説明

太陽電池およびそれを製造するための方法

本発明は、最初に開口部をパッシベーション層の中に形成し、次いで、これらの開口部を導電性材料で充填することによって、温度に敏感なパッシベーション層の1つまたは複数の層を含むソーラーウェーハの接触を行なう方法に関する。このようにして、1つまたは複数のパッシベーション層を含むソーラーウェーハの接触を行なうための従来方法で必要とされる相対的な高温度を回避できるようになり、したがって、接触期間中およびその後において、新しく開発された温度に敏感なパッシベーション層の優れたパッシベーション特性を維持できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池の製造に関する。より詳細には、本発明は、太陽電池のエネルギー変換効率の向上を達成するための考え方、および、効率を向上させたこうした太陽電池を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
裸のシリコン試料は多くの表面状態を含んでおり、注入され、または、光により発生した少数キャリアはその場所で再結合する場合があることが広く知られている。したがって、シリコンベースの太陽電池の中などの、少数キャリアの到達が効率的な動作をする上で必須であるデバイスにとって、表面パッシベーション技法による表面再結合速度の減少は致命的な問題である。
【0003】
シリコンベースの太陽電池のパッシベーションにおける最近の発展は、アモルファスシリコン膜と窒化シリコン膜とをシリコンウェーハの表面上で組み合わせて使用するという、極めて有望な結果を示している。シリコンベースの太陽電池のこの組み合わせられたパッシベーションの使用は、特許文献1に開示されている。より詳細には、この特許出願1は、1〜20nmの範囲の厚さを有するアモルファスシリコンの第1層を堆積し、この後で、1.9〜2.3の範囲の屈折率を有する窒化シリコン層を堆積することを開示している。両方の層をPECVD(プラズマ促進化学蒸着)によって堆積でき、太陽電池の少なくとも受光側に適用すべきである。
【0004】
本発明者らは、2番目の窒化シリコン層の堆積の後にアニーリング工程を導入することによって、特許文献1のパッシベーション技法を改良した。この技法は、特許文献2、および、非特許文献1(Andreas Bentzenらの論文)に開示されている。両文書は参照により本出願に組み込まれている。実効再結合寿命時間に及ぼすアニーリングの効果についての彼らの研究は、約300℃〜約550℃の範囲の温度でのアニーリングが、再結合寿命時間を著しく延ばし、約500℃で最大の効果が存在することを示した。このウィンドウよりも下または上の温度では、再結合寿命時間は著しく短くなった。再結合寿命時間の延伸は、シリコン基板とアモルファスシリコン膜との境界領域の近くのシリコン基板の中に、水素が拡散することによると考えられている。パッシベーション層が約550℃より上の温度にアニールまたは加熱された場合の再結合寿命時間の減少は、シリコン基板内の水素の流出に起因して境界領域内に形成された欠陥によるものであることが示された。
【0005】
上記に示された多くのパッシベーション技法/層の温度に対する敏感さは、次に続くソーラーウェーハのソーラーパネルへの加工に対する厄介な制約を表している。例えば、現在のところは従来方法のウェーハとの接触(コンタクト)を行なう方法は、金属相およびガラス粒子を含んだペーストをパッシベーション層と共にソーラーウェーハの上にスクリーン印刷する段階と、次いで、ウェーハを約900℃の温度まで加熱する段階とを含む。こうした高温度では、ペーストはパッシベーション層を貫いてその道をエッチングし、下にあるシリコン基板に接触するとすぐにシリコン基板との電気接触を確立する金属相を形成する。しかし、こうした高温度は、現在のところ最善であると考えられている多くのパッシベーション技法にとって、受け容れることができない。
【特許文献1】韓国特許出願第2002−0018204号明細書
【特許文献2】米国仮出願第60/671081号明細書
【非特許文献1】Andreas Bentzen ct al. "Surface Passivation of Silicon Solar Cells by Amorphous Silicon/Silicon Nitride Dual Layers", presented at 15th lnternational Photovoltaic Science & Engineering Conference (PVSEC-15), Shanghai, China, 19th May 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主たる目的は、熱処理に敏感な堆積層で表面パッシベーションされたシリコンウェーハとの接触を行なう方法を提供することである。
【0007】
さらなる目的は、アモルファスシリコンの第1層と窒化シリコンの第2層とを堆積させることに基づく優れた表面パッシベーションを備えた、新規のシリコンをベースとした太陽電池を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、本発明の以下の説明、および/または、添付の特許請求の範囲に記載された特徴によって得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、パッシベーション層として機能を発揮する1つまたは複数の薄い誘電体、絶縁体、または半導体の層を含むソーラーウェーハとの接触が、最初にパッシベーション層の中に局部的な開口部を形成し、次いで、この開口部を、下にあるシリコン基板との電気接触を得るために、例えば電気めっき技法を使用して金属相で充填することによって得られるという認識に基づいている。このようにして、1つまたは複数のパッシベーション層を含むソーラーウェーハとの接触を行なうために、従来の方法で必要とされている相対的な高温度を回避できるようになり、したがって、パッシベーション層の優れたパッシベーション特性を、接触を行なっている期間およびその後にも維持することができる。
【0010】
1つまたは複数のパッシベーション層の開口部を、例えば、化学薬剤がソーラーウェーハの少なくとも1つの表面上の特定の局部領域でパッシベーション層を溶解するエッチング技法を使用して得ることができ、これは、エッチング剤のインクジェット印刷、エッチング剤のスクリーン印刷、化学レジストをスクリーン印刷した後でソーラーウェーハをエッチング液に浸漬させる、などによって得ることができる。化学的エッチング剤は、希釈または濃縮したHF、KOH、NaOH、または、HFとHNOとCHCOOHを含む混合液、からなることができるが、これらに限定されない。パッシベーション層の中に開口部を得る代替の方法は、例えばレーザービームに当てることによってパッシベーション層を焼き払う局所加熱とすることもできる。
【0011】
1つまたは複数のパッシベーション層は、少なくとも第1面(太陽光を受光する面)に適用すべきであるが、ソーラーウェーハの反対側(背面)に適用してもよい。パッシベーション層という用語は、シリコンウェーハの表面で再結合寿命時間を延ばす薄い誘電体、絶縁体または半導体の性質を持つ化合物の少なくとも1つの層を意味している。パッシベーション層は、同一の化学組成を持つ1つまたは複数の層とすることができ、あるいは、異なる化学組成の2以上の層とすることもできる。ソーラーウェーハの第2面のパッシベーション層は、第1面の1つまたは複数の層と類似の構成を持っても、持たなくてもよい。さらに、層のパッシベーション効果を破壊しない温度で例えばレーザービームでの局所加熱、化学エッチングなどによって層に局部的に孔を開けられる限り、パッシベーション層の選択は重要でない。したがって、パッシベーション層として機能を発揮する、この条件を満たす全ての現在知られている、および、未だ発見されていない誘電体、絶縁体または半導体の性質を持つ層を使用することができる。好適なパッシベーション層の例は、アモルファスシリコン、アモルファス窒化シリコン、酸化シリコン、またはこれらの組み合わせである。1つまたは複数のパッシベーション層の堆積のための好適な方法の例には、プラズマ促進化学蒸着、低温化学蒸着、低圧化学蒸着、または、スパッタリングが含まれるがこれらに限定されない。
【0012】
上述したように、開口部を1つまたは複数の表面パッシベーション層の中に形成した後で、これらの開口部を、1つまたは複数のパッシベーション層の下方のシリコン基板と電気接触を取るために導電性材料で充填しなければならない。これは、例えば、ニッケル、銀、銅、および/またはスズ、あるいはこれら材料の任意の組み合わせの無電解めっき、または、電気めっきによって得ることができる。本発明は金属のこれらの選択肢に限定されず、本発明を、下にあるシリコン基板と優れた電気接触を形成し、且つ、接触を形成した後でソーラーパネルおよび後続の製造工程の期待寿命期間にわたって、紫外光と、約150〜250℃までの温度と、ソーラーパネルの通常の使用に伴う任意の他の破壊的な力/物理的条件とに対する耐性がある、任意の材料に適用することができる。これは、知られている導電性プラスチックおよび/または炭素ポリマーなどの他のポリマー配合物を含んでもよい。同じ接触材料がウェーハの両方の面で使用できるが、または、各面で異なる接触材料を使用することもできる。接触を形成するために使用される材料の必要とされる電導度についてはいかなる制約も課せられていないが、それは、この要件が、接触が行なわれるべき太陽電池/パネルの幾何学的形状と寸法とに強く依存するためであり、当業者は必要とされる伝導度はどれ位であるかは知っているであろう。
【0013】
場合によっては、例えば金属含有ペーストをめっきされた接点の上部にインクジェット印刷またはスクリーン印刷して金属接点を形成し、続いて、パッシベーション層を不可逆的に劣化させることのない十分に低い温度で加熱することによって、電気接触を補強することができる。さらに、ソーラーウェーハの接触箇所の他の任意の補強は1つまたは複数のパッシベーション層を付ける前に、金属含有ペーストをウェーハの上に直接、例えばインクジェット印刷またはスクリーン印刷することによって、接点を形成することである。本発明の好適な実施形態において、第1面に印刷されたペーストは銀粒子を含み、第2面に印刷されたペーストはアルミニウム粒子を含む。ペーストの印刷の後で、ペーストは1000℃までの温度でアニーリングすることによって焼結される。これらの接点が形成されると、次いで、上述したように、接点を含む全体のソーラーウェーハに1つまたは複数のパッシベーション層が堆積される。次いで、接点を覆っているパッシベーション層が上述したように除去され、金属ベースのペーストの開口部の中へのインクジェット印刷またはスクリーン印刷によって開口部が充填され、続いて、1つまたは複数のパッシベーション層にとって有害な温度を超えない温度でアニールされる。代替として、アルミニウムをベースにした金属接点が、アルミニウム層のスパッタリングか蒸着のいずれかによって開口部を含む第2面の全体を覆って形成でき、あるいは、アルミニウムをベースにした金属ペーストのスクリーン印刷によって開口部を含む第2面の全体を覆って形成できる。次いで、場合により、この試料は、1つまたは複数のパッシベーション層にとって有害な温度を超えない温度でアニールされる。
【0014】
パッシベーション効果は、窒化シリコン膜を使用している場合は300〜350℃で、アモルファスシリコン膜については400℃未満で、アモルファスシリコン膜と窒化シリコン膜との組合せに対しては500℃未満で、不可逆的に劣化させられることが報告されている。
【0015】
本発明の第2の態様において、ソーラーウェーハの第2面(背面)との接触は、約30〜50マイクロメートルの範囲の厚さの薄いアルミニウムを含有した層を1つまたは複数のパッシベーション層の最上部に堆積させ、次いで、アルミニウム層が1つまたは複数のパッシベーション層を貫いて「焼いて」下にあるシリコン基板と電気的接触を確立するまで、アルミニウム層の特定領域を局部的に加熱することによって、得ることができる。アルミニウム含有層を堆積する方法は、室温から約200℃までの温度で第2面の全体を覆ってアルミニウム層をスパッタリングまたは堆積する方法、または、第2面の全体を覆ったアルミニウムベースの金属ペーストのスクリーン印刷による方法を含むが、これらに限定されない。アルミニウム含有ペーストをスクリーン印刷する場合には、アルミニウム粒子を含有し、ガラス粒子を含むかまたは含まなくてもよい商用の厚膜ペーストの使用と、続いて400℃より高温で任意の有機溶剤を焼き飛ばす方法が知られている。接点へと形成されてゆくべき領域の局部加熱は、針または「突起」を備えた加熱部材を、部分的に加工された太陽電池の第2表面に物理的に接触させて得ることができる。好適には、部分的に加工された太陽電池を、接点の加熱中、第1面ならびに接点が形成される予定のない第2面の領域に接触させた冷却部材によって冷却すべきである。代替として、部分的に加工された太陽電池の第2面を、冷却部材の開口部を通じて、近くに近接させた熱源からの赤外放射によって加熱することもできる。冷却部材は部分的に加工された太陽電池の第二面と物理的に接触し、局部加熱が冷却部材の開口部の範囲内で主に生じることを確実にしている。好適には、また、部分的に加工された太陽電池は、第1面に物理的に接触している冷却部材によっても冷却されるべきである。部分的に加工された太陽電池の第2面を局部的に加熱する他の代替の方法は、レーザービームの使用によるものであってもよい。
【0016】
本発明は、熱的に穏やかな方法でウェーハとの接触を行なう方法、および、これらの方法によって形成されたウェーハに関する。したがって、本発明は、Si、Geおよび他の半導体金属の単結晶ウェーハ、多結晶ウェーハを含む任意の知られた半導体ウェーハに関して機能を発揮する。さらに、p−n接合またはn−p接合を形成するためのドープ元素について、あるいは、ドープ層または半導体基板などの物理的寸法についての選択に関して何ら制約がない。ウェーハは、片側だけがドープされても、または、両側にドープされた層を有してもよい。材料の選択ならびにウェーハの寸法決めおよび製造は当業者に知られており、さらなる説明は不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を好適な実施形態の形式でより詳細に説明するが、好適な実施形態は決して本発明のアイデアを限定するものと考えるべきではなく、そのアイデアは、最初にパッシベーション層の中に開口部を準備し、次いで、残りのパッシベーション層のパッシベーション効果に害になる温度を含まない加工工程によって、下にあるシリコン基板と電気接点を形成する導電性材料でこれらの開口部を充填することによって接触を得るというものである。本ソーラーパネルの好適な実施形態は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンのブロックで作ることができるシリコンウェーハに基づく。ソーラー・グレード・シリコン(Solar grade silicon)がコストの考慮により好適な材料として選択されるが、本発明は他の半導体材料を使用しても機能を発揮することを強調しておきたい。表面パッシベーションをすぐに行なえるように作られたウェーハを得るための全ての製造工程は本発明には関連がないので、したがって、本特許出願の中では説明を加えない。
【0018】
[本発明の第1の好適な実施形態]
本発明の第1の好適な実施形態は、本発明による好適な太陽電池の好適な製造方法である。これは、図1の部分a)、b)およびc)のそれぞれ異なる加工工程における半導体ウェーハの断面図によって概略的に表される。
【0019】
図1の部分a)には、表面パッシベーション層の堆積直後のシリコン半導体ウェーハの断面図を示す。ウェーハは、p−n接合またはn−p接合を形成するためにウェーハ(10)の第1面で、一方の型の導電性を持つ薄い拡散層(11)を含んだ他方の型(p−型またはn−型)の導電性を持つ1つの層(10)を備える。また、この図には、ウェーハ(10)の第1面で一方の型の導電性を持つ薄い拡散層(11)と、ウェーハ(10)の他方の面で他方の型の導電性を持つ薄い拡散層(12)とを備えた一方の型(p−型またはn−型)の導電性を持つ代替のウェーハ(10)も示す。第1の好適な実施形態において、1つのドープ層(11)だけ、または、1つのドープ層(11)と1つのドープ層(12)、のどちらを使用するかは任意である。
【0020】
第1の好適な実施形態における表面パッシベーションは次のようにして得る。即ち、ウェーハ(10、11、12)を、HSOとHとの混合液か、HCLとHとHOとの混合液か、NHOHとHとHOとの混合液化かに浸漬させ、その後で、希釈したHF中で酸化物を除去することによって洗浄する。次いで、これらのウェーハをプラズマ促進化学蒸着チャンバ(PECVDチャンバ)の中に導入し、1〜150nmの厚さ、好適には約10〜100nmの厚さのアモルファスシリコン膜を単独の前躯体ガスとしてSiHを使用して堆積する。アモルファスシリコン膜はウェーハの両面上に堆積され、図の中では参照番号(13)によって示されている。次いで、窒化シリコンの層を、PECVDチャンバ内でSiHとNHの混合物を前躯体ガスとして使用して堆積する。窒化シリコン膜の厚さは10〜200nmの範囲、好適には約70〜100nmの範囲にあるべきである。また、前駆体ガスは0〜50モルパーセントの水素ガスを含んでもよい。窒化シリコン膜はウェーハの両面上に堆積され、図中、参照番号(14)によって示される。PECVDチャンバの内の蒸着温度は両方の膜に対して約250℃である。パッシベーション処理は、ウェーハを350〜550℃の範囲の温度、好適には約500℃で4分間、加熱することによって完成する。このアニーリングは、例えばメタライゼーションの後などの、パッシベーション層の堆積後の次の加工工程で行なってもよい。
【0021】
本発明者の研究は、パッシベーション層の最適モードは、500℃でアニールされた10〜100nmのアモルファスシリコンと70〜100nmの窒化シリコンとの二重の層であることを示している。参考文献(1)の図1は、80nmのアモルファスシリコンと100nmの窒化シリコンの二重膜が0.0007秒の実効再結合持続時間をもたらし、これは、アモルファスシリコンまたは窒化シリコンの単層膜よりも約1桁の大きさで優れ、または、アニールされていないアモルファスシリコンと窒化シリコンの二重膜よりも2〜3倍長いことを示している。理論に縛られることなく、著しく増加したパッシベーション効果の原因は、結晶シリコン中のダングリングボンド(dangling bond)を満たす、結晶シリコン基板の境界領域内部への水素原子の拡散によるものであると考えられる。参考文献(1)の図2は、異なる温度でアニールした後の、二重パッシベーション層内部およびバルクシリコンウェーハの境界領域近くにおける、水素の測定された分布を示している。この図は、500℃の最適アニール温度が、境界領域近くで、約10原子パーセントの水素の水素含有率の最大値をもたらすことを示している。これより高い温度または低い温度でのアニーリングは、水素濃度を低下させる。参考文献(1)の図1および図2の複写を、本明細書のそれぞれ図2aおよび図2bとして示す。
【0022】
図1bに、下にある基板(10、11、12)へのアクセスが得られるように開口部(30)がパッシベーション層(13、14)の中に形成されているウェーハを示す。これらの開口部は、希釈または濃縮したHF、KOH、NaOH、またはHFとHNOとCHCOOHとを含む混合液、またはそれらを組み合わせた溶液を含む化学的エッチング剤をインクジェット印刷して形成される。開口部(30)を得るための方法の選択は重要ではない。極めて重要な特徴は、パッシベーション層(13、14)は、接点が形成されることになるウェーハ上の位置でウェーハ(10、11、12)を露出させるために、局部的に除去されなくてはならないことである。ウェーハ(10、11、12)表面の残りの領域は、パッシベーション層(13、14)で覆われていなければならない。
【0023】
電気接点(41、42)を開口部(30)の中に形成した後のウェーハ(10、11、12)を図1cに示す。ウェーハ(10、11、12)との電気接触を確立させる電気接点を作成するための好適な方法は、ニッケル、銀、銅、および/またはスズ、またはこれら材料を任意に組み合わせた電気めっきまたは無電解めっきである。場合によっては、例えば、金属を含有したペーストをめっきされた接点の頂部にインクジェット印刷またはスクリーン印刷して金属接点を形成することによって、電気接触を補強してもよい。
【0024】
電気接点(41、42)を形成した後では、ウェーハは、例えばブスバーなどを導入してソーラーパネルに組立てる準備ができた状態になる。残りの加工工程は当業者によく知られており、さらに説明する必要はない。
【0025】
[本発明の第2の好適な実施形態]
本発明の第2の好適な実施形態は、ウェーハの表面(10、11、12)をパッシベーションする前に接点(21、22)を形成することによってウェーハとの接触を補強することを除いて、第1の好適な実施形態に類似している。第2の好適な実施形態のプロセスを、図1a〜図1cに示した第1の好適な実施形態と同じ工程の状態で概略的に図3a〜図3cに示す。
【0026】
銀粒子を含有した薄いペーストを、薄い拡散層(11)の表面上で接点(21)を形成すべき位置にインクジェット印刷することによって、接点(21、22)を形成する。他方の面で、アルミニウム粒子を含有した薄いペーストを、薄い拡散層(12)の表面の接点(22)を形成すべき位置にインクジェット印刷する。この目的に適した実際のペーストは当業者に知られており、商品として入手できるので、さらなる説明は不要である。
【0027】
ペーストの印刷の次に、ペーストを1000℃までの温度でアニールして焼結する。接点領域(21)および(22)の焼結に続いて、部分的に加工された太陽電池を、表面上に残っている金属層の余分な部分を除去するために、溶液中でエッチングする。この溶液は、HとHSOとの混合液、HとNHOHとHOとの混合液、またはHとHClとHOとの混合液を含むことができるが、これらに限定されない。
【0028】
接点(21、22)の形成および層(11、12)の表面に残っている余分な金属の除去の後で、ウェーハを第1の好適な実施形態で説明したものと同じ方法で加工する。
【0029】
[本発明の第3の好適な実施形態]
本発明の第3の好適な実施形態は、本発明の第1および第2の好適な実施形態の両方に適用できる、第2面(背面)との接触を行なう代替方法である。
【0030】
ウェーハの第2面との代替的な接触は、開口部(30)を含む第2面全体にわたってアルミニウム層をスパッタリングまたは蒸着することによるか、さもなければ、開口部(30)を含む第2面全体にわたってアルミニウムをベースとした金属ペーストをスクリーン印刷するかして、得られる。後者の場合には次いで、場合によっては、試料を500℃までの温度で、しかしこれを超えない温度でアニールする。
【0031】
この第3の好適な実施形態は、全ての他の特徴において、第1または第2の好適な実施形態に類似している。
【0032】
[本発明の第4の好適な実施形態]
本発明の第4の好適な実施形態は、第3の実施形態で示した第2面との代替の接触を得るための、代替的方法である。
【0033】
この代替方法では、第2面の上のパッシベーション層(13、14)の内部にはいかなる開口部も形成せず、その代わりに、パッシベーション層(14)をアルミニウム層(43)で覆ってしまう。図4を参照されたい。ウェーハの第1面の加工は、第1または第2の好適な実施形態について説明したプロセスに類似している。第4の好適な実施形態について言えば、アルミニウム含有層(43)を堆積するための方法は、アルミニウム層を第2面全体にわたってスパッタリングまたは蒸着するか、または、アルミニウムをベースとした金属ペーストを第2面全体にわたってスクリーン印刷し、続いて、上述した穏やかなアニーリングを施す方法かを含むが、これらに限定されない。
【0034】
アルミニウム層(43)を形成した後で、ウェーハを、下にある冷却部材(60)の上で、第1面が下を向くように置く。図5を参照されたい。次いで、アルミニウム層(43)がパッシベーション層(13、14)を貫いてそれを「焼いて」下にあるウェーハ(12)との電気接触を確立するまで、アルミニウム層(43)を局部的に加熱するために、一連の高温の針状突起(51)を備えた加熱部材(50)がウェーハの第2面に向けて加圧する。理論に縛られることなく、パッシベーション層を貫く侵入を実現し、こうして、ウェーハとの接触を確立するためには、アルミニウム層の局部的温度は約650℃に達すべきであると思われる。このプロセスを図5に示す。冷却部材(60)は任意であるが、第1面ならびに接点が形成されない第2面の領域にある部分的に加工された太陽電池のパッシベーション層が、その冷却部材(60)によって確実に冷却されるので好ましいものである。
【0035】
図6に、近くに近接させた熱源からの赤外放射を使用して、冷却部材(61)中の開口部を通してアルミニウム層(43)を局部的に加熱するための代替の方法を示す。冷却部材(61)は部分的に加工された太陽電池の第2面に物理的に接触状態にあり、局部的な加熱が主に冷却部材(61)の開口部の範囲内で確実に生じるようにしている。上述と同じ理由により、第1面に物理的に接触した冷却部材(60)を使用することも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1a】本発明の第1の好適な実施形態による、ソーラーウェーハの製造時の異なる段階におけるウェーハの断面図であり、パッシベーション層の堆積後のウェーハである。
【図1b】本発明の第1の好適な実施形態による、ソーラーウェーハの製造時の異なる段階におけるウェーハの断面図であり、パッシベーション層の中に開口部を準備した後のウェーハである。
【図1c】本発明の第1の好適な実施形態による、ソーラーウェーハの製造時の異なる段階におけるウェーハの断面図であり、接点を形成した後のウェーハである。
【図2a】参考文献(1)の図1の複写を示す図である。
【図2b】参考文献(1)の図2の複写を示す図である。
【図3a】本発明の第2の好適な実施形態による、ソーラーウェーハの製造時の、図1に示したものと類似の製造段階のウェーハの断面図である。
【図3b】本発明の第2の好適な実施形態による、ソーラーウェーハの製造時の、図1に示したものと類似の製造段階のウェーハの断面図である。
【図3c】本発明の第2の好適な実施形態による、ソーラーウェーハの製造時の、図1に示したものと類似の製造段階のウェーハの断面図である。
【図4】本発明の第4の好適な実施形態の製造時の、第2面上にアルミニウム層を堆積した後の、部分的に加工されたウェーハの第2面の断面図である。
【図5】本発明の第4の好適な実施形態の背面に電気接触を確立するために、アルミニウム層を局部的に加熱するための第1の好適な方法の断面図である。
【図6】本発明の第4の好適な実施形態の背面に電気接触を確立するために、アルミニウム層を局部的に加熱するための第2の好適な方法の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 ウェーハ
11 薄い拡散層
12 薄い拡散層
13 アモルファスシリコン膜
14 窒化シリコン膜
21 接点
22 接点
30 開口部
41 電気接点
42 電気接点
43 アルミニウム含有層
50 加熱部材
51 針状突起
60 冷却部材
61 冷却部材
【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】

【図3a)】

【図3b)】

【図3c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタリック半導体ウェーハとの接触を行なうための方法であって、
前記ウェーハが、
・前記ウェーハの一方の側の上の一方の型の導電性(p−またはn−型)を持つ少なくとも1つの薄い拡散層と、他方の型の導電性(n−またはp−型)を持つバルクウェーハと、
・第1面(受光側)または第2面(背面側)の少なくとも1面の上の、少なくとも1つの堆積された表面パッシベーション層/膜と
を有する方法において、
・前記少なくとも1つのパッシベーション層を局部的に除去して下にある前記半導体ウェーハの表面を露出させることにより、少なくとも1つの開口部を前記少なくとも1つのパッシベーション層の中に生成することによって接触箇所を形成し、
・前記少なくとも1つのパッシベーション層の中の前記少なくとも1つの開口部を、紫外光耐性があり少なくとも約150〜250℃までの温度で機能を発揮する導電性材料で充填することによって、前記半導体ウェーハとの電気接触を確立する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの接触箇所が、前記少なくとも1つのパッシベーション層の形成の前に、接点を前記少なくとも1つの接触箇所のそれぞれの上に形成することによって補強される方法において、
前記少なくとも1つの接点は、
・銀粒子を含む薄いペーストを、前記半導体ウェーハの前記第1面の上の前記少なくとも1つの接触箇所のそれぞれの上にインクジェット印刷する段階と、
・アルミニウム粒子を含む薄いペーストを、前記半導体ウェーハの前記第2面の上の前記少なくとも1つの接触箇所のそれぞれの上にインクジェット印刷する段階と、
−金属接点を形成するために、前記ウェーハの前記第1面および第2面の上の前記堆積されたペーストを1000℃迄の温度でアニールする段階と、最後に、
・前記接点上の余分な金属堆積物を、次の、即ち、HとHSOとの混合液、HとNHOHとHOとの混合液、または、HとHCLとHOとの混合液のうちの1つまたは複数のエッチング液に浸漬させることによってエッチング除去する段階と
によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
銀粒子を含む前記薄いペースト、および/または、アルミニウム粒子を含む前記薄いペーストは、前記ウェーハの前記第1面、および/または、前記第2面の上にそれぞれスクリーン印刷されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体ウェーハの前記第1面または第2面の少なくとも1つの前記表面パッシベーションは、
・前記半導体ウェーハを、HSOとHとの混合液、または、HCLとHとHOとの混合液、または、NHOHとHとHOとの混合液の中への浸漬によって洗浄する段階と、
・パッシベーションされるべき前記半導体の面の上の酸化膜を、希釈したHF中に浸漬することによって除去する段階と、
・前記ウェーハをプラズマ促進化学蒸着チャンバ(PECVDチャンバ)の中に導入する段階と、
・1〜150nm厚さのアモルファスシリコン膜を、SiHを単独前駆体ガスとして使用して約250℃で堆積させる段階と、
・10〜200nm厚さの窒化シリコン膜を、SiHおよびNHの混合体を前駆体ガスとして使用して約250℃で堆積させる段階と、最後に、
・前記堆積されたパッシベーションを有する前記ウェーハを約350℃〜約550℃の範囲の温度でアニールする段階と
によって得られることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
・前記前駆体ガスは0〜50モルパーセントの水素ガスも含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
・前記アモルファスシリコン膜は約10〜100nmの厚さであり、
・前記窒化シリコン膜は約70〜100nmの厚さであり、
・前記アニーリングは、約500℃の温度で4分間行なわれる
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数のパッシベーション層の前記局部的な開口部は、
・前記接触箇所を含む前記少なくとも1つのパッシベーション層の前記領域の上に、インクジェット印刷またはスクリーン印刷されるエッチング剤を使用することにより、あるいは、
・前記ウェーハ上に残されることになる前記少なくとも1つのパッシベーション層の領域にわたって、化学レジストをスクリーン印刷し、続いて、前記保護されていないパッシベーション膜を除去するために前記ソーラーウェーハをエッチング剤の中に浸漬することにより、
得られることを特徴とする請求項4または6に記載の方法。
【請求項8】
前記化学エッチング剤は、1つまたは複数の次のエッチング剤、即ち、希釈または濃縮したHF、またはKOH、またはNaOHを含む溶液、あるいは、HF、HNOおよびCHCOOHを含む混合液、を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数のパッシベーション層の前記局部的な開口部は、前記接触箇所を含む前記パッシベーション層の前記領域をレーザービームに当てて局部的に加熱することによって得られることを特徴とする請求項4または6に記載の方法。
【請求項10】
前記半導体ウェーハとの少なくとも1つの電気的接触を、前記少なくとも1つのパッシベーション層の中の前記少なくとも1つの開口部を、1つまたは複数の次の材料、即ち、ニッケル、銀、銅、および/またはスズ、あるいは、これら材料の任意な組み合わせを含む導電性材料を用いて、次の方法、即ち、無電解めっき、または、電気めっき、あるいは導電性材料を含むペーストのインクジェット印刷またはスクリーン印刷とそれに続く穏やかなアニーリング、のうちの1つを使用して充填することによって、得られることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記ウェーハの前記第2面(背面)との接触が、
・アルミニウムの層を前記少なくとも1つのパッシベーション層の上部に堆積させる段階と、
・アルミニウム層がパッシベーション層を貫いてそれを「焼いて」、アルミニウム層と下にあるウェーハとの間の電気接触を確立するまでアルミニウム層を局部的に加熱するために、一連の高温の針状突起を備えた加熱部材を堆積されたアルミニウム層の上に加圧する段階と
によって得られることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
・前記加熱部材に接触している前記アルミニウム層の局部的温度が約650℃であり、
・加熱中に、冷却要素が前記ウェーハの前記第1面(受光面)に接触して配置される
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ウェーハの前記第2面(背面)との接触が、
・前記少なくとも1つのパッシベーション層の上部にアルミニウム層を堆積する段階と、
・パッシベーション層を貫いて前記アルミニウム相を「焼いて」、前記アルミニウム層と下にあるウェーハとの間の電気接触を確立できるようにするために、電磁放射を使用して前記堆積されたアルミニウム層の上の前記接触箇所を局部的に加熱する段階と
によって得られることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
・前記加熱要素に接触している前記アルミニウム層の局部的温度が約650℃であり、
・加熱中に、冷却要素が前記ウェーハの前記第1面(受光面)に接触して配置され、
・前記電磁放射は赤外放射またはレーザービームである
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記半導体ウェーハは、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンのうちの1つであることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
・他方の型の導電性(n−またはp−型)を持つ少なくとも1つの薄い拡散層(11、12)を有する、一方の型の導電性(p−またはn−型)を持つシリコン半導体ウェーハと、
・第1面(受光側)または第2面(裏面)のうちの少なくとも1つの面上の少なくとも1つの堆積された表面パッシベーション層/膜(13、14)と、
・前記ウェーハ(10、11、12)との電気接触を確立する前記第1面および第2面の少なくとも1つの接触箇所地点と、
・前記ウェーハ(10、11、12)の両側上の少なくとも1つの電気接点(41、42)と
を備えた太陽電池において、
・前記シリコン半導体ウェーハ(10、11、12)の前記表面領域における空の結合の少なくとも一部が水素原子の拡散流入によって満たされるように、前記少なくとも1つのパッシベーション層(13、14)が少なくとも1つの水素含有前駆体ガスを使用してプラズマ促進化学蒸着チャンバ(PECVD−チャンバ)の中で形成され、続いて穏やかなアニーリングが施される
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項17】
・前記半導体ウェーハ(10、11、12)の前記第1面または第2面のうちの少なくとも1つの面の表面パッシベーションは、1〜150nmの厚さのアモルファスシリコン膜(13)と10〜200nmの厚さの窒化シリコン膜(14)とを備え、
・少なくとも1つの面の表面パッシベーションは、その次に、前記堆積された膜(13、14)の下にある前記ウェーハ(10、11、12)の表面領域の中に水素原子を導入するために、約350℃〜550℃の範囲の温度でアニールされる
ことを特徴とする請求項16に記載の太陽電池。
【請求項18】
・前記アモルファスシリコン膜(13)は約10〜100nmの厚さを有し、
・前記窒化シリコン膜(14)は約70〜100nmの厚さを有し、
・堆積された膜(13、14)の下にある前記半導体ウェーハ(10、11、12)の前記表面領域の中に、約10原子パーセントの水素を導入するために、後続のアニーリングが約500℃で4分間行なわれる
ことを特徴とする請求項17に記載の太陽電池。
【請求項19】
前記半導体ウェーハは、単結晶または多結晶のソーラー・グレード・シリコンのうちの1つであることを特徴とする請求項16から18のいずれかに記載の太陽電池。

【図4】
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【図2a】
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【図2b】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−533864(P2009−533864A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505312(P2009−505312)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/NO2007/000130
【国際公開番号】WO2007/117153
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(506282470)リニューアブル・エナジー・コーポレーション・エーエスエー (9)
【Fターム(参考)】