説明

電動搬送車

【課題】構造の簡素化を図ると共にスペース効率の向上を図ることができる電動搬送車を提供すること。
【解決手段】電動搬送車1によれば、出力軸8aの一方側へ出力されたエンジン8の動力がファン9bに付与されると共に、出力軸8aの他方側へ出力されたエンジン8の動力が発電機10に付与される。また、動力分配装置11により分配されたエンジン8の動力が油圧ポンプ12に付与される。よって、エンジン8を駆動源としてファン9bと発電機10と油圧ポンプ12とを駆動することができるので、ファン9bを駆動するための専用の駆動源を不要として、構造の簡素化を図ることができる。また、ファン9bを出力軸8aに接続することで、ラジエータ9aをエンジン8の近くに配設することができるので、冷却液の配管を取り回すためのスペース等を最小限に抑えることができ、スペース効率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動搬送車に関し、特に、構造の簡素化を図ると共にスペース効率の向上を図ることができる電動搬送車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主に製鉄所や造船所などで重量物を搬送するための搬送車両として、例えば、特許文献1には、発電機で発生した電力により車輪を回転駆動すると共に、油圧ポンプで発生した油圧により車輪を操舵駆動する電動搬送車が開示されている。
【0003】
ここで、図5を参照して、従来の電動搬送車の動力構成について説明する。図5は、従来の電動搬送車の動力構成を模式的に図示した模式図である。
【0004】
図5に示すように、従来の電動搬送車の動力構成は、一般に、車輪(図示せず)を回転駆動するための電力を発生する発電機Gと、車輪を操舵駆動するための油圧を発生する油圧ポンプPと、それら発電機G及び油圧ポンプPを駆動するための動力を発生するエンジンEと、そのエンジンEを冷却するための冷却液が流通するラジエータR及びそのラジエータRに送風するファンFを有する冷却装置Cとを主に備えて構成されている。
【0005】
また、図5に示すように、発電機G及び油圧ポンプPは、エンジンEに接続されエンジンEの動力により駆動される一方で、ファンFは、モータMが接続されモータMの動力により駆動されるように構成されている。
【特許文献1】特許第4056297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の電動搬送車では、ファンFを駆動するための専用のモータMが必要となるので、構造が複雑化するという問題点があった。また、発電機G及び油圧ポンプPがエンジンEに接続されるので、ラジエータRをエンジンEの近くに配設することができず、冷却液の配管を取り回すためのスペース等が無駄に必要となり、スペース効率が悪いという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、構造の簡素化を図ると共にスペース効率の向上を図ることができる電動搬送車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載の電動搬送車は、車輪と、その車輪を回転駆動するための電力を発生する発電機と、前記車輪を操舵駆動するための油圧を発生する油圧ポンプと、前記発電機および油圧ポンプを駆動するための動力を発生するエンジンと、そのエンジンを冷却するための冷却液が流通するラジエータ及びそのラジエータに送風するファンを有する冷却装置とを備えるものであって、前記エンジンの動力を互いに相反する一方側および他方側へ出力する出力部材と、その出力部材に出力された前記エンジンの動力を分配する動力分配装置とを備え、前記ファンが前記出力部材の一方側に接続され前記出力部材の一方側へ出力された前記エンジンの動力が前記ファンに付与されると共に、前記発電機が前記出力部材の他方側に接続され前記出力部材の他方側へ出力された前記エンジンの動力が前記発電機に付与されるように構成され、且つ、前記油圧ポンプが前記動力分配装置に接続され前記動力分配装置により分配された前記エンジンの動力が前記油圧ポンプに付与されるように構成されている。
【0009】
請求項2記載の電動搬送車は、請求項1記載の電動搬送車において、前記動力分配装置は、前記発電機と前記エンジンとの間に介設され、前記油圧ポンプは、前記発電機と並列に配設されている。
【0010】
請求項3記載の電動搬送車は、請求項2記載の電動搬送車において、前記油圧ポンプは、前記発電機の側方に配設されている。
【0011】
請求項4記載の電動搬送車は、請求項2又は3に記載の電動搬送車において、前記発電機を潤滑するための潤滑油を圧送する潤滑油ポンプを備え、その潤滑油ポンプが前記動力分配装置に接続され前記動力分配装置により分配された前記エンジンの動力が前記潤滑油ポンプに付与されるように構成され、前記潤滑油ポンプは、前記発電機と並列に配設されると共に前記発電機を挟んで前記油圧ポンプと反対側の位置に配設されている。
【0012】
請求項5記載の電動搬送車は、請求項2から4のいずれかに記載の電動搬送車において、前記発電機で発生した電力により前記車輪を回転駆動するモータと、そのモータを冷却するための冷却液を圧送する冷却液ポンプと、前記動力分配装置により分配された前記エンジンの動力を互いに相反する一方側および他方側へ伝達する伝達部材とを備え、前記油圧ポンプが前記伝達部材の一方側に接続され前記伝達部材の一方側へ伝達された前記エンジンの動力が前記油圧ポンプに付与されると共に、前記冷却液ポンプが前記伝達部材の他方側に接続され前記伝達部材の他方側へ伝達された前記エンジンの動力が前記冷却液ポンプに付与されるように構成され、前記冷却液ポンプは、前記エンジンと並列に配設されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の電動搬送車によれば、ファンが出力部材の一方側に接続され出力部材の一方側へ出力されたエンジンの動力がファンに付与されると共に、発電機が出力部材の他方側に接続され出力部材の他方側へ出力されたエンジンの動力が発電機に付与される。また、油圧ポンプが動力分配装置に接続され動力分配装置により分配されたエンジンの動力が油圧ポンプに付与される。
【0014】
よって、エンジンを駆動源としてファンと発電機と油圧ポンプとを駆動することができるので、ファンを駆動するための専用の駆動源を不要として、構造の簡素化を図ることができるという効果がある。
【0015】
また、ファンを出力部材に接続することで、ラジエータをエンジンの近くに配設することができるので、冷却液の配管を取り回すためのスペース等を最小限に抑えることができ、スペース効率の向上を図ることができるという効果がある。
【0016】
請求項2記載の電動搬送車によれば、請求項1記載の電動搬送車の奏する効果に加え、動力分配装置は、発電機とエンジンとの間に介設されているので、動力分配装置をコンパクトに構成することができ、スペース効率の向上を図ることができるという効果がある。
【0017】
また、本発明における電動搬送車によれば、油圧ポンプは、発電機と並列に配設されているので、油圧ポンプをエンジンと並列に配設する場合と比較して、スペース効率の更なる向上を図ることができるという効果がある。
【0018】
即ち、油圧ポンプをエンジンと並列に配設する場合には、エンジンから放出される熱の影響を受けて油圧ポンプで発生する油圧が不安定となり易いため、油圧ポンプをエンジンから遠ざける必要がある。これに対し、発電機から放出される熱量はエンジンから放出される熱量と比較して少ないため、本発明のように油圧ポンプを発電機と並列に配設することで、油圧ポンプで発生する油圧が不安定となり難く、その分、油圧ポンプを発電機に近づけることができる。その結果、スペース効率の向上を図ることができる。
【0019】
請求項3記載の電動搬送車によれば、請求項2記載の電動搬送車の奏する効果に加え、油圧ポンプは、発電機の側方に配設されているので、油圧ポンプを発電機の上方または下方に並設する場合と比較して、電動搬送車の全高を低く抑えることができるという効果がある。
【0020】
また、油圧ポンプを発電機の側方に配設することで、油圧ポンプが発電機の上方または下方に並設されないので、油圧ポンプ及び発電機を電動搬送車に搭載した状態のまま油圧ポンプのメンテナンスを容易に行うことができ、メンテナンス性の向上を図ることができるという効果がある。
【0021】
請求項4記載の電動搬送車によれば、請求項2又は3に記載の電動搬送車の奏する効果に加え、潤滑油ポンプが動力分配装置に接続され動力分配装置により分配されたエンジンの動力が潤滑油ポンプに付与されるように構成されているので、エンジンを駆動源として潤滑油ポンプを駆動することができる。よって、潤滑油ポンプを駆動するための専用の駆動源を不要として、構造の簡素化を図ることができるという効果がある。
【0022】
また、エンジンを駆動源として潤滑油ポンプを駆動することで、潤滑油ポンプを発電機の近くに配設することができるので、潤滑油の配管を取り回すためのスペース等を最小限に抑えることができ、スペース効率の向上を図ることができるという効果がある。
【0023】
また、本発明の電動搬送車によれば、潤滑油ポンプは、発電機と並列に配設されているので、潤滑油ポンプをエンジンと並列に配設する場合と比較して、スペース効率の更なる向上を図ることができるという効果がある。
【0024】
即ち、潤滑油ポンプをエンジンと並列に配設する場合には、エンジンから放出される熱の影響を受けて潤滑油ポンプで圧送する潤滑油の油圧や油量などが不安定となり易いため、潤滑油ポンプをエンジンから遠ざける必要がある。これに対し、発電機から放出される熱量はエンジンから放出される熱量と比較して少ないため、本発明のように潤滑油ポンプを発電機と並列に配設することで、潤滑油ポンプで圧送する潤滑油の油圧や油量などが不安定となり難く、その分、潤滑油ポンプを発電機に近づけることができる。その結果、スペース効率の向上を図ることができる。
【0025】
更に、本発明における電動搬送車によれば、潤滑油ポンプは、発電機を挟んで油圧ポンプと反対側の位置に配設されているので、潤滑油ポンプを発電機に対して油圧ポンプと同一側に配設する場合と比較して、潤滑油ポンプが油圧ポンプの上方または下方に並設されず、電動搬送車の全高を低く抑えることができるという効果がある。
【0026】
また、潤滑油ポンプを発電機を挟んで油圧ポンプと反対側の位置に配設することで、潤滑油ポンプが油圧ポンプの上方または下方に並設されないので、潤滑油ポンプ及び油圧ポンプを電動搬送車に搭載した状態のまま潤滑油ポンプのメンテナンスを容易に行うことができ、メンテナンス性の向上を図ることができるという効果がある。
【0027】
請求項5記載の電動搬送車によれば、請求項2から4のいずれかに記載の電動搬送車の奏する効果に加え、冷却液ポンプが伝達部材の他方側に接続され伝達部材の他方側へ伝達されたエンジンの動力が冷却液ポンプに付与されるように構成されているので、エンジンを駆動源として冷却液ポンプを駆動することができる。よって、冷却液ポンプを駆動するための専用の駆動源を不要として、構造の簡素化を図ることができるという効果がある。
【0028】
また、本発明における電動搬送車によれば、伝達部材の一方側へ伝達されたエンジンの動力が油圧ポンプに付与されると共に、伝達部材の他方側へ伝達されたエンジンの動力が冷却液ポンプに付与されるように構成されているので、油圧ポンプにエンジンの動力を付与するための部品と冷却液ポンプにエンジンの動力を付与するための部品とを共通化することができ、構造の更なる簡素化を図ることができるという効果がある。
【0029】
更に、本発明における電動搬送車によれば、冷却液ポンプは、エンジンと並列に配設されているので、油圧ポンプを発電機と並列に配設することができる。よって、油圧ポンプで発生する油圧が不安定となり難く、その分、油圧ポンプを発電機に近づけることができる。その結果、スペース効率の向上を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施の形態における電動搬送車1の側面図であり、図1(b)は、電動搬送車1の上面図である。また、図2は、図1のIIで示す部分を拡大した電動搬送車1の拡大上面図である。なお、図1(b)では、荷台2の一部を透視して図示している。
【0031】
まず、図1を参照して、電動搬送車1の概略構成について説明する。電動搬送車1は、主に製鉄所や造船所などで重量物を搬送するための搬送車両であり、図1に示すように、搬送物を積載する荷台2と、その荷台2を支持する複数の車輪3と、それら複数の車輪3の一部を電力により回転駆動するモータ4と、複数の車輪3の全てを油圧により操舵駆動するシリンダ5とを備えて構成され、シリンダ5により複数の車輪3を独立して操舵駆動することで斜行や横行などの走行が可能とされている。
【0032】
また、電動搬送車1は、荷台2及び車輪3を連結する伸縮可能なアーム6と、そのアーム6を油圧により伸縮駆動するシリンダ7とを備えて構成され、シリンダ7によりアーム6を伸縮駆動することで荷台2の昇降が可能とされている。
【0033】
従って、例えば、搬送物が積載されたパレットの下に荷台2を低くして電動搬送車1を潜り込ませ、その後、荷台2を上昇させてパレットごと搬送物を持ち上げることで、パレットから荷台2への搬送物の積み替えを必要とせずに搬送物を搬送することができる。
【0034】
次いで、図2を参照して、電動搬送車1の動力構成について説明する。図2に示すように、電動搬送車1は、エンジン8と、そのエンジン8の前方(図2右側)に接続される冷却装置9と、エンジン8の後方(図2左側)に接続される発電機10と、その発電機10とエンジン8との間に介設される動力分配装置11と、その動力分配装置11に接続される油圧ポンプ12、潤滑油ポンプ13及び冷却液ポンプ14とを備えて構成されている。なお、図2では、電動搬送車1の動力構成を模式的に図示している。
【0035】
エンジン8は、発電機10や油圧ポンプ12等を駆動するための動力を発生するものであり、発生した動力を互いに相反する一方側(図2右側)及び他方側(図2左側)へ出力する出力軸8aを備えている。また、出力軸8aにはカップリング15が介設され、エンジン8の動力がカップリング15を介して出力軸8aの他方側へ出力されるように構成されている。なお、カップリング15の詳細構成については、図3(a)及び図4を参照して後述する。
【0036】
冷却装置9は、エンジン8を冷却するものであり、エンジン8を冷却するための冷却液が流通するラジエータ9aと、そのラジエータ9aに送風するファン9bとを主に備えて構成されている。また、ファン9bは、出力軸8aの一方側に接続され、出力軸8aの一方側へ出力されたエンジン8の動力が付与されると共にエンジン8の動力により駆動されるように構成されている。なお、図2では、エンジン8とラジエータ9aとを繋ぐ冷却液の配管の図示が省略されている。
【0037】
発電機10は、車輪3を回転駆動するための電力を発生すると共にその発生した電力をモータ4に供給するものであり、出力軸8aの他方側に接続され、出力軸8aの他方側へ出力されたエンジン8の動力が付与されると共にエンジン8の動力により駆動されるように構成されている。なお、図2では、発電機10からモータ4に電力を供給するための電気回路の図示が省略されている。
【0038】
動力分配装置11は、出力軸8aに出力されたエンジン8の動力を油圧ポンプ12と潤滑油ポンプ13と冷却液ポンプ14とに分配するものであり、出力軸8aの他方側に接続され、出力軸8aの他方側へ出力されたエンジン8の動力が付与されるように構成されている。なお、動力分配装置11の詳細構成については、図3(b)及び図4を参照して後述する。
【0039】
油圧ポンプ12は、車輪3を操舵駆動するための油圧およびアーム6を伸縮駆動するための油圧を発生すると共にその発生した油圧をシリンダ5及びシリンダ7に供給するものであり、動力分配装置11に接続され、動力分配装置11を介してエンジン8の動力が付与されると共にエンジン8の動力により駆動されるように構成されている。なお、図2では、油を貯蔵するためのタンク及び油圧ポンプ12からシリンダ5及びシリンダ7に油圧を供給するための配管の図示が省略されている。
【0040】
潤滑油ポンプ13は、発電機11を潤滑するための潤滑油を圧送するものであり、動力分配装置11に接続され、動力分配装置11を介してエンジン8の動力が付与されると共にエンジン8の動力により駆動されるように構成されている。
【0041】
これにより、エンジン8を駆動源として潤滑油ポンプ13を駆動することができるので、潤滑油ポンプ13を駆動するための専用の駆動源を不要として、構造の簡素化を図ることができる。
【0042】
また、エンジン8を駆動源として潤滑油ポンプ13を駆動することで、潤滑油ポンプ13を発電機10の近くに配設することができるので、潤滑油の配管を取り回すためのスペース等を最小限に抑えることができ、スペース効率の向上を図ることができる。
【0043】
なお、図2では、潤滑油を貯蔵するためのタンク及び潤滑油ポンプ13から発電機11に潤滑油を圧送するための配管の図示が省略されている。
【0044】
冷却液ポンプ14は、モータ4を冷却するための冷却液(例えば、冷却油など)を圧送するものであり、動力分配装置11に接続され、動力分配装置11を介してエンジン8の動力が付与されると共にエンジン8の動力により駆動されるように構成されている。
【0045】
これにより、エンジン8を駆動源として冷却液ポンプ14を駆動することができるので、冷却液ポンプ14を駆動するための専用の駆動源を不要として、構造の簡素化を図ることができる。
【0046】
なお、図2では、冷却液を貯蔵するためのタンク及び冷却液ポンプ14からモータ4に冷却液を圧送するための配管の図示が省略されている。
【0047】
次いで、図2を参照して、油圧ポンプ12、潤滑油ポンプ13及び冷却液ポンプ14の配置構成について説明する。図2に示すように、油圧ポンプ12は、動力分配装置11に対してエンジン8と反対側の発電機10側に接続され、発電機10と並列に配設されている。
【0048】
ここで、油圧ポンプ12をエンジン8と並列に配設する場合には、エンジン8から放出される熱の影響を受けて油圧ポンプ12で発生する油圧が不安定となり易いため、油圧ポンプ12をエンジンから遠ざける必要がある。これに対し、発電機10から放出される熱量はエンジン8から放出される熱量と比較して少ないため、油圧ポンプ12を発電機10と並列に配設することで、油圧ポンプ12で発生する油圧が不安定となり難く、その分、油圧ポンプ12を発電機10に近づけることができる。その結果、スペース効率の向上を図ることができる。
【0049】
また、油圧ポンプ12は、動力分配装置11に対して発電機10よりも荷台2の後方側(図2下側)に接続され、発電機10の側方に配設されている。
【0050】
これにより、油圧ポンプ12を発電機10の上方または下方に並設する場合と比較して、電動搬送車1の全高を低く抑えることができる。その結果、上述したように荷台2を昇降させて搬送物を搬送する電動搬送車1においては、パレットの下に潜り込み易く、各種搬送物の搬送に柔軟に対応することができる。
【0051】
また、油圧ポンプ12を発電機10の側方に配設することで、油圧ポンプ12が発電機10の上方または下方に並設されないので、油圧ポンプ12及び発電機10を電動搬送車1に搭載した状態のまま油圧ポンプ12のメンテナンスを容易に行うことができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0052】
図2に示すように、潤滑油ポンプ13は、動力分配装置11に対してエンジン8と反対側の発電機10側に接続され、発電機10と並列に配設されている。
【0053】
ここで、潤滑油ポンプ13をエンジン8と並列に配設する場合には、エンジン8から放出される熱の影響を受けて潤滑油ポンプ13で圧送する潤滑油の油圧や油量が不安定となり易いため、潤滑油ポンプ13をエンジン8から遠ざける必要がある。これに対し、発電機10から放出される熱量はエンジン8から放出される熱量と比較して少ないため、潤滑油ポンプ13を発電機10と並列に配設することで、潤滑油ポンプ13で圧送する潤滑油の油圧や油量が不安定となり難く、その分、潤滑油ポンプ13を発電機10に近づけることができる。その結果、スペース効率の向上を図ることができる。
【0054】
また、潤滑油ポンプ13は、動力分配装置11に対して発電機10よりも荷台2の前方側(図2右側)に接続され、発電機10を挟んで油圧ポンプ12と反対側の位置に配設されている。
【0055】
これにより、潤滑油ポンプ13を発電機10に対して油圧ポンプ12と同一側に配設する場合と比較して、潤滑油ポンプ13が油圧ポンプ12の上方または下方に並設されず、電動搬送車1の全高を低く抑えることができる。
【0056】
また、潤滑油ポンプ13を発電機10を挟んで油圧ポンプ12と反対側の位置に配設することで、潤滑油ポンプ13が油圧ポンプ12の上方または下方に並設されないので、潤滑油ポンプ13及び油圧ポンプ12を電動搬送車1に搭載した状態のまま潤滑油ポンプ13のメンテナンスを容易に行うことができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0057】
図2に示すように、冷却液ポンプ14は、動力分配装置11に対して発電機10と反対側のエンジン8側に接続され、エンジン8と並列に配設されている。
【0058】
これにより、油圧ポンプ12を発電機10と並列に配設することができる。よって、油圧ポンプ12で発生する油圧が不安定となり難く、その分、油圧ポンプ12を発電機10に近づけることができる。その結果、スペース効率の向上を図ることができる。
【0059】
次いで、図3及び図4を参照して、カップリング15及び動力分配装置11の詳細構成について説明する。図3(a)は、図2のIIIa−IIIa線におけるカップリング15の断面図であり、図3(b)は、図2のIIIb−IIIb線における動力分配装置11の断面図である。また、図4は、図3(b)のIV−IV線におけるカップリング15及び動力分配装置11の断面図である。なお、図4では、発明の理解を容易とするために、エンジン8と発電機10と油圧ポンプ12と潤滑油ポンプ13と冷却液ポンプ14とを模式的に図示している。
【0060】
カップリング15は、エンジン8の動力を出力軸8aの他方側(図4左側)へ伝達するものであり、図3(a)及び図4に示すように、第1継手15aと第2継手15aとを備えて構成されている。
【0061】
第1継手15aは、エンジン8の動力を第2継手15bに伝達する継手であり、内周部に凹設される歯車状の溝15a1を備えて構成されている。
【0062】
第2継手15bは、第1継手15aに伝達されたエンジン8の動力を出力軸8aの他方側へ伝達する継手であり、外周部に凸設されると共に第1継手15aの溝15a1に係合可能な歯車状の突起15b1を備え、溝15a1に突起15b1が係合することで第1継手15aに伝達されたエンジン8の動力が伝達されるように構成されている。
【0063】
また、突起15b1には、ゴム状弾性体から構成される緩衝材15cが覆設され、溝15a1と突起15b1とが緩衝材15cを介して係合するように構成されている。これにより、エンジン8の動力変動を緩衝材15cにより吸収することができるので、エンジン8の動力を出力軸8aの他方側へ円滑に出力することができる。その結果、発電機10で発生する電力および油圧ポンプ12で発生する油圧を安定させることができる。
【0064】
上述したように構成されるカップリング15によれば、歯車状に構成される溝15a1と突起15b1とが係合してエンジン8の動力を伝達するので、エンジン8の動力を伝達するための伝達面積を十分に確保することができ、より大きなエンジン8の動力を伝達することができる。その結果、カップリング15をコンパクトに構成することができ、スペース効率の向上を図ることができる。
【0065】
動力分配装置11は、上述したように出力軸8aに出力されたエンジン8の動力を油圧ポンプ12と潤滑油ポンプ13と冷却液ポンプ14とに分配するものであり、図3(b)及び図4に示すように、主歯車11aと第1歯車機構11bと第2歯車機構11cとを備えて構成されている。
【0066】
主歯車11aは、出力軸8aに出力されたエンジン8の動力を第1歯車機構11b及び第2歯車機構11cに伝達する平歯車であり、スプライン継手(図示せず)により出力軸8aに嵌合され、出力軸8aの他方側(図4左側)へ出力されたエンジン8の動力が伝達されるように構成されている。
【0067】
第1歯車機構11bは、主歯車11aに伝達されたエンジン8の動力を油圧ポンプ12及び冷却液ポンプ14に伝達する歯車機構であり、一直線上に配設される3個の歯車11b1,11b2,11b3を備えて構成されている。
【0068】
歯車11b1,11b2,11b3は、いずれも平歯車であり、主歯車11aに歯車11b1が、その歯車11b1に歯車11b2が、その歯車11b2に歯車11b3が、それぞれ噛合され、主歯車11aから歯車11b1に伝達されたエンジン8の動力が歯車11b2を介して歯車11b3に伝達されると共に歯車11b3に伝達されたエンジン8の動力を互いに相反する一方側(図4左側)及び他方側(図4右側)へ伝達するように構成されている。
【0069】
また、歯車11b3の一方側には油圧ポンプ12が接続され、歯車11b3の一方側へ伝達されたエンジン8の動力が油圧ポンプ12に付与されるように構成されている。更に、歯車11b3の他方側には冷却液ポンプ14が接続され、歯車11b3の他方側へ出力されたエンジン8の動力が冷却液ポンプ14に付与されるように構成されている。
【0070】
これにより、油圧ポンプ12にエンジン8の動力を付与するための部品と冷却液ポンプ14にエンジン8の動力を付与するための部品とを共通化することができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0071】
第2歯車機構11cは、主歯車11aに伝達されたエンジン8の動力を潤滑油ポンプ13に伝達する歯車機構であり、第1歯車機構11bと同様に、一直線上に配設される3個の歯車11c1,11c2,11c3を備えて構成されている。
【0072】
歯車11c1,11c2,11c3は、いずれも平歯車であり、主歯車11aに歯車11c1が、その歯車11c1に歯車11c2が、その歯車11c2に歯車11c3が、それぞれ噛合され、主歯車11aから歯車11c1に伝達されたエンジン8の動力が歯車11c2を介して歯車11c3に伝達されると共に歯車11c3に伝達されたエンジン8の動力を一方側(図4左側)へ伝達するように構成されている。
【0073】
また、歯車11c3の一方側には潤滑油ポンプ13が接続され、歯車11c3の一方側へ伝達されたエンジン8の動力が潤滑油ポンプ13に付与されるように構成されている。
【0074】
上述したように構成される動力分配装置11によれば、エンジン8の動力を歯車機構により伝達するので、例えば、エンジン8の動力をチェーンやベルト等により伝達する場合と比較して、伸びや切れ等の不具合が発生することなく、動力分配装置11の耐久性の向上を図ることができる。
【0075】
また、歯車11b1,11b2,11b3及び歯車11c1,11c2,11c3がいずれも平歯車として構成されると共に一直線上に配設されているので、動力分配装置11をコンパクトに構成することができ、スペース効率の向上を図ることができる。
【0076】
以上説明したように、電動搬送車1によれば、ファン9bが出力軸8aの一方側に接続され出力軸8aの一方側へ出力されたエンジン8の動力がファン9bに付与されると共に、発電機10が出力軸8aの他方側に接続され出力軸8aの他方側へ出力されたエンジン8の動力が発電機10に付与される。また、油圧ポンプ12が動力分配装置11に接続され動力分配装置11により分配されたエンジン8の動力が油圧ポンプ12に付与される。
【0077】
よって、エンジン8を駆動源としてファン9bと発電機10と油圧ポンプ12とを駆動することができるので、ファン9bを駆動するための専用の駆動源を不要として、構造の簡素化を図ることができる。
【0078】
また、ファン9bを出力軸8aに接続することで、ラジエータ9aをエンジン8の近くに配設することができるので、冷却液の配管を取り回すためのスペース等を最小限に抑えることができ、スペース効率の向上を図ることができる。
【0079】
また、電動搬送車1によれば、動力分配装置11は、発電機10とエンジン8との間に介設されているので、動力分配装置11をコンパクトに構成することができ、スペース効率の向上を図ることができる。
【0080】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0081】
例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。即ち、上記実施の形態では、第1歯車機構11bを3個の歯車11b1,11b2,11b3により構成すると共に第2歯車機構11cを3個の歯車11c1,11c2,11c3により構成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第1歯車機構11b及び第2歯車機構11cを1個または2個あるいは4個以上の歯車により構成しても良く、第1歯車機構11b又は第2歯車機構11cのいずれか一方のみを1個または2個あるいは4個以上の歯車により構成しても良い。
【0082】
また、上記実施の形態では、動力分配装置11がエンジン8の動力を歯車機構により油圧ポンプ12等に伝達する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、エンジン8の動力をチェーンやベルト等により油圧ポンプ12等に伝達するように構成しても良い。
【0083】
上記実施の形態では、油圧ポンプ12と潤滑油ポンプ13と冷却液ポンプ14とを動力分配装置11に接続して、それら油圧ポンプ12と潤滑油ポンプ13と冷却液ポンプ14とをエンジン8の動力により駆動する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、油圧ポンプ12、潤滑油ポンプ13及び冷却液ポンプ14以外に他の装置を動力分配装置11に接続して、かかる他の装置をエンジン8の動力により駆動するように構成しても良い。
【0084】
他の装置としては、例えば、油圧ポンプ12とは異なる別の油圧ポンプ等が例示される。ここで、上記実施の形態では、油圧ポンプ12で発生した油圧をシリンダ7に供給してアーム6を伸縮駆動する場合を説明したが、他の装置として例示した油圧ポンプを動力分配装置11に接続してエンジン8の動力により駆動することで、かかる油圧ポンプで発生した油圧をシリンダ7に供給してアーム6を伸縮駆動するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態における電動搬送車の側面図であり、(b)は、電動搬送車の上面図である。
【図2】図1のIIで示す部分を拡大した電動搬送車の拡大上面図である。
【図3】(a)は、図2のIIIa−IIIa線におけるカップリングの断面図であり、(b)は、図2のIIIb−IIIb線における動力分配装置の断面図である。
【図4】図3(b)のIV−IV線におけるカップリング及び動力分配装置の断面図である。
【図5】従来の電動搬送車の動力構成を模式的に図示した模式図である。
【符号の説明】
【0086】
1 電動搬送車
3 車輪
4 モータ
8 エンジン
8a 出力軸(出力部材)
9 冷却装置
9a ラジエータ(冷却装置の一部)
9b ファン(冷却装置の一部)
10 発電機
11 動力分配装置
11b 第1歯車機構(伝達部材)
11b1,11b2,11b3 歯車(伝達部材の一部)
12 油圧ポンプ
13 潤滑油ポンプ
14 冷却液ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、その車輪を回転駆動するための電力を発生する発電機と、前記車輪を操舵駆動するための油圧を発生する油圧ポンプと、前記発電機および油圧ポンプを駆動するための動力を発生するエンジンと、そのエンジンを冷却するための冷却液が流通するラジエータ及びそのラジエータに送風するファンを有する冷却装置とを備えた電動搬送車において、
前記エンジンの動力を互いに相反する一方側および他方側へ出力する出力部材と、
その出力部材に出力された前記エンジンの動力を分配する動力分配装置とを備え、
前記ファンが前記出力部材の一方側に接続され前記出力部材の一方側へ出力された前記エンジンの動力が前記ファンに付与されると共に、前記発電機が前記出力部材の他方側に接続され前記出力部材の他方側へ出力された前記エンジンの動力が前記発電機に付与されるように構成され、且つ、前記油圧ポンプが前記動力分配装置に接続され前記動力分配装置により分配された前記エンジンの動力が前記油圧ポンプに付与されるように構成されていることを特徴とする電動搬送車。
【請求項2】
前記動力分配装置は、前記発電機と前記エンジンとの間に介設され、
前記油圧ポンプは、前記発電機と並列に配設されていることを特徴とする請求項1記載の電動搬送車。
【請求項3】
前記油圧ポンプは、前記発電機の側方に配設されていることを特徴とする請求項2記載の電動搬送車。
【請求項4】
前記発電機を潤滑するための潤滑油を圧送する潤滑油ポンプを備え、
その潤滑油ポンプが前記動力分配装置に接続され前記動力分配装置により分配された前記エンジンの動力が前記潤滑油ポンプに付与されるように構成され、
前記潤滑油ポンプは、前記発電機と並列に配設されると共に前記発電機を挟んで前記油圧ポンプと反対側の位置に配設されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動搬送車。
【請求項5】
前記発電機で発生した電力により前記車輪を回転駆動するモータと、
そのモータを冷却するための冷却液を圧送する冷却液ポンプと、
前記動力分配装置により分配された前記エンジンの動力を互いに相反する一方側および他方側へ伝達する伝達部材とを備え、
前記油圧ポンプが前記伝達部材の一方側に接続され前記伝達部材の一方側へ伝達された前記エンジンの動力が前記油圧ポンプに付与されると共に、前記冷却液ポンプが前記伝達部材の他方側に接続され前記伝達部材の他方側へ伝達された前記エンジンの動力が前記冷却液ポンプに付与されるように構成され、
前記冷却液ポンプは、前記エンジンと並列に配設されていることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の電動搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−64727(P2010−64727A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235818(P2008−235818)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】