説明

配線構造、その製造方法、および表示装置

【課題】 配線構造と他の電極間のショートを防ぐ。
【解決手段】 SiOにより構成されたゲート絶縁膜12およびその上に積層され、SiNにより構成された層間絶縁膜13に、緩衝フッ酸を用いたエッチングによりコンタクトホールを形成する。このコンタクトホールに、高融点金属により構成された第1の保護金属層170と、高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層172と、および高融点金属により構成され、ゲート絶縁膜12よりも厚く形成された第2の保護金属層174とがこの順で積層された電極53を形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、配線構造、その製造方法およびその配線構造を含む表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、薄層トランジスタ(以下、単にTFTという)をスイッチング素子として用いた表示装置が商品化されている。また、近年、発光素子として機能する電流駆動型の有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)素子を用いた表示装置が、CRTやLCDに代わる表示装置として注目されている。有機EL素子を用いた表示装置において、TFTは、有機EL素子の駆動にも用いられる。
【0003】図5は、有機EL素子を用いた表示装置におけるTFTの断面図である。TFT200は、石英ガラス等により構成された絶縁性基板210、多結晶シリコンにより構成された能動層243、SiO2(酸化シリコン)により構成されたゲート絶縁膜212、およびモリブデン(Mo)等の高融点金属により構成されたゲート電極242がこの順で積層された構造を持つ。能動層243には、ゲート電極242下方のチャネル243cと、このチャネル243cの両側に、ゲート電極242をマスクにしてイオン注入して形成されたドレイン243d及びソース243sが設けられている。
【0004】TFT200は、さらに、SiNにより構成された第1の層間絶縁膜213およびSiO2により構成された第2の層間絶縁膜214により形成された層間絶縁膜215、ドレイン電極253、およびソース電極254を有する。ドレイン電極253およびソース電極254は、ドレイン243d及びソース243sに対応して設けられたコンタクトホールにアルミニウム(Al)等の金属を充填して形成される。ドレイン電極253およびソース電極254を形成するためのコンタクトホールは、緩衝フッ酸等を用いたエッチングにより形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のように構成されたTFT200においては、第1の層間絶縁膜213は、その下層のゲート絶縁膜212を構成するSiO2よりも緩衝フッ酸に対するエッチングレートが低いSiNにより構成されている。そのため、緩衝フッ酸を用いたウェットエッチングによりコンタクトホールを形成すると、図6(a)に示すように、ゲート絶縁膜212と第1の層間絶縁膜213との境界において、ゲート絶縁膜212の方がより多くエッチングされた状態のオーバーハング部が形成されてしまう。このようなオーバーハング部の形成により、コンタクトホールに形成されるドレイン電極253およびソース電極254に段差が生じ、コンタクト抵抗が増加するという問題が生じる。
【0006】一方、有機EL素子を用いた表示装置において、有機EL素子への電源供給ラインとなる配線を含む駆動用のTFTには、より高い信頼性が求められ、例えば低抵抗化、ウィスカ・ヒロック対策、エレクトロマイグレーション対策、ストレスマイグレーション対策が必要である。低抵抗化を図るために、ドレイン電極253およびソース電極254は、上述のアルミニウム等の低抵抗金属により構成される。さらに、アルミニウム等の低抵抗金属により構成された配線層を被覆するようにモリブデン等の高融点金属により構成された保護金属層を設けることにより、ウィスカ・ヒロックが改善される。このような保護金属層は、配線全体を低抵抗化するため、またパネル表面の凹凸低減のために、低抵抗金属により構成される配線層よりも薄く形成される。
【0007】ドレイン電極253およびソース電極254を低抵抗金属の配線層および保護金属層により形成した場合、図6(b)に示したように、コンタクトホールに形成されたオーバーハング部の影響により生じた段差により、保護金属層が途切れてしまうという問題がある。さらに、図示したように、この途切れた部分からウィスカが生じてしまうことがある。特に、ドレイン電極253およびソース電極254の上方には有機EL素子の陰極が全面に形成されるので、上側の保護金属層にウィスカが生じるとこれらの電極と陰極間がショートして表示装置が不良となってしまう。
【0008】本発明は、そうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、配線構造において、電極間のショートを防いで装置の不良の発生割合を低減することにある。本発明の別の目的は、配線構造のウィスカの発生を低減させることにある。本発明のまた別の目的は、配線構造の低抵抗化を図ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、異なる材料により構成された第1の絶縁層および第2の絶縁層がこの順で積層された絶縁膜に形成されたコンタクトホールに設けられた配線構造であって、高融点金属により構成された第1の金属層と、高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層と、高融点金属により構成され、第1の絶縁層よりも厚く形成された第2の金属層とがこの順で積層された配線を有することを特徴とする配線構造が提供される。
【0010】第2の金属層を第1の絶縁層よりも厚く形成することにより、コンタクトホールにおいて、第1の絶縁層と第2の絶縁層との境界にオーバーハング部が形成された場合であっても、第2の金属層を途切れることなく形成することができる。そのため、第2の金属層において、ウィスカの形成を防ぐことができ、この配線構造と他の電極との間のショートが発生しないようにできる。
【0011】第1の絶縁層はSiOまたはSiONにより構成することができる。また、第2の絶縁層はSiNにより構成することができる。
【0012】高融点金属としては、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、またはタングステン(W)等の6A族元素を含むものが例示される。このような金属層を設けることにより、配線構造のウィスカ・ヒロックを改善することができる。また、これら6A族元素は、低抵抗金属への拡散が少ないという特徴を有する。またさらに、高融点金属としてタンタル(Ta)、バナジウム(V)、またはニオブ(Nb)等を用いることもできる。高融点金属は、モリブデンを含むのが好ましい。モリブデンは、特に製造工程における加工が容易であるという特徴を有する。
【0013】配線層を構成する金属としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、またはパラジウム(Pd)等が例示される。これらの金属を用いることにより、配線構造の低抵抗化を図ることができる。これらの中で、特にアルミニウム、またはアルミニウムよりも比抵抗の低い銅または銀が好ましく用いられる。配線層はアルミニウムを含む金属により構成されるのが特に好ましい。このようにすると、アルミニウムは反応性が高いため、高融点金属により構成された金属層との密着性が高まり、配線構造の歩留まりの向上に寄与できる。
【0014】本発明によれば、異なる材料により構成された第1の絶縁層および第2の絶縁層がこの順で積層された絶縁膜に形成されたコンタクトホールに設けられた配線構造であって、コンタクトホールは所定のエッチング液を用いたエッチングにより形成され、コンタクトホールにおいて、第2の絶縁膜には、第1の絶縁膜よりもコンタクトホールの中心方向に突出した凸部分であるオーバーハング部が形成され、高融点金属により構成された第1の金属層と、高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層と、高融点金属により構成され、オーバーハング部とその下方の第1の絶縁膜との距離よりも厚く形成された第2の金属層とがこの順で積層された配線を有することを特徴とする配線構造が提供される。
【0015】第2の金属層を、コンタクトホールにおいて第2の絶縁膜に形成されたオーバーハング部とその下方の第1の絶縁膜との距離よりも厚く形成することにより、このオーバーハング部の影響を吸収して、第2の金属層を途切れることなく形成することができる。そのため、第2の金属層において、ウィスカの形成を防ぐことができ、この配線構造と他の電極との間のショートが発生しないようにできる。なお、このとき、第2の金属層は、オーバーハング部の先端部とその下方の第1の絶縁膜との距離よりも厚く形成されることができる。
【0016】所定のエッチング液としては、緩衝フッ酸(バッファドフッ酸)を用いることができる。
【0017】本発明によれば、異なる材料により構成された第1の絶縁層および第2の絶縁層がこの順で積層された絶縁膜に形成されたコンタクトホールに設けられた配線構造であって、コンタクトホールは所定のエッチング液を用いたエッチングにより形成され、高融点金属により構成された第1の金属層と、高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層と、高融点金属により構成され、第1の絶縁層と第2の絶縁層の所定のエッチング液に対するエッチングレートの違いにより生じた段差によっても途切れない厚さに形成された第2の金属層とがこの順で積層された配線を有することを特徴とする配線構造が提供される。
【0018】第2の金属層を、このように形成することにより、第2の金属層を途切れることなく形成することができる。そのため、第2の金属層において、ウィスカの形成を防ぐことができ、この配線構造と他の電極との間のショートが発生しないようにできる。
【0019】コンタクトホールは、第2の絶縁層において第1の絶縁層よりも緩やかなテーパ部を有するように形成されてよい。
【0020】第2の絶縁層におけるテーパ部を第1の絶縁層におけるものよりも緩やかにすることにより、オーバーハング部の影響を低減することができ、第2の金属層の厚さを薄くすることができる。これにより、配線構造を低抵抗化することができる。
【0021】絶縁膜は、第2の絶縁層よりも所定のエッチング液に対するエッチングレートが高い材料により構成され、第2の絶縁層の上に形成された第3の絶縁層をさらに含むことができる。第2の絶縁層がSiNにより構成された場合、第3の絶縁層はSiOまたはSiONにより構成されてよい。このような第3の絶縁層を設けることにより、エッチング中に第3の絶縁層が第2の絶縁層よりも速くエッチングされるので、第2の絶縁層が上側からもエッチングされ、第2の絶縁層のテーパ部を緩やかにすることができる。
【0022】第2の絶縁層は、第1の絶縁層の膜厚以上、600nm以下の厚さに形成されることができる。
【0023】第2の絶縁層を第1の絶縁層以上の厚さに形成することにより、第2の絶縁層におけるテーパ部を第1の絶縁層におけるものよりも緩やかにすることができる。また、第2の絶縁層を600nm以下に形成することにより、コンタクトホールを形成するためにかかるエッチング時間を制御することができ、コンタクトホールの広がりを制限することができる。
【0024】第1の金属層は、第1の絶縁層よりも厚く形成されることができる。第1の金属層を第1の絶縁層よりも厚く形成することにより、コンタクトホールにおいて、第1の絶縁層と第2の絶縁層との境界にオーバーハング部が形成された場合であっても、第1の金属層を途切れることなく形成することができる。そのため、第1の金属層において、ウィスカの形成を防ぐことができ、この配線構造と他の電極との間のショートが発生しないようにできる。
【0025】以上の配線構造は、基板と第1の絶縁層との間に設けられた半導体層と、第1の絶縁層の上方のコンタクトホールが形成された個所とは異なる位置に設けられたゲート電極とを含む半導体装置に用いることができる。この場合、第1の絶縁層はゲート絶縁膜として機能し、第2の絶縁膜はゲート絶縁膜または層間絶縁膜として機能する。コンタクトホールは、配線が半導体層に接続して設けられるように、第1の絶縁層および第2の絶縁層を貫通して形成されてよい。
【0026】本発明によれば、異なる材料により構成された第1の絶縁層および第2の絶縁層がこの順で積層された絶縁膜に、所定のエッチング液を用いたエッチングによりコンタクトホールを形成する工程と、コンタクトホールに、高融点金属により構成された第1の金属層を形成する工程と、第1の金属層の上に、高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層を形成する工程と、配線層の上に、高融点金属により構成された第2の金属層を第1の絶縁層よりも厚く形成する工程とを含むことを特徴とする配線構造の製造方法が提供される。
【0027】コンタクトホールを形成する工程は、第1の絶縁層に対するエッチングレートが第2の絶縁層に対するエッチングレートよりも高いエッチング液によりエッチングを行うことができる。
【0028】本発明によれば、以上で説明したいずれかの配線構造と、その配線構造の上部に設けられ、少なくとも陽極、発光素子層、および陰極を有する光学素子と、を含むことを特徴とする表示装置が提供される。
【0029】本発明によれば、異なる材料により構成された第1の絶縁層および第2の絶縁層がこの順で積層された絶縁膜に設けられたコンタクトホールに形成された配線構造と、その上部に設けられ、少なくとも陽極、発光素子層、および陰極を有する光学素子とを含み、配線構造は、高融点金属により構成された第1の金属層と、高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層と、高融点金属により構成され、第1の絶縁層よりも厚く形成された第2の金属層とがこの順で積層されたことを特徴とする表示装置が提供される。
【0030】第2の金属層を第1の絶縁層よりも厚く形成することにより、コンタクトホールにおいて、第1の絶縁層と第2の絶縁層との境界にオーバーハング部が形成された場合であっても、第2の金属層を途切れることなく形成することができる。そのため、第2の金属層において、ウィスカの形成を防ぐことができ、この配線構造とその上部に設けられた光学素子の電極との間のショートが発生しないようにできる。特に、光学素子の陰極が表示装置の複数の画素に共通に形成された場合、配線構造と陰極間のショートを防ぐことにより、表示装置の不良が生じる確率を大幅に低減することができる。
【0031】なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0032】
【発明の実施の形態】第1の実施の形態:本実施の形態における配線構造は、有機EL素子を含む表示装置を駆動するTFTに用いられる。図1は、この表示装置の一部を示す平面図である。表示装置100は、絶縁性基板10上に、図中一点鎖線で示す表示領域110と、その表示領域のTFTを駆動する周辺駆動回路120および130とを有する。周辺駆動回路120には複数の走査線G1〜Gmが、周辺駆動回路130には複数のデータ線D1〜Dnが接続される。
【0033】表示領域110において、走査線Gkとデータ線Dkとの交差点付近の一表示画素のみ回路図を示す。この表示画素は、有機EL素子60、第1のTFT30、有機EL素子60の第2のTFT40、およびコンデンサCを含む。
【0034】第1のTFT30において、ゲート電極は走査線Gkに接続され、ソース(またはドレイン)電極はデータ線Dkに接続され、ドレイン(またはソース)電極は第2のTFT40のゲート電極およびコンデンサCの一方の電極に接続される。
【0035】第2のTFT40において、ゲート電極は第1のTFT30のドレイン(またはソース)電極に接続され、ソース電極は有機EL素子60の陽極に接続され、ドレイン電極は電源線112に接続される。電源線112には、実際に有機EL素子60を発光させるための電圧が供給される。コンデンサCにおいて、一方の電極が第1のTFT30のドレイン(またはソース)電極と第2のTFT40のゲート電極に接続され、他方の電極は接地される。有機EL素子60の陽極は第2のTFT40のソース電極に接続され、陰極は接地される。
【0036】図2は、図1に示した表示画素において点線で囲んだ領域150の断面図である。図2に示すように、ガラスまたは石英等により構成された絶縁性基板10の上に能動層43が形成される。能動層43は、非晶質シリコン(a−Si)膜にレーザ光を照射して多結晶化した多結晶シリコン(p−Si)膜により構成される。能動層43には、チャネル43cの両側にソース43sおよびドレイン43dが設けられる。
【0037】能動層43の上にゲート絶縁膜12、その上にゲート電極42が設けられる。ゲート電極42は、モリブデンやクロム等の高融点金属により構成される。ゲート電極42は、第1のTFT30のソースに接続される。能動層43において、チャネル43cはゲート電極42の下方に形成される。
【0038】ゲート絶縁膜12およびゲート電極42の上の全面には、層間絶縁膜15が形成される。ドレイン43dおよびソース43sに対応して設けられたコンタクトホールにはアルミニウム等の金属が充填され、ドレイン電極53およびソース電極54が形成される。コンタクトホール、ドレイン電極53およびソース電極54の製造方法に関しては、後に詳述する。
【0039】層間絶縁膜15、ドレイン電極53およびソース電極54の上の全面には、例えば有機樹脂からなる平坦化絶縁膜17が形成される。平坦化絶縁膜17の上には、有機EL素子60が形成される。有機EL素子60は、陽極61、発光素子層66、および陰極67がこの順で積層形成された構造を持つ。陽極61は、平坦化絶縁膜17のソース電極54に対応して設けられたコンタクトホールを介してソース43sと接続される。陽極61の上には絶縁膜68が形成される。絶縁膜68は、陽極61の厚みによる段差に起因する発光素子層66の断ち切れによって生じる陰極67と陽極61との短絡を防止するために設けられる。
【0040】陽極61の材料としては、酸化インジウム・スズ(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO)、または酸化インジウム(In3)等が例示される。一般的には、ホール注入効率や表面抵抗の低さからITOが用いられる。陰極67の材料としては、例えば、リチウムを微量に含むアルミニウム合金、マグネシウムインジウム合金、またはマグネシウム銀合金等が例示される。発光素子層66は、ホール輸送層62、発光層64および電子輸送層65がこの順で積層形成された構造を持つ。ホール輸送層62の材料としては、4,4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4’’-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine:MTDATA)、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン(N,N'-Di(naphthalene-1-yl)-N,N'-diphenyl-benzidine:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(N,N’-diphenyl-N,N’-di(3-methylphenyl)-1,1’-biphenyl-4,4’-diamine:TPD)等が例示される。発光層64の材料としては、アルミキノレン錯体(Alq3)、またはキナクリドン誘導体を含むビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(bis (10-hydroxybenzo[h]quinolinato) beryllium:Bebq2)等が例示される。電子輸送層65の材料としては、Alq3、またはBebq2等が例示される。
【0041】ホール輸送層62、電子輸送層65および陰極67は、各表示画素の有機EL素子60に共通に形成される。発光層64は、陽極61に対応して島状に形成される。
【0042】以上で説明した表示画素の構成、材料は例示であり、これらに限定する趣旨ではない。例えば、第1のTFT30および第2のTFT40は、nチャネル型であってもよく、pチャネル型であってもよく、さらにnチャネル型とpチャネル型との組合せであってもよい。また、各層の間には介在層があってもよい。
【0043】次に、以上のように構成された表示画素において、有機EL素子60を発光させる動作を説明する。走査線Gkからの信号が第1のTFT30のゲート電極に印加されると、第1のTFT30がオンになる。そのため、第1のTFT30のソース(またはドレイン)電極から印加された電荷がコンデンサCに蓄積されるとともに第2のTFT40のゲート電極41に印加される。有機EL素子60には、第2のTFT40のゲート電極41に印加された電圧に応じた電流が電源線112から供給される。
【0044】有機EL素子60において、陽極61から注入されたホールと陰極67から注入された電子とが発光層64の内部で再結合し、発光層64を構成する有機分子を励起して励起子が生じる。この励起子が放射失活する過程で発光層64から光が放たれ、この光が透明な陽極61を介して外部へ放出されて有機EL素子60が発光する。
【0045】以上の有機EL表示装置の表示画素の構造をもとに、本発明の特徴を説明する。本発明の実施の形態において、ドレイン電極53およびソース電極54は、比抵抗の低い金属により構成された配線層が高融点金属により構成される保護金属層によって被覆された多層構造を持つ。第1の実施の形態において、保護金属層は、ゲート絶縁膜12よりも厚く形成される。
【0046】図3は、コンタクトホール、ドレイン電極53およびソース電極54の形成方法を示す工程図である。本実施の形態において、ゲート絶縁膜12は、CVD法によって成膜された酸化シリコン(SiO)により構成される。層間絶縁膜15は、CVD法によって成膜された窒化シリコン(SiN)により構成された第1の層間絶縁膜13と、同じくCVD法によって成膜された酸化シリコン(SiO)により構成された第2の層間絶縁膜14とを有する。これらの第1の層間絶縁膜13と第2の層間絶縁膜14とは、真空から取り出されることなく、連続してCVD法によって形成されるのが好ましい。これにより、空気中の塵等が両膜の界面に付着するのを防止することができる。
【0047】以下に、コンタクトホールの形成方法を説明する。能動層43のソース43s(またはドレイン43d)(図2参照)に対応した位置に開口が形成されたレジスト層160をマスクとして、緩衝フッ酸を用いてエッチングを行う。まず、図3(a)に示すように、第2の層間絶縁膜14がエッチングにより除去される。このとき、第2の層間絶縁膜14において、レジスト層160の下部分もアンダーエッチングされる。
【0048】次に、図3(b)に示すように、第1の層間絶縁膜13がエッチングにより除去される。このとき、第2の層間絶縁膜14は、緩衝フッ酸に対するエッチングレートが第1の層間絶縁膜13よりも大きいので、第1の層間絶縁膜13がエッチングされる間に第2の層間絶縁膜14が横方向にさらにエッチングされる。その結果、第1の層間絶縁膜13は、上部方向からもエッチングされるので、第1の層間絶縁膜13のテーパ角を小さくすることができる。
【0049】図3(c)に示すように、第1の層間絶縁膜13の縦方向のエッチングが終了すると、次にゲート絶縁膜12がエッチングされる。ゲート絶縁膜12は、縦方向にエッチングされるとともに横方向にもエッチングされる。このとき、第1の層間絶縁膜13もエッチングされるが、ゲート絶縁膜12は、緩衝フッ酸に対するエッチングレートが第1の層間絶縁膜13よりも大きいので、ゲート絶縁膜12の方が第1の層間絶縁膜13よりも横方向に多くエッチングされる。その結果、図示するように、第1の層間絶縁膜13とゲート絶縁膜12との境界にオーバーハング部が形成される。オーバーハング部とは、第1の層間絶縁膜13とゲート絶縁膜12との境界において、第1の層間絶縁膜13がコンタクトホールの中心に向かってゲート絶縁膜12よりも突出した形状のことである。このようにして、能動層43のドレイン14d(またはソース14s)に対応した位置に、ゲート絶縁膜12、第1の層間絶縁膜13、および第2の層間絶縁膜14を貫通したコンタクトホールが形成される。
【0050】レジスト層160を除去し、図3(d)に示すように、コンタクトホールおよび第2の層間絶縁膜14の上部全面に高融点金属により構成された第1の保護金属層170、低抵抗金属により構成された配線層172、および高融点金属により構成された第2の保護金属層174を順次スパッタリング法により形成する。このとき、第2の保護金属層174は、ゲート絶縁膜12よりも厚く形成される。その後、第1の保護金属層170、配線層172および第2の保護金属層174をエッチングしてドレイン電極53およびソース電極54を形成する。
【0051】本実施の形態において、第2の保護金属層174をゲート絶縁膜12よりも厚く形成することにより、第1の層間絶縁膜13とゲート絶縁膜12との境界にオーバーハング部が形成されていても、第2の保護金属層174が途切れることなく形成される。したがって、ドレイン電極53およびソース電極54のウィスカの発生を抑えることができる。そのため、図2に示したように、ドレイン電極53およびソース電極54の上方に有機EL素子60の陰極67が一面に形成されても、ショートがおこらず、表示装置100を安定に製造することができる。
【0052】また、本実施の形態において、第1の保護金属層170もまた、ゲート絶縁膜12よりも厚く形成される。これにより、ドレイン電極53およびソース電極54のウィスカの発生を抑えることができる。そのため、ドレイン電極53およびソース電極54と他の電極との間のショートがおこらず、表示装置100を安定に製造することができる。
【0053】さらに、本実施の形態において、第1の層間絶縁膜13は、ゲート絶縁膜12以上の厚さに形成される。これにより、第1の層間絶縁膜13が上方向からエッチングされる時間が長くなり、第1の層間絶縁膜13のテーパ角を緩やかにすることができる。また、第1の層間絶縁膜13上に、第1の層間絶縁膜13よりも緩衝フッ酸に対するエッチングレートが高い材料により構成された第2の層間絶縁膜14が形成されているので、第1の層間絶縁膜13が上方向からエッチングされる時間が長くなり、第1の層間絶縁膜13のテーパ角をさらに緩やかにすることができる。
【0054】また、第1の層間絶縁膜13は、コンタクトホールの最も広い部分の半径が所望の値以下となるように形成することができる。例えば、本実施の形態においては、コンタクトホールの最も広い部分の半径が(2+α)μm(αはレジスト層160の開口の半径、本実施の形態において、α=約2μm)以下となるように形成することができる。図3(c)に示すように、ゲート絶縁膜12(SiO)/第1の層間絶縁膜13(SiN)/第2の層間絶縁膜14(SiO)の膜厚をd1、d2、d3、それぞれの緩衝フッ酸に対するエッチングレートをr1、r2、r3とすると、全エッチング時間T=d1/r1+d2/r2+d3/r3となる。
【0055】第2の層間絶縁膜14におけるコンタクトホールの広がりL=r3×Tとなる。したがって、ゲート絶縁膜12、第1の層間絶縁膜13および第2の層間絶縁膜14は、L=r3×T≦2μm(式1)となるような厚さに形成される。本実施の形態において、ゲート絶縁膜12および第2の層間絶縁膜14はいずれもSiOにより構成されるので、r1≒r3とすることができる。これを式1に代入すると、d2≦r2/r3(2−d1−d3)となる。第1の層間絶縁膜13の厚さd2は、第1の層間絶縁膜13および第2の層間絶縁膜14に対する緩衝フッ酸のエッチングレートr2およびr3、第2の層間絶縁膜14の厚さd3およびゲート絶縁膜の厚さd1に応じて定めることができる。通常、SiO膜の緩衝フッ酸に対するエッチングレートは、SiN膜のものの3〜10倍である。
【0056】以上の条件に適合する場合に、第1の層間絶縁膜13の厚さの好ましい範囲は、100〜600nmである。第2の層間絶縁膜14の厚さの好ましい範囲は、100〜500nmである。ゲート酸化膜12の厚さの好ましい範囲は、20〜100nmである。第1の保護金属層170の厚さの好ましい範囲は30〜120nm、第2の保護金属層174の厚さの好ましい範囲は30〜120nm、配線層172の厚さの好ましい範囲は300〜700nmである。
【0057】第2の実施の形態:図4は、本発明の第2の実施の形態を説明する模式図である。第1の実施の形態においては、第2の保護金属層174がゲート絶縁膜12よりも厚く形成される形態を説明したが、本実施の形態において、第2の保護金属層174は、オーバーハング部の先端部とその先端部下方のゲート絶縁膜12との距離d4よりも厚く形成される。これにより、第1の層間絶縁膜13とゲート絶縁膜12との境界にオーバーハング部が形成されていても、第2の保護金属層174が途切れることなく形成される。したがって、ドレイン電極53およびソース電極54へのウィスカの発生を抑えることができる。そのため、図2に示したように、ドレイン電極53およびソース電極54の上方に有機EL素子60の陰極67が一面に形成されても、ショートがおこらず、表示装置100を安定に製造することができる。
【0058】また、本実施の形態において、第1の保護金属層170もまた、オーバーハング部の先端部とその先端部下方のゲート絶縁膜12との距離d4よりも厚く形成される。これにより、電極間のショートを防ぐことができるという同様の効果が得られる。
【0059】なお、以上の実施の形態において、ゲート絶縁膜12および第2の層間絶縁膜14は、SiOにより構成されるとしたが、ゲート絶縁膜12および第2の層間絶縁膜14は、酸窒化シリコン(SiON)により構成されてもよい。本発明に係る配線構造およびその配線構造の製造方法は、多層構造の膜を所定のエッチング液によりエッチングしてホールを形成する際に、その多層構造の膜の下層を構成する材料のそのエッチング液に対するエッチングレートが上層を構成する材料のものよりも大きい場合に効果的に用いられる。
【0060】また、以上の実施の形態において、第1の層間絶縁膜13がSiNにより構成されるとして説明したが、例えばゲート絶縁膜12の上に第2のゲート絶縁膜としてSiNにより構成された層が設けられてもよい。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、配線構造において、電極間のショートを防いで装置の不良の発生割合を低減することにある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 表示装置の一部を示す平面図である。
【図2】 図1に示した表示画素において点線で囲んだ領域の断面図である。
【図3】 コンタクトホール、ソース電極およびドレイン電極の形成方法を示す工程図である。
【図4】 本発明の第2の実施の形態を説明する模式図である。
【図5】 従来の有機EL素子のTFTの断面図である。
【図6】 従来の有機EL素子のTFTにおけるコンタクトホールを示す断面図である。
【符号の説明】
10 絶縁性基板、 12 ゲート絶縁膜、 13 第1の層間絶縁膜、14第2の層間絶縁膜、 15 層間絶縁膜、 30 第1のTFT、 40 第2のTFT、 53 ドレイン電極、 54 ソース電極、 60 有機EL素子、 61 陽極、 64 発光層、 66 発光素子層、 100 表示装置、 170 第1の保護金属層、 172 配線層、 174 第2の保護金属層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 異なる材料により構成された第1の絶縁層および第2の絶縁層がこの順で積層された絶縁膜に形成されたコンタクトホールに設けられた配線構造であって、高融点金属により構成された第1の金属層と、前記高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層と、高融点金属により構成され、前記第1の絶縁層よりも厚く形成された第2の金属層と、がこの順で積層された配線を有することを特徴とする配線構造。
【請求項2】 異なる材料により構成された第1の絶縁層および第2の絶縁層がこの順で積層された絶縁膜に形成されたコンタクトホールに設けられた配線構造であって、前記コンタクトホールは所定のエッチング液を用いたエッチングにより形成され、前記コンタクトホールにおいて、前記第2の絶縁膜には、前記第1の絶縁膜よりも前記コンタクトホールの中心方向に突出したオーバーハング部が形成され、高融点金属により構成された第1の金属層と、前記高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層と、高融点金属により構成され、前記オーバーハング部とその下方の前記第1の絶縁膜との距離よりも厚く形成された第2の金属層と、がこの順で積層された配線を有することを特徴とする配線構造。
【請求項3】 異なる材料により構成された第1の絶縁層および第2の絶縁層がこの順で積層された絶縁膜に形成されたコンタクトホールに設けられた配線構造であって、前記コンタクトホールは所定のエッチング液を用いたエッチングにより形成され、高融点金属により構成された第1の金属層と、前記高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層と、高融点金属により構成され、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層の前記所定のエッチング液に対するエッチングレートの違いにより生じた段差によっても途切れない厚さに形成された第2の金属層と、がこの順で積層された配線を有することを特徴とする配線構造。
【請求項4】 前記コンタクトホールは、前記第2の絶縁層において前記第1の絶縁層よりも緩やかなテーパ部を有するように形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の配線構造。
【請求項5】 前記第2の絶縁層は、前記第1の絶縁層の膜厚以上、600nm以下の厚さに形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の配線構造。
【請求項6】 前記第1の金属層は、前記第1の絶縁層よりも厚く形成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の配線構造。
【請求項7】 異なる材料により構成された第1の絶縁層および第2の絶縁層がこの順で積層された絶縁膜に、所定のエッチング液を用いたエッチングによりコンタクトホールを形成する工程と、前記コンタクトホールに、高融点金属により構成された第1の金属層を形成する工程と、前記第1の金属層の上に、前記高融点金属よりも抵抗の低い金属により構成された配線層を形成する工程と、前記配線層の上に、高融点金属により構成された第2の金属層を前記第1の絶縁層よりも厚く形成する工程と、を含むことを特徴とする配線構造の製造方法。
【請求項8】 前記コンタクトホールを形成する工程は、前記第1の絶縁層に対するエッチングレートが前記第2の絶縁層に対するエッチングレートよりも高いエッチング液により前記エッチングを行うことを特徴とする請求項7に記載の配線構造の製造方法。
【請求項9】 請求項1から6のいずれかに記載の配線構造と、該配線構造の上部に設けられ、少なくとも陽極、発光素子層、および陰極を有する光学素子と、を含むことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−258094(P2003−258094A)
【公開日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−59151(P2002−59151)
【出願日】平成14年3月5日(2002.3.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】