説明

成膜方法及び半導体装置

【課題】層間絶縁膜と配線金属との間に形成されるバリア膜について、配線金属を構成する元素や層間絶縁膜を構成する元素に対して高いバリア性を提供する。
【解決手段】処理容器内に基板を載置する載置台51と周方向に沿って多数のスリットが形成された平面アンテナ部材82とを対向して設け、導波管からのマイクロ波を前記平面アンテナ部材を介して処理容器内に供給する。一方処理容器の上部からArガスなどのプラズマ発生用のガスを供給すると共にこのガスの供給口とは異なる位置から原料ガスである例えばトリメチルシランガスと窒素ガスとを供給することでこれらガスをプラズマ化し、更に載置台51の上面の単位面積当たりに供給されるバイアス用の高周波電力が0.048W/cm2以下となるようにバイアス用の高周波電力を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置における配線金属と層間絶縁膜との間に介在するバリア膜をプラズマにより成膜する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化を図るための多層配線構造は、例えばデュアルダマシン工程を採用する場合、下層側の層間絶縁膜に配線埋め込み用のトレンチ及び下層側の配線と上層側の配線とを接続するための電極埋め込み用のビアホールを同時に形成し、トレンチ及びビアホールに配線用金属例えば銅を埋め込んで下層構造を形成し、このような構造を順次積層していくことにより作られていく。このような構造においては、配線用金属が層間絶縁膜中に拡散しないようにする必要があり、特に銅を用いた場合には拡散しやすいことからトレンチ及びビアホールを含む凹部の内壁に銅拡散防止のためのバリアメタルを介在させ、またトレンチ内の銅配線とその上層側の層間絶縁膜との間にバリア膜を介在させている。
【0003】
図17は、下層側の層間絶縁膜101のトレンチ内に銅配線102が形成され、その銅配線102の上に電極103が形成された構造の一部を模式的に示している。同図において104はトレンチ及びビアホールからなる凹部の内壁に成膜されたバリアメタルであり、105は銅配線102とその上層側の図示しない層間絶縁膜との間に介在するバリア膜である。ここでバリアメタル104は製造工程上、銅配線102の上面と電極103の下面との間に残るため導電性であることが必要であり、例えばタンタルやチタンなどを含む膜が用いられている。
一方バリア膜105は銅配線102の上において電極103の形成部分を除いて全面に形成されるため、下層側の層間絶縁膜と上層側の層間絶縁膜と間に介在し銅配線102から図示しない上層側の層間絶縁膜中へ銅が拡散することを防止している。またこのバリア膜105の存在により層間絶縁膜全体の誘電率が上昇するのを避けるためにバリア膜105としては例えばシリコン(Si)、炭素(C)及び窒素(N)からなるSiCN膜、SiC膜あるいはアモルファスカーボンなどが用いられており、例えばトリメチルシランガスと窒素ガスとを用いてプラズマCVDにより成膜することが行われている(特許文献1)。
【0004】
ところで半導体デバイスの微細化に伴ってバリア膜105についてもより一層の薄膜化が要請されているが、あまり薄くするとその後の例えば400℃程度のアニール工程において銅配線102中の銅が当該バリア膜105を突き抜けて層間絶縁膜中に拡散し、層間絶縁膜の絶縁性が悪くなって配線間のリーク電流の増大を招いてしまう。このようなことから薄膜化が進んでも高いバリア性が得られるようにバリア膜の緻密性をより一層向上させる要求が強まっている。
また最近において、層間絶縁膜として例えば2.5以下もの低比誘電率を確保することができる炭素(C)及びフッ素(F)の化合物であるフッ素添加カーボン膜(フロロカーボン膜)を採用することが検討されている。しかしながらフッ素添加カーボン膜はフッ素が加熱時に脱離しやすいことから、バリア膜の薄膜化が進むと、上記のアニール時にバリア膜105の上層側の層間絶縁膜をなすフッ素添加カーボン膜からのフッ素が当該バリア膜105を突き抜けて銅配線102中に拡散し、配線抵抗の増大を招いてしまう懸念がある。
【0005】
特許文献2には、電子サイクロトロン共鳴を用いたプラズマ装置において、8インチウエハに対して500W以上のバイアス電力をかけてフッ素添加カーボン膜の埋め込みを行う実験が記載されているが、本発明の課題については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−294816
【特許文献2】特開平10−144675号公報:図19、段落0046
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は半導体装置における配線金属と層間絶縁膜との間に介在するバリア膜について、高いバリア性を得ることができる成膜方法を提供することにある。更に他の目的は本発明方法により成膜されたバリア膜を備えた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、半導体装置における配線金属と層間絶縁膜との間に介在するバリア膜を成膜する方法において、
基板を処理容器内の載置部に載置する工程と、
前記処理容器内に、有機化合物を含む成膜用のガスと、成膜用のガスのプラズマ化を促進するためのプラズマ発生用のガスと、を供給する工程と、
前記処理容器内を真空排気する工程と、
前記処理容器内のプラズマ発生用のガスと成膜用のガスとをプラズマ化し、そのプラズマにより基板上に炭素を含む前記バリア膜を成膜する工程と、
この工程が行われている間に、前記載置部にバイアス用の高周波電力を印加する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい一例としては、プラズマ発生用のガスと成膜用のガスとは互いに異なる供給口から処理容器内に供給され、処理容器の上部に前記載置部と対向して設けられると共に周方向に沿って多数のスリットが形成された平面アンテナ部材から処理容器内にマイクロ波を供給することにより、処理容器内のガスをプラズマ化する手法を挙げることができる。基板の単位面積に供給されるバイアス用の高周波電力は、0.047W/cm2 以下であるが好ましい。
【0010】
更に本発明に用いられるガスやバリア膜の例を以下に列挙する。
前記成膜用のガスは、シリコンの有機化合物のガスを含み、前記バリア膜はシリコンを含有する膜である。
前記バリア膜はSiCN膜である。
前記バリア膜は、SiC膜である。
前記バリア膜は、アモルファスカーボン膜である。この場合、前記成膜用のガスは例えばブチンガスである。また前記成膜用のガスは、ブチンガスに更にシラン系のガスを含み、前記アモルファスカーボン膜はシリコンを含む。
【0011】
プラズマ発生用のガスはアルゴンガスである。
また層間絶縁膜としては、炭素及びフッ素の化合物であるフッ素添加カーボン膜を一例として挙げることができる。
【0012】
他の発明は、半導体装置における配線金属と層間絶縁膜との間に介在するバリア膜を成膜する成膜装置において、
基板が載置される載置部が内部に設けられた気密な処理容器と、
この処理容器内に、有機化合物を含む成膜用のガスと、成膜用のガスのプラズマ化を促進するためのプラズマ発生用のガスと、を供給するガス供給手段と、
前記処理容器内を真空排気する手段と、
前記処理容器内のガスをプラズマ化するためのプラズマ発生手段と、
前記載置部にバイアス用の高周波電力を印加する手段と、
前記処理容器内にプラズマ発生用のガスと有機化合物を含む成膜用のガスとを導入し、前記載置部にバイアス用の高周波電力を印加しながらこれらガスをプラズマ化して基板上に炭素を含む薄膜を成膜するように各手段に制御指令を出力するための制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この発明の好ましい態様としては、前記ガス供給手段は、マイクロ波により励起されるプラズマ発生用のガスを処理容器内に供給する供給口と、成膜用のガスを供給するための前記供給口とは異なる供給口と、を備え、
前記プラズマ発生手段は、マイクロ波を前記処理容器の上部に導くための導波管と、この導波管からのマイクロ波を前記処理容器内に供給するために当該導波管に接続されると共に、前記載置部に対向して設けられ、周方向に沿って多数のスリットが形成された平面アンテナ部材と、を備えた構成を挙げることができる。
【0014】
更に他の発明は、成膜装置に用いられ、コンピュータ上で動作するコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムは、請求項に記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
更にまた他の発明は、上記の成膜方法により成膜されたバリア膜を備えたことを特徴とする半導体装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体装置における配線金属と層間絶縁膜との間に介在するバリア膜を基板上に成膜するにあたって、有機化合物を含む成膜用のガスと、成膜用のガスのプラズマ化を促進するためのプラズマ発生用のガスと、をプラズマ化して基板上に炭素を含むバリア膜を成膜しながら、基板を載置する載置部にバイアス用の高周波電力を印加しているため、プラズマ発生用のガスの活性種であるイオン例えばアルゴンイオンが基板に衝突しながら成膜され、この衝突に起因して緻密でバリア性の高い膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のCF膜を含んだ半導体装置の製造手順を示した工程図である。本発明の実施の形態にかかる半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明のバリア膜を成膜するときの基板の様子を示す模式図である。
【図3】ウエハWに高周波バイアスを印加したときの反応の推定メカニズムを示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に用いられるプラズマ成膜装置の一例を示す縦断側面図である。
【図5】上記のプラズマ成膜装置に用いられる第2のガス供給部を示す平面図である。
【図6】上記のプラズマ成膜装置に用いられるアンテナ部を一部断面で示す斜視図である。
【図7】実施例にかかる基板についての脱ガス量を示す特性図である。
【図8】実施例にかかる基板の深さ方向におけるフッ素及び酸素の含有量を示す特性図である。
【図9】実施例にかかるバリア膜の成膜速度と屈折率とを示す特性図である。
【図10】実施例にかかるバリア膜とCF膜との密着強度を示す特性図である。
【図11】4ポイントベンディング法(強度試験)の測定法を示す説明図である。
【図12】4ポイントベンディング法における特性データを示す説明図である。
【図13】SiCN成膜時に印加したバイアス電力毎の前記強度試験の結果を示す説明図である。
【図14】CF膜の表面に対してバイアスプラズマ処理をした場合の前記強度試験の結果を示す説明図である。
【図15】CF膜の表面に対してバイアスプラズマ処理をした場合の前記強度試験の結果を示す説明図である。
【図16】実施例にかかるバリア膜とCF膜との密着強度を評価するための過酷試験の結果を示す特性図である。
【図17】一般的な多層配線構造の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の半導体装置に係る製造方法の実施の形態を図1を参照しながら説明する。図1(a)には、基板である例えば直径200mm(8インチサイズ)のウエハW上に形成されたn番目(下段側)の回路層が示されており、この回路層は、層間絶縁膜であるフッ素添加カーボン膜(以下「CF膜」という)10内に例えばCuなどからなる配線金属11が埋め込まれている。このCF膜10と配線金属11との間には、CF膜10内に配線金属11から例えば銅が拡散しないように、例えば窒化タンタル膜やタンタル膜などからなるバリアメタル膜12が介在している。なお以下の説明ではn番目、(n+1)番目を夫々下層側、上層側配線と呼ぶことにする。
【0018】
先ず、図1(b)に示すように、この下層側の回路層の表面に、この下層側の回路層と上層側の回路層との間における脱ガス成分や金属の拡散を抑えるために、例えばSiCNなどの絶縁性化合物からなるバリア膜13を成膜する。このバリア膜13は、シリコンの有機化合物であるトリメチルシラン((CH33SiH)ガスと窒素(N2)ガスとからなる成膜ガスと、アルゴン(Ar)ガスとを例えば後述の成膜装置にて記載するようにマイクロ波のエネルギーによりプラズマ化(活性化)し、このプラズマを例えば350℃に加熱されたウエハW上に供給することで成膜される。この例では、アルゴンガスは、成膜用のガスのプラズマ化を促進するためのプラズマ発生用のガスであり、Arの代わりにKr等の希ガスであってもよい。またN2の代わりにNH3、N2O等を用いてもよい。
このバリア膜13を成膜している時にウエハWに対して後述のバイアス用高周波電源52から例えばプラズマ中のイオンが追随できる周波数の範囲である例えば2MHz以下、例えば800kHzの高周波を例えば10W程度の電力で供給することにより、プラズマ中のアルゴンイオンがウエハW側に引き寄せられる。このように高周波バイアスをウエハWに印加することにより、後述のようにバリア膜13のバリア性が向上する。このことはバリア膜13が緻密になったことに起因していると推測され、そのためバリア膜13の成膜の推定メカニズムを図3(a)、(b)を参照しながら説明しておく。先ずトリメチルシランガスが活性化されると、トリメチルシランの分子において炭素(C)と水素(H)との結合の一部が切断された状態、シリコンと炭素あるいは水素との結合が切断された状態などになった活性種が形成されると考えられる。
【0019】
そこで図3(a)に示すようにアルゴンガスのイオンがウエハW側に引き寄せられて、ウエハWの表面の近傍に位置する、こうした活性種に衝突すると、活性種中における弱い結合例えばC−H結合が切断されて水素がこの活性種から脱離し、図3(b)に示すように残った炭素と他の活性種の炭素との間において、あるいは成膜途中のバリア膜13の表面に存在する炭素のダングリングボンド(未結合手)を介してその炭素との間において新たな結合が形成すると考えられる。
一方活性種から脱離した水素は水素ガスとなり、バリア膜13中には取り込まれずに処理雰囲気から排出される。ウエハWの表面ではこのような反応が順次進行して行くので、このバリア膜13中には、例えば炭素−炭素結合のネットワークが多数形成されていき、この結合が網目状(クロスリンク状)となり、従って膜が緻密になり、また膜の硬度が増加すると推察される。
【0020】
また、アルゴンガスイオンがウエハWの表面に衝突した場合には、ウエハWの表面においても、同様に弱い結合であるC−H結合が切断され(図3(a))、ダングリングボンドが生成する(同図(b))。このダングリングボンドの生成した部位では反応性が高くなるため、活性種の付着確率が高くなり、その結果バリア膜13の成膜速度が速くなると推測される。こうしてバリア膜13は、高周波バイアスを印加することで、高周波バイアスを印加しない場合に比べて、緻密でかつ強度が高くなり、成膜速度も速くなる。
【0021】
次に図1に戻って同図(c)に示すように、バリア膜13の表面に層間絶縁膜であるCF膜20を成膜する。このCF膜20は、炭素とフッ素とを含む化合物の成膜ガスであるC58ガスをアルゴンガスと共にプラズマ化し、各々のガスの流量が例えば200sccmと300sccm、容器内圧力が55mTorrの条件の下で、C58の活性種を含むプラズマを例えば380℃に加熱されたウエハ上に供給することで成膜される。
【0022】
ここで重要なことは、成膜用のガスは例えば炭素とフッ素とからなるガスのように水素原子を含まず、またプラズマ中にも水素(原子、ラジカル、イオン等)を含まないことである。水素を含む環境下でCF膜を成膜すると、膜中に水素が含まれ、この後工程で行われるアニールなどの工程において、膜中の成分であるフッ素と反応してHFガスとなって脱離するため、CF膜の上層であるバリア膜との密着性が低下したり、CF膜自体の強度も低下してしまう。
そして、このCF膜20の表面に、犠牲膜として用いられる例えばSiCN膜21とSiCOH膜22とをこの順に積層する(図1(c))。続いて、SiCOH膜22の上に図示しないレジストマスクを形成し、このレジストマスクと上記の犠牲膜などとを用いて、例えばハロゲン化物の活性種を含むプラズマによりエッチングを行い、CF膜20にビアホールに相当する凹部14aと上層側の回路の配線埋め込み領域(トレンチ)に相当する凹部14bとからなる凹部14を形成する(図1(d))。
【0023】
その後、凹部14表面に例えば窒化タンタル膜やタンタル膜などの導電性のバリアメタル膜15を成膜し(図2(a))、例えば銅からなる配線金属16を凹部14に埋め込んだ後(図2(b))、CMPにより余分な配線金属16と犠牲膜であるSiCOH膜22及びSiCN膜21とを除去することによって、上層側の回路層が形成される(図2(c))。このウエハWの上層側に同様に順次回路層を積層して半導体装置が形成される。なお回路層の多層構造が構成された後、多層構造体に対して各膜中のダングリングボンドを低減させるために例えば400℃のアニール処理が行われる。
【0024】
次いで、本発明の成膜方法に用いられるプラズマ成膜装置の実施の形態及びこの成膜装置を用いて行う成膜方法の具体例について、図4〜図6を参照しながら説明する。このプラズマ成膜装置は、ラジアルラインスロットアンテナを用いてプラズマを発生させるCVD(Chemical Vapor Deposition)装置である。図4中5は例えば全体が筒状体に構成された処理容器(真空チャンバ)であり、この処理容器5の側壁や底部は、導体例えばアルミニウム添加ステンレススチール等により構成され、内壁面には酸化アルミニウムよりなる保護膜が形成されている。
【0025】
処理容器5のほぼ中央には、基板例えばウエハWを載置するための載置部である載置台51が絶縁材51aを介して設けられている。この載置台51は、例えば窒化アルミニウム(AlN)もしくは酸化アルミニウム(Al)より構成され、内部には冷却媒体を通流させる冷却ジャケット51bが設けられている。また、この載置台51内には、加熱手段であるヒータ57が設けられており、このヒータ57は電源58に接続されている。載置台51の載置面は静電チャックとして構成されている。また、載置台51には、既述のように、周波数が例えばイオンが追随できる範囲である2MHz以下で、例えば800kHzのバイアス用高周波電源52が接続されている。
【0026】
前記処理容器5の天井部は開放されており、この部分にはOリング等のシール部材(図示せず)を介して、載置台51と対向するように、例えば平面形状が略円形状に構成された、第1のガス供給部6が設けられている。このガス供給部6は、例えば酸化アルミニウムにより構成され、載置台51と対向する面にはガス供給孔61の一端側と連通するガス流路62が形成されており、このガス流路62には第1のガス供給路63の一端側が接続されている。一方、第1のガス供給路63の他端側はプラズマ発生用のガスであるアルゴン(Ar)ガスやクリプトン(Kr)ガスなどの供給源64が接続されており、このガスは、第1のガス供給路63を介してガス流路62に供給され、前記ガス供給孔61を介して、第1のガス供給部6の下方側の空間に一様に供給される。
【0027】
この例では、供給源64、第1のガス供給路63、第1のガス供給部6によりプラズマ発生用のガスを処理容器5内に供給する手段が構成されている。
【0028】
また前記処理容器5は、載置台51と第1のガス供給部6との間に、例えばこれらの間を区画するように、例えば平面形状が略円形状に構成された第2のガス供給部7を備えている。この第2のガス供給部7は例えばマグネシウム(Mg)を含んだアルミニウム合金やアルミニウム添加ステンレススチール等の導電体により構成され、載置台51と対向する面には多数の第2のガス供給孔71が形成されている。このガス供給部7の内部には、例えば図5に示すように第2のガス供給孔71の一端側と連通する格子状のガス流路72が形成されており、このガス流路72には第2のガス供給路73の一端側が接続されている。また第2のガス供給部7には、当該ガス供給部7を上下に貫通するように、多数の開口部74が形成されている。この開口部74は、プラズマやプラズマ中の原料ガスを当該ガス供給部7の下方側の空間に通過させるためのものであり、例えば隣接するガス流路72同士の間に形成されている。
【0029】
ここで第2のガス供給部7は、例えば上記のバリア膜13を成膜する時には、第2のガス供給路73を介して成膜用のガスである窒素ガスの供給源75及びトリメチルシラン(3MS)ガスの供給源76に接続され、この窒素ガス及びトリメチルシランガスは、第2のガス供給路73を介してガス流路72に順次通流していき、前記ガス供給孔71を介して第2のガス供給部7の下方側の空間に一様に供給される。この例では、供給源75、76、第2のガス供給路73及び第2のガス供給部7により、原料ガスを処理容器5内に供給する手段が構成される。図2中V1、V2、V3はバルブ、101、102、103は夫々アルゴンガスガス、窒素ガス及びトリメチルシランガスの処理容器5内への供給量を調整するための流量調整手段である。尚、既述のCF膜10(20)を成膜する場合には、この供給源76としてはC5F8ガスが貯留されたガス源が用いられ、上記の原料ガスと同様に第2のガス供給路73の下方側の空間に一様に供給される。
【0030】
前記第1のガス供給部6の上部側には、Oリング等のシール部材(図示せず)を介して、例えば酸化アルミニウムなどの誘電体により構成されたカバープレート53が設けられ、このカバープレート53の上部側には、当該カバープレート53と密接するようにアンテナ部8が設けられている。このアンテナ部8は、図6に示すように、平面形状が円形の下面側が開口する扁平なアンテナ本体81と、このアンテナ本体81の前記下面側の開口部を塞ぐように設けられ、多数のスロットが形成された円板状の平面アンテナ部材(スロット板)82とを備えており、これらアンテナ本体81と平面アンテナ部材82とは導体により構成され、扁平な中空の円形導波管を構成している。そして前記平面アンテナ部材82の下面が前記カバープレート53に接続されている。
【0031】
また前記平面アンテナ部材82とアンテナ本体81との間には、例えば酸化アルミニウムや窒化ケイ素(Si)等の低損失誘電体材料により構成された遅相板83が設けられている。この遅相板83はマイクロ波の波長を短くして前記円形導波管内の管内波長を短くするためのものである。この実施の形態では、これらアンテナ本体81、平面アンテナ部材82、遅相板83によりラジアルラインスロットアンテナ(Radial Line Slot Antenna)が形成されている。
【0032】
このように構成されたアンテナ部8は、前記平面アンテナ部材82がカバープレート53に密接するように図示しないシール部材を介して処理容器5に装着されている。そしてこのアンテナ部8は同軸導波管84を介して外部のマイクロ波発生手段85と接続され、例えば周波数が2.45GHzあるいは8.3GHzのマイクロ波が供給されるようになっている。この際、同軸導波管84の外側の導波管84Aはアンテナ本体81に接続され、中心導体84Bは遅相板83に形成された開口部を介して平面アンテナ部材82に接続されている。
【0033】
前記平面アンテナ部材82は、例えば厚さ1mm程度の銅板からなり、図6に示すように例えば円偏波を発生させるための多数のスロット86が形成されている。このスロット86は略T字状に僅かに離間させて配置した一対のスロット86a,86bを1組として、周方向に沿って例えば同心円状や渦巻き状に形成されている。このようにスロット86aとスロット86bとを相互に略直交するような関係で配列しているので、2つの直交する偏波成分を含む円偏波が放射されることになる。この際スロット対86a,86bを遅相板83により圧縮されたマイクロ波の波長に対応した間隔で配列することにより、マイクロ波が平面アンテナ部材82より略平面波として放射される。本発明では、マイクロ波発生手段85、同軸導波管84、アンテナ部8によりプラズマ発生手段が構成されている。
【0034】
また処理容器5の底部には排気管54が接続されており、この排気管54は圧力調整手段をなす圧力調整部55を介して真空排気手段である真空ポンプ56に接続され、処理容器5内を所定の圧力まで真空引きできるようになっている。
【0035】
ここで、上述のプラズマ成膜装置の、マイクロ波発生手段85やバイアス用高周波電源52への電力供給、プラズマガスや原料ガスを供給するためのバルブV1、V2、V3の開閉や、流量調整手段101、102、103、圧力調整部55等はコンピュータからなる制御手段200により、所定の条件で上記の各膜の成膜が行われるようにステップが組まれたプログラムに基づいて制御されるようになっている。このプログラムは、フレキシブルディスクやコンパクトディスク、フラッシュメモリ、MO(Magneto-Optical Disk)等の記憶媒体201に格納されていて、制御手段200にインストールされる。
【0036】
続いてこの装置にて実施される本発明の成膜方法の一例として、既述のバリア膜13を成膜する場合について説明する。先ず図示しないゲートバルブを介して例えば表面に下層側の配線層が形成された基板であるウエハWを搬入して載置台51上に載置する。続いて処理容器5の内部を所定の圧力まで真空引きし、第1のガス供給路63を介して第1のガス供給部6にマイクロ波により励起されるプラズマ発生用ガス例えばアルゴンガスガスを所定の流量例えば流量例えば1000sccmで供給する。一方第2のガス供給路73を介して成膜用のガス供給部である第2のガス供給部7に成膜用のガスである窒素ガス及びトリメチルシランガスを夫々所定の流量例えば50sccm、40sccmで供給する。そして処理容器5内を例えば17.3Pa(130mTorr)のプロセス圧力に維持し、載置台51の表面温度を380℃に設定する。
【0037】
一方マイクロ波発生手段から2.45GHz,2500Wの高周波(マイクロ波)を供給すると、このマイクロ波は、TMモード或いはTEモード或いはTEMモードで同軸導波管84内を伝搬してアンテナ部8の平面アンテナ部材82に到達し、同軸導波管の内部導体84Bを介して、平面アンテナ部材82の中心部から周縁領域に向けて放射状に伝搬される間に、スロット対86a,86bからマイクロ波がカバープレート53、第1のガス供給部6を介して当該ガス供給部6の下方側の処理空間に向けて放出される。
【0038】
ここでカバープレート53と第1のガス供給部6はマイクロ波が透過可能な材質例えば酸化アルミニウムにより構成されているので、マイクロ波透過窓として作用し、マイクロ波はこれらを効率よく透過していく。このとき既述のようにスリット対86a,86bを配列したので、円偏波が平面アンテナ部材82の平面に亘って均一に放出され、この下方の処理空間の電界密度が均一化される。そしてこのマイクロ波のエネルギーにより、広い処理空間の全域に亘って高密度で均一なプラズマが励起される。そしてこのプラズマは、第2のガス供給部7の開口部74を介して当該ガス供給部7の下方側の処理空間に流れ込んで行き、当該ガス供給部7からこの処理空間に供給される成膜用のガスを活性化させて、つまりプラズマ化して活性種を形成する。
そしてこの活性種がウエハWの表面に輸送されるが、載置台51にはバイアス用高周波電源52から例えば10W程度の電力が印加されており、この電力によるエネルギーを受けながら活性種が堆積してバリア膜13であるSiCN膜が成膜される。
【0039】
こうしてバリア膜13を成膜した後、プラズマ発生用のガスと成膜用のガスとの供給を停止して、処理容器5内を真空排気する。そして、成膜用のガスをC5F8ガスに切り替えて、プラズマ発生用のガスとC5F8ガスとを処理容器5内に供給しながら処理容器5内を所定の真空雰囲気に維持し、マイクロ波発生手段からら2.45GHz,例えば2750Wの高周波を供給することにより、既述のCF膜20が成膜される。その後、CF膜20の成膜されたウエハWは、図示しないゲートバルブを介して処理容器5から搬出される。以上において、処理容器5内にウエハWを搬入し、所定の条件にて処理を行い、処理容器5から搬出されるまでの一連の動作は、既述のように制御手段200がプログラムを読み出しながら実行される。
【0040】
上述の実施の形態によれば、アルゴンガス、窒素ガス及びトリメチルシランガスをプラズマ化してこのプラズマにより、下層側の回路層の上にSiCN膜からなるバリア膜13を成膜するにあたり、ウエハWに対してバイアス用の高周波電力を供給している。このためプラズマ中のアルゴンイオンがウエハW側に引き込こまれてトリメチルシランの活性種やウエハWの表面に衝突し、その衝突に起因して、バリア膜13の緻密性が高くなり、その結果高いバリア性が得られる。その推定メカニズムとしては既に記載したとおりである。従って多層配線構造を形成した後に例えば400℃程度の加熱雰囲気でその構造体をアニールするときに、配線金属11から当該金属である例えば銅が上層側の層間絶縁膜であるCF膜20(図2(c)参照)へ拡散することを抑止し、また逆にCF膜20からの脱ガス成分であるフッ素が配線金属11に拡散することを抑止する効果が大きい。
【0041】
従って、バリア膜13をより薄くしながら、層間絶縁膜中への金属の拡散に基づくリーク電流の上昇を抑えると共に、配線金属11へのフッ素の拡散に基づく配線抵抗の上昇を抑えることができ、今後の半導体デバイスの微細化、高集積化に対して有効な技術である。特に比誘電率が低いことで層間絶縁膜の材料として着目されているCF膜は、加熱時にフッ素の脱ガスが問題となっていることから、本発明はCF膜による層間絶縁膜の実現化という観点からも極めて有効である。
【0042】
なお本発明により製造される半導体装置に使用される層間絶縁膜としては、CF膜に限るものではなく、シリコン、酸素、水素及び炭素等からなるSiCO膜、SiCOH膜、シリコン酸化膜にフッ素を添加したSiOF膜、あるいはシリコン酸化膜などであっても良い。
【0043】
ここでバリア膜13の成膜中の高周波のバイアス電力の大きさについては、後述の実施例から、バイアス電力が大きくなる程バリア膜13のバリア性能が向上すると考えられるが、20Wでは外観上の不具合が確認されたことから、15W以下であること、つまりウエハWへの単位面積あたりのバイアス供給電力値は0.048W/cm2(200mmサイズのウエハWの表面積314.16cm2に対する電力値)以下であることが好ましい。
【0044】
また上記のバリア膜13としては、SiCN膜だけでなく、例えば窒素ガスを用いずにトリメチルシランガスを成膜用のガスとして用いることにより成膜されるSiC膜であってもよい。
また例えば2−ブチンガス(C46)を成膜用のガスとして成膜したアモルファスカーボン膜であってもよい。この場合2−ブチンガスが好ましいが、1−ブチンガスであってもよいしエチレンガスやアセチレンガスなどであってもよい。そしてこのような炭化水素ガスに更にシリコンを含むガス例えばシラン系のガスを加えてシリコンを添加したアモルファスカーボン膜をバリア膜としてもよい。この場合のシラン系のガスとしては、モノシランガス、ジシランガスあるいはトリメチルシランガスなどを用いることができる。
更にまた本発明におけるガスのプラズマ化方式としてはマイクロ波を利用することに限らず例えば平行平板型プラズマ発生装置を用いてもよい。
【実施例】
【0045】
(実験例1:昇温脱離ガスの比較テスト)
実験には200mmサイズ(8インチサイズ)のシリコンウエハを用いた。先ず、既述のプラズマ成膜装置を用いて、ウエハ上にCF膜を成膜し、更にこの上に厚さ30nmのSiCN膜を成膜した。これらの膜の成膜条件としては、既述の条件を用いた。SiCN膜を成膜する時のバイアス電力としては、以下に示すように設定した。
(バイアス電力)
実施例1:30W
比較例1:なし
この2種類のウエハを加熱すると共に、これらのウエハから脱離するガス(HF、F)の量を昇温ガス脱離法により測定した。この結果を図7に示す。どちらのウエハについても、加熱温度を上げていくことによって、徐々にウエハからの脱ガス量が増えていくことが分かった。ところがバイアス電力を供給してSiCN膜を成膜した実施例1のウエハについては、HF及びFの脱ガスが極めて少なくなっていることが分かった。この脱ガスは、SiCN膜の下層側のCF膜から当該SiCN膜を抜け出してきたガスだと考えられる。このことから、バイアス電力を供給してSiCN膜を成膜することによって、SiCN膜に接している膜からの成分に対するSiCN膜のバリア性能が高まっていることが分かる。
【0046】
(実験例2:ウエハの深さ方向の元素の浸透試験)
上記の実験例1と同様にして積層体を作製した。なおバイアス電力については以下のように設定した。
(バイアス電力)
実施例2−1:5W
実施例2−2:10W
比較例2:なし
これらのウエハに対して、400℃の加熱雰囲気にて60分間アニールを行い、その後SIMS法により表層からの深さ方向に対するフッ素及び酸素の濃度プロファイルを調べたところ、図8に示す結果が得られた。この結果から分かるように、SiCN膜中にはフッ素及び酸素が含まれているが、その含有量は比較例、実施例2−1、2−2の順に少なくなっている。ここでSiCN膜中のフッ素については、成膜時及びアニール時の両工程中にSiCN膜の下層側のCF膜から拡散してきたもの、及びCF成膜時に処理容器の内壁に付着したフッ素がSiCN膜を成膜するときに飛散して混入したものと考えられる。従ってSiCN膜の成膜時においてもまたアニールを行うときにおいても、前記バイアス電力を大きくする程、CF膜から脱離したフッ素に対するSiCN膜のバリア性が高く、またSiCN膜の成膜時におけるフッ素の混入量が少なくなるということがいえる。
一方酸素については、SiCN膜の成膜時において処理容器5の内壁から飛散したものと考えられ、前記バイアス電力を大きくする程、SiCN膜の成膜時における酸素の混入量が少なくなっている。
CF膜から脱離したフッ素に対するSiCN膜のバリア性が高い理由としては、既述のようにアルゴンガスのイオンの衝撃によりSiCN膜が緻密化するためと考えられる。またSiCN膜の成膜時における雰囲気からのフッ素や酸素の取り込み量が少ない理由としては、アルゴンガスのイオンの衝撃によりこれら元素が飛散していくものと考えられる。
【0047】
(実験例3:成膜速度と屈折率)
上記の実験例1と同様にして積層体を作製し、SiCN膜の成膜時間は各ウエハ間で一定とした。なおバイアス電力については以下のように設定した。
(バイアス電力)
実施例3−1:5W
実施例3−2:10W
比較例3:なし
これらのウエハに成膜されたSiCN膜の膜厚から、SiCN膜の成膜速度を計算した。また、このSiCN膜の表面の屈折率を測定した。その結果、図9に示すように、バイアス電力を増やすほど成膜速度及び屈折率が向上していた。既述のように、アルゴンガスのイオンの衝撃によりSiCN膜の表面にはダングリングボンドが生成し、これにより基板の表面に対する活性種の付着確率が高まり、その結果成膜速度が向上していると考えられる。また、屈折率と膜密度とは共に増減する相関関係があることから、屈折率の向上によりSiCN膜の膜密度についても増加していると推測できる。
【0048】
(実験例4:外観と密着性)
以上の実験から、バイアス電力を増やすにつれてSiCN膜のバリア性能が向上することが分かったが、このようにバイアス電力を増やしても他の特性において問題が出ないかを確認するために次のような試験を行った。まず上記の実験例1と同様にして積層体を作成した。そして試験としては、膜の外観の確認とSiCN膜の密着性の確認とを行った。膜の外観確認には、SEMを用いて積層体の断面を観察することによって行った。また、SiCN膜の密着性にはテープテスト、即ちウエハをダイヤモンドカッターにより5mm角となるように溝入れした後、ウエハ全面に粘着テープを貼りこのウエハに貼った粘着テープを剥がすことによって、SiCN膜の密着強度を評価した。この評価を行うにあたり、SiCN膜を成膜するときの加熱温度とバイアス電力とのプロセス条件を以下のように種々変えて、上記の積層構造のウエハを作製した。
(プロセス条件)
加熱温度(℃):150、200、250、300、340、380、420℃
バイアス電力(W):0、5、10、15、20
結果は図10に示すとおりである。この結果から、SiCN膜の成膜時の加熱温度が低くなるにつれて、外観及びSiCN膜の密着性が共に悪化していた。また、バイアス電力が20W以上では、積層体断面にボイドが発生していた。これらのことから、SiCN膜を成膜するときのバイアス電力としては、15W以下、つまり0.048W/cm2(200mmサイズのウエハの表面積314.16cm2に対する電力値)とすることが好ましいことが分かった。また、SiCN膜を成膜するときのウエハの加熱温度としては、340℃以上が好ましいことが分かった。
【0049】
(実験例5:SiCN膜とCF膜との密着強度の試験1)
上記の実験例1と同様にして積層体を作製し、以下のようにバイアス電力を設定した。
(バイアス電力)
実施例5:30W
比較例5:なし
これらのウエハに対して、4ポイントベンディング法と呼ばれる強度試験により、SiCN膜とCF膜の界面が破断するまでウエハの膜厚方向に対して荷重を加え、破断時における荷重の大きさから、SiCN膜とCF膜との密着強度を測定した(4ポイントベンディング法の詳細については、Journal of Applied Mechanics:MARCH 1989、Vol56 Page77−82参照)。具体的には、図11に示すように前記積層構造のウエハ300ともう一枚のベアウエハ301をエポキシ樹脂で接着した後、ベアウエハ側にノッチを掘りサンプルを作る。このサンプルを左右に並行に並べた2本の支持棒302の上に載せ、サンプルの上面における前記2本の棒よりも左右外側位置を夫々2本の押圧用の棒303により押圧して当該ウエハに荷重を加えている。そして界面が破断したか否かは、膜厚方向の変位の推移に基づいて判定している。
この試験を夫々のウエハに対して7回行い、破断時の荷重を平均したところ図12に示す結果が得られた。この結果から実施例4では7.7J/m2、比較例4では6.0J/m2となった。従って、バイアス電力を供給しながらSiCN膜を成膜することにより、SiCN膜とCF膜との間における密着強度が向上することが分かった。
【0050】
(実験例6:SiCN膜とCF膜との密着強度の試験2)
実験例4と実験例5との結果から、バイアス電力が15W以下の領域をさらに詳細に調べた。上記の実験例1と同様にして積層体を作成し、以下のようにバイアス電力を設定した。
(バイアス電力)
実施例6:3W、5W、10W、15W
比較例6:なし
これらのウエハに対して、既述の4ポイントベンディング法によりSiCN膜とCF膜の密着強度を測定した。その結果、図13に示すように、3W〜15W(0.0095〜0.047W/cm2)の全領域に対して、バイアス電力を印加する効果が得られた。
【0051】
(実験例7:SiCN膜とCF膜との密着強度の試験3)
バリア膜であるSiCN膜とこの下層の絶縁膜であるCF膜との密着力は、ある意味で積層銅配線構造の半導体デバイスを製作する上でキーポイントとなる。このため更なる密着力の向上を図るべく、本発明者らはCF膜の表面を改質する方法を考えた。具体的にはCF膜を成膜後、この表面に窒素プラズマやアルゴン等の希ガスプラズマを、ウエハにバイアス電力を印加しつつ作用させ、窒素イオンあるいはアルゴンイオンをCF膜表面に照射する(以後この処理をバイアスプラズマ処理と称す)ことである。これによりCF膜表面が改質され、つまりイオンによってCF膜表面のフッ素が脱離し、炭素リッチになるため、その後の熱処理時(成膜時やアニール処理時等)にCF膜から脱離するガスが減少し、またCF膜表面が適度に荒らされアンカー効果により密着性が向上すると考えた。
【0052】
また膜がイオンにより叩かれるため膜表面にダングリングボンドが形成され、この部分にその後に成膜されるSiCN膜用のプリカーサが結合するため、より密着性が向上するとも考えた。この考えに基づき既述の方法でCF膜を成膜後、図14、図15に示す組合せでウエハにバイアスプラズマ処理を施し、この後SiCN膜をバイアス電力の印加なしの条件で成膜して積層し、4ポイントベンディング法により密着性を評価した。図14はN2によるバイアスプラズマ処理した結果であり、図15はArによるバイアスプラズマ処理した結果である。なお結果の数値の10以上については四捨五入している。
【0053】
これによれば、若干窒素プラズマ処理したほうがその数値が高いとも思われるが両者とも明確な優劣はなく、何れの値も従来の技術である比較例4の6.0J/m2の値を上回っている。特にアルゴン、窒素何れのバイアスプラズマ処理においても従来値の2倍を超える値を示すものが見られるが、15Wに近づくにつれその値は減少傾向を示している。従ってCF膜のバイアスプラズマ処理時のバイアス電力値は、3W〜15W(0.0095〜0.047W/cm2)が好ましいといえる。図14、図15中にはCF膜のバイアスプラズマ処理と共にSiCN膜の成膜時にバイアス電力を印加するものに関するデータは記載されていないが、別途の実験によりアルゴン、窒素何れのプラズマによってCF膜をバイアスプラズマ処理しても、ほぼ11.3J/m2の値を得ている。従ってCF膜の表面をバイアスプラズマ処理しておけば、その後のSiCN膜の成膜方法如何にかかわらず、CF膜とSiCN膜との間の密着性を向上させることができる。
【0054】
また本発明者らは更に過酷な試験を実施した。これはCF膜をバイアスプラズマ処理した後SiCN膜(成膜中のバイアスなし)を積層し、さらにこの上にSiO2膜を積層した積層体を作成し、この試験ウエハを400℃、60分間アニールするものである。この後、試験ウエハを表面観察およびテープテストを実施した。表面観察は、CF膜からの脱ガスの痕跡であるブリスター(気泡)の数をカウントし、テープテストは既述の方法で行った。その結果を図16に示す。
【0055】
ここでテープテストの結果である、○は5mm角の小片が1つも剥がれなかったものであり、△はウエハ全面から半分くらい剥がれたものであり、××は全面剥がれてしまったものであり、×は△と××の中間くらいが剥がれたものである。この試験は、実際の半導体デバイスを作成する過程で経るサーマルバジェット(熱履歴)を超える過酷なものであることから、○と△を良品とすると、バイアスプラズマ処理時のバイアス電力値は、上記3W〜15Wの内、さらに好ましくは8〜12W(0.025〜0.038W/cm2)であるといえる。このように高くても15Wという低バイアスでCF膜表面を処理することにより、CF膜にダメージを与えることなく、膜の極く表面のみのフッ素を脱離させることにより密着性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0056】
5 処理容器
6 第1のガス供給部
7 第2のガス供給部
W ウエハ
10 CF膜
20 CF膜
15 凹部
16 バリアメタル膜
17 銅金属
51 載置台
52 バイアス用高周波電源
57 ヒータ
81 アンテナ本体
85 マイクロ波発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置における配線金属とフッ素添加カーボン膜からなる層間絶縁膜との間に介在するバリア膜を成膜する方法において、
処理容器内に、有機化合物を含む成膜用のガスと、成膜用のガスのプラズマ化を促進するためのプラズマ発生用のガスと、を供給する工程と、
基板が載置される載置部と対向して前記処理容器の上部に設けられると共に周方向に沿って多数のスリットが形成された平面アンテナ部材から前記処理容器内にマイクロ波を供給することにより、前記処理容器内のプラズマ発生用のガスと成膜用のガスとをプラズマ化し、そのプラズマにより基板上にシリコンと炭素とを含むバリア膜を成膜する工程と、
この工程が行われている間に、前記載置部にバイアス用の高周波電力を印加する工程と、を備え、
基板に供給される単位面積当たりのバイアス用の高周波電力は、0.047W/cm2以下であることを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記バリア膜はSiCN膜であることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
基板に供給される単位面積当たりのバイアス用の高周波電力は、0.0095W/cm2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜方法。
【請求項4】
基板に供給される単位面積当たりのバイアス用の高周波電力は、0.025〜0.038W/cm2であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記バリア膜は、SiC膜であることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記成膜用のガスは、ブチンガスとシラン系のガスとを含み、
前記バリア膜は、シリコンを含むアモルファスカーボン膜であることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載された成膜方法により成膜されたバリア膜を備えたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−71510(P2011−71510A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206807(P2010−206807)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【分割の表示】特願2007−256330(P2007−256330)の分割
【原出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】