説明

検査装置及び検査方法

【課題】デバイスが形成されている半導体基板の全面について厚さムラを短時間で検査することができる検査装置を実現する。
【解決手段】本発明による検査装置は、半導体基板(7)のデバイス形成面とは反対側の裏面(7a)に向けて、前記半導体基板に対して半透明な照明光を照射する照明手段(1,2,3)と、半導体基板の裏面に入射し、デバイス構造面(7b)で反射し、前記裏面側から出射した照明光を受光する撮像手段(15)と、 撮像手段からの出力信号を用いて厚さムラを検出する信号処理装置(20)とを具える。信号処理装置は、前記撮像手段からの出力信号を用いて、半導体基板に形成されているデバイスの半導体基板の裏面側から撮像した2次元画像を形成する手段(21)と、撮像されたデバイスの2次元画像と基準画像とを比較し、画像比較の結果に基づいて前記半導体基板の厚さムラを検出する厚さムラ検出手段(22,23,24)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種デバイスが形成されている半導体基板の厚さムラないし厚さ分布を検査する検査装置及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高感度な撮像素子として、背面照射型CCDや裏面照射型CMOSセンサが実用化されている。これらの撮像素子では、視野からの物体光は配線層を通過することなく直接光電変換層に入射するため、広い波長域にわたって高い量子効率が実現されている。これらの撮像素子の製造工程では、シリコン基板上に光電変換層(フォトダイオード領域)が形成され、その上に配線層(CCD駆動領域)が形成され、その後シリコン基板を支持基板上に保持し、シリコン基板の背面側が所定の厚さに研磨されている。このような背面照射型の撮像デバイスにおいては、バックグラインディング後のシリコン基板に厚さムラが存在すると、光電変換部に感度ムラが生ずる不具合が発生する。すなわち、バックグラインディング工程において、シリコン基板とサポート基板との接着面に微小なボイドが存在し或いは異物が付着すると、シリコン基板に局所的な過剰研磨部分や研磨不足部分が形成され、シリコン基板に厚さムラないし厚さ分布が発生する。一方、シリコン基板に厚さムラが存在すると、基板の厚さムラに応じて光電変換層に到達する光量が変化し、撮像素子に局所的な感度ムラが発生し、撮像される画像の品質が低下する不具合が発生する。従って、バックグラインディング後のシリコン基板の厚さ管理は、背面照射型撮像素子の品質を管理する上で極めて重要である。
【0003】
TSV(Through Silicon Via )技術を利用した半導体デバイスの製造においても、半導体基板の厚さ管理は極めて重要であり、積層される半導体基板の一部の基板に厚さムラが存在すると、積層された半導体基体全体が不良品となってしまう。
【0004】
半導体基板の厚さを検出する方法として、赤外分光法を利用した厚さ検出方法が既知である。この既知の厚さ検出方法では、シリコン基板の表面及び裏面における反射光の干渉による光強度の波長依存性を利用して厚さ測定が行われている。
【0005】
シリコン基板の厚さムラを検出する方法として、静電容量式の厚み計が既知である(例えば、特許文献1参照)。静電容量式の厚み計では、検査されるシリコン基板をはさんで1対のプローブを配置し、プローブ間の静電容量の変化からシリコン基板の厚さが測定されている。
【0006】
また、半導体基板の研磨終点を検出する方法として、投射光学系を用いてP偏光及びS偏光した測定光を半導体基板の研磨面に向けて投射し、半導体基板の研磨面からの反射光を受光器で検出し、受光器からの出力信号に基づいて研磨終点が検出される研磨終点検出方法が既知である(例えば、特許文献2参照)。この研磨終点検出方法では、受光器の前段にS偏光成分を除去する偏光板が配置され、研磨に進行に伴い露出する下地の材料層からのP偏光成分の増加量に基づき研磨終点が検出されている。
【特許文献1】特開平5−67660号公報
【特許文献2】特開2005−294365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した赤外分光法を利用したシリコンウェハの厚さ測定方法では、シリコン基板の厚さをスポット的に測定するため、シリコン基板全体について検査するのに長時間かかる欠点があった。また、スポット的に測定が行われるため、微小面積の過剰研磨部分及び研磨不足部分が検出されず、半導体基板に形成されたデバイスの全数を検査することが困難であった。また、静電容量計を用いた厚さ測定では、半導体基板上にデバイスが形成されている場合、基板表面に堆積している材料に応じて検出される静電容量が変化するため、デバイスが形成されている半導体基板の厚さムラを検出することは困難であった。
【0008】
さらに、上述した研磨終点検出方法では、測定光を投射する投射光学系と、基板表面からの反射光を受光する受光光学系とが用いられ、これら2つの光学系は物理的に離間して配置されているため、2個の光学系を収容する空間が必要であり、測定装置が大型化する欠点があった。
【0009】
本発明の目的は、デバイスが形成されている半導体基板の厚さムラ又は厚さ分布を検査できる検査装置を実現することにある。
本発明の別の目的は、デバイスが形成されている半導体基板の全面を短時間で検査することができる検査装置を実現することにある。
さらに、本発明の別の目的は、半導体基板の厚さムラを検査する検査装置において、照明光学系と結像光学系との2つの光学系が一体化され、小型化された検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による検査装置は、デバイスが形成されている半導体基板の厚さムラ又は厚さ分布を検査する検査装置であって、
検査すべき半導体基板を支持するステージと、
半導体基板のデバイス形成面とは反対側の裏面に向けて照明光を照射する照明手段と、
前記半導体基板の裏面に入射し、デバイス構造面で反射し、前記裏面側から出射した照明光を受光する撮像手段と、
前記撮像手段からの出力信号を用いて基板の厚さムラを検出する信号処理装置とを具え、
前記信号処理装置は、前記撮像手段からの出力信号を用いて、半導体基板に形成されているデバイスの半導体基板の裏面側から撮像した2次元画像を形成する手段と、撮像されたデバイスの2次元画像と基準画像とを比較する画像比較手段と、画像比較の結果に基づいて前記半導体基板の厚さムラを検出する厚さムラ検出手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明では、半導体基板上にデバイス又はその一部が形成されている半導体基板の厚さムラ又は厚さ分布を検査できる検査装置を実現する。本発明では、検査される半導体基板に対して半透明な照明光を照射する。例えば、シリコン基板を検査する場合、可視光又は近赤外光は、基板の内部を進行する間に照明光の一部が吸収され、残りの照明光が基板から出射する半透明な光である。この場合、半導体基板を透過する間に基板により吸収される照明光の光量は、基板の厚さに応じて変化する。すなわち、半導体基板に局所的に厚さが厚い部分が存在する場合、その部位を通過した照明光は、基板により吸収される割合が多いため、半導体基板から基準値よりも少ない光量の照明光が出射する。一方、半導体基板に局所的に薄い部分が存在する場合、当該部位を通過した照明光は、基板により吸収される割合が少ないため、基準値よりも多い光量の照明光が出射する。従って、半導体基板とデバイス構造面との間の反射率特性と半導体基板内部を伝搬する間の吸収特性を利用すれば、半導体基板から出射する照明光の光量すなわち輝度値を検出し、基準の輝度値と比較することにより、半導体基板の厚さ分布を検出することができる。さらに、基準となる輝度値と検出された輝度値との変化分を検出することにより、検査される半導体基板に対する照明光の吸収率又は透過率を用いて基準厚さからの変化量を算出することも可能である。従って、本発明による検査装置は、裏面研磨プロセスにおいて、研磨終点を検出するモニタ装置として利用することも可能である。
【0012】
さらに、本発明者が半導体基板上にアルミニウム層の金属層が形成されている複合体の反射率について解析した結果、半導体基板の厚さが厚くなるにしたがって複合体としての反射率が低下することが判明した。この解析結果は、半導体基板の厚さが数μm程度の薄い場合及び数10μm〜数100μm程度の厚い場合の両方について成立する。また、照明光の波長に関して、可視域及び近赤外域において成立する。この解析結果によれば、各種デバイスが形成されている半導体基板について、その裏面側から照明ビームを投射し、デバイス構造面で反射して裏面から出射する照明光の輝度ないし強度を測定すれば、半導体基板の厚さが測定されることなる。
【0013】
本発明では、半導体基板に形成されたデバイスのデバイス構造面を反射部材として利用する。そして、半導体基板の背面研磨が行われた裏面に向けて照明光を投射し、基板の内部を進行し、デバイス構造面で反射し、基板の裏面から出射した照明光の光量を検出する。例えば背面照射型CCDの場合、背面研磨された半導体基板は、裏面側からデバイス形成面側(表面側)に向けて薄い半導体基板、光電変換層、及び配線層が順次存在する。配線層はアルミニウム等の各種金属材料で構成されるので、照明光に対して反射層として作用し、例えば波長が850nmの照明光の場合シリコンと銅や配線層との間には約60%の反射率の界面が形成される。従って、半導体基板の裏面に入射した照明光は、半導体基板及び光電変換層を透過し、配線層(デバイス構造面)で反射し、再び光電変換層及び半導体基板を透過し、基板の裏面から出射する。本明細書において、デバイス構造面とは、半導体基板上に形成された各種デバイスの配線層やコンタクトホール等の反射面を意味する。また、本明細書において、半導体基板とは、背面研磨後に残存する数μm〜数100μm程度の半導体基板及び半導体基板に形成された光電変換層等の半導体材料層を含むものである。また、撮像デバイスが形成された半導体基板においては、光電変換層の表面が直接露出している場合がある。この場合、光電変換層が半導体基板に相当し、光電変換層の露出した表面が半導体基板の裏面に対応する。
【0014】
デバイス構造面の反射率は一様ではなく、配線層やコンタクホールに形成された材料等の反射率によって変化する。また、半導体基板の裏面からデバイス構造面までの距離もデバイスの構造に応じて相違する。従って、基板の裏面を照明ビームにより2次元走査した場合、基板の裏面から出射した照明光(反射光)を受光する光検出器から出力される輝度信号の輝度値は、デバイスの各部位に応じて変化する。従って、光検出器から出力される輝度値と予め定めた一定の輝度値とを比較したのでは、基板の厚さ変化を検出することは困難である。そこで、本発明では、基板の裏面側からデバイスを撮像し、撮像された各デバイスの2次元画像を基準画像と比較する画像比較により半導体基板の厚さの変化を検出する。本発明における照明光は半導体基板に対して半透明である。しかし、基板の裏面に入射した照明光はデバイス構造面で反射し、基板の裏面から出射する。従って、基板の裏面を照明ビームにより2次元走査し、デバイス構造面で反射し基板の裏面から出射した照明光を撮像手段により受光することにより、基板の裏面側から撮像した各デバイスの2次元画像を形成することができる。そして、撮像手段から出力される輝度信号は、半導体基板の厚さに対応している。従って、撮像されたデバイスの2次元画像を基準画像と比較し、基準画像との輝度差を検出すれば、各デバイス領域における半導体基板の厚さ分布が検出される。基準画像との輝度差は、画素単位で検出できるので、微小なエリアの厚さムラ又は厚さ分布が検出される。
【0015】
基準画像情報として、半導体基板に対する照明波長光の透過率や吸収係数とデバイス領域の各部位における基板の基準厚さ並びにデバイス構造面の反射率を用い、半導体基板の裏面側から出射する照明光の基準輝度値を算出することができる。よって、算出された1つのデバイスのデータを基準輝度値としてメモリに記憶すれば、画像比較により輝度差が検出され、輝度差に基づいて半導体基板の基準厚さからの変化分が検出される。或いは、撮像されたデバイスの2次元画像をメモリに記憶し、ダイ対ダイ比較検査により半導体基板の厚さムラないし厚さ分布を検出することも可能である。
【0016】
検査される半導体基板を支持するステージをX方向及びX方向と直交するY方向に移動させることにより、検査すべき半導体基板の全面を照明ビームにより走査することができる。この場合、ステージに連結した位置センサを用いて半導体基板の位置が検出されるので、検出された位置情報を用いて許容範囲を超える厚さムラが存在する部位に形成されたデバイスを特定することが可能である。これにより、半導体基板に形成された全数のデバイスから不良品となるデバイスを特定することができ、半導体デバイスの品質管理に有益な情報が得られる。
【0017】
本発明による検査装置の好適実施例は、照明手段は、半導体基板に対して半透明な波長光の照明ビームを発生する光源装置と、光源装置から出射した照明ビームを半導体基板の裏面に向けて投射する対物レンズとを有し、
前記対物レンズはテレセントリックレンズ系として構成され、照明光を半導体基板に向けて投射する照明光学系として機能すると共に前記半導体基板の裏面から出射した照明光を前記撮像手段に結像させる結像光学系として機能することを特徴とする。
【0018】
前述した特許文献2より、半導体基板の裏面に向けてブリュースター角で測定ビームを投射し、基板の裏面から反射光を受光して半導体基板の研磨終点を検出する方法が既知である。この既知の方法では、物理的に別体構造である照明光学系と受光光学系との2つの光学系を用いているため、光学系の占める空間が大きくなり、2つの光学系を収納するための大きな空間が必要である。これに対して、照明ビームを投射する対物レンズとしてテレセントリックレンズ系を用い、対物レンズを照明光学系及び結像光学系として機能させれば、1個のレンズ系を用いるだけで照明光学系及び結像光学系が構成され、検査装置の小型化が図られる。
【0019】
本発明による検査装置の別の好適実施例は、照明手段は、集束性の走査ビームにより前記半導体基板の裏面を第1の方向に沿ってライン照明し、前記撮像手段は、前記第1の方向と対応する方向に沿って配列された複数の受光素子を有するラインセンサを有することを特徴とする。照明方法としてライン照明を行い、半導体基板のデバイス構造面で反射し、基板の裏面から出射した反射光をラインセンサによる受光すれば、基板の裏面で反射した反射光成分が光検出手段に入射しないため、バイアス成分が零となって検出感度が増大する利点が達成される。
【0020】
本発明による検査装置は、デバイスが形成されている半導体基板の厚さムラ又は厚さ分布を検査する検査装置であって、
検査されるべき半導体基板に対して半透明な波長域の波長光を含む照明ビームを発生する光源装置と、
光源装置から出射した照明ビームを第1の方向に沿って走査するビーム偏向手段と、
検査される半導体基板を支持すると共に前記第1の方向と対応するX方向及びX方向と直交するY方向に移動可能なステージと、
前記ビーム偏向手段から出射した照明ビームを半導体基板の裏面に向けて投射すると共に、半導体基板の裏面に入射しデバイス構造面で反射し、前記裏面から出射する照明光を集光する対物レンズと、
前記第1の方向と対応する方向に沿って配列された複数の受光素子を有し、前記対物レンズから出射した照明光を受光するラインセンサと、
前記ラインセンサからの出力信号を受け取り、前記半導体基板に形成されているデバイスの半導体基板の裏面側から撮像した2次元画像を形成する手段、形成された2次元画像を基準画像と比較する画像比較手段、及び、画像比較の結果に基づいて前記半導体基板の厚さムラを検出する厚さムラ検出手段を含む信号処理装置とを具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、デバイスが形成されている半導体基板の裏面側から各デバイスの2次元画像を撮像し、撮像されたデバイス画像を基準画像と比較する画像比較により半導体基板の厚さムラを検出しているので、半導体基板に形成された微細なエリアの厚さムラないし厚さ分布を検出することが可能である。さらに、照明ビームを用い半導体基板の裏面を2次元走査しているので、半導体基板上に形成されたデバイスの全数について厚さムラを短時間で検査することができる。この結果、許容範囲を超える厚さムラが存在する部位に形成されたデバイスを不良品として認定することができ、デバイスの品質管理上有益な情報が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による厚さムラ検出の原理を説明するための模式図である。
【図2】Cの波長依存性を示すグラフである。
【図3】反射率の波長依存性を示すグラフである。
【図4】照明光の波長が620〜670μmにおける詳細な波長依存性を示すグラフである。
【図5】シリコン基板の厚さと反射率との関係を示すグラフである。
【図6】照明光の波長が850nmと950nmにおけるシリコン基板の厚さと反射率との関係を示すグラフである。
【図7】本発明による検査装置の光学系の一例を示す図である。
【図8】半導体基板に形成されたデバイスの配列とステージの移動方向を示す線図である。
【図9】対物レンズ系の一次像面内の視野を線図的に示す図である。
【図10】信号処理装置の一例を示す図である。
【図11】本発明による検査装置の光学系の変形例を示す図である。
【図12】図11に示す検査装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、半導体基板上に金属層等の材料層が形成された複合体を反射体として捉え、半導体基板の厚さを、金属層等が形成されていない側から照明ビームを投射し、半導体基板から出射する反射光の光量を検出し、検出された光量に基づいて半導体基板の厚さないし厚さ分布を計測する。従って、複合体の反射率は、半導体基板の厚さに応じて変化する。図1は、シリコン基板のような半導体基板の裏面側に例えばアルミニウムのような金属層等で構成される裏面層が形成された複合体の構造を模式的に示す。図1において、半導体基板の厚さをd1とし、裏面層の厚さをd2とする。空気、半導体基板及び裏面層の光学定数(屈折率:n及び消衰係数:k)をそれぞれ(n0,k0)、(n1,k1)、及び(n2,k2)とする。尚、消衰係数は、半導体基板の吸収係数に対応する物理量である。ここで、空気、半導体基板、及び裏面層の複素屈折率N0、N1及びN2をそれぞれN0=n0−ik0、N1=n1−ik1、 及びN2=n2−ik2とする。また、入射光(照明光)の波長はλとし、その振幅はEin=1とする。照明光は半導体基板の表面に対して入射角θ0で入射する。半導体基板から出射する反射光は、基板表面で反射する表面反射光E0と、基板表面を透過し基板と裏面層との界面で反射し基板の表面から出射する反射光E1と、半導体基板の内部を多重反射した多重反射光が含まれる。
【0024】
[基板の厚さが厚い場合]
半導体基板の厚さが例えば20〜200μmと比較的厚い場合について検討する。照明光が基板表面に対して斜めに入射する場合、表面反射光E0と基板内部を伝搬し裏面層で反射した反射光E1とは空間的に分離され、光センサを適切に配置することにより反射光E1だけを検出することができる。また、半導体基板の内部で多重反射した反射光成分は、基板の厚さが厚い場合空間的に分離されるので、反射率の計算から除外することができる。従って、複合体の反射率Rpは、半導体基板と裏面層との間の界面における反射率により規定される。
ここで、入射光の入射角θ0をブリュースター角θBに設定すると、入射光がP偏光の場合、表面反射率R0=|E02 は零又は最小になる。
θ0 =θB=tan-1(n1/n0) (1)
従って、|E0|=0又は十分に小さい場合、複合体全体としての反射率Rpは以下のように記載される。
p=|E0+E12
=|E02+2|E0||E1|e-2Δ1i+ |E12
=|E12 =R1 (2)
ここで、R1は、半導体基板と裏面層との界面からの反射だけに基づく反射率を示す。
また、Δ1=(2π/λ)N11cosθ1
=(2π/λ)d1cosθ1(n1−ik1) (3)
=(2πn1/λ)d1cosθ1−(i2πk1/λ)d1cosθ1
=δ−iγ
ここで、δ=(2πn1/λ)d1cosθ1、γ=(2πk1/λ)cosθ1とする。
【0025】
半導体基板と裏面層との界面における反射R1は、空気から半導体基板への透過フレネル係数(t01)及び半導体基板から空気への透過フレネル係数(t10)と半導体基板と裏面層との界面での反射フレネル係数(r12)を用いて求めることができる。
空気と半導体基板との界面における反射フレネル係数r01 は以下の式で表される。
01=(N0/cosθ0−N/cosθ1)÷
(N0/cosθ0+N/cosθ1) (4)
空気と半導体基板との界面での透過フレネル係数(t01,t10)は以下の式で表される。
01=(2N0/cosθ0)/(N0/cosθ0−N/cosθ1) (5)
10=(2N1/cosθ1)/(N1/cosθ0−N/cosθ0) (6)
半導体基板と裏面層との間の反射フレネル係数r12は、
12=(N1/cosθ1−N2/cosθ2)÷
(N1/cosθ1−N2/cosθ2) (7)
【0026】
さらに、半導体基板と裏面層との界面における反射Eは、以下の式で表される。
1=t01- Δ1i・r12・t10- Δ1i (8)
さらに、半導体基板と裏面層との界面における反射Rは、以下の式で表される。
1=|E12 =|t0110-2 Δ1i×r122
=|t01102×|e-2δi-2γ2×|r122
=A・e-2Bd1・f(n2,k2) (9)
ここで、A=|t01102 (10)
B=4(2πk1/λ)cosθ1 (11)
f(n2,k2)=C=|r122 (12)
式(9)において、式(10)より、Aは空気と半導体基板の光学定数で決まる一定値となる。また、式(12)より、f(n2,k2)は半導体基板と裏面材料体との界面の反射フレネル係数で決まる。フレネル係数は、半導体基板と裏面材料体との界面の構造と光学定数によって決まる。
従って、式(9)より、半導体基板と裏面層との界面における反射だけを考慮した複合体の反射率は、半導体基板の厚さd1が増加するにしたがって指数関数的に減少する。
【0027】
次に、裏面層の材料について検討する。初めに、裏面層の材料が既知の場合について検討する。
(1)裏面層が金属膜等の不透明体の場合
半導体基板の裏面にアルミニウム等の金属層が形成されている場合、照明光の波長λがλ=850〜950nmの範囲では、金属層の厚さd2が数100nm程度以上の場合不透明体として扱うことができる。例えば、半導体基板の裏面にアルミニウム層が形成されている場合、光学定数として既知の値を用いることができるので、式(12)のCは、一定の定数となる。従って、半導体基板と裏面側のアルミニウム層との間の界面の反射率R1は以下の式で表される。
=A・e-Bd1・C (13)
すなわち、式(13)に示すように、半導体基板の裏面側に金属層が形成されている場合、半導体基板と金属層との間の反射率は、半導体基板の厚さdに応じて指数関数的に減少する。従って、裏面側に金属層が形成されている半導体基板に向けて照明光を投射し、半導体基板から出射する反射光を光検出手段により検出する場合、半導体基板の厚さが厚くなるにしたがって光検出手段から出力される輝度信号は減少することになる。この結果、光検出手段からの出力信号に基づいて半導体基板の厚さ分布を計測することができる。
さらに、式(13)を用いて、照明光の波長に対する絶対反射率が測定できれば、係数A、B及びCを計算し、半導体基板の厚さdを求めることができる。
1=−(1/B)ln[R1/A・C] (14)
測定対象となる半導体基板の厚さdに応じて、半導体基板の厚さに対する反射率の変化率∂Rp/∂d1が大きい波長を選択することができる。
【0028】
(2)裏面層が誘電体層と金属層の2層構造の場合
裏面層が多層構造の場合、多層構造体を構成する層の厚さが既知であれば、光学定数を用いて裏面層を一体とした反射フレネル係数(合成フレネル係数)を計算することができる。その場合、上記(1)と同様にCは一定の定数となるので、半導体基板と裏面層との間の反射率は半導体基板の厚さが厚くなるにしたがって減少し、式(14)から半導体基板の厚さd1を求めることができる。例えば、裏面層が酸化シリコン等の透明層と金属膜等の不透明層との2層構造の場合、透明層の光学定数を(n’,k’)及びその厚さをd’とし、不透明層の光学定数を(n,k)とする。裏面層の合成フレネル係数は上記光学定数から計算され、定数となる。ここで、透明層を薄膜として、膜内の多重反射を考慮すると、裏面層の合成フレネル係数は以下の式(15)で与えられる。
12=(r12’+r22-2 Δ’i)/(1+r12’22-2 Δ’i) (15)
12’=(N1/cosθ1−N2’/cosθ2’)÷
(N1/cosθ1+N2’/cosθ2’) (16)
2’2 =(N2’/cosθ2’−N2/cosθ2)÷
(N2’/cosθ2’+N/cosθ2) (17)
Δ=(2π/λ)N2’2’cosθ2’ (18)
従って、半導体基板に多層膜が形成されている場合であっても、半導体基板から出射する反射光を検出することにより、半導体基板の厚さを計測することができる。
【0029】
次に、裏面層の材料が未知の場合について検討する。裏面層の材料が未知の場合、半導体基板と裏面層との間の界面の反射フレネル係数が未知数となるため、Cも未知となる。ここで、照明光の波長をλとλの2波長について絶対反射率Rを測定することを想定する。
1(λ1)=A(λ1)・e−B(λ1)d1・C(λ1) (19)
1(λ2)=A(λ2)・e−B(λ2)d1・C(λ2) (20)
ここで、A及びBは2波長についてそれぞれ既知の定数となる。
裏面に用いられている種々の材料に対して、以下の式(21)が成立する場合を考える。

式(19)及び(20)の連立方程式を解くことによりdとCを求めることができる。例えば、以下に示す式(22)のように行列で表記し、式(23)のように解くことができる。


従って、結果はdとCは式(24)(25)のように解ける。

式(24)より、半導体基板の厚さd1を求めるには、2波長の反射率の比が与えられればよく、必ずしも絶対反射率を測定する必要はない。
【0030】
上記式(21)が成立する条件について検討する。式(21)が成立する条件を検討するため、裏面層をアルミニウムとして、Cの波長依存性を式(7)及び(12)から計算すると、図2に示すCの波長依存性が得られる。
12=(N1/cosθ1−N/cosθ2)÷
(N1/cosθ1+N/cosθ2) (7)
C(λ)=|r12(λ)|2 (12)
照明光の波長を850〜950nmの範囲で考えると、C(λ1)=0.62とC(λ2)=0.78となり、Cの平均値Cav=0.7を基準としてC=0.7±0.08の範囲で一定とみなすことができる。
ここで、補正係数sを導入してCを式(26)のように置き換える。
C=Cav・es (26)
s=−0.121 (λ=850nm) (27)
s=0.108 (λ=950nm) (28)
【0031】
さらに、補正係数s=±0.1がシリコン基板の厚さdに与える誤差を評価する。式(9)に式(26)を入れると、以下の式が得られる。


従って、半導体基板の厚さd1に誤差εがあると考える。照明光の波長λが、λ=850nmの場合ε=1.5μmとなり、λ=950nmの場合ε=−6.0程度の誤差となるので、λが850〜950nmの範囲を一定する場合10μmの誤差が含まれると評価できる。
【0032】
図2は、シリコン基板とアルミニウム層との界面における反射率の波長依存性を表すものと解することができる。そこで、裏面層の材料が図2と同程度の反射率の変化に収まるためには、空気に対する反射率の波長による変化がアルミニウムと同等であればよい。Ag、Cu、Pt、Ni等の金属はアルミニウムと同等の範囲であると認められる。
【0033】
[基板の厚さが薄い場合]
半導体基板の厚さが薄い場合の模式的な構造を図1(B)に示す。半導体基板の厚さが3〜5μm程度の薄い場合は可視光による計測が可能である。照明光が基板表面に対して斜めに入射する場合、半導体基板から出射する反射光は、基板表面からの表面反射光Eと、基板と裏面層との界面からの反射E1と、基板内部の多重反射E1,E2・・・・Eとを含む。図1(B)に示すように、半導体基板の厚さが薄い場合、多重反射成分の空間的な分離量が小さいため、光検出手段には、反射光E1と多重反射光とが入射する。従って、半導体基板から出射する反射光は、無限回の多重反射の和として取り扱うことができる。尚、照明光の入射角をブリュースター角に設定することにより、表面反射成分をほぼ零とすることができる。
【0034】
前述した式(4)及び(7)から、合成フレネル係数r’01を計算すると式(30)となり、反射率Rをは式(31)で表される。
r’01=E0+E1+・・・・+E
=(r01+r12-2 Δ1i)/(1+r0112-2 Δ1i) (30)
=|r' 012 (31)
Δ1=(2π/λ)N1cosθ1 (3)
【0035】
次に、半導体基板の厚さが薄い場合の計算結果について説明する。半導体基板としてシリコン基板を用い、裏面層としてアルミニウムを用いた。照明光の入射角を波長が650nmのブリュースター角(θ=75.4°)に設定した場合の反射率の波長依存性を図3に示す。図3及び図4において、横軸は照明光の波長を示し、縦軸は反射率Rを示す。尚、シリコン基板の厚さは、3μm、4μm及び5μmの3種類について計算した。また、図4は照明光の波長が620〜670nmの範囲における反射率の詳細な変化を示す。図4において、太い実線はシリコン基板の厚さが3.0μmの特性を示し、細い実線は厚さが3.1μmの特性を示し、破線は基板の厚さが3.2μmの特性を示し、一点鎖線は基板が3.3μmの特性を示す。図3において、シリコン基板の厚さが3〜5μmの範囲において、680nm程度までは、照明光の波長が長くなるにしたがって反射率が高くなる傾向にあることが認められる。
【0036】
また、図5は反射率の厚さ依存性を示す。図5において、横軸はシリコン基板の厚さを示し、縦軸は反射率を示す。尚、照明光の波長として、650nm、633nm及び580nmの3種類について計算した。図5に示すように、シリコン基板の厚さが厚くなるにしたがって、反射率は低下している。特に、照明光の波長が650nmの場合、シリコン基板の厚さ3〜5μmの範囲において、基板厚さに対して反射率が単調に減少しているものとみなされる。図5の波長=650nmのデータより、絶対反射率が得られれば、シリコン基板の厚さを0.1μm程度まで3〜5μmの範囲で決定することができる。
さらに、基板の厚さをnmレベルまで測定する場合には、絶対反射率を式(31)でシリコン基板の厚さdをパラメータとして反射率をフィッティングさせて、厚さdを求める方法を利用することができる。例えば、図4に示すように、シリコン基板の厚さが3.0程度と予想される場合には、波長650nmの反射率を測定するだけでよい。より精密な測定が必要な場合には、複数の波長の反射率を測定し、式(31)を用いてカーブフィッティングを行えばよい。
【0037】
波長620nm〜670nmの反射スペクトルの形状を考えると、シリコン膜厚3μmではピーク数が3であり、膜厚が5μmに増加するにつれてピーク数も5に増えている。理想的には、測定波長数がピーク数の2倍にできれば、反射スペクトルを精密に再現することができる。
波長数を最小限にする場合は、反射スペクトルのピークを十分無視できる単調変化範囲の640〜670nmを使えばよく、測定波長数は数個で十分である。
【0038】
図6は、裏面側にアルミニウム層が形成されているシリコン基板を複合反射体とした場合におけるシリコン基板の厚さと反射率との関係を示す計算したグラフである。尚、照明光の波長として、850nmと950nmの2つの波長について計算した。照明光の波長が850nm及び950nmの場合共にシリコン基板の厚さが厚くなるにしたがって反射率は指数関数的に減少している。従って、この計算結果によれば、デバイスが形成されている半導体基板の裏面側から照明光を投射し、半導体基板から出射する反射光(照明光)を光検出手段により受光すれば、光検出手段から出力される輝度信号は半導体基板の厚さに対応した情報を含み、光検出手段からの輝度信号に基づいて半導体基板の厚さムラないし厚さ分布が検出される。
【0039】
また、照明光の波長に応じて、シリコン基板の厚さに対する反射率特性が相違していることより、検査されるべき半導体基板の厚さや吸収特性との物理量に応じて、最適な検査光の波長を選択することができる。例えば、シリコン基板の場合、検査される基板の厚さが数100μm程度の場合、長波長の照明光を放出する光源を用い、基板の厚さが数μm程度の薄い基板を検査する場合、850nmの光ビームを放出する光源を用いることが好ましい。従って、波長の異なる光ビームを放出する2つの照明光源が搭載された検査装置の場合、検査すべき基板の厚さに応じて照明光源を選択し、最適な厚さ検査を行うことが可能になる。
【0040】
ここで、半導体基板上の厚さ分布について検討する。半導体基板上に2次元座標(x,y)を設定する。半導体基板の厚さ分布がd1(x,y)である場合、式(13)より、その反射率も分布R1(x,y)を有することになる。従って、式(13)は以下のように書き換えられる。
1(x,y)=A・e−Bd1(x,y)・C (32)
基準とする点P0(x0,y0)に対してR1(x,y)との比をとると、相対値の分布I(x,y)は式(33)として表現される。すなわち、I(x,y)は半導体基板の相対的な厚さ分布の情報を含んでおり、自然対数をとることで式(34)のように厚さの差分に変換される。さらに、点Pにおける厚さd1(x0,y0)が既知である場合、定量的に厚さ分布が得られる。点P0 は、基準となる別の試料に対して設定ことができ、点ではなく2次元分布を基準にすることもできる。
I(x,y)=R1(x,y)/R1(x0,y0
=e−B{d1(x,y)−d1(x0,y0)} (33)
1(x,y)=d1(x0,y0
−(1/B)[InR1(x,y)−InR(x0,y0)] (34)
【0041】
図7は本発明による検査装置の光学系の構成を示す図である。本例では、シリコン基板上に多数の背面照射型CCDが形成され、裏面研磨(バックグラインディング)が終了した後の半導体基板の厚さムラないし厚さ分布を検査する検査装置について説明する。すなわち、裏面研磨後のシリコン基板が所定の厚さに研磨されているか否かを検査し、シリコン基板の厚さが所定の厚さよりも薄い部分又は厚い部分を含むデバイスを不良品として判定する。
【0042】
照明光を放出する光源装置1として、P偏光した850nmの波長のレーザビームを放出するレーザダイオードを用いる。本発明では、検査される半導体基板に対して半透明な波長光波長光を用いて基板の厚さムラを検査するため、シリコン基板の内部において部分的に吸収される赤外域の波長光を放出する各種照明光源を用いることができる。850nmの波長光以外の照明光を放出する近赤外域の光源として、950nmの波長光を放出するレーザダイオードを用いることも可能であり、可視域の波長光を用いることも可能である。また、別の半導体基板、例えば炭化珪素基板(SiC基板)の厚さムラを検査する場合、例えば200〜300nmの紫外域の波長光を放出する光源が用いられる。
【0043】
光源装置1から出射した照明ビームは、コリメータレンズ2により拡大平行光束に変換され、音響光学素子3に入射する。音響光学素子3は、ビーム走査装置として機能し、入射した照明ビームを第1の方向(本例では、紙面と直交する方向)にそって周期的に偏向する。音響光学素子3から出射した照明ビームは、補正レンズ4に入射し、光軸に平行な走査ビームに変換される。すなわち、補正レンズ4から、光軸に平行なビームであって、第1の方向に沿って時間と共に変位する走査ビームが出射する。
【0044】
補正レンズ4から出射した走査ビームは、対物レンズ系5に入射する。説明の便宜上、対物レンズ系5は2枚のレンズ5a及び5bを用いて図示したが、2枚以上の複数のレンズ素子で構成することができる。レンズ5aは光源に最も近い入射側のレンズとし、レンズ5bは光源から最も遠い位置に配置された出射側のレンズとする。本例では、対物レンズ系5は、テレセントリックレンズ系とする。従って、入射側に位置するレンズ5aには、光軸に平行な走査ビームが入射し、レンズ5bから光軸に平行な走査ビームが出射する。
【0045】
対物レンズ系5から出射した走査ビームは、第1の方向(紙面と直交する方向)に延在する第1のミラー素子6で反射し、検査されるシリコン基板7の裏面7aに入射する。本例では、走査ビームは、シリコン基板の裏面7aに対してブリュースター角で入射する。走査ビームがブリュースター角で入射すると、走査ビームの反射成分はほぼ零であり、ほとんどの照明光がシリコン基板7の内部に進入するため、照明光のほぼ全てを検査に利用できる利点がある。尚、光検出手段としてラインセンサを用いる場合、シリコン基板の裏面で反射した反射光はラインセンサに入射しないため、走査ビームをブリュースター角で入射させることは、本発明の必須構成要件ではない。
【0046】
シリコン基板7に入射した走査ビームは、基板の内部に進入し、破線で示す半導体基板7のデバイス構造面7b上に微小な光スポットとして集束する。従って、デバイス構造面7bは、集束した光スポットにより第1の方向に沿って高速で走査される。シリコン基板のデバイス形成面には、アルミニウムの配線膜やコンタクトホールに形成された金属膜等の高反射率層が形成されている。また、波長が850nmの照明光に対してシリコン基板に形成された金属膜は約60%の反射率を有する。従って、シリコン基板7の内部を進行した照明光は、コンタクトホールや配線層等により構成されるデバイス構造面7bで反射し、基板の裏面7aに向けて基板の内部を進行し、裏面7aから透過光として出射する。ここで、シリコン基板は、照明光に対して半透明であるから、入射した照明光は、シリコン基板の内部を往復する間に部分的に吸収され、一部の光が透過光として出射する。この際、シリコン基板により吸収される光量は、基板の厚さに対して指数関数的に増大する。従って、シリコン基板7から出射する透過光の光量変化を検出することにより、シリコン基板の厚さの変化を検出することが可能である。
【0047】
検査されるシリコン基板7は、接着剤層8介してサポート基板9に支持され、サポート基板9はステージ10上に載置する。ステージ10は、第1の方向と対応する方向であるX方向及びX方向と直交するY方向に移動可能なXYステージで構成する。ステージ10には、駆動装置11が連結され、信号処理装置20からの制御信号に基づきX及びY方向にジッグザッグ状に移動する。また、ステージ10の位置は、位置センサ12により検出され、信号処理装置20に位置情報として供給する。
【0048】
図8はシリコン基板に形成されたデバイスの配列とステージの移動方向を示す線図である。シリコン基板7に形成されたデバイス(背面照射型CCD素子)を符号7cで示す。デバイスは、シリコン基板7上にX及びY方向に沿って配列される。ステージ10は、デバイスの配列方向であるX方向及びY方向に移動する。本例では、音響光学素子3は第1の方向(X方向)にビーム走査を行うので、ステージ10がY方向に移動することによりシリコン基板7のデバイス構造面7bは光スポットにより2次元的に走査される。本例では、音響光学素子のX方向走査とステージのY方向移動により、Y方向に配列されたデバイスを順次走査し、シリコン基板7に形成されたデバイス7cの基板の裏面側から撮像した2次元画像を形成する。
【0049】
シリコン基板7の裏面7aから出射した透過ビームは、第1の方向に延在する第2のミラー素子13で反射し、光軸に平行な透過ビームとして対物レンズ系5に入射する。そして、対物レンズ系を通過し、光軸に平行なビームとして出射する。図9は、対物レンズ系の一次像面内の視野を線図的に示す。図9において、符号5cは対物レンズ系の視野を示し、符号14aは走査ビームの軌跡を示し、符号14bは半導体基板から出射した透過ビームの軌跡を示す。対物レンズ系5は、テレセントリックレンズとして構成されているので、対物レンズの光軸をはさんで一方の半部は走査ビームを半導体基板に投射する照明領域として機能し、他方の半部は半導体基板の裏面から出射した透過ビームを光検出手段に結像させる結像領域として作用する。このように構成することにより、対物レンズ系5が照明光学系及び結像光学系として作用するので、空間的な利用効率が大幅に改善された検査装置が実現される。
【0050】
対物レンズ系5から出射した透過ビームは、ラインセンサ15に入射する。ラインセンサ15は、第1の方向と対応する方向に配列された多数の受光素子を有する。ラインセンサの各受光素子に発生した電荷は、信号処理装置20から供給される駆動信号により順次読み出され、輝度信号を形成する。この輝度信号は、増幅器16を介して信号処理装置20に供給される。
【0051】
図10は信号処理装置の一例を示す図である。図10(A)に示す実施例では、半導体基板上に形成されたデバイスの裏面側から撮像した2次元画像と、基準画像メモリに記憶した基準画像情報との画像比較により基板の厚さムラを検出する。ラインセンサ15から増幅器を介して出力された輝度信号は2次元画像形成手段21に供給される。2次元画像形成手段21は、入力した輝度信号とデバイスの配列情報を用いて半導体基板に形成されている各デバイスの2次元画像を形成する。形成される2次元画像は、基板の裏面側から撮像した各デバイスの2次元輝度画像である。形成された2次元画像は画像比較手段22に供給する。画像比較手段22には、基準画像メモリ23に記憶されている基準画像情報も供給される。
【0052】
基準画像メモリ23には、デバイス構造面の反射率、照明光の半導体基板に対する透過率及び半導体基板の基準厚さ等のデータに基づいて算出した基準画像情報、すなわち基準となる2次元輝度情報を記憶する。画像比較手段22は、2次元画像形成手段により形成された各デバイスの2次元画像と基準画像メモリ23に蓄積されている基準画像情報とを画素ごとに比較し、基準画像に対する輝度値の差分を検出する。検出された輝度値の差分は、半導体基板の厚さの基準値からの変化分に対応するデータである。検出された輝度値の差分は閾値比較段24に供給され、算出された差分値と閾値とを比較し、差分値が許容範囲内であるか否かが判定される。その判定結果は欠陥アドレス判定手段25に供給する。
【0053】
欠陥アドレス判定手段25には、ステージの位置を検出する位置センサ12から供給されるステージ位置信号及び受光素子のアドレス信が供給される。欠陥アドレス判定手段25は、閾値比較手段24から供給される閾値判定の結果と位置情報とを用いて閾値を超える輝度値の差分が検出された位置を特定し、厚さムラを有する欠陥部のアドレスとして欠陥アドレスメモリ26に供給する。
【0054】
欠陥アドレスメモリ26には不良デバイス判定手段27が接続され、半導体基板の閾値を超える厚さムラが存在する部位に形成されたデバイスを特定し、不良デバイス情報として出力する。不良デバイス判定手段27は、許容範囲を超える厚さムラの面積や発生箇所数等に基づいて不良品か否かを判定することができる。その判定基準は、半導体基板上に形成されるデバイスの特性や検査の目的、或いは基準値からの変化分の大きさ等に応じて規定することができる。
【0055】
図10(B)は、ダイ対ダイ比較検査により半導体基板の厚さムラを検出する実施例を示す。尚、図10(A)で用いた構成要素と同一の構成要素には同一符号を付して説明する。2次元画像形成手段21により順次形成された各デバイスの2次元画像は、遅延メモリ28及び画像比較手段22に順次供給される。遅延メモリ28は、2次元画像形成手段21の2次元画像の形成と同期して記憶されている1つ前に形成されたデバイスの2次元画像を画像比較手段22に供給する。画像比較手段22は、2次元画像形成手段により相前後して形成された2つ2次元画像について画像比較を行い、画素ごとに輝度値の差分を検出する。検出された輝度値の差分は閾値比較手段24に供給され、前述した処理が行われ、不良デバイス情報が出力される。
【0056】
尚、欠陥アドレスメモリ26には、画像比較手段22からの出力信号を用いて基準値を超える厚さムラを発生する部位の厚さの変化分を欠陥アドレスと共に併せて記憶することができる。
【0057】
図11は本発明による検査装置の光学系の変形例を示す図である。本例では、光源装置として波長の異なる照明光をそれぞれ発生する2個の光源装置を用い、検査されるべき半導体基板の厚さや種類並びに検査目的等に応じて照明光の波長を選択する構成とする。尚、図7で用いた部材と同一の部材には同一符号を付して説明する。第1の光源装置1として850nmの波長光を放出するレーザを用い、第2の光源装置30として例えば950nmの波長光を放出するレーザを用いる。また、第1の光源装置1と音響光学素子3との間の光路中に、850nmの波長光を透過し950nmの波長光を反射するダイクロイックミラー31を配置する。第1の光源装置1から出射した第1の照明光はコリメータレンズ2及びダイクロイックミラー31を透過して音響光学素子3に入射する。その後の動作は図7と同一である。また、第2の光源装置30から出射した第2の照明光は、コリメータレンズ32を通過し、ダイクロイックミラー31で反射し、音響光学素子3に入射する。本例では、ラインセンサ15を共通の光検出手段として用い、第1の光源装置1から出射した照明光及び第2の光源装置30から出射した照明光を共通のラインセンサ15により検出する。
【0058】
シリコン基板に対する950nmの照明光の透過率は、850nmの照明光の透過率よりも高い。一方、照明光が基板の内部を進行する間に吸収される照明光の量は基板の厚さに対応するため、厚さの厚い半導体基板を検査する場合、基板から出射する照明光の光量が低く、検出感度が低下するおそれがある。このような場合、半導体基板に対して透過率の高い波長の照明光を用いれば、半導体基板の裏面から適正範囲の強度の照明光が出射するので、適正検出感度で検査を行うことができる。従って、本例では、厚さが数μm程度の薄いシリコン基板の検査を行う場合透過率の低い850nmの照明光を用いて厚さムラの検査を行い、厚さが数100μm程度の厚さの厚い半導体基板の検査を行う場合波長が950nmの照明光を用いて検査する。このように、検査されるべき半導体基板の厚さに応じて、照明光の波長を選択する。
【0059】
照明光の波長は適宜選択することができ、例えば検査される半導体基板に対して半透明な照明光を放出する光源と、透明な照明光を放出する光源を用いることも可能である。この場合、半導体基板に対して半透明な照明光を用い基板の厚さ検査を行い、半導体基板に対して透明な照明光を用いて配線層が正確に形成されているか否かの検査や異物付着の検査等を行うことも可能である。さらに、光源の種類と2以上の光源を用いることも可能である。
【0060】
図12は、図11に示す実施例の変形例を示す。本例では、第1の光源装置1から出射した照明光と第2の光源装置30から出射した照明光とを別々の光検出手段15及び34により個別に検出する。本例では、対物レンズ系5とラインセンサ15との間の光路中に第1の光源装置1から出射した照明光を透過し第2の光源装置30から出射した照明光を反射する第2のダイクロイックミラー33を配置すると共に第2のダイクロイックミラー33の反射光路上に第2ラインセンサ34を配置する。この場合、第1の光源装置1から出射した照明光は、半導体基板7及び対物レンズ5を経て第2のダイクロイックミラー33を透過して第1のラインセンサ15に入射する。また、第2の光源装置30から出射した照明光は、半導体基板7及び対物レンズ5を経て第2のダイクロイックミラー33で反射し第2のラインセンサ34に入射する。このように構成すれば、照明光源から出射する照明光の特性に応じてそれぞれ最適な特性の光検出手段を用いて半導体基板の厚さ分布を検出することが可能である。
【0061】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施例では、検査される半導体基板としてシリコン基板を用いたが、炭化珪素基板等の別の半導体基板の厚さ検査を行うことが可能である。また、半導体基板上に完成したデバイスが形成されている場合だけでなく、デバイスの一部が形成されている場合にも厚さ検査を行うことができる。例えば、半導体基板に金属の配線層が形成されている場合、配線層は照明光に対して反射性のデバイス構造面として作用するので、デバイスの一部が形成されている場合にも本発明が適用される。
【0062】
さらに、上述した実施例では、検査の内容として、許容厚さを超える部位に形成されたデバイスを特定する構成としたが、裏面研磨のモニタ装置として利用することも可能である。すなわち、研磨終点の直前に基板を研磨装置から取り外し、本発明による検査装置を用いて基準画像との画像比較を行って、輝度値の基準値からの変化分を検出し、検出された変化分に基づいて残りの研磨量を規定することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 光源装置
2 コリメータレンズ
3 音響光学素子
4 補正レンズ
5 対物レンズ系
6 第1のミラー素子
7 シリコン基板
8 接着剤層
9 サポート基板
10 ステージ
11 駆動装置
12 位置センサ
13 第2のミラー素子
14a 走査ビームの軌跡
14b 透過ビームの軌跡
15 ラインセンサ
16 増幅器
20 信号処理装置
21 2次元画像形成手段
22 画像比較手段
23 基準画像メモリ
24 閾値比較手段
25 欠陥アドレス判定手段
26 欠陥アドレスメモリ
27 不良デバイス判定手段
28 遅延メモリ
30 第2の光源装置
31,33 ダイクロイックミラー
32 コリメータレンズ
34 第2のラインセンサ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスが形成されている半導体基板の厚さムラ又は厚さ分布を検査する検査装置であって、
検査すべき半導体基板を支持するステージと、
半導体基板のデバイス形成面とは反対側の裏面に向けて、前記半導体基板に対して不透明な照明光を照射する照明手段と、
前記半導体基板の裏面に入射し、デバイス構造面で反射し、前記裏面側から出射した照明光を受光する撮像手段と、
前記撮像手段からの出力信号を用いて厚さムラを検出する信号処理装置とを具え、
前記信号処理装置は、前記撮像手段からの出力信号を用いて、半導体基板に形成されているデバイスの半導体基板の裏面側から撮像した2次元画像を形成する手段と、撮像されたデバイスの2次元画像と基準画像とを比較する画像比較手段と、画像比較の結果に基づいて前記半導体基板の厚さムラを検出する厚さムラ検出手段とを有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、前記照明手段は、半導体基板に対して半透明な波長光の照明ビームを発生する光源装置と、光源装置から出射した照明ビームを半導体基板の裏面に向けて投射する対物レンズとを有し、
前記対物レンズはテレセントリックレンズ系として構成され、照明光を半導体基板に向けて投射する照明光学系として機能すると共に前記半導体基板の裏面から出射した照明光を前記撮像手段に結像させる結像光学系として機能することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、前記対物レンズと半導体基板との間に、対物レンズから出射した照明ビームを半導体基板の裏面に対してブリュースター角で入射させる第1のミラーと、半導体基板の裏面から出射した照明光を対物レンズの光軸に平行な光ビームとして対物レンズに入射させる第2のミラーとが配置されていることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の検査装置において、前記照明手段は、集束性の照明ビームにより前記半導体基板の裏面を第1の方向に沿ってライン照明し、前記撮像手段は、前記第1の方向と対応する方向に沿って配列された複数の受光素子を有するラインセンサを有することを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載の検査装置において、前記照明手段は、波長の異なる2以上の光源装置を有し、検査される半導体基板の物理特性に応じて照明光の波長が選択されることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
デバイスが形成されている半導体基板の厚さムラ又は厚さ分布を検査する検査装置であって、
検査されるべき半導体基板に対して半透明な波長域の波長光を含む照明ビームを発生する光源装置と、
光源装置から出射した照明ビームを第1の方向に沿って走査するビーム偏向手段と、
検査される半導体基板を支持すると共に前記第1の方向と対応するX方向及びX方向と直交するY方向に移動可能なステージと、
前記ビーム偏向手段から出射した照明ビームを半導体基板の裏面に向けて投射すると共に、半導体基板の裏面に入射しデバイス構造面で反射し、前記裏面から出射する照明光を集光する対物レンズと、
前記第1の方向と対応する方向に沿って配列された複数の受光素子を有し、前記対物レンズから出射した照明光を受光するラインセンサと、
前記ラインセンサからの出力信号を受け取り、前記半導体基板に形成されているデバイスの半導体基板の裏面側から撮像した2次元画像を形成する手段、形成された2次元画像を基準画像と比較する画像比較手段、及び、画像比較の結果に基づいて前記半導体基板の厚さムラを検出する厚さムラ検出手段を含む信号処理装置とを具えることを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査装置において、前記対物レンズはテレセントリックレンズとして構成され、当該対物レンズは、集束性の照明ビームを前記半導体基板の裏面に向けて投射する照明光学系として機能すると共に、前記半導体基板の裏面から出射した透過ビームをラインセンサ上に結像させる結像光学系として機能することを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の検査装置において、前記信号処理装置は、前記厚さムラ検出手段からの出力と前記ステージに連結されている位置センサから出力されるステージの位置情報とを用い、半導体基板の許容厚さ範囲から外れた厚さムラが存在する部位に形成されたデバイスを特定する手段を有することを特徴とする検査装置。
【請求項9】
請求項5、6、7又は8に記載の検査装置において、前記ビーム偏向手段として音響光学素子又はガルバノミラーが用いられ、ビーム偏向手段と対物レンズとの間の光路中にビーム偏向手段から出射した照明ビームを光軸と平行な走査ビームに変換する光学素子が配置されていることを特徴とする検査装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の検査装置において、前記半導体基板として、完成した各種デバイスが形成されているシリコン基板が用いられ、前記光源装置は可視域又は近赤外域の波長光を含む照明ビームを発生することを特徴とする検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検査装置において、前記半導体基板として、背面照射型CCD又は裏面照射型CMOSセンサが形成されているシリコン基板が用いられ、前記デバイス構造体として背面照射型CCD又は裏面照射型CMOSセンサの配線層が用いられることを特徴とする検査装置。
【請求項12】
デバイスが形成されている半導体基板の厚さムラ又は厚さ分布を検査する検査方法であって、
半導体基板のデバイス形成面とは反対側の裏面に向けて、当該半導体基板に対して半透明な照明光を照射する照明工程と、
半導体基板の裏面に入射し、当該半導体基板を透過してデバイス構造面で反射し、前記裏面側から出射した照明光を受光して、前記半導体基板に形成されているデバイスの半導体基板の裏面側から撮像した2次元画像を形成する撮像工程と、
撮像されたデバイスの2次元画像と基準画像とを比較し、比較結果に基づいて前記半導体基板の厚さムラを検出する工程とを有することを特徴とする検査方法。
【請求項13】
請求項12に記載の検査方法において、前記半導体基板はX方向及びX方向と直交するY方向に移動するステージ上に載置され、
前記照明工程において、前記半導体基板はステージのX方向及びY方向移動により走査され、走査中に当該ステージの位置は位置センサにより検出され、
前記撮像されたデバイスの2次元画像と基準画像との画像比較の結果と、前記位置センサから出力される位置情報とを用いて、許容厚さ範囲から外れた厚さムラが存在する部位に形成されたデバイスを特定する工程を有することを特徴とする検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−164801(P2012−164801A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23829(P2011−23829)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】