説明

ドライバIC、電気光学装置及び電子機器

【課題】パネルへの接続のための信号線引き回しが少なく、かつチップサイズの縮小を図ったドライバIC等を提供する。
【解決手段】ドライバIC100の長手方向にて三分割し、中央の第1領域100Aにはデータ線ドライバ130を、第2領域100Bには第1走査線ドライバ142Aを、第3領域100Cには第2走査線ドライバ142Bを、それぞれドライバICの長辺100Dに沿って配置し、他の長辺100Eに沿ってインターフェース領域102を配置する。第1領域には、昇圧回路140AとRAM110とを配置する。第2領域には、第1電源回路140Bを配置する。第3領域には、第2電源回路140Cを配置する。第1領域に配置した第1電源回路からの内部基準電位Vrefを、第2領域を経由して、第3領域に配置した第2電源回路内の内部電源電位生成回路140Fに伝送する。内部基準電位は、ボルテージフォロアを介して電源配線層に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバIC、電気光学装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル等のフラットパネルは、消費電力が小さく小型化できるため、表示装置としての用途が拡大している。各種用途のパネルを駆動するドライバICには、チップサイズの縮小が要求されている。
【0003】
特開2007−241218には、チップサイズを縮小したドライバICの回路レイアウトが開示されている。これによると、ドライバICの第1長辺に沿って設けられた入力側I/F領域と、ドライバICの第2長辺に沿って設けられた出力側I/F領域と、その入力及び出力側I/F領域に挟まれた矩形領域に、複数の走査線ドライバ、複数のデータ線ドライバ、複数のRAMを一列で分割配置して、極細長状のドライバICを実現している。ただし、電源回路は分割配置されてはいない。
【0004】
また、特許文献2は、電圧配線に静電容量を付加することでノイズを除去する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−241218(図5)
【特許文献2】特開2000−113003(段落0001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ドライバICの縦横比を極限まで大きくして、極細長状のドライバICを実現している。チップ面積を縮小する上では各回路ブロックを一列で配置していた。
【0006】
本発明者等は、ドライバIC内の回路ブロックのレイアウトの自由度をより高めることを試みたところ、新たな幾つかの課題に直面した。
【0007】
そこで、本発明のいくつかの態様の目的は、パネルへの接続のための信号線引き回しが少なく、かつ、電源回路とパッドとの接続を容易とするために電源回路を分割配置し、しかもチップサイズの縮小を図ることができるドライバIC、電気光学装置及び電子機器を提供することにある。
【0008】
本発明のいくつかの態様の他の目的は、一方の電源回路から他方の電源回路に基準となる電源電位を比較的長い電源配線層にて伝送しながらも、電源配線層上での電源の揺れが供給元の電源回路に悪影響を与えることがないドライバIC、電気光学装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、パネルに形成された複数のデータ線と複数の走査線とに信号を供給して、前記パネルを駆動するドライバICにおいて、
パッドを備えたインターフェース領域と、
RAMと、
前記RAMからのデータに基づいて前記パネルの前記複数のデータ線にデータ信号を供給するデータ線ドライバと、
前記パネルの前記複数の走査線の一部に走査信号を供給する第1走査線ドライバと、
前記パネルの前記複数の走査線の他の一部に走査信号を供給する第2走査線ドライバと、
外部電源電位に基づいて内部基準電位を生成する内部基準電位生成回路を少なくとも含む第1電源回路と、
前記第1電源回路からの前記内部基準電位が入力され、前記内部基準電位に基づいて内部電源電位を生成する内部電源電位生成回路を少なくとも含む第2電源回路と、
前記外部電源電位、前記内部電源電位または前記第1電源回路からの出力電位に基づいて、複数の昇圧電位を生成する昇圧回路と、
を有し、
前記ドライバICの長手方向にて三分割された各領域を、中央の第1領域と、両端部の第2,第3領域としたとき、前記第1領域には前記データ線ドライバが、前記第2領域には第1走査線ドライバが、前記第3領域には前記第2走査線ドライバが、それぞれ前記ドライバICの長辺に沿って配置され、
前記第1〜第3領域に亘って、かつ、前記ドライバICの他の長辺に沿って前記インターフェース領域が配置され、
前記第1領域には、前記インターフェース領域に隣接して設けられた前記昇圧回路と、前記昇圧回路と前記データ線ドライバとの間に設けられた前記RAMとが配置され、
前記第2領域には、前記インターフェース領域と前記第1走査線ドライバとの間に前記第1電源回路が配置され、
前記第3領域には、前記インターフェース領域と前記第2走査線ドライバとの間に前記第2電源回路が配置され、
前記第1領域に配置された前記第1電源回路内の前記内部基準電位生成回路からの前記内部基準電位を、前記第2領域を経由して、前記第3領域に配置された前記第2電源回路内の前記内部電源電位生成回路に伝送する電源配線層がさらに設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、先ず、データ線ドライバ、第1,第2の走査線ドライバをドライバICの長辺に沿って配列することで、ドライバICで配線を引き回すことなく、各ドライバの出力端子をパネルに接続することが可能となる。
【0011】
次に、本発明の一態様でス、ドライバICの他の長辺に沿って、かつ第1〜第3領域に亘って、各種パッドを含むインターフェース領域が配置されている。そして、昇圧回路及び第1,第2電源回路は、インターフェース領域と隣接して配置されている。これら昇圧回路及び第1,第2電源回路は、インターフェース領域のパッドと接続されるため、インピーダンスを低減するためにインターフェース領域と隣接して配置されている。そして、昇圧回路は第1,第2電源回路の双方から電位供給を受けるため、中央の第1領域に配置されている。
【0012】
さらに本発明の一態様では、内部基準電位生成回路は第1電源回路にのみ設けられ、第2電源回路には内部基準電位生成回路を重複して設けていないので、チップ面積が増大することはない。また、第2電源回路には、第1電源回路からの内部基準電位を、電源配線層を介して入力する第1内部電源電位生成回路を有している。このため、第2電源回路側に近い昇圧回路に第1内部電源電位を供給するのに、配線の引き回しが不要となる。
【0013】
また、本発明の一態様では、中央の第1領域に配置されたデータ線ドライバと隣接してRAMを配置しているので、RAM出力をデータ線ドライバに供給する配線が最短となる。
【0014】
このように、本発明の一態様に係るドライバIC内のレイアウトによれば、外部との接続のための配線引き回しが少なく、しかも内部の回路同士を結ぶ配線長が短くなり、配線レイアウトが容易となってドライバICのチップ面積を縮小できる。
【0015】
本発明の一態様では、前記内部基準電位生成回路は、前記電源配線層に接続されたボルテージフォロアを有することができる。ボルテージフォロアは入力電位と出力電位とを一定にできる上、入力段と出力段とを切り離すことができる。よって、電源配線層上にて電源電位の揺らぎが生じても、その電源配線上の電源揺らぎが第1電源回路に悪影響を与えることが無い。
【0016】
本発明の一態様では、前記第1電源回路は、前記内部基準電位生成回路の出力線の途上の分岐点から前記内部基準電位が分岐入力されて、前記内部基準電位に基づいて第2内部電源電位を生成する第2内部電源電位生成回路を含み、前記ボルテージフォロアを、前記分岐点よりも下流側にて前記内部基準電位生成回路の出力線に接続することができる。
【0017】
こうすると、電源配線上の電源揺らぎが第2内部電源電位生成回路に悪影響を与えることが無い。
【0018】
本発明の一態様では、前記第2領域にはロジック回路が配置され、前記第1電源回路に配置された前記第2内部電源電位生成回路は、前記第2内部電源電位とて、前記ロジック回路に供給されるロジック電源電位を生成することができる。
【0019】
こうすると、第2領域内にて、第2内部電源電位生成回路にて生成された第2内部電源電位を、ロジック電位としてロジック回路に供給することができ、配線は最短となる。
【0020】
本発明の一態様では、前記第2電源回路は、極性反転信号に基づいて前記パネルの対向電極に交互に切り換えて出力される正の第1対向電極電位と負の第2対向電極電位とを生成する対向電極電位生成回路を含み、前記昇圧回路は、前記第1内部電源電位生成回路からの前記第1内部電源電位を、基準電位に対して反転昇圧して、反転昇圧電位を前記対向電極電位生成回路に供給することができる。
【0021】
こうすると、第3領域に配置された第1内部電源電位生成回路からの第1内部電源電位を、第3領域と隣接する第1領域に配置された昇圧回路に供給し、昇圧回路にて生成された反転昇圧電位を、第3領域に配置された対向電極電位生成回路に供給できる。よって、配線の引き回しを最短にできる。
【0022】
本発明の一態様では、前記対向電極電位生成回路は、前記第1対向電極電位と前記第2対向電極電位とを、前記極性反転信号に基づいて交互に切り替えて対向電極電位供給線に出力する、複数のスイッチングトランジスタを含むスイッチング回路を有し、前記第1内部電源電位が、前記複数のトランジスタのゲート電位として供給することができる。
【0023】
こうすると、第3領域に配置された第1内部電源電位生成回路からの第1内部電源電位を、第3領域と隣接する第1領域に配置された昇圧回路のスイッチングトランジスタのゲート電位として供給しているので、配線の引き回しを最短にできる。
【0024】
本発明の一態様では、前記第2電源回路は、前記内部電源電位生成回路の出力線をディスチャージする第1ディスチャージ手段を含み、
前記昇圧回路は、
前記パネルを駆動する駆動モードから前記パネルを駆動しない非駆動モードへの移行の当初のディスチャージ期間に、前記対向電極電位供給線の電位が、前記第1,第2対向電極電位間の第1基準電位となるように、前記第1内部電源電位に基づいて前記対向電極電位供給線をディスチャージする第2ディスチャージ手段と、
前記パネルの非駆動時であって、少なくとも前記ディスチャージ期間内から前記ディスチャージ期間経過後に亘って、前記第2ディスチャージ手段により前記第1基準電位に設定された前記対向電極電位供給線の電位を保持する基準電位保持手段と、
を含み、
前記第1ディスチャージ手段は、前記ディスチャージ期間に前記第2ディスチャージ手段によって前記対向電極電位供給線がディスチャージされるように、前記第1内部電源電位生成回路の出力線のディスチャージを遅らせることができる。
【0025】
本発明の一態様によれば、対向電極電位供給線のディスチャージ動作を、第2ディスチャージ手段と基準電位保持手段とに分担させている。第2ディスチャージ手段は、非駆動モードに移行した当初のディスチャージ期間でディスチャージ動作し、基準電位保持手段はディスチャージ期間とオーバーラップする期間で動作して、ディスチャージ期間経過後も、第1基準電位に設定された対向電極電位供給線の電位を保持する。こうして、内部電源電位生成回路の出力線が第1ディスチャージ手段によってディスチャージされて、第2ディスチャージ手段によるディスチャージ動作が終了しても、基準電位保持手段により対向電極電位供給線の電位を第1基準電位に維持することができる。
【0026】
本発明の他の態様に係る電気光学装置は、複数の走査線と複数のデータ信号線とによって駆動される電気光学素子を含むパネルと、本発明の一態様に係る駆動回路とを含むことを定義している。また、本発明のさらに他の態様に係る電子機器は、そのような電気光学装置を含むことを定義している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0028】
(表示ユニット)
図1(A)は本実施形態に係る車載用表示ユニット(広義には電気光学装置)の平面図であり、図1(B)は概略側面図である。この車載用表示ユニット10は、パネル20とドライバIC100とを含んでいる。
【0029】
液晶パネル20は、例えばX方向の画素数=320及びY方向の画素数=320の320×320画素を有するアモルファスSi−TFT液晶パネルである。この液晶パネル20の各画素は、図2に示すように、ゲートが走査線(ゲート線)Gに接続され、ソースがデータ信号線(ソース線)Sに接続された薄膜トランジスタ(TFT)Tと、保持容量Cと、画素電極P等を含んで構成される。液晶パネル20には、X方向に沿って延び、Y方向にて等間隔に配置された320本の走査線Gと、Y方向に沿って延び、X方向にて等間隔に配置された320本のデータ信号線Sとを有する。液晶パネル20は、図1(B)に示すように、走査線G、データ信号線S、薄膜トランジスタT及び画素電極Pなどが形成されたアクティブマトリクス基板21と、全ての画素電極Pと対向する対向電極が形成された対向基板22との間に、電気光学素子である液晶23を封入することで構成されている。
【0030】
図1に示すドライバIC100は、図示しないMPU(Micro Processor Unit)からのコマンド、コマンドに続くパラメータ又はデータに基づいて、液晶パネル20の各画素を例えば2階調、4階調及び16階調のいずれかのBPP(Bit Per Pixel)モードで駆動可能な1チップドライバICである。このドライバIC100は、図1(B)に示すように、例えばアクティブマトリクス基板(ガラス基板)21上の配線領域に直接搭載できるCOG(Chip on Glass)対応のバンプを有することができる。こうすると、液晶パネル20とドライバIC100とで表示モジュール(これも電気光学装置である)を構成できる。あるいは、ドライバIC100を、アクティブマトリクス基板21と接続されたフレキシブル基板等に搭載しても良い。
【0031】
(ドライバIC)
図3は、ドライバIC100のブロック図である。図3において、システムインターフェース102は、MPUとの間で信号を入出力するためのインターフェース領域である。このシステムインターフェース102には、各種電源端子、入出力端子、コントロール端子、外付け端子等を有する。
【0032】
制御ロジック回路104は、データバス端子またはシリアルデータ入力端子からのコマンド/パラメータのデコーダとレジスタ等を備える。不揮発性メモリであるマルチタイムPROM106は、このドライバIC100が接続される液晶パネル20に固有の制御データ例えば画質調整データとして、例えば対向電極に印加される電圧値VCOMH用電子ボリュームのオフセット調整のための制御データ等が記憶される。こうして、液晶パネル20とセットで用いられるドライバIC内に、その液晶パネル20に固有の制御データを格納しておくことで、液晶パネル20とドライバIC100とで構成される表示モジュール単位で画質調整が可能となる。なお、このドライバIC100またはMPUにはマルチタイムPROM106よりも大容量の不揮発性メモリ例えばEPROMが接続され、液晶パネル20に固有の制御データ以外の制御データを格納することができる。なお、マルチタイムPROM106は5回程度まで電気的に書き換え可能であり、上述した画質調整データの他、ユーザIDデータ等も格納できる。また、発振回路108は、ドライバIC100内部にて基準クロックを生成する。
【0033】
ドライバIC100は、表示データを記憶する表示データRAM110を内蔵している。本実施形態では、320×320個の各画素を最大階調数16(4BPP)で表示するために、320×320×4ビットの記憶容量を有する。つまり、表示データRAM110は、4BPPモードでは少なくとも1フレーム分の表示データを記憶できる。1画素あたりの階調数が減少すれば、1フレーム分の表示データは少なくなり、BPP(Bit Per Pixel)のビット数に反比例して、RAM110に格納できる表示データのフレーム数は増加する。つまり、2BPP(4階調)では1フレームデータは320×320×2ビットとなるので、表示データRAM110には2フレーム分の表示データを格納できる。同様に、1BPP(2階調)では1フレームデータは320×320×1ビットとなるので、表示データRAM110には4フレーム分の表示データを格納できる。
【0034】
表示データRAM110の周辺回路として、I/Oバッファ112、表示タイミング発生回路114、ページアドレス回路116、カラムアドレス回路118及びラインアドレス回路120を有する。MPUと表示データRAM110との間は、システムインターフェース102、制御ロジック104及びI/Oバッファ112を介してデータが入出力される。なお、制御ロジック104には、各種デコーダ及びレジスタの他に、ライトバスホルダとリードバスホルダ等を有することができる。
【0035】
表示データRAM110のアドレスは、MPUとの間で表示データを入出力する際にはページアドレス回路116とカラムアドレス回路118が用いられ、液晶パネル20を駆動する際にラインアドレス回路120が用いられる。これらアドレス回路116−120には、表示タイミング発生回路114からのタイミング信号が入力される。
【0036】
表示データRAM110の表示データに基づいて液晶パネル20を駆動するために、表示データラッチ回路122と、320本のソース線Sを駆動するソースドライバ(広義にはドライバ回路)130が設けられている。
【0037】
ドライバIC100の各部に電位を供給する電源回路140が設けられている。この電源回路140は、外部から供給される電位に基づいて、ドライバIC100の各部に必要な電位を生成して供給する。電源回路140は、ソースドライバ130内部に設けられたデジタル−アナログ変換回路(DAC)に階調電圧を供給するためのガンマ回路140D(図4参照)を含んでいる。また、ドライバIC100は、320本のゲート線Gを駆動するゲートドライバ142A,142Bを有する。
【0038】
(ドライバICの全体レイアウト)
図4は、ドライバIC100の全体レイアウトの一例を示している。ドライバICの長手方向Xにて三分割された各領域を、中央の第1領域100Aとその左右の第2,第3領域100B,100Cとする。本実施形態では、第1領域100Aにはソースドライバ(データ線ドライバ)130が、第2領域100Bにはゲートドライバ(第1走査線ドライバ)142Aが、第3領域100Cにはゲートドライバ(第2走査線ドライバ)142Bが、ドライバIC100の長辺100Dに沿ってそれぞれ配置されている。
【0039】
ソースドライバ130、ゲートドライバ142A,142Bは、図1の表示パネル20のソース線S、ゲート線G(図2参照)に接続されるパッドを含む。ソースドライバ130、ゲートドライバ142A,142BをドライバIC100の長辺100D(図1(A)及び図4参照)に沿って配列することで、ドライバIC100内で配線を引き回すことなく表示パネル20との接続が可能となる。
【0040】
表示データRAM110は、第1領域100Aに配置されている。表示データRAM110はソースドライバ130に接続されることから、第1領域100Aにて表示データRAM110をソースドライバ130と隣接して配置している。
【0041】
また、ドライバIC100の他の長辺100Eに沿って、第1〜第3領域100A〜100Cに亘って、各種パッドを含むシステムインターフェース(インターフェース領域)102が配置されている。
【0042】
電源回路140は、第1領域100A、第2領域100B及び第3領域100Cに分割配置されている。第1領域100Aには、システムインターフェース102と隣接して昇圧回路140Aが配置されている。第2領域100Bには、内部基準電位や各種動作電位を発生させるメイン電源回路(第1電源回路)140Bがシステムインターフェース102と隣接して配置されている。第3領域100Cには、対向電極電位VCOMを発生させるVCOM生成回路(対向電極電位生成回路)140Cがシステムインターフェース102と隣接して設けられている。なお、電源回路140は、システムインターフェース102のパッドと接続されるため、インピーダンスを低減するためにシステムインターフェース102と隣接して配置されている。また、第2領域100Bには、ガンマ回路140Dや制御ロジック回路104がさらに配置されている。
【0043】
本実施形態では、メイン電源回路140BからVCOM生成回路140Cに、例えば内部基準電位Vrefや内部電源電位(第2内部電源電位)VREGを、内部電源配線141A,141Bを介して供給している。そして、第3領域100Cには、内部基準電位Vrefが入力され、外部電源電位VDD2に基づいて内部電源電位(第1内部電源電位)VLDO1,VLDO2を生成するVLDO1レギュレータ(第1内部電源電位生成回路)140E及びVLDO2レギュレータ(第1内部電源電位生成回路)140Fがさらに設けられている。なお、本実施形態では、VCOM生成回路140CとVLDO1レギュレータ140EとVLDO2レギュレータ140Fとで、第2電源回路を構成するものとする。
【0044】
(電源回路)
図5は、電源回路140のブロック図である。図5において、図4の第1領域100Aに配置される昇圧回路140Aとして、例えば一次昇圧回路210、二次昇圧回路220、三次昇圧回路230及び四次昇圧回路240が設けられている。第1領域100Aに配置される各昇圧回路210〜240と、図4の第3領域に配置されるVCOM生成回路140C、VLDO1レギュレータ140E及びVLDO2レギュレータ140Fとを除いて、その他の内部基準電位生成回路200、各種レギュレータ201−1〜201−8及び電源制御回路202が、第2領域100Bに配置されている。電源制御回路202は、レジスタやタイマー等を含んでいる。
【0045】
ここで、本実施形態では、第2領域100Bに配置されたメイン電源回路140Bにのみ内部基準電位生成回路200を設け、第3領域100Cには内部基準電位生成回路200を設けていない。そのため、後述するように、第2領域100Bに配置された内部基準電位生成回路200より内部電源配線141Bを介して第3領域100Cに配置された第1内部電源電位生成回路140E,140Fに、内部基準電位Vrefを伝送している。このように、電源回路140を分割し、その一つにのみ内部基準電位生成回路200を設けているため、基準電位発生回路を各分割領域に重複して配置する必要がなく、チップ面積は増大しない。
【0046】
図6は、内部基準電位生成回路200、各種レギュレータ201−1〜201−7及び昇圧回路210〜240にて生成される各種の電位の関係を示している。図6において、外部電源電位はVDD2(例えば5V程度)とVSS(0V)である。内部基準電位生成回路200は、外部電源電位VDD2に基づいて、内部基準電位Vrefを発生する。内部電源電位としては、第1内部電源電位である一次昇圧基準電位VLDO1(例えば3.05V)及び二次昇圧基準電位VLDO2(例えば2.5V)の他、第2内部電源電位であるVREG、VDD等がある。
【0047】
これらの外部電位VDD2,VSS、内部基準電位Vref、内部電源電位VLDO1,VDDなどに基づいて、各種レギュレータ201−1〜201−7及び昇圧回路210〜240にて動作電圧が生成されている。
【0048】
昇圧回路140Aでの動作を説明する。一次昇圧回路210は、一次昇圧基準電位VLDO1(例えば3.05V)を例えば2倍昇圧して、電位VOUT(例えば6.1V)を生成する。二次昇圧回路220は、二次昇圧基準電位VLDO2を(−1)倍して、第2対向電極電位VCOMLの生成に用いる反転昇圧電位VOUTM(例えば−2.5V)を生成する。三次昇圧回路230は、入力電圧(VOFREG)を、電位VOUTMを基準として(−n)倍して、ゲートドライバ負電源電位VEE(例えば−15V)を生成する。四次昇圧回路240は、入力電圧(VONREG−VEE)を、電位VONREGを基準に1倍してゲートドライバ正電源電位VDDHGを生成する。これらの各昇圧回路210,220,230,240は、それぞれチャージポンプ式DC/DCコンバータ等にて構成することができる。
【0049】
図7は、メイン電源回路140B内に設けられる内部基準電位生成回路200等を示す回路図である。図7において、内部基準電位生成回路200は例えばバンドギャップリファレンス回路にて形成され、電源電位VDD2や温度に依存しない内部基準電位Vrefを出力する。なお、バンドギャップリファレンス回路200の出力電位を図示しないレギュレータにてレギュレートした電位を、内部基準電位Vrefとしてもよい。
【0050】
バンドギャップリファレンス回路200にて発生した内部基準電位Vrefは、種々の内部電源電位の生成に用いられる。図7では、VREGレギュレータ201−6及びVDDレギュレータ201−7に内部基準電位Vrefが入力され、第2内部電源電位VREG,VDDが生成される。第2内部電源電位VREGは、例えば5V程度の定電圧であり、VCOM発生回路140C等に供給される。他の第2内部電源電位VDDはロジック電位(例えば1.8V)であり、ロジック回路104等に供給される。
【0051】
(内部基準電位Vrefの伝送)
上述の通り、本実施形態では、第2領域100Bに配置されたメイン電源回路140Bから、第1領域100Aを経て、第3領域100Cに配置されたVLOD1・VLDO2レギュレータ140E,140Fに、内部基準電位Vrefを、内部電源配線141Aを介して供給している。ここで、内部基準電位Vrefは、図7に示すように、メイン電源回路140Bに配置されたVREGレギュレータ201−6及びVDDレギュレータ201−7に入力され、第2内部電源電位VREG,VDDを生成するための基準電位として用いられている。
【0052】
もし、内部電源配線141A上にて内部電源電位Vrefに揺らぎが生ずると、その電源電位の揺らぎはVREGレギュレータ201−6及びVDDレギュレータ201−7等の第2内部電源電位生成回路にも入力され、第2内部電源電位VREG,VDDが変動してしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、第2領域100Bに配置された内部基準電位生成回路200の出力線200−1には、VREGレギュレータ201−6及びVDDレギュレータ201−7への分岐配線200−2の分岐点Pよりも下流側に、ボルテージフォロア200Aを配置している。ボルテージフォロア200Aでは、その入力電位と出力電位とは、共に内部基準電位Vrefで一定である。しかも、ボルテージフォロア200Aを介在させることで、その入力段と出力段とを切り離すことができるので、出力段側の内部電源配線141Aにて生ずる電源電位の揺らぎが入力段側に伝達されることを遮断できる。
【0054】
ここで、電源配線に静電容量を付加することでノイズを除去する技術は、例えば特許文献2等にて公知である。よって、電源配線141Aに静電容量を付加することも可能である。しかし、本実施形態では、内部電源配線141Aは、表示データRAM110やソースドライバ130が配置された第1領域に配置されるため、静電容量を配置するスペースを確保することが困難である。また、静電容量を外付けするにしても、外付けされた静電容量を内部電源配線141Aに接続する配線スペースの確保も困難である。
【0055】
そのため、本実施形態では、内部電源配線141Aの基端側にボルテージフォロア200Aを接続することで、第2内部電源電位VREG,VDDの電位変動を防止している。
【0056】
この内部電源配線141A,141Bは、多層配線例えば5層配線の最上層に形成することができる。内部電源配線141A,141Bの直下の配線層(例えば4層)にはシールド層を配置して、ノイズ源の影響を遮断することができる。また、内部電源配線141A,141Bの両側には接地電位VSSの電源配線を配置して、ノイズの影響を低減することができる。
【0057】
(対向電極電位VCOMを生成する回路)
図8は、対向電極電位VCOMの生成に関係する回路として、VLDO2レギュレータ140F、二次昇圧回路220及びVCOM生成回路140Cの一例を示している。
【0058】
VCOM生成回路140Cは、極性反転信号に基づいて、正電位である第1対向電極電位VCOMH(例えば+4V)と、負電位である第2対向電極電位VCOML(例えば−1V)とを切り換えて出力するものである。本実施形態は、極性反転駆動法として、ライン反転駆動法、フレーム反転駆動法などを採用することができる。このVCOM生成回路140Cは、VCOMHレギュレータ300、VCOMLレギュレータ310、スイッチング回路320を含んでいる。
【0059】
VCOMHレギュレータ300は、電源電位としてVOUT電位とVSS電位が供給される。第1対向電極電位VCOMHは、レジスタからの固定値に、必要に応じてマルチタイムPROM106からのオフセット値が図示しないレジスタを介して加算器にて加算され、その値が入力される電子ボリュームにて調整された値に基づいて決定される。
【0060】
VCOMLレギュレータ310は、VLDO2レギュレータ140Fからの電位VLDO2と、二次昇圧回路220からの反転昇圧電位VOUTMとが電源電位として供給される。第2対向電極電位VCOMLは、VCOMH−(2×VCA)(電位VCAは電源回路140で生成される)を満たすように設定することができる。
【0061】
スイッチング回路320は、VCOMH電位供給線301とVCOML電位供給線302との間に直列接続され、極性反転信号に基づいて相補的にオン/オフ駆動される2つのトランジスタTr1,Tr2を有する。トランジスタTr1がオンすると第1対向電極電位VCOMHが、トランジスタTr2がオンすると第2対向電極電位VCOMLが、それぞれ択一的にVCOM電位供給線303を介してパネル20の対向電極に供給される。
【0062】
VLDO2レギュレータ(第1内部電源電位生成回路)140Fは、電源電位として外部電源電位VDD2とVSSが供給され、第2領域100B内の内部基準電位生成回路200からボルテージフォロア200A及び内部電源配線141Aを経て内部基準電位Vref(例えば1.5V)が入力されて、第1内部電源電位VLDO2(例えば2.5V)を生成する。なお、VLDO2レギュレータ140Fの出力線であるVLDO2電位出力線221は、抵抗RとディスチャージトランジスタTr3とを介して接地されている。このディスチャージトランジスタTr3は、パネル20の非駆動時例えばスリープモードの時にゲート信号Cによりオン駆動され、抵抗Rと図示しない容量C(寄生容量でも可)とのRC時定数に従ってVLDO2電位出力線221の電位は0Vとなる。VLDO2電位出力線221をディスチャージする構成が、第1ディスチャージ手段に相当する。
【0063】
二次昇圧回路220は、VLDO2レギュレータ140Fの出力線であるVLDO2電位出力線221と、VOUTM電位出力線(昇圧電位出力線)222との間に直列接続された4つのトランジスタTr4〜Tr7を含む。容量C1は、トランジスタTr4,Tr5のソース・ドレイン接続点と、トランジスタTr6,Tr7のソース・ドレイン接続点とに接続されている。容量(保持容量)C2は、接地線223とVOUTM電位出力線222との間に接続されている。
【0064】
二次昇圧回路220では、トランジスタTr4,Tr6がオン、トランジスタTr5,Tr7がオフすると、容量C1はVLDO2電位出力線221と接地線223とに接続されて、VLDO2電位出力線221の電位2.5Vの電荷がチャージされる。その後、トランジスタTr4,Tr6がオフ、トランジスタTr5,Tr7がオンすると、容量C2はVOUTM電位出力線222と接地線223とに接続されて、容量C1の電荷が容量C2に移動して、容量C2には−2.5Vの電荷がチャージされる。これを繰り返すことで、容量C1には+2.5Vの電荷が、容量C2には−2.5Vの電荷がチャージされ続け、VOUTM電位出力線222の電位は、VLDO2電位出力線221の電位が基準電位VSSに対して反転昇圧された結果としての−2.5Vに保持される。
【0065】
(VCOM電位出力線のためのディスチャージの実施形態1)
本実施形態では、パネル20を駆動する駆動モードからパネル20を駆動しない非駆動モード(例えばスリープモード)への移行の当初のディスチャージ期間に、対向電極電位(VCOM)供給線303の電位が、第1,第2対向電極電位VCOMH,VCOML間の第1基準電位(例えばVSS=0V)となるようにディスチャージする第2ディスチャージ手段例えば第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2と、パネル20の非駆動時であって、少なくともディスチャージ期間T1経過後に、第2ディスチャージ手段MV1,MV2により基準電位VSSに設定されたVCOM電位供給線303の電位を保持する基準電位保持手段(第1基準電位保持手段ともいう)例えば第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2と、を有することができる(図8参照)。
【0066】
第1のディスチャージトランジスタMV1と第1の電位保持トランジスタHV1とは、VCOM供給線303とVCOML供給線302との間に並列接続されている。第2のディスチャージトランジスタMV2と第2の電位保持トランジスタHV2とは、VCOML供給線302と接地線(基準電位線)304との間に並列接続されている。
【0067】
ここで、本実施形態では、耐圧が異なる3種類のトランジスタを用いてドライバIC100を形成している。ゲートへのオン電位がロジック基準電位VDD(=1.8V)で動作する低耐圧のトランジスタLVと、ゲートへのオン電位が例えば内部電源電位VLDO2(=2.5V)で動作する中耐圧(例えば6.2V耐圧)のトランジスタMVと、ゲートへのオン電位が外部電源電位VDD2(=5V)で動作する高耐圧(例えば30V耐圧)のトランジスタHVと、の3種類である。
【0068】
高耐圧トランジスタHVは、図9に示すようにツィンウェル構造を持つ。つまり、例えばP型基板PsubにP型ウェルNWELLが形成され、そのP型ウェルPWELL内にソース・ドレインとなるN型不純物層が形成されている。P型基板Psub及びP型ウェルNWELLは電位VEE(=−15V)に設定される。本実施形態に用いる高耐圧トランジスタHVは耐圧が例えば30Vである。
【0069】
中耐圧トランジスタMVは、図10に示すようにトリプルウェル構造を持つ。つまり、例えばP型基板PsubにN型ウェルNWELLが形成され、N型ウェルNWELL内にP型ウェルPWELLが形成され、そのP型ウェルPWELL内にソース・ドレインとなるN型不純物層が形成されている。P型基板Psubが電位VEEに設定されるので、PウェルPWELLの電位をP型基板Psubと分離するためにN型ウェルNWELLが設けられている。第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2では、PウェルPWELLの電位を−1Vに設定しており、N型ウェルNWELLは+3Vに設定している。本実施形態に用いる中耐圧トランジスタMVは耐圧が例えば6.2Vである。
【0070】
ここで、携帯電話向けでは、外部電源電位VDD2は最大3.1Vであった。そのため、ディスチャージトランジスタMVを用いた時、そのゲート電圧として、VOUTM(最大−3.1V)とVDD2(最大+3.1V)を用いることで、ディスチャージトランジスタMVの耐圧6.2Vの範囲に収まるように止めることができた。
【0071】
しかし、車載向けでは外部電源電位VDD2は最大5.5Vであるため、外部電源電位VDD2をゲート電位としたディスチャージトランジスタMVは、耐圧の点で採用することができない。そのため、本実施形態では、ディスチャージトランジスタMVのゲート電位には外部電源電位VDD2を用いていない。
【0072】
図11は、対向電極電位供給線のディスチャージ動作のタイミングチャートである。信号Aは、第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2のゲートに供給される信号であり、オン電位はVLDO2電位(第1内部電源電位)、オフ電位はVOUTM電位である。信号Bは、第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2のゲートに供給される信号であり、オン電位はVDD2電位、オフ電位はVEE電位である。信号Cは、ディスチャージトランジスタTr3のゲートに供給される信号であり、オン電位はVDD2電位、オフ電位はVSS電位である。
【0073】
図12に、信号A,B,Cの生成回路を示す。電源制御回路202は、第1〜第3レベルシフタ330〜332に接続されている。第1レベルシフタ330からは信号Aが、第2レベルシフタ331からは信号Bが、第3レベルシフタ332からは信号Cが出力される。信号A〜Cがオン電位となるかオフ電位となるかは、電源制御回路202からの制御信号CONT1,CONT2に基づいて決定される。第1,第2レベルシフタ330,331には第1制御信号CONT1が、第3レベルシフタ332には第2制御信号CONT2が入力される。
【0074】
図11において、非駆動モード信号例えばスリープ信号が入力される以前では、信号AはVOUTM電位、信号Bは電位VEEであり、第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2及び電位保持トランジスタHV1,HV2は全てオフ状態である。VLDO2出力線221をディスチャージさせるディスチャージトランジスタTr3もオフされている。よって、スリープ信号入力前は、極性反転信号に基づくスイチッング回路320の動作により、VCOM供給線303からは第1対向電極電位VCOMHまたは第2対向電極電位VCOMLが出力される。
【0075】
スリープ信号が入力されると、図12の第1制御信号CONT1に基づいて、信号Aはオン電位VLDO2に、信号Bはオン電位VDD2に変化する(図11参照)。ただし、図11に示す信号Cは、電源制御回路202内のタイマー等の設定により設定された図12の第2制御信号CONT2に基づいて、信号A,Bよりも遅れて立ち上がる。つまり、本実施形態では、VLDO2レギュレータ140Fの出力電位VLDO2のディスチャージを遅らせている。
【0076】
ここで、信号Aのオン電位VLDO2は、第1内部電源電位生成回路であるVLDO2レギュレータ140Fの出力電位であるので、スリープ時にはディスチャージされることが好ましい。しかし、この出力電位VLDO2は第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2のオン電位であるので、出力電位VLDO2がスリープモードの初期で第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2のしきい値電圧を下回ると、第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2のオン動作がごく短時間となり、VCOM供給線303をディスチャージさせることができない。
【0077】
そこで、本実施形態では、VLDO2レギュレータ140Fの出力電位VLDO2のディスチャージタイミング、つまり信号Cの立ち上がりタイミング時刻t2を遅らせている。よって、スリープ信号が入力された時刻t0から時刻t2までのディスチャージ期間T1に亘って、第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2のオン動作が継続し、その間に、VCOM供給線303をディスチャージすることができる。
【0078】
本実施形態では、ディスチャージ期間T1の終期である時刻t2よりも前の時刻t1に、第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2をオン動作させている。
【0079】
ここで、第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2は、図9に示すように、バックゲートとして逆バイアス電位VEEが印加されているのでしきい値電圧が高くなっており、オン電位VDD2がゲートに印加されても、第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2はオンしない。
【0080】
逆バイアス電位VEEは三次昇圧回路230にて生成されている。この三次昇圧回路230を含め、全ての昇圧回路140Aは、スリープ状態のようなパネル非駆動時にはその動作が停止される。ここで、三次昇圧回路230は図8に示す二次昇圧回路220と同様にチャージポンプ式DC/DCコンバータ等であれば、トランジスタ駆動を停止することで、最終段の保持容量にチャージされていた電位VEEに相当する電荷は、補給されることなく徐々にディスチャージされる。
【0081】
このため、図11に示すように、電位VEEはスリープ信号の入力後徐々にディスチャージされ、やがてはVSS(=0V)に達する。よって、図10において、第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2のバックゲートへの逆バイアス電位VEEは徐々に0Vになるため、それに従いしきい値電圧が低下し、時刻t1にて第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2はオンする。この時刻t1がディスチャージ期間T1の終期の時刻t1よりも前であれば、VCOM供給線303のディスチャージ状態をスリープ期間に亘って維持することができる。
【0082】
(VCOM電位出力線のためのディスチャージの実施形態2)
図13は、対向電極電位供給線の他のディスチャージ動作のタイミングチャートであり、図14は、ディスチャージトランジスタ、電位保持トランジスタの他のゲート信号生成回路を示す図である。
【0083】
図13が図11と相違する点は、先ず、信号A,B,Cの立ち上がりタイミングを同時にした点である。このために、図14に示すように、第1,第2,第3レベルシフタ330〜332には、第1制御信号CONT1が共に入力されている。
【0084】
ここで、図13では、図8に示すディスチャージトランジスタTr3が、パネル20のスリープモードの時にゲート信号Cによりオン駆動されるが、抵抗Rと図示しない容量C(寄生容量でも可)とのRC時定数により、VLDO2電位出力線221の電位がディスチャージされるのに時間を要することを利用している。つまり、図11では無視できたRC時定数を図13では大きく設定している。
【0085】
こうすると、図13に示すように、タイミング信号Cが立ち上がって、図8に示すディスチャージトランジスタTr3がオンしても、VLDO2電位出力線221の電位は徐々に低下する。
【0086】
従って、VLDO2電位出力線221のVLDO2電位が、第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2のしきい値電圧を下回る時刻t2まで、第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2はオンし続けることになる。よって、時刻t0〜t2まで、第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2によりVCOM供給線303をディスチャージさせることができる。
【0087】
また、図13においても、図11と同様に、時刻t1にて第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2はオンする。この時刻t1がディスチャージ期間T1の終期の時刻t1よりも前であれば、VCOM供給線303のディスチャージ状態をスリープ期間に亘って維持することができる。
【0088】
(VCOM電位出力線のためのディスチャージの実施形態3)
図15は、第2ディスチャージ手段と第1基準電位保持手段の変形例を示している。図15では、第2ディスチャージ手段として、VCOM供給線303と接地線304との間に設けられた第1ディスチャージトランジスタMV1を有する。つまり、図8のように第1,第2のディスチャージトランジスタMV1,MV2を必ずしも設ける必要はない。図15の例であっても、図11または図13の制御信号A,Cによって、ディスチャージ期間T1に亘って第1ディスチャージトランジスタMV1をオンさせ、VCOM供給線303をディスチャージさせることができる。
【0089】
同様に、第1基準電位保持手段として、VCOM供給線303と接地線304との間とに接続された第1の電位保持トランジスタHV1を設けるものでも良い。つまり、図8のように第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2を必ずしも設ける必要はない。図15の例であっても、図11または図13の制御信号Bと電位VEEとによって、ディスチャージ期間T1の終了前からディスチャージ期間T1の終了後も第1の電位保持トランジスタHV1をオンさせ、スリープ期間に亘ってVCOM供給線303をディスチャージさせることができる。
【0090】
(VCOM電位出力線のためのディスチャージの実施形態4)
図16は、第2ディスチャージ手段と第1基準電位保持手段の他の変形例を示している。図16では、第2ディスチャージ手段として、VCOM供給線303と、接地線304との間に設けられた第1ディスチャージトランジスタMVを有する点で、図15と同じである。しかし、第1電位保持手段が図14とは異なり、VCOM供給線303と、接地線304との間に接続されたプルダウン抵抗R1にて構成されている。
【0091】
図11または図13に示すように、ディスチャージ期間T1内にVCOM供給線303がディスチャージして0Vになっていれば、その後は、同電位であるVCOM供給線303と接地線304とがプルダウン抵抗R1によりショートされ続けるので、スリープ期間に亘ってVCOM供給線303をディスチャージさせることができる。
【0092】
ただし、駆動時にはVCOM供給線は第1,第2対向電極電位VCOMH,VCOMLの一方に設定されるので、プルダウン抵抗R1は定常時に数μA程度の電流を許容する高抵抗である必要がある。
【0093】
図8の実施形態においても、第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2に代えて、VCOM供給線303と接地線304との間に第1プルダウン抵抗R1を配置しても良い。あるいは、第1,第2の電位保持トランジスタHV1,HV2の双方をそれぞれ、図16の第1プルダウン抵抗R1に置き換えても良い。
【0094】
(二次昇圧回路のディスチャージ)
二次昇圧回路220に、第3ディスチャージ手段と第2基準電位保持手段を設けることができる。第3ディスチャージ手段とは、図8に示すように、二次昇圧回路220の保持容量C2に並列接続され、ディスチャージ期間T1に、VOUTM出力線222の電位が、基準電位となるように、内部電源電位VLDO2に基づいてディスチャージするものである。第2基準電位保持手段とは、保持容量C2に並列接続され、パネル20の非駆動時であって、少なくともディスチャージ期間T1内からディスチャージ期間T1経過後に亘って、第3ディスチャージ手段により基準電位に設定されたVOUTM出力線222の電位を保持するものである。
【0095】
図8では、第3ディスチャージ手段は、オン電位としてVLDO2電位が、オフ電位としてVSS電位が印加される第3のディスチャージトランジスタMV3で構成している。第2基準電位保持手段は、オン電位として外部電源電位VDD2が、オフ電位としてVEE電位が印加される第3の電位保持トランジスタHV3で構成している。
【0096】
こうすると、図11または図13と同様にして、VOUTM出力線222の電位を基準電位VSS(=0V)にディスチャージすることができる。これにより、VOUTM出力線222の残留電荷が、VCOMLレギュレータ310を介してVCOML供給線302に流れる危惧が解消され、VOUTM出力線222の残留電荷によりパネル20の非駆動時にパネル20の表示が乱れることを防止できる。
【0097】
ここで、第2基準電位保持手段としては、図17に示すように、保持容量C2に並列接続された第2プルダウン抵抗R2としてもよい。この第2プルダウン抵抗R2もまた、第1プルダウン抵抗R1と同様に高抵抗である。
【0098】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【0099】
例えば、非駆動モードとして例えばスリープモードの際に、スリープ信号が入力された後の1フレームを黒表示画像とすることがある。この場合には、図11または図13の時刻t0は、黒表示される1フレームの終了後のタイミングとすることができる。その1フレーム中は、極性反転信号に基づいて対向電極電位VCOMをパネル20に供給する必要があるからである。
【0100】
本発明は、必ずしもTFT液晶に限定されるものではなく、他の種々の液晶を含む電気光学素子を用いたパネルのドライバICに広くて適用可能である。
【0101】
また、電子機器としては、本実施形態は外部電源電位VDD2と二次昇圧回路の出力であるVOUTMとがMVトランジスタの耐圧を超える車載用製品等に好適であるが、それ以外の電子機器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1(A)は本発明の一実施形態に係るドライバICにて駆動される液晶パネルの概略平面図、図1(B)はその概略側面図である。
【図2】液晶パネルの一画素を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るドライバICのブロック図である。
【図4】ドライバICの平面レイアウト図である。
【図5】電源回路のブロック図である。
【図6】本実施形態にて用いられる各種電位の関係を説明するための図である。
【図7】メイン電源回路内に設けられる基準電位生成回路等を示す回路図である。
【図8】対向電極電位VCOMの生成に関係する回路の一例を示す回路図である。
【図9】高耐圧トランジスタの断面図である。
【図10】中耐圧トランジスタの断面図である。
【図11】対向電極電位供給線のディスチャージ動作のタイミングチャートである。
【図12】ディスチャージトランジスタ、電位保持トランジスタのゲート信号生成回路を示す図である。
【図13】対向電極電位供給線の他のディスチャージ動作のタイミングチャートである。
【図14】ディスチャージトランジスタ、電位保持トランジスタの他のゲート信号生成回路を示す図である。
【図15】第2ディスチャージ手段と第1電位保持手段の変形例を示す図である。
【図16】第2ディスチャージ手段と第1電位保持手段のさらに他の変形例を示す図である。
【図17】第3ディスチャージ手段と第2電位保持手段の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
10 表示ユニット、20 液晶パネル、100 ドライバIC、100A 第1領域、100B 第2領域、100C 第3領域、102 システムインターフェース、
104 制御ロジック、106 マルチタイムPROM、108 発振回路、
110 表示データRAM、112 I/Oバッファ、
114 表示タイミング発生回路、116 ページアドレス回路、
118 カラムアドレス回路、120 ラインアドレス回路、
120A BPP設定レジスタ、120B 表示ラインカウンタ、
120C 表示ラインアドレスコンバータ、120C1 フレームアドレス発生回路、
120C2 加算機、120D データセレクタ制御信号ジェネレータ、
122 表示データラッチ回路、130 ソースドライバ(ドライバ回路)、
140 電源回路、140A 昇圧回路、140B メイン電源回路(第1電源回路)、140C VCOM生成回路(対向電極電位生成回路)、140D ガンマ回路、
140E VLDO1レギュレータ(第1内部電源電位生成回路)、
140F VLDO2レギュレータ(第1内部電源電位生成回路)、
140C,140E,140F 第2電源回路、142A,142B ゲートドライバ、
200 内部基準電位生成回路、200−1 出力線、200A ボルテージフォロア、
201−1〜201−7 レギュレータ、
201−6,201−7 第2内部電源電位生成回路、202 電源制御回路、
210 一次昇圧回路、220 二次昇圧回路、221 VLDO2電位出力線、
222 VOUTM出力線、223 接地線、230 三次昇圧回路、
240 四次昇圧回路、300 VCOMHレギュレータ、301 VCOMH供給線、
302 VCOML供給線、303 VCOM供給線、
310 VCOMLレギュレータ、320 スイッチング回路、
330〜332 第1〜第3のレベルシフタ、
MV1〜MV2 第1〜第2のディスチャージトランジスタ(第2ディスチャージ手段)、MV3 第3のディスチャージトランジスタ、HV1〜HV2 第1〜第2の電位保持トランジスタ(基準電位保持手段)、HV3 第3の電位保持トランジスタ、P 分岐点、R1 第1プルダウン抵抗、R2 第2プルダウン抵抗、Tr1,R 第1ディスチャージ手段、VCOM 対向電極電位、VCOMH 第1対向電極電位、VCOML 第2対向電極電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに形成された複数のデータ線と複数の走査線とに信号を供給して、前記パネルを駆動するドライバICにおいて、
パッドを備えたインターフェース領域と、
RAMと、
前記RAMからのデータに基づいて前記パネルの前記複数のデータ線にデータ信号を供給するデータ線ドライバと、
前記パネルの前記複数の走査線の一部に走査信号を供給する第1走査線ドライバと、
前記パネルの前記複数の走査線の他の一部に走査信号を供給する第2走査線ドライバと、
外部電源電位に基づいて内部基準電位を生成する内部基準電位生成回路を少なくとも含む第1電源回路と、
前記第1電源回路からの前記内部基準電位が入力され、前記内部基準電位に基づいて第1内部電源電位を生成する第1内部電源電位生成回路を少なくとも含む第2電源回路と、
前記外部電源電位、前記内部電源電位または前記第1電源回路からの出力電位に基づいて、複数の昇圧電位を生成する昇圧回路と、
を有し、
前記ドライバICの長手方向にて三分割された各領域を、中央の第1領域と、両端部の第2,第3領域としたとき、前記第1領域には前記データ線ドライバが、前記第2領域には第1走査線ドライバが、前記第3領域には前記第2走査線ドライバが、それぞれ前記ドライバICの長辺に沿って配置され、
前記第1〜第3領域に亘って、かつ、前記ドライバICの他の長辺に沿って前記インターフェース領域が配置され、
前記第1領域には、前記インターフェース領域に隣接して設けられた前記昇圧回路と、前記昇圧回路と前記データ線ドライバとの間に設けられた前記RAMとが配置され、
前記第2領域には、前記インターフェース領域と前記第1走査線ドライバとの間に前記第1電源回路が配置され、
前記第3領域には、前記インターフェース領域と前記第2走査線ドライバとの間に前記第2電源回路が配置され、
前記第1領域に配置された前記第1電源回路内の前記内部基準電位生成回路からの前記内部基準電位を、前記第2領域を経由して、前記第3領域に配置された前記第2電源回路内の前記内部電源電位生成回路に伝送する電源配線層がさらに設けられていることを特徴とするドライバIC。
【請求項2】
請求項1において、
前記内部基準電位生成回路は、前記電源配線層に接続されたボルテージフォロアを有することを特徴とするドライバIC。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1電源回路は、前記内部基準電位生成回路の出力線の途上の分岐点から前記内部基準電位が分岐入力されて、前記内部基準電位に基づいて第2内部電源電位を生成する第2内部電源電位生成回路を含み、
前記ボルテージフォロアは、前記分岐点よりも下流側にて前記内部基準電位生成回路の出力線に接続されていることを特徴とするドライバIC。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第2領域にはロジック回路が配置され、
前記第1電源回路に配置された前記第2内部電源電位生成回路は、前記第2内部電源電位として、前記ロジック回路に供給されるロジック電源電位を生成することを特徴とするドライバIC。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第2電源回路は、極性反転信号に基づいて前記パネルの対向電極に交互に切り換えて出力される正の第1対向電極電位と負の第2対向電極電位とを生成する対向電極電位生成回路を含み、
前記昇圧回路は、前記第1内部電源電位生成回路からの前記第1内部電源電位を、基準電位に対して反転昇圧して、反転昇圧電位を前記対向電極電位生成回路に供給することを特徴とするドライバIC。
【請求項6】
請求項5において、
前記対向電極電位生成回路は、前記第1対向電極電位と前記第2対向電極電位とを、前記極性反転信号に基づいて交互に切り替えて対向電極電位供給線に出力する、複数のスイッチングトランジスタを含むスイッチング回路を有し、
前記第1内部電源電位は、前記複数のトランジスタのゲート電位として供給されることを特徴とするドライバIC。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2電源回路は、前記第1内部電源電位生成回路の出力線をディスチャージする第1ディスチャージ手段を含み、
前記昇圧回路は、
前記パネルを駆動する駆動モードから前記パネルを駆動しない非駆動モードへの移行の当初のディスチャージ期間に、前記対向電極電位供給線の電位が、前記第1,第2対向電極電位間の第1基準電位となるように、前記第1内部電源電位に基づいて前記対向電極電位供給線をディスチャージする第2ディスチャージ手段と、
前記パネルの非駆動時であって、少なくとも前記ディスチャージ期間内から前記ディスチャージ期間経過後に亘って、前記第2ディスチャージ手段により前記第1基準電位に設定された前記対向電極電位供給線の電位を保持する基準電位保持手段と、
を含み、
前記第1ディスチャージ手段は、前記ディスチャージ期間に前記第2ディスチャージ手段によって前記対向電極電位供給線がディスチャージされるように、前記第1内部電源電位生成回路の出力線のディスチャージを遅らせることを特徴とするドライバIC。
【請求項8】
複数の走査線と複数のデータ信号線とによって駆動される電気光学素子を含むパネルと、
請求項1乃至7のいずれかに記載のドライバICと、
を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気光学装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−145738(P2010−145738A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322731(P2008−322731)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】