説明

車両の制駆動制御装置及び自動運転制御方法

【課題】自動運転の解除時の走行状況に応じて運転者の違和感を緩和する。
【解決手段】自車両の加減速制御を行い少なくともカーブ進入前にカーブを走行可能な目標車速に制御する自動運転制御を備える。その自動運転制御が解除されても、次のカーブまで自車両の減速状態が維持しない状態と推定される場合には、減速制御を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも運転者の意思によって自車両を自動運転制御する車両の制駆動制御装置及び自動運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転制御の技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。この自動運転制御は、先行車がいない場合には設定車速に基づき車速を制御する。一方、先行車が存在する場合には、先行車に追従走行するように自車両の車速を制御する。また、先行車のカーブ進入速度と当該先行車までの距離を記憶しておく。そして、自車両がその記憶した地点に到達したときに、記憶した先行車の速度以下でカーブに進入するように、自車両の速度を制御する。
なお、特許文献2には、車両がカーブを通過できるように支援する運転支援の技術について開示がある。
【特許文献1】特開2007−168788号公報
【特許文献2】特開2007−106170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自動運転状態では、前方がカーブという走行状態の場面では、そのカーブを通過可能な進入速度となるように減速する制御を行う場合がある。そして、そのような制御中に自動運転制御の解除条件を満足する場合がある。このとき、走行路面が下り坂の場合には、自車両をカーブに向けて減速することが好ましい状況であるにも関わらず、そのままでは自車両が加速してしまう。この加速に対し、運転を車両に任せていた運転者は、例えば、ブレーキ操作を行うなどして減速する必要が生じる。このようなカーブ手前で加速する状況は、運転者に違和感を与える。特に、運転者の意志によらないで自動運転が解除された場合に、運転者の違和感は大きくなる。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、自動運転の解除条件を満足しても、走行状況に応じて運転者の違和感を緩和することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、自車両の加減速制御を行い少なくともカーブ進入前にカーブを走行可能な目標車速に自車両を制御する自動運転制御を備える。その自動運転制御の解除条件を満足しても、カーブまで自車両の減速状態が維持しない状態と推定される場合には、減速制御を維持する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、自車両が加速されると推定されるような状況下で、自動運転制御が解除されても、減速状態を維持する。これによって、減速が必要な状況で、自車両が加速することを抑えることが可能となる。
この結果、自動運転の解除条件を満足しても、走行状況に応じて運転者の違和感が出ない若しくは違和感を緩和することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る車両を示す概要構成図である。図2は、制駆動コントローラ50の構成を示すブロック図である。
(構成)
本実施形態の車両は、例えば後輪駆動車(例えばAT車、コンベデフ装着車等)である。制動装置は、前後輪とも左右の制動力(制動液圧)を独立して制御できる構成となっている。なお、本実施形態の制動力制御装置は、このような車両構成を必ずしも前提とするものではない。
【0007】
図1中、符号1はブレーキペダルを示す。符号2は、ブレーキペダル1に連結するブースタを示す。符号3はマスタシリンダを示す。符号4はリザーバーである。符号10、20は左右前輪を、符号30、40は左右後輪をそれぞれ示す。各車輪には、それぞれブレーキユニットを設ける。各ブレーキユニットは、ブレーキディスク11、21、31、41と、ホイールシリンダ12、22、32、42とを備える。ホイールシリンダ12、22、32、42は、液圧の供給によりブレーキディスクを摩擦挟持して各輪毎にブレーキ力(制動力)を与える。そして、各ブレーキユニットのホイールシリンダに圧力制御ユニット5から液圧を供給することで、各車輪を個々に制動する構成となっている。圧力制御ユニット5は、前後左右の各液圧供給系(各チャンネル)個々にアクチュエータを備える。アクチュエータは、各ホイールシリンダ液圧を任意の制動液圧に制御可能とする比例ソレノイド弁を備える。そして、圧力制御ユニット5は、制駆動コントローラ50からの入力信号により、マスタシリンダ3からの油圧を調節し、各輪のホイールシリンダ12、22、32、42へ供給する制動液圧を制御する。
【0008】
また、駆動トルク制御コントローラ60は、エンジン制御部、スロットル制御部、及び変速機制御部を備え、駆動輪の駆動トルクを制御する。エンジン制御部は、エンジン6の燃料噴射量を制御する。スロットル制御部は、スロットル制御装置7によりスロットル開度を制御する。変速機制御部は、変速機8を制御する。この駆動トルク制御コントローラ60は、制駆動コントローラ50からの指令に応じて作動すると共に、車輪軸上での駆動トルクTw等の駆動に関する情報を、当該制駆動コントローラ50に出力する。
【0009】
また、加速度センサ53は、車両の前後及び横加速度値Xg*、Yg*を検出する。検出した信号は制駆動コントローラ50に出力する。
ヨーレイトセンサ54は、車両に発生するヨーレイトφを検出する。検出した信号は制駆動コントローラ50に出力する。
各車輪に設置した車輪速センサ(図示せず)13、23、33、43は、各車輪の車輪速Vwiを検知する。検知した信号は制駆動コントローラ50に出力する。
マスタシリンダ液圧センサ55は、マスタシリンダ液圧Pmを検知する。この検知によって、ブレーキペダル1の操作量を検出可能となる。検知した信号は制駆動コントローラ50に出力する。
【0010】
アクセル開度センサ56は、アクセルペダル57のアクセル開度Accを検知する。この検知によって、アクセルペダル57の操作量を検出可能となる。検知した信号は制駆動コントローラ50に出力する。
操舵角センサ52は、ハンドル9の操舵角δを検出する。検出した信号は制駆動コントローラ50に出力する。
また、先行車検知用の外界認識センサとして、ミリ波レーダー58を搭載する。ミリ波レーダー58は検知信号をミリ波レーダーコントローラ90に出力する。ミリ波レーダーコントローラ90は、ミリ波レーダー58からの検知信号に基づき先行車までの車間距離Lxを算出し、算出した車間距離Lxを制駆動コントローラ50に出力する。
【0011】
さらに、ハンドル9若しくはその近傍に、ステアリングスイッチSWを設置する。ステアリングスイッチSWは、運転者が操作する操作子であって、自動運転の設定・解除指示、設定車間距離状態Acc_LMS_stateの設定指示、設定車速Vsetの設定指示を行うものである。このステアリングスイッチSWの操作による信号は、制駆動コントローラ50に入力する。
ここで、本実施形態の自動運転制御は、先行車への追従制御及び、カーブ進入前に自車両の速度をカーブを走行可能な目標速度に制御する車速制御を行う。上記設定車間距離状態Acc_LMS_stateは、車間距離の設定値を表す。例えば比較的に近い車間距離、普通の車間距離、比較的に遠い車間距離の3つのモードを設ける。
【0012】
また、ナビゲーションシステム70を備える。ナビゲーションシステム70は、定期的に、GPS等によって自車両の位置を取得し、取得した自車位置と地図情報とから、自車両の前方道路情報をノード情報として検索する。そして、ナビゲーションシステム70は、検索したノード情報(ノード点Nj、位置、点数など)を制駆動コントローラ50に出力する。ここで、ナビゲーションシステム70が勾配情報を取得可能な機能を備える場合には、勾配情報も制駆動コントローラ50に出力する。
【0013】
また、運転席前方に警告用のモニタ80を備える。このモニタ80は、音声やブザー音を発生するためのスピーカーを内蔵する。そして、警告用のモニタ80は、少なくとも自動減速制御が作動するような前方カーブを検知したとする信号を入力すると、運転者に警告を提示する装置である。警告としては、音声に限定しない。光やハンドル9への振動などによって警告を提示しても良い。
【0014】
上記制駆動コントローラ50は、上述のように、少なくともカーブ進入前にカーブを走行可能な目標車速に制御することで、カーブ進入速度を越えないように加減速制御を行う自動運転制御を備える。但し、本実施形態では、運転支援装置を搭載しない場合で例示する。カーブ進入前とは、たとえば100m前方までに存在するカーブを指す。
上記制駆動コントローラ50は、図2に示すように、自動運転制御部50A、目標車速選択部50B、車速サーボ演算部50C、及びホイルトルク分配制御演算部50Dを備える。また、上記自動運転制御部50Aは、カーブ用目標車速算出部50Aa、追従用目標車速算出部50Ab、及び制御状態判定部50Acを備える。
【0015】
上記自動運転制御部50Aは、自動運転制御のための目標車速指令値及び制御状態を算出して上記目標車速選択部50Bに出力する。
上記カーブ用目標車速算出部50Aaは、前方のカーブを走行可能な目標車速指令値を算出する。
上記追従用目標車速算出部50Abは、先行車に対し追従制御するための目標車速指令値を算出する。
上記制御状態判定部50Acは、自動運転制御の制御状態を判定する。
また、上記目標車速選択部50Bは、上記制御状態を参照して車両を制御するための目標車速指令値を選択する。
また、上記車速サーボ演算部50Cは、目標車速選択部50Bが選択した目標車速指令値を達成するための目標加減速度を算出する。
また、上記ホイルトルク分配制御演算部50Dは、車速サーボ演算部50Cにて算出された目標加減速度に基づくトルクを、エンジントルクとブレーキトルクとにトルク配分を行う。
【0016】
上記制駆動コントローラ50の処理を、図3を参照しつつ説明する。この制駆動コントローラ50は、所定のサンプリング周期毎に作動する。
まずステップS100で、各センサ及びコントローラからの各種データを読み込む。具体的には、各車輪速Vwi(i=1〜4)、アクセル開度Acc、横加速度値Yg*、及びステアリングスイッチSWからの設定情報を取得する。また、ナビゲーションシステム70から自車両位置(X、Y)、及び走行路に沿った自車両前方の各ノード点Nj(j=1〜n、nは整数)のノード点情報(Xj、Yj、Lj)を取得する。
【0017】
ここで、(Xj、Yj)は、ノード点NjのX−Y座標である。Ljは、自車両位置(X、Y)からそのノード点Njの位置(Xj、Yj)までの距離情報である。また、各ノード点Nj(j=1〜n)は、添え字jの値が大きいノード点Njほど、走行路に沿って自車両から遠くに位置する。
続いて、ステップS200では、自車速Vを算出する。
通常走行時には、下記(1)式により、前輪(非駆動輪)の車輪速Vw1、Vw2の平均値として自車速Vを算出する。
V=(Vw1+Vw2)/2 ・・・(1)
ただし、ABS制御などの車速を用いた制御システムが作動している場合には、そのようなシステムで使用している自車速(推定車速)の情報を取得して、上記自車速Vとする。
【0018】
次に、ステップS300では、ノード情報に基づいて各ノード点Njでの旋回半径Rjを算出する。
ここで、旋回半径自体の算出方法は、いくつかの方法がある。例えば、一般的に利用する3点法に基づいて旋回半径Rjを算出すれば良い。
また、各ノード点Njにおける旋回半径Rjを算出する代わりに、各ノード点Njを通過するように等間隔に補間点を作成し、その補間点における旋回半径を算出してもよい。
【0019】
次に、ステップS400では、各ノード点Njにおける自動運転のための目標車速を算出する。具体的には、先に得た各ノード点Njの旋回半径Rjと、所定の横加速度Yg*とに基づいて、下記(2)式によって、各ノード点Njにおける自動運転制御の目標車速Vraccjを算出する。
Vraccj2= Yg*×|Rj| ・・・(2)
すなわち、Vraccj =√(Yg*×|Rj|)となる。
ここで、上記所定の横加速度Yg*として、例えば0.3Gを設定する。または、上記所定の横加速度Yg*として、運転者が設定した横加速度でもよい。
【0020】
上記(2)式から分かるように、旋回半径Rjが大きいほど、自動運転制御の目標車速Vraccjも大きくなる。
ここで、ステップS300の処理において、補間点における旋回半径を算出する場合には、その補間点における目標車速を算出すれば良い。この場合には、以下の処理において、補間点をノード点とみなして処理を行うか、上記補間点における目標車速から、各ノード点Njでの目標車速を算出して処理すればよい。
【0021】
次に、ステップS500において、各ノード点Njにおける目標減速度を算出する。すなわち、下記(3)式により、各ノード点Njにおける自動運転制御の目標減速度Xgsaccjを算出する。なお、この算出の際に、先に得た自車速V、各ノード点Njにおける目標車速Vraccj、及び現在位置から各ノード点Njまでの距離Ljを使用する。
Xgsaccj=(V2−Vraccj2)/(2×Lj)
=(V2−Yg*×|Rj|)/(2×Lj) ・・・(3)
ここで、目標減速度Xgsaccjは減速側をマイナスとする。
【0022】
目標減速度Xgsaccjは、自車速V、目標車速Vraccj及び現在位置から各ノード点Njまでの距離Ljにより算出される値である。したがって、上記目標車速Vraccjが小さいほど、旋回半径Rjが小さいほど、或いは距離Ljが小さいほど、目標減速度Xgsaccjは小さくなる。
上記説明では、各ノード点Njまでの距離Ljを使用して各ノード点Njの目標減速度Xgsaccjを算出している。これに代えて、等間隔に設定した補間点までの距離を使用して各補間点での目標減速度を算出してもよい。
【0023】
次に、ステップS600において、各ノード点Njにおける目標減速度Xgsaccjの中から制御対象となる目標減速度を検出する。すなわち、下記(4)式によって、目標減速度Xgsaccjの最小値(減速度の絶対値が一番大きい値)を検出する。具体的には、前記ステップで算出した各ノード点Njにおける自動運転制御の目標減速度Xgsaccjの最小値Xgsacc_minを算出する。
Xgsacc_min = min(Xgsaccj) ・・・ (4)
【0024】
次に、ステップS700において、目標減速度の最小値Xgsacc_minから、下記(5)式により、減速度の変化量リミッタXg_minを限界として、自動運転制御状態の目標車速指令値Vrraccを算出する。
Vrracc = f(Xgsacc_min、Xg_min) ×t
・・・ (5)
上記f(Xgsacc_min、Xg_min)は、セレクトハイを行う関数であって、大きい値(絶対値が小さい値)の方を選択する。
ここで、tはサンプリング時間を表す。上記(5)式は、tを乗算することで時間積分したものである。
また、上記変化量リミッタXg_minとして、例えば−0.01Gを設定する。
【0025】
次に、ステップS800において、先行車に対する追従制御用の目標車速指令値Vgaccの算出を行なう。
例えば、下記式に示すパラメータに基づき、先行車に対する目標車速指令値Vgaccを算出する。
Vgacc = f(Lx、V、Acc_LMS_state、Vset)
ここで、
V:自車速度
Lx:ミリ波レーダーから送られてきた車間距離
Acc_LMS_state:設定車間距離状態、つまり先行車との目標車間距離の大きさ
Vset:運転者が設定した設定車速
である。
【0026】
上記関数は、例えば次のような演算を行う。
測距可能な距離だけ自車両前方に、先行車が存在しない場合には、目標車速指令値Vgaccを設定車速Vsetとする。
測距可能な距離だけ自車両前方に、先行車が存在する場合には、先行車に追従するための車速を算出して、上記目標車速指令値Vgaccとする。例えば、先行車までの距離や相対速度に基づき、先行車との距離が設定車間距離状態Acc_LMS_stateで設定した車間距離を維持するための速度を算出し、上記目標車速指令値Vgaccとする。上記相対速度は、自車速と車間距離の変化から求めることが可能である。そして、車間距離が目的とする車間距離範囲内の場合には、先行車の速度を目標車速指令値Vgaccとする。また、車間距離が目的とする車間距離範囲よりも大きい場合には、先行車の速度に相対速度に応じた所定増分値を加算した値を目標車速指令値Vgaccとする。逆に、車間距離が目的とする車間距離範囲よりも小さい場合には、先行車の速度に相対速度に応じた所定減分値を加算した値を目標車速指令値Vgaccとする。
【0027】
次に、ステップS900において、カーブに対する制御状態判定を行う。すなわち、後述の制御状態判定部50Acを起動して、状態変数stateを設定・更新を行う。
ここで、状態変数stateの値の意味は次の通りである。
state=0:自動運転制御状態の解除状態
state=1:通常の自動運転状態中
state=2:通常の自動運転が解除された後の減速維持状態
また、ステップS900では、通常の自動運転状態から減速維持状態に遷移したことを検出(stateが「1」から「2」に更新されたとき)にすると、その遷移位置から制御対象カーブまでの距離Lxを、距離Ldjとして記憶する。制御対象カーブは、上記目標減速度Xgsaccjの最小値Xgsacc_minに対応するノード位置のカーブである。
【0028】
次に、ステップS1000では、状態変数stateの値に基づき、実際の目標車速指令値Vrrを選択する。
すなわち、減速維持状態の場合(state=2)には、下記式のように、カーブに対する自動運転制御状態の目標車速指令値Vrraccを目標車速指令値Vrrとする。
Vrr=Vrracc
また、自動運転制御状態の場合(state=1)には、下記式のように、先行車や設定車速に対する目標車速指令値Vgaccと、自動運転制御状態の目標車速指令値Vrraccのうち小さい値を選択し、つまりセレクトローを行い、その小さい側を目標車速指令値Vrrとする。
Vrr=min(Vgacc、Vrracc)
【0029】
また、減速解除状態の場合(state=0)、自動運転制御を解除させるため、下記式のように、自車速度Vを目標車速指令値Vrrとする。
Vrr=V
次にステップS1100では、警報作動を行うか否かの判定を行う。
解除状態の場合(state=0)は、警報を非作動(flg_wow=0)とする。
その他の制御状態(state=1、2)の場合は、警報を作動(flg_wow=1)させる。
ここで、アクセル開度Accが作動した場合は、警報を非作動(flg_wow=0)とし、運転者の運転を優先する。
【0030】
次に、ステップS1200では、制御作動判断を行う。
解除状態の場合(state=0)には、制御を非作動flg_control=0とする。
その他の制御状態(state=1、2)の場合は、制御を作動flg_control=1とする。
ここで、アクセル開度Accが作動した場合は、減速制御を非作動flg_control=0とし、運転者の運転を優先する。
次に、ステップS1300では、ステップS1000において算出した目標車速指令値Vrrを達成するための制御量を算出する。
【0031】
ここで、制御量の算出は、減速制御作動フラグflg_controlが「1」となった時に、ステップS1000で算出した車速指令値を達成するために、車速サーボ演算部50Cにて目標加減速度を算出する。そして、車速サーボ演算部50Cにて算出された目標加減速度に応じてホイルトルク分配制御演算部50Dにてエンジントルク、ブレーキトルクへとそれぞれトルク配分を行う。そして、配分したエンジントルクを達成するためのスロットル開度指令値、及びブレーキトルクを達成するためのブレーキ液圧指令値を出力する。
ここで、上記エンジントルクとしては、エンジンブレーキによる制動力も含む。
また、減速維持状態では、原則として減速制御しか行われない。
【0032】
次に、ステップS1400では、上記スロットル開度指令値を駆動トルク制御コントローラに出力する共に、ブレーキ液圧指令値を圧力制御ユニットに出力する。また、flg_wowに基づき警報作動が必要な場合(flg_wow=1)には、警報を出力するモニタ80に、その旨の指令を出力する。ここで、警報は、例えば音やHUD、ナビゲーションシステム70からの音声発話、ナビ画面表示、メータ表示でもよい。
上記処理が終了したら復帰する。
【0033】
次に、上記ステップS900の処理(カーブに対する制御状態判定)について、図4を参照して説明する。
まずステップS910において、現在の状態が、通常の自動運転状態か否かを判定する。通常の自動運転状態の場合には、ステップS930に移行する。一方、通常の自動運転状態でない場合には、ステップS920に移行する。
この判定は、前回の状態変数stateの値によって判定する。
すなわち、ステップS910では、state=1か否かを判定し、state=1の場合にはステップS930に移行する。一方、state=1で無い場合には、ステップS920に移行する。
【0034】
ステップS920では、現在の状態が減速制御解除状態か否かを判定し、減速制御解除状態と判定する場合には、ステップS991に移行する。すなわち、state=0の場合に、減速制御解除状態と判定する。減速制御解除状態とは、通常の自動運転状態を解除し且つ減速制御の維持も行わない状態である。
一方、減速制御解除状態でないと判定した場合には、ステップS960に移行する。この場合には、制御状態変数stateは、「2」となっている。
すなわち、ステップS910、S920の判断分岐処理は、前回の状態変数stateの値によって、ステップS920、ステップS930、ステップS960に分岐することになる。
【0035】
ステップS930では、自動運転の解除条件を満足したか否かを判定する。自動運転の解除条件を満足していないと判定、つまり自動運転状態を継続する場合にはステップS991に移行する。一方、自動運転状態の解除条件を満足する場合にはステップS940に移行する。
ステップS940では、自動運転状態の解除条件が運転者の意志によるものか否かを判定する。運転者の意志による解除の場合には、ステップS992に移行する。一方、運転者の意志による解除でない場合には、ステップS950に移行する。なお、ステップS940で、解除条件について判定しないで、無条件でステップS950に移行しても良い。
【0036】
ここで、運転者の意志による解除とは、次のようなものがある。すなわち、運転者がブレーキ操作を行ったり、SW操作による自動運転解除を選択した場合などがある。また、運転者の意志によらない解除としては、次のようなものがある。すなわち、検出センサの汚れや、太陽光などによって、追従制御に必要が情報が検出不能な状態となった場合である。
ステップS950では、前方のカーブまでに減速が維持しない状態と推定出来るか否か、つまり減速必要状態か否かを判定する。減速が維持しない状態と推定出来る場合には、ステップS960に移行する。一方、減速が維持しない状態と推定出来ない場合には、ステップS992に移行する。
ここでは、走行路面が下り坂の場合に、減速が維持しない状態と推定する。
【0037】
その減速が維持しない状態と推定出来るか否かの判定は、例えば次のように行う。
目標車速度指令値前回値Vrrfz1と、自車速度Vとを比較して、次式のように、自車速Vが、標車速度指令値前回値Vrrfz1以上の場合は、下り坂(Rd=ON)と判定する。
(1)Vrrfz1≦Vの場合
Rd=ON
(2)それ以外の場合
Rd=Off
上記判定において、エンジン特性、ブレーキ特性によって車両に表れる遅れも考慮した上で、決定してもよい。
また、ナビゲーションシステム70が勾配情報を制駆動コントローラ50に出力する場合は、カーブまでの道路勾配が下り坂か否かも考慮して、下り勾配の有無を決定してもよい。
【0038】
また、ステップS960では、減速維持状態対象カーブを通過したか否かを判定する。
上記自動運転制御の目標減速度が最小値Xgsacc_minとなるノード点(制御対象ノード点と呼ぶ。)位置が、減速維持状態対象カーブの位置である。そして、そのノード点位置を通過したか否かを判定する。そして、減速維持状態対象カーブを通過したと判定した場合には、ステップS992に移行する。一方、減速維持状態対象カーブをまだ通過していないと判定した場合には、ステップS970に移行する。
【0039】
その具体的判定方法の一例を示す。
自動制御状態から減速維持状態に遷移したときに、その遷移時における自車両から制御対象ノード点までの距離Lxを、距離Ldjとして記憶しておく。また、上記遷移時から制御サイクル毎に自動車の移動距離を積算処理をして距離Ltを演算する。この距離Ltは、上記遷移時における自車両の位置を基点として、その基点から現在の自車両の位置までのトータルな距離となる。
そして、上記基準となる距離Ldjと、上記遷移地点から逐次加算した距離Ltとを比較して、上記減速維持状態対象カーブを通過したか否かを判定する。
すなわち、Ldj≦Ltのときは、通過したと判定する。逆に、Ldj>Ltのときは未通過と判定する。なお、制御対象ノード点を通過したか否かで判定しても良い。
【0040】
また、ステップS970では、減速維持状態対象となるカーブがあるか否かを判定する。すなわち、前方の路面が減速維持状態としておくほどのカーブ状態か判定する。減速維持状態対象となるカーブがあると判定する場合には、ステップS980に移行する。一方、減速維持状態対象となるカーブでない場合にはステップS991に移行する。
減速維持状態対象となるカーブがあるか否かは、次のように判定する。
【0041】
上記減速維持状態対象カーブ位置としてノード点での減速度である、目標減速度の最小値Xgsacc_minの値が所定減速度以下の場合に、減速維持状態対象となるカーブと判定する。所定減速度として、例えば−0.15Gを設定する。旋回曲率が所定未満か否かで判定しても良い。
ステップS980では、運転者の操作(ブレーキペダル1を踏む)によってブレーキスイッチがONとなっているか判定する。ブレーキスイッチがONとなっている場合には、減速維持状態の解除と判定してステップS992に移行する。一方、ブレーキスイッチがONとなっていない場合(ブレーキスイッチがOFF)には、ステップS993に移行する。
【0042】
以上の処理によって制御状態の判定が行われる。
そして、ステップS991では、自動運転状態として。状態変数stateに「1」を代入して復帰する。
また、ステップS992では、自動運転の解除状態として、状態変数stateに「0」を代入して復帰する。
また、ステップS993では、通常の自動運転が解除された後の減速維持状態として、状態変数stateに「2」を代入して復帰する。
なお、ステアリングSWからの信号によって、自動運転ONの信号を入力すると、stateを「1」とする。
【0043】
ここで、ステップS300〜ステップS700は、カーブ用目標車速算出部50Aaを構成する。ステップS800は、追従用目標車速算出部50Abを構成する。ステップS900は、制御状態判定部50Acを構成する。ステップS1000は、目標車速選択部50Bを構成する。
また、自動運転制御部50A及び目標車速選択部50Bは、自動運転制御手段を構成する。ステップS950は、減速維持推定手段を構成する。ステップS993(制御状態判定部50Ac)、及びステップS1000(目標車速選択部50B)は、減速制御維持手段を構成する。
【0044】
(動作)
運転者の設定によって自動運転状態となっているとする。
この自動運転状態では、定期的に次の処理を行う。
ナビ情報に基づき、対象とするカーブ位置(車両前方で一番旋回半径が小さい走行路位置)を特定し、その制御対象カーブを通過可能な目標車速指令値Vraccを算出する(ステップS700)。
また、先行車に追従して走行するための目標車速指令値Vgaccを算出する(ステップS800)。
そして、上記2つの目標車速指令値の一方(本実施形態では小さい指令値側)を、通常の自動運転のための目標車速指令値を選択する。
また、定期的に制御状態の判定を行う(ステップS9)。
【0045】
このとき、自動運転の解除条件を満足しても、所定条件下では減速制御を続行する。すなわち、車両前方で一番旋回半径が小さい走行路が制御対象のカーブの場合には、所定条件下では自動運転制御を解除しない。すなわち、上記制御対象カーブを通過可能な目標車速指令値Vraccを目標車速とした減速制御を維持した状態となる。上記所定条件下とは、対象カーブまで自車両が加速する状況など、減速を維持しないと推定出来る場合である。例えば、カーブまで下り坂となっている場合である。
【0046】
ここえ、カーブ手前の下り坂を走行中であれば、通常、自動運転状態では、カーブを通過可能な目標速度となるように減速制御をしている。
この状態で、センサエラーなどで自動運転の解除条件を満足して、自動運転を解除すると、そのままでは車両が加速状態に移行し、例えば警報などで減速が必要なことを認知した運転者による制動操作が必要となる。すなわち、不必要な加速状態が発生して運転者に違和感を与える可能性がある。
【0047】
これに対し、本実施形態では、自動運転の解除条件を満足しても減速走行が必要な場合には、その減速制御を維持する。これによって、カーブ手前での不必要な加速状態の発生を抑制して、運転者への違和感を抑える。
このタイムチャートを図5に示す。図5に示すシーンは、前方のカーブに向けて緩やかな下り勾配の下り坂を走行すること想定したものである。図5中、符号Aが、本実施形態での車速の遷移を示す。一方符号Bが、自動運転の解除条件で自動運転を解除した場合の車速の遷移である。
【0048】
但し、自動運転の解除が運転者の意志によって行われた場合には、上記減速制御の維持を行う事なく、運転者の意志を尊重して自動運転状態を解除する。
また、上記減速制御は、対象とするカーブ位置を通過した場合に解除する。また、減速制御中にブレーキペダル1が踏まれた場合やアクセルペダル57が踏まれた場合も、運転者の制動を尊重して減速制御を解除する。
また、減速制御中に、再度運転者が自動運転のスイッチをオンとした場合には、通常の自動運転制御状態に復帰する。
【0049】
(本実施形態の効果)
(1)減速維持推定手段及び減速制御維持手段を備える。
これによって、自動運転制御手段による制御の解除条件を満足しても、次のカーブまで自車両の減速状態が維持しない状態と推定される場合には、減速制御を維持する。
したがって、減速が必要な状況で、自車両が加速することを抑えることが可能となる。この結果、自動運転の解除時の走行状況に応じて運転者の違和感が出ない若しくは緩和することが可能となる。
【0050】
(2)このとき、自動運転制御で算出する、カーブを走行可能な目標車速を目標値として減速制御を維持する。
これによって、カーブ進入時にカーブを走行可能な進入速度まで減速することが可能となる。
(3)減速維持推定手段は、自車両の走行路が下り坂と判定すると減速必要状態と判定する。
下り坂で自動運転が解除されると、減速状態が維持しない状態、例えば加速状態となる。これに対し、本実施形態では、下り坂で自動運転を解除する条件を満足しても、自車両が加速することを抑えることが可能となる。この結果、自動運転の解除時の走行状況に応じて運転者の違和感が出ない若しくは緩和することが可能となる。
【0051】
(4)上記減速維持推定手段は、上記自動運転制御手段による車両制御の解除条件のうち、運転者の意志によらない解除条件を満足した場合にだけ減速必要状態か否かの判定を行う。
すなわち、運転者の意志によらない条件で自動運転が解除された場合にだけ、上記減速制御の維持を行う。
これによって、運転者がより違和感を感じる場合にだけ、カーブ手前の不要な加速を抑えることが出来る。また、運転者の意志で自動運転を解除した場合には、運転者の意志を尊重することが出来る。
(5)減速制御維持手段は、運転者の加速意思を検出すると減速制御を解除する。
これによって、運転者の意図によって車両を操作可能な状態に変更することが出来る。
【0052】
(6)減速制御維持手段は、自車両が制御対象のカーブを通過したと判定すると減速制御を解除する。
制御対象のカーブを通過したら、運転者としては加速したいことも想定出来る。これに対し、本実施形態では、減速制御を解除するので、カーブを通過後における、運転者による加速操作の車両への反映を早期に実現することが出来る。
(7)減速制御維持手段で減速制御中に、運転者が自動運転制御手段の作動を要求した場合には、自動制御手段は、減速制御維持手段による制御から通常の自動運転制御に制御を遷移する。
これによって、通常の自動運転に移行可能となる。
(変形例)
(1)上記減速制御維持手段による減速制御を、車速が上記対象とするカーブ位置での目標車速となった時点で解除しても良い。
【0053】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、上記実施形態と同様な装置などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の車両構成等の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。
本実施形態は、車両の制駆動制御として、上述の自動運転制御の他に、運転支援制御を備えた車両の場合の実施例である。
すなわち、自車両の速度がカーブを走行可能な目標速度に制御する自動運転制御に加えて、カーブを走行可能な目標速度に車速を制限する運転支援制御が加わった場合の実施例である。
【0054】
ここで、上記自動運転制御では、自車両の速度の制御を、運転者の意志によって、車両に任せた状態となる。
これに対し、上記運転支援制御は、運転者が車両の状態(制動及び加速)を操作することで走行することを前提とする。そして、カーブを走行可能でなくなるおそれがあると判定すると、システムが介入して、車両の速度を減速させて、カーブを走行可能状態に運転者の運転を支援するものである。
このため、運転支援制御による運転支援は、自動運転制御が解除されているときに作動する。
【0055】
また、運転支援は、運転者の操作とは異なった車両状態とする。このため、自動運転制御に比べて、運転支援制御では、システムの介入を少なくするために、カーブに対する目標車速が高く設定してある。またシステムが作動するタイミングを遅くするために目標減速度の所定値を低くすることでカーブ直前まで制御を行わないようにしている。
本実施形態の制駆動コントローラ50は、図6に示すように、運転支援用目標車速算出部50Eを備える。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である(図2参照)。
運転支援用目標車速算出部50Eは、カーブ進入速度を越えないように車速を制限するための目標車速を算出する。算出した目標車速は目標車速選択部50Bに出力する。
【0056】
次に、本実施形態における制駆動コントローラ50の処理について図を参照しつつ説明する。
ステップS100〜S300までは、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
ステップS400では、第1実施形態と同様に、各ノード点Njにおける、自動運転制御の目標車速指令値Vraccrjを下記式で算出する。
Vraccrj2= Ygacc*×|Rj| ・・・(2−1)
次に、ステップS450では、各ノード点Njにおける、運転支援制御の目標車速とを算出する。
【0057】
具体的には、各ノード点Njの旋回半径Rj及び横加速度Yg*に基づき、下記(2−2)式により、各ノード点Njにおける運転支援制御の目標車速Vrsptjを算出する。
Vrsptj2= Ygspt*×|Rj| ・・・(2−2)
ここで、横加速度Yg*として、ある所定値を設定する。ただし、運転支援制御用の横加速度Ygspt*を、自動運転制御の横加速度Ygacc*よりも大きな値に設定する。例えば、自動運転制御の横加速度Ygacc*を0.3Gに設定し、運転支援装置の横加速度Ygspt*を0.5Gに設定する。なお、運転者が設定した設定横加速度を使用しても良い。
【0058】
この(2−1)式(2−2)式によれば、旋回半径Rjが大きいほど、目標車速、Vrsptj、Vraccjも大きくなる。
ここで、このステップでは各ノード点Njに対して目標車速を設定したが、ステップS300にも記述したように、各ノード点Njを通過するように等間隔に補間点を作成し、その補間点における目標車速を算出してもよい。
【0059】
次に、ステップS500では、第1実施形態と同様に、各ノード点Njにおける自動運転制御の目標減速度を算出する。
Xgsaccj=(V2−Vraccj2)/(2×Lj)
=(V2−Yg*×|Rj|)/(2×Lj) ・・・(3−1)
次に、ステップS550では、第1実施形態と同様に、各ノード点Njにおける運転支援制御の目標減速度を算出する。
具体的には、下記(3−2)式により、各ノード点Njにおける運転支援制御の目標減速度Xgssptjを算出する。このとき、自車速V、各ノード点Njにおける目標車速、及び現在位置から各ノード点Njまでの距離Ljを使用する。
Xgssptj=(V2−Vrsptj2)/(2×Lj)
=(V2−Yg*×|Rj|)/(2×Lj) ・・・(3−2)
【0060】
ここで、目標減速度Xgssptj、Xgsaccjは減速側をマイナスとする。このように、目標減速度Xgssptj、Xgsaccjは、自車速V、目標車速Vraccj、Vrsptj及び現在位置から各ノード点Njまでの距離Ljにより算出した値である。そして、具体的には、目標車速Vraccj、Vrsptjが小さいほど、旋回半径Rjが小さいほど、或いは距離Ljが小さいほど、目標減速度Xgssptj、Xgsaccjは小さくなる。
ここで、このステップでは、各ノード点Njまでの距離Lを使用し各ノード点Njの目標減速度を算出した。これに代えて、等間隔に設定した補間点までの距離を使用して各補間点での目標減速度を算出してもよい。
【0061】
次に、ステップS600では、各ノード点Njにおける自動運転制御の目標減速度の中から制御対象となるノード点Njの目標減速度Xgsaccjを検出する。
Xgsacc_min = min(Xgsaccj) ・・・(4−1)
次に、ステップS650では、各ノード点Njにおける運転支援制御の目標減速度の中から制御対象となるノード点Njの目標減速度を検出する。
すなわち、下記(4−2)式により目標減速度Xgssptjの最小値を検出する。すなわち、運転支援制御の目標減速度Xgssptjの最小値Xgsspt_minを算出する。
Xgsspt_min = min(Xgssptj) ・・・(4−2)
【0062】
次に、ステップS700では、上記第1実施形態と同様に、上記自動運転制御状態の目標減速度の最小値Xgsacc_minから、減速度の変化量リミッタを上限として、自動運転制御状態の目標車速指令値Vrraccを算出する。
Vrracc = f(Xgsacc_min、変化量リミッタ) × t
・・・ (5−1)
変化量リミッタは、例えば−0.01Gとする。
次に、ステップS750では、上記運転支援制御の目標減速度の最小値Xgsspt_minから、下記(5−1)式のように、減速度の変化量リミッタを上限として、運転支援制御の目標車速指令値Vrrsptを算出する。
Vrrspt = f(Xgsspt_min、変化量リミッタ) × t
・・・ (5−2)
上記関数f()はセレクトハイを行う関数である。
ここでtはサンプリング時間を表す。また、変化量リミッタは、例えば−0.01Gとする。
【0063】
次に、ステップS800で、先行車に対する追従制御用の目標車速指令値Vgaccを算出する。処理は上記第1実施形態と同様である。
次に、ステップS900で、カーブに対する制御状態判定を行う。その基本処理は、図8のように、上記第1実施形態と同じ処理である。
但し、第1実施形態の処理(図4)と次の点で異なる。すなわち、ステップS940の処理を行わない場合の例としている。また、ステップS980とステップS992の間にステップS985の処理を追加している。
【0064】
ステップS985では、自車速Vが、運転支援制御の目標車速指令値よりも高いか否かを判定する。自車速が運転支援制御の目標車速指令値よりも高い場合には、減速制御継続としてステップS993に移行する。
一方、自車速が運転支援制御の目標車速指令値以下の場合には、減速解除つまり自動運転制御を解除するためにステップS992に移行する。
その他のステップS900の処理は、上記第1実施形態と同様である。
次に、ステップS1000では、状態変数stateの値に基づき、実際の目標車速指令値Vrrを選定する。
【0065】
すなわち、減速維持状態の場合(state=2)には、下記式のように、カーブに対する自動運転制御状態の目標車速指令値Vrraccの代わりに、運転支援制御の目標車速指令値Vrrsptを目標車速指令値Vrrとする。
Vrr=Vrrspt
また、自動運転制御状態の場合(state=1)には、下記式のように、先行車や設定車速に対する目標車速指令値Vgaccと、自動運転制御状態の目標車速指令値Vrraccのうち小さい値を、目標車速指令値Vrrとする。
Vrr=min(Vgacc、Vrracc)
【0066】
また、減速解除状態の場合(state=0)、下記式のように、目標車速指令値を運転支援制御の目標車速指令値Vrrsptとする。
Vrr=Vrrspt
ただし、自車速Vが運転支援制御の目標車速指令値Vrrsptよりも低い場合には、運転支援制御の介入もしないように、自車速Vを目標車速指令値とする。
Vrr=V
【0067】
次に、ステップS1100では、警報作動開始判断を行う。
解除状態の場合(state=0)で且つXgsspt_minが、所定値、例えば、−0.01G以下の場合は、警報を作動(flg_wow=1)させる。
その他の制御状態(state=1、2)、の場合は、警報を作動(flg_wow=1)させる。
このように運転支援制御が作動する減速解除状態の場合(state=0)の警報開始判断所定値を、自動運転制御の場合(state=1)より、下げることにより、システムの介入を少なくすることができる。
またここで、アクセル開度Accが作動した場合は、警報を非作動(flg_wow=0)とし、運転者の運転を優先する。
【0068】
次に、ステップS1200では、減速制御作動判断を行う。
解除状態の場合(state=0)、Xgsspt_minが、所定値、例えば、−0.015G以下の場合は、減速制御を作動flg_control =1に設定する。
その他の制御状態(state=1、2)、の場合は、減速制御を作動flg_control =1に設定する。
このように運転支援制御が作動する減速解除状態の場合(state=0)の減速制御作動所定値を、自動運転制御の場合(state=1)より、下げることにより、システムの介入を少なくすることができる。
【0069】
またここで、アクセル開度Accが作動した場合は、減速制御を非作動flg_control=0とし、運転者の運転を優先する。
続く、ステップS1300〜S1400については、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
ここで、運転支援用目標車速算出部50E及び目標車速選択部50B、ステップS450,S550,S650,S750は、運転支援制御手段を構成する。運転支援用の目標車速指令値Vrrsptが第2の目標速度となる。
【0070】
(動作)
運転者の設定によって自動運転状態となっているとする。
この自動運転状態では、定期的に次の処理を行う。
ナビ情報に基づき、対象とするカーブ位置(車両前方で一番旋回半径が小さい走行路位置)を特定し、その制御対象カーブを通過可能な目標車速指令値Vraccを算出する(ステップS700)。
また、先行車に追従して走行するための目標車速指令値Vgaccを算出する(ステップS800)。
そして、上記2つの目標車速指令値の一方(本実施形態では小さい指令値側)を、通常の自動運転のための目標車速指令値とする。
また、定期的に制御状態の判定を行う(ステップS900)。
【0071】
更に、運転支援のための目標車速指令値も定期的に算出する(ステップS750)。
このとき、自動運転解除条件を満足しても所定条件下では減速制御を続行する。すなわち、車両前方で一番旋回半径が小さい走行路が制御対象のカーブの場合には、所定条件下では自動運転制御を解除しない。すなわち、上記制御対象カーブを通過可能な目標車速指令値Vraccを目標車速とした減速制御を維持した状態となる。上記所定条件下とは、対象カーブまで自車両が加速するなど、減速を維持しないと推定出来る場合である。例えば、カーブまで下り坂となっている場合である。
【0072】
例えば、カーブ手前の下り坂を走行中であれば、通常、自動運転状態は、カーブを通過可能な目標速度となるように減速制御をしている。
この状態で、センサエラーなどで自動運転の解除条件を満足して、自動運転を解除すると、そのままでは車両が加速状態に移行する。その後、運転支援が作動して、再びブレーキ減速が入る車両挙動になる。
すなわち、不必要な加速状態が発生して運転者に違和感を与える可能性がある。
【0073】
これに対し、本実施形態では、自動運転の解除条件を満足しても減速走行が必要な場合には、その減速制御を維持することとなる。したがって、カーブ手前での不必要な加速状態の発生を抑制して、運転者への違和感を抑える。
但し、本実施形態では、第1実施形態と異なり、上記減速制御の目標車速として、運転支援制御の目標車速を使用する。
その後、上記減速制御状態から運転支援制御状態に移行しても、減速制御の目標値を運転支援制御の目標車速としているので、滑らかに移行することが可能となる。
その他の動作は上記第1実施形態と同様である。
【0074】
(第2実施形態の効果)
(1)基本的な効果は、上記第1実施形態と同様である。
(2)自動運転制御手段と共に、運転支援制御手段を備える。この場合に、減速維持制御手段は、目標値として運転支援制御手段の目標車速であるカーブ進入速度を使用する。
減速制御から運転支援制御に切り替わっても、制御の目標車速が同じである為、制御が切り替わる際の違和感を解消することが可能となる。
なお、必ずしも切り替わる分けではない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係る車両の概要構成図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る制駆動コントローラの構成を説明する図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る制駆動コントローラの処理を説明する図である。
【図4】本発明に基づく第1実施形態に係る制御判定の処理を説明する図である。
【図5】本発明に基づく第1実施形態に係る動作例を説明する図である。
【図6】本発明に基づく第2実施形態に係る制駆動コントローラの構成を説明する図である。
【図7】本発明に基づく第2実施形態に係る制駆動コントローラの処理を説明する図である。
【図8】本発明に基づく第2実施形態に係る制御判定の処理を説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
5 圧力制御ユニット
6 エンジン
50 制駆動コントローラ
50A 自動運転制御部
50Aa カーブ用目標車速算出部
50Ab 追従用目標車速算出部
50Ac 制御状態判定部
50B 目標車速選択部
50C 車速サーボ演算部
50D ホイルトルク分配制御演算部
50E 運転支援用目標車速算出部
60 駆動トルク制御コントローラ
70 ナビゲーションシステム
Lx 車間距離
Nj ノード点
Rj 旋回半径
state 状態変数
V 自車速
Vrr 最終的な目標車速指令値
Vgacc 追従用の目標車速指令値
Vrracc カーブ用の目標車速指令値
Vrrspt 運転支援用の目標車速指令値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の加減速制御を行い少なくとも自車両がカーブ進入前にカーブを走行可能な目標車速に制御する自動運転制御手段を備えた車両の制駆動制御装置において、
上記自動運転制御手段による車両制御を解除する解除条件を満足すると、上記カーブまで自車両の減速状態が維持しない状態か否かを判定する減速維持推定手段を備え、
上記自動運転制御手段は、減速維持推定手段が減速必要状態と判定すると、上記カーブ進入前まで減速制御を維持する減速制御維持手段を備えることを特徴とする車両の制駆動制御装置。
【請求項2】
上記減速制御維持手段は、上記カーブを走行可能な目標車速を目標値として減速制御を行うことを特徴とする請求項1に記載した車両の制駆動制御装置。
【請求項3】
上記自動運転制御手段とは別に、
カーブを通過する際に当該カーブを通過可能なカーブ進入速度を越えないようにする第2の目標車速を算出し、その第2の目標車速で減速制御することで自車両の車速を制限する運転支援制御手段を備える車両の制駆動制御装置において、
上記減速維持制御手段は、上記第2の目標車速で減速制御することを特徴とする請求項1に記載した車両の制駆動制御装置。
【請求項4】
上記減速維持推定手段は、自車両の走行路が下り坂と判定すると減速必要状態と判定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車両の制駆動制御装置。
【請求項5】
上記減速維持推定手段は、上記自動運転制御手段による車両制御の解除条件のうち、運転者の意志によらない解除条件を満足した場合にだけ減速必要状態か否かの判定を行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した車両の制駆動制御装置。
【請求項6】
上記減速制御維持手段は、運転者の加速意思を検出すると解除されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した車両の制駆動制御装置。
【請求項7】
上記減速制御維持手段は、自車両が上記カーブを通過したと判定すると解除されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した車両の制駆動制御装置。
【請求項8】
上記減速制御維持手段で減速制御中に、運転者が自動運転制御手段の作動を要求した場合には、自動制御手段は、減速制御維持手段による制御から上記通常の自動運転制御に制御を遷移することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した車両の制駆動制御装置。
【請求項9】
自車両の加減速制御を行い少なくともカーブ進入前にカーブを走行可能な目標車速に自車両を制御する自動運転制御の解除条件を満足しても、上記カーブまで自車両の減速状態が維持しない状態と推定される場合には、減速制御を維持することを特徴とする車両の自動運転制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−30544(P2010−30544A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197268(P2008−197268)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】