通孔を通して3本の昇降ピン16(図10参照)が上下動することができる。昇降ピン16は、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させ、ウエハWの搬送アーム10との間で受け渡しを行う。
【0042】
次に、図11を参照しながら、反応ガスノズル31,32に取り付けられるノズルカバー34を説明する。ノズルカバー34は、反応ガスノズル31,32の長手方向に沿って延び、コ字型の断面形状を有する基部35を有している。基部35は、反応ガスノズル31,32を覆うように配置されている。基部35における上記長手方向に延びる2つの開口端の一方には、整流板36Aが取り付けられ、他方には、整流板36Bが取り付けられている。
【0043】
図11(b)に明瞭に示されるように、本実施形態においては、整流板36A,36Bは、反応ガスノズル31,32の中心軸に対して左右対称に形成されている。また、整流板36A,36Bの回転テーブル2の回転方向に沿った長さは、回転テーブル2の外周部に向かうほど長くなっており、このため、ノズルカバー34は、概ね扇形状の平面形状を有している。ここで、図11(b)に点線で示す扇の開き角度は、分離領域D1,D2の凸状部4のサイズをも考慮して決定されるが、例えば5°以上90°未満であると好ましく、具体的には例えば8°以上10°未満であると更に好ましい。
【0044】
図12は、真空容器1の内部を、反応ガスノズル31の長手方向外側から見た図である。図示のとおり、上述のように構成されるノズルカバー34は、整流板36A,36Bが回転テーブル2の上面に対してほぼ平行に近接するように、反応ガスノズル31,32に取り付けられている。ここで、例えば高い天井面45の回転テーブル2の上面からの高さ15mm〜150mmに対して、整流板36Aの回転テーブル2の上面からの高さh3は例えば0.5mm〜4mmであって良く、ノズルカバー34の基部35と高い天井面45との間隔h4は例えば10mm〜100mmであって良い。また、回転テーブル2の回転方向に対して反応ガスノズル31,32の上流側に整流板36Aが配置され、下流側に整流板36Bが配置されている。このような構成により、凸状部4と回転テーブル2との間の空間Hから第1の領域48Aへ流れ出るNガスは、整流板36Aによって、反応ガスノズル31の上方の空間へ流れ、下方の処理領域P1へ侵入し難くなるため、反応ガスノズル31からのBTBASガスのNガスによる希釈が抑制される。
【0045】
なお、回転テーブル2の回転による遠心効果のため、Nガスは回転テーブル2の外縁近傍において大きなガス流速を有し得るから、外縁近傍においては第1の空間へのNガスの侵入抑制効果が低下するとも思われる。しかし、図11(b)に示すように、整流板36Aは、回転テーブル2の外縁部に向かうに従って幅が広くなるため、Nガスの侵入抑制効果の低下を相殺することができる。
【0046】
再び図3を参照すると、この実施形態による成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うための制御部100が設けられている。この制御部100は、例えばコンピュータで構成されるプロセスコントローラ100aと、ユーザインタフェース部100bと、メモリ装置100cとを有する。ユーザインタフェース部100bは、成膜装置の動作状況を表示するディスプレイや、成膜装置の操作者がプロセスレシピを選択したり、プロセス管理者がプロセスレシピのパラメータを変更したりするためのキーボードやタッチパネル(図示せず)などを有する。
【0047】
メモリ装置100cは、プロセスコントローラ100aに種々のプロセスを実施させる制御プログラム、プロセスレシピ、及び各種プロセスにおけるパラメータなどを記憶している。また、これらのプログラムには、例えば後述するクリーニング方法を行わせるためのステップ群を有しているものがある。これらの制御プログラムやプロセスレシピは、ユーザインタフェース部100bからの指示に従って、プロセスコントローラ100aにより読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体100dに格納され、これらに対応した入出力装置(図示せず)を通してメモリ装置100cにインストールしてよい。コンピュータ可読記憶媒体100dは、ハードディスク、CD、CD−R/RW、DVD−R/RW、フレキシブルディスク、半導体メモリなどであってよい。また、プログラムは通信回線を通してメモリ装置100cへダウンロードしてもよい。
【0048】
次に、既出の図面を適宜参照しながら、本実施形態の成膜装置の動作(成膜方法)について説明する。まず、載置部24が搬送口15(図10)に整列するように回転テーブル2が回転して、ゲートバルブ(図示せず)を開く。次に、搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを真空容器1内へ搬入される。ウエハWは、昇降ピン16により受け取られ、搬送アーム10が容器1から引き抜かれた後に、昇降機構(図示せず)により駆動される昇降ピン16によって載置部24へと下げられる。上記一連の動作が5回繰り返されて、5枚のウエハWが対応する凹部24に載置される。
【0049】
続いて、分離ガスノズル41,42からNガスが供給され、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72,73からもNガスが供給されるとともに、真空ポンプ64及び圧力調整器65(図1)により、真空容器1内が予め設定した圧力に維持される。同時に又は引き続いて、回転テーブル2が上から見て時計回りに回転を開始する。回転テーブル2は、ヒータユニット7により前もって所定の温度(例えば300℃)に加熱されており、これにより、この回転テーブル2に載置されるウエハWが加熱される。ウエハWが加熱され、所定の温度に維持された後、まず、Oガスが反応ガスノズル32を通して処理領域P2へ供給され、次いで、BTBASガスが反応ガスノズル31を通して処理領域P1へ供給される。
【0050】
ウエハWが反応ガスノズル31の下方の処理領域P1を通過するときに、ウエハWの表面にBTBAS分子が吸着し、反応ガスノズル32の下方の処理領域P2と通過するときに、ウエハWの表面にO分子が吸着され、OによりBTBAS分子が酸化される。したがって、回転テーブル2の回転により、ウエハWが処理領域P1、P2の両方を一回通過すると、ウエハWの表面に酸化シリコンの一分子層(又は2以上の分子層)が形成される。次いで、ウエハWが処理領域P1、P2を交互に複数回通過し、所定の膜厚を有する酸化シリコン膜がウエハWの表面に堆積される。所定の膜厚を有する酸化シリコン膜が堆積された後、BTBASガスとOガスの供給を停止し、回転テーブル2の回転を停止する。そして、ウエハWは搬入動作と逆の動作により順次搬送アーム10により容器1から搬出され、成膜プロセスが終了する。
【0051】
次に、図13を参照しながら、真空容器1内のガスのフローパターンを説明する。分離領域D1の分離ガスノズル41から吐出されるNガスは、回転テーブル2の半径方向とほぼ直交するように、凸状部4と回転テーブル2との間の空間H(図4(a)参照)から第1の領域48A及び第2の領域48Bへと流出する。また、分離ガス供給管51(図5、図9等)からのNガスは、突出部5の外周の法線方向に中心分離領域Cから第1の領域48A及び第2の領域48Bへ流出する。
【0052】
分離領域D1から第1の領域48Aへ流出するNガスは、反応ガスノズル31に取り付けられたノズルカバー34と天井面45との間の空間を主として流れて、第1の領域48Aに設けられた排気口61へ流れ込む。また、中心分離領域Cから第1の領域48Aへ流出するNガスは、回転テーブル2のほぼ半径方向に沿って流れて排気口61へ流れ込む。さらに、分離領域D2から第1の領域48Aへ流出するNガスは、主として、反応ガスノズル31に到達する前に排気口61により吸引されて、排気口61へ流れ込む。このように、分離ガスとしてのNガスは、分離領域D1,D2及び中心分離領域Cから第1の領域48Aを通って排気口61から排気される。
【0053】
反応ガスノズル31及び反応ガスノズル32は、回転テーブル2に載置したウエハWの表面近傍から、ウエハWに対してBTBASガス及びOガスをそれぞれ供給する。本実施形態では、反応ガスノズル31及び反応ガスノズル32は、上記の通りに設けられるノズルカバー34を有し、ウエハWの表面近傍からウエハWの表面に向けて反応ガスを供給するが、ノズルカバー34を有していない場合でも、ウエハWの表面近傍からウエハWに対してBTBASガス及びOガスをそれぞれ供給すると好ましい。また、他の実施形態においては、反応ガスノズル31及び反応ガスノズル32の代わりに、ウエハWの表面近傍からウエハWに対して反応ガスを供給するインジェクター又はシャワーヘッドを用いても良い。このようにウエハWの表面近傍からウエハWに向けて反応ガスを供給すれば、ウエハWの表面における反応ガスの濃度を直接制御することができる。仮に、第1の領域48A(又は第2の領域48B)において、天井面45の近くに設置したノズル(図示せず)又は天板11に設けられた貫通孔(図示せず)から反応ガスを導入すると、第1の領域48A(又は第2の領域48B)全体に反応ガスを拡散してしまい、ウエハWの表面における反応ガス濃度が低下する。このため、BTBASガスの吸着(又はOガスによる、ウエハWに吸着したBTBASガスの酸化)が不完全となり、成膜速度の低下を招く。また、多量のBTBASガス(又はOガス)が成膜に寄与しないまま排気口61(62)から排気されるため、反応ガスの使用効率が低く不経済である。
【0054】
また、第1の領域48Aの反応ガスノズル31から吐出されるBTBASガスは、ノズルカバー34の基部35の内部の空間から、主に整流板36Bの下方の空間を通って回転テーブル2の上面に沿って流出する。そして、このBTBASガスは、分離領域D2からのNガスと、中心分離領域CからのNガスとの流れにより、流れの方向が規制されるとともに、分離領域D1からのNガスとともに排気口61に吸引される。このため、BTBASガスが、分離領域D1,D2及び中心分離領域Cを通り抜けて第2の領域48Bへ到達することはほぼ不可能である。また、整流板36A,36Bが回転テーブル2に近接して配置されているため、Nガスは反応ガスノズル31の上方へ流れ、反応ガスノズル31の下の空間に侵入し難い。このため、BTBASガスの分離ガスによる希釈が低減される。
【0055】
一方、分離領域D2から第2の領域48Bへ流れ出たNガスは、中心分離領域CからのNガスにより外側へ流されながらも、排気口62に向かって流れ、これに流入する。また、第2の領域48Bの反応ガスノズル32から吐出されるOガスもまた同様に流れて排気口62へ流入する。
【0056】
なお、反応ガスノズル32にはノズルカバー34を設けない場合、Nガスは第2の領域48Bの反応ガスノズル32の下方の処理領域P2を通過し得るため、反応ガスノズル32から吐出されるOガスが希釈される可能性がある。しかし、本実施形態においては、第2の領域48が第1の領域よりも広く、反応ガスノズル32を排気口62からできる限り離して配置しているため、Oガスは、反応ガスノズル32から吐出されて排気口62に流入するまでの間に、ウエハW上に吸着したBTBAS分子と十分に反応(酸化)することができる。すなわち、本実施形態においては、OガスのNガスによる希釈の影響は限定的である。
【0057】
また、反応ガスノズル32から吐出されたOガスの一部は、分離領域D2へ向かって流れ得るが、分離領域D2の空間Hは、上述のとおり、第2の領域48Bに比べて圧力が高いため、そのOガスは分離領域D2へ侵入することができず、分離領域D2からのNガスとともに流れて排気口62へ至る。また、反応ガスノズル32から排気口62へ向かって流れるOガスの一部が、分離領域D1へ向かって流れ得るが、上記と同様に、この分離領域D1へ侵入することができない。すなわち、Oガスは、分離領域D1,D2を通り抜けて第1の領域48Aへ到達することができず、よって、両反応ガスの混合が抑制される。
【0058】
図13に矢印で示すとおり、第1の領域48AにおいてBTBASガスとNガスとが合流した気流が形成され、この気流が第1の領域48Aを回転テーブル2の回転方向に沿って流れて、第1の流域48Aの外側に設けられた排気口61を経由して排気される。また、第2の領域48BにおいてOガスとNガスとが合流した気流が形成され、この気流が第2の領域48Bを回転テーブル2の回転方向に沿って流れて、第2の領域48Bの外側に設けられた排気口62を経由して排気される。
【0059】
(変形例)
以下、本実施形態の成膜装置における幾つかの構成について、変形例を説明する。
図5に示すように、分離領域D1,D2においては、回転テーブル2と容器本体12との間の空間を埋める屈曲部46を凸状部4に設けたが、図14に示すように、分離領域D1,D2において、容器本体12の内周面46aが回転テーブル2に近接するように張り出しても良い。この場合、内周面46aと回転テーブル2との間の間隔は、上述の高さh1と同じか小さくて良い。これによっても、図5の屈曲部46と同じ効果が発揮される。
【0060】
また、図15に示すように、容器本体12の側壁部を貫通するノズル40を設け、空間Hに向けてNガスを供給することにより、分離ガスが回転テーブル2の中心から外周端に向かって流れて分離空間から流出し難くさせても良い。ノズル40は、容器本体12の側壁部に沿って所定の間隔で複数本設けても良く、また、図5に示す屈曲部46を貫通するように設けて、空間HへNガスを供給しても良い。また、分離ガスノズル41,42の代わりに、ノズル40により凸状部4の下方の空間HへNガスを供給しても良い。
【0061】
また、図16と、図16のC−C線に沿った断面図である図17とを参照すると、分離領域D1,D2においても、容器本体12の内周壁が外方側へ後退し、回転テーブル2と容器本体12との間に広い空間が形成されている。これにより、容器本体12には、図17に示すように下面12aが形成されている。また、容器本体12と回転テーブル2との間には、第2の領域48Bの一部、分離領域D1、第1の領域48A、及び分離領域D2に亘って、整流板60Bが配置されている。整流板60Bは、排気口61,62に対応した孔61a,62aを有し、これにより、第1の領域48A及び第2の領域48Bの排気が可能となる。また、整流板60Bには、孔61a,62aの開口径よりも小さい開口径を有する小孔60hが所定の間隔で形成されている。整流板60Bの下には溝部材60Aが設けられ、溝部材60Aには、排気口61,62に連通する連通溝60Gが形成されている。このため、分離領域D1,D2からのNガスが小孔60hを通して僅かに排気され得る。
【0062】
しかし、容器本体12の下面12aの整流板60Bからの高さは、凸状部4の回転テーブル2の上面からの高さh1と同程度に形成し得るため、Nガスに対する十分な抵抗を提供することができ、小孔60hから排気されるNガスはごく少量に限られる。しかも、第1の領域48A及び第2の領域48Bは、大きい開口径を有する排気口61及び62によりそれぞれ排気されるため、分離領域D1,D2の下方の空間H(図4)及び凸状部5の下方の空間50(図5)の圧力は、第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高く維持され得る。換言すると、整流板60Bは、第1の領域48A及び第2の領域48Bに対応して、排気口61,62と同程度の大きな開口径を有する孔61a,62aを有する一方で、分離領域D1,D2に対応して、孔61a,62aに比べて有意に小さい開口径を有する小孔60hを有しているため、分離領域D1,D2において回転テーブル2の外周に向かって流れるNガスの流れを抑制することができる。すなわち、図16及び図17に示す構成によっても反応ガスの分離効果が損なわれることはない。もちろん、整流板60Bに小孔60hを設けることなく、孔61a,62aのみを設けるようにしても良い。換言すると、整流板60Bは、排気口61,62に対応する孔61a,62aのみを有していると好ましいが、分離領域D1,D2の下方の空間H(図4)及び凸状部5の下方の空間50(図5)の圧力を、第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高く維持できる限りにおいて分離領域D1,D2に対応した小孔60hを有して、これから分離ガスであるNガスを排気するようにしても良い。
【0063】
なお、回転テーブル2の全周から排気する場合の分離領域D1,D2及び中心分離領域Cの圧力についてシミュレーションを行ったので、その結果について説明する。具体的には、このシミュレーションは、図16に示す搬入口15が開口されていない真空容器1を想定し、回転テーブル2と容器本体12の間の空間の全周から排気するというモデルについて行った。これは、図16において、分離領域D1,D2においても回転テーブル2と容器本体12との間に、排気口61,62と同等の排気口を設けた場合に相当する。その結果を図18(a)に示す。一方、第1の領域48A及び第2の領域48Bの外側から排気し、分離領域D1,D2の外側からは排気しない場合のシミュレーション結果を図18(b)に示す。これは、図5に示すように回転テーブル2と容器本体12との間に屈曲部46が形成されている場合、図14に示すように容器本体12の内周面46aが回転テーブル2に近接するように張り出している場合、及び図16に示す整流板60B(特に小孔60hのないもの)が設けられる場合に相当する。
【0064】
図18(a)と(b)を比較すると、回転テーブル2の全周から排気する場合には、分離領域D1の外周から排気しない場合に比べて、圧力の高い範囲が狭くなっていることが分かる。特に、分離領域D1の外周側における圧力の低下が顕著である。これは、分離領域D1の外側からも排気されているためである。図18中の挿入図には分離領域D2の結果も示すが、分離領域D2についても同じ議論が適用される。以上の結果から、分離領域D1,D2において回転テーブル2と容器本体12との間に排気口を設けない利点が理解される。なお、図16の整流板60Bに小孔60hを設ける場合においては、小孔60hの開口径が、分離領域D1,D2の圧力が低下しない程度に設定されるべきことは言うまでもない。また、図15に示すようにノズル40から分離領域D1,D2に向けてNガスを供給すれば、分離領域D1,D2の圧力をより効果的に高くし得ることは容易に予想される。
【0065】
次に、分離領域D1,D2の変形例について図19及び図20を参照しながら説明する。図19を参照すると、分離領域D1には凸状部4及び分離ガスノズル41に代わり、回転テーブル2の上面に対向する面(天井面)に、回転テーブル2に向かってNガスを吐出する複数の吐出孔Dhを有するシャワーヘッド401が設けられている。また、シャワーヘッド401へNガスを供給する供給管410が容器本体12の側周壁を貫通して設けられている。また、分離領域D2においても、シャワーヘッド401と同じ構成を有するシャワーヘッド402が設けられ、供給管420からシャワーヘッド402に対してNガスが供給される。このような構成によっても、分離領域D1,D2における空間Hの圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高く維持することができる。また、シャワーヘッド401,402の下面(回転テーブル2に対向する面)の回転テーブル2からの高さを、上述の高さh1程度とすることにより、分離領域D1,D2の圧力をより確実に高くすることができる。また、図19では、真空容器1には整流板60Bが設けられており、これにより、回転テーブル2の外周に向かって流れるNガスの流れを抑制することができるから、分離領域D1,D2の圧力を更に確実に高くすることができる。
【0066】
図19に示す変形例では、中心分離領域Cについては、図5を参照しながら説明したように、分離ガス供給管51から空間52を通して空間50へNガスを供給することにより、空間50の圧力を高く維持することができる。また、図20に示すように、突出部5を環状のシャワーヘッドとして構成し、コア部21の上方においても多数の吐出孔を有するシャワープレートSPを配置し、シャワーヘッド401、シャワーヘッドとしての突出部5、シャワープレートSP、及びシャワーヘッド402を一体に形成し、分離ガス供給管51からNを供給するようにしても良い。この場合、供給管410,420からNガスを供給しても良いし、分離ガス供給管51のみからNガスを供給しても良い。
【0067】
なお、図19においては、第1の領域48Aにシャワーヘッド301が設けられている。このシャワーヘッド301は上述のシャワーヘッド401,402と同じ構成を有しており、供給管310からシャワーヘッド301に対してBTBASガスが供給される。これにより、シャワーヘッド301から回転テーブル2の上面に向けてBTBASガスが供給される。このようにしても、BTBASガスは、分離領域D1,D2及び中心分離領域Cの高い圧力に抗して第2の領域48Bへ到達することができない。同様に、第2の領域48Bにおいてシャワーヘッド302を設け、供給管320からOガスを供給しても良い。
【0068】
また、シャワーヘッド301,302,401,402に形成される吐出孔の密度は、使用する反応ガスや成膜中の回転テーブル2の回転速度等を考慮して任意に決定して良い。例えば、吐出孔を突出部5側に高い密度で形成すれば、凸状部4の下方の空間Hと突出部5の下方の空間50との間近くにおいて、圧力を高くすることができる。また、吐出孔を回転テーブル2の外周側に高い密度で形成すれば、空間Hの回転テーブル2の外周側における圧力を高くすることができる。
【0069】
次に、分離領域D1,D2の更なる変形例について説明する。図21Aを参照すると、分離領域D1のシャワーヘッド401は、外周部401aと、これよりも回転テーブル2の中心に近い領域を占める内周部401bとを有しており、図21AのE−E線に沿った断面図である図21Bに示すように、外周部401aに対して真空容器1の上部からNガスを供給する供給部Saと、内周部401bに対して真空容器1の上部からNガスを供給する供給部Sbとが別個に設けられている。このような構成によれば、供給部Saから外周部401aに供給されるNガスの供給量を、例えば供給部Sbから内周部401bに供給されるNガスの供給量を多くすることにより、外周部401aの下方の空間の圧力を高くすることができる。これにより、シャワーヘッド401から回転テーブル2に向けて供給されるNガスが回転テーブル2の外側に向かって流れるのを防止することが可能となる。この場合、分離領域D1における回転テーブル2と容器本体12との間に、図21A及び図21Bに示すように、排気口61,62と同等の排気口60Dを設けても良い。分離領域D1の外周側における圧力の低下(図18(a)参照)を避けることができるためである。
【0070】
なお、外周部401aにおける吐出孔Dhaと、内周部401bにおける吐出孔Dhbとは同一の開口径を有して良く、この場合、図22(a)に示すように吐出孔Dhaの密度は吐出孔Dhbの密度よりも高いと好ましい。また、吐出孔Dhaと吐出孔Dhbの密度は等しくても良く、この場合、図22(b)に示すように吐出孔Dhaの開口径が吐出孔Dhbの開口径よりも大きいと好ましい。換言すると、外周部401aの面積に対する吐出孔Dhaの開口面積の合計の比が、内周部401bの面積に対する吐出孔Dhbの開口面積の合計の比よりも大きいと好ましい。外周部401aの下方の圧力を高くし易くなるからである。また、吐出孔Dha及び吐出孔Dhbは円形に限らず、楕円形や矩形であっても良く、この場合であっても、外周部401aの下方の圧力を高くできるように、開口寸法かつ/又は密度を調整することが好ましい。
【0071】
また、外周部401a及び内周部401bへNガスをそれぞれ供給する供給管Sa及びSbは、真空容器1の上部からでなく、図23(a)に示すように、真空容器1の容器本体12の側壁を通して、それぞれ外周部401a及び内周部401bまで導入しても良い。具体的には、供給管Saは、図23(a)のF−F線に沿った断面図である図23(b)に示すように、容器本体12の側壁を通り抜けて外周部401aに接続し、外周部401aに対してNガスを供給する。供給管Sbは、図23(a)のG−G線に沿った断面図である図23(c)に示すように、容器本体12及び外周部401aを通り抜けて内周部401bに接続し、内周部401bに対してNガスを供給する。
【0072】
なお、外周部401a及び内周部401bの回転テーブル2の半径方向に沿った長さは、図示の例ではほぼ同一であるが、これに限られず、適宜決定して良い。また、分離領域D1について説明したが、分離領域2において同様に構成されて良いことは言うまでもない。
【0073】
さらに、分離領域D1の外周側における圧力の低下(図18(a)参照)は、以下の構成によっても避けることができる。図24は、図3等に示す分離ガスノズル41の長手方向に沿った断面図である。図示のとおり、分離ガスノズル41に形成された複数の吐出孔40のうち、回転テーブル2の外周側にある吐出孔40Lは大きな開口径を有し、内周側にある吐出孔40Sは小さい開口径を有している。ここで、大きな開口径を有する吐出孔40Lが形成される範囲は、例えば、上述の外周部401aが設けられる範囲に対応して良く、小さい開口径を有する吐出孔40Sが形成される範囲は、例えば、上述の内周部401bに対応して良い。このような構成によれば、分離ガスノズル41から供給されるNガスは、回転テーブル2の外周側では大きな吐出孔40から大量に吐出され、これにより、分離領域D1の外周側の圧力を高く維持することが可能となる。分離領域D2においても同様に構成しても良い。
【0074】
さらに、図25を参照すると、分離領域D1において凸状部4と、凸状部4の溝部43に収容された分離ガスノズル41とが図示されている。この凸状部4には、溝部43に対して回転テーブル2の回転方向上流側及び下流側に追加の溝部431及び432がそれぞれ形成されている。溝部431及び432は、図示の例では、溝部43の長さのほぼ半分の長さを有しており、ここに、分離ガスノズル41と同様に容器本体12に対して取り付けられる補助ノズル41E1及び41E2がそれぞれ収容されている。また、補助ノズル41E1及び41E2には、真空容器1内において、その長手方向に沿って複数の吐出孔(図示を省略)が設けられており、一方、補助ノズル41E1及び41E2の他端には、図示しないNガス供給源が接続されている。このような構成により、補助ノズル41E1及び41E2から回転テーブル2に向けてNガスが供給され、これにより、分離領域D1の外周側(補助ノズル41E1及び41E2が分離領域D1において延在する範囲)における圧力を内周側よりも高くすることができる。
なお、溝部431,432及び補助ノズル41E1,41E2の長さは、分離ガスノズル41の約半分に限らず適宜決定して良い。また、分離領域D2においても、凸状部4が、上述の溝部431,432を有し、これらに補助ノズル42E1,42E2が収容されても良い。
【0075】
次に、凸状部4の変形例について説明する。図26を参照すると、凸状部4は、回転テーブル2の中心側において回転テーブル2の回転方向下流側に延びる延伸部4bを有している。このため、凸状部4と突出部5とを一体で形成する場合は、両者はより広い範囲で結合することとなり、凸状部4と突出部5を別体で形成する場合は、両者はより広い範囲で対向することとなる。これにより、凸状部4と突出部5との境界45において、第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高い圧力を有する領域を広くすることができる。したがって、この境界45かつ/又はこの近傍を通して第1の領域48Aから第2の領域48BへBTBASガスが通り抜けたり、第2の領域48Bから第1の領域48AへOガスが通り抜けたりするのをより確実に抑制することが可能となる。なお、延伸部4bは、凸状部4の回転テーブル2の回転方向上流側に設けても良く、また、双方に設けても良い。また、延伸部4bの形状は境界45において凸状部4と突出部5の結合又は対向範囲が広くなる限りにおいて、図示のものに限られない。例えば、凸状部4の回転テーブル2の半径方向に延びる辺が、真空容器1の外周から中心に向かうにつれて湾曲して突出部5に到達することによって、境界45を長くすることも可能である。
【0076】
また、図27に示すように凸状部4は中空であっても良い。図示の例では、中空の凸状部4に対して供給管410が接続され、供給管410から凸状部4に分離ガスとしてのNガスが供給される。この凸状部4の下面(回転テーブル2に対向する面)には、供給管410の延長線上に沿って複数の吐出孔4hcが形成されており、供給管410から中空の凸状部4に供給されたNガスが吐出孔4hcから回転テーブル2へ向けて吐出される。これにより、凸状部4の下方の空間Hの圧力が第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高く維持され得る。また、図27(a)のD−D線に沿った断面図である図27(b)を参照すると、凸状部4は下面が両端部において傾斜しており、これにより形成される傾斜面に吐出孔4hu,4hdが形成されている。中空の凸状部4に供給されたNガスは、吐出孔4hu,4hdからも回転テーブル2に向けて吐出される。これにより、空間Hから第1の領域48A及び第2の領域48Bへ流出するNガスの勢いを増すことができる。すなわち、Nガスの流れ(カウンターフロー)による、BTBASガスとOガスを分離する効果が増強され、両ガスの気相中での混合をより確実に抑制することができる。なお、吐出孔4hu,4hdは、使用する反応ガスや成膜中の回転テーブル2の回転速度等を考慮して任意に決定して良い。例えば、吐出孔4hu,4hdを突出部5側に高い密度で形成すれば、凸状部4の下方の空間Hと突出部5の下方の空間50との間近くにおいて、圧力を高くすることができる。また、吐出孔4hu,4hdを回転テーブル2の外周側に高い密度で形成すれば、空間Hの回転テーブル2の外周側における圧力を高くすることができる。なお、吐出孔4hcは、図示の配列に限らず、例えば、突出部5側に高い密度で形成しても良く、逆に回転テーブル2の外周側に高い密度で形成しても良い。また、吐出孔4hcを図19に示すシャワーヘッド301,302,401,402のように形成しても良い。
【0077】
また、図27に示す中空の凸状部4の代わりに、図3,4及び6等に示す凸状部4の回転テーブル2の半径方向に延びる辺に隣接するように、回転テーブル2の上面に対して垂直方向に又は所定の傾斜角度で開口する吐出孔を有する分離ガスノズルを、Nガス(分離ガス)を設けても良い。このような構成によっても図27に示す凸状部4と同じ効果が発揮され得る。
【0078】
次に、図11に示したノズルカバー34の変形例を説明する。図28(a)及び(b)を参照すると、この変形例は、基部35(図11)を有しておらず、整流板37A,37Bが反応ガスノズル31,32に対して直接に取り付けられている。この場合であっても、整流板37A,37Bは、回転テーブル2の上面から高さh3の位置に配置することができるため、上述のノズルカバー34と同様の効果が得られる。この例においても、整流板37A,37Bは、図11に示した整流板36A,36Bと同様に、上方から見てほぼ扇形状をなしていると好ましい。
【0079】
また、整流板36A,36B,37A,37Bは、必ずしも回転テーブル2と平行でなくても良い。例えば、回転テーブル2(ウエハW)からの高さh3が維持されて、反応ガスノズル31,32の上方へNガスを流れ易くすることができる限り、図28(c)に示すように、整流板37A,37Bは反応ガスノズル31の上部から回転テーブル2へ向かうように傾斜していても良い。図示の整流板37Aは、Nガスを上方へガイドすることができる点でも好ましい。
【0080】
続いて、ノズルカバーの更なる変形例について、図29及び図30を参照しながら説明する。これらの変形例は、ノズルカバーと一体化された反応ガスノズル、又はノズルカバーの機能を有する反応ガスノズルとも言うことができる。このため、以下の説明では反応ガスインジェクタと称呼する。
【0081】
図29(a)及び(b)を参照すると、反応ガスインジェクタ3Aは、反応ガスノズル31,32と同様に円筒形状を有する反応ガスノズル321を含み、反応ガスノズル321が真空容器1の容器本体12(図1)の周壁部を貫通するように設けることができる。反応ガスノズル321は、反応ガスノズル31,32と同様に、約0.5mmの内径を有し、例えば10mmの間隔で反応ガスノズル321の長手方向に配列される複数の吐出孔323を有している。ただし、反応ガスノズル321は、複数の吐出孔323が回転テーブル2の上面に対して所定の角度で開口している点で、反応ガスノズル31,32と異なる。また、反応ガスノズル321の上端部には案内板325が取り付けられている。案内板325は、反応ガスノズル321の円筒の曲率よりも大きい曲率を有しており、曲率の相違により、反応ガスノズル321と案内板325との間にはガス流路316が形成されている。図示しないガス供給源から反応ガスノズル321へ供給された反応ガスは、吐出孔323から吐出され、ガス流路316を通って回転テーブル2上に載置されるウエハWに到達する。
【0082】
また、案内板325の下端部には回転テーブル2の回転方向上流側に延びる整流板37Aが設けられ、反応ガスノズル321の下端部には回転テーブル2の回転方向下流側に延びる整流板37Bが設けられている。
【0083】
このように構成される反応ガスインジェクタ3Aは、整流板37A,37Bが回転テーブル2の上面に近接しているため、分離領域D1,D2からのNガスは、反応ガスインジェクタの上方へ流れ易く、下方の処理領域へ侵入し難くなる。したがって、反応ガスノズル321からの反応ガスのNガスによる希釈がより確実に抑制される。
【0084】
なお、反応ガスは、反応ガスノズル321から反応ガス流出孔323を通してガス流路316へ到達するときに、案内板325に吹き付けられるため、図29(b)の複数の矢印で示すように、反応ガスノズル321の長手方向に広がることとなる。このため、ガス流路326内において、ガス濃度が均一化される。すなわち、この変形例は、ウエハWに堆積される膜の膜厚を均一化できる点で好ましい。
【0085】
図30(a)を参照すると、反応ガスインジェクタ3Bは、方形管により構成される反応ガスノズル321を有している。反応ガスノズル321は、図30(b)に示すように、例えば内径0.5mmを有し、反応ガスノズル321の長手方向に沿って例えば5mm間隔で配置される複数の反応ガス流出孔323を一方の側壁に有している。また、反応ガス流出孔323が形成された側壁には、逆L字形状を有する案内板325が、当該側壁との間に所定の間隔(例えば0.3mm)をおいて取り付けられている。
【0086】
また、図30(b)に示すように、反応ガスノズル321には、真空容器1の容器本体12の周壁部(例えば図2を参照)から導入されたガス導入管327が接続されている。これにより、反応ガスノズル321が支持されるとともに、例えばBTBASガスはガス導入管327を通して反応ガスノズル321へ供給されて、複数の反応ガス流出孔323からガス流路326を通して、回転テーブル2に向けて供給される。また、この例の反応ガスノズル321は、ガス流路326が回転テーブル2の回転方向上流側に位置するように、配置されている。
【0087】
このように構成される反応ガスインジェクタ3Bは、反応ガスノズル321の下面が回転テーブル2の上面から高さh3の位置に配置され得るため、分離領域D1,D2からのNガスは、反応ガスインジェクタ3Bの上方へ流れ易く、下方の処理領域へ侵入し難くなる。また、反応ガスノズル321の下面が、ガス流路326に対して回転テーブル2の回転方向下流側に配置されているため、ガス流路326から供給されるBTBASガスを回転テーブル2と反応ガスノズル321との間に比較的長く滞留させることができるため、ウエハWへのBTBASガスの吸着効率を向上することができる。また、反応ガス流出孔323から流出した反応ガスが案内板325に衝突し、図30(b)に矢印で示すように広がるため、ガス流路326の長手方向に沿って反応ガスの濃度が均一化される。
なお、反応ガスノズル321は、ガス流路326が回転テーブル2の回転方向下流側に位置するように配置しても良い。この場合、反応ガスノズル321の下面が、ガス流路326に対して回転テーブル2の回転方向上流側に配置され、Nガスの反応ガスノズル321の下方への侵入を妨げるのに寄与し得るため、反応ガスのNガスによる希釈がより確実に抑制される。
【0088】
図11に示すノズルカバー34、図28に示す整流板37A,37B、図29及び図30に示す反応ガスインジェクタ3A,3Bは、例えばOガスを回転テーブル2の表面に向けて供給するために使用されて良く、BTBASガスとOガスとの双方のために使用されても良い。
【0089】
ここで、本発明の他の実施形態による成膜装置を説明する。図31を参照すると、容器本体12の底部14は、中央開口を有し、ここには収容ケース80が気密に取り付けられている。また、天板11は、中央凹部80aを有している。支柱81が収容ケース80の底面に載置され、支柱81の状端部は中央凹部80aの底面にまで到達している。支柱81は、反応ガスノズル31から吐出されるBTBASガスと反応ガスノズル32から吐出されるOガスとが真空容器1の中央部を通して互いに混合するのを防止する。
【0090】
また、回転スリーブ82が、支柱81を同軸状に囲むように設けられている。回転スリーブ82は、支柱81の外面に取り付けられた軸受け86,88と、収容ケース80の内側面に取り付けられた軸受け87とにより支持されている。さらに、回転スリーブ82は、その外面にギヤ部85が取り付けられている。また、環状の回転テーブル2の内周面が回転スリーブ82の外面に取り付けられている。駆動部83が収容ケース80に収容されており、駆動部83から延びるシャフトにギヤ84が取り付けられている。ギヤ84はギヤ部85と噛み合う。このような構成により、回転スリーブ82ひいては回転テーブル2が駆動部83により回転される。
【0091】
パージガス供給管74が収容ケース80の底に接続され、収容ケース80へパージガスが供給される。これにより、反応ガスが収容ケース80内へ流れ込むのを防止するために、収容ケース80の内部空間を真空容器1の内部空間よりも高い圧力に維持することができる。したがって、収容ケース80内での成膜が起こらず、メンテナンスの頻度を低減できる。また、パージガス供給管75が、真空容器1の上外面から凹部80aの内壁まで至る導管75aにそれぞれ接続され、回転スリーブ82の上端部に向けてパージガスが供給される。このパージガスのため、凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間が高くなり、BTBASガスとOガスの混合が抑制される。図31には、2つのパージガス供給管75と導管75aが図示されているが、供給管75と導管75aの数は、BTBASガスとOガスとの混合が凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間近傍において確実に防止されるように決定されて良い。
【0092】
このような構成においても、2つの分離領域には凸状部4(低い天井面44)が形成され、天井面44と回転テーブル2の間の空間Hの圧力を、BTBASガスが供給される第1の領域とOガスが供給される第2の領域との圧力よりも高く維持することが可能となる。また、中央凹部80aの内周面と回転スリーブ82との間の空間は、パージガス供給管75からの分離ガスとしてのNガスにより、第1の領域及び第2の領域の圧力よりも高い圧力に維持される。すなわち、中心分離領域が形成される。さらに、2つの分離領域の下方の空間Hは、回転スリーブ82と中央凹部80aの内周面との間の空間を通して連通しており、このような構成により、真空容器1内を第1の領域と第2の領域に分ける分離空間が形成される。故に、上述の実施形態と同様の効果が奏される。
【0093】
なお、図31では、突出部5が凸状部4と一体に形成される場合を示しているため、図示を省略している。もちろん、これらを別体で形成しても良く、突出部5の回転テーブル2からの高さを、凸状部4の回転テーブル2からの高さよりも低くして良い。また、図31の成膜装置においても、図5に示す屈曲部46や図14に示す内周面46aが適用されても良く、また、整流板60Bを適用しても良い。さらに、反応ガスノズル31,32には、ノズルカバー34(図11)や整流板37A,37B(図28)が取り付けられて良く、反応ガスノズル31,32の代わりに反応ガスインジェクタ3A(図29)や3B(図30)を用いても良い。さらには、上述したシャワーヘッド(図19)やその他の凸状部4の変形例を適用しても良いことは勿論である。
【0094】
また、本発明の実施形態による成膜装置(種々の部材の変形例を含む)は、基板処理装置に組み込むことができ、その一例が図32に模式的に示されている。基板処理装置は、搬送アーム103が設けられた大気搬送室102と、雰囲気を真空と大気圧との間で切り替え可能なロードロック室(準備室)104,105と、2つの搬送アーム107a、107bが設けられた搬送室106と、本発明の実施形態にかかる成膜装置108,109とを含む。ロードロック室104,105及び成膜装置108,109と、搬送室106との間は、開閉可能なゲート弁Gにより結合され、ロードロック室104,105と大気搬送室102との間も開閉可能なゲート弁Gにより結合されている。また、この基板処理装置は、たとえばFOUPなどのウエハカセット101が載置されるカセットステージ(図示せず)を含んでいる。ウエハカセット101は、カセットステージの一つに運ばれ、カセットステージと大気搬送室102との間の搬入出ポートに接続される。次いで、開閉機構(図示せず)によりウエハカセット(FOUP)101の蓋が開けられて、搬送アーム103によりウエハカセット101からウエハが取り出される。次に、ウエハはロードロック室104(105)へ搬送される。ロードロック室104(105)が排気された後、ロードロック室104(105)内のウエハは、搬送アーム107a(107b)により、真空搬送室106を通して成膜装置108,109へ搬送される。成膜装置108,109では、上述の方法でウエハ上に膜が堆積される。基板処理装置は、同時に5枚のウエハを収容可能な2つの成膜装置108,109を有しているため、高いスループットで分子層成膜を行うことができる。
【0095】
本発明の実施形態による成膜装置は、酸化シリコン膜の成膜に限らず、窒化シリコンの分子層成膜にも適用することができる。また、トリメチルアルミニウム(TMA)とOガスを用いた酸化アルミニウム(Al)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZr)とOガスを用いた酸化ジルコニウム(ZrO)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAHf)とOガスを用いた酸化ハフニウム(HfO)の分子層成膜、ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト(Sr(THD))とOガスを用いた酸化ストロンチウム(SrO)の分子層成膜、チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト(Ti(MPD)(THD))とOガスを用いた酸化チタン(TiO)の分子層成膜などを行うことができる。また、Oガスではなく、酸素プラズマを利用することも可能である。これらのガスの組み合わせを用いても、上述の効果が奏されることは言うまでもない。
【0096】
以上、本発明を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0097】
W・・・ウエハ、1・・・真空容器、2・・・回転テーブル、21・・・コア部、24・・・凹部(基板載置領域)、31,32・・・反応ガスノズル、34・・・ノズルカバー、36A,36B,37A,37B・・・整流板、P1・・・処理領域、P2・・・処理領域、D1,D2・・・分離領域、C・・・中心分離領域、41,42・・・分離ガスノズル、3A,3B・・・反応ガスインジェクタ、4・・・凸状部、5・・・突出部、51・・・分離ガス供給管、61,62,63・・・排気口、63・・・排気管、65・・・圧力調整器、7・・・ヒータユニット、72,73・・・パージガス供給管、81・・・分離ガス供給管、301,302,401,402・・・シャワーヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置であって、
前記容器内に回転可能に設けられ、基板が載置される基板載置領域を含む回転テーブル;
前記回転テーブルの中心と外周上の異なる2つの点とをカバーするように延びて前記容器内を少なくとも第1の領域及び第2の領域に分ける分離領域であって、当該分離領域に供給される第1の分離ガスにより、前記分離領域の圧力を前記第1の領域及び前記第2の領域の圧力よりも高い圧力に維持可能に構成される当該分離領域;
前記第1の分離ガスが前記回転テーブルの中心から外周の方向へ流れるのを抑制することにより、前記分離領域の圧力を前記第1の領域及び前記第2の領域の圧力よりも高い圧力に制御する圧力制御部;
前記第1の領域に配置され、前記回転テーブルに向けて第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部;
前記第2の領域に配置され、前記回転テーブルに向けて第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部;
前記第1の領域に供給される前記第1の反応ガスと、前記分離領域からの前記第1の分離ガスとの両方を合流して前記第1の領域を通して排気するための第1の排気口;及び
前記第2の領域に供給される前記第2の反応ガスと、前記分離領域からの前記第1の分離ガスとの両方を合流して前記第2の領域を通して排気するための第2の排気口
を備える成膜装置。
【請求項2】
前記圧力制御部は、前記容器の内周面が、前記分離領域における前記回転テーブルとの間の間隔よりも、前記第1の領域及び前記第2の領域における前記回転テーブルとの間の間隔が狭くなるように配置されて構成される、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記圧力制御部が、前記回転テーブルと前記容器の内周面との間の隙間を埋める壁部材を含む、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記圧力制御部が、前記分離領域における、前記回転テーブルの外周と前記容器の内周面との間の空間に配置され、前記回転テーブルの外周方向へ流れる前記第1の分離ガスが当該空間から前記回転テーブルの下方へ流出するのを抑制する板部材を含む、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記板部材が、前記第1の排気口及び前記第2の排気口の開口寸法より小さい開口寸法を有する第3の排気口を有し、
前記第3の排気口と、前記第1の排気口及び前記第2の排気口の双方又はいずれか一方とを連通させる連通管を更に備える、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記圧力制御部が、前記分離領域に対して、前記分離ガスが前記回転テーブルの外周から中心に向かう方向に第2の分離ガスを供給する第2の分離ガス供給部を含む、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第2の分離ガス供給部が、前記容器の側壁から挿入される配管を含む、請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記分離領域において、前記分離領域の容積が前記第1の領域の容積及び前記第2の領域の容積よりも小さくなるように前記回転テーブルに対向して分離領域天井面が配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1の分離ガスを供給する複数の開口が前記分離領域天井面に形成されている、請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記第1の分離ガスを前記分離領域に供給する第1の分離ガス供給部を更に備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記第1の分離ガス供給部が前記容器の側壁及び上部の双方又はいずれか一方から導入される、請求項10に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部の少なくとも一方の反応ガス供給部が、当該反応ガス供給部に対応する領域における天井面から離間している、請求項1から10のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部の少なくとも一方の反応ガス供給部に対して設けられ、前記分離領域からの分離ガスが当該反応ガス供給部の上方に流れるのを促進する整流部材を更に備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記圧力制御部が、前記分離領域における第1の範囲の第1の圧力が、前記分離領域において前記第1の範囲よりも前記回転テーブルの中心側にある第2の範囲の第2の圧力よりも高くなるように前記分離領域に対して分離ガスを供給可能に構成される、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記圧力制御部が、前記第1の範囲に設けられ複数の第1の吐出孔を含む第1の板部材と、前記第2の範囲に設けられ複数の第2の吐出孔を含む第2の板部材とを備える、請求項14に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記第1の板部材における前記複数の第1の吐出孔の開口密度が、前記第2の板部材における前記複数の第2の吐出孔の開口密度よりも高い、請求項15に記載の成膜装置。
【請求項17】
前記第1の板部材に対して前記分離ガスを供給する第1の供給管と、
前記第2の板部材に対して前記分離ガスを供給する第2の供給管と
を更に備える、請求項15に記載の成膜装置。
【請求項18】
前記第1の供給管が前記容器の上部及び側壁のいずれか一方から前記第1の板部材に対して前記分離ガスを供給し、
前記第2の供給管が前記容器の上部及び側壁のいずれか一方から前記第2の板部材に対して前記分離ガスを供給する、請求項17に記載の成膜装置。
【請求項19】
前記圧力制御部が、前記回転テーブルの回転方向と交わる第1の方向に沿って前記第1の範囲と前記第2の範囲に延び、前記第1の方向に沿って配列される複数の第3の吐出孔を有する第3の供給管を含み、
前記複数の第3の吐出孔の開口密度が前記第2の範囲においてよりも前記第1の範囲において大きい、請求項14に記載の成膜装置。
【請求項20】
前記圧力制御部が、
前記回転テーブルの回転方向と交わる第1の方向に沿って前記第1の範囲と前記第2の範囲に延び、前記第1の方向に沿って配列される複数の第3の吐出孔を有する第3の供給管と、
前記第1の方向に沿って前記第1の範囲に延び、前記第1の方向に沿って配列される複数の第4の吐出孔を有する第4の供給管と、
を含む、請求項14に記載の成膜装置。
【請求項21】
容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜方法であって、
前記容器内に回転可能に設けられ、基板が載置される基板載置領域を含む回転テーブルに前記基板を載置し、
前記回転テーブルの中心と外周上の異なる2つの点とをカバーするように延びて前記容器内を少なくとも第1の領域及び第2の領域に分ける分離領域に対して第1の分離ガスを供給して、前記分離領域の圧力を前記第1の領域及び前記第2の領域の圧力よりも高い圧力に維持し、
前記第1の領域に配置される第1の反応ガス供給部から前記回転テーブルに向けて第1の反応ガスを供給し、
前記第2の領域に配置される第2の反応ガス供給部から前記回転テーブルに向けて第2の反応ガスを供給し、
前記第1の領域に供給される前記第1の反応ガスと、前記分離領域からの前記第1の分離ガスとの両方を合流させて前記第1の領域を通して排気し、
前記第2の領域に供給される前記第2の反応ガスと、前記分離領域からの前記第1の分離ガスとの両方を合流させて前記第2の領域を通して排気する成膜方法。
【請求項22】
前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスの供給が連続的に行われる、請求項21に記載の成膜方法。
【請求項23】
前記第1の分離ガスが、前記容器の側壁及び上部の双方又はいずれか一方から導入される第1の分離ガス供給部から前記分離領域に供給される、請求項21又は22に記載の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図7】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−135003(P2011−135003A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295391(P2009−295391)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】