接合ガラスの切断方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計
【課題】接合ガラスの一方の面に溝を精度よく、かつ効率よく形成する。
【解決手段】接合ガラス60の一方の面50b側から接合材23を撮像することで、一方の面50b側から接合ガラス60に照射可能なレーザー光R2を接合材23に合焦させる第1焦点調整工程と、第1焦点調整工程の後、レーザー光R2の焦点を、接合ガラス60の厚さ方向に沿った接合ガラス60の一方の面50b側に向けて、照射がなされるガラス基板50の推定厚さ分、移動させる第2焦点調整工程と、第2焦点調整工程の後、レーザー光R2を照射して一方の面50bに被検出部Dを形成する被検出部形成工程と、一方の面50b側から被検出部Dを撮像することで、レーザー光R2を被検出部Dに合焦し直す第3焦点調整工程と、第3焦点調整工程の後、レーザー光R2を切断予定線に沿って照射して、一方の面50bに溝M’を形成する溝形成工程とを有する接合ガラスの切断方法を提供する。
【解決手段】接合ガラス60の一方の面50b側から接合材23を撮像することで、一方の面50b側から接合ガラス60に照射可能なレーザー光R2を接合材23に合焦させる第1焦点調整工程と、第1焦点調整工程の後、レーザー光R2の焦点を、接合ガラス60の厚さ方向に沿った接合ガラス60の一方の面50b側に向けて、照射がなされるガラス基板50の推定厚さ分、移動させる第2焦点調整工程と、第2焦点調整工程の後、レーザー光R2を照射して一方の面50bに被検出部Dを形成する被検出部形成工程と、一方の面50b側から被検出部Dを撮像することで、レーザー光R2を被検出部Dに合焦し直す第3焦点調整工程と、第3焦点調整工程の後、レーザー光R2を切断予定線に沿って照射して、一方の面50bに溝M’を形成する溝形成工程とを有する接合ガラスの切断方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合ガラスの切断方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子としては、例えば互いに接合されたベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
ここで、上述した圧電振動子を製造する際には、リッド基板用ウエハにキャビティ用の凹部を形成する一方、ベース基板用ウエハ上に圧電振動片をマウントした後、両ウエハを接合層を介して陽極接合し、複数のパッケージがウエハの行列方向に形成されたウエハ接合体とする。そして、ウエハ接合体に形成された各パッケージ毎(キャビティ毎)にウエハ接合体を切断することで、キャビティ内に圧電振動片が気密封止された複数の圧電振動子(パッケージ)を製造するものである。
【0004】
ところで、ウエハ接合体の切断方法としては、例えば歯先にダイヤモンドが付着したブレードを用い、ウエハ接合体を厚さ方向に沿って切断(ダイシング)する方法が知られている。
しかしながら、ブレードによる切断方法では、ブレードの幅を考慮した切断代をキャビティ間に設ける必要があるため、1枚のウエハ接合体から取り出せる圧電振動子の数が少ないこと、また切断時におけるチッピングの発生、切断面が粗いこと等の問題があった。
また、加工速度が遅いため、生産効率が悪いという問題もあった。
【0005】
また、金属棒の先端にダイヤモンドを埋め込み、このダイヤモンドによってウエハ接合体の表面における切断予定線に沿って傷(スクライブライン)を付けた後、スクライブラインに沿って割断応力を加えて切断する方法も知られている。
しかしながら、上述の方法では、スクライブラインに無数のチッピングが発生するため、ウエハが割れやすく、また切断面の表面精度も粗くなるという問題がある。
【0006】
そこで、上述のような問題に対応するために、ウエハ接合体をレーザーにより切断する方法が開発されている。このような方法としては、例えば特許文献1に示されるように、ウエハ接合体の内部に集光点を合わせてレーザー光を照射し、ウエハ接合体の切断予定線に沿って多光子吸収による改質領域を形成する。そして、ウエハ接合体に割断応力(衝撃力)を加えることにより、改質領域を起点としてウエハ接合体を切断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のようにウエハ接合体をレーザーにより切断する方法として、ウエハ接合体の表面における切断予定線に沿ってレーザー光を照射してスクライブラインを形成した後、スクライブラインに沿って割断応力を加えて切断する方法も考えられる。
【0009】
ここで、ベース基板用ウエハの厚さ、リッド基板用ウエハの厚さおよび接合膜の厚さは、ウエハ接合体ごとにばらつきがあり、ウエハ接合体全体の厚さも1つずつ異なる。そのため、ウエハ接合体の表面にスクライブラインを形成するときに、レーザー光の焦点位置を一定にしておくと、ウエハ接合体の厚さの違いに起因して、ウエハ接合体ごとにスクライブラインの深さ、幅などがばらつき均一にならない。この場合、圧電振動子の品質に影響を与えるおそれがある。
したがって、ウエハ接合体の表面にレーザー光の焦点を合わせる作業を、ウエハ接合体のそれぞれについて行う必要があり、加工に時間を要するものであった。しかも、このように焦点を合わせる際、ウエハ接合体の表面の小さな擦れ痕や異物などを指標として焦点を合わせる場合が多いので、余計に時間がかかり易い。
また、ウエハ接合体の厚さを1つずつ予め測定しておき、この測定結果に基づいてレーザー光の焦点位置を調整することも考えられる。しかしながらこの場合、ウエハ接合体の厚さを測定する手間がかかり、製造効率が悪くなる。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、接合ガラスの一方の面に溝を精度よく、かつ効率よく形成することができる接合ガラスの切断方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る接合ガラスの切断方法は、複数のガラス基板の接合面同士が接合材を介して接合されてなる接合ガラスを、切断予定線に沿って切断する接合ガラスの切断方法であって、前記接合ガラスの一方の面側から前記接合材を撮像することで、前記一方の面側から前記接合ガラスに照射可能なレーザー光を前記接合材に合焦させる第1焦点調整工程と、前記第1焦点調整工程の後、前記レーザー光の焦点を、前記接合ガラスの厚さ方向に沿った前記接合ガラスの一方の面側に向けて、前記照射がなされる前記ガラス基板の推定厚さ分、移動させる第2焦点調整工程と、前記第2焦点調整工程の後、前記レーザー光を照射して前記一方の面に被検出部を形成する被検出部形成工程と、前記一方の面側から前記被検出部を撮像することで、前記レーザー光を前記被検出部に合焦し直す第3焦点調整工程と、前記第3焦点調整工程の後、前記レーザー光を前記切断予定線に沿って照射して、前記切断予定線に沿って前記一方の面に溝を形成する溝形成工程と、前記切断予定線に沿って割断応力を加えることで、前記切断予定線に沿って前記接合ガラスを切断する切断工程とを有することを特徴とする。
なお、前記照射がなされる前記ガラス基板は、複数のガラス基板のうち、接合ガラスの一方の面を構成するガラス基板である。
【0012】
この発明によれば、第1焦点調整工程により接合材に対して正確にレーザー光を合焦させた後、第2焦点調整工程を経て、接合ガラスの一方の面に被検出部を形成するので、レーザー光が照射されないガラス基板の厚さや、接合材の厚さ等に作用されずに、前記一方の面上に確実に被検出部を形成することができる。したがって、溝形成工程の際、第3焦点調整工程によって被検出部に合焦されたレーザー光を用いて溝を形成することにより、この溝を一方の面に精度よく形成することができる。
このように、接合ガラスの厚さを1つずつ測定するといった作業を何ら行うことなく、溝を効率よく形成することができる。
【0013】
さらに第1焦点調整工程の際、ガラス基板同士を接合する接合材を撮像しているので、第1焦点調整工程を行うために、新たな構成要素を接合ガラスに付加する必要がなく、接合ガラスの構造が複雑になるのを抑制するとともに、接合ガラスの切断を効率よく行うことができる。
また、被検出部形成工程の際に形成した被検出部を撮像することにより、レーザー光を被検出部に対して正確かつ円滑に合焦し直すことができる。したがって、擦れ痕や異物などを指標として撮像する場合とは異なり、前述の作用効果が顕著に奏される。
そして、第1焦点調整工程から溝形成工程を一連の流れとして連続して行うことができるので、接合ガラスに予め被検出部のような構成を形成しておく必要がなく、接合ガラスの切断を一層効率よく行うことができる。
【0014】
また、前記被検出部形成工程の際、前記被検出部を、前記切断予定線に平行な直線状に形成してもよい。
【0015】
この発明によれば、被検出部形成工程の際、被検出部を直線状に形成するので、第3焦点調整工程の際、被検出部の延在方向に沿った複数箇所においてレーザー光を合焦し直すことが可能になり、溝を一方の面に一層精度よく形成することができる。
またこのとき、被検出部を、切断予定線に平行な直線状に形成するので、レーザー光を照射する照射部の装置構成の簡素化を図ることができる。
【0016】
また、前記接合ガラスの切断方法を使用して、前記接合ガラスの内側に電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージを製造する方法であって、前記切断工程では、複数の前記パッケージの形成領域を隔する前記切断予定線に沿って前記接合ガラスを切断してもよい。
【0017】
この発明によれば、上記本発明の接合ガラスの切断方法を使用してパッケージを製造することで、接合ガラスの一方の面に溝を精度よく、かつ効率よく形成することができる。よって、1枚の接合ガラスから良品として取り出されるパッケージの数を増加することができるとともに、歩留まりを向上させることができる。
【0018】
また、前記被検出部形成工程の際、前記一方の面のうち、前記パッケージの形成領域を外した部分に前記被検出部を形成してもよい。
【0019】
この発明によれば、被検出部形成工程の際、接合ガラスの一方の面のうち、パッケージの形成領域を外した部分に被検出部を形成するので、歩留まりを確実に向上させることができる。
【0020】
また、前記パッケージの製造方法を用いて形成されたパッケージであって、前記接合ガラスの前記一方の面により構成される面の外周縁部に、前記溝が割断されてなる面取り部を有していてもよい。
【0021】
この発明によれば、面取り部が形成されているので、切断されたパッケージを取り出す際に、仮にパッケージを取り出すための器具がパッケージの角部に接触した場合であっても、接触によるチッピングの発生を抑制することができるので、チッピングをきっかけにパッケージが割れることがない。これにより、キャビティ内の気密を確保することができ、信頼性の高いパッケージを提供することができる。
なお、面取り部は、レーザーにより溝を形成した後、溝(切断予定線)に沿って接合ガラスを切断することで自動的に形成することができるので、切断後のパッケージに別工程としてそれぞれ面取り部を形成する必要がない。その結果、面取り部を別工程で形成する場合に比べてコスト上昇を抑制するとともに、作業効率を向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記パッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【0023】
この発明によれば、キャビティ内の気密性を確保し、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0024】
また、本発明に係る発振器は、前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電子機器は、前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電波時計は、前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る接合ガラスの切断方法によれば、接合ガラスの一方の面に溝を精度よく、かつ効率よく形成することができる。
また、本発明に係るパッケージの製造方法によれば、上記本発明の接合ガラスの切断方法を使用してパッケージを形成することで、1枚の接合ガラスから良品として取り出されるパッケージの数を増加することができ、歩留まりを向上させることができる。
また、本発明に係るパッケージによれば、上記本発明の接合ガラスの切断方法を使用してパッケージが形成されているので、キャビティ内の気密を確保することができ、信頼性の高いパッケージを提供することができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、キャビティ内の気密性を確保し、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。
【図2】本発明に係る圧電振動子をベース基板側から見た外観斜視図である。
【図3】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態を示す圧電振動片の平面図である。
【図4】図3に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図5】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図6】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ接合体の分解斜視図である。
【図8】個片化工程の流れを示すフローチャートである。
【図9】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図10】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図11】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す平面図である。
【図12】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図13】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図14】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図15】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図16】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図17】トリミング工程を説明するための説明図であり、ウエハ接合体のリッド基板用ウエハを取り外した状態を示すベース基板用ウエハの平面図である。
【図18】保護膜形成工程を説明するための図であって、複数の圧電振動子がUVテープに貼り付けられた状態を示す断面図である。
【図19】マーキング工程を説明するための図であって、図1に相当する圧電振動子の外観斜視図である。
【図20】本発明に係る発信器の一実施形態を示す構成図である。
【図21】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図22】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図であり、図2はベース基板側から見た外観斜視図である。また図3は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図4は図3に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図5は圧電振動子の分解斜視図である。なお、図14では、後述する保護膜を鎖線で示しているとともに、図5では、この保護膜の図示を省略している。
図1〜図5に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板(第2基板)3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の裏面2a(図4中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0029】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対のスルーホール21,22が形成されている。スルーホール21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2b(図4中上面)に向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
【0030】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の裏面3b(図4中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材(接合膜)23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の裏面3b側には、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとが形成されている。
また、リッド基板3の上部周縁には、圧電振動子1の製造工程における後述するスクライブ工程時において、リッド基板3の角部が面取りされた面取り部90が形成されている。
【0031】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0032】
このように構成された圧電振動片5は、図3,図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。
これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0033】
そして、ベース基板2の表面2b側(リッド基板3が接合される接合面側)には、Alからなる陽極接合用の接合材23が形成されている。この接合材23は、膜厚が例えば3000Å〜5000Å程度に形成され、リッド基板3の額縁領域3cに対向するようにベース基板2の外周部分に沿って形成されている。そして、接合材23とリッド基板3の額縁領域3cとが陽極接合されることで、キャビティCが真空封止されている。なお、接合材23の側面は、ベース基板2及びリッド基板3の側面2c、3e(パッケージ10の側面(外側面)10a)と略面一に形成されている。
【0034】
外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2a(ベース基板2における接合面とは反対側の面)における長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。なお外部電極6,7の側面(外周縁)は、ベース基板2の側面2cよりも内側に位置している。
【0035】
貫通電極8,9は、焼成によってスルーホール21,22に対して一体的に固定された筒体32及び芯材部31によって形成されたものであり、スルーホール21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0036】
筒体32は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32の中心孔を貫通するように配されている。また、本実施形態ではスルーホール21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、スルーホール21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これらスルーホール21,22に対して強固に固着されている。
上述した芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、貫通電極8,9は、導電性の芯材部31を通して電気導通性が確保されている。
【0037】
ここで、図1〜図5に示すように、パッケージ10には、リッド基板3の表面3dからベース基板3の側面3e及びベース基板2の側面2c(パッケージ10の側面10a)の全域を覆うように保護膜11が形成されている。保護膜11は、シリコン(Si)、クロム(Cr)またはチタン(Ti)等、接合材23よりも耐腐食性が高い(イオン化傾向が小さい)金属材料からなり、これら金属材料のうち、本実施形態ではSiまたはCrが好適に用いられている。これにより、保護膜11とベース基板2及びリッド基板3との密着性を向上させ、保護膜11と基板2,3との間に隙間ができたり、保護膜11が剥離したりするのを抑制できる。
【0038】
保護膜11は、リッド基板3の表面(リッド基板3における接合面とは反対側の面)3d上において、例えば膜厚が1000Å程度に形成されている。そして、リッド基板3の表面3d上には、レーザー光R3(図19参照)により保護膜11の一部が除去されることで、製品の種類や、製品番号、製造年月日等が刻印されたマーキング13が施されている(図19参照)。なお、マーキング13を施すためには、レーザー光R3の吸収率が高いSiにより保護膜11を形成することが好ましい。
【0039】
また、保護膜11は、パッケージ10の側面10a上において、例えば膜厚が300〜400Å程度に形成されており、ベース基板2及びリッド基板3の間から外部に露出している接合材23を覆うように形成されている。そして、保護膜11の周縁端部(図4中下端部)は、ベース基板2の裏面2aと略面一に形成されている。すなわち、ベース基板2の裏面2aには保護膜11が形成されていない。この場合、上述したように外部電極6,7の側面は、ベース基板2の側面2cよりも内側に位置しているため、保護膜11の周縁端部と外部電極6,7との間は間隙部12を挟んで離間配置されている。これにより、保護膜11の材料に導電性材料を用いた場合であっても、外部電極6,7間が保護膜11によって架け渡されることがないので、外部電極6,7の短絡を防止できる。
【0040】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0041】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
初めに、図6に示すように、圧電振動片作製工程を行って図1〜図5に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0042】
(第1のウエハ作成工程)
図7は、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態で、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ接合体の分解斜視図である。
次に、図7に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(図7における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の少なくとも裏面50a側を研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。以上により、第2のウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0043】
(第2のウエハ作成工程)
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極8,9を配置するためのスルーホール21,22を複数形成するスルーホール形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の裏面(接合ガラスの他方の面)40bから凹部を形成した後、ベース基板用ウエハ40の少なくとも表面40a側から研磨することで、凹部を貫通させ、スルーホール21,22を形成することができる。
【0044】
続いて、スルーホール形成工程(S32)で形成されたスルーホール21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。これにより、スルーホール21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の表裏面40a,40b(図7における上下面)に対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極8,9を形成することができる。
【0045】
次に、ベース基板用ウエハ40の表面40aに導電性材料をパターニングして、接合材23を形成する接合材形成工程を行う(S34)とともに、引き回し電極形成工程を行う(S35)。なお、接合材23はベース基板用ウエハ40におけるキャビティCの形成領域以外の領域、すなわちリッド基板用ウエハ50の裏面50aとの接合領域の全域に亘って形成する。このようにして、第2のウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0046】
次に、第2のウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0047】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合したウエハ接合体60(例えば、厚さ0.4mmt〜0.9mmt程度)を得ることができる。そして、本実施形態のように両ウエハ40,50同士を陽極接合することで、接着剤等で両ウエハ40,50を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれや、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、両ウエハ40,50をより強固に接合することができる。
【0048】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。
【0049】
(個片化工程)
図8は、ウエハ接合体の個片化工程の手順を示すフローチャートである。また、図9〜図11、図13〜図16はウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図であり、個片化工程を説明するための工程図である。
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ接合体60を切断(割断)して個片化する個片化工程を行う(S90)。
個片化工程(S90)では、図8,図9に示すように、まずUVテープ80及びリングフレーム81を用いて、ウエハ接合体60を保持するためのマガジン82を作成する(S91)。リングフレーム81は、その内径がウエハ接合体60の直径よりも大径に形成されたリング状の部材であり、厚さ(軸方向における長さ)がウエハ接合体60と同等に形成されている。また、UVテープ80はポリオレフィンからなる可撓性を具備するシート材に紫外線硬化樹脂、例えばアクリル系の粘着剤(粘着層)が塗布されたものであり、具体的には電気化学工業製のUHP−1525M3や、リンテック製のD510T等が好適に用いられている。また、UVテープ80は、比較的厚さの厚いものを用いることが好ましく、具体的には厚さが160μm以上180μm以下程度のものを用いることが好ましい。本実施形態では、例えば175μm程度のUVテープ80が好適に用いられている。
【0050】
マガジン82は、リングフレーム81の一方の面81aから、貫通孔81bを塞ぐようにUVテープ80を貼り付けることで作成することができる。そして、リングフレーム81の中心軸とウエハ接合体60の中心軸とを一致させた状態で、UVテープ80の粘着面にウエハ接合体60を貼着する(S92)。具体的には、ベース基板用ウエハ40の裏面40b側(外部電極側)を、UVテープ80の粘着面に貼着する。これにより、ウエハ接合体60がリングフレーム81の貫通孔81b内にセットされた状態となる。この状態で、ウエハ接合体60をレーザースクライブ装置(不図示)に搬送する(S93)。
【0051】
図17は、トリミング工程を説明するための説明図であり、ウエハ接合体のリッド基板用ウエハを取り外した状態を示すベース基板用ウエハの平面図である。
ここで、図10,図17に示すように、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40とを接合している接合材23を剥離するトリミング工程を行う(S94)。トリミング工程(S94)では、接合材23の吸収帯域波長の光を出射するレーザー、例えば波長が532nmの第2高調波レーザーからなる第1レーザー87を用い、レーザー光R1の照射領域の接合材23を溶融させる。この場合、第1レーザー87から出射されたレーザー光R1は、ビームスキャナ(ガルバノメーター)によって反射された後、Fθレンズを介して集光される。そして、集光されたレーザー光R1をウエハ接合体60におけるリッド基板用ウエハ50の表面(接合ガラスの一方の面)50b側から照射しながら、レーザー光R1とウエハ接合体60とを平行に相対移動させる。具体的には、各キャビティCを仕切る隔壁上、すなわち圧電振動子1の輪郭線(切断予定線)M(図7参照)に沿って第1レーザー87を走査する。
【0052】
なお、トリミング工程(S94)におけるレーザー光R1のスポット径は、例えば10μm以上30μm以下程度に設定されている。また、トリミング工程(S94)のその他の条件としては、例えば第1レーザー87の加工点平均出力が1.0W、周波数変調が20kHz、走査速度が200mm/sec程度に設定することが好ましい。
これにより、輪郭線M上の接合材23がレーザー光R1を吸収して加熱されることで、接合材23が溶融し、レーザー光R1の照射領域(輪郭線M)より外側へ収縮する。その結果、両ウエハ40,50の接合面(リッド基板用ウエハ50の裏面50a及びベース基板用ウエハ40の表面40a)上に、接合面から接合材23が剥離されてなるトリミングラインTが形成される。
【0053】
ここで図11に示すように、上述したレーザースクライブ装置には、前記第1レーザー87とは異なる第2レーザー88が備えられている。第2レーザー88は、リッド基板用ウエハ50(ソーダ石灰ガラス)の吸収帯域波長の光を出射するレーザー、例えば波長が266nmのUV−Deepレーザーにより構成することが可能であり、第2レーザー88から照射された第2レーザー光R2は、図示しない対物レンズを介して集光される。第2レーザー88は、ウエハ接合体60におけるベース基板用ウエハ50の表面50b側から、ウエハ接合体60に第2レーザー光R2を照射する。
さらに上記レーザースクライブ装置には、上述した対物レンズを介してウエハ接合体40を撮像する図示しない撮像手段と、上記対物レンズをウエハ接合体60に対してその厚さ方向に進退させる進退手段と、が備えられている。
【0054】
そこで本実施形態では、上述したトリミング工程(S94)の後、ベース基板用ウエハ50の表面50b側から接合材23を撮像することで、第2レーザー光R2を接合材23に合焦させる第1焦点調整工程を行う(S95)。なお、第2レーザー光R2の焦点の調整は、例えば、上記撮像手段により上記対物レンズを介して撮像した接合材23の撮像結果におけるコントラストに基づいて、上記対物レンズの位置を上記進退手段により移動させること等により行うことが可能である。
この第1焦点調整工程(S95)を行うことで、第2レーザー光R2は、接合材23におけるベース基板用ウエハ50の裏面50aとの界面に合焦されることとなる。
【0055】
その後、第2レーザー光R2の焦点を、ウエハ接合体60の厚さ方向に沿ったリッド基板用ウエハ50の表面50b側に向けて、リッド基板用ウエハ50(照射がなされるガラス基板)の推定厚さL分、移動させる第2焦点調整工程を行う(S96)。なお、第2レーザー光R2の焦点の移動は、例えば推定厚さLに基づいて、上記対物レンズの位置を上記進退手段により移動させること等により行うことが可能である。また、上記推定厚さLとしては、例えばリッド基板用ウエハ50の厚さの設計値などを採用することが可能である。
【0056】
図12は、ダミーライン形成工程を説明するための説明図であり、ウエハ接合体の平面図である。
そして図11および図12に示すように、第2焦点調整工程(S96)の後、第2レーザー光R2をウエハ接合体60に照射し、リッド基板用ウエハ50の表面50bにダミーライン(被検出部)Dを形成するダミーライン形成工程(被検出部形成工程)を行う(S97)。このとき図13に示すように、ダミーラインDを切断予定線Mに平行な直線状に形成する。さらにこのとき、リッド基板用ウエハ50の表面50bのうち、パッケージ10の形成領域である中央部を外した外周縁部にダミーラインDを形成する。
【0057】
次いで、リッド基板用ウエハ50の表面50b側からダミーラインDを撮像することで、第2レーザー光R2をダミーラインDに合焦し直す第3焦点調整工程を行う(S98)。このとき、第2レーザー光R2の焦点の調整は、上述した第1焦点調整工程と同様の方法により行うことが可能である。
【0058】
そして図13に示すように、リッド基板用ウエハ50における表面50bの表層部分にレーザー光R2を照射し、ウエハ接合体60にスクライブラインM’を形成する(S95:スクライブ工程)。スクライブ工程(S95)では、上述した第2レーザー88を用い、レーザー照射領域のリッド基板用ウエハ50の表層部分を溶融させる。具体的には、トリミング工程(S94)と同様に、第2レーザー88とウエハ接合体60とを平行に相対移動させ、圧電振動子1の輪郭線Mに沿って第2レーザー88を走査する。すると、リッド基板用ウエハ50の表層部分がレーザー光R2を吸収して加熱されることで、リッド基板用ウエハ50が溶融し、V溝状のスクライブラインM’が形成される。なお、上述したように第1レーザー87と第2レーザー88とは、各圧電振動子1の輪郭線Mに沿って走査される。これにより、接合材23が剥離されたトリミングラインTとスクライブラインM’とは、ウエハ接合体60を厚さ方向からみて重なるように配置されることになる。
【0059】
本実施形態のスクライブラインM’は、幅寸法が14μm程度、深さ寸法が11μm程度に形成されている。なお、幅寸法Wに対する深さ寸法Dの倍率を同等に設定することがより好ましい。なお、スクライブ工程(S95)のその他の条件としては、例えば第2レーザー88の加工点出力が250mW〜600mW、パルスエネルギーが100μJ、加工閾値フルーエンスが30J/(cm2・pulse)、走査速度が40mm/sec〜60mm/sec、アパーチャーが10mm、周波数が65kHz程度に設定することが好ましい。
なおこの後、スクライブラインM’を形成する際に生じたデブリを除去するデブリ除去工程を行ってもよい。
【0060】
次に、スクライブラインM’が形成されたウエハ接合体60を、1つ1つのパッケージ10に切断する切断工程を行う(S100)。
切断工程(S100)では、まず図14に示すように、リングフレーム81の他方の面81cに、貫通孔81bを塞ぐようにセパレーター(保護シート)83を貼り付ける(S101)。セパレーター83は、ブレーキング工程(S103)において、リッド基板用ウエハ50の表面50bを保護するとともに、UVテープ80とセパレーター83とによってリングフレーム81を塞ぐことで、ブレーキング時に発生する微小な塵埃等が後述するブレーキング装置79内へ飛散することを防ぐためのものである。このようなセパレーター83は、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(いわゆる、PET材)等によって、厚さが20μm以上30μm以下に形成されており、本実施形態では厚さ25μmのセパレーター83を用いている。セパレーター83の厚さが20μmよりも薄いと、後述するブレーキング工程(S103)において、セパレーター83がウエハ接合体60とともに切断される虞があるため好ましくない。一方、セパレーター83の厚さが30μmよりも厚いと、セパレーター83からウエハ接合体60に作用する割断応力がセパレーター83で緩和され、ウエハ接合体60がスムーズに切断されず、切断面の表面精度が低下する虞があるため好ましくない。
【0061】
そして、ウエハ接合体60は、UVテープ80とセパレーター83とにより挟持された状態で、リングフレーム81の貫通孔81b内に保持される。この状態でウエハ接合体60をブレーキング装置79内に搬送する(S102)。
【0062】
ブレーキング装置79は、ウエハ接合体60を載置するためのステージ75と、ウエハ接合体60を切断するための切断刃70と、ステージ75の下方(ウエハ接合体60の載置面とは反対側)に配置されたCCDカメラ(撮像手段)74とを備えている。ステージ75はシリコンラバー71により構成されている。シリコンラバー71は、光学的な透明材料により台状に形成されている。また、切断刃70は、刃渡りの長さがウエハ接合体60の直径よりも長く形成され、刃先角度θが例えば60度〜90度程度に形成されている。
この場合、ブレーキング装置79内では、リッド基板用ウエハ50の表面50bをステージ75に向けた状態でウエハ接合体60がセットされる。すなわち、シリコンラバー71上にセパレーター83を介してウエハ接合体60が載置されることになる。
【0063】
そして、ブレーキング装置79内でセットされたウエハ接合体60に対して、割断応力を加えるブレーキング工程を行う(S103)。ブレーキング工程(S103)では、まず切断刃70がスクライブラインM’(トリミングラインT)上に配置されるように位置合わせを行う。具体的には、ステージ75の下方に配置されたCCDカメラ74により、リッド基板用ウエハ50上におけるスクライブラインM’の位置を検出し、この検出結果に基づいて切断刃70をウエハ接合体60の面方向に移動させる。これにより、切断刃70の位置合わせを行うことができる。その後、切断刃70をウエハ接合体60の厚さ方向に移動(下降)させ、切断刃70の刃先をベース基板用ウエハ40の裏面40bに押し当てる。その後、ウエハ接合体60の厚さ方向に沿って押し込むように、所定のストローク(例えば、50μm程度)で切断刃70を移動させる。この際、ウエハ接合体60に所定の荷重(例えば、10kg/inch)が付与される。
【0064】
これにより、ウエハ接合体60には、厚さ方向に沿ってクラックが発生し、ウエハ接合体60がリッド基板用ウエハ50上に形成されたスクライブラインM’に沿って折れるように切断される。この際、本実施形態のブレーキング装置79は、ウエハ接合体60がステージ75のシリコンラバー71上にセットされているため、切断刃70をウエハ接合体60に押し込むことで、シリコンラバー71が弾性変形する。これに伴い、ウエハ接合体60がシリコンラバー71の表面に倣ってステージ75に向かって湾曲するように僅かに撓み変形する。これにより、ウエハ接合体60に付与される割断応力がスクライブラインM’の底頂部に集中し易くなる。さらに、切断刃70とウエハ接合体60との接触点以外に作用する、切断刃70による荷重がシリコンラバー71に逃げる(吸収または減衰する)ことになる。
【0065】
これにより、ウエハ接合体60に対して荷重を加えた場合に、スクライブラインM’の底頂部がクラック発生の起点となり、ウエハ接合体60にはリッド基板用ウエハ50の表面50aからベース基板用ウエハ40の裏面40bに向かって厚さ方向に沿ってクラックが進行し易くなる。その結果、ウエハ接合体60が溝に沿って折れるように切断されることになる。また、上述した割断応力とはスクライブラインM’から離間する方向(各パッケージ10が離間する方向)に発生する引張応力である。
【0066】
そして、上述した方法により各スクライブラインM’毎に切断刃70を押し当てることで、ウエハ接合体60を輪郭線M毎のパッケージに一括して分離することができる。その後、ウエハ接合体60に貼り付けられたセパレーター83を剥離する(S104)。
【0067】
次に、マガジン82のUVテープ80に対してUV照射し、UVテープ80の粘着力を僅かに低下させる(S111)。なお、この状態では、ウエハ接合体60は未だUVテープ80に貼り付いた状態である。
【0068】
次に、後述するエクスパンド工程(S113)を行うために、図15に示すように、ウエハ接合体60をエクスパンド装置91内に搬送する(S112)。そこで、まずエクスパンド装置91について説明する。
エクスパンド装置91は、リングフレーム81がセットされる円環状のベースリング92と、ベースリング92の内側に配置され、ウエハ接合体60よりも大径に形成された円板状のヒーターパネル93とを備えている。ヒーターパネル93は、ウエハ接合体60がセットされるベースプレート94に伝熱型のヒーター(不図示)が搭載されたものであり、ヒーターパネル93の中心軸がベースリング92の中心軸に一致するように配置されている。また、ヒーターパネル93は、図示しない駆動手段によって軸方向に沿って移動可能に構成されている。なお、図示しないがエクスパンド装置91は、ベースリング92上にセットされるリングフレーム81を、ベースリング92との間で挟持する押え部材も備えている。
【0069】
このような装置を用いてエクスパンド工程(S113)を行うには、まずウエハ接合体60をエクスパンド装置91にセットする前に、後述するグリップリング85のうち、内側リング85aをヒーターパネル93の外側にセットする。この時、内側リング85aは、ヒーターパネル93に固定され、ヒーターパネル93の移動時にともに移動するようにセットされる。なお、グリップリング85は、内径がヒーターパネル93の外径よりも大きく、リングフレーム81の貫通孔81bの内径よりも小さく形成された樹脂製のリングであり、内側リング85aと、内径が内側リング85aの外径と同等に形成された外側リング85b(図16参照)とで構成されている。すなわち、内側リング85aは外側リング85bの内側に嵌まり込むようになっている。
【0070】
その後、マガジン82に固定されたウエハ接合体60をエクスパンド装置91にセットする。この時、UVテープ80側をヒーターパネル93及びベースリング92に向けてウエハ接合体60をセットする。具体的に、ウエハ接合体60の裏面40bとヒーターパネル93とを対向させるとともに、リングフレーム81の一方の面81aとベースリング92とを対向させた状態で、ウエハ接合体60をエクスパンド装置91にセットする。
これにより、ヒーターパネル93上にUVテープ80を介してウエハ接合体60がセットされる。そして、図示しない押え部材によってリングフレーム81をベースリング92との間に挟持する。
【0071】
次に、ヒーターパネル93のヒーターによってUVテープ80を50℃以上に加熱する。UVテープ80を50℃以上に加熱することで、UVテープ80が軟化して延伸し易くなる。そして、図16に示すように、UVテープ80を加熱した状態でヒーターパネル93を内側リング85aとともに上昇させる(図16中矢印参照)。この時、リングフレーム81はベースリング92と押え部材との間で挟持されているので、UVテープ80がウエハ接合体60の径方向外側に向かって延伸する。これにより、UVテープ80に貼着されたパッケージ10同士が離間し、隣接するパッケージ10間のスペースが拡大する。そして、この状態で内側リング85aの外側に外側リング85bをセットする。具体的には、内側リング85aと外側リング85bとの間にUVテープ80を挟んだ状態で、両者を嵌め合わせる。これにより、UVテープ80が延伸された状態でグリップリング85に保持される。そして、グリップリング85の外側のUVテープ80を切断し、リングフレーム81とグリップリング85とを分離する(S114)。
【0072】
図18は、保護膜形成工程を説明するための図であって、複数の圧電振動子がUVテープに貼り付けられた状態を示す断面図である。
次に、図18に示すように、パッケージ10を保護膜11によってコーティングする保護膜形成工程(S115)を行う。具体的には、まず複数のパッケージ10を、UVテープ80に貼り付けられた状態でスパッタリング装置のチャンバー内に搬送し、リッド基板3が保護膜11の成膜材料(ターゲット)に対向するようにセットする。この状態でスパッタリングを行うことで、リッド基板3の表面3d及びパッケージ10の側面10a上に成膜材料から飛び出した原子が付着する。これにより、リッド基板3の表面3dからパッケージ10の側面10aの全域に亘って、保護膜11が形成される。
【0073】
この場合、接合材23はパッケージ10の側面10aに露出しているので、接合材23を覆うように保護膜11を形成するには、全てのパッケージ10を側面10aが露出するように離間配置する必要がある。
そこで、本実施形態によれば、エクスパンド工程において複数のパッケージ10が分離した状態を利用して保護膜形成工程を行うので、全てのパッケージ10を改めて離間配置する必要がなく、製造効率を向上させることができる。すなわち、各パッケージ10間のスペースを確保した状態で保護膜11を形成できるので、各パッケージ10におけるベース基板2とリッド基板3との間から露出する接合材23に対して均一に保護膜11を形成できる。
また、エクスパンドされたUVテープ80上に複数のパッケージ10を貼り付けた状態でスパッタリングを行うことで、個片化された複数のパッケージ10に対して一括して保護膜11を形成できるので、パッケージ10に個別で保護膜11を形成する場合に比べて製造効率の向上を図ることができる。さらに、スパッタリング装置への搬送時や成膜時におけるパッケージ10の移動を抑制できる。
【0074】
また、ベース基板2の裏面2a側にUVテープ80が貼り付けられた状態で、リッド基板3側からスパッタリングを行うことで、ベース基板2の裏面2a側への成膜材料の回り込みを抑制できる。そのため、外部電極6,7への成膜材料の付着を抑制できるので、保護膜11によって各外部電極6,7間が架け渡されるのを抑制できる。これにより、保護膜11にCr等の導電性金属材料を用いた場合であっても、外部電極6,7間の短絡を抑制できる。また、本実施形態では、外部電極6,7の側面がベース基板2の側面2cよりも内側に位置しているため、保護膜11の周縁端部と外部電極6,7との間は間隙部12(図2参照)を挟んで離間配置される。そのため、仮に成膜材料がベース基板2の裏面2a側に僅かに回り込んだとしても、保護膜11と外部電極6,7とが連続的に架け渡されるのを抑制できる。
【0075】
なお、本実施形態では、リッド基板3の表面3dに対向するように成膜材料が配置されるため、パッケージ10の側面10aに比べてリッド基板3の表面3dの方が、成膜材料が付着し易い。具体的に、リッド基板3の表面3dとパッケージ10の側面10aとの成膜速度比は3〜4:1程度となる。成膜速度比を小さくするためには、グリップリング85(パッケージ10)を自転させながらスパッタリングを行うことが好ましい。
【0076】
次に、保護膜11が形成された圧電振動子1を取り出すためのピックアップ工程を行う。ピックアップ工程(S116)では、まずUVテープ80に対してUV照射し、UVテープ80の粘着力を低下させる。これにより、UVテープ80から圧電振動子1が剥離される。その後、画像認識等により各圧電振動子1の位置を把握して、ノズル等により吸引することで、UVテープ80から剥離された圧電振動子1を取り出していく。このように、UVテープ80にUV照射してUVテープ80から圧電振動子1を剥離することで、個片化された圧電振動子1を取り出し易くすることができる。なお、本実施形態では上述したブレーキング工程(S103)おいて、リッド基板用ウエハ50のスクライブラインM’に沿って個片化を行うため、個片化された圧電振動子1のリッド基板3の上部周縁にはスクライブラインM’によってC面取りが施された面取り部90が形成される。
以上により、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティC内に圧電振動片5が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。これにより、個片化工程が終了する。
【0077】
その後、内部の電気特性検査を行う(S110)。すなわち、圧電振動片5の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
【0078】
図19はマーキング工程を説明するための図であって、図1に相当する圧電振動子の外観斜視図である。
電気特性検査及び外観検査が完了し、検査に合格した圧電振動子1に対して、最後にマーキング13を施す(S120)。図19に示すように、マーキング13は、リッド基板3の表面3dに対して鉛直方向からレーザー光R3を照射して、リッド基板3の表面3d上の保護膜11を除去することで、製品の種類、製品番号及び製造年月日等を刻印する。
このように、保護膜11を除去してマーキング13を施すことで、マーキング13を施すためにめっき膜等を別途形成する必要がないので、製造効率を向上できる。
【0079】
なお、マーキング工程(S120)ではレーザー光R3の出力を、保護膜11のみを貫通する程度に調整することが好ましい。これにより、レーザー光R3がベース基板2を透過してキャビティC内に到達するのを抑制できる。つまり、レーザー光R3が圧電振動片5に照射されるのを抑制して、圧電振動片5へのダメージを抑制できるため、圧電振動片5の電気特性(周波数特性)に影響が及ぶのを抑制できる。
また、ベース基板2でのレーザー光R3の透過を確実に抑制するためには、ガラス材料での吸収率が高いレーザーを用いることが好ましく、このようなレーザーとしては、例えば波長が10.6μmのCO2レーザーや、波長が266nmの第4高調波レーザー等を用いることが可能である。さらに、これらレーザーのうち、波長が比較的長いCO2レーザーを用いることで、ベース基板2へのダメージをより確実に抑制できる。
【0080】
このように、本実施形態では、第1焦点調整工程(S95)により接合材23に対して正確に第2レーザー光R2を合焦させた後、第2焦点調整工程(S96)を経て、リッド基板用ウエハ50の表面50bにダミーラインDを形成するので、ベース基板用ウエハ40の厚さや、接合材23の厚さ等に作用されずに、リッド基板用ウエハ50の表面50b上に確実にダミーラインDを形成することができる。したがって、スクライブ工程(S99)の際、第3焦点調整工程(S98)によってダミーラインDに合焦された第2レーザー光R2を用いてスクライブラインM’を形成することにより、スクライブラインM’をリッド基板用ウエハ50の表面50bに精度よく形成することができる。
このように、ウエハ接合体60の厚さを1つずつ測定するといった作業を何ら行うことなく、スクライブラインM’を効率よく形成することができる。
【0081】
さらに第1焦点調整工程(S95)の際、各ウエハ40、50同士を接合する接合材23を撮像しているので、第1焦点調整工程(S95)を行うために、新たな構成要素をウエハ接合体60に付加する必要がなく、ウエハ接合体60の構造が複雑になるのを抑制するとともに、ウエハ接合体60の切断を効率よく行うことができる。
また、ダミーライン形成工程(S97)の際に形成したダミーラインDを撮像することにより、第2レーザー光R2をダミーラインDに対して正確かつ円滑に合焦し直すことができる。したがって、擦れ痕や異物などを指標として撮像する場合とは異なり、前述の作用効果が顕著に奏される。
そして、第1焦点調整工程(S95)からスクライブ工程(S99)を一連の流れとして連続して行うことができるので、ウエハ接合体60に予めダミーラインDのような構成を形成しておく必要がなく、ウエハ接合体60の切断を一層効率よく行うことができる。
【0082】
また、ダミーライン形成工程(S97)の際、ダミーラインDを直線状に形成するので、第3焦点調整工程(S98)の際、ダミーラインDの延在方向に沿った複数箇所において第2レーザー光R2を合焦し直すことが可能になり、スクライブラインM’をリッド基板用ウエハ50の表面50bに一層精度よく形成することができる。
またこのとき、ダミーラインDを、切断予定線Mに平行な直線状に形成するので、第2レーザー88の装置構成の簡素化を図ることができる。
さらに、ダミーライン形成工程(S97)の際、リッド基板用ウエハ50の表面50bのうち、パッケージの形成領域を外した部分にダミーラインDを形成するので、歩留まりを確実に向上させることができる。
【0083】
また本実施形態では、ステージ75のシリコンラバー71上にウエハ接合体60をセットした状態でブレーキング工程を行う構成とした。
この構成によれば、スクライブラインM’に沿ってウエハ接合体60に切断刃70を押し当てることで、シリコンラバー71が弾性変形し、ウエハ接合体60がシリコンラバー71の弾性変形に倣ってシリコンラバー71に向かって湾曲するように僅かに撓み変形する。これにより、ウエハ接合体60に付与される割断応力がスクライブラインM’の底頂部に集中し易くなる。
その結果、ウエハ接合体60に対して割断応力を加えた場合に、スクライブラインM’の底頂部がクラック発生の起点となり、ウエハ接合体60におけるリッド基板用ウエハ50の表面50aからベース基板用ウエハ40の裏面40bに向かってクラックが進行しやすくなって、ウエハ接合体60がスクライブラインM’に沿って折れるように切断されることになる。
したがって、ウエハ接合体60をスクライブラインM’に沿ってよりスムーズ、かつ容易に切断することができる。そのため、クラッシュの発生を抑えるとともに、チッピングの発生も抑え、残留応力の痕跡がない、良好な切断面を得ることができる。これにより、ウエハ接合体60から圧電振動子1を所望のサイズに切断することができる。その結果、1枚のウエハ接合体60から良品として取り出される圧電振動子1の数を増加することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0084】
また、ブレーキング工程において、切断刃70の先端をベース基板用ウエハ40の裏面40bに接触させた状態で、ウエハ接合体60の厚さ方向に沿って押し込むように切断刃70を移動させることで、スクライブラインM’に沿って確実に割断応力を加えることができる。そのため、ウエハ接合体60の厚さ方向へのクラック進行を促進することができる。また、従来のようにウエハ接合体に対して切断刃を落下させる場合に比べて、切断刃とウエハ接合体60との衝突によるチッピングの発生等を防止することができる。したがって、より良好な切断面を得ることができる。
【0085】
さらに、本実施形態ではウエハ接合体60に切断刃70を接触させる際、CCDカメラ74により検出されたスクライブラインM’の位置に基づいて切断刃70を位置合わせする構成とした。
この構成によれば、スクライブラインM’と切断刃70とを位置合わせすることで、スクライブラインM’に沿って確実に割断応力を付与することができるので、ウエハ接合体60をよりスムーズ、かつ容易に切断することができる。
【0086】
本実施形態では、マガジン82のセパレーター83がウエハ接合体60とシリコンラバー71との間に介在することになるので、仮にウエハ接合体60の切断時に微小な塵埃等が飛散した場合には、塵埃等をシリコンラバー71により捕捉することができる。
その結果、シリコンラバー71上に載置されるウエハ接合体60が塵埃等に当接して傷付くことを防止できる。また、ウエハ接合体60を常にシリコンラバー71に密着させた状態で載置することができるので、ウエハ接合体60の載置時におけるガタツキ等を防止し、ウエハ接合体60を厚さ方向に沿って確実に切断することができる。
【0087】
また、UVテープ80の厚さが160μm以上であることから、エクスパンド工程(S113)においてUVテープ80が破断し難くなっているので、スクライブ工程(S95)等で使用したUVテープ80を交換することなく、そのままエクスパンド工程(S113)で用いることができる。すなわち、エクスパンド工程(S113)に先立って、UVテープ80の張替え工程等を行う必要がないので、製造効率の低下及び製造コストの増加を防止することができる。
一方、厚さが180μm以下に形成されたUVテープ80を用いることで、UVテープ80を延伸させるために必要な力を抑制することができるので、製造効率を向上させることができる。また、市場において容易に調達することができるので、UVテープ80に要する材料コストを低下させることができる。
【0088】
しかも、本実施形態では、ウエハ接合体60を個片化した後、エクスパンド工程(S113)を行うことで、隣接する各圧電振動子1(パッケージ10)間隔を均等に広げることができるので、隣接する圧電振動子1同士を確実に分離することができる。したがって、エクスパンド工程(S113)後にUVテープ80から圧電振動子1を取り出す際、個片化された圧電振動子1を認識し易くなるので(認識精度が向上するので)、各圧電振動子1を容易に取り出すことができる。
また、エクスパンド工程(S113)後にUVテープ80から圧電振動子1を取り出す際、隣接する圧電振動子1との接触等を防ぎ、圧電振動子1同士の接触によるチッピングの発生等を防止して、圧電振動子1の割れを防ぐことができる。よって、1枚のウエハ接合体60から良品として取り出される圧電振動子1の数を増加することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0089】
なお、スクライブ工程(S95)に先立って輪郭線M上の接合材23を剥離してトリミングラインTを形成することで、ブレーキング時にウエハ接合体60の厚さ方向へのクラック進行を促進するとともに、ウエハ接合体60の面方向へのクラック進行を防ぐことができる。
【0090】
また、本実施形態の圧電振動子1のリッド基板3は、その周縁部に面取り部90が形成されている構成とした。
この構成によれば、ピックアップ工程(S110)において、仮に個片化された圧電振動子1を取り出す際に、圧電振動子1を取り出すための器具が、圧電振動子1の角部に接触した場合であっても、接触によるチッピングの発生を抑制することができる。そのため、チッピングをきっかけに圧電振動子1が割れることがない。
これにより、キャビティC内の気密が確保することができ、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供することができる。
なお、面取り部90は、第2レーザー88によりスクライブラインM’を形成した後、スクライブラインM’に沿って切断することで自動的に形成することができるので、切断後の圧電振動子1にそれぞれ面取り部90を形成する必要がない。その結果、面取り部を別工程で形成する場合に比べてコスト上昇を抑制し、作業効率を向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態では、パッケージ10の外面に接合材23よりも腐食性の高い保護膜11によって接合材23を被覆する構成とした。
この構成によれば、保護膜11により接合材23を覆うことで、接合材23が外部に曝されることがないので、接合材23と大気との接触を抑制して、大気中の水分等による接合材23の腐食を抑制できる。この場合、保護膜11は接合材23よりも耐腐食性の高い材料により構成されているので、保護膜11の腐食により接合材23が露出するのを抑制できるので、接合材23の腐食を確実に抑制できる。そのため、キャビティC内の気密を長期に亘って安定した状態に維持でき、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0092】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図20を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図20に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0093】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。
これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0094】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0095】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図21を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0096】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図21に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0097】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0098】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0099】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0100】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0101】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0102】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0103】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0104】
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図22を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図22に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0105】
(電波時計)
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0106】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0107】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0108】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0109】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、トリミング工程(S94)を行うものとしたが、行わなくてもよい。
【0110】
また、上述した実施形態では、第2焦点調整工程(S96)の後、ダミーライン形成工程(S97)を行い、リッド基板用ウエハ50の表面50bにダミーラインDを形成するものとしたが、この表面50bにレーザー痕からなる被検出部を形成すれば、ダミーラインDでなくてもよい。例えば、直線状ではない被検出部を形成してもよく、直線状であっても切断予定線Mと非平行な被検出部を形成してもよい。
【0111】
また上述した実施形態では、ブレーキング工程(S103)の前に、リングフレーム81の他方の面81cに、貫通孔81bを塞ぐようにセパレーター83を貼り付ける(S101)ものとしたが、これに限られるものではない。例えば、セパレーター83の外周縁を、UVテープ80においてリングフレーム81よりも内側に位置する部分(貫通孔81bを一方の面81cから塞ぐ部分)に貼り付けてもよい。またセパレーター83はなくてもよい。
【0112】
また、上述した実施形態では、ブレーキング工程においてリッド基板用ウエハ50の表面50bにスクライブラインM’を形成する一方、ベース基板用ウエハ40の裏面40bから切断刃70を押し当てる場合について説明したが、これに限られない。例えば、ベース基板用ウエハ40の裏面40bにスクライブラインM’を形成する一方、リッド基板用ウエハ50の表面50bから切断刃70を押し当ててもよい。
【0113】
また上述した実施形態では、ブレーキング工程(S103)の際、切断刃70を用いてウエハ接合体60に割断応力を付与するものとしたが、異なる方法で割断応力を付与することも可能である。
さらに上述した実施形態では、エクスパンド工程(S113)を行うものとしたが、行わなくてもよい。
さらにまた上述した実施形態では、ウエハ接合体60の切断に際し、マガジン82を用いたが、用いなくてもよい。
【0114】
また、圧電振動子の製造方法は、第1焦点調整工程(S95)と、第2焦点調整工程(S96)と、ダミーライン形成工程(S97)と、第3焦点調整工程(S98)と、スクライブ工程(S99)と、切断工程(S100)とを有する接合ガラスの切断方法を用いていれば、上述した実施形態に示したものに限られない。
例えば、保護膜形成工程(S115)はなくてもよい。
また、この方法で製造される圧電振動子1が、圧電振動片として音叉型の圧電振動片5とは異なる構造、例えば厚み滑り振動片等を備えていてもよい。さらに、ベース基板2に凹部3aを形成してもよく、両基板2,3に凹部3aをそれぞれ形成してもよい。
【0115】
また上述した実施形態では、上述した接合ガラスの切断方法を用いて、圧電振動片5がキャビティCに封入された圧電振動子1を製造するものとしたが、圧電振動片とは異なる電子部品がキャビティに封入可能なパッケージを製造することも可能である。
さらに、上述した接合ガラスの切断方法は、パッケージ製造の一工程として用いなくてもよく、接合ガラスを切断するときに単独で適用可能である。
【0116】
また上述した実施形態では、上述した接合ガラスの切断方法を用いて、2枚のウエハ40,50が接合材23を介して接合されたウエハ接合体60を切断するものとしたが、3枚以上のガラス基板が接合材を介して接合されてなる接合ガラスの切断にも、上述した接合ガラスの切断方法を適用することが可能である。
【0117】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…圧電振動子(パッケージ)
2…ベース基板(ガラス基板)
3…リッド基板(ガラス基板)
4…圧電振動片(電子部品)
23…接合膜(接合材)
60…ウエハ接合体(接合ガラス)
100…発振器
110…携帯情報機器(電子機器)
130…電波時計
C…キャビティ
M’…スクライブライン(溝)
R1…レーザー光
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合ガラスの切断方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子としては、例えば互いに接合されたベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
ここで、上述した圧電振動子を製造する際には、リッド基板用ウエハにキャビティ用の凹部を形成する一方、ベース基板用ウエハ上に圧電振動片をマウントした後、両ウエハを接合層を介して陽極接合し、複数のパッケージがウエハの行列方向に形成されたウエハ接合体とする。そして、ウエハ接合体に形成された各パッケージ毎(キャビティ毎)にウエハ接合体を切断することで、キャビティ内に圧電振動片が気密封止された複数の圧電振動子(パッケージ)を製造するものである。
【0004】
ところで、ウエハ接合体の切断方法としては、例えば歯先にダイヤモンドが付着したブレードを用い、ウエハ接合体を厚さ方向に沿って切断(ダイシング)する方法が知られている。
しかしながら、ブレードによる切断方法では、ブレードの幅を考慮した切断代をキャビティ間に設ける必要があるため、1枚のウエハ接合体から取り出せる圧電振動子の数が少ないこと、また切断時におけるチッピングの発生、切断面が粗いこと等の問題があった。
また、加工速度が遅いため、生産効率が悪いという問題もあった。
【0005】
また、金属棒の先端にダイヤモンドを埋め込み、このダイヤモンドによってウエハ接合体の表面における切断予定線に沿って傷(スクライブライン)を付けた後、スクライブラインに沿って割断応力を加えて切断する方法も知られている。
しかしながら、上述の方法では、スクライブラインに無数のチッピングが発生するため、ウエハが割れやすく、また切断面の表面精度も粗くなるという問題がある。
【0006】
そこで、上述のような問題に対応するために、ウエハ接合体をレーザーにより切断する方法が開発されている。このような方法としては、例えば特許文献1に示されるように、ウエハ接合体の内部に集光点を合わせてレーザー光を照射し、ウエハ接合体の切断予定線に沿って多光子吸収による改質領域を形成する。そして、ウエハ接合体に割断応力(衝撃力)を加えることにより、改質領域を起点としてウエハ接合体を切断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のようにウエハ接合体をレーザーにより切断する方法として、ウエハ接合体の表面における切断予定線に沿ってレーザー光を照射してスクライブラインを形成した後、スクライブラインに沿って割断応力を加えて切断する方法も考えられる。
【0009】
ここで、ベース基板用ウエハの厚さ、リッド基板用ウエハの厚さおよび接合膜の厚さは、ウエハ接合体ごとにばらつきがあり、ウエハ接合体全体の厚さも1つずつ異なる。そのため、ウエハ接合体の表面にスクライブラインを形成するときに、レーザー光の焦点位置を一定にしておくと、ウエハ接合体の厚さの違いに起因して、ウエハ接合体ごとにスクライブラインの深さ、幅などがばらつき均一にならない。この場合、圧電振動子の品質に影響を与えるおそれがある。
したがって、ウエハ接合体の表面にレーザー光の焦点を合わせる作業を、ウエハ接合体のそれぞれについて行う必要があり、加工に時間を要するものであった。しかも、このように焦点を合わせる際、ウエハ接合体の表面の小さな擦れ痕や異物などを指標として焦点を合わせる場合が多いので、余計に時間がかかり易い。
また、ウエハ接合体の厚さを1つずつ予め測定しておき、この測定結果に基づいてレーザー光の焦点位置を調整することも考えられる。しかしながらこの場合、ウエハ接合体の厚さを測定する手間がかかり、製造効率が悪くなる。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、接合ガラスの一方の面に溝を精度よく、かつ効率よく形成することができる接合ガラスの切断方法、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る接合ガラスの切断方法は、複数のガラス基板の接合面同士が接合材を介して接合されてなる接合ガラスを、切断予定線に沿って切断する接合ガラスの切断方法であって、前記接合ガラスの一方の面側から前記接合材を撮像することで、前記一方の面側から前記接合ガラスに照射可能なレーザー光を前記接合材に合焦させる第1焦点調整工程と、前記第1焦点調整工程の後、前記レーザー光の焦点を、前記接合ガラスの厚さ方向に沿った前記接合ガラスの一方の面側に向けて、前記照射がなされる前記ガラス基板の推定厚さ分、移動させる第2焦点調整工程と、前記第2焦点調整工程の後、前記レーザー光を照射して前記一方の面に被検出部を形成する被検出部形成工程と、前記一方の面側から前記被検出部を撮像することで、前記レーザー光を前記被検出部に合焦し直す第3焦点調整工程と、前記第3焦点調整工程の後、前記レーザー光を前記切断予定線に沿って照射して、前記切断予定線に沿って前記一方の面に溝を形成する溝形成工程と、前記切断予定線に沿って割断応力を加えることで、前記切断予定線に沿って前記接合ガラスを切断する切断工程とを有することを特徴とする。
なお、前記照射がなされる前記ガラス基板は、複数のガラス基板のうち、接合ガラスの一方の面を構成するガラス基板である。
【0012】
この発明によれば、第1焦点調整工程により接合材に対して正確にレーザー光を合焦させた後、第2焦点調整工程を経て、接合ガラスの一方の面に被検出部を形成するので、レーザー光が照射されないガラス基板の厚さや、接合材の厚さ等に作用されずに、前記一方の面上に確実に被検出部を形成することができる。したがって、溝形成工程の際、第3焦点調整工程によって被検出部に合焦されたレーザー光を用いて溝を形成することにより、この溝を一方の面に精度よく形成することができる。
このように、接合ガラスの厚さを1つずつ測定するといった作業を何ら行うことなく、溝を効率よく形成することができる。
【0013】
さらに第1焦点調整工程の際、ガラス基板同士を接合する接合材を撮像しているので、第1焦点調整工程を行うために、新たな構成要素を接合ガラスに付加する必要がなく、接合ガラスの構造が複雑になるのを抑制するとともに、接合ガラスの切断を効率よく行うことができる。
また、被検出部形成工程の際に形成した被検出部を撮像することにより、レーザー光を被検出部に対して正確かつ円滑に合焦し直すことができる。したがって、擦れ痕や異物などを指標として撮像する場合とは異なり、前述の作用効果が顕著に奏される。
そして、第1焦点調整工程から溝形成工程を一連の流れとして連続して行うことができるので、接合ガラスに予め被検出部のような構成を形成しておく必要がなく、接合ガラスの切断を一層効率よく行うことができる。
【0014】
また、前記被検出部形成工程の際、前記被検出部を、前記切断予定線に平行な直線状に形成してもよい。
【0015】
この発明によれば、被検出部形成工程の際、被検出部を直線状に形成するので、第3焦点調整工程の際、被検出部の延在方向に沿った複数箇所においてレーザー光を合焦し直すことが可能になり、溝を一方の面に一層精度よく形成することができる。
またこのとき、被検出部を、切断予定線に平行な直線状に形成するので、レーザー光を照射する照射部の装置構成の簡素化を図ることができる。
【0016】
また、前記接合ガラスの切断方法を使用して、前記接合ガラスの内側に電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージを製造する方法であって、前記切断工程では、複数の前記パッケージの形成領域を隔する前記切断予定線に沿って前記接合ガラスを切断してもよい。
【0017】
この発明によれば、上記本発明の接合ガラスの切断方法を使用してパッケージを製造することで、接合ガラスの一方の面に溝を精度よく、かつ効率よく形成することができる。よって、1枚の接合ガラスから良品として取り出されるパッケージの数を増加することができるとともに、歩留まりを向上させることができる。
【0018】
また、前記被検出部形成工程の際、前記一方の面のうち、前記パッケージの形成領域を外した部分に前記被検出部を形成してもよい。
【0019】
この発明によれば、被検出部形成工程の際、接合ガラスの一方の面のうち、パッケージの形成領域を外した部分に被検出部を形成するので、歩留まりを確実に向上させることができる。
【0020】
また、前記パッケージの製造方法を用いて形成されたパッケージであって、前記接合ガラスの前記一方の面により構成される面の外周縁部に、前記溝が割断されてなる面取り部を有していてもよい。
【0021】
この発明によれば、面取り部が形成されているので、切断されたパッケージを取り出す際に、仮にパッケージを取り出すための器具がパッケージの角部に接触した場合であっても、接触によるチッピングの発生を抑制することができるので、チッピングをきっかけにパッケージが割れることがない。これにより、キャビティ内の気密を確保することができ、信頼性の高いパッケージを提供することができる。
なお、面取り部は、レーザーにより溝を形成した後、溝(切断予定線)に沿って接合ガラスを切断することで自動的に形成することができるので、切断後のパッケージに別工程としてそれぞれ面取り部を形成する必要がない。その結果、面取り部を別工程で形成する場合に比べてコスト上昇を抑制するとともに、作業効率を向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係る圧電振動子は、前記パッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【0023】
この発明によれば、キャビティ内の気密性を確保し、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0024】
また、本発明に係る発振器は、前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電子機器は、前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電波時計は、前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る接合ガラスの切断方法によれば、接合ガラスの一方の面に溝を精度よく、かつ効率よく形成することができる。
また、本発明に係るパッケージの製造方法によれば、上記本発明の接合ガラスの切断方法を使用してパッケージを形成することで、1枚の接合ガラスから良品として取り出されるパッケージの数を増加することができ、歩留まりを向上させることができる。
また、本発明に係るパッケージによれば、上記本発明の接合ガラスの切断方法を使用してパッケージが形成されているので、キャビティ内の気密を確保することができ、信頼性の高いパッケージを提供することができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、キャビティ内の気密性を確保し、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。
【図2】本発明に係る圧電振動子をベース基板側から見た外観斜視図である。
【図3】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態を示す圧電振動片の平面図である。
【図4】図3に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図5】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図6】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ接合体の分解斜視図である。
【図8】個片化工程の流れを示すフローチャートである。
【図9】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図10】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図11】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す平面図である。
【図12】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図13】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図14】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図15】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図16】個片化工程を説明するための図であって、ウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図である。
【図17】トリミング工程を説明するための説明図であり、ウエハ接合体のリッド基板用ウエハを取り外した状態を示すベース基板用ウエハの平面図である。
【図18】保護膜形成工程を説明するための図であって、複数の圧電振動子がUVテープに貼り付けられた状態を示す断面図である。
【図19】マーキング工程を説明するための図であって、図1に相当する圧電振動子の外観斜視図である。
【図20】本発明に係る発信器の一実施形態を示す構成図である。
【図21】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図22】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図であり、図2はベース基板側から見た外観斜視図である。また図3は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図4は図3に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図5は圧電振動子の分解斜視図である。なお、図14では、後述する保護膜を鎖線で示しているとともに、図5では、この保護膜の図示を省略している。
図1〜図5に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板(第2基板)3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の裏面2a(図4中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0029】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対のスルーホール21,22が形成されている。スルーホール21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2b(図4中上面)に向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
【0030】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の裏面3b(図4中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材(接合膜)23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の裏面3b側には、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとが形成されている。
また、リッド基板3の上部周縁には、圧電振動子1の製造工程における後述するスクライブ工程時において、リッド基板3の角部が面取りされた面取り部90が形成されている。
【0031】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0032】
このように構成された圧電振動片5は、図3,図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。
これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0033】
そして、ベース基板2の表面2b側(リッド基板3が接合される接合面側)には、Alからなる陽極接合用の接合材23が形成されている。この接合材23は、膜厚が例えば3000Å〜5000Å程度に形成され、リッド基板3の額縁領域3cに対向するようにベース基板2の外周部分に沿って形成されている。そして、接合材23とリッド基板3の額縁領域3cとが陽極接合されることで、キャビティCが真空封止されている。なお、接合材23の側面は、ベース基板2及びリッド基板3の側面2c、3e(パッケージ10の側面(外側面)10a)と略面一に形成されている。
【0034】
外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2a(ベース基板2における接合面とは反対側の面)における長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。なお外部電極6,7の側面(外周縁)は、ベース基板2の側面2cよりも内側に位置している。
【0035】
貫通電極8,9は、焼成によってスルーホール21,22に対して一体的に固定された筒体32及び芯材部31によって形成されたものであり、スルーホール21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0036】
筒体32は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32の中心孔を貫通するように配されている。また、本実施形態ではスルーホール21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、スルーホール21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これらスルーホール21,22に対して強固に固着されている。
上述した芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、貫通電極8,9は、導電性の芯材部31を通して電気導通性が確保されている。
【0037】
ここで、図1〜図5に示すように、パッケージ10には、リッド基板3の表面3dからベース基板3の側面3e及びベース基板2の側面2c(パッケージ10の側面10a)の全域を覆うように保護膜11が形成されている。保護膜11は、シリコン(Si)、クロム(Cr)またはチタン(Ti)等、接合材23よりも耐腐食性が高い(イオン化傾向が小さい)金属材料からなり、これら金属材料のうち、本実施形態ではSiまたはCrが好適に用いられている。これにより、保護膜11とベース基板2及びリッド基板3との密着性を向上させ、保護膜11と基板2,3との間に隙間ができたり、保護膜11が剥離したりするのを抑制できる。
【0038】
保護膜11は、リッド基板3の表面(リッド基板3における接合面とは反対側の面)3d上において、例えば膜厚が1000Å程度に形成されている。そして、リッド基板3の表面3d上には、レーザー光R3(図19参照)により保護膜11の一部が除去されることで、製品の種類や、製品番号、製造年月日等が刻印されたマーキング13が施されている(図19参照)。なお、マーキング13を施すためには、レーザー光R3の吸収率が高いSiにより保護膜11を形成することが好ましい。
【0039】
また、保護膜11は、パッケージ10の側面10a上において、例えば膜厚が300〜400Å程度に形成されており、ベース基板2及びリッド基板3の間から外部に露出している接合材23を覆うように形成されている。そして、保護膜11の周縁端部(図4中下端部)は、ベース基板2の裏面2aと略面一に形成されている。すなわち、ベース基板2の裏面2aには保護膜11が形成されていない。この場合、上述したように外部電極6,7の側面は、ベース基板2の側面2cよりも内側に位置しているため、保護膜11の周縁端部と外部電極6,7との間は間隙部12を挟んで離間配置されている。これにより、保護膜11の材料に導電性材料を用いた場合であっても、外部電極6,7間が保護膜11によって架け渡されることがないので、外部電極6,7の短絡を防止できる。
【0040】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0041】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
初めに、図6に示すように、圧電振動片作製工程を行って図1〜図5に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0042】
(第1のウエハ作成工程)
図7は、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態で、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ接合体の分解斜視図である。
次に、図7に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(図7における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の少なくとも裏面50a側を研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。以上により、第2のウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0043】
(第2のウエハ作成工程)
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極8,9を配置するためのスルーホール21,22を複数形成するスルーホール形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の裏面(接合ガラスの他方の面)40bから凹部を形成した後、ベース基板用ウエハ40の少なくとも表面40a側から研磨することで、凹部を貫通させ、スルーホール21,22を形成することができる。
【0044】
続いて、スルーホール形成工程(S32)で形成されたスルーホール21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。これにより、スルーホール21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の表裏面40a,40b(図7における上下面)に対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極8,9を形成することができる。
【0045】
次に、ベース基板用ウエハ40の表面40aに導電性材料をパターニングして、接合材23を形成する接合材形成工程を行う(S34)とともに、引き回し電極形成工程を行う(S35)。なお、接合材23はベース基板用ウエハ40におけるキャビティCの形成領域以外の領域、すなわちリッド基板用ウエハ50の裏面50aとの接合領域の全域に亘って形成する。このようにして、第2のウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0046】
次に、第2のウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0047】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合したウエハ接合体60(例えば、厚さ0.4mmt〜0.9mmt程度)を得ることができる。そして、本実施形態のように両ウエハ40,50同士を陽極接合することで、接着剤等で両ウエハ40,50を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれや、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、両ウエハ40,50をより強固に接合することができる。
【0048】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S70)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S80)。
【0049】
(個片化工程)
図8は、ウエハ接合体の個片化工程の手順を示すフローチャートである。また、図9〜図11、図13〜図16はウエハ接合体がマガジンに保持された状態を示す断面図であり、個片化工程を説明するための工程図である。
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ接合体60を切断(割断)して個片化する個片化工程を行う(S90)。
個片化工程(S90)では、図8,図9に示すように、まずUVテープ80及びリングフレーム81を用いて、ウエハ接合体60を保持するためのマガジン82を作成する(S91)。リングフレーム81は、その内径がウエハ接合体60の直径よりも大径に形成されたリング状の部材であり、厚さ(軸方向における長さ)がウエハ接合体60と同等に形成されている。また、UVテープ80はポリオレフィンからなる可撓性を具備するシート材に紫外線硬化樹脂、例えばアクリル系の粘着剤(粘着層)が塗布されたものであり、具体的には電気化学工業製のUHP−1525M3や、リンテック製のD510T等が好適に用いられている。また、UVテープ80は、比較的厚さの厚いものを用いることが好ましく、具体的には厚さが160μm以上180μm以下程度のものを用いることが好ましい。本実施形態では、例えば175μm程度のUVテープ80が好適に用いられている。
【0050】
マガジン82は、リングフレーム81の一方の面81aから、貫通孔81bを塞ぐようにUVテープ80を貼り付けることで作成することができる。そして、リングフレーム81の中心軸とウエハ接合体60の中心軸とを一致させた状態で、UVテープ80の粘着面にウエハ接合体60を貼着する(S92)。具体的には、ベース基板用ウエハ40の裏面40b側(外部電極側)を、UVテープ80の粘着面に貼着する。これにより、ウエハ接合体60がリングフレーム81の貫通孔81b内にセットされた状態となる。この状態で、ウエハ接合体60をレーザースクライブ装置(不図示)に搬送する(S93)。
【0051】
図17は、トリミング工程を説明するための説明図であり、ウエハ接合体のリッド基板用ウエハを取り外した状態を示すベース基板用ウエハの平面図である。
ここで、図10,図17に示すように、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40とを接合している接合材23を剥離するトリミング工程を行う(S94)。トリミング工程(S94)では、接合材23の吸収帯域波長の光を出射するレーザー、例えば波長が532nmの第2高調波レーザーからなる第1レーザー87を用い、レーザー光R1の照射領域の接合材23を溶融させる。この場合、第1レーザー87から出射されたレーザー光R1は、ビームスキャナ(ガルバノメーター)によって反射された後、Fθレンズを介して集光される。そして、集光されたレーザー光R1をウエハ接合体60におけるリッド基板用ウエハ50の表面(接合ガラスの一方の面)50b側から照射しながら、レーザー光R1とウエハ接合体60とを平行に相対移動させる。具体的には、各キャビティCを仕切る隔壁上、すなわち圧電振動子1の輪郭線(切断予定線)M(図7参照)に沿って第1レーザー87を走査する。
【0052】
なお、トリミング工程(S94)におけるレーザー光R1のスポット径は、例えば10μm以上30μm以下程度に設定されている。また、トリミング工程(S94)のその他の条件としては、例えば第1レーザー87の加工点平均出力が1.0W、周波数変調が20kHz、走査速度が200mm/sec程度に設定することが好ましい。
これにより、輪郭線M上の接合材23がレーザー光R1を吸収して加熱されることで、接合材23が溶融し、レーザー光R1の照射領域(輪郭線M)より外側へ収縮する。その結果、両ウエハ40,50の接合面(リッド基板用ウエハ50の裏面50a及びベース基板用ウエハ40の表面40a)上に、接合面から接合材23が剥離されてなるトリミングラインTが形成される。
【0053】
ここで図11に示すように、上述したレーザースクライブ装置には、前記第1レーザー87とは異なる第2レーザー88が備えられている。第2レーザー88は、リッド基板用ウエハ50(ソーダ石灰ガラス)の吸収帯域波長の光を出射するレーザー、例えば波長が266nmのUV−Deepレーザーにより構成することが可能であり、第2レーザー88から照射された第2レーザー光R2は、図示しない対物レンズを介して集光される。第2レーザー88は、ウエハ接合体60におけるベース基板用ウエハ50の表面50b側から、ウエハ接合体60に第2レーザー光R2を照射する。
さらに上記レーザースクライブ装置には、上述した対物レンズを介してウエハ接合体40を撮像する図示しない撮像手段と、上記対物レンズをウエハ接合体60に対してその厚さ方向に進退させる進退手段と、が備えられている。
【0054】
そこで本実施形態では、上述したトリミング工程(S94)の後、ベース基板用ウエハ50の表面50b側から接合材23を撮像することで、第2レーザー光R2を接合材23に合焦させる第1焦点調整工程を行う(S95)。なお、第2レーザー光R2の焦点の調整は、例えば、上記撮像手段により上記対物レンズを介して撮像した接合材23の撮像結果におけるコントラストに基づいて、上記対物レンズの位置を上記進退手段により移動させること等により行うことが可能である。
この第1焦点調整工程(S95)を行うことで、第2レーザー光R2は、接合材23におけるベース基板用ウエハ50の裏面50aとの界面に合焦されることとなる。
【0055】
その後、第2レーザー光R2の焦点を、ウエハ接合体60の厚さ方向に沿ったリッド基板用ウエハ50の表面50b側に向けて、リッド基板用ウエハ50(照射がなされるガラス基板)の推定厚さL分、移動させる第2焦点調整工程を行う(S96)。なお、第2レーザー光R2の焦点の移動は、例えば推定厚さLに基づいて、上記対物レンズの位置を上記進退手段により移動させること等により行うことが可能である。また、上記推定厚さLとしては、例えばリッド基板用ウエハ50の厚さの設計値などを採用することが可能である。
【0056】
図12は、ダミーライン形成工程を説明するための説明図であり、ウエハ接合体の平面図である。
そして図11および図12に示すように、第2焦点調整工程(S96)の後、第2レーザー光R2をウエハ接合体60に照射し、リッド基板用ウエハ50の表面50bにダミーライン(被検出部)Dを形成するダミーライン形成工程(被検出部形成工程)を行う(S97)。このとき図13に示すように、ダミーラインDを切断予定線Mに平行な直線状に形成する。さらにこのとき、リッド基板用ウエハ50の表面50bのうち、パッケージ10の形成領域である中央部を外した外周縁部にダミーラインDを形成する。
【0057】
次いで、リッド基板用ウエハ50の表面50b側からダミーラインDを撮像することで、第2レーザー光R2をダミーラインDに合焦し直す第3焦点調整工程を行う(S98)。このとき、第2レーザー光R2の焦点の調整は、上述した第1焦点調整工程と同様の方法により行うことが可能である。
【0058】
そして図13に示すように、リッド基板用ウエハ50における表面50bの表層部分にレーザー光R2を照射し、ウエハ接合体60にスクライブラインM’を形成する(S95:スクライブ工程)。スクライブ工程(S95)では、上述した第2レーザー88を用い、レーザー照射領域のリッド基板用ウエハ50の表層部分を溶融させる。具体的には、トリミング工程(S94)と同様に、第2レーザー88とウエハ接合体60とを平行に相対移動させ、圧電振動子1の輪郭線Mに沿って第2レーザー88を走査する。すると、リッド基板用ウエハ50の表層部分がレーザー光R2を吸収して加熱されることで、リッド基板用ウエハ50が溶融し、V溝状のスクライブラインM’が形成される。なお、上述したように第1レーザー87と第2レーザー88とは、各圧電振動子1の輪郭線Mに沿って走査される。これにより、接合材23が剥離されたトリミングラインTとスクライブラインM’とは、ウエハ接合体60を厚さ方向からみて重なるように配置されることになる。
【0059】
本実施形態のスクライブラインM’は、幅寸法が14μm程度、深さ寸法が11μm程度に形成されている。なお、幅寸法Wに対する深さ寸法Dの倍率を同等に設定することがより好ましい。なお、スクライブ工程(S95)のその他の条件としては、例えば第2レーザー88の加工点出力が250mW〜600mW、パルスエネルギーが100μJ、加工閾値フルーエンスが30J/(cm2・pulse)、走査速度が40mm/sec〜60mm/sec、アパーチャーが10mm、周波数が65kHz程度に設定することが好ましい。
なおこの後、スクライブラインM’を形成する際に生じたデブリを除去するデブリ除去工程を行ってもよい。
【0060】
次に、スクライブラインM’が形成されたウエハ接合体60を、1つ1つのパッケージ10に切断する切断工程を行う(S100)。
切断工程(S100)では、まず図14に示すように、リングフレーム81の他方の面81cに、貫通孔81bを塞ぐようにセパレーター(保護シート)83を貼り付ける(S101)。セパレーター83は、ブレーキング工程(S103)において、リッド基板用ウエハ50の表面50bを保護するとともに、UVテープ80とセパレーター83とによってリングフレーム81を塞ぐことで、ブレーキング時に発生する微小な塵埃等が後述するブレーキング装置79内へ飛散することを防ぐためのものである。このようなセパレーター83は、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(いわゆる、PET材)等によって、厚さが20μm以上30μm以下に形成されており、本実施形態では厚さ25μmのセパレーター83を用いている。セパレーター83の厚さが20μmよりも薄いと、後述するブレーキング工程(S103)において、セパレーター83がウエハ接合体60とともに切断される虞があるため好ましくない。一方、セパレーター83の厚さが30μmよりも厚いと、セパレーター83からウエハ接合体60に作用する割断応力がセパレーター83で緩和され、ウエハ接合体60がスムーズに切断されず、切断面の表面精度が低下する虞があるため好ましくない。
【0061】
そして、ウエハ接合体60は、UVテープ80とセパレーター83とにより挟持された状態で、リングフレーム81の貫通孔81b内に保持される。この状態でウエハ接合体60をブレーキング装置79内に搬送する(S102)。
【0062】
ブレーキング装置79は、ウエハ接合体60を載置するためのステージ75と、ウエハ接合体60を切断するための切断刃70と、ステージ75の下方(ウエハ接合体60の載置面とは反対側)に配置されたCCDカメラ(撮像手段)74とを備えている。ステージ75はシリコンラバー71により構成されている。シリコンラバー71は、光学的な透明材料により台状に形成されている。また、切断刃70は、刃渡りの長さがウエハ接合体60の直径よりも長く形成され、刃先角度θが例えば60度〜90度程度に形成されている。
この場合、ブレーキング装置79内では、リッド基板用ウエハ50の表面50bをステージ75に向けた状態でウエハ接合体60がセットされる。すなわち、シリコンラバー71上にセパレーター83を介してウエハ接合体60が載置されることになる。
【0063】
そして、ブレーキング装置79内でセットされたウエハ接合体60に対して、割断応力を加えるブレーキング工程を行う(S103)。ブレーキング工程(S103)では、まず切断刃70がスクライブラインM’(トリミングラインT)上に配置されるように位置合わせを行う。具体的には、ステージ75の下方に配置されたCCDカメラ74により、リッド基板用ウエハ50上におけるスクライブラインM’の位置を検出し、この検出結果に基づいて切断刃70をウエハ接合体60の面方向に移動させる。これにより、切断刃70の位置合わせを行うことができる。その後、切断刃70をウエハ接合体60の厚さ方向に移動(下降)させ、切断刃70の刃先をベース基板用ウエハ40の裏面40bに押し当てる。その後、ウエハ接合体60の厚さ方向に沿って押し込むように、所定のストローク(例えば、50μm程度)で切断刃70を移動させる。この際、ウエハ接合体60に所定の荷重(例えば、10kg/inch)が付与される。
【0064】
これにより、ウエハ接合体60には、厚さ方向に沿ってクラックが発生し、ウエハ接合体60がリッド基板用ウエハ50上に形成されたスクライブラインM’に沿って折れるように切断される。この際、本実施形態のブレーキング装置79は、ウエハ接合体60がステージ75のシリコンラバー71上にセットされているため、切断刃70をウエハ接合体60に押し込むことで、シリコンラバー71が弾性変形する。これに伴い、ウエハ接合体60がシリコンラバー71の表面に倣ってステージ75に向かって湾曲するように僅かに撓み変形する。これにより、ウエハ接合体60に付与される割断応力がスクライブラインM’の底頂部に集中し易くなる。さらに、切断刃70とウエハ接合体60との接触点以外に作用する、切断刃70による荷重がシリコンラバー71に逃げる(吸収または減衰する)ことになる。
【0065】
これにより、ウエハ接合体60に対して荷重を加えた場合に、スクライブラインM’の底頂部がクラック発生の起点となり、ウエハ接合体60にはリッド基板用ウエハ50の表面50aからベース基板用ウエハ40の裏面40bに向かって厚さ方向に沿ってクラックが進行し易くなる。その結果、ウエハ接合体60が溝に沿って折れるように切断されることになる。また、上述した割断応力とはスクライブラインM’から離間する方向(各パッケージ10が離間する方向)に発生する引張応力である。
【0066】
そして、上述した方法により各スクライブラインM’毎に切断刃70を押し当てることで、ウエハ接合体60を輪郭線M毎のパッケージに一括して分離することができる。その後、ウエハ接合体60に貼り付けられたセパレーター83を剥離する(S104)。
【0067】
次に、マガジン82のUVテープ80に対してUV照射し、UVテープ80の粘着力を僅かに低下させる(S111)。なお、この状態では、ウエハ接合体60は未だUVテープ80に貼り付いた状態である。
【0068】
次に、後述するエクスパンド工程(S113)を行うために、図15に示すように、ウエハ接合体60をエクスパンド装置91内に搬送する(S112)。そこで、まずエクスパンド装置91について説明する。
エクスパンド装置91は、リングフレーム81がセットされる円環状のベースリング92と、ベースリング92の内側に配置され、ウエハ接合体60よりも大径に形成された円板状のヒーターパネル93とを備えている。ヒーターパネル93は、ウエハ接合体60がセットされるベースプレート94に伝熱型のヒーター(不図示)が搭載されたものであり、ヒーターパネル93の中心軸がベースリング92の中心軸に一致するように配置されている。また、ヒーターパネル93は、図示しない駆動手段によって軸方向に沿って移動可能に構成されている。なお、図示しないがエクスパンド装置91は、ベースリング92上にセットされるリングフレーム81を、ベースリング92との間で挟持する押え部材も備えている。
【0069】
このような装置を用いてエクスパンド工程(S113)を行うには、まずウエハ接合体60をエクスパンド装置91にセットする前に、後述するグリップリング85のうち、内側リング85aをヒーターパネル93の外側にセットする。この時、内側リング85aは、ヒーターパネル93に固定され、ヒーターパネル93の移動時にともに移動するようにセットされる。なお、グリップリング85は、内径がヒーターパネル93の外径よりも大きく、リングフレーム81の貫通孔81bの内径よりも小さく形成された樹脂製のリングであり、内側リング85aと、内径が内側リング85aの外径と同等に形成された外側リング85b(図16参照)とで構成されている。すなわち、内側リング85aは外側リング85bの内側に嵌まり込むようになっている。
【0070】
その後、マガジン82に固定されたウエハ接合体60をエクスパンド装置91にセットする。この時、UVテープ80側をヒーターパネル93及びベースリング92に向けてウエハ接合体60をセットする。具体的に、ウエハ接合体60の裏面40bとヒーターパネル93とを対向させるとともに、リングフレーム81の一方の面81aとベースリング92とを対向させた状態で、ウエハ接合体60をエクスパンド装置91にセットする。
これにより、ヒーターパネル93上にUVテープ80を介してウエハ接合体60がセットされる。そして、図示しない押え部材によってリングフレーム81をベースリング92との間に挟持する。
【0071】
次に、ヒーターパネル93のヒーターによってUVテープ80を50℃以上に加熱する。UVテープ80を50℃以上に加熱することで、UVテープ80が軟化して延伸し易くなる。そして、図16に示すように、UVテープ80を加熱した状態でヒーターパネル93を内側リング85aとともに上昇させる(図16中矢印参照)。この時、リングフレーム81はベースリング92と押え部材との間で挟持されているので、UVテープ80がウエハ接合体60の径方向外側に向かって延伸する。これにより、UVテープ80に貼着されたパッケージ10同士が離間し、隣接するパッケージ10間のスペースが拡大する。そして、この状態で内側リング85aの外側に外側リング85bをセットする。具体的には、内側リング85aと外側リング85bとの間にUVテープ80を挟んだ状態で、両者を嵌め合わせる。これにより、UVテープ80が延伸された状態でグリップリング85に保持される。そして、グリップリング85の外側のUVテープ80を切断し、リングフレーム81とグリップリング85とを分離する(S114)。
【0072】
図18は、保護膜形成工程を説明するための図であって、複数の圧電振動子がUVテープに貼り付けられた状態を示す断面図である。
次に、図18に示すように、パッケージ10を保護膜11によってコーティングする保護膜形成工程(S115)を行う。具体的には、まず複数のパッケージ10を、UVテープ80に貼り付けられた状態でスパッタリング装置のチャンバー内に搬送し、リッド基板3が保護膜11の成膜材料(ターゲット)に対向するようにセットする。この状態でスパッタリングを行うことで、リッド基板3の表面3d及びパッケージ10の側面10a上に成膜材料から飛び出した原子が付着する。これにより、リッド基板3の表面3dからパッケージ10の側面10aの全域に亘って、保護膜11が形成される。
【0073】
この場合、接合材23はパッケージ10の側面10aに露出しているので、接合材23を覆うように保護膜11を形成するには、全てのパッケージ10を側面10aが露出するように離間配置する必要がある。
そこで、本実施形態によれば、エクスパンド工程において複数のパッケージ10が分離した状態を利用して保護膜形成工程を行うので、全てのパッケージ10を改めて離間配置する必要がなく、製造効率を向上させることができる。すなわち、各パッケージ10間のスペースを確保した状態で保護膜11を形成できるので、各パッケージ10におけるベース基板2とリッド基板3との間から露出する接合材23に対して均一に保護膜11を形成できる。
また、エクスパンドされたUVテープ80上に複数のパッケージ10を貼り付けた状態でスパッタリングを行うことで、個片化された複数のパッケージ10に対して一括して保護膜11を形成できるので、パッケージ10に個別で保護膜11を形成する場合に比べて製造効率の向上を図ることができる。さらに、スパッタリング装置への搬送時や成膜時におけるパッケージ10の移動を抑制できる。
【0074】
また、ベース基板2の裏面2a側にUVテープ80が貼り付けられた状態で、リッド基板3側からスパッタリングを行うことで、ベース基板2の裏面2a側への成膜材料の回り込みを抑制できる。そのため、外部電極6,7への成膜材料の付着を抑制できるので、保護膜11によって各外部電極6,7間が架け渡されるのを抑制できる。これにより、保護膜11にCr等の導電性金属材料を用いた場合であっても、外部電極6,7間の短絡を抑制できる。また、本実施形態では、外部電極6,7の側面がベース基板2の側面2cよりも内側に位置しているため、保護膜11の周縁端部と外部電極6,7との間は間隙部12(図2参照)を挟んで離間配置される。そのため、仮に成膜材料がベース基板2の裏面2a側に僅かに回り込んだとしても、保護膜11と外部電極6,7とが連続的に架け渡されるのを抑制できる。
【0075】
なお、本実施形態では、リッド基板3の表面3dに対向するように成膜材料が配置されるため、パッケージ10の側面10aに比べてリッド基板3の表面3dの方が、成膜材料が付着し易い。具体的に、リッド基板3の表面3dとパッケージ10の側面10aとの成膜速度比は3〜4:1程度となる。成膜速度比を小さくするためには、グリップリング85(パッケージ10)を自転させながらスパッタリングを行うことが好ましい。
【0076】
次に、保護膜11が形成された圧電振動子1を取り出すためのピックアップ工程を行う。ピックアップ工程(S116)では、まずUVテープ80に対してUV照射し、UVテープ80の粘着力を低下させる。これにより、UVテープ80から圧電振動子1が剥離される。その後、画像認識等により各圧電振動子1の位置を把握して、ノズル等により吸引することで、UVテープ80から剥離された圧電振動子1を取り出していく。このように、UVテープ80にUV照射してUVテープ80から圧電振動子1を剥離することで、個片化された圧電振動子1を取り出し易くすることができる。なお、本実施形態では上述したブレーキング工程(S103)おいて、リッド基板用ウエハ50のスクライブラインM’に沿って個片化を行うため、個片化された圧電振動子1のリッド基板3の上部周縁にはスクライブラインM’によってC面取りが施された面取り部90が形成される。
以上により、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティC内に圧電振動片5が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。これにより、個片化工程が終了する。
【0077】
その後、内部の電気特性検査を行う(S110)。すなわち、圧電振動片5の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
【0078】
図19はマーキング工程を説明するための図であって、図1に相当する圧電振動子の外観斜視図である。
電気特性検査及び外観検査が完了し、検査に合格した圧電振動子1に対して、最後にマーキング13を施す(S120)。図19に示すように、マーキング13は、リッド基板3の表面3dに対して鉛直方向からレーザー光R3を照射して、リッド基板3の表面3d上の保護膜11を除去することで、製品の種類、製品番号及び製造年月日等を刻印する。
このように、保護膜11を除去してマーキング13を施すことで、マーキング13を施すためにめっき膜等を別途形成する必要がないので、製造効率を向上できる。
【0079】
なお、マーキング工程(S120)ではレーザー光R3の出力を、保護膜11のみを貫通する程度に調整することが好ましい。これにより、レーザー光R3がベース基板2を透過してキャビティC内に到達するのを抑制できる。つまり、レーザー光R3が圧電振動片5に照射されるのを抑制して、圧電振動片5へのダメージを抑制できるため、圧電振動片5の電気特性(周波数特性)に影響が及ぶのを抑制できる。
また、ベース基板2でのレーザー光R3の透過を確実に抑制するためには、ガラス材料での吸収率が高いレーザーを用いることが好ましく、このようなレーザーとしては、例えば波長が10.6μmのCO2レーザーや、波長が266nmの第4高調波レーザー等を用いることが可能である。さらに、これらレーザーのうち、波長が比較的長いCO2レーザーを用いることで、ベース基板2へのダメージをより確実に抑制できる。
【0080】
このように、本実施形態では、第1焦点調整工程(S95)により接合材23に対して正確に第2レーザー光R2を合焦させた後、第2焦点調整工程(S96)を経て、リッド基板用ウエハ50の表面50bにダミーラインDを形成するので、ベース基板用ウエハ40の厚さや、接合材23の厚さ等に作用されずに、リッド基板用ウエハ50の表面50b上に確実にダミーラインDを形成することができる。したがって、スクライブ工程(S99)の際、第3焦点調整工程(S98)によってダミーラインDに合焦された第2レーザー光R2を用いてスクライブラインM’を形成することにより、スクライブラインM’をリッド基板用ウエハ50の表面50bに精度よく形成することができる。
このように、ウエハ接合体60の厚さを1つずつ測定するといった作業を何ら行うことなく、スクライブラインM’を効率よく形成することができる。
【0081】
さらに第1焦点調整工程(S95)の際、各ウエハ40、50同士を接合する接合材23を撮像しているので、第1焦点調整工程(S95)を行うために、新たな構成要素をウエハ接合体60に付加する必要がなく、ウエハ接合体60の構造が複雑になるのを抑制するとともに、ウエハ接合体60の切断を効率よく行うことができる。
また、ダミーライン形成工程(S97)の際に形成したダミーラインDを撮像することにより、第2レーザー光R2をダミーラインDに対して正確かつ円滑に合焦し直すことができる。したがって、擦れ痕や異物などを指標として撮像する場合とは異なり、前述の作用効果が顕著に奏される。
そして、第1焦点調整工程(S95)からスクライブ工程(S99)を一連の流れとして連続して行うことができるので、ウエハ接合体60に予めダミーラインDのような構成を形成しておく必要がなく、ウエハ接合体60の切断を一層効率よく行うことができる。
【0082】
また、ダミーライン形成工程(S97)の際、ダミーラインDを直線状に形成するので、第3焦点調整工程(S98)の際、ダミーラインDの延在方向に沿った複数箇所において第2レーザー光R2を合焦し直すことが可能になり、スクライブラインM’をリッド基板用ウエハ50の表面50bに一層精度よく形成することができる。
またこのとき、ダミーラインDを、切断予定線Mに平行な直線状に形成するので、第2レーザー88の装置構成の簡素化を図ることができる。
さらに、ダミーライン形成工程(S97)の際、リッド基板用ウエハ50の表面50bのうち、パッケージの形成領域を外した部分にダミーラインDを形成するので、歩留まりを確実に向上させることができる。
【0083】
また本実施形態では、ステージ75のシリコンラバー71上にウエハ接合体60をセットした状態でブレーキング工程を行う構成とした。
この構成によれば、スクライブラインM’に沿ってウエハ接合体60に切断刃70を押し当てることで、シリコンラバー71が弾性変形し、ウエハ接合体60がシリコンラバー71の弾性変形に倣ってシリコンラバー71に向かって湾曲するように僅かに撓み変形する。これにより、ウエハ接合体60に付与される割断応力がスクライブラインM’の底頂部に集中し易くなる。
その結果、ウエハ接合体60に対して割断応力を加えた場合に、スクライブラインM’の底頂部がクラック発生の起点となり、ウエハ接合体60におけるリッド基板用ウエハ50の表面50aからベース基板用ウエハ40の裏面40bに向かってクラックが進行しやすくなって、ウエハ接合体60がスクライブラインM’に沿って折れるように切断されることになる。
したがって、ウエハ接合体60をスクライブラインM’に沿ってよりスムーズ、かつ容易に切断することができる。そのため、クラッシュの発生を抑えるとともに、チッピングの発生も抑え、残留応力の痕跡がない、良好な切断面を得ることができる。これにより、ウエハ接合体60から圧電振動子1を所望のサイズに切断することができる。その結果、1枚のウエハ接合体60から良品として取り出される圧電振動子1の数を増加することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0084】
また、ブレーキング工程において、切断刃70の先端をベース基板用ウエハ40の裏面40bに接触させた状態で、ウエハ接合体60の厚さ方向に沿って押し込むように切断刃70を移動させることで、スクライブラインM’に沿って確実に割断応力を加えることができる。そのため、ウエハ接合体60の厚さ方向へのクラック進行を促進することができる。また、従来のようにウエハ接合体に対して切断刃を落下させる場合に比べて、切断刃とウエハ接合体60との衝突によるチッピングの発生等を防止することができる。したがって、より良好な切断面を得ることができる。
【0085】
さらに、本実施形態ではウエハ接合体60に切断刃70を接触させる際、CCDカメラ74により検出されたスクライブラインM’の位置に基づいて切断刃70を位置合わせする構成とした。
この構成によれば、スクライブラインM’と切断刃70とを位置合わせすることで、スクライブラインM’に沿って確実に割断応力を付与することができるので、ウエハ接合体60をよりスムーズ、かつ容易に切断することができる。
【0086】
本実施形態では、マガジン82のセパレーター83がウエハ接合体60とシリコンラバー71との間に介在することになるので、仮にウエハ接合体60の切断時に微小な塵埃等が飛散した場合には、塵埃等をシリコンラバー71により捕捉することができる。
その結果、シリコンラバー71上に載置されるウエハ接合体60が塵埃等に当接して傷付くことを防止できる。また、ウエハ接合体60を常にシリコンラバー71に密着させた状態で載置することができるので、ウエハ接合体60の載置時におけるガタツキ等を防止し、ウエハ接合体60を厚さ方向に沿って確実に切断することができる。
【0087】
また、UVテープ80の厚さが160μm以上であることから、エクスパンド工程(S113)においてUVテープ80が破断し難くなっているので、スクライブ工程(S95)等で使用したUVテープ80を交換することなく、そのままエクスパンド工程(S113)で用いることができる。すなわち、エクスパンド工程(S113)に先立って、UVテープ80の張替え工程等を行う必要がないので、製造効率の低下及び製造コストの増加を防止することができる。
一方、厚さが180μm以下に形成されたUVテープ80を用いることで、UVテープ80を延伸させるために必要な力を抑制することができるので、製造効率を向上させることができる。また、市場において容易に調達することができるので、UVテープ80に要する材料コストを低下させることができる。
【0088】
しかも、本実施形態では、ウエハ接合体60を個片化した後、エクスパンド工程(S113)を行うことで、隣接する各圧電振動子1(パッケージ10)間隔を均等に広げることができるので、隣接する圧電振動子1同士を確実に分離することができる。したがって、エクスパンド工程(S113)後にUVテープ80から圧電振動子1を取り出す際、個片化された圧電振動子1を認識し易くなるので(認識精度が向上するので)、各圧電振動子1を容易に取り出すことができる。
また、エクスパンド工程(S113)後にUVテープ80から圧電振動子1を取り出す際、隣接する圧電振動子1との接触等を防ぎ、圧電振動子1同士の接触によるチッピングの発生等を防止して、圧電振動子1の割れを防ぐことができる。よって、1枚のウエハ接合体60から良品として取り出される圧電振動子1の数を増加することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0089】
なお、スクライブ工程(S95)に先立って輪郭線M上の接合材23を剥離してトリミングラインTを形成することで、ブレーキング時にウエハ接合体60の厚さ方向へのクラック進行を促進するとともに、ウエハ接合体60の面方向へのクラック進行を防ぐことができる。
【0090】
また、本実施形態の圧電振動子1のリッド基板3は、その周縁部に面取り部90が形成されている構成とした。
この構成によれば、ピックアップ工程(S110)において、仮に個片化された圧電振動子1を取り出す際に、圧電振動子1を取り出すための器具が、圧電振動子1の角部に接触した場合であっても、接触によるチッピングの発生を抑制することができる。そのため、チッピングをきっかけに圧電振動子1が割れることがない。
これにより、キャビティC内の気密が確保することができ、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供することができる。
なお、面取り部90は、第2レーザー88によりスクライブラインM’を形成した後、スクライブラインM’に沿って切断することで自動的に形成することができるので、切断後の圧電振動子1にそれぞれ面取り部90を形成する必要がない。その結果、面取り部を別工程で形成する場合に比べてコスト上昇を抑制し、作業効率を向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態では、パッケージ10の外面に接合材23よりも腐食性の高い保護膜11によって接合材23を被覆する構成とした。
この構成によれば、保護膜11により接合材23を覆うことで、接合材23が外部に曝されることがないので、接合材23と大気との接触を抑制して、大気中の水分等による接合材23の腐食を抑制できる。この場合、保護膜11は接合材23よりも耐腐食性の高い材料により構成されているので、保護膜11の腐食により接合材23が露出するのを抑制できるので、接合材23の腐食を確実に抑制できる。そのため、キャビティC内の気密を長期に亘って安定した状態に維持でき、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0092】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図20を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図20に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0093】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。
これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0094】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、発振器100自体も同様に高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0095】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図21を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0096】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図21に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0097】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0098】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0099】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0100】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0101】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0102】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0103】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体も同様に高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0104】
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図22を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図22に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0105】
(電波時計)
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0106】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0107】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0108】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、高品質化された圧電振動子1を備えているので、電波時計自体も同様に高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0109】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、トリミング工程(S94)を行うものとしたが、行わなくてもよい。
【0110】
また、上述した実施形態では、第2焦点調整工程(S96)の後、ダミーライン形成工程(S97)を行い、リッド基板用ウエハ50の表面50bにダミーラインDを形成するものとしたが、この表面50bにレーザー痕からなる被検出部を形成すれば、ダミーラインDでなくてもよい。例えば、直線状ではない被検出部を形成してもよく、直線状であっても切断予定線Mと非平行な被検出部を形成してもよい。
【0111】
また上述した実施形態では、ブレーキング工程(S103)の前に、リングフレーム81の他方の面81cに、貫通孔81bを塞ぐようにセパレーター83を貼り付ける(S101)ものとしたが、これに限られるものではない。例えば、セパレーター83の外周縁を、UVテープ80においてリングフレーム81よりも内側に位置する部分(貫通孔81bを一方の面81cから塞ぐ部分)に貼り付けてもよい。またセパレーター83はなくてもよい。
【0112】
また、上述した実施形態では、ブレーキング工程においてリッド基板用ウエハ50の表面50bにスクライブラインM’を形成する一方、ベース基板用ウエハ40の裏面40bから切断刃70を押し当てる場合について説明したが、これに限られない。例えば、ベース基板用ウエハ40の裏面40bにスクライブラインM’を形成する一方、リッド基板用ウエハ50の表面50bから切断刃70を押し当ててもよい。
【0113】
また上述した実施形態では、ブレーキング工程(S103)の際、切断刃70を用いてウエハ接合体60に割断応力を付与するものとしたが、異なる方法で割断応力を付与することも可能である。
さらに上述した実施形態では、エクスパンド工程(S113)を行うものとしたが、行わなくてもよい。
さらにまた上述した実施形態では、ウエハ接合体60の切断に際し、マガジン82を用いたが、用いなくてもよい。
【0114】
また、圧電振動子の製造方法は、第1焦点調整工程(S95)と、第2焦点調整工程(S96)と、ダミーライン形成工程(S97)と、第3焦点調整工程(S98)と、スクライブ工程(S99)と、切断工程(S100)とを有する接合ガラスの切断方法を用いていれば、上述した実施形態に示したものに限られない。
例えば、保護膜形成工程(S115)はなくてもよい。
また、この方法で製造される圧電振動子1が、圧電振動片として音叉型の圧電振動片5とは異なる構造、例えば厚み滑り振動片等を備えていてもよい。さらに、ベース基板2に凹部3aを形成してもよく、両基板2,3に凹部3aをそれぞれ形成してもよい。
【0115】
また上述した実施形態では、上述した接合ガラスの切断方法を用いて、圧電振動片5がキャビティCに封入された圧電振動子1を製造するものとしたが、圧電振動片とは異なる電子部品がキャビティに封入可能なパッケージを製造することも可能である。
さらに、上述した接合ガラスの切断方法は、パッケージ製造の一工程として用いなくてもよく、接合ガラスを切断するときに単独で適用可能である。
【0116】
また上述した実施形態では、上述した接合ガラスの切断方法を用いて、2枚のウエハ40,50が接合材23を介して接合されたウエハ接合体60を切断するものとしたが、3枚以上のガラス基板が接合材を介して接合されてなる接合ガラスの切断にも、上述した接合ガラスの切断方法を適用することが可能である。
【0117】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…圧電振動子(パッケージ)
2…ベース基板(ガラス基板)
3…リッド基板(ガラス基板)
4…圧電振動片(電子部品)
23…接合膜(接合材)
60…ウエハ接合体(接合ガラス)
100…発振器
110…携帯情報機器(電子機器)
130…電波時計
C…キャビティ
M’…スクライブライン(溝)
R1…レーザー光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラス基板の接合面同士が接合材を介して接合されてなる接合ガラスを、切断予定線に沿って切断する接合ガラスの切断方法であって、
前記接合ガラスの一方の面側から前記接合材を撮像することで、前記一方の面側から前記接合ガラスに照射可能なレーザー光を前記接合材に合焦させる第1焦点調整工程と、
前記第1焦点調整工程の後、前記レーザー光の焦点を、前記接合ガラスの厚さ方向に沿った前記接合ガラスの一方の面側に向けて、前記照射がなされる前記ガラス基板の推定厚さ分、移動させる第2焦点調整工程と、
前記第2焦点調整工程の後、前記レーザー光を照射して前記一方の面に被検出部を形成する被検出部形成工程と、
前記一方の面側から前記被検出部を撮像することで、前記レーザー光を前記被検出部に合焦し直す第3焦点調整工程と、
前記第3焦点調整工程の後、前記レーザー光を前記切断予定線に沿って照射して、前記切断予定線に沿って前記一方の面に溝を形成する溝形成工程と、
前記切断予定線に沿って割断応力を加えることで、前記切断予定線に沿って前記接合ガラスを切断する切断工程とを有することを特徴とする接合ガラスの切断方法。
【請求項2】
請求項1記載の接合ガラスの切断方法であって、
前記被検出部形成工程の際、前記被検出部を、前記切断予定線に平行な直線状に形成することを特徴とする接合ガラスの切断方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接合ガラスの切断方法を使用して、前記接合ガラスの内側に電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージを製造する方法であって、
前記切断工程では、複数の前記パッケージの形成領域を隔する前記切断予定線に沿って前記接合ガラスを切断することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のパッケージの製造方法であって、
前記被検出部形成工程の際、前記一方の面のうち、前記パッケージの形成領域を外した部分に前記被検出部を形成することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載のパッケージの製造方法を用いて形成されたパッケージであって、
前記接合ガラスの前記一方の面により構成される面の外周縁部に、前記溝が割断されてなる面取り部を有していることを特徴とするパッケージ。
【請求項6】
請求項5記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項7】
請求項6記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項6記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項6記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
複数のガラス基板の接合面同士が接合材を介して接合されてなる接合ガラスを、切断予定線に沿って切断する接合ガラスの切断方法であって、
前記接合ガラスの一方の面側から前記接合材を撮像することで、前記一方の面側から前記接合ガラスに照射可能なレーザー光を前記接合材に合焦させる第1焦点調整工程と、
前記第1焦点調整工程の後、前記レーザー光の焦点を、前記接合ガラスの厚さ方向に沿った前記接合ガラスの一方の面側に向けて、前記照射がなされる前記ガラス基板の推定厚さ分、移動させる第2焦点調整工程と、
前記第2焦点調整工程の後、前記レーザー光を照射して前記一方の面に被検出部を形成する被検出部形成工程と、
前記一方の面側から前記被検出部を撮像することで、前記レーザー光を前記被検出部に合焦し直す第3焦点調整工程と、
前記第3焦点調整工程の後、前記レーザー光を前記切断予定線に沿って照射して、前記切断予定線に沿って前記一方の面に溝を形成する溝形成工程と、
前記切断予定線に沿って割断応力を加えることで、前記切断予定線に沿って前記接合ガラスを切断する切断工程とを有することを特徴とする接合ガラスの切断方法。
【請求項2】
請求項1記載の接合ガラスの切断方法であって、
前記被検出部形成工程の際、前記被検出部を、前記切断予定線に平行な直線状に形成することを特徴とする接合ガラスの切断方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接合ガラスの切断方法を使用して、前記接合ガラスの内側に電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージを製造する方法であって、
前記切断工程では、複数の前記パッケージの形成領域を隔する前記切断予定線に沿って前記接合ガラスを切断することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のパッケージの製造方法であって、
前記被検出部形成工程の際、前記一方の面のうち、前記パッケージの形成領域を外した部分に前記被検出部を形成することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載のパッケージの製造方法を用いて形成されたパッケージであって、
前記接合ガラスの前記一方の面により構成される面の外周縁部に、前記溝が割断されてなる面取り部を有していることを特徴とするパッケージ。
【請求項6】
請求項5記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項7】
請求項6記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項6記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項6記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−209635(P2012−209635A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71735(P2011−71735)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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