説明

プラズマ処理装置及びプラズマ分布の制御方法

【課題】プラズマ密度の分布特性を制御することで、プラズマ処理の均一性と歩留まりの向上を実現可能なプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内部が真空に保持可能な処理室を含む処理容器と、該処理室で基板を載置するとともに下部電極を兼ねた載置台と、前記基板の周縁を囲むように配され、前記載置台により一端が支持され、他端が前記処理容器の構成部材で支持された円環状部材と、前記下部電極に対向してその上方に配置される上部電極と、前記載置台に高周波電力を供給する給電体とを備え、前記処理室で発生するプラズマにより前記基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、前記円環状部材の中間を支持する前記処理容器の構成部材であって、前記処理室外に延在する第1の中間導電体と、前記給電体とを電気的に接続又は非接続可能とする第1の可動導電体を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置にかかり、特にプラズマ処理装置を構成する中間導電体の電位を変更する手段を備えたプラズマ処理装置、及びプラズマ生成用の高周波のパスを切り替えることにより処理室に発生するプラズマの分布を制御するプラズマ分布の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやFPD(Flat Panel Display)の製造プロセスにおけるエッチング、堆積、酸化、スパッタリング等の装置として、プラズマ処理装置が広く利用されている。プラズマ処理装置のひとつであるプラズマエッチング装置は、処理容器または反応室内に上部電極と下部電極とを平行に配置し、下部電極の上に被処理基板(半導体ウエハ、ガラス基板等)を載置し、上部電極もしくは下部電極に整合器を介してプラズマ生成用の高周波電圧を印加している。
【0003】
上部電極には多数のガス噴出孔が設けられ、かかるガス噴出孔からプラズマ化されたエッチングガスを基板全体に噴出して、被処理基板全面を同時にエッチングするのが一般的である。
【0004】
通常、平行平板型のプラズマエッチング装置の上部電極と下部電極は平行に配置され、上部電極もしくは下部電極に整合器を介してプラズマ生成用の高周波電圧が印加される。両電極の間で高周波電界によって加速された電子、電極から放出された二次電子、あるいは加熱された電子が処理ガスの分子と電離衝突を起こして、処理ガスのプラズマが発生する。プラズマ中のラジカルやイオンによって基板表面に所望の微細加工たとえばエッチング加工が施される。
【0005】
ここで、半導体集積回路の微細化につれて、プラズマ処理に低圧下での高密度プラズマが要求されている。例えば、容量結合型のプラズマ処理装置においては、より高効率・高密度・低バイアスのプラズマ処理が求められている。また、半導体チップサイズの大面積化、被処理基板の大口径化に伴い、より大きな口径のプラズマが求められており、チャンバ(処理容器)が益々大型化しつつある。
【0006】
しかし、被処理基板の大口径化に伴う大口径のプラズマにおいては、電極(上部電極、又は下部電極)の中心部における電界強度が、エッジ部における電界強度よりも高くなる傾向がある。その結果、生成されるプラズマの密度は、電極中心部側が電極エッジ部側よりも高くなるという問題がある。また、プラズマ密度の高い電極中心部ではプラズマの抵抗率が低くなり、対向する電極においても電極中心部に電流が集中し、プラズマ密度の不均一性がさらに強まるという問題がある。
【0007】
さらに、被処理基板の大口径化によるチャンバの大型化に伴い、エッチングの実プロセスにおいては、処理ガスの流れによる影響でプラズマ密度が被処理基板の中心部と外周部で異なるという問題もある。
【0008】
プラズマ密度の不均一性は、被処理基板のエッチングレートに差を生じさせ、被処理基板の周縁部から取得するデバイスの歩留まりを悪化させる原因となっている。
【0009】
かかる問題に対しては、これまでも電極構造に様々な工夫が試みられている。この問題を解消するため、高周波電極の主面中心部を高抵抗部材で構成するものが知られている(特許文献1)。この技術は、高周波電源に接続される側の電極の主面(プラズマ接触面)の中央部を高抵抗部材で構成し、そこでより多くの高周波電力をジュール熱として消費させることで、電極の主面における電界強度を電極外周部よりも電極中心部で相対的に低下させ、上記のようなプラズマ密度の不均一性を補正するものである。
【0010】
また、特許文献2に開示されるプラズマ処理装置は、処理空間と向き合う電極の主面に誘電体を埋め込んで、電極主面より処理空間に放射される高周波に対するインピーダンスを相対的に、電極中心部で大きく、電極エッジ部で小さくなるようにして、プラズマ密度分布の均一性を向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−323456
【特許文献2】特開2004−363552
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記のような高周波放電方式のプラズマ処理装置において、高周波電極の主面中心部を高抵抗部材で構成するものは、ジュール熱による高周波電力の消費(エネルギー損失)が多くなってしまうという問題がある。
【0013】
また、上記のように電極の主面に誘電体を埋め込む技術は、電極主面上のインピーダンス分布特性が誘電体の材質及び形状プロファイルによって固定され、多種多様なプロセスあるいはプロセス条件の変更に対してフレキシブルに対応できないという問題がある。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、プラズマ密度の分布特性を制御することで、プラズマ処理の均一性と歩留まりの向上を実現可能なプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、内部が真空に保持可能な処理室を含む処理容器と、該処理室で基板を載置するとともに下部電極を兼ねた載置台と、前記基板の周縁を囲むように配され、前記載置台により一端が支持され、他端が前記処理容器の構成部材で支持された円環状部材と、前記下部電極に対向してその上方に配置される上部電極と、前記載置台に高周波電力を供給する給電体とを備え、前記処理室で発生するプラズマにより前記基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、前記円環状部材の中間を支持する前記処理容器の構成部材であって、前記処理室外に延在する第1の中間導電体と、前記給電体とを電気的に接続又は非接続可能とする第1の可動導電体を備えたことを特徴とする。
【0016】
上記の装置構成においては、プラズマ処理装置の処理容器を構成する内壁や円環状部材を支持する中間支持体等を第1の中間導電体として使用し、かかる第1の中間導電体と給電体とをメカニカルな手段により電気的に接続又は非接続とすることで高周波の印加パスを自在に切り替えることができる。それにより、処理室の下部電極上のプラズマ密度分布特性を半径方向で容易かつ自在に制御することができる。また、可動導電体の位置に応じて、給電体と中間導電体とを電気的に分離することも容易である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、前記円環状部材の他端を支持する前記処理容器の構成部材であって、前記処理室外に延在し接地電位に保持された第2の中間導電体と、前記第1の中間導電体とを電気的に接続又は非接続可能とする第2の可動導電体を備えたことを特徴とする。
【0018】
例えば、円環状部材がフォーカスリングである場合、フォーカスリングの一端はサセプタに載置され、他端は第1の中間導電体により支持されている。ここで第1の可動導電体により第1の中間導電体が給電体と接続すると、フォーカスリングの電位はサセプタの電位と同電位となる。そのためフォーカスリングの両端には高周波が印加されずフォーカスリングは加熱されない。一方、第1の中間導電体が第2の可動導電体との接続により接地電位となると、フォーカスリングの両端に高周波が印加されフォーカスリングは加熱される。それにより、特に処理室のウエハエッジ部のプラズマ密度の分布特性を制御することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置であって、前記第1の可動導電体と前記第2の可動導電体とが、前記処理室外にあって前記処理容器内に設けられていることを特徴とする。第1、第2の可動導電体が処理室外にあるため、その作動により処理室が汚染されることはない。
【0020】
上記の装置構成においては、処理室を汚染することなく高周波の印加パスを自在に切り替えることができ、処理室のプラズマ密度の均一性を確保することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記第1の可動導電体と前記第2の可動導電体とが、前記給電体に沿って軸方向に移動可能であることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記第1の可動導電体と前記第2の可動導電体とが、絶縁部材により電気的に分離された一体構造であることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記第1の可動導電体と前記第2の可動導電体とを一体として可動せしめる可動機構を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記第1の可動導電体、及び/又は前記第2の可動導電体が、多点接触手段を備えていることを特徴とする。
【0025】
給電体は、円筒または円柱の形体を有するのが好ましい。この場合、可動導電体を給電体に沿って軸方向に移動可能とすることも、給電体を回転中心軸としてその回りを回転させることも可能である。また、給電体の外周を環状に囲む可動導電体の中心円筒部と、給電体とを多点接触手段(マルチコンタクト)で電気的に接続することは好適である。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記円環状部材が2つの部材からなり、前記円環状部材の中間から径方向内側の円環状部材が2分割型のフォーカスリングであることを特徴とする。
【0027】
2分割型のフォーカスリングを用いることにより、外側のフォーカスリングと内側のフォーカスリングとは断熱状態にある。そのため、内側のフォーカスリングを、例えば静電チャック(ESC)の温度と同じ温度に制御し、一方において、外側のフォーカスリングを高周波の印加パスの切り替えにより加熱することができる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記円環状部材が2つの部材からなり、前記円環状部材の中間から径方向外側の円環状部材がフォーカスリングの押さえ部材であることを特徴とする。
【0029】
請求項10に記載の発明は、内部が真空に保持可能な処理室を含む処理容器と、該処理室に配されて基板を載置する載置台と、前記基板の周縁を囲むように配され、前記載置台により一端が支持され、他端が前記処理容器の構成部材で支持された円環状部材と、前記載置台に高周波電力を供給する給電体とを備え、前記処理室で発生するプラズマを用いて、前記基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置におけるプラズマ分布の制御方法であって、前記円環状部材の中間を支持する前記処理容器の構成部材であって、前記処理室外に延在する第1の中間導電体を、前記処理室外にあって前記処理容器内に設けた第1の可動導電体により、前記給電体と電気的に接続又は非接続とし、高周波のパスを切り替え、前記処理室で発生するプラズマの分布を制御することを特徴とする。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のプラズマ分布の制御方法であって、前記円環状部材の他端を支持する前記処理容器の構成部材であって、前記処理室外に延在し接地電位に保持された第2の中間導電体と、前記第1の中間導電体とを、前記処理室外にあって前記処理容器内に設けた第2の可動導電体により電気的に接続又は非接続可能とすることにより高周波のパスを切り替え、前記処理室で発生するプラズマの分布を制御することを特徴とする。
【0031】
第1の可動導電体により第1の中間導電体が給電体と電気的に接続することで、円環状部材の両端が同電位となり、その結果、円環状部材には高周波が印加されず、円環状部材は加熱されない。一方、第2の可動導電体との接続により第1の中間導電体が接地電位となると、円環状部材の両端に高周波が印加され円環状部材は加熱されることになる。それにより処理室のウエハエッジ部のプラズマ密度の分布特性を制御することができる。
【0032】
請求項12に記載の発明は、請求項10又は11に記載のプラズマ分布の制御方法であって、前記円環状部材が2つの部材からなり、前記円環状部材の中間から径方向内側の円環状部材が2分割型のフォーカスリングであることを特徴とする。
【0033】
請求項13に記載の発明は、請求項10又は11に記載のプラズマ分布の制御方法であって、前記円環状部材が2つの部材からなり、前記円環状部材の中間から径方向外側の円環状部材がフォーカスリングの押さえ部材であることを特徴とする。
【0034】
請求項14に記載の発明は、請求項12に記載のプラズマ分布の制御方法であって、前記第1の中間導電体を接地電位に保持することにより、前記2分割型のフォーカスリングの径方向外側のフォーカスリングを加熱することを特徴とする。
【0035】
請求項15に記載の発明は、請求項13に記載のプラズマ分布の制御方法であって、前記フォーカスリングの押さえ部材の一端を給電電位とし、他端を接地電位とすることにより、前記フォーカスリングの押さえ部材を加熱することを特徴とする。
【0036】
請求項16に記載の発明は、請求項10から15のいずれかに記載のプラズマ分布の制御方法であって、前記第1の可動導電体及び/又は前記第2の可動導電体が、多点接触手段により電気的に接続することを特徴とする。
【0037】
多点接触手段(マルチコンタクト)で電気的に接続することにより、給電体と可動導電体との接触抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明のプラズマ処理装置によれば、上記のような構成及び作用により、プラズマ密度分布の容易かつ自在な制御が可能となり、プラズマ処理の均一性や歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例であるプラズマ処理装置の構成を示した縦断面図である。
【図2】可動機構が最も下がった状態(第1の状態)を示した図である。
【図3】可動導電体が図2の状態にあるときの2周波給電機構の等価回路を模式的に示した図である。
【図4】可動機構が最も上がった状態(第2の状態)を示した図である。
【図5】可動導電体が図4の状態にあるときの2周波給電機構の等価回路を模式的に示した図である。
【図6】本発明の一実施例である多点接触手段(マルチコンタクト)を用いた給電体と可動導電体との接触面を示す縦断面図である。
【図7】本実施の形態におけるプラズマ処理装置の水平方向断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明に基づくプラズマ処理装置をエッチング装置に適用した一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
図1に本発明の一実施形態であるプラズマ処理装置の全体の概略構成を示す。このプラズマ処理装置は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等からなる内部を気密に密閉可能な処理室を備えた円筒形のチャンバ1を含んで構成されている。ここでは、下部2周波印加方式の容器結合型プラズマ処理装置として構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1周波印加方式のプラズマ処理装置であってもよい。
【0042】
チャンバ1の処理室には、被処理基板として例えば半導体ウエハW(以下、ウエハW)を支持するサセプタ2が水平に配置されている。サセプタ2は、アルミニウム等の導電性材料からなり、RF電極を兼ねている。サセプタ2の上面には、ウエハWを静電吸着力で保持するために、セラミックス等の誘電体からなる静電チャック3が設けられている。静電チャック3の内部には、導電体例えば銅、タングステン等の導電膜からなる内部電極4が埋め込まれている。
【0043】
静電チャック3は、ウエハWと接触して熱交換を行うことにより、ウエハWの温度を調節する熱交換プレートとして用いられる。ウエハWの外側には、フォーカスリング5が配置される。この実施形態においては、フォーカスリング5は、外側フォーカスリング5a及び内側フォーカスリング5bと2分割型のものを使用している。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、通常のリング形状であってもよい。フォーカスリング5は、ウエハWに応じて、例えばSi、SiC、C、SiO等の材料からなる。
【0044】
チャンバ1の側壁と筒状支持部の外壁18(中間導電体)との間には、環状の排気路6が形成され、底部に排気ポート26が設けられている。排気ポート26には、排気管7を介して排気装置8が接続されている。排気装置8は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ1内のプラズマ処理空間を所望の真空度まで減圧することができる。チャンバ1の側壁の外には、ウエハWの搬入出口9を開閉するゲートバルブ10が取り付けられている。
【0045】
サセプタ2の背面(下面)中心部には、下方に配置されるマッチングユニット13の出力端子から鉛直上方にまっすぐ延びる円柱形または円筒形の給電体14の上端が接続されている。下部2周波印加方式で用いられる第1及び第2高周波電源12a、12bは、マッチングユニット13及び給電体14を介してサセプタ2に電気的に接続されている。給電体14は、例えば銅またはアルミニウム等の導体からなる。
【0046】
第1高周波電源12aは、サセプタ2の上方でプラズマの生成に主として寄与する比較的高い周波数、例えば60MHzの第1高周波を出力する。一方、第2高周波電源12bは、サセプタ2上のウエハWへのイオンの引き込みに主として寄与する比較的低い周波数、例えば2MHzの第2高周波を出力する。マッチングユニット13には、第1高周波電源12a側のインピーダンスと負荷(主に電極、プラズマ、チャンバ)側のインピーダンスとの間で整合をとるための第1の整合器と、第2高周波電源12b側のインピーダンスと負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための第2の整合器とが収容されている。
【0047】
静電チャック3は、膜状または板状の誘電体の中にシート状またはメッシュ状の導電体からなる内部電極4を入れたもので、サセプタ2の上面に一体形成または一体固着されている。内部電極4は、チャンバ1の外に配置される直流電源及び給電線(例えば被覆線)に電気的に接続され、直流電源より印加される直流電圧により、クーロン力でウエハWを静電チャック3に吸着保持することができる。
【0048】
チャンバ1の天井部には、サセプタ2と平行に向かい合ってシャワーヘッドが設けられている。このシャワーヘッドは、上部電極20を兼ねており、上部電極20は、電極板21と、この電極板21を上から着脱可能に支持する電極支持体27とを有する。電極支持体27の内部には、ガス室28が設けられ、このガス室28からサセプタ2側に貫通する多数のガス噴出孔22が電極支持体27及び電極板21に形成されている。電極板21とサセプタ2との間の空間がプラズマ生成空間ないし処理空間となる。ガス室28の上部に設けられるガス導入口28aには、処理ガス供給部29からのガス供給管23が接続されている。なお、電極板21は、例えばSiやSiCからなり、電極支持体27は、例えばアルマイト処理されたアルミニウムからなる。
【0049】
このプラズマ処理装置における主たる特徴は、絶縁体で支えられた2つの可動導電体17、19が、ウエハWにプラズマ処理を施す処理室と隔離されているところにある。これにより、たとえ可動導電体17、19の作動により極めて微細な塵埃が発生したとしても、それらが処理室に入り汚染を生じさせることはない。可動導電体17は、最も下がった位置で給電体14及び中間導電体16と電気的に接続する。一方において、中間導電体18は接地(アース)されている。また、可動機構15により、可動導電体17が最も上がった位置では、可動導電体19が中間導電体16と電気的に接続することになる。それにより、中間導電体16は接地電位となる。このように、可動機構15により中間導電体16をどの電位の部材と電気的に接続あるいは非接続とするかにより、高周波の印加パスを自在に切り替えることができる。ここで、可動導電体17、19及び可動機構15を備えた機構が可動給電機構30である。
【0050】
この可動給電機構30の詳細を示したのが図2及び図4である。図2は、可動機構15が最も下がった状態(第1の状態)を示した図であり、図4は、可動機構15が最も上がったときの状態(第2の状態)を示した図である。図2において、サセプタ2の下面には給電体14が電気的に接続されている。また、サセプタ2の下の空間内には、入れ子構造で可動導電体17、可動導電体19が設けられている。それらは可動機構15により上下(軸方向)に移動可能な構造となっている。給電体14と中間導電体16とは、可動導電体17を介して電気的な抵抗が出来るだけ少ないように接続することが好ましい。
【0051】
中間導電体16は、例えばプラズマ処理装置のチャンバ1を構成する内壁や円環状部材を支持する中間支持体である。また、中間導電体18は、例えば円筒支持部の外壁である。なお、中間導電体18を接地電位に保持しておくことは好ましい。
【0052】
図6は、給電体14、中間導電体16、18と可動導電体17、19との接触状態を示した図である。図6(a)において、可動導電体17は、例えば銅またはアルミニウムからなり、給電体14の外周を環状に囲む中心円筒部17aと、この中心円筒部17aから半径方向外側に水平に延びる中心ラジアル部17bとを有する。中心円筒部17aの外表面が、給電体14との接触抵抗を低減するためにマルチコンタクト24で覆われていることは好ましい。
【0053】
可動導電体17の中心円筒部17aは、給電体14に沿って鉛直方向に移動可能な構造となっている。また、中心ラジアル部17bも、一定の大きさを有するマルチコンタクト24で覆われており、中間導電体16の上面あるいはサセプタ2の下面と一定の間隔を保ち、マルチコンタクト24で電気的に接続される構造となっている。
【0054】
図6(b)において、可動導電体19は、例えば銅またはアルミニウムからなり、中間導電体18の内周を環状に囲むとともに水平にも延びた形状となっている。可動導電体19の一部が、一定の大きさを有するマルチコンタクト24で覆われており、可動導電体19の外表面と中間導電体18の内周面とは、一定の間隔を保ちながらマルチコンタクト24で電気的に接続される構造となっている。また、中間導電体16の下面と一定の間隔を保ち、マルチコンタクト24により電気的に接続される構造となっている。
【0055】
可動機構15は、例えば、回転駆動力を発生する電気モータと、この電気モータの回転駆動力を鉛直方向の直進駆動力に変換する運動変換機構とを有しており、運動変換機構の直進移動部が可動導電体17の中心円筒部17a及び可動導電体19の下面に結合している。
【0056】
図3は、可動導電体17、19が、図2に示すような第1の状態であるときの2周波給電機構の等価回路を模式的に示した図である。
【0057】
このような状態の場合においては、可動導電体17により中間導電体16が高周波電源12a又は12bと接続されることで、フォーカスリング5の両端は同電位となり高周波は流れず、そのためフォーカスリング5は加熱されない。すなわち、第1高周波電源12a又は12bからの高周波は、給電体14を介してサセプタ2に全部供給されるのではなく、その一部は、給電体14から高周波バイパス路に分岐して中間導電体16に供給されることになる。
【0058】
図4は、可動導電体17、19が最も上がった状態(第2の状態)の場合の図である。第2の状態とは、可動機構15による昇降駆動によって、可動導電体17の中心ラジアル部17bがサセプタ2の下面と接続され、可動導電体19が中間導電体16の下面と接続される状態をいう。この状態の場合、可動導電体19は、中間導電体18と電気的に接続しているとともに、中間導電体16とも電気的に接続している。そのため中間導電体16の電位は接地電位となる。
【0059】
この実施形態においては、外側フォーカスリング5a及び内側フォーカスリング5bの2分割型のフォーカスリングを使用している。その結果、外側フォーカスリング5aの半径方向で外側端の電位は接地電位となる。一方、外側フォーカスリング5aの他の一端(半径方向で内側端)は給電側の電位となる(静電チャック3と同電位となる)。その結果、外側フォーカスリング5aの両端には高周波が印加され、外側フォーカスリング5aは加熱されることになる。なお、内側フォーカスリング5bには高周波は印加されず、サセプタ2の温度とほぼ同じ温度に調節される。
【0060】
図5に、可動導電体17、19を第2の状態(可動機構15が最も上がった位置)に切り替えたときの2周波給電機構の等価回路を模式的に示す。
【0061】
この場合、可動導電体17はサセプタ2と、可動導電体19は中間導電体16と電気的に接続することになる。可動導電体19を介して接続した中間導電体16は、接地電位となるため、高周波電源12a又は12bからの高周波が給電体14を介してサセプタ2に全部供給され、外側フォーカスリング5aの両端に高周波が印加される。このため、外側フォーカスリング5aは加熱される。
【0062】
図7は、本実施の形態におけるプラズマ処理装置の水平方向の断面を示した図である。チャンバ1の外壁である中間導電体18の半径方向内側には中間導電体16が配置されている。
【0063】
チャンバ1の中心部には給電体14が配置されている。この給電体14に軸方向に接しながら上下する可動導電体17が、中心から放射状に3つの部分からなる形状で形成されている。なお、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、可動導電体17を4枚以上の分割板で形成してもよく、また分割板ではなく、円板にチラーホースなどを通す穴を開け、この穴を利用するような形態であってもよい。
【0064】
可動導電体17の端部が重なるようにして可動導電体19が設けられている。可動導電体19は、中間導電体18と電気的に接するように構成されるとともに、軸方向(上下方向)に可動でき、最も上がった状態では中間導電体16と電気的に接続する構造となっている。
【0065】
可動導電体17、19の昇降機構の制御、及びこのプラズマ処理装置内の各部、例えば排気装置8、高周波電源12a、12b、処理ガス供給部29等の個々の動作及び装置全体の動作(シーケンス)は、例えばマイクロコンピュータからなる制御部(図示せず)によって制御される。
【0066】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは決してなく、種々の変形が可能である。特に、可動給電機構30の構成については装置内の他の機構と最適に組み合わせられるように種々の選択・変形を行うことができる。
【0067】
本発明は、プラズマエッチング装置に限定されず、プラズマCVD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリングなどの他のプラズマ処理装置にも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 チャンバ
2 サセプタ(RF電極)
3 静電チャック(ESC)
4 内部電極
5 フォーカスリング
5a 外側フォーカスリング
5b 内側フォーカスリング
6 排気路
7 排気管
8 排気装置
9 ウエハの搬入出口
10 ゲートバルブ
11 押さえ部材
12a 第1高周波電源
12b 第2高周波電源
13 マッチングユニット
14 給電体
15 可動機構
16 中間導電体
17 可動導電体
18 筒状支持部の外壁(中間導電体)
19 可動導電体
20 上部電極
21 電極板
22 ガス噴出孔
23 ガス導入管
24 マルチコンタクト
26 排気ポート
27 電極支持体
28 ガス室
28a ガス導入口
29 処理ガス供給部
30 可動給電機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空に保持可能な処理室を含む処理容器と、該処理室で基板を載置するとともに下部電極を兼ねた載置台と、前記基板の周縁を囲むように配され、前記載置台により一端が支持され、他端が前記処理容器の構成部材で支持された円環状部材と、前記下部電極に対向してその上方に配置される上部電極と、前記載置台に高周波電力を供給する給電体とを備え、前記処理室で発生するプラズマにより前記基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、
前記円環状部材の中間を支持する前記処理容器の構成部材であって、前記処理室外に延在する第1の中間導電体と、前記給電体とを電気的に接続又は非接続可能とする第1の可動導電体を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記円環状部材の他端を支持する前記処理容器の構成部材であって、前記処理室外に延在し接地電位に保持された第2の中間導電体と、前記第1の中間導電体とを電気的に接続又は非接続可能とする第2の可動導電体を備えたことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1の可動導電体と前記第2の可動導電体とが、前記処理室外にあって前記処理容器内に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1の可動導電体と前記第2の可動導電体とが、前記給電体に沿って軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1の可動導電体と前記第2の可動導電体とが、絶縁部材により電気的に分離された一体構造であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1の可動導電体と前記第2の可動導電体とを一体として可動せしめる可動機構を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1の可動導電体、及び/又は前記第2の可動導電体が、多点接触手段を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記円環状部材が2つの部材からなり、前記円環状部材の中間から径方向内側の円環状部材が2分割型のフォーカスリングであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記円環状部材が2つの部材からなり、前記円環状部材の中間から径方向外側の円環状部材がフォーカスリングの押さえ部材であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
内部が真空に保持可能な処理室を含む処理容器と、該処理室に配されて基板を載置する載置台と、前記基板の周縁を囲むように配され、前記載置台により一端が支持され、他端が前記処理容器の構成部材で支持された円環状部材と、前記載置台に高周波電力を供給する給電体とを備え、前記処理室で発生するプラズマを用いて、前記基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置におけるプラズマ分布の制御方法であって、
前記円環状部材の中間を支持する前記処理容器の構成部材であって、前記処理室外に延在する第1の中間導電体を、前記処理室外にあって前記処理容器内に設けた第1の可動導電体により、前記給電体と電気的に接続又は非接続とし、高周波のパスを切り替え、前記処理室で発生するプラズマの分布を制御することを特徴とするプラズマ分布の制御方法。
【請求項11】
前記円環状部材の他端を支持する前記処理容器の構成部材であって、前記処理室外に延在し接地電位に保持された第2の中間導電体と、前記第1の中間導電体とを、前記処理室外にあって前記処理容器内に設けた第2の可動導電体により電気的に接続又は非接続可能とすることにより高周波のパスを切り替え、前記処理室で発生するプラズマの分布を制御することを特徴とする請求項10に記載のプラズマ分布の制御方法。
【請求項12】
前記円環状部材が2つの部材からなり、前記円環状部材の中間から径方向内側の円環状部材が2分割型のフォーカスリングであることを特徴とする請求項10又は11に記載のプラズマ分布の制御方法。
【請求項13】
前記円環状部材が2つの部材からなり、前記円環状部材の中間から径方向外側の円環状部材がフォーカスリングの押さえ部材であることを特徴とする請求項10又は11に記載のプラズマ分布の制御方法。
【請求項14】
前記第1の中間導電体を接地電位に保持することにより、前記2分割型のフォーカスリングの径方向外側のフォーカスリングを加熱することを特徴とする請求項12に記載のプラズマ分布の制御方法。
【請求項15】
前記フォーカスリングの押さえ部材の一端を給電電位とし、他端を接地電位とすることにより、前記フォーカスリングの押さえ部材を加熱することを特徴とする請求項13に記載のプラズマ分布の制御方法。
【請求項16】
前記第1の可動導電体及び/又は前記第2の可動導電体が、多点接触手段により電気的に接続することを特徴とする請求項10から15のいずれかに記載のプラズマ分布の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−165798(P2010−165798A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6000(P2009−6000)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】