説明

酸化物半導体膜及び半導体装置

【課題】より安定した電気的特性の酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜を提供する。また、当該酸化物半導体膜を用いることにより、半導体装置に安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜において、当該酸化物半導体膜は、a−b面が酸化物半導体膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が該酸化物半導体膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有する酸化物半導体膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸化物半導体膜、及び該酸化物半導体膜を用いる半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタはアモルファスシリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは、ガラス基板の大面積化に容易に対応することができる。しかし、アモルファスシリコンを用いたトランジスタは、電界効果移動度が低いという欠点を有している。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタは電界効果移動度が高いが、ガラス基板の大面積化には適していないという欠点を有している。
【0004】
このような欠点を有するシリコンを用いたトランジスタに対して、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば酸化物半導体として、In、Zn、Ga、Snなどを含むアモルファス(非晶質)の酸化物を用いてトランジスタを作製する技術が特許文献1で開示されている。また、同様のトランジスタを作製して表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献2で開示されている。
【0005】
また、このようなトランジスタに用いる酸化物半導体について、「酸化物半導体は不純物に対して鈍感であり、膜中にはかなりの金属不純物が含まれていても問題がなく、ナトリウムのようなアルカリ金属が多量に含まれる廉価なソーダ石灰ガラスも使える」といったことも述べられている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−165529号公報
【特許文献2】特開2006−165528号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】神谷、野村、細野、「アモルファス酸化物半導体の物性とデバイス開発の現状」、固体物理、2009年9月号、Vol.44、pp.621−633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、酸化物半導体膜がアモルファスのままであると、酸化物半導体膜に酸素欠損やダングリングボンドが生じやすく、これら単独あるいは酸素欠損やダングリングボンドが水素等と結合することにより膜中にキャリアを発生させてしまう。そのため、酸化物半導体膜の電気伝導度等の電気的特性が変化する恐れがある。また、酸化物半導体膜を用いたトランジスタにとっても電気的特性が変化する要因となり、半導体装置の信頼性を低下させることになる。
【0009】
酸化物半導体膜の中でも、とりわけインジウム及び亜鉛を有する酸化物半導体膜である酸化インジウム亜鉛(Indium Zinc Oxide)膜は、移動度等の電気的特性に優れており、トランジスタのチャネル領域を形成する有望な材料として期待されている。しかしながらインジウム及び亜鉛を有する酸化物半導体膜がアモルファスの場合には、上述したように、酸素欠損やダングリングボンドに起因した酸化物半導体膜に共通の課題である電気的特性の変動による信頼性の低下の問題が残る。
【0010】
その一方で、酸化物半導体膜の成膜過程において、当該酸化物半導体膜の結晶性を向上させ電気的特性が改善することが明らかになりつつある。また酸化物半導体膜の成膜過程において、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタの信頼性を向上させることが、明らかになりつつある。
【0011】
このような問題に鑑み、電気的特性の安定した酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜を提供することを課題の一とする。また、当該酸化物半導体膜を用いることにより、半導体装置に安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示する発明の一態様は、酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜において、酸化物半導体膜は、a−b面が酸化物半導体膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が該酸化物半導体膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有する酸化物半導体膜である。
【0013】
開示する発明の一態様は、酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜において、酸化物半導体膜は、a−b面が酸化物半導体膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が該酸化物半導体膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有し、六方晶の結晶構造は、In:Zn=1:1の組成比を有する酸化物半導体の結晶構造であり、菱面体晶の結晶構造は、In:Zn=2:1の組成比を有する酸化物半導体の結晶構造である酸化物半導体膜である。
【0014】
開示する発明の一態様は、ゲート電極と、ゲート電極上に設けられた第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に設けられた酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜と接するように設けられたソース電極およびドレイン電極と、酸化物半導体膜上に設けられた第2の絶縁膜と、を有し、酸化物半導体膜は、a−b面が酸化物半導体膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が該酸化物半導体膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有する半導体装置である。
【0015】
開示する発明の一態様は、ゲート電極と、ゲート電極上に設けられた第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に設けられた酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜と接するように設けられたソース電極およびドレイン電極と、酸化物半導体膜上に設けられた第2の絶縁膜と、を有し、酸化物半導体膜は、a−b面が酸化物半導体膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が該酸化物半導体膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有し、六方晶の結晶構造は、In:Zn=1:1の組成比を有する酸化物半導体の結晶構造であり、菱面体晶の結晶構造は、In:Zn=2:1の組成比を有する酸化物半導体の結晶構造である半導体装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様で開示する酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜は、安定した電気的特性を有することができる。このような酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜をトランジスタに用いることによって、安定した電気的特性を有する、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一態様に係る断面TEM像。
【図2】本発明の一態様に係る電子線回折図。
【図3】本発明の一態様に係るXRDスペクトル図。
【図4】本発明の一態様に係るXRDスペクトル図。
【図5】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を説明する断面図。
【図6】スパッタリング装置を説明する模式図である。
【図7】種結晶の結晶構造を説明する模式図である。
【図8】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を説明する断面図。
【図9】本発明の一態様に係る半導体装置を説明する断面図。
【図10】本発明の一態様を示すブロック図及び等価回路図。
【図11】本発明の一態様を示す電子機器の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0020】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜(以下、酸化インジウム亜鉛膜という)の構成について、図1乃至図4を用いて説明する。
【0022】
本実施の形態に係る酸化インジウム亜鉛膜は、結晶構造を有する領域を含む。当該結晶構造を有する領域は、a−b面が酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が該酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有する。
【0023】
ここで、実際に作製した、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)で観察した結果(断面TEM像)を図1に示す。図1に示す断面TEM像では、層状に原子が配向した領域が、酸化インジウム亜鉛膜中に複数観察される。
【0024】
なお図1に示す酸化インジウム亜鉛膜の断面TEM像のサンプルは、石英基板上に酸化インジウム亜鉛を50nmの膜厚で成膜したものである。酸化インジウム亜鉛膜の断面TEM像は、In:Zn=2:1の組成比の酸化インジウム亜鉛をターゲットにして、スパッタリング装置で成膜したものを成膜直後に観察したものである。スパッタリング装置での成膜条件は、石英基板を200℃に加熱した状態で、100WのDC電源、酸素の流量:アルゴン及び酸素の混合気体の流量=3:10としたガスを用いて、成膜圧力を0.4Paとして行ったものである。
【0025】
次いで、図1の六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜断面に対して垂直に電子線を照射して得られた電子線回折パターンを図2(A)及び図2(B)に示す。ここで、図2(A)及び図2(B)に示す電子線回折パターンがサンプルの断面となるので、パターンの垂直(縦)方向がc軸方向となる。
【0026】
なお断面TEM像及び電子線回折パターンは、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の透過電子顕微鏡H−9000NARを用い、加速電圧を300kVとして800万倍の倍率で撮影したものである。
【0027】
図2(A)及び図2(B)に示す電子線回折パターンは、結晶構造の逆格子点を表している。試料が結晶構造を持つ場合にはスポット状(図中、A点、B点、C点)になり、結晶方位がランダムな多結晶構造またはアモルファス構造の場合にはリング状(同心円状ともいう)となる。従って、図2(A)及び図2(B)に示す電子線回折パターンより、図1に示す酸化インジウム亜鉛膜は結晶構造を有することがわかる。また図2(A)及び図2(B)に示す電子線回折パターンの違いは、結晶構造の違いを表している。
【0028】
図2(A)及び図2(B)に示す電子線回折パターンにおいて、A点、B点、C点の各回折スポットは、電子線の入射による格子面からの回折スポットを表したものである。電子線は、酸化インジウム亜鉛膜の断面に対して、垂直となる方向より入射させている。
【0029】
図2(A)及び図2(B)のA点は、ほぼ紙面水平軸に対して概略垂直な軸上に位置する。そのため、酸化インジウム亜鉛膜の当該結晶構造は、a軸及びb軸に平行な石英基板上の平面に対して、概略垂直となるc軸方向に配向していることがわかる。すなわち、酸化インジウム亜鉛膜は、石英基板に概略平行な平面である酸化インジウム亜鉛膜の表面に対し、概略平行なa軸及びb軸でなるa−b面を有する結晶構造を有することがわかる。
【0030】
図2(A)及び図2(B)に示す電子線回折パターンにおいて、電子ビームを入射し、回折せずに酸化インジウム亜鉛膜を透過した電子波の回折スポットを(000)スポット(電子線回折パターンの中心点:図中、O点)とする。各回折スポットと当該回折スポットの間の(000)スポットとのなす角は、各格子面の法線のなす角を表す。これらの角度を調べることにより結晶構造を類推することができる。
【0031】
具体的には、図2(A)中のA点、O点、B点でなる角度AOBは、90.0°である。また、図2(B)中のA点、O点、B点でなる角度AOBは、69.0°であり、A点、O点、C点でなる角度AOCは、38.7°であり、B点、O点、C点でなる角度BOCは、30.3°である。これらより類推すると、図2(A)に示す電子線回折パターンは菱面体晶(三方晶ともいう)であり、図2(B)に示す電子線回折パターンは六方晶であるとわかる。
【0032】
従って、図2(A)及び図2(B)に示す電子線回折パターンから図1に示す酸化インジウム亜鉛膜は、a−b面が酸化物半導体膜の表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造、及びa−b面が酸化物半導体膜の表面に概略平行である六方晶の結晶構造を有するとわかる。
【0033】
さらに、各回折スポットと(000)スポットとの距離[m]をr(hkl)、格子面間隔[m]をd(hkl)、電子線の波長[m]をλ、酸化インジウム亜鉛膜と回折パターン像が得られるフィルムとの間の距離(カメラ長)[m]をLとおけば以下の式(1)が成り立つ。
【0034】
(hkl)×d(hkl)=λ×L (1)
【0035】
なお電子線回折パターンの測定時、カメラ長Lは0.8に設定している。また電子線の波長λは、式(2)より導出するものである。
【0036】
λ=(h/(2mE))1/2 (2)
【0037】
式(2)より電子線の波長λは、2.75×10−12mであることがわかる。なお式(2)においてhはプランク定数(6.626×10−34J・s)であり、mは電子の静止質量(9.10×10−31kg)、Eは電子の加速エネルギーを表す。ここで、電子の加速電圧を200kVに設定したので電子の加速エネルギーEは200×10×1.6×10−19Jとなる。
【0038】
上記の通り、電子線の波長λ及びカメラ長Lは既知なので、電子線回折パターンからr(hkl)を測定すれば格子面間隔d(hkl)を見積もることができる。見積もられた格子面間隔d(hkl)を表1に示す。なお格子面間隔d(hkl)に対応するミラー指数は、該当する可能性のある物質の既知の結晶データ、例えばJCPDSカードを参照して得られる指数である。
【0039】
【表1】

【0040】
格子面間隔d(hkl)及びミラー指数による解析により、図2(A)に示す電子線回折パターンは、In:Zn=2:1の組成比を有するInZnOによるパターンであり、図2(B)に示す電子線回折パターンはIn:Zn=1:1の組成比を有するInZnによるパターンであると推定される。なお図2(A)に示す電子線回折パターンにおいて、得られる回折スポットのc軸方向のミラー指数である「l」が3の倍数であることがわかる。当該結果からも、対称性を考慮すれば、図2(A)に示す電子線回折パターンは菱面体晶(三方晶ともいう)のパターンであるとわかる。また図2(B)に示す電子線回折パターンにおいて、得られる回折スポットのc軸方向のミラー指数である「l」が2の倍数であることがわかる。当該結果からも、対称性を考慮すれば、図2(B)に示す電子線回折パターンは六方晶のパターンであるとわかる。
【0041】
次いで表2には、ミラー指数が見積もられた2カ所の回折スポットと、当該回折スポットの間の(000)スポットと、を結んでなす角の角度を測定した結果を示す。なお表1及び表2をみると、図2(A)における菱面体晶と図2(B)における六方晶とは、格子面間隔d(hkl)、ミラー指数が見積もられた各回折スポットと、当該回折スポットの間の(000)スポットと、を結んでなす角が異なることがわかる。
【0042】
【表2】

【0043】
表2に示す結果と、前述の推定された既知の結晶データとの照合によって、図2(A)に示す電子線回折パターンは、In:Zn=2:1の組成比を有するInZnOによるパターンであり、図2(B)に示す電子線回折パターンはIn:Zn=1:1の組成比を有するInZnによるパターンであると同定される。
【0044】
以上の図1及び図2(A)、図2(B)の結果から、本実施の形態に係る酸化インジウム亜鉛膜は、菱面体晶の結晶構造であるInZnO、及び六方晶であるInZnを有する領域を含むことがわかる。すなわち、当該結晶構造を有する領域は、a−b面が酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行である六方晶のInZnによる結晶構造と、a−b面が該酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行である菱面体晶のInZnOによる結晶構造と、を有するものである。
【0045】
従って六方晶及び菱面体晶の結晶構造を含む酸化インジウム亜鉛膜は、全体がアモルファス構造の酸化物半導体膜と比較して良好な結晶性を有するので、酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素などの不純物が低減されている。これらの酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素などは、酸化物半導体膜中でキャリアのトラップあるいはキャリアの供給源のように機能するため、当該酸化物半導体膜の電気伝導度が変動する原因となりうる。よって、これらが低減されている、六方晶及び菱面体晶の結晶構造を含む酸化物半導体膜は、電気伝導度が安定しており、可視光や紫外光などの照射に対してもより電気的に安定な構造を有することができる。
【0046】
なお本実施の形態に係る酸化インジウム亜鉛膜は、菱面体晶及び六方晶の結晶構造を有する領域を複数含んでいても良く、それぞれの領域において、結晶構造のa軸あるいはb軸の方向は互いに異なっていてもよい。ただし、a軸あるいはb軸の方向が異なる領域どうしが接しないようにすることで、互いの領域が接する界面に粒界を形成しないようにすることが好ましい。よって、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する領域を覆うようにアモルファス構造の領域を有する酸化物半導体膜とすることが好ましい。
【0047】
また、酸化インジウム亜鉛膜についてさらにX線回折(XRD:X−ray diffraction)測定を行い、上記の図1及び図2(A)、図2(B)の結果を補強する測定結果を示す。
【0048】
図3(A)に酸化インジウム亜鉛膜について、out−of−plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を示す。また図3(B)に比較例として、ガリウムを含む酸化インジウム亜鉛(Indium Gallium Zinc Oxide:IGZO)膜について、out−of−plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を示す。図3(A)、図3(B)は、縦軸にX線回折強度(任意単位)をとり、横軸に回転角2θ(deg.)をとって測定したものである。
【0049】
また図3(A)に示すXRDスペクトルを測定した結果は、酸化インジウム亜鉛の成膜時に基板の加熱温度を室温(Tsub=R.T.)、酸化インジウム亜鉛の成膜時に基板の加熱温度を100℃(Tsub=100℃)、または酸化インジウム亜鉛の成膜時に基板の加熱温度を200℃(Tsub=200℃)として、酸化インジウム亜鉛を成膜した際の膜について、並べて示したものである。また図3(B)に示すXRDスペクトルを測定した結果は、ガリウムを含む酸化インジウム亜鉛の成膜時に基板の加熱温度を200℃(Tsub=200℃)として、ガリウムを含む酸化インジウム亜鉛を成膜した際の膜について示したものである。なお基板である石英基板の温度以外について、酸化インジウム亜鉛、及びガリウムを含む酸化インジウム亜鉛は、同じ条件である。
【0050】
図3(A)の基板の加熱温度を200℃(Tsub=200℃)として成膜した酸化インジウム亜鉛膜では、2θ=30°近傍に強いピークが見られるのに対して、基板の加熱温度を100℃(Tsub=100℃)及び室温(Tsub=R.T.)として成膜した酸化インジウム亜鉛膜では、ほとんどピークが見られないことが分かる。同様に、図3(B)の基板の加熱温度を200℃(Tsub=200℃)として成膜したガリウムを含む酸化インジウム亜鉛膜でも、2θ=30°近傍のピークが見られないことが分かる。当該図3(A)のピークは、InZnの結晶構造の(008)面における回折に起因するものである。このことから、基板の加熱温度を200℃(Tsub=200℃)として成膜した酸化インジウム亜鉛膜は、同じ基板加熱温度の条件で成膜したガリウムを含む酸化インジウム亜鉛膜よりも結晶化しやすいことが分かる。
【0051】
また図4(A)には基板の加熱温度を200℃(Tsub=200℃)として成膜した成膜直後の酸化インジウム亜鉛膜について、out−of−plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を示し、図4(B)には基板の加熱温度を200℃(Tsub=200℃)として成膜した成膜後に窒素及び酸素を含む雰囲気中で350℃の熱処理をした酸化インジウム亜鉛膜について、out−of−plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を示す。熱処理の前後において、基板の加熱温度を200℃(Tsub=200℃)として成膜した酸化インジウム亜鉛膜では、2θ=30°近傍に強いピークが見られるのが分かる。当該ピークは前述したように、InZnの結晶構造の(008)面における回折に起因するものである。このことから、成膜後の結晶構造が安定した結晶構造であることがわかる。
【0052】
以上説明したX線回折測定により、本実施の形態に係る酸化インジウム亜鉛膜は、アモルファス構造の酸化物半導体膜と明確に異なり、結晶構造を有するものと言うことができる。また本発明の一態様に係る酸化インジウム亜鉛膜は、同じ温度条件で成膜したガリウムを有する酸化物半導体膜である酸化インジウム亜鉛膜と比較して、成膜する基板の温度が低温であっても結晶構造を取りうることが可能である。なお本実施の形態に係る酸化インジウム亜鉛膜の結晶構造は、a−b面が酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行である六方晶のInZnによる結晶構造と、a−b面が該酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行である菱面体晶のInZnOによる結晶構造と、を有するものである。
【0053】
なお、本実施の形態に係る酸化インジウム亜鉛膜は、酸化物半導体膜中のアルカリ金属等の不純物は低減されていることが好ましい。例えば、酸化物半導体膜において、リチウムの濃度が5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下、ナトリウムの濃度が5×1016cm−3以下、好ましくは1×1016cm−3以下、さらに好ましくは1×1015cm−3以下、カリウムの濃度が5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下とする。
【0054】
アルカリ金属、及びアルカリ土類金属は酸化物半導体にとっては悪性の不純物であり、少ないほうがよい。特に、当該不純物を含む酸化物半導体膜をトランジスタに用いる場合、アルカリ金属のうちナトリウムは酸化物半導体膜に接する絶縁膜に拡散し、トランジスタの閾値電圧の変動などを引き起こす可能性がある。また酸化物半導体膜内において、金属と酸素の結合を分断し、あるいは結合中に割り込む。その結果、トランジスタ特性の劣化(例えば、ノーマリオン化(しきい値の負へのシフト)、移動度の低下等)をもたらす。加えて、特性のばらつきの原因ともなる。
【0055】
よって、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化物半導体膜中の不純物を極めて低減し、アルカリ金属の濃度を5×1016atoms/cm以下、水素の濃度を5×1019atoms/cm以下とすることが好ましい。
【0056】
以上説明した六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜は、全体がアモルファス構造の酸化物半導体膜と比較して良好な結晶性を有するので、酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素などの不純物が低減されている。これらの酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素などは、酸化物半導体膜中でキャリアのトラップ、あるいはキャリアの供給源のように機能するため、当該酸化物半導体膜の電気伝導度が変動する原因となりうる。よって、これらが低減されている、六方晶及び菱面体晶の結晶構造を含む酸化物半導体膜は、電気伝導度が安定しており、可視光や紫外光などの照射に対してもより電気的に安定な構造を有することができる。
【0057】
以上、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0058】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示す、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜、及び当該酸化インジウム亜鉛膜を有するトランジスタの作製方法について図5乃至図9を用いて説明する。図5は、半導体装置の構成の一形態である、トップゲート構造のトランジスタ120の作製工程を示す断面図である。
【0059】
まず、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜を成膜する前に、図5(A)に示すように、基板51上に下地絶縁膜53を形成することが好ましい。
【0060】
基板51は、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。基板51としてガラス基板を用いる場合、歪み点が730℃以上のものを用いることが好ましい。ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられる。なお、BよりBaOを多く含むガラス基板を用いることが好ましい。基板51がマザーガラスの場合、基板の大きさは、第1世代(320mm×400mm)、第2世代(400mm×500mm)、第3世代(550mm×650mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1000mm×1200mmまたは1100mm×1250mm)、第6世代(1500mm×1800mm)、第7世代(1900mm×2200mm)、第8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、または2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等を用いることができる。マザーガラスは、処理温度が高く、処理時間が長いと大幅に収縮するため、マザーガラスを使用して大量生産を行う場合、作製工程の加熱処理は、600℃以下、好ましくは450℃以下とすることが望ましい。
【0061】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いることができる。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。さらには、シリコンウェハ等の半導体基板の表面や金属材料よりなる導電性の基板の表面に絶縁層を形成したものを用いることもできる。
【0062】
下地絶縁膜53は、加熱処理により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。加熱処理により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。加熱処理により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を下地絶縁膜53に用いることで、後の工程で加熱処理を行う際に酸化インジウム亜鉛膜に酸素を拡散させることができる。加熱処理により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜としては、代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム等の膜を用いることができる。
【0063】
下地絶縁膜53は、50nm以上、好ましくは200nm以上500nm以下とする。下地絶縁膜53を厚くすることで、下地絶縁膜53からの酸素放出量を増加させることができると共に、その増加によって下地絶縁膜53及び後に形成される酸化インジウム亜鉛膜との界面における欠陥を低減することが可能である。
【0064】
下地絶縁膜53は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。なお、加熱処理により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜は、スパッタリング法を用いることで容易に形成することができる。加熱処理により酸素の一部を放出する酸化物絶縁膜をスパッタリング法により形成する場合は、成膜ガス中の酸素量が高いことが好ましく、酸素、または酸素及び希ガスの混合ガス等を用いることができる。代表的には、成膜ガス中の酸素濃度を6%以上100%以下にすることが好ましい。
【0065】
また、下地絶縁膜53は、必ずしも加熱処理により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を用いて形成する必要はなく、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウムなどを用いて窒化物絶縁膜を形成してもよい。また、下地絶縁膜53は、上記の酸化物絶縁膜と窒化物絶縁膜の積層構造としてもよく、その場合には窒化物絶縁膜上に酸化物絶縁膜を設けることが好ましい。下地絶縁膜53として窒化物絶縁膜を用いることにより、アルカリ金属などの不純物を含むガラス基板を用いる場合、アルカリ金属などの酸化インジウム亜鉛膜への侵入を防止できる。リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属は、酸化インジウム亜鉛に対して悪性の不純物であるために酸化インジウム亜鉛膜中の含有量を少なくすることが好ましい。窒化物絶縁膜は、CVD法、スパッタリング法等で形成することができる。
【0066】
次に、図5(B)に示すように、スパッタリング装置を用いたスパッタリング法により、下地絶縁膜53上に厚さ30nm以上50μm以下の六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜55を成膜する。
【0067】
ここで、スパッタリング装置の処理室について、図6(A)を用いて説明する。処理室31には、排気手段33及びガス供給手段35が接続される。また、処理室31内には、基板支持体40及びターゲット41が設けられる。ターゲット41は、電源装置37に接続される。
【0068】
処理室31は、GNDに接続されている。また、処理室31のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法により成膜する膜への不純物の混入を低減することができる。
【0069】
リークレートを低くするには、外部リークのみならず内部リークを低減する必要がある。外部リークとは、微小な穴やシール不良などによって真空系の外から気体が流入することである。内部リークとは、真空系内のバルブなどの仕切りからの漏れや内部の部材からの放出ガスに起因する。リークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とするためには、外部リーク及び内部リークの両面から対策をとる必要がある。
【0070】
外部リークを減らすには、処理室31の開閉部分はメタルガスケットでシールするとよい。メタルガスケットは、フッ化鉄、酸化アルミニウム、または酸化クロムによって被覆された金属材料を用いると好ましい。メタルガスケットはOリングと比べ密着性が高く、外部リークを低減できる。また、フッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態によって被覆された金属材料を用いることで、メタルガスケットから生じる水素を含む放出ガスが抑制され、内部リークも低減することができる。
【0071】
処理室31の内壁を構成する部材として、水素を含む放出ガスの少ないアルミニウム、クロム、チタン、ジルコニウム、ニッケルまたはバナジウムを用いる。また、前述の材料を鉄、クロム及びニッケルなどを含む合金材料に被覆して用いてもよい。鉄、クロム及びニッケルなどを含む合金材料は、剛性があり、熱に強く、また加工に適している。ここで、表面積を小さくするために部材の表面凹凸を研磨などによって低減しておくと、放出ガスを低減できる。あるいは、前述の成膜装置の部材をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態で被覆してもよい。
【0072】
処理室31の内部に設ける部材は、極力金属材料のみで構成することが好ましく、例えば石英などで構成される覗き窓などを設置する場合も、放出ガスを抑制するために表面をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態で薄く被覆するとよい。
【0073】
さらに、スパッタリングガスを処理室31に導入する直前に、スパッタリングガスの精製機を設けることが好ましい。このとき、精製機から処理室31までの配管の長さを5m以下、好ましくは1m以下とする。配管の長さを5m以下または1m以下とすることで、配管からの放出ガスの影響を長さに応じて低減できる。
【0074】
シリンダから処理室31まで、スパッタリングガスを流すための配管にはフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態で内部が被覆された金属配管を用いることが好ましい。前述の配管は、例えばSUS316L−EP配管と比べ、水素を含むガスの放出量が少なく、成膜ガスへの不純物の混入を低減できる。また、配管の継手には、高性能超小型メタルガスケット継手(UPG継手)を用いるとよい。また、配管の材料を全て金属材料で構成することで、樹脂等を用いた場合と比べ、生じる放出ガス及び外部リークの影響を低減できるため好ましい。
【0075】
処理室31の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプ及びクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、水の排気能力の高いクライオポンプ及び水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせることが有効となる。
【0076】
処理室31の内側に存在する吸着物は、内壁に吸着しているために処理室31の圧力に影響しないが、処理室31を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速度に相関はないが、排気能力の高いポンプを用いて、処理室31に存在する吸着物をできる限り脱離し、予め排気しておくことが重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、処理室31をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくすることができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性ガスを導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。
【0077】
排気手段33は、処理室31内の不純物を排気すると共に、処理室31内の圧力を制御することができる。排気手段33は、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。上記吸着型の真空ポンプを用いることで、酸化インジウム亜鉛膜に含まれる水素の量を低減することができる。
【0078】
なお、酸化インジウム亜鉛膜に含まれる水素は、水素原子の他、水素分子、水、水酸基、または水素化物として含まれる場合もある。
【0079】
ガス供給手段35は、ターゲットをスパッタリングするためのガスを処理室31内に供給する手段である。ガス供給手段35は、ガスが充填されたシリンダ、圧力調整弁、ストップバルブ、マスフローコントローラ等で構成されている。なお、ガス供給手段35に精製機を設けることで、処理室31内に導入するガスに含まれる不純物を低下することができる。ターゲットをスパッタリングするガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガスを用いる。または、上記希ガスの一と、酸素との混合ガスを用いることができる。
【0080】
電源装置37は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。なお、図示しないがターゲットを支持するターゲット支持体の内部または外側にマグネットを設けると、ターゲット周辺に高密度のプラズマを閉じこめることができ、成膜速度の向上及び基板へのプラズマダメージを低減できる。当該方法は、マグネトロンスパッタリング法とよばれる。更には、マグネトロンスパッタリング法において、マグネットを回転可能にすると、磁界の偏りを低減できるため、ターゲットの使用効率が高まり、かつ基板の面内における膜質のばらつきを低減できる。
【0081】
基板支持体40は、GNDに接続されている。基板支持体40にはヒータが設けられている。ヒータとしては、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いることができる。
【0082】
ターゲット41としては、亜鉛を含む金属酸化物ターゲットを用いることが好ましい。ターゲット41は、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系金属酸化物のターゲットを用いることができる。In−Zn−O系金属酸化物のターゲットは、一例として、In:ZnO=1:1[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いることができるが、In:ZnOのモル数比はこれに限定されない。
【0083】
なお、ターゲット41と基板51との間隔(T−S間距離)は、原子量の小さい原子が優先的に基板51上の下地絶縁膜53に到着することが可能な間隔とすることが好ましい。
【0084】
図6(A)に示すように、スパッタリング装置の処理室31において、下地絶縁膜53が形成された基板51を基板支持体40上に設置する。次に、ガス供給手段35から処理室31にターゲット41をスパッタリングするガスを導入する。ターゲット41の純度は、99.9%以上、好ましくは99.99%以上のものを用いる。次に、ターゲット41に接続される電源装置37に電力を供給する。この結果、ガス供給手段35から処理室31に導入されたスパッタリングガスのイオン43及び電子が、ターゲット41をスパッタリングする。
【0085】
ここで、ターゲット41及び基板51の間隔を、原子量の小さい原子が優先的に基板51上の下地絶縁膜53に到着し堆積することが可能な間隔としておくことにより、拡大部50として図6(B)に示すように、ターゲット41に含まれる原子において、原子量の少ない原子45が、原子量の大きい原子47より優先的に基板側へ移動することができる。
【0086】
亜鉛は、インジウムよりも原子量が小さい。このため、亜鉛が優先的に下地絶縁膜53上に堆積する。また、成膜時の雰囲気に酸素を含み、基板支持体40には、成膜時に基板及び堆積膜を加熱するヒータが設けられるため、下地絶縁膜53上に堆積した亜鉛が酸化され、亜鉛を含む六方晶または菱面体晶の結晶構造の種結晶55a、代表的には酸化亜鉛を有する六方晶または菱面体晶の結晶構造の種結晶が形成される。
【0087】
六方晶または菱面体晶の結晶構造の種結晶55a、例えば亜鉛を含む六方晶の結晶構造の種結晶は、a−b面において六角形の格子を有する結合を有する。亜鉛を含む六方晶の結晶構造の種結晶の場合、亜鉛を含み、a−b面が酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行であり、c軸が該酸化インジウム亜鉛膜表面に垂直である六方晶のウルツ鉱構造の結晶を有する。
【0088】
ここで、亜鉛を含み、a−b面において六角形の格子を有する結合を有し、a−b面が酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行であり、c軸が該酸化インジウム亜鉛膜表面に垂直である六方晶の結晶構造の結晶について、図7を用いて説明する。ここでは、亜鉛を含む六方晶の結晶構造の結晶の代表例として、酸化亜鉛を用いて説明し、黒丸が亜鉛、白丸が酸素を示す。図7(A)は、a−b面における、六方晶の結晶構造を有する酸化亜鉛の模式図であり、図7(B)は、紙面の縦方向をc軸方向とした、六方晶の結晶構造を有する酸化亜鉛の模式図である。図7(A)に示すように、a−b面における上平面において、亜鉛及び酸素が六角形をなす結合をしている。また、図7(B)に示すように、亜鉛及び酸素がなす六角形の格子を有する結合を有する層が積層され、c軸方向はa−b面に垂直である。種結晶55aは、a−b面において六角形の格子を有する結合を有する層をc軸方向に1原子層以上有する。
【0089】
なお種結晶55aは、亜鉛を含む六方晶の結晶構造の種結晶の他にも、亜鉛を含む菱面体晶の結晶構造の種結晶を有し、この場合種結晶55aは、a−b面において四角形の格子を有する結合を有する。亜鉛を含む菱面体晶の結晶構造の種結晶の場合、亜鉛を含み、a−b面が酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行であり、c軸が該酸化インジウム亜鉛膜表面に非垂直である菱面体晶の結晶構造の結晶を有する。
【0090】
連続して、ターゲット41をスパッタリングガスでスパッタリングすることで、種結晶55a上にターゲットに含まれる原子が堆積するが、このとき種結晶55aを核として結晶成長するため、種結晶55a上に六方晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜55bを形成することができる。なお、基板51は、基板支持体40に設けられるヒータによって加熱されるため、種結晶55aを核とし、被表面に堆積する原子が酸化されつつ結晶成長する。
【0091】
酸化インジウム亜鉛膜55bは、六方晶または菱面体晶の結晶構造の種結晶55aを核とし、ターゲット41の表面における原子量の大きい原子、及び種結晶55aの形成の後にスパッタリングされた原子量の小さい原子が酸化されつつ結晶成長するため、種結晶55aと同様に、a−b面において六角形または四角形の格子を有する結合を有し、a−b面が酸化インジウム亜鉛膜表面に概略平行である結晶構造を有する領域を含む。なお、図5(B)では、種結晶55aと酸化インジウム亜鉛膜55bの界面を点線で示し、酸化インジウム亜鉛膜の積層構造を説明しているが、明確な界面が存在しているのではなく、あくまで分かりやすく説明するために図示している。
【0092】
このときのヒータによる基板の加熱温度は100℃より大きく400℃以下、好ましくは250℃以上350℃以下とする。100℃より大きく400℃以下、好ましくは250℃以上350℃以下に基板を加熱しながら成膜をすることによって、成膜と同時に加熱処理がなされるので、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜を成膜することができる。なお、スパッタリング時における被成膜面の温度は、250℃以上基板の熱処理上限温度以下とする。
【0093】
なお、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。また、スパッタリングガスには、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0094】
なお、基板支持体40及びターゲット41を有する処理室の圧力を0.4Pa以下とすることで、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜の表面及び膜中への、アルカリ金属、水素等の不純物の混入を低減することができる。
【0095】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜への、アルカリ金属、水素、水、水酸基または水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からアルカリ金属、水素、水、水酸基または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0096】
また、ターゲット41の純度を、99.99%以上とすることで六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜に混入するアルカリ金属、水素、水、水酸基または水素化物等を低減することができる。また、当該ターゲットを用いることで、酸化インジウム亜鉛膜55において、リチウムの濃度を5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下、ナトリウムの濃度を5×1016cm−3以下、好ましくは1×1016cm−3以下、さらに好ましくは1×1015cm−3以下、カリウムの濃度を5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下とすることができる。
【0097】
上記の成膜方法では、同一のスパッタリング工程において、ターゲットに含まれる原子量の違いを利用し、原子量の小さい亜鉛を優先的に酸化絶縁膜に堆積させ、種結晶を形成すると共に、種結晶上に原子量の大きいインジウム等を結晶成長させつつ堆積させるため、複数の工程を経ずとも、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜を形成することができる。
【0098】
上記の酸化インジウム亜鉛膜55の成膜方法では、スパッタリング法によって、種結晶55aと酸化インジウム亜鉛膜55bとを一括で成膜しながら結晶化したが、本実施の形態に係る酸化物半導体膜は必ずしもこのように成膜する必要はない。たとえば、種結晶と酸化インジウム亜鉛膜の成膜と結晶化をそれぞれ別々に行っても良い。
【0099】
以下に、図8を用いて、種結晶と酸化インジウム亜鉛膜の成膜と結晶化をそれぞれ別々に行う方法について説明する。また、以下のように六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜を成膜する方法を、本明細書中で2step法とよぶ場合がある。
【0100】
まず、下地絶縁膜53上に膜厚1nm以上10nm以下の第1の酸化インジウム亜鉛膜を形成する。第1の酸化インジウム亜鉛膜の形成は、スパッタリング法を用い、そのスパッタリング法による成膜時の基板温度は200℃以上400℃以下とすることが好ましい。その他の成膜条件については、上記の酸化インジウム亜鉛膜の成膜方法と同様である。
【0101】
次いで、基板を配置するチャンバー雰囲気を窒素、または乾燥空気とし、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下とする。第1の加熱処理によって、第1の酸化インジウム亜鉛膜を結晶化し、種結晶56aを形成する(図8(A)参照)。
【0102】
第1の加熱処理の温度にもよるが、第1の加熱処理によって、膜表面から結晶化が起こり、膜の表面から内部に向かって結晶成長し、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化物半導体膜が得られる。第1の加熱処理によって、亜鉛と酸素が膜表面に多く集まり、上平面において六角形及び四角形をなす結合をしている亜鉛と酸素からなるグラフェンタイプの二次元結晶が最表面に1層または複数層形成され、これが膜厚方向に成長して重なり積層となる。加熱処理の温度を上げると表面から内部、そして内部から底部と結晶成長が進行する。
【0103】
また、下地絶縁膜53に加熱処理により酸素の一部が放出される酸化インジウム亜鉛膜を用いることにより、第1の加熱処理によって、下地絶縁膜53中の酸素を種結晶56aとの界面またはその近傍(界面からプラスマイナス5nm)に拡散させて、種結晶56aの酸素欠損を低減することができる。
【0104】
次いで、種結晶56a上に10nmよりも厚い第2の酸化インジウム亜鉛膜を形成する。第2の酸化インジウム亜鉛膜の形成は、スパッタリング法を用い、その成膜時における基板温度は200℃以上400℃以下とする。その他の成膜条件については、上記の酸化インジウム亜鉛膜の成膜方法と同様である。
【0105】
次いで、基板を配置するチャンバー雰囲気を窒素、または乾燥空気とし、第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下とする。第2の加熱処理によって、第2の酸化インジウム亜鉛膜を結晶化し、酸化インジウム亜鉛膜56bを形成する(図8(B)参照)。第2の加熱処理は、窒素雰囲気下、酸素雰囲気下、或いは窒素と酸素の混合雰囲気下で行うことにより、酸化インジウム亜鉛膜56bの高密度化及び酸素欠損数の減少を図る。第2の加熱処理によって、種結晶56aを核として膜厚方向、即ち底部から内部に結晶成長が進行して六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜56bが形成される。このようにして、種結晶56aと酸化インジウム亜鉛膜56bとからなる酸化インジウム亜鉛膜56が形成される。図8(B)では、種結晶56aと酸化インジウム亜鉛膜56bの界面を点線で示し、酸化インジウム亜鉛膜と説明しているが、明確な界面が存在しているのではなく、あくまで分かりやすく説明するために図示している。
【0106】
また、下地絶縁膜53の形成から第2の加熱処理までの工程を大気に触れることなく連続的に行うことが好ましい。下地絶縁膜53の形成から第2の加熱処理までの工程は、水素及び水分をほとんど含まない雰囲気(不活性雰囲気、減圧雰囲気、乾燥空気雰囲気など)下に制御することが好ましく、例えば、水分については露点−40℃以下、好ましくは露点−50℃以下の乾燥窒素雰囲気とすることが好ましい。
【0107】
上記の成膜方法では、原子量の小さい原子を優先的に酸化絶縁膜に堆積させる成膜方法と比較して、成膜時の基板温度が低くても、良好な六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜を形成することができる。なお、上記の2step法を用いて成膜した、酸化インジウム亜鉛膜56も、原子量の小さい原子を優先的に酸化絶縁膜に堆積させる成膜方法を用いて成膜した酸化インジウム亜鉛膜55と同程度の結晶性を有し、電気伝導度も安定している。よって、どちらの方法で成膜した酸化インジウム亜鉛膜を用いても、安定した電気的特性を有する、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。なお、以下の工程においては、酸化インジウム亜鉛膜55を用いてトランジスタ120を作製する工程を説明するが、もちろん同様に酸化インジウム亜鉛膜56も用いることができる。
【0108】
以上の工程により、下地絶縁膜53上に種結晶55aと酸化インジウム亜鉛膜55bの積層からなる酸化インジウム亜鉛膜55を成膜することができる。次に、基板51に加熱処理を施して、酸化インジウム亜鉛膜55から水素を放出させると共に、下地絶縁膜53に含まれる酸素の一部を、酸化インジウム亜鉛膜55と、下地絶縁膜53と酸化インジウム亜鉛膜55の界面近傍と、に拡散させることが好ましい。
【0109】
加熱処理温度は、酸化インジウム亜鉛膜55から水素を放出させると共に、下地絶縁膜53に含まれる酸素の一部を放出させ、さらには酸化インジウム亜鉛膜55に拡散させる温度が好ましく、代表的には、150℃以上基板51の歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下とする。なお、加熱処理温度は、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化物半導体膜の成膜温度より高くすることで、下地絶縁膜53に含まれる酸素の一部をより多く放出させることができる。
【0110】
加熱処理は、水素及び水分をほとんど含まない、不活性ガス雰囲気、酸素雰囲気、窒素雰囲気、酸素と窒素の混合雰囲気などで行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、代表的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス雰囲気で行うことが好ましい。また、加熱処理の加熱時間は1分以上24時間以下とする。
【0111】
当該加熱処理により、酸化インジウム亜鉛膜55から水素を放出させると共に、下地絶縁膜53に含まれる酸素の一部を、酸化インジウム亜鉛膜55と、下地絶縁膜53と酸化インジウム亜鉛膜55の界面近傍と、に拡散させることができる。当該工程により、酸化インジウム亜鉛膜55中に含まれる酸素欠損を低減することができる。この結果、水素濃度及び酸素欠損が低減された六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化物半導体である酸化インジウム亜鉛膜を形成することができる。
【0112】
次に、図5(C)に示すように、酸化インジウム亜鉛膜55上にマスクを形成し、当該マスクを用いて酸化インジウム亜鉛膜55を選択的にエッチングして、酸化インジウム亜鉛膜59を形成する。この後、マスクは除去する。
【0113】
酸化インジウム亜鉛膜55をエッチングするためのマスクは、フォトリソグラフィ法、インクジェット法、印刷法等を適宜用いて作製することができる。また、酸化インジウム亜鉛膜55のエッチングはウエットエッチングまたはドライエッチングを適宜用いることができる。
【0114】
次に、図5(D)に示すように、酸化インジウム亜鉛膜59に接するソース電極61a及びドレイン電極61bを形成する。
【0115】
ソース電極61a及びドレイン電極61bは、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、マンガン、ジルコニウムから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた金属元素を単数または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。また、ソース電極61a及びドレイン電極61bは、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、Cu−Mg−Al合金膜上に銅膜を積層する2層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。
【0116】
また、ソース電極61a及びドレイン電極61bは、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0117】
ソース電極61a及びドレイン電極61bは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜上にマスクを形成して導電膜をエッチングして形成する。導電膜上に形成するマスクは印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。また、ソース電極61a及びドレイン電極61bは、印刷法またはインクジェット法により直接形成することもできる。
【0118】
ここでは、酸化インジウム亜鉛膜59及び下地絶縁膜53上に導電膜を成膜した後、導電膜を所定の形状にエッチングしてソース電極61a及びドレイン電極61bを形成する。
【0119】
なお、酸化インジウム亜鉛膜55上に導電膜を形成した後、多階調フォトマスクを用いて、酸化インジウム亜鉛膜55及び導電膜のエッチングを行って、酸化インジウム亜鉛膜59、ソース電極61a及びドレイン電極61bを形成しても良い。このように、凹凸状のマスクを形成し、当該マスクを用いて酸化インジウム亜鉛膜55及び導電膜をエッチングした後、アッシングにより凹凸状のマスクを分離し、当該分離されたマスクにより導電膜を選択的にエッチングすることで、酸化インジウム亜鉛膜59、ソース電極61a及びドレイン電極61bを形成することができる。当該工程により、フォトマスク数及びフォトリソグラフィ工程数を削減することができる。
【0120】
次に、図5(E)に示すように、酸化インジウム亜鉛膜59、ソース電極61a及びドレイン電極61b上にゲート絶縁膜63を形成する。
【0121】
ゲート絶縁膜63は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、または酸化ガリウムを単層でまたは積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁膜63は、酸化インジウム亜鉛膜59と接する部分が酸素を含むことが好ましく、特に好ましくは下地絶縁膜53と同様に加熱処理により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いて形成する。酸素を放出する酸化物絶縁膜として酸化シリコン膜を用いることで、後の工程で加熱処理を行う際に酸化インジウム亜鉛膜59に酸素を拡散させることができ、トランジスタ120の特性を良好にすることができる。
【0122】
また、ゲート絶縁膜63として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでゲートリークを低減できる。さらには、high−k材料と、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、及び酸化ガリウムのいずれか一以上との積層構造とすることができる。ゲート絶縁膜63の厚さは、1nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下とするとよい。ゲート絶縁膜63の厚さを5nm以上とすることで、ゲートリーク電流を低減することができる。
【0123】
なお、ゲート絶縁膜63を形成する前に、酸化インジウム亜鉛膜59の表面を、酸素、オゾン、一酸化二窒素等の酸化性ガスのプラズマに曝し、酸化インジウム亜鉛膜59の表面を酸化し、酸素欠損を低減してもよい。
【0124】
次に、ゲート絶縁膜63上であって、酸化インジウム亜鉛膜59と重畳する領域にゲート電極65を形成する。
【0125】
ゲート電極65は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、マンガン、ジルコニウムから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた金属元素を単数または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。また、ゲート電極65は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。
【0126】
また、ゲート電極65は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、In−Ga−Zn−O系金属酸化物をターゲットとし、窒素を含む雰囲気中でスパッタリングすることにより得られる化合物導電体を用いても良い。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0127】
さらに、ゲート電極65上に保護膜として絶縁膜69を形成してもよい(図5(E)参照)。また、ゲート絶縁膜63及び絶縁膜69にコンタクトホールを形成した後、ソース電極61a及びドレイン電極61bに接続する配線を形成してもよい。
【0128】
絶縁膜69は、ゲート絶縁膜63と同様の絶縁膜を適宜用いて形成することができる。また、絶縁膜69としてスパッタリング法で得られる窒化シリコン膜を形成すると、外部からの水分やアルカリ金属の侵入を防止することが可能であり、酸化インジウム亜鉛膜59の不純物の含有量を低減することができる。
【0129】
なお、ゲート絶縁膜63の形成の後、または絶縁膜69の形成の後、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理によって、酸化インジウム亜鉛膜59から水素を放出させると共に、下地絶縁膜53、ゲート絶縁膜63または絶縁膜69に含まれる酸素の一部を、酸化インジウム亜鉛膜59と、下地絶縁膜53と酸化インジウム亜鉛膜59の界面近傍と、ゲート絶縁膜63と酸化インジウム亜鉛膜59の界面近傍と、に拡散させることができる。当該工程により、酸化インジウム亜鉛膜59中に含まれる酸素欠損を低減することができると共に、酸化インジウム亜鉛膜59と下地絶縁膜53、または酸化インジウム亜鉛膜59とゲート絶縁膜63の界面における酸素欠損を低減することができる。この結果、水素濃度及び酸素欠損が低減された酸化インジウム亜鉛膜59を形成することができる。
【0130】
以上の工程により、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜をチャネル領域に有するトランジスタ120を作製することができる。図5(E)に示すように、トランジスタ120は、基板51上に設けられた下地絶縁膜53と、下地絶縁膜53上に設けられた酸化インジウム亜鉛膜59と、酸化インジウム亜鉛膜59の上面及び側面と接するように設けられたソース電極61a及びドレイン電極61bと、酸化インジウム亜鉛膜59上に設けられたゲート絶縁膜63と、酸化インジウム亜鉛膜59と重畳してゲート絶縁膜63上に設けられたゲート電極65と、ゲート電極65上に設けられた絶縁膜69とを有する。
【0131】
トランジスタ120に用いられている六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化物半導体である酸化インジウム亜鉛膜は、全体がアモルファス構造の酸化物半導体膜と比較して良好な結晶性を有するので、酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素などの不純物が低減されている。これらの酸素欠損に代表されるような欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素などは、酸化物半導体膜中でキャリアのトラップあるいはキャリアの供給源のように機能するため、当該酸化物半導体膜の電気伝導度が変動する原因となりうる。よって、これらが低減されている、六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜は、電気伝導度が安定しており、可視光や紫外光などの照射に対してもより電気的に安定な構造を有する。このような六方晶の結晶構造及び菱面体晶の結晶構造を有する酸化インジウム亜鉛膜をトランジスタに用いることによって、安定した電気的特性を有する、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0132】
また、本発明の一態様に係る半導体装置は、図5に示すトランジスタ120に限られるものではない。例えば、図9(A)に示すトランジスタ130のような構造としても良い。トランジスタ130は、基板51上に設けられた下地絶縁膜53と、下地絶縁膜53上に設けられたソース電極61a及びドレイン電極61bと、ソース電極61a及びドレイン電極61bの上面及び側面と接するように設けられた酸化インジウム亜鉛膜59と、酸化インジウム亜鉛膜59上に設けられたゲート絶縁膜63と、酸化インジウム亜鉛膜59と重畳してゲート絶縁膜63上に設けられたゲート電極65と、ゲート電極65上に設けられた絶縁膜69とを有する。つまり、トランジスタ130は、酸化インジウム亜鉛膜59がソース電極61a及びドレイン電極61bの上面及び側面と接するように設けられている点において、トランジスタ120と異なる。
【0133】
また、図9(B)に示すトランジスタ140のような構造としても良い。トランジスタ140は、基板51上に設けられた下地絶縁膜53と、下地絶縁膜53上に設けられたゲート電極65と、ゲート電極65上に設けられたゲート絶縁膜63と、ゲート絶縁膜63上に設けられた酸化インジウム亜鉛膜59と、酸化インジウム亜鉛膜59の上面及び側面と接するように設けられたソース電極61a及びドレイン電極61bと、酸化インジウム亜鉛膜59上に設けられた絶縁膜69とを有する。つまり、トランジスタ140は、ゲート電極65とゲート絶縁膜63が酸化インジウム亜鉛膜59の下に設けられた、ボトムゲート構造である点において、トランジスタ120と異なる。
【0134】
また、図9(C)に示すトランジスタ150のような構造としても良い。トランジスタ150は、基板51上に設けられた下地絶縁膜53と、下地絶縁膜53上に設けられたゲート電極65と、ゲート電極65上に設けられたゲート絶縁膜63と、ゲート絶縁膜63上に設けられたソース電極61a及びドレイン電極61bと、ソース電極61a及びドレイン電極61bの上面及び側面と接するように設けられた酸化インジウム亜鉛膜59と、酸化インジウム亜鉛膜59上に設けられた絶縁膜69とを有する。つまり、トランジスタ150は、ゲート電極65とゲート絶縁膜63が酸化インジウム亜鉛膜59の下に設けられた、ボトムゲート構造である点において、トランジスタ130と異なる。
【0135】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0136】
(実施の形態3)
本実施の形態では、同一基板上に少なくとも駆動回路の一部と、画素部に配置するトランジスタを作製する例について以下に説明する。
【0137】
画素部に配置するトランジスタは、実施の形態2に従って形成する。また、当該トランジスタはnチャネル型とすることが容易なので、駆動回路のうち、nチャネル型のトランジスタで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同一基板上に形成する。このように、画素部や駆動回路に先の実施の形態に示すトランジスタを用いることにより、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0138】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一例を図10(A)に示す。表示装置の基板500上には、画素部501、第1の走査線駆動回路502、第2の走査線駆動回路503、信号線駆動回路504を有する。画素部501には、複数の信号線が信号線駆動回路504から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路502、及び第2の走査線駆動回路503から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられている。また、表示装置の基板500はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されている。
【0139】
図10(A)では、第1の走査線駆動回路502、第2の走査線駆動回路503、信号線駆動回路504は、画素部501と同じ基板500上に形成される。そのため、外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板500外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増える。同じ基板500上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0140】
また、画素部の回路構成の一例を図10(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示パネルの画素構造を示す。
【0141】
この画素構造は、一つの画素に複数の画素電極層が有り、それぞれの画素電極層にトランジスタが接続されている。各トランジスタは、異なるゲート信号で駆動されるように構成されている。すなわち、マルチドメイン設計された画素において、個々の画素電極層に印加する信号を、独立して制御する構成を有している。
【0142】
トランジスタ516のゲート配線512と、トランジスタ517のゲート配線513は、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として機能するソース電極層又はドレイン電極層514は、トランジスタ516とトランジスタ517で共通に用いられている。トランジスタ516とトランジスタ517は先の実施の形態に示すトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い液晶表示パネルを提供することができる。
【0143】
トランジスタ516と接続する第1の画素電極層と、トランジスタ517と接続する第2の画素電極層の形状は異なっており、スリットによって分離されている。V字型に広がる第1の画素電極層の外側を囲むように第2の画素電極層が形成されている。第1の画素電極層と第2の画素電極層に印加する電圧のタイミングを、トランジスタ516及びトランジスタ517により異ならせることで、液晶の配向を制御している。トランジスタ516はゲート配線512と接続し、トランジスタ517はゲート配線513と接続している。ゲート配線512とゲート配線513に異なるゲート信号を与えることで、トランジスタ516とトランジスタ517の動作タイミングを異ならせることができる。
【0144】
また、容量配線510と、誘電体として機能するゲート絶縁膜と、第1の画素電極層または第2の画素電極層と接続する容量電極とで保持容量を形成する。
【0145】
第1の画素電極層と液晶層と対向電極層が重なり合うことで、第1の液晶素子518が形成されている。また、第2の画素電極層と液晶層と対向電極層が重なり合うことで、第2の液晶素子519が形成されている。また、一画素に第1の液晶素子518と第2の液晶素子519が設けられたマルチドメイン構造である。
【0146】
なお、図10(B)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図10(B)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、又は論理回路などを追加してもよい。
【0147】
また、画素部の回路構成の一例を図10(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた表示パネルの画素構造を示す。
【0148】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0149】
有機EL素子を駆動可能な画素の構成及び画素の動作について説明する。ここでは酸化インジウム亜鉛膜をチャネル領域に用いるnチャネル型のトランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。
【0150】
画素520は、スイッチング用トランジスタ521、駆動用トランジスタ522、発光素子524及び容量素子523を有している。スイッチング用トランジスタ521は、ゲート電極層が走査線526に接続され、第1電極(ソース電極層及びドレイン電極層の一方)が信号線525に接続され、第2電極(ソース電極層及びドレイン電極層の他方)が駆動用トランジスタ522のゲート電極層に接続されている。駆動用トランジスタ522は、ゲート電極層が容量素子523を介して電源線527に接続され、第1電極が電源線527に接続され、第2電極が発光素子524の第1電極(画素電極)に接続されている。発光素子524の第2電極は共通電極528に相当する。共通電極528は、同一基板上に形成される共通電位線に接続される。
【0151】
スイッチング用トランジスタ521および駆動用トランジスタ522は実施の形態2に示すトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い有機EL素子を用いた表示パネルを提供することができる。
【0152】
なお、発光素子524の第2電極(共通電極528)には低電源電位が設定されている。なお、低電源電位とは、電源線527に設定される高電源電位を基準にして低電源電位<高電源電位を満たす電位であり、低電源電位としては例えばGND、0Vなどが設定されていても良い。この高電源電位と低電源電位との電位差を発光素子524に印加して、発光素子524に電流を流して発光素子524を発光させるため、高電源電位と低電源電位との電位差が発光素子524の順方向しきい値電圧以上となるようにそれぞれの電位を設定する。
【0153】
なお、容量素子523は駆動用トランジスタ522のゲート容量を代用して省略することも可能である。駆動用トランジスタ522のゲート容量については、チャネル領域とゲート電極層との間で容量が形成されていてもよい。
【0154】
ここで、アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ522のゲート電極層に発光素子524の順方向電圧+駆動用トランジスタ522のVth以上の電圧をかける。発光素子524の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しきい値電圧を含む。なお、駆動用トランジスタ522が飽和領域で動作するようなビデオ信号を入力することで、発光素子524に電流を流すことができる。駆動用トランジスタ522を飽和領域で動作させるため、電源線527の電位は、駆動用トランジスタ522のゲート電位よりも高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子524にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0155】
なお、図10(C)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図10(C)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタ又は論理回路などを追加してもよい。
【0156】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0157】
(実施の形態4)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した表示装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0158】
図11(A)は、携帯型の情報端末であり、本体1001、筐体1002、表示部1003a、1003bなどによって構成されている。表示部1003bはタッチパネルとなっており、表示部1003bに表示されるキーボードボタン1004に触れることで画面操作や、文字入力を行うことができる。勿論、表示部1003aをタッチパネルとして構成してもよい。先の実施の形態で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部1003a、1003bに適用することにより、信頼性の高い携帯型の情報端末とすることができる。
【0159】
図11(A)に示す携帯型の情報端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
【0160】
また、図11(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0161】
図11(B)は、携帯音楽プレイヤーであり、本体1021には表示部1023と、耳に装着するための固定部1022と、スピーカー、操作ボタン1024、外部メモリスロット1025等が設けられている。先の実施の形態で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部1023に適用することにより、より信頼性の高い携帯音楽プレイヤーとすることができる。
【0162】
さらに、図11(B)に示す携帯音楽プレイヤーにアンテナやマイク機能や無線機能を持たせ、携帯電話と連携させれば、乗用車などを運転しながらワイヤレスによるハンズフリーでの会話も可能である。
【0163】
図11(C)は、携帯電話であり、筐体1030及び筐体1031の二つの筐体で構成されている。筐体1031には、表示パネル1032、スピーカー1033、マイクロフォン1034、ポインティングデバイス1036、カメラ用レンズ1037、外部接続端子1038などを備えている。また、筐体1030には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル1040、外部メモリスロット1041などを備えている。また、アンテナは筐体1031内部に内蔵されている。先の実施の形態で示したトランジスタを表示パネル1032に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0164】
また、表示パネル1032はタッチパネルを備えており、図11(C)には映像表示されている複数の操作キー1035を点線で示している。なお、太陽電池セル1040で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0165】
例えば、昇圧回路などの電源回路に用いられるパワートランジスタも先の実施の形態に示したトランジスタの酸化物半導体膜の膜厚を2μm以上50μm以下とすることで形成することができる。
【0166】
表示パネル1032は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル1032と同一面上にカメラ用レンズ1037を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー1033及びマイクロフォン1034は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体1030と筐体1031は、スライドし、図11(C)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0167】
外部接続端子1038はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット1041に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0168】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0169】
図11(D)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置1050は、筐体1051に表示部1053が組み込まれている。表示部1053により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、CPUを内蔵したスタンド1055により筐体1051を支持した構成を示している。先の実施の形態で示したトランジスタを表示部1053に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
【0170】
テレビジョン装置1050の操作は、筐体1051が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0171】
なお、テレビジョン装置1050は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0172】
また、テレビジョン装置1050は、外部接続端子1054や、記憶媒体再生録画部1052、外部メモリスロットを備えている。外部接続端子1054は、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、パーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。記憶媒体再生録画部1052では、ディスク状の記録媒体を挿入し、記録媒体に記憶されているデータの読み出し、記録媒体への書き込みが可能である。また、外部メモリスロットに差し込まれた外部メモリ1056にデータ保存されている画像や映像などを表示部1053に映し出すことも可能である。
【0173】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0174】
31 処理室
33 排気手段
35 ガス供給手段
37 電源装置
40 基板支持体
41 ターゲット
43 イオン
45 原子
47 原子
50 拡大部
51 基板
53 下地絶縁膜
55 酸化インジウム亜鉛膜
55a 種結晶
55b 酸化インジウム亜鉛膜
56a 種結晶
56b 酸化インジウム亜鉛膜
56 酸化インジウム亜鉛膜
59 酸化インジウム亜鉛膜
61a ソース電極
61b ドレイン電極
63 ゲート絶縁膜
65 ゲート電極
69 絶縁膜
120 トランジスタ
130 トランジスタ
140 トランジスタ
150 トランジスタ
500 基板
501 画素部
502 走査線駆動回路
503 走査線駆動回路
504 信号線駆動回路
510 容量配線
512 ゲート配線
513 ゲート配線
514 ドレイン電極層
516 トランジスタ
517 トランジスタ
518 液晶素子
519 液晶素子
520 画素
521 スイッチング用トランジスタ
522 駆動用トランジスタ
523 容量素子
524 発光素子
525 信号線
526 走査線
527 電源線
528 共通電極
1001 本体
1002 筐体
1003a 表示部
1003b 表示部
1004 キーボードボタン
1021 本体
1022 固定部
1023 表示部
1024 操作ボタン
1025 外部メモリスロット
1030 筐体
1031 筐体
1032 表示パネル
1033 スピーカー
1034 マイクロフォン
1035 操作キー
1036 ポインティングデバイス
1037 カメラ用レンズ
1038 外部接続端子
1040 太陽電池セル
1041 外部メモリスロット
1050 テレビジョン装置
1051 筐体
1052 記憶媒体再生録画部
1053 表示部
1054 外部接続端子
1055 スタンド
1056 外部メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜において、
前記酸化物半導体膜は、a−b面が前記酸化物半導体膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が前記酸化物半導体膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有する酸化物半導体膜。
【請求項2】
酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜において、
前記酸化物半導体膜は、a−b面が前記酸化物半導体膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が前記酸化物半導体膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有し、
前記六方晶の結晶構造は、In:Zn=1:1の組成比を有する酸化物半導体であり、前記菱面体晶の結晶構造は、In:Zn=2:1の組成比を有する酸化物半導体である酸化物半導体膜。
【請求項3】
ゲート電極と、
前記ゲート電極上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に設けられた酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と接するように設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記酸化物半導体膜上に設けられた第2の絶縁膜と、を有し、
前記酸化物半導体膜は、a−b面が前記酸化物半導体膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が前記酸化物半導体膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有する半導体装置。
【請求項4】
ゲート電極と、
前記ゲート電極上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に設けられた酸化インジウム亜鉛でなる酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と接するように設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記酸化物半導体膜上に設けられた第2の絶縁膜と、を有し、
前記酸化物半導体膜は、a−b面が前記酸化物半導体膜表面に概略平行である六方晶の結晶構造と、a−b面が前記酸化物半導体膜表面に概略平行である菱面体晶の結晶構造と、を有し、
前記六方晶の結晶構造は、In:Zn=1:1の組成比を有する酸化物半導体であり、前記菱面体晶の結晶構造は、In:Zn=2:1の組成比を有する酸化物半導体である半導体装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−216791(P2012−216791A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62920(P2012−62920)
【出願日】平成24年3月20日(2012.3.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】