説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】静電保護素子である保護トランジスタのサイズを縮小することができ、ゲート端子の抵抗成分を同程度に抑え、時定数を増加させることなく、保護トランジスタの回路動作スピードの低下を防ぐことができるとともに、電荷集中を緩和し、静電破壊耐量を向上させることができる。
【解決手段】本発明に係る半導体装置は、ソース・ドレイン領域と、ソース・ドレイン領域の上方に形成されたゲート電極と、ゲート電極の側面に形成されたサイドウォールと、ソース・ドレイン領域の上面に、サイドウォールから所定の距離だけ離間して形成された第1のシリサイド膜と、ゲート電極の上面に、サイドウォールから所定の距離だけ離間して形成された第2のシリサイド膜とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に静電気などサージから内部回路を保護する保護トランジスタを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置は、素子サイズの微細化に伴い、各層の膜厚も薄くなり、回路抵抗が全てにおいて増加する傾向にある。その結果、回路の動作スピードの低下を招いている。そのため、トランジスタの各要素であるゲート、ソースおよびドレインのそれぞれの上部表面に、チタンやコバルト等の金属を蒸着させ、熱処理を施し、合金化させて、素子の抵抗成分を減少させるというサリサイドプロセスを用いた拡散工程を用いて半導体装置の製造を行い、回路動作の高速化を実現している。
【0003】
しかしながら、半導体装置の外部入出力端子に設けられる静電破壊保護素子は、保護トランジスタのドレイン部がシリサイド化により低抵抗化されるため、静電気による放電電流がドレイン部に流れる場合においては、ゲート電極側面に近いシリサイド膜直下のドレイン端に電荷が集中し易く、局所的な熱破壊が生じやすくなる。
【0004】
その結果、上記のサリサイドプロセスで製造された半導体装置の静電破壊耐量は、格段に低いと言わざるを得ない。
【0005】
このような背景のもと、静電破壊耐量が高く、且つ高速動作が可能な半導体装置が種々検討されている(特許文献1、2参照)。
【0006】
例えば、特許文献1には、入出力部に用いられる保護トランジスタにおいてシリサイドゲートを有し、高静電破壊耐圧を保持させる半導体装置に関する発明が記載されている。
【0007】
図4に、特許文献1にかかる半導体装置の構造断面図を示す。
半導体基板101上にゲート酸化膜を介して多結晶シリコンゲート116、ドレイン領域117、ソース領域118からなるNchMOSトランジスタが形成されている。さらに、多結晶シリコンゲート116、ドレイン領域117、ソース領域118上には、Tiシリサイド膜119、120、122、121、123が形成されている。Tiシリサイド膜122、123上には、それぞれ金属配線124、125とのコンタクトが形成されており、金属配線124は入出力端子に、金属配線125は、VSS(GND)端子に接続されている。
【0008】
ここで、Tiシリサイド膜120、122下のドレイン領域の間に拡散抵抗135を設けるために、Tiシリサイド膜120と122は互いに分離させている。同様に、ソース領域118上のTiシリサイド膜121と123も分離させている。
【0009】
上記のような半導体装置の構成では、ドレイン領域117およびソース領域118上のTiシリサイド膜120、122および121、123がそれぞれ分離されている。このため、入出力端子にサージが印加されても、Tiシリサイド膜120、122間の拡散抵抗135および121、123間の拡散抵抗136がサージ放電のエネルギーを吸収し、高い静電破壊耐圧が得られる。
【0010】
さらに、多結晶シリコンゲート116上に形成されているTiシリサイド膜119によって、低抵抗なゲート電極が得られ、高速な回路動作が可能になる。すなわち、高静電破壊耐圧を保持し、且つゲート上にシリサイド膜を有する保護トランジスタが得られる。
【0011】
一方、特許文献2には、半導体装置で発生した熱を放熱しやすくすることによって、ESD(Electrostatic Discharge)耐圧を高めた半導体装置が記載されている。図5に、特許文献2にかかる半導体装置の構造断面図を示す。
【0012】
拡散層領域203に形成されたチャネル211の上に、ゲート絶縁膜207を介してゲート電極208を設けている。また、ゲート電極208の側壁部には、サイドウォール209が形成され、ゲート電極208上とソース・ドレイン領域205上の一部に、ゲート電極208およびサイドウォール209を被覆するように、シリサイドプロテクション膜210が形成されている。シリサイドプロテクション膜210が設けられていないソース・ドレイン領域205上には、シリサイドプロテクション膜210に隣接して金属シリサイド膜206が形成されている。このシリサイドプロテクション膜210は、SiC膜およびSiOC膜の少なくとも一方からなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平7−106567号公報
【特許文献2】特開2006−156664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、発明者は、上記の半導体装置には、改善すべき点があると考えた。まず、図4に係る半導体装置は、保護トランジスタの面積増大により、半導体装置そのものの面積が増大し、その結果、製造コストを増大させるという問題点がある。
【0015】
ここで、図4に係る半導体装置は、ドレイン部のシリサイド膜を寸断する様な構造を有している。すなわち、外部端子に接続される金属配線124は、シリサイド膜122を介してドレイン領域117に接続する。金属配線124は、このドレインの抵抗成分である拡散抵抗135を介して、さらに、シリサイド膜120に接続され、ゲート電極のドレイン側の側面の直下のドレイン部、つまり、チャネル方向へと繋がって接続される構造を有している。
【0016】
次に、図6を参照して、図4の半導体装置の課題を具体的に説明する。ドレイン領域において、Tiシリサイド膜120、122間に拡散抵抗135を設け、Tiシリサイド膜120と122を互いに分離させる構造をとるためには、ドレインの領域にTiシリサイド膜120、拡散抵抗135、Tiシリサイド膜122を並べた距離(サイズ)が必要となる。ソース側についても同様に、Tiシリサイド膜121、123間に拡散抵抗136を設け、Tiシリサイド膜121と123を互いに分離させる構造をとるために、ソースの領域にTiシリサイド膜121、拡散抵抗136、Tiシリサイド膜123を並べた距離(サイズ)が必要となる。このため、保護トランジスタの素子サイズを大きくとらなければならない。
【0017】
すなわち、ゲート電極116上にTiシリサイド膜を形成し、ソース・ドレイン領域117、118に拡散抵抗135、136を形成するために、特許文献1では、図示しないTi膜を成膜した後、ソース・ドレイン領域117、118上のTiシリサイド膜を形成しない領域に形成されたTi膜をエッチングで除去してから、熱処理してTiシリサイド膜を形成している。このため、Ti膜のエッチングを行う際のレジストマスクの目あわせズレ等のマージンを考慮する必要がないように、Ti膜を除去する領域(すなわち、拡散抵抗135、136を形成する領域)は、ゲート電極116の両サイドの段差周辺を避けている。つまり、ドレイン領域117側にはL1、ソース領域118側にはL2の余裕を持たせているため、Tiシリサイド膜120、121のサイズであるL1+L2分、素子サイズを大きくとる必要が出てくる。
【0018】
一方、図5に係る半導体装置では、ゲート電極208上には金属シリサイド膜を設けず、ソース・ドレイン領域205の金属シリサイド膜206が、ゲート電極208のサイドウォール209から離して形成されている。したがって、上述したL1+L2分のシリサイド膜形成エリアが無いため、素子サイズは小さくなる。しかし、この半導体装置は、ゲート電極208上に金属シリサイド膜を全く設けていないので、ゲート抵抗成分が増大し、回路動作スピードの低下を招くという問題点がある。
【0019】
上述のように、特許文献1にかかる半導体装置は、保護トランジスタの素子サイズを小さくすることが難しく、保護トランジスタの面積増大により、半導体装置の面積が増大し、製造コストを増大させるという問題点がある。一方、特許文献2にかかる半導体装置は、特許文献1のような保護トランジスタの面積増大は無いものの、ゲート電極に金属シリサイド膜を設けないので、回路動作スピードの低下を招くという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る半導体装置は、ソース・ドレイン領域と、前記ソース・ドレイン領域の上方に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極の側面に形成されたサイドウォールと、前記ソース・ドレイン領域の上面に、前記サイドウォールから所定の距離だけ離間して形成された第1のシリサイド膜と、前記ゲート電極の上面に、前記サイドウォールから所定の距離だけ離間して形成された第2のシリサイド膜とを備える。
【0021】
このように、ソース・ドレイン領域の上面に、サイドウォールから所定の距離だけシリサイド膜を形成しない領域を設け、ゲート電極の上面に、サイドウォールから所定の距離だけシリサイド膜を形成しない領域を設ける構成により、回路動作スピードの低下を防ぎ、保護トランジスタの素子サイズを小さくすることが可能である。また、電荷集中を緩和し、静電破壊耐量の向上が可能となる結果、静電破壊耐量を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、保護トランジスタの素子サイズを縮小することができ、ゲート端子の抵抗成分を同程度に抑え、時定数を増加させることなく、保護トランジスタの回路動作スピードの低下を防ぐことができるとともに、電荷集中を緩和し、静電破壊耐量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置のレイアウト平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を簡略化した一部レイアウト平面図である。
【図3】図1のX−X'線における断面図である。
【図4】特許文献1に係る半導体装置の断面図である。
【図5】特許文献2に係る半導体装置の断面図である。
【図6】図4の課題を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者は、時定数が増加することなく、保護トランジスタの回路動作スピードの低下を防ぐとともに、サイズが増大しないような保護トランジスタについて鋭意検討を行った。特に、ゲート電極上をシリサイド化してゲート抵抗を低減しつつ、静電破壊で電荷集中しやすいソース・ドレイン部のゲート電極側面の直下周辺において、シリサイド化しないことで、静電破壊耐量の劣化を防ぐ点を両方満足するような保護トランジスタについて検討を重ねた。
【0025】
その結果、本発明者は、保護トランジスタの素子サイズを従来技術の図4よりも縮小することができ、ゲート抵抗を従来技術の図5よりも低くし、従来技術の図4に迫る程度に抑える半導体装置を発明した。これにより、時定数を増加させることなく、保護トランジスタの回路動作スピードの低下を防ぐことができるとともに、電荷集中を緩和し、静電破壊耐量を高めることができる半導体装置を提供することができる。
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0027】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置のレイアウト平面図であり、図2は、図1におけるX2の範囲を簡略化した一部レイアウト平面図であり、図3は、図1のX−X'における断面図である。本発明の半導体装置は、入出力部のみならず、入力部または出力部にも適用可能である。
【0028】
図1および図3に示すように、例えばP型半導体基板1上に、Pウェル2を設置して保護トランジスタを形成する。隣接する保護トランジスタは、ほぼ中心に位置するN型ドレイン領域7を共用するように配置される。このN型ドレイン領域7の左右の位置に、保護トランジスタを並列に配設するように、ゲート電極9、10、N型ソース領域6、8が配置される。当該保護トランジスタの外周には、Pウェル2への電圧供給のため、P型拡散層であるPウェルタップ5が配置される。ゲート電極9、10の側面に、ゲート電極サイドウォール部21、22が配設される。また、N型ソース領域6、8のN型ドレイン領域7とは反対側の位置に隣接して、Shallow Trench Isolation(STI)酸化膜3が形成される。また、STI酸化膜3の上方に、PSG等絶縁膜4を配設する。そして、Pウェルタップ5、N型ソース領域6、8、N型ドレイン領域7、ゲート電極9、10の表面に、シリサイド膜15、16、20、18、17、19を形成する。なお、基板1は、P型半導体基板に限らず、N型半導体基板やSOI(Silicon On Insulator)基板でもよい。シリサイド膜17、19は、ゲート電極サイドウォール部21、22から一定の距離だけ離して形成されている。
【0029】
図1、図2に示すように、シリサイド化抑制エリア23、24、25、26を形成する。具体的には、図2に示すように、シリサイド化抑制エリア23、24の一部である、シリサイド化抑制エリア27(すなわち、ソース・ドレイン領域6,7の上部表面)はシリサイド化させない。また、シリサイド化抑制エリア23、24の一部である、シリサイド化抑制エリア28(すなわち、ゲート電極9の上部表面はシリサイド化させない。
【0030】
図3に示すように、N型ドレイン領域7は、シリサイド膜18とオーミック接続され、コンタクトプラグ13および配線(図示せず)により、外部入出力端子と接続される。N型ソース領域6、8は、それぞれシリサイド膜16、20とオーミック接続され、コンタクトプラグ12、14および配線(図示せず)によりGND(接地)電位が接続される。また、保護トランジスタのバックゲートは、Pウェルタップ5により与えられ、シリサイド膜15とオーミック接続され、コンタクトプラグ11を介してGND電位が接続される。
【0031】
次に、本実施の形態に係る半導体装置について、より具体的に説明する。
上述の通り、保護トランジスタは、図3に示されるように、シリサイド膜18とコンタクトプラグ13を中心に、並列に配設され、同等に並列接続される。
【0032】
次に、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。Pウェル2内に、STI酸化膜3を形成し、ゲート絶縁膜を形成して、その上にゲート電極9、10をパターニングする。次に、ゲート電極9、10に対して自己整合的に、浅い低不純物濃度のN型ソース・ドレイン領域を形成する。次に、例えばChemical Vapor Deposition(CVD)法にて全面に酸化膜を形成した後、エッチバックすることにより、ゲート電極9、10の側面にゲート電極サイドウォール部21,22を形成する。次に、ゲート電極9、10およびゲート電極サイドウォール部21,22に対して自己整合的に、N型のソース・ドレイン領域6、7、8を形成する。一方、STI酸化膜3に挟まれた領域のPウェル2には、Pウェルタップ5が形成される。
【0033】
次に、例えばCVD法にて全面に酸化膜を形成し、パターニングすることにより、シリサイド化抑制エリア23、24、25、26に酸化膜を残す。具体的には、ゲート電極9、10およびゲート電極サイドウォール部21、22を含む全面に酸化膜をCVD法にて成膜した後、シリサイド化抑制エリア23、24、25、26に図示しないフォトレジスト膜を形成し、当該フォトレジスト膜をマスクとして当該酸化膜をエッチングすることにより、シリサイド化抑制エリア23、24、25、26に酸化膜を残す。次に、シリサイド膜を形成するための金属膜(例えばTi)を堆積し、さらにアニール処理によりシリサイド化を行い、シリサイド化されない金属膜は、例えばウェットエッチングにより除去する。
【0034】
この時、STI酸化膜3(図3参照)およびゲート電極サイドウォール部21、22となる酸化膜上に形成された金属膜はシリサイド化されないため、除去される。したがって、図2に示すように、N型ドレイン領域7の表面のうち、シリサイド化抑制エリア27(斜線部)の範囲にはシリサイド膜は形成されず、その範囲外のN型ドレイン領域7の表面にのみ、シリサイド膜18が形成される。N型ソース領域6の表面においても、同様に、シリサイド化抑制エリア27(斜線部)の範囲外にシリサイド膜16が形成される。
【0035】
また、ゲート電極9の表面においても、同様に、シリサイド化抑制エリア28(斜線部)の範囲外にシリサイド膜17が形成される。
【0036】
ゲート電極10側のN型ドレイン領域7、ゲート電極10およびN型ソース領域8の表面においても、シリサイド化抑制エリア25、26の範囲外にシリサイド膜18、19、20が形成される。
【0037】
以上により、図3に示すように、シリサイド膜16、17、18、19、20は、ゲート電極9、10の側面のサイドウォール21、22から一定の距離だけ離れた領域に形成される。
【0038】
ここで、シリサイド化抑制エリア27、28のゲート長方向の距離(サイズ)L3、L4、L5、L6は、マスクパターンを形成する際の目ズレやシリサイド膜のサイズ増加等のマージンを考慮して決定される。つまり、シリサイド化抑制エリア23、24の形成位置がずれたとしても、ゲート電極サイドウォール部21、22が露出しないようにする。且つ、ゲート電極9、10の中心に残すシリサイド膜は、一定程度以上の幅を持つように形成される。
【0039】
これにより、シリサイド化抑制エリア23、24を形成するための酸化膜のエッチング工程において、フォトレジスト膜の目合わせズレ等があったとしても、ソース・ドレイン領域のシリサイド膜6、7をゲート電極サイドウォール部21、22から一定の距離だけ離して形成し、且つ、ゲート電極9、10にも一定の幅のシリサイド膜17、19を形成することが可能となる。その結果、図6の半導体装置におけるL1、L2分の距離(サイズ)を小さくしつつ、ソース・ドレイン領域に拡散抵抗を形成することができるとともに、ゲート抵抗を小さくすることができる。
【0040】
上記の保護トランジスタのゲート酸化膜厚が、例えば8nm程度の製造プロセスである場合においては、目ズレ等を考慮して、ゲート電極に被せるオーバーラップマージンを、0.2μm程度と仮定し、素子サイズを比較してみると、特許文献1(図4)の保護トランジスタ一個の素子サイズ(図6のX1)は4.0μm程度の長さと見積もられる。一方、シリサイド膜120,121の長さL1,L2は、0.5μm程度必要であるので、本実施の形態に係る半導体装置によれば、この部分を削除することにより、1.0μm程度小さくすることができる。
【0041】
一方、本実施の形態に係る半導体装置のゲート上の中心の位置に残すシリサイド膜の幅を、特許文献1と同等に取ろうとすれば、ゲート長(ゲート電極の幅)は、オーバーラップ分を両側で合わせて0.4μm程度増加することになる。このようにゲート長が増加したとしても、本実施の形態における保護トランジスタ一個の素子サイズ(図1のX2)は高々3.4μm程度の長さで製造することができ、結局1保護トランジスタ当たり、0.6μm程度小さく製造できることになる。
【0042】
ここで、上記のように、ゲート上の中心の位置に残すシリサイド膜の幅を、関連する技術(特許文献1)と同等に取る理由としては、残存させるシリサイド膜幅を両者とも同程度の幅にすることにより、ゲート抵抗も同程度となり、両者の立上、立下り時の回路動作遅延時間を同等にするためである。
【0043】
さらに、静電破壊で一番電荷集中しやすいドレイン部のゲート電極側面の直下周辺や、ソース部のゲート電極側の面直下周辺を、シリサイド化させず、ドレイン、ソース部の拡散抵抗成分を持たせることで、静電破壊耐量の劣化を防ぐことができる。また、ゲート電極上部の中心部にシリサイド膜を残すことにより、ゲート電極の抵抗成分を低く抑えることが可能となる。その結果、時定数が増加することなく、保護トランジスタの回路動作スピードを落とすことのない静電保護素子によって、素子サイズの小さい半導体装置を提供することが可能となる。ここで、ゲート電極側面の「直下周辺」とは、ゲート電極の側面の直下部分のみならず、その周辺部分も含む意味である。
【0044】
本実施の形態に係る半導体装置によれば、ソース、ドレイン上のシリサイド膜をそれぞれ一箇所のみ残存させ、不必要なエリアに設けないことにより、最小限の構成要素で半導体装置の製造が可能となる。これにより、静電保護トランジスタの素子サイズを小さくすることが可能となる。
【0045】
また、ゲート端子の中心部に、関連する技術に設置されているゲート端子のシリサイド膜で構成される抵抗値に見合う同等程度のシリサイド膜を残存させるため、ゲート端子の抵抗成分を同程度に抑え、時定数を増加させることなく、保護トランジスタの回路動作スピードの低下を防ぐことができる。
【0046】
さらに、ゲート電極側面の直下周辺のソース、ドレイン部は、一番電荷が集中し易い箇所であるが、そのソース、ドレイン部周辺にシリサイド膜を設けないことで、電荷集中を緩和し、静電破壊耐量の向上が可能となるため、静電破壊耐量を向上することができる。
【0047】
また、本発明の実施の形態では、シリサイド膜17、19を、ゲート電極サイドウォール部21、22から一定の距離だけ離して形成している。これにより、シリサイド膜17、19の形成の際に目ズレが生じても、ゲート電極サイドウォール部21、22の幅分は、隣接するシリサイド膜16、17、18、19、20との間の距離を確保することができる。
【0048】
また、ゲート電極9、10上部のシリサイド膜が形成されない領域の幅(図2の28の幅L5、L6)、すなわち、シリサイド膜17、19と、ゲート電極サイドウォール部21、22との間の距離は、小さければ小さいほどゲート抵抗値が小さくなり動作スピードが向上する。そのため、シリサイド膜17、19を、目ズレを考慮してゲート電極サイドウォール部21、22から一定の距離だけ離して形成している。一方、ソース・ドレイン領域6,7の上部のシリサイドが形成されない領域の幅(図2の27の幅L3、L4)、すなわち、シリサイド膜16、18、20と、ゲート電極サイドウォール部21、22との間の距離は、必要な静電破壊耐量が得られるだけの幅が必要である。しかし、本発明によれば、図6における幅L1、L2を無くすことができるので、素子サイズを小さくできる。従って、シリサイド膜が形成されない領域の幅を最小値とすることで、信頼性を確保したまま、保護素子の素子サイズを縮小することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
【0050】
例えば、上述の説明では、Pウェル2にN型ソース・ドレイン領域を形成する例を示して説明したが、導電型を逆にしても良い。また、シリサイド膜を形成するための金属膜として例えばTiを例示したが、W、Mo、Co、Taなどの他の金属膜としても良い。また、シリサイド化抑制エリアを形成する絶縁膜として酸化膜を例示したが、SiON膜やSiN膜等でも良い。また、シリサイド化されない金属膜の除去は、ウェットエッチングに限られず、ドライエッチングでも良い。
【符号の説明】
【0051】
1 P型半導体基板
2 Pウェル
3 STI酸化膜
4 PSG等絶縁膜
5 Pウェルタップ
6 N型ソース領域
7 N型ドレイン領域
8 N型ソース領域
9 ゲート電極
10 ゲート電極
11 コンタクトプラグ
12 コンタクトプラグ
13 コンタクトプラグ
14 コンタクトプラグ
15 シリサイド膜
16 シリサイド膜
17 シリサイド膜
18 シリサイド膜
19 シリサイド膜
20 シリサイド膜
21 ゲート電極サイドウォール部
22 ゲート電極サイドウォール部
23 シリサイド化抑制エリア
24 シリサイド化抑制エリア
25 シリサイド化抑制エリア
26 シリサイド化抑制エリア
27 シリサイド化抑制エリア
28 シリサイド化抑制エリア
101 半導体基板
102 素子分離絶縁膜
116 多結晶シリコンゲート
117 ドレインサイド膜
118 ソース領域
119 Tiシリサイド膜
120 Tiシリサイド膜
121 Tiシリサイド膜
122 Tiシリサイド膜
123 Tiシリサイド膜
124 金属配線
125 金属配線
126 絶縁膜
135 拡散抵抗
136 拡散抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース・ドレイン領域と、
前記ソース・ドレイン領域の上方に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の側面に形成されたサイドウォールと、
前記ソース・ドレイン領域の上面に、前記サイドウォールから所定の距離だけ離間して形成された第1のシリサイド膜と、
前記ゲート電極の上面に、前記サイドウォールから所定の距離だけ離間して形成された第2のシリサイド膜とを備える半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極上に形成された前記シリサイド膜と、前記ソース・ドレイン領域上に形成された前記シリサイド膜は、前記サイドウォール側のそれぞれの端面が、絶縁膜により規制されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁膜は、酸化膜であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板上に、ソース・ドレイン領域、及びゲート電極を形成し、
前記ゲート電極の側面にサイドウォールを形成し、
前記ソース・ドレイン領域の上面に、前記サイドウォールから所定の距離だけ離間して形成された第1のシリサイド膜を形成し、
前記ゲート電極の上面に、前記サイドウォールから所定の距離だけ離間して形成された第2のシリサイド膜を形成する、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−222955(P2011−222955A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276786(P2010−276786)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】