説明

回路基板、電気光学装置、及び電子機器

【課題】 トランジスタ等の能動素子が安定に動作し、大画面化と長期にわたって安定した表示動作とを可能にする。
【解決手段】 陰極(222)と陽極(23)とに狭持され、基板(2)の上方に配置された電気光学素子と、電気光学素子を駆動する能動素子(24)と、陰極(222)及び陽極(23)のうち少なくとも一方と基板(2)との間に配置された誘電率が所定の値以下の絶縁材料からなる絶縁膜(283、284)とから電気光学装置(1)を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、電気光学装置等、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置として液晶素子、有機EL(Electro Luminescence)素子を備えた液晶表示装置や有機EL表示装置などの電気光学装置がある。特に、有機EL表示装置は、高輝度で自発光であること、直流低電圧駆動が可能であること、応答が高速であること等から表示性能に優れている。また、表示装置の薄型化、軽量化、低消費電力化が可能である。
【0003】
有機EL表示装置は、発光物質を含む発光層を陽極及び陰極の電極層で挟んだ構成を有している。そして、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とを発光能を有する発光層内で再結合し、励起状態から失括する際に発光する現象を利用している。有機EL表示装置の輝度はデータ信号に応じて有機EL素子に供給される駆動電流によって制御される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO98/36407号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気光学装置では配線や電極等の導電性部位間に生じる寄生容量によりデータの書き換え動作などに支障をきたすことが知られている。この配線間容量は、配線長に依存し、配線が長くなるにつれて大きくなるため、例えば、電気光学装置を表示装置として利用する場合、大画面化を妨げる原因となっていた。
【0006】
また、近年、メモリなどの半導体装置では高度集積化と同時に動作の高速化の要求されている現状において、配線などの導電部の間に生ずる容量が問題となっている。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、トランジスタやダイオード等の能動素子を安定に動作することのできる回路基板、大画面化が可能で、かつ長期にわたって安定に動作する電気光学装置及びこれらを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回路基板は、絶縁性を有する基板と、前記基板の上方に配置された能動素子と、前記能動素子を駆動する電気信号又は前記能動素子を駆動する駆動電力を供給する配線と、第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の上方に形成された第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜の上方に形成された電極と、を含み、前記能動素子と前記電極とは、少なくとも前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜にわたって設けられたコンタクトホールを介して接続されており、前記第1の絶縁膜の誘電率は前記基板の誘電率よりも低いことを特徴とする。
本発明に係る他の回路基板は、前記基板の上方に配置された能動素子と、前記能動素子を駆動する電気信号又は前記能動素子を駆動する駆動電力を供給する配線と、第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の上方に形成された第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜の上方に形成された電極と、を含み、前記能動素子はトランジスタであり、前記トランジスタに含まれる半導体膜は、少なくとも前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜にわたって設けられたコンタクトホールを介して、前記電極に接続されており、前記第1の絶縁膜の誘電率は前記基板の誘電率よりも低いことを特徴とする。
【0009】
上記の回路基板において、さらに前記基板と前記第1の絶縁膜との間に配置された第3の絶縁膜を含んでいることが好ましい。
【0010】
上記の回路基板において、前記第2の絶縁膜は前記能動素子の劣化を抑制する保護層として機能することが好ましい。
【0011】
上記の回路基板において、前記能動素子はトランジスタであり、前記トランジスタの半導体膜は、前記第3の絶縁膜により覆われていることが好ましい。
【0012】
上記の回路基板において、前記第1の絶縁膜の誘電率が3以下であることが好ましく、誘電率が2.5以下であることがより好ましい。
【0013】
上記の回路基板において、前記前記第2の絶縁膜と前記電極との間に設けられた第4の絶縁膜をさらに含んでいてもよい。
【0014】
上記の回路基板において、前記第1の絶縁膜に含まれる絶縁材料は、多孔質体、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー、多孔性ポリマーのうち少なくとも1つであってもよい。
【0015】
上記の回路基板において、前記第1の絶縁膜に含まれる絶縁材料は、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうち何れかを含むスピンオンガラス膜、ダイヤモンド膜、フッ素化アモルファス炭素膜のうち少なくとも1つであってもよい。
【0016】
上記の回路基板において、前記第1の絶縁膜は、所定の材料に無機微粒子及び有機微粒子の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。
【0017】
上記の回路基板において、前記第1の絶縁膜は、フッ化マグネシウムの微粒子を分散したゲルを含んでいてもよい。
【0018】
上記の回路基板において、前記第2の絶縁膜は、前記能動素子を覆っていることが好ましい。
【0019】
上記の回路基板において、前記第2の絶縁膜は、乾燥剤及び化学吸着剤のうち少なくともいずれか一方を含有したものであることが好ましい。
【0020】
上記の回路基板において、前記第2の絶縁膜は、セラミック、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0021】
上記の回路基板において、前記第2の絶縁膜は、ホウ素、炭素、窒素、アルミニウム、リン、珪素、セリウム、イッテルビウム、サマリウム、エルビウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、ジスプロシウム、ネオジウム、酸素、酸化バリウム、酸化カルシウム、活性炭、及びゼオライトのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0022】
上記の回路基板において、前記第4の絶縁膜の誘電率は4以下であること
が好ましい。
【0023】
上記の回路基板において、前記第4の絶縁膜の誘電率が3.5以下であることがさらに好ましい。
【0024】
上記の回路基板と電気光学素子とを組み合わせることにより電気光学装置を構成することが可能である。
【0025】
本発明に係る電気光学装置は、基板と、前記基板の上方に形成された第1の電極と第2の電極との間に設けられた電気光学素子と、前記第1の電極と前記基板との間に設けられた第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜と前記第1の電極との間に形成された第2の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜と前記基板との間に配置された第3の絶縁膜と、を含み、前記第1の絶縁膜の誘電率は4以下であることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る他の電気光学装置は、基板と、前記基板の上方に形成された第1の電極と第2の電極との間に設けられた電気光学素子と、前記第1の電極と前記基板との間に設けられた第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜と前記第1の電極との間に形成された第2の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜と前記基板との間に配置された第3の絶縁膜と、を含み、前記第1の絶縁膜の誘電率は3以下であることを特徴とする。
【0027】
上記の電気光学装置において、さらに前記電気光学素子を駆動する能動素子を含んでいてもよい。
【0028】
上記の電気光学装置において、前記第2の絶縁膜は可動イオン又は水分から前記能動素子を保護することが好ましい。
【0029】
上記の電気光学装置において、前記第2の絶縁膜は、乾燥剤及び化学吸着剤のうち少なくともいずれか一方を含有したものであることが好ましい。
【0030】
上記の電気光学装置において、前記第2の絶縁膜は、セラミック、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素のうち少なくとも1つからなることが好ましい。
【0031】
上記の電気光学装置において、前記第2の絶縁膜は、ホウ素、炭素、窒素、アルミニウム、リン、珪素、セリウム、イッテルビウム、サマリウム、エルビウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、ジスプロシウム、ネオジウム、酸素、酸化バリウム、酸化カルシウム、活性炭、及びゼオライトのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0032】
上記の電気光学装置において、前記電気光学素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。
【0033】
上記の電気光学装置において、さらに、前記第2の電極の上方に形成された封止層を含み、前記封止層は、セラミック、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び酸化珪素のうち少なくとも1つからなることが好ましい。
【0034】
上記の電気光学装置において、前記第2の電極の上方に保護膜を備えていることが好ましい。
【0035】
上記の電気光学装置において、前記保護膜は、乾燥剤及び化学吸着剤のうち少なくともいずれか一方を含有していてもよい。
【0036】
上記の電気光学装置において、前記電気光学素子で発した光は、前記基板の側から前記電気光学装置の外に取り出されることが好ましい。
【0037】
上記の回路基板又は上記の電気光学装置から電子機器を構成することが可能である。
【0038】
本発明に係る他の回路基板は、絶縁性を有する基板と、該基板の上方に配置された能動素子と、該能動素子を駆動する電気的信号又は駆動電力を供給する配線と、絶縁材料からなる絶縁膜と、を含み、前記絶縁材料の誘電率は前記基板の誘電率より低いことを特徴とする。
【0039】
この発明によれば、能動素子の電極間、又は該電極と接続された配線間を絶縁する絶縁膜が、所定の値以下の誘電率を有する絶縁材料からなる絶縁膜を含んでいるので、電極間又は配線間に生じる寄生容量を小さくすることができる。これにより、能動素子に供給される駆動信号間のアイソレーションが確保され、能動素子を精度良く駆動することができる。また、寄生容量が小さくなることにより、より高い周波数の駆動信号により能動素子を動作させることができる。能動素子としては、例えば、トランジスタなどの半導体素子や、MIMなどの2端子素子等が挙げられる。
【0040】
上記の回路基板の能動素子はトランジスタとしてもよい。
【0041】
上記の回路基板において前記絶縁材料の誘電率は4以下であることが好ましく、誘電率が3以下、さらには2.5以下であるとより好ましい。
【0042】
また本発明の他の回路基板は、上記発明において、絶縁材料は多孔質体、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウムあるいはこれを含む材料、フッ化マグネシウムの微粒子を分散したゲル、フッ素系ポリマーあるいはこれを含む材料、分岐構造を有するような多孔性ポリマー、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうち少なくとも1つを含むスピンオンガラス膜、所定の材料に無機微粒子及び有機微粒子の少なくともいずれか一方を含有した材料等である。
【0043】
また本発明の他の回路基板は、上記発明において、能動素子を被覆するように形成された保護層を含むことを特徴とする。
【0044】
この発明によれば、能動素子を覆うように保護層が形成されているので、金属成分、大気中のガス、水分等の侵入による能動素子の劣化を防止することができる。
【0045】
また本発明の他の回路基板は、上記発明において、保護層は乾燥剤及び化学吸着剤のうち少なくともいずれか一方を含有した材料、セラミック、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素のうち少なくとも1つを含む材料、ホウ素、炭素、窒素のうち少なくとも1つと、アルミニウム、リン、珪素のうち少なくとも1つとを含む材料、セリウム、イッテルビウム、サマリウム、エルビウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、ジスプロシウム、ネオジウムのうち少なくとも1つと、アルミニウム、珪素、窒素、酸素を含む材料、酸化バリウム、酸化カルシウム、活性炭、ゼオライトのうち少なくとも1つを含む材料等からなる。
【0046】
本発明の他の電気光学装置は、陰極と陽極とに狭持された、基板の上方に配置された電気光学素子と、を含む電気光学装置であって、前記陰極及び前記陽極のうち少なくとも一方と前記基板との間に誘電率が所定の値以下の絶縁材料からなる絶縁膜が配置されていることを特徴とする。
【0047】
この発明によれば、電気光学素子を狭持する陰極及び陽極のうち少なくとも一方と前記基板との間に誘電率が所定の値以下の絶縁材料からなる絶縁膜が配置されているので、これらの電極間に生じる寄生容量を小さくすることができる。これにより、電気光学素子に供給される駆動信号間のアイソレーションが確保され、電気光学素子を精度良く駆動することができる。また、寄生容量が小さくなることにより、より高い周波数の駆動信号により電気光学素子を駆動することができる。なお、この電気光学装置の駆動方式としてはパッシブ駆動方式及びアクティブ駆動方式のいずれも採用可能である。電気光学素子としては、例えば、有機EL素子、無機EL素子、液晶素子、電気泳動素子、レーザーダイオード、電子放出素子等が上がられる。
【0048】
また、本発明の他の電気光学装置は、上記発明において、電気光学素子を駆動する能動素子を含むことを特徴とする。
【0049】
この発明によれば、能動素子を用いたアクティブマトリクス方式の電気光学装置を構成することができ、より明るく、応答性に優れた電気光学装置を実現できる。能動素子としては、例えば、トランジスタなどの半導体素子や、MIMなどの2端子素子等が挙げられる。
【0050】
上記の電気光学装置の基板を絶縁体材料により形成してもよい。
【0051】
上記の電気光学装置の能動素子はトランジスタとしてもよい。
【0052】
上記の電気光学装置の絶縁膜の誘電率は4以下であることが好ましく、誘電率が3以下、さらには2.5以下であるとより好ましい。
【0053】
また、上記の電気光学装置において、絶縁材料として多孔質体、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウムあるいはこれを含む材料、フッ化マグネシウムの微粒子を分散したゲル、フッ素系ポリマーあるいはこれを含む材料、分岐構造を有するような多孔性ポリマー、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうち少なくとも1つを含むスピンオンガラス膜、所定の材料に無機微粒子及び有機微粒子の少なくともいずれか一方を含有した材料等を用いることができる。
【0054】
また本発明の電気光学装置は、上記発明において、能動素子を被覆するように形成された第1の保護層を含むことを特徴とする。
【0055】
この発明によれば、能動素子を覆うように第1の保護層が形成されているので、能動素子に対する外部からの金属成分、大気中のガス、水分等の侵入を防ぎ、能動素子の劣化を防止することができる。
【0056】
また本発明の電気光学装置は、上記発明において、陰極を被覆するように形成された第2の保護層を含むことを特徴とする。
【0057】
この発明によれば、陰極の上方を覆うように第2の保護層が形成されているので、電気光学素子に対する外部からの金属成分、大気中のガス、水分等の侵入を防ぎ、電気光学素子の劣化を防止することができる。
【0058】
また本発明の電気光学装置は、上記発明において、第1及び第2の保護層のうち少なくとも何れかは、乾燥剤及び化学吸着剤のうち少なくともいずれか一方を含有した材料、セラミック、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素のうち少なくとも1つを含む材料、ホウ素、炭素、窒素のうち少なくとも1つと、アルミニウム、リン、珪素のうち少なくとも1つとを含む材料、セリウム、イッテルビウム、サマリウム、エルビウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、ジスプロシウム、ネオジウムのうち少なくとも1つと、アルミニウム、珪素、窒素、酸素を含む材料、酸化バリウム、酸化カルシウム、活性炭、ゼオライトのうち少なくとも1つを含む材料等からなる。
【0059】
上記の電気光学装置において、前記電気光学素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。
【0060】
この発明によれば、電気光学素子として有機エレクトロルミネッセンス素子を用いることにより低電圧駆動及び視野角に制限されない表示装置を実現できる。
【0061】
本発明の電子機器は、上記の回路基板または上記の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
【0062】
この発明によれば、寄生容量を減ずることにより、例えば、周波数の高い入力信号に対して追従性の良い安定した表示動作を行うことのできる電子機器を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0064】
図1は本実施形態による表示装置として好適な電気光学装置の配線構造の平面模式図を示す。
【0065】
本実施形態による電気光学装置は、能動素子及び電気光学素子として、それぞれ薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor、以下、TFTと称す。)及び有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称す。)を用いたアクティブマトリクス方式の有機EL表示装置である。
【0066】
この図において電気光学装置1は、複数の走査線131(配線)と、走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132(配線)と、信号線132に並列に延びる複数の発光用電源配線133(配線)とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線131及び信号線132の各交点に対応して、画素領域Aが設けられている。
【0067】
各信号線132には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路90が接続されている。一方、各走査線131には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0068】
また、画素領域Aの各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチングTFT22と、このスイッチングTFT22を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレントTFT24と、このカレントTFT24を介して発光用電源配線133に電気的に接続したときに発光用電源配線133から駆動電流が流れ込む画素電極23(陽極)と、この画素電極23と陰極222との間に挟み込まれる有機EL素子3とが設けられている。
【0069】
上記構成された電気光学装置1では、走査線131により駆動されてTFT22がオンすると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capに状態に応じて、TFT24の導通状態が決まる。そして、カレントTFTの導通状態に応じた電流量が画素電極23を介して、発光用電源配線133から有機EL素子3に駆動電流が流れ供給される。この有機EL素子3に供給される電流量に応じて有機EL素子3の発光強度が決まる。
【0070】
図2は、陰極222や有機エレクトロルミネッセンス素子3が取り除かれた状態における画素領域Aの拡大平面図である。この図において、各画素領域は、平面形状が長方形の画素電極23の四辺が、走査線131、信号線132、発光用電源配線133及び他の画素電極用の走査線131によって囲まれた配置となっている。なお、画素電極23の形状は長方形に限らず、その他の形状のものであってもよい。例えば、有機EL素子3を構成する発光層や電子または正孔輸送層などの電荷輸送層をインクジェット法などの液相プロセスを用いて形成する場合は、画素電極23の上方に均一に上記の層を形成するためには角が取れた円形や長円形などの形状であることが好ましい。
【0071】
次に、電気光学装置1の断面構造を図3を参照しながら説明する。
【0072】
図3は図2のA−A線に沿う断面図である。この図において、電気光学装置1は、基板2と、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等の透明電極材料からな画素電極23と、画素電極23上に配置された有機EL素子3と、画素電極23との間で有機EL素子3を挟み込むように配置されている陰極222と、基板2上に形成され、画素電極23に対する通電を制御する通電制御部としてのカレントTFT24とを有している。更に、陰極222の上層には封止層20(第2の保護層)が設けられている。陰極222は、アルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)、カルシウム(Ca)から選ばれる少なくとも1つの金属から構成されている。陰極222は上述した各材料の合金や積層したものをも含む。カレントTFT24は、走査線駆動回路80及びデータ線駆動回路90からの作動指令信号に基づいて作動し、画素電極23への通電制御を行う。
【0073】
発光素子3は、陽極23から正孔を輸送可能な正孔輸送層70と、電気光学物質の1つである有機EL物質を含む発光層60と、発光層60の上面に設けられている電子輸送層50とから概略構成されている。そして、電子輸送層50の上面に陰極(対向電極)222が配置されている。
【0074】
TFT24は、SiOを主体とする下地保護層281を介して基板2の表面に設けられている。このTFT24は、下地保護層281の上層に形成されたシリコン層241と、シリコン層241を覆うように下地保護層281の上層に設けられたゲート絶縁層282と、ゲート絶縁層282の上面のうちシリコン層241に対向する部分に設けられたゲート電極242と、ゲート電極242を覆うようにゲート絶縁層282の上層に設けられた第1層間絶縁層283(絶縁膜)と、ゲート絶縁層282及び第1層間絶縁層283にわたって開孔するコンタクトホールを介してシリコン層241と接続するソース電極243と、ゲート電極242を挟んでソース電極243と対向する位置に設けられ、ゲート絶縁層282及び第1層間絶縁層283にわたって開孔するコンタクトホールを介してシリコン層241と接続するドレイン電極244と、ソース電極243及びドレイン電極244を覆うように第1層間絶縁層283の上層に設けられたバリア層285(保護層、第1の保護層)と、更にその上層に設けられた第2層間絶縁層284(絶縁膜)とを備えている。
【0075】
そして、第2層間絶縁層284の上面に画素電極23が配置され、画素電極23とドレイン電極244とは、第2層間絶縁層284とバリア層285とにわたって開孔するコンタクトホール23aを介して接続されている。また、第2層間絶縁層284の表面のうち有機EL素子が設けられている以外の部分と陰極222との間には、合成樹脂などからなる第3絶縁層221が設けられている。
【0076】
なお、シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域とされている。また、シリコン層241のうち、チャネル領域のソース側にはソース領域が設けられている一方、チャネル領域のドレイン側にはドレイン領域が設けられている。このうち、ソース領域が、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極243に接続されている。一方、ドレイン領域が、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。画素電極23はドレイン電極244を介して、シリコン層241のドレイン領域に接続されている。
【0077】
基板2として用いられる材料は特に限定されないが、本例では発光層60からの発光光をTFT24が設けられている基板2側から取り出す構成(バックエミッション型)であるため、光を透過可能な透明あるいは半透明材料、例えば、透明なガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などが用いられる。特に、基板2を形成する材料としては、安価なソーダガラスが好適に用いられる。ソーダガラスを用いた場合、これにシリカコートを施すのが、酸アルカリに弱いソーダガラスを保護する効果を有し、更に基板2の平坦性をよくする効果も有するため好ましい。
【0078】
また、基板2に色フィルター膜や発光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を配置して、発光色を制御するようにしてもよい。
【0079】
一方、TFT22が設けられている基板2とは反対側から発光光を取り出す構成(トップエミッション型)である場合には、基板2は不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセラミック、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0080】
下地保護層281を形成する際には、基板2に対し、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法によって製膜することにより、下地保護層281として厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜が形成される。
【0081】
シリコン層241を形成する際には、まず、基板2の温度を約350℃に設定して、下地保護膜281の表面にプラズマCVD法あるいはICVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン層を形成する。次いで、このアモルファスシリコン層に対してレーザアニール法、急速加熱法、または固相成長法などによって結晶化工程を行い、アモルファスシリコン層をポリシリコン層に結晶化する。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は例えば200mJ/cm2とする。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域に重なるようにラインビームを走査する。次いで、ポリシリコン層をフォトリソグラフィ法によってパターンニングして、島状のシリコン層241とする。
【0082】
なお、シリコン層241は、図1に示したカレントTFT24のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においてはスイッチングTFT22のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。つまり、二種類のTFT22、24は同時に形成されるが、同じ手順で作られるため、以下の説明において、TFTに関しては、カレントTFT24についてのみ説明し、スイッチングTFT22についてはその説明を省略する。
【0083】
ゲート絶縁層282を形成する際には、シリコン層241の表面に対して、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法を用いて製膜することにより、厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁層282が形成される。ゲート絶縁層282の材料としては、誘電率が大きい高誘電体材料が好ましい。
【0084】
ゲート電極242は、ゲート絶縁層282上にアルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を含む導電膜をスパッタ法により形成した後、これをパターニングすることにより形成される。
【0085】
シリコン層241にソース領域及びドレイン領域を形成するには、ゲート電極242を形成した後、このゲート電極242をパターニング用マスクとして用い、この状態でリンイオンを注入する。その結果、ゲート電極242に対してセルフアライン的に高濃度不純物が導入されて、シリコン層241中にソース領域及びドレイン領域が形成される。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域となる。
【0086】
第1層間絶縁層283は、一般的なシリコン酸化膜(SiO2膜:誘電率=約4)より誘電率の小さい低誘電率材料からなる低誘電率層であり、ゲート絶縁層282の上層に形成される。
【0087】
この第1層間絶縁層283の形成材料としては、多孔質体、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー、多孔性ポリマーなどが挙げられる。例えば、多孔性を有するSiO膜からなる第1層間絶縁層283は、反応ガスとしてSiとOとを用いて、CVD法(化学的気相成長法)により形成される。これらの反応ガスを用いると、気相中に粒子の大きいSiOが形成され、ゲート絶縁層282の上に堆積する。そのため、第1層間絶縁層283は、層中に多くの空隙を有し、多孔質体となる。そして、第1層間絶縁層283は多孔質体となることによって低誘電率層となる。
【0088】
なお、第1層間絶縁層283の表面にH(水素)プラズマ処理をしてもよい。これにより、空隙の表面のSi−O結合中のダングリングボンドがSi−H結合に置き換えられ、膜の耐吸湿性が良くなる。そして、このプラズマ処理された第1絶縁層283の表面に別のSiO層を設けてもよい。
【0089】
また、第1層間絶縁層283をCVD法で形成する際の反応ガスは、Si+O3の他に、Si+O、Si+O、Si+Oとしてもよい。更に、上記の反応ガスに加えて、B(ホウ素)含有の反応ガス、F(フッ素)含有の反応ガスを用いてもよい。
【0090】
第1層間絶縁層283を多孔質体として形成する際、多孔性を有するSiO膜と、通常の減圧化学的気相成長法により形成されたSiO膜とを積層することにより、膜質の安定した多孔質体としての第1層間絶縁層283を形成することもできる。そして、これらの膜を積層するには、減圧下におけるSiHとO2の雰囲気中において、プラズマを断続的、又は周期的に発生させることによって可能となる。具体的には、第1層間絶縁層283は、基板2を所定のチャンバ内に収容し、例えば400℃に保持しながら、反応ガスとしてSiHとOを用い、RF電圧(高周波電圧)をチャンバに印加することにより形成される。成膜中においては、SiH流量、O流量が一定であるのに対し、RF電圧は10秒の周期でチャンバに印加される。これにともない、プラズマが10秒の周期で発生、消滅する。このように、時間変化するプラズマを用いることにより、1つのチャンバ内で、減圧CVDを用いるプロセスと、減圧下におけるプラズマCVDを用いるプロセスとを繰り返し行うことができる。そして、減圧CVDと減圧下におけるプラズマCVDとを繰り返し行うことにより、膜中に多数の空隙を有するSiO膜が形成される。すなわち、第1層間絶縁層283は多孔性を有することになる。
【0091】
第1層間絶縁層283は、エアロゲルによって構成することもできる。エアロゲルとは、金属アルコキシドのゾルゲル反応により形成される湿潤ゲルを超臨界乾燥することによって得られる均一な超微細構造を持った光透過性の多孔質体である。エアロゲルにはシリカエアロゲルやアルミナを基調としたエアロゲルがある。このうち、シリカエアロゲルは、体積の90%以上を空隙が占め、残りが樹枝状に凝集した数10nmの微細なSiO2粒子で構成された材料である。このように空隙率の高いシリカエアロゲルは低誘電率材料として有効である。
【0092】
シリカエアロゲルは、ゾル−ゲル法により湿潤ゲルを作製する工程、湿潤ゲルを熟成させる工程、及び超臨界乾燥法により湿潤ゲルを乾燥してエアロゲルを得る超臨界乾燥工程を経て製造される。超臨界乾燥法は、固相と液相とからなるゼリー状のゲル物質中の液体を超臨界流体と置換、除去することにより、ゲルを収縮させることなくゲル物質を乾燥するのに適した方法であって、高い空隙率を有するエアロゲルが得られる。
【0093】
例えば第1層間絶縁層283をシリカエアロゲルによって形成する際には、ゲート絶縁層282の上にエアロゲルの原料である湿潤ゲルをスピンコート法等を用いてコーティングし、超臨界乾燥することにより形成される。超臨界流体を用いた超臨界乾燥法によって、湿潤ゲル中の溶媒を超臨界流体で置換することにより、湿潤ゲル中の溶媒が除去される。なお、超臨界流体としては、二酸化炭素(CO2)、若しくは、メタノールやエタノールのようなアルコール、NH3、H2O、N2O、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ペンタン、イソプロパノール、イソブタノール、シクロトリフルオロメタン、モノフルオロメタン、シクロヘキサノールなどを用いることができる。
【0094】
低誘電率層をシリカエアロゲルによって形成する際、基材上にスピンコートなどによって湿潤ゲルを塗布した後、超臨界乾燥するが、湿潤ゲルに合成樹脂(有機物)を混合しておいてもよい。この場合の合成樹脂は、その熱変性温度が超臨界流体の臨界温度よりも高く光を透過可能な合成樹脂であることが好ましい。超臨界流体として例えばアルコールを用いた場合、その熱変性温度がアルコールの臨界温度よりも高く光を透過可能な合成樹脂としては、ヒドロキシルプロピルセルロース(HPC),ポリビニルブチラール(PVB),エチルセルロース(EC)等が挙げられる(なお、PVB及びECはアルコールに可溶で水には不溶)。溶媒としてエーテルを用いる場合には樹脂として塩素系ポリエチレン等を選択し、またCO2を溶媒として用いる場合にはHPC等を選択することが望ましい。
【0095】
低誘電率層としては、シリカエアロゲルの他にアルミナを基調としたエアロゲルでもよく、一般のシリコン酸化膜(SiO2膜:誘電率=4)より誘電率の低い多孔質体であればよい。
【0096】
低誘電率層としては、多孔質シリカでもよいし、フッ化マグネシウムあるいはこれを含む材料でもよい。フッ化マグネシウムによる低誘電率層はスパッタリングによって形成可能である。あるいは、フッ化マグネシウムの微粒子を分散したゲルでもよい。あるいは、フッ素系ポリマー又はこれを含む材料、例えば、パーフルオロアルキル−ポリエーテル、パーフルオロアルキルアミン、またはパーフルオロアルキル−ポリエーテル−パーフルオロアルキルアミン混合フィルムでもよい。
【0097】
また、低誘電率層としては、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー等のスピンオンガラス膜(SOG)でもよい。あるいは、ポリアリールエーテル等の有機ポリマー、ダイヤモンド膜またはフッ素化アモルファス炭素膜でもよい。スピンオンガラス膜による低誘電率層は、ゲート絶縁層282の上にアルコールを溶媒としたスピンオンガラス膜の原料をスピンコート法等を用いてコーティングし、熱処理等により溶媒を蒸発させることにより形成可能である。スピンオンガラス膜を形成する際にも、上記の超臨界乾燥法を使用することができる。超臨界乾燥法を用いることにより被覆性や膜質をより向上させることができる。
【0098】
更に、低誘電率層としては、所定のポリマーバインダーに、可溶性もしくは分散性であるフルオロカーボン化合物を混在したものでもよい。
【0099】
ポリマーバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルスルホン酸ナトリウム塩、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリα−トリフルオロメチルアクリル酸、ポリビニルメチルエーテル−コ−無水マレイン酸、ポリエチレングリコール−コ−プロピレングリコール、ポリメタアクリル酸などが挙げられる。
【0100】
また、フルオロカーボン化合物としては、パーフルオロオクタン酸−アンモニウム塩、パーフルオロオクタン酸−テトラメチルアンモニウム塩、C−7とC−10のパーフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム塩、C−7とC−10のパーフルオロアルキルスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩、フッ素化アルキル第4級アンモニウムアイオダイド、パーフルオロアジピン酸、およびパーフルオロアジピン酸の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0101】
更には、低誘電率層として空隙を導入する方法が有効であるため、上記エアロゲルの他に、微粒子を用いて微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして空隙を形成してもよい。微粒子としては、無機微粒子あるいは有機微粒子を低誘電率層に用いることができる。
【0102】
無機微粒子は、非晶質であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類の金属を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。
【0103】
無機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することができる。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。ミクロボイドを有する(多孔質)無機微粒子は、ゾル−ゲル法(特開昭53−112732号、特公昭57−9051号の各公報記載)または析出法(APPLIED OPTICS、27、3356頁(1988)記載)により、分散物として直接合成することができる。また、乾燥・沈澱法で得られた粉体を、機械的に粉砕して分散物を得ることもできる。市販の多孔質無機微粒子(例えば、二酸化ケイ素ゾル)を用いてもよい。
【0104】
有機微粒子も、非晶質であることが好ましい。有機微粒子は、モノマーの重合反応(例えば乳化重合法)により合成されるポリマー微粒子であることが好ましい。有機微粒子のポリマーはフッ素原子を含むことが好ましい。含フッ素ポリマーを合成するために用いるフッ素原子を含むモノマーの例には、フルオロオレフィン類(例、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アクリル酸またはメタクリル酸のフッ素化アルキルエステル類およびフッ素化ビニルエーテル類が含まれる。フッ素原子を含むモノマーとフッ素原子を含まないモノマーとのコポリマーを用いてもよい。フッ素原子を含まないモノマーの例には、オレフィン類(例、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル類(例、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(例、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル)、スチレン類(例、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル類(例、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル類(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル)、アクリルアミド類(例、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド類およびアクリルニトリル類が含まれる。
【0105】
有機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するポリマーを架橋させることにより形成することができる。ポリマーを架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。粒子を形成するポリマーを架橋させるためには、ポリマーを合成するためのモノマーの20モル%以上を多官能モノマーとすることが好ましい。多官能モノマーの割合は、30乃至80モル%であることがさらに好ましく、35乃至50モル%であることが最も好ましい。多官能モノマーの例には、ジエン類(例、ブタジエン、ペンタジエン)、多価アルコールとアクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、多価アルコールとメタクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジメタクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート)、ジビニル化合物(例、ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルベンゼン)、ジビニルスルホン、ビスアクリルアミド類(例、メチレンビスアクリルアミド)およびビスメタクリルアミド類が含まれる。粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することができる。
【0106】
低誘電率層を、微細空孔と微粒子状無機物とを有する材料によって構成してもよい。この場合、低誘電率層はコーティングにより形成され、微細空孔は層の塗布後に活性化ガス処理を行ない、ガスが層から離脱することによって形成される。あるいは、2種類以上の超微粒子(例えば、MgF2とSiO2 )を混在させて、膜厚方向にその混合比を変化させることによって低誘電率層を形成してもよい。混合比を変化させることにより誘電率が変化する。超微粒子は、エチルシリケートの熱分解で生じたSiO2により接着している。エチルシリケートの熱分解では、エチル部分の燃焼によって、二酸化炭素と水蒸気も発生する。二酸化炭素と水蒸気が層から離脱することにより、超微粒子の間に間隙が生じている。あるいは、多孔質シリカよりなる無機微粉末とバインダーとを含有して低誘電率層を形成してもよいし、フッ素ポリマーからなる微粒子を2個以上積み重ねることにより、微粒子間に空隙を形成した低誘電率層を形成してもよい。
【0107】
分子構造レベルで空隙率を向上させることもできる。例えばデンドリマーなどの分岐構造を有するポリマーを用いても低誘電率が得られる。
【0108】
ソース電極243及びドレイン電極244を形成するには、まず、第1層間絶縁層283にフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより、ソース電極及びドレイン電極に対応するコンタクトホールを形成する。次に、第1層間絶縁層283を覆うように、アルミニウムやクロム、タンタル等の金属からなる導電層を形成した後、この導電層のうち、ソース電極及びドレイン電極が形成されるべき領域を覆うようにパターニング用マスクを設けるとともに、導電層をパターニングすることにより、ソース電極243及びドレイン電極244が形成される。
【0109】
バリア層285は、発光層60を構成する有機EL素子に含まれる側から金属イオンがTFT24側に拡散するのを防止するもので、ソース電極243及びドレイン電極244を覆うように第1層間絶縁層283と同様の手段より形成されている。バリア層285の材料としては、B(ホウ素)、C(炭素)、N(窒素)から選ばれた少なくとも一つの元素と、Al(アルミニウム)、Si(珪素)、P(リン)から選ばれた少なくとも一つの元素とを含む絶縁層が挙げられる。
【0110】
例えば、窒化アルミニウム(AlxNy)に代表されるアルミニウムの窒化物、炭化珪素(SixCy)に代表される珪素の炭化物、窒化珪素(SixNy)に代表される珪素の窒化物、窒化ホウ素(BxNy)に代表されるホウ素の窒化物、リン化ホウ素(BxPy)に代表されるホウ素のリン化物を用いることが可能である。また、酸化アルミニウム(AlxOy)に代表されるアルミニウムの酸化物は熱伝導率が20Wm-1ー1であり、放熱効果に優れ、発光素子の熱劣化を防ぐことも可能であり、好ましい材料の一つと言える。これらの材料には上記効果だけでなく、水分の侵入を防ぐ効果もある。
【0111】
上記化合物に他の元素を組み合わせることもできる。例えば、酸化アルミニウムに窒素を添加して、AlNxOyで示される窒化酸化アルミニウムを用いることも可能である。この材料にも放熱効果だけでなく、水分や可動イオン等の侵入を防ぐ効果がある。
【0112】
また、Si、Al、N、O、Mを含む絶縁膜(但し、Mは希土類元素の少なくとも一種、好ましくはCe(セリウム),Yb(イッテルビウム),Sm(サマリウム),Er(エルビウム),Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリニウム)、Dy(ジスプロシウム)、Nd(ネオジウム)から選ばれた少なくとも一つの元素)を用いることもできる。これらの材料にも放熱効果だけでなく、水分や可動イオンの侵入を防ぐ効果がある。
【0113】
また、少なくともダイヤモンド薄膜又はアモルファスカーボン膜(特にダイヤモンドに特性の近いもの、ダイヤモンドライクカーボン等と呼ばれる。)を含む炭素膜を用いることもできる。これらは非常に熱伝導率が高く、放熱層として極めて有効である。但し、膜厚が厚くなると褐色を帯びて透過率が低下するため、なるべく薄い膜厚(好ましくは5〜100nm)で用いることが好ましい。
【0114】
なお、保護層の目的はあくまで可動イオンや水分からTFTを保護することにあるので、その効果を損なうものでないことが好ましい。したがって、上記放熱効果をもつ材料からなる薄膜を単体で用いることもできるが、これらの薄膜と、可動イオンや水分の透過を妨げうる絶縁膜(代表的には窒化珪素膜(SixNy)や窒化酸化珪素膜(SiOxNy))とを積層することは有効である。
【0115】
第2層間絶縁層284は、第1層間絶縁層283同様、多孔質体、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー、多孔性ポリマーなどによって構成され、第1層間絶縁層283の形成方法と同様の手順でバリア層285の上層に形成される。
【0116】
なお、バリア層285の形成後及び第2層間絶縁層284の形成後において、それぞれドレイン電極244に対応する部分にコンタクトホール23aを形成する。
【0117】
また、第1層間絶縁層283、第2層間絶縁層284の誘電率は、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下に設定される。
【0118】
有機EL素子3に接続する陽極23は、ITOやフッ素をドープしてなるSnO、更にZnOやポリアミン等の透明電極材料からなり、コンタクトホール23aを介してTFT24のドレイン電極244に接続されている。陽極23を形成するには、前記透明電極材料からなる膜を第2層間絶縁層284上面に形成し、この膜をパターニングすることにより形成される。
【0119】
第3絶縁層221はアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂によって構成されている。第3絶縁層221は、陽極23が形成された後に形成される。具体的な第3絶縁層221の形成方法としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に融かしたものを、スピンコート、ディップコート等により塗布して絶縁層を形成する。なお、絶縁層の構成材料は、後述するインクの溶媒に溶解せず、しかもエッチング等によってパターニングしやすいものであればどのようなものでもよい。更に、絶縁層をフォトリソグラフィ技術等により同時にエッチングして、開口部221aを形成することにより、開口部221aを備えた第3絶縁層221が形成される。
【0120】
ここで、第3絶縁層221の表面には、親液性(例えば親インク性)を示す領域と、撥液性(例えば撥インク性)を示す領域とが形成される。本実施形態においてはプラズマ処理工程により、各領域を形成するものとしている。具体的にプラズマ処理工程は、予備加熱工程と、開口部221aの壁面並びに画素電極23の電極面を親インク性にする親インク化工程と、第3絶縁層221の上面を撥インク性にする撥インク化工程と、冷却工程とを有している。
【0121】
すなわち、基材(ここでは第3絶縁層等を含む基板2)を所定温度(例えば70〜80土程度)に加熱し、次いで親インク化工程として大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(例えばO2プラスマ処理)を行う。続いて、撥インク化工程として大気雰囲気中で4フッ化メタンを反応ガスとするプラスマ処理(例えばCF4プラスマ処理)を行い、プラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親インク性及び撥インク性が所定箇所に付与されることとなる。なお、画素電極23の電極面についても、このCF4プラスマ処理の影響を多少受けるが、画素電極23の材料であるITO等はフッ素に対する親和性に乏しいため、親インク化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親インク性が保たれる。
【0122】
正孔輸送層70は陽極23の上面に形成されている。ここで、正孔輸送層70の形成材料としては、特に限定されることなく公知のものが使用可能であり、例えばピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等が挙げられる。具体的には、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示されるが、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく、中でも4,4’−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルが好適とされる。
【0123】
なお、正孔輸送層に代えて正孔注入層を形成するようにしてもよく、更に正孔注入層と正孔輸送層を両方形成するようにしてもよい。その場合、正孔注入層の形成材料としては、例えば銅フタロシアニン(CuPc)や、ポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等が挙げられるが、特に銅フタロシアニン(CuPc)を用いるのが好ましい。
【0124】
正孔注入/輸送層70を形成する際には、インクジェット法が用いられる。すなわち、上述した正孔注入/輸送層材料を含む組成物インクを陽極23の電極面上に吐出した後に、乾燥処理及び熱処理を行うことにより、電極23上に正孔注入/輸送層70が形成される。なお、この正孔注入/輸送層形成工程以降は、正孔注入/輸送層70及び発光層60の酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。例えば、インクジェットヘッド(不図示)に正孔注入/輸送層材料を含む組成物インクを充填し、インクジェットヘッドの吐出ノズルを陽極23の電極面に対向させ、インクジェットヘッドと基材(ここでは基板2)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御されたインキ滴を電極面に吐出する。次に、吐出後のインク滴を乾燥処理して組成物インクに含まれる極性溶媒を蒸発させることにより、正孔注入/輸送層70が形成される。
【0125】
なお、組成物インクとしては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体と、ポリスチレンスルホン酸等との混合物を、イソプロピルアルコール等の極性溶媒に溶解させたものを用いることができる。ここで、吐出されたインク滴は、親インク処理された陽極23の電極面上に広がり、開口部221aの底部近傍に満たされる。その一方で、撥インク処理された第3絶縁層221の上面にはインク滴がはじかれて付着しない。したがって、インク滴が所定の吐出位置からはずれて第3絶縁層221の上面に吐出されたとしても、該上面がインク滴で濡れることがなく、はじかれたインク滴が第3絶縁層221の開口部221a内に転がり込むものとされている。
【0126】
発光層60は、正孔注入/輸送層70上面に形成される。発光層60の形成材料としては、特に限定されることなく、低分子の有機発光色素や高分子発光体、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質からなる発光物質が使用可能である。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン構造を含むものが特に好ましい。低分子蛍光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、または特開昭57−51781、同59−194393号公報等に記載されている公知のものが使用可能である。
【0127】
発光層60の形成材料として高分子蛍光体を用いる場合には、側鎖に蛍光基を有する高分子を用いることができるが、好ましくは共役系構造を主鎖に含むもので、特に、ポリチオフェン、ポリ−p−フェニレン、ポリアリーレンビニレン、ポリフルオレンおよびその誘導体が好ましい。中でもポリアリーレンビニレンおよびその誘導体が好ましい。該ポリアリーレンビニレンおよびその誘導体は、下記化学式(1)で示される繰り返し単位を全繰り返し単位の50モル%以上含む重合体である。繰り返し単位の構造にもよるが、化学式(1)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の70%以上であることが更に好ましい。
【0128】
−Ar−CR=CR’− (1)
〔ここで、Arは、共役結合に関与する炭素原子数が4個以上20個以下からなるアリーレン基または複素環化合物基、R、R’はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20の複素環化合物、シアノ基からなる群から選ばれた基を示す。〕
該高分子蛍光体は、化学式(1)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、芳香族化合物基またはその誘導体、複素環化合物基またはその誘導体、およびそれらを組み合わせて得られる基などを含んでいてもよい。また、化学式(1)で示される繰り返し単位や他の繰り返し単位が、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基などを有する非共役の単位で連結されていてもよいし、繰り返し単位にそれらの非共役部分が含まれていてもよい。
【0129】
前記高分子蛍光体において化学式(1)のArとしては、共役結合に関与する炭素原子数が4個以上20個以下からなるアリーレン基または複素環化合物基であり、下記の化学式(2)で示す芳香族化合物基またはその誘導体基、複素環化合物基またはその誘導体基、およびそれらを組み合わせて得られる基などが例示される。
【0130】
【化1】

【0131】
(R1〜R92は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基;炭素数6〜18のアリール基およびアリールオキシ基;ならびに炭素数4〜14の複素環化合物基からなる群から選ばれた基である。)
これらのなかでフェニレン基、置換フェニレン基、ビフェニレン基、置換ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、置換ナフタレンジイル基、アントラセン−9,10−ジイル基、置換アントラセン−9,10−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、置換ピリジン−2,5−ジイル基、チエニレン基および置換チエニレン基が好ましい。更に好ましくは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、チエニレン基である。
【0132】
化学式(1)のR、R’が水素またはシアノ基以外の置換基である場合について述べると、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が好ましい。アリール基としては、フェニル基、4−C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、4−C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示される。
【0133】
溶媒可溶性の観点からは化学式(1)のArが、1つ以上の炭素数4〜20のアルキル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基、炭素数6〜18のアリール基およびアリールオキシ基ならびに炭素数4〜14の複素環化合物基から選ばれた基を有していることが好ましい。
【0134】
これらの置換基としては以下のものが例示される。炭素数4〜20のアルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基などが挙げられ、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が好ましい。また、炭素数4〜20のアルコキシ基としては、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましい。炭素数4〜20のアルキルチオ基としては、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、デシルオキシ基、ラウリルチオ基などが挙げられ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が好ましい。アリール基としては、フェニル基、4−C1〜C12アルコキシフェニル基、4−C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示される。アリールオキシ基としては、フェノキシ基が例示される。複素環化合物基としては2−チエニル基、2−ピロリル基、2−フリル基、2−、3−または4−ピリジル基などが例示される。これら置換基の数は、該高分子蛍光体の分子量と繰り返し単位の構成によっても異なるが、溶解性の高い高分子蛍光体を得る観点から、これらの置換基が分子量600当たり1つ以上であることがより好ましい。
【0135】
なお、前記高分子蛍光体は、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。蛍光の量子収率の高い高分子蛍光体を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロックまたはグラフト共重合体が好ましい。また、ここで形成する有機EL素子は、薄膜からの蛍光を利用することから、該高分子蛍光体は固体状態で蛍光を有するものが用いられる。
【0136】
該高分子蛍光体に対して溶媒を使用する場合に、好適なものとしては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンなどが例示される。高分子蛍光体の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1wt%以上溶解させることができる。
【0137】
また、前記高分子蛍光体としては、分子量がポリスチレン換算で103 〜107 であることが好ましく、それらの重合度は繰り返し構造やその割合によっても変わる。成膜性の点から一般には繰り返し構造の合計数で好ましくは4〜10000、更に好ましくは5〜3000、特に好ましくは10〜2000である。
【0138】
このような高分子蛍光体の合成法としては、特に限定されないものの、例えばアリーレン基にアルデヒド基が2つ結合したジアルデヒド化合物と、アリーレン基にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物とトリフェニルホスフィンとから得られるジホスホニウム塩からのWittig反応が例示される。また、他の合成法としては、アリーレン基にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物からの脱ハロゲン化水素法が例示される。更に、アリーレン基にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物のスルホニウム塩をアルカリで重合して得られる中間体から熱処理により該高分子蛍光体を得るスルホニウム塩分解法が例示される。いずれの合成法においても、モノマーとして、アリーレン基以外の骨格を有する化合物を加え、その存在割合を変えることにより、生成する高分子蛍光体に含まれる繰り返し単位の構造を変えることができるので、化学式(1)で示される繰り返し単位が50モル%以上となるように加減して仕込み、共重合してもよい。これらのうち、Wittig反応による方法が、反応の制御や収率の点で好ましい。
【0139】
更に具体的に、前記高分子蛍光体の1つの例であるアリーレンビニレン系共重合体の合成法を説明する。例えば、Wittig反応により高分子蛍光体を得る場合には、例えばまず、ビス(ハロゲン化メチル)化合物、より具体的には、例えば2,5−ジオクチルオキシ−p−キシリレンジブロミドをN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合成し、これとジアルデヒド化合物、より具体的には、例えば、テレフタルアルデヒドとを、例えばエチルアルコール中、リチウムエトキシドを用いて縮合させるWittig反応により、フェニレンビニレン基と2,5−ジオクチルオキシ−p−フェニレンビニレン基を含む高分子蛍光体が得られる。このとき、共重合体を得るために2種類以上のジホスホニウム塩および/または2種類以上のジアルデヒド化合物を反応させてもよい。
【0140】
これらの高分子蛍光体を発光層の形成材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、合成後、再沈精製、クロマトグラフによる分別等の純化処理をすることが望ましい。
【0141】
また、前記の高分子蛍光体からなる発光層の形成材料としては、フルカラー表示をなすため、赤、緑、青の三色の発光層形成材料が用いられ、それぞれが所定のパターニング装置(インクジェット装置)によって予め設定された位置の画素ARに射出され、パターニングされる。
【0142】
なお、前記の発光物質としては、ホスト材料にゲスト材料を添加した形態のものを用いることもできる。
【0143】
このような発光材料としては、ホスト材料として例えば高分子有機化合物や低分子材料が、またゲスト材料として得られる発光層の発光特性を変化させるための蛍光色素、あるいは燐光物質を含んでなるものが好適に用いられる。
【0144】
高分子有機化合物としては、溶解性の低い材料の場合、例えば前駆体が塗布された後、以下の化学式(3)に示すように加熱硬化されることによって共役系高分子有機EL層となる発光層を生成し得るものがある。例えば、前駆体のスルホニウム塩の場合、加熱処理されることによりスルホニウム基が脱離し、共役系高分子有機化合物となるもの等がある。
【0145】
また、溶解性の高い材料では、材料をそのまま塗布した後、溶媒を除去して発光層にし得るものもある。
【0146】
【化2】

【0147】
前記の高分子有機化合物は固体で強い蛍光を持ち、均質な固体超薄膜を形成することができる。しかも、形成能に富みITO電極との密着性も高く、更に、固化した後は強固な共役系高分子膜を形成する。
【0148】
このような高分子有機化合物としては、例えばポリアリーレンビニレンが好ましい。ポリアリーレンビニレンは水系溶媒あるいは有機溶媒に可溶で第2の基体11に塗布する際の塗布液への調製が容易であり、更に一定条件下でポリマー化することができるため、光学的にも高品質の薄膜を得ることができる。
【0149】
このようなポリアリーレンビニレンとしては、PPV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))、MO−PPV(ポリ(2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレンビニレン))、CN−PPV(ポリ(2,5−ビスヘキシルオキシ−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)))、MEH−PPV(ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)]−パラ−フェニレンビニレン)、等のPPV誘導体、PTV(ポリ(2,5−チエニレンビニレン))等のポリ(アルキルチオフェン)、PFV(ポリ(2,5−フリレンビニレン))、ポリ(パラフェニレン)、ポリアルキルフルオレン等が挙げられるが、なかでも化学式(4)に示すようなPPVまたはPPV誘導体の前駆体からなるものや、化学式(5)に示すようなポリアルキルフルオレン(具体的には化学式(6)に示すようなポリアルキルフルオレン系共重合体)が特に好ましい。
【0150】
PPV等は強い蛍光を持ち、二重結合を形成するπ電子がポリマー鎖上で非極在化している導電性高分子でもあるため、高性能の有機EL素子を得ることができる。
【0151】
【化3】

【0152】
【化4】

【0153】
【化5】

【0154】
なお、前記PPV薄膜の他に発光層を形成し得る高分子有機化合物や低分子材料、すなわち本例においてホスト材料として用いられるものは、例えばアルミキノリノール錯体(Alq3)やジスチリルビフェニル、更に化学式(7)に示すBeBqやZn(OXZ)2 、そしてTPD、ALO、DPVBi等の従来より一般的に用いられているものに加え、ピラゾリンダイマー、キノリジンカルボン酸、ベンゾピリリウムパークロレート、ベンゾピラノキノリジン、ルブレン、フェナントロリンユウロピウム錯体等が挙げられ、これらの1種または2種以上を含む有機EL素子用組成物を用いることができる。
【0155】
【化6】

【0156】
一方、このようなホスト材料に添加されるゲスト材料としては、前記したように蛍光色素や燐光物質が挙げられる。特に蛍光色素は、発光層の発光特性を変化させることができ、例えば、発光層の発光効率の向上、または光吸収極大波長(発光色)を変えるための手段としても有効である。すなわち、蛍光色素は単に発光層材料としてではなく、発光機能そのものを担う色素材料として利用することができる。例えば、共役系高分子有機化合物分子上のキャリア再結合で生成したエキシトンのエネルギーを蛍光色素分子上に移すことができる。この場合、発光は蛍光量子効率が高い蛍光色素分子からのみ起こるため、発光層の電流量子効率も増加する。したがって、発光層の形成材料中に蛍光色素を加えることにより、同時に発光層の発光スペクトルも蛍光分子のものとなるので、発光色を変えるための手段としても有効となる。
【0157】
なお、ここでいう電流量子効率とは、発光機能に基づいて発光性能を考察するための尺度であって、下記式により定義される。
【0158】
ηE =放出されるフォトンのエネルギー/入力電気エネルギー
そして、蛍光色素のドープによる光吸収極大波長の変換によって、例えば赤、青、緑の3原色を発光させることができ、その結果フルカラー表示体を得ることが可能となる。
【0159】
更に蛍光色素をドーピングすることにより、有機EL素子の発光効率を大幅に向上させることができる。
【0160】
蛍光色素としては、赤色の発色光を発光する発光層を形成する場合、レーザ色素のDCM−1、あるいはローダミンまたはローダミン誘導体、ペニレン等を用いるのが好ましい。これらの蛍光色素をPPVなどホスト材料にドープすることにより、発光層を形成することができるが、これらの蛍光色素は水溶性のものが多いので、水溶性を有するPPV前駆体であるスルホニウム塩にドープし、その後、加熱処理すれば、より均一な発光層の形成が可能になる。このような蛍光色素として具体的には、ローダミンB、ローダミンBベース、ローダミン6G、ローダミン101過塩素酸塩等が挙げられ、これらを2種以上混合したものであってもよい。
【0161】
また、緑色の発色光を発光する発光層を形成する場合、キナクリドン、ルブレン、DCJTおよびその誘導体を用いるのが好ましい。これらの蛍光色素についても、前記の蛍光色素と同様、PPVなどホスト材料にドープすることにより、発光層を形成することができるが、これらの蛍光色素は水溶性のものが多いので、水溶性を有するPPV前駆体であるスルホニウム塩にドープし、その後、加熱処理すれば、より均一な発光層の形成が可能になる。
【0162】
更に、青色の発色光を発光する発光層を形成する場合、ジスチリルビフェニルおよびその誘導体を用いるのが好ましい。これらの蛍光色素についても、前記の蛍光色素と同様、PPVなどホスト材料にドープすることにより、発光層を形成することができるが、これらの蛍光色素は水溶性のものが多いので、水溶性を有するPPV前駆体であるスルホニウム塩にドープし、その後、加熱処理すれば、より均一な発光層の形成が可能になる。
【0163】
また、青色の発色光を有する他の蛍光色素としては、クマリンおよびその誘導体を挙げることができる。これらの蛍光色素は、PPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。また、これらのうち特にクマリンは、それ自体は溶媒に不溶であるものの、置換基を適宜に選択することによって溶解性を増し、溶媒に可溶となるものもある。このような蛍光色素として具体的には、クマリン−1、クマリン−6、クマリン−7、クマリン120、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン311、クマリン314、クマリン334、クマリン337、クマリン343等が挙げられる。
【0164】
更に、別の青色の発色光を有する蛍光色素としては、テトラフェニルブタジエン(TPB)またはTPB誘導体、DPVBi等を挙げることができる。これらの蛍光色素は、前記赤色蛍光色素等と同様に水溶液に可溶であり、またPPVと相溶性がよく発光層の形成が容易である。
【0165】
以上の蛍光色素については、各色ともに1種のみを用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0166】
なお、このような蛍光色素としては、化学式(8)に示すようなものや、化学式(9)に示すようなもの、更に化学式(10)に示すようなものが用いられる。
【0167】
【化7】

【0168】
【化8】

【0169】
【化9】

【0170】
これらの蛍光色素については、前記共役系高分子有機化合物等からなるホスト材料に対し、後述する方法によって0.5〜10wt%添加するのが好ましく、1.0〜5.0wt%添加するのがより好ましい。蛍光色素の添加量が多過ぎると得られる発光層の耐候性および耐久性の維持が困難となり、一方、添加量が少な過ぎると、前述したような蛍光色素を加えることによる効果が十分に得られないからである。
【0171】
また、ホスト材料に添加されるゲスト材料としての燐光物質としては、化学式(11)に示すIr(ppy)3 、Pt(thpy)2 、PtOEPなどが好適に用いられる。
【0172】
【化10】

【0173】
なお、前記の化学式(11)に示した燐光物質をゲスト材料とした場合、ホスト材料としては、特に化学式(12)に示すCBP、DCTA、TCPBや、前記したDPVBi、Alq3が好適に用いられる。
【0174】
また、前記蛍光色素と燐光物質については、これらを共にゲスト材料としてホスト材料に添加するようにしてもよい。
【0175】
【化11】

【0176】
なお、このようなホスト/ゲスト系の発光物質によって発光層60を形成する場合、例えば予めパターニング装置(インクジェット装置)にノズル等の材料供給系を複数形成しておき、これらノズルからホスト材料とゲスト材料とを予め設定した量比で同時に吐出させることにより、ホスト材料に所望する量のゲスト材料が添加されてなる発光物質による、発光層60を形成することができる。
【0177】
発光層60は、正孔注入/輸送層70の形成方法と同様の手順で形成される。すなわち、インクジェット法によって発光層材料を含む組成物インクを正孔注入/輸送層70の上面に吐出した後に、乾燥処理及び熱処理を行うことにより、第3絶縁層221に形成された開口部221a内部の正孔注入/輸送層70上に発光層60が形成される。この発光層形成工程も上述したように不活性ガス雰囲気化で行われる。吐出された組成物インクは撥インク処理された領域ではじかれるので、インク滴が所定の吐出位置からはずれたとしても、はじかれたインク滴が第3絶縁層221の開口部221a内に転がり込む。
【0178】
電子輸送層50は発光層60の上面に形成される。電子輸送層50も発光層60の形成方法と同様、インクジェット法により形成される。電子輸送層50の形成材料としては、特に限定されることなく、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等が例示される。具体的には、先の正孔輸送層の形成材料と同様に、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。
【0179】
なお、前述した正孔注入/輸送層70の形成材料や電子輸送層50の形成材料を発光層60の形成材料に混合し、発光層形成材料として使用してもよく、その場合に、正孔注入/輸送層形成材料や電子輸送層形成材料の使用量については、使用する化合物の種類等によっても異なるものの、十分な成膜性と発光特性を阻害しない量範囲でそれらを考慮して適宜決定される。通常は、発光層形成材料に対して1〜40重量%とされ、更に好ましくは2〜30重量%とされる。
【0180】
なお、正孔注入/輸送層70や電子輸送層50などは、インクジェット法に限らず、マスク蒸着法を用いて形成することも可能である。
【0181】
陰極222は、電子輸送層50及び第3絶縁層221の表面全体、あるいはストライプ状に形成されている。陰極222については、もちろんAl、Mg、Li、Caなどの単体材料やMg:Ag(10:1合金)の合金材料からなる1層で形成してもよいが、2層あるいは3層からなる金属(合金を含む。)層として形成してもよい。具体的には、Li2 O(0.5nm程度)/AlやLiF(0.5nm程度)/Al、MgF2 /Alといった積層構造のものも使用可能である。陰極222は上述した金属からなる薄膜であり、光を透過可能である。
【0182】
封止層20は、外部から有機EL素子に対して大気が侵入するのを遮断するものであって、バリア層285と陰極222の表面を覆うように形成されている。封止層20を構成する材料としては、セラミックや窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素などが用いられ、また、封止層20は、第1層間絶縁層283と同様の手段により形成される。封止層20は、バリア層285と同様の材料を用いて構成することも有効である。
【0183】
以上説明したように、TFT22、24の各電極間や、これらの電極と接続された各配線(例えば走査線131、信号線132、発光用電源配線133等)間に低誘電率材料からなる絶縁膜を設けたので、各電極間又は各配線間に生じる寄生容量を小さくすることができる。これにより、TFT22、24に供給される駆動信号のアイソレーションが確保され、発光層60を精度良く駆動することができる。また、寄生容量が小さくなることにより、より高い周波数の駆動信号によりTFT22、24を動作させることができる。
【0184】
特に画素電極に対向する共通電極(上記の例では、陰極222)などのように所定の電位に固定された電極 または配線と、信号線または走査線など、変化する電気信号を供給する信号配線と、の間に低誘電率層を配することにより当該信号配線に対する容量の寄与が低減され、電気信号の信号の鈍りまたは遅延等の問題を克服することが可能となる。
【0185】
したがって、電気光学装置1では、安定した表示動作と表示領域の大型(大画面)化を実現できる。
【0186】
また、TFT22、24を覆うようにバリア層285を形成したことにより、金属成分、大気中のガス、水分等の侵入による能動素子の劣化を防止することができ、電気光学装置1では、長期にわたって安定した表示動作を実現できる。
【0187】
特に、上記の低誘電率層は概して多孔性であるので、金属成分、大気中のガス、水分等の素子劣化の因子の侵入が起こりやすいので、上記の例のように素子劣化の発生源(例えば、上記の例では陰極222)と能動素子との間にバリア層と低誘電率層とを配置することにより、電気信号の信号の鈍りまたは遅延等の低減という効果と、電気光学装置の長期間安定性という効果を両立することができる。
【0188】
また、陰極222の上方を覆うように封止層20を形成したことにより、発光層60に対する外部からの金属成分、大気中のガス、水分等の侵入を防ぎ、陰極222及び発光層60の劣化を防止することができ、電気光学装置1では、長期にわたって安定した表示動作を実現できる。
【0189】
なお、上記実施形態においては、第1層間絶縁層283、第2層間絶縁層284のそれぞれを多孔質体等の低誘電体材料で形成したが、これら全ての層を低誘電体材料で形成する必要はなく、少なくともいずれか1つの層だけ低誘電体材料で形成してもよい。
【0190】
また、本実施形態では、バリア層285を第1層間絶縁層283の上方に形成したが、第2層間絶縁層284の上方に形成しても同様の効果が得られる。
【0191】
更に、バリア層285の配置と、第1層間絶縁層283及び第2層間絶縁層284を形成する材料の種類を適宜組み合わせることにより電気光学装置1を構成することができる。
【0192】
なお、前記の正孔注入/輸送層70、発光層60、電子輸送層50に加えて、ホールブロッキング層を例えば発光層60の対向電極222側に形成して、発光層60の長寿命化を図ってもよい。このようなホールブロッキング層の形成材料としては、例えば化学式(13)に示すBCPや化学式(14)で示すBAlqが用いられるが、長寿命化の点ではBAlqの方が好ましい。
【0193】
【化12】

【0194】
【化13】

【0195】
次に、上記実施形態による電気光学装置を備えた電子機器の例について説明する。
【0196】
図4は、携帯電話の一例を示した斜視図である。この図において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の電気光学装置を用いた表示部を示している。
【0197】
図5は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。この図において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は上記の電気光学装置を用いた表示部を示している。
【0198】
図6は、ワープロ、パソコン等の携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。この図において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボード等の入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は上記の電気光学装置を用いた表示部を示している。
【0199】
図4〜図6に示す電子機器は、上記実施形態による電気光学装置を備えているので、配線間や電極間の寄生容量が低減され、安定した表示動作が可能な電子機器を実現できる。
【0200】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施の形態では、有機EL素子の構成として発光層と正孔輸送層とを一対の電極で挟持した例を挙げたが、発光層や正孔輸送層の他、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層等の各種の機能を有する有機層を挿入してもよい。その他、実施の形態で挙げた具体的な材料等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0201】
また、本実施形態による表示装置1の構成において、発光層60を液晶層等、その他の光学表示物質に置き換えることが可能である。
【0202】
また、本実施形態においては、表示装置1がTFT22、24が配置された基板2側から光を取り出すいわゆるバックエミッション型について説明したが、これに限定されず、TFT22、24が配置された基板2とは反対側から光を取り出すいわゆるトップエミッション型の表示装置であっても良い。
〔発明の効果〕
【0203】
本発明によれば、能動素子の電極間、又は該電極と接続された配線間を絶縁する絶縁膜が、所定の値以下の誘電率を有する絶縁材料からなる絶縁膜を含んでいるので、電極間又は配線間に生じる寄生容量を小さくすることができる。これにより、各能動素子に供給される駆動信号間のアイソレーションが確保され、各能動素子により電気光学素子を精度良く駆動することができる。また、寄生容量が小さくなることにより、より高い周波数の駆動信号により各能動素子を動作させることができる。したがって、安定した表示動作が可能であり、かつ表示領域の大きな電気光学装置を実現できる。
【0204】
また、能動素子を覆うように保護層(第1の保護層)が形成するようにすれば、金属成分、大気中のガス、水分等の侵入による能動素子の劣化を防止することができ、長期にわたって安定した動作が可能な回路基板や電気光学装置を実現できる。
【0205】
また、陰極を覆うように第2の保護層を形成するようにすれば、電気光学素子に対する外部からの金属成分、大気中のガス、水分等の侵入を防ぎ、電気光学素子の劣化を防止することができ、長期にわたって安定した表示動作が可能な電気光学装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】本発明の電気光学装置の一実施形態を示す図であって、有機EL表示装置に適用した例を示す概略構成図である。
【図2】図1の表示装置における画素部の平面構造を示す拡大図である。
【図3】本発明の電気光学装置の一実施形態を示す図であって、図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】本発明の電気光学装置を備えた電子機器の一例を示す図である。
【図5】本発明の電気光学装置を備えた電子機器の一例を示す図である。
【図6】本発明の電気光学装置を備えた電子機器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0207】
1 電気光学装置
2 基板
3 有機エレクトロルミネッセンス素子(電気光学素子)
20 封止層(第2の保護層)
22 スイッチングTFT(能動素子)
23 画素電極(陽極)
24 カレントTFT(能動素子)
131 走査線(配線)
132 信号線(配線)
133 発光用電源配線(配線)
222 陰極
283 第1層間絶縁層(絶縁膜)
284 第2層間絶縁層(絶縁膜)
285 バリア層(保護層、第1の保護層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する基板と、
前記基板の上方に配置された能動素子と、
前記能動素子を駆動する電気信号又は前記能動素子を駆動する駆動電力を供給する配線と、
第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上方に形成された第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上方に形成された電極と、を含み、
前記能動素子と前記電極とは、少なくとも前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜にわたって設けられたコンタクトホールを介して接続されており、
前記第1の絶縁膜の誘電率は前記基板の誘電率よりも低いこと、
を特徴とする回路基板。
【請求項2】
絶縁性を有する基板と、
前記基板の上方に配置された能動素子と、
前記能動素子を駆動する電気信号又は前記能動素子を駆動する駆動電力を供給する配線と、
第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上方に形成された第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上方に形成された電極と、を含み、
前記能動素子はトランジスタであり、
前記トランジスタに含まれる半導体膜は、少なくとも前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜にわたって設けられたコンタクトホールを介して、前記電極に接続されており、
前記第1の絶縁膜の誘電率は前記基板の誘電率よりも低いこと、
を特徴とする回路基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路基板において、
さらに前記基板と前記第1の絶縁膜との間に配置された第3の絶縁膜を含むこと、
を特徴とする回路基板。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の回路基板において、
前記第1の絶縁膜の誘電率が3以下であること、
を特徴とする回路基板。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の回路基板において、
前記第1の絶縁膜の誘電率が2.5以下であること、
を特徴とする回路基板。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の回路基板において、
前記前記第2の絶縁膜と前記電極との間に設けられた第4の絶縁膜をさらに含んでいること、
を特徴とする回路基板。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の回路基板において、
前記第1の絶縁膜に含まれる絶縁材料は、多孔質体、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー、多孔性ポリマーのうち少なくとも1つであること、
を特徴とする回路基板。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の回路基板において、
前記第1の絶縁膜に含まれる絶縁材料は、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうち何れかを含むスピンオンガラス膜、ダイヤモンド膜、フッ素化アモルファス炭素膜のうち少なくとも1つであること、
を特徴とする回路基板。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の回路基板において、
前記第1の絶縁膜は、所定の材料に無機微粒子及び有機微粒子の少なくともいずれか一方を含んでいること、
を特徴とする回路基板。
【請求項10】
請求項9に記載の回路基板において、
前記第1の絶縁膜は、フッ化マグネシウムの微粒子を分散したゲルを含むこと、
を特徴とする回路基板。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の回路基板において、
前記第2の絶縁膜は、前記能動素子を覆っていること、
を特徴とする回路基板。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の回路基板において、
前記第2の絶縁膜は、乾燥剤及び化学吸着剤のうち少なくともいずれか一方を含有したものであること、
を特徴とする回路基板。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れかに記載の回路基板において、
前記第2の絶縁膜は、セラミック、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素のうち少なくとも1つを含むこと、
を特徴とする回路基板。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れかに記載の回路基板において、
前記第2の絶縁膜は、ホウ素、炭素、窒素、アルミニウム、リン、珪素、セリウム、イッテルビウム、サマリウム、エルビウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、ジスプロシウム、ネオジウム、酸素、酸化バリウム、酸化カルシウム、活性炭、及びゼオライトのうち少なくとも1つを含むこと、
を特徴とする回路基板。
【請求項15】
請求項6に記載の回路基板において、
前記第4の絶縁膜の誘電率は4以下であること、
を特徴とする回路基板。
【請求項16】
請求項6に記載の回路基板において、
前記第4の絶縁膜の誘電率は3.5以下であること、
を特徴とする回路基板。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れかに記載の回路基板と、
電気光学素子と、を備えたこと、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項18】
基板と、
前記基板の上方に形成された第1の電極と第2の電極との間に設けられた電気光学素子と、
前記第1の電極と前記基板との間に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と前記第1の電極との間に形成された第2の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と前記基板との間に配置された第3の絶縁膜と、を含み、
前記第1の絶縁膜の誘電率は4以下であること、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項19】
基板と、
前記基板の上方に形成された第1の電極と第2の電極との間に設けられた電気光学素子と、
前記第1の電極と前記基板との間に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と前記第1の電極との間に形成された第2の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と前記基板との間に配置された第3の絶縁膜と、を含み、
前記第1の絶縁膜の誘電率は3以下であること、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の電気光学装置において、
さらに前記電気光学素子を駆動する能動素子を含んでいること
を特徴とする電気光学装置。
【請求項21】
請求項20に記載の電気光学装置において、
前記第2の絶縁膜は可動イオン又は水分から前記能動素子を保護すること、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項22】
請求項18乃至21のいずれかに記載の電気光学装置において、
前記第2の絶縁膜は、乾燥剤及び化学吸着剤のうち少なくともいずれか一方を含有したものであること、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項23】
請求項18乃至22の何れかに記載の電気光学装置において、
前記第2の絶縁膜は、セラミック、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素のうち少なくとも1つからなること、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項24】
請求項18乃至23の何れかに記載の電気光学装置において、
前記第2の絶縁膜は、ホウ素、炭素、窒素、アルミニウム、リン、珪素、セリウム、イッテルビウム、サマリウム、エルビウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、ジスプロシウム、ネオジウム、酸素、酸化バリウム、酸化カルシウム、活性炭、及びゼオライトのうち少なくとも1つを含むこと、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項25】
前記電気光学素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であること、
を特徴とする請求項18乃至24の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項26】
請求項18乃至25の何れかに記載の電気光学装置において、
さらに、前記第2の電極の上方に形成された封止層を含み、
前記封止層は、セラミック、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び酸化珪素のうち少なくとも1つからなること、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項27】
請求項18乃至25の何れかに記載の電気光学装置において、
前記第2の電極の上方に保護膜を備えていること、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項28】
請求項27に記載の電気光学装置において、
前記保護膜は、乾燥剤及び化学吸着剤のうち少なくともいずれか一方を含有していること、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項29】
請求項18乃至28の何れかに記載の電気光学装置において、
前記電気光学素子で発した光は、前記基板の側から前記電気光学装置の外に取り出されること、
を特徴とする電気光学装置。
【請求項30】
請求項1乃至16の何れかに記載の回路基板又は請求項17乃至29の何れかに記載の電気光学装置を備えること、
を特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−65325(P2006−65325A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232004(P2005−232004)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【分割の表示】特願2003−22022(P2003−22022)の分割
【原出願日】平成15年1月30日(2003.1.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】