説明

半導体装置の製造方法

【目的】より簡易な手法で、所定の層表面に反射防止構造を形成する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、高周波電力を印加したプラズマ雰囲気中で、基板上にシリコン(Si)含有絶縁膜を形成する工程(S102)と、前記Si含有絶縁膜を形成する際に用いたガスを継続して流し続けながら前記高周波電力の出力を弱めることで、前記Si含有絶縁膜上にSiを主成分とする複数の粒子を堆積させる工程(S104)と、前記複数の粒子をマスクとして、前記Si含有絶縁膜をエッチングする工程(S106)と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等の光学部品に用いる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSセンサーに代表される光学部品として用いる半導体素子には、酸化シリコン(SiO)絶縁膜あるいは窒化シリコン(SiN)絶縁膜といった絶縁膜が用いられる。これらの膜は、一般に、化学気相成長(CVD)法により成膜される。近年、かかる光学部品としての半導体素子に用いられるSiO絶縁膜或いはSiN絶縁膜においては、微細化と共に光学材料の表面における反射の抑制が望まれている。しかし、同時に消衰係数や屈折率に対するデバイス要求も厳しくなっており、これら光学特性の両立は困難を極める状況にある。光がある物質から他の物質に入射した場合、この2つの物質間に屈折率の差があると、入射した光の一部が反射する。このとき、片方の物質の屈折率を固定した場合、屈折率の差が大きいほど反射の程度が大きくなる。入射光の波長よりも短い微細構造パターンを材料表面に形成することで、反射を抑制することができる。かかる微細構造パターンの形成を通常のリソグラフィー技術を用いて行なうには、フォトマスクの製造、露光及び現像といったかかるフォトマスクを使ったレジストパターニング、及びレジストパターンをマスクとしたエッチングといった複数の工程が必要となる。このようなプロセスでは、煩雑であり、かつコストも増加するといった問題がある。
【0003】
かかるリソグラフィー技術を用いずに反射防止構造を形成する方法として、次のような方法が提案されている。基材よりもエッチングされにくい粒子を分散させた粒子分散液を塗布法で基材上に塗布する。そして、かかる粒子分散液を広げた後に、乾燥させて、基材層上に粒子を分散させる。そして分散した粒子をマスクとして、粒子と共に基材層をエッチングする。これにより、基材表面に反射防止構造を形成している(例えば、特許文献1参照)。しかし、かかる場合でも基材層を形成した後に、別の装置で粒子分散液を塗布する工程、及び分散液を乾燥させる工程が必要になり、やはり、製造プロセスが煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−162965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、上述したような従来の問題点を克服し、より簡易な手法で、所定の層表面に反射防止構造を形成する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、高周波電力を印加したプラズマ雰囲気中で、基板上にシリコン(Si)含有絶縁膜を形成する工程と、前記Si含有絶縁膜を形成する際に用いたガスを継続して流し続けながら前記高周波電力の出力を弱めることで、前記Si含有絶縁膜上にSiを主成分とする複数の粒子を堆積させる工程と、前記複数の粒子をマスクとして、前記Si含有絶縁膜をエッチングする工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、Si含有絶縁膜を形成する装置でそのままマスクとなる粒子を堆積させることができる。よって、従来に比べてより簡易な手法で、Si含有絶縁膜表面に反射防止構造を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部工程を表すフローチャートである。
【図2】図1の半導体装置の製造方法について説明するための工程断面図である。
【図3】実施の形態1におけるプラズマCVD装置の構成を示す概念図である。
【図4】実施の形態1におけるRF出力とガスの供給と形成物の時間的推移を示す図である。
【図5】実施の形態1におけるSiHガス供給停止後にRF電力をOFFにした場合とRF電力をOFFにした後にSiHガス供給を停止した場合のSi粒子の堆積状況をカウントした一例を示す図である。
【図6】実施の形態1により粗面が形成されたSi含有絶縁膜を備えた半導体装置をCMOSセンサーに用いた場合の一例を示す断面図である。
【図7】実施の形態1におけるSi粒子の残渣が有るドライエッチング後の状態の一例を示す断面図である。
【図8】実施の形態1における他の凹凸面の断面形状の一例を示す図である。
【図9】実施の形態1における反射防止構造と屈折率との関係を示す図である。
【図10】反射防止構造の有無による入射光の波長と反射率との関係を示すグラフの一例である。
【図11】実施の形態2における半導体装置の製造方法の要部工程を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、実施の形態1について、図面を用いて説明する。
図1は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部工程を表すフローチャートである。図1において、実施の形態1の半導体装置の製造方法では、Si含有絶縁膜形成工程(S102)と、Si粒子堆積工程(S104)と、ドライエッチング工程(S106)という一連の工程を実施する。また、必要に応じて、さらに、残存Si粒子除去工程(S108)を実施する。
【0010】
図2は、図1の半導体装置の製造方法について説明するための工程断面図である。図2では、Si含有絶縁膜形成工程(S102)からドライエッチング工程(S106)までを示している。
【0011】
図2(a)において、Si含有絶縁膜形成工程(S102)として、高周波電力を印加したプラズマ雰囲気中で、基板200上にシリコン(Si)含有絶縁膜210を形成する。例えば、50nm〜200nmの膜厚で形成する。Si含有絶縁膜210としては、窒化シリコン(SiN)膜、酸化シリコン(SiO)膜、或いは窒酸化シリコン(SiON)膜が好適である。これらは、全て、シラン(SiH)ガスを原料ガスとしてプラズマCVD装置で形成できる。基板200として、例えば、300mmシリコンウェハを用いると好適である。基板200に形成されるデバイス部分や配線部分については省略している。基板200には、例えば、CMOSセンサー用のデバイス部分が形成される。例えば、裏面照射型のCMOSセンサーを構成するフォトダイオード層が基板表面側に形成され、フォトダイオード層の下層に配線層が形成される。但し、これに限るものではなく、その他のデバイスや配線等が形成されていても構わない。半導体装置がCMOSセンサー等の光学部品として用いられる場合、Si含有絶縁膜210は、例えば、反射防止膜として機能する。
【0012】
図3は、実施の形態1におけるプラズマCVD装置の構成を示す概念図である。ここでは、平行平板型CVD装置100を一例として示している。チャンバ102の上面側の開口部にガス分散板104が配置され、反応容器が構成される。ガス分散板104は、いわゆるシャワーヘッドの構造となっており、チャンバ外部よりプロセスガスがチャンバ内に上方から均一に供給される。また、ガス分散板104は、上部電極を兼ねており、高周波(RF)電源101から高周波電力が印加される。RF電源101とRF電極間のRFマッチング回路の図示は省略している。チャンバ102内には、ステージ106が配置され、ステージ106上に成膜される基板200が配置される。ステージ106は、下部電極を兼ねており、接地されている。また、ステージ106内にはヒータ108が内蔵され、基板200を加熱することができる。また、チャンバ内は、真空ポンプ109によって真空引きされ、所望の圧力に制御できる。
【0013】
例えば、Si含有絶縁膜210として、SiN膜を形成する場合、以下のように成膜すればよい。まず、ステージ106上に成膜される基板200が配置される。そして、原料ガスを供給する。Si含有原料として例えばSiHを用い、さらに窒化原料として例えば窒素(N)とアンモニア(NH)を用いる。これらの原料ガスは、図示しないマスフローコントローラ(MFC)にて流量が制御され、ガス分散板104を通って、均一に分散しチャンバ内に供給される。例えば、SiHガスを8.4×10−2Pa・m/s(50sccm)、NHガスを8.4×10−1Pa・m/s(500sccm)、Nガスを5Pa・m/s(3000sccm)供給する。また、チャンバ内圧力は、例えば、6.65×10Pa(5torr)程度に制御すると良い。基板温度は、350〜400℃が好適である。圧力、ガス流量、及び温度が安定したところでRF電源101から高周波電力を印加することで容量結合によりチャンバ内の空間に電力が供給されプラズマを発生させる。高周波電力は、例えば、300〜1000Wの電力を印加する。
【0014】
なお、Si含有絶縁膜210として、SiO膜を形成する場合には、原料ガスとして、SiHガスの他に、酸化原料ガスとして、NOガス、COガス或いはOガスを供給すればよい。
【0015】
図2(b)において、Si粒子堆積工程(S104)として、Si含有絶縁膜210を形成する際に用いたガスを継続して流し続けながら高周波電力の出力を弱めることで、Si含有絶縁膜210上にSiを主成分とする複数のSi粒子220(複数の粒子)を堆積させる。
【0016】
図4は、実施の形態1におけるRF出力とガスの供給と形成物の時間的推移を示す図である。Si粒子220を形成する際には、Si含有絶縁膜210を形成する際に供給していたSiHガスをチャンバ内に引き続き導入させた状態のままRF電源101の出力を停止(OFF)することにより微小なSi粒子220をSi含有絶縁膜210上に堆積できる。例えば、SiHガス、NHガス、及びNガスを流しながらプラズマ雰囲気下でSiN膜を形成し、かかる状態でRF電源101の出力をOFFにすることで、SiN膜上にSi粒子220を堆積できる。なお、Si粒子220の形成にはSiHガスが供給されていればよく、NHガス及びNガスは供給されなくても構わない。よって、RF電力をOFFにした後にNHガス及びNガスの供給を停止してもよいし、RF電力をOFFにする前にNHガス及びNガスの供給を停止してもよい。また、RF電源101の出力をOFFにするのではなく、弱めるようにしてもよい。例えば、500Wの出力を10Wに弱めるようにしてもよい。例えば、10%以下に弱めるとよい。
【0017】
図5は、実施の形態1におけるSiHガス供給停止後にRF電力をOFFにした場合とRF電力をOFFにした後にSiHガス供給を停止した場合のSi粒子の堆積状況をカウントした一例を示す図である。SiN膜の形成が完了しSiHガス供給を停止後にRF電力をOFFにした基板10には、Si粒子220が4個観測された。これに対し、SiN膜の形成が完了しRF電力をOFFにした後にSiHガス供給を停止した基板20では、20235個のSi粒子220が観測された。このように、実施の形態1における処理フローを行なうことで、基板全面にSi粒子220を堆積できる。
【0018】
また、図5の例では、RF電力が低下し始めてから0になるまでの停止速度が、例えば5000W/sの場合を示しているが、かかるRF電力の停止速度を調整することで、基板上に堆積するSi粒子220の個数を調整すればよい。また、SiHガスの供給量を調整することによってSi粒子220の個数を調整してもよい。
【0019】
実施の形態1によれば、Si粒子220は、Si含有絶縁膜210上のほぼ全面に分散させることができる。分散の程度は均一である必要はなく、ランダムであってもよい。しかし、かかる場合でも、Si粒子220の粒径は、概ね100nm以下にできる。また、Si粒子220間のピッチPは概ね200nm以下にでき、その多くのSi粒子220間のピッチPは100nm以下にできる。
【0020】
以上のように、実施の形態1によれば、同一のプラズマCVD装置(チャンバ)内で、Si含有絶縁膜210の形成に引き続き、連続して多数のSi粒子220をSi含有絶縁膜210上に堆積させることができる。よって、従来の塗布法で粒子を堆積させるような煩雑なプロセスを回避できる。さらに、塗布法の場合に必要な分散液の乾燥工程も不要となり製造工程数を減らすことができる。さらに、RF電力の停止タイミングを変えるといった従来にない簡易な手法で多数のSi粒子220を形成できる。
【0021】
図2(c)において、ドライエッチング工程(S106)として、基板上に堆積した複数のSi粒子220をマスクとして、Si含有絶縁膜210をエッチングする。ここでは、ドライエッチング法でエッチングする。例えば、イオンエッチング(RIE)法を用いることが好適である。エッチングガスは、Si含有絶縁膜210に対するエッチングレート比(選択比)がSiよりも大きくなるガスを用いることが望ましい。Si含有絶縁膜210がSiN膜である場合には、CF、C、C、CHF等のようなCF系のガスを用いると好適である。このように、少なくともC,Fを含むガスをプラズマにより解離して発生したイオン成分或いはラジカル成分をエッチャントとしてドライエッチングする。エッチング深さは、Si含有絶縁膜210を貫通しない深さであればよいが、Si含有絶縁膜210の膜厚の25%から75%の深さにするとより好適である。
【0022】
Si含有絶縁膜210と一緒にSi粒子220も除々にエッチングされるため、Si粒子220の径がエッチングの進行と共に小さくなる。そのため、表面に露出するSi含有絶縁膜210の面積をエッチングの進行と共に広げることができる。そのため、図2(c)に示すように開口部150断面が底部に向かうほど幅を狭くできる。そして、Si粒子220が消滅することで、側面が傾斜した上部になるほど幅が狭くなる凸部を形成できる。
【0023】
光の反射を抑制するためには、物体表面に形成される粗面(凹凸面)の凸部間あるいは凹部間ピッチが、入射光或いは出射光の波長よりも短いことが必要となるが、例えば、可視光では、200nm以下となる。実施の形態1では、Si粒子間のピッチPを概ね200nm以下にできるので、エッチング後の粗面(凹凸面)の凸部間あるいは凹部間ピッチPを200nm以下にできる。また、Si粒子間のピッチPが100nm以下の領域ではエッチング後の粗面(凹凸面)の凸部間あるいは凹部間ピッチPを100nm以下にできる。よって、Si含有絶縁膜210に入射する少なくとも可視光の反射を抑制できる。或いは、Si含有絶縁膜210から出射する少なくとも可視光の反射を抑制できる。
【0024】
図6は、実施の形態1により粗面が形成されたSi含有絶縁膜を備えた半導体装置をCMOSセンサーに用いた場合の一例を示す断面図である。ここでは、裏面照射型のCMOSセンサーの一部を示している。基板200として、支持基板40上に配線層42が形成され、配線層42上にフォトダイオード層44が形成される。そして、フォトダイオード層44上に、反射防止膜となる上述した表面が入射光の波長よりも短いピッチの凹凸形状の粗面となったSi含有絶縁膜210が形成される。Si含有絶縁膜210上にはカラーフィルタ50が配置され、カラーフィルタ50上にオンチップレンズ52等のレンズが配置される。かかる構成により、オンチップレンズ52に入射した光はカラーフィルタ50を介してSi含有絶縁膜210を通過してフォトダイオード層44に入射する。このように、実施の形態1における半導体装置は、光学部品として用いることができる。実施の形態1では、Si含有絶縁膜210の表面が入射光の波長よりも短いピッチの凹凸形状の粗面となっているので、入射光のほとんどが反射されずにフォトダイオード層44に入射できる。
【0025】
ここでは、実施の形態1における半導体装置を光が入射するCMOSセンサーに用いた場合を一例として示しているが、これに限るものではなく、実施の形態1における半導体装置を半導体装置から光を出射する素子に用いても同様の効果を得ることができる。いずれの場合でも、実施の形態1における半導体装置を製造する際に、複数のSi粒子220間のピッチを、半導体装置への入射光或いは半導体装置からの出射光の波長よりも短くすれば、Si含有絶縁膜210の表面に反射防止構造となる凹凸面を形成できる。
【0026】
ここで、上述した例では、ドライエッチング工程(S106)によりSi粒子220が消滅するように記載しているが、これに限るものではない。
【0027】
図7は、実施の形態1におけるSi粒子の残渣が有るドライエッチング後の状態の一例を示す断面図である。図7に示すように、Si含有絶縁膜210上のSi粒子220が完全に消滅しない状態でドライエッチングを停止してもよい。Si粒子220が十分に消滅しない場合或いはSi粒子220が完全に消滅しないで残留物として残る程度でドライエッチングを停止する場合には、以下のようにSi粒子220を消滅させると好適である。
【0028】
残存Si粒子除去工程(S108)として、Si含有絶縁膜210をドライエッチング工程(S106)においてエッチングした後に残った複数のSi粒子220の残粒子を除去する。すなわち、上述したCF系のドライエッチング工程(S106)において所望の深さの開口部150を形成後に表面に微小なSi粒子220残渣が有る場合には、かかるSi粒子220残渣を除去する。ここでは、エッチングレート比(選択比)がSi含有絶縁膜210に対してSiの方が大きくなる別のエッチングガスを用いる。例えば、HCl、HBr等のハロゲン系ガスを用いると好適である。かかるハロゲン系ガスを用いてRIE処理若しくはCDE(ケミカルドライエッチング)処理を行なうことで残渣Si粒子220をSi含有絶縁膜210から剥離して除去できる。このように、少なくともハロゲンを含み且つCを含まないガスをプラズマにより解離して発生したイオン成分或いはラジカル成分をエッチャントとしてドライエッチングする。
【0029】
以上のように、エッチング選択比がSiよりも絶縁膜の方が高いエッチャントを半導体基板上に暴露させることにより絶縁膜表面に凹凸を形成したが、逆に、エッチング選択比が凹凸面を形成したエッチャントより低いエッチャントを半導体基板上に暴露させることで残渣Si粒子を除去できる。
【0030】
また、上述した例では、図2(c)に示したように凹凸面の凸部が、上部になるほど幅が狭くなるように形成した場合を示した。反射防止構造としては、かかる構造がより好ましいが、これに限るものではない。
【0031】
図8は、実施の形態1における他の凹凸面の断面形状の一例を示す図である。図8では、エッチングされた開口部152の断面形状が、傾斜した線で構成されない場合を示している。すなわち、開口部152の上部と下部の幅が実質的に同程度の場合を示している。かかる場合でも凹部間或いは凸部間のピッチPが入射光或いは出射光の波長よりも短いピッチであれば反射防止効果を得ることができる。
【0032】
図9は、実施の形態1における反射防止構造と屈折率との関係を示す図である。図9(a)では、反射防止構造をもった膜の断面形状の一例を示している。ここでは、一例として、凹凸面の凸部が、上部になるほど幅が狭くなるように形成された例が示されている。図9(b)では、表面に反射防止構造をもった膜の各層での平均的な屈折率の変化を示し、図9(c)では、屈折率変化のイメージ図を示している。図9(b)に示したように、平均的な屈折率の変化は、凹凸面の高さに関連する。よって、図2(c)で示したように断面形状が上部になるほど幅が狭くなる形状であっても、図8で示したように断面形状の幅に変化がない形状であっても平均的には屈折率が変化する。よって、図2(c)で示したように断面形状が上部になるほど幅が狭くなる形状だけではなく、図8で示したように断面形状の幅に変化がない形状であっても反射防止効果を得ることができる。
【0033】
図10は、反射防止構造の有無による入射光の波長と反射率との関係を示すグラフの一例である。図10では、反射防止構造を表面に形成しなかったSiOガラス基板を使って測定した入射光の波長と反射率との関係グラフをAで示す。反射防止構造を表面に形成したSiOガラス基板を使って測定した入射光の波長と反射率との関係グラフをBで示す。反射防止構造を表面に形成したSiOガラス基板での計算理論値による入射光の波長と反射率との関係グラフをCで示す。図10に示すように、反射防止構造を表面に形成することで反射率を大幅に小さくできる。
【0034】
以上のように、実施の形態1によれば、Si含有絶縁膜210を形成する装置でそのままマスクとなるSi粒子220を堆積させることができる。よって、従来に比べてより簡易な手法で、さらにより低コストで、Si含有絶縁膜210表面に反射防止構造を形成できる。
【0035】
実施の形態2.
実施の形態1では、ドライエッチング工程(S106)により反射防止構造となる粗面の凹凸形状を形成したが、これに限るものではない。実施の形態2では、ウェットエッチング法を用いて反射防止構造となる粗面の凹凸形状を形成する場合について説明する。
【0036】
図11は、実施の形態2における半導体装置の製造方法の要部工程を表すフローチャートである。図11において、ドライエッチング工程(S106)をウェットエッチング工程(S107)に代えた点以外は図1と同様である。また、必要に応じて、さらに、残存Si粒子除去工程(S108)を実施する点も実施の形態1と同様である。また、Si含有絶縁膜形成工程(S102)からSi粒子堆積工程(S104)までの内容は実施の形態1と同様である。
【0037】
ウェットエッチング工程(S107)として、基板上に堆積した複数のSi粒子220をマスクとして、Si含有絶縁膜210をウェットエッチングする。エッチングレート比(選択比)がSiに比べてSi含有絶縁膜210の方がより大きくなる溶液を用いる。Si含有絶縁膜210として、SiN膜を用いる場合には、ホット燐酸溶液を用いると好適である。ホット燐酸溶液として、温度が室温より高温の燐酸溶液を用いる。例えば、100℃以上、好ましくは150℃以上とするとよい。ホット燐酸溶液を用いて、例えば、枚葉スピンもしくはバッチ式のウェットエッチング装置を用いて処理を行い、例えばSi含有絶縁膜210の膜厚の25%から75%の深さとなるようにエッチングを行う。
【0038】
ウェットエッチングでもSi含有絶縁膜210と一緒にSi粒子220も除々にエッチングされるため、Si粒子220の径がエッチングの進行と共に小さくなる。そのため、表面に露出するSi含有絶縁膜210の面積をエッチングの進行と共に広げることができる。そのため、図2(c)に示すように開口部150断面が底部に向かうほど幅を狭くできる。そして、Si粒子220が消滅することで、側面が傾斜した上部になるほど幅が狭くなる凸部を形成できる。また、ウェットエッチングは、等方エッチングとなるので、形成される開口部150の断面形状プロファイルはより非直線的にできる。そのため、直線で形成される場合よりも反射防止効果の向上が期待できる。
【0039】
ここで、実施の形態2でも図7に示したように、Si含有絶縁膜210上のSi粒子220が完全に消滅しない状態でウェットエッチングを停止してもよい。Si粒子220が十分に消滅しない場合或いはSi粒子220が完全に消滅しないで残留物として残る程度でウェットエッチングを停止する場合には、以下のようにSi粒子220を消滅させると好適である。
【0040】
残存Si粒子除去工程(S108)として、Si含有絶縁膜210をウェットエッチング工程(S107)においてエッチングした後に残った複数のSi粒子220の残粒子を除去する。ここでは、エッチングレート比(選択比)がSiに比べてSi含有絶縁膜210の方が小さくなる溶液を用いる。例えば弗酸と硝酸の混合溶液やアンモニアと過酸化水素水の混合用液等を用いてウェット処理を行う。かかる処理を行なうことで残渣Si粒子220をSi含有絶縁膜210から剥離して除去できる。
【0041】
以上のように、実施の形態2でも、実施の形態1と同様、エッチング選択比がSiよりも絶縁膜の方が高いエッチャントを半導体基板上に暴露させることにより絶縁膜表面に凹凸を形成したが、逆に、エッチング選択比が凹凸面を形成したエッチャントより低いエッチャントを半導体基板上に暴露させることで残渣Si粒子を除去できる。
【0042】
ここで、Si含有絶縁膜210として、SiO膜を用いる場合、上述したウェットエッチング工程(S107)において、エッチング液としてHF溶液を用いるとよい。HF溶液を用いるとSi粒子220がSi含有絶縁膜210から剥離してしまうが、最初に少しでもSi含有絶縁膜210表面に凹凸が形成できれば、かかる凹部からエッチングが進行するので所望の凹凸面を形成できる。
【0043】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、上述した例では、ドライエッチング工程(S106)後の残存Si粒子除去工程(S108)はドライエッチング法を用いているが、これに限るものではなく、実施の形態2で説明したウェットエッチング法を用いても好適である。同様に、ウェットエッチング工程(S107)後の残存Si粒子除去工程(S108)はウェットエッチング法を用いているが、これに限るものではなく、実施の形態1で説明したドライエッチング法を用いても好適である。また、上述した例では、SiHガスを原料ガスとしてプラズマCVD装置でSi含有絶縁膜210を形成後、引き続き、Si粒子220を堆積させたが、TEOS(Tetraethylorthosilicate)を原料ガスとして用いてもよい。
【0044】
さらに、反射防止膜の膜厚や、開口部のサイズ、形状、数などについても、半導体集積回路や各種の半導体素子において必要とされるものを適宜選択して用いることができる。
【0045】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体装置及び半導体装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。
【0046】
また、説明の簡便化のために、半導体産業で通常用いられる手法、例えば、処理前後のクリーニング等は省略しているが、それらの手法が含まれ得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
100 平行平板型CVD装置、101 RF電源、10,20,200 基板、210 Si含有絶縁膜、220 Si粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力を印加したプラズマ雰囲気中で、基板上にシリコン(Si)含有絶縁膜を形成する工程と、
前記Si含有絶縁膜を形成する際に用いたガスを継続して流し続けながら前記高周波電力の出力を弱めることで、前記Si含有絶縁膜上にSiを主成分とする複数の粒子を堆積させる工程と、
前記複数の粒子をマスクとして、前記Si含有絶縁膜をエッチングする工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記Si含有絶縁膜をエッチングした後に残った前記複数の粒子の残粒子を除去する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ガスとして、シラン(SiH)ガスを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記Si含有絶縁膜は、窒化シリコン(SiN)膜、酸化シリコン(SiO)膜、及び窒酸化シリコン(SiON)膜のうちの1つであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体装置は、光学部品として用いられ、
前記複数の粒子間のピッチは、前記半導体装置への入射光或いは前記半導体装置からの出射光の波長よりも短いことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−142262(P2011−142262A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2924(P2010−2924)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】