説明

半導体装置

【課題】本発明は、Fin型MISFETにおいて、Finの下部で生じるパンチスルーを抑制できるようにする。
【解決手段】たとえば、Si基板11の表面上には、素子領域となるFin12が設けられている。Fin12には、ソース・ドレイン拡散層23a,23bが形成されている。ソース・ドレイン拡散層23a,23bの相互間には、チャネル部が形成されている。このチャネル部に対応する、上記Fin12の一部を覆うようにしてゲート電極部21が設けられている。ゲート電極部21は、第1の仕事関数を有する第1のゲート電極21a上に、第1のゲート電極21aとは異なる、第2の仕事関数を有する第2のゲート電極21bを積層してなる構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するもので、特に、Fin型構造を有するMIS型半導体装置(MISFET:Metal Insulated Semiconductor Field Effect Transistor)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来構造のFin型MISFET(以下、Fin−FETと略記する)においては、ゲート電極のエッジ(底部)に対応するFinの周辺部で、ソース・ドレインがパンチスルーしやすい構造となっている。そのため、オフリーク電流が高い(つまり、短チャネル効果が生じやすい)という問題があった(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
この問題を回避するために、Finの下部のチャネル不純物を高濃度にする方法が提案されている。つまり、オフリーク電流を抑えるには、I/Iによるパンチスルーストッパ層の形成が必要であった。しかしながら、パンチスルーストッパ層の形成によるチャネル部の不純物濃度の増加は、移動度の劣化やソース・ドレイン間の接合リーク(容量)の増大、しきい値のばらつきなど、Fin−FETの性能の劣化につながるという懸念があった。
【0004】
上記したように、Fin−FETにおいては、Finの下部のチャネル不純物を高濃度化することなく、オフリーク電流を減少させることが可能な技術が求められていた。
【非特許文献1】Masaki Kondo et al.,“A FinFET Design Based on Three−Dimensional Process and Device Simulations”,Toshiba Corporation,IEEE,2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、Finの下部で生じるパンチスルーを抑制でき、オフリーク電流を減少させることが可能な半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様によれば、半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、長手方向と短手方向を有するフィン型形の半導体層と、ゲート絶縁膜を介して、前記半導体層の前記短手方向の側面に形成されたゲート電極部と、前記半導体層内の前記ゲート絶縁層に隣接する位置に形成されたチャネル部と、前記半導体層の前記チャネル部に対し前記長手方向に隣接して形成されたソース・ドレイン領域とを備え、前記ゲート電極部は、異なる仕事関数を有する複数の電極材料を積層してなることを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成により、Finの下部で生じるパンチスルーを抑制でき、オフリーク電流を減少させることが可能な半導体装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的なものであり、寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にしたがった半導体装置(Fin−FET)の基本構成を示すものである。なお、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は平面図、同図(c)は図(a)のIc−Ic線に沿う断面図、同図(d)は図(a)のId−Id線に沿う断面図、同図(e)は図(a)のIe−Ie線に沿う断面図である。ここでは、基板の一部を所望の形状に加工することによって、Finが形成されてなる場合について説明する。また、ゲート電極部の形成に、電極材料としてメタルを用いるようにした場合について説明する。
【0010】
図1(a)〜(e)に示すように、半導体基板であるシリコン(以下、Siと略記する)基板11の表面上には、たとえば単結晶Siからなる長手方向と短手方向を有するFin(フィン型形状を有する半導体層)12が設けられている。Fin12は、上記Si基板11の上面の、図1に示す短手方向のほぼ中央部に、図1に示す長手方向に沿って設けられている。本実施形態の場合、Fin12は所望の幅(厚さ)を有するとともに、図1に示す上記Si基板11の長手方向と同じ長さを有して設けられている。また、Fin12は、所望の高さを有して、上記Si基板11の上面に形成されている。なお、Fin12を除く、上記Si基板11の表面上には、Fin12の下部を埋め込むようにして、素子分離のための絶縁膜(たとえば、SiO2 膜)13が設けられている。また、Fin12の上部には、マスクパターンとして利用される絶縁膜(たとえば、SiN膜)14が設けられている。この絶縁膜14はマスクパターンとして用いた後、除去してもよい。
【0011】
上記絶縁膜13上には、ゲート絶縁膜15を介して、ゲート電極部21が設けられている。ゲート絶縁膜15としては、たとえば、SiO膜、HfSiO膜、HfAlO膜、HfO膜などが用いられる。ゲート電極部21は、上記絶縁膜14を含む、上記Fin12のチャネル部を覆うようにして設けられている。たとえば、ゲート電極部21は、図1に示す上記Si基板11の長手方向のほぼ中央部に、上記Fin12にほぼ直交するようにして設けられている。また、ゲート電極部21の側壁部分には、それぞれ、ゲート側壁絶縁膜22が形成されている。
【0012】
本実施形態の場合、上記ゲート電極部21は、異なる仕事関数を有する第1および第2の電極材料を用いて形成される第1および第2のゲート電極21a,21bを積層してなる構成とされている。たとえば、形成されるFin−FETがN導電型の場合、第1の仕事関数を有する第1の電極材料を用いて形成される第1のゲート電極21aと、この第1のゲート電極21a上に積層された、上記第1のゲート電極21aよりも第1の仕事関数よりも小さい第2の仕事関数を有する第2の電極材料を用いて形成される第2のゲート電極21bとによって、上記ゲート電極部21は構成されている。これに対し、たとえば、形成されるFin−FETの導電型がP型(第2導電型)の場合、第1の仕事関数を有する第1の電極材料を用いて形成される第1のゲート電極21aと、この第1のゲート電極21a上に積層された、上記第1のゲート電極21aよりもしきい値が大きくなるような第1の仕事関数よりも大きい第2の仕事関数を有する第2の電極材料を用いて形成される第2のゲート電極21bとによって、上記ゲート電極部21は構成されている。
【0013】
すなわち、上記N型Fin−FETおよびP型Fin−FETともに第1の電極材料におけるしきい値が第2の電極材料におけるしきい値よりも高くなる。
【0014】
一方、上記Fin12のチャネル部12に対し長手方向に隣接してソース・ドレイン拡散層23a,23bが形成されている。ソース・ドレイン拡散層23a,23bは、たとえば斜め方向へのイオン注入(または、プラズマイオン注入)法により、その相互間に、チャネル部12を有して形成されている。また、ソース・ドレイン拡散層23a,23bに対し長手方向に隣接してソース・ドレイン高濃度拡散層24a,24bが形成されている。さらに、ソース・ドレインの高濃度拡散層24a,24bの上面及び側面はシリサイド層25a,25bが形成されている。なお、このシリサイド層は、第2のゲート電極21bがポリSiの場合には、上記ゲート電極部21の上面にも形成される。
【0015】
次に、図2(a)〜(e)ないし図14(a)〜(e)を参照して、上記した構成のFin−FETの製造方法について説明する。ここでは、Fin−FETの導電型をN型とし、第1のゲート電極21aを、たとえば第1の仕事関数(Φm1=5.0eV)を有するメタル(第1の電極材料)を用いて形成するとともに、第2のゲート電極21bを、たとえば上記第1のゲート電極21aよりも小さくなるような第2の仕事関数(Φm2=4.7eV)を有するメタル(第2の電極材料)を用いて形成するようにした場合について説明する。すなわち、第1のゲート電極21aにおけるしきい値は第2のゲート電極21bにおけるしきい値よりも大きくなっている。なお、各図2〜14において、図(a)は図1(a)に対応する斜視図であり、図(b)は図1(b)に対応する平面図であり、図(c)は図1(c)に対応する断面図であり、図(d)は図1(d)に対応する断面図であり、図(e)は図1(e)に対応する断面図である。
【0016】
まず、たとえば図2(a)〜(e)に示すように、Si基板11の上面に、Fin12となる素子領域を形成するためのマスクパターン(絶縁膜)14を形成する。たとえば、Si基板11の上面にSiN膜を化学気相成長(Chemical Vapor Deposition(以下、CVDと略記する))法により堆積させる。この後、フォトリソグラフィにより所望の形状に加工されたレジストなどをマスクに、そのSiN膜を反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching(以下、RIEと略記する))法により所望の形状に加工する。このようにして、上記マスクパターン14は形成される。なお、このマスクパターン14は、ゲート電極部21とチャネル部との間のリークを防止するための絶縁膜として機能する。
【0017】
次いで、たとえば図3(a)〜(e)に示すように、上記マスクパターン14をマスクに、Si基板11の表面部をRIE法により加工し、所望の高さを有するFin12を形成する。一般的には、このFin12の高さによって、Fin−FETにおける駆動電流の大きさが決まる。
【0018】
次いで、たとえば図4(a)〜(e)に示すように、Si基板11の表面部を、素子分離のための絶縁膜13によって埋め込む。たとえば、SiO2 膜をCVD法により成膜し、そのSiO2膜の表面を化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing(以下、CMPと略記する))法により平坦化する。
【0019】
次いで、たとえば図5(a)〜(e)に示すように、素子分離のための絶縁膜13を薄膜化する。たとえば、露出するFin12の高さが所望のチャネル幅(200nm程度)となるように、RIE法や化学的ドライエッチング(Chemical Dry Etching(以下、CDEと略記する))法により、上記絶縁膜13を薄膜化する。
【0020】
次いで、たとえば図6(a)〜(e)に示すように、全面に、ゲート絶縁膜15となるSiO、HfSiO、HfAlO、HfOなどの絶縁膜15’を、CVD法や物理気相成長(Physical Vapor Deposition(以下、PVDと略記する))法により成膜する。続いて、上記絶縁膜15’上に、第1の仕事関数(Φm1=5.0eV)を有するTaN膜、Ru膜、TiAlN膜などの第1メタル膜(第1の電極材料)21a’を、CVD法やPVD法により成膜した後、その表面をCMP法により平坦化する。
【0021】
次いで、たとえば図7(a)〜(e)に示すように、上記第1メタル膜21a’をRIE法やCDE法により薄膜化し、最終的に第1のゲート電極21aが所望の厚さ(Tm =30nm程度)となるように加工する。
【0022】
次いで、たとえば図8(a)〜(e)に示すように、全面に、仕事関数が第1のゲート電極21aよりも小さくなるような第2の仕事関数(Φm2=4.7eV)を有するHfN膜、NiSi膜、Mo膜、TiN膜などの第2メタル膜(第2の電極材料)21b’を、CVD法やPVD法により成膜した後、その表面をCMP法により平坦化する。
【0023】
次いで、たとえば図9(a)〜(e)に示すように、ゲート電極部21を加工するためのマスクパターン31を形成する。たとえば、上記第2メタル膜21b’の上面にSiN膜をCVD法により堆積させる。この後、フォトリソグラフィにより所望の形状に加工されたレジストなどをマスクに、そのSiN膜をRIE法により所望の形状に加工する。このようにして、上記マスクパターン31は形成される。
【0024】
次いで、たとえば図10(a)〜(e)に示すように、上記マスクパターン31をマスクに第2メタル膜21b’および第1メタル膜21a’をRIE法により加工し、2層メタル膜構造のゲート電極部21を形成する。その後、露出する絶縁膜15’をCDE法やウェットエッチングなどによって剥離して、ゲート絶縁膜15を形成する。
【0025】
次いで、たとえば図11(a)〜(e)に示すように、Fin12の露出面に対し、N導電型の不純物種を斜め方向からのイオン注入法などにより打ち込んで、ソース・ドレイン拡散層23a,23bを形成する。この際、ゲート電極部21の直下には、ソース・ドレイン拡散層23a,23bが形成されない、所望のチャネル長を有するチャネル部(Fin12)が形成される。
【0026】
次いで、SiO2 膜やSiN膜などの絶縁膜をCVD法により全面に成膜した後、その絶縁膜をRIE法にて所望の形状に加工する。これにより、たとえば図12(a)〜(e)に示すように、ゲート電極部21の側壁部分にそれぞれゲート側壁絶縁膜22が形成される。
【0027】
次いで、たとえば図13(a)〜(e)に示すように、ソース・ドレイン拡散層23a,23bが形成されたFin12の外周部に、Fin12の幅を拡張するための単結晶Si膜33を、CVD法により選択的に成膜する。
【0028】
次いで、たとえば図14(a)〜(e)に示すように、上記単結晶Si膜33にイオン注入法によりN導電型の不純物種を打ち込んで、ソース・ドレインの高濃度拡散層24a,24bを形成する。
【0029】
次いで、ゲート電極部21上の絶縁膜(マスクパターン)31を、たとえばウェットエッチングにより剥離した後、ソース・ドレインの高濃度拡散層24a,24b上にシリサイド層25a,25bを形成する。このシリサイド層25a,25bは、たとえば高濃度拡散層24a,24b上にPVD法により金属材料を成膜した状態で行われる、急峻アニール(Rapid Thermal Annealing(以下、RTAと略記する))法により形成される。これにより、たとえば図1(a)〜(e)に示した構成のFin−FETが完成される。
【0030】
その後、層間絶縁膜を堆積し、ゲート電極部21およびソース・ドレイン電極とのコンタクトを取るための配線を形成する工程などを経ることにより、所望のFin型構造を有するMIS型半導体装置が実現される(いずれも図示していない)。
【0031】
図15は、上記した構成のFin−FET(NMOS)における、オフリーク電流の低減の効果(サブスレッショルド特性)について示すものである。ここでは、ゲート電極が単層メタル膜(たとえば、仕事関数Φm1,Φm2=4.7eV)からなるFin−FETを従来構造とし、それとの対比により示している。なお、図の横軸はゲート電圧(Vg[V])であり、縦軸はドレイン電流(Id[A/μm])である。
【0032】
すなわち、本図からも明らかなように、ゲート電極部21を2層メタル膜(仕事関数Φm1=5.0eV,Φm2=4.7eV)構造とした本実施形態のFin−FETの場合、従来構造のFin−FETに比べて、オフリーク電流、つまりゲート電圧Vgが0[V]時のリーク電流を1/10程度にまで低減できる。
【0033】
上記したように、Fin−FETにおいて、ゲート電極部を、異なる仕事関数を有する第1および第2の電極材料を用いて形成される第1および第2のゲート電極を積層してなる構成としている。たとえば、形成されるFin−FETの導電型がN型の場合には、第1の仕事関数を有する第1メタル膜を用いて形成される第1のゲート電極と、この第1のゲート電極上に積層された、上記第1のゲート電極よりもしきい値が小さくなるような、すなわち仕事関数が第1の仕事関数よりも小さい第2の仕事関数を有する第2メタル膜を用いて形成される第2のゲート電極とによって、ゲート電極部が構成されている。また、Fin−FETの導電型がP型の場合には、第1の仕事関数を有する第1メタル膜を用いて形成される第1のゲート電極と、この第1のゲート電極上に積層された、第1のゲート電極よりもしきい値が小さくなるような、すなわち仕事関数が第1の仕事関数よりも大きい第2の仕事関数を有する第2メタル膜を用いて形成される第2のゲート電極によって、ゲート電極部が構成されている。これにより、チャネル部の不純物濃度を上げることなく、短チャネル効果によって下がるFin−FETのしきい値を上げることが可能となる。したがって、チャネル部の不純物濃度を低濃度に保ったまま、Finの下部で生じるパンチスルーを抑制でき、オフリーク電流を減少させることが可能となる。ゆえに、チャネル部の不純物濃度の増加にともなう、移動度の劣化やソース・ドレイン間の接合リーク(容量)の増大、しきい値のばらつきなど、Fin−FETの性能の劣化を防止しつつ、オフリーク電流の抑制が可能となるものである。
【0034】
なお、上述した第1の実施形態においては、仕事関数Φm1が5.0eVである第1メタル膜21a’と仕事関数Φm2が4.7eVである第2メタル膜21b’とを用いて、ゲート電極部21を構成する第1および第2のゲート電極21a,21bを形成するようにした場合について説明した。上記第1および第2メタル膜21a’,21b’としては、たとえば図16に示すように、適宜、Fin−FETにおけるオフリーク電流を減少させるのに有効なメタル材料が仕事関数に応じて選択される。ただし、図16において、同じメタル材料であっても仕事関数が異なるのは、引用した参考文献が異なることによる。
【0035】
[第2の実施形態]
図17は、本発明の第2の実施形態にしたがった半導体装置(Fin−FET)の基本構成を示すものである。なお、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は平面図、同図(c)は図(a)のIIc−IIc線に沿う断面図、同図(d)は図(a)のIId−IId線に沿う断面図、同図(e)は図(a)のIIe−IIe線に沿う断面図である。ここでは、第1のゲート電極を、少なくともFinに隣接する、第2のゲート電極の一部に対応して設けるようにした場合について説明する。また、第1の実施形態に示したFin−FET(図1(a)〜(e)参照)と同一部分には同一符号を付し、詳しい説明は割愛する。
【0036】
すなわち、この第2の実施形態にかかるFin−FETは、たとえば図17(a)〜(e)に示すように、ゲート電極部21Aを構成する第1のゲート電極21A−aが、少なくともFin12に隣接する、第2のゲート電極21A−bの一部にのみ対応して設けられている点で、第1の実施形態に示したFin−FETと異なっている。
【0037】
以下に、図18(a)〜(e)ないし図20(a)〜(e)を参照して、上記した構成のFin−FETの製造方法について説明する。ここでは、Fin−FETの導電型をN型とし、第1のゲート電極21A−aを、たとえば第1の仕事関数(Φm1=5.0eV)を有するメタル(第1の電極材料)を用いて形成するとともに、第2のゲート電極21A−bを、たとえば上記第1のゲート電極21A−aよりもしきい値が小さくなるような、すなわち仕事関数が第1の電極材料よりも小さい第2の仕事関数(Φm2=4.7eV)を有するメタル(第2の電極材料)を用いて形成するようにした場合について説明する。なお、各図18〜20において、図(a)は図17(a)に対応する斜視図であり、図(b)は図17(b)に対応する平面図であり、図(c)は図17(c)に対応する断面図であり、図(d)は図17(d)に対応する断面図であり、図(e)は図17(e)に対応する断面図である。
【0038】
本実施形態の場合、Si基板11の一部を加工してFin12を形成し、素子分離のための絶縁膜13を薄膜化するまでは、第1の実施形態の場合と同様である(たとえば、図5(a)〜(e)参照)。
【0039】
次いで、たとえば図18(a)〜(e)に示すように、全面に、ゲート絶縁膜15となるSiO、HfSiO、HfAlO、HfOなどの絶縁膜15’を、CVD法やPVD法により成膜する。続いて、上記絶縁膜15’上に、第2のゲート電極21A−bよりも高いしきい値となるような第1の仕事関数(Φm1=5.0eV)を有するTaN膜、Ru膜、TiAlN膜などの第1メタル膜(第1の電極材料)21A−a’を、CVD法やPVD法により成膜する。
【0040】
次いで、たとえば図19(a)〜(e)に示すように、第1メタル膜21A−a’を所望の形状となるようにRIE法により加工し、少なくともFin12に隣接し、かつ、第2のゲート電極21A−bの一部にのみ対応する、第1のゲート電極21A−aを形成する。
【0041】
次いで、たとえば図20(a)〜(e)に示すように、全面に、第1のゲート電極21A−aよりも低いしきい値となるような第2の仕事関数(Φm2=4.7eV)を有するHfN膜、NiSi膜、Mo膜、TiN膜などの第2メタル膜(第2の電極材料)21A−b’を、CVD法やPVD法により成膜した後、その表面をCMP法により平坦化する。
【0042】
この後、上述した第1の実施形態の場合と同様に、ゲート加工、ソース・ドレイン形成、ゲート側壁形成、サリサイド形成などを行って、図17(a)〜(e)に示した構成のFin−FETが完成される。
【0043】
その後、層間絶縁膜を堆積し、ゲート電極部21A、ソースおよびドレイン電極とのコンタクトを取るための配線を形成する工程などを経ることにより、所望のFin型構造を有するMIS型半導体装置が実現される(いずれも図示していない)。
【0044】
上記の構成によっても、第1の実施形態に示したFin−FETの場合と同様に、チャネル部の不純物濃度を低濃度に保ったまま、Finの下部で生じるパンチスルーを抑制でき、オフリーク電流を減少させることが可能である。
【0045】
[第3の実施形態]
図21は、本発明の第3の実施形態にしたがった半導体装置(Fin−FET)の基本構成を示すものである。なお、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は平面図、同図(c)は図(a)のIIIc−IIIc線に沿う断面図、同図(d)は図(a)のIIId−IIId線に沿う断面図、同図(e)は図(a)のIIIe−IIIe線に沿う断面図である。ここでは、基板の上面に選択エピタキシャル成長法により選択的にFinが形成されてなる場合について説明する。また、第1の実施形態に示したFin−FET(図1(a)〜(e)参照)と同一部分には同一符号を付し、詳しい説明は割愛する。
【0046】
すなわち、この第3の実施形態にかかるFin−FETの場合、たとえば図21(a)〜(e)に示すように、Fin12BがSi基板11Bの上面に選択エピタキシャル成長法により選択的に形成されてなるとともに、そのFin12Bの側面に沿うようにしてゲート絶縁膜15Bが設けられている点で、第1の実施形態に示したFin−FETと異なっている。より具体的には、ゲート絶縁膜15Bは、ゲート電極部21Bの直下においては、Fin12Bとゲート電極部21B(第1のゲート電極21B−aおよび第2のゲート電極21B−b)との間およびFin12Bと絶縁膜13との間にそれぞれ設けられ、ゲート電極部21Bの直下以外においては、Fin12Bと絶縁膜13との間にのみ設けられている。
【0047】
以下に、図22(a)〜(e)ないし図26(a)〜(e)を参照して、上記した構成のFin−FETの製造方法について説明する。ここでは、Fin−FETの導電型をN型とし、第1のゲート電極21B−aを、たとえば第1の仕事関数(Φm1=5.0eV)を有するメタル(第1の電極材料)を用いて形成するとともに、第2のゲート電極21B−bを、たとえば上記第1のゲート電極21B−aよりもしきい値が小さくなるような、すなわち仕事関数が第1の電極材料よりも小さい第2の仕事関数(Φm2=4.7eV)を有するメタル(第2の電極材料)を用いて形成するようにした場合について説明する。なお、各図22〜26において、図(a)は図21(a)に対応する斜視図であり、図(b)は図21(b)に対応する平面図であり、図(c)は図21(c)に対応する断面図であり、図(d)は図21(d)に対応する断面図であり、図(e)は図21(e)に対応する断面図である。
【0048】
まず、たとえば図22(a)〜(e)に示すように、Si基板11Bの上面に、素子分離のための絶縁膜13、第1のゲート電極21B−aとなる第1メタル膜(第1の電極材料)21B−a’、および、第2のゲート電極21B−bとなる第2メタル膜(第2の電極材料)21B−b’を、順に、CVD法やPVD法によりそれぞれ所望の膜厚となるように成膜する。なお、この段階での上記第2メタル膜21B−b’の膜厚は、たとえば、形成しようとするFin12Bの高さに応じて制御される。第1メタル膜21B−a’としては、たとえば、第1の仕事関数(Φm1=5.0eV)を有するTaN膜、Ru膜、TiAlN膜などが用いられる。第2メタル膜21B−b’としては、たとえば、第1のゲート電極21B−aよりも低いしきい値となるような、すなわち仕事関数が第1のゲート電極21B−aよりも小さい第2の仕事関数(Φm2=4.7eV)を有するHfN膜、NiSi膜、Mo膜、TiN膜などが用いられる。
【0049】
この後、トレンチ40を形成するために、レジストなどのマスク(図示していない)を用いて、たとえばRIE法により、絶縁膜13、第1メタル膜21B−a’、および、第2メタル膜21B−b’を所望のトレンチ形状に加工する。
【0050】
次いで、たとえば図23(a)〜(e)に示すように、所望のトレンチ形状に加工された絶縁膜13、第1メタル膜21B−a’、および、第2メタル膜21B−b’をそれぞれ覆うようにして、ゲート絶縁膜15BをCVD法やPVD法により成膜する。
【0051】
次いで、たとえば図24(a)〜(e)に示すように、トレンチ40の底部のSi基板11Bを露出させるために、ゲート絶縁膜15BをRIE法により部分的に剥離する。その後、素子領域となるFin12Bを形成するために、たとえば選択エピタキシャル成長法により、単結晶Si(基板がSiGeまたはGeの場合にはそれぞれSiGeまたはGe)などをトレンチ40内に選択的に成長させる。
【0052】
次いで、全面に、SiN膜などをCVD法により成膜し、それを、レジスト(図示していない)などを用いてRIE法により所望の形状に加工する。こうして、たとえば図25(a)〜(e)に示すように、ゲート電極部21Bとチャネル部との間のリークを防止するための絶縁膜41を形成する。
【0053】
次いで、たとえば図26(a)〜(e)に示すように、上記絶縁膜41を覆うように、再度、上記第2メタル膜21B−b’をCVD法やPVD法により成膜した後、その上面をCMP法により平坦化する。
【0054】
この後、上述した第1の実施形態の場合と同様に、ゲート加工、ソース・ドレイン形成、ゲート側壁形成、サリサイド形成などを行って、図21(a)〜(e)に示した構成のFin−FETが完成される。
【0055】
その後、層間絶縁膜を堆積し、ゲート電極部21B、ソースおよびドレイン電極とのコンタクトを取るための配線を形成する工程などを経ることにより、所望のFin型構造を有するMIS型半導体装置が実現される(いずれも図示していない)。
【0056】
上記の構成によっても、第1の実施形態に示したFin−FETの場合と同様に、チャネル部の不純物濃度を低濃度に保ったまま、Finの下部で生じるパンチスルーを抑制でき、オフリーク電流を減少させることが可能である。
【0057】
特に、この第3の実施形態においては、第1のゲート電極21B−aの膜厚を高精度に制御できる。
【0058】
なお、第2の実施形態に示したように、第1のゲート電極21B−aを、少なくともFin12Bに隣接する、第2のゲート電極21B−bの一部にのみ対応させるようにして設けることも可能である。
【0059】
また、上述した各実施形態においては、Si基板を用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、たとえばSiGe基板またはGe基板であっても同様に実施することができる。
【0060】
また、N導電型に限らず、P導電型のFin−FETを形成することも容易に可能である。たとえば、Fin−FETの導電型がP型の場合、第1の仕事関数を有する第1メタル膜を用いて形成される第1のゲート電極と、この第1のゲート電極上に積層された、上記第1のゲート電極よりも仕事関数が大きくなるような第2の仕事関数を有する第2メタル膜を用いて形成される第2のゲート電極とによって、ゲート電極部が構成される。
【0061】
また、第1および第2のゲート電極を積層してなる構成のゲート電極部としては、電極材料にメタル膜を用いてなる場合に限らず、ポリSi膜などを用いて構成することも可能である。たとえば、ポリSi膜を用いてゲート電極部を構成しようとする場合、ポリSi膜によって、第1および第2のゲート電極の少なくとも一方を形成することが可能である。または、メタル化(フルシリサイド化など)したポリSi膜によって、第1および第2のゲート電極の少なくとも一方を形成することが可能である。または、ポリSi膜によって第1のゲート電極を形成するとともに、その第1のゲート電極を除く、第2のゲート電極に対応するポリSi膜をメタル化することによっても実現できる。
【0062】
さらには、ゲート電極部21,21A,21Bのように2層メタル膜構造に限らず、3層以上の多層膜構造とすることも可能である。たとえば図27に示すように、ゲート電極部21Cとしては、第1のゲート電極21a上に、第3のゲート電極21cを介して、第2のゲート電極21bを積層してなる構成とすることもできる。この例において、たとえばFin−FETがN導電型の場合、第3のゲート電極21cは意図的に形成する/形成しないにかかわらず、第1のゲート電極21aよりも仕事関数が小さく、かつ、第2のゲート電極21bよりも仕事関数が大きくなるように、その仕事関数を設定することによって、N型Fin−FETの駆動電流を上げることが可能となる。同様に、たとえばFin−FETがP導電型の場合、第3のゲート電極21cは意図的に形成する/形成しないにかかわらず、第1のゲート電極21aよりも仕事関数が大きく、かつ、第2のゲート電極21bよりも仕事関数が小さくなるように、その仕事関数を設定することによって、P型Fin−FETの駆動電流を上げることが可能となる。
【0063】
その他、本願発明は、上記(各)実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記(各)実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。たとえば、(各)実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題(の少なくとも1つ)が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果(の少なくとも1つ)が得られる場合には、その構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態にしたがったFin−FETの基本構成を示す概略図。
【図2】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図3】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図4】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図5】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図6】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図7】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図8】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図9】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図10】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図11】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図12】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図13】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図14】図1のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図15】図1のFin−FETにおけるサブスレッショルド特性について示す特性図。
【図16】図1のFin−FETにおいて、ゲート電極に用いられるメタル材料と仕事関数との関係について示す図。
【図17】本発明の第2の実施形態にしたがったFin−FETの基本構成を示す概略図。
【図18】図17のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図19】図17のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図20】図17のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図21】本発明の第3の実施形態にしたがったFin−FETの基本構成を示す概略図。
【図22】図21のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図23】図21のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図24】図21のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図25】図21のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図26】図21のFin−FETの製造方法を説明するために示す概略図。
【図27】Fin−FETの他の構成例を示す断面図。
【符号の説明】
【0065】
11,11B…Si基板、12,12B…Fin、15,15B…ゲート絶縁膜、21,21A,21B,21C…ゲート電極部、21a,21A−a,21B−a…第1のゲート電極、21b,21A−b,21B−b…第2のゲート電極、21c…第3のゲート電極、23a,23b…ソース・ドレイン拡散層、24a,24b…高濃度拡散層、25a,25b…シリサイド層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、長手方向と短手方向を有するフィン型形の半導体層と、
ゲート絶縁膜を介して、前記半導体層の前記短手方向の側面に形成されたゲート電極部と、
前記半導体層内の前記ゲート絶縁層に隣接する位置に形成されたチャネル部と、
前記半導体層の前記チャネル部に対し前記長手方向に隣接して形成されたソース・ドレイン領域と
を備え、
前記ゲート電極部は、異なる仕事関数を有する複数の電極材料を積層してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極部は、少なくとも第1のゲート電極と、この第1のゲート電極上に形成された第2のゲート電極とから構成され、
前記第1のゲート電極におけるしきい値は、前記第2のゲート電極におけるしきい値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体装置はnチャネル型MOSFETであって、
前記第1のゲート電極の仕事関数は、前記第2のゲート電極の仕事関数よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体装置はpチャネル型MOSFETであって、
前記第1のゲート電極の仕事関数は、前記第2のゲート電極の仕事関数よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極部は、前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極との間に、さらに、前記第1の電極材料と前記第2の電極材料との中間の仕事関数を有する第3の電極材料を用いて形成される第3のゲート電極が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−81329(P2007−81329A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270772(P2005−270772)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】