説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】ダミーアクティブ領域の配置に伴うチップ面積の増大を引き起こすことなく、半導体基板の表面の平坦性を向上させる。
【解決手段】ダミーアクティブ領域であるn型埋込み層3の上部には、厚い膜厚を有する高耐圧MISFETのゲート絶縁膜7が形成されており、このゲート絶縁膜7の上部には、内部回路の抵抗素子IRが形成されている。n型埋込み層3と抵抗素子IRとの間に厚いゲート絶縁膜7を介在させることにより、基板1(n型埋込み層3)と抵抗素子IRとの間に形成されるカップリング容量が低減される構造になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、高耐圧MISFETおよび抵抗素子を同一半導体基板上に形成する半導体装置およびその製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに隣接する半導体素子を電気的に分離する素子分離構造として、半導体基板の素子分離領域に溝を形成してその内部に絶縁膜を埋め込む素子分離溝(STI:Shallow Trench Isolation)が知られている。この素子分離溝を形成するには、まず半導体基板をエッチングして溝を形成し、続いて半導体基板上に溝の深さよりも厚い酸化シリコン膜を堆積する。次に、溝の外部の酸化シリコン膜を化学的機械研磨法で除去と、溝の内部に酸化シリコン膜が残り、かつその表面が平坦化される。
【0003】
ところで、半導体素子は、その用途や機能に応じて寸法が最適化されるので、実際の半導体基板上には、寸法が異なる複数種類の半導体素子が混在している。例えば、高い電源電圧で動作するMISFET(以下、高耐圧MISFETという)は、低い電源電圧で動作するMISFET(以下、低耐圧MISFETという)に比べて寸法が大きく、かつゲート絶縁膜の膜厚も大きい。また、抵抗素子や容量素子のような受動素子も、低耐圧MISFETに比べて寸法が大きいのが一般的である。さらに、集積回路は、その用途や機能に応じて半導体素子の集積度が異なるので、実際の半導体基板上には、半導体素子が密に配置された領域と疎に配置された領域とが存在する。
【0004】
一方、半導体素子を分離する素子分離溝の寸法は、半導体素子の寸法や密度によって規定される。従って、実際の半導体基板には、寸法が異なる素子分離溝が混在していると共に、素子分離溝が密に配置された領域と疎に配置された領域とが存在している。
【0005】
ところが、素子分離溝を形成する工程において、半導体基板に寸法が異なる複数の溝を形成した後、酸化シリコン膜を堆積してその表面を化学的機械研磨法で研磨すると、特に面積の大きい溝に埋め込んだ酸化シリコン膜の表面が皿のように凹んで研磨される現象(ディッシング(dishing)と呼ばれる)が発生する。
【0006】
素子分離溝内の酸化シリコン膜に上記のような凹みが発生した場合は、後の工程で半導体基板上に薄膜を堆積した際、素子分離溝の上方において、薄膜の表面の平坦性が低下する。そのため、次に、この薄膜の上部にフォトレジスト膜を形成して露光処理を行う際、素子分離溝の上方で露光光のフォーカスレンジが低下し、レジストパターンの精度が低下する。
【0007】
その対策として、ディッシングが顕著に発生する大面積の素子分離領域内に、寸法の小さい多数のダミーアクティブ領域をマトリクス状に敷き詰め、この領域内の素子分離溝の実効的な面積を縮小することによって、酸化シリコン膜のディッシングを抑制する技術が提案され、実際の半導体製品への適用が進められている。
【0008】
大面積の素子分離領域内にダミーアクティブ領域を配置する従来技術として、例えば特開2002−158278号公報(特許文献1)がある。この特許文献1は、素子分離領域内に寸法の異なる2種類のダミーアクティブ領域を配置することによって、酸化シリコン膜の表面の平坦性を向上させると共に、ダミーアクティブ領域形成用フォトマスクを作成する際のデータ量を低減する技術を開示している。
【0009】
特開2002−261244号公報(特許文献2)は、素子分離溝の上部に多結晶シリコン膜からなる抵抗素子を形成した場合、酸化シリコン膜のディッシングに起因して、素子分離溝の中央部と周辺部とで抵抗素子の幅、膜厚、断面形状が異なってくるという問題を指摘している。また、この問題を解決するために、抵抗素子が形成される領域の近傍にダミーアクティブ領域を配置し、酸化シリコン膜を必要な範囲に区切ることによって、ディッシングの発生を抑制する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−158278号公報
【特許文献2】特開2002−261244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者の検討によれば、素子分離領域内にダミーアクティブ領域を配置してその上部に抵抗素子を形成する従来技術は、ダミーアクティブ領域と抵抗素子との間にカップリング容量が形成されることによって、抵抗素子の特性が変動するという新たな問題を引き起こす。
【0012】
また、半導体チップの一部にダミーアクティブ領域を設けることによって、チップ表面の平坦性を向上させる手法は、半導体チップ内に占めるダミーアクティブ領域の割合をある程度増やさないと効果が得られないので、チップ面積の増大を引き起こすという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、ダミーアクティブ領域の増加に伴うチップ面積の増大を引き起こすことなく、半導体基板の表面の平坦性を向上させる技術を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、抵抗素子の信頼性を向上させる技術を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、静電保護回路用抵抗素子のESD耐性を向上させる技術を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、高耐圧MISFETと抵抗素子とを同一半導体基板上に形成する半導体装置の製造工程を簡略化する技術を提供することにある。
【0017】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0019】
本発明の半導体装置は、半導体基板の主面の第1領域に形成された第1ゲート絶縁膜を有し、第1の電源電圧で動作する第1MISFETと、前記半導体基板の主面の第2領域に形成され、前記第1ゲート絶縁膜よりも膜厚が大きい第2ゲート絶縁膜を有すると共に、前記第1の電源電圧よりも高い第2の電源電圧で動作する第2MISFETと、前記半導体基板の主面の第3領域に形成されたシリコン膜からなる抵抗素子とを含み、前記半導体基板の主面の前記第3領域には、前記第2ゲート絶縁膜と同層の絶縁膜が形成され、前記抵抗素子は、前記絶縁膜の上部に形成されているものである。
【0020】
本発明の半導体装置は、半導体基板の主面の第1領域に形成された第1ゲート絶縁膜を有し、第1の電源電圧で動作する第1MISFET、前記半導体基板の主面の第2領域に形成され、前記第1ゲート絶縁膜よりも膜厚が大きい第2ゲート絶縁膜を有すると共に、前記第1の電源電圧よりも高い第2の電源電圧で動作する第2MISFET、および前記半導体基板の主面の第3領域に形成されたシリコン膜からなる第1抵抗素子を含む内部回路と、前記半導体基板の主面の第4領域に形成されたシリコン膜からなる第2抵抗素子を含む静電保護回路とを有し、前記第1および第2抵抗素子のそれぞれの下部には、前記第2ゲート絶縁膜と同層の第1絶縁膜が形成されているものである。
【発明の効果】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0022】
素子分離領域にダミーアクティブ領域を配置してその上部に抵抗素子を配置する場合に比べて、半導体基板の全体面積に対するダミーアクティブ領域の割合を低減し、半導体基板の表面の平坦化とチップサイズの縮小とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の回路構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図6】図4に続く半導体装置の製造方法を示す半導体基板の要部平面図である。
【図7】図5に続く半導体装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図10】内部回路に形成された抵抗素子および静電保護回路に形成された抵抗素子を示す平面図である。
【図11】内部回路に形成された抵抗素子および静電保護回路に形成された抵抗素子の別例を示す断面図である。
【図12】内部回路に形成された抵抗素子および静電保護回路に形成された抵抗素子の別例を示す平面図である。
【図13】内部回路に形成された抵抗素子および静電保護回路に形成された抵抗素子の別例を示す断面図である。
【図14】内部回路に形成された抵抗素子および静電保護回路に形成された抵抗素子の別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態によるLCDドライバの回路構成を示す概略図である。LCDドライバは、単結晶シリコンからなる半導体チップ1Aの主面に形成された入出力端子(ボンディングパッド)50、内部回路51および静電保護(ESD)回路52などによって構成されている。
【0026】
図1には示さないが、内部回路51は、3種類の電源電圧(例えば25V、6V、1.5V)で動作する相補型MISFETなどによって構成されている。また、内部回路51の一部には、抵抗素子IRが形成されている。以下の説明では、25Vの電源電圧で動作する相補型MISFET(nチャネル型MISFETおよびpチャネル型MISFET)を高耐圧MISFETと称し、6Vの電源電圧で動作する相補型MISFETを中耐圧MISFETと称し、1.5Vの電源電圧で動作する相補型MISFETを低耐圧MISFETと称する。
【0027】
静電保護回路52は、入出力端子50と内部回路51との間に配置され、入出力端子50に印加された高電圧の静電気による内部回路51の破壊を防ぐ機能を有している。静電保護回路52は、保護ダイオードD、Dおよび抵抗素子ERによって構成されている。静電保護回路52の抵抗素子ERと内部回路51の抵抗素子IRには、中耐圧MISFETと同じく、6Vの電源電圧が印加される。
【0028】
次に、図2〜図11を参照しながら、本実施の形態によるLCDドライバの製造方法を工程順に説明する。なお、製造方法の説明を簡略にするために、1.5Vの電源電圧で動作する低耐圧MISFETおよび6Vの電源電圧で動作する中耐圧MISFETは、それぞれpチャネル型MISFETのみを図示し、nチャネル型MISFETの図示は省略する。
【0029】
まず、図2に示すように、p型の単結晶シリコンからなる半導体基板(以下、単に基板という)1に素子分離溝2を形成する。素子分離溝2を形成するには、例えば窒化シリコン膜をマスクを用いたドライエッチングで基板1に溝を形成し、続いて基板1上にCVD法で酸化シリコン膜を堆積した後、溝の外部の酸化シリコン膜を化学的機械研磨法で除去する。
【0030】
なお、図中の領域Aは、25Vの電源電圧で動作する高耐圧nチャネル型MISFETを形成する領域、領域Bは、25Vの電源電圧で動作する高耐圧pチャネル型MISFETを形成する領域、領域Cは、6Vの電源電圧で動作する中耐圧pチャネル型MISFETを形成する領域、領域Dは、1.5Vの電源電圧で動作する低耐圧pチャネル型MISFETを形成する領域、領域Eは、静電保護回路52の抵抗素子ER6Vを形成する領域、領域Fは、内部回路51の抵抗素子IRを形成する領域をそれぞれ示している。図に示すように、本実施の形態では、静電保護回路52の抵抗素子ERを形成する領域(E)の基板1の全面に素子分離溝2を形成する。一方、内部回路51の抵抗素子IRを形成する領域(F)の基板1には、素子分離溝2を形成しない。
【0031】
次に、図3に示すように、基板1の一部にリン(P)をイオン注入し、他部にホウ素(B)をイオン注入することによって、基板1の深い領域にn型埋込み層3およびp型埋込み層4を形成する。また、高耐圧MISFETを形成する領域(A、B)と中耐圧MISFETを形成する領域(C)の基板1の一部にリンをイオン注入し、他部にホウ素をイオン注入することによって、n型ウエル5およびp型ウエル6を形成する。
【0032】
領域(A)の基板1に形成されたn型ウエル5は、高耐圧nチャネル型MISFETのソース、ドレインとして機能し、領域(B)の基板1に形成されたp型ウエル6は、高耐圧pチャネル型MISFETのソース、ドレインの一部として機能する。
【0033】
次に、図4に示すように、領域(A、B、E、F)の基板1の表面にゲート絶縁膜7を形成する。ゲート絶縁膜7を形成するには、まず基板1を熱酸化してその表面に膜厚10nm以下の薄い酸化シリコン膜を形成した後、この酸化シリコン膜の上部にCVD法を酸化シリコン膜を堆積する。このとき、熱酸化によって形成した酸化シリコン膜とCVD法で堆積した酸化シリコン膜とを合わせた膜厚は、60nm以上である。次に、フォトレジスト膜をマスクにしてこれらの酸化シリコン膜をパターニングし、領域(A、B、E、F)の基板1の表面に残す。このとき、領域(E、F)の基板1の表面は、それらのほぼ全面がゲート絶縁膜7で覆われるようにする。
【0034】
次に、図5に示すように、領域(A)のゲート絶縁膜7上に高耐圧nチャネル型MISFETのゲート電極8を形成し、領域(B)のゲート絶縁膜7上に高耐圧pチャネル型MISFETのゲート電極8を形成する。ゲート電極8を形成するには、基板1上にCVD法でn型多結晶シリコン膜を形成した後、このn型多結晶シリコン膜の上部にキャップ絶縁膜9を形成する。キャップ絶縁膜9は、例えば酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜などによって構成する。次に、フォトレジスト膜をマスクにしたドライエッチングにより、キャップ絶縁膜9とn型多結晶シリコン膜とをパターニングする。
【0035】
このとき、本実施の形態では、領域(E)のゲート絶縁膜7上にキャップ絶縁膜9とn型多結晶シリコン膜とを残すことにより、表面がキャップ絶縁膜9で覆われたn型多結晶シリコン膜からなる抵抗素子ERを形成する。また、領域(F)のゲート絶縁膜7上にキャップ絶縁膜9とn型多結晶シリコン膜とを残すことにより、表面がキャップ絶縁膜9で覆われたn型多結晶シリコン膜からなる抵抗素子IRを形成する。
【0036】
図6は、領域(E)に形成された抵抗素子ERと、領域(F)に形成された抵抗素子IRとを示す平面図である。図5および図6に示すように、内部回路51の抵抗素子IRは、アクティブ領域であるn型埋込み層3の上部に形成されている。しかし、本実施の形態では、n型埋込み層3と抵抗素子IRとの間に60nm以上の厚い膜厚を有する絶縁膜(ゲート絶縁膜7)が介在しているので、基板1(n型埋込み層3)と抵抗素子IRとの間に形成されるカップリング容量が低減される構造になっている。
【0037】
すなわち、本実施の形態によれば、基板1との容量を殆ど考慮することなく、アクティブ領域(n型埋込み層3)上に抵抗素子IRを配置することができる。これにより、酸化シリコン膜が埋め込まれた素子分離溝2にダミーアクティブ領域を形成してその上部に抵抗素子IRを配置する場合に比べ、基板1の全体面積に対するダミーアクティブ領域の割合を低減することができるので、基板1の表面の平坦化とチップサイズの縮小とを両立させることが可能となる。
【0038】
また、本実施の形態では、n型埋込み層3と抵抗素子IRとの間に介在する絶縁膜と、高耐圧MISFETのゲート絶縁膜7とを同時に形成するので、絶縁膜を形成するための特別な工程が不要となる。
【0039】
一方、静電保護回路52の抵抗素子ERをアクティブ領域上に配置した場合は、高電圧の静電気が印加された際に、抵抗素子ERを構成する多結晶シリコン膜のエッジ部においてESD耐性が劣化し易いという問題が生じる。すなわち、抵抗素子ERは外部からの静電圧によって、通常、抵抗素子IRに印加される電圧よりも高い電圧が印加されるため、ESD耐性が劣化し易い。しかし、本実施の形態では、抵抗素子ERを素子分離溝2の上部に配置しているので、ESD耐性の劣化を防止して静電保護回路52の信頼性を確保することができる。すなわち、抵抗素子ER下の絶縁膜の膜厚は、抵抗素子IR下の膜厚よりも厚くなるように形成されていることにより、抵抗素子IRの静電耐圧よりも抵抗素子ERの静電耐圧を向上させている。さらに、本実施の形態では、素子分離溝2と抵抗素子ERとの間に60nm以上の厚い膜厚を有する絶縁膜(ゲート絶縁膜7)が介在しているので、ESD耐性の劣化をより確実に防止することができる。
【0040】
次に、図7に示すように、低耐圧pチャネル型MISFETを形成する領域(D)のn型埋込み層3にリンをイオン注入することによって、n型半導体領域10を形成する。続いて、中耐圧pチャネル型MISFETを形成する領域(C)に膜厚12nmの酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜11を形成し、低耐圧pチャネル型MISFETを形成する領域(D)に膜厚3nmの酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜12を形成する。
【0041】
膜厚の異なる2種類のゲート絶縁膜11、12を形成するには、まず基板1を熱酸化することによって、領域(A、B、C、D)の基板1の表面に膜厚9nm程度の酸化シリコン膜を形成する。次に、領域(C)の基板1の表面をフォトレジスト膜で覆い、他の領域(A、B、D)の基板1の表面に形成された上記酸化シリコン膜をウェットエッチングで除去する。次に、上記フォトレジスト膜を除去した後、基板1をもう一度熱酸化することによって、領域(A、B、D)の基板1の表面に膜厚3nmの酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜12を形成する。このとき、領域(C)の基板1の表面に残った膜厚9nm程度の酸化シリコン膜が成長し、膜厚が12nmのゲート絶縁膜11となる。
【0042】
次に、図8に示すように、領域(C)に中耐圧pチャネル型MISFETのゲート電極13を形成し、領域(D)に低耐圧pチャネル型MISFETのゲート電極14を形成する。ゲート絶縁膜13、14を形成するには、基板1上にCVD法でn型多結晶シリコン膜を形成した後、フォトレジスト膜をマスクにしたドライエッチングでn型多結晶シリコン膜をパターニングする。
【0043】
次に、図9に示すように、ゲート電極8、13、14の側壁にサイドウォールスペーサ16を形成する。サイドウォールスペーサ16は、基板1上にCVD法で堆積した酸化シリコン膜を異方性エッチングすることによって形成する。続いて、基板1の一部にリンをイオン注入し、他の一部にホウ素をイオン注入することによって、領域(A)のn型ウエル5の表面にn型半導体領域17を形成する。また、領域(B)のp型ウエル6、領域(C)のn型ウエル5および領域(D)のn型半導体領域10のそれぞれの表面にp型半導体領域18を形成する。領域(A)のn型ウエル5に形成されたn型半導体領域17は、高耐圧nチャネル型MISFETのソース、ドレインとして機能し、領域(B)のp型ウエル6に形成されたp型半導体領域18は、高耐圧pチャネル型MISFETのソース、ドレインとして機能する。また、領域(C)のn型ウエル5に形成されたp型半導体領域18は、中耐圧pチャネル型MISFETのソース、ドレインとして機能し、領域(D)のn型半導体領域10に形成されたp型半導体領域18は、低耐圧pチャネル型MISFETのソース、ドレインとして機能する。
【0044】
ここまでの工程で、領域(A)の基板1上に高耐圧nチャネル型MISFET(QHN)が形成され、領域(B)の基板1上に高耐圧pチャネル型MISFET(QHP)が形成される。また、領域(C)の基板1上に中耐圧pチャネル型MISFET(QMN)が形成され、領域(D)の基板1上に低耐圧pチャネル型MISFET(QLP)が形成される。
【0045】
次に、図10および図11に示すように、抵抗素子ER、IRを構成する多結晶シリコン膜のそれぞれの両端部、すなわち配線接続部を覆っているキャップ絶縁膜9をエッチングで除去した後、露出した抵抗素子ER、IRの表面に、電気抵抗を低減するためのシリサイド層20を形成する。このように抵抗素子ER、IR上のシリサイド層20を作り分けるのは、抵抗素子としての所望の抵抗値を制御するためである。すなわち、相対的に低抵抗のシリサイド層20と相対的に高抵抗の多結晶シリコン膜との面積を制御することで、抵抗素子の抵抗値を制御することができる。
【0046】
また、図示はしないが、高耐圧nチャネル型MISFET(QHN)、高耐圧pチャネル型MISFET(QHP)、中耐圧pチャネル型MISFET(QMN)および低耐圧pチャネル型MISFET(QLP)のそれぞれのソース、ドレインの表面にもシリサイド層20を形成する。その後、基板1の上部に層間絶縁膜を挟んで複数層の配線を形成するが、それらの図示は省略する。また、これらシリサイド層20は、例えば、コバルトシリサイド層(CoSi)、チタンシリサイド層(TiSi)またはニッケルシリサイド層(NiSi)等によって形成されている。
【0047】
本実施の形態によれば、アクティブ領域(n型埋込み層3)上に抵抗素子IRを配置することが可能となるので、基板1の全体面積に対するダミーアクティブ領域の割合を低減することができ、基板1の表面の平坦化とチップサイズの縮小とを両立させることが可能となる。
【0048】
また、アクティブ領域と抵抗素子IRとの間に介在する絶縁膜を、高耐圧MISFETのゲート絶縁膜7を形成する工程で同時に形成するので、製造工程を追加することなく、上記した効果を得ることができる。
【0049】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、静電保護回路52の抵抗素子ERを素子分離溝2の上部に配置したのに対し、本実施の形態では、図12および図13に示すように、抵抗素子ERをアクティブ領域(n型埋込み層3)上に配置する。一方、内部回路51の抵抗素子IRは、前記実施の形態1と同じように、アクティブ領域(n型埋込み層3)上に配置する。
【0050】
ただし、前述したように、抵抗素子ERをアクティブ領域上に配置した場合は、抵抗素子ERを構成する多結晶シリコン膜のエッジ部においてESD耐性が劣化し易い。そこで、本実施の形態では、抵抗素子ERの中央部をアクティブ領域上に配置し、エッジ部のみは素子分離溝2の上部に配置することにより、ESD耐性の劣化を防いでいる。さらに、素子分離溝2と抵抗素子ERとの間に60nm以上の厚い膜厚を有する絶縁膜(ゲート絶縁膜7)を介在させることにより、ESD耐性の劣化をより確実に防止することができる。また、これにより、抵抗素子ERと基板1とのカップリング容量を低減することができる。
【0051】
本実施の形態によれば、抵抗素子ERのESD耐性を劣化させることなく、かつ基板1との容量を殆ど考慮することなく、アクティブ領域上に2種類の抵抗素子ER、IRを配置することができる。これにより、酸化シリコン膜が埋め込まれた素子分離溝2の上部に抵抗素子ER、IRを配置する場合に比べ、基板1の全体面積に対する素子分離領域の割合を低減することができるので、基板1の表面の平坦化とチップサイズの縮小とを両立させることが可能となる。
【0052】
(実施の形態3)
図14に示すように、本実施の形態では、静電保護回路52の抵抗素子ERおよび内部回路51の抵抗素子IRをそれぞれ素子分離溝2の上部に配置する。また、抵抗素子ER、IRのそれぞれの下部の素子分離溝2には、複数のダミーアクティブ領域21を島状、格子状、またはマトリクス状に形成する。これにより、酸化シリコン膜が埋め込まれた素子分離溝2の上部に抵抗素子ER、IRを配置する場合に比べて、基板1の表面をより平坦化することができる。
【0053】
この場合、ダミーアクティブ領域21と抵抗素子ER、IRとのカップリング容量を低減するために、抵抗素子ER、IRのそれぞれの下部には、厚い膜厚を有する絶縁膜(ゲート絶縁膜7)を介在させる。また、抵抗素子ERのESD耐性が劣化するのを防ぐために、抵抗素子ERのエッジ部の下部には、ダミーアクティブ領域21を配置しないようにする。
【0054】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0055】
前記実施の形態1では、第1層目の多結晶シリコン膜(高耐圧MISFETのゲート電極8に用いるn型多結晶シリコン膜)を用いて抵抗素子ER、IRを形成したが、第2層目の多結晶シリコン膜(中耐圧pチャネル型MISFETのゲート電極13および低耐圧pチャネル型MISFETのゲート電極14に用いるn型多結晶シリコン膜)を用いて抵抗素子ER、IRを形成することもできる。また、2種類の抵抗素子ER、IRのいずれか一方を第1層目の多結晶シリコン膜で形成し、他方を第2層目の多結晶シリコン膜で形成することもできる。
【0056】
前記実施の形態では、LCDドライバに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、厚いゲート絶縁膜を有する高耐圧MISFETと、シリコン膜からなる抵抗素子とを同一半導体基板上に形成する各種半導体デバイスに広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、高耐圧MISFETと抵抗素子とを同一半導体基板上に形成する半導体装置に利用されるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 半導体基板
1A 半導体チップ
2 素子分離溝
3 n型埋込み層
4 p型埋込み層
5 n型ウエル
6 p型ウエル
7 ゲート絶縁膜
8 ゲート電極
9 キャップ絶縁膜
10 n型半導体領域
11、12 ゲート絶縁膜
13、14 ゲート電極
16 サイドウォールスペーサ
17 n型半導体領域
18 p型半導体領域
20 シリサイド層
21 ダミーアクティブ領域
50 入出力端子(ボンディングパッド)
51 内部回路
52 静電保護回路
、D 保護ダイオード
ER 抵抗素子
IR 抵抗素子
HN 高耐圧nチャネル型MISFET
HP 高耐圧pチャネル型MISFET
MP 中耐圧pチャネル型MISFET
LP 低耐圧pチャネル型MISFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上部に形成された素子分離溝と、
前記素子分離溝に埋め込まれた第1絶縁膜と、
前記素子分離溝で規定された複数のダミーアクティブ領域と、
前記第1絶縁膜及び前記複数のダミーアクティブ領域上に形成された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に形成された抵抗素子と、を有し、
前記複数のダミーアクティブ領域には、半導体素子が形成されておらず、
前記複数のダミーアクティブ領域は、抵抗素子の下に形成されており、
前記抵抗素子のエッジ部は、前記第1絶縁膜と平面的に重なっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2絶縁膜は、CVD法によって形成された酸化シリコン膜を主成分として構成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記抵抗素子は、シリコン膜から形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記複数のダミーアクティブ領域は、島状、格子状、または、マトリクス状に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記抵抗素子のエッジ部は、前記ダミーアクティブ領域上には形成されていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記抵抗素子は、静電保護回路の一部として用いられることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、LCDドライバに適用されることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体基板上には、第1MISFETが形成されており、
前記第1MISFETは、
前記半導体基板上に形成された第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、を有し、
前記第1絶縁膜と前記第1ゲート絶縁膜は、同層の絶縁膜で形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記半導体基板上には、第2MISFETが形成されており、
前記第2MISFETは、
前記半導体基板上に形成された第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、を有し、
前記第1MISFETは、前記第2MISFETよりも高い電源電圧で動作するMISFETであり、
前記第1ゲート絶縁膜の膜厚は、前記第2ゲート絶縁膜の膜厚よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記抵抗素子と前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極は、同層のシリコン膜で形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
(a)半導体基板に素子分離溝を形成する工程と、
(b)前記素子分離溝中に第1絶縁膜を埋め込む工程と、
(c)前記素子分離溝の外部の前記第1シリコン膜を化学的機械研磨法により除去する工程と、
(d)前記(c)工程の後、前記半導体基板上に第2絶縁膜を形成する工程と、
(e)前記第2絶縁膜上に抵抗素子を形成する工程と、を含み、
前記抵抗素子の下には、前記素子分離溝で規定された複数のダミーアクティブ領域が形成され、
前記複数のダミーアクティブ領域には、半導体素子が形成されておらず、
前記抵抗素子のエッジ部は、前記素子分離溝に埋め込まれた前記第1絶縁膜と平面的に重なっていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2絶縁膜は、CVD法によって形成された酸化シリコン膜を主成分として構成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2絶縁膜は、CVD法によって形成された酸化シリコン膜および熱酸化法によって形成された酸化シリコン膜からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記抵抗素子は、シリコン膜から形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記複数のダミーアクティブ領域は、島状、格子状、または、マトリクス状に形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記抵抗素子のエッジ部は、前記ダミーアクティブ領域上には形成されないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記抵抗素子は、静電保護回路の一部として用いられることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置は、LCDドライバに適用されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置は、前記半導体基板上に形成された第1ゲート絶縁膜と前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1ゲート電極を有する第1MISFETを含み、
前記(d)工程において、前記第1ゲート絶縁膜が形成され、
前記(e)工程において、前記第1ゲート電極が形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置は、前記半導体基板上に形成された第2ゲート絶縁膜と前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2ゲート電極を有する第2MISFETを含み、
前記(d)工程の後で、かつ、前記(e)工程の前の工程において、前記第2ゲート絶縁膜が形成され、
前記(e)工程において、前記第2ゲート電極が形成され、
前記第1MISFETは、前記第2MISFETよりも高い電源電圧で動作するMISFETであり、
前記第1ゲート絶縁膜の膜厚は、前記第2ゲート絶縁膜の膜厚よりも大きいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2ゲート絶縁膜は、熱酸化法によって形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−156520(P2012−156520A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54666(P2012−54666)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2005−268135(P2005−268135)の分割
【原出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】