説明

車輌の走行運動制御装置

【課題】ロール剛性可変装置の作動状況を考慮して目標ヨーレートを適正な値に演算し、ロール剛性可変装置の作動状況に関係なく車輌の走行運動の制御を適正に行う。
【解決手段】目標アンチロールモーメントMat及びロール剛性の目標前後輪配分比Rfrに基づき前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18が制御され(S80、100〜130)、ロール剛性の後輪に対する前輪の目標配分比Rfrが高いほど大きくなるようスタビリティファクタKhが演算され(S230)、スタビリティファクタKhに基づいて目標ヨーレートγtが演算されることによりロール剛性の後輪配分比が高いほど大きさが小さくなるよう目標ヨーレートγtが演算され(S310)、車輌のヨーレートγが目標ヨーレートγtになるよう各車輪の制駆動力が制御されることにより車輌の走行運動が制御される(S320〜340)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌のヨーレートが目標ヨーレートになるよう各車輪の制駆動力を制御する車輌の走行運動制御装置に係り、更に詳細には前輪側若しくは後輪側のロール剛性を増減するロール剛性可変装置を備えた車輌の走行運動制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輌の走行運動を制御する走行運動制御装置の一つとして、例えば下記の特許文献1に記載されている如く、操舵角等に基づいて車輌の目標ヨーレートを演算し、車輌のヨーレートが目標ヨーレートになるよう各車輪の制動力を制御することによりスピン状態やドリフトアウト状態を抑制して車輌の走行運動を安定化させる走行運動制御装置はよく知られている。
【0003】
また自動車等の車輌の旋回時に於けるロール挙動を制御すべく前輪側若しくは後輪側のロール剛性を増減するロール剛性可変装置の一つとして、二分割のスタビライザと、該スタビライザのトーションバーを相対回転させるアクチュエータと、アクチュエータを制御する制御装置とを有し、車輌の旋回時の如く車輌に高いロールモーメントが作用する状況に於いてはアクチュエータによって二つのトーションバーを相対回転させ、車輌に付与されるアンチロールモーメントを増大させるよう構成されたアクティブスタビライザ装置が従来より知られている。
【0004】
上述の如き走行運動制御装置によれば、各車輪の制動力の制御によって車輌のヨーレートを目標ヨーレートにすることができるので、スピン状態やドリフトアウト状態を抑制して車輌の走行安定性を向上させることができ、またアクティブスタビライザ装置によれば、車輌に高いロールモーメントが作用する状況に於いて車輌のロール剛性を増大させることができるので、スタビライザが通常のスタビライザである場合に比して、車輌の直進走行時の乗り心地性を悪化することなく旋回時の車輌のロールを低減し、車輌の操縦安定性を向上させることができる。
【特許文献1】特許3178273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、車輌のヨーレートが目標ヨーレートになるよう各車輪の制動力又は駆動力を制御する走行運動制御装置に於いては、目標ヨーレートは周知の如く操舵角及び車速と共に予め設定されたスタビリティファクタに基づいて演算される。
【0006】
しかし前輪側若しくは後輪側のロール剛性を増減するロール剛性可変装置が設けられた車輌に於いては、ロール剛性可変装置の作動によって前輪側若しくは後輪側のロール剛性が変化することにより車輌のスタビリティファクタも変化する。
【0007】
しかるに従来の走行運動制御装置に於いては、ロール剛性可変装置の作動によって車輌のスタビリティファクタが変化することが考慮されていないため、ロール剛性可変装置の作動状況によっては目標ヨーレートが適正な値に演算されなくなり、そのため走行運動制御装置による走行運動の制御が適正に行われなくなるという問題がある。尚この問題はアンチロールモーメント増減装置が各車輪の接地荷重を増減制御するアクティブサスペンション装置である場合も同様に発生する。
【0008】
本発明は、アクティブスタビライザ装置の如く前輪側若しくは後輪側のロール剛性を増減するロール剛性可変装置を備えた車輌の走行運動制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、ロール剛性可変装置の作動状況を考慮して目標ヨーレートを適正な値に演算することにより、ロール剛性可変装置の作動状況に関係なく車輌の走行運動の制御を適正に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち車輌の目標ヨーレートを設定する目標ヨーレート設定手段と、車輌のヨーレートが前記目標ヨーレートになるよう各車輪の制駆動力を制御する制駆動力制御手段と、前輪側若しくは後輪側のロール剛性を増減するロール剛性可変装置とを有する車輌の走行運動制御装置に於いて、前記目標ヨーレート設定手段は前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比が高いほど前記目標ヨーレートの大きさを小さくすることを特徴とする車輌の走行運動制御装置によって達成される。
【0010】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記目標ヨーレート設定手段は少なくともスタビリティファクタに基づいて前記目標ヨーレートを設定し、前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比が高いほど前記スタビリティファクタを増大させることにより前記目標ヨーレートの大きさを小さくよう構成される(請求項2の構成)。
【0011】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は2の構成に於いて、前記ロール剛性可変装置は前輪側若しくは後輪側に設けられ車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減するアンチロールモーメント増減装置を含んでいるよう構成される(請求項3の構成)。
【0012】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3の構成に於いて、前記アンチロールモーメント増減装置は前輪側アンチロールモーメント増減装置と後輪側アンチロールモーメント増減装置とよりなるよう構成される(請求項4の構成)。
【発明の効果】
【0013】
一般に、前輪側若しくは後輪側のロール剛性を増減するロール剛性可変装置を備えた車輌に於いては、ロール剛性可変装置の作動により車輌全体のロール剛性が増減され、また前輪側に対する後輪側のロール剛性の比も変化する。特に前輪側に対する後輪側のロール剛性の比が高くなると、車輌の旋回状態がオーバーステア状態になり易いので、車輌の目標ヨーレートが予め設定されたスタビリティファクタに基づいて演算され、車輌のヨーレートが目標ヨーレートになるよう制駆動力制御手段によって各車輪の制駆動力が制御されると、制駆動力制御手段の制御量が過剰になって車輌の旋回状態がオーバーステア状態になり易い。
【0014】
上記請求項1の構成によれば、前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比が高いほど目標ヨーレートの大きさが小さくされるので、車輌のヨーレートと目標ヨーレートとの偏差の大きさを小さくすることができ、前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比が高い状況に於いて制駆動力制御手段の制御量が過剰になることに起因して車輌の旋回状態がオーバーステア状態になることを確実に防止することができる。
【0015】
また上記請求項2の構成によれば、目標ヨーレートは少なくともスタビリティファクタに基づいて設定され、前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比が高いほどスタビリティファクタを増大させることにより目標ヨーレートの大きさが小さくされるので、ア前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比が高いときには前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比が低いときに比して目標ヨーレートの大きさを確実に小さくすることができる。
【0016】
上記請求項3の構成によれば、ロール剛性可変装置は前輪側若しくは後輪側に設けられ車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減するアンチロールモーメント増減装置を含んでいるので、前輪側若しくは後輪側に於いて車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減することにより前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比を確実に変化させることができる。
【0017】
上記請求項4の構成によれば、アンチロールモーメント増減装置は前輪側アンチロールモーメント増減装置と後輪側アンチロールモーメント増減装置とよりなるので、車輌全体のロール剛性を増減することができると共に、前輪側アンチロールモーメント増減装置若しくは後輪側アンチロールモーメント増減装置により車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減することにより前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比を確実に変化させることができる。
【0018】
[課題解決手段の好ましい態様]
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3又は4の構成に於いて、アンチロールモーメント増減装置はアンチロールモーメントを車輌に付与するアンチロールモーメント付与手段と、車輌に作用するロールモーメントを推定するロールモーメント推定手段と、推定されたロールモーメントに応じてアンチロールモーメント付与手段を制御し車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減する制御手段とを有するよう構成される(好ましい態様1)。
【0019】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1の構成に於いて、アンチロールモーメント付与手段は二分割のスタビライザと該スタビライザのトーションバーを相対回転させるアクチュエータとを有するアクティブスタビライザを含むよう構成される(好ましい態様2)。
【0020】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1の構成に於いて、アンチロールモーメント付与手段は車輪の支持荷重を増減可能なアクティブサスペンションを含むよう構成される(好ましい態様3)。
【0021】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4及び上記好ましい態様1乃至3の構成に於いて、ロール剛性可変装置が異常であるときには、目標ヨーレートの演算に供されるスタビリティファクタはロール剛性可変装置が正常であるときの値以上の値に設定されるよう構成される(好ましい態様4)。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様4の構成に於いて、ロール剛性可変装置が正常な状態より異常な状態に変化したときには、目標ヨーレートの演算に供されるスタビリティファクタはロール剛性可変装置が正常な状態であるときの値よりロール剛性可変装置が異常な状態であるときの値まで漸次変化するよう構成される(好ましい態様5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は前輪側及び後輪側にアクティブスタビライザ装置が設けられた車輌に適用された本発明による車輌の走行運動制御装置の一つの実施例を示す概略構成図である。
【0025】
図1に於いて、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の従動輪である左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ車輌12の駆動輪である左右の後輪を示している。操舵輪でもある左右の前輪10FL及び10FRは運転者による図には示されていないステアリングホイールが運転者により転舵されることに応答して駆動される図には示されていないパワーステアリング装置によりタイロッドを介して操舵される。
【0026】
左右の前輪10FL及び10FRの間にはアクティブスタビライザ装置16が設けられ、左右の後輪10RL及び10RRの間にはアクティブスタビライザ装置18が設けられている。アクティブスタビライザ装置16は車輌の横方向に延在する軸線に沿って互いに同軸に整合して延在する一対のトーションバー部分16TL及び16TRと、それぞれトーションバー部分16TL及び16TRの外端に一体に接続された一対のアーム部16AL及び16ARとを有している。トーションバー部分16TL及び16TRはそれぞれ図には示されていないブラケットを介して図には示されていない車体に自らの軸線の回りに回転可能に支持されている。アーム部16AL及び16ARはそれぞれトーションバー部分16TL及び16TRに対し交差するよう車輌前後方向に延在し、アーム部16AL及び16ARの外端はそれぞれ図には示されていないゴムブッシュ装置を介して左右前輪10FL及び10FRの車輪支持部材又はサスペンションアームに連結されている。
【0027】
アクティブスタビライザ装置16はトーションバー部分16TL及び16TRの間にアクチュエータ20Fを有している。アクチュエータ20Fは必要に応じて一対のトーションバー部分16TL及び16TRを互いに逆方向へ回転駆動することにより、左右の前輪10FL及び10FRが互いに逆相にてバウンド、リバウンドする際に捩り応力により車輪のバウンド、リバウンドを抑制する力を変化し、これにより左右前輪の位置に於いて車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減し、前輪側の車輌のロール剛性を可変制御する。
【0028】
同様に、アクティブスタビライザ装置18は車輌の横方向に延在する軸線に沿って互いに同軸に整合して延在する一対のトーションバー部分18TL及び18TRと、それぞれトーションバー部分18TL及び18TRの外端に一体に接続された一対のアーム部18AL及び18ARとを有している。トーションバー部分18TL及び18TRはそれぞれ図には示されていないブラケットを介して図には示されていない車体に自らの軸線の回りに回転可能に支持されている。アーム部18AL及び18ARはそれぞれトーションバー部分18TL及び18TRに対し交差するよう車輌前後方向に延在し、アーム部18AL及び18ARの外端はそれぞれ図には示されていないゴムブッシュ装置を介して左右後輪10RL及び10RRの車輪支持部材又はサスペンションアームに連結されている。
【0029】
アクティブスタビライザ装置18はトーションバー部分18TL及び18TRの間にアクチュエータ20Rを有している。アクチュエータ20Rは必要に応じて一対のトーションバー部分18TL及び18TRを互いに逆方向へ回転駆動することにより、左右の後輪10RL及び10RRが互いに逆相にてバウンド、リバウンドする際に捩り応力により車輪のバウンド、リバウンドを抑制する力を変化し、これにより左右後輪の位置に於いて車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減し、後輪側の車輌のロール剛性を可変制御する。
【0030】
尚アクティブスタビライザ装置16及び18自体は本発明の要旨をなすものではないので、車輌のロール剛性を可変制御し得るものである限り当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよいが、例えば本願出願人の出願にかかる特開2005−88722の公開公報に記載のアクティブスタビライザ装置、即ち一方のトーションバー部分の内端に固定され駆動歯車が取り付けられた回転軸を有する電動機と、他方のトーションバー部分の内端に固定され駆動歯車に噛合する従動歯車とを有し、駆動歯車及び従動歯車は駆動歯車の回転を従動歯車へ伝達するが、従動歯車の回転を駆動歯車へ伝達しない歯車であるアクティブスタビライザ装置であることが好ましい。
【0031】
図示の如く、アクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rは電子制御装置24により制御される。尚図1には詳細に示されていないが、電子制御装置24はそれぞれCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよい。
【0032】
また図1に示されている如く、左右の前輪10FL、10FR及び左右の後輪10RL、10RRの制動力は制動装置28の油圧回路30により対応するホイールシリンダ32FL、32FR、32RL、32RRの制動圧が制御されることによって制御される。図には示されていないが、油圧回路30はリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧力は通常時には運転者によるブレーキペダル34の踏み込み量及びブレーキペダル34の踏み込みに応じて駆動されるマスタシリンダ36の圧力に応じて制御され、また必要に応じてオイルポンプや種々の弁装置が制動力制御用の電子制御装置38によって制御されることにより、運転者によるブレーキペダル34の踏み込み量に関係なく制御される。
【0033】
尚図1には詳細に示されていないが、制動力制御用の電子制御装置38もマイクロコンピュータと駆動回路とよりなり、マイクロコンピュータは例えばCPUと、ROMと、RAMと、入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のものであってよい。
【0034】
図1に示されている如く、電子制御装置24には横加速度センサ25より車輌の横加速度Gyを示す信号及び回転角度センサ26F、26Rにより検出されたアクチュエータ20F及び20Rの実際の回転角度φF、φRを示す信号が入力される。他方電子制御装置38にはヨーレートセンサ40により検出された車輌のヨーレートγを示す信号、車速センサ42により検出された車速Vを示す信号、操舵角センサ44により検出された操舵角θを示す信号が入力され、また圧力センサ46よりマスタシリンダ圧力Pmを示す信号、圧力センサ48FL〜48RRより対応する車輪の制動圧(ホイールシリンダ圧力)Pbi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。
【0035】
尚電子制御装置24及び38は必要に応じて相互に信号の授受を行う。また横加速度センサ25、回転角度センサ26F、26R、ヨーレートセンサ40、操舵角センサ44はそれぞれ車輌の左旋回時に生じる値を正として車輌の横加速度Gy、回転角度φF、φR、車輌のヨーレートγ、操舵角θを検出する。
【0036】
電子制御装置24は、図2に示されたフローチャートに従い、車輌の横加速度Gyに基づき車輌に作用するロールモーメントを推定し、前後輪の目標ロール剛性を演算し、ロールモーメントを打ち消す方向のアンチロールモーメントが増大するようロールモーメント及び目標ロール剛性に基づいてアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの目標回転角度φFt、φRtを演算し、アクチュエータ20F及び20Rの回転角度φF、φRがそれぞれ対応する目標回転角度φFt、φRtになるよう制御し、これにより旋回時等に於ける車輌のロールを低減する。
【0037】
従ってアクティブスタビライザ装置16及び18はそれぞれ前輪側及び後輪側にて車輌にアンチロールモーメントを付与する前輪側及び後輪側アンチロールモーメント付与装置として機能する。またアクティブスタビライザ装置16及び18、電子制御装置26、横加速度センサ60等は、車輌に過大なロールモーメントが作用するときにはアンチロールモーメントを増大させて車輌のロールを低減するアンチロールモーメント増減装置として機能する。
【0038】
また電子制御装置24は、所要のアンチロールモーメントを発生することができない異常がアクティブスタビライザ装置16、18等よりなるアンチロールモーメント増減装置に生じているか否かを判定し、アンチロールモーメント増減装置に異常が生じているか否か及び前後輪の目標ロール剛性比を示す信号を電子制御装置38に対し出力する。
【0039】
尚アクティブスタビライザ装置16、18等よりなるアンチロールモーメント増減装置に生じているか否かの判定自体は本発明の要旨をなすものではないので、当技術分野に於いて公知の任意の要領にて行われてよい。
【0040】
例えばsignφfをアクティブスタビライザ装置16のアクチュエータ20Fの回転角度φfの符号として、signφf(φft−φf)にて表される回転角度の偏差Δφfが演算されると共に、回転角度の偏差Δφfが基準値Δφfo以上であるか否かの判別によりアクティブスタビライザ装置16が異常であるか否かが判別され、同様の要領にてアクティブスタビライザ装置18が異常であるか否かが判別されてよい。この場合基準値Δφfo(及びΔφro)は定数であってもよいが、車輌の横加速度Gyの大きさ又は操舵角θ及び車速Vに基づいて推定される車輌の推定横加速度Gyhの大きさが大きいほど大きくなるよう、車輌の横加速度Gy又は推定横加速度Gyhの大きさに基づいて可変設定されてもよい。
【0041】
他方電子制御装置38は、後述の如く図3に示されたフローチャートに従い、アンチロールモーメント増減装置に異常が生じているか否か及び前後輪の目標ロール剛性比に応じて車輌のスタビリティファクタKhを演算し、車輌の操舵角θ、車速V、スタビリティファクタKhに基づき車輌の目標ヨーレートγtを演算し、ヨーレートセンサ40により検出された実ヨーレート(検出ヨーレート)γと目標ヨーレートγtとの偏差Δγを演算し、ヨーレート偏差Δγに基づきヨーレート偏差Δγを0にするための各車輪の目標制動圧Ptiを演算し、各車輪の制動圧Piが目標制動圧Ptiになるよう制動装置28を制御することにより車輌の走行運動制御のための制動力の制御を実行する。
【0042】
次に図2に示されたフローチャートを参照して実施例1に於いて電子制御装置24により達成されるアクティブスタビライザ装置の制御ルーチンについて説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0043】
まずステップ10に於いては車速センサ42により検出された車速Vを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては前輪のアクティブスタビライザ装置16が正常であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ50へ進み、否定判別が行われたときにはステップ30へ進む。
【0044】
ステップ30に於いては前輪のアクティブスタビライザ装置16の制御が中止されることによってその作動が中止され、ステップ40に於いてはフラグFsfが2にセットされると共にフラグFsfが2であることを示す信号が電子制御装置38へ送信される。
【0045】
ステップ50に於いては後輪のアクティブスタビライザ装置18が正常であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ60に於いてフラグFsfが0にセットされると共にフラグFsfが0であることを示す信号が電子制御装置38へ送信され、否定判別が行われたときにはステップ70に於いてフラグFsfが1にセットされると共にフラグFsfが1であることを示す信号が電子制御装置38へ送信される。
【0046】
ステップ80に於いては車輌の横加速度Gyの大きさが大きいほど目標アンチロールモーメントMatが大きくなるよう、車輌の横加速度Gyに基づき目標アンチロールモーメントMatが演算される。尚目標アンチロールモーメントMatは車速V及び操舵角θに基づいて演算される車輌の推定横加速度Gyhに基づいて演算されてもよく、車輌の横加速度Gy及び推定横加速度Gyhに基づいて演算されてもよい。
【0047】
ステップ90に於いてはフラグFsfが0であるか否かの判別、即ち前輪のアクティブスタビライザ装置16及び後輪のアクティブスタビライザ装置18の両者が正常であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ100へ進む。
【0048】
ステップ100に於いては当技術分野に於いて公知の要領にて前輪の目標ロール剛性配分比Rsft(0<Rsft<1)が演算されると共に、前輪の目標ロール剛性配分比Rsftを示す信号が電子制御装置38へ送信される。
【0049】
ステップ110に於いてはそれぞれ下記の式1及び2に従って前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartが演算される。
Maft=Rsdt・Mat ……(1)
Mart=(1−Rsdt)Mat ……(2)
【0050】
ステップ120に於いてはそれぞれ前輪の目標アンチロールモーメントMaft及び後輪の目標アンチロールモーメントMartに基づきアクティブスタビライザ装置16及び18のアクチュエータ20F及び20Rの目標回転角φft及びφrtが演算され、ステップ130に於いてはそれぞれアクチュエータ20F及び20Rの回転角φf及びφrがそれぞれ目標回転角φft及びφrtになるよう制御される。
【0051】
次に図3に示されたフローチャートを参照して実施例に於いて電子制御装置38により達成される制動力の制御による車輌の走行運動の制御ルーチンについて説明する。尚図3に示されたフローチャートによる制御も図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0052】
まずステップ210に於いては車速センサ42により検出された車速Vを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ220に於いてはフラグFsfが0であるか否かの判別、即ち前輪のアクティブスタビライザ装置16及び後輪のアクティブスタビライザ装置18の両者が正常であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ240へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ230へ進む。
【0053】
ステップ230に於いては前輪の目標ロール剛性配分比Rsftに対する後輪の目標ロール剛性配分比(1−Rsft)の比としてロール剛性の目標前後輪配分比Rfr=(1−Rsft)/Rsftが演算されると共に、ロール剛性の目標前後輪配分比Rfrが高いほどスタビリティファクタKhが大きくなるよう、ロール剛性の目標前後輪配分比Rfrに基づき車輌の目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhが演算され、しかる後ステップ270へ進む。
【0054】
ステップ240に於いてはフラグFsfが1であるか否かの判別、即ち前輪のアクティブスタビライザ装置16が正常で後輪のアクティブスタビライザ装置18が異常であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ250に於いて車輌の目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhがKh1に設定された後ステップ270へ進み、否定判別が行われたときにはステップ260に於いて車輌の目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhがKh2に設定された後ステップ270へ進む。
【0055】
尚この場合、スタビリティファクタKh1及びKh2は予め設定された一定値であってよく、前輪のアクティブスタビライザ装置16及び後輪のアクティブスタビライザ装置18の両者が正常である場合に演算されるスタビリティファクタKhをKh0として、スタビリティファクタKh1及びKh2はKh0以上の値である。またスタビリティファクタKh2はスタビリティファクタKh1よりも大きい値である。即ちこれらのスタビリティファクタの大小関係はKh0≦Kh1<Kh2である。
【0056】
ステップ270に於いては操舵角θ等に基づき車輌が旋回状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ310へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ280へ進む。
【0057】
ステップ280に於いてはフラグFsfの変化があったか否かの判別、即ち前輪のアクティブスタビライザ装置16若しくは後輪のアクティブスタビライザ装置18の正常、異常の変化があったか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ300へ進み、否定判別が行われたときにはステップ290へ進む。
【0058】
ステップ290に於いては後述のステップ300に於けるスタビリティファクタKhの漸近処理が完了したか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ310へ進み、否定判別が行われたときにはステップ300に於いて目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhの値がフラグFsfの変化前の値よりフラグFsfの変化後の値へ漸次変化するようスタビリティファクタKhの漸近処理が行われ、しかる後ステップ310へ進む。
【0059】
ステップ310に於いてはHをホイールベースとし、Rgをステアリングギヤ比として、車速V、操舵角θ、スタビリティファクタKhに基づき下記の式3に従って基準ヨーレートγeが演算されると共に、Tを時定数としsをラプラス演算子として、下記の式4に従って車輌の目標ヨーレートγtが演算される。尚基準ヨーレートγeは動的なヨーレートを考慮すべく車輌の横加速度Gyを加味して演算されてもよい。
γe=V・(θ/Rg)/{(1+KhV2)H} ……(3)
γt=γe/(1+Ts) ……(4)
【0060】
ステップ320に於いてはヨーレートγと目標ヨーレートγtとの偏差Δγが演算され、ステップ330に於いてはヨーレート偏差Δγに基づきヨーレート偏差Δγを0にするための各車輪の目標制動圧Ptiが当技術分野に於いて公知の要領にて演算され、ステップ340に於いては各車輪の制動圧Piがステップ290に於いて演算された目標制動圧Ptiになるよう制動装置28が制御されることにより車輌の走行運動制御のための制動力の制御が実行される。
【0061】
かくして図示の実施例によれば、前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18が正常であるときには、図2に示されたアクティブスタビライザ装置の制御ルーチンのステップ20、50、80に於いて肯定判別が行われ、ステップ80及びステップ100〜130に於いて前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18によって車輌に付与されるアンチロールモーメントにより車輌に作用するロールモーメントが少なくとも部分的に相殺され、これにより車輌の旋回時の車輌のロールが効果的に抑制される。
【0062】
また図示の実施例によれば、前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18が正常であるときには、図3に示された制動力の制御による車輌の走行運動の制御ルーチンのステップ220に於いて肯定判別が行われ、ステップ230に於いて前輪の目標ロール剛性配分比Rsftに基づきロール剛性の目標前後輪配分比Rfr=(1−Rsft)/Rsftが演算されると共に、ロール剛性の目標前後輪配分比Rfrが高いほど目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhが大きくなるよう、ロール剛性の目標前後輪配分比Rfrに基づき車輌のスタビリティファクタKhが演算される。
【0063】
従って図示の実施例によれば、前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側のアンチロールモーメント増減装置18が正常であるときには、ロール剛性の目標前後輪配分比Rfrが高いほどスタビリティファクタKhが大きくなるよう、ロール剛性の目標前後輪配分比Rfrに基づいてスタビリティファクタKhが演算されるので、前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側のアンチロールモーメント増減装置18の制御によるロール剛性の前後輪配分比に応じて目標ヨーレートγtを最適な値に演算することができ、これにより車輌の走行運動の制御に起因して車輌の旋回状態がオーバーステア状態になったりアンダーステア状態になったりすることを確実に防止することができ、これにより車輌の走行運動を効果的に安定化させることができる。
【0064】
尚図示の実施例によれば、前輪側アクティブスタビライザ装置16は正常であるが、後輪側アクティブスタビライザ装置18が異常であるときには、ステップ20に於いて肯定判別が行われると共に、ステップ50及び90に於いて否定判別が行われ、ステップ80及びステップ140〜160に於いて後輪側アクティブスタビライザ装置18の作動が中止されると共に、前輪側アクティブスタビライザ装置16によって車輌に付与されるアンチロールモーメントにより車輌に作用するロールモーメントが少なくとも部分的に相殺され、これにより車輌の旋回時の車輌のロールが抑制される。
【0065】
尚この場合前輪側アクティブスタビライザ装置16によって車輌に付与されるアンチロールモーメントの大きさは前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18が正常である場合に場合前輪側アクティブスタビライザ装置16によって車輌に付与されるアンチロールモーメントの大きさよりも小さい。
【0066】
また後輪側アクティブスタビライザ装置18は正常であるが、前輪側アクティブスタビライザ装置16が異常であるときには、ステップ20に於いて否定判別が行われ、ステップ30に於いて前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18の作動が中止され、後輪側アクティブスタビライザ装置18によって車輌にアンチロールモーメントは付与されず、これにより後輪側のロール剛性が過大になって車輌の旋回状態が過剰にオーバーステア状態になることが確実に防止される。
【0067】
尚前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18が正常であるか否かに関係なく、ステップ40、60、70に於いてフラグFsfを示す信号が電子制御装置38へ送信されることにより、前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18が正常であるか否かの情報が電子制御装置38へ送信される。また前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18が正常であるときには、ステップ100に於いて前輪の目標ロール剛性配分比Rsftを示す信号が電子制御装置38へ送信される。
【0068】
これに対し前輪側アクティブスタビライザ装置16は正常であるが、後輪側アクティブスタビライザ装置18が異常であるときには、ステップ220に於いて否定判別が行われると共に、ステップ240に於いて肯定判別が行われ、ステップ250に於いて目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhがKh0以上のKh1に設定される。また後輪側アクティブスタビライザ装置18は正常であるが、前輪側アクティブスタビライザ装置16が異常であるときには、ステップ220及び240に於いて否定判別が行われ、ステップ260に於いて目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhがKh1よりも大きいKh2に設定される。
【0069】
そしてステップ310に於いて車速V、操舵角θ、スタビリティファクタKhに基づき車輌の目標ヨーレートγtが演算され、ステップ320〜340に於いて車輌のヨーレートγが目標ヨーレートγtになるよう各車輪の制動力が制御される。
【0070】
従って図示の実施例によれば、前輪側アクティブスタビライザ装置16若しくは後輪側アクティブスタビライザ装置18が異常であるときには、二つのアクティブスタビライザ装置が正常である場合に比してスタビリティファクタKhが大きい値に設定されることにより、目標ヨーレートγtの大きさが小さくされるので、車輌のヨーレートγと目標ヨーレートγtとの偏差Δγの大きさを確実に小さくすることができ、これにより制動力の制御量が過剰になることに起因して車輌の旋回状態がオーバーステア状態になることを確実に防止することができる。
【0071】
また図示の実施例によれば、前輪側アクティブスタビライザ装置16は正常であるが、後輪側アクティブスタビライザ装置18が異常であるときには、スタビリティファクタKhがKh0以上のKh1に設定され、また後輪側アクティブスタビライザ装置18は正常であるが、前輪側アクティブスタビライザ装置16が異常であるときには、スタビリティファクタKhがKh1よりも大きいKh2に設定されるので、前輪側アクティブスタビライザ装置16及び後輪側アクティブスタビライザ装置18の何れが異常であるかに応じて目標ヨーレートγtの大きさを最適に小さくすることができる。
【0072】
また図示の実施例によれば、前輪側アクティブスタビライザ装置16若しくは後輪側のアンチロールモーメント増減装置18が正常な状態より異常な状態に変化したときには、目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhが前輪側アクティブスタビライザ装置16若しくは後輪側のアンチロールモーメント増減装置18が正常な状態であるときの値より前輪側アクティブスタビライザ装置16若しくは後輪側のアンチロールモーメント増減装置18が異常な状態であるときの値まで漸次変化するよう、ステップ270乃至290に於いてスタビリティファクタKhの漸近処理が行われる。
【0073】
従って前輪側アクティブスタビライザ装置16若しくは後輪側のアンチロールモーメント増減装置18が正常な状態より異常な状態に変化したときにスタビリティファクタKhが急変し、これに伴って目標ヨーレートγtが急変することを確実に防止することができ、これにより車輌の走行運動を制御するための各車輪の制動力の制御量が急変すること及びこれに起因する車輌の走行運動の急変を確実に防止することができる。
【0074】
また図示の実施例によれば、ステップ270に於いて車輌が旋回状態にあるか否かの判別が行われ、車輌が旋回状態にあるときにのみステップ280〜300によりスタビリティファクタKhの漸近処理が行われるので、スタビリティファクタKhの変化により目標ヨーレートγtが変化しても車輌の走行運動が急変する虞れがない車輌の直進時にスタビリティファクタKhの漸近処理が無駄に行われることを確実に防止することができる。
【0075】
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0076】
例えば上述の実施例に於いては、アクティブスタビライザ装置によりアンチロールモーメントを増大させて車輌のロール剛性を増減するようになっているが、ロール剛性を増減する手段は例えばアクティブサスペンションの如く車輪の接地荷重を増減可能な当技術分野に於いて公知の任意の手段であってよい。
【0077】
また上述の実施例に於いては、前輪の目標ロール剛性配分比Rsftに基づき目標ロール剛性の前後輪配分比Rfrが演算され、目標ロール剛性の前後輪配分比Rfrが高いほど目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhが大きくなるよう、目標ロール剛性の前後輪配分比Rfrに基づき車輌のスタビリティファクタKhが演算されるようになっているが、アクチュエータ20F及び20Rの回転角φf及びφrに基づきロール剛性の前後輪配分比が演算され、ロール剛性の前後輪配分比が高いほどスタビリティファクタKhが大きくなるよう、ロール剛性の前後輪配分比に基づきスタビリティファクタKhが演算されるよう修正されてもよい。
【0078】
また上述の実施例に於いては、ステップ20に於いて前輪のアクティブスタビライザ装置16が異常であると判別されると、ステップ30に於いて前輪のアクティブスタビライザ装置16の制御が中止されることによってその作動が中止され、ステップ240に於いて否定判別が行われることによりステップ260に於いて車輌の目標ヨーレートγtの演算に供されるスタビリティファクタKhがKh2に設定されるようになっているが、前輪のアクティブスタビライザ装置16が異常であると判別されると、後輪のアクティブスタビライザ装置18が異常であるか否かの判別が行われ、前輪及び後輪のアクティブスタビライザ装置が異常であると判別されると、制動力の制御による車輌の走行運動の制御が中止されるよう修正されてもよい。
【0079】
また上述の実施例に於いては、前輪側アクティブスタビライザ装置16若しくは後輪側のアンチロールモーメント増減装置18が正常な状態より異常な状態に変化したときには、スタビリティファクタKhの漸近処理が行われるようになっているが、この漸近処理は省略されてもよい。
【0080】
また上述の実施例に於いては、アクティブスタビライザ装置が正常であるか否かの判別はアクチュエータ20F、20Rの回転角度に基づいて判別されるようになっているが、トーションバー部分のトルクが検出され、検出されたトルクとアクティブスタビライザ装置のアクチュエータに対する制御指令値との関係に基づいて判定されてもよい。
【0081】
また上述の実施例に於いては、車輌の走行運動の制御は各車輪の制動力が制御されることにより実行されるようになっているが、各車輪の制動力及び駆動力が制御されることにより実行されるよう修正されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】前輪側及び後輪側にアクティブスタビライザ装置が設けられた車輌に適用された本発明による車輌の走行運動制御装置の一つの実施例を示す概略構成図である。
【図2】実施例に於けるアクティブスタビライザ装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】実施例に於ける車輌の走行運動の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
16、18 アクティブスタビライザ装置
24、26 電子制御装置
25 横加速度センサ
26F、26R 回転角センサ
28 制動装置
40 ヨーレートセンサ
42 車速センサ
44 操舵角センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌の目標ヨーレートを設定する目標ヨーレート設定手段と、車輌のヨーレートが前記目標ヨーレートになるよう各車輪の制駆動力を制御する制駆動力制御手段と、前輪側若しくは後輪側のロール剛性を増減するロール剛性可変装置とを有する車輌の走行運動制御装置に於いて、前記目標ヨーレート設定手段は前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比が高いほど前記目標ヨーレートの大きさを小さくすることを特徴とする車輌の走行運動制御装置。
【請求項2】
前記目標ヨーレート設定手段は少なくともスタビリティファクタに基づいて前記目標ヨーレートを設定し、前輪側のロール剛性に対する後輪側のロール剛性の比が高いほど前記スタビリティファクタを増大させることにより前記目標ヨーレートの大きさを小さくすることを特徴とする請求項1に記載の車輌の走行運動制御装置。
【請求項3】
前記ロール剛性可変装置は前輪側若しくは後輪側に設けられ車輌に付与されるアンチロールモーメントを増減するアンチロールモーメント増減装置を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の車輌の走行運動制御装置。
【請求項4】
前記アンチロールモーメント増減装置は前輪側アンチロールモーメント増減装置と後輪側アンチロールモーメント増減装置とよりなることを特徴とする請求項3に記載の車輌の走行運動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−30832(P2007−30832A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221043(P2005−221043)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】