車両用駆動装置の制御装置
【課題】第2電動機或いは変速部の所定回転要素の不要な回転増加を抑制して、第2電動機或いは変速部の耐久性を向上することができる車両用駆動装置の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度NELIMが第2電動機回転速度NM2に応じて変更されるので、現在の第2電動機回転速度NM2に基づいてエンジン上限回転速度NELIMの影響を受ける第2電動機上昇可能回転速度NM2max を変更することが可能となり、例えば第2電動機回転速度NM2が比較的高いときにはエンジン上限回転速度NELIMを低くして第2電動機上昇可能回転速度NM2max を低く変更することが可能となり、第2電動機M2の回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【解決手段】エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度NELIMが第2電動機回転速度NM2に応じて変更されるので、現在の第2電動機回転速度NM2に基づいてエンジン上限回転速度NELIMの影響を受ける第2電動機上昇可能回転速度NM2max を変更することが可能となり、例えば第2電動機回転速度NM2が比較的高いときにはエンジン上限回転速度NELIMを低くして第2電動機上昇可能回転速度NM2max を低く変更することが可能となり、第2電動機M2の回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動が可能な差動機構を有する電気式差動部を備える車両用駆動装置の制御装置に係り、特に、エンジン回転速度を適切に制限する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンに連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有してエンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備える車両用駆動装置の制御装置が良く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置の制御装置がそれである。この車両用駆動装置の制御装置では、差動機構が遊星歯車装置で構成されると共に、伝達部材に作動的に連結された第2電動機と、伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に有段式の自動変速機で構成される変速部とを更に備え、無段変速機として機能させられる電気式差動部の変速比と変速部の各ギヤ段(変速段)に対応する変速比とで駆動装置全体の総合変速比(トータル変速比)が形成される。
【0004】
【特許文献1】特開2005−264762号公報
【特許文献2】特開2003−193878号公報
【特許文献3】特開2004−153946号公報
【特許文献4】特開2005−105957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した車両用駆動装置の制御装置において、少なくともエンジンを駆動力源としてパワーオン状態でエンジン走行をしている際に、例えばD→Nシフトにより変速部がニュートラル状態になったり、変速部の変速段を形成する際に係合される係合装置の係合圧が低下するような変速部の故障が発生したり、駆動輪のスリップが発生したりして、車両用駆動装置の負荷が急に低下してしまうことが考えられる。そうすると、パワーオン状態である為にエンジン回転速度が増加し、それに伴って第2電動機の回転速度や変速部の所定回転要素(例えば変速部の入力系回転部材)の回転速度が増加して例えば許容回転を超える程に高回転速度となり、第2電動機や変速部の耐久性が低下する可能性があった。尚、ここでは、電気式差動部と変速部とを備える車両用駆動装置を例示して説明したが、変速部を備えない車両用駆動装置においてもパワーオン状態でのエンジン走行時に車両用駆動装置の負荷が急に低下してしまうとエンジン回転速度の増加に伴って第2電動機が高回転速度となり、第2電動機の耐久性が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、第2電動機或いは変速部の所定回転要素の不要な回転増加を抑制して、第2電動機或いは変速部の耐久性を向上することができる車両用駆動装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材および第2電動機に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置において、(b) 予め定められたエンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンの回転速度を制限するものであり、(c) 前記エンジン上限回転速度を前記第2電動機の回転速度に応じて変更することにある。
【0008】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、その第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである。
【0009】
また、請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、その所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである。
【0010】
また、前記目的を達成するための請求項4にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材および第2電動機に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置において、(b) 前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度を制限することにある。
【0011】
また、請求項5にかかる発明は、請求項3または4に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2電動機の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときのその第2電動機の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、その第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるものである。
【0012】
また、請求項6にかかる発明は、請求項5に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2所定回転速度を超えているときの前記第2電動機の回転速度に応じて前記所定変化量を設定するものである。
【0013】
また、前記目的を達成するための請求項7にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部と、その伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、(b) 予め定められたエンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンの回転速度を制限するものであり、(c) 前記エンジン上限回転速度を前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて変更することにある。
【0014】
また、請求項8にかかる発明は、請求項7に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、その第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである。
【0015】
また、請求項9にかかる発明は、請求項7に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、その所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである。
【0016】
また、前記目的を達成するための請求項10にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部と、その伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、(b) 前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度を制限することにある。
【0017】
また、請求項11にかかる発明は、請求項9または10に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速部の所定回転要素の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときのその変速部の所定回転要素の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、その変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるものである。
【0018】
また、請求項12にかかる発明は、請求項11に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2所定回転速度を超えているときの前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて前記所定変化量を設定するものである。
【0019】
また、請求項13にかかる発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記エンジンの回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないようにフューエルカットを実行するものである。
【0020】
また、請求項14にかかる発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記エンジンの回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないようにスロットル弁開度の上限を設定するものである。
【0021】
また、請求項15にかかる発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記エンジン回転速度の制限は、前記エンジンに連結された第3電動機により実行されるものである。
【0022】
また、請求項16にかかる発明は、請求項1乃至14のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記電気式差動部は、前記第1電動機の運転状態が制御されることにより無段変速機として作動するものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、予め定められたエンジン上限回転速度を超えないようにエンジンの回転速度が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度が第2電動機の回転速度に応じて変更されるので、現在の第2電動機の回転速度に基づいてエンジン上限回転速度の影響を受ける第2電動機の回転速度が上昇可能な上限の回転速度(上昇可能回転速度)を変更することが可能となり、例えば第2電動機の回転速度が比較的高いときにはエンジン上限回転速度を低くして第2電動機の上昇可能回転速度を低く変更することが可能となり、第2電動機の回転増加を抑制して第2電動機の耐久性を向上することができる。見方を換えれば、第2電動機の回転増加を抑制するように第2電動機の回転速度に応じてエンジン上限回転速度を予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態でエンジン走行をしている際に車両用駆動装置の負荷が急に低下したとしても、第2電動機の回転速度が上昇可能回転速度以下となるように保証することができて第2電動機の耐久性を向上することができる。
【0024】
ここで、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、その第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度が設定されるので、第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには超えないときより低い回転速度でエンジン回転速度が制限される。これにより、エンジン回転速度の上限が低くなり、第2電動機の上昇可能回転速度も低くされて第2電動機の回転増加が抑制される。
【0025】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、その所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度が設定されるので、第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときにはその所定高速回転状態となることが予測されないときより低い回転速度にエンジン回転速度が制限される。これにより、エンジン回転速度の上限が低くなり、第2電動機の上昇可能回転速度も低くされて第2電動機の回転増加が抑制される。
【0026】
また、好適には、請求項4に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度が制限されるので、エンジンの回転速度の影響を受ける第2電動機の回転速度も制限される。これにより、第2電動機の回転増加を抑制して第2電動機の耐久性を向上することができる。
【0027】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2電動機の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときの第2電動機の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、その第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるので、例えば第2所定回転速度を超えた状態で第2電動機の回転速度が急速に上昇するときに所定高速回転状態となることが適切に予測される。
【0028】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2所定回転速度を超えているときの前記第2電動機の回転速度に応じて前記所定変化量が設定されるので、第2電動機の回転速度とその回転速度変化量との影響を受ける第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることの予測の精度が向上される。
【0029】
また、好適には、請求項7に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、予め定められたエンジン上限回転速度を超えないようにエンジンの回転速度が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度が変速部の所定回転要素の回転速度に応じて変更されるので、現在の変速部の所定回転要素の回転速度に基づいてエンジン上限回転速度の影響を受ける変速部の所定回転要素の回転速度が上昇可能な上限の回転速度(上昇可能回転速度)を変更することが可能となり、例えば変速部の所定回転要素の回転速度が比較的高いときにはエンジン上限回転速度を低くして変速部の所定回転要素の上昇可能回転速度を低く変更することが可能となり、変速部の所定回転要素の回転増加を抑制して変速部(例えば変速部の所定回転要素)の耐久性を向上することができる。見方を換えれば、変速部の所定回転要素の回転増加を抑制するように変速部の所定回転要素の回転速度に応じてエンジン上限回転速度を予め変更しておくことが可能となり、仮に、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に車両用駆動装置の負荷が急に低下したとしても、変速部の所定回転要素の回転速度が上昇可能回転速度以下となるように保証することができて変速部の耐久性を向上することができる。
【0030】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、その第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度が設定されるので、変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには超えないときより低い回転速度でエンジン回転速度が制限される。これにより、エンジン回転速度の上限が低くなり、変速部の所定回転要素の上昇可能回転速度も低くされて変速部の所定回転要素の回転増加が抑制される。
【0031】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、その所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度が設定されるので、変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときにはその所定高速回転状態となることが予測されないときより低い回転速度でエンジン回転速度が制限される。これにより、エンジン回転速度の上限が低くなり、変速部の所定回転要素の上昇可能回転速度も低くされて変速部の所定回転要素の回転増加が抑制される。
【0032】
また、好適には、請求項10に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度が制限されるので、エンジンの回転速度の影響を受ける変速部の所定回転要素の回転速度も制限される。これにより、変速部の所定回転要素の回転増加を抑制して変速部(例えば変速部の所定回転要素)の耐久性を向上することができる。
【0033】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記変速部の所定回転要素の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときの変速部の所定回転要素の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、その変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるので、例えば第2所定回転速度を超えた状態で変速部の所定回転要素の回転速度が急速に上昇するときに所定高速回転状態となることが適切に予測される。
【0034】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2所定回転速度を超えているときの前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて前記所定変化量が設定されるので、変速部の所定回転要素の回転速度とその回転速度変化量との影響を受ける変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることの予測の精度が向上される。
【0035】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記エンジンの回転速度の制限は前記エンジン上限回転速度を超えないようにフューエルカットにより実行されるので、適切にエンジン回転速度が制限されて第2電動機の回転増加或いは変速部の所定回転要素の回転増加が抑制される。
【0036】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記エンジンの回転速度の制限は前記エンジン上限回転速度を超えないようにスロットル弁開度の上限を設定することにより実行されるので、適切にエンジン回転速度が制限されて第2電動機の回転増加或いは変速部の所定回転要素の回転増加が抑制される。
【0037】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記エンジン回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンに連結された第3電動機により実行されるので、エンジンに対する燃料供給を遮断するフューエルカットや、エンジンに対する燃料供給を制限するスロットル弁開度の上限設定に比較して、前記エンジン回転速度を制限するための制御操作において高い応答性が得られる利点がある。
【0038】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記電気式差動部は前記第1電動機の運転状態が制御されることにより無段変速機として作動させられるので、電気式差動部と前記変速部とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることが可能である。尚、電気式差動部は、変速比を連続的に変化させて電気的な無段変速機として作動させる他に変速比を段階的に変化させて有段変速機として作動させることも可能である。
【0039】
また、好適には、前記差動機構は、前記エンジンに連結された第1要素と前記第1電動機に連結された第2要素と前記伝達部材に連結された第3要素とを有する遊星歯車装置であり、前記第1要素はその遊星歯車装置のキャリヤであり、前記第2要素はその遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第3要素はその遊星歯車装置のリングギヤである。このようにすれば、前記差動機構の軸方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つの遊星歯車装置によって簡単に構成され得る。
【0040】
また、好適には、前記遊星歯車装置はシングルピニオン型遊星歯車装置である。このようにすれば、前記差動機構の軸方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つのシングルピニオン型遊星歯車装置によって簡単に構成される。
【0041】
また、好適には、前記変速部の変速比(ギヤ比)と前記電気式差動部の変速比とに基づいて前記車両用駆動装置の総合変速比が形成されるものである。このようにすれば、変速部の変速比を利用することによって駆動力が幅広く得られるようになる。
【0042】
また、好適には、前記変速部は有段式の自動変速機である。このようにすれば、例えば電気的な無段変速機として機能させられる電気式差動部と変速部とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることが可能であると共に、電気式差動部の変速比を一定となるように制御した状態においては電気式差動部と変速部とで有段変速機と同等の状態が構成され、車両用駆動装置の総合変速が段階的に変化させられて速やかに駆動トルクを得ることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0044】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接的に連結された無段変速部としての電気式差動部(以下、差動部という)11と、その差動部11と駆動輪34(図7参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪34との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)32(図7参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
【0045】
このように、本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
【0046】
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
【0047】
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24を主体として構成されている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
【0048】
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。このように構成された動力分配機構16は、第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
【0049】
自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
【0050】
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0051】
このように、自動変速部20内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部20の各ギヤ段(変速段)を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0052】
また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT )が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の解放によりニュートラル「N」状態とされる。
【0053】
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
【0054】
以上のように構成された変速機構10において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部20とで全体として無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部20とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
【0055】
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT )が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
【0056】
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0057】
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構10において有段変速機と同等の状態が構成される。
【0058】
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部20の第4速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.7」程度であるトータル変速比γTが得られる。
【0059】
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NE を示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
【0060】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
【0061】
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
【0062】
例えば、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、エンジン回転速度NE を制御することによって直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転速度すなわち第1電動機M1の回転速度が上昇或いは下降させられる。
【0063】
また、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転がエンジン回転速度NE と同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NE と同じ回転で第1リングギヤR1の回転速度すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転が零とされると、エンジン回転速度NE よりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
【0064】
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0065】
自動変速部20では、差動部11において直線L0が横線X2と一致させられてエンジン回転速度NE と同じ回転速度が差動部11から第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速(1st )の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速(2nd )の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速(3rd )の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速(4th )の出力軸22の回転速度が示される。
【0066】
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
【0067】
電子制御装置80には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPW を表す信号、シフトレバー52(図6参照)のシフトポジションPSHや「M」ポジションにおける操作回数等を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NE を表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUT に対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温TOIL を表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置56(図7参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0068】
また、上記電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図7参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路70(図5、図7参照)に含まれる電磁弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路70に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧PLを調圧するための信号、そのライン油圧PLが調圧されるための元圧の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
【0069】
図5は、油圧制御回路70のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)AC1、AC2、AB1、AB2、AB3の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する回路図である。
【0070】
図5において、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3には、ライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により電子制御装置80からの指令信号に応じた係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給されるようになっている。このライン油圧PLは、図示しない電動オイルポンプやエンジン8により回転駆動される機械式オイルポンプから発生する油圧を元圧として例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によって、アクセル開度Acc或いはスロットル弁開度θTHで表されるエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
【0071】
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置80により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1、C2、ブレーキB1、B2、B3の係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3が制御される。そして、自動変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速部20の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチツウクラッチ変速が実行される。
【0072】
図6は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
【0073】
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20の自動変速制御における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
【0074】
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路70が電気的に切り換えられる。
【0075】
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
【0076】
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
【0077】
図7は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、有段変速制御手段82は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUT とを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)およびダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(変速線図、変速マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUT で示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。
【0078】
このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路70へ出力する。油圧制御回路70は、その指令に従って、例えば解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路70内のリニアソレノイドバルブSLを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
【0079】
ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NE とエンジントルクTE となるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
【0080】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NE と車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NE とエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TE とで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図9の破線に示すようなエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTE とエンジン回転速度NE となるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。
【0081】
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
【0082】
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって例えば第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度NE を略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NE を略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1を任意の回転速度に回転制御することができる。
【0083】
例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84は車両走行中にエンジン回転速度NE を引き上げる場合には、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。また、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NE を略一定に維持する場合には、エンジン回転速度NE を略一定に維持しつつ自動変速部20の変速に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
【0084】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によってモータ走行させることができる。
【0085】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUT とを変数として予め記憶された走行用駆動力源をエンジン8と第2電動機M2とで切り換えるためのエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する関係(駆動力源切換線図、駆動力源マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUT で示される車両状態に基づいて、モータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。図8の実線Aに示す駆動力源マップは、例えば同じ図8中の実線および一点鎖線に示す変速マップと共に予め記憶されている。このように、ハイブリッド制御手段84によるモータ走行は、図8から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT 域すなわち低エンジントルクTE 域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
【0086】
ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御して例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度NE を零乃至略零に維持する。
【0087】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪34にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
【0088】
また、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、差動部11がトルクの伝達を不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とすることが可能である。
【0089】
また、ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段84による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジン出力制御を実行する。
【0090】
また、ハイブリッド制御手段84は、予め定められたエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限するエンジン回転速度制限手段86を備えている。例えば、エンジン回転速度制限手段86は、燃料噴射装置66による燃料供給を停止(或いは抑制)することにより例えばエンジン8のオーバーレブ(過回転)を回避する為の良く知られたフューエルカットを実行することにより、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限する。或いはまた、エンジン回転速度制限手段86は、スロットルアクチュエータ64による電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを制限することにより例えばスロットル弁開度θTHの開き側の上限を設定することにより、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限する。
【0091】
上記エンジン上限回転速度NELIMは、エンジン8の耐久性等を考慮してエンジン8に許容される最大許容回転速度を超えないエンジン回転速度領域で常用され得る為の予め実験的に求められて定められたエンジン許容回転速度である。見方を換えれば、このエンジン上限回転速度NELIMは、エンジン回転速度制限手段86によりエンジン回転速度NE が制限されてエンジン8を保護する為の予め定められたエンジン回転速度高回転側制限回転速度でもある。また、エンジン回転速度NE の制限をフューエルカットにより行う過回転防止制御が備えられる場合には、このエンジン上限回転速度NELIMはフューエルカット回転速度でもある。
【0092】
ところで、変速機構10において、不要に第2電動機回転速度NM2が高くなり例えば第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となり第2電動機M2の耐久性が低下する可能性がある。例えば、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に、シフトレバー52が「D」→「N」操作されることにより自動変速部20がニュートラル状態となったり、係合されるべきクラッチCやブレーキBの係合圧が低下するような自動変速部20のフェールが発生したり、駆動輪34のスリップが発生したりする等の何らかの理由により変速機構10(特には第2電動機M2)の負荷が急に低下すると、パワーオン状態である為にエンジン回転速度NE が増加し、それに伴って第2電動機回転速度NM2が増加して所定高速回転状態となり第2電動機M2の耐久性が低下する可能性がある。ここで、第2電動機回転速度NM2の所定高速回転状態とは、例えば第2電動機回転速度NM2が第2電動機許容回転速度NM2LIM を超える程に高回転速度となる回転状態のことである。上記第2電動機許容回転速度NM2LIM は、第2電動機M2の耐久性等を考慮して第2電動機M2に許容される最大許容回転速度を超えない第2電動機回転速度領域で常用され得る為の予め実験的に求められて定められた第2電動機上限回転速度である。
【0093】
そこで、本実施例では、前記エンジン上限回転速度NELIMを第2電動機回転速度NM 2 に応じて変更する。つまり、差動部11においてはエンジン回転速度NE は第2電動機回転速度NM2に影響を与えるものであり、エンジン上限回転速度NELIMで第2電動機回転速度NM2が上昇可能な上限の回転速度(第2電動機上昇可能回転速度)NM2max を規定するという観点から、通常はエンジン8を保護する為に設定されているエンジン上限回転速度NELIMを変更することで第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態とならないように第2電動機回転速度NM2の上昇を制限するのである。こうすることで、第2電動機回転速度NM2の上昇を検出してからその上昇を制限(禁止或いは抑制)する為の作動を実行するのでは無く、第2電動機回転速度NM2に応じてエンジン上限回転速度NELIMを予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態で第2電動機M2の負荷が低下して第2電動機回転速度NM2が上昇したとしても、第2電動機回転速度NM2が第2電動機許容回転速度NM2LIM よりも低い第2電動機上昇可能回転速度NM2max で上げ止まるように自動的に保証することができて第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【0094】
具体的には、シフトポジション判定手段88は、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置を判断し、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジション例えば「D」ポジション或いは「M」ポジションであるか否かを判定する。つまり、シフトポジション判定手段88は、変速機構10(特には第2電動機M2)の負荷が低下した場合に第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となる程にエンジン回転速度NE が増加する可能性がある走行状態としての前進走行ポジションであるか否かを判定する。
【0095】
回転速度判定手段90は、前記シフトポジション判定手段88によりシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであると判定されているときは、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えたか否かを判定する。この第1所定回転速度は、第2電動機許容回転速度NM2LIM よりも低い回転速度であって、第2電動機M2の負荷が低下した際の第2電動機回転速度NM2の上昇に備えて前記エンジン上限回転速度NELIMの変更を判断する為の予め実験的に求められて定められた判定値であり、例えば第2電動機許容回転速度NM2LIM が12000rpm程度であるなら10000rpm程度に設定される。
【0096】
エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度判定手段90により第2電動機回転速度NM2が未だ第1所定回転速度を超えていないと判定される場合は、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMを変更することなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定する。
【0097】
一方で、前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度判定手段90により第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えたと判定される場合は、エンジン回転速度NE の上限値として上述した第1所定回転速度を超えていないと判定される場合の設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMを設定(変更)する。例えば、通常のエンジン上限回転速度NELIMが5600rpm 程度であるなら、そのエンジン上限回転速度NELIMを4800rpm 程度に変更する。
【0098】
或いはまた、上述したように第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えたか否かの一点でエンジン上限回転速度NELIMを変更することに替えて、第2電動機回転速度NM2が第2電動機許容回転速度NM2LIM よりも低い回転速度ではあるが高回転化している領域において、第2電動機回転速度NM2に応じてエンジン上限回転速度NELIMを下げるように変更しても良い。
【0099】
図10は、第2電動機回転速度NM2とエンジン上限回転速度NELIMとの予め実験的に求められて記憶された関係(エンジン上限回転速度マップ)の一例を示す図である。図10では、第2電動機回転速度NM2が高い程第2電動機M2の負荷が低下した際に第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となり易いという観点から、第2電動機回転速度NM2が所定値A以上となる高回転化領域において第2電動機回転速度NM2が高くなる程、エンジン上限回転速度NELIMが低くなるように定められている。前記エンジン上限回転速度設定手段92は、例えば図10に示す予め記憶された関係であるエンジン上限回転速度マップから実際の第2電動機回転速度NM2に基づいてエンジン上限回転速度NELIMを設定する。
【0100】
以上、エンジン上限回転速度NELIMを第2電動機回転速度NM2に応じて変更することを詳細に説明したが、このことは、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには、或いはまた第2電動機回転速度NM2が高回転化している領域にあるときには、エンジン回転速度NE の上昇を制限(禁止或いは抑制)することであると見ることもできる。
【0101】
図11は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち第2電動機M2の不要な回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
【0102】
図11において、先ず、前記シフトポジション判定手段88に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S11において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置が判断され、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジション例えば「D」ポジション或いは「M」ポジションであるか否かが判定される。
【0103】
前記S11の判断が否定される場合は、S15においてエンジン回転速度NE の制限に関連する制御以外のその他の制御が実行されるか、或いはそのまま本ルーチンが終了させられる。
【0104】
前記S11の判断が肯定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS12において、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度例えば10000rpmを超えたか否かが判定される。
【0105】
前記S12の判断が否定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS14において、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMが変更されることなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定される。例えば、エンジン8の過回転を防止するために燃料供給を遮断する制御のフューエルカット回転速度は通常のエンジン上限回転速度NELIMそのままとされる。
【0106】
一方で、前記S12の判断が肯定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS13において、エンジン回転速度NE の上限値として前記S14における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。例えば、フューエルカット回転速度が5600rpm 程度から4800rpm 程度に変更される。フューエルカット回転速度を変更する以外に、エンジン回転速度NE の上限値として例えばここでのエンジン上限回転速度NELIMに相当するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値が設定されてもよい。また、一定値のエンジン上限回転速度NELIMでもよいが、例えば図10に示すようなエンジン上限回転速度マップから実際の第2電動機回転速度NM2に応じてエンジン上限回転速度NELIMが設定されても良い。
【0107】
このS13においてエンジン上限回転速度NELIMが設定し直されたことにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により第2電動機M2に負荷がかからなくなったり或いは第2電動機M2の負荷が低下して第2電動機回転速度NM2が上昇したときに、変更されたエンジン上限回転速度NELIMで第2電動機回転速度NM2の上昇がエンジン回転速度制御手段86により自動的に制限される。すなわち、エンジン回転速度NE がそのエンジン上限回転速度NELIMに張り付いた段階で第2電動機回転速度NM2の上昇が第2電動機上昇可能回転速度NM2max で止められる。ここでは、第2電動機回転速度NM2の上昇を検出して次の動作に移るのでは無く、自動的に第2電動機上昇可能回転速度NM2max を保証できるところに良さがある。
【0108】
上述のように、本実施例によれば、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度NELIMが第2電動機回転速度NM2に応じて変更されるので、現在の第2電動機回転速度NM2に基づいてエンジン上限回転速度NELIMの影響を受ける第2電動機上昇可能回転速度NM2max を変更することが可能となり、例えば第2電動機回転速度NM2が比較的高いときにはエンジン上限回転速度NELIMを低くして第2電動機上昇可能回転速度NM2max を低く変更することが可能となり、第2電動機M2の回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上することができる。見方を換えれば、第2電動機M2の回転増加を抑制するように第2電動機回転速度NM2に応じてエンジン上限回転速度NELIMを予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態でエンジン走行をしている際に第2電動機M2の負荷が急に低下するなどして第2電動機回転速度NM2が上昇したとしても、第2電動機回転速度NM2が第2電動機上昇可能回転速度NM2max 以下となるように保証することができて第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【0109】
また、本実施例によれば、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには、第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが設定されるので、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには超えないときより低い回転速度となるようにエンジン回転速度NE が制限される。これにより、エンジン回転速度NE の上限が低くなり、第2電動機上昇可能回転速度NM2max も低くされて第2電動機M2の回転増加が抑制される。
【0110】
また、本実施例によれば、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには、エンジン回転速度NE が制限されるので、エンジン回転速度NE の影響を受ける第2電動機回転速度NM2も制限される。これにより、第2電動機M2の回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【0111】
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NE の制限はエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにフューエルカットにより実行されるので、適切にエンジン回転速度NE が制限されて第2電動機M2の回転増加が抑制される。
【0112】
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NE の制限はエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにスロットル弁開度θTHの開き側の上限を設定することにより実行されるので、適切にエンジン回転速度NE が制限されて第2電動機M2の回転増加が抑制される。
【0113】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0114】
前述の実施例では、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときに、第2電動機回転速度NM2の上昇を検出すること無くエンジン上限回転速度NELIMを通常よりも低い回転速度に予め設定しておくことで、例えば第2電動機M2の負荷が急に低下するなどして第2電動機回転速度NM2が上昇した際に、第2電動機回転速度NM2が第2電動機許容回転速度NM2LIM (すなわち第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となる回転速度)よりも低い第2電動機上昇可能回転速度NM2max で上げ止まるように自動的に保証するものであった。
【0115】
本実施例では、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときに、エンジン上限回転速度NELIMを通常よりも低い回転速度に設定することで、前述の実施例と同様の効果を得るものである。
【0116】
尚、本実施例は、実際に第2電動機回転速度NM2の上昇を検出する点が前述の実施例と主に相違するが、検出すること無く予めエンジン上限回転速度NELIMを設定することと比較した遅れを補う為に、第2電動機回転速度NM2が実際に所定高速回転状態となったときを検出するのではなく所定高速回転状態となることを予測するのである。
【0117】
具体的には、図12は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であり、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する回転速度変化量判定手段94を備える点が前記図7と主に相違する。
【0118】
図12において、前記回転速度判定手段90は、前述の機能に加えて、前記シフトポジション判定手段88によりシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであると判定されているときは、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えたか否かを判定する。この第2所定回転速度は、前記第1所定回転速度よりも低い回転速度であって、第2電動機回転速度NM2の上昇時に第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する為の予め実験的に求められて定められた条件値であり、例えば第1所定回転速度が10000rpm程度であるなら8000rpm 程度に設定される。つまり、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えればエンジン上限回転速度NELIMが通常よりも低い回転速度に予め変更されるので、その第1所定回転速度よりも低い回転速度に設定されるのである。
【0119】
前記回転速度変化量判定手段94は、前記回転速度判定手段90により第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えたと判定されているときの第2電動機回転速度変化量(繰り返し実行される制御作動(例えばフローチャート)においては第2電動機回転速度変化率と同義)ΔNM2が所定変化量N1以上であるか否かを判定し、第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1以上であると判定したときに第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する。つまり、この回転速度変化量判定手段94は、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えているときの第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1以上であるか否かに基づいて第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する高速回転状態予測手段として機能する。
【0120】
上記所定変化量N1は、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する為の予め実験的に求められて定められた第2電動機回転速度変化量ΔNM2の判定値である。また、この所定変化量N1は一定値を設定しても良いが、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えているときの第2電動機回転速度変化量ΔNM2に応じて所定変化量N1を設定しても良い。
【0121】
図13は、第2電動機回転速度NM2と所定変化量(第2電動機回転速度変化量判定値)N1との予め実験的に求められて記憶された関係(所定変化量マップ)の一例を示す図である。図13では、第2電動機回転速度NM2が高い程第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となり易いという観点から、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度(8000rpm 程度)を超えて第1所定回転速度(10000rpm程度)よりも低い回転速度となる領域において第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度に近づく程、所定変化量N1が小さくなるように定められている。前記回転速度変化量判定手段94は、例えば図13に示すような所定変化量マップから実際の第2電動機回転速度NM2に基づいて所定変化量N1を設定(変更)する。
【0122】
エンジン上限回転速度設定手段92は、前述の機能に加えて、前記回転速度変化量判定手段94により第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されない場合は、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMを変更することなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定する。
【0123】
一方で、前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度変化量判定手段94により第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測される場合は、エンジン回転速度NE の上限値として上述した所定高速回転状態となることが予測されない場合の設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMを設定(変更)する。例えば、前述の実施例と同様に、通常のエンジン上限回転速度NELIMが5600rpm 程度であるなら、そのエンジン上限回転速度NELIMを4800rpm 程度に変更する。
【0124】
以上、エンジン上限回転速度NELIMを第2電動機回転速度NM2に応じて変更することの別実施例を詳細に説明したが、このことは、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときには、エンジン回転速度NE の上昇を制限(禁止或いは抑制)することであると見ることもできる。
【0125】
図14は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち第2電動機M2の不要な回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図14のフローチャートは、前記図11に相当する別の実施例である。
【0126】
図14において、先ず、前記シフトポジション判定手段88に対応するS21において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置が判断され、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであるか否かが判定される。
【0127】
前記S21の判断が否定される場合は、S27においてエンジン回転速度NE の制限に関連する制御以外のその他の制御が実行されるか、或いはそのまま本ルーチンが終了させられる。
【0128】
前記S21の判断が肯定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS22において、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度例えば8000rpm を超えたか否かが判定される。
【0129】
前記S22の判断が肯定される場合は前記回転速度変化量判定手段94に対応するS23において、第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1を超えているか否かが判定される。つまり、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となるか否かが予測される。ここでは、第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1を超えていると判定されたときに第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測される。また、この所定変化量N1は、予め設定された一定値でも良いが、例えば図13に示すような所定変化量マップから実際の第2電動機回転速度NM2に基づいて設定されても良い。
【0130】
前記S23の判断が否定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS25において、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度例えば10000rpmを超えたか否かが判定される。
【0131】
前記S22の判断が否定されるか或いは前記S25の判断が否定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS26において、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMが変更されることなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定される。例えば、フューエルカット回転速度は通常のエンジン上限回転速度NELIMそのままとされる。つまり、エンジン回転速度NE の上昇制限はかけられない。
【0132】
一方で、前記S23の判断が肯定されるか或いは前記S25の判断が肯定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS24において、エンジン回転速度NE の上限値として前記S26における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。例えば、フューエルカット回転速度が5600rpm 程度から4800rpm 程度に変更される。つまり、エンジン回転速度NE の上昇が制限(禁止或いは抑制)される。また、フューエルカット回転速度を変更する以外に、エンジン回転速度NE の上限値として例えばここでのエンジン上限回転速度NELIMに相当するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値が設定されてもよい。また、一点だけでなく、例えば図10に示すようなエンジン上限回転速度マップからエンジン上限回転速度NELIMが設定されても良い。
【0133】
このS24において、現時点でのエンジン回転速度NE の上昇が制限されたり、或いはまたエンジン回転速度NE が設定し直されたエンジン上限回転速度NELIM以上とならないようにエンジン回転速度制御手段86により制限されることにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により第2電動機M2に負荷がかからなくなったり或いは第2電動機M2の負荷が低下して第2電動機回転速度NM2が上昇したときに、第2電動機回転速度NM2の上昇が自動的に制限される。すなわち、エンジン回転速度NE が張り付いた段階で第2電動機回転速度NM2の上昇が第2電動機上昇可能回転速度NM2max で止められる。ここでは、自動的に第2電動機上昇可能回転速度NM2max を保証できるところに良さがある。
【0134】
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例の効果に加え、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときには、所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが設定されるので、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときには所定高速回転状態となることが予測されないときより低い回転速度となるようにエンジン回転速度NE が制限される。これにより、エンジン回転速度NE の上限が低くなり、第2電動機上昇可能回転速度NM2max も低くされて第2電動機M2の回転増加が抑制される。
【0135】
また、本実施例によれば、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには、或いは第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときには、エンジン回転速度NE が制限されるので、エンジン回転速度NE の影響を受ける第2電動機回転速度NM2も制限される。これにより、第2電動機M2の回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【0136】
また、本実施例によれば、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えているときの第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1以上であるときに、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるので、例えば第2所定回転速度を超えた状態で第2電動機回転速度NM2が急速に上昇するときに所定高速回転状態となることが適切に予測される。
【0137】
また、本実施例によれば、第2所定回転速度を超えているときの第2電動機回転速度NM2に応じて所定変化量N1が設定されるので、第2電動機回転速度NM2と第2電動機回転速度変化量ΔNM2との影響を受ける第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることの予測の精度が向上される。
【実施例3】
【0138】
前述の実施例では、第2電動機M2の耐久性を向上する為にエンジン回転速度NE の上昇を制限して第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態とならないように第2電動機回転速度NM2の上昇を制限するものであった。
【0139】
ところで、変速機構10は自動変速部20を備えており、第2電動機M2の耐久性とは別に、不要に自動変速部20の所定回転要素の回転速度が高くなり例えばその所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となり遠心力や塑性変形などにより自動変速部20の耐久性が低下する可能性がある。例えば、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に、前述の実施例と同様に何らかの理由により変速機構10(特には自動変速部20)の負荷が急に低下すると、パワーオン状態である為にエンジン回転速度NE が増加し、それに伴って自動変速部20の所定回転要素の回転速度が増加して所定高速回転状態となり自動変速部20の耐久性が低下する可能性がある。
【0140】
尚、上記自動変速部20の所定回転要素は、自動変速部20を構成する回転部材のいずれであっても良いが、ここでは自動変速部20のインプット系の構成部品の1つである自動変速部20の入力軸すなわち伝達部材18を例示し、その自動変速部20の入力軸の回転速度を変速部インプット回転速度NATと表す。ここで、変速部インプット回転速度NATの所定高速回転状態とは、例えば変速部インプット回転速度NATが変速部インプット許容回転速度NATLIM を超える程に高回転速度となる回転状態のことである。上記変速部インプット許容回転速度NATLIM は、自動変速部20(特にはその入力軸)の耐久性等を考慮して自動変速部の入力軸に許容される最大許容回転速度を超えない変速部インプット回転速度領域で常用され得る為の予め実験的に求められて定められた変速部インプット上限回転速度である。
【0141】
そこで、本実施例では、前記エンジン上限回転速度NELIMを変速部インプット回転速度NATに応じて変更する。つまり、変速機構10においてはエンジン回転速度NE は変速部インプット回転速度NATに影響を与えるものであり、エンジン上限回転速度NELIMで変速部インプット回転速度NATが上昇可能な上限の回転速度(変速部インプット上昇可能回転速度)NATmax を規定するという観点から、通常はエンジン8を保護する為に設定されているエンジン上限回転速度NELIMを変更することで変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態とならないように変速部インプット回転速度NATの上昇を制限するのである。こうすることで、変速部インプット回転速度NATの上昇を検出してからその上昇を制限(禁止或いは抑制)する為の作動を実行するのでは無く、変速部インプット回転速度NATに応じてエンジン上限回転速度NELIMを予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態で自動変速部20の負荷が低下して変速部インプット回転速度NATが上昇したとしても、変速部インプット回転速度NATが変速部インプット許容回転速度NATLIM よりも低い変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で上げ止まるように自動的に保証することができて自動変速部20の耐久性を向上することができる。
【0142】
具体的には、前記シフトポジション判定手段88は、前述の機能に替えて或いは加えて、変速機構10(特には自動変速部20)の負荷が低下した場合に変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となる程にエンジン回転速度NE が増加する可能性がある走行状態としての前進走行ポジションであるか否かを判定する。
【0143】
前記回転速度判定手段90は、前述の機能に替えて或いは加えて、前記シフトポジション判定手段88によりシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであると判定されているときは、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えたか否かを判定する。この第1所定回転速度ATは、変速部インプット許容回転速度NATLIM よりも低い回転速度であって、自動変速部20の負荷が低下した際の変速部インプット回転速度NATの上昇に備えて前記エンジン上限回転速度NELIMの変更を判断する為の予め実験的に求められて定められた判定値であり、例えば変速部インプット許容回転速度NATLIM が12000rpm程度であるなら10000rpm程度に設定される。
【0144】
前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前述の機能に替えて或いは加えて、前記回転速度判定手段90により変速部インプット回転速度NATが未だ第1所定回転速度ATを超えていないと判定される場合は、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMを変更することなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定する。
【0145】
一方で、前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度判定手段90により変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えたと判定される場合は、エンジン回転速度NE の上限値として上述した第1所定回転速度ATを超えていないと判定される場合の設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMを設定(変更)する。例えば、通常のエンジン上限回転速度NELIMが5600rpm 程度であるなら、そのエンジン上限回転速度NELIMを4800rpm 程度に変更する。
【0146】
或いはまた、上述したように変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えたか否かの一点でエンジン上限回転速度NELIMを変更することに替えて、変速部インプット回転速度NATが変速部インプット許容回転速度NATLIM よりも低い回転速度ではあるが高回転化している領域において、変速部インプット回転速度NATに応じてエンジン上限回転速度NELIMを下げるように変更しても良い。
【0147】
図15は、変速部インプット回転速度NATとエンジン上限回転速度NELIMとの予め実験的に求められて記憶された関係(エンジン上限回転速度マップ)の一例を示す図である。図15では、変速部インプット回転速度NATが高い程自動変速部20の負荷が低下した際に変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となり易いという観点から、変速部インプット回転速度NATが所定値A以上となる高回転化領域において変速部インプット回転速度NATが高くなる程、エンジン上限回転速度NELIMが低くなるように定められている。前記エンジン上限回転速度設定手段92は、例えば図15に示すようなエンジン上限回転速度マップから実際の変速部インプット回転速度NATに基づいてエンジン上限回転速度NELIMを設定する。
【0148】
以上、エンジン上限回転速度NELIMを変速部インプット回転速度NATに応じて変更することを詳細に説明したが、このことは、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには、或いはまた変速部インプット回転速度NATが高回転化している領域にあるときには、エンジン回転速度NE の上昇を制限(禁止或いは抑制)することであると見ることもできる。
【0149】
図16は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち自動変速部20の入力軸の不要な回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図16のフローチャートは、前記図11に相当する別の実施例である。
【0150】
図16において、先ず、前記シフトポジション判定手段88に対応するS31において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置が判断され、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであるか否かが判定される。
【0151】
前記S31の判断が否定される場合は、S35においてエンジン回転速度NE の制限に関連する制御以外のその他の制御が実行されるか、或いはそのまま本ルーチンが終了させられる。
【0152】
前記S31の判断が肯定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS32において、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度AT例えば10000rpmを超えたか否かが判定される。
【0153】
前記S32の判断が否定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS34において、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMが変更されることなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定される。例えば、フューエルカット回転速度は通常のエンジン上限回転速度NELIMそのままとされる。
【0154】
一方で、前記S32の判断が肯定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS33において、エンジン回転速度NE の上限値として前記S34における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。例えば、フューエルカット回転速度が5600rpm 程度から4800rpm 程度に変更される。フューエルカット回転速度を変更する以外に、エンジン回転速度NE の上限値として例えばここでのエンジン上限回転速度NELIMに相当するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値が設定されてもよい。また、一点だけでなく、例えば図15に示すようなエンジン上限回転速度マップからエンジン上限回転速度NELIMが設定されても良い。
【0155】
このS33においてエンジン上限回転速度NELIMが設定し直されたことにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により自動変速部20に負荷がかからなくなったり或いは自動変速部20の負荷が低下して変速部インプット回転速度NATが上昇したときに、変更されたエンジン上限回転速度NELIMで変速部インプット回転速度NATの上昇がエンジン回転速度制御手段86により自動的に制限される。すなわち、エンジン回転速度NE がそのエンジン上限回転速度NELIMに張り付いた段階で変速部インプット回転速度NATの上昇が変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で止められる。ここでは、変速部インプット回転速度NATの上昇を検出して次の動作に移るのでは無く、自動的に変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を保証できるところに良さがある。
【0156】
上述のように、本実施例によれば、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度NELIMが変速部インプット回転速度NATに応じて変更されるので、現在の変速部インプット回転速度NATに基づいてエンジン上限回転速度NELIMの影響を受ける変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を変更することが可能となり、例えば変速部インプット回転速度NATが比較的高いときにはエンジン上限回転速度NELIMを低くして変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を低く変更することが可能となり、自動変速部20の入力軸の回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上することができる。見方を換えれば、自動変速部20の入力軸の回転増加を抑制するように変速部インプット回転速度NATに応じてエンジン上限回転速度NELIMを予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態でエンジン走行をしている際に自動変速部20の負荷が急に低下するなどして変速部インプット回転速度NATが上昇したとしても、変速部インプット回転速度NATが変速部インプット上昇可能回転速度NATmax 以下となるように保証することができて自動変速部20の耐久性を向上することができる。
【0157】
また、本実施例によれば、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには、第1所定回転速度ATを超えないときの設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが設定されるので、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには超えないときより低い回転速度となるようにエンジン回転速度NE が制限される。これにより、エンジン回転速度NE の上限が低くなり、変速部インプット上昇可能回転速度NATmax も低くされて自動変速部20の回転増加が抑制される。
【0158】
また、本実施例によれば、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには、エンジン回転速度NE が制限されるので、エンジン回転速度NE の影響を受ける変速部インプット回転速度NATも制限される。これにより、自動変速部20の入力軸の回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上することができる。
【0159】
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NE の制限はエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにフューエルカットにより実行されるので、適切にエンジン回転速度NE が制限されて自動変速部20の入力軸の回転増加が抑制される。
【0160】
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NE の制限はエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにスロットル弁開度θTHの開き側の上限を設定することにより実行されるので、適切にエンジン回転速度NE が制限されて自動変速部20の入力軸の回転増加が抑制される。
【実施例4】
【0161】
前述の実施例3では、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときに、変速部インプット回転速度NATの上昇を検出すること無くエンジン上限回転速度NELIMを通常よりも低い回転速度に予め設定しておくことで、例えば自動変速部20の負荷が急に低下するなどして変速部インプット回転速度NATが上昇した際に、変速部インプット回転速度NATが変速部インプット許容回転速度NATLIM (すなわち変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となる回転速度)よりも低い変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で上げ止まるように自動的に保証するものであった。
【0162】
本実施例では、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときに、エンジン上限回転速度NELIMを通常よりも低い回転速度に設定することで、前述の実施例3と同様の効果を得るものである。
【0163】
尚、本実施例は、実際に変速部インプット回転速度NATの上昇を検出する点が前述の実施例3と主に相違するが、検出すること無く予めエンジン上限回転速度NELIMを設定することと比較した遅れを補う為に、変速部インプット回転速度NATが実際に所定高速回転状態となったときを検出するのではなく所定高速回転状態となることを予測するのである。
【0164】
具体的には、前記回転速度判定手段90は、前述の実施例3での機能に加えて、前記シフトポジション判定手段88によりシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであると判定されているときは、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えたか否かを判定する。この第2所定回転速度ATは、前記第1所定回転速度ATよりも低い回転速度であって、変速部インプット回転速度NATの上昇時に変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることを予測する為の予め実験的に求められて定められた条件値であり、例えば第1所定回転速度ATが10000rpm程度であるなら8000rpm 程度に設定される。つまり、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えればエンジン上限回転速度NELIMが通常よりも低い回転速度に予め変更されるので、その第1所定回転速度ATよりも低い回転速度に設定されるのである。
【0165】
前記回転速度変化量判定手段94は、前述の機能に替えて或いは加えて、前記回転速度判定手段90により変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えたと判定されているときの変速部インプット回転速度変化量(繰り返し実行される制御作動(例えばフローチャート)においては変速部インプット回転速度変化率と同義)ΔNATが所定変化量N1AT以上であるか否かを判定し、変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1AT以上であると判定したときに変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることを予測する。つまり、この回転速度変化量判定手段94は、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えているときの変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1AT以上であるか否かに基づいて変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることを予測する高速回転状態予測手段として機能する。
【0166】
上記所定変化量N1ATは、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることを予測する為の予め実験的に求められて定められた変速部インプット回転速度変化量ΔNATの判定値である。また、この所定変化量N1ATは一定値を設定しても良いが、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えているときの変速部インプット回転速度変化量ΔNATに応じて所定変化量N1ATを設定しても良い。
【0167】
図17は、変速部インプット回転速度NATと所定変化量(変速部インプット回転速度変化量判定値)N1ATとの予め実験的に求められて記憶された関係(所定変化量マップ)の一例を示す図である。図17では、変速部インプット回転速度NATが高い程変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となり易いという観点から、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度AT(8000rpm 程度)を超えて第1所定回転速度AT(10000rpm程度)よりも低い回転速度となる領域において変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATに近づく程、所定変化量N1ATが小さくなるように定められている。前記回転速度変化量判定手段94は、例えば図17に示すような所定変化量マップから実際の変速部インプット回転速度NATに基づいて所定変化量N1ATを設定(変更)する。
【0168】
前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前述の実施例3での機能に加えて、前記回転速度変化量判定手段94により変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されない場合は、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMを変更することなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定する。
【0169】
一方で、前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度変化量判定手段94により変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測される場合は、エンジン回転速度NE の上限値として上述した所定高速回転状態となることが予測されない場合の設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMを設定(変更)する。例えば、前述の実施例と同様に、通常のエンジン上限回転速度NELIMが5600rpm 程度であるなら、そのエンジン上限回転速度NELIMを4800rpm 程度に変更する。
【0170】
以上、エンジン上限回転速度NELIMを変速部インプット回転速度NATに応じて変更することの別実施例を詳細に説明したが、このことは、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときには、エンジン回転速度NE の上昇を制限(禁止或いは抑制)することであると見ることもできる。
【0171】
図18は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち自動変速部20の入力軸の不要な回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図18のフローチャートは、前記図14に相当する別の実施例である。
【0172】
図18において、先ず、前記シフトポジション判定手段88に対応するS41において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置が判断され、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであるか否かが判定される。
【0173】
前記S41の判断が否定される場合は、S47においてエンジン回転速度NE の制限に関連する制御以外のその他の制御が実行されるか、或いはそのまま本ルーチンが終了させられる。
【0174】
前記S41の判断が肯定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS42において、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度AT例えば8000rpm を超えたか否かが判定される。
【0175】
前記S42の判断が肯定される場合は前記回転速度変化量判定手段94に対応するS43において、変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1ATを超えているか否かが判定される。つまり、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となるか否かが予測される。ここでは、変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1ATを超えていると判定されたときに変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測される。また、この所定変化量N1ATは、予め設定された一定値でも良いが、例えば図17に示すような所定変化量マップから実際の変速部インプット回転速度NATに基づいて設定されても良い。
【0176】
前記S43の判断が否定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS45において、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度AT例えば10000rpmを超えたか否かが判定される。
【0177】
前記S42の判断が否定されるか或いは前記S45の判断が否定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS46において、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMが変更されることなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定される。例えば、フューエルカット回転速度は通常のエンジン上限回転速度NELIMそのままとされる。つまり、エンジン回転速度NE の上昇制限はかけられない。
【0178】
一方で、前記S43の判断が肯定されるか或いは前記S45の判断が肯定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS44において、エンジン回転速度NE の上限値として前記S46における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。例えば、フューエルカット回転速度が5600rpm 程度から4800rpm 程度に変更される。つまり、エンジン回転速度NE の上昇が制限(禁止或いは抑制)される。また、フューエルカット回転速度を変更する以外に、エンジン回転速度NE の上限値として例えばここでのエンジン上限回転速度NELIMに相当するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値が設定されてもよい。また、一点だけでなく、例えば図15に示すようなエンジン上限回転速度マップからエンジン上限回転速度NELIMが設定されても良い。
【0179】
このS44において、現時点でのエンジン回転速度NE の上昇が制限されたり、或いはまたエンジン回転速度NE が設定し直されたエンジン上限回転速度NELIM以上とならないようにエンジン回転速度制御手段86により制限されることにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により自動変速部20に負荷がかからなくなったり或いは自動変速部20の負荷が低下して変速部インプット回転速度NATが上昇したときに、変速部インプット回転速度NATの上昇が自動的に制限される。すなわち、エンジン回転速度NE が張り付いた段階で変速部インプット回転速度NATの上昇が変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で止められる。ここでは、自動的に変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を保証できるところに良さがある。
【0180】
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例3の効果に加え、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときには、所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが設定されるので、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときには所定高速回転状態となることが予測されないときより低い回転速度となるようにエンジン回転速度NE が制限される。これにより、エンジン回転速度NE の上限が低くなり、変速部インプット上昇可能回転速度NATmax も低くされて自動変速部20の入力軸の回転増加が抑制される。
【0181】
また、本実施例によれば、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには、或いは変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときには、エンジン回転速度NE が制限されるので、エンジン回転速度NE の影響を受ける変速部インプット回転速度NATも制限される。これにより、自動変速部20の入力軸の回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上することができる。
【0182】
また、本実施例によれば、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えているときの変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1AT以上であるときに、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるので、例えば第2所定回転速度ATを超えた状態で変速部インプット回転速度NATが急速に上昇するときに所定高速回転状態となることが適切に予測される。
【0183】
また、本実施例によれば、第2所定回転速度ATを超えているときの変速部インプット回転速度NATに応じて所定変化量N1ATが設定されるので、変速部インプット回転速度NATと変速部インプット回転速度変化量ΔNATとの影響を受ける変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることの予測の精度が向上される。
【実施例5】
【0184】
前述の実施例1乃至4のエンジン回転速度制御手段86は、エンジン8に対して燃料噴射装置66からの燃料供給を停止(或いは抑制)させるフューエルカット、或いは、エンジン8に対する混合気供給量を制御する電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHの制限を実行することにより、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限するものであったが、図19に示すようにエンジン8に直接的に連結され、且つ電子制御装置80により制御される第3電動機M3を用いてエンジン回転速度NE を制限するものであってもよい。このような第3電動機M3を用いてエンジン回転速度NE を制限するエンジン回転速度制御手段86は、前述の実施例1乃至4においてそれぞれ適用可能であるが、実施例1に適用した例を以下に説明する。
【0185】
図19は本実施例のハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であり、図20は電子制御装置80の制御機能を説明する機能ブロック線図であり、図21は電子制御装置80の制御作動を説明するフローチャートである。図19、図20、および図20は、図1、図7、および図11に対応している。図19および図20に示すように、本実施例のエンジン8には、そのクランク軸に直接的に連結された第3電動機M3が備えられている点で、相違している。この第3電動機M3は、第1電動機M1および第2電動機M2と同様に、発電機能をも有する所謂モータジェネレータでり、エンジン8のクランク軸の位置に拘わらずそれに対して動力伝達可能に連結されていればよい。
【0186】
図20において、本実施例のエンジン回転速度制御手段96は、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限するために第3電動機M3を用いる。たとえば、エンジン回転速度NE がエンジン上限回転速度NELIMを超えようとするときには第3電動機M3を回生状態としてエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限し、エンジン8のオーバーレブ(過回転)を回避する。
【0187】
図21のエンジン上限回転速度設定手段92に対応するS13においては、前述の実施例1のように、エンジン回転速度NE の上限値として前記S14における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。これにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により第2電動機M2に負荷がかからなくなったり或いは第2電動機M2の負荷が低下して第2電動機回転速度NM2が上昇したときに、変更されたエンジン上限回転速度NELIMで第2電動機回転速度NM2の上昇がエンジン回転速度制御手段86により自動的に制限される。したがって、本実施例においても、前述の実施例1等と同様の効果が得られる。
【0188】
また、本実施例のエンジン回転速度制御手段96は、エンジン8に連結された第3電動機M3を用いて、エンジン回転速度NE がエンジン上限回転速度NELIMを超えようにエンジン回転速度制限制御を実行するので、エンジン8に対する燃料供給を遮断するフューエルカットや、エンジン8に対する燃料供給を制限するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値設定に比較して、エンジン回転速度NE を制限するための制御操作において高い応答性が得られる利点がある。
【0189】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は実施例相互を組み合わせて実施可能であると共にその他の態様においても適用される。
【0190】
例えば、前述の実施例では、エンジン上限回転速度NELIMを設定し直したのは、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により第2電動機M2に負荷がかからなくなったり或いは第2電動機M2の負荷が低下した場合に、変更したエンジン上限回転速度NELIMで第2電動機回転速度NM2の上昇を自動的に制限する為であったが、変更したエンジン上限回転速度NELIMを支点に差動部11の差動作用を利用して第1電動機M1で第2電動機M2の高回転化を阻止する制御を積極的に実行する為であっても良い。例えば、第1電動機M1を制御して第1サンギヤS1の回転速度を上昇させることで、前述の実施例と同様にエンジン回転速度NE がそのエンジン上限回転速度NELIMに張り付いた段階で第2電動機回転速度NM2の上昇が第2電動機上昇可能回転速度NM2max で止められる。こうすることでも、自動的に第2電動機上昇可能回転速度NM2max を保証できる良さがある。
【0191】
また、前述の実施例では、エンジン上限回転速度NELIMを設定し直したのは、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により自動変速部20に負荷がかからなくなったり或いは自動変速部20の負荷が低下した場合に、変更したエンジン上限回転速度NELIMで変速部インプット回転速度NATの上昇を自動的に制限する為であったが、変更したエンジン上限回転速度NELIMを支点に差動部11の差動作用を利用して第1電動機M1および/または第2電動機M2で自動変速部20の入力軸の高回転化を阻止する制御を積極的に実行する為であっても良い。例えば、第1電動機M1を制御して第1サンギヤS1の回転速度を上昇させることで、前述の実施例と同様にエンジン回転速度NE がそのエンジン上限回転速度NELIMに張り付いた段階で変速部インプット回転速度NATの上昇が変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で止められる。こうすることでも、自動的に変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を保証できる良さがある。
【0192】
また、前述の実施例では、差動部11(動力分配機構16)はそのギヤ比γ0が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであったが、例えば差動部11の変速比γ0を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであっても本発明は適用され得る。
【0193】
また、前述の実施例において、差動部11は、動力分配機構16に設けられて差動作用を制限することにより少なくとも前進2段の有段変速機としても作動させられる差動制限装置を備えたものであっても良い。
【0194】
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
【0195】
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
【0196】
また、前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、例えばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され、第2電動機M2は伝達部材18に連結されてもよい。
【0197】
また、前述の実施例では、第1クラッチC1や第2クラッチC2などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。例えば電磁クラッチであるような場合には、油圧制御回路70は油路を切り換える弁装置ではなく電磁クラッチへの電気的な指令信号回路を切り換えるスイッチング装置や電磁切換装置等により構成される。
【0198】
また、前述の実施例では、差動部11すなわち動力分配機構16の出力部材である伝達部材18と駆動輪34との間の動力伝達経路に、変速部として自動変速部20が介挿されていたが、例えば自動変速機の一種である無段変速機(CVT)、手動変速機としてよく知られた常時噛合式平行2軸型ではあるがセレクトシリンダおよびシフトシリンダによりギヤ段が自動的に切り換えられることが可能な自動変速機等の他の形式の変速部(変速機)が設けられていてもよい。或いは、上記変速部は必ずしも備えられている必要はない。このようにしても、本発明は適用され得る。
【0199】
また、前述の実施例では、自動変速部20は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20が配設されてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20とは、例えば伝達部材18としてのカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
【0200】
また、前述の実施例の差動機構としての動力分配機構16は、例えばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および伝達部材18(第2電動機M2)に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
【0201】
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。また、その遊星歯車装置はシングルピニオン型に限られたものではなくダブルピニオン型の遊星歯車装置であってもよい。
【0202】
また、前述の実施例のシフト操作装置50は、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えていたが、そのシフトレバー52に替えて、例えば押しボタン式のスイッチやスライド式スイッチ等の複数種類のシフトポジションPSHを選択可能なスイッチ、或いは手動操作に因らず運転者の音声に反応して複数種類のシフトポジションPSHを切り換えられる装置や足の操作により複数種類のシフトポジションPSHを切り換えられる装置等であってもよい。また、シフトレバー52が「M」ポジションへ操作されることにより、変速レンジが設定されるものであったがギヤ段が設定されることすなわち各変速レンジの最高速ギヤ段がギヤ段として設定されてもよい。この場合、自動変速部20ではギヤ段が切り換えられて変速が実行される。例えば、シフトレバー52が「M」ポジションにおけるアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ手動操作されると、自動変速部20では第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の何れかがシフトレバー52の操作に応じて設定される。
【0203】
また、前述の実施例1乃至5は、信頼性の高めるなどの目的で、それらのうちのいずれかの制御が組み合わされて実行されてもよい。
【0204】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の駆動装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表である。
【図3】図1の駆動装置における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
【図4】図1の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図5】油圧制御回路のうちクラッチCおよびブレーキBの各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する回路図である。
【図6】シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
【図7】図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図8】駆動装置の変速制御において用いられる変速マップの一例と、エンジン走行とモータ走行とを切り換える駆動力源切換制御において用いられる駆動力源マップの一例とを示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。
【図9】破線はエンジンの最適燃費率曲線であって燃費マップの一例である。
【図10】エンジン回転速度の制限制御に用いられるエンジン上限回転速度マップの一例を示す図である。
【図11】図4の電子制御装置の制御作動すなわち第2電動機の不要な回転増加を抑制して第2電動機の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートである。
【図12】図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図7に相当する別の実施例である。
【図13】第2電動機回転速度が所定高速回転状態となることの予測に用いられる所定変化量(第2電動機回転速度変化量判定値)マップの一例を示す図である。
【図14】図4の電子制御装置の制御作動すなわち第2電動機の不要な回転増加を抑制して第2電動機の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図11に相当する別の実施例である。
【図15】エンジン回転速度の制限制御に用いられるエンジン上限回転速度マップの一例を示す図である。
【図16】図4の電子制御装置の制御作動すなわち自動変速部の入力軸の不要な回転増加を抑制して自動変速部の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図11に相当する別の実施例である。
【図17】変速部インプット回転速度が所定高速回転状態となることの予測に用いられる所定変化量(変速部インプット回転速度変化量判定値)マップの一例を示す図である。
【図18】図4の電子制御装置の制御作動すなわち自動変速部の入力軸の不要な回転増加を抑制して自動変速部の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図14に相当する別の実施例である。
【図19】本発明の他の実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図20】図19の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図21】図19の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0206】
8:エンジン
10:変速機構(車両用駆動装置)
11:電気式差動部
16:動力分配機構(差動機構)
18:伝達部材
20:自動変速部(変速部)
34:駆動輪
80:電子制御装置(制御装置)
M1:第1電動機
M2:第2電動機
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動が可能な差動機構を有する電気式差動部を備える車両用駆動装置の制御装置に係り、特に、エンジン回転速度を適切に制限する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンに連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有してエンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備える車両用駆動装置の制御装置が良く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置の制御装置がそれである。この車両用駆動装置の制御装置では、差動機構が遊星歯車装置で構成されると共に、伝達部材に作動的に連結された第2電動機と、伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に有段式の自動変速機で構成される変速部とを更に備え、無段変速機として機能させられる電気式差動部の変速比と変速部の各ギヤ段(変速段)に対応する変速比とで駆動装置全体の総合変速比(トータル変速比)が形成される。
【0004】
【特許文献1】特開2005−264762号公報
【特許文献2】特開2003−193878号公報
【特許文献3】特開2004−153946号公報
【特許文献4】特開2005−105957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した車両用駆動装置の制御装置において、少なくともエンジンを駆動力源としてパワーオン状態でエンジン走行をしている際に、例えばD→Nシフトにより変速部がニュートラル状態になったり、変速部の変速段を形成する際に係合される係合装置の係合圧が低下するような変速部の故障が発生したり、駆動輪のスリップが発生したりして、車両用駆動装置の負荷が急に低下してしまうことが考えられる。そうすると、パワーオン状態である為にエンジン回転速度が増加し、それに伴って第2電動機の回転速度や変速部の所定回転要素(例えば変速部の入力系回転部材)の回転速度が増加して例えば許容回転を超える程に高回転速度となり、第2電動機や変速部の耐久性が低下する可能性があった。尚、ここでは、電気式差動部と変速部とを備える車両用駆動装置を例示して説明したが、変速部を備えない車両用駆動装置においてもパワーオン状態でのエンジン走行時に車両用駆動装置の負荷が急に低下してしまうとエンジン回転速度の増加に伴って第2電動機が高回転速度となり、第2電動機の耐久性が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、第2電動機或いは変速部の所定回転要素の不要な回転増加を抑制して、第2電動機或いは変速部の耐久性を向上することができる車両用駆動装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材および第2電動機に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置において、(b) 予め定められたエンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンの回転速度を制限するものであり、(c) 前記エンジン上限回転速度を前記第2電動機の回転速度に応じて変更することにある。
【0008】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、その第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである。
【0009】
また、請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、その所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである。
【0010】
また、前記目的を達成するための請求項4にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材および第2電動機に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置において、(b) 前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度を制限することにある。
【0011】
また、請求項5にかかる発明は、請求項3または4に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2電動機の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときのその第2電動機の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、その第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるものである。
【0012】
また、請求項6にかかる発明は、請求項5に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2所定回転速度を超えているときの前記第2電動機の回転速度に応じて前記所定変化量を設定するものである。
【0013】
また、前記目的を達成するための請求項7にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部と、その伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、(b) 予め定められたエンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンの回転速度を制限するものであり、(c) 前記エンジン上限回転速度を前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて変更することにある。
【0014】
また、請求項8にかかる発明は、請求項7に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、その第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである。
【0015】
また、請求項9にかかる発明は、請求項7に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、その所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである。
【0016】
また、前記目的を達成するための請求項10にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部と、その伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、(b) 前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度を制限することにある。
【0017】
また、請求項11にかかる発明は、請求項9または10に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速部の所定回転要素の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときのその変速部の所定回転要素の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、その変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるものである。
【0018】
また、請求項12にかかる発明は、請求項11に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記第2所定回転速度を超えているときの前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて前記所定変化量を設定するものである。
【0019】
また、請求項13にかかる発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記エンジンの回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないようにフューエルカットを実行するものである。
【0020】
また、請求項14にかかる発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記エンジンの回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないようにスロットル弁開度の上限を設定するものである。
【0021】
また、請求項15にかかる発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記エンジン回転速度の制限は、前記エンジンに連結された第3電動機により実行されるものである。
【0022】
また、請求項16にかかる発明は、請求項1乃至14のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記電気式差動部は、前記第1電動機の運転状態が制御されることにより無段変速機として作動するものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、予め定められたエンジン上限回転速度を超えないようにエンジンの回転速度が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度が第2電動機の回転速度に応じて変更されるので、現在の第2電動機の回転速度に基づいてエンジン上限回転速度の影響を受ける第2電動機の回転速度が上昇可能な上限の回転速度(上昇可能回転速度)を変更することが可能となり、例えば第2電動機の回転速度が比較的高いときにはエンジン上限回転速度を低くして第2電動機の上昇可能回転速度を低く変更することが可能となり、第2電動機の回転増加を抑制して第2電動機の耐久性を向上することができる。見方を換えれば、第2電動機の回転増加を抑制するように第2電動機の回転速度に応じてエンジン上限回転速度を予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態でエンジン走行をしている際に車両用駆動装置の負荷が急に低下したとしても、第2電動機の回転速度が上昇可能回転速度以下となるように保証することができて第2電動機の耐久性を向上することができる。
【0024】
ここで、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、その第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度が設定されるので、第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには超えないときより低い回転速度でエンジン回転速度が制限される。これにより、エンジン回転速度の上限が低くなり、第2電動機の上昇可能回転速度も低くされて第2電動機の回転増加が抑制される。
【0025】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、その所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度が設定されるので、第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときにはその所定高速回転状態となることが予測されないときより低い回転速度にエンジン回転速度が制限される。これにより、エンジン回転速度の上限が低くなり、第2電動機の上昇可能回転速度も低くされて第2電動機の回転増加が抑制される。
【0026】
また、好適には、請求項4に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度が制限されるので、エンジンの回転速度の影響を受ける第2電動機の回転速度も制限される。これにより、第2電動機の回転増加を抑制して第2電動機の耐久性を向上することができる。
【0027】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2電動機の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときの第2電動機の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、その第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるので、例えば第2所定回転速度を超えた状態で第2電動機の回転速度が急速に上昇するときに所定高速回転状態となることが適切に予測される。
【0028】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2所定回転速度を超えているときの前記第2電動機の回転速度に応じて前記所定変化量が設定されるので、第2電動機の回転速度とその回転速度変化量との影響を受ける第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることの予測の精度が向上される。
【0029】
また、好適には、請求項7に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、予め定められたエンジン上限回転速度を超えないようにエンジンの回転速度が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度が変速部の所定回転要素の回転速度に応じて変更されるので、現在の変速部の所定回転要素の回転速度に基づいてエンジン上限回転速度の影響を受ける変速部の所定回転要素の回転速度が上昇可能な上限の回転速度(上昇可能回転速度)を変更することが可能となり、例えば変速部の所定回転要素の回転速度が比較的高いときにはエンジン上限回転速度を低くして変速部の所定回転要素の上昇可能回転速度を低く変更することが可能となり、変速部の所定回転要素の回転増加を抑制して変速部(例えば変速部の所定回転要素)の耐久性を向上することができる。見方を換えれば、変速部の所定回転要素の回転増加を抑制するように変速部の所定回転要素の回転速度に応じてエンジン上限回転速度を予め変更しておくことが可能となり、仮に、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に車両用駆動装置の負荷が急に低下したとしても、変速部の所定回転要素の回転速度が上昇可能回転速度以下となるように保証することができて変速部の耐久性を向上することができる。
【0030】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、その第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度が設定されるので、変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには超えないときより低い回転速度でエンジン回転速度が制限される。これにより、エンジン回転速度の上限が低くなり、変速部の所定回転要素の上昇可能回転速度も低くされて変速部の所定回転要素の回転増加が抑制される。
【0031】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、その所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度が設定されるので、変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときにはその所定高速回転状態となることが予測されないときより低い回転速度でエンジン回転速度が制限される。これにより、エンジン回転速度の上限が低くなり、変速部の所定回転要素の上昇可能回転速度も低くされて変速部の所定回転要素の回転増加が抑制される。
【0032】
また、好適には、請求項10に係る発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度が制限されるので、エンジンの回転速度の影響を受ける変速部の所定回転要素の回転速度も制限される。これにより、変速部の所定回転要素の回転増加を抑制して変速部(例えば変速部の所定回転要素)の耐久性を向上することができる。
【0033】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記変速部の所定回転要素の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときの変速部の所定回転要素の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、その変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるので、例えば第2所定回転速度を超えた状態で変速部の所定回転要素の回転速度が急速に上昇するときに所定高速回転状態となることが適切に予測される。
【0034】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記第2所定回転速度を超えているときの前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて前記所定変化量が設定されるので、変速部の所定回転要素の回転速度とその回転速度変化量との影響を受ける変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることの予測の精度が向上される。
【0035】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記エンジンの回転速度の制限は前記エンジン上限回転速度を超えないようにフューエルカットにより実行されるので、適切にエンジン回転速度が制限されて第2電動機の回転増加或いは変速部の所定回転要素の回転増加が抑制される。
【0036】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記エンジンの回転速度の制限は前記エンジン上限回転速度を超えないようにスロットル弁開度の上限を設定することにより実行されるので、適切にエンジン回転速度が制限されて第2電動機の回転増加或いは変速部の所定回転要素の回転増加が抑制される。
【0037】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記エンジン回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンに連結された第3電動機により実行されるので、エンジンに対する燃料供給を遮断するフューエルカットや、エンジンに対する燃料供給を制限するスロットル弁開度の上限設定に比較して、前記エンジン回転速度を制限するための制御操作において高い応答性が得られる利点がある。
【0038】
また、好適には、前記車両用駆動装置の制御装置によれば、前記電気式差動部は前記第1電動機の運転状態が制御されることにより無段変速機として作動させられるので、電気式差動部と前記変速部とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることが可能である。尚、電気式差動部は、変速比を連続的に変化させて電気的な無段変速機として作動させる他に変速比を段階的に変化させて有段変速機として作動させることも可能である。
【0039】
また、好適には、前記差動機構は、前記エンジンに連結された第1要素と前記第1電動機に連結された第2要素と前記伝達部材に連結された第3要素とを有する遊星歯車装置であり、前記第1要素はその遊星歯車装置のキャリヤであり、前記第2要素はその遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第3要素はその遊星歯車装置のリングギヤである。このようにすれば、前記差動機構の軸方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つの遊星歯車装置によって簡単に構成され得る。
【0040】
また、好適には、前記遊星歯車装置はシングルピニオン型遊星歯車装置である。このようにすれば、前記差動機構の軸方向寸法が小さくなる。また、差動機構が1つのシングルピニオン型遊星歯車装置によって簡単に構成される。
【0041】
また、好適には、前記変速部の変速比(ギヤ比)と前記電気式差動部の変速比とに基づいて前記車両用駆動装置の総合変速比が形成されるものである。このようにすれば、変速部の変速比を利用することによって駆動力が幅広く得られるようになる。
【0042】
また、好適には、前記変速部は有段式の自動変速機である。このようにすれば、例えば電気的な無段変速機として機能させられる電気式差動部と変速部とで無段変速機が構成され、滑らかに駆動トルクを変化させることが可能であると共に、電気式差動部の変速比を一定となるように制御した状態においては電気式差動部と変速部とで有段変速機と同等の状態が構成され、車両用駆動装置の総合変速が段階的に変化させられて速やかに駆動トルクを得ることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0044】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接的に連結された無段変速部としての電気式差動部(以下、差動部という)11と、その差動部11と駆動輪34(図7参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪34との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)32(図7参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
【0045】
このように、本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
【0046】
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
【0047】
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24を主体として構成されている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
【0048】
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。このように構成された動力分配機構16は、第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
【0049】
自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
【0050】
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0051】
このように、自動変速部20内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部20の各ギヤ段(変速段)を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0052】
また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT )が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の解放によりニュートラル「N」状態とされる。
【0053】
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
【0054】
以上のように構成された変速機構10において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部20とで全体として無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部20とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
【0055】
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT )が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
【0056】
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0057】
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構10において有段変速機と同等の状態が構成される。
【0058】
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部20の第4速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.7」程度であるトータル変速比γTが得られる。
【0059】
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NE を示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
【0060】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
【0061】
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
【0062】
例えば、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、エンジン回転速度NE を制御することによって直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転速度すなわち第1電動機M1の回転速度が上昇或いは下降させられる。
【0063】
また、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転がエンジン回転速度NE と同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NE と同じ回転で第1リングギヤR1の回転速度すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転が零とされると、エンジン回転速度NE よりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
【0064】
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0065】
自動変速部20では、差動部11において直線L0が横線X2と一致させられてエンジン回転速度NE と同じ回転速度が差動部11から第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速(1st )の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速(2nd )の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速(3rd )の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速(4th )の出力軸22の回転速度が示される。
【0066】
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
【0067】
電子制御装置80には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPW を表す信号、シフトレバー52(図6参照)のシフトポジションPSHや「M」ポジションにおける操作回数等を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NE を表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUT に対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温TOIL を表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置56(図7参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0068】
また、上記電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図7参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路70(図5、図7参照)に含まれる電磁弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路70に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧PLを調圧するための信号、そのライン油圧PLが調圧されるための元圧の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
【0069】
図5は、油圧制御回路70のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)AC1、AC2、AB1、AB2、AB3の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する回路図である。
【0070】
図5において、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3には、ライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により電子制御装置80からの指令信号に応じた係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給されるようになっている。このライン油圧PLは、図示しない電動オイルポンプやエンジン8により回転駆動される機械式オイルポンプから発生する油圧を元圧として例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によって、アクセル開度Acc或いはスロットル弁開度θTHで表されるエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
【0071】
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置80により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1、C2、ブレーキB1、B2、B3の係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3が制御される。そして、自動変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速部20の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチツウクラッチ変速が実行される。
【0072】
図6は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
【0073】
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20の自動変速制御における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
【0074】
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路70が電気的に切り換えられる。
【0075】
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
【0076】
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
【0077】
図7は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、有段変速制御手段82は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUT とを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)およびダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(変速線図、変速マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUT で示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。
【0078】
このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路70へ出力する。油圧制御回路70は、その指令に従って、例えば解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路70内のリニアソレノイドバルブSLを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
【0079】
ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NE とエンジントルクTE となるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
【0080】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NE と車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NE とエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TE とで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図9の破線に示すようなエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTE とエンジン回転速度NE となるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。
【0081】
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
【0082】
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって例えば第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度NE を略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NE を略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1を任意の回転速度に回転制御することができる。
【0083】
例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84は車両走行中にエンジン回転速度NE を引き上げる場合には、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。また、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NE を略一定に維持する場合には、エンジン回転速度NE を略一定に維持しつつ自動変速部20の変速に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
【0084】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によってモータ走行させることができる。
【0085】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUT とを変数として予め記憶された走行用駆動力源をエンジン8と第2電動機M2とで切り換えるためのエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する関係(駆動力源切換線図、駆動力源マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUT で示される車両状態に基づいて、モータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。図8の実線Aに示す駆動力源マップは、例えば同じ図8中の実線および一点鎖線に示す変速マップと共に予め記憶されている。このように、ハイブリッド制御手段84によるモータ走行は、図8から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT 域すなわち低エンジントルクTE 域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
【0086】
ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御して例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度NE を零乃至略零に維持する。
【0087】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪34にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
【0088】
また、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、差動部11がトルクの伝達を不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とすることが可能である。
【0089】
また、ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段84による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジン出力制御を実行する。
【0090】
また、ハイブリッド制御手段84は、予め定められたエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限するエンジン回転速度制限手段86を備えている。例えば、エンジン回転速度制限手段86は、燃料噴射装置66による燃料供給を停止(或いは抑制)することにより例えばエンジン8のオーバーレブ(過回転)を回避する為の良く知られたフューエルカットを実行することにより、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限する。或いはまた、エンジン回転速度制限手段86は、スロットルアクチュエータ64による電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを制限することにより例えばスロットル弁開度θTHの開き側の上限を設定することにより、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限する。
【0091】
上記エンジン上限回転速度NELIMは、エンジン8の耐久性等を考慮してエンジン8に許容される最大許容回転速度を超えないエンジン回転速度領域で常用され得る為の予め実験的に求められて定められたエンジン許容回転速度である。見方を換えれば、このエンジン上限回転速度NELIMは、エンジン回転速度制限手段86によりエンジン回転速度NE が制限されてエンジン8を保護する為の予め定められたエンジン回転速度高回転側制限回転速度でもある。また、エンジン回転速度NE の制限をフューエルカットにより行う過回転防止制御が備えられる場合には、このエンジン上限回転速度NELIMはフューエルカット回転速度でもある。
【0092】
ところで、変速機構10において、不要に第2電動機回転速度NM2が高くなり例えば第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となり第2電動機M2の耐久性が低下する可能性がある。例えば、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に、シフトレバー52が「D」→「N」操作されることにより自動変速部20がニュートラル状態となったり、係合されるべきクラッチCやブレーキBの係合圧が低下するような自動変速部20のフェールが発生したり、駆動輪34のスリップが発生したりする等の何らかの理由により変速機構10(特には第2電動機M2)の負荷が急に低下すると、パワーオン状態である為にエンジン回転速度NE が増加し、それに伴って第2電動機回転速度NM2が増加して所定高速回転状態となり第2電動機M2の耐久性が低下する可能性がある。ここで、第2電動機回転速度NM2の所定高速回転状態とは、例えば第2電動機回転速度NM2が第2電動機許容回転速度NM2LIM を超える程に高回転速度となる回転状態のことである。上記第2電動機許容回転速度NM2LIM は、第2電動機M2の耐久性等を考慮して第2電動機M2に許容される最大許容回転速度を超えない第2電動機回転速度領域で常用され得る為の予め実験的に求められて定められた第2電動機上限回転速度である。
【0093】
そこで、本実施例では、前記エンジン上限回転速度NELIMを第2電動機回転速度NM 2 に応じて変更する。つまり、差動部11においてはエンジン回転速度NE は第2電動機回転速度NM2に影響を与えるものであり、エンジン上限回転速度NELIMで第2電動機回転速度NM2が上昇可能な上限の回転速度(第2電動機上昇可能回転速度)NM2max を規定するという観点から、通常はエンジン8を保護する為に設定されているエンジン上限回転速度NELIMを変更することで第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態とならないように第2電動機回転速度NM2の上昇を制限するのである。こうすることで、第2電動機回転速度NM2の上昇を検出してからその上昇を制限(禁止或いは抑制)する為の作動を実行するのでは無く、第2電動機回転速度NM2に応じてエンジン上限回転速度NELIMを予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態で第2電動機M2の負荷が低下して第2電動機回転速度NM2が上昇したとしても、第2電動機回転速度NM2が第2電動機許容回転速度NM2LIM よりも低い第2電動機上昇可能回転速度NM2max で上げ止まるように自動的に保証することができて第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【0094】
具体的には、シフトポジション判定手段88は、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置を判断し、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジション例えば「D」ポジション或いは「M」ポジションであるか否かを判定する。つまり、シフトポジション判定手段88は、変速機構10(特には第2電動機M2)の負荷が低下した場合に第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となる程にエンジン回転速度NE が増加する可能性がある走行状態としての前進走行ポジションであるか否かを判定する。
【0095】
回転速度判定手段90は、前記シフトポジション判定手段88によりシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであると判定されているときは、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えたか否かを判定する。この第1所定回転速度は、第2電動機許容回転速度NM2LIM よりも低い回転速度であって、第2電動機M2の負荷が低下した際の第2電動機回転速度NM2の上昇に備えて前記エンジン上限回転速度NELIMの変更を判断する為の予め実験的に求められて定められた判定値であり、例えば第2電動機許容回転速度NM2LIM が12000rpm程度であるなら10000rpm程度に設定される。
【0096】
エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度判定手段90により第2電動機回転速度NM2が未だ第1所定回転速度を超えていないと判定される場合は、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMを変更することなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定する。
【0097】
一方で、前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度判定手段90により第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えたと判定される場合は、エンジン回転速度NE の上限値として上述した第1所定回転速度を超えていないと判定される場合の設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMを設定(変更)する。例えば、通常のエンジン上限回転速度NELIMが5600rpm 程度であるなら、そのエンジン上限回転速度NELIMを4800rpm 程度に変更する。
【0098】
或いはまた、上述したように第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えたか否かの一点でエンジン上限回転速度NELIMを変更することに替えて、第2電動機回転速度NM2が第2電動機許容回転速度NM2LIM よりも低い回転速度ではあるが高回転化している領域において、第2電動機回転速度NM2に応じてエンジン上限回転速度NELIMを下げるように変更しても良い。
【0099】
図10は、第2電動機回転速度NM2とエンジン上限回転速度NELIMとの予め実験的に求められて記憶された関係(エンジン上限回転速度マップ)の一例を示す図である。図10では、第2電動機回転速度NM2が高い程第2電動機M2の負荷が低下した際に第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となり易いという観点から、第2電動機回転速度NM2が所定値A以上となる高回転化領域において第2電動機回転速度NM2が高くなる程、エンジン上限回転速度NELIMが低くなるように定められている。前記エンジン上限回転速度設定手段92は、例えば図10に示す予め記憶された関係であるエンジン上限回転速度マップから実際の第2電動機回転速度NM2に基づいてエンジン上限回転速度NELIMを設定する。
【0100】
以上、エンジン上限回転速度NELIMを第2電動機回転速度NM2に応じて変更することを詳細に説明したが、このことは、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには、或いはまた第2電動機回転速度NM2が高回転化している領域にあるときには、エンジン回転速度NE の上昇を制限(禁止或いは抑制)することであると見ることもできる。
【0101】
図11は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち第2電動機M2の不要な回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
【0102】
図11において、先ず、前記シフトポジション判定手段88に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S11において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置が判断され、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジション例えば「D」ポジション或いは「M」ポジションであるか否かが判定される。
【0103】
前記S11の判断が否定される場合は、S15においてエンジン回転速度NE の制限に関連する制御以外のその他の制御が実行されるか、或いはそのまま本ルーチンが終了させられる。
【0104】
前記S11の判断が肯定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS12において、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度例えば10000rpmを超えたか否かが判定される。
【0105】
前記S12の判断が否定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS14において、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMが変更されることなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定される。例えば、エンジン8の過回転を防止するために燃料供給を遮断する制御のフューエルカット回転速度は通常のエンジン上限回転速度NELIMそのままとされる。
【0106】
一方で、前記S12の判断が肯定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS13において、エンジン回転速度NE の上限値として前記S14における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。例えば、フューエルカット回転速度が5600rpm 程度から4800rpm 程度に変更される。フューエルカット回転速度を変更する以外に、エンジン回転速度NE の上限値として例えばここでのエンジン上限回転速度NELIMに相当するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値が設定されてもよい。また、一定値のエンジン上限回転速度NELIMでもよいが、例えば図10に示すようなエンジン上限回転速度マップから実際の第2電動機回転速度NM2に応じてエンジン上限回転速度NELIMが設定されても良い。
【0107】
このS13においてエンジン上限回転速度NELIMが設定し直されたことにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により第2電動機M2に負荷がかからなくなったり或いは第2電動機M2の負荷が低下して第2電動機回転速度NM2が上昇したときに、変更されたエンジン上限回転速度NELIMで第2電動機回転速度NM2の上昇がエンジン回転速度制御手段86により自動的に制限される。すなわち、エンジン回転速度NE がそのエンジン上限回転速度NELIMに張り付いた段階で第2電動機回転速度NM2の上昇が第2電動機上昇可能回転速度NM2max で止められる。ここでは、第2電動機回転速度NM2の上昇を検出して次の動作に移るのでは無く、自動的に第2電動機上昇可能回転速度NM2max を保証できるところに良さがある。
【0108】
上述のように、本実施例によれば、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度NELIMが第2電動機回転速度NM2に応じて変更されるので、現在の第2電動機回転速度NM2に基づいてエンジン上限回転速度NELIMの影響を受ける第2電動機上昇可能回転速度NM2max を変更することが可能となり、例えば第2電動機回転速度NM2が比較的高いときにはエンジン上限回転速度NELIMを低くして第2電動機上昇可能回転速度NM2max を低く変更することが可能となり、第2電動機M2の回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上することができる。見方を換えれば、第2電動機M2の回転増加を抑制するように第2電動機回転速度NM2に応じてエンジン上限回転速度NELIMを予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態でエンジン走行をしている際に第2電動機M2の負荷が急に低下するなどして第2電動機回転速度NM2が上昇したとしても、第2電動機回転速度NM2が第2電動機上昇可能回転速度NM2max 以下となるように保証することができて第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【0109】
また、本実施例によれば、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには、第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが設定されるので、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには超えないときより低い回転速度となるようにエンジン回転速度NE が制限される。これにより、エンジン回転速度NE の上限が低くなり、第2電動機上昇可能回転速度NM2max も低くされて第2電動機M2の回転増加が抑制される。
【0110】
また、本実施例によれば、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには、エンジン回転速度NE が制限されるので、エンジン回転速度NE の影響を受ける第2電動機回転速度NM2も制限される。これにより、第2電動機M2の回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【0111】
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NE の制限はエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにフューエルカットにより実行されるので、適切にエンジン回転速度NE が制限されて第2電動機M2の回転増加が抑制される。
【0112】
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NE の制限はエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにスロットル弁開度θTHの開き側の上限を設定することにより実行されるので、適切にエンジン回転速度NE が制限されて第2電動機M2の回転増加が抑制される。
【0113】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0114】
前述の実施例では、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときに、第2電動機回転速度NM2の上昇を検出すること無くエンジン上限回転速度NELIMを通常よりも低い回転速度に予め設定しておくことで、例えば第2電動機M2の負荷が急に低下するなどして第2電動機回転速度NM2が上昇した際に、第2電動機回転速度NM2が第2電動機許容回転速度NM2LIM (すなわち第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となる回転速度)よりも低い第2電動機上昇可能回転速度NM2max で上げ止まるように自動的に保証するものであった。
【0115】
本実施例では、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときに、エンジン上限回転速度NELIMを通常よりも低い回転速度に設定することで、前述の実施例と同様の効果を得るものである。
【0116】
尚、本実施例は、実際に第2電動機回転速度NM2の上昇を検出する点が前述の実施例と主に相違するが、検出すること無く予めエンジン上限回転速度NELIMを設定することと比較した遅れを補う為に、第2電動機回転速度NM2が実際に所定高速回転状態となったときを検出するのではなく所定高速回転状態となることを予測するのである。
【0117】
具体的には、図12は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であり、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する回転速度変化量判定手段94を備える点が前記図7と主に相違する。
【0118】
図12において、前記回転速度判定手段90は、前述の機能に加えて、前記シフトポジション判定手段88によりシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであると判定されているときは、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えたか否かを判定する。この第2所定回転速度は、前記第1所定回転速度よりも低い回転速度であって、第2電動機回転速度NM2の上昇時に第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する為の予め実験的に求められて定められた条件値であり、例えば第1所定回転速度が10000rpm程度であるなら8000rpm 程度に設定される。つまり、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えればエンジン上限回転速度NELIMが通常よりも低い回転速度に予め変更されるので、その第1所定回転速度よりも低い回転速度に設定されるのである。
【0119】
前記回転速度変化量判定手段94は、前記回転速度判定手段90により第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えたと判定されているときの第2電動機回転速度変化量(繰り返し実行される制御作動(例えばフローチャート)においては第2電動機回転速度変化率と同義)ΔNM2が所定変化量N1以上であるか否かを判定し、第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1以上であると判定したときに第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する。つまり、この回転速度変化量判定手段94は、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えているときの第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1以上であるか否かに基づいて第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する高速回転状態予測手段として機能する。
【0120】
上記所定変化量N1は、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることを予測する為の予め実験的に求められて定められた第2電動機回転速度変化量ΔNM2の判定値である。また、この所定変化量N1は一定値を設定しても良いが、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えているときの第2電動機回転速度変化量ΔNM2に応じて所定変化量N1を設定しても良い。
【0121】
図13は、第2電動機回転速度NM2と所定変化量(第2電動機回転速度変化量判定値)N1との予め実験的に求められて記憶された関係(所定変化量マップ)の一例を示す図である。図13では、第2電動機回転速度NM2が高い程第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となり易いという観点から、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度(8000rpm 程度)を超えて第1所定回転速度(10000rpm程度)よりも低い回転速度となる領域において第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度に近づく程、所定変化量N1が小さくなるように定められている。前記回転速度変化量判定手段94は、例えば図13に示すような所定変化量マップから実際の第2電動機回転速度NM2に基づいて所定変化量N1を設定(変更)する。
【0122】
エンジン上限回転速度設定手段92は、前述の機能に加えて、前記回転速度変化量判定手段94により第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されない場合は、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMを変更することなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定する。
【0123】
一方で、前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度変化量判定手段94により第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測される場合は、エンジン回転速度NE の上限値として上述した所定高速回転状態となることが予測されない場合の設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMを設定(変更)する。例えば、前述の実施例と同様に、通常のエンジン上限回転速度NELIMが5600rpm 程度であるなら、そのエンジン上限回転速度NELIMを4800rpm 程度に変更する。
【0124】
以上、エンジン上限回転速度NELIMを第2電動機回転速度NM2に応じて変更することの別実施例を詳細に説明したが、このことは、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときには、エンジン回転速度NE の上昇を制限(禁止或いは抑制)することであると見ることもできる。
【0125】
図14は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち第2電動機M2の不要な回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図14のフローチャートは、前記図11に相当する別の実施例である。
【0126】
図14において、先ず、前記シフトポジション判定手段88に対応するS21において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置が判断され、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであるか否かが判定される。
【0127】
前記S21の判断が否定される場合は、S27においてエンジン回転速度NE の制限に関連する制御以外のその他の制御が実行されるか、或いはそのまま本ルーチンが終了させられる。
【0128】
前記S21の判断が肯定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS22において、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度例えば8000rpm を超えたか否かが判定される。
【0129】
前記S22の判断が肯定される場合は前記回転速度変化量判定手段94に対応するS23において、第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1を超えているか否かが判定される。つまり、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となるか否かが予測される。ここでは、第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1を超えていると判定されたときに第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測される。また、この所定変化量N1は、予め設定された一定値でも良いが、例えば図13に示すような所定変化量マップから実際の第2電動機回転速度NM2に基づいて設定されても良い。
【0130】
前記S23の判断が否定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS25において、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度例えば10000rpmを超えたか否かが判定される。
【0131】
前記S22の判断が否定されるか或いは前記S25の判断が否定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS26において、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMが変更されることなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定される。例えば、フューエルカット回転速度は通常のエンジン上限回転速度NELIMそのままとされる。つまり、エンジン回転速度NE の上昇制限はかけられない。
【0132】
一方で、前記S23の判断が肯定されるか或いは前記S25の判断が肯定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS24において、エンジン回転速度NE の上限値として前記S26における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。例えば、フューエルカット回転速度が5600rpm 程度から4800rpm 程度に変更される。つまり、エンジン回転速度NE の上昇が制限(禁止或いは抑制)される。また、フューエルカット回転速度を変更する以外に、エンジン回転速度NE の上限値として例えばここでのエンジン上限回転速度NELIMに相当するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値が設定されてもよい。また、一点だけでなく、例えば図10に示すようなエンジン上限回転速度マップからエンジン上限回転速度NELIMが設定されても良い。
【0133】
このS24において、現時点でのエンジン回転速度NE の上昇が制限されたり、或いはまたエンジン回転速度NE が設定し直されたエンジン上限回転速度NELIM以上とならないようにエンジン回転速度制御手段86により制限されることにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により第2電動機M2に負荷がかからなくなったり或いは第2電動機M2の負荷が低下して第2電動機回転速度NM2が上昇したときに、第2電動機回転速度NM2の上昇が自動的に制限される。すなわち、エンジン回転速度NE が張り付いた段階で第2電動機回転速度NM2の上昇が第2電動機上昇可能回転速度NM2max で止められる。ここでは、自動的に第2電動機上昇可能回転速度NM2max を保証できるところに良さがある。
【0134】
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例の効果に加え、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときには、所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが設定されるので、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときには所定高速回転状態となることが予測されないときより低い回転速度となるようにエンジン回転速度NE が制限される。これにより、エンジン回転速度NE の上限が低くなり、第2電動機上昇可能回転速度NM2max も低くされて第2電動機M2の回転増加が抑制される。
【0135】
また、本実施例によれば、第2電動機回転速度NM2が第1所定回転速度を超えるときには、或いは第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるときには、エンジン回転速度NE が制限されるので、エンジン回転速度NE の影響を受ける第2電動機回転速度NM2も制限される。これにより、第2電動機M2の回転増加を抑制して第2電動機M2の耐久性を向上することができる。
【0136】
また、本実施例によれば、第2電動機回転速度NM2が第2所定回転速度を超えているときの第2電動機回転速度変化量ΔNM2が所定変化量N1以上であるときに、第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることが予測されるので、例えば第2所定回転速度を超えた状態で第2電動機回転速度NM2が急速に上昇するときに所定高速回転状態となることが適切に予測される。
【0137】
また、本実施例によれば、第2所定回転速度を超えているときの第2電動機回転速度NM2に応じて所定変化量N1が設定されるので、第2電動機回転速度NM2と第2電動機回転速度変化量ΔNM2との影響を受ける第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態となることの予測の精度が向上される。
【実施例3】
【0138】
前述の実施例では、第2電動機M2の耐久性を向上する為にエンジン回転速度NE の上昇を制限して第2電動機回転速度NM2が所定高速回転状態とならないように第2電動機回転速度NM2の上昇を制限するものであった。
【0139】
ところで、変速機構10は自動変速部20を備えており、第2電動機M2の耐久性とは別に、不要に自動変速部20の所定回転要素の回転速度が高くなり例えばその所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となり遠心力や塑性変形などにより自動変速部20の耐久性が低下する可能性がある。例えば、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に、前述の実施例と同様に何らかの理由により変速機構10(特には自動変速部20)の負荷が急に低下すると、パワーオン状態である為にエンジン回転速度NE が増加し、それに伴って自動変速部20の所定回転要素の回転速度が増加して所定高速回転状態となり自動変速部20の耐久性が低下する可能性がある。
【0140】
尚、上記自動変速部20の所定回転要素は、自動変速部20を構成する回転部材のいずれであっても良いが、ここでは自動変速部20のインプット系の構成部品の1つである自動変速部20の入力軸すなわち伝達部材18を例示し、その自動変速部20の入力軸の回転速度を変速部インプット回転速度NATと表す。ここで、変速部インプット回転速度NATの所定高速回転状態とは、例えば変速部インプット回転速度NATが変速部インプット許容回転速度NATLIM を超える程に高回転速度となる回転状態のことである。上記変速部インプット許容回転速度NATLIM は、自動変速部20(特にはその入力軸)の耐久性等を考慮して自動変速部の入力軸に許容される最大許容回転速度を超えない変速部インプット回転速度領域で常用され得る為の予め実験的に求められて定められた変速部インプット上限回転速度である。
【0141】
そこで、本実施例では、前記エンジン上限回転速度NELIMを変速部インプット回転速度NATに応じて変更する。つまり、変速機構10においてはエンジン回転速度NE は変速部インプット回転速度NATに影響を与えるものであり、エンジン上限回転速度NELIMで変速部インプット回転速度NATが上昇可能な上限の回転速度(変速部インプット上昇可能回転速度)NATmax を規定するという観点から、通常はエンジン8を保護する為に設定されているエンジン上限回転速度NELIMを変更することで変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態とならないように変速部インプット回転速度NATの上昇を制限するのである。こうすることで、変速部インプット回転速度NATの上昇を検出してからその上昇を制限(禁止或いは抑制)する為の作動を実行するのでは無く、変速部インプット回転速度NATに応じてエンジン上限回転速度NELIMを予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態で自動変速部20の負荷が低下して変速部インプット回転速度NATが上昇したとしても、変速部インプット回転速度NATが変速部インプット許容回転速度NATLIM よりも低い変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で上げ止まるように自動的に保証することができて自動変速部20の耐久性を向上することができる。
【0142】
具体的には、前記シフトポジション判定手段88は、前述の機能に替えて或いは加えて、変速機構10(特には自動変速部20)の負荷が低下した場合に変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となる程にエンジン回転速度NE が増加する可能性がある走行状態としての前進走行ポジションであるか否かを判定する。
【0143】
前記回転速度判定手段90は、前述の機能に替えて或いは加えて、前記シフトポジション判定手段88によりシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであると判定されているときは、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えたか否かを判定する。この第1所定回転速度ATは、変速部インプット許容回転速度NATLIM よりも低い回転速度であって、自動変速部20の負荷が低下した際の変速部インプット回転速度NATの上昇に備えて前記エンジン上限回転速度NELIMの変更を判断する為の予め実験的に求められて定められた判定値であり、例えば変速部インプット許容回転速度NATLIM が12000rpm程度であるなら10000rpm程度に設定される。
【0144】
前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前述の機能に替えて或いは加えて、前記回転速度判定手段90により変速部インプット回転速度NATが未だ第1所定回転速度ATを超えていないと判定される場合は、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMを変更することなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定する。
【0145】
一方で、前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度判定手段90により変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えたと判定される場合は、エンジン回転速度NE の上限値として上述した第1所定回転速度ATを超えていないと判定される場合の設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMを設定(変更)する。例えば、通常のエンジン上限回転速度NELIMが5600rpm 程度であるなら、そのエンジン上限回転速度NELIMを4800rpm 程度に変更する。
【0146】
或いはまた、上述したように変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えたか否かの一点でエンジン上限回転速度NELIMを変更することに替えて、変速部インプット回転速度NATが変速部インプット許容回転速度NATLIM よりも低い回転速度ではあるが高回転化している領域において、変速部インプット回転速度NATに応じてエンジン上限回転速度NELIMを下げるように変更しても良い。
【0147】
図15は、変速部インプット回転速度NATとエンジン上限回転速度NELIMとの予め実験的に求められて記憶された関係(エンジン上限回転速度マップ)の一例を示す図である。図15では、変速部インプット回転速度NATが高い程自動変速部20の負荷が低下した際に変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となり易いという観点から、変速部インプット回転速度NATが所定値A以上となる高回転化領域において変速部インプット回転速度NATが高くなる程、エンジン上限回転速度NELIMが低くなるように定められている。前記エンジン上限回転速度設定手段92は、例えば図15に示すようなエンジン上限回転速度マップから実際の変速部インプット回転速度NATに基づいてエンジン上限回転速度NELIMを設定する。
【0148】
以上、エンジン上限回転速度NELIMを変速部インプット回転速度NATに応じて変更することを詳細に説明したが、このことは、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには、或いはまた変速部インプット回転速度NATが高回転化している領域にあるときには、エンジン回転速度NE の上昇を制限(禁止或いは抑制)することであると見ることもできる。
【0149】
図16は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち自動変速部20の入力軸の不要な回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図16のフローチャートは、前記図11に相当する別の実施例である。
【0150】
図16において、先ず、前記シフトポジション判定手段88に対応するS31において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置が判断され、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであるか否かが判定される。
【0151】
前記S31の判断が否定される場合は、S35においてエンジン回転速度NE の制限に関連する制御以外のその他の制御が実行されるか、或いはそのまま本ルーチンが終了させられる。
【0152】
前記S31の判断が肯定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS32において、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度AT例えば10000rpmを超えたか否かが判定される。
【0153】
前記S32の判断が否定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS34において、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMが変更されることなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定される。例えば、フューエルカット回転速度は通常のエンジン上限回転速度NELIMそのままとされる。
【0154】
一方で、前記S32の判断が肯定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS33において、エンジン回転速度NE の上限値として前記S34における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。例えば、フューエルカット回転速度が5600rpm 程度から4800rpm 程度に変更される。フューエルカット回転速度を変更する以外に、エンジン回転速度NE の上限値として例えばここでのエンジン上限回転速度NELIMに相当するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値が設定されてもよい。また、一点だけでなく、例えば図15に示すようなエンジン上限回転速度マップからエンジン上限回転速度NELIMが設定されても良い。
【0155】
このS33においてエンジン上限回転速度NELIMが設定し直されたことにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により自動変速部20に負荷がかからなくなったり或いは自動変速部20の負荷が低下して変速部インプット回転速度NATが上昇したときに、変更されたエンジン上限回転速度NELIMで変速部インプット回転速度NATの上昇がエンジン回転速度制御手段86により自動的に制限される。すなわち、エンジン回転速度NE がそのエンジン上限回転速度NELIMに張り付いた段階で変速部インプット回転速度NATの上昇が変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で止められる。ここでは、変速部インプット回転速度NATの上昇を検出して次の動作に移るのでは無く、自動的に変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を保証できるところに良さがある。
【0156】
上述のように、本実施例によれば、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE が制限されるものであり、そのエンジン上限回転速度NELIMが変速部インプット回転速度NATに応じて変更されるので、現在の変速部インプット回転速度NATに基づいてエンジン上限回転速度NELIMの影響を受ける変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を変更することが可能となり、例えば変速部インプット回転速度NATが比較的高いときにはエンジン上限回転速度NELIMを低くして変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を低く変更することが可能となり、自動変速部20の入力軸の回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上することができる。見方を換えれば、自動変速部20の入力軸の回転増加を抑制するように変速部インプット回転速度NATに応じてエンジン上限回転速度NELIMを予め変更しておくことが可能となり、仮にパワーオン状態でエンジン走行をしている際に自動変速部20の負荷が急に低下するなどして変速部インプット回転速度NATが上昇したとしても、変速部インプット回転速度NATが変速部インプット上昇可能回転速度NATmax 以下となるように保証することができて自動変速部20の耐久性を向上することができる。
【0157】
また、本実施例によれば、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには、第1所定回転速度ATを超えないときの設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが設定されるので、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには超えないときより低い回転速度となるようにエンジン回転速度NE が制限される。これにより、エンジン回転速度NE の上限が低くなり、変速部インプット上昇可能回転速度NATmax も低くされて自動変速部20の回転増加が抑制される。
【0158】
また、本実施例によれば、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには、エンジン回転速度NE が制限されるので、エンジン回転速度NE の影響を受ける変速部インプット回転速度NATも制限される。これにより、自動変速部20の入力軸の回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上することができる。
【0159】
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NE の制限はエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにフューエルカットにより実行されるので、適切にエンジン回転速度NE が制限されて自動変速部20の入力軸の回転増加が抑制される。
【0160】
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NE の制限はエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにスロットル弁開度θTHの開き側の上限を設定することにより実行されるので、適切にエンジン回転速度NE が制限されて自動変速部20の入力軸の回転増加が抑制される。
【実施例4】
【0161】
前述の実施例3では、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときに、変速部インプット回転速度NATの上昇を検出すること無くエンジン上限回転速度NELIMを通常よりも低い回転速度に予め設定しておくことで、例えば自動変速部20の負荷が急に低下するなどして変速部インプット回転速度NATが上昇した際に、変速部インプット回転速度NATが変速部インプット許容回転速度NATLIM (すなわち変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となる回転速度)よりも低い変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で上げ止まるように自動的に保証するものであった。
【0162】
本実施例では、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときに、エンジン上限回転速度NELIMを通常よりも低い回転速度に設定することで、前述の実施例3と同様の効果を得るものである。
【0163】
尚、本実施例は、実際に変速部インプット回転速度NATの上昇を検出する点が前述の実施例3と主に相違するが、検出すること無く予めエンジン上限回転速度NELIMを設定することと比較した遅れを補う為に、変速部インプット回転速度NATが実際に所定高速回転状態となったときを検出するのではなく所定高速回転状態となることを予測するのである。
【0164】
具体的には、前記回転速度判定手段90は、前述の実施例3での機能に加えて、前記シフトポジション判定手段88によりシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであると判定されているときは、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えたか否かを判定する。この第2所定回転速度ATは、前記第1所定回転速度ATよりも低い回転速度であって、変速部インプット回転速度NATの上昇時に変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることを予測する為の予め実験的に求められて定められた条件値であり、例えば第1所定回転速度ATが10000rpm程度であるなら8000rpm 程度に設定される。つまり、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えればエンジン上限回転速度NELIMが通常よりも低い回転速度に予め変更されるので、その第1所定回転速度ATよりも低い回転速度に設定されるのである。
【0165】
前記回転速度変化量判定手段94は、前述の機能に替えて或いは加えて、前記回転速度判定手段90により変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えたと判定されているときの変速部インプット回転速度変化量(繰り返し実行される制御作動(例えばフローチャート)においては変速部インプット回転速度変化率と同義)ΔNATが所定変化量N1AT以上であるか否かを判定し、変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1AT以上であると判定したときに変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることを予測する。つまり、この回転速度変化量判定手段94は、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えているときの変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1AT以上であるか否かに基づいて変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることを予測する高速回転状態予測手段として機能する。
【0166】
上記所定変化量N1ATは、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることを予測する為の予め実験的に求められて定められた変速部インプット回転速度変化量ΔNATの判定値である。また、この所定変化量N1ATは一定値を設定しても良いが、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えているときの変速部インプット回転速度変化量ΔNATに応じて所定変化量N1ATを設定しても良い。
【0167】
図17は、変速部インプット回転速度NATと所定変化量(変速部インプット回転速度変化量判定値)N1ATとの予め実験的に求められて記憶された関係(所定変化量マップ)の一例を示す図である。図17では、変速部インプット回転速度NATが高い程変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となり易いという観点から、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度AT(8000rpm 程度)を超えて第1所定回転速度AT(10000rpm程度)よりも低い回転速度となる領域において変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATに近づく程、所定変化量N1ATが小さくなるように定められている。前記回転速度変化量判定手段94は、例えば図17に示すような所定変化量マップから実際の変速部インプット回転速度NATに基づいて所定変化量N1ATを設定(変更)する。
【0168】
前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前述の実施例3での機能に加えて、前記回転速度変化量判定手段94により変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されない場合は、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMを変更することなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定する。
【0169】
一方で、前記エンジン上限回転速度設定手段92は、前記回転速度変化量判定手段94により変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測される場合は、エンジン回転速度NE の上限値として上述した所定高速回転状態となることが予測されない場合の設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMを設定(変更)する。例えば、前述の実施例と同様に、通常のエンジン上限回転速度NELIMが5600rpm 程度であるなら、そのエンジン上限回転速度NELIMを4800rpm 程度に変更する。
【0170】
以上、エンジン上限回転速度NELIMを変速部インプット回転速度NATに応じて変更することの別実施例を詳細に説明したが、このことは、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときには、エンジン回転速度NE の上昇を制限(禁止或いは抑制)することであると見ることもできる。
【0171】
図18は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわち自動変速部20の入力軸の不要な回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図18のフローチャートは、前記図14に相当する別の実施例である。
【0172】
図18において、先ず、前記シフトポジション判定手段88に対応するS41において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいて現在のシフトレバー52の位置が判断され、そのシフトレバー52の位置が前進走行ポジションであるか否かが判定される。
【0173】
前記S41の判断が否定される場合は、S47においてエンジン回転速度NE の制限に関連する制御以外のその他の制御が実行されるか、或いはそのまま本ルーチンが終了させられる。
【0174】
前記S41の判断が肯定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS42において、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度AT例えば8000rpm を超えたか否かが判定される。
【0175】
前記S42の判断が肯定される場合は前記回転速度変化量判定手段94に対応するS43において、変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1ATを超えているか否かが判定される。つまり、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となるか否かが予測される。ここでは、変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1ATを超えていると判定されたときに変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測される。また、この所定変化量N1ATは、予め設定された一定値でも良いが、例えば図17に示すような所定変化量マップから実際の変速部インプット回転速度NATに基づいて設定されても良い。
【0176】
前記S43の判断が否定される場合は前記回転速度判定手段90に対応するS45において、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度AT例えば10000rpmを超えたか否かが判定される。
【0177】
前記S42の判断が否定されるか或いは前記S45の判断が否定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS46において、エンジン8を保護する為に設定されている通常のエンジン上限回転速度NELIMが変更されることなくそのままエンジン回転速度NE の上限値として設定される。例えば、フューエルカット回転速度は通常のエンジン上限回転速度NELIMそのままとされる。つまり、エンジン回転速度NE の上昇制限はかけられない。
【0178】
一方で、前記S43の判断が肯定されるか或いは前記S45の判断が肯定される場合は前記エンジン上限回転速度設定手段92に対応するS44において、エンジン回転速度NE の上限値として前記S46における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。例えば、フューエルカット回転速度が5600rpm 程度から4800rpm 程度に変更される。つまり、エンジン回転速度NE の上昇が制限(禁止或いは抑制)される。また、フューエルカット回転速度を変更する以外に、エンジン回転速度NE の上限値として例えばここでのエンジン上限回転速度NELIMに相当するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値が設定されてもよい。また、一点だけでなく、例えば図15に示すようなエンジン上限回転速度マップからエンジン上限回転速度NELIMが設定されても良い。
【0179】
このS44において、現時点でのエンジン回転速度NE の上昇が制限されたり、或いはまたエンジン回転速度NE が設定し直されたエンジン上限回転速度NELIM以上とならないようにエンジン回転速度制御手段86により制限されることにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により自動変速部20に負荷がかからなくなったり或いは自動変速部20の負荷が低下して変速部インプット回転速度NATが上昇したときに、変速部インプット回転速度NATの上昇が自動的に制限される。すなわち、エンジン回転速度NE が張り付いた段階で変速部インプット回転速度NATの上昇が変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で止められる。ここでは、自動的に変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を保証できるところに良さがある。
【0180】
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例3の効果に加え、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときには、所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが設定されるので、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときには所定高速回転状態となることが予測されないときより低い回転速度となるようにエンジン回転速度NE が制限される。これにより、エンジン回転速度NE の上限が低くなり、変速部インプット上昇可能回転速度NATmax も低くされて自動変速部20の入力軸の回転増加が抑制される。
【0181】
また、本実施例によれば、変速部インプット回転速度NATが第1所定回転速度ATを超えるときには、或いは変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるときには、エンジン回転速度NE が制限されるので、エンジン回転速度NE の影響を受ける変速部インプット回転速度NATも制限される。これにより、自動変速部20の入力軸の回転増加を抑制して自動変速部20の耐久性を向上することができる。
【0182】
また、本実施例によれば、変速部インプット回転速度NATが第2所定回転速度ATを超えているときの変速部インプット回転速度変化量ΔNATが所定変化量N1AT以上であるときに、変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることが予測されるので、例えば第2所定回転速度ATを超えた状態で変速部インプット回転速度NATが急速に上昇するときに所定高速回転状態となることが適切に予測される。
【0183】
また、本実施例によれば、第2所定回転速度ATを超えているときの変速部インプット回転速度NATに応じて所定変化量N1ATが設定されるので、変速部インプット回転速度NATと変速部インプット回転速度変化量ΔNATとの影響を受ける変速部インプット回転速度NATが所定高速回転状態となることの予測の精度が向上される。
【実施例5】
【0184】
前述の実施例1乃至4のエンジン回転速度制御手段86は、エンジン8に対して燃料噴射装置66からの燃料供給を停止(或いは抑制)させるフューエルカット、或いは、エンジン8に対する混合気供給量を制御する電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHの制限を実行することにより、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限するものであったが、図19に示すようにエンジン8に直接的に連結され、且つ電子制御装置80により制御される第3電動機M3を用いてエンジン回転速度NE を制限するものであってもよい。このような第3電動機M3を用いてエンジン回転速度NE を制限するエンジン回転速度制御手段86は、前述の実施例1乃至4においてそれぞれ適用可能であるが、実施例1に適用した例を以下に説明する。
【0185】
図19は本実施例のハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であり、図20は電子制御装置80の制御機能を説明する機能ブロック線図であり、図21は電子制御装置80の制御作動を説明するフローチャートである。図19、図20、および図20は、図1、図7、および図11に対応している。図19および図20に示すように、本実施例のエンジン8には、そのクランク軸に直接的に連結された第3電動機M3が備えられている点で、相違している。この第3電動機M3は、第1電動機M1および第2電動機M2と同様に、発電機能をも有する所謂モータジェネレータでり、エンジン8のクランク軸の位置に拘わらずそれに対して動力伝達可能に連結されていればよい。
【0186】
図20において、本実施例のエンジン回転速度制御手段96は、エンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限するために第3電動機M3を用いる。たとえば、エンジン回転速度NE がエンジン上限回転速度NELIMを超えようとするときには第3電動機M3を回生状態としてエンジン上限回転速度NELIMを超えないようにエンジン回転速度NE を制限し、エンジン8のオーバーレブ(過回転)を回避する。
【0187】
図21のエンジン上限回転速度設定手段92に対応するS13においては、前述の実施例1のように、エンジン回転速度NE の上限値として前記S14における設定よりも低い回転速度にエンジン上限回転速度NELIMが変更される。これにより、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により第2電動機M2に負荷がかからなくなったり或いは第2電動機M2の負荷が低下して第2電動機回転速度NM2が上昇したときに、変更されたエンジン上限回転速度NELIMで第2電動機回転速度NM2の上昇がエンジン回転速度制御手段86により自動的に制限される。したがって、本実施例においても、前述の実施例1等と同様の効果が得られる。
【0188】
また、本実施例のエンジン回転速度制御手段96は、エンジン8に連結された第3電動機M3を用いて、エンジン回転速度NE がエンジン上限回転速度NELIMを超えようにエンジン回転速度制限制御を実行するので、エンジン8に対する燃料供給を遮断するフューエルカットや、エンジン8に対する燃料供給を制限するスロットル弁開度θTHの開き側の上限値設定に比較して、エンジン回転速度NE を制限するための制御操作において高い応答性が得られる利点がある。
【0189】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は実施例相互を組み合わせて実施可能であると共にその他の態様においても適用される。
【0190】
例えば、前述の実施例では、エンジン上限回転速度NELIMを設定し直したのは、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により第2電動機M2に負荷がかからなくなったり或いは第2電動機M2の負荷が低下した場合に、変更したエンジン上限回転速度NELIMで第2電動機回転速度NM2の上昇を自動的に制限する為であったが、変更したエンジン上限回転速度NELIMを支点に差動部11の差動作用を利用して第1電動機M1で第2電動機M2の高回転化を阻止する制御を積極的に実行する為であっても良い。例えば、第1電動機M1を制御して第1サンギヤS1の回転速度を上昇させることで、前述の実施例と同様にエンジン回転速度NE がそのエンジン上限回転速度NELIMに張り付いた段階で第2電動機回転速度NM2の上昇が第2電動機上昇可能回転速度NM2max で止められる。こうすることでも、自動的に第2電動機上昇可能回転速度NM2max を保証できる良さがある。
【0191】
また、前述の実施例では、エンジン上限回転速度NELIMを設定し直したのは、パワーオン状態でエンジン走行をしている際に何らかの理由により自動変速部20に負荷がかからなくなったり或いは自動変速部20の負荷が低下した場合に、変更したエンジン上限回転速度NELIMで変速部インプット回転速度NATの上昇を自動的に制限する為であったが、変更したエンジン上限回転速度NELIMを支点に差動部11の差動作用を利用して第1電動機M1および/または第2電動機M2で自動変速部20の入力軸の高回転化を阻止する制御を積極的に実行する為であっても良い。例えば、第1電動機M1を制御して第1サンギヤS1の回転速度を上昇させることで、前述の実施例と同様にエンジン回転速度NE がそのエンジン上限回転速度NELIMに張り付いた段階で変速部インプット回転速度NATの上昇が変速部インプット上昇可能回転速度NATmax で止められる。こうすることでも、自動的に変速部インプット上昇可能回転速度NATmax を保証できる良さがある。
【0192】
また、前述の実施例では、差動部11(動力分配機構16)はそのギヤ比γ0が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであったが、例えば差動部11の変速比γ0を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであっても本発明は適用され得る。
【0193】
また、前述の実施例において、差動部11は、動力分配機構16に設けられて差動作用を制限することにより少なくとも前進2段の有段変速機としても作動させられる差動制限装置を備えたものであっても良い。
【0194】
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
【0195】
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
【0196】
また、前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、例えばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され、第2電動機M2は伝達部材18に連結されてもよい。
【0197】
また、前述の実施例では、第1クラッチC1や第2クラッチC2などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。例えば電磁クラッチであるような場合には、油圧制御回路70は油路を切り換える弁装置ではなく電磁クラッチへの電気的な指令信号回路を切り換えるスイッチング装置や電磁切換装置等により構成される。
【0198】
また、前述の実施例では、差動部11すなわち動力分配機構16の出力部材である伝達部材18と駆動輪34との間の動力伝達経路に、変速部として自動変速部20が介挿されていたが、例えば自動変速機の一種である無段変速機(CVT)、手動変速機としてよく知られた常時噛合式平行2軸型ではあるがセレクトシリンダおよびシフトシリンダによりギヤ段が自動的に切り換えられることが可能な自動変速機等の他の形式の変速部(変速機)が設けられていてもよい。或いは、上記変速部は必ずしも備えられている必要はない。このようにしても、本発明は適用され得る。
【0199】
また、前述の実施例では、自動変速部20は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20が配設されてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20とは、例えば伝達部材18としてのカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
【0200】
また、前述の実施例の差動機構としての動力分配機構16は、例えばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および伝達部材18(第2電動機M2)に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
【0201】
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。また、その遊星歯車装置はシングルピニオン型に限られたものではなくダブルピニオン型の遊星歯車装置であってもよい。
【0202】
また、前述の実施例のシフト操作装置50は、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えていたが、そのシフトレバー52に替えて、例えば押しボタン式のスイッチやスライド式スイッチ等の複数種類のシフトポジションPSHを選択可能なスイッチ、或いは手動操作に因らず運転者の音声に反応して複数種類のシフトポジションPSHを切り換えられる装置や足の操作により複数種類のシフトポジションPSHを切り換えられる装置等であってもよい。また、シフトレバー52が「M」ポジションへ操作されることにより、変速レンジが設定されるものであったがギヤ段が設定されることすなわち各変速レンジの最高速ギヤ段がギヤ段として設定されてもよい。この場合、自動変速部20ではギヤ段が切り換えられて変速が実行される。例えば、シフトレバー52が「M」ポジションにおけるアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ手動操作されると、自動変速部20では第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の何れかがシフトレバー52の操作に応じて設定される。
【0203】
また、前述の実施例1乃至5は、信頼性の高めるなどの目的で、それらのうちのいずれかの制御が組み合わされて実行されてもよい。
【0204】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の駆動装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表である。
【図3】図1の駆動装置における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
【図4】図1の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図5】油圧制御回路のうちクラッチCおよびブレーキBの各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する回路図である。
【図6】シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
【図7】図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図8】駆動装置の変速制御において用いられる変速マップの一例と、エンジン走行とモータ走行とを切り換える駆動力源切換制御において用いられる駆動力源マップの一例とを示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。
【図9】破線はエンジンの最適燃費率曲線であって燃費マップの一例である。
【図10】エンジン回転速度の制限制御に用いられるエンジン上限回転速度マップの一例を示す図である。
【図11】図4の電子制御装置の制御作動すなわち第2電動機の不要な回転増加を抑制して第2電動機の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートである。
【図12】図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図であって、図7に相当する別の実施例である。
【図13】第2電動機回転速度が所定高速回転状態となることの予測に用いられる所定変化量(第2電動機回転速度変化量判定値)マップの一例を示す図である。
【図14】図4の電子制御装置の制御作動すなわち第2電動機の不要な回転増加を抑制して第2電動機の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図11に相当する別の実施例である。
【図15】エンジン回転速度の制限制御に用いられるエンジン上限回転速度マップの一例を示す図である。
【図16】図4の電子制御装置の制御作動すなわち自動変速部の入力軸の不要な回転増加を抑制して自動変速部の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図11に相当する別の実施例である。
【図17】変速部インプット回転速度が所定高速回転状態となることの予測に用いられる所定変化量(変速部インプット回転速度変化量判定値)マップの一例を示す図である。
【図18】図4の電子制御装置の制御作動すなわち自動変速部の入力軸の不要な回転増加を抑制して自動変速部の耐久性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図14に相当する別の実施例である。
【図19】本発明の他の実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図20】図19の実施例における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図21】図19の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0206】
8:エンジン
10:変速機構(車両用駆動装置)
11:電気式差動部
16:動力分配機構(差動機構)
18:伝達部材
20:自動変速部(変速部)
34:駆動輪
80:電子制御装置(制御装置)
M1:第1電動機
M2:第2電動機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材および第2電動機に連結された第3要素とを有して該エンジンの出力を該第1電動機および該伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置において、
予め定められたエンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンの回転速度を制限するものであり、
前記エンジン上限回転速度を前記第2電動機の回転速度に応じて変更することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、該第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、該所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項4】
エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材および第2電動機に連結された第3要素とを有して該エンジンの出力を該第1電動機および該伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置において、
前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度を制限することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項5】
前記第2電動機の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときの該第2電動機の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、該第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるものである請求項3または4の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項6】
前記第2所定回転速度を超えているときの前記第2電動機の回転速度に応じて前記所定変化量を設定するものである請求項5の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項7】
エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有して該エンジンの出力を該第1電動機および該伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部と、該伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、
予め定められたエンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンの回転速度を制限するものであり、
前記エンジン上限回転速度を前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて変更することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、該第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである請求項7の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項9】
前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、該所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである請求項7の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項10】
エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有して該エンジンの出力を該第1電動機および該伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部と、該伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、
前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度を制限することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項11】
前記変速部の所定回転要素の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときの該変速部の所定回転要素の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、該変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるものである請求項9または10の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項12】
前記第2所定回転速度を超えているときの前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて前記所定変化量を設定するものである請求項11の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項13】
前記エンジンの回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないようにフューエルカットを実行するものである請求項1乃至12のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項14】
前記エンジンの回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないようにスロットル弁開度の上限を設定するものである請求項1乃至12のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項15】
前記エンジン回転速度の制限は、前記エンジンに連結された第3電動機により実行されるものである請求項1乃至12のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項16】
前記電気式差動部は、前記第1電動機の運転状態が制御されることにより無段変速機として作動するものである請求項1乃至15のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項1】
エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材および第2電動機に連結された第3要素とを有して該エンジンの出力を該第1電動機および該伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置において、
予め定められたエンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンの回転速度を制限するものであり、
前記エンジン上限回転速度を前記第2電動機の回転速度に応じて変更することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、該第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、該所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項4】
エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材および第2電動機に連結された第3要素とを有して該エンジンの出力を該第1電動機および該伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部を備えた車両用駆動装置の制御装置において、
前記第2電動機の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度を制限することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項5】
前記第2電動機の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときの該第2電動機の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、該第2電動機の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるものである請求項3または4の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項6】
前記第2所定回転速度を超えているときの前記第2電動機の回転速度に応じて前記所定変化量を設定するものである請求項5の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項7】
エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有して該エンジンの出力を該第1電動機および該伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部と、該伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、
予め定められたエンジン上限回転速度を超えないように前記エンジンの回転速度を制限するものであり、
前記エンジン上限回転速度を前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて変更することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、該第1所定回転速度を超えないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである請求項7の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項9】
前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、該所定高速回転状態となることが予測されないときの設定よりも低い回転速度に前記エンジン上限回転速度を設定するものである請求項7の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項10】
エンジンに動力伝達可能に連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と伝達部材に連結された第3要素とを有して該エンジンの出力を該第1電動機および該伝達部材へ分配する差動機構を有する電気式差動部と、該伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備えた車両用駆動装置の制御装置において、
前記変速部の所定回転要素の回転速度が第1所定回転速度を超えるときには、或いは前記変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるときには、前記エンジンの回転速度を制限することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項11】
前記変速部の所定回転要素の回転速度が前記所定高速回転状態となる回転速度よりも小さな第2所定回転速度を超えているときの該変速部の所定回転要素の回転速度変化量が所定変化量以上であるときに、該変速部の所定回転要素の回転速度が所定高速回転状態となることが予測されるものである請求項9または10の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項12】
前記第2所定回転速度を超えているときの前記変速部の所定回転要素の回転速度に応じて前記所定変化量を設定するものである請求項11の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項13】
前記エンジンの回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないようにフューエルカットを実行するものである請求項1乃至12のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項14】
前記エンジンの回転速度の制限は、前記エンジン上限回転速度を超えないようにスロットル弁開度の上限を設定するものである請求項1乃至12のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項15】
前記エンジン回転速度の制限は、前記エンジンに連結された第3電動機により実行されるものである請求項1乃至12のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項16】
前記電気式差動部は、前記第1電動機の運転状態が制御されることにより無段変速機として作動するものである請求項1乃至15のいずれか1の車両用駆動装置の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−213824(P2008−213824A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9883(P2008−9883)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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