説明

機能性膜の形成方法、積層構造体、多層配線基板、アクティブマトリクス基板及び画像表示装置、並びに図面製造装置、インクジェット装置、積層構造体製造装置

【課題】インクジェット法により微細なパターンでショートさせることなく機能性膜を形成することができる機能性膜の形成方法を提供する。
【解決手段】被印刷面上に、低表面エネルギー領域を隔てて隣接する高表面エネルギー領域231,241を有する表面において、高表面エネルギー領域231,241の形状及び機能液の着弾範囲に基づいて、高表面エネルギー領域231(241)に機能液を供給する際に該機能液が高表面エネルギー領域231(241)のみに触れるための滴下許容範囲231A(241A)を決定し、ついで滴下許容範囲231A(241A)内の任意の位置を高表面エネルギー領域231(241)に対する機能液の滴下位置231C(241C)として決定し、高表面エネルギー領域231(241)の滴下位置231C(241C)にインクジェット法を用いて選択的に機能液を供給して所定パターンの機能性膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定パターンの機能性膜を形成する機能性膜の形成方法、積層構造体、多層配線基板、アクティブマトリクス基板及び画像表示装置、並びに図面製造装置、インクジェット装置、積層構造体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気回路等で用いられる電極、絶縁体、半導体などの機能性膜パターンの形成方法として、これらの機能性材料を含有する機能液を基板上の所定位置に必要量だけ供給するインクジェット法がある。インクジェット法は、露光装置を用いるフォトリソグラフィー法に比べて、高価な装置や設備を必要とすることなく、工程数も少なく、材料利用効率が高いといった利点を有している。しかし一方で、1pL以下の液滴の制御が困難であり液滴の大きさに下限が存在する、複数のノズルを用いた際に機能液の着弾位置のばらつきが生じる、着弾後被印刷面で濡れ広がる、などといった理由で、一般に線幅50μm以下といった微細パターンを形成することが困難であった。
【0003】
これに対して特許文献1では、エネルギーの付与により表面エネルギーが変化する濡れ性変化層を用いた積層構造体の製造方法が開示されている。濡れ性変化層へエネルギーを付与し、機能液に対して親水的な高表面エネルギー部と、機能液に対して疎水的な低表面エネルギー部を形成することで、高表面エネルギー部に選択的に導電性材料を含有する機能液を滴下した場合に、微細な導電層を備える積層構造体が形成可能となる。
【0004】
また、特許文献2では、基板上にあらかじめ機能液に対する障壁としてのバンクを形成し、バンク間の溝に機能液を供給することで機能液の濡れ広がりを防ぐ方法が開示されている。さらに前処理として、バンク間の溝上に高表面エネルギー部を形成し、バンク上に低表面エネルギー部を形成することで、機能液を効率良くバンク間の溝に流動させ、微細かつ均一な機能性材料パターン形成を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に開示されている製造方法は、非印刷面に低表面エネルギー領域と高表面エネルギー領域とからなる表面エネルギーの異なる領域を形成し、高表面エネルギー領域に選択的に機能液を供給するため、機能性膜パターンの微細化が可能である。しかしながら、高表面エネルギー領域にショート無く機能性膜パターンを形成したり、機能性膜パターンの膜厚を精密に制御したりするためには、被印刷面に対して機能液を正確に供給する必要があった。
【0006】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、インクジェット法により微細なパターンでショートさせることなく機能性膜を形成することができる機能性膜の形成方法、該機能性膜の形成方法により製造される積層構造体、多層配線基板、アクティブマトリクス基板及び画像表示装置、並びに前記機能性膜の形成方法を実現する図面製造装置、インクジェット装置、積層構造体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。なお、カッコ内に本発明を実施するための形態において対応する部位及び符号等を示す。
〔1〕 低表面エネルギー領域を隔てて互いに繋がっていない複数の高表面エネルギー領域の上に所定パターンの機能性膜を形成する機能性膜の形成方法であって、被印刷面上に、予め低表面エネルギー領域(低表面エネルギー領域50)と、前記低表面エネルギー領域を隔てて隣接する複数の高表面エネルギー領域(高表面エネルギー領域41,42)とを形成する第1の工程(図2,図3)と、前記被印刷面上に形成された前記複数の高表面エネルギー領域にインクジェット法を用いて選択的に機能液(機能液61)を供給する第2の工程(図4)と、前記複数の高表面エネルギー領域に供給された機能液を乾燥・固化させて所定パターンの機能性膜(導電層71)を形成する第3の工程(図5)と、を有し、前記第2の工程は、前記複数の高表面エネルギー領域の中から選択される機能液の滴下対象となる第1の高表面エネルギー領域(第1の高表面エネルギー領域43、231(または241))及び前記低表面エネルギー領域を隔てて前記第1の高表面エネルギー領域に隣接する1又は複数の第2の高表面エネルギー領域(第2の高表面エネルギー領域44、241(または231))の形状と、前記機能液の着弾範囲(仮想着弾範囲62E)とに基づいて、前記第1の高表面エネルギー領域に機能液を供給する際に該機能液が前記1又は複数の第2の高表面エネルギー領域には触れずに第1の高表面エネルギー領域のみに触れるための滴下許容範囲(滴下許容範囲61F,61G、231A(または241A))を決定する第1手順(図6、図16(a),(b))と、ついで該滴下許容範囲内の任意の位置を前記第1の高表面エネルギー領域に対する機能液の滴下位置(滴下位置61C、231C(または241C))として決定する第2手順(図7、図16(c))と、を有し、前記複数の高表面エネルギー領域それぞれについて前記第1手順及び第2手順を実行してそれぞれの機能液の滴下位置を決定することを特徴とする機能性膜の形成方法(図2〜図7,図16,図22)。
〔2〕 前記滴下許容範囲内であって、前記第1の高表面エネルギー領域の所定方向における中心位置を前記機能液の滴下位置として決定することを特徴とする前記〔1〕に記載の機能性膜の形成方法。
〔3〕 前記滴下許容範囲内であって、前記第1の高表面エネルギー領域における前記第2の高表面エネルギー領域と隣接する方向の中心位置を前記機能液の滴下位置として決定することを特徴とする前記〔2〕に記載の機能性膜の形成方法。
〔4〕 前記滴下許容範囲内であって、前記第1の高表面エネルギー領域における前記第2の高表面エネルギー領域と隣接する方向に対して直交する方向の中心位置を前記機能液の滴下位置として決定することを特徴とする前記〔2〕または〔3〕に記載の機能性膜の形成方法。
〔5〕 前記第2の工程において、前記複数の高表面エネルギー領域のうち、隣接する高表面エネルギー領域(高表面エネルギー領域43,44)同士におけるそれぞれの機能液の滴下位置(滴下位置61C,61D)から算出される着弾範囲(着弾範囲61E,61E’)が互いに重ならないように、前記機能液の滴下位置を決定することを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の機能性膜の形成方法(図8)。
〔6〕 前記第2の工程において、前記被印刷面を複数の区画に分割し、区画ごとに前記複数の高表面エネルギー領域それぞれについて前記第1手順及び第2手順を実行してそれぞれの機能液の滴下位置を決定することを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の機能性膜の形成方法(図9,図10)。
〔7〕 前記第1の工程は、エネルギーの付与により表面エネルギーが変化する材料を含む濡れ性変化層(濡れ性変化層30)を前記被印刷面上に形成する第1手順(図2)と、低表面エネルギー領域と高表面エネルギー領域とを表現した2つの異なる領域が区画図示された図面をもとにして前記被印刷面の一部に選択的にエネルギーを付与することで高表面エネルギー領域(高表面エネルギー領域41,42)を形成する第2手順(図3)と、からなることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の機能性膜の形成方法。
〔8〕 エネルギーの付与が光(紫外線92)を用いて行われることを特徴とする前記〔7〕に記載の機能性膜の形成方法(図3)。
〔9〕 低表面エネルギー領域と高表面エネルギー領域とを表現した2つの異なる領域が区画図示された図面をもとにしてフォトマスク(フォトマスク91)を作製し、該フォトマスクを介した光照射により高表面エネルギー領域を形成することを特徴とする前記〔8〕に記載の機能性膜の形成方法(図3)。
〔10〕 エネルギーの付与により表面エネルギーが変化する材料を含み、低表面エネルギー領域(低表面エネルギー領域50)と高表面エネルギー領域(高表面エネルギー領域41,42)とからなる表面エネルギーの異なる領域を有する濡れ性変化層(濡れ性変化層30)と、前記濡れ性変化層の高表面エネルギー領域上に形成された導電層(導電層71)とを備える積層構造体であって、前記導電層が前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の機能性膜の形成方法を用いて形成されてなることを特徴とする積層構造体(積層構造体10,10A、図1,図20)。
〔11〕 少なくとも基板と、絶縁層と、電極層とを有する多層配線基板において、
前記〔10〕に記載の積層構造体を有し、該積層構造体の前記高表面エネルギー領域上に形成された前記導電層は、前記電極層の少なくとも一部として利用されることを特徴とする多層配線基板。
〔12〕 ゲート電極(ゲート電極210)、ゲート絶縁層(ゲート絶縁層220)、ソース電極(ソース電極230)、ドレイン電極(ドレイン電極240)、保持容量電極(保持容量電極250)、及び半導体層(半導体層260)を含むトランジスタ(トランジスタ270,270A)と、前記ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、保持容量電極のいずれかに接続する配線(配線140)と、配線と接続する電極PAD(電極PAD150)を備えるアクティブマトリクス基板において、前記〔10〕に記載の積層構造体を有し、該積層構造体の前記高表面エネルギー領域上に形成された前記導電層は、前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記保持容量電極、前記配線、前記電極PADのうち少なくともいずれか1つとして利用されることを特徴とするアクティブマトリクス基板(アクティブマトリクス基板120,120A、図11,図12,図21)。
〔13〕 画像表示素子と、前記〔12〕に記載のアクティブマトリクス基板と、を有することを特徴とする画像表示装置。
〔14〕 インクジェット装置における機能液の滴下位置を記載するインクジェット印刷図面を製造するための図面製造装置であって、低表面エネルギー領域(低表面エネルギー領域50S)と複数の高表面エネルギー領域(高表面エネルギー領域43S,44S)とを表現した2種類の異なる領域が区画図示されたベクターデータで表現された図面を作製する機構(機構m1)と、図面から前記複数の高表面エネルギー領域の形状を抽出し、前記複数の高表面エネルギー領域の中から選択される機能液の滴下対象となる第1の高表面エネルギー領域及び前記低表面エネルギー領域を隔てて前記第1の高表面エネルギー領域に隣接する1又は複数の第2の高表面エネルギー領域の形状と、前記機能液の着弾範囲とに基づいて、前記第1の高表面エネルギー領域にのみ選択的に機能液が触れるための滴下許容範囲(滴下許容範囲43A,44A)の自動計算を行い図示する機構(機構m2)と、前記滴下許容範囲内の任意の位置を前記第1の高表面エネルギー領域に対する機能液の滴下位置(滴下位置43P,44P)として決定し図示する機構(機構m3)と、滴下位置が記載されたベクターデータをラスターデータに変換、出力する機構(機構m4)と、を有することを特徴とする図面製造装置(図17)。
〔15〕 基板(基板20)を支持するステージ(ステージ102)と、液滴吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド103)と、ステージに接続された移動・回転機構(Y軸方向移動機構105)と、液滴吐出ヘッドに接続された移動・回転機構(X軸方向移動機構104)と、制御装置(制御装置106)とを備えたインクジェット装置であって、前記〔14〕に記載の図面製造装置から出力される機能液の滴下位置が記載されたラスターデータをもとに、前記制御装置から機能液の吐出制御用信号およびステージ駆動信号が供給されることを特徴とするインクジェット装置(インクジェット装置100、図18)。
〔16〕 基板搬送機構と、被印刷面に低表面エネルギー領域と高表面エネルギー領域とからなる表面エネルギーの異なる領域からなる濡れ性変化層(濡れ性変化層30)を形成する機構(濡れ性変化層作製機構)と、前記〔15〕に記載のインクジェット装置からなり、前記濡れ性変化層表面の所定位置に機能液(機能液61)を選択的に滴下するインクジェット印刷機構と、前記機能液を乾燥・固化する機構(乾燥・固化機構)と、を備えることを特徴とする積層構造体製造装置(図19)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の機能性膜の形成方法によれば、第2の工程は、前記複数の高表面エネルギー領域の中から選択される機能液の滴下対象となる第1の高表面エネルギー領域及び前記低表面エネルギー領域を隔てて前記第1の高表面エネルギー領域に隣接する1又は複数の第2の高表面エネルギー領域の形状と、前記機能液の着弾範囲とに基づいて、前記第1の高表面エネルギー領域に機能液を供給する際に該機能液が前記1又は複数の第2の高表面エネルギー領域には触れずに第1の高表面エネルギー領域のみに触れるための滴下許容範囲を決定する第1手順と、ついで該滴下許容範囲内の任意の位置を前記第1の高表面エネルギー領域に対する機能液の滴下位置として決定する第2手順と、を有し、前記複数の高表面エネルギー領域それぞれについて前記第1手順及び第2手順を実行してそれぞれの機能液の滴下位置を決定するので、インクジェット法により機能液が目的の高表面エネルギー領域に対して、隣接する高表面エネルギー領域に接することなく適切に着弾し、微細なパターンでショートさせることなく機能性膜を形成することができる。
また、本発明の積層構造体、多層配線基板、アクティブマトリクス基板及び画像表示装置は、本発明の機能性膜の形成方法により機能性膜(導電層、電極層あるいはゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、保持容量電極、配線、電極PADの少なくともいずれか)が形成されるので、歩留よく所望のものを製造することができる。
また、本発明の図面製造装置、インクジェット装置、積層構造体製造装置によれば、本発明の機能性膜の形成方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る積層構造体を例示する断面図である。
【図2】本発明に係る機能性膜の形成方法を例示する図(その1)である。
【図3】本発明に係る機能性膜の形成方法を例示する図(その2)である。
【図4】本発明に係る機能性膜の形成方法を例示する図(その3)である。
【図5】本発明に係る機能性膜の形成方法を例示する図(その4)である。
【図6】機能液の滴下位置の決定方法における第1手順の説明図である。
【図7】機能液の滴下位置の決定方法における第2手順の説明図である。
【図8】第1の高表面エネルギー領域と第2の高表面エネルギー領域の両方に機能液を滴下する場合の滴下位置の決定方法の説明図である。
【図9】高表面エネルギー領域が形成される被印刷面の区画例(1)を示す平面図である。
【図10】高表面エネルギー領域が形成される被印刷面の区画例(2)を示す平面図である。
【図11】本発明に係るアクティブマトリクス基板を例示する平面図である。
【図12】図11のアクティブマトリクス基板における画素回路の構成例を示す図である。
【図13】本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法を例示する図(その1)である。
【図14】本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法を例示する図(その2)である。
【図15】図14に示す工程における機能液の滴下位置の決定方法の説明図である。
【図16】図14に示す工程における画素回路の区画に対する機能液の滴下位置の決定方法の説明図である。
【図17】本発明に係る図面製造装置の機構を例示する概略図である。
【図18】本発明に係るインクジェット装置の構造を例示する概略図である。
【図19】本発明に係る積層構造体製造装置の構造を例示する概略図である。
【図20】実施例1の積層構造体の製造方法を例示する図である。
【図21】実施例3のアクティブマトリクス基板の構成を示す図である。
【図22】実施例3のアクティブマトリクス基板におけるソース電極、ドレイン電極及びソース信号線を形成する際の機能液の滴下位置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
[積層構造体の構造]
初めに、本発明に係る積層構造体の概略の構造について説明する。
図1は、本発明に係る積層構造体を例示する断面図である。
図1を参照するに、本発明に係る積層構造体10は、基板20上に濡れ性変化層30及び導電層71が積層された構造を有する。
【0012】
基板20としては、例えばガラス基板、シリコン基板、ステンレス基板、フィルム基板等を用いることができる。このうち、フィルム基板としては、例えばポリイミド(PI)基板、ポリエーテルサルホン(PES)基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板等を用いることができる。
【0013】
濡れ性変化層30は、熱、電子線、紫外線、プラズマ等のエネルギーの付与により表面エネルギー(臨界表面張力)が変化する濡れ性変化材料を含む。この濡れ性変化材料には、側鎖に疎水性基を有する高分子材料を用いることができる。高分子材料としては、具体的には、ポリイミドや(メタ)アクリルレート等の骨格を有する主鎖に直接或いは結合基を介して疎水性基を有する側鎖が結合しているものを用いることができる。疎水基としては、フッ素原子を含むフルオロアルキル基やフッ素元素を含まない炭化水素基を用いることができる。
【0014】
また、濡れ性変化層30の表面近傍には、低表面エネルギー領域50と、第1の高表面エネルギー領域41と、低表面エネルギー領域を隔てて第1の高表面エネルギー領域41に近接(隣接)する第2の高表面エネルギー領域42とが形成されている。図1では、第1の高表面エネルギー領域41の左右両側に第2の高表面エネルギー領域42が形成されている。
【0015】
また、濡れ性変化層30を構成する第1の高表面エネルギー領域41及び第2の高表面エネルギー領域42上には、導電層71が形成されている。
導電層71としては、例えばAu、Ag、Cu、Pt、Al、Ni、Pd、Pb、In、Sn、Zn、Tiやこれらの合金、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ガリウム等の透明導電体等からなる金属原料を含む材料や、ドープドPANI(ポリアニリン)やPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリエチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子を含む材料等を用いることができる。
【0016】
本発明に係る積層構造体は、例えば、基板と、基板上に形成された濡れ性変化層である絶縁体層と、濡れ性変化層である絶縁体層の高表面エネルギー部上に形成された導電層である電極層とを有する多層配線基板に適用することができる。又、本発明に係る積層構造体であるトランジスタを有するアクティブマトリクス基板等に適用することができる。本発明に係るアクティブマトリクス基板を用いることにより、安価かつ高性能な画像表示装置を実現することができる。
【0017】
[積層構造体の製造方法]
次に、本発明に係る積層構造体の製造方法について説明する。詳しくは、所定パターンの機能性膜を形成するための機能性膜の形成方法について説明する。
図2〜図5は、本発明に係る機能性膜の形成方法を例示する図である。なお、図2(a)〜図5(a)は平面図であり、図2(b)〜図5(b)は、図2(a)〜図5(a)のA−A線に沿う断面図である。
【0018】
本発明に係る機能性膜の形成方法は、基板上に濡れ性変化層30を形成し(図2)、さらに濡れ性変化層30の一部に紫外線等のエネルギーを付与し濡れ性変化層30に低表面エネルギー領域50と、第1の高表面エネルギー領域41と、低表面エネルギー領域50を隔てて第1の高表面エネルギー領域41に近接する第2の高表面エネルギー領域42とを形成する第1の工程(図3)と、導電性材料を含有する機能液61を高表面エネルギー部の第1の高表面エネルギー領域41及び第2の高表面エネルギー領域42上へ選択的に滴下する第2の工程(図4)と、機能液61を乾燥させて導電層71を形成する第3の工程(図5)と、を有する。
以下、図2〜図5を参照しながら、各工程について詳説する。
【0019】
図2、図3に示す第1の工程では、はじめに前述の濡れ性変化材料を含む溶液を、スピンコート法等により基板20上に塗布し、乾燥させて、濡れ性変化層30を形成する。例えば濡れ性変化材料として、側鎖に疎水基を有する構造の高分子材料を用いた場合、低表面エネルギー領域50を有する濡れ性変化層30が基板20上に形成される(図2)。
【0020】
次に図3に示すように、フォトマスク91を用いて、紫外線92を濡れ性変化層30上の一部へ露光する。紫外線を露光した部分の濡れ性変化層30は、疎水基の結合が切断され低表面エネルギー(疎水性)から高表面エネルギー(親水性)に変化する。このため、濡れ性変化層30上に低表面エネルギー領域50と、第1の高表面エネルギー領域41と、低表面エネルギー領域50を隔てて第1の高表面エネルギー領域41に近接する第2の高表面エネルギー領域42とからなるパターンを形成することができる。
【0021】
図4に示す第2の工程では、液滴吐出ノズル93から、導電性材料を含む機能液61を高表面エネルギー部の第1の高表面エネルギー領域41及び第2の高表面エネルギー領域42上へ選択的に配置する。
【0022】
機能液61の配置手段としては、微小液滴を1滴ずつ精度よく滴下可能であるという特徴を有するインクジェット法が好適である。導電性材料を含む機能液61は、Au、Ag、Cu、Pt、Al、Ni、Pd、Pb、In、Sn、Zn、Tiやこれらの合金、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ガリウム等の透明導電体、等からなる金属原料を、微粒子や錯体などの形態で有機溶媒や水に分散あるいは溶解させたインクや、ドープドPANI(ポリアニリン)やPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリエチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液などが挙げられる。
【0023】
インクジェット法で用いるために、機能液61の表面張力は20mN/m以上、50mN/m以下であることが望ましく、又、粘度は2mPa・s以上50mPa・s以下であることが望ましい。
【0024】
図5に示す第3の工程では、機能液61を乾燥・固化させて導電層71を形成する。
乾燥方法としては、オーブン等を利用した対流伝熱方式、ホットプレート等を利用した伝導伝熱方式、遠赤外線やマイクロ波を利用した輻射伝熱方式を用いることができる。又、必ずしも大気圧で行う必要はなく、必要に応じて減圧するなどの工夫を加えても良い。又、乾燥・固化させた導電層71に追加で熱処理等を加えてよい。特に、機能液61として上述のナノメタルインクを用いた場合、乾燥・固化させただけでは十分な導電性を実現し難いため、ナノ粒子同士を融着させるための熱処理等が必要になる。
このように、図2〜図5に示す工程により、図1に示す積層構造体10が製造される。
【0025】
次に、図4に示す第2の工程のうち機能液61の滴下位置の決定に関して、図6〜図8を参照しながら、より詳細な説明を行う。
図6、図7は、一定方向に延在する線形状の高表面エネルギー領域に機能液を供給する場合に、機能液の滴下位置を決定する方法の説明図である。図6、図7において、43は矩形の第1の高表面エネルギー領域を、44は第1の高表面エネルギー領域43の図中左右両側に隣接して配置される矩形の第2の高表面エネルギー領域を示しており、これらの周囲は低表面エネルギー領域となっている。またLは第1の高表面エネルギー領域43の幅を、Sは第1の高表面エネルギー領域43と第2の高表面エネルギー領域44との間隔を、Xは第1の高表面エネルギー領域43の中心からの線幅方向(図中左右方向)の距離をそれぞれ表している。
【0026】
第2の工程における機能液の滴下位置の決定は、図6に示す滴下許容範囲を決定するステップ(第1手順)と、図7に示す滴下位置を決定するステップ(第2手順)とからなる。
【0027】
(第1手順)
はじめのステップ(第1手順)は、複数の高表面エネルギー領域の中から選択される機能液の滴下対象となる第1の高表面エネルギー領域43及び低表面エネルギー領域を隔てて第1の高表面エネルギー領域43に隣接する1又は複数の第2の高表面エネルギー領域44の形状と、機能液の着弾範囲とに基づいて、第1の高表面エネルギー領域43に機能液を供給する際に該機能液が前記1又は複数の第2の高表面エネルギー領域44には触れずに第1の高表面エネルギー領域43のみに触れるための滴下許容範囲を決定するものである。なお、第1の高表面エネルギー領域43及び1又は複数の第2の高表面エネルギー領域44の形状とは、例えば第1の高表面エネルギー領域43の寸法、該第1の高表面エネルギー領域43と1又は複数の第2の高表面エネルギー領域44との間隔である。
【0028】
すなわち、第1手順では、図6に示すように、機能液62を滴下した場合を仮想し、その仮想滴下位置62Cを決める。ここで機能液62の液滴径Dおよび着弾位置ばらつきをαとすると、仮想着弾範囲62Eが仮想滴下位置62Cを中心とした直径D+2αからなる円として決まる。ここで仮想着弾範囲62Eとは、仮想滴下位置62Cの位置に機能液を滴下した際に仮想着弾範囲62Eの範囲内に機能液が着弾することを意味する。なお機能液の液滴径Dおよび着弾位置ばらつきαは調整可能であり、具体的に液滴径はインクジェットヘッドの吐出条件(駆動波形)によって、また着弾位置ばらつきαは使用するヘッドの種類やノズルの数等によって変えることができる。
【0029】
今、第1の高表面エネルギー領域43に選択的に導電層を形成するためには、第2の高表面エネルギー領域44に触れないように機能液61を滴下すること(第1の条件)と、第1の高表面エネルギー領域43に触れるように機能液61を滴下すること(第2の条件)が必要である。これを言い換えると、第2の高表面エネルギー領域44に対して機能液62の仮想着弾範囲62Eが触れないように仮想滴下位置62Cを決定すること(第1の条件)と、仮想着弾範囲62E内で仮想滴下位置62Cからもっとも離れた位置に着弾する場合でも機能液61が第1の高表面エネルギー領域43に触れること(第2の条件)となり、以下の式(1)、式(2)のように滴下許容範囲が表現できる。
【0030】
滴下許容範囲61F:X<±(L+2S−D−2α)/2 ・・・式(1)
滴下許容範囲61G:X<±(L+D−2α)/2 ・・・式(2)
【0031】
ここで、X:第1の高表面エネルギー領域43の中心位置43Cと機能液61の滴下中心位置61Cとの距離、D:機能液61の飛翔時の直径、α:機能液61の着弾位置ばらつき、L:第1の高表面エネルギー領域43の線幅、S:第1の高表面エネルギー領域43と第2の高表面エネルギー領域44との間隔である。
【0032】
ついで、式(1)と式(2)をまとると、滴下許容範囲61Hは次式(3)のようになる。
S≦Dの場合:X<±(L+2S−D−2α)/2
S>Dの場合:X<±(L+D−2α)/2 ・・・式(3)
【0033】
このように高表面エネルギー領域の形状(詳しくは、第1の高表面エネルギー領域43における第2の高表面エネルギー領域44と隣接する方向の線幅Lや第1の高表面エネルギー領域43と第2の高表面エネルギー領域44との間隔S)および機能液の着弾範囲を考慮することで滴下許容範囲61Hが定まる。
【0034】
(第2手順)
次のステップ(第2手順)は、第1手順で決められた滴下許容範囲内の任意の位置を第1の高表面エネルギー領域43に対する機能液の滴下位置として決定するものである。
【0035】
すなわち、第2手順では、図7に示すように、滴下許容範囲61Hの内側に収まるように、機能液61の滴下位置を決定する。
滴下許容範囲内に収まるように機能液61の滴下位置を決定しているため、第1の高表面エネルギー領域43に選択的に機能液を供給でき、従って第1の高表面エネルギー領域43に選択的に導電層71を形成することができる。機能液の滴下位置は滴下許容範囲内で自由に決定することができるが、第1の高表面エネルギー領域の中心位置(X軸方向におけるX=0の位置)とすることを優先することが好ましい。第1の高表面エネルギー領域43の中心位置に機能液を滴下した場合には、第1の高表面エネルギー領域43に均一な導電層71を形成することができる。
【0036】
なおここでは、簡単のため一定方向に延在する線形状の高表面エネルギー領域に機能液を供給する場合を考えたが、高表面エネルギーの形状はこれに限定されるものではなく、正多角形、多角形、真円、楕円等を含む任意の形状であってよい。
【0037】
また本発明では、複数の高表面エネルギー領域それぞれについて前記第1手順及び第2手順を実行してそれぞれの機能液の滴下位置を決定することを行う。すなわち、第2の高表面エネルギー領域44に導電層を形成する場合にも、同様の考え方を用いることができる。
【0038】
図8は、第1の高表面エネルギー領域43と第2の高表面エネルギー領域44の両方に機能液61を滴下する場合の滴下位置の決定方法を示している。
ここでは、まず第1の高表面エネルギー領域43および第2の高表面エネルギー領域44のそれぞれに対して滴下許容範囲61Hと61Iをはじめに決定する(第1手順)。次に、第1の高表面エネルギー領域43および第2の高表面エネルギー領域44のそれぞれに対して滴下位置61Cと61Dを決定するが、この際に滴下位置61Cおよび61Dにより決まる着弾範囲61Eおよび61E’が互いに重なることの無いよう、滴下位置61Cおよび61Dを決定する(第2手順)。
【0039】
このようにすることで、第1の高表面エネルギー領域43および第2の高表面エネルギー領域44の両方に跨ることなく各高表面エネルギー領域43,44上に均一な導電層71を形成することができる。
【0040】
以上説明したように、機能液の滴下位置は高表面エネルギー領域の形状をもとに決定するが、高表面エネルギー領域が形成される被印刷面全体を複数の区画に分割し、区画ごとに滴下位置を決定することが好ましい。区画の仕方は任意であるが、例えば、図9のような高表面エネルギー領域の幅が変化する所(図中点線部分)や、図10のような高表面エネルギー領域の密度が変化する所(図中点線部分)などで区画することができる。
【0041】
[アクティブマトリクス基板の構造]
次に、本発明に係るアクティブマトリクス基板の概略の構造について説明する。
図11は、本発明に係るアクティブマトリクス基板を例示する図である。
アクティブマトリクス基板120は、基板20の上に形成された画素回路130と、画素回路130と接続する配線140と、からなる。必要に応じて配線に接続した電極PAD150を設けても良い。なお、図11には図示していないが、画素回路に信号あるいは電力を供給するために、配線140あるいは電極PAD150は駆動回路と接続している。
【0042】
図12は、画素回路130を例示する図であり、図12(a)は上面図(上から見た平面図)、図12(b)は図12(a)のA−A線に沿う断面図である。なお、図12(b)は、画素回路に含まれるトランジスタの部分を示している。
図12(a)及び図12(b)を参照するに、本発明に係るアクティブマトリクス基板120は、トランジスタ270と、ゲート信号線280と、ソース信号線290と、共通信号線300とを有する。
【0043】
トランジスタ270は、基板20上に、濡れ性変化層31、ゲート電極210及び保持容量電極250、濡れ性変化層32、ソース電極230及びドレイン電極240、及び半導体層260が順次積層された積層構造体である。なお、濡れ性変化層32において表層以外の厚さ領域がゲート絶縁層220となる。
【0044】
より詳しく説明すると、基板20上には、表面近傍に高表面エネルギー部201及び低表面エネルギー部202が形成された濡れ性変化層31が積層されている。また、濡れ性変化層31の高表面エネルギー部201上には導電層であるゲート電極210及び保持容量電極250が形成されている。また、濡れ性変化層31上には、ゲート電極210及び保持容量電極250を覆うように濡れ性変化層32(ゲート絶縁層220)が積層されている。
【0045】
また、濡れ性変化層32の表面近傍には高表面エネルギー部221と低表面エネルギー部222が形成され、高表面エネルギー部221上には導電層であるソース電極230及びドレイン電極240が形成されている。ソース電極230とドレイン電極240との間には間隙が設けられており、ソース電極230及びドレイン電極240上には、この間隙を埋めるように半導体層260が形成されている。
【0046】
導電層であるゲート信号線280は、ゲート電極210から一方向(図12(a)において上下方向)に延設されている。また、導電層であるソース信号線290は、ゲート信号線280の延設方向に対して略直交する方向(図12(a)において左右方向)に延設されている。また、導電層である共通信号線300は、保持容量電極250からゲート信号線280又はソース信号線290の延設方向(図12(a)においてはゲート信号線280の延設方向)に対して略平行に延設されている。
【0047】
ゲート信号線280及び共通信号線300は、濡れ性変化層31の高表面エネルギー部201上に形成されている。また、ソース信号線290は、濡れ性変化層32の高表面エネルギー部221上に形成されている。なお、本構成においては、濡れ性変化層32がゲート絶縁層220の機能を兼ねており、又、ソース信号線290がソース電極230の機能を兼ねている。
【0048】
このように、画素回路130は、本発明に係る積層構造体を有し、その積層構造体の導電層として、ゲート電極210、ソース電極230、ドレイン電極240、保持容量電極250、ゲート信号線280、ソース信号線290、及び共通信号線300が設けられており、これらの全てが濡れ性変化層の高表面エネルギー部上に形成されている。但し、これらの全てを濡れ性変化層31,32の高表面エネルギー部上に形成する必要はなく、少なくともと何れか一つを濡れ性変化層31,32の高表面エネルギー部上に形成することにより、本実施の形態の所定の効果を奏する。
【0049】
[アクティブマトリクス基板の製造方法]
次に、本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法について説明する。
図13及び図14は、本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法を例示する図である。図13(a)及び図14(a)はアクティブマトリクス基板を、図13(b)及び図14(b)は画素回路の上面図(上から見た平面図)であり、図13(c)及び図14(c)は図13(b)及び図14(b)のA−A’線に沿う断面図である。
【0050】
まず初めに、図13に示す工程では、図2を用いて説明した方法により、基板20上に濡れ性変化層31を積層形成する。そして、図3を用いて説明した方法により、濡れ性変化層200の表面近傍に高表面エネルギー部201及び低表面エネルギー部202を形成する。更に、図4及び図5を用いて説明した方法により、濡れ性変化層200の高表面エネルギー部201上に、ゲート電極210、保持容量電極250、ゲート信号線280、及び共通信号線300を形成する。
【0051】
ついで、図14に示す工程では、図2を用いて説明した方法により、濡れ性変化層31上に、ゲート電極210、保持容量電極250、ゲート信号線280、及び共通信号線300を覆うように濡れ性変化層32(ゲート絶縁層220)を積層形成する。そして、図3を用いて説明した方法により、濡れ性変化層32の表面近傍に高表面エネルギー部221及び低表面エネルギー部222を形成する。更に、図4及び図5を用いて説明した方法により、濡れ性変化層32の高表面エネルギー部221上に、ソース電極230、ドレイン電極240、及びソース信号線290を形成する。
【0052】
ついで、図14に示す工程の後、ソース電極230及びドレイン電極240の両方に接するように半導体層260を形成することで、図11に示すアクティブマトリクス基板120が完成する。
【0053】
次に、より詳細な説明として、図15を用いて、図14に示す工程における、機能液の滴下位置の決定方法に関して述べる。
図15(a)は機能液が滴下される被印刷面を示した図、図15(b)は画素回路の上面図であり、図15(c)は図15(b)のA−A’線に沿う断面図である。
【0054】
まず初めに、図15(a)に示すように被印刷面を、電極PAD、配線、および画素回路の3つの区画(区画I,II,III)に分ける。これら区画は機能が異なるため、一般に高表面エネルギー領域の幅、あるいは密度等が異なる場合が多い。そこで、3つの区画にわけることで、区画毎に機能液の滴下位置や滴下量などを最適化することが好ましい。例えば相対的に高表面エネルギー領域の幅が太くなる電極PAD区画(区画I)では相対的に液滴体積を大きし、また一方で高表面エネルギー領域の密度が高くなる画素回路区画(区画III)では相対的に液滴体積を小さくすることで、アクティブマトリクス基板の被印刷面に効率的に機能液を供給することができる。
【0055】
次に、図16を用いて画素回路131の区画IIIに対する機能液の滴下位置の決定方法について述べる。
画素回路131の区画IIIはトランジスタを含む回路要素が1画素ごとに周期的に配列された区画である。ここでは縦2画素・横2画素の領域に対して考えている。
【0056】
図16(a)は、ソース電極形成領域に相当する高表面エネルギー領域231に対しての滴下許容範囲231Aを算出した図であり、高表面エネルギー領域241に対して機能液の仮想着弾範囲が触れないように、かつ仮想着弾範囲内で仮想滴下位置より最も離れた位置に機能液が着弾する場合でも機能液が高表面エネルギー領域231に触れるようにして、高表面エネルギー領域231に対する滴下許容範囲が決まる。
【0057】
また図16(b)は、ソース電極形成領域に相当する高表面エネルギー領域241に対しての滴下許容範囲241Aを算出した図であり、高表面エネルギー領域231に対して機能液の仮想着弾範囲が触れないように、かつ仮想着弾範囲内で仮想滴下位置より最も離れた位置に機能液が着弾する場合でも機能液が高表面エネルギー領域241に触れるようにして、高表面エネルギー領域241に対する滴下許容範囲が決まる。
【0058】
得られた滴下許容範囲をもとに、図16(c)に示すように滴下位置を決定する。
ここで、本発明の機能性膜の形成方法では、前記滴下許容範囲内であって、第1の高表面エネルギー領域の所定方向における中心位置を機能液の滴下位置として決定することが好ましい。また、前記滴下許容範囲内であって、前記第1の高表面エネルギー領域における前記第2の高表面エネルギー領域と隣接する方向の中心位置を機能液の滴下位置として決定するとよく、さらに前記滴下許容範囲内であって、前記第1の高表面エネルギー領域における前記第2の高表面エネルギー領域と隣接する方向に対して直交する方向の中心位置を前記機能液の滴下位置として決定することが好適である。
【0059】
例えば、図16(c)において、各高表面エネルギー領域231,241に対する機能液の滴下位置231C,241Cは、滴下許容範囲231A,241A内であって、高表面エネルギー領域の中心(ソース電極(高表面エネルギー領域241)であれば線幅方向(図中左右方向)の中心、ドレイン電極(高表面エネルギー領域231)であればパターンの短辺方向(図中上下方向)の中心)としている。また、2つの高表面エネルギー領域231,241に対する滴下位置231C.241Cより算出される2つの着弾範囲が互いに重なることがないようにしている。
【0060】
なお機能液の滴下数は、1画素に1滴である必要は無く、上記条件を満たす範囲で1画素に対して複数滴でも良いし、また、複数画素に対して1滴でも良い。
【0061】
[図面製造装置]
次に、本発明に係る図面製造装置について説明する。
図17は、本発明に係る図面製造装置の機構を例示する概略図である。
本発明に係る図面製造装置は、ベクターデータで図面を描画する機構を備えており、インクジェット装置における機能液の滴下位置を記載するインクジェット印刷図面を製造する。詳しくは次の機構を順次実行してインクジェット印刷図面を製造する。
【0062】
(機構m1) まず、低表面エネルギー領域50Sと複数の高表面エネルギー領域43S,44Sとを表現した2種類の異なる領域が区画図示されたベクターデータで表現された図面を作製する。
【0063】
(機構m2) 機構m1で作製した図面から複数の高表面エネルギー領域43S,44Sの形状を自動抽出し、前記複数の高表面エネルギー領域43S,44Sの中から選択される機能液の滴下対象となる第1の高表面エネルギー領域43Sの寸法、該第1の高表面エネルギー領域43Sと2つの第2の高表面エネルギー領域44Sとの間隔、前記機能液の着弾範囲とに基づいて、第1の高表面エネルギー領域43Sにのみ選択的に機能液が触れるための滴下許容範囲43Aの自動計算を行い図示する。ついで、複数の高表面エネルギー領域43S,44Sの中から選択される機能液の滴下対象となる第1の高表面エネルギー領域44Sの寸法、該第1の高表面エネルギー領域44Sと2つの第2の高表面エネルギー領域43Sとの間隔、前記機能液の着弾範囲とに基づいて、第1の高表面エネルギー領域44Sにのみ選択的に機能液が触れるための滴下許容範囲44Aの自動計算を行い図示する。なお、機能液の着弾範囲は、入力される機能液の径Dおよび着弾ばらつきαに基づき求められる。
【0064】
(機構m3) 機構m2で作製した滴下許容範囲43A内の任意の位置を第1の高表面エネルギー領域43Sに対する機能液の滴下位置43Pとして決定し図示する。ついで、機構m2で作製した滴下許容範囲44A内の任意の位置を第1の高表面エネルギー領域44Sに対する機能液の滴下位置44Pとして決定し図示する。なお、ここでいう任意の位置とは、例えば図示された滴下許容範囲を参考に入力される滴下位置である。あるいは、滴下液滴数のみを入力することで滴下許容範囲を参考に滴下位置を自動計算する機構を備えていても良い。
【0065】
(機構m4) 機構m3で作製した滴下位置43P,44Pが記載されたベクターデータをラスターデータに変換、出力する。
このようにして、インクジェット装置における機能液の滴下位置を記載するインクジェット印刷図面を得ることができる。
【0066】
[インクジェット装置]
次に、本発明に係る図面製造装置について説明する。
図18は、本発明に係るインクジェット装置の構造を例示する概略図である。
図18に示すインクジェット装置100は、定盤101と、ステージ102と、液滴吐出ヘッド103と、液滴吐出ヘッド103に接続されたX軸方向移動機構104と、ステージ102に接続されたY軸方向移動機構105と、制御装置106とを備えている。
ステージ102は、基板20を支持する目的で備えられており、基板20を吸着する吸着機構(図示せず)等の固定機構を備えている。又、基板20上に滴下された機能液61を乾燥させるための熱処理機構を備えて良い。
【0067】
液滴吐出ヘッド103は、複数の液滴吐出ノズル(図4に示す液滴吐出ノズル93)を備えたヘッドであり、複数の液滴吐出ノズルが液滴吐出ヘッド103の下面に、X軸方向に沿って一定間隔で並んでいる。この液滴吐出ノズルからステージ102に支持されている基板20に対して機能液61が吐出される。液滴吐出ヘッド103の液滴吐出機構には、例えばピエゾ方式を用いることができ、この場合、液滴吐出ヘッド103内のピエゾ素子に電圧を印加することで液滴が吐出する。
【0068】
X軸方向移動機構104は、X軸方向駆動軸107、及びX軸方向駆動モータ108で構成される。X軸方向駆動モータ108はステッピングモータ等であり、制御装置106からX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸駆動軸107を動作させ、液滴吐出ヘッド103がX軸方向に移動する。
【0069】
Y軸方向移動機構105は、Y軸方向駆動軸109およびY軸方向駆動モータ110で構成される。制御装置106からX軸方向の駆動信号が供給されるとステージ102がY軸方向に移動する。
【0070】
制御装置106は、液滴吐出ヘッド103に吐出制御用の信号を供給する。又、X軸方向駆動モータ108にX軸方向の駆動信号を、Y軸方向駆動モータ110にY軸方向の駆動信号をそれぞれ供給する。なお、制御装置106は、液滴吐出ヘッド103、X軸方向駆動モータ108、Y軸方向駆動モータ110とそれぞれ電気的に接続されているが、その配線は図示していない。また、制御装置106からの吐出制御用の信号の供給あるいはX軸・Y軸駆動信号の供給は、機能液の滴下位置が記載されたラスターデータをもとに行われる。このラスターデータは図17の図面製造装置で作製されるが、この作製機能がインクジェット装置100自体に内蔵されていてもかまわない。
【0071】
インクジェット装置100は、液滴吐出ヘッド103とステージ102とを相対的に走査させながらステージ102上に固定された基板20に対して機能液61の液滴を吐出する。
【0072】
なお、液滴吐出ヘッド103とX軸方向移動機構104の間には、X軸方向移動機構104と独立動作する回転機構を備え付けても良い。回転機構を動作させて液滴吐出ヘッド103とステージ102との相対角度を変化させることで、液滴吐出ノズル間ピッチを調節できる。また、液滴吐出ヘッド103とX軸方向移動機構104の間には、X軸方向移動機構104と独立動作するZ軸方向移動機構を備え付けても良い。Z軸方向に液滴吐出ヘッド103を移動させることで、基板20とノズル面との距離を任意に調節可能である。また、ステージ102とY軸方向移動機構105の間には、Y軸方向移動機構105と独立動作する回転機構を備え付けても良い。回転機構を動作させることで、ステージ102上に固定された基板20を任意の角度に回転させた状態で、基板20に対して液滴を吐出できる。
【0073】
[積層構造体製造装置]
図19は、本発明に係る積層構造体製造装置の構造を例示する概略図である。
積層構造体製造装置は、図19に示すように、基板20を各機構に搬送する基板搬送機構と、図2,図3に示す第1の工程に対応し、基板20の被印刷面に低表面エネルギー領域50と高表面エネルギー領域41,42とからなる表面エネルギーの異なる領域を有する濡れ性変化層30を形成する濡れ性変化層作製機構と、図18に示すインクジェット装置100からなり、図4に示す第2の工程に対応し、基板20の被印刷面である濡れ性変化層30表面の所定位置に機能液61を選択的に滴下するインクジェット印刷機構と、図5に示す第3の工程に対応し、濡れ性変化層30上の機能液61を乾燥・固化させて導電層71を形成する機構と、からなる。
【0074】
以上のように、本発明に係る機能性膜の形成方法によれば、飛翔時の機能液の直径、機能液の着弾位置ばらつき、高表面エネルギー領域の形状から、所望の高表面エネルギー領域にのみ機能液が触れるための滴下許容範囲を見積もり、これに基づき滴下位置を決定するので、所望の領域に安定して所定パターンの機能性膜を形成した積層構造体を得ることができる。
また、本発明に係る積層構造体を用いることにより、安価で微細な多層配線基板が提供できる。
また、本発明に係る積層構造体を用いることにより、安価で微細なアクティブマトリクス基板が提供できる。
また、本発明に係るアクティブマトリクス基板を用いることにより、安価かつ高性能な画像表示装置が提供できる。
また、本発明に係る図面製造装置を用いることにより、インクジェット印刷図面の開発期間が短縮される。
また、本発明に係る積層構造体製造装置を用いることにより、安価かつ高性能な積層構造体が提供できる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1は、図20に示す積層構造体10Aの製造方法(機能性膜の形成方法)に関する実施例である。
図20は、実施例1に係る積層構造体の製造方法を例示する図である。このうち、図20(a)は平面図であり、図20(b)は図20(a)のA−A’線に沿う断面図である。
【0076】
まず、濡れ性変化材料を含有するNMP溶液を、ガラス基板20上にスピンコート塗布した。この濡れ性変化材料には、下記構造式(I)で表されるポリイミド材料を用いた。次に、100℃のオーブンで前焼成を行った後、300℃のオーブンで熱処理を加えて濡れ性変化層30を形成した。
【0077】
【化1】

【0078】
続いて、複数の線状の開口パターンを有するフォトマスクを作製し、波長300nm以下の紫外線(超高圧水銀ランプ)を濡れ性変化層30上の一部へ露光させ、濡れ性変化層30上に、第1の高表面エネルギー領域41及び、第2の高表面エネルギー領域42、並びに低表面エネルギー領域50とからなるパターンを形成した。なお、作製したフォトマスクには9種類の大きさの異なる開口パターンをあらかじめ設けており、第1の高表面エネルギー領域41の線幅Lと第1の高表面エネルギー領域41と第2の高表面エネルギー領域42との間隔Sの組み合わせの異なる積層構造体を9種類作製している。
【0079】
続いて、下記の表1に示した線幅Lと間隔Sの組み合わせの各パターンに対して、機能液(飛翔時の直径約25μm、着弾位置ばらつき±15μm)を滴下した。なお、下記の表1に示した線幅Lと間隔Sの組み合わせは、式(1)を満足する場合と満足しない場合の両方を含んでいる。又、下記の表1に示した線幅Lと間隔Sの組み合わせは、全て式(2)を満足している。
【0080】
具体的には、Agナノ粒子を含有する親水性インクからなる機能液をインクジェット法で高表面エネルギー部の第1の高表面エネルギー領域41のみに選択的に滴下した。滴下位置は第1の高表面エネルギー領域41の中心位置41C(第1の高表面エネルギー領域41の線中心;X=0)としている。この機能液の表面張力は約30mN/m、粘度10mPa・sであり、液滴法を用いて測定した機能液の高表面エネルギー部に対する接触角は約5°、低表面エネルギー部に対する接触角は約30°であった。ノズル数100のピエゾ方式のインクジェットヘッドを用い、駆動電圧を調整することで、液滴吐出ノズルから吐出される機能液の平均体積を約8pL(飛翔時の直径は約25μm)として機能液の滴下を行った。この際に基板と液滴吐出ノズルの間隔を0.5mmとしており、全100ノズルでの着弾位置ばらつきは±15μmである。
【0081】
続いて、第1の高表面エネルギー領域41に機能液を滴下した後、機能液を100℃のオーブンで乾燥・固化させて導電層71を形成し、積層構造体10Aを作製した。
【0082】
作製した積層構造体10Aを金属顕微鏡で観察し、導電層71がどのように形成されているかを評価した結果を表1に示す。
表1に示すように、式(1)と式(2)の両方を満足する場合(表1の式(1)の欄の数値が正である場合)には、第1の高表面エネルギー領域41のみに導電層71が形成され、式(2)は満足するが式(1)を満足しない場合(表1の式(1)の欄の数値が負である場合)には、第2の高表面エネルギー領域42にも導電層71が形成された。すなわち、式(1)と式(2)の両方を満足することにより、第1の高表面エネルギー領域41のみに安定して導電層71を形成可能であることが確認できた。なお、表1において、『○』は第1の高表面エネルギー領域41のみに導電層71が形成されたことを意味し、『×』は第2の高表面エネルギー領域42にも導電層71が形成されたことを意味している。
【0083】
【表1】

【0084】
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同様に図20に示す積層構造体10Aの製造方法(機能性膜の形成方法)に関する実施例である。
実施例2では、実施例1で用いたフォトマスクとは異なる線状の開口パターンを有するフォトマスクを用いている点、及び滴下中心位置を第1の高表面エネルギー領域41の中心位置41C(第1の領域41の線中心;X=0)から変えている点、以外は実施例1と同様の方法で積層構造体10Aを作製している。
【0085】
下記の表2に示した線幅Lと間隔Sの組み合わせの各パターンに対して、機能液(飛翔時の直径約25μm、着弾位置ばらつき±15μm)を滴下して積層構造体10Aを作製した。そして、作製した積層構造体10Aを金属顕微鏡で観察し、導電層71がどのように形成されているかを評価した結果を表2に示す。なお、下記の表2に示した線幅Lと間隔Sの組み合わせは、全て式(1)を満足している。又、下記の表2に示した線幅Lと間隔Sの組み合わせは、式(2)を満足する場合と満足しない場合の両方を含んでいる。
【0086】
表2に示すように、式(1)と式(2)の両方を満足する場合(表2の式(2)の欄の数値が正である場合)には、第1の高表面エネルギー領域41のみに導電層71が形成され、式(1)は満足するが式(2)を満足しない場合(表2の式(2)の欄の数値が負である場合)には、第2の高表面エネルギー領域42にも導電層71が形成された。すなわち、式(1)と式(2)の両方を満足することにより、第1の高表面エネルギー領域41のみに安定して導電層71を形成可能であることが確認できた。なお、表2において、『○』は第1の高表面エネルギー領域41のみに導電層71が形成されたことを意味し、『×』は第2の高表面エネルギー領域42にも導電層71が形成されたことを意味している。
【0087】
【表2】

【0088】
(実施例3)
実施例3は、図21に示すアクティブマトリクス基板120Aの製造方法に関する実施例である。なお、図21(a)はアクティブマトリクス基板を、図21(b)は画素回路の平面図であり、図21(c)は図21(b)のA−A’線に沿う断面図である。
【0089】
アクティブマトリクス基板120Aは、図12に示すアクティブマトリクス基板120の画素回路130中のトランジスタ270がトランジスタ270Aに置換されたものである。トランジスタ270Aは、トランジスタ270から濡れ性変化層31が削除されたものである。すなわち、トランジスタ270Aにおいて、ゲート電極210、保持容量電極250、ゲート信号線280、及び共通信号線300は、基板20上に直接形成されている。
【0090】
図21(b)には、アクティブマトリクス基板120Aの4画素の画素回路を示すが、実際には、画素が縦200画素、横200画素からなる、計40000画素がマトリクス状に並設されている。
【0091】
各部の寸法は以下の通りである。
・画素サイズは160PPIに相当し約159μm。
・機能液の飛翔時の直径D=約25μm、着弾位置ばらつきα=±15μm。
・ソース電極230の線幅L1=40μm。
・ドレイン電極240の横幅L2=65μm、縦幅L3=89μm。
・ソース電極230とドレイン電極240の間隔として表現されるチャネル長L4=5μm。
・ソース電極230とドレイン電極240の間隔S3=25μm。
・隣接するドレイン電極240の間隔S4=94μm。
【0092】
以下、アクティブマトリクス基板120Aの製造方法について説明するが、ポリイミド材料、機能液、機能液の滴下条件は、実施例1と同一に設定したので、説明を省略する。
【0093】
初めに、フォトリソグラフィー法を用いて、ガラス基板からなる基板20上にゲート電極210、保持容量電極250、ゲート信号線280、及び共通信号線300を作製した。次に、ポリイミド材料を含有するNMP溶液を、スピンコート法で基板20上に塗布し、100℃のオーブンで前焼成を行った後、300℃のオーブンで熱処理を加えて濡れ性変化層32を形成した。その後、所定のパターンを有するフォトマスクを用いて、紫外線を濡れ性変化層32上の一部へ露光させ、濡れ性変化層32上に高表面エネルギー部221と低表面エネルギー部222とからなるパターンを形成した。
【0094】
次に機能液を、高表面エネルギー部221へ選択的に滴下し、熱処理してソース電極230及びドレイン電極240、及びソース信号線290を形成した。
【0095】
次に、下記化学式(II)に示すようなスキームより合成した有機半導体なる重合体をトルエンに溶解した溶液をインクジェット法にて塗布して半導体層260を形成し、アクティブマトリクス基板120Aを作製した。
【0096】
【化2】

【0097】
図22には、実施例3においてソース電極230、ドレイン電極240、及びソース信号線290を形成する際の、機能液の滴下位置の例を示す。
ここでは、前述した本発明の機能膜の形成方法に従い、あらかじめソース電極230およびドレイン電極240を形成する高表面エネルギー領域に対する滴下許容範囲を計算し、滴下許容範囲内となるように滴下位置を決定している。そのため図22に示すように、各滴下位置より計算される着弾範囲430、440は互いに重なることなく、また着弾範囲内で滴下された液滴は確実に所望の高表面エネルギー領域に触れることになる。
【0098】
さらに具体的には、ソース電極230を形成するための機能液の滴下中心位置430Cをソース電極230の中心線230C上の位置とし、ソース電極230を形成する際には159μm置きに1滴ずつとしている。また、ドレイン電極240を形成するための機能液の滴下中心位置440Cをドレイン電極240の重心位置とし、ドレイン電極240を形成する際にはドレイン電極1個につき1滴ずつとしている。このように機能液の滴下位置を決定することで、線幅L1=40μmやチャネル長L4=5μmといった微細な電極を安定して形成することができた。
【0099】
(実施例4)
実施例4では、実施例3で作製したアクティブマトリクス基板120Aに、電気泳動素子を貼り合わせて表示装置を作製した。電気泳動素子は酸化チタン粒子オイルブルーで着色したアイソパーを内包するマイクロカプセルをPVA水溶液に混合して、ITOからなる透明電極を形成したポリカーボネート基板上に塗布して、マイクロカプセルとPVAバインダーからなる層を形成した。この基板と前記アクティブマトリクス基板を積層して表示装置を形成して動作させたところ、コントラストの高い画像を表示することができた。又、160PPIと高精細なアクティブマトリクス基板を用いたことで、10pt文字を明瞭に表示することができた。
【0100】
以上、好ましい実施の形態及び実施例について詳説したが、上述した実施の形態及び実施例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0101】
10,10A 積層構造体
20 基板
30,31,32 濡れ性変化層
41,43 第1の高表面エネルギー領域(高表面エネルギー部の第1の領域)
41C,43C 第1の高表面エネルギー領域の中心位置
42,44 第2の高表面エネルギー領域(高表面エネルギー部の第2の領域)
43A,44A,61F,61G,61H,61I,231A,241A 機能液の滴下許容範囲
43P,44P,61C,61D,231C,241C,430C,440C 機能液の滴下中心位置(滴下位置)
43S,44S 高表面エネルギー領域
50,50S,202,222 低表面エネルギー領域
61,62 機能液
61E,61E’,400,430,440 機能液の着弾範囲
62C 仮想滴下位置
62E 仮想着弾範囲
71 導電層
91 フォトマスク
92 紫外線
93 液滴吐出ノズル
100 インクジェット装置
101 定盤
102 ステージ
103 液滴吐出ヘッド
104 X軸方向移動機構
105 Y軸方向移動機構
106 制御装置
107 X軸方向駆動軸
108 X軸方向駆動モータ
109 Y軸方向駆動軸
110 Y軸方向駆動モータ
120,120A アクティブマトリクス基板
130,130A,131 画素回路
140 配線
150 電極PAD
201,221 高表面エネルギー部
210 ゲート電極
220 ゲート絶縁層
230 ソース電極
230C 中心線
231 ソース電極形成領域に相当する高表面エネルギー領域
240 ドレイン電極
241 ソース電極形成領域に相当する高表面エネルギー領域
250 保持容量電極
260 半導体層
270,270A トランジスタ
280 ゲート信号線
290 ソース信号線
300 共通信号線
α 機能液の着弾位置ばらつき
D 機能液の飛翔時の直径
L 第1の高表面エネルギー領域の線幅
L1 ソース電極の線幅
L2 ドレイン電極の横幅
L3 ドレイン電極の縦幅
L4 チャネル長
S 第1の高表面エネルギー領域と第2の高表面エネルギー領域との間隔
S3 ソース電極とドレイン電極の間隔
S4 隣接するドレイン電極の間隔
X 第1の高表面エネルギー領域の中心位置と機能液の滴下中心位置の距離
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】特開2005−310962号公報
【特許文献2】特開2005−12181号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低表面エネルギー領域を隔てて互いに繋がっていない複数の高表面エネルギー領域の上に所定パターンの機能性膜を形成する機能性膜の形成方法であって、
被印刷面上に、予め低表面エネルギー領域と、前記低表面エネルギー領域を隔てて隣接する複数の高表面エネルギー領域とを形成する第1の工程と、
前記被印刷面上に形成された前記複数の高表面エネルギー領域にインクジェット法を用いて選択的に機能液を供給する第2の工程と、
前記複数の高表面エネルギー領域に供給された機能液を乾燥・固化させて所定パターンの機能性膜を形成する第3の工程と、を有し、
前記第2の工程は、前記複数の高表面エネルギー領域の中から選択される機能液の滴下対象となる第1の高表面エネルギー領域及び前記低表面エネルギー領域を隔てて前記第1の高表面エネルギー領域に隣接する1又は複数の第2の高表面エネルギー領域の形状と、前記機能液の着弾範囲とに基づいて、前記第1の高表面エネルギー領域に機能液を供給する際に該機能液が前記1又は複数の第2の高表面エネルギー領域には触れずに第1の高表面エネルギー領域のみに触れるための滴下許容範囲を決定する第1手順と、ついで該滴下許容範囲内の任意の位置を前記第1の高表面エネルギー領域に対する機能液の滴下位置として決定する第2手順と、を有し、前記複数の高表面エネルギー領域それぞれについて前記第1手順及び第2手順を実行してそれぞれの機能液の滴下位置を決定することを特徴とする機能性膜の形成方法。
【請求項2】
前記滴下許容範囲内であって、前記第1の高表面エネルギー領域の所定方向における中心位置を前記機能液の滴下位置として決定することを特徴とする請求項1に記載の機能性膜の形成方法。
【請求項3】
前記滴下許容範囲内であって、前記第1の高表面エネルギー領域における前記第2の高表面エネルギー領域と隣接する方向の中心位置を前記機能液の滴下位置として決定することを特徴とする請求項2に記載の機能性膜の形成方法。
【請求項4】
前記滴下許容範囲内であって、前記第1の高表面エネルギー領域における前記第2の高表面エネルギー領域と隣接する方向に対して直交する方向の中心位置を前記機能液の滴下位置として決定することを特徴とする請求項2または3に記載の機能性膜の形成方法。
【請求項5】
前記第2の工程において、前記複数の高表面エネルギー領域のうち、隣接する高表面エネルギー領域同士におけるそれぞれの機能液の滴下位置から算出される着弾範囲が互いに重ならないように、前記機能液の滴下位置を決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の機能性膜の形成方法。
【請求項6】
前記第2の工程において、前記被印刷面を複数の区画に分割し、区画ごとに前記複数の高表面エネルギー領域それぞれについて前記第1手順及び第2手順を実行してそれぞれの機能液の滴下位置を決定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の機能性膜の形成方法。
【請求項7】
前記第1の工程は、エネルギーの付与により表面エネルギーが変化する材料を含む濡れ性変化層を前記被印刷面上に形成する第1手順と、低表面エネルギー領域と高表面エネルギー領域とを表現した2つの異なる領域が区画図示された図面をもとにして前記被印刷面の一部に選択的にエネルギーを付与することで高表面エネルギー領域を形成する第2手順と、からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の機能性膜の形成方法。
【請求項8】
エネルギーの付与が光を用いて行われることを特徴とする請求項7に記載の機能性膜の形成方法。
【請求項9】
低表面エネルギー領域と高表面エネルギー領域とを表現した2つの異なる領域が区画図示された図面をもとにしてフォトマスクを作製し、該フォトマスクを介した光照射により高表面エネルギー領域を形成することを特徴とする請求項8記載の機能性膜の形成方法。
【請求項10】
エネルギーの付与により表面エネルギーが変化する材料を含み、低表面エネルギー領域と高表面エネルギー領域とからなる表面エネルギーの異なる領域を有する濡れ性変化層と、前記濡れ性変化層の高表面エネルギー領域上に形成された導電層とを備える積層構造体であって、
前記導電層が請求項1〜9のいずれかに記載の機能性膜の形成方法を用いて形成されてなることを特徴とする積層構造体。
【請求項11】
少なくとも基板と、絶縁層と、電極層とを有する多層配線基板において、
請求項10に記載の積層構造体を有し、該積層構造体の前記高表面エネルギー領域上に形成された前記導電層は、前記電極層の少なくとも一部として利用されることを特徴とする多層配線基板。
【請求項12】
ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、保持容量電極、及び半導体層を含むトランジスタと、前記ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、保持容量電極のいずれかに接続する配線と、配線と接続する電極PADを備えるアクティブマトリクス基板において、
請求項10に記載の積層構造体を有し、該積層構造体の前記高表面エネルギー領域上に形成された前記導電層は、前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記保持容量電極、前記配線、前記電極PADのうち少なくともいずれか1つとして利用されることを特徴とするアクティブマトリクス基板。
【請求項13】
画像表示素子と、請求項12に記載のアクティブマトリクス基板と、を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項14】
インクジェット装置における機能液の滴下位置を記載するインクジェット印刷図面を製造するための図面製造装置であって、
低表面エネルギー領域と複数の高表面エネルギー領域とを表現した2種類の異なる領域が区画図示されたベクターデータで表現された図面を作製する機構と、
図面から前記複数の高表面エネルギー領域の形状を抽出し、前記複数の高表面エネルギー領域の中から選択される機能液の滴下対象となる第1の高表面エネルギー領域及び前記低表面エネルギー領域を隔てて前記第1の高表面エネルギー領域に隣接する1又は複数の第2の高表面エネルギー領域の形状と、前記機能液の着弾範囲とに基づいて、前記第1の高表面エネルギー領域にのみ選択的に機能液が触れるための滴下許容範囲の自動計算を行い図示する機構と、
前記滴下許容範囲内の任意の位置を前記第1の高表面エネルギー領域に対する機能液の滴下位置として決定し図示する機構と、
滴下位置が記載されたベクターデータをラスターデータに変換、出力する機構と、
を有することを特徴とする図面製造装置。
【請求項15】
基板を支持するステージと、液滴吐出ヘッドと、ステージに接続された移動・回転機構と、液滴吐出ヘッドに接続された移動・回転機構と、制御装置とを備えたインクジェット装置であって、
請求項14に記載の図面製造装置から出力される機能液の滴下位置が記載されたラスターデータをもとに、前記制御装置から機能液の吐出制御用信号およびステージ駆動信号が供給されることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項16】
基板搬送機構と、
被印刷面に低表面エネルギー領域と高表面エネルギー領域とからなる表面エネルギーの異なる領域からなる濡れ性変化層を形成する機構と、
請求項15に記載のインクジェット装置からなり、前記濡れ性変化層表面の所定位置に機能液を選択的に滴下するインクジェット印刷機構と、
前記機能液を乾燥・固化する機構と、
を備えることを特徴とする積層構造体製造装置。

【図11】
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【図18】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−124376(P2012−124376A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274882(P2010−274882)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】