説明

半導体装置

【課題】dv/dtサージにより、支持基板と活性層との間に配置される絶縁膜(例えば、BOX)にて構成される寄生容量を充放電する変位電流が発生することを抑制し、回路の誤動作を防止する。
【解決手段】低電位基準回路部LVに形成された第1サージ吸収層2aがトレンチ分離部5b内のドープトPoly−Si8bを通じてGND配線17aに電気的に接続されることでGND電位とされ、高電位基準回路部HVに形成された第2サージ吸収層2bがトレンチ分離部5b内のドープトPoly−Si8bを通じて仮想GND配線17bに電気的に接続されることで仮想GND電位とされるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の機器を駆動させるためのインバータ制御用の素子等に用いられる半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ等の負荷を駆動させるためのインバータ制御用の素子等に用いられる半導体装置として、HVIC(High Voltage Integrated Circuit)がある。このHVICにより、負荷を駆動するためのインバータ内に備えられるパワーデバイスを制御する。
【0003】
従来、インバータの駆動には、図7に示すように、モータ100の駆動を行うインバータ回路101のハイサイド側のIGBT102aを駆動する高電圧基準回路に相当する高電圧基準ゲート駆動回路103とローサイド側のIGBT102bを駆動する低電圧基準回路に相当する低電位基準ゲート駆動回路104を備えると共に、これらの間にレベルシフト素子105a、105bおよび制御回路106が備えられたHVIC107が用いられている。このHIVC107では、レベルシフト素子105a、105bを通じて信号伝達を行うことにより高電位基準回路と低電圧基準回路における基準電圧のレベルシフトを行っている。このようなHVIC107では、インバータの小型化の為に、1チップ化(HVIC化)が進められており、図7に示したHVIC107も1チップにて構成されている。
【0004】
しかしながら、このように1チップ化したHVIC107では、高電位基準回路と低電位基準回路との間で電位の干渉が発生し、回路を誤動作させるという問題があった。このため、従来では、JI分離構造、誘電体分離構造、SOI(Silicon on insulator)基板を用いたトレンチ分離構造(例えば、特許文献1参照)などにより素子分離を行っている。ところが、高電位基準回路のIGBT102aを駆動するための出力部の電位を高電圧側の基準とするための仮想GND電位にする必要があるため、上記したいずれの素子分離構造においてもレベルシフトにおける低電位(例えば0V)から高電位(例えば750V)に切り替えるときに高電圧(例えば1200Vを超える電圧)が数十kV/μsecという早い立ち上がり速度で生じ、大きな電位振幅が生じる。この立ち上がりの早い高電圧サージ(以下、立ち上がり時間に対する電圧上昇が高いことからdv/dtサージという)を回路の誤動作無く扱うことは難しい。
【特許文献1】特開2006−93229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した素子分離構造の中では、SOI基板を用いたトレンチ分離構造が最もノイズに強く、素子分離としては最もポテンシャルが高いと考えられる。しかしながら、この構造を用いて高耐圧のレベルシフト素子を開発してきたところ、SOI基板を用いたトレンチ分離構造のHVICにおいても、dv/dtサージが印加された際に支持基板を介して電位が干渉し、支持基板と活性層(SOI層)との間に配置された埋込酸化膜(BOX:Buried Oxide)にて形成される寄生キャパシタを充放電する変位電流が発生し、回路を誤動作させてしまうという問題が生じた。図8は、変位電流が発生する様子を示したHVICの断面図である。この図に示すように、例えば、高電位基準回路部HVの仮想GND電位とされる部位から埋込酸化膜3を介して支持基板2に流れたのち、再び埋込酸化膜3を介して低電位基準回路部LVのGND電位とされる部位に流れ込むという経路で変位電流が発生する。
【0006】
このような問題は、埋込酸化膜3を厚くして寄生キャパシタ容量を低減したり、支持基板2側の不純物濃度を下げて高抵抗にして変位電流の伝搬を低減することで抑制可能であるが、高増幅率のアンプ回路等を集積する場合には僅かな変位電流でも誤動作の要因となり、完全な対策は難しい。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、SOI基板を用いたトレンチ分離構造により低電位基準回路と高電位基準回路およびレベルシフト素子を備えた半導体装置を構成する場合において、dv/dtサージにより、支持基板と活性層との間に配置される絶縁膜(例えば、BOX)にて構成される寄生容量を充放電する変位電流が発生することを抑制し、回路の誤動作を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、支持基板(2)の埋込絶縁膜(3)側の表面部のうちの低電位基準回路部(LV)の下部に位置する部分に、支持基板(2)よりも高不純物濃度とされた第1サージ吸収層(2a)が形成されていると共に、高電位基準回路部(HV)の下部に位置する部分に、支持基板(2)よりも高不純物濃度とされた第2サージ吸収層(2b)が形成されており、活性層(1)のうち低電位基準回路部(LV)における回路素子(10)から絶縁された部位において第1の電位を印加する配線(17a)に対して第1サージ吸収層(2a)が電気的に接続されていると共に、活性層(1)のうち高電位基準回路部(HV)における回路素子(10)から絶縁された部位において第2の電位を印加する配線(17b)に対して第2サージ吸収層(2b)が電気的に接続されており、第1サージ吸収層(2a)、第2サージ吸収層(2b)および支持基板(2)のうち第1サージ吸収層(2a)および第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分にて、逆バイアスがかかるPN接合部が構成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構造によれば、変位電流が発生しても第1、第2サージ吸収層(2a、2b)が電気的に接続された配線(17a、17b)を通じて引き抜かれるようにできる。それと同時に支持基板(2)内に電位差が発生しても、第1、第2サージ吸収層(2a、2b)および支持基板(2)のうちの残りの部分により形成されるPN接合部に逆バイアスがかかった状態となるため、変位電流の流れを抑制することが可能となる。すなわち、PN接合部に発生する空乏層による容量により、見かけ上寄生キャパシタ容量が小さくなる。
【0010】
これにより、変位電流が発生し難くなるようにできる。したがって、変位電流が低電位基準回路部LVに備えられた各種回路に流れることを防止でき、回路が誤動作してしまうことを防止することが可能となる。
【0011】
例えば、請求項2に記載したように、接地電位を第1の電位とし、低電位基準回路部(LV)が接地電位を基準電位として動作し、接地電位よりも高電位である仮想的な接地電位を第2の電位とし、高電位基準回路部(HV)が仮想的な接地電位を基準電位として動作する場合、接地電位とされるGND配線(17a)に第1サージ吸収層(2a)もしくは低電位基準回路部(LV)内の回路への電源電圧を印加する電源ラインを電気的に接続すると共に、仮想的な接地電位とされる仮想GND配線(17b)もしくは高電位基準回路部(HV)内の回路への電源電圧を印加する電源ラインに第2サージ吸収層(2b)を電気的に接続することができる。
【0012】
そして、各部の導電型に関しては、請求項3に記載したように、第1サージ吸収層(2a)をp型、第2サージ吸収層(2b)をn型、支持基板(2)のうち第1サージ吸収層(2a)および第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分をn型またはp型とすることができる。
【0013】
また、請求項4に記載したように、第1サージ吸収層(2a)をp型、第2サージ吸収層(2b)をp型、支持基板(2)のうち第1サージ吸収層(2a)および第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分をn型としても良い。
【0014】
さらに、請求項5に記載したように、第1サージ吸収層(2a)をn型、第2サージ吸収層(2b)をn型、支持基板(2)のうち第1サージ吸収層(2a)および第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分をp型としても良い。
【0015】
また、請求項6に記載したように、支持基板(2)のうち第1サージ吸収層(2a)および第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分に関しては、フローティング状態、接地電位もしくは仮想的な接地電位のいずれであっても構わない。
【0016】
請求項7に記載の発明では、支持基板(2)の埋込絶縁膜(3)側の表面部において、レベルシフト素子形成部(LS)の下部に位置する部分に支持基板(2)よりも高不純物濃度とされた第3サージ吸収層(2c)が形成され、第3サージ吸収層(2c)は、レベル素子形成部(LS)における活性層(1)のうち埋込絶縁膜(3)と接する部分の導電型と同じ導電型とされていることを特徴としている。
【0017】
このような構造の第3サージ吸収層(2c)を設けることにより、レベル素子形成部(LS)における埋込絶縁膜(3)を挟んだ両側の電位差を無くし、より寄生キャパシタ容量を低減することが可能となる。これにより、変位電流を更に抑制することが可能となり、より回路が誤動作してしまうことを防止できる。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかる低電位基準回路部LVと高電位基準回路部HVおよびレベルシフト素子形成部LSを備えた半導体装置(HVIC)の断面図である。また、図2は、図1に示す半導体装置を上面側から見た時のレイアウト図であり、図1は、図2のA−A断面図に相当している。以下、これらの図を参照して、本実施形態の半導体装置の構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、例えばn型シリコンにて構成されたSOI層1とシリコン基板などで構成された支持基板2とがシリコン酸化膜などで構成された埋込絶縁膜3を介して接合されたSOI基板4を用いて本実施形態の半導体装置を形成している。
【0022】
SOI層1は、半導体装置の表面側に配置され、シリコン基板を所定膜厚に研削することにより構成されている。このSOI層1は、複数のトレンチ分離部5a、5bにより素子分離されている。トレンチ分離部5a、5bは、異なる深さで構成されている。具体的には、トレンチ分離部(第2トレンチ分離部)5aはSOI層1を貫通して埋込絶縁膜3に達するように形成され、トレンチ分離部(第1トレンチ分離部)5bは埋込絶縁膜3を更に貫通して支持基板2に達するように形成されている。これら各トレンチ分離部5a、5bは、例えば、SOI層1の表面から形成されたトレンチ6a、6bとトレンチ6a、6b内に配置された絶縁膜7a、7bおよびドープトPoly−Si8a、8bによって構成されており、トレンチ分離部5bの方がトレンチ分離部5aよりも幅広で構成されている。
【0023】
トレンチ分離部5aは多重枠状構造とされており、最も外側とそれよりも1つ内側のトレンチ分離部5aの間に形成される領域(つまり図1、図2の紙面左側の領域)が低電位基準回路部LV、最も内側のトレンチ分離部5a内の領域(つまり紙面右側の領域)が高電位基準回路部HV、これら低電位基準回路部LVと高電位基準回路部HVの間に形成される領域がレベルシフト素子形成部LSとされている。トレンチ分離部5bは、SOI層1に点在配置された各素子を囲むように形成されている。
【0024】
SOI層1における低電位基準回路部LVには、小電位にて駆動されるロジック回路などの信号処理回路が構成されている。低電位基準回路部LVは、トレンチ分離部5aにて半導体装置の他の部分から素子分離されており、低電位基準回路部LV内に備えられる各素子同士の間もトレンチ分離部5bにて電気的に分離されている。
【0025】
この低電位基準回路部LVには、例えば、CMOS10などのように信号処理回路を構成する各種素子が備えられている。具体的には、SOI層1のうちトレンチ分離部5bにて囲まれた領域内がSTI(Shallow Trench Isolation)やLOCOS酸化膜等の素子分離用の絶縁膜11にて素子分離されており、素子分離された各領域はnウェル層12aもしくはpウェル層12bとされている。nウェル層12a内にはp+型ソース領域13aおよびp+型ドレイン領域14aが構成され、pウェル層12b内にはn+型ソース領域13bおよびn+型ドレイン領域14bが構成されている。そして、p+型ソース領域13aとp+型ドレイン領域14aの間に位置するnウェル層12aの表面、および、n+型ソース領域13bおよびn+型ドレイン領域14bの間に位置するpウェル層12bの表面に、ゲート絶縁膜15a、15bを介してゲート電極16a、16bが形成されている。これにより、nチャネルMOSFETとpチャネルMOSFETにて構成されたCMOS10が構成されている。
【0026】
なお、SOI層1の表面側には、CMOS10を構成するゲート電極16a、16bや各ソース領域13a、13bもしくは各ドレイン領域14a、14bと電気的に接続される配線部や層間絶縁膜などが形成されているが、ここでは図示を省略してある。また、CMOS10の他にも、バイポーラトランジスタや拡散抵抗、さらにはメモリなども備えられるが、これらの構造は周知であるため、ここでは代表してCMOS10のみを示してある。
【0027】
このように構成される低電位基準回路部LVの所定部位、例えばp+型ソース領域13aおよびn+型ソース領域13bをGND配線17aに電気的に接続することでGND電位としているが、本実施形態では、さらに、低電位基準回路部LVのトレンチ分離部5b内に形成されたドープトPoly−Si8bもGND電位としている。
【0028】
一方、SOI層1における高電位基準回路部HVには、高電位にて駆動されるロジック回路などの信号処理回路が構成されている。高電位基準回路部HVは、トレンチ分離部5aにて半導体装置の他の部分から素子分離されており、高電位基準回路部HV内に備えられる各素子同士の間もトレンチ分離部5bにて電気的に分離されている。
【0029】
この高電位基準回路部HVにも、低電位基準回路部LVと同様の構造のCMOS10が備えられており、図示しないがバイポーラトランジスタや拡散抵抗、さらにはメモリなども備えられている。
【0030】
そして、このように構成される高電位基準回路部HVに関しても、低電位基準回路部LVと同様、p+型ソース領域13aおよびn+型ソース領域13bを仮想GND配線17bに電気的に接続することで高電圧側の基準となる仮想GND電位(つまりGND電位(電位ゼロ)よりも高電圧を仮想的に接地電位と位置づけたときの電位)とし、さらに高電位基準回路部HVのトレンチ分離部5b内に形成されたドープトPoly−Si8bも仮想GND電位としている。
【0031】
また、SOI層1におけるレベルシフト素子形成部LSには、レベルシフト素子として高耐圧LDMOS20が形成されている。高耐圧LDMOS20は、SOI層1の表層にそれぞれ位置するn型ドレイン領域21、p型チャネル領域22、n+型ソース領域23を有している。n型ドレイン領域21の表層にはn+型コンタクト層24が形成されており、p型チャネル領域22の表層にはp型コンタクト層25が形成されている。また、n型ドレイン領域21とp型チャネル領域22は、いわゆるLOCOS酸化膜26により分離されている。そして、p型チャネル領域22上には、ゲート絶縁膜27を介して、ゲート電極28が配置されている。これにより、高耐圧LDMOS20が構成されている。
【0032】
なお、SOI層1の表面側には、ゲート電極28、n+型ソース領域23およびp型コンタクト層25、もしくは、n+型コンタクト層24と電気的に接続される配線部や層間絶縁膜が形成されているが、ここでは図示を省略してある。
【0033】
支持基板2は、例えばn型もしくはp型のシリコン基板などで構成されている。支持基板2の埋込絶縁膜3側の表面部のうち低電位基準回路部LVの下部全域および高電位基準回路部HVの下部全域において、第1サージ吸収層2aおよび第2サージ吸収層2bが備えられている。
【0034】
第1サージ吸収層2aは、低電位基準回路部LVに形成されたトレンチ分離部5b内のドープトPoly−Si8bを通じてGND配線17aに電気的に接続されることでGND電位とされている。本実施形態の場合、第1サージ吸収層2aはp型半導体で構成されている。
【0035】
また、第2サージ吸収層2bは、高電位基準回路部HVに形成されたトレンチ分離部5b内のドープトPoly−Si8bを通じて仮想GND配線17bに電気的に接続されることで仮想GND電位とされている。本実施形態の場合、第2サージ吸収層2bはn型半導体で構成されている。
【0036】
これら第1、第2サージ吸収層2a、2bが低インピーダンスとなるように、第1、第2サージ吸収層2a、2bの不純物濃度は、支持基板2内の残りの部分の不純物濃度よりも高く設定されている。なお、支持基板2のうち第1、第2サージ吸収層2a、2bとされない残りの部分の導電型はn型とp型のいずれであっても構わないが、低電位基準回路部LVと高電位基準回路部HVとの間の電位差を緩和するための電界緩和層として機能するため、HVIC内で発生する最大電圧より高い耐圧を有するように濃度、距離(第1、第2サージ吸収層2a、2b間の距離)を設定するのが望ましい。
【0037】
以上説明した本実施形態の半導体装置では、低電位基準回路部LVに形成された第1サージ吸収層2aがトレンチ分離部5b内のドープトPoly−Si8bを通じてGND配線17aに電気的に接続されることでGND電位とされ、高電位基準回路部HVに形成された第2サージ吸収層2bがトレンチ分離部5b内のドープトPoly−Si8bを通じて仮想GND配線17bに電気的に接続されることで仮想GND電位とされている。このため、変位電流が発生しても第1、第2サージ吸収層2a、2bからドープトPoly−Si8bを通じてGND配線17aもしくは仮想GND配線17bに引き抜かれるようにできる。
【0038】
そして、それと同時に支持基板2内に電位差が発生しても、第1、第2サージ吸収層2a、2bおよび支持基板2のうちの残りの部分により形成されるPN接合部に逆バイアスがかかった状態となるため、変位電流の流れを抑制することが可能となる。すなわち、PN接合部に発生する空乏層による容量により、見かけ上寄生キャパシタ容量が小さくなる。特に、第1、第2サージ吸収層2a、2bに接する支持基板2の残りの部分が第1、第2サージ吸収層2a、2bよりも低濃度とされているため、この部分に空乏層が広く伸び、寄生キャパシタ容量をより小さくすることが可能となる。
【0039】
これにより、変位電流が発生し難くなるようにできる。したがって、変位電流が低電位基準回路部LVに備えられた各種回路に流れることを防止でき、回路が誤動作してしまうことを防止することが可能となる。
【0040】
なお、このように構成される本実施形態の半導体装置の製造方法に関しては、支持基板2に対して第1、第2サージ吸収層2a、2bを形成する工程およびトレンチ分離部5bを形成する工程を行うこと以外に関しては従来と同様である。例えば、第1、第2サージ吸収層2a、2bを形成する工程に関しては、SOI層1を構成するシリコン基板と支持基板2とを貼り合わせる前に予め支持基板2の所望位置にイオン注入などを行っておくことで第1、第2サージ吸収層2a、2bを形成しておけば良い。また、トレンチ分離部5bを形成する工程に関しては、トレンチ分離部5aの形成と別工程としても良いが、トレンチ幅が広くなるほどエッチングレートが大きくなることを利用し、トレンチ分離部5aを形成するためのトレンチ6aよりも幅広となるようにトレンチ6bを形成しておくことで、トレンチ分離部5aと同工程で行うことが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第1実施形態に対してサージ吸収層を追加したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
図3は、本実施形態にかかる半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、支持基板2の埋込絶縁膜3側の表面部のうちレベルシフト素子形成部LSの下部全域において、第3サージ吸収層2cを備えると共に、レベルシフト素子形成部LSを囲む複数の分離構造のうちの1つを第3サージ吸収層2cに繋がるドープトPoly−Si8bとするトレンチ分離部5bにした構造としている。
【0043】
第3サージ吸収層2cは、低電位基準回路部LVに形成されたトレンチ分離部5b内のドープトPoly−Si8bを通じて高耐圧LDMOS20の所望部位に接続される配線(図示せず)と電気的に接続されている。この第3サージ吸収層2cは、レベル素子形成部LSにおけるSOI層1のうち埋込絶縁膜3と接する部分の導電型と同じ導電型とされ、本実施形態の場合にはn型とされている。
【0044】
このような構造の第3サージ吸収層2cを設けることにより、レベル素子形成部LSにおける埋込絶縁膜3を挟んだ両側の電位差を無くし、より寄生キャパシタ容量を低減することが可能となる。これにより、変位電流を更に抑制することが可能となり、より回路が誤動作してしまうことを防止できる。
【0045】
なお、このような第3サージ吸収層2cに関しては、第1、第2サージ吸収層2a、2bのうち同じ導電型とされるものを形成する際に同時に形成すれば良い。
【0046】
(他の実施形態)
上記第1〜第5実施形態では、低電位基準回路部LVや高電位基準回路部HVおよびレベルシフト素子形成部LSを構成する素子の一例を記載しているが、これらを構成する素子の種類に関しては適宜変更可能である。もちろん、トレンチ分離部5a、5bのレイアウトなどに関しても適宜変更可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、第1サージ吸収層2aをp型、第2サージ吸収層2bをn型、支持基板2のうちの残りの部分をn型もしくはp型としている。しかしながら、第1、第2サージ吸収層2a、2bと支持基板2の残りの部分との導電型の関係は、支持基板2内において第1、第2サージ吸収層2a、2bの間を通る経路内で逆接続のPN接合部が形成される関係であれば良い。このため、第1、第2サージ吸収層2a、2bをn型、支持基板2のうちの残りの部分をp型としても良い。さらに、第1、第2サージ吸収層2a、2bをp型、支持基板2のうちの残りの部分をn型としても良い。
【0048】
さらに、レベルシフト素子形成部LSにおいてSOI層1がp型とされる場合、レベルシフト素子形成部LSにおける直下の第3サージ吸収層2cを高濃度のp型にすると好ましい。図4は、その一例を示した断面図である。この図に示されるように、第3サージ吸収層2cを高濃度のp型にすると共に、トレンチ分離部5b内にドープトPoly−Si8bを通じてGND配線17aと電気的に接続した構造としている。このような構造とすることもできる。
【0049】
逆に、レベルシフト素子形成部LSにおいてSOI層1がn型とされる場合、レベルシフト素子形成部LSにおける直下の第3サージ吸収層2cを高濃度のn型にすると好ましい。図5は、その一例を示した断面図である。この図に示されるように、第3サージ吸収層2cを高濃度のn型にすると共に、トレンチ分離部5b内にドープトPoly−Si8bを通じて仮想GND配線17bと電気的に接続した構造としている。このような構造とすることもできる。
【0050】
また、上記実施形態では、低電位基準回路部LVに印加される第1の電位がGND電位、高電位基準回路部HVに印加される第2の電位が仮想GND電位とされる場合について説明したが、低電位基準回路部LVや高電位基準回路部HVに備えられる回路素子の駆動電位などを第1の電位もしくは第2の電位とすることも可能である。すなわち、低電位基準回路部LVや高電位基準回路部HVに備えられる回路素子の駆動電位は、それぞれGND電位や仮想GND電位に対して10〜20V程度高電圧となっているが、仮想GND電位とGND電位との電位差に比べれば十分に小さい。このため、GND電位や仮想GND電位ではなく、低電位基準回路部LVや高電位基準回路部HVの回路素子に印加される電位を第1の電位もしくは第2の電位とすることも可能である。図6は、その一例を示した断面図である。この図に示したように、低電位基準回路部LVにおけるCMOS10の駆動電位(電源電圧)を印加する電源ラインと第1サージ吸収層2aとを接続し、高電位基準回路部HVにおけるCMOS10の駆動電位(電源電圧)を印加する電源ラインと第2サージ吸収層2bとを接続することができる。
【0051】
さらに、上記実施形態では、トレンチ分離部5b内の導体材料としてドープトPoly−Si8bを用いているが、他の導体材料、例えば金属層などを用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置(HVIC)の断面図である。
【図2】図1に示す半導体装置を上面側から見た時のレイアウト図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる半導体装置(HVIC)の断面図である。
【図4】他の実施形態に示す半導体基板(HVIC)の断面図である。
【図5】他の実施形態に示す半導体基板(HVIC)の断面図である。
【図6】他の実施形態に示す半導体基板(HVIC)の断面図である。
【図7】HVICを用いたインバータ駆動回路の模式図である。
【図8】変位電流が発生する様子を示したHVICの断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 SOI層
2 支持基板
2a〜2c 第1〜第3サージ吸収層
3 埋込層
4 SOI基板
5a、5b トレンチ分離部
6a、6b トレンチ
7a、7b 絶縁膜
8a、8b ドープトPoly−Si
10 CMOS
17a GND配線
17b 仮想GND配線
20 高耐圧LDMOS
HV 高電位基準回路部
LS レベルシフト素子形成部
LV 低電位基準回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層(1)と支持基板(2)とが埋込絶縁膜(3)を介して貼り合わされたSOI基板(4)を有し、
前記SOI基板(4)における前記活性層(1)に、第1の電位が印加される回路素子(10)を含む低電位基準回路部(LV)と、前記第1の電位よりも高電位である第2の電位が印加される回路素子(10)を含む高電位基準回路部(HV)と、前記低電位基準回路部(LV)と前記高電位基準回路部(HV)との間での基準電位のレベルシフトを行うためのレベルシフト素子(20)が備えられたレベルシフト素子形成部(LS)とが形成されてなる半導体装置において、
前記支持基板(2)の前記埋込絶縁膜(3)側の表面部のうちの前記低電位基準回路部(LV)の下部に位置する部分に、前記支持基板(2)よりも高不純物濃度とされた第1サージ吸収層(2a)が形成されていると共に、前記高電位基準回路部(HV)の下部に位置する部分に、前記支持基板(2)よりも高不純物濃度とされた第2サージ吸収層(2b)が形成されており、
前記活性層(1)のうち前記低電位基準回路部(LV)における前記回路素子(10)から絶縁された部位において前記第1の電位を印加する配線(17a)に対して前記第1サージ吸収層(2a)が電気的に接続されていると共に、前記活性層(1)のうち前記高電位基準回路部(HV)における前記回路素子(10)から絶縁された部位において前記第2の電位を印加する配線(17b)に対して前記第2サージ吸収層(2b)が電気的に接続されており、
前記第1サージ吸収層(2a)、前記第2サージ吸収層(2b)および前記支持基板(2)のうち前記第1サージ吸収層(2a)および前記第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分にて、逆バイアスがかかるPN接合部が構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
接地電位を前記第1の電位とし、前記低電位基準回路部(LV)が前記接地電位を基準電位として動作し、
前記接地電位よりも高電位である仮想的な接地電位を前記第2の電位とし、前記高電位基準回路部(HV)が前記仮想的な接地電位を基準電位として動作し、
前記第1サージ吸収層(2a)が前記接地電位とされるGND配線(17a)もしくは前記低電位基準回路部(LV)内の回路への電源電圧を印加する電源ラインと電気的に接続されていると共に、前記第2サージ吸収層(2b)が前記仮想的な接地電位とされる仮想GND配線(17b)もしくは前記高電位基準回路部(HV)内の回路への電源電圧を印加する電源ラインと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1サージ吸収層(2a)はp型、前記第2サージ吸収層(2b)はn型、前記支持基板(2)のうち前記第1サージ吸収層(2a)および前記第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分はn型またはp型とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1サージ吸収層(2a)はp型、前記第2サージ吸収層(2b)はp型、前記支持基板(2)のうち前記第1サージ吸収層(2a)および前記第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分はn型とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1サージ吸収層(2a)はn型、前記第2サージ吸収層(2b)はn型、前記支持基板(2)のうち前記第1サージ吸収層(2a)および前記第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分はp型とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記支持基板(2)のうち前記第1サージ吸収層(2a)および前記第2サージ吸収層(2b)とは異なる残りの部分はフローティング状態、接地電位もしくは仮想的な接地電位のいずれか1つとされていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記支持基板(2)の前記埋込絶縁膜(3)側の表面部において、前記レベルシフト素子形成部(LS)の下部に位置する部分に前記支持基板(2)よりも高不純物濃度とされた第3サージ吸収層(2c)が形成され、
前記第3サージ吸収層(2c)は、前記レベル素子形成部(LS)における前記活性層(1)のうち埋込絶縁膜(3)と接する部分の導電型と同じ導電型とされていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−177004(P2009−177004A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14958(P2008−14958)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】