説明

MIS型素子の評価方法、MIS型素子の評価用素子

【課題】複数のテスト素子によりMIS型素子の経時変化を評価可能であり、各々のテスト素子に位置依存性が少なく、印加電圧のばらつきも生じ難い、信頼性の高いMIS型素子の評価方法を提供する。
【解決手段】本発明のMIS型素子の評価方法は、MIS型素子95の層構造と同層にて、金属層265と半導体層267との間に絶縁層266が形成されてなるテスト素子201a〜201eを複数形成し、金属層265と半導体層267とを電極として複数のテスト素子201a〜201eをそれぞれ並列に接続して、各テスト素子201a〜201eに電圧印加した後、所定時間の経過後にテスト素子201aをサンプリングして当該テスト素子201aを評価する一方、さらに所定時間の経過後にテスト素子201bをサンプリングして当該テスト素子201bを評価する評価工程を順次行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型素子の評価方法、MIS型素子の評価用素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置の構成として、一対の基板間に液晶層が挟持されてなるものが公知であり、そのうち一方の基板は、画素電極を備えたアクティブマトリクス基板として構成される。このアクティブマトリクス基板は、ゲート配線と信号配線とが透明基板上に格子状に設けられ、ゲート配線と信号配線との交差部にTFT(薄膜トランジスタ)等のスイッチング素子が設けられた構成を有している。TFTとしては、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型のもの、すなわち金属膜と半導体膜との間に絶縁膜が介在してなる型のものが公知であり、ゲート配線と信号配線とに囲まれた領域に、該TFTと接続される画素電極が配され、これにより表示単位としての画素が構成されている。
【0003】
上記のようなTFTの特性評価としては、テスト素子であるTEG(Test Element Group)を用いた評価方法が公知である(例えば特許文献1参照)。これは画素に配置したTFTと同等の素子(例えばTFTを構成する膜の一部からなるもの)をアクティブマトリクス基板の表示領域外に形成し、この表示領域外の素子をTFGとして評価することでTFTの特性を評価するものである。
【特許文献1】特開2004−214638公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなTEGを評価するにあたり、例えば2次イオン質量分析(SIMS)等のように当該TEGの破壊を伴って評価が行われる場合、一度評価を行ったTEGは使用できず、例えばTFTの長期信頼性評価のために経時変化を観察する場合には、複数のTEGを形成する必要がある。しかしながら、各々独立したTEGを使用する場合、同一基板内であっても位置によって膜特性にばらつきがあり、TEGによっては初期条件において既に異なった膜特性を有している可能性もある。また、各々のTEGの電極における接触抵抗の相違により印加電圧のばらつきが生じる場合もあり、さらに、各々のTEGが異なった位置に配されると、温度のばらつきにより適切に経時変化を評価できない場合もある。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、複数のテスト素子によりMIS型素子の経時変化を評価可能であり、各々のテスト素子に位置依存性が少なく、印加電圧のばらつきも生じ難い、信頼性の高いMIS型素子の評価方法、及びMIS型素子の評価用素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のMIS型素子の評価方法は、金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるMIS型素子の評価方法であって、前記MIS型素子の層構造と同層にて、金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるテスト素子を複数形成し、前記金属層と前記半導体層とを電極として複数の前記テスト素子をそれぞれ並列に接続して、各テスト素子に電圧印加を行い、所定時間の経過後に前記テスト素子の1つをサンプリングして当該テスト素子を評価する一方、さらに所定時間の経過後に前記テスト素子の別の1つをサンプリングして当該テスト素子を評価する評価工程を順次行うことを特徴とする。
【0007】
このような評価方法によると、各テスト素子を並列に接続して電圧印加するものとしているため、各テスト素子に対する印加電圧のばらつきが生じ難いものとなり、印加電圧が同一となる条件下において各テスト素子の特性評価を行うことが可能となる。したがって、所定時間の経過後にテスト素子の1つをサンプリングして当該テスト素子を評価する一方、さらに所定時間の経過後にテスト素子の別の1つをサンプリングして当該テスト素子を評価する評価工程を順次行うことで、各テスト素子の印加電圧のばらつきを抑えた条件下、評価対象であるMIS型素子の経時変化(例えば絶縁層における不純物濃度の経時変化)を正確に把握することが可能となる。
【0008】
本発明のMIS型素子の評価方法において、前記テスト素子の金属層と前記MIS型素子の金属層、前記テスト素子の絶縁層と前記MIS型素子の絶縁層、前記テスト素子の半導体層と前記MIS型素子の半導体層は、それぞれ同一材料、同一工程で形成するものとすることができる。
このようにテスト素子の各層を、評価対象であるMIS型素子の各層と同一材料、同一工程で形成することで、MIS型素子の特性を正確に把握することが可能となる。また、この場合、複数のテスト素子同士においても各層の特性が同一となるため、経時変化の評価を行う場合に素子間のバラツキがなく、正確な評価を行うことが可能となる。
【0009】
また、前記テスト素子は、前記MIS型素子と同一の基板上に形成するものであり、前記基板が、アルカリガラスからなるものとすることができる。
このようにアルカリガラスからなる基板上に、金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるMIS型素子を形成する場合、基板から絶縁層(例えばゲート絶縁膜)へのアルカリ成分の拡散が素子特性に多大な影響を及ぼす場合がある。そこで、そのようなアルカリガラスからなる基板上にMIS型素子を形成した場合に本発明の評価方法を採用することで、MIS型素子の特性の経時変化を性格に把握することができ、ひいてはMIS型素子の信頼性向上に寄与することが可能となる。
【0010】
具体的には、サンプリングした前記テスト素子の評価は、当該テスト素子の絶縁層に含まれるアルカリ金属成分に関する情報を得る評価であるものとすることができる。
このように絶縁層に含まれるアルカリ金属成分に関する情報(濃度、成分構成等)を評価することで、アルカリガラス基板によるMIS型素子への影響を正確に把握することが可能となる。
【0011】
また、サンプリングした前記テスト素子の評価は、2次イオン質量分析により行うものとすることができる。
このように2次イオン質量分析によりテスト素子の評価を行う場合、テスト素子を破壊してサンプリングする必要があるが、このような破壊を伴う評価方法では、一度評価を行ったテスト素子そのものは、その後の経時変化を評価することができないものとなる。したがって、2次イオン質量分析を用いて経時変化の評価を行うためにはテスト素子を複数設けておく必要がある。ところが、複数のテスト素子を時間毎にサンプリングして経時変化を評価する場合には、各テスト素子間で印加電圧等の条件のバラツキがあっては正確な経時変化を評価することができない。そこで、本発明のように各テスト素子を並列に接続して電圧印加を行い、該各テスト素子を時間毎に順次サンプリングして評価を行うことで、2次イオン質量分析による評価を行う場合にも、印加電圧のバラツキがない条件で経時変化を正確に評価することが可能となる。
【0012】
また、前記MIS型素子は、個別基板上に所定のパターンに配置されるものであり、前記個別基板を複数含むマザー基板を用意し、前記マザー基板の各個別基板に前記MIS型素子を形成する一方、前記マザー基板の一箇所に複数の前記テスト素子を集約して形成されてなるものとすることができる。
このように各個別基板にテスト素子を別々で形成するのではなく、一箇所に集約して形成することで、テスト素子の位置依存性を排除でき、すなわち位置の違いによる各テスト素子の特性のバラツキを排除することが可能となる。また、一箇所に集約して形成することで、温度環境を一元化することができ、すなわち位置の違いによる各テスト素子の温度環境のバラツキを排除することが可能となり、ひいては経時変化を評価するための加速試験を正確に行うことが可能となる。
【0013】
なお、本発明の評価対象たるMIS型素子としては、薄膜トランジスタを例示することができる。このような薄膜トランジスタは、例えば液晶パネルのスイッチング素子として用いることができ、本発明は、このような薄膜トランジスタ素子を用いた液晶パネルの信頼性向上に大きく寄与することが可能となる。
【0014】
次に、上記課題を解決するために、本発明のMIS型素子の評価用素子は、金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるMIS型素子を評価するための評価素子であって、前記MIS型素子の層構造と同層にて、金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるテスト素子を複数具備し、前記金属層と前記半導体層とを電極として複数の前記テスト素子がそれぞれ並列に接続されて、各テスト素子に電圧印加可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
このような評価用素子によると、各テスト素子を並列に接続して電圧印加可能に構成しているため、各テスト素子に対する印加電圧のばらつきが生じ難いものとなり、印加電圧が同一となる条件下において各テスト素子の特性評価を行うことが可能となる。
したがって、例えば所定時間の経過後にテスト素子の1つをサンプリングして当該テスト素子を評価する一方、さらに所定時間の経過後にテスト素子の別の1つをサンプリングして当該テスト素子を評価する評価工程を順次行うことで、各テスト素子の印加電圧のばらつきを抑えた条件下、評価対象であるMIS型素子の経時変化を正確に評価することができるものとなる。
【0016】
本発明のMIS型素子の評価用素子において、前記テスト素子の金属層と前記MIS型素子の金属層、前記テスト素子の絶縁層と前記MIS型素子の絶縁層、前記テスト素子の半導体層と前記MIS型素子の半導体層は、それぞれ同一材料、同一工程で形成されてなるものとすることができる。
このようにテスト素子の各層を、評価対象であるMIS型素子の各層と同一材料、同一工程で形成することで、MIS型素子の特性を正確に把握することが可能となる。また、この場合、複数のテスト素子同士においても各層の特性が同一となるため、経時変化の評価を行う場合に素子間のバラツキがなく、正確な評価を行うことが可能となる。
【0017】
また、前記テスト素子は、前記MIS型素子と同一の基板上に形成されてなり、前記基板が、アルカリガラスからなるものとすることができる。
このようにアルカリガラスからなる基板上に、金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるMIS型素子を形成する場合、基板から絶縁層(例えばゲート絶縁膜)へのアルカリ成分の拡散が素子特性に多大な影響を及ぼす場合がある。そこで、そのようなアルカリガラスからなる基板上にMIS型素子を形成した場合に本発明の評価素子を採用して、MIS型素子の評価を行うことで、MIS型素子の特性の経時変化を性格に把握することができ、ひいてはMIS型素子の信頼性向上に寄与することが可能となる。
【0018】
また、前記MIS型素子は、個別基板上に所定のパターンに配置されてなり、前記テスト素子は、前記MIS型素子が配置された前記個別基板を複数含むマザー基板の一箇所に複数集約して形成されてなるものとすることができる。
このように各個別基板にテスト素子を別々で形成するのではなく、一箇所に集約して形成することで、テスト素子の位置依存性を排除でき、すなわち位置の違いによる各テスト素子の特性のバラツキを排除することが可能となる。また、一箇所に集約して形成することで、温度環境を一元化することができ、すなわち位置の違いによる各テスト素子の温度環境のバラツキを排除することが可能となり、ひいては経時変化を評価するための加速試験を正確に行うことが可能となる。
【0019】
なお、本発明の評価対象たるMIS型素子としては、薄膜トランジスタを例示することができる。このような薄膜トランジスタは、例えば液晶パネルのスイッチング素子として用いることができ、本発明は、このような薄膜トランジスタ素子を用いた液晶パネルの信頼性向上に大きく寄与することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、各々のテスト素子において位置依存性が少なくなり、印加電圧のばらつきも生じ難いものとなるため、MIS型素子の経時変化等の特性評価を確実に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。
図1は本発明に係る方法によって評価されるMIS型素子を含む液晶表示装置についてその概略構成を分解して示す斜視図、図2は同液晶表示装置の概略構成を示す断面図、図3は同液晶表示装置の要部構成(液晶パネルの一部分)について示す断面図、図4は同液晶表示装置の画素構成について示す平面図、図5は図4のA−A’線断面図である。
【0022】
図1及び図2に示した液晶表示装置10は、矩形をなす液晶パネル11と、外部光源であるバックライト装置12とを備え、これらがベゼル13などにより一体的に保持されるようになっている。
バックライト装置12は、所謂直下型のバックライト装置であって、液晶パネル11のパネル面(表示面)の背面直下に、当該パネル面に沿って光源(ここでは冷陰極管17)が並列配置された構成を具備している。バックライト装置12は、上面側が開口した矩形の略箱型をなす金属製のシャーシ14と、シャーシ14の開口部を覆うようにして取り付けられる複数の光学部材15(図示下側から順に拡散板、拡散シート、レンズシート、光学シート)と、これら光学部材15をシャーシ14に保持するためのフレーム16と、シャーシ14内に収容されるランプである冷陰極管17と、冷陰極管17の両端部を保持するためのゴム製(例えばシリコンゴム製)のホルダ18と、冷陰極管17群及びホルダ18群を一括して覆うランプホルダ19と、冷陰極管17における両端部を除いた途中の部分を保持するためのランプクリップ20とを備える。
【0023】
液晶パネル11は、図3に示すように、一対の基板30,40が所定のギャップを隔てた状態で貼り合わせられるとともに、両基板30,40間に液晶が封入された構成とされ、当該液晶により液晶層50が形成されている。
基板40は素子基板(アクティブマトリクス基板)であって、アルカリガラスからなるガラス基板41と、ガラス基板41の液晶層50側に形成された半導体素子としての薄膜トランジスタ(TFT)60と、当該薄膜トランジスタ60に対して電気的に接続された画素電極44と、これら薄膜トランジスタ60及び画素電極44の液晶層50側に形成された配向膜45と、を備えている。また、ガラス基板41の液晶層50側とは反対側には偏光板42が配されている。なお、ガラス基板41は、シリカ(SiO)を主体としてなり、ソーダ(NaO)、石灰(CaO)を含んで構成されている。
【0024】
画素電極44は例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜からなり、素子基板40の液晶層50側にマトリクス状のパターンで形成されている。詳しくは、薄膜トランジスタ60のドレイン電極64(図4及び図5参照)と接続され、当該薄膜トランジスタ60のスイッチング作動により選択的に電圧が印加されるものとなっている。また、配向膜45は例えばポリイミドのラビング配向膜から構成されており、偏光板42は例えば透明フィルムにヨウ素や染料を染み込ませたものを、一方向に延伸してなるものを採用している。
【0025】
一方、基板30は対向基板であって、アルカリガラスからなるガラス基板31と、ガラス基板31の液晶層50側に形成され、R(赤),G(緑),B(青)の各色光を選択的に透過可能な着色部R,G,Bを備えたカラーフィルタ33と、カラーフィルタ33の液晶層50側に形成された対向電極34と、対向電極34の液晶層50側に形成された配向膜35と、を備えている。また、ガラス基板31の液晶層50側とは反対側には偏光板32が配されている。
【0026】
カラーフィルタ33は、着色部R,G,Bの境界に配されたブラックマトリクスBMを備え、当該ブラックマトリクスBMは素子基板40の非画素部(つまり薄膜トランジスタ60が形成された領域)を覆うように、当該非画素部に重畳して配されている。また、対向電極34は例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜からなり、対向基板30の液晶層50側に全面ベタ状に形成されている。また、配向膜35は例えばポリイミドのラビング配向膜から構成されており、偏光板32は例えば透明フィルムにヨウ素や染料を染み込ませたものを、一方向に延伸してなるものを採用している。
【0027】
上述したように本実施形態の液晶表示装置10は半導体素子として薄膜トランジスタ60を備えており、当該薄膜トランジスタ60を含む画素は、図4及び図5に示すような構成を具備している。
本実施形態の液晶表示装置10では複数の画素49がマトリクス状に構成されており、これら画素49の各々には、画素スイッチング用の半導体素子として薄膜トランジスタ60が形成されている。
【0028】
薄膜トランジスタ60は、ソース電極63、ドレイン電極64、及びゲート電極65を備え、ソース電極63には、画像信号を供給するソース配線80が接続されている。ソース配線80に書き込む画像信号は、線順次で供給してもよく、相隣接する複数のソース配線80同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。なお、ソース配線80は、図4に示すように、コンタクトホール81及び配線82を介して画像信号を供給するための駆動回路と接続されている。
また、薄膜トランジスタ60のゲート電極65にはゲート配線90が接続されており、所定のタイミングで、ゲート配線90にパルス的に走査信号を線順次で印加するように構成されている。
【0029】
画素電極44は、薄膜トランジスタ60のドレイン電極64にコンタクトホール68を介して接続されており、スイッチング素子である薄膜トランジスタ60を一定期間だけオン状態とすることにより、ソース配線80から供給される画像信号を各画素49に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極44を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向電極34(図3参照)との間で一定期間保持される。なお、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極44と対向電極34(図3参照)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量(図示略)が付加されている。
【0030】
上述した通り、薄膜トランジスタ60は、素子基板40を構成するガラス基板41上に配設されている。詳しくは、図5に示すように、ガラス基板41上に形成されたゲート電極65と、ゲート電極65上に形成されたゲート絶縁膜66と、ゲート絶縁膜66上に形成され、チャネル領域67aを備える半導体膜67と、半導体膜67の一端に接続されたソース電極63と、半導体膜67の他端に接続され、ソース電極63に対してチャネル領域67aを介して接続されるドレイン電極64と、を備えて構成されている。なお、薄膜トランジスタ60は、ゲート電極(Metal)65、ゲート絶縁膜(Insulator)66、半導体膜(Semiconductor)67により構成されるMIS型素子95を有して構成されている。
【0031】
ゲート電極65は、例えばアルミニウム(Al)の他、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)等の金属膜単体又はこれらの金属窒化物との積層膜で形成することができる。
ゲート絶縁膜66は、例えば窒化シリコン(SiNx)の他、酸化シリコン(SiOx)等で形成することができる。
半導体膜67は、例えばアモルファスシリコン(a−Si)等で形成することができる。
【0032】
ソース電極63及びドレイン電極64、ならびにソース電極63と接続されたソース配線80は、導電膜61,62が積層した構成を備える。下層側の導電膜61は、例えばリン(P)等のn型不純物を高濃度にドーピングしたアモルファスシリコン(nSi)等で形成することができる。上層側の導電膜62は、例えばアルミニウム(Al)の他、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)等の金属膜単体又はこれらの金属窒化物との積層膜で形成することができる。
【0033】
また、ソース電極63及びドレイン電極64上には層間絶縁膜(パッシベーション膜)70が形成されている。ドレイン電極64は、この層間絶縁膜70に形成されたコンタクトホール68を介して、画素電極44に接続されている。なお、層間絶縁膜70は、例えば窒化シリコン(SiNx)等の無機絶縁膜の他、アクリル系樹脂膜等で形成することができる。
【0034】
一方、図5に示すように、ガラス基板41上には、ゲート電極65に走査信号を供給するためのゲート配線90が形成されている。このゲート配線90は、ゲート電極65と同一材料で同一層に形成されている。また、ゲート配線90上には、ゲート絶縁膜66と同一材料で同一層に形成された絶縁膜69が積層されている。そして、これらゲート配線90と絶縁膜69を覆うように層間絶縁膜70が形成されている。また、図4に示すように、絶縁膜69及び層間絶縁膜70にはコンタクトホール91が形成され、このコンタクトホール91を介して、ゲート配線90が走査信号供給回路に繋がる配線92と接続されている。
【0035】
以上のような本実施形態の液晶表示装置10は、図6に示すような多数のガラス基板(個別基板)41を連結してなる大型のマザー基板410を用いて製造される。すなわち、多数(図6では8個)のガラス基板41に対してそれぞれ同一工程で薄膜トランジスタ60や画素電極44等を形成して、多数のアクティブマトリクス基板40を同時に得ることで製造効率を向上させている。なお、このアクティブマトリクス基板40に対して、対向側のガラス基板31を多数個連結してなる大型の対向側マザー基板(図示略)を貼り合わせ、互いの基板間に液晶層を形成することで大型のマザーパネルを作成し、当該大型のマザーパネルを分断して個々の液晶パネルを得るものとしている。
【0036】
ここで、マザー基板410上には、薄膜トランジスタ60の特性を評価するための評価素子であるTEG(Test Element Group)200を、該薄膜トランジスタ60と同時に形成するものとしている。
TEG200は、マザー基板410の中心部に形成され、図7に示すようにキャパシタからなる複数のテスト素子201a〜201eを当該中心部に集約した形で形成される。また、テスト素子201a〜201eは、図8に示すように金属層265と半導体層267との間に絶縁層266が形成された構成を有している。特に、これら金属層265と絶縁層266と半導体層267とは、薄膜トランジスタ60を構成するゲート電極(Metal)65とゲート絶縁膜(Insulator)66と半導体膜(Semiconductor)67により構成されたMIS型素子95の各膜(層)と同層に構成され、該MIS型素子95と同一のマザー基板410(ガラス基板41の集合体)上に形成される。
【0037】
詳しくは、テスト素子201a〜201eの金属層265と薄膜トランジスタ60のMIS型素子95を構成するゲート電極65とは、同一材料・同一工程で形成されるものであり、例えばスパッタリング法により形成することができ、用いる材料としては、例えばアルミニウム(Al)の他、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)等の金属膜単体又はこれらの金属窒化物との積層物とすることができる。
【0038】
テスト素子201a〜201eの絶縁層266と薄膜トランジスタ60のMIS型素子95を構成するゲート絶縁膜66とは、同一材料・同一工程で形成されるものであり、例えばプラズマCVD法により形成することができ、用いる材料としては、例えば窒化シリコン(SiNx)の他、酸化シリコン(SiOx)等とすることができる。
【0039】
テスト素子201a〜201eの半導体層267と薄膜トランジスタ60のMIS型素子95を構成する半導体膜67とは、同一材料・同一工程で形成されるものであり、例えばプラズマCVD法により形成することができ、用いる材料としては、例えばアモルファスシリコン(a−Si)等とすることができる。
【0040】
このようにマザー基板410のうち、個別基板である各ガラス基板41上には画素毎に薄膜トランジスタ60を形成すべく所定の平面パターンにMIS型素子95が形成され、一方、複数のガラス基板41の境界部分であるマザー基板410の中心部にはテスト素子201a〜201eを集約してTEG200が形成される。そして、TEG200においては、各テスト素子201a〜201eは、図7に示すように、金属層265と半導体層267を電極としてそれぞれ並列に接続された状態で電圧印加可能に構成されている。特に図8に示すように、各テスト素子201a〜201eは、ガラス基板41(マザー基板410)上に金属層265と、絶縁層266と、半導体層267とが積層された構成を有し、各テスト素子201a〜201eの金属層265の端子部265a、及び半導体層267と導通してなる金属層270の端子部270aから、当該各テスト素子201a〜201eに電圧が印加される構成となっている。なお、これら各テスト素子201a〜201eには、絶縁材料からなる保護膜299が覆われている。
【0041】
本実施形態では、以上のような複数のテスト素子201a〜201eを含むTEG200により、薄膜トランジスタ60の特性、特にはMIS型素子95の特性を間接的に評価することが可能となっている。本実施形態では、MIS型素子95を構成する層のうちゲート絶縁膜66の特性を評価するものとしており、具体的には、ガラス基板41からゲート絶縁膜66へのアルカリ成分等の不純物の拡散度合いについて経時変化を評価するものとしている。
【0042】
以下、その評価方法について説明する。
図7に示すように並列接続した各テスト素子201a〜201eに対し、恒温槽中、端子部265a及び端子部270aを介して電圧印加を行い、所定時間の経過後(例えば24時間経過後)、図9に示すようにテスト素子201a〜201eの1つ(ここではテスト素子201a)をサンプリングして当該テスト素子201aの特性評価を行う。この際、図9に示すように破線部Aで破断する形で、並列接続されたテスト素子201a〜201eのうちテスト素子201aのみを破壊して抽出し、その絶縁層266について、アルカリ金属成分等の不純物元素の濃度を2次イオン質量分析により測定する。
【0043】
続いて、並列接続された状態で残存するテスト素子201b〜201eについては、さらに所定時間の経過後(例えばテスト素子201aを抽出してから24時間後)、図10に示すようにテスト素子201b〜201eの1つ(ここではテスト素子201b)をサンプリングして当該テスト素子201bの特性評価を行う。この際、図10に示すように破線部Bで破断する形で、並列接続されたテスト素子201b〜201eのうちテスト素子201bのみを破壊して抽出し、その絶縁層266について、アルカリ金属成分等の不純物元素の濃度を2次イオン質量分析により測定する。
【0044】
その後、残りのテスト素子201c〜201eについても、さらにそれぞれ24時間経過毎に201c、201d、201eを順次抽出して、同様に絶縁層266について、アルカリ金属成分等の不純物元素の濃度を2次イオン質量分析により測定する。
このようにして各テスト素子201a〜201eの絶縁層266におけるアルカリ金属成分等の濃度をそれぞれ測定することで、当該絶縁層266における不純物濃度の経時変化を評価することができる。そして、このTEGを用いた特性評価により、薄膜トランジスタ60のMIS型素子95を構成するゲート絶縁膜66について、不純物濃度の経時変化を評価するものとしている。
【0045】
以上のような本実施形態の評価方法により、以下のような作用効果が奏される。
まず、各テスト素子201a〜201eを並列に接続して電圧印加するものとしているため、各テスト素子201a〜201eに対する印加電圧のばらつきが生じ難いものとなり、印加電圧が同一となる条件下において各テスト素子201a〜201eの特性評価を行うことが可能とされている。
したがって、上述のように所定時間の経過後にテスト素子201aをサンプリングして当該テスト素子201aの評価を行い、さらに所定時間の経過後にテスト素子201b、201c・・・をサンプリングして当該テスト素子201b、201c・・・を評価する評価工程を順次行うことで、各テスト素子201a〜201eの印加電圧のばらつきを抑えた条件下、評価対象である薄膜トランジスタ60のMIS型素子95の経時変化(ここではゲート絶縁膜66の不純物濃度の経時変化)を正確に把握することが可能とされている。
【0046】
また、テスト素子201a〜201eの各層(金属層265、絶縁層266、半導体層267)を、評価対象であるMIS型素子95の各層(ゲート電極65、ゲート絶縁膜66、半導体膜67)と同一材料、同一工程で形成しているため、テスト素子201a〜201eの膜特性が初期状態において薄膜トランジスタ60のMIS型素子95の各層と同一となり、該薄膜トランジスタ60のMIS型素子95の特性を正確に把握することが可能とされている。また、この場合、複数のテスト素子201a〜201e同士においても各層の特性が同一となるため、経時変化の評価を行う場合にテスト素子間のバラツキがなく、正確な評価を行うことが可能とされる。
【0047】
また、本実施形態では、マザー基板410の各ガラス基板41にMIS型素子95を所定パターンで形成する一方、マザー基板410の中心部の一箇所に複数のテスト素子201a〜201eを集約して形成している。このように、各ガラス基板41にテスト素子201a〜201eを別々で異なる場所に形成するのではなく、一箇所に集約して形成することで、テスト素子201a〜201eの位置依存性を排除でき、すなわち位置の違いによる各テスト素子201a〜201eの特性のバラツキが排除されている。また、一箇所に集約して形成することで、温度環境を一元化することができ、すなわち位置の違いによる各テスト素子201a〜201eの温度環境のバラツキが排除され、ひいては経時変化を評価するための加速試験を正確に行うことが可能とされている。そして、このようなテスト素子201a〜201eを含むTEG200に基づく経時変化の評価により、薄膜トランジスタ60のMIS型素子95における絶縁層(ゲート絶縁膜66)の不純物濃度の経時変化を正確に把握することが可能となる。
【0048】
特に、本実施形態のTEG200を用いた評価方法は、素子の破壊を伴う2次イオン質量分析による経時変化の観察を可能にしている。具体的には、複数のテスト素子201a〜201eを局所的に集約して、且つ回路として並列に接続してTEG200を構成しているため、所望のエージング時間でテスト素子201a〜201eのいずれかを切り出すことにより、得エージング時間を除く条件が同一であるテスト素子を作成することが可能とされている。そして、そのサンプリングしたテスト素子を2次イオン質量分析により順次分析することで、エージングによる経時変化を評価できるのである。
【0049】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではなく、以下のような形態も本発明に含まれる。
例えば、本実施形態では、本発明の評価方法による評価対象のMIS型素子95を備える素子として薄膜トランジスタ60を例示したが、その他の半導体素子についても同様の評価を行うことが可能である。
また、本実施形態では、マザー基板410の中心部にテスト素子201a〜201eを集約する形でTEG200を形成したが、例えば図11に示すように、マザー基板410の四隅の一箇所にテスト素子201a〜201eを集約してTEG200を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態の液晶表示装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】図1の液晶表示装置の概略構成を示す断面図。
【図3】図1の液晶表示装置の要部構成(液晶パネルの一部分)について示す断面図。
【図4】図1の液晶表示装置の画素構成について示す平面図。
【図5】図4のA−A’線断面図。
【図6】マザー基板の構成を模式的に示す平面図。
【図7】TEGの構成を示す説明図。
【図8】薄膜トランジスタの構成と共にTEGの構成を示す断面図。
【図9】TEGを用いた評価方法の手順を示す説明図。
【図10】図9に続く評価方法の手順を示す説明図。
【図11】マザー基板の一変形例を模式的に示す平面図。
【符号の説明】
【0051】
41…ガラス基板(個別基板)、60…薄膜トランジスタ、65…ゲート電極(金属層)、66…ゲート絶縁膜(絶縁層)、67…半導体膜(半導体層)、95…MIS型素子、265…金属層、266…絶縁層、267…半導体層、200…TEG、201a〜201e…テスト素子、410…マザー基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるMIS型素子の評価方法であって、
前記MIS型素子の層構造と同層にて、金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるテスト素子を複数形成し、前記金属層と前記半導体層とを電極として複数の前記テスト素子をそれぞれ並列に接続して、各テスト素子に電圧印加を行い、
所定時間の経過後に前記テスト素子の1つをサンプリングして当該テスト素子を評価する一方、さらに所定時間の経過後に前記テスト素子の別の1つをサンプリングして当該テスト素子を評価する評価工程を順次行うことを特徴とするMIS型素子の評価方法。
【請求項2】
前記テスト素子の金属層と前記MIS型素子の金属層、前記テスト素子の絶縁層と前記MIS型素子の絶縁層、前記テスト素子の半導体層と前記MIS型素子の半導体層は、それぞれ同一材料、同一工程で形成することを特徴とする請求項1に記載のMIS型素子の評価方法。
【請求項3】
前記テスト素子は、前記MIS型素子と同一の基板上に形成するものであり、
前記基板が、アルカリガラスからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のMIS型素子の評価方法。
【請求項4】
サンプリングした前記テスト素子の評価は、当該テスト素子の絶縁層に含まれるアルカリ金属成分に関する情報を得るものであることを特徴とする請求項3に記載のMIS型素子の評価方法。
【請求項5】
サンプリングした前記テスト素子の評価は、2次イオン質量分析により行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のMIS型素子の評価方法。
【請求項6】
前記MIS型素子は、個別基板上に所定のパターンに配置されるものであり、
前記個別基板を複数含むマザー基板を用意し、前記マザー基板の各個別基板に前記MIS型素子を形成する一方、前記マザー基板の一箇所に複数の前記テスト素子を集約して形成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のMIS型素子の評価方法。
【請求項7】
前記MIS型素子は、薄膜トランジスタを構成することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のMIS型素子の評価方法。
【請求項8】
金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるMIS型素子を評価するための評価素子であって、
前記MIS型素子の層構造と同層にて、金属層と半導体層との間に絶縁層が形成されてなるテスト素子を複数具備し、前記金属層と前記半導体層とを電極として複数の前記テスト素子がそれぞれ並列に接続されて、各テスト素子に電圧印加可能に構成されていることを特徴とするMIS型素子の評価用素子。
【請求項9】
前記テスト素子の金属層と前記MIS型素子の金属層、前記テスト素子の絶縁層と前記MIS型素子の絶縁層、前記テスト素子の半導体層と前記MIS型素子の半導体層は、それぞれ同一材料、同一工程で形成されてなることを特徴とする請求項8に記載のMIS型素子の評価用素子。
【請求項10】
前記テスト素子は、前記MIS型素子と同一の基板上に形成されてなり、
前記基板が、アルカリガラスからなることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のMIS型素子の評価用素子。
【請求項11】
前記MIS型素子は、個別基板上に所定のパターンに配置されてなり、
前記テスト素子は、前記MIS型素子が配置された前記個別基板を複数含むマザー基板の一箇所に複数集約して形成されてなることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のMIS型素子の評価用素子。
【請求項12】
前記MIS型素子は、薄膜トランジスタを構成することを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか1項に記載のMIS型素子の評価用素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−3813(P2010−3813A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160502(P2008−160502)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】