説明

樹脂付き金属薄膜、印刷回路板及びその製造方法、並びに、多層配線板及びその製造方法

【課題】微細な回路パターンを十分良好に形成可能であり、かつ、金属層を形成する際にポリイミドフィルムを用いる必要のない樹脂付き金属薄膜を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明は、支持体1と、該支持体1上に蒸着法により形成された第1の金属層2と、該第1の金属層2上に形成された第2の金属層3と、該第2の金属層3上に形成された絶縁性の樹脂組成物からなる樹脂層4とを備える樹脂付き金属薄膜100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂付き金属薄膜、印刷回路板及びその製造方法、並びに、多層配線板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用の積層板は、電気絶縁性を有する樹脂組成物をマトリックスとするプリプレグを所定の枚数重ね、加熱加圧して一体化することにより得られる。また、プリント配線板の作製において、プリント回路をサブトラクティブ法により形成する場合には、金属張積層板が用いられる。この金属張積層板は、プリプレグの表面(片面又は両面)に銅箔等の金属箔を重ねて加熱加圧することにより製造される。
【0003】
電気絶縁性を有する樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等のような熱硬化性樹脂が広く用いられる。また、フッ素樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂等のような熱可塑性樹脂が用いられることもある。 一方、パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末機器の普及に伴って、これらに搭載される印刷回路板は小型化、高密度化が進んでいる。その実装形態はピン挿入型から表面実装型、さらにはプラスチック基板を使用したBGA(ボールグリッドアレイ)に代表されるエリアアレイ型へと進んでいる。
【0004】
このBGAのようなベアチップを直接実装する基板では、チップと基板の接続は、熱超音波圧着によるワイヤボンディングで行うのが一般的である。このため、ベアチップを実装する基板は150℃以上の高温にさらされることになり、電気絶縁性樹脂にはある程度の耐熱性が必要となる。
【0005】
さらに、このような基板では、一度実装したチップを外す、いわゆるリペア性も要求される場合がある。この場合には、チップ実装時と同程度の熱がかけられ、また、基板にはその後再度チップ実装が施されることになり、さらに熱処理が行われることになる。したがって、リペア性の要求される基板では、高温でのサイクル的な耐熱衝撃性も要求される。そして、従来の絶縁性樹脂では、繊維基材と樹脂の間で剥離が生じる場合があった。
【0006】
そこで、印刷回路板において、耐熱衝撃性、耐リフロー性、耐クラック性に加え、微細配線形成性を向上させるために、繊維基材にポリアミドイミドを必須成分とする樹脂組成物を含浸したプリプレグが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、シリコーン変性ポリイミド樹脂と熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物を繊維基材に含浸させた耐熱性の基材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
さらに、電子機器の小型化、高性能化に伴い印刷回路板における微細化が進んでいるため、最近では回路形成法としてセミアディティブ法が一般化している。セミアディティブ法は、金属からなる薄膜の給電層上に所定パターンの電解めっきを施した後、給電層をエッチングにより除去して回路パターンを形成する方法である。このセミアディティブ法では、上述の給電層が薄く平坦になるほど、より微細な回路パターンを形成できる。
【0008】
給電層は通常無電解めっきにより形成されるが、極薄の銅箔を給電層として用いることも可能である。しかし、それらよりも表面の平滑性に優れる点から、スパッタ法により形成される給電層が好適に用いられる。例えば非特許文献1によると、ポリイミドフィルムの表面にスパッタ法により銅からなる給電層を形成する方法が開示されている。この方法によると、ライン幅が10μm以下の銅回路パターンが形成される旨、非特許文献1に記載されている。
【0009】
ところで、ポリイミドをベースとするフレキシブル基板として、一般に、ポリイミドフィルム及び銅箔が直接積層された2層タイプのものと、ポリイミドフィルム及び銅箔が接着剤からなる接着層により貼り合わされた3層タイプのものとが用いられている。このうち2層タイプのフレキシブル基板は、銅箔の表面にポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含有するペーストを所定の厚みに塗布して、これを硬化することにより得られる。ところが、その硬化の際には300〜400℃程度の高温で加熱処理する必要がある。
【0010】
また、通常ポリイミド及び銅間の接着性が低いため、上記銅箔としては表面に微細な凹凸形状を設けた所謂粗化銅箔が採用される。フレキシブル基板から回路パターンを形成する場合、従来銅箔を所定の形状にエッチングして回路パターンを形成するサブトラクティブ法が用いられている。しかし、上述の粗化銅箔からサブトラクティブ法により微細な回路パターンを形成しようとすると、粗化銅箔表面の凹凸形状に起因する回路の断線が発生しやすくなる。
【0011】
かかる回路の断線を防止できるフレキシブル基板として、ポリイミドフィルムの表面上にスパッタ法によりニッケル、クロム等の金属層を積層し、更にその上からスパッタ法により銅を積層して得られる2層タイプのものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この技術によると、ポリイミドフィルム及び銅層間の接着性は、銅箔にポリアミック酸を含有するペーストを塗布して得られる2層タイプのものよりも劣っているが、ポリイミドフィルムと銅層との界面が極めて平坦であるため、微細な回路を形成するには適しているとされている。
【特許文献1】特開2003−55486号公報
【特許文献2】特開平8−193139号公報
【特許文献3】特公昭57−33718号公報
【非特許文献1】杉本榮一監修、「図解プリント配線板材料最前線」、株式会社工業調査会、2005年1月15日発行、第154頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ポリイミドフィルムの表面上にスパッタ法で金属層を形成する場合、ポリイミドフィルムを減圧下等の金属層を形成するために必要な条件下に晒すことになる。しかしながら、ポリイミドフィルムをそのような条件下に晒すことは、ポリイミドフィルムの材料コスト及び金属層形成時の歩留を考慮すると、生産コストが高くなり量産性に適していない。また、金属層を形成する際、その基板となるフィルムは高温に加熱される。そのため、ポリイミドフィルム以外の材料からなる従来のフレキシブル基板用のフィルムを、金属層形成用の基板に適用することはできない。
【0013】
さらには、ポリイミドは実質的に軟化点を有しないため、加熱加圧による成形は極めて困難である。そのため、上述のフレキシブル基板を用いて多層配線板を形成することは実質的に不可能である。また、ポリイミドフィルムに代えて、加熱により流動性が発現する樹脂のフィルムを用いて多層配線板を形成する方法が考えられる。しかしながら、そのような樹脂は、そもそもスパッタ法により金属層を形成する際の加熱に耐えることはできない。
【0014】
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、微細な回路パターンを十分良好に形成可能であり、かつ、金属層を形成する際にポリイミドフィルムを用いる必要のない樹脂付き金属薄膜、これを用いた印刷回路板及びその製造方法、並びに多層配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、支持体と、該支持体上に蒸着法により形成された第1の金属層と、該第1の金属層上に形成された第2の金属層と、該第2の金属層上に形成された絶縁性の樹脂組成物からなる樹脂層とを備える樹脂付き金属薄膜を提供する。
【0016】
また、本発明は、上記樹脂付き金属薄膜から支持体を除去する工程と、除去する工程を経て露出した第1の金属層上に、第1に金属層及び第2の金属層を給電層としてセミアディティブ法により第3の金属層を形成して回路を得る工程とを有する印刷回路板の製造方法を提供する。
【0017】
この製造方法によって得られる本発明の印刷回路板は、絶縁性の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層と、該絶縁層上に設けられた回路であって、パターン化された第2の金属層と、該第2の金属層上に設けられ、蒸着法により形成されパターン化された第1の金属層と、該第1の金属層上に設けられたパターン化された第3の金属層と、を有する前記回路とを備える印刷回路板である。
【0018】
さらに、本発明は、可とう性を有する基板とその基板の主面上に設けられた第1の回路とを備えるフレキシブル回路基板を準備する工程と、フレキシブル回路基板上に、上記樹脂付き金属薄膜を、基板及び第1の回路の表面と樹脂層の表面とが接するように積層する工程と、樹脂付き金属薄膜から支持体を除去する工程と、除去する工程を経て露出した第1の金属層上に、第1に金属層及び第2の金属層を給電層としてセミアディティブ法により第3の金属層を形成して第2の回路を得る工程と、第1の回路と第2の回路とを電気的に接続する工程とを有する多層配線板の製造方法を提供する。
【0019】
この製造方法によって得られる本発明の多層配線板は、可とう性を有する基板と、該基板の主面上に設けられた第1の回路と、基板及び第1の回路上に設けられ、絶縁性の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層と、該絶縁層上に設けられた第2の回路であって、パターン化された第2の金属層と、該第2の金属層上に設けられ、蒸着法により形成されパターン化された第1の金属層と、該第1の金属層上に設けられたパターン化された第3の金属層とを有する第2の回路と、第1の回路と第2の回路とを電気的に接続する接続部とを備えるものである。
【0020】
上述の本発明において、樹脂付き金属薄膜を構成する支持体は、第1の金属層を形成する際にその蒸着用の基板として機能する。そして、この支持体は、印刷回路板及び多層配線板を製造する際に、樹脂付き金属薄膜から除去される。したがって、この支持体は印刷回路板及び多層配線板の絶縁層として機能するものではない。そのような絶縁層として機能するのは、絶縁性の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層(樹脂付き金属薄膜における樹脂層の硬化物)である。よって、本発明によれば、第1の金属層を形成する際にポリイミドフィルムを用いる必要はない。その結果、支持体に比較的安価なフィルムを採用すれば、従来よりも安価に樹脂付き金属薄膜、印刷回路板及び多層配線板を製造することができる。
【0021】
また、印刷回路板における回路及び多層配線板における第2の回路は、粗化銅箔から形成されるのではなく、その第1の金属層上にセミアディティブ法により第3の金属層を設けることで形成されるものである。したがって、粗化銅箔をエッチングするサブトラクティブ法により回路パターンを形成する従来の方法と比較して、より微細な回路パターンを十分良好に形成することができる。
【0022】
さらには、絶縁層を構成する樹脂としてポリイミド樹脂を採用する必要はなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂を適用することも可能となる。これにより、印刷回路板及び多層配線板の用途は、従来の樹脂付き金属箔を用いて形成したものよりも広範に亘るようになる。
【0023】
なお、上述の樹脂付き金属薄膜において樹脂層は硬化していないため、この本発明の樹脂付き金属薄膜は印刷回路板及び多層配線板の製造に好適に用いることが可能である。
【0024】
本発明によると、第1の金属層を蒸着法により形成しているため、従来よりも薄型の印刷回路板及び多層配線板を提供することができる。また、それらを製造する際の設計裕度を従来よりも高くすることが可能となるばかりでなく、耐熱性にも優れた印刷回路板及び多層配線板を製造することができる。
【0025】
上述の本発明において、第1の金属層が0.01〜0.5μmの厚みを有するものであると好適である。また、第2の金属層が0.1〜2.0μmの厚みを有するものであると好ましい。これらにより、多層配線板及び必要に応じて印刷回路板に備えられる可とう性を有する基板に基づく折り曲げ性の低下を最小限にとどめて回路パターンを形成することができる。また、かかる厚みを有することにより、第1及び第2の金属層は、セミアディティブ法で回路を形成する際に、より良好に給電層として機能することができ、かつ所望通りの形状を有する回路パターンを形成可能となる。
【0026】
本発明において、第1の金属層が銅を含有することが好ましい。また、第2の金属層が銅を含有すると好適である。これらの金属層は、回路を形成する際に給電層として更に良好に機能することができる。
【0027】
また、上述の樹脂層が70μm以下の厚みを有すると好ましい。これにより、より十分な折り曲げ性を確保することができる。
【0028】
また、樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物であると、耐熱性に一層優れるため好適である。この熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有すると、耐熱性及び絶縁性を向上することができるので好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物がアクリル樹脂を含有すると、耐熱性及び柔軟性に一層優れる樹脂組成物を得ることができ、印刷回路板及び多層配線板の折り曲げ性を向上することができるので好適である。
【0029】
また、熱硬化性樹脂組成物が、下記一般式(1)で表される構造を有するポリアミドイミド樹脂を含有することが好ましい。このようなポリアミドイミド樹脂を用いることにより、金属薄膜又は回路と樹脂層又は絶縁層との間のより高い接着性、並びに樹脂層及び絶縁層のより高い耐熱性が得られる。
【0030】
【化1】

【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、微細な回路パターンを十分良好に形成可能であり、かつ、金属層を形成する際にポリイミドフィルムを用いる必要のない樹脂付き金属薄膜、これを用いた印刷回路板及びその製造方法、並びに多層配線板及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0033】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る樹脂付き金属薄膜を模式的に示す断面図である。樹脂付き金属薄膜100は、支持体1と、該支持体上に蒸着法により形成された第1の金属層2と、該第1の金属層2上に形成された第2の金属層3と、該第2の金属層3上に形成された絶縁性の樹脂組成物からなる樹脂層4とを備えるものである。支持体1、第1の金属層2及び第2の金属層3は、樹脂層4を形成する際の基材110としても用いられる。
【0034】
支持体1は、その上に金属の蒸着を施せるものであれば特に制限はなく、後述する樹脂層4とは異なる材料で構成されていると好適である。より具体的には、支持体1は、可とう性を有する有機材料を主成分として含むフィルムであると好ましく、樹脂組成物を硬化させたフィルムであると好ましい。このようなフィルムは、樹脂付き金属薄膜100から剥離除去することが容易である。以上の観点から、支持体1としてはポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム及びポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムが特に好ましい。
【0035】
支持体1としてPETフィルムを採用する場合、その厚みは10〜100μmであると好ましく、30〜60μmであるとより好ましい。この厚みが10μmを下回ると金属の蒸着に対する耐性が低下する傾向にある。また、この厚みが100μmを超えると可とう性が低下するため、樹脂付き金属薄膜から支持体1を剥離除去することが困難となる傾向にある。
【0036】
第1の金属層2は、上記支持体1を基板として、その上に蒸着法により形成されるものである。第1の金属層2は、後述の第2の金属層3と支持体1とを剥離する際の離型層として機能すると共に、後述のセミアディティブ工程の際には電解めっきの給電層としても機能する。第1の金属層2を構成する金属としては、上記離型層及び給電層として機能できるものであれば特に限定されず、例えばニッケル、アルミニウム及び銅が挙げられる。これらの金属は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらのうち、第1の金属層2を構成する金属としては、離型層及び給電層としてより有効に機能する観点、並びに印刷回路板及び多層配線板を作製する際のエッチングにより容易に除去できる観点から、銅が好ましい。
【0037】
第1の金属層2を形成する方法は蒸着法であれば特に限定されないが、物理的蒸着法が好ましい。物理的蒸着法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングが挙げられる。
【0038】
第1の金属層2の厚みは、離型層として機能できる厚みであればよく、0.01〜0.5μmであると好ましく、0.01〜0.05μmであるとより好ましい。この厚みが0.01μm未満であると支持体1との離型性が確保し難くなる傾向にある。また、この厚みが0.5μmを超えると回路成形性が低下する傾向にある。
【0039】
第2の金属層3は、後述のセミアディティブ工程の際に電解めっきの給電層として機能するものである。したがって、第2の金属層3を構成する金属は電解めっきの給電層として機能できるものであれば特に限定されない。ただし、給電層としてより有効に機能する観点、並びに印刷回路板及び多層配線板を作製する際のエッチングにより容易に除去できる観点から、第2の金属層3を構成する金属が銅であると好適である。
【0040】
第2の金属層3は第1の金属層2上に形成される。その形成方法は、物理的蒸着法であると好ましい。物理的蒸着法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングが挙げられ、これらの中では、優れた成膜性及び低コストの観点から、スパッタリングが好ましい。
【0041】
第2の金属層3の厚みは、給電層として機能できる厚みであればよく、0.1〜2.0μmであると好ましい。この厚みが0.1μm未満であると、セミアディティブ工程の際に給電層として機能し難くなる傾向にある。これは、第2の金属層3の一部が十分に成膜されていないために、第2の金属層3における電気抵抗が高くなるためと推測される。また、この厚みが2.0μmを超えると微細な回路パターンの形成が困難になる傾向にある。
【0042】
樹脂層4は絶縁性の樹脂組成物からなるものである。絶縁性の樹脂組成物は、印刷回路板や多層配線板を作製する際に耐熱性を要する点から、熱硬化性樹脂組成物であると好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、加熱により硬化して絶縁性の硬化物を形成する。熱硬化性樹脂組成物は、架橋性の官能基を有する熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。そのような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂及びフェノール樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0043】
熱硬化性樹脂は、グリシジル基を有する樹脂であると好ましく、エポキシ樹脂であるとより好ましい。エポキシ樹脂を用いることにより、熱硬化性樹脂組成物を180℃以下の温度で硬化することが可能であり、形成される硬化物の熱的、機械的、電気的特性が特に優れたものとなる。
【0044】
また、エポキシ樹脂は2個以上のグリシジル基を有することが好ましい。グリシジル基は多いほどよく、3個以上であればさらに好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、オルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂等の多価フェノール又は1,4−ブタンジオール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、アミン、アミド又は複素環式窒素塩基を有する化合物のN−グリシジル誘導体、脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
【0045】
エポキシ樹脂を用いる場合、その硬化剤を組み合わせて用いることが好ましい。また、硬化促進剤を用いてもよい。エポキシ樹脂が有するグリシジル基の数が多いほど、硬化剤及び硬化促進剤の配合量を少なくすることができる。
【0046】
エポキシ樹脂の硬化剤及び硬化促進剤は、エポキシ樹脂と反応するもの、または、エポキシ樹脂の硬化を促進させるものであれば制限なく用いられる。例えば、アミン類、イミダゾール類、多官能フェノール類、酸無水物類等が使用できる。アミン類として、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等がある。多官能フェノール類としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA及びこれらのハロゲン化合物、さらにホルムアルデヒドとの縮合物であるノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などがある。酸無水物類としては、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等がある。硬化促進剤としては、イミダゾール類としてアルキル基置換イミダゾール、ベンゾイミダゾール等が使用できる。
【0047】
硬化剤または硬化促進剤の量は、アミン類の場合は、アミンの活性水素の当量と、エポキシ樹脂のエポキシ当量がほぼ等しくなる量であることが好ましい。硬化促進剤であるイミダゾールの場合は、単純に活性水素との当量比とならず、経験的にエポキシ樹脂300重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましい。多官能フェノール類や酸無水物類の場合、エポキシ樹脂1当量に対して、フェノール性水酸基やカルボキシル基0.6〜1.2当量が好ましい。硬化剤または硬化促進剤の量は、少なければ未硬化のエポキシ樹脂が残り、Tg(ガラス転移温度)が低くなり、多すぎると、未反応の硬化剤及び硬化促進剤が残り、硬化物の絶縁性が低下する傾向にある。
【0048】
また、熱硬化性樹脂組成物は可とう性や耐熱性の向上を目的に高分子量の樹脂成分を含有してもよい。そのような高分子量の樹脂成分としては、例えばアクリル樹脂及びポリアミドイミド樹脂が挙げられる。
【0049】
アクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸モノマ、メタクリル酸モノマ、アクリロニトリル、グリシジル基を有するアクリルモノマなどを単独で重合した重合物、又はこれらを複数共重合した共重合物を使用することができる。アクリル樹脂の分子量は、特に規定されるものではないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量で、30万〜100万のものが好ましく、40万〜80万のものがより好ましい。
【0050】
これらのアクリル樹脂に、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を適宜加えて使用することが好ましい。なお、アクリル樹脂として、HTR−860−P3(ナガセケムテックス社製、商品名、重量平均分子量85万)、HM6−1M50(ナガセケムテックス社製、商品名、重量平均分子量50万)等が例示できる。
【0051】
ポリアミドイミド樹脂は、上記一般式(1)で表される構造、より具体的には下記一般式(2)で表される構造を主鎖中に含むことが好ましい。
【化2】

【0052】
上記特定構造を含むポリアミドイミド樹脂を用いることにより、金属薄膜又は回路と樹脂層又は絶縁層との間のより高い接着性、並びに樹脂層及び絶縁層のより高い耐熱性が得られる。
【0053】
式(1)又は(2)の構造を含むポリアミドイミド樹脂は、例えば、下記一般式(3)で表される脂環式ジアミンを含むジアミンと無水トリメリット酸とを反応させてジイミドジカルボン酸を生成させるステップと、ジイミドジカルボン酸とジイソシアネートとを反応させてアミド基を生成させてポリアミドイミド樹脂を得るステップと、を備える方法により得られる。ジイミドジカルボン酸は、2つのイミド基及び2つのカルボキシル基を有する化合物である。
【化3】

式(3)の脂環式ジアミンは、例えばワンダミンHM(新日本理化株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0054】
無水トリメリット酸と反応させるジアミンは、式(3)の脂環式ジアミンの他に、芳香族環を2個以上有する芳香族ジアミン及びシロキサンジアミンを含むことが好ましい。この場合、式(3)の脂環式ジアミンの量aと芳香族ジアミン及びシロキサンジアミンの合計量bとの混合比率(モル比)は、好ましくはa/b=0.1/99.9〜99.9/0.1、より好ましくはa/b=10/90〜50/50、更に好ましくはa/b=20/80〜40/60の範囲内である。
【0055】
上記芳香族ジアミンとしては、例えば2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルホニル−ビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテルがある。
【0056】
上記シロキサンジアミンとしては、例えば下記一般式(11)、(12)、(13)又は(14)で表されるものがある。これら式中、n及びmはそれぞれ独立に正の整数を示す。
【0057】
【化4】

【0058】
式(11)で表されるシロキサンジアミンとしては、KF−8010(アミン当量450、信越化学工業株式会社製)、BY16−853(アミン当量650、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)が例示できる。式(12)で表されるシロキサンジアミンとしては、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業株式会社製)が例示できる。
【0059】
ジアミンとして脂肪族ジアミンを用いてもよい。脂肪族ジアミンとしては、例えば下記一般式(5)で表される化合物がある。
【化5】

【0060】
式(5)中、Xはメチレン基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、pは1〜50の整数を示す。R及びRとしてのアルキル基は炭素数が1〜3であることが好ましい。フェニル基が有する置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子が例示できる。低弾性率及び高Tgの両立の観点から、式(5)におけるXはオキシ基であることが好ましい。このような脂肪族ジアミンの具体例としては、ジェファーミンD−400(アミン当量200)、ジェファーミンD−2000(アミン当量1000)が例示できる。
【0061】
ジイミドジカルボン酸と反応させるジイソシアネートは、例えば下記一般式(6)で表される。
OCN−R−NCO (6)
【0062】
式(6)中、Rは少なくとも1つの芳香環を有する2価の有機基、又は、2価の脂肪族炭化水素基を示す。式(6)のジイソシアネートは、Rが芳香環を有する2価の有機基であるとき芳香族ジイソシアネートであり、Rが2価の脂肪族炭化水素基であるとき脂肪族ジイソシアネートである。ジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましい。この場合、芳香族ジイソシアネートと、脂肪族ジイソシアネートとを併用することがより好ましい。
【0063】
芳香環を有する2価の有機基の好ましい例としては、−C−CH−C−で表される基、トリレン基及びナフチレン基がある。2価の脂肪族炭化水素基の好ましい例としては、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基及びイソホロン基がある。
【0064】
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマーが例示できる。これらの中でもMDIが特に好ましい。MDIを用いることにより、得られるポリアミドイミド樹脂の可撓性をより向上させることができる。
【0065】
脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが例示できる。 芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートを併用する場合は、脂肪族ジイソシアネートを芳香族ジイソシアネートに対して5〜10モル%程度添加することが好ましく、かかる併用により、得られるポリアミドイミド樹脂の耐熱性を更に向上させることができる。
【0066】
熱硬化性樹脂組成物は、難燃性の向上を目的に添加型の難燃剤を含んでいてもよい。添加型の難燃剤としてはリンを含有するフィラーが好ましい。リンを含有するフィラーとしては、OP930(クラリアント社製商品名、リン含有量23.5%)、HCA−HQ(三光社製商品名、リン含有量9.6%)、ポリリン酸メラミンPMP−300(リン含有量13.8%)PMP−200(リン含有量9.3%)PMP−300(リン含有量9.8%)(以上、日産化学社製商品名)等が挙げられる。
【0067】
樹脂層4の厚みは70μm以下であることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましい。この厚みが70μmを超えると、樹脂付き金属薄膜100を用いて作製される印刷回路板及び多層配線板の可とう性が低下する傾向にある。また、樹脂層4の厚みが10μm未満であると、多層化した際に内層基板に施した回路パターンの埋め込み性が低下する傾向にある。
【0068】
樹脂層4は、例えば、下記のようにして得られる。まず、樹脂組成物に含まれる上述の各成分を、有機溶媒中で混合、溶解、分散して、樹脂ワニスを作製する。有機溶媒としては、樹脂を溶解できるものであればよく、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチルラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン等を用いることができる。
【0069】
次いで、作製した樹脂ワニスを第2の金属層3上に塗布する。その後、例えば80℃〜180℃で加熱して有機溶媒の一部又は全部を除去することにより、樹脂層4が得られる。加熱時間は樹脂ワニスのゲル化時間との兼ね合いで設定することができる。樹脂ワニスの製造に使用した有機溶剤は80質量%以上揮発除去されていることが好ましい。また、樹脂層4は、樹脂ワニスが半硬化のBステージ状態であることが好ましいが、硬化したCステージ状態でもよい。なお、有機溶媒の一部又は全部を除去した後の樹脂層4の厚みは70μm以下であると好ましく、10〜60μmであることがより好ましい。
【0070】
次に上記樹脂付き金属薄膜100を用いた印刷回路板及びその製造方法について説明する。図2は、本発明の好適な実施形態に係る印刷回路板の製造方法を示す概略工程図である。本実施形態の印刷回路板の製造方法は、本発明に係る樹脂付き金属薄膜を準備する金属薄膜準備工程と、フレキシブル回路基板(以下、「FPC」という。)を準備するFPC準備工程と、FPC上に樹脂付き金属薄膜を積層して積層体を得る積層工程と、樹脂付き金属薄膜から支持体を除去する支持体除去工程と、セミアディティブ法により回路を形成するセミアディティブ工程とを有する。セミアディティブ工程は、更に、積層体上にレジストパターンを形成するレジスト形成工程と、回路パターンを形成する回路形成工程と、レジストパターンを除去するレジスト除去工程と、レジスト除去工程の後にエッチングを行うエッチング工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0071】
まず、金属薄膜準備工程では、上述の樹脂付き金属薄膜100を準備する(図2(a)参照)。なお、図2(a)では、図1における樹脂付き金属薄膜100を上下逆にして示している。
【0072】
また、金属薄膜準備工程と同時にFPC準備工程において、FPC200を準備する(図2(a)参照)。FPC200は、可とう性を有する基板6とその基板6の一方の主面上に設けられた第1の回路5とを備えるものである。このようなFPC200は、常法により作製したり、市販のものを入手したりすることができる。例えば、ユーピレックス(宇部興産社製、商品名)、カプトン(東レ・デュポン社製)などの可とう性フィルム上に、又は、繊維基材に樹脂を含浸して作製される可とう性を有する基板上に銅箔等の金属箔を積層し、それにより得られた金属箔付き絶縁板に回路加工を施すことで作製してもよい。
【0073】
次いで、積層工程において、FPC200上に樹脂付き金属薄膜100を積層して積層体300を得る(図2(b)参照)。この際、まず、FPC200の基板6及び第1の回路5と、樹脂付き金属薄膜100の樹脂層4とが接するようにして、それらを配置する。次に、プレス、ロールラミネート、プレスラミネート等の方法により、樹脂付き金属薄膜100及びFPC200を互いに密着させる。この密着の際又は密着の後、必要に応じて加熱処理を施すことで、樹脂層4を硬化させて、その硬化物からなる絶縁層10を形成する。
【0074】
続いて、支持体除去工程において、上述の積層体300から支持体1を剥離除去する。これにより第1の金属層2の表面が露出する。
【0075】
次に、レジスト形成工程において、第1の金属層2の表面上に所定のパターンを有するレジストパターン7を形成する(図2(c)参照)。レジストパターン7の形成には、フォトリソグラフィ等の公知のパターン形成方法を採用することができる。このレジスト形成工程を経ることで、第1の金属層2の表面は、一部がレジストパターン7で被覆され、その他の部分は露出した状態となる。なお、レジスト材料は、電解めっき用のレジスト材料であると好ましい。
【0076】
次いで、回路形成工程において、第1の金属層2の表面の露出した部分に電解めっきを施す。これにより、回路パターン8が形成される(図2(d)参照)。電解めっきは公知の方法を採用することができ、第1の金属層2及び第2の金属層3がその給電層として機能する。電解めっきにより形成される回路パターン8の材料は、公知のものであればよく、例えば銅、はんだ、ニッケル、ロジウム及び金などの金属が挙げられる。これらの中では、印刷回路板の導体材料として一般的に用いられている観点から銅が好適である。
【0077】
回路パターン8の厚みは3〜40μmであると好ましく、5〜20μmであるとより好ましい。この厚みが40μmを超えると、微細な回路パターン8の形成が困難になる傾向にある。また、この厚みが3μm未満であると、その後のエッチング工程において回路パターン8が容易に除去されてしまう傾向にある。
【0078】
その後、レジスト除去工程において、レジストパターン7を除去する(図2(e)参照)。レジストパターン7の除去方法は、公知の方法であればよく、例えばメチレンクロライド等の有機溶剤による除去、並びに、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液による除去が挙げられる。これにより、レジストパターン7で被覆されていた第1の金属層2の表面が露出する。
【0079】
次いで、エッチング工程においてエッチング処理を行い、印刷回路板700を得る(図2(f)参照)。エッチング方法は、スプレーエッチング等の公知の方法であればよい。また、エッチング処理に用いるエッチング液は、第1の金属層2及び第2の金属層3を構成する金属を溶解可能なエッチング液であれば特に限定されない。これにより、レジスト除去工程を経て露出した第1の金属層2の表面側から、第1の金属層2及び第2の金属層3の一部が除去される。また、エッチング処理に先立ち、後述する第2の回路15となるべき部分を公知のエッチング用レジストで被覆すると好ましい。
【0080】
こうして得られた印刷回路板700は、可とう性を有する基板6と、第1の回路5と、絶縁性の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層10と、該絶縁層10上に設けられた回路であって、パターン化された第2の金属層3と、該第2の金属層3上に設けられ、第2の金属層3と同様のパターンにパターン化された第1の金属層2と、該第1の金属層2上に設けられ、第2の金属層3及び第1の金属層2と同様にパターン化された第3の金属層8とを有する第2の回路15とをこの順で積層して構成される。
【0081】
次に上記樹脂付き金属薄膜100を用いた多層配線板及びその製造方法について説明する。図3、4は、本発明の好適な実施形態に係る多層配線板の製造方法を示す概略工程図である。本実施形態の多層配線板の製造方法は、本発明に係る樹脂付き金属薄膜を準備する金属薄膜準備工程と、FPCを準備するFPC準備工程と、FPCを挟むようにして樹脂付き金属薄膜を積層して積層体を得る積層工程と、回路間を接続する回路接続工程と、樹脂付き金属薄膜から支持体を除去する支持体除去工程と、セミアディティブ法により回路を形成するセミアディティブ工程と、を有する。セミアディティブ工程は、更に、積層体上にレジストパターンを形成するレジスト形成工程と、回路パターンを形成する回路形成工程と、レジストパターンを除去するレジスト除去工程と、レジスト除去工程の後にエッチングを行うエッチング工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0082】
まず、金属薄膜準備工程では、上述の樹脂付き金属薄膜100を2枚準備する(図3(a)参照)。また、金属薄膜準備工程と同時にFPC準備工程において、FPC800を準備する(図3(a)参照)。FPC800は、可とう性を有する基板6とその基板6の両主面側に設けられた第1の回路5とを備えるものである。このようなFPC800は、上述のFPC200と同様に、常法により作製したり、市販のものを入手したりすることができる。
【0083】
次いで、積層工程において、FPC800をその両主面側から挟むようにして2枚の樹脂付き金属薄膜100を積層して積層体900を得る(図3(b)参照)。この際、まず、FPC800の基板6及びその両主面側の第1の回路5と、それぞれの樹脂付き金属薄膜100の樹脂層4とが接するようにして、それらを配置する。次に、プレス、ロールラミネート、プレスラミネート等の方法により、2枚の樹脂付き金属薄膜100及びFPC800を互いに密着させる。この密着の際又は密着の後、必要に応じて加熱処理を施すことで、樹脂層4を硬化させて、その硬化物からなる絶縁層10を形成する。
【0084】
次に、回路接続工程において、まず、積層体900の両支持体1側から、所定の第1の回路5が露出するように穴あけを行う(図3(c)参照)。穴あけは公知のレーザーを用いて行えばよい。これにより、孔18が形成され、所定の第1の回路5が露出すると共に、第1の金属層2及び第2の金属層3の一部も露出する。続いて、穴あけ後の積層体900の両支持体1側から無電解めっきを行う(図3(d)参照)。無電解めっきは公知の方法を採用することができる。無電解めっき液としては、例えば銅、ニッケル、錫、金などの無電解めっき液が挙げられる。また、還元剤としてはホルムアルデヒド、次亜リン酸イオン、ヒドラジンなどが挙げられる。これにより、無電解めっき膜9が支持体1の表面、孔18の内壁及び第1の回路5の表面に形成され、第1の回路5と第1の金属層2及び第2の金属層3とが電気的に接続される。第1の金属層2及び第2の金属層3は、後工程で第2の回路15を構成するため、この回路接続工程を経て、第1の回路5及び第2の回路15が電気的に接続されることになる。
【0085】
次いで、支持体除去工程において、支持体1を剥離除去する(図4(a)参照)。これにより第1の金属層2の表面が露出する。また、支持体1の表面に形成されていた無電解めっき膜9も併せて除去される。そのため、無電解めっき膜9は孔18の内壁及び第1の回路5の表面に残存する。
【0086】
そして、セミアディティブ工程において、支持体1を除去した後の積層体910の両主面側から、上述の印刷回路板700を製造する場合と同様にして、セミアディティブ法により第2の回路15を形成する(図4(b)参照)。こうして得られた多層配線板50は、可とう性を有する内層基板6を両主面側から挟むようにして、第1の回路5と、絶縁性の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層10と、該絶縁層10上に設けられた回路であって、パターン化された第2の金属層3と、該第2の金属層3上に設けられ、第2の金属層3と同様のパターンにパターン化された第1の金属層2と、該第1の金属層2上に設けられ、第2の金属層3及び第1の金属層2と同様にパターン化された第3の金属層8とを有する第2の回路15とをこの順で積層して構成される。また、多層配線板50は、第1の回路5の一部に向かって、両主面側から開けられた孔18を有しており、その孔18の内壁及び第1の回路5の表面に無電解めっき膜9が設けられている。この無電解めっき膜9は、第1の回路5及び第2の回路15を電気的に接続する接続部として機能する。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0088】
例えば、本発明の別の実施形態において、多層配線板は貫通孔を有していてもよい。図5は、本発明の別の実施形態に係る多層配線板の製造方法を示す概略工程図である。この多層配線板の製造方法において、まず、上記好適な実施形態の多層配線板の製造方法と同様にして、積層体900を得る。
【0089】
次いで、回路接続工程において、積層体900の一方の支持体1側から、所定の第1の回路5を経由して貫通するように、積層方向に穴あけを行う(図5(a)参照)。穴あけは公知のドリルを用いて行えばよい。これにより、貫通孔19が形成され、所定の第1の回路5が露出すると共に、第1の金属層2及び第2の金属層3の一部も露出する。続いて、穴あけ後の積層体900の両支持体1側から無電解めっきを行う(図5(b)参照)。無電解めっきの方法、無電解めっき液、還元剤は上記好適な実施形態に係る方法と同様であればよい。これにより、無電解めっき膜29が支持体1の表面、貫通孔19の内壁に形成され、第1の回路5と第1の金属層2及び第2の金属層3とが電気的に接続される。第1の金属層2及び第2の金属層3は、後工程で第2の回路15を構成するため、この回路接続工程を経て、第1の回路5及び第2の回路15が電気的に接続されることになる。
【0090】
次いで、支持体除去工程において、支持体1を剥離除去する(図5(c)参照)。これにより第1の金属層2の表面が露出する。また、支持体1の表面に形成されていた無電解めっき膜29も併せて除去される。そのため、無電解めっき膜29は貫通孔19の内壁に残存する。
【0091】
そして、セミアディティブ工程において、支持体1を除去した後の積層体910の両主面側から、上述の印刷回路板700を製造する場合と同様にして、セミアディティブ法により第2の回路15を形成する。こうして得られた多層配線板60は、可とう性を有する内層基板6を両主面側から挟むようにして、第1の回路5と、絶縁性の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層10と、該絶縁層10上に設けられた回路であって、パターン化された第2の金属層3と、該第2の金属層3上に設けられ、第2の金属層3と同様のパターンにパターン化された第1の金属層2と、該第1の金属層2上に設けられ、第2の金属層3及び第1の金属層2と同様にパターン化された第3の金属層8とを有する第2の回路15とをこの順で積層して構成される。また、多層配線板60は、積層方向に貫通した貫通孔19を有しており、その孔19の内壁に無電解めっき膜29が設けられている。この無電解めっき膜29は、第1の回路5及び第2の回路15を電気的に接続する接続部として機能する。
【0092】
また、更に別の実施形態において、樹脂付き金属薄膜における樹脂層4は以下のようにして形成されてもよい。まず、PETフィルムなどの基材上に上記絶縁性の樹脂組成物を含有する樹脂ワニスを塗布して更に乾燥することにより樹脂膜を形成する。次いで、その樹脂膜を第2の金属層3の表面上に積層することで樹脂層4を得る。
【0093】
上述の印刷回路板100、可とう性を有する基板6と第1の回路5とを含むFPCを備えるものであるが、本発明の印刷回路板はこのFPCを必ずしも備える必要はない。さらには、本発明の樹脂付き金属薄膜をその各部材の積層方向に加熱加圧することで、樹脂層4を絶縁層10に変換してもよい。
【0094】
なおも別の実施形態において、本発明の樹脂付き金属薄膜は第2の金属層と樹脂層との間に更に別の金属層を設けてもよい。この金属層は第2の金属層と樹脂層との間の接着性を向上させることを目的とするものである。この金属層の材料としては例えばニッケルが挙げられる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
(樹脂付き金属薄膜の作製)
上述の支持体に相当する50μmの厚みを有するPETフィルム上に、銅の真空蒸着により第1の金属層に相当する第1の銅層を形成した。この第1の銅層の厚みは0.05μmであった。次いで、その第1の金属層上に、銅のスパッタリングにより第2の金属層に相当する第2の銅層を形成した。この第2の銅層の厚みは0.2μmであった。更に、第2の金属層上に、ニッケルのスパッタリングによりニッケル層を形成した。このニッケル層の厚みは0.01μmであった。こうして、後述の樹脂層を形成するための基材Hを得た。
【0097】
還流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計及び撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコ内に、芳香族環を2個以上有するジアミンであるDDS(ジアミノジフェニルスルホン)12.5g(0.05mol)、シロキサンジアミンである反応性シリコーンオイルKF−8010(信越化学工業社製、商品名、アミン当量430)43.0g(0.05mol)、ジェファーミンD2000(三井化学ファイン社製、商品名、アミン当量1000)74.0g(0.37mol)、上記式(3)で表される脂環式ジアミンであるワンダミンHM(新日本理化社製、商品名)11.3g(0.054mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.42mol)及び非プロトン性極性溶媒であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)589gを仕込み、80℃で2.5分間撹拌した。
【0098】
そして、水と共沸可能な芳香族炭化水素であるトルエン150mLを投入してから温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約7.2mL以上たまっていること、及び水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。
【0099】
その後、反応液を室温(25℃)に戻し、芳香族ジイソシアネートであるMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)55.1g(0.22mol)を投入し、190℃で2時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0100】
得られたポリアミドイミド樹脂のNMP溶液250.0g(樹脂固形分32質量%)とエポキシ樹脂であるEPPN−502H(日本化薬社製、商品名)22.4g(樹脂固形分50質量%のジメチルアセトアミド溶液)及びHP−4023D(大日本インキ社製、商品名)45.6g(樹脂固形分50質量%のジメチルアセトアミド溶液)、並びに2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2gを混合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間室温で静置した。こうして、上記式(1)の構造を有するポリアミドイミド樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物のワニス(樹脂ワニス)を得た。
【0101】
得られた樹脂ワニスを、上記基材Hにおけるニッケル層の表面上に塗布し、150℃で15分間加熱することによって溶媒の一部を揮発除去して、50μmの厚みを有する樹脂層を得た。こうして、樹脂付き金属薄膜Aを完成させた。
【0102】
(多層配線板の作製)
次に、可とう性を有する基板の両主面側に銅箔を積層した銅張積層板であるTC−C−500(日立化成工業社製、商品名、基板の厚み:50μm)を準備し、その両面の銅箔をパターニングして所定パターンの第1の回路を設けたFPCを得た。このFPCの基板及びその両主面側の回路と、2枚の樹脂付き金属薄膜Aの樹脂層とがそれぞれ接するようにして、それらを積層配置した。そして、200℃、90分間、4.0MPaの条件でそれらの積層方向にプレスを行って積層体を得た。
【0103】
次いで、得られた積層体の両支持体側から、所定の第1の回路が露出するように炭酸ガスレーザーを用いて直径100μmの穴あけを行って孔を設けた。次に穴あけ後の積層体の両支持体側から無電解めっきを行って、穴あけにより露出した第1の回路、支持体及び孔の内壁を被覆した、2μmの厚みを有する無電解銅めっき膜を形成した。
【0104】
その後、両側の支持体を剥離除去して露出した第1の金属層の表面に、めっきレジストであるAZ10XT(クラリアント社製、商品名)を15μmの厚みになるようスピンコートにより塗布した。続いて、フォトリソグラフィにより所定のレジストパターンとなるようにめっきレジストを加工した。これにより、第1の金属層の表面が一部露出した。次に、フォトリソグラフィ後の積層体に、第1の金属層及び第2の金属層を給電層として、電解銅めっきを施した。この電解銅めっきは、めっき浴として硫酸銅めっき浴を用い、0.8A/dmの電流密度で行った。これにより、露出していた第1の金属層の表面に、12μmの厚みを有する電解銅めっき膜が形成された。
【0105】
次いで、めっきレジストを除去し、それにより露出した第1の金属層の表面から、エッチング液である硝酸/過酸化水素を用いてエッチング処理し、第1の金属層及び第2の金属層の一部を除去した。その後、水洗及び乾燥を行って、図3(f)に示すものと同様に両面に第2の回路を備えた多層配線板を得た。
【0106】
(実施例2)
下記のようにして調製した樹脂ワニスを用いた以外は実施例1と同様にして樹脂付き金属薄膜Bを得た。まず、エポキシ樹脂であるEPICLON153(大日本インキ社製、商品名)340.0g、硬化剤であるFG−2000(帝人化成社製、商品名)181g、及び硬化促進剤である2PZ−CN(四国化成社製、商品名)1.0gを、メチルイソブチルケトン600.0gに溶解した。そこに、アクリル樹脂であるHTR−860−P3(ナガセケムテックス社製、商品名、重量平均分子量:85万、15質量%メチルエチルケトン溶液)287.0gを添加し、1時間撹拌して樹脂ワニスを得た。
【0107】
そして、樹脂付き金属薄膜Aに代えて樹脂付き金属薄膜Bを用い、FPCとして、銅張積層板であるTC−C−100(日立化成工業社製、商品名、基板の厚み:50μm)の両面の銅箔をパターニングして所定パターンの第1の回路を設けたFPCを用いた以外は実施例1と同様にして、多層配線板を得た。
【0108】
(実施例3)
まず、可とう性を有するポリイミドフィルム(宇部興産社製、商品名「ユーピレックス」)の両主面に銅箔を接着剤により貼り合わせた銅張基板を準備した。この銅張基板の両主面側にエッチングレジストであるMIT−215(日本合成モートン社製、商品名)を15μmの厚みになるようラミネートした。続いて、フォトリソグラフィにより所定のレジストパターンとなるようにエッチングレジストを加工した。これにより、銅箔表面が一部露出した。次に、露出した銅箔表面から、塩化第二鉄系の銅エッチング液を用いてエッチング処理し、銅箔の一部をエッチング処理により除去して所定パターンの回路を得た。その後、水洗及び乾燥を行って、印刷回路板を得た。
【0109】
この印刷回路板をFPCとして用いた以外は実施例1と同様にして、多層配線板を得た。
【0110】
(実施例4)
上述の支持体に相当する50μmの厚みを有するPENフィルム上に、銅の真空蒸着により第1の金属層に相当する第1の銅層を形成した。この銅層の厚みは0.05μmであった。次いで、その第1の金属層上に、銅のスパッタリングにより第2の金属層に相当する第2の銅層を形成した。この第2の銅層の厚みは0.2μmであった。更に、第2の金属層上に、ニッケルのスパッタリングによりニッケル層を形成した。このニッケル層の厚みは0.01μmであった。こうして、後述の樹脂層を形成するための基材Iを得た。
【0111】
次いで、実施例1と同様にして得られた樹脂ワニスを、上記基材Iにおけるニッケル層の表面上に塗布し、150℃で15分間加熱することによって溶媒の一部を揮発除去して、50μmの厚みを有する樹脂層を得た。こうして、樹脂付き金属薄膜Cを完成させた。
【0112】
その後、樹脂付き金属薄膜Aに代えて樹脂付き金属薄膜Cを用いた以外は実施例1と同様にして、多層配線板を得た。
【0113】
(実施例5)
上述の支持体に相当する50μmの厚みを有するPETフィルム上に、ニッケルの真空蒸着により第1の金属層に相当する第1のニッケル層を形成した。この第1のニッケル層の厚みは0.05μmであった。次いで、その第1の金属層上に、銅のスパッタリングにより第2の金属層に相当する銅層を形成した。この銅層の厚みは0.2μmであった。更に、第2の金属層上に、ニッケルのスパッタリングにより第2のニッケル層を形成した。この第2のニッケル層の厚みは0.01μmであった。こうして、後述の樹脂層を形成するための基材Jを得た。
【0114】
次いで、実施例1と同様にして得られた樹脂ワニスを、上記基材Jにおける第2のニッケル層の表面上に塗布し、150℃で15分間加熱することによって溶媒の一部を揮発除去して、50μmの厚みを有する樹脂層を得た。こうして、樹脂付き金属薄膜Dを完成させた。
【0115】
その後、樹脂付き金属薄膜Aに代えて樹脂付き金属薄膜Dを用いた以外は実施例1と同様にして、多層配線板を得た。
【0116】
(実施例6)
上述の支持体に相当する50μmの厚みを有するPETフィルム上に、銅の真空蒸着により第1の金属層に相当する第1の銅層を形成した。この第1の銅層の厚みは0.01μmであった。次いで、その第1の金属層上に、銅のスパッタリングにより第2の金属層に相当する第2の銅層を形成した。この第2の銅層の厚みは0.15μmであった。更に、第2の金属層上に、ニッケルのスパッタリングによりニッケル層を形成した。このニッケル層の厚みは0.01μmであった。こうして、後述の樹脂層を形成するための基材Kを得た。
【0117】
次いで、実施例1と同様にして得られた樹脂ワニスを、上記基材Kにおけるニッケル層の表面上に塗布し、150℃で15分間加熱することによって溶媒の一部を揮発除去して、50μmの厚みを有する樹脂層を得た。こうして、樹脂付き金属薄膜Eを完成させた。
【0118】
その後、樹脂付き金属薄膜Aに代えて樹脂付き金属薄膜Eを用いた以外は実施例1と同様にして、多層配線板を得た。
【0119】
(実施例7)
まず、樹脂付き金属薄膜Aを、200℃、90分間、4.0MPaの条件で、その積層方向にプレスして、片面金属張積層板を得た。そこからPETフィルムを剥離除去して第1の金属層の表面を露出させた。露出した第1の金属層の表面に、めっきレジストであるAZ10XT(クラリアント社製、商品名)を15μmの厚みになるようスピンコートにより塗布した。続いて、フォトリソグラフィにより所定のレジストパターンとなるようにめっきレジストを加工した。これにより、第1の金属層の表面が一部露出した。次に、フォトリソグラフィ後の積層板に、第1の金属層及び第2の金属層を給電層として、電解銅めっきを施した。この電解銅めっきは、めっき浴として硫酸銅めっき浴を用い、0.8A/dmの電流密度で行った。これにより、露出していた第1の金属層の表面に、12μmの厚みを有する電解銅めっき膜が形成された。
【0120】
次いで、めっきレジストを除去し、それにより露出した第1の金属層の表面から、エッチング液である硝酸/過酸化水素を用いてエッチング処理し、第1の金属層及び第2の金属層の一部を除去した。その後、水洗及び乾燥を行って、片面に第2の回路を備えた印刷回路板を得た。
【0121】
(比較例1)
まず、可とう性を有するポリイミドフィルム(宇部興産社製、商品名「ユーピレックス」)の両主面に銅箔を接着剤により貼り合わせた銅張基板を準備した。この銅張基板の両主面側にエッチングレジストであるMIT−215(日本合成モートン社製、商品名)を15μmの厚みになるようラミネートした。続いて、フォトリソグラフィにより所定のレジストパターンとなるようにエッチングレジストを加工した。これにより、銅箔表面が一部露出した。次に、露出した銅箔表面から、塩化第二鉄系の銅エッチング液を用いてエッチング処理し、銅箔の一部をエッチング処理により除去して所定パターンの回路を得た。その後、水洗及び乾燥を行って、印刷回路板を得た。
【0122】
(比較例2)
上述の支持体に相当する50μmの厚みを有するPETフィルム上に、銅のスパッタリングにより銅層を形成した。この銅層の厚みは0.2μmであった。こうして、後述の樹脂層を形成するための基材Lを得た。
【0123】
次いで、実施例1と同様にして得られた樹脂ワニスを、上記基材Lにおける銅層の表面上に塗布し、150℃で15分間加熱することによって溶媒の一部を揮発除去して、50μmの厚みを有する樹脂層を得た。こうして、樹脂付き金属薄膜Fを完成させた。
【0124】
その後、樹脂付き金属薄膜Aに代えて樹脂付き金属薄膜Fを用いた以外は実施例1と同様にして、多層配線板の作製を試みた。しかし、積層体の両面の支持体であるPETフィルムを剥離除去する際に、PETフィルムと銅層との接着力が強すぎて剥離することができず、回路パターンを形成することはできなかった。
【0125】
得られた実施例1〜6の多層配線板、実施例7及び比較例1の印刷回路板の回路パターンを観察した。その結果、実施例1〜6の多層配線板及び実施例7の印刷回路板は、回路パターンのライン幅/スペース幅が15μm/15μmであっても短絡や断線が認められず、良好な回路パターンを形成可能であった。一方、比較例1の印刷回路板は、回路パターンのライン幅/スペース幅が40μm/40μmで短絡や断線が認められた。
【0126】
また、実施例1〜6の多層配線板及び実施例7の印刷回路板は任意に折り曲げることができた。具体的には、曲率半径1mmのピンに沿って180度折り曲げても、クラックや破断は生じなかった。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る樹脂付き金属薄膜を示す模式断面図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係る印刷回路板の製造方法を概略的に示す工程断面図である。
【図3】本発明の好適な実施形態に係る多層配線板の製造方法を概略的に示す工程断面図である。
【図4】本発明の好適な実施形態に係る多層配線板の製造方法を概略的に示す工程断面図である。
【図5】本発明の別の好適な実施形態に係る多層配線板の製造方法を概略的に示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0128】
1…支持体、2…第1の金属層、3…第2の金属層、4…樹脂層、5…第1の回路、6…可とう性を有する基板、7…レジストパターン、8…回路パターン、9、29…無電解めっき膜、10…絶縁層、15…第2の回路、18…孔、19…貫通孔、100…樹脂付き金属薄膜、50、60…多層配線板、700…印刷回路板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
該支持体上に蒸着法により形成された第1の金属層と、
該第1の金属層上に形成された第2の金属層と、
該第2の金属層上に形成された絶縁性の樹脂組成物からなる樹脂層と、
を備える樹脂付き金属薄膜。
【請求項2】
前記第1の金属層が0.01〜0.5μmの厚みを有するものである、請求項1記載の樹脂付き金属薄膜。
【請求項3】
前記第2の金属層が0.1〜2.0μmの厚みを有するものである、請求項1又は2に記載の樹脂付き金属薄膜。
【請求項4】
前記第1の金属層が銅を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂付き金属薄膜。
【請求項5】
前記第2の金属層が銅を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂付き金属薄膜。
【請求項6】
前記樹脂層が70μm以下の厚みを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂付き金属薄膜。
【請求項7】
前記樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂付き金属薄膜。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有する、請求項7記載の樹脂付き金属薄膜。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂組成物が、下記一般式(1)で表される構造を有するポリアミドイミド樹脂を含有する、請求項7又は8に記載の樹脂付き金属薄膜。
【化1】

【請求項10】
前記熱硬化性樹脂組成物がアクリル樹脂を含有する、請求項7〜9のいずれか一項に記載の樹脂付き金属薄膜。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂付き金属薄膜から前記支持体を除去する工程と、
前記除去する工程を経て露出した前記第1の金属層の表面上に、前記第1の金属層及び前記第2の金属層を給電層としてセミアディティブ法により第3の金属層を形成して回路を得る工程と、
を有する印刷回路板の製造方法。
【請求項12】
絶縁性の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層と、
該絶縁層上に設けられた回路であって、パターン化された第2の金属層と、該第2の金属層上に設けられ、蒸着法により形成されパターン化された第1の金属層と、該第1の金属層上に設けられたパターン化された第3の金属層と、を有する前記回路と、
を備える印刷回路板。
【請求項13】
可とう性を有する基板と前記基板の主面上に設けられた第1の回路と、を備えるフレキシブル回路基板を準備する工程と、
前記フレキシブル回路基板上に、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂付き金属薄膜を、前記基板及び前記第1の回路の表面と前記樹脂層の表面とが接するように積層する工程と、
前記樹脂付き金属薄膜から前記支持体を除去する工程と、
前記除去する工程を経て露出した前記第1の金属層上に、前記第1の金属層及び前記第2の金属層を給電層としてセミアディティブ法により第3の金属層を形成して第2の回路を得る工程と、
前記第1の回路と前記第2の回路とを電気的に接続する工程と、
を有する多層配線板の製造方法。
【請求項14】
可とう性を有する基板と、
該基板の主面上に設けられた第1の回路と、
前記基板及び前記第1の回路上に設けられ、絶縁性の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層と、
該絶縁層上に設けられた第2の回路であって、パターン化された第2の金属層と、該第2の金属層上に設けられ、蒸着法により形成されパターン化された第1の金属層と、該第1の金属層上に設けられたパターン化された第3の金属層と、を有する前記第2の回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路とを電気的に接続する接続部と、
を備える多層配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−201117(P2008−201117A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94701(P2007−94701)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】