説明

エンジンの始動装置

【課題】 2気筒接続可能な特殊なエンジンの改良に関し、エンジンを自動停止させて燃費向上を図り、自動停止後に確実に再始動させる。
【解決手段】 各気筒における燃焼状態を制御する燃焼状態制御手段と、エンジンを自動停止、再始動させる停止再始動制御手段とを備える。燃焼状態制御手段は、2気筒接続状態で運転する特殊運転モードにおいて先行気筒で空燃比がリーン空燃比で燃焼を行わせ、この既燃ガスを導入させて新たに供給された燃料とともに後続気筒で燃焼を行わせる。停止再始動制御手段は、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒での燃焼後、この膨張行程気筒およびこの気筒と先後対をなす気筒と異なる気筒で正転作動のための燃焼を行わせ、かつ、エンジンの正転始動時から停止時吸気行程気筒のピストンが圧縮上死点を通過するまでの間における燃料噴射を各気筒で略理論空燃比ないしはそれよりも小さいリッチ空燃比となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの始動装置に関し、先後一対の気筒を直列的に接続した2気筒接続状態に切換可能なエンジンにおいて、このエンジンのアイドル運転状態等において予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させるとともに、この状態で再始動条件が成立したときにエンジンを自動的に再始動させるように構成されたエンジンの始動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、火花点火式エンジン等において、各気筒内の混合気の空燃比を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせることにより燃費改善を図る技術が知られており、本願出願人も、触媒に要する経済的負担を軽減させ、またエミッション性を向上させつつ燃費を改善すべく、吸気、圧縮、膨張、排気の各行程からなるサイクルを行う多気筒エンジンにおいて、低負荷低回転域では、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間において排気行程側の気筒である先行気筒から排出される既燃ガスをそのまま吸気行程側の気筒である後続気筒に導入し、この後続気筒から排出されるガスを排気通路に導くようにするとともに、この2気筒接続状態にあるときに、上記先行気筒において理論空燃比よりも所定量大きいリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせ、後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料を供給して理論空燃比とした状態で燃焼を行わせるように燃焼状態等を制御(特殊運転モードという)する一方、高負荷高回転域では、通常通り、各気筒毎を理論空燃比で燃焼を行わせるように燃焼状態等を制御(通常運転モードという)する技術を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
一方、近年、燃費低減およびCO2排出量の抑制等を図るため、アイドル運転時等にエンジンを自動的に一旦停止させ、その後に運転者により車両の発進操作が行われる等の再始動条件が成立した時点で、エンジンを自動的に再始動させるようにしたエンジンの自動停止制御(いわゆるアイドルストップ制御)の技術が開発されている。このアイドルストップ制御時における再始動は、車両の発進操作等に応じてエンジンを即座に始動させる迅速性が要求されるが、従来から一般的に行われているような、スタータモータによりエンジンの出力軸を駆動するクランキングを経てエンジンを再始動させる方法によると、スタータモータが頻繁に作動状態となって電力が消費されるとともに、スタータモータの寿命が短くなる等の問題がある。
【0004】
そこで、本願出願人は、エンジン停止時の圧縮行程気筒に対して初回の燃焼を実行してピストンを押し下げ、膨張行程にある気筒のピストン上昇によって筒内圧力を高めるとともに、当該膨張行程気筒に対して燃料を噴射させて点火、燃焼を行わせ、エンジンを始動させる4サイクル多気筒エンジンにおいて、エンジン停止時の圧縮行程気筒における初回燃焼後の筒内に燃焼用空気を存在させ、かつ、初回燃焼後に当該気筒内に燃料を供給して、当該気筒が初回燃焼後にピストン上昇に転じて圧縮上死点を越える際に当該気筒での2回目の燃焼を行わせるように制御して、所定の気筒における燃焼エネルギーだけでエンジンを再始動させる技術を提案している(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−76617号公報
【特許文献2】特開2004−124754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記本願出願人によって先に提案された上記特許文献1および特許文献2の技術は、ともに燃費改善を目的とするものであり、これらを併用することによりさらなる燃費改善効果が期待できる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のエンジンに上記特許文献2記載の装置をそのまま適用したのでは、エンジンの再始動を適正に実行できない虞があり、この点に改良の余地があった。すなわち、特許文献1に記載のエンジンは、その低負荷側の運転領域において2気筒接続状態となされ、上記先行気筒では空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン空燃比で燃焼を行わせるものとなされているので、再始動にあたって十分な出力を得ることができず、エンジンの停止時に吸気行程にある気筒のピストンが再始動後、最初に迎える圧縮上死点を超えることができない虞があり、適正に再始動されない場合が考えられる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑み、エミッション性を向上させるとともに燃費効果を改善する2気筒接続可能な特殊なエンジンの改良にかかるものであり、所定条件下でエンジンを自動停止させてさらなる燃費向上を図り、かつ、この自動停止後に確実に再始動させることができるエンジンの始動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるエンジンの始動装置は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われるようになっている多気筒の火花点火式エンジンであって、エンジンの少なくとも低負荷側運転領域でエンジンの吸・排気及び燃焼状態についての制御モードを特殊運転モードとし、この特殊運転モードでは、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間において排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスがそのまま吸気行程にある後続気筒に気筒間ガス通路を介して導入され、この後続気筒から排出されるガスが排気通路に導かれるような2気筒接続状態となされたエンジンの始動装置において、各気筒における燃料噴射量や噴射時期を含む燃焼状態を制御する燃焼状態制御手段と、予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときに、上記燃焼状態制御手段を制御してエンジンに対する燃料供給を停止することにより2気筒接続状態のままエンジンを自動的に停止させるとともに、この自動停止状態にあるエンジンの再始動条件が成立したときに、上記燃焼状態制御手段を制御して少なくともエンジンの停止時に膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火、燃焼を行わせることによりエンジンを自動的に再始動させる停止再始動制御手段とを備え、上記燃焼状態制御手段は、上記特殊運転モードにおいて先行気筒で空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン空燃比で燃焼を行わせ、この先行気筒から後続気筒にリーン空燃比の既燃ガスを導入させて新たに供給された燃料とともに後続気筒で燃焼を行わせるように制御し、上記停止再始動制御手段は、エンジンの正転始動時からエンジンの停止時に吸気行程にある気筒のピストンが圧縮上死点を通過するまでの間における燃料噴射を上記リーン空燃比に換えて各気筒で略理論空燃比ないしは理論空燃比よりも小さいリッチ空燃比となるように上記燃焼状態制御手段を制御することを特徴とするものである。
【0009】
この発明によれば、所定の自動停止・再始動条件が成立した場合にエンジンを自動停止・再始動させる停止再始動制御手段を備えるので、例えばアイドルストップ時等に無駄な燃料消費を抑制することができ、2気筒接続状態に切換可能な上記エンジンの特徴を生かしつつ、さらなる燃費改善効果を得ることができる。しかも、エンジンの低負荷側運転領域においては、特殊運転モードの制御が実行され、上記燃焼状態制御手段は、特殊運転モードの制御が実行される場合には、原則として(少なくともエンジンの再始動後所定期間を除いて)、上記先行気筒でリーン空燃比で燃焼を行わせ、この先行気筒から既燃ガスを導入させて新たに供給された燃料とともに後続気筒で燃焼を行わせるように制御するので、エンジン全体の温度を比較的高く維持することができ、先行気筒ではリーン燃焼による熱効率向上が図られるとともに先行・後続両気筒ではポンピングロス低減による燃費改善効果が得られる。
【0010】
そして、エンジンの温度が上記したように比較的高温で維持できるので、2気筒接続状態のまま停止したエンジンを気筒内での燃焼エネルギーだけで再始動させ易くなり、この2気筒接続状態、すなわち特殊運転モードの吸・排気状態のまま再始動させることができる。エンジンの再始動が実行されている最中、すなわち再始動条件が成立した後所定の期間が経過するまでは、停止再始動制御手段によって、エンジンの正転始動時から、エンジンの停止時に吸気行程にある気筒のピストンが圧縮上死点を通過するまでの燃料噴射を上記リーン空燃比に換えて各気筒で略理論空燃比ないしは理論空燃比よりも小さいリッチ空燃比となるように上記燃焼状態制御手段が制御されるので、比較的不安定となり易いエンジンの正転始動時から、エンジンの停止時に吸気行程にある気筒のピストンが圧縮上死点を通過するまでの不安定期間において十分に再始動のためのトルクを引き出すことができ、これにより確実に停止時吸気行程気筒のピストンが最初に迎える圧縮上死点を通過してエンジンの再始動性を向上させることができる。
【0011】
この発明において、上記停止再始動制御手段は、上記エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒の当該圧縮行程でエンジンの正転作動のための燃料を噴射して、この圧縮上死点近傍で点火、燃焼させるように制御するのが好ましい(請求項2)。
【0012】
このように構成すれば、上記停止時膨張行程気筒の燃焼に連続して当該停止時圧縮行程気筒での燃焼が実行されるので、エンジンの正転作動のための燃焼エネルギーを十分に得ることができ、これにより確実にエンジンの再始動性を向上させることができる。
【0013】
この場合、上記停止再始動制御手段は、上記エンジンの再始動時における初回燃焼を上記停止時膨張行程気筒で実行するように制御してもよいし(請求項3)、或いは、上記停止時膨張行程気筒の燃焼に先立ってエンジンの停止時に圧縮行程にある気筒に燃料を供給して点火、燃焼を行わせることによりエンジンを逆転方向に所定量作動させて、上記膨張行程にある気筒のピストン上昇によって筒内圧力を高めてから当該気筒での燃焼を実行させるとともに、このエンジンの逆転作動のための燃焼を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比で実行させるように制御してもよい(請求項4)。
【0014】
特に、上記エンジンを逆転作動させてから正転作動させる場合にはこの逆転作動を当該圧縮行程気筒の範囲内で行う必要があり、従ってエンジンの逆転作動のための出力はさほど要さない。従って、このエンジンの逆転作動を実行させて膨張行程気筒の筒内圧力を高めつつ、この逆転作動に費やされなかった残存新気を正転作動のための燃焼に使用することにより、エンジンを効率的、かつ確実に再始動させることができる。
【0015】
また、上記請求項1に記載のエンジンの始動装置において、上記停止再始動制御手段は、上記停止時膨張行程気筒の燃焼に先立ってエンジンの停止時に圧縮行程にある気筒に燃料を供給して点火、燃焼を行わせることによりエンジンを逆転方向に所定量作動させて、上記膨張行程気筒のピストン上昇によって筒内圧力を高めてから当該気筒での燃焼を実行させるとともに、このエンジンの逆転作動のための燃焼を略理論空燃比ないしは理論空燃比よりも小さいリッチ空燃比で実行させ、上記膨張行程にある気筒での燃焼後、上記複数の先行気筒および複数の後続気筒のうち、上記停止時膨張行程気筒およびこの気筒と先後対をなす気筒と異なる気筒で正転作動のための燃焼を行わせるように制御するのが好ましい(請求項5)。
【0016】
このように構成すれば、例えば停止時膨張行程気筒のピストンが再始動に適した適正範囲の中でも下死点側に位置する場合等には、上記停止時圧縮行程気筒の新気も少ないことから、理論空燃比ないしはこれよりもリッチ空燃比で燃焼させることによって十分に逆転作動させて膨張行程気筒内圧力を高めることができ、これによりエンジンの再始動性を確実に向上させることができる。
【0017】
この場合、上記停止再始動制御手段は、いったんエンジンを逆転作動させてから正転作動させた後、このエンジンの逆転作動のための燃焼が実行された停止時圧縮行程気筒の当該圧縮行程で所定量の燃料を噴射するように制御するのが好ましい(請求項6)。
【0018】
このように構成すれば、上記停止時圧縮行程気筒の当該圧縮行程で噴射された燃料の気化潜熱によりこの停止時圧縮行程気筒の筒内温度を下げ、或いはその温度上昇を抑制することにより、当該気筒の圧縮圧力を低減、或いはその圧力上昇を抑制させて当該気筒のピストンが圧縮上死点を越え易くし、エンジンの再始動性をより向上させることができるとともに、筒内温度上昇を抑制して後続気筒での過早自着火を効果的に抑制することができる。
【0019】
また、この発明において、上記停止再始動制御手段は、エンジンの正転再始動時から、エンジンの停止時に吸気行程にある気筒のピストンが圧縮上死点を通過するまでの間におて、後続気筒に対する燃料噴射時期を圧縮行程の後半に設定するのが好ましい(請求項7)。
【0020】
このように構成すれば、先行気筒で温められた新気に対して噴射された燃料の活性化を抑制して、後続気筒における過早自着火を効果的に抑制することができる。
【0021】
さらに、この発明において、エンジンのクランク軸に対する抵抗を調整することによりエンジンの外部負荷を調整する負荷調整手段をさらに備え、上記停止再始動制御手段は、上記後続気筒がエンジンの自動停止時に上記膨張行程気筒となるように上記負荷調整手段を制御するのが好ましい(請求項8)。
【0022】
このように構成すれば、比較的高温の後続気筒でエンジンの正転作動のための燃料を噴射して当該燃料の気化を促進させることができる。しかも、先行気筒においてリッチ空燃比で正転作動のための燃焼を実行した場合、この既燃ガスが導入された後続気筒では燃焼を実行することができないが、後続気筒で正転作動のための燃焼を実行した場合には、この燃焼による既燃ガスは直ちに排気通路に導出されることから、再始動初期において各気筒で連続して燃焼させることができ、再始動のための出力を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、例えばアイドルストップ時等に無駄な燃料消費を抑制することができ、エミッション性を向上させつつ、さらなる燃費改善効果を得ることができるという利点がある。しかも、エンジンの低負荷側運転領域においては、2気筒接続状態の特殊運転モードによる制御が行われるので、ガス流通経路を各気筒独立状態として各気筒においてそれぞれ独立して燃焼を行わせる場合に比べてエンジン全体の温度を比較的高く維持することができ、また先行気筒ではリーン燃焼による熱効率向上が図られるとともに先行・後続両気筒ではポンピングロス低減による燃費改善効果が得られる。加えて、エンジン温度が比較的高温に維持することができるため、2気筒接続状態のまま停止したエンジンを気筒内での燃焼エネルギーだけで再始動させ易くなり、再始動にあたって比較的不安定となり易いエンジンの正転始動時から、エンジンの停止時に吸気行程にある気筒のピストンが圧縮上死点を通過するまでの不安定期間において十分に再始動のためのトルクを引き出すことができ、これにより確実に停止時吸気行程気筒のピストンが最初に迎える圧縮上死点を通過してエンジンの再始動性を向上させることができるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1および図2は、本発明に係るエンジンの始動装置を有する4サイクル火花点火式エンジンの概略構成を示している。このエンジンには、シリンダヘッド10およびシリンダブロック11を有するエンジン本体1と、エンジン制御用のECU2とを備えている。上記エンジン本体1には、四つの気筒12A〜12Dが設けられるとともに、各気筒12A〜12Dの内部には、クランク軸3に連結されたピストン13が嵌挿されることにより、その上方に燃焼室14が形成されている。
【0025】
上記各気筒12A〜12Dの燃焼室14の頂部には、プラグ先端が燃焼室14内に臨むように点火プラグ15が設置されている。この点火プラグ15には、ECU2による点火時期等のコントロールが可能な点火装置27が接続されている。また、上記燃焼室14の側方には、燃焼室14内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁16が設けられている。この燃料噴射弁16は、図外のニードル弁およびソレノイドを内蔵し、上記ECU2から入力されたパルス信号のパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を上記点火プラグ15の電極付近に向けて噴射するように構成されている。なお、図外の燃料ポンプ及び燃料供給通路等を備えるとともに、圧縮行程での燃焼室内の圧力よりも高い燃料圧力を与え得る燃料供給系統を介して、上記燃料噴射弁16に燃料が供給されるように構成されている。
【0026】
また、上記各気筒12A〜12Dの燃焼室14の上部には、燃焼室14に向かって開口する吸気ポート17,17a,17bおよび排気ポート18,18a,18bが設けられるとともに、これらのポート17,18,…に、吸気弁19,19a,19bおよび排気弁20,20a,20bがそれぞれ装備されている。上記吸気弁19,19a,19bおよび排気弁20,20a,20bは、後述する動弁機構29によって駆動されることにより、各気筒12A〜12Dが所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように各気筒12A〜12Dの吸・排気弁19,20の開閉タイミングが設定されている。
【0027】
上記吸気ポート17および排気ポート18には、吸気通路21および排気通路22が接続されている。上記吸気ポート17に近い吸気通路21の下流側は、図2に示すように、各気筒12A〜12Dに対応して独立した分岐吸気通路21aとされ、この各分岐吸気通路21aの上流端がそれぞれサージタンク21bに連通している。このサージタンク21bよりも上流側には共通吸気通路21cが設けられるとともに、この共通吸気通路21cには、アクチュエータ24により駆動されるスロットル弁23からなる吸気流量調節手段が配設されている。このスロットル弁23の上流側および下流側には、それぞれ吸気流量を検出するエアフローセンサ25と、吸気圧力(負圧)を検出する吸気圧センサ26とが配設されている。
【0028】
また、各気筒12A〜12Dからの排気が集合する排気通路22の集合部下流には、排気ガス中の酸素濃度を検出することにより空燃比を検出するO2センサ38が設けられている。さらに、このO2センサ38の設置部の下流側における排気通路22には、排気ガス浄化触媒37が配設されている。この排気ガス浄化触媒37は、例えば、排気の空燃比状態が理論空燃比近傍にあるときにHC、COおよびNOxの浄化率が極めて高い、いわゆる三元触媒からなっている。この三元触媒からなる排気ガス浄化触媒37は、一般に知られているように、排気ガスの空燃比が理論空燃比(つまり空気過剰率λ=1)付近にあるときにHC,CO及びNOxに対して高い浄化性能を示す触媒である。
【0029】
そして、吸気、圧縮、膨張及び排気の各行程からなる燃焼サイクルが各気筒12A〜12D毎に所定の位相差をもって行われるように構成され、4気筒エンジンの場合に、気筒列方向の一端側から1番気筒12A、2番気筒12B、3番気筒12C及び4番気筒12Dと呼ぶと、図5に示すように、上記燃焼サイクルが1番気筒12A、3番気筒12C、4番気筒12D、2番気筒12Bの順にクランク角で180°ずつの位相差をもって行われるようになっている。なお、図5において、EXは排気行程、INは吸気行程であり、また、Fは燃料噴射、Sは強制点火を表し、図中の星マークは圧縮自己着火が行われることを表している。
【0030】
排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間には、排気行程と吸気行程が重なるときの排気行程側の気筒(当明細書ではこれを先行気筒と呼ぶ)から吸気行程側の気筒(当明細書ではこれを後続気筒と呼ぶ)へ既燃ガスをそのまま導くことができるように、気筒間ガス通路22aが設けられている。当実施形態の4気筒エンジンでは、図5に示すように1番気筒12Aの排気行程(EX)と2番気筒12Bの吸気行程(IN)とが重なり、また4番気筒12Dの排気行程(EX)と3番気筒12Cの吸気行程(IN)が重なるので、1番気筒12A及び2番気筒12Bと、4番気筒12D及び3番気筒12Cとがそれぞれ一対をなし、1番気筒12A及び4番気筒12Dが先行気筒となり、かつ2番気筒12B及び3番気筒12Cが後続気筒となる。
【0031】
各気筒12A〜12Dの吸・排気ポートと、これに接続される吸気通路21、排気通路22及び気筒間ガス通路22aは、具体的には次のように構成されている。
【0032】
先行気筒である1番気筒12A及び4番気筒12Dには、それぞれ、新気を導入するための吸気ポート17と、既燃ガス(排気ガス)を排気通路22に送り出すための第1排気ポート18aと、既燃ガスを後続気筒に導出するための第2排気ポート18bとが配設されている。また、後続気筒である2番気筒12B及び3番気筒12Cには、それぞれ新気を導入するための第1吸気ポート17aと、先行気筒からの既燃ガスを導入するための第2吸気ポート17bと、既燃ガスを排気通路22に送り出すための排気ポート18とが配設されている。
【0033】
図1及び図2に示す例では、1番,4番気筒(先行気筒)12A,12Dにおける吸気ポート17及び2番,3番気筒(後続気筒)12B,12Cにおける第1吸気ポート17aが、1気筒当り2個ずつ、燃焼室14の左半部側に並列的に設けられる一方、1番,4番気筒12A,12D(先行気筒)における第1排気ポート18a及び第2排気ポート18bならびに2番,3番気筒(後続気筒)12B,12Cにおける第2吸気ポート17b及び排気ポート18が、燃焼室14の右半部側に並列的に設けられている。
【0034】
1番,4番気筒12A,12Dにおける吸気ポート17及び2番,3番気筒12B,12Cにおける第1吸気ポート17aには、吸気通路21における気筒別の分岐吸気通路21aの下流端が接続されている。
【0035】
1番,4番気筒12A,12Dにおける第1排気ポート18a及び2番,3番気筒12B,12Cにおける排気ポート18には、排気通路22における気筒別の分岐排気通路22bの上流端が接続されている。また、1番気筒12Aと2番気筒12Bとの間及び3番気筒12Cと4番気筒12Dとの間には、それぞれ気筒間ガス通路22aが設けられている。そして、先行気筒である1番,4番気筒12A,12Dの第2排気ポート18bに、上記気筒間ガス通路22aの上流端が接続されるとともに、後続気筒である2番,3番気筒12B,12Cの第2吸気ポート17bに、上記気筒間ガス通路22aの下流端が接続されている。
【0036】
上記気筒間ガス通路22aは、互いに隣接する気筒間を接続する比較的短い通路であり、先行気筒12A,12Dから排出されるガスがこの通路22aを通る間における放熱量が比較的小さく抑えられるようになっている。
【0037】
各気筒12A〜12Dの吸・排気ポートを開閉する吸・排気弁とこれらに対する動弁機構は、次のようになっている。
【0038】
1番,4番気筒(先行気筒)12A,12Dにおける吸気ポート17、第1排気ポート18a及び第2排気ポート18bにはそれぞれ吸気弁19、第1排気弁20a及び第2排気弁20bが設けられ、また、2番,3番気筒(後続気筒)12B,12Cにおける第1吸気ポート17a、第2吸気ポート17b及び排気ポート18にはそれぞれ第1吸気弁19a、第2吸気弁19b及び排気弁20が設けられている。そして、各気筒12A〜12Dの吸気行程や排気行程が上述のような所定の位相差をもって行われるように、これら吸・排気弁がそれぞれカムシャフト19a,20a等からなる動弁機構により所定のタイミングで開閉するように駆動される。
【0039】
さらに、これらの吸・排気弁のうちで第1排気弁19a、第2排気弁20b、第1吸気弁19a及び第2吸気弁19bに対しては、各弁を作動状態と停止状態とに切換える弁停止機構29が設けられている。この弁停止機構29は、従来から知られているため詳しい図示は省略するが、例えば、カムシャフト19a,20aのカムと弁軸との間に介装されたタペットに作動油の給排が可能な油圧室が設けられ、この油圧室に作動油が供給されている状態ではカムの作動が弁に伝えられて弁が開閉作動され、油圧室から作動油が排出されたときにはカムの作動が弁に伝えられなくなることで弁が停止されるようになっている。なお、この作動油は、エンジンの駆動中はその駆動によって駆動されるオイルポンプによって供給され、一方、エンジンの停止中は電気モータによって駆動される電動オイルポンプによって供給されるようになっている。
【0040】
上記第1排気弁20aの弁停止機構29と第1吸気弁19aの弁停止機構29とに対する作動油給排用の通路56には、第1コントロール弁57が設けられ、また第2排気弁20bの弁停止機構29と第2吸気弁19bの弁停止機構29とに対する作動油給排用の通路58には、第2コントロール弁59が設けられている(図3参照)。
【0041】
上記エンジン本体1には、タイミングベルト等によりクランク軸3に連結されたオルタネータ(発電機)28が付設されている。このオルタネータ28は、図示を省略したフィールドコイルの電流を制御して出力電圧を調節することにより目標発電電流を調整するレギュレータ回路28aを内蔵し、このレギュレータ回路28aに入力される上記ECU2からの制御信号に基づき、通常時に車両の電気負荷および車載バッテリーの電圧等に対応した目標発電電流の制御が実行されるように構成されている。
【0042】
さらに、上記エンジンには、クランク軸3の回転角を検出する2つのクランク角センサ30,31が設けられ、一方のクランク角センサ30から出力される検出信号に基づいてエンジンの回転速度が検出されるとともに、後述するように上記両クランク角センサ30,31から出力される位相のずれた検出信号に基づいてクランク軸3の回転方向および回転角度が検出されるようになっている。
【0043】
また、カムシャフト19a,20aに設けられた気筒識別用の特定回転位置を検出するカム角センサ32と、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサ33と、運転者のアクセル操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセルセンサ34と、運転者がブレーキ操作を行ったことを検出するブレーキセンサ35からそれぞれ出力される各検出信号がECU2に入力されるようになっている。
【0044】
一方、ECU2は、マイクロコンピュータ等からなるエンジン制御用のものであり、その駆動、制御系統を図1、図3に示している。この図において、ECU2には、上記各センサ25,26,30〜36,38からの検出信号からの信号が入力されている。すなわち、ECU2は、エアフローセンサ25及びO2センサ38からの信号が入力され、さらに運転状態を判別する等のためにエンジン回転数を検出するクランク角センサ30,31及びアクセル開度(アクセルペダル踏込み量)を検出するアクセルセンサ34等からの信号も入力されている。また、上記ECU2から、点火プラグ15に付設された点火装置27と、各燃料噴射弁16と、スロットル弁23のアクチュエータ24と、上記第1,第2のコントロール弁57,59とに対して制御信号が出力されるようになっている。
【0045】
上記ECU2は、運転状態判別手段41、弁停止機構制御手段42、吸気流量制御手段43、燃焼状態制御手段44、発電電流制御手段47及び停止再始動制御手段48を備え、エンジンの燃焼状態や吸・排気特性等についての制御を切り換え制御するとともに、予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときに各気筒12A〜12Dへの燃料噴射を所定のタイミングで停止(燃料カット)して、エンジンを自動的に停止させ、かつ、その後に運転者によるアクセル操作が行われる等により再始動条件が成立したときにエンジンを自動的に再始動させる制御を実行するように構成されている。
【0046】
具体的には、運転状態判別手段41は、図4に示すように、エンジンの運転領域が低負荷低回転側の運転領域A(部分負荷領域)と、高負荷側ないし高回転側の運転領域Bとに分けられた制御用マップを有し、上記クランク角センサ30,31及びアクセルセンサ34等からの信号により調べられるエンジンの運転状態(エンジン回転数及びエンジン負荷)が上記運転領域A,Bのいずれの領域にあるかを判別する。そして、この判別に基づき、低負荷低回転側の運転領域Aでは、排気行程にある先行気筒12A,12Dから排出される既燃ガスを、そのまま吸気行程にある後続気筒12B,12Cに導入して燃焼させる特殊運転モードが選択され、高負荷側ないし高回転側の運転領域Bでは、各気筒12A〜12Dをそれぞれ独立させ燃焼させる通常運転モードが選択されるようになっている。
【0047】
弁停止機構制御手段42は、特殊運転モードでは気筒間ガス通路22aを介して先行気筒12A,12Dの既燃ガスを後続気筒12B,12Cに導入させる2気筒接続状態とし、通常運転モードでは各気筒12A〜12Dにそれぞれ新気を導入させる各気筒独立状態とするように吸・排気流通状態を変更すべく弁停止機構29を制御するもので、具体的には運転状態が運転領域A,Bのいずれにあるかに応じ、上記各コントロール弁57,59を制御することにより、原則として各弁停止機構29を次のように制御する。
【0048】
運転領域A:第1排気弁20a及び第1吸気弁19aを停止状態
第2排気弁20b及び第2吸気弁19bを作動状態
運転領域B:第1排気弁20a及び第1吸気弁19aを作動状態
第2排気弁20b及び第2吸気弁19bを停止状態
上記吸気流量制御手段43は、アクチュエータ24を制御することによりスロットル弁23の開度(スロットル開度)を制御するものであり、運転状態に応じてマップ等から目標吸入空気量を求め、その目標吸入空気量に応じてスロットル開度を制御する。この場合、特殊運転モードとされる運転領域Aでは、後続気筒(2番、3番気筒12B,12C)においては分岐吸気通路21aからの吸気導入が遮断された状態で先行気筒12A,12Dから導入されるガス中の過剰空気と新たに供給される燃料との比が理論空燃比に対応した値とされつつ燃焼が行われるので、先行、後続の2気筒分の要求トルクに応じた燃料の燃焼に必要な量の空気(2気筒分の燃料の量に対して理論空燃比となる量の空気)が先行気筒(1番、4番気筒12A,12D)に供給されるように、スロットル開度が調節される。
【0049】
また、この吸気流量制御手段43は、停止再始動制御手段46からの信号を受けてアクチュエータ24を制御することによりスロットル弁23の開度を制御し、エンジンの自動停止過程においてはこのエンジン停止前における各気筒の掃気性を確保するとともに、エンジン停止時に膨張行程および圧縮行程にある気筒に吸気される空気量を調整するものとなされている。
【0050】
上記燃焼状態制御手段44は、燃料供給制御手段45と点火制御手段46とからなっており、燃料供給制御手段45により、各気筒12A〜12Dに設けられた燃料噴射弁16からの燃料噴射量及び噴射タイミングをエンジンの運転状態に応じて制御するとともに、点火制御手段46により運転状態に応じた点火時期の制御及び点火停止等の制御を行う。そして、特に運転状態が図4中の運転領域Aにある場合と運転領域Bにある場合とで燃焼状態の制御(燃料噴射の制御及び点火の制御)が変更される。
【0051】
すなわち、運転状態が低負荷低回転側の運転領域Aにある場合、特殊運転モードでの制御状態として、先行気筒(1番、4番気筒)12A,12Dに対しては、空燃比を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比とするように燃料噴射量を制御するとともに、圧縮行程で燃料を噴射して混合気の成層化を行わせるように噴射タイミングを設定し、かつ、圧縮上死点付近で強制点火を行わせるように点火タイミングを設定する。一方、後続気筒(2番、3番気筒)12B,12Cに対しては、先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに対して燃料を供給し、実質的に理論空燃比となるように燃料噴射量を制御するとともに、吸気行程で燃料を噴射するように噴射タイミングを設定し、かつ、圧縮自己着火を行わせるべく、強制点火を停止させる。なお、この後続気筒12B,12Cの圧縮自己着火に代えて強制点火により燃焼させることを排斥する趣旨ではない。
【0052】
さらに、上記運転領域Aにおいて、先行気筒及び後続気筒からなる一対の気筒に対する燃料噴射量の和が先行気筒に導入される新気量に対して理論空燃比となる量に調整されるとともに、後続気筒でノッキングが発生するのを防止しつつ、圧縮自己着火が良好に行われるように、先行気筒(1番、4番気筒)2A,2Dに対する燃料噴射量と、後続気筒(2番、3番気筒)2B,2Cに対する燃料噴射量との割合が運転状態に応じて制御される。
【0053】
一方、エンジンの運転状態が高負荷側ないし高回転側の運転領域Bにある場合には、通常運転モードでの制御として、各気筒12A〜12Dの空燃比を理論空燃比もしくはそれ以下とするように燃料噴射量を制御し、例えばこの運転領域Bにおける大部分の領域で理論空燃比とし、全開負荷及びその付近の運転領域で理論空燃比よりリッチとする。そして、この場合に、各気筒12A〜12Dに対して吸気行程で燃料を噴射して混合気を均一化するように噴射タイミングを設定し、かつ、各気筒12A〜12Dとも強制点火を行わせるように制御する。
【0054】
また、この燃料状態制御手段44は、停止再始動制御手段48からの入力を受けて、エンジンの自動停止及びその後の再始動にあたって各気筒12A〜12Dへの燃料供給、点火等を制御するものとなされている。これらの具体的制御については、停止再始動制御手段48とともに後述するが、エンジンの自動停止後に再始動する場合には、エンジンの停止時に吸気行程にある気筒が最初に迎える圧縮上死点を越えるまでの再始動不安定期間は運転領域Aにある場合であっても各気筒における燃焼が理論空燃比ないしは理論空燃比よりも小さいリッチ空燃比となるように設定されているとともに、この再始動不安定期間において、後続気筒12B,12Cに対する燃料噴射時期を圧縮行程の後半に設定している。
【0055】
さらに、燃焼状態制御手段44、特に燃料供給制御手段45は、車両の減速時であってエンジン回転速度が所定回転速度よりも大きいときに、燃料噴射弁16による燃料供給を停止するように(以下、この車両減速時の燃料カットを「減速時FC」と称す)構成されている。
【0056】
発電電流制御手段47は、停止再始動制御手段48からの信号を受けてオルタネータ28の目標発電電流を設定するものであり、特に後述する自動停止条件が成立してからエンジンを停止するまでの間、エンジン回転速度に応じてオルタネータ28による目標発電電流を変更することによりエンジンに対する外部負荷を調整するものとなされている。
【0057】
一方、停止再始動制御手段48は、上記各種制御手段43〜47等に対して制御信号を出力することにより予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときに各気筒12A〜12Dへの燃料噴射を所定のタイミングで停止(燃料カット)して、エンジンを自動的に停止させるとともに、その後に運転者によるアクセル操作が行われる等により再始動条件が成立したときにエンジンを自動的に再始動させる制御を実行するように構成されている。当実施形態の停止再始動制御手段48は、エンジンの吸排気及び燃焼状態についての制御モードを特殊運転モードのまま、すなわち2気筒接続状態のまま、エンジンを自動停止及び再始動させるように構成されている。
【0058】
具体的には、上記自動停止条件には、例えば車速が0km/h、操舵角が所定値以下、バッテリー電圧が基準値以上、かつ、エアコンがOFF状態にある等の所定条件のほか、いったん自動停止が実行された後、車速が所定値(例えば10km/h)以上になった後であるという条件が含まれている。この停止再始動制御手段48による上記自動停止条件の成否判定は、自動停止条件に含まれる全ての条件を一挙に判定するものであってもよいが、当実施形態では各条件を所定時期に分散させて判定するものとなされている。
【0059】
そして、停止再始動制御手段48は、上記自動停止条件の成否判定の結果、自動停止条件が成立していると判定した場合には、停車後の所定時期に燃料供給制御手段45による各気筒12A〜12Dへの燃料の供給、及び点火制御手段46による点火を停止するように構成されている。
【0060】
ところで、この停止再始動制御手段48は、エンジンの再始動時に停止時に膨張行程にある気筒で初回の燃焼を実行してエンジンを正転作動させるものであってもよいが、当実施形態では、エンジン再始動時に、まずエンジン停止時の圧縮行程にある気筒に対して初回の燃焼を実行してピストンを押し下げ、膨張行程にある気筒のピストン上昇によって筒内圧力を高めるようにしてから、当該膨張行程気筒に対して燃料を噴射させて点火、燃焼を行わせ、かつ、上記圧縮行程気筒における初回燃焼後の燃焼室内に燃焼用空気を存在させ、その空気量に応じた燃料を初回燃焼後の適当な時期に供給することにより、当該気筒がピストン上昇に転じて圧縮上死点を越える際に当該気筒で再燃焼を行わせるように制御するように構成されている。つまり、エンジンの自動再始動時に、始動初期で一旦エンジンを逆転作動させ、その後、正転作動に転じるように制御する。
【0061】
上記のようにして原則的に再始動モータ等を使用することなく、特定の気筒に噴射された燃料に点火してエンジンを適正に再始動させるためには、上記膨張行程気筒の混合気を燃焼させることにより得られる燃焼エネルギーを充分に確保して続く気筒が圧縮上死点を超えるようにしなければならない。従って、エンジンの自動停止時にピストン13が膨張行程の途中にある上記膨張行程気筒内に充分な空気量を確保しておく必要がある。
【0062】
すなわち、図6(a),(b)に示すように、エンジンの停止時点で膨張行程および圧縮行程になる気筒では、各ピストン13が互いに逆方向に作動し、膨張行程気筒のピストン13が行程中央よりも下死点側に位置していれば、その気筒の空気量が多くなって充分な燃焼エネルギーが得られる。しかし、上記膨張行程気筒のピストン13が極端に下死点側に位置した状態となると、圧縮行程気筒内の空気量が少なくなり過ぎてクランク軸3を逆転させるための燃焼エネルギーが充分に得られなくなる。
【0063】
これに対して上記膨張行程気筒の行程中央、つまり圧縮上死点後のクランク角が90°CAとなる位置よりもやや下死点側の所定範囲、例えば圧縮上死点後のクランク角が100°〜120°CAとなる適正範囲R内にピストン13を停止させることができれば、圧縮行程気筒内に所定量の空気が確保されて上記初回の燃焼によりクランク軸3を少しだけ逆転させ得る程度の燃焼エネルギーが得られることになる。しかも、膨張行程気筒内に多くの空気量を確保することにより、クランク軸3を正転させるための燃焼エネルギーを充分に発生させてエンジンを確実に再始動させることが可能となる。
【0064】
そこで、ECU2に設けられた停止再始動制御手段48により、吸気流量制御手段43、燃焼状態制御手段44及び発電電流制御手段47を制御してピストン13を上記適正範囲R内に停止させるようにしている。
【0065】
また、停止再始動制御手段48は、特殊運転モードのままエンジンの自動停止を実行する場合に、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒が上記先行気筒12A,12Dと後続気筒12B,12Cとのいずれの気筒であるかを予測して、この予測に基づき、吸気流量制御手段43によって先行気筒12A,12Dに吸気される空気量を調整して上記適正範囲R内に停止させるようにしている。
【0066】
具体的には、上記ECU2に設けられた自動停止制御手段により、図7に示すように、エンジンの自動停止条件が成立した時点t0で、先行気筒12A,12Dと後続気筒12B,12Cとを気筒間ガス通路22aにより連通させる2気筒接続状態を維持しつつ、エンジンの目標回転速度を、エンジンを自動停止させないときの通常のアイドル回転速度よりも高い値に設定して安定させる制御を実行する。例えば、通常のアイドル回転速度が650rpm(自動変速機がドライブレンジ)に設定されたエンジンでは、上記目標回転速度(自動停止条件成立時のアイドル回転速度)を、800rpm程度(自動変速機はニュートラルレンジ)に設定することにより、エンジンの回転速度Neを通常モードにおけるアイドル回転速度よりも少し高い回転速度で安定させる制御を実行し、エンジンの回転速度Neが目標回転速度で安定した時点t1で燃料噴射を停止させてエンジンの回転速度Neを低下させるようになっている。
【0067】
また、エンジンを自動停止させる制御動作の初期段階である上記燃料噴射の停止時点t1で、後続気筒12B,12C内の空燃比が、通常モードでのアイドル時における吸気流量(エンジン運転を継続させるために必要な最小限の吸気流量)よりも吸気流量が多くなるように上記スロットル弁23の開度Kを設定して吸気絞り量を小さくすることにより、エンジンの気筒12A〜12Dに吸入される吸気流量を、充分に確保するようになっている。つまり、上記時点t1の直前における燃焼状態が、後続気筒12B,12C内の空燃比をλ(空気過剰率)=1ないしその付近に設定された均一燃焼にある場合には、上記燃料噴射の停止時点t1でスロットル弁23の開度Kを、例えば全開の30%程度の開度に増大させてブースト圧(吸気圧力)Btを上昇させることにより、エンジンの気筒12A〜12Dに吸入される吸気流量を、エンジン運転の継続に必要な最小限の吸気流量よりも所定量だけ多い状態に設定して燃焼ガスの掃気性を確保するとともに、上記燃料噴射の停止時点t1で、オルタネータ28の目標発電電流Geを上記自動停止条件の成立時点t0よりも低下させることにより、クランク軸3の回転抵抗を低減するように構成されている。
【0068】
上記の時点t1で燃焼噴射を停止することにより、エンジンの回転速度Neが、予め設定された基準速度(例えば790rpm)以下に低下したことが確認された時点t2で、上記スロットル弁23を閉止する。このスロットル弁23が閉止された時点t2からブースト圧Btが低下し始めてエンジンの各気筒に導入される吸気流量が減少し、上記スロットル弁23の開放時点t1から閉止時点t2までの間に共通吸気通路21cに導入された空気が、サージタンク21bおよび分岐吸気通路21aを経由することにより、図8に示すように、吸気行程を迎える先行気筒である第4気筒12D、および第1気筒12Aの順に所定の輸送遅れをもって導入される。このとき、後続気筒である第2気筒12B、第3気筒12Cには先行気筒12A,12Dの既燃ガスが導入されるようになっている。
【0069】
そして、当実施形態ではこの時点t2で、クランク角センサ30,31によるエンジン回転速度や水温センサ33によるエンジン温度等に基づいて、エンジンの停止時に先行・後続気筒いずれの気筒が膨張行程にあるかが少なくとも予測され、吸気流量制御手段43に対して予測気筒に関する信号を出力し、この予測、及び上記吸気遅れを考慮しつつ、吸気流量制御手段43によってスロットル弁23の開度や期間等の開閉制御を適正時期に設定することにより、先行気筒12A,12Dへの吸気量、ひいてはこの先行気筒12A,12Dからのガスが導入される後続気筒12B,12Cへの吸気量を調整し、エンジンの停止時に圧縮行程となる気筒よりも、膨張行程となる気筒に対して、より多くの空気が導入されるようにしている。
【0070】
図8の例では、時点t1でスロットル弁23の開度を30%に設定して、時点t2でその開度を0%に設定し、この時点t2で停止時膨張行程気筒が先行気筒12Aであることを予測し、この予測に基づいてエンジン停止状態からカウントして3つの圧縮上死点を通過する時点t4でスロットル弁23の開度を20%に増大することにより、停止時膨張行程にある先行気筒12Aの吸気量が多くなるように制御している。このとき、停止時に圧縮行程にある後続気筒12Cの空気量は図8に斜線で示す4番気筒12Dの吸気量によって決定されるが、このときのスロットル弁23の開度は0%となっていることから、停止時圧縮行程気筒の吸気量は比較的少ないものとなる。このようにして、エンジンの停止時に圧縮行程となる気筒よりも、膨張行程となる気筒に対して、より多くの空気が導入される。
【0071】
また、エンジンの回転速度Neが基準速度N2以下に低下したことが確認された時点t2で、オルタネータ28の目標発電電流Geを一時的に増大させ、かつ後述するようにエンジンの上死点回転速度neが所定範囲内となった時点t3で、オルタネータ28の目標発電電流Geをエンジン回転速度Neの低下状態に対応した値に低下させることにより、予め行った実験結果等に基づいて設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neを低下させる制御を実行するように構成されている。
【0072】
上記のようにエンジンを自動停止させる際に、燃料噴射の停止時点t1から、クランク軸3やフライホイール等が有する運動エネルギーが摩擦抵抗による機械的な損失や、各気筒12A〜12Dのポンプ仕事によって消費されることにより、エンジンのクランク軸3は惰性で数回転し、4気筒4サイクルのエンジンでは10回前後の圧縮上死点を迎えた後に停止する。具体的には、図7および図8に示すように、上記各気筒12A〜12Dが圧縮上死点を迎える度にエンジンの回転速度Neが一時的に落ち込んだ後に、圧縮上死点を超えた時点で再び上昇するというアップダウンを繰り返しながらエンジン回転速度Neが次第に低下する。
【0073】
そして、エンジンの停止前に最後の圧縮上死点を超えた時点t6の後に圧縮上死点を迎える気筒12Cでは、慣性力によるピストン13の上昇に伴って空気圧が高まり、その圧縮反力によりピストン13が押し返されてクランク軸3が逆転する。このクランク軸3の逆転によって膨張行程気筒12Aの空気圧が上昇するため、その圧縮反力に応じて膨張行程気筒12Aのピストン13が下死点側に押し返されてクランク軸3が再び正転し始め、このクランク軸3の逆転と正転とが数回繰り返されてピストン13が往復作動した後に停止することになる。このピストン13の停止位置は、上記圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aにおける圧縮反力のバランスにより略決定されるとともに、エンジンの摩擦抵抗等の影響を受け、上記最後の圧縮上死点を超えた時点t6のエンジンの回転慣性、つまりエンジン回転速度Neの高低によっても変化する。
【0074】
したがって、エンジンが自動停止する際に膨張行程にある膨張行程気筒12Aのピストン13を再始動に適した上記適正範囲R内に停止させるためには、まず上記膨張行程気筒12Aおよび圧縮行程程気筒12Cの圧縮反力がそれぞれ充分に大きくなり、かつ膨張行程気筒12Aの圧縮反力が圧縮行程気筒12Cの圧縮反力よりも所定値以上大きくなるように、両気筒12A,12Cに対する吸気流量を調節する必要がある。このために、当実施形態では、燃料噴射の停止時点t1でスロットル弁23の開度Kを大きな値に設定することにより、上記膨張行程気筒12Aおよび圧縮行程気筒12Cの両方に所定量の空気を吸入させた後、所定時間が経過した時点t2で上記スロットル弁23を閉止してその開度Kを低減することにより上記吸入空気量を調節するようにし、また停止時膨張行程気筒が先行気筒12A,12Dであるか、後続気筒12B,12Cであるかによってエンジン停止前2TDC(圧縮上死点)時点t4におけるスロットル弁23の開度を調節するようにしている。
【0075】
ただし、実際のエンジンでは、スロットル弁23、吸気ポート17および分岐吸気通路21a等の形状に個体差があることにより、それらを流通する空気の挙動が変化するため、エンジンの自動停止期間中に各気筒12A〜12Dに吸入される吸気流量にバラツキが生じる。また、エンジンの個体差およびエンジン温度の高低によってもエンジンの摩擦抵抗に差が生じて、上記のようにスロットル弁23の開閉制御を行っても、エンジンの停止時点で膨張行程にある気筒12Aおよび圧縮行程にある気筒12Cのピストン停止位置を適正範囲R内に納めることができない場合がある。
【0076】
この点につき、本発明では、エンジンの自動停止期間中においてエンジンの回転速度Neが低下する過程で、図9に一例を示すように、各気筒12A〜12Dが圧縮上死点を通過する際のエンジン回転速度(上死点回転速度)neと、エンジンの停止時点で膨張行程にある気筒12Aのピストン停止位置との間に明確な相関関係があることに着目した。そして、図7および図8に示すように、燃料噴射を停止した時点t1の後にエンジンの回転速度Neが低下する過程で、各気筒12A〜12Dのピストン13が圧縮上死点を通過する際のエンジン回転速度、つまり上死点回転速度neをそれぞれ検出し、この上死点回転速度neの検出値に応じてオルタネータ28の目標発電電流Geを制御することにより、エンジン回転速度Neの落ち込み度合を調節するようにしている。
【0077】
すなわち、図9は、上記のようにエンジンの回転速度Neが所定速度となった時点t1で燃料噴射を停止し、その後の所定期間に亘りスロットル弁23を開弁状態に維持するようにして、惰性により回転するエンジンの各気筒12A〜12Dに設けられたピストン13が圧縮上死点を通過する際の上死点回転速度neを計測するとともに、エンジンの停止時点における膨張行程気筒12Aのピストン位置を調べ、このピストン位置を縦軸に取るとともに、上記エンジンの上死点回転速度neを横軸に取って、両者の関係をグラフ化したものである。この作業を繰り返してエンジンの停止動作期間中における上記上死点回転速度neと、膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置との相関関係を示す分布図が得られることになる。
【0078】
上記の分布図から、エンジンの停止動作期間中における上死点回転速度neと膨張行程気筒12Aにおけるピストン停止位置との間に所定の相関関係が見られ、図9に示す例では、エンジンが停止状態となる前の6番目〜2番目における上死点回転速度neがハッチングで示す範囲内にあれば、上記ピストン13の停止位置がエンジンの再始動に適した範囲R(圧縮上死点後の100°〜120°CA)に入ることが分かる。
【0079】
したがって、図7および図8に示すように、燃料噴射を停止した時点t1から所定時間が経過するまで、つまりエンジン回転速度Neが基準速度(例えば760rpm程度)以下に低下する時点t2までは、上記回転慣性および摩擦抵抗の影響を抑制しつつ、各気筒12A〜12Dの掃気性を充分に確保するために、スロットル弁23の開度Kを比較的大きな値(例えば全開の30%の開度)に設定することが好ましい。また、上記ピストン13を適正位置に停止させる制御が可能な速度にエンジンの回転速度Neを維持するために、上記燃料噴射の停止時点t1でオルタネータ28の目標発電電流Geが例えば0に設定されるようになっている。
【0080】
そして、エンジン回転速度Neが基準速度N2以下に低下した時点t2で、上記スロットル弁23の開度Kを低減するとともに、オルタネータ28の目標発電電流Geを予め設定された初期値に上昇させる制御を実行した後、エンジンの上死点回転速度neが所定範囲内になった時点t3で、上記オルタネータ28の目標発電電流Geをエンジン回転速度Neの低下状態に対応した値に低下させてクランク軸3の回転抵抗を調節し、エンジンの外部負荷をエンジン回転速度Neの低下度合に対応させて変化させることにより、予め行った実験等に基づいて設定された基準ラインに沿ってエンジン回転速度Neを低下させるようにしている。
【0081】
具体的には、上記基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neが低下している過程でエンジンの上死点回転速度neを検出し、この上死点回転速度neが、例えば480rpm〜540rpm内にあると判定されることにより、エンジンが停止状態となる前の4番目の圧縮上死点を通過した状態にあることが確認された時点t3の上死点回転速度neに基づき、エンジンの上死点回転速度neが高い程、目標発電電流Geが大きな値に設定された図10に示すマップから、上記上死点回転速度neの検出値に対応した目標発電電流Geを読み出し、この値をオルタネータ28の目標発電電流Geとして設定するように構成されている。これにより、エンジン回転速度Neが所定値以下に低下する前、つまりオルタネータ28の発電機能を充分に発揮し得る回転速度(例えば420rpm)以下にエンジンの回転速度Neが低下する前に、上記オルタネータ28が作動状態となってエンジン回転速度Neの落ち込み度合が調節する制御が実行されることになる。
【0082】
また、エンジン回転速度Neが基準速度N2以下に低下した時点t2でオルタネータ28の目標発電電流Geを上昇させる際の初期値は、上記マップから読み出される目標発電電流Geの最大値よりも大きな値に設定され、上記時点t2において初期値に上昇させた目標発電電流Geを上記時点t3で低下させることにより、上記上死点回転速度neの検出値に基づいてオルタネータ28の目標発電電流Geを制御するように構成されている。例えば、上記マップから読み出される目標発電電流Geが0〜50Aに設定されている場合には、その最大値である50Aよりも高い値、例えば60Aに上記初期値が設定されている。そして、上記時点t2で目標発電電流Geが60Aに設定された後、上記時点t3でマップから読み出された値に基づいて上記目標発電電流Geの低下量が設定され、この値に基づいてオルタネータ28の目標発電電流Geを低下させる制御が実行されるようになっている。
【0083】
上記のようにしてオルタネータ28の発電電流を制御することにより、最後の圧縮上死点を通過した時点t6で、クランク軸3、フライホイール、ピストン13およびコネクティングロッド等が有する運動エネルギーや圧縮行程気筒12Cで圧縮された空気が有する位置エネルギー等が、その後に作用する摩擦抵抗損失等と見合うものとなり、エンジンの停止状態で膨張行程となる気筒12Aのピストン13をエンジンの再始動に適した範囲R内に停止させることが可能になる。
【0084】
上記ECU2の停止再始動制御手段48によりエンジンを自動停止させる際の制御動作を、図11〜図13に示すフローチャートに基づいて説明する。この制御動作がスタートすると、エンジンの自動停止制御を実行することが可能な運転状態にあるか否かを判定する自動停止許可フラグFがONであるか否かを判定する(ステップS1)。この自動停止許可フラグFは、車速が0となった停車のち車速が所定値(例えば10km/h)以上、操舵角が所定値以下、バッテリー電圧が基準値以上、かつエアコンがOFF状態にある等の条件が満たされている場合に、エンジンの自動停止が可能な状態にあると判断してON状態となるように設定されている。
【0085】
上記ステップS1でYESと判定された場合には、アクセルセンサ34がOFF状態であり、かつブレーキセンサ35がON状態であるか否かが判定され(ステップS2)、YESと判定されて車両が減速状態にあることが確認された場合には、エンジン回転速度Neが、予め1100rpm程度に設定された減速時燃料カット用の判断基準値よりも大きいか否かを判定し(ステップS3)、NOと判定された場合には、下記ステップS7に移行する。
【0086】
上記ステップS3でYESと判定されてエンジン回転速度Neが上記減速時燃料カット用の判断基準値よりも大きいことが確認された場合には、減速時の燃料カット(FC)を実行する(ステップS4)。次いで、エンジン回転速度Neが、予め900rpm程度に設定された燃料復帰用の判断基準値以下に低下したか否かを判定し(ステップS5)、YESと判定された時点で、上記減速時の燃料カット(FC)を終了して通常の燃料噴射状態に復帰する(ステップS6)。
【0087】
次いで、エンジンの目標回転速度を、通常のアイドル回転速度(650rpm程度)よりも所定量だけ高い値、例えば800rpm程度に設定して、この速度を維持する(ステップS7)。
【0088】
そして、アクセルセンサ34がON状態となり、あるいはブレーキセンサ35がOFF状態となったか否か、つまり減速状態が解除されたか否かを判定し(ステップS8)、YESと判定された場合には、上記ステップS1にリターンして上記制御動作を繰り返す。また、上記ステップS8でNOと判定されて減速状態が解除されていないことが確認された場合には、車速が0か否か、つまり停車状態となって自動停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS9)。
【0089】
上記ステップS9でYESと判定されて停車状態となったことが確認された場合には、、エンジンの目標回転速度N1を、上記810rpmよりさらに高い値、例えば860rpm程度に設定するとともに(ステップS10)、自動変速機のシフトレンジをニュートラルに設定して無負荷状態とする(ステップS11)。
【0090】
ここで、上記ステップS9で車速が0であると判定されてエンジンの自動停止条件が全て成立したことが確認された時点t0で、上記ステップS10においてエンジンの目標回転速度N1が所定値に設定されるとともに、上記ステップS11において自動変速機のシフトレンジがドライブ状態(Dレンジ)からニュートラル状態(Nレンジ)にシフトされることにより、自動変速機の負荷が軽減されるため、図7に示されるように、エンジン回転速度Neが、自動停止条件の成立時点t0からやや上昇することになる。
【0091】
次いで、上記ステップS11でYESと判定されてエンジンの自動停止条件が成立したことが確認された時点t0の後に、予め設定された所定時間(例えば1秒程度)が経過したか否かを判定する(ステップS12)。このステップS12でNOと判定された場合には、予め設定された所定時間が経過するまで待機して、YESと判定された時点で、燃料噴射の停止条件(FC条件)が成立したか否か、具体的にはエンジン回転速度Neが目標回転速度N1となるとともに、ブースト圧Btが上記目標圧P1となった状態で安定したか否かを判定する(ステップS13)。なお、上記判定動作中にアクセルセンサ34がON状態となり、あるいはブレーキセンサ35がOFF状態となった場合には、燃料噴射を停止させることなく、リターンする。これにより、車速が0となった直後に、走行状態に移行するような場合に、不適切なエンジンの自動停止が行われるのを防止することができる。
【0092】
そして、上記ステップS13でYESと判定され、エンジン回転速度Neおよびブースト圧Btが安定した状態となったことが確認された時点(図7および図8の時点t1)で、燃料噴射を停止させた後(ステップS14)、オルタネータ28の目標発電電流Geを0に設定して発電を停止させるとともに(ステップS15)、スロットル弁23を開弁して、その開度Kを例えば30%程度に設定する(ステップS16)。
【0093】
その後、上記ステップS14で燃料噴射が停止された時点t1から所定時間が経過したか否か、つまり燃料噴射の停止後に2回の圧縮上死点を迎えてその前に噴射された燃料の燃焼が終了したか否かを判定し(ステップS17)、YESと判定された時点で上記点火装置27による点火を停止させる(ステップS18)。次いで、エンジンの回転速度Neが予め790rpm程度に設定された基準速度N2以下となったか否かを判定することにより(ステップS19)、図7及び図8に示す燃料噴射の停止時点t1の後に、エンジンの回転速度Neが低下し始めたか否かを判定し、YESと判定された時点t2でスロットル弁23を閉止状態としてその開度Kを0%とする(ステップS20)。この結果、上記ステップS17でスロットル弁23が開放されて大気圧に近付くように上昇したブースト圧Btが、上記スロットル弁23の閉止操作に応じて所定の時間差をもって低下し始めることになる。
【0094】
そして、オルタネータ28の目標発電電流Geを予め60A程度に設定された初期値に設定してオルタネータ28を作動させる発電制御を開始する(ステップS21)。なお、上記ステップS19でエンジンの回転速度Neが基準速度N2以下となったと判定された時点t2でスロットル弁23を閉弁状態とするように構成された上記実施形態に代え、エンジンの上死点回転速度neが、例えば790rpm程度に設定された基準速度N2以下になったと判定された時点で、スロットル弁23を閉弁状態とするとともに、オルタネータ28の発電制御を開始するように構成してもよい。
【0095】
また、このとき、すなわち、この基準速度N2以下になったと判定された時点t2で、エンジン回転速度やエンジン温度等に基づいてエンジンの停止時に膨張行程にある気筒が予測され、当該予測された停止時膨張行程気筒が先行気筒12A,12Dであるか、後続気筒12B,12Cであるか判定されて、この判定結果が記憶される(ステップS22)。なお、当実施形態では、この予測は、予め実験等により採取されたデータに基づいて行われている。
【0096】
次いで、エンジンの上死点回転速度neが第1所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS23)。この第1所定範囲は、予め設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neが低下している過程で、例えばエンジンが停止状態となる前の4番目の圧縮上死点を通過する時点t3における上死点回転速度neに基づいて設定された値であり、具体的には480rpm〜540rpmの範囲内に設定されている。
【0097】
上記ステップS23でYESと判定され、エンジンの上死点回転速度neが上記所定範囲(480rpm〜540rpm)内にあることが確認された場合には、その時点t3の上死点回転速度neに対応したオルタネータ28の目標発電電流Geを設定する(ステップS24)。すなわち、図10に示すように、エンジンの上死点回転速度neが高い程、目標発電電流Geが大きな値に設定されたマップから上死点回転速度neに対応した目標発電電流Geを読み出し、この値に基づいてオルタネータ28の目標発電電流Geを上記初期値(60A)から、上記マップから読み出された値に低下させる制御を実行する。
【0098】
次いで、エンジンの上死点回転速度neが、エンジン停止前の3番目の圧縮上死点を通過する時点t4における上死点回転速度neに基づいて設定された第2所定範囲内、例えば380rpm〜480rpmの範囲内にあるか否かを判定する(ステップS25)。このステップS25でYESと判定され、エンジン停止前の3番目の圧縮上死点を通過したことが確認された時点t4で、ステップS22における予測に基づいてエンジンの停止時に膨張行程にある気筒が先行気筒12A,12Dであるか否かを判定し(ステップS26)、先行気筒12A,12Dである場合にのみ吸気流量制御手段43によりスロットル弁23を開弁して、その開度Kを例えば20%程度に設定する(ステップS27)。
【0099】
その後、エンジンの上死点回転速度neが、エンジン停止前の2番目の圧縮上死点を通過する時点t5における上死点回転速度neに基づいて設定された第3所定範囲内、例えば260rpm〜400rpmの範囲内にあるか否かを判定し(ステップS28)、このステップS28でYESと判定され、エンジンの上死点回転速度neが高い程、燃料噴射量が大きな値に設定された図外のマップから、エンジンの停止時に圧縮行程となる気筒12Cに対する燃料噴射量を設定し、この気筒12Cの圧縮行程後半で燃料噴射を行う(ステップS29)。この気筒12Cに噴射された燃料が気化することによって気筒内温度が低下し、その内部圧力の上昇が抑制されることになる。
【0100】
そして、エンジンの上死点回転速度neが所定値N3以下であるか否かを判定する(ステップS30)。この所定値N3は、予め設定された基準ラインに沿ってエンジンの回転速度Neが低下している過程で最後の圧縮上死点を超える際の上死点回転速度neに対応した値であり、例えば260rpm程度に設定されている。
【0101】
次いで、エンジンが停止状態になったか否かを判定し(ステップS31)、YESと判定された時点で、自動変速機のシフトレンジをニュートラル状態からドライブ状態(Dレンジ)に復帰させるとともに(ステップS32)、自動停止許可フラグFをOFFとした後に(ステップS33)、制御動作を終了する。
【0102】
なお、当実施形態の図7及び図8ではエンジンの停止時に膨張行程にある気筒が先行気筒12Aであることを前提にして説明しているが、この停止時膨張行程気筒が後続気筒12B,12Cの場合であってもよい。例えば、図14に示すように停止時膨張行程気筒が第2気筒2B(後続気筒)である場合にも、時点t1でスロットル弁23の開度を30%に設定して、時点t2でその開度を0%に設定し、この時点t2で停止時膨張行程気筒が後続気筒12Bであることを予測する。この停止時膨張行程気筒12Bに充填される空気量は、時点t2直後の第1気筒12Aの吸気量で決定され、この先行気筒12Aの吸気量はスロットル弁23の開度が30%に設定され、ブースト圧が上昇した際の吸気量である。一方、停止時に圧縮行程にある第1気筒12Aは、時点t5直後の吸気行程でそのエンジン停止の際の空気量が決定される。このとき、スロットル弁23は閉止されてブースト圧が低下しており、従ってこの先行気筒12Aに導入される吸気量は比較的少ないものとなる。このようにして、エンジンの停止時に圧縮行程となる気筒よりも、膨張行程となる気筒に対して、より多くの空気が導入されることとなる。
【0103】
上記のようにして自動停止状態となったエンジンを再始動させる際の制御動作を図15〜図17に示すフローチャートと、図18および図19に示すタイムチャートとに基づいて説明する。まず、所定のエンジン再始動条件が成立したか否かを判定し(ステップS101)、YESと判定された場合、例えば、停車状態から発進のためのアクセル操作等が行われた場合、バッテリー電圧が低下した場合、あるいはエアコンが作動した場合等には、エンジン水温、自動停止からの経過時間、吸気温度等に基づいて筒内温度を推定する(ステップS102)。
【0104】
そして、エンジンの自動停止時に検出されたピストン13の停止位置に基づき、圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12A内の空気量を算出する(ステップS103)。つまり、上記ピストン13の停止位置から圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aの燃焼室容積が求められる。なお、エンジンの自動停止時には、燃料噴射の停止後にエンジンが数回転してから停止するので膨張行程気筒12Aも新気で満たされた状態にあり、かつ、エンジン停止中に圧縮行程気筒12Cおよび膨張行程気筒12Aの内部が略大気圧となっているので、上記燃焼室容積から新気量が求められることになる。
【0105】
次に、このステップS103で算出された圧縮行程気筒12Cの空気量に対してλ≦1なる空燃比(理論空燃比ないしはそれよりリッチ空燃比)となるように1回目の燃料噴射を行う(ステップS104)。この空燃比は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された圧縮行程気筒12Cの1回目用第2空燃比マップM1から求められ、λ≦1(理論空燃比ないしはそれよりリッチ空燃比)に設定されることにより、逆転のための燃焼エネルギーが充分に得られるようになっている。
【0106】
次に、圧縮行程気筒12Cへの1回目燃料噴射から気化時間を考慮して設定した所定時間の経過後に、当該気筒12Cに対して点火を行う(ステップS105)。そして、点火後の一定時間内にクランク角センサ30,31のエッジ、つまりクランク角信号の立ち上がり、または立ち下がりが検出されたか否かにより、ピストン13が動いたか否かを判定し(ステップS106)、NOと判定されて失火が生じてピストン13が動かなかったことが確認された場合には、圧縮行程気筒12Cに対して再点火を行う(ステップS107)。
【0107】
上記ステップS106でYESと判定されてピストン13が動いたことが確認されると、上記ステップS103で算出した膨張行程気筒12Aの空気量に対して所定の空燃比(λ=1近傍)となるように燃料噴射量を算出する(ステップS108)。この際の空燃比は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された膨張行程気筒12A用の空燃比マップM2から求められる。
【0108】
そして、上記膨張行程気筒12Aへの燃料噴射後に、所定のディレイ時間が経過した時点でこの膨張行程気筒12Aで点火する(ステップS109)。このディレイ時間は、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された膨張行程気筒12A用の点火マップM3から求められる。上記点火による膨張行程気筒12Aでの燃焼により、エンジンは逆転から正転に転ずる。従って、圧縮行程気筒12Cのピストン13が上死点側に移動し、気筒内のガス(上記ステップS105の点火によって燃焼した既燃ガス)が圧縮され始める。
【0109】
次に、燃料の気化時間を考慮に入れ、圧縮行程気筒12Cに2回目の燃料を噴射する(ステップS110)。この際の燃料噴射量は、1回目の噴射量とを合計した噴射量に基づく全体の空燃比が可燃空燃比(下限は7〜8)よりもさらにリッチ(例えば6程度)になるように、ピストン13の停止位置に応じて予め設定された圧縮行程気筒12Cの2回目用空燃比マップM4から求められる。この圧縮行程気筒12Cにおける2回目の噴射燃料による気化潜熱に応じて、圧縮行程気筒12Cの圧縮上死点付近における圧縮圧力が低減されることにより、当該圧縮上死点を容易に越えることが可能となる。
【0110】
なお、上記圧縮行程気筒12Cへの2回目の燃料噴射は、専ら筒内の圧縮圧力を低減させるためになされるものであって、これに対する点火、燃焼は行われず、可燃空燃比よりもリッチなために自着火も起こらず、この不燃燃料は、その後に排気通路22の排気ガス浄化触媒37に吸蔵されている酸素と反応して、無害化される。
【0111】
上記のように圧縮行程気筒12Cにおいて2回目に噴射された燃料は燃焼しないので、膨張行程気筒12Aでの最初の燃焼に続く次の燃焼は、吸気行程気筒12D、つまり停止時に吸気行程にあった第4気筒での燃焼となる。この吸気行程気筒12Dのピストン13が圧縮上死点を越えるためのエネルギーとしては、膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼のエネルギーの一部が充てられ、上記膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼のエネルギーが、圧縮行程気筒12Cが圧縮上死点を乗り超えるためと吸気行程気筒12Dが圧縮上死点を越えるためとの両方に供される。
【0112】
従って、円滑な始動のためには吸気行程気筒12Dが圧縮上死点を越えるためのエネルギーが小さいことが望ましく、このために上記吸気行程気筒12D内の空気密度を推定し、その推定値から吸気行程気筒12Dの空気量を算定した後(ステップS111)、上記ステップS102で推定した筒内温度に基づいて、自着火を防止するための空燃比補正値を算出する(ステップS112)。すなわち自着火が起こると、その燃焼によって圧縮上死点に至る前にピストン13を下死点側に押し戻す力(逆トルク)が発生し、その分だけ圧縮上死点を越えるためのエネルギーが多く消費されるので望ましくない。そこで上記逆トルクを抑制するために空燃比をリーン側に補正し、圧縮自己着火が起こらないようにしている。
【0113】
次に、上記ステップS111で算定した吸気行程気筒12Dの空気量と、上記ステップS112で算出した空燃比補正値を考慮した空燃比とに基づき、吸気行程気筒12Dへの燃料噴射量を算出する(ステップS113)。そして、上記吸気行程気筒12Dに対する燃料噴射を行うが、この燃料噴射は、その気化潜熱によって圧縮圧力が低減されるように、つまり圧縮上死点を越えるための必要エネルギーが低減されるように、圧縮行程の後期まで遅延され(ステップS114)、その遅延量は、エンジンの自動停止期間、吸気温度、エンジン水温等に基づいて算出される。
【0114】
また、上記逆トルクの発生を抑制するため、点火時期を上死点以降に遅延して点火する(ステップS115)。以上の制御が実行されることにより、吸気行程気筒12Dにおいて、圧縮上死点まではその圧縮圧力が小さくなって上死点を越え易くなり、上死点を過ぎた時点で燃焼エネルギーによる正転方向のトルクが発生することになる。
【0115】
そして、このステップS115が実行された後、オルタネータ28による発電を開始する(ステップS116)。ここで、このオルタネータ28による目標発電量は特に限定されるものではないが、当実施形態では通常制御における目標発電量より高めに設定されている。
【0116】
続いて、ステップS117で、エンジンの停止時に膨張行程ある気筒が先行気筒12A,12D及び後続気筒12B,12Cのいずれの気筒であるかを判定し、この停止時膨張行程気筒が先行気筒12A,12Dであると判定した場合には、停止時膨張行程気筒12Aでの既燃ガスが導入される停止時排気行程気筒での燃焼が間引かれ(ステップS118)、続く停止時排気行程気筒に対して空燃比がリーン空燃比となるように燃料を噴射して(ステップS119)、停止時膨張行程気筒を通常のタイミングで点火して(ステップS120)から通常制御に移行するように制御する。
【0117】
すなわち、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒が先行気筒12A,12Dである場合には、上記ステップS109による燃焼によって新気が消費され、この燃焼によって発生する既燃ガスが気筒間ガス通路22aを通して後続気筒である停止時排気行程気筒12Bに導入されることになる。この既燃ガス中には、新気が残存していないため図18(a)に示す(5)では燃焼を実行することができず、従ってこの停止時排気行程気筒12Bが再始動後最初に迎える圧縮行程では燃料の噴射および点火を停止するものとなされている。なお、このように停止時吸気行程気筒が再始動後最初に迎える圧縮上死点を通過した直後の燃焼を間引くことにより再始動時の過度の吹き上がりを防止することができるという利点もある。そして、続く先行気筒である停止時膨張行程気筒12Aでは特殊運転モードによる制御を実行するため、空燃比を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比とするように燃料を噴射して、点火、燃焼を実行するようになっている。
【0118】
一方、上記ステップS117で、停止時膨張行程気筒が先行気筒でない(ステップS117でNO)、言い換えるとエンジンの停止時に膨張行程にある気筒が後続気筒12B,12Cである場合には、停止時膨張行程気筒が先行気筒である場合と異なり、エンジンの正転始動のための膨張行程気筒における初回燃焼による既燃ガスが排気通路22に排出される一方、先行気筒である停止時排気行程気筒12A,12Dには新気が導入されることになるから、当該停止時排気行程気筒に対して空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン空燃比となるように燃料を噴射して(ステップS121)、点火、燃焼を実行するようになっている(図18(b)の(5)参照)。そして、圧縮行程気筒が先行気筒となり、上記ステップS105で逆転作動のための燃焼により新気が消費された後の既燃ガスが続く停止時膨張行程気筒に導入されることとなるので、図18(b)の(6)に示すように、当該停止時膨張行程気筒の正転作動のための2回目の燃焼を間引いて(燃料の噴射、点火を停止して)、通常制御に移行するようになっている。
【0119】
上記の再始動制御が実行されることにより、図18および図19に示すように、まず圧縮行程気筒12C(第3気筒)において1回目の燃料噴射J3が行われ、その点火によって燃焼(図18中の(1))が行われる。この燃焼(1)による燃焼圧(図19中のa部分)で、圧縮行程気筒12Cのピストン13が下死点側に押し下げられてエンジンが逆転方向に駆動される。ここで、圧縮行程気筒12Cの1回目の燃料噴射J3が、理論空燃比ないしはそれよりリッチ空燃比(λ≦1)となるように噴射されるので、エンジン逆転のための適度な燃焼エネルギー、すなわち膨張行程気筒12A内の空気を充分圧縮しつつ、その圧縮上死点を超えて逆転し過ぎることのない程度の燃焼エネルギーを得ることができる。なお、上記図18には停止時膨張行程気筒が先行気筒である場合のタイムチャートを示す図(a)と、停止時膨張行程気筒が後続気筒である場合のタイムチャートを示す図(b)とがあるが、図18という場合には図(a)、図(b)のいずれの場合も指すものとする。
【0120】
上記エンジンの逆回転開始に伴って膨張行程気筒12A(第1気筒)のピストン13が上死点方向に動き始める。また、その直後に膨張行程気筒12Aで燃料噴射J1が行われ、気化し始める。この燃料噴射J1も理論空燃比ないしはそれよりリッチ空燃比(λ≦1)となるように設定されている(図19中のb部分)。
【0121】
上記膨張行程気筒12Aのピストン13が上死点に充分に近付いた時点で当該気筒12Aに対する点火が行われて、気化が促進された噴射燃料(J1)が燃焼し(図18中の(2))、その燃焼圧(図19中のc部分)によりエンジンが正転方向に駆動される。
【0122】
また、圧縮行程気筒12Cに対して適当なタイミングで可燃空燃比よりもリッチな燃料が噴射(J4)されることにより(図18中の(3))、この圧縮行程気筒12Cでは燃焼させないものの、燃料噴射による気化潜熱によって上記圧縮行程気筒12Cの圧縮圧力が低減され(図19中のd部分)、これに応じて当該圧縮上死点(始動開始から最初の圧縮上死点)を超えるために消費される膨張行程気筒12Aの最初の燃焼エネルギーが低減されることになる。
【0123】
さらに、次の燃焼気筒である吸気行程気筒12Dにおける燃料噴射(J5)の時期を、燃料の気化潜熱によって気筒内の温度、および圧縮圧力を低下させる適正なタイミング(図18中の(4)に示すように、例えば圧縮行程の中期以降)に設定しているため、上記吸気行程気筒12Dの圧縮行程で圧縮上死点前に自着火することが防止される。また、上記吸気行程気筒12Dの点火時期が圧縮上死点以降に設定されていることも相俟って、圧縮上死点前での燃焼が防止される(図19中のe部分)。つまり燃料噴射(J5)による圧縮圧力の低減と圧縮上死点前の燃焼を行わないことにより、膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼のエネルギーが上記圧縮上死点(エンジン始動開始時点から2番目の圧縮上死点)を超えるために消費されるのを抑制することができる。
【0124】
しかも、この吸気行程気筒12Dにおける燃料噴射(J5)を理論空燃比ないしそれよりもリッチ空燃比(λ≦1)となるように噴射されるので、エンジンの再始動のための燃焼(図18中(1)、(2)、(4))を略連続的に、かつ、出力を確保した状態で実行できるので、エンジンを確実に再始動させることができる。
【0125】
このようにして膨張行程気筒12Aにおける初回燃焼(図18中の(2))のエネルギーにより、再始動開始後の最初の圧縮上死点(図17中の(3))と、2番目の圧縮上死点(図17中の(4))とを超えることが可能となり、円滑で確実な始動性を確保することができる。そして、その直後(図18中の(5))の燃焼は膨張行程気筒が先行気筒12A,12Dであるか、後続気筒12B,12Cであるかによって燃焼を停止したり、理論空燃比よりも大きいリーン空燃比で実行させたりすることにより、切り換え制御を行い、燃費を抑制しつつ、確実な再始動性を確保するものとなされている(図18(a),(b)参照)。そして、それ以降(図18中の(6)・・・)は、触媒の温度に応じて空燃比をリーン(λ>1)にし、あるいは点火時期を遅延させることにより、エンジン回転速度の吹上がりを防止しつつ、通常運転に移行する。
【0126】
このように当実施形態の装置では、エンジンの自動停止にあたって2気筒接続状態のまま停止させ、その後の再始動にあたってエンジンの停止時に吸気行程にある気筒のピストンが最初に圧縮上死点を迎えるまでの間に噴射される燃料を、リーン空燃比ではなく、理論空燃比ないしはリッチ空燃比で噴射するものとなされているので、エンジンの再始動に必要な出力を確実に得ることができ、これにより気筒における流通経路を切り換えることなく、エンジンを適正かつ確実に再始動させることができる。
【0127】
なお、エンジンの通常作動時における作用を、図20及び図21等を参照しつつ説明する。低負荷低回転側の運転領域Aでは、上記弁停止機構制御手段42及び吸気流量制御手段43等からなる運転モード制御手段により、特殊運転モードの制御が実行され、原則として上記のように第1排気弁20a及び第1吸気弁19aが停止状態、第2排気弁20b及び第2吸気弁19bが作動状態とされることにより、実質的な新気及びガスの流通経路は図20に示すようになり、先行気筒(1番,4番気筒)12A,12Dから排出される既燃ガスがそのまま気筒間ガス通路22aを介して後続気筒(2番,3番気筒)12B,12Cに導入される(図20中の矢印b)とともに、この後続気筒12B,12Cから排出されるガスのみが排気通路22に導かれる(図20中の矢印c)ような2気筒接続状態とされる。
【0128】
この状態において、先行気筒12A,12Dにそれぞれ吸気行程で吸気通路21から新気が導入され(図20中の矢印a)、先行気筒12A,12Dでは空燃比が理論空燃比よりも大きくて、理論空燃比の略2倍ないしそれより小さい値となるように燃料噴射量が制御されつつ圧縮行程で燃料が噴射され、かつ、所定点火時期に点火が行われて、リーン空燃比での成層燃焼が行われる。
【0129】
また、先行気筒12A,12Dの吸気行程と後続気筒12B,12Cの排気行程が重なる期間に、先行気筒12A,12Dから導出された既燃ガスがガス通路22aを通って後続気筒12B,12Cに導入される(図5中の白抜き矢印及び図20中の矢印b)。そして、後続気筒12B,12Cでは、先行気筒12A,12Dから導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料が供給されて、理論空燃比となるように燃料噴射量が制御されつつ、吸気行程で燃料が噴射された後、圧縮行程の上死点付近で燃焼室内の圧力、温度の上昇により圧縮自己着火が行われる。
【0130】
この場合、先行気筒12A,12Dから排出された高温の既燃ガスが短い気筒間ガス通路22aを通って後続気筒12B,12Cに直ちに導入されるため、後続気筒12B,12Cでは吸気行程で燃焼室内の温度が高くなり、圧縮行程終期の上死点付近では混合気が自己着火し得る程度まで燃焼室14内の温度が上昇する。しかも、上記既燃ガスは後続気筒12B,12Cに導入されるまでの間に充分にミキシングされて均一に分布し、さらに吸気行程で噴射された燃料も圧縮行程終期までの間に燃焼室14全体に均一に分散するため、理想的な同時圧縮自己着火条件を満たすような均一な混合気分布状態が得られる。そして、同時圧縮自己着火により燃焼が急速に行われ、これにより熱効率が大幅に向上される。
【0131】
このように、先行気筒12A,12Dでは、リーンでの成層燃焼により熱効率が高められるとともに、成層燃焼を行わない通常のエンジンと比べて吸気負圧が小さくなることでポンピングロスが低減され、一方、後続気筒12B,12Cでは、空燃比が略理論空燃比とされつつ、均一な混合気分布状態で圧縮自己着火が行われることにより熱効率が高められるとともに、先行気筒12A,12Dから押出された既燃ガスが送り込まれるため先行気筒12A,12Dよりもさらにポンピングロスが低減される。これらの作用により、燃費が大幅に改善される。
【0132】
また、先行気筒12A,12Dでは理論空燃比の略2倍もしくはそれに近いリーン空燃比とされることでNOx発生量が比較的少なく抑えられる。一方、後続気筒12B,12Cでは、先行気筒12A,12Dから既燃ガスが導入されることで多量のEGRが行われているのと同等の状態となるとともに、同時圧縮自己着火による急速燃焼が行われると可及的に酸素と窒素との反応が避けられることから、NOxの発生が充分に抑制される。このような点からもエミッションの向上に有利となる。
【0133】
また、少なくとも後続気筒12B,12Cの圧縮自己着火領域Aで、後続気筒12B,12Cから排出される排気ガス中の酸素濃度が、理論空燃比の燃焼状態に対応した値となるように後続気筒12B,12Cの空燃比を制御するように構成した場合には、先行気筒12A,12Dでリーンな空燃比で燃焼が行われつつ、理論空燃比で燃焼した後続気筒12B,12Cの既燃ガスのみが排気通路22に導出されることになる。したがって、従来のリーンバーンエンジンのようにリーンNOx触媒を設ける必要がなく、三元触媒37だけで充分に排気浄化性能が確保される。そして、リーンNOx触媒を設ける必要がないことから、リーンNOx触媒のNOx吸蔵量増大時におけるNOxの放出、還元のための一時的な空燃比のリッチ化を行う必要がなく、燃費改善の目減りが避けられる。さらに、リーンNOx触媒の硫黄被毒の問題が生じることもない。
【0134】
一方、高負荷側ないし高回転側の運転領域Bでは通常運転モードとされ、前述のように第1排気弁20a及び第1吸気弁19aが作動状態、第2排気弁20b及び第2吸気弁19bが停止状態とされることにより、実質的な新気及びガスの流通経路は図21に示すようになり、各気筒12A〜12Dの吸気ポート17,17a及び排気ポート18a,18が独立し、吸気通路21から各気筒12A〜12Dの吸気ポート18,18aに新気が導入されるとともに各気筒12A〜12Dの排気ポート18,18aから排気通路22に既燃ガスが排出される。そしてこの場合は、理論空燃比もしくはそれよりリッチとなるように吸入空気量及び燃料噴射量が制御されることにより、出力性能が確保される。
【0135】
なお、以上説明したエンジンの始動装置は、本発明に係る始動装置が適用される装置の一実施形態であって、装置の具体的な構成等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、変形例を以下に説明する。
【0136】
(1)上記実施形態では、停止再始動制御手段48は、エンジンの再始動にあたって、エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒に対して理論空燃比ないしはそれよりも小さいリッチ空燃比となるように燃料を供給して点火、燃焼を行わせて逆転作動させてから正転作動させるように制御しているので、エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒の当該圧縮行程でエンジンの正転作動のための燃料を噴射して、この圧縮上死点近傍で点火、燃焼させることができないが、エンジンの逆転作動のために停止時圧縮行程気筒での初回燃焼を省略することにより、或いはこの初回燃焼のために供給する燃料を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比に設定することにより、圧縮行程気筒の当該行程でエンジンの正転作動のための燃料を噴射して、この圧縮上死点近傍で点火、燃焼させるように制御することもできる。このようにすれば、停止時圧縮行程気筒での初回燃焼直後に圧縮上死点を迎える圧縮行程気筒でも燃焼を実行することができ、これによりエンジンの再始動初期で連続して正転作動のための燃焼を行うことができる。
【0137】
特に、逆転作動のための燃焼を省略する場合には、エンジンの正転作動のために圧縮行程気筒に噴射される燃料は、理論空燃比ないしはそれよりもリッチ空燃比となるようにに設定し、これにより出力を確保するとともに、また点火のタイミングを圧縮上死点を過ぎた直後に設定し、マイナストルクの発生を有効に防止するものとなされている。
【0138】
(2)上記実施形態では、動弁機構として弁停止機構を29を用いるものとしているが、この動弁機構は特に限定するものではなく、その他の公知の技術、例えば電磁弁を用いて電気的に開閉させるものや、カムノーズが無いカムを含めた複数のカムと、各カムによって駆動される複数のロッカーアームとを備え、このロッカーアームを油圧によって駆動されるプランジャーを移動させることにより各ロッカーアームを一体化し、これにより吸気弁(排気弁)の開閉駆動、或いは開閉タイミングを変更するように構成してもよい。
【0139】
(3)なお、上記実施形態では、サージタンク21bの上流側に配設されたスロットル弁23からなる吸気流量調節手段により各気筒12A〜12Dへの吸気流量を調節するように構成した例について説明したが、これに限らず、各気筒12A〜12Dに設けられた吸気弁19のリフト量を変更する周知の可変動弁機構を設けることにより、上記各気筒12A〜12Dへの吸気流量を調節するように構成してもよく、あるいは各気筒12A〜12Dに接続された分岐吸気通路21aに個別に弁体が配設された多連型スロットル弁を用いて上記各気筒12A〜12Dへの吸気流量を調節するように構成してもよい。
【0140】
(4)上記実施形態では、エンジンの再始動時に膨張行程気筒12Aで初回燃焼のための燃料噴射を一括噴射(J1)としたが、これを、2回ないしそれ以上の分割噴射とするものであってもよい。
【0141】
(5)上記実施形態では省略しているが、エンジン再始動時において、所定の条件成立時、例えばピストン停止位置が適正停止範囲R内にない場合や、始動後の所定時期までにエンジン回転速度が所定値に達しない等に、スタータモータによるアシストを伴う制御を行うようにしてもよい。この場合でもエンジンの燃焼によるエネルギーによってスタータモータの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明に係る始動装置を備えたエンジンの概略断面図である。
【図2】エンジンの吸気系および排気系の構成を示す説明図である。
【図3】制御系統のブロック図である。
【図4】運転状態に応じた制御を行うための運転領域設定の一例を示す説明図である。
【図5】先行気筒及び後続気筒の燃焼サイクル及び開弁タイミング等を示す説明図である。
【図6】エンジンの停止時に膨張行程および圧縮行程になる気筒のピストン停止位置と空気量との関係を示す説明図である。
【図7】エンジン停止時におけるエンジン回転速度の変化状態を示すタイムチャートである。
【図8】停止時膨張行程気筒が先行気筒である場合におけるエンジン停止時におけるスロットル弁開度および目標発電電流等の変化状態を示すタイムチャートである。
【図9】エンジン停止時のエンジン回転速度とピストン停止位置との相関関係を示す分布図である。
【図10】エンジンの回転速度に応じてオルタネータの目標発電電流を設定するためのマップの一例を示す図表である。
【図11】エンジンの自動停止制御動作の前半部を示すフローチャートである。
【図12】エンジンの自動停止制御動作の中盤部を示すフローチャートである。
【図13】エンジンの自動停止制御動作の後半部を示すフローチャートである。
【図14】停止時膨張行程気筒が後続気筒である場合におけるエンジン停止時におけるスロットル弁開度および目標発電電流等の変化状態を示すタイムチャートである。
【図15】エンジンの再始動時における制御動作の前半部を示すフローチャートである。
【図16】エンジンの再始動時における制御動作の中盤部を示すフローチャートである。
【図17】エンジンの再始動時における制御動作の後半部を示すフローチャートである。
【図18】エンジンの再始動時における燃焼動作等を示すタイムチャートである。図(a)は、停止時膨張行程気筒が先行気筒である場合で、図(b)は、停止時膨張行程気筒が後続気筒である場合について示す。
【図19】エンジンの再始動時におけるエンジン回転速度の変化状態等を示すタイムチャートである。
【図20】低負荷低回転時の実質的な新気及びガスの流通経路を示す説明図である。
【図21】高負荷高回転時の実質的な新気及びガスの流通経路を示す説明図である。
【符号の説明】
【0143】
1 エンジン本体
2 ECU
12A 先行気筒
12B 後続気筒
12C 後続気筒
12D 先行気筒
22a 気筒間ガス通路
23 スロットル弁(吸気流量調整手段)
28 オルタネータ(外部負荷調整手段)
29 弁停止機構
30,31 クランク角センサ
42 弁停止機構制御手段
43 吸気流量制御手段
44 燃料状態制御手段
45 燃料供給制御手段
46 停止再始動制御手段
46 点火制御手段
47 発電電流制御手段
48 停止再始動制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われるようになっている多気筒の火花点火式エンジンであって、エンジンの少なくとも低負荷側運転領域でエンジンの吸・排気及び燃焼状態についての制御モードを特殊運転モードとし、この特殊運転モードでは、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間において排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスがそのまま吸気行程にある後続気筒に気筒間ガス通路を介して導入され、この後続気筒から排出されるガスが排気通路に導かれるような2気筒接続状態となされたエンジンの始動装置において、
各気筒における燃料噴射量や噴射時期を含む燃焼状態を制御する燃焼状態制御手段と、予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立したときに、上記燃焼状態制御手段を制御してエンジンに対する燃料供給を停止することにより2気筒接続状態のままエンジンを自動的に停止させるとともに、この自動停止状態にあるエンジンの再始動条件が成立したときに、上記燃焼状態制御手段を制御して少なくともエンジンの停止時に膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火、燃焼を行わせることによりエンジンを自動的に再始動させる停止再始動制御手段とを備え、
上記燃焼状態制御手段は、上記特殊運転モードにおいて先行気筒で空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン空燃比で燃焼を行わせ、この先行気筒から後続気筒にリーン空燃比の既燃ガスを導入させて新たに供給された燃料とともに後続気筒で燃焼を行わせるように制御し、
上記停止再始動制御手段は、エンジンの正転始動時からエンジンの停止時に吸気行程にある気筒のピストンが圧縮上死点を通過するまでの間における燃料噴射を上記リーン空燃比に換えて各気筒で略理論空燃比ないしは理論空燃比よりも小さいリッチ空燃比となるように上記燃焼状態制御手段を制御することを特徴とするエンジンの始動装置。
【請求項2】
上記停止再始動制御手段は、上記エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒の当該圧縮行程でエンジンの正転作動のための燃料を噴射して、この圧縮上死点近傍で点火、燃焼させるように制御することを特徴とする請求項1記載のエンジンの始動装置。
【請求項3】
上記停止再始動制御手段は、上記エンジンの再始動時における初回燃焼を上記停止時膨張行程気筒で実行するように制御することを特徴とする請求項2記載のエンジンの始動装置。
【請求項4】
上記停止再始動制御手段は、上記停止時膨張行程気筒の燃焼に先立ってエンジンの停止時に圧縮行程にある気筒に燃料を供給して点火、燃焼を行わせることによりエンジンを逆転方向に所定量作動させて、上記膨張行程にある気筒のピストン上昇によって筒内圧力を高めてから当該気筒での燃焼を実行させるとともに、このエンジンの逆転作動のための燃焼を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比で実行させるように制御することを特徴とする請求項2記載のエンジンの始動装置。
【請求項5】
上記停止再始動制御手段は、上記停止時膨張行程気筒の燃焼に先立ってエンジンの停止時に圧縮行程にある気筒に燃料を供給して点火、燃焼を行わせることによりエンジンを逆転方向に所定量作動させて、上記膨張行程気筒のピストン上昇によって筒内圧力を高めてから当該気筒での燃焼を実行させるとともに、このエンジンの逆転作動のための燃焼を略理論空燃比ないしは理論空燃比よりも小さいリッチ空燃比で実行させ、上記膨張行程にある気筒での燃焼後、上記複数の先行気筒および複数の後続気筒のうち、上記停止時膨張行程気筒およびこの気筒と先後対をなす気筒と異なる気筒で正転作動のための燃焼を行わせるように制御することを特徴とする請求項1記載のエンジンの始動装置。
【請求項6】
上記停止再始動制御手段は、いったんエンジンを逆転作動させてから正転作動させた後、このエンジンの逆転作動のための燃焼が実行された停止時圧縮行程気筒の当該圧縮行程で所定量の燃料を噴射するように制御することを特徴とする請求項5記載のエンジンの始動装置。
【請求項7】
上記停止再始動制御手段は、エンジンの正転始動時から、エンジンの停止時に吸気行程にある気筒のピストンが圧縮上死点を通過するまでの間において、後続気筒に対する燃料噴射時期を圧縮行程の後半に設定することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のエンジンの始動装置。
【請求項8】
エンジンのクランク軸に対する抵抗を調整することによりエンジンの外部負荷を調整する負荷調整手段をさらに備え、上記停止再始動制御手段は、上記後続気筒がエンジンの自動停止時に上記膨張行程気筒となるように上記負荷調整手段を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のエンジンの始動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−52694(P2006−52694A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235524(P2004−235524)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】