半導体装置
【課題】より確実に画素間クロストークを抑制することが可能な、固体撮像素子を備える半導体装置を提供する。
【解決手段】主表面を有する半導体基板SUBと、半導体基板SUBの主表面上に配置された第1導電型の不純物層DPWと、不純物層DPW上に、第1導電型の不純物領域と第2導電型の不純物領域とが互いに接合する構成を含む光電変換素子と、光電変換素子を含む単位画素を構成し、光電変換素子と電気的に接続されるトランジスタM1〜M4とを備えている。平面視において光電変換素子の外周部の少なくとも一部には、内部に空隙AGが含まれ、光電変換素子と、光電変換素子に隣接する光電変換素子とを、互いに電気的に絶縁する分離絶縁層SIが配置されている。上記分離絶縁層SIは、第1導電型の不純物層DPWの最上面に接する。
【解決手段】主表面を有する半導体基板SUBと、半導体基板SUBの主表面上に配置された第1導電型の不純物層DPWと、不純物層DPW上に、第1導電型の不純物領域と第2導電型の不純物領域とが互いに接合する構成を含む光電変換素子と、光電変換素子を含む単位画素を構成し、光電変換素子と電気的に接続されるトランジスタM1〜M4とを備えている。平面視において光電変換素子の外周部の少なくとも一部には、内部に空隙AGが含まれ、光電変換素子と、光電変換素子に隣接する光電変換素子とを、互いに電気的に絶縁する分離絶縁層SIが配置されている。上記分離絶縁層SIは、第1導電型の不純物層DPWの最上面に接する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、より特定的には、固体撮像素子を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサは、単位画素ごとにマイクロレンズと、赤、緑、青のいずれかのカラーフィルタと、フォトダイオードなどの光電変換素子とを備える。カラーフィルタの色に応じて、各単位画素のカラーフィルタを透過して光電変換素子に到達する光の波長が決定する。単位画素のカラーフィルタを透過して光電変換素子に入力した光は、電気信号に変換され、単位画素の内部で当該電気信号が検出される。カラーフィルタの色が異なる複数の単位画素が半導体基板上に互いに間隔をおいて配置されたイメージセンサは、たとえば特開2006−279048号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
イメージセンサにおいて、赤のカラーフィルタを透過する光は、波長が長く、たとえばシリコンからなる積層構造の内部を浸透する深さが大きい。このため当該光は、たとえばシリコンからなる半導体基板の、より深い(底面に近い)領域まで進入する。光電変換素子に到達した赤い光が光電変換して発生する電子の一部は、拡散やドリフトによって当該赤いフィルタを有する単位画素に収集される。しかし赤い光が光電変換して発生する電子の一部は、拡散やドリフトによって隣接するたとえば緑のカラーフィルタを有する単位画素に誤って収集される可能性がある。このような現象を電気的クロストークという。あるいは赤いカラーフィルタを透過した光線がそのまま隣接する緑のカラーフィルタを有する単位画素のほうへ誤って進入する可能性がある。このような現象を光学的クロストークという。電気的クロストークと光学的クロストークとを合わせて画素間クロストークという。画素間クロストークは、CMOSイメージセンサの色調不良や画質劣化の原因となる。
【0004】
特開2006−279048号公報のイメージセンサは、特に波長が長い赤のカラーフィルタの画素の下に配置される上部基板領域が、隣接する緑のカラーフィルタの画素と電気的に分離され、かつ赤の画素よりも平面的に外側まで延びる構成である。赤のカラーフィルタを透過した光により発生し、上部基板領域に達した電荷は、たとえ赤の画素の外部に流入したとしても、緑の画素に進入せず赤の画素に収集される。このため電気的クロストークが抑制される。
【0005】
しかし上記の構成を用いても画素間クロストーク、特に光学的クロストークが発生する可能性が残っている。そこでたとえば特開2007−227761号公報(特許文献2)や特開2008−10544号公報(特許文献3)には、内部にエアギャップと呼ばれる空隙が形成された分離絶縁膜により、隣接する単位画素同士が電気的に絶縁された構成を有するイメージセンサ(固体撮像素子)が開示されている。またたとえば特開2009−267208号公報(特許文献4)には、隣接するセル間の分離絶縁膜中にエアギャップが形成されたフラッシュメモリが開示されている。さらに特開2002−203896号公報(特許文献5)には、エアギャップを有する浅いトレンチの構造体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−279048号公報
【特許文献2】特開2007−227761号公報
【特許文献3】特開2008−10544号公報
【特許文献4】特開2009−267208号公報
【特許文献5】特開2002−203896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特開2007−227761号公報および特開2008−10544号公報に開示される固体撮像素子は、いずれもエアギャップの最下部(最も底部に近い部分)がフォトダイオードの最下部よりも上側に配置されている。このためフォトダイオードの下部においては、平面視における周囲にエアギャップが配置されない。したがって特にフォトダイオードの下部において、エアギャップが光学的クロストークを抑制する機能が不十分となる可能性がある。また特開2009−267208号公報に開示されるエアギャップも、その最下部は素子分離溝の最下部に比べて非常に上側(浅い部分)に形成されている。このため特開2009−267208号公報のエアギャップも、上記の特開2007−227761号公報および特開2008−10544号公報に開示されるエアギャップと同様の問題を有している。上記の問題は、特開2002−203896号公報に開示される製造方法を用いても解決することは困難である。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものである。その目的は、より確実に画素間クロストークを抑制することが可能な、固体撮像素子を備える半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例による半導体装置は以下の構成を備えている。
上記半導体装置は、主表面を有する半導体基板と、半導体基板の主表面上に配置された第1導電型の不純物層と、第1導電型の不純物層上に、第1導電型の不純物領域と第2導電型の不純物領域とが互いに接合する構成を含む光電変換素子と、光電変換素子を含む単位画素を構成し、光電変換素子と電気的に接続されるトランジスタとを備えている。平面視において光電変換素子の外周部の少なくとも一部には、内部に空隙が含まれ、光電変換素子と光電変換素子に隣接する光電変換素子とを互いに電気的に絶縁する分離絶縁層が配置されている。上記分離絶縁層は、第1導電型の不純物層の最上面に接する。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、光電変換素子の外周部に配置され、第1導電型の不純物層の最上面に達する分離絶縁層により、隣接する光電変換素子間の電気的クロストークが抑制される。また当該分離絶縁層の内部に形成される空隙により、隣接する光電変換素子間の光学的クロストークが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態1に係る半導体装置であって、CMOSイメージセンサを含むシステム・チップを示す概略平面図である。
【図2】CMOSイメージセンサを構成する単位画素の等価回路図である。
【図3】本実施の形態1に係るピクセルアレイにおける複数の単位画素の配置を示す概略平面図である。
【図4】図3に示される各種トランジスタの拡大図である。
【図5】図3のV−V線に沿う部分における概略断面図である。
【図6】図3のVI−VI線に沿う部分における概略断面図である。
【図7】図3のVII−VII線に沿う部分における概略断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線に沿う部分における概略断面図である。
【図9】本実施の形態1における、図8の浅い分離領域の変形例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の形態1の比較例の、ピクセルアレイにおける複数の単位画素の配置を示す概略平面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿う部分における概略断面図である。
【図12】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第1工程を示す概略断面図である。
【図13】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第2工程を示す概略断面図である。
【図14】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第3工程を示す概略断面図である。
【図15】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第4工程を示す概略断面図である。
【図16】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第5工程を示す概略断面図である。
【図17】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第6工程を示す概略断面図である。
【図18】本実施の形態2に係るピクセルアレイにおける複数の単位画素の配置を示す概略平面図である。
【図19】図18のXIX−XIX線に沿う部分における概略断面図である。
【図20】図18のXX−XX線に沿う部分における概略断面図である。
【図21】本発明の実施の形態1のCMOSイメージセンサの、分光特性のシミュレーション手順を示すフローチャートである。
【図22】本発明の実施の形態1のCMOSイメージセンサを構成する単位画素の、分光感度の波長依存性を計算する手順を示すフローチャートである。
【図23】赤いカラーフィルタを有するフォトダイオードを有する単位画素における、分光感度の波長依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【図24】緑のカラーフィルタを有するフォトダイオードを有する単位画素における、分光感度の波長依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【図25】青いカラーフィルタを有するフォトダイオードを有する単位画素における、分光感度の波長依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず、本実施の形態としてチップとしての半導体装置について説明する。
【0013】
図1を参照して、半導体ウェハをダイシングすることにより形成される半導体チップCHPは、たとえば矩形の平面形状を有している。半導体チップCHPの主表面上には、CMOSイメージセンサが形成されるピクセルアレイが配置されている。CMOSイメージセンサは、受けた光を電子に変換し、発生した電子の数に応じて電圧として出力する装置である。ピクセルアレイの周囲には、I/O制御回路、水平スキャナ、垂直スキャナと制御ロジック、CDS回路付きAD変換器、画像処理部、カメラ信号処理部およびタイミングパルス発生器の各ブロックが配置されている。
【0014】
I/O制御回路は、チップCHPの外部に接続される機器(回路)との入出力信号を制御する回路である。水平スキャナおよび垂直スキャナは、ピクセルアレイにおいて複数配置されるCMOSイメージセンサの単位画素を選択し、当該単位画素における受光の有無を検出する。このための動作は、垂直スキャナの制御ロジックにより制御される。
【0015】
AD変換器は、単位画素から発生する、アナログ信号としての電圧信号をデジタル信号に変換する。AD変換器に付属するCDS回路は、同一の単位画素に対して2回電気信号を検出し、2回のそれぞれの検出結果の差分としてのノイズをキャンセルする。CDS回路は、相関二重サンプリング法に基づくもので、Correlated Double Samplingの略であり、アンプ雑音とリセット雑音とを除去するための回路である。画像処理部は、発生した電圧信号を処理することにより得られる画像を補正、加工する。カメラ信号処理部は、カメラの動作を表わす信号を処理する。タイミングパルス発生器は、チップCHPの各ブロックが同期を取るための信号であるタイミングパルスを発生する。
【0016】
次に、単位画素の構成および動作原理について、図2を用いて説明する。
図2を参照して、CMOSイメージセンサを構成する各単位画素は、フォトダイオードPD(光電変換素子)と転送トランジスタM1、リセットトランジスタM2、選択トランジスタM3、増幅トランジスタM4を含み、これらの各トランジスタM1〜M4が互いに電気的に接続された構成である。トランジスタM1〜M4のそれぞれはたとえばMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタであり、トランジスタM1のソース領域SO1はフォトダイオードPDに、ゲート電極GE1は読み出し線に接続される。トランジスタM2のソース領域SO2はトランジスタM1のドレイン領域DR1に、ゲート電極GE2は行リセット線にそれぞれ接続される。トランジスタM3のソース領域SO3は列信号線に、ゲート電極GE3は行選択線にそれぞれ接続される。トランジスタM4のソース領域SO4はトランジスタM3のドレイン領域DR3に、ゲート電極GE4はドレイン領域DR1およびソース領域SO2にそれぞれ接続される。
【0017】
フォトダイオードPDは外部から受けた光を吸収して、光電変換により当該光の量に応じた量の電子を発生し、その電子を内部に蓄えることにより電気信号(電圧)として出力する。当該電気信号は、読み出し線からの信号によりオン状態となった転送トランジスタM1により転送され、接続点P1に達する。接続点P1ではフォトダイオードPDで発生した電荷が蓄積される。接続点P1の電荷による電圧信号は、増幅トランジスタM4のゲート電極GE4を制御する。
【0018】
増幅トランジスタM4に入力された、フォトダイオードPDからの電圧信号(接続点P1の電荷量)に応じた大きさの電圧が、増幅トランジスタM4と(ソース領域SO4およびドレイン領域DR3により)接続された選択トランジスタM3から列信号線に出力される。すなわち、行選択線からの電気信号により選択トランジスタM3がオン状態となったときに、列信号線は当該単位画素における電圧の大きさを読み出す。基本的に、行選択線に接続された1列分の複数の単位画素が同時に選択される。
【0019】
リセットトランジスタM2は、行リセット線に電圧印加してオン状態とすることにより、転送トランジスタM1のドレイン(接続点P1)に蓄積された電荷を周期的にリセットする。このリセットにより、転送トランジスタM1に蓄積される電荷がなくなり、単位画素が初期化される。このときドレイン領域DR2やドレイン領域DR4には、一定の電圧が印加される。
【0020】
次に図3〜図8を用いて、本実施の形態における、ピクセルアレイに配置される各単位画素の構成について説明する。
【0021】
図3を参照して、図2のトランジスタM1〜M4は、それぞれが半導体チップCHP(後述する半導体基板)の主表面上に、平面視において互いに間隔をおいてマトリックス状に複数配置されている。基本的にトランジスタM1〜M4のすべてが揃うことにより1つの単位画素を構成する。しかし図3に示すようにトランジスタM2,M3,M4は、たとえば隣接する2つのトランジスタM1に共有されるように配置されてもよい。
【0022】
トランジスタM1についてはフォトダイオードPDR、PDG、PDBを有するものが交互に配置されている。フォトダイオードPDRは赤いカラーフィルタを有する光電変換素子である。すなわちフォトダイオードPDRが受ける光は赤いカラーフィルタを透過した赤い光である。同様に、フォトダイオードPDGは緑色の、フォトダイオードPDBは青いカラーフィルタを有しており、それぞれ緑色または青色の光を受けることができる光電変換素子である。
【0023】
ここでフォトダイオードPDRおよびフォトダイオードPDBは、いずれも(図の上下方向および左右方向に関して)フォトダイオードPDGと隣接するように配置されることが好ましい。より具体的には、たとえば図3においてフォトダイオードが左右方向に並ぶ最上列には、左側のフォトダイオードPDRの右側に隣接するようにフォトダイオードPDGが、フォトダイオードPDGの右側に隣接するようにフォトダイオードPDRが配置される。また図3のフォトダイオードが左右方向に並ぶ上から2番目の列には、左側のフォトダイオードPDGの右側に隣接するようにフォトダイオードPDBが、フォトダイオードPDBの右側に隣接するようにフォトダイオードPDGが配置される。また図3の上下方向に3列並ぶフォトダイオードのうち左側の列には、フォトダイオードPDRとフォトダイオードPDGとが交互に配置される。図3の上下方向に3列並ぶフォトダイオードのうち中央の列には、フォトダイオードPDGとフォトダイオードPDBとが交互に配置される。
【0024】
図3および図4を参照して、ソース領域SO1は、フォトダイオードPDを含んだ、転送トランジスタM1(第1のトランジスタ)の活性領域(第1の活性領域)の一部(第1の不純物領域)である。ドレイン領域DR1は、フローティング拡散領域FD(不純物拡散層としての第2の不純物領域)として形成されている、転送トランジスタM1の活性領域(第1の活性領域)の一部である。すなわち転送トランジスタM1は、フォトダイオードPD(ソース領域SO1)およびフローティング拡散領域FD(ドレイン領域DR1)を含む第1の活性領域に形成されている。
【0025】
一般に、フォトダイオードPDを含むソース領域SO1はフローティング拡散領域DR1を含むドレイン領域DR1よりも平面視において大きい面積を有する。このためソース領域SO1とドレイン領域DR1とに挟まれるチャネル領域は概ね台形状となっている。
【0026】
フローティング拡散領域FDは寄生キャパシタンスを持っている。このため、ドレイン領域DR1(図2の接続点P1)にフォトダイオードPDから発生した電荷が伝送されれば、ドレイン領域DR1(接続点P1)はこの電荷を受けて蓄積する。
【0027】
転送トランジスタM1は、図の左右方向に延在するゲート電極GE1に交差する方向(図の上下方向)に活性領域が延在している。転送トランジスタM1の活性領域にソース領域SO1およびドレイン領域DR1が形成される。すなわちゲート電極GE1を中央として、その両側にソース領域SO1およびドレイン領域DR1が配置される。
【0028】
活性領域AA2、AA3、AA4(第2の活性領域)が、ゲート電極GE2、GE3、GE4が延在する左右方向に交差する上下方向に延在している。活性領域AA2、AA3、AA4は各トランジスタM2〜M4(第2のトランジスタ)のソース領域およびドレイン領域を含む領域である。すなわち上記第2の活性領域にトランジスタM2〜M4が形成される。ただしトランジスタM3のドレイン領域DR3とトランジスタM4のソース領域SO4とは互いに接続されるため、共通の活性領域AA34として図示される。
【0029】
なお図3の平面図においては、たとえば図2の等価回路に示すような、各単位画素のトランジスタM1〜M4間を接続する配線については図示が省略されている。
【0030】
平面視における各トランジスタM1〜M4の間には、これらのトランジスタを電気的に分離する電気的分離層が形成されている。このため、図3において図示されない、各単位画素のトランジスタM1〜M4間を接続する配線以外の領域においては、異なるトランジスタ間は互いに電気的に絶縁されている。
【0031】
電気的分離層には、浅い分離領域SLSと深い分離領域DPSとが存在する。図3においては、電気的分離層のうち、隣接するトランジスタM1を図3の上下方向に直線状に結ぶ領域においては浅い分離領域SLSが配置されており、それ以外の領域には、図3の上下方向に直線状に結ぶように、深い分離領域DPSが配置されている。
【0032】
あるトランジスタM1の活性領域から見て、最も近い(他のトランジスタの)活性領域は、図3における当該トランジスタM1の上下方向に隣接する他のトランジスタM1の活性領域である。すなわちたとえば図3において最も左かつ最も上に配置されるフォトダイオードPDRを含むトランジスタM1の活性領域に最も近い活性領域は、当該トランジスタM1の下側に隣接するトランジスタM1である。上記1組の(隣接する単位画素のそれぞれの)トランジスタM1の活性領域の最短距離は、上側のトランジスタM1のソース領域SO1と下側のトランジスタM1のドレイン領域DR1との最短距離aである。このaの値は、たとえば図3において最も左かつ最も上に配置されるフォトダイオードPDRを含むトランジスタM1の活性領域と、たとえば当該トランジスタM1の右側に隣接する(当該トランジスタM1と同じ単位画素の)M1以外のトランジスタM3,M4の活性領域との最短距離bよりも小さい(逆に言えば、最短距離bは最短距離aよりも大きい)。同様に、たとえば図3において最も左かつ最も上に配置されるフォトダイオードPDRを含むトランジスタM1の活性領域と、たとえば当該トランジスタM1の左側に隣接するトランジスタM2の活性領域との最短距離についても、上記の最短距離bと同様に、最短距離aより大きい。
【0033】
本実施の形態においては、あるトランジスタM1の活性領域と、平面視においてそれに最も近い、最短距離がaであるトランジスタM1の活性領域とに挟まれた領域には、電気的分離層が浅い分離領域SLSとして形成されている。それに対して、あるトランジスタM1の活性領域と、当該活性領域との最短距離がbである(トランジスタM1に隣接する)トランジスタM3などの活性領域とに挟まれた領域には、電気的分離層が深い分離領域DPSとして形成されている。同様に、あるトランジスタM1の活性領域と、当該活性領域に隣接するトランジスタM2の活性領域とに挟まれた領域についても、電気的分離層が深い分離領域DPSとして形成されている。
【0034】
より具体的には、浅い分離領域SLSは、隣接する1組のトランジスタM1に挟まれた領域(特に1組のトランジスタM1のうち一方のトランジスタM1のフォトダイオードSO1と、平面視においてこれに最も近い他方のトランジスタM1のドレイン領域DR1とに挟まれた領域)に配置されている。より詳しくは浅い分離領域SLSは、平面視においてトランジスタM1〜M4が配置されない領域のうち、特に図3の一方のトランジスタM1の活性領域と、これに(図の上下方向において)隣接する他方のトランジスタM1の活性領域との間の領域に形成される。
【0035】
深い分離領域DPSは、平面視においてトランジスタM1〜M4が配置されない(複数のトランジスタに挟まれた)領域のうち、浅い分離領域SLSが形成される領域以外の領域に形成される。言い換えれば深い分離領域DPSは、トランジスタM1〜M4が配置されない領域のうち、特に図3のトランジスタM1の活性領域と、平面視においてこれに(図の左右方向において)隣接するトランジスタM2〜M4の活性領域との間の領域に形成される。
このことについて、図5〜図8の断面図を参照しながら、より詳細に説明する。
【0036】
図5〜図8を参照して、当該半導体チップCHPを構成する素子は、半導体基板SUBの主表面上に形成されている。半導体基板SUBはたとえばシリコンの単結晶からなる。半導体基板SUBの導電型はn型でもp型でもよいが、ここではn-型の半導体基板SUBを用いた例を示している。
【0037】
半導体基板SUBの主表面上には、たとえばp-型の半導体層DPW(第1導電型の不純物層)が配置されている。半導体層DPWの上側の主表面上には、単位画素ごとにたとえばp-型のウェル領域WLが配置されている。より具体的には半導体層DPWは、ウェル領域WLよりも深く(図の下側まで)形成されたウェル領域の一部である。ウェル領域WLはその最下部が半導体層DPWの最上面に接するように形成されている。このため半導体層DPWは、各単位画素のフォトダイオードの内部にて光電変換により発生した電子が、基板SUBの方へ(図5〜図8の下方へ)移動することを抑制するためのポテンシャルバリアを形成するものである。ポテンシャルバリアとしての半導体層DPWにより、各単位画素が電子を発生する感度を向上することができる。
【0038】
ウェル領域WLの内部に、互いに間隔をおいて複数のフォトダイオードPDR、PDG、PDB(光電変換素子)が形成されている。フォトダイオードPDR、PDG、PDBをソース領域SO1とし、フローティング拡散領域FD(図4参照)をドレイン領域DR1とする転送トランジスタM1が形成されている。フォトダイオードPDR、PDG、PDBのそれぞれは、たとえばn+型の不純物領域(第2導電型の不純物領域)の上にp++型の高濃度不純物領域PPR(第1導電型の不純物領域)が接合された構成を有する。n+型の不純物領域と高濃度不純物領域PPRとの接合部が光を受ければ、光を受けた量に応じて光電変換を起こし、当該接合部の近傍に電子などの電荷を発生する。
【0039】
フォトダイオードにおけるp++型の高濃度不純物領域PPRは、図5〜図8の積層構造の最上面近傍で発生した欠陥電子がフォトダイオードのn+層に到達することにより、暗電流と呼ばれるノイズ電流が流れることを抑制するために配置される。フォトダイオードにおけるn+層は、光電変換により発生する電子を収集、蓄積する。
【0040】
上記のように、各トランジスタM1〜M4を電気的に分離する電気的分離層には、深い分離領域DPSと浅い分離領域SLSとが形成されている。このうち深い分離領域DPSは内部にエアギャップAG(空隙)が形成された、たとえばシリコン酸化膜からなる分離絶縁層SIが、フォトダイオード(トランジスタ)と同一の層において、深いウェル領域DPWの最上面に接する深さに達するように形成されたものである。より具体的には、分離絶縁層SIは、半導体基板SUBの主表面上の積層構造の(ゲート電極GE1やゲート絶縁膜GIを除く)最上面から、半導体層DPWの最上面に接する深さに達するように形成されている。なお分離絶縁層SIは、いわゆるLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により形成されてもよいし、いわゆるSTI(Shallow Trench Isolation)により形成されてもよい。
【0041】
分離絶縁層SIの側面は、たとえばp+型の不純物領域SPR(第1導電型の不純物薄膜)で覆われている。不純物領域SPRは、半導体層DPWとウェル領域WLとの界面近傍にて発生した欠陥電子がフォトダイオードのn+層に到達することにより、暗電流が流れることを抑制するために配置される。
【0042】
エアギャップAGはたとえば空気が分離絶縁層SIの内部を充填した態様をなす。エアギャップAGの最下部(すなわちエアギャップAGのうち最も半導体基板SUBに近い部分)は、フォトダイオードの最下部(すなわちフォトダイオードを構成するn+型領域SO1(PDR、PDG、PDB)の最下部)よりも深い位置に配置される。言い換えればエアギャップAGの最下部は、フォトダイオード(n+型領域SO1)の最下部よりも半導体基板SUBに近い位置(図5〜図7の下側)に配置される。
【0043】
一方、浅い分離領域SLSは、特に図7および図8を参照して、たとえばシリコン酸化膜からなる絶縁層SSP(素子分離層)とその下部のたとえばp+型領域SPとが積層された構成である。浅い分離領域SLSは、その最下部が、深いウェル領域DPWの最上面まで届かず、当該最上面よりも浅い領域まで形成されている。すなわち浅い分離領域SLSは、分離絶縁層SIより浅く、半導体層DPWと接触しないように形成されている。p+型領域SPと絶縁層SSPとが積層された浅い分離領域SLS(素子分離層)は、隣接するフォトダイオード同士の画素間クロストークを抑制する。
【0044】
図9を参照して、浅い分離領域SLSには、図8に示す絶縁層SSPとp+型領域SPとの積層構造の代わりに、分離絶縁層SIが配置されていてもよい。図9は図8と比較して、上記の浅い分離領域SLSの構成においてのみ異なり、他の構成は図8と同様である。
【0045】
図9の浅い分離領域SLSとしての分離絶縁層SIは、図5〜図7の深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIと比較して、エアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも浅い位置(図9の上側)に配置される点において異なっている。しかし図9の分離絶縁層SIについても、図5〜図7の分離絶縁層SIと同様に、その最下部は深いウェル領域DPWの最上面に接する深さに達する。
【0046】
なお後述するように、上記の実施の形態1において、図3の上下方向に延在する深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIのエアギャップAGは、複数のトランジスタM1の
複数のトランジスタM1の周囲の領域を繋ぐように、図3の上下方向に(半導体基板SUBの主表面に沿うように)延在する構成であってもよい。
【0047】
次に、本実施の形態の作用効果について、図10〜図11の比較例を参照しながら説明する。
【0048】
図10および図11を参照して、本実施の形態の比較例においては、平面視においてトランジスタM1〜M4が形成されない分離領域のほぼ全体が、たとえば図8に示すような浅い分離領域で形成されている。すなわち当該比較例においては、浅い分離領域は図8に示す絶縁層SSPとp+型領域SPとの積層構造からなる。すなわち当該比較例のピクセルアレイにおける浅い分離領域は、隣接する素子間の電気的な分離を可能とする構成が半導体層DPWにまで到達していない。
【0049】
特に図11を参照して、通常はたとえば緑のカラーフィルタを有するフォトダイオードPDGに入射する光線aは、緑のフォトダイオードPDG内にて光電変換により電子に変換される。
【0050】
ところが、たとえば赤のカラーフィルタを有するフォトダイオードPDRに入射する光線b1およびc1は赤い光線となるため、特に波長が長く、シリコン内部をより深く浸透する。赤い光線は、積層構造の底部(図の下側)であるたとえばウェル領域WLの内部において光電変換を起こし、電荷(電子)を発生させる。赤い光線b1の光電変換により発生した電子は、拡散やドリフトによって図11のb2に示す方向に動き、赤いフォトダイオードPDRのn+層PDRに正しく収集、蓄積される。しかし赤い光線c1の光電変換により発生した電子は、拡散やドリフトによって、赤のフォトダイオードと緑のフォトダイオードとの間の浅い分離領域(p+層SPの下側)に回り込むように進入する。その結果、当該電子は図11のc2に示す方向に動く。すなわち、光線c1は赤のカラーフィルタを透過した光であるにもかかわらず、緑のフォトダイオードPDGのn+層PDGに誤って収集され、電気的クロストークが発生する。
【0051】
あるいは赤いフォトダイオードに入射しようとした光線d1が、図11の浅い分離領域における絶縁層SSPを透過して隣りの緑のフォトダイオードPDGのn+層PDGに誤って収集される光学的クロストークが発生する。絶縁層SSPやp+領域SPにはエアギャップAGが形成されないため、フォトダイオードを構成するシリコンなどと絶縁層SSPなどとの、光の屈折率の差が小さい。このためシリコンと絶縁層SSPとの境界部において、光の全反射が発生しにくい。したがって、特に赤い光など波長の長い光は、絶縁層SSPを透過して隣接するフォトダイオードの内部に容易に進入する光学的クロストークを起こすことがある。
【0052】
これらのクロストーク(画素間クロストーク)が発生すると、当該光線によりCMOSイメージセンサに形成される画像の色調不良が起こり、形成される画質が劣化する可能性がある。
【0053】
以上のように、絶縁層SSPなどからなる浅い分離領域SLSにも画素間クロストークを抑制する効果が存在するものの、その効果が不十分であり、結果として画素間クロストークが発生する可能性がある。
【0054】
そこで本実施の形態のように、たとえば隣接する(異なる色の)フォトダイオードの間に、半導体層DPWに達する深い分離領域が配置されることが好ましい。このようにすれば、たとえば赤いフォトダイオードの画素内で光電変換により発生する電子が、深い分離領域の下側を回りこんで、隣接する緑のフォトダイオードの画素内に誤って進入する可能性を抑制することができる。これは深い分離領域SIが半導体層DPWに接するように形成されるため、ポテンシャルバリアとしての半導体層DPWにより当該電子の侵入がブロックされるためである。したがって本実施の形態によれば、隣接する(異なる色の)フォトダイオード間での電気的クロストークを抑制することができる。
【0055】
また本実施の形態のようにエアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも低い位置となるように形成されれば、エアギャップAGに進入した光は高い割合で反射される。これはエアギャップAGを構成する空気が有する光の屈折率と、半導体積層構造の内部における光の屈折率との差により、エアギャップAGにおいて光が全反射する割合が増加するためである。このため、たとえば赤のフォトダイオードに入射した光がエアギャップAGを透過して緑のフォトダイオードに誤って進入する可能性を低減することができる。すなわちエアギャップAGを深く形成することにより、隣接する(異なる色の)フォトダイオード間での光学的クロストークを抑制する効果がより高められる。
【0056】
ただし図9に示す、エアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも浅い態様を有する分離絶縁層SIを、深い分離領域DPSに用いてもよい。これは図9の分離絶縁層SIはその最下部が半導体層DPWの最上面に接するように形成され、半導体層DPWに達する深さに達している。このため当該分離絶縁層SIはエアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも浅いものの、少なくとも隣接するフォトダイオード間での電気的クロストークを抑制する効果を確保することはできる。また当該分離絶縁層SIにはエアギャップAGが形成されている。このため、少なくとも図8に示す浅い領域SLSの構成に比べて、光を反射する効果を高め、光学的クロストークを抑制する効果が高められる。
【0057】
また本実施の形態においては、特に図3中の隣接する1対のトランジスタM1の活性領域同士の間など、比較的平面視における距離aが短い(a<b)領域においては、浅い分離領域SLSが形成されることが好ましい。またたとえば図3中のトランジスタM1とこれに隣接するトランジスタM2との間など、比較的平面視における距離bが長い(b>a)領域においては、深い分離領域DPSが形成されることが好ましい。
【0058】
深い分離領域DPSの、比較的深いエアギャップAGを有する深い分離絶縁層SIは、当該領域の平面視における幅と分離絶縁層SIの深さとのアスペクト比が比較的小さい状況下では容易に形成される。すなわち上記距離bを有する領域のように、比較的幅の大きい領域においては、分離絶縁層SIは比較的容易に形成される。しかし上記距離aを有する領域のように、比較的幅の小さい領域においては、当該幅と深さとのアスペクト比が比較的大きくなるため、分離絶縁層SIは形成しにくい。これは上記アスペクト比が大きくなると、深いエアギャップAGを形成することが困難になるためである。
【0059】
したがって本実施の形態のように、比較的容易に深い分離絶縁層SIが形成できる領域のみに分離絶縁層SIを形成することにより、当該深い分離絶縁層SIが形成された領域における画素間クロストークをより確実に抑制することができる。このため各画素における色調不良による画質低下の発生を抑制することができる。またそれ以外の領域には浅い分離領域が形成されるため、当該領域の幅(たとえば図3の距離a)をより小さくすることができる。すなわち当該単位画素の集積度をより高くすることができる。
【0060】
以上のように本実施の形態においては、電気的クロストークと光学的クロストークとの両方を抑制する効果を高め、画素間クロストークをより確実に抑制することができる。
【0061】
次に、図12〜図17を参照して、深い分離領域DPSにおける、エアギャップAGを備えた、STIとしての分離絶縁層SIの製造方法について説明する。
【0062】
図12を参照して、たとえばシリコンからなる半導体基板SUBの一方の主表面SF上に、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、シリコン酸化膜SIF、多結晶シリコン膜PSF、シリコン窒化膜NSFがこの順に積層される。なお上記の本実施の形態においては、深い分離領域SIは半導体基板SUBおよび半導体層DPWの上方に形成されるが、ここでは説明を単純にするため、半導体基板SUBの内部に深い分離領域SIが形成される方法を示す。
【0063】
図13を参照して、たとえば通常の写真製版およびエッチングにより、シリコン酸化膜SIF、多結晶シリコン膜PSFおよびシリコン窒化膜NSFがパターニングされる。パターニングにより上記の各薄膜が除去された領域が、最終的に分離絶縁層SIが形成される領域である。
【0064】
図14を参照して、図13の工程にて形成されたシリコン酸化膜SIF、多結晶シリコン膜PSFおよびシリコン窒化膜NSFのパターンをハードマスクとして、シリコン基板SUBの内部の一部を異方性エッチングにより除去し、溝TRを形成する。
【0065】
図15を参照して、図14の工程にて形成された溝TRをさらに異方性エッチングすることにより、溝TRより深い領域に深溝DTRが形成される。深溝DTRは溝TRと連続するように形成される。その後、たとえばISSG(In Situ Steam Generation)など従来公知の方法により、溝TRの内壁面、深溝DTRの内壁面および底面の酸化がなされ、シリコン酸化膜SI1が形成される。シリコン酸化膜SI1を溝TRの内壁面などに形成すれば、溝TR(深溝DTR)とシリコン基板SUBとの界面準位密度を減らし、シリコン基板SUBと溝TR(深溝DTR)との間を流れる暗電流の発生を抑制することができる。
【0066】
図16を参照して、たとえばシリコン酸化膜SI2により、溝TR、DTRの内部が充填される。当該シリコン酸化膜SI2は、たとえばCVD法により形成される。このとき、CVD法に用いるガスの流量比や分圧を調整することにより、充填されるシリコン酸化膜SI2の内部に空隙としてのエアギャップAGを形成することができる。エアギャップAGの(図16の左右方向の)幅は、たとえば0.01μm以上0.1μm以下とすることが好ましい。
【0067】
図17を参照して、図16の溝TR、DTRの内部をシリコン酸化膜SI2で充填する際に半導体基板SUBの最上面SF上に同時に堆積されたシリコン酸化膜SI2が、たとえばCMP(Chemical Mechanical Polishing)により除去される。以上の工程により、シリコン酸化膜SI1、SI2からなる、エアギャップAGを含む分離絶縁層SIが形成される。
【0068】
以上に述べた本実施の形態は、BSI(Backside illumination)技術を採用したCMOSイメージセンサの半導体基板SUBの裏面(たとえば図5の半導体基板SUBの最下面)に形成されるピクセルアレイに対しても用いることができる。
【0069】
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、電気的分離層の構成において異なっている。以下、図18〜図20を参照して、本実施の形態に係るピクセルアレイについて説明する。
【0070】
図18〜図20を参照して、本実施の形態のピクセルアレイは、図3に示す実施の形態1のピクセルアレイと大筋で同様の構成を備えている。ただし本実施の形態においては、電気的分離層がすべて、実施の形態1における深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIを形成している。つまりたとえばトランジスタM1のソース領域SO1と、平面視においてこれに最も近い活性領域である、当該トランジスタM1に隣接するトランジスタM1のドレイン領域DR1との間の領域にも、深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIが配置されている。ここでの分離絶縁層SIは、図5〜図7の分離絶縁層SIと同様に、半導体層DPWに達する深さを有し、エアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも深い。その結果、トランジスタM1〜M4が配置されない領域の全体に、深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIが配置されている。
【0071】
たとえば図18の上下方向に関して隣接する1組のトランジスタM1のうち一方のトランジスタM1のソース領域SO1と、他方のトランジスタM1のドレイン領域DR1とに挟まれた領域の幅aは、図3における同じ領域の幅aよりも大きいことが好ましい。このようにすれば、当該領域においても、平面視における幅と分離絶縁層SIの深さとのアスペクト比が比較的小さくなる。このため、比較的深いエアギャップAGを有する深い分離絶縁層SIを容易に形成することができ、ピクセルアレイの(トランジスタが配置される領域を除く)ほぼ全体に深い分離絶縁層SIを形成することができる。
【0072】
図19を参照して、図18の1組のトランジスタM1のうち一方のトランジスタM1と、これの上下方向に隣接する他方のトランジスタM1との間の領域のように、左右方向に関して、深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIが連続している。その結果、分離絶縁層SIのエアギャップAGは、図18の複数のトランジスタM1の活性領域の間の領域同士を接続するように、図の左右方向に関して(半導体基板SUBの主表面に沿って)連続するように延在している。なお上記の実施の形態1において、図3の上下方向に延在する深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIについても、図19と同様にエアギャップAGが半導体基板の主表面SUBの主表面に沿うように延在する構成であってもよい。
【0073】
以上のように、本実施の形態においては実施の形態1よりもさらに広い範囲において、深い分離領域DPSが形成されている。この点において本実施の形態は、実施の形態1と異なる。ただし本実施の形態において、上記以外の点については実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付しその説明を繰り返さない。
【0074】
次に本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態においては、実施の形態1よりもさらに広い範囲において、深い分離領域DPSが形成されている。本実施の形態においては、たとえば実施の形態1において浅い分離領域SLSが形成されている領域においても、深い分離領域が形成されている。このため各トランジスタM1(フォトダイオード)は、平面視においてその周囲のほぼ全体が、図20に示す分離絶縁層SIで覆われている。分離絶縁層SIはその最下部が半導体層DPWの最上面に接しており、エアギャップAGの最下部は、フォトダイオードの最下部よりも深い位置に配置される。
【0075】
このため本実施の形態においては、実施の形態1よりもさらに、深い分離領域SIが画素間クロストークを抑制する効果を高めることができる。また図19に示すように、本実施の形態においては、エアギャップAGが、互いに隣接する1組のトランジスタM1の活性領域の間の領域同士を接続するように(すなわち複数のトランジスタM1の周囲の領域を繋ぐように)形成される。このため当該分離絶縁層SIが光学的クロストークを抑制する効果をさらに高めることができる。
【0076】
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
【実施例1】
【0077】
次に、本実施の形態1および実施の形態2におけるCMOSイメージセンサが画素間クロストークを抑制する効果についてのシミュレーションについて説明する。まず図21〜図22を用いて、当該シミュレーション方法について説明する。
【0078】
図21を参照して、まずプロセスシミュレーションがなされる。具体的には、たとえば本実施の形態におけるCMOSイメージセンサや、比較例のCMOSイメージセンサを構成する各単位画素の構造をシミュレーションする。各単位画素の構造とは、たとえば単位画素のカラーフィルタ、トランジスタ、フォトダイオードを構成する各部分の材質および形状、ならびに半導体基板および各不純物領域中の不純物濃度分布などである。これらの情報が計算機に入力されることにより、単位画素の構造を数値化する計算がなされる。
【0079】
次に光学シミュレーションがなされる。具体的には、各単位画素を構成するフォトダイオード(周囲の分離絶縁層や半導体層も含む)に着目し、当該フォトダイオードに入射する光の量に応じて、光電変換により発生する電子の濃度分布(光生成電子濃度分布)が計算される。
【0080】
最後にデバイスシミュレーションがなされる。具体的には、まずカラーフィルタや分離領域(分離絶縁層SIなど)を含む各単位画素が動作するときの印加電圧の時間依存性が入力される。次に光学シミュレーションにより算出された光生成電子濃度分布を初期値(時刻t=0)として、フォトダイオードの光電変換により発生する電子が拡散やドリフトによって、上記の各単位画素のフォトダイオードに蓄積される動きの時間変化が計算される。そして時間が経っても当該電子のフォトダイオードへの蓄積状態に大きな変化が見られなくなったところで(すなわち定常状態となったところで)計算が終了される。
【0081】
図22を参照して、各単位画素の(フォトダイオードの)分光感度を計算する際には、まず、当該単位画素(フォトダイオード)に特定の波長の光が入射された状態が計算機に入力される。次に、理論的に発生する電子の総数Aが算出される。電子の総数Aとは具体的には、上記の光学シミュレーションにおいて計算される、(フォトダイオードおよび、フォトダイオードの周囲の分離絶縁層SI、半導体層DPWなどを含む)画素の内部に入射する各波長の光の量(各波長の光のエネルギ)から、光電変換により、理論的に発生する電子の総数である。次に収集された電子の総数Bが算出される。電子の総数Bとは具体的には、上記のデバイスシミュレーションにより求められる、上記の画素の内部に入射する各波長の光の量から、光電変換により発生した電子のうち、拡散やドリフトによりフォトダイオード内部に収集される電子のである。その後、分光感度に相当する量子効率B/Aが算出される。
【0082】
以上のシミュレーション手順による算出結果を、図23〜図25のグラフに示す。図23〜図25における横軸は、それぞれ赤、緑、青のカラーフィルタを有するフォトダイオードに入射する光の波長を示しており、縦軸は各波長の光から発生する電子がフォトダイオード内に蓄積される割合としての分光感度を示している。図23〜図25の縦軸の分光感度は、いずれもたとえば実際のB/Aの数値の表示や、B/Aの対数表示など、任意のスケールで表示することができる。しかし図23〜図25の間では分光感度の表示方法は全て同じとしており、グラフ中の最大値や最小値も全て同じとしている。このようにすることにより、図23〜図25の間での分光感度の比較を容易としている。
【0083】
図23〜図25に実線で示すデータR0、G0、B0はそれぞれ、たとえば図11の比較例、すなわち絶縁層SSPとp+型領域SPとが積層された浅い分離領域SLSのみにより各トランジスタM1〜M4が平面的に囲まれたピクセルアレイのシミュレーション結果である。図23〜図25に鎖線で示すデータR1、G1、B1はそれぞれ、たとえば図3の本実施の形態1に示す、一部の電気的分離層が(図5〜図7に示す)深い分離領域DPSであり、一部の電気的分離層が(図8に示す)浅い分離領域SLSであるピクセルアレイのシミュレーション結果である。図23〜図25に点線で示すデータR2、G2、B2はそれぞれ、たとえば図18の本実施の形態2に示す、全体の電気的分離層が(図5〜図7、図20に示す)深い分離領域DPSであるピクセルアレイのシミュレーション結果である。
【0084】
また図23におけるデータR3は、実施の形態1の図3の深い分離領域DPSとして、たとえば図9に示す、エアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも浅い分離絶縁層SIが形成されたピクセルアレイの、赤いフォトダイオードPDRのシミュレーション結果である。
【0085】
図23〜図25を参照して、たとえば赤い光は波長が600nm以上650nm以下の範囲であるため、図23の(赤いカラーフィルタを有するフォトダイオードの)グラフにおいてはR0、R1、R2のいずれも当該波長範囲の分光感度が他の波長領域の分光感度よりも高くなっている。同様に、図24の(緑のカラーフィルタを有するフォトダイオードの)グラフにおいてはG0、G1、G2のいずれも、緑の光が有する500nm以上580nm以下の波長範囲において、他の領域よりも分光感度が高くなっている。図25の(青いカラーフィルタを有するフォトダイオードの)グラフにおいてはB0、B1、B2のいずれも、青の光が有する400nm以上480nm以下の波長範囲において、他の領域よりも分光感度が高くなっている。
【0086】
また図23における赤い光によるピークの分光感度は、R0が最も低く、R3がこれに次ぎ、R2が最も高くなっている。比較例の構成においては赤いフォトダイオードPDR(図11)が浅い分離領域のみに囲まれる。このため赤のフォトダイオードに入射した光の変換した電子が、電気的クロストークにより赤のフォトダイオードの外部に拡散またはドリフトする割合が多くなり、結果的に赤い光の変換した電子が赤のフォトダイオードに蓄積される割合が低くなる。したがってR0はR1、R2、R3に比べて赤い光によるピークの分光感度が低い。
【0087】
実施の形態1においては赤いフォトダイオードPDR(図3)の一部が浅い分離領域に囲まれ、一部は深い分離領域に囲まれる。このため、実施の形態1は比較例に比べて電気的クロストークが抑制され、赤い光によるピークの分光感度が高くなる。ただし実施の形態1の深い分離領域DPSにおけるエアギャップAGがより深いR1の方が、エアギャップAGが浅いR3よりも、赤い光によるピークの分光感度が高くなる。これはエアギャップAGが光学的クロストークを抑制する効果を高めるためである。
【0088】
またエアギャップAGの最下部が浅い実施の形態2においては赤いフォトダイオードPDR(図18)のほぼ全体が深い分離領域に囲まれる。このため実施の形態2においては実施の形態1よりもさらに電気的クロストークおよび光学的クロストークが抑制され、赤い光によるピークの分光感度がさらに高くなる。
【0089】
一方、たとえば図23における赤い光よりも短い波長の領域(たとえば580nm以下)においては、R0が最も分光感度が高くなっており、R1がこれに次ぎ、R2が最も低くなっている。これは比較例においては光学的クロストークにより、たとえば緑のカラーフィルタを透過した光が、本実施の形態よりも高い割合で赤いフォトダイオードに入射されるためである。これに対し本実施の形態においては当該光学的クロストークが抑制される結果、赤いフォトダイオードにはたとえば緑のカラーフィルタを通った光の進入する割合が少なくなる。したがって本実施の形態においては比較例に比べて、赤い光以外の波長領域における分光感度が低くなる。この結果は、実施の形態1よりも実施の形態2においてさらに顕著になる。
【0090】
以上は図23における赤いフォトダイオードのみについての考察結果を記しているが、図24および図25の、緑および青のフォトダイオードについても同様の結果を示している。
【0091】
また図23の赤いフォトダイオードの分光感度のピークが、図24および図25の緑および青のフォトダイオードの分光感度のピークに比べ、特に上記比較例において低くなっている。これは赤い光は緑や青の光に比べて波長が長く、光学的クロストークを起こして隣接するフォトダイオードの方へ進入しやすいためである。
【0092】
今回開示された各実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、CMOSイメージセンサを有する半導体装置に、特に有利に適用されうる。
【符号の説明】
【0094】
AA2,AA3,AA4,AA34 活性領域、AG エアギャップ、CHP 半導体チップ、DPS 深い分離領域、DPW 半導体層、DTR 深溝、FD フローティング拡散領域、DR1,DR2,DR3,DR4 ドレイン領域、GE1,GE2,GE3,GE4 ゲート電極、GI ゲート絶縁膜、M1 転送トランジスタ、M2 リセットトランジスタ、M3 選択トランジスタ、M4 増幅トランジスタ、NSF シリコン窒化膜、P1 接続点、PD,PDB,PDG,PDR フォトダイオード、PPR 高濃度不純物領域、PSF 多結晶シリコン膜、SI 分離絶縁層、SI1,SI2,SIF シリコン酸化膜、SLS 浅い分離領域、SO1,SO2,SO3,SO4 ソース領域、SP p+型領域、SPR 不純物領域、SSP 絶縁層、SUB 半導体基板、TR 溝、WL ウェル領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、より特定的には、固体撮像素子を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサは、単位画素ごとにマイクロレンズと、赤、緑、青のいずれかのカラーフィルタと、フォトダイオードなどの光電変換素子とを備える。カラーフィルタの色に応じて、各単位画素のカラーフィルタを透過して光電変換素子に到達する光の波長が決定する。単位画素のカラーフィルタを透過して光電変換素子に入力した光は、電気信号に変換され、単位画素の内部で当該電気信号が検出される。カラーフィルタの色が異なる複数の単位画素が半導体基板上に互いに間隔をおいて配置されたイメージセンサは、たとえば特開2006−279048号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
イメージセンサにおいて、赤のカラーフィルタを透過する光は、波長が長く、たとえばシリコンからなる積層構造の内部を浸透する深さが大きい。このため当該光は、たとえばシリコンからなる半導体基板の、より深い(底面に近い)領域まで進入する。光電変換素子に到達した赤い光が光電変換して発生する電子の一部は、拡散やドリフトによって当該赤いフィルタを有する単位画素に収集される。しかし赤い光が光電変換して発生する電子の一部は、拡散やドリフトによって隣接するたとえば緑のカラーフィルタを有する単位画素に誤って収集される可能性がある。このような現象を電気的クロストークという。あるいは赤いカラーフィルタを透過した光線がそのまま隣接する緑のカラーフィルタを有する単位画素のほうへ誤って進入する可能性がある。このような現象を光学的クロストークという。電気的クロストークと光学的クロストークとを合わせて画素間クロストークという。画素間クロストークは、CMOSイメージセンサの色調不良や画質劣化の原因となる。
【0004】
特開2006−279048号公報のイメージセンサは、特に波長が長い赤のカラーフィルタの画素の下に配置される上部基板領域が、隣接する緑のカラーフィルタの画素と電気的に分離され、かつ赤の画素よりも平面的に外側まで延びる構成である。赤のカラーフィルタを透過した光により発生し、上部基板領域に達した電荷は、たとえ赤の画素の外部に流入したとしても、緑の画素に進入せず赤の画素に収集される。このため電気的クロストークが抑制される。
【0005】
しかし上記の構成を用いても画素間クロストーク、特に光学的クロストークが発生する可能性が残っている。そこでたとえば特開2007−227761号公報(特許文献2)や特開2008−10544号公報(特許文献3)には、内部にエアギャップと呼ばれる空隙が形成された分離絶縁膜により、隣接する単位画素同士が電気的に絶縁された構成を有するイメージセンサ(固体撮像素子)が開示されている。またたとえば特開2009−267208号公報(特許文献4)には、隣接するセル間の分離絶縁膜中にエアギャップが形成されたフラッシュメモリが開示されている。さらに特開2002−203896号公報(特許文献5)には、エアギャップを有する浅いトレンチの構造体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−279048号公報
【特許文献2】特開2007−227761号公報
【特許文献3】特開2008−10544号公報
【特許文献4】特開2009−267208号公報
【特許文献5】特開2002−203896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特開2007−227761号公報および特開2008−10544号公報に開示される固体撮像素子は、いずれもエアギャップの最下部(最も底部に近い部分)がフォトダイオードの最下部よりも上側に配置されている。このためフォトダイオードの下部においては、平面視における周囲にエアギャップが配置されない。したがって特にフォトダイオードの下部において、エアギャップが光学的クロストークを抑制する機能が不十分となる可能性がある。また特開2009−267208号公報に開示されるエアギャップも、その最下部は素子分離溝の最下部に比べて非常に上側(浅い部分)に形成されている。このため特開2009−267208号公報のエアギャップも、上記の特開2007−227761号公報および特開2008−10544号公報に開示されるエアギャップと同様の問題を有している。上記の問題は、特開2002−203896号公報に開示される製造方法を用いても解決することは困難である。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものである。その目的は、より確実に画素間クロストークを抑制することが可能な、固体撮像素子を備える半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例による半導体装置は以下の構成を備えている。
上記半導体装置は、主表面を有する半導体基板と、半導体基板の主表面上に配置された第1導電型の不純物層と、第1導電型の不純物層上に、第1導電型の不純物領域と第2導電型の不純物領域とが互いに接合する構成を含む光電変換素子と、光電変換素子を含む単位画素を構成し、光電変換素子と電気的に接続されるトランジスタとを備えている。平面視において光電変換素子の外周部の少なくとも一部には、内部に空隙が含まれ、光電変換素子と光電変換素子に隣接する光電変換素子とを互いに電気的に絶縁する分離絶縁層が配置されている。上記分離絶縁層は、第1導電型の不純物層の最上面に接する。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、光電変換素子の外周部に配置され、第1導電型の不純物層の最上面に達する分離絶縁層により、隣接する光電変換素子間の電気的クロストークが抑制される。また当該分離絶縁層の内部に形成される空隙により、隣接する光電変換素子間の光学的クロストークが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態1に係る半導体装置であって、CMOSイメージセンサを含むシステム・チップを示す概略平面図である。
【図2】CMOSイメージセンサを構成する単位画素の等価回路図である。
【図3】本実施の形態1に係るピクセルアレイにおける複数の単位画素の配置を示す概略平面図である。
【図4】図3に示される各種トランジスタの拡大図である。
【図5】図3のV−V線に沿う部分における概略断面図である。
【図6】図3のVI−VI線に沿う部分における概略断面図である。
【図7】図3のVII−VII線に沿う部分における概略断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線に沿う部分における概略断面図である。
【図9】本実施の形態1における、図8の浅い分離領域の変形例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の形態1の比較例の、ピクセルアレイにおける複数の単位画素の配置を示す概略平面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿う部分における概略断面図である。
【図12】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第1工程を示す概略断面図である。
【図13】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第2工程を示す概略断面図である。
【図14】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第3工程を示す概略断面図である。
【図15】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第4工程を示す概略断面図である。
【図16】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第5工程を示す概略断面図である。
【図17】エアギャップを備えた、STIとしての深い分離絶縁層の製造方法の第6工程を示す概略断面図である。
【図18】本実施の形態2に係るピクセルアレイにおける複数の単位画素の配置を示す概略平面図である。
【図19】図18のXIX−XIX線に沿う部分における概略断面図である。
【図20】図18のXX−XX線に沿う部分における概略断面図である。
【図21】本発明の実施の形態1のCMOSイメージセンサの、分光特性のシミュレーション手順を示すフローチャートである。
【図22】本発明の実施の形態1のCMOSイメージセンサを構成する単位画素の、分光感度の波長依存性を計算する手順を示すフローチャートである。
【図23】赤いカラーフィルタを有するフォトダイオードを有する単位画素における、分光感度の波長依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【図24】緑のカラーフィルタを有するフォトダイオードを有する単位画素における、分光感度の波長依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【図25】青いカラーフィルタを有するフォトダイオードを有する単位画素における、分光感度の波長依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず、本実施の形態としてチップとしての半導体装置について説明する。
【0013】
図1を参照して、半導体ウェハをダイシングすることにより形成される半導体チップCHPは、たとえば矩形の平面形状を有している。半導体チップCHPの主表面上には、CMOSイメージセンサが形成されるピクセルアレイが配置されている。CMOSイメージセンサは、受けた光を電子に変換し、発生した電子の数に応じて電圧として出力する装置である。ピクセルアレイの周囲には、I/O制御回路、水平スキャナ、垂直スキャナと制御ロジック、CDS回路付きAD変換器、画像処理部、カメラ信号処理部およびタイミングパルス発生器の各ブロックが配置されている。
【0014】
I/O制御回路は、チップCHPの外部に接続される機器(回路)との入出力信号を制御する回路である。水平スキャナおよび垂直スキャナは、ピクセルアレイにおいて複数配置されるCMOSイメージセンサの単位画素を選択し、当該単位画素における受光の有無を検出する。このための動作は、垂直スキャナの制御ロジックにより制御される。
【0015】
AD変換器は、単位画素から発生する、アナログ信号としての電圧信号をデジタル信号に変換する。AD変換器に付属するCDS回路は、同一の単位画素に対して2回電気信号を検出し、2回のそれぞれの検出結果の差分としてのノイズをキャンセルする。CDS回路は、相関二重サンプリング法に基づくもので、Correlated Double Samplingの略であり、アンプ雑音とリセット雑音とを除去するための回路である。画像処理部は、発生した電圧信号を処理することにより得られる画像を補正、加工する。カメラ信号処理部は、カメラの動作を表わす信号を処理する。タイミングパルス発生器は、チップCHPの各ブロックが同期を取るための信号であるタイミングパルスを発生する。
【0016】
次に、単位画素の構成および動作原理について、図2を用いて説明する。
図2を参照して、CMOSイメージセンサを構成する各単位画素は、フォトダイオードPD(光電変換素子)と転送トランジスタM1、リセットトランジスタM2、選択トランジスタM3、増幅トランジスタM4を含み、これらの各トランジスタM1〜M4が互いに電気的に接続された構成である。トランジスタM1〜M4のそれぞれはたとえばMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタであり、トランジスタM1のソース領域SO1はフォトダイオードPDに、ゲート電極GE1は読み出し線に接続される。トランジスタM2のソース領域SO2はトランジスタM1のドレイン領域DR1に、ゲート電極GE2は行リセット線にそれぞれ接続される。トランジスタM3のソース領域SO3は列信号線に、ゲート電極GE3は行選択線にそれぞれ接続される。トランジスタM4のソース領域SO4はトランジスタM3のドレイン領域DR3に、ゲート電極GE4はドレイン領域DR1およびソース領域SO2にそれぞれ接続される。
【0017】
フォトダイオードPDは外部から受けた光を吸収して、光電変換により当該光の量に応じた量の電子を発生し、その電子を内部に蓄えることにより電気信号(電圧)として出力する。当該電気信号は、読み出し線からの信号によりオン状態となった転送トランジスタM1により転送され、接続点P1に達する。接続点P1ではフォトダイオードPDで発生した電荷が蓄積される。接続点P1の電荷による電圧信号は、増幅トランジスタM4のゲート電極GE4を制御する。
【0018】
増幅トランジスタM4に入力された、フォトダイオードPDからの電圧信号(接続点P1の電荷量)に応じた大きさの電圧が、増幅トランジスタM4と(ソース領域SO4およびドレイン領域DR3により)接続された選択トランジスタM3から列信号線に出力される。すなわち、行選択線からの電気信号により選択トランジスタM3がオン状態となったときに、列信号線は当該単位画素における電圧の大きさを読み出す。基本的に、行選択線に接続された1列分の複数の単位画素が同時に選択される。
【0019】
リセットトランジスタM2は、行リセット線に電圧印加してオン状態とすることにより、転送トランジスタM1のドレイン(接続点P1)に蓄積された電荷を周期的にリセットする。このリセットにより、転送トランジスタM1に蓄積される電荷がなくなり、単位画素が初期化される。このときドレイン領域DR2やドレイン領域DR4には、一定の電圧が印加される。
【0020】
次に図3〜図8を用いて、本実施の形態における、ピクセルアレイに配置される各単位画素の構成について説明する。
【0021】
図3を参照して、図2のトランジスタM1〜M4は、それぞれが半導体チップCHP(後述する半導体基板)の主表面上に、平面視において互いに間隔をおいてマトリックス状に複数配置されている。基本的にトランジスタM1〜M4のすべてが揃うことにより1つの単位画素を構成する。しかし図3に示すようにトランジスタM2,M3,M4は、たとえば隣接する2つのトランジスタM1に共有されるように配置されてもよい。
【0022】
トランジスタM1についてはフォトダイオードPDR、PDG、PDBを有するものが交互に配置されている。フォトダイオードPDRは赤いカラーフィルタを有する光電変換素子である。すなわちフォトダイオードPDRが受ける光は赤いカラーフィルタを透過した赤い光である。同様に、フォトダイオードPDGは緑色の、フォトダイオードPDBは青いカラーフィルタを有しており、それぞれ緑色または青色の光を受けることができる光電変換素子である。
【0023】
ここでフォトダイオードPDRおよびフォトダイオードPDBは、いずれも(図の上下方向および左右方向に関して)フォトダイオードPDGと隣接するように配置されることが好ましい。より具体的には、たとえば図3においてフォトダイオードが左右方向に並ぶ最上列には、左側のフォトダイオードPDRの右側に隣接するようにフォトダイオードPDGが、フォトダイオードPDGの右側に隣接するようにフォトダイオードPDRが配置される。また図3のフォトダイオードが左右方向に並ぶ上から2番目の列には、左側のフォトダイオードPDGの右側に隣接するようにフォトダイオードPDBが、フォトダイオードPDBの右側に隣接するようにフォトダイオードPDGが配置される。また図3の上下方向に3列並ぶフォトダイオードのうち左側の列には、フォトダイオードPDRとフォトダイオードPDGとが交互に配置される。図3の上下方向に3列並ぶフォトダイオードのうち中央の列には、フォトダイオードPDGとフォトダイオードPDBとが交互に配置される。
【0024】
図3および図4を参照して、ソース領域SO1は、フォトダイオードPDを含んだ、転送トランジスタM1(第1のトランジスタ)の活性領域(第1の活性領域)の一部(第1の不純物領域)である。ドレイン領域DR1は、フローティング拡散領域FD(不純物拡散層としての第2の不純物領域)として形成されている、転送トランジスタM1の活性領域(第1の活性領域)の一部である。すなわち転送トランジスタM1は、フォトダイオードPD(ソース領域SO1)およびフローティング拡散領域FD(ドレイン領域DR1)を含む第1の活性領域に形成されている。
【0025】
一般に、フォトダイオードPDを含むソース領域SO1はフローティング拡散領域DR1を含むドレイン領域DR1よりも平面視において大きい面積を有する。このためソース領域SO1とドレイン領域DR1とに挟まれるチャネル領域は概ね台形状となっている。
【0026】
フローティング拡散領域FDは寄生キャパシタンスを持っている。このため、ドレイン領域DR1(図2の接続点P1)にフォトダイオードPDから発生した電荷が伝送されれば、ドレイン領域DR1(接続点P1)はこの電荷を受けて蓄積する。
【0027】
転送トランジスタM1は、図の左右方向に延在するゲート電極GE1に交差する方向(図の上下方向)に活性領域が延在している。転送トランジスタM1の活性領域にソース領域SO1およびドレイン領域DR1が形成される。すなわちゲート電極GE1を中央として、その両側にソース領域SO1およびドレイン領域DR1が配置される。
【0028】
活性領域AA2、AA3、AA4(第2の活性領域)が、ゲート電極GE2、GE3、GE4が延在する左右方向に交差する上下方向に延在している。活性領域AA2、AA3、AA4は各トランジスタM2〜M4(第2のトランジスタ)のソース領域およびドレイン領域を含む領域である。すなわち上記第2の活性領域にトランジスタM2〜M4が形成される。ただしトランジスタM3のドレイン領域DR3とトランジスタM4のソース領域SO4とは互いに接続されるため、共通の活性領域AA34として図示される。
【0029】
なお図3の平面図においては、たとえば図2の等価回路に示すような、各単位画素のトランジスタM1〜M4間を接続する配線については図示が省略されている。
【0030】
平面視における各トランジスタM1〜M4の間には、これらのトランジスタを電気的に分離する電気的分離層が形成されている。このため、図3において図示されない、各単位画素のトランジスタM1〜M4間を接続する配線以外の領域においては、異なるトランジスタ間は互いに電気的に絶縁されている。
【0031】
電気的分離層には、浅い分離領域SLSと深い分離領域DPSとが存在する。図3においては、電気的分離層のうち、隣接するトランジスタM1を図3の上下方向に直線状に結ぶ領域においては浅い分離領域SLSが配置されており、それ以外の領域には、図3の上下方向に直線状に結ぶように、深い分離領域DPSが配置されている。
【0032】
あるトランジスタM1の活性領域から見て、最も近い(他のトランジスタの)活性領域は、図3における当該トランジスタM1の上下方向に隣接する他のトランジスタM1の活性領域である。すなわちたとえば図3において最も左かつ最も上に配置されるフォトダイオードPDRを含むトランジスタM1の活性領域に最も近い活性領域は、当該トランジスタM1の下側に隣接するトランジスタM1である。上記1組の(隣接する単位画素のそれぞれの)トランジスタM1の活性領域の最短距離は、上側のトランジスタM1のソース領域SO1と下側のトランジスタM1のドレイン領域DR1との最短距離aである。このaの値は、たとえば図3において最も左かつ最も上に配置されるフォトダイオードPDRを含むトランジスタM1の活性領域と、たとえば当該トランジスタM1の右側に隣接する(当該トランジスタM1と同じ単位画素の)M1以外のトランジスタM3,M4の活性領域との最短距離bよりも小さい(逆に言えば、最短距離bは最短距離aよりも大きい)。同様に、たとえば図3において最も左かつ最も上に配置されるフォトダイオードPDRを含むトランジスタM1の活性領域と、たとえば当該トランジスタM1の左側に隣接するトランジスタM2の活性領域との最短距離についても、上記の最短距離bと同様に、最短距離aより大きい。
【0033】
本実施の形態においては、あるトランジスタM1の活性領域と、平面視においてそれに最も近い、最短距離がaであるトランジスタM1の活性領域とに挟まれた領域には、電気的分離層が浅い分離領域SLSとして形成されている。それに対して、あるトランジスタM1の活性領域と、当該活性領域との最短距離がbである(トランジスタM1に隣接する)トランジスタM3などの活性領域とに挟まれた領域には、電気的分離層が深い分離領域DPSとして形成されている。同様に、あるトランジスタM1の活性領域と、当該活性領域に隣接するトランジスタM2の活性領域とに挟まれた領域についても、電気的分離層が深い分離領域DPSとして形成されている。
【0034】
より具体的には、浅い分離領域SLSは、隣接する1組のトランジスタM1に挟まれた領域(特に1組のトランジスタM1のうち一方のトランジスタM1のフォトダイオードSO1と、平面視においてこれに最も近い他方のトランジスタM1のドレイン領域DR1とに挟まれた領域)に配置されている。より詳しくは浅い分離領域SLSは、平面視においてトランジスタM1〜M4が配置されない領域のうち、特に図3の一方のトランジスタM1の活性領域と、これに(図の上下方向において)隣接する他方のトランジスタM1の活性領域との間の領域に形成される。
【0035】
深い分離領域DPSは、平面視においてトランジスタM1〜M4が配置されない(複数のトランジスタに挟まれた)領域のうち、浅い分離領域SLSが形成される領域以外の領域に形成される。言い換えれば深い分離領域DPSは、トランジスタM1〜M4が配置されない領域のうち、特に図3のトランジスタM1の活性領域と、平面視においてこれに(図の左右方向において)隣接するトランジスタM2〜M4の活性領域との間の領域に形成される。
このことについて、図5〜図8の断面図を参照しながら、より詳細に説明する。
【0036】
図5〜図8を参照して、当該半導体チップCHPを構成する素子は、半導体基板SUBの主表面上に形成されている。半導体基板SUBはたとえばシリコンの単結晶からなる。半導体基板SUBの導電型はn型でもp型でもよいが、ここではn-型の半導体基板SUBを用いた例を示している。
【0037】
半導体基板SUBの主表面上には、たとえばp-型の半導体層DPW(第1導電型の不純物層)が配置されている。半導体層DPWの上側の主表面上には、単位画素ごとにたとえばp-型のウェル領域WLが配置されている。より具体的には半導体層DPWは、ウェル領域WLよりも深く(図の下側まで)形成されたウェル領域の一部である。ウェル領域WLはその最下部が半導体層DPWの最上面に接するように形成されている。このため半導体層DPWは、各単位画素のフォトダイオードの内部にて光電変換により発生した電子が、基板SUBの方へ(図5〜図8の下方へ)移動することを抑制するためのポテンシャルバリアを形成するものである。ポテンシャルバリアとしての半導体層DPWにより、各単位画素が電子を発生する感度を向上することができる。
【0038】
ウェル領域WLの内部に、互いに間隔をおいて複数のフォトダイオードPDR、PDG、PDB(光電変換素子)が形成されている。フォトダイオードPDR、PDG、PDBをソース領域SO1とし、フローティング拡散領域FD(図4参照)をドレイン領域DR1とする転送トランジスタM1が形成されている。フォトダイオードPDR、PDG、PDBのそれぞれは、たとえばn+型の不純物領域(第2導電型の不純物領域)の上にp++型の高濃度不純物領域PPR(第1導電型の不純物領域)が接合された構成を有する。n+型の不純物領域と高濃度不純物領域PPRとの接合部が光を受ければ、光を受けた量に応じて光電変換を起こし、当該接合部の近傍に電子などの電荷を発生する。
【0039】
フォトダイオードにおけるp++型の高濃度不純物領域PPRは、図5〜図8の積層構造の最上面近傍で発生した欠陥電子がフォトダイオードのn+層に到達することにより、暗電流と呼ばれるノイズ電流が流れることを抑制するために配置される。フォトダイオードにおけるn+層は、光電変換により発生する電子を収集、蓄積する。
【0040】
上記のように、各トランジスタM1〜M4を電気的に分離する電気的分離層には、深い分離領域DPSと浅い分離領域SLSとが形成されている。このうち深い分離領域DPSは内部にエアギャップAG(空隙)が形成された、たとえばシリコン酸化膜からなる分離絶縁層SIが、フォトダイオード(トランジスタ)と同一の層において、深いウェル領域DPWの最上面に接する深さに達するように形成されたものである。より具体的には、分離絶縁層SIは、半導体基板SUBの主表面上の積層構造の(ゲート電極GE1やゲート絶縁膜GIを除く)最上面から、半導体層DPWの最上面に接する深さに達するように形成されている。なお分離絶縁層SIは、いわゆるLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により形成されてもよいし、いわゆるSTI(Shallow Trench Isolation)により形成されてもよい。
【0041】
分離絶縁層SIの側面は、たとえばp+型の不純物領域SPR(第1導電型の不純物薄膜)で覆われている。不純物領域SPRは、半導体層DPWとウェル領域WLとの界面近傍にて発生した欠陥電子がフォトダイオードのn+層に到達することにより、暗電流が流れることを抑制するために配置される。
【0042】
エアギャップAGはたとえば空気が分離絶縁層SIの内部を充填した態様をなす。エアギャップAGの最下部(すなわちエアギャップAGのうち最も半導体基板SUBに近い部分)は、フォトダイオードの最下部(すなわちフォトダイオードを構成するn+型領域SO1(PDR、PDG、PDB)の最下部)よりも深い位置に配置される。言い換えればエアギャップAGの最下部は、フォトダイオード(n+型領域SO1)の最下部よりも半導体基板SUBに近い位置(図5〜図7の下側)に配置される。
【0043】
一方、浅い分離領域SLSは、特に図7および図8を参照して、たとえばシリコン酸化膜からなる絶縁層SSP(素子分離層)とその下部のたとえばp+型領域SPとが積層された構成である。浅い分離領域SLSは、その最下部が、深いウェル領域DPWの最上面まで届かず、当該最上面よりも浅い領域まで形成されている。すなわち浅い分離領域SLSは、分離絶縁層SIより浅く、半導体層DPWと接触しないように形成されている。p+型領域SPと絶縁層SSPとが積層された浅い分離領域SLS(素子分離層)は、隣接するフォトダイオード同士の画素間クロストークを抑制する。
【0044】
図9を参照して、浅い分離領域SLSには、図8に示す絶縁層SSPとp+型領域SPとの積層構造の代わりに、分離絶縁層SIが配置されていてもよい。図9は図8と比較して、上記の浅い分離領域SLSの構成においてのみ異なり、他の構成は図8と同様である。
【0045】
図9の浅い分離領域SLSとしての分離絶縁層SIは、図5〜図7の深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIと比較して、エアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも浅い位置(図9の上側)に配置される点において異なっている。しかし図9の分離絶縁層SIについても、図5〜図7の分離絶縁層SIと同様に、その最下部は深いウェル領域DPWの最上面に接する深さに達する。
【0046】
なお後述するように、上記の実施の形態1において、図3の上下方向に延在する深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIのエアギャップAGは、複数のトランジスタM1の
複数のトランジスタM1の周囲の領域を繋ぐように、図3の上下方向に(半導体基板SUBの主表面に沿うように)延在する構成であってもよい。
【0047】
次に、本実施の形態の作用効果について、図10〜図11の比較例を参照しながら説明する。
【0048】
図10および図11を参照して、本実施の形態の比較例においては、平面視においてトランジスタM1〜M4が形成されない分離領域のほぼ全体が、たとえば図8に示すような浅い分離領域で形成されている。すなわち当該比較例においては、浅い分離領域は図8に示す絶縁層SSPとp+型領域SPとの積層構造からなる。すなわち当該比較例のピクセルアレイにおける浅い分離領域は、隣接する素子間の電気的な分離を可能とする構成が半導体層DPWにまで到達していない。
【0049】
特に図11を参照して、通常はたとえば緑のカラーフィルタを有するフォトダイオードPDGに入射する光線aは、緑のフォトダイオードPDG内にて光電変換により電子に変換される。
【0050】
ところが、たとえば赤のカラーフィルタを有するフォトダイオードPDRに入射する光線b1およびc1は赤い光線となるため、特に波長が長く、シリコン内部をより深く浸透する。赤い光線は、積層構造の底部(図の下側)であるたとえばウェル領域WLの内部において光電変換を起こし、電荷(電子)を発生させる。赤い光線b1の光電変換により発生した電子は、拡散やドリフトによって図11のb2に示す方向に動き、赤いフォトダイオードPDRのn+層PDRに正しく収集、蓄積される。しかし赤い光線c1の光電変換により発生した電子は、拡散やドリフトによって、赤のフォトダイオードと緑のフォトダイオードとの間の浅い分離領域(p+層SPの下側)に回り込むように進入する。その結果、当該電子は図11のc2に示す方向に動く。すなわち、光線c1は赤のカラーフィルタを透過した光であるにもかかわらず、緑のフォトダイオードPDGのn+層PDGに誤って収集され、電気的クロストークが発生する。
【0051】
あるいは赤いフォトダイオードに入射しようとした光線d1が、図11の浅い分離領域における絶縁層SSPを透過して隣りの緑のフォトダイオードPDGのn+層PDGに誤って収集される光学的クロストークが発生する。絶縁層SSPやp+領域SPにはエアギャップAGが形成されないため、フォトダイオードを構成するシリコンなどと絶縁層SSPなどとの、光の屈折率の差が小さい。このためシリコンと絶縁層SSPとの境界部において、光の全反射が発生しにくい。したがって、特に赤い光など波長の長い光は、絶縁層SSPを透過して隣接するフォトダイオードの内部に容易に進入する光学的クロストークを起こすことがある。
【0052】
これらのクロストーク(画素間クロストーク)が発生すると、当該光線によりCMOSイメージセンサに形成される画像の色調不良が起こり、形成される画質が劣化する可能性がある。
【0053】
以上のように、絶縁層SSPなどからなる浅い分離領域SLSにも画素間クロストークを抑制する効果が存在するものの、その効果が不十分であり、結果として画素間クロストークが発生する可能性がある。
【0054】
そこで本実施の形態のように、たとえば隣接する(異なる色の)フォトダイオードの間に、半導体層DPWに達する深い分離領域が配置されることが好ましい。このようにすれば、たとえば赤いフォトダイオードの画素内で光電変換により発生する電子が、深い分離領域の下側を回りこんで、隣接する緑のフォトダイオードの画素内に誤って進入する可能性を抑制することができる。これは深い分離領域SIが半導体層DPWに接するように形成されるため、ポテンシャルバリアとしての半導体層DPWにより当該電子の侵入がブロックされるためである。したがって本実施の形態によれば、隣接する(異なる色の)フォトダイオード間での電気的クロストークを抑制することができる。
【0055】
また本実施の形態のようにエアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも低い位置となるように形成されれば、エアギャップAGに進入した光は高い割合で反射される。これはエアギャップAGを構成する空気が有する光の屈折率と、半導体積層構造の内部における光の屈折率との差により、エアギャップAGにおいて光が全反射する割合が増加するためである。このため、たとえば赤のフォトダイオードに入射した光がエアギャップAGを透過して緑のフォトダイオードに誤って進入する可能性を低減することができる。すなわちエアギャップAGを深く形成することにより、隣接する(異なる色の)フォトダイオード間での光学的クロストークを抑制する効果がより高められる。
【0056】
ただし図9に示す、エアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも浅い態様を有する分離絶縁層SIを、深い分離領域DPSに用いてもよい。これは図9の分離絶縁層SIはその最下部が半導体層DPWの最上面に接するように形成され、半導体層DPWに達する深さに達している。このため当該分離絶縁層SIはエアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも浅いものの、少なくとも隣接するフォトダイオード間での電気的クロストークを抑制する効果を確保することはできる。また当該分離絶縁層SIにはエアギャップAGが形成されている。このため、少なくとも図8に示す浅い領域SLSの構成に比べて、光を反射する効果を高め、光学的クロストークを抑制する効果が高められる。
【0057】
また本実施の形態においては、特に図3中の隣接する1対のトランジスタM1の活性領域同士の間など、比較的平面視における距離aが短い(a<b)領域においては、浅い分離領域SLSが形成されることが好ましい。またたとえば図3中のトランジスタM1とこれに隣接するトランジスタM2との間など、比較的平面視における距離bが長い(b>a)領域においては、深い分離領域DPSが形成されることが好ましい。
【0058】
深い分離領域DPSの、比較的深いエアギャップAGを有する深い分離絶縁層SIは、当該領域の平面視における幅と分離絶縁層SIの深さとのアスペクト比が比較的小さい状況下では容易に形成される。すなわち上記距離bを有する領域のように、比較的幅の大きい領域においては、分離絶縁層SIは比較的容易に形成される。しかし上記距離aを有する領域のように、比較的幅の小さい領域においては、当該幅と深さとのアスペクト比が比較的大きくなるため、分離絶縁層SIは形成しにくい。これは上記アスペクト比が大きくなると、深いエアギャップAGを形成することが困難になるためである。
【0059】
したがって本実施の形態のように、比較的容易に深い分離絶縁層SIが形成できる領域のみに分離絶縁層SIを形成することにより、当該深い分離絶縁層SIが形成された領域における画素間クロストークをより確実に抑制することができる。このため各画素における色調不良による画質低下の発生を抑制することができる。またそれ以外の領域には浅い分離領域が形成されるため、当該領域の幅(たとえば図3の距離a)をより小さくすることができる。すなわち当該単位画素の集積度をより高くすることができる。
【0060】
以上のように本実施の形態においては、電気的クロストークと光学的クロストークとの両方を抑制する効果を高め、画素間クロストークをより確実に抑制することができる。
【0061】
次に、図12〜図17を参照して、深い分離領域DPSにおける、エアギャップAGを備えた、STIとしての分離絶縁層SIの製造方法について説明する。
【0062】
図12を参照して、たとえばシリコンからなる半導体基板SUBの一方の主表面SF上に、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、シリコン酸化膜SIF、多結晶シリコン膜PSF、シリコン窒化膜NSFがこの順に積層される。なお上記の本実施の形態においては、深い分離領域SIは半導体基板SUBおよび半導体層DPWの上方に形成されるが、ここでは説明を単純にするため、半導体基板SUBの内部に深い分離領域SIが形成される方法を示す。
【0063】
図13を参照して、たとえば通常の写真製版およびエッチングにより、シリコン酸化膜SIF、多結晶シリコン膜PSFおよびシリコン窒化膜NSFがパターニングされる。パターニングにより上記の各薄膜が除去された領域が、最終的に分離絶縁層SIが形成される領域である。
【0064】
図14を参照して、図13の工程にて形成されたシリコン酸化膜SIF、多結晶シリコン膜PSFおよびシリコン窒化膜NSFのパターンをハードマスクとして、シリコン基板SUBの内部の一部を異方性エッチングにより除去し、溝TRを形成する。
【0065】
図15を参照して、図14の工程にて形成された溝TRをさらに異方性エッチングすることにより、溝TRより深い領域に深溝DTRが形成される。深溝DTRは溝TRと連続するように形成される。その後、たとえばISSG(In Situ Steam Generation)など従来公知の方法により、溝TRの内壁面、深溝DTRの内壁面および底面の酸化がなされ、シリコン酸化膜SI1が形成される。シリコン酸化膜SI1を溝TRの内壁面などに形成すれば、溝TR(深溝DTR)とシリコン基板SUBとの界面準位密度を減らし、シリコン基板SUBと溝TR(深溝DTR)との間を流れる暗電流の発生を抑制することができる。
【0066】
図16を参照して、たとえばシリコン酸化膜SI2により、溝TR、DTRの内部が充填される。当該シリコン酸化膜SI2は、たとえばCVD法により形成される。このとき、CVD法に用いるガスの流量比や分圧を調整することにより、充填されるシリコン酸化膜SI2の内部に空隙としてのエアギャップAGを形成することができる。エアギャップAGの(図16の左右方向の)幅は、たとえば0.01μm以上0.1μm以下とすることが好ましい。
【0067】
図17を参照して、図16の溝TR、DTRの内部をシリコン酸化膜SI2で充填する際に半導体基板SUBの最上面SF上に同時に堆積されたシリコン酸化膜SI2が、たとえばCMP(Chemical Mechanical Polishing)により除去される。以上の工程により、シリコン酸化膜SI1、SI2からなる、エアギャップAGを含む分離絶縁層SIが形成される。
【0068】
以上に述べた本実施の形態は、BSI(Backside illumination)技術を採用したCMOSイメージセンサの半導体基板SUBの裏面(たとえば図5の半導体基板SUBの最下面)に形成されるピクセルアレイに対しても用いることができる。
【0069】
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、電気的分離層の構成において異なっている。以下、図18〜図20を参照して、本実施の形態に係るピクセルアレイについて説明する。
【0070】
図18〜図20を参照して、本実施の形態のピクセルアレイは、図3に示す実施の形態1のピクセルアレイと大筋で同様の構成を備えている。ただし本実施の形態においては、電気的分離層がすべて、実施の形態1における深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIを形成している。つまりたとえばトランジスタM1のソース領域SO1と、平面視においてこれに最も近い活性領域である、当該トランジスタM1に隣接するトランジスタM1のドレイン領域DR1との間の領域にも、深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIが配置されている。ここでの分離絶縁層SIは、図5〜図7の分離絶縁層SIと同様に、半導体層DPWに達する深さを有し、エアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも深い。その結果、トランジスタM1〜M4が配置されない領域の全体に、深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIが配置されている。
【0071】
たとえば図18の上下方向に関して隣接する1組のトランジスタM1のうち一方のトランジスタM1のソース領域SO1と、他方のトランジスタM1のドレイン領域DR1とに挟まれた領域の幅aは、図3における同じ領域の幅aよりも大きいことが好ましい。このようにすれば、当該領域においても、平面視における幅と分離絶縁層SIの深さとのアスペクト比が比較的小さくなる。このため、比較的深いエアギャップAGを有する深い分離絶縁層SIを容易に形成することができ、ピクセルアレイの(トランジスタが配置される領域を除く)ほぼ全体に深い分離絶縁層SIを形成することができる。
【0072】
図19を参照して、図18の1組のトランジスタM1のうち一方のトランジスタM1と、これの上下方向に隣接する他方のトランジスタM1との間の領域のように、左右方向に関して、深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIが連続している。その結果、分離絶縁層SIのエアギャップAGは、図18の複数のトランジスタM1の活性領域の間の領域同士を接続するように、図の左右方向に関して(半導体基板SUBの主表面に沿って)連続するように延在している。なお上記の実施の形態1において、図3の上下方向に延在する深い分離領域DPSとしての分離絶縁層SIについても、図19と同様にエアギャップAGが半導体基板の主表面SUBの主表面に沿うように延在する構成であってもよい。
【0073】
以上のように、本実施の形態においては実施の形態1よりもさらに広い範囲において、深い分離領域DPSが形成されている。この点において本実施の形態は、実施の形態1と異なる。ただし本実施の形態において、上記以外の点については実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付しその説明を繰り返さない。
【0074】
次に本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態においては、実施の形態1よりもさらに広い範囲において、深い分離領域DPSが形成されている。本実施の形態においては、たとえば実施の形態1において浅い分離領域SLSが形成されている領域においても、深い分離領域が形成されている。このため各トランジスタM1(フォトダイオード)は、平面視においてその周囲のほぼ全体が、図20に示す分離絶縁層SIで覆われている。分離絶縁層SIはその最下部が半導体層DPWの最上面に接しており、エアギャップAGの最下部は、フォトダイオードの最下部よりも深い位置に配置される。
【0075】
このため本実施の形態においては、実施の形態1よりもさらに、深い分離領域SIが画素間クロストークを抑制する効果を高めることができる。また図19に示すように、本実施の形態においては、エアギャップAGが、互いに隣接する1組のトランジスタM1の活性領域の間の領域同士を接続するように(すなわち複数のトランジスタM1の周囲の領域を繋ぐように)形成される。このため当該分離絶縁層SIが光学的クロストークを抑制する効果をさらに高めることができる。
【0076】
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
【実施例1】
【0077】
次に、本実施の形態1および実施の形態2におけるCMOSイメージセンサが画素間クロストークを抑制する効果についてのシミュレーションについて説明する。まず図21〜図22を用いて、当該シミュレーション方法について説明する。
【0078】
図21を参照して、まずプロセスシミュレーションがなされる。具体的には、たとえば本実施の形態におけるCMOSイメージセンサや、比較例のCMOSイメージセンサを構成する各単位画素の構造をシミュレーションする。各単位画素の構造とは、たとえば単位画素のカラーフィルタ、トランジスタ、フォトダイオードを構成する各部分の材質および形状、ならびに半導体基板および各不純物領域中の不純物濃度分布などである。これらの情報が計算機に入力されることにより、単位画素の構造を数値化する計算がなされる。
【0079】
次に光学シミュレーションがなされる。具体的には、各単位画素を構成するフォトダイオード(周囲の分離絶縁層や半導体層も含む)に着目し、当該フォトダイオードに入射する光の量に応じて、光電変換により発生する電子の濃度分布(光生成電子濃度分布)が計算される。
【0080】
最後にデバイスシミュレーションがなされる。具体的には、まずカラーフィルタや分離領域(分離絶縁層SIなど)を含む各単位画素が動作するときの印加電圧の時間依存性が入力される。次に光学シミュレーションにより算出された光生成電子濃度分布を初期値(時刻t=0)として、フォトダイオードの光電変換により発生する電子が拡散やドリフトによって、上記の各単位画素のフォトダイオードに蓄積される動きの時間変化が計算される。そして時間が経っても当該電子のフォトダイオードへの蓄積状態に大きな変化が見られなくなったところで(すなわち定常状態となったところで)計算が終了される。
【0081】
図22を参照して、各単位画素の(フォトダイオードの)分光感度を計算する際には、まず、当該単位画素(フォトダイオード)に特定の波長の光が入射された状態が計算機に入力される。次に、理論的に発生する電子の総数Aが算出される。電子の総数Aとは具体的には、上記の光学シミュレーションにおいて計算される、(フォトダイオードおよび、フォトダイオードの周囲の分離絶縁層SI、半導体層DPWなどを含む)画素の内部に入射する各波長の光の量(各波長の光のエネルギ)から、光電変換により、理論的に発生する電子の総数である。次に収集された電子の総数Bが算出される。電子の総数Bとは具体的には、上記のデバイスシミュレーションにより求められる、上記の画素の内部に入射する各波長の光の量から、光電変換により発生した電子のうち、拡散やドリフトによりフォトダイオード内部に収集される電子のである。その後、分光感度に相当する量子効率B/Aが算出される。
【0082】
以上のシミュレーション手順による算出結果を、図23〜図25のグラフに示す。図23〜図25における横軸は、それぞれ赤、緑、青のカラーフィルタを有するフォトダイオードに入射する光の波長を示しており、縦軸は各波長の光から発生する電子がフォトダイオード内に蓄積される割合としての分光感度を示している。図23〜図25の縦軸の分光感度は、いずれもたとえば実際のB/Aの数値の表示や、B/Aの対数表示など、任意のスケールで表示することができる。しかし図23〜図25の間では分光感度の表示方法は全て同じとしており、グラフ中の最大値や最小値も全て同じとしている。このようにすることにより、図23〜図25の間での分光感度の比較を容易としている。
【0083】
図23〜図25に実線で示すデータR0、G0、B0はそれぞれ、たとえば図11の比較例、すなわち絶縁層SSPとp+型領域SPとが積層された浅い分離領域SLSのみにより各トランジスタM1〜M4が平面的に囲まれたピクセルアレイのシミュレーション結果である。図23〜図25に鎖線で示すデータR1、G1、B1はそれぞれ、たとえば図3の本実施の形態1に示す、一部の電気的分離層が(図5〜図7に示す)深い分離領域DPSであり、一部の電気的分離層が(図8に示す)浅い分離領域SLSであるピクセルアレイのシミュレーション結果である。図23〜図25に点線で示すデータR2、G2、B2はそれぞれ、たとえば図18の本実施の形態2に示す、全体の電気的分離層が(図5〜図7、図20に示す)深い分離領域DPSであるピクセルアレイのシミュレーション結果である。
【0084】
また図23におけるデータR3は、実施の形態1の図3の深い分離領域DPSとして、たとえば図9に示す、エアギャップAGの最下部がフォトダイオードの最下部よりも浅い分離絶縁層SIが形成されたピクセルアレイの、赤いフォトダイオードPDRのシミュレーション結果である。
【0085】
図23〜図25を参照して、たとえば赤い光は波長が600nm以上650nm以下の範囲であるため、図23の(赤いカラーフィルタを有するフォトダイオードの)グラフにおいてはR0、R1、R2のいずれも当該波長範囲の分光感度が他の波長領域の分光感度よりも高くなっている。同様に、図24の(緑のカラーフィルタを有するフォトダイオードの)グラフにおいてはG0、G1、G2のいずれも、緑の光が有する500nm以上580nm以下の波長範囲において、他の領域よりも分光感度が高くなっている。図25の(青いカラーフィルタを有するフォトダイオードの)グラフにおいてはB0、B1、B2のいずれも、青の光が有する400nm以上480nm以下の波長範囲において、他の領域よりも分光感度が高くなっている。
【0086】
また図23における赤い光によるピークの分光感度は、R0が最も低く、R3がこれに次ぎ、R2が最も高くなっている。比較例の構成においては赤いフォトダイオードPDR(図11)が浅い分離領域のみに囲まれる。このため赤のフォトダイオードに入射した光の変換した電子が、電気的クロストークにより赤のフォトダイオードの外部に拡散またはドリフトする割合が多くなり、結果的に赤い光の変換した電子が赤のフォトダイオードに蓄積される割合が低くなる。したがってR0はR1、R2、R3に比べて赤い光によるピークの分光感度が低い。
【0087】
実施の形態1においては赤いフォトダイオードPDR(図3)の一部が浅い分離領域に囲まれ、一部は深い分離領域に囲まれる。このため、実施の形態1は比較例に比べて電気的クロストークが抑制され、赤い光によるピークの分光感度が高くなる。ただし実施の形態1の深い分離領域DPSにおけるエアギャップAGがより深いR1の方が、エアギャップAGが浅いR3よりも、赤い光によるピークの分光感度が高くなる。これはエアギャップAGが光学的クロストークを抑制する効果を高めるためである。
【0088】
またエアギャップAGの最下部が浅い実施の形態2においては赤いフォトダイオードPDR(図18)のほぼ全体が深い分離領域に囲まれる。このため実施の形態2においては実施の形態1よりもさらに電気的クロストークおよび光学的クロストークが抑制され、赤い光によるピークの分光感度がさらに高くなる。
【0089】
一方、たとえば図23における赤い光よりも短い波長の領域(たとえば580nm以下)においては、R0が最も分光感度が高くなっており、R1がこれに次ぎ、R2が最も低くなっている。これは比較例においては光学的クロストークにより、たとえば緑のカラーフィルタを透過した光が、本実施の形態よりも高い割合で赤いフォトダイオードに入射されるためである。これに対し本実施の形態においては当該光学的クロストークが抑制される結果、赤いフォトダイオードにはたとえば緑のカラーフィルタを通った光の進入する割合が少なくなる。したがって本実施の形態においては比較例に比べて、赤い光以外の波長領域における分光感度が低くなる。この結果は、実施の形態1よりも実施の形態2においてさらに顕著になる。
【0090】
以上は図23における赤いフォトダイオードのみについての考察結果を記しているが、図24および図25の、緑および青のフォトダイオードについても同様の結果を示している。
【0091】
また図23の赤いフォトダイオードの分光感度のピークが、図24および図25の緑および青のフォトダイオードの分光感度のピークに比べ、特に上記比較例において低くなっている。これは赤い光は緑や青の光に比べて波長が長く、光学的クロストークを起こして隣接するフォトダイオードの方へ進入しやすいためである。
【0092】
今回開示された各実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、CMOSイメージセンサを有する半導体装置に、特に有利に適用されうる。
【符号の説明】
【0094】
AA2,AA3,AA4,AA34 活性領域、AG エアギャップ、CHP 半導体チップ、DPS 深い分離領域、DPW 半導体層、DTR 深溝、FD フローティング拡散領域、DR1,DR2,DR3,DR4 ドレイン領域、GE1,GE2,GE3,GE4 ゲート電極、GI ゲート絶縁膜、M1 転送トランジスタ、M2 リセットトランジスタ、M3 選択トランジスタ、M4 増幅トランジスタ、NSF シリコン窒化膜、P1 接続点、PD,PDB,PDG,PDR フォトダイオード、PPR 高濃度不純物領域、PSF 多結晶シリコン膜、SI 分離絶縁層、SI1,SI2,SIF シリコン酸化膜、SLS 浅い分離領域、SO1,SO2,SO3,SO4 ソース領域、SP p+型領域、SPR 不純物領域、SSP 絶縁層、SUB 半導体基板、TR 溝、WL ウェル領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記主表面上に配置された第1導電型の不純物層と、
前記第1導電型の不純物層上に、第1導電型の不純物領域と第2導電型の不純物領域とが互いに接合する構成を含む光電変換素子と、
前記光電変換素子を含む単位画素を構成し、前記光電変換素子と電気的に接続されるトランジスタとを備えており、
平面視において前記光電変換素子の外周部の少なくとも一部には、内部に空隙が含まれ、前記光電変換素子と前記光電変換素子に隣接する前記光電変換素子とを互いに電気的に絶縁する分離絶縁層が配置されており、
前記分離絶縁層は、前記第1導電型の不純物層の最上面に接する、半導体装置。
【請求項2】
前記空隙の最下部は、前記光電変換素子の最下部よりも深い位置に形成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記分離絶縁層の側面は、第1導電型の不純物薄膜で覆われている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記単位画素はマトリックス状に複数配置され、
前記トランジスタは、前記光電変換素子としての第1の不純物領域と、不純物拡散層としての第2の不純物領域とを含む第1の活性領域に形成された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと電気的に接続され、不純物拡散層としての不純物領域を含む第2の活性領域に形成された、前記単位画素に含まれる第2のトランジスタとを有しており、
複数の前記単位画素のうち隣り合う1組の前記単位画素のうちの一方に含まれる前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域と、1組の前記単位画素のうちの他方に含まれる前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域との最短距離は、前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域と、平面視において前記第1のトランジスタに隣接する前記第2のトランジスタの前記第2の活性領域との最短距離よりも小さい、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域と、平面視において前記第1のトランジスタに隣接する前記第2のトランジスタの前記第2の活性領域との間の領域には、前記分離絶縁層が配置されている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
1組の前記第1のトランジスタのうちの一方に含まれる前記第1の活性領域と、1組の前記第1の活性領域のうちの平面視において前記第1の活性領域に最も近い、他方の前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域との間の領域には、前記分離絶縁層が配置されている、請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
平面視において前記トランジスタが配置されない領域の全体に、前記分離絶縁層が配置されている、請求項4〜6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記分離絶縁層の前記空隙は、互いに隣接する前記第1の活性領域の間の領域同士を接続するように、前記主表面に沿って延在している、請求項6または7に記載の半導体装置。
【請求項9】
1組の前記第1のトランジスタのうちの一方に含まれる前記第1の活性領域と、1組の前記第1の活性領域のうちの平面視において前記第1の活性領域に最も近い、他方の前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域との間の領域には、前記分離絶縁層より浅く、前記第1導電型の不純物層と接触しない素子分離層が配置されている、請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項1】
主表面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記主表面上に配置された第1導電型の不純物層と、
前記第1導電型の不純物層上に、第1導電型の不純物領域と第2導電型の不純物領域とが互いに接合する構成を含む光電変換素子と、
前記光電変換素子を含む単位画素を構成し、前記光電変換素子と電気的に接続されるトランジスタとを備えており、
平面視において前記光電変換素子の外周部の少なくとも一部には、内部に空隙が含まれ、前記光電変換素子と前記光電変換素子に隣接する前記光電変換素子とを互いに電気的に絶縁する分離絶縁層が配置されており、
前記分離絶縁層は、前記第1導電型の不純物層の最上面に接する、半導体装置。
【請求項2】
前記空隙の最下部は、前記光電変換素子の最下部よりも深い位置に形成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記分離絶縁層の側面は、第1導電型の不純物薄膜で覆われている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記単位画素はマトリックス状に複数配置され、
前記トランジスタは、前記光電変換素子としての第1の不純物領域と、不純物拡散層としての第2の不純物領域とを含む第1の活性領域に形成された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと電気的に接続され、不純物拡散層としての不純物領域を含む第2の活性領域に形成された、前記単位画素に含まれる第2のトランジスタとを有しており、
複数の前記単位画素のうち隣り合う1組の前記単位画素のうちの一方に含まれる前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域と、1組の前記単位画素のうちの他方に含まれる前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域との最短距離は、前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域と、平面視において前記第1のトランジスタに隣接する前記第2のトランジスタの前記第2の活性領域との最短距離よりも小さい、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域と、平面視において前記第1のトランジスタに隣接する前記第2のトランジスタの前記第2の活性領域との間の領域には、前記分離絶縁層が配置されている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
1組の前記第1のトランジスタのうちの一方に含まれる前記第1の活性領域と、1組の前記第1の活性領域のうちの平面視において前記第1の活性領域に最も近い、他方の前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域との間の領域には、前記分離絶縁層が配置されている、請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
平面視において前記トランジスタが配置されない領域の全体に、前記分離絶縁層が配置されている、請求項4〜6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記分離絶縁層の前記空隙は、互いに隣接する前記第1の活性領域の間の領域同士を接続するように、前記主表面に沿って延在している、請求項6または7に記載の半導体装置。
【請求項9】
1組の前記第1のトランジスタのうちの一方に含まれる前記第1の活性領域と、1組の前記第1の活性領域のうちの平面視において前記第1の活性領域に最も近い、他方の前記第1のトランジスタの前記第1の活性領域との間の領域には、前記分離絶縁層より浅く、前記第1導電型の不純物層と接触しない素子分離層が配置されている、請求項4または5に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−178429(P2012−178429A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40092(P2011−40092)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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