説明

画像濃度制御装置及びこれを備えた画像形成装置並びに画像濃度制御方法

【課題】 湿度や温度等の環境変化や現像剤及び感光体ドラムの経時劣化に関わらず、トナー補給を簡易かつ適性に制御してトナー濃度を安定させ、画像濃度の安定化を図る。
【解決手段】 像担持体(1)と、像担持体を帯電する帯電手段(2)と、像担持体に静電潜像を形成する露光手段(3)と、2成分現像剤により静電潜像を現像し顕像化する現像手段(5)と、当該像担持体上の現像像濃度を検出する像濃度検出手段(21)と、現像手段のトナー濃度検出手段(22)と、現像手段のトナー補給手段(20)とを具備し、0VのDC電圧と所定のAC電圧とが印加された帯電手段により像担持体の表面電位を0Vに保持させた状態で所定の現像バイアスを一定時間印加して現像手段により現像し、像濃度検出手段が読み取った現像像の濃度とトナー濃度検出手段が検出したトナー濃度とに応じてトナー補給を制御する制御手段(25)を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像器のトナー濃度を適正に制御することにより画像濃度を安定させる画像濃度制御装置及びこれを備えた画像形成装置並びに画像濃度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置(プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等)においては、周囲の湿度や温度等の環境変化や、現像剤及び感光体ドラムの経時劣化などによって、画像濃度が不安定となり、画像の抜けやカブリといった好ましくない現象が生じる場合がある。そこで、画像濃度を安定化させるための方策の一つとして、種々の影響因子を考慮してトナー補給を適性に制御する方法が採られている。
【0003】
例えば、所定の表面電位に一様に帯電させた像担持体を、その表面電位と現像バイアスとの電位差によって現像し、当該現像像の濃度の値及び現像剤の累積使用量に応じてトナー補給を制御する画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、トナー補給制御を、現像像の濃度の値及び現像剤の累積使用量に応じて行うことで、トナー濃度変動を最小化しようとするものである。
【特許文献1】特開平2001−183876号(段落32、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載のような技術では、現像剤の経時劣化(累積使用量)については考慮するものの、現像器内の環境変化に起因するトナー濃度の変動や、感光体ドラムの経時劣化及び環境変化による感光体ドラム表面電位の変動については考慮することなく、それらの変動の影響を含めた現像像の濃度の値に応じてトナー補給を制御する。従って、そのような多くの影響因子が一括に反映される指標に基づいてトナー補給の制御を行なうので、精度のよい適性な制御が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、湿度や温度等の環境変化や現像剤及び感光体ドラムの経時劣化に関わらず、トナー補給を簡易かつ適性に制御してトナー濃度を安定させ、更には画像濃度の安定化を図ることが可能な画像濃度制御装置及びこれを備えた画像形成装置並びに画像濃度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明の画像濃度制御装置は、請求項1に示すとおり、像担持体と、所定電圧が印加された状態で像担持体の表面を一様に帯電する帯電手段と、一様に帯電された像担持体に像情報に応じた露光を施し像情報に応じた静電潜像を形成する露光手段と、所定現像バイアスが印加された状態で少なくともキャリアとトナーとからなる現像剤により静電潜像を現像し顕像化する現像手段と、当該像担持体上の現像像の濃度を検出する像濃度検出手段と、現像手段内におけるトナーの濃度を検出するトナー濃度検出手段と、現像手段にトナーを補給するトナー補給手段と、を具備し、0VのDC電圧と所定のAC電圧とが印加された帯電手段により像担持体の表面電位を0Vに保持させた状態で現像手段に所定の現像バイアスを一定時間印加して、現像手段により当該表面電位と現像バイアスとの電位差状態で直接現像し、像濃度検出手段により読み取った当該現像像の濃度とトナー濃度検出手段により検出したトナー濃度とに応じて、トナー補給手段によりトナー補給を制御する制御手段を有する構成とする。
【0007】
これによると、像濃度検出手段により読み取られる現像像は、像担持体の表面電位を0Vに保持した状態で形成されるので、像担持体における環境変化及び経時劣化の影響が全て排除され、現像手段における環境変化及び経時劣化の影響のみが反映されたものとなる。そのために、トナー濃度検出手段により検出したトナー濃度を像濃度検出手段により読み取られた当該現像像の濃度に応じて補正することにより現像手段に係る環境変化及び経時劣化の変動の影響を少なくしてトナー補給を制御することができる。従って、湿度や温度等の環境変化及び現像剤や感光体ドラムの経時劣化にかかわらず、トナー補給を簡単かつ適正に制御して現像手段の現像能力を安定させることができる。
【0008】
また、請求項2に示すとおり、制御手段は、像濃度検出手段により読み取った現像像の濃度に応じて現像手段内のトナー濃度を変更するための操作量を決定し、その操作量を複数に分割した分割操作量に応じてトナー補給手段によるトナー補給を段階的に制御する構成とすることができる。
【0009】
これにより、微少な値に分割された分割操作量に基づきトナー補給を制御するので、アンダートナーまたはオーバートナーが瞬時に発生することを防止し、画像における細線のかすれや細線の太りなどを防止することができる。
【0010】
また、請求項3に示すとおり、制御手段は、像濃度検出手段により読み取った現像像の濃度に応じて現像手段内のトナー濃度を変更するための所定の変動制限を設けた操作量を決定し、その操作量に応じてトナー補給手段によるトナー補給を制御する構成とすることができる。
【0011】
これにより、現像手段内のトナー濃度の変動が所定の範囲内に収まるようにトナー補給を制御できるので、アンダートナーまたはオーバートナーの発生を未然に防止し、キャリア付着またはカブリ若しくはトナー飛散などを防止することができる。
【0012】
更に、本発明の画像濃度制御装置は、請求項4に示すとおり、像担持体と、所定電圧が印加された状態で像担持体の表面を一様に帯電する帯電手段と、一様に帯電された像担持体に像情報に応じた露光を施し像情報に応じた静電潜像を形成する露光手段と、所定現像バイアスが印加された状態で少なくともキャリアとトナーとからなる現像剤により静電潜像を現像し顕像化する現像手段と、当該像担持体上の現像像の濃度を検出する像濃度検出手段と、現像手段内におけるトナーの濃度を検出するトナー濃度検出手段と、現像手段内の現像剤の経時劣化を検出する現像剤劣化検出手段と、現像手段の周囲温湿度を検出する温湿度検出手段と、現像手段にトナーを補給するトナー補給手段と、を具備し、0VのDC電圧と所定のAC電圧とが印加された帯電手段により像担持体の表面電位を0Vに保持させた状態で現像手段に所定の現像バイアスを一定時間印加して、現像手段により当該表面電位と現像バイアスとの電位差で直接現像し、像濃度検出手段により読み取った当該現像像の濃度と現像剤劣化検出手段により検出した現像剤の経時劣化状態と温湿度検出手段により検出した周囲温湿度とトナー濃度検出手段により検出したトナー濃度とに応じて、トナー補給手段によりトナー補給を制御する制御手段を有する構成とする。
【0013】
これによると、像濃度検出手段により読み取られる現像像は、像担持体の表面電位を0Vに保持した状態で形成されるので、像担持体における環境変化及び経時劣化の影響が全て排除され、現像手段における環境変化及び経時劣化の影響のみが反映されたものとなる。そのために、トナー濃度検出手段により検出したトナー濃度を像濃度検出手段により読み取った当該現像像の濃度と現像剤劣化検出手段により検出した現像剤の経時劣化状態と温湿度検出手段により検出した周囲温湿度とに応じて補正することにより、現像手段に係る環境変化及び経時劣化の変動の影響を少なくしてトナー補給を制御することができる。従って、湿度や温度等の環境変化及び現像剤や感光体ドラムの経時劣化にかかわらず、トナー補給を簡単かつ適正にまた高精度に制御してトナー濃度を安定させることができる。
【0014】
また、請求項5に示すとおり、制御手段は、像濃度検出手段により読み取った現像像の濃度、現像剤の経時劣化状態、及び現像手段の周囲の温湿度に応じて現像手段内のトナー濃度を変更するための操作量を決定し、その操作量を複数に分割した分割操作量に応じてトナー補給手段によるトナー補給を段階的に制御する構成とすることができる。
【0015】
これにより、微少な値に分割された分割操作量に基づきトナー補給を制御するので、アンダートナーまたはオーバートナーが瞬時に発生することを防止し、画像における細線のかすれや細線の太りなどを防止することができる。
【0016】
また、請求項6に示すとおり、制御手段は、像濃度検出手段により読み取った現像像の濃度、現像剤の経時劣化状態、及び現像手段の周囲の温湿度に応じて現像手段内のトナー濃度を変更するための所定の変動制限を設けた操作量を決定し、その操作量に応じてトナー補給手段によるトナー補給を制御する構成とすることができる。
【0017】
これにより、現像手段内のトナー濃度の制御を所定の範囲内に制限できるので、現像手段内のトナー濃度が許容範囲外となるアンダートナーまたはオーバートナーの発生を未然に防止し、キャリア付着またはカブリ若しくはトナー飛散などを防止することができる。
【0018】
更に、本発明の画像形成装置は、請求項7に示すとおり、上記請求項1乃至請求項6の何れかに記載の画像濃度制御装置を備えた構成とする。
【0019】
更に、本発明の画像濃度制御方法は、請求項8に示すとおり、表面に静電潜像を担持するための像担持体に対して0VのDC電圧及び所定のAC電圧を印加して像担持体の表面電位を0Vに保持する帯電工程と、像担持体の表面電位が0Vに保持された状態で所定の現像バイアスを印可し、少なくともキャリアとトナーとからなる現像剤により現像して現像像を形成する現像工程と、現像像の濃度を検出する像濃度検出工程と、現像剤のトナー濃度を検出するトナー濃度検出工程と、像濃度検出工程において検出した現像像の濃度及びトナー濃度検出工程において検出したトナー濃度に基づき現像剤へのトナー補給を制御するトナー補給制御工程とを有する構成とする。
【0020】
更に、本発明の画像濃度制御方法は、請求項9に示すとおり、表面に静電潜像を担持するための像担持体に対して0VのDC電圧及び所定のAC電圧を印加して像担持体の表面電位を0Vに保持する帯電工程と、像担持体の表面電位が0Vに保持された状態で所定の現像バイアスを印可し、少なくともキャリアとトナーとからなる現像剤により現像して現像像を形成する現像工程と、現像像の濃度を検出する像濃度検出工程と、現像剤のトナー濃度を検出するトナー濃度検出工程と、現像剤の経時劣化状態を検出する現像剤劣化検出工程と、現像剤の周囲の温湿度を検出する温湿度検出工程と、像濃度検出工程において検出した現像像の濃度、トナー濃度検出工程において検出したトナー濃度、現像剤劣化検出工程において検出した現像剤の経時劣化状態、及び温湿度検出工程において検出した温湿度に基づき現像剤へのトナー補給を制御するトナー補給制御工程とを有する構成とする。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明によれば、湿度や温度等の環境変化や現像剤及び感光体ドラムの経時劣化に関わらず、トナー補給を簡易かつ適性に制御してトナー濃度を安定させ、更には画像濃度の安定化を図ることができる。特に、像担持体の表面電位を0Vに保持した状態で形成した現像像に基づきトナー補給を制御するので、像担持体における環境変化及び経時劣化の影響を全て排除することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明による画像形成装置を示す模式的な断面図である。この画像形成装置は、感光体ドラム1の周囲に、感光体ドラム1の作像面を均一に帯電させる帯電ローラ2と、感光体ドラム1の作像面に対して露光用の光束を走査して静電潜像を形成する露光手段であるLSU(レーザ・スキャニング・ユニット)3と、少なくともキャリアとトナーとからなる現像剤により感光体ドラム1の作像面上の静電潜像を顕像化して現像像を形成する現像ローラ4を備えた現像器5と、感光体ドラム1の作像面上に形成されたトナー像を記録紙上に転写する転写ローラ6と、感光体ドラム1の作像面を清掃するクリーニングブレード7とが設けられており、給紙部8の記録紙が感光体ドラム1と転写ローラ6との間に送り込まれた後、定着器9を経て排紙部10に排出される。さらにこの画像形成装置は、上部に複写やファクシミリ送信のための原稿読取部11を備えている。
【0024】
上記画像形成装置においては、画像濃度を安定させるために、現像器5内の現像剤の撹拌を充分に行ってトナー濃度の分布を均一化するとともに、トナー濃度を適正化することが必要となる。そこで、上記画像形成装置は、トナー補給を簡易かつ適性に制御してトナー濃度を安定させるための画像濃度制御部(画像濃度制御装置)12を有する。
【0025】
図2は、図1に示した画像形成装置における画像濃度制御部の詳細を示すブロック図である。この画像濃度制御部12は、図1に示したように感光体ドラム(像担持体)1、帯電ローラ(帯電手段)2、LSU(露光手段)3、及び現像器(現像手段)5を備え、帯電ローラ2は、感光ドラム1に対して0VのDC電圧及び所定のAC電圧を印加してその表面(作像面)電位を0Vに保持し、また、現像器5は、感光ドラム1の表面電位が0Vに保持された状態で所定の現像バイアスを印可し、キャリアとトナーとからなる現像剤により現像してトナーバンド(現像像)を形成する。
【0026】
さらに、画像濃度制御部12は、現像器5への補給用トナーを収容するトナーボトル(トナー補給手段)20a及びそれを駆動するためのトナーボトル駆動モータ20bと、トナーバンドの濃度を検出するフォトセンサ(像濃度検出手段)21と、現像器5内におけるトナー濃度を検出するトナー濃度センサ(トナー濃度検出手段)22と、回転により現像器5内の現像剤を撹拌しながら搬送する撹拌スクリュ23a及びパドル23b並びにそれらを駆動するための現像撹拌モータ23cと、現像器5の周囲の温湿度を検出する温湿度センサ(温湿度検出手段)24とを備える。ここで、撹拌スクリュ23aを駆動する現像撹拌モータ23cの回転時間をタイマー26によって計測することにより、現像器5内の現像剤の経時劣化状態を検出する現像剤劣化検出手段として機能する。マイクロコンピュータ(制御手段)25は、フォトセンサ21が検出したトナーバンドの濃度、トナー濃度センサ22が検出したトナー濃度、現像撹拌モータ23cの回転時間をタイマー26によって計測することにより検出した現像剤の経時劣化状態、及び温湿度センサ24が検出した温湿度等に基づき現像器5内の現像剤へのトナー補給を制御する。
【0027】
図3は、図1及び図2に示した画像形成装置においてトナーバンドを形成する際の感光体ドラム表面の帯電状態を示す概念図である。図3(A)は、本発明による感光体ドラム表面の帯電状態を示しており、図3(B)は、比較のために従来技術による場合を示している。
【0028】
従来技術の場合では、図3(B)に示すように、感光体ドラム1の表面におけるトナーバンド形成部位の電位Vlは、露光用のLSU3のレーザパワーの変動による影響や、感光体ドラム1及び帯電ローラ2の環境変化や経時変化による影響を受けて変動し得る。これにより、トナーバンド形成部位の電位Vlと現像バイアス電位Vbとの電位差ΔV(=Vb−Vl)が変動すると、現像器5による安定したトナーバンドの形成が困難となる。
【0029】
一方、本発明の場合では、図3(A)に示すように、感光体ドラム1の表面におけるトナーバンド形成部位の電位Vlは0Vに保持されるので、トナーバンド形成部位の電位Vlと現像バイアス電位Vbとの電位差ΔV(=Vb)は、現像バイアス電位Vbにより決定されることになり、安定したトナーバンドの形成が可能となる。このとき、感光体ドラム1に対する帯電ローラ2の印加電圧は、DC電圧を0V(OFF)とし、AC電圧を所定の値に設定する。これにより、感光体ドラム1上の余分な電荷を除電することができ、感光体ドラム1の表面電位を安定的に0Vに保持することができる。
【0030】
図4は、図2に示した画像濃度制御部によるトナー濃度の変更方法の概要を示すグラフである。このグラフは、縦軸にトナー濃度センサ出力(V)、横軸にトナー濃度センサによる現像器5内のトナー濃度検出値(%)をとり、それらの関係を各制御電圧(5.0V、6.0V、7.0V、8.0V、9.0V)について示すものである。ここでは、初期のトナー濃度が8%の現像剤を使用する場合について説明する。
【0031】
まず、マイクロコンピュータ25は、現像剤を現像器5の中に入れた直後に現像器5内の撹拌スクリュ23aを回転させ、センサ出力を2.5V(トナー補給動作制御電圧)とするように初期の制御電圧を設定する。本実施形態の場合、初期のトナー濃度が8%であるので、初期の制御電圧は7.0Vとなる。トナー補給制御が開始されると、マイクロコンピュータ25は、初期調整値(7.0V)に操作量(通常は、「トナーバンドの濃度に応じて定められる操作量」、「現像剤の経時劣化状態に応じて定められる操作量」、及び「現像器5の周囲の温湿度に応じて定められる操作量」の和)を加えることで、トナー濃度センサの制御電圧を決定し、その決定した新たな制御電圧を入力する。その結果、センサ出力が変化することになるが、マイクロコンピュータ25は、トナーボトルを駆動して現像器5へトナーを補給することによりセンサ出力を2.5Vに保持する。
【0032】
例えば、フォトセンサ21が検出したトナーバンドの濃度、現像剤劣化検出センサ23が検出した現像剤の経時劣化状態、及び温湿度センサ24が検出した温湿度に応じて決定した制御電圧の操作量が+2.0Vの場合、マイクロコンピュータ25は、制御電圧の入力値を7.0から9.0に変更する(図中、矢印参照)。この制御電圧の変更は、現像器5内のトナー濃度の補正量の+2%(即ち、トナー濃度8%から10%への上昇)に相当する。そこで、制御電圧が9.0Vに変更されたことにより、センサ出力が2.5Vより大きな値となると、マイクロコンピュータ25は、センサ出力を2.5Vに保持するべくトナーボトルを駆動し、結果として現像器5内のトナー濃度の検出値が10%になるまで現像器5へトナーを補給することになる。
【0033】
ここで、マイクロコンピュータ25は、制御電圧の入力値を7.0から9.0に必ずしも直接変更する必要はなく、操作量+2.0Vを複数に分割した分割操作量(例えば、+0.1V)に応じてトナー補給を制御し、トータルの操作量が+2.0Vとなるまで繰り返し実行することで、トナー補給を段階的に制御することができる。また、変化後のトナー濃度の上限及び下限を定めるために、予め制御電圧の操作量の変動制限(例えば、制御電圧6.0V〜9.0Vの範囲内)を設定することもできる。
【0034】
なお、別法として制御電圧を一定値とし、トナー濃度センサ出力を変更してトナー濃度を調整することも可能であるが、特にトナー濃度センサの特性に関し、図4に示すようなトナー濃度に対するセンサ出力感度が低下する領域(図中、センサ出力が約0.3V以下及び約4.2V以上の領域)が存在する場合には、上記のようにセンサ感度の比較的良好な領域で制御電圧を変更する方法が有効である。
【0035】
図5は、現像剤の経時劣化状態及び現像器の周囲の温湿度に応じて定められるトナー濃度センサの制御電圧の操作量の一例を示す図である。
【0036】
図5(A)に示すように、現像剤使用開始後の現像器5内の撹拌スクリュの回転時間によってトナー濃度センサの制御電圧の操作量を決定することができる。この現像器5内の撹拌スクリュの回転時間は、現像剤の経時劣化状態を反映するものであり、ここでは、現像剤の劣化が進む(即ち、撹拌スクリュの回転時間が長くなる)につれ操作量が増大する。また、図5(B)に示すように、現像器5の周囲の温湿度によってトナー濃度センサの制御電圧の操作量を決定することができる。ここでは、温度が高くなるにつれ操作量が減少する一方、湿度が高くなるにつれ操作量が減少する傾向となる。
【0037】
上述のようなトナー濃度センサの制御電圧は、トナーバンドの濃度に応じて定められる操作量のみを考慮して決定することも可能であるが、その場合には、トナーバンドの濃度の変化に現像器5の環境変化及び現像剤の経時変化の影響が混在する状態で制御電圧に反映されることになる。従って、現像剤の経時劣化状態に応じて定められる操作量及び現像器5の周囲の温湿度に応じて定められる操作量を更に考慮することで、現像器5の環境変化及び現像剤の経時変化をより詳細に制御電圧に反映させることができ、より短時間に目標とするトナー濃度を実現することが可能となる。なお、ここでは、現像剤の経時劣化状態及び現像器5の周囲の温湿度を好適な例として示したが、これに限らず環境変化及び経時変化に関連する種々の因子を考慮することができる。
【0038】
図6は、図2に示した画像濃度制御部におけるトナー補給制御についての動作を示すフロー図である。まず、帯電ローラ2によって感光ドラム1の表面電位を0Vに保持した状態で、現像器5によってトナーバンドを形成する(ST101)。次に、形成されたトナーバンドの濃度をフォトセンサ21により検出する(ST102)。
【0039】
そこで、検出したトナーバンドの濃度が、予め設定した目標濃度を超えているか否かを判断し(ST103)、目標濃度を超えている(トナー濃度が濃い)場合には、それに応じて決定したトナー濃度センサーの制御電圧の分割操作量に基づき、制御電圧を微少量低下させる(ST104)。これにより、記録紙に印刷されて現像器5内のトナーが消費されると、トナー濃度が微少量だけ低下することになる。一方、ST103において、目標濃度を超えていない(トナー濃度が薄い)場合には、検出したトナーバンドの濃度が、予め設定した目標濃度未満であるか否かを判断し(ST105)、目標濃度未満である(トナー濃度が薄い)場合には、それに応じて決定したトナー濃度センサーの制御電圧の分割操作量に基づき、制御電圧を微少量上昇させる(ST106)。これにより、この後、印刷中に現像器5にトナーが補給されると、トナー濃度が微少量だけ増大することになる。但し、ST103において、トナーバンドの濃度が目標濃度と同じである場合には、制御電圧を変化させることはない。
【0040】
次に、現像器5の周囲の温湿度によってトナー濃度センサの制御電圧の操作量を決定する温湿度補正を実行し(ST107)、さらに、現像剤使用開始後の現像器5内の撹拌スクリュの回転時間によってトナー濃度センサの制御電圧の操作量を決定する現像剤劣化補正を実行する(ST108)。そこで、それら温湿度補正及び現像剤劣化補正を実施した後の最終的な制御電圧の操作量が、予め設定した操作量の変動制限の範囲内になるように調整する(ST109)。これにより、最終的な制御電圧が決定されるが(ST110)、この制御電圧の決定によりトナーが補給されて、或いはトナーが消費されて現像器5内のトナー濃度が実際に目標濃度に到達するのは、所定の枚数の記録紙に印刷がなされた後である。そこで、フォトセンサーが現像器5内の正味のトナー濃度を検出可能となるまで規定枚数の印刷を実行する(ST111)。その後、ST101に戻り、上記の一連のステップを繰り返し実行することになる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の画像濃度制御装置及びこれを備えた画像形成装置並びに画像濃度制御方法によれば、湿度や温度等の環境変化や現像剤及び感光体ドラムの経時劣化に関わらず、トナー補給を簡易かつ適性に制御してトナー濃度を安定させ、更には画像濃度の安定化を図ることが可能となり、現像器のトナー濃度を適正に制御することにより画像濃度を安定させる画像濃度制御装置及びこれを備えた画像形成装置並びに画像濃度制御方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による画像形成装置を示す模式的な断面図
【図2】図1の画像形成装置における画像濃度制御部の詳細を示すブロック図
【図3】図1の画像形成装置においてトナーバンドを形成する際の感光体ドラム表面の帯電状態を示す概念図
【図4】図2の画像濃度制御部によるトナー濃度の変更方法の概要を示すグラフ
【図5】トナー濃度センサの制御電圧の操作量の一例を示す図
【図6】図2の画像濃度制御部によるトナー補給制御についての動作を示すフロー図
【符号の説明】
【0043】
1 感光体ドラム(像担持体)
2 帯電ローラ(帯電手段)
3 LSU
5 現像器(現像手段)
20a トナーボトル
21 フォトセンサ(像濃度検出手段)
22 トナー濃度センサ(トナー濃度検出手段)
23 現像剤劣化検出センサ(現像剤劣化検出手段)
24 温湿度センサ(温湿度検出手段)
25 マイクロコンピュータ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、所定電圧が印加された状態で前記像担持体の表面を一様に帯電する帯電手段と、一様に帯電された前記像担持体に像情報に応じた露光を施し像情報に応じた静電潜像を形成する露光手段と、所定現像バイアスが印加された状態で少なくともキャリアとトナーとからなる現像剤により静電潜像を現像し顕像化する現像手段と、当該像担持体上の現像像の濃度を検出する像濃度検出手段と、前記現像手段内におけるトナーの濃度を検出するトナー濃度検出手段と、前記現像手段にトナーを補給するトナー補給手段と、を具備し、
0VのDC電圧と所定のAC電圧とが印加された前記帯電手段により前記像担持体の表面電位を0Vに保持させた状態で前記現像手段に所定の現像バイアスを一定時間印加して、前記現像手段により当該表面電位と現像バイアスとの電位差状態で直接現像し、前記像濃度検出手段により読み取った当該現像像の濃度と前記トナー濃度検出手段により検出したトナー濃度とに応じて、前記トナー補給手段によりトナー補給を制御する制御手段を有することを特徴とする画像濃度制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記像濃度検出手段により読み取った前記現像像の濃度に応じて前記現像手段内のトナー濃度を変更するための操作量を決定し、その操作量を複数に分割した分割操作量に応じて前記トナー補給手段によるトナー補給を段階的に制御することを特徴とする請求項1に記載の画像濃度制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記前記像濃度検出手段により読み取った前記現像像の濃度に応じて前記現像手段内のトナー濃度を変更するための所定の変動制限を設けた操作量を決定し、その操作量に応じて前記トナー補給手段によるトナー補給を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像濃度制御装置。
【請求項4】
像担持体と、所定電圧が印加された状態で前記像担持体の表面を一様に帯電する帯電手段と、一様に帯電された前記像担持体に像情報に応じた露光を施し像情報に応じた静電潜像を形成する露光手段と、所定現像バイアスが印加された状態で少なくともキャリアとトナーとからなる現像剤により静電潜像を現像し顕像化する現像手段と、当該像担持体上の現像像の濃度を検出する像濃度検出手段と、前記現像手段内におけるトナーの濃度を検出するトナー濃度検出手段と、前記現像手段内の現像剤の経時劣化を検出する現像剤劣化検出手段と、前記現像手段の周囲温湿度を検出する温湿度検出手段と、前記現像手段にトナーを補給するトナー補給手段と、を具備し、
0VのDC電圧と所定のAC電圧とが印加された前記帯電手段により前記像担持体の表面電位を0Vに保持させた状態で前記現像手段に所定の現像バイアスを一定時間印加して、前記現像手段により当該表面電位と現像バイアスとの電位差で直接現像し、前記像濃度検出手段により読み取った当該現像像の濃度と前記現像剤劣化検出手段により検出した現像剤の経時劣化状態と前記温湿度検出手段により検出した周囲温湿度と前記トナー濃度検出手段により検出したトナー濃度とに応じて、前記トナー補給手段によりトナー補給を制御する制御手段を有することを特徴とする画像濃度制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記像濃度検出手段により読み取った前記現像像の濃度、前記現像剤の経時劣化状態、及び前記現像手段の周囲の温湿度に応じて前記現像手段内のトナー濃度を変更するための操作量を決定し、その操作量を複数に分割した分割操作量に応じて前記トナー補給手段によるトナー補給を段階的に制御することを特徴とする請求項4に記載の画像濃度制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記像濃度検出手段により読み取った前記現像像の濃度、前記現像剤の経時劣化状態、及び前記現像手段の周囲の温湿度に応じて前記現像手段内のトナー濃度を変更するための所定の変動制限を設けた操作量を決定し、その操作量に応じて前記トナー補給手段によるトナー補給を制御することを特徴とする請求項4に記載の画像濃度制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の画像濃度制御装置を備えた画像形成装置。
【請求項8】
表面に静電潜像を担持するための像担持体に対して0VのDC電圧及び所定のAC電圧を印加して像担持体の表面電位を0Vに保持する帯電工程と、
前記像担持体の表面電位が0Vに保持された状態で所定の現像バイアスを印可し、少なくともキャリアとトナーとからなる現像剤により現像して現像像を形成する現像工程と、
前記現像像の濃度を検出する像濃度検出工程と、
前記現像剤のトナー濃度を検出するトナー濃度検出工程と、
前記像濃度検出工程において検出した現像像の濃度及び前記トナー濃度検出工程において検出したトナー濃度に基づき現像剤へのトナー補給を制御するトナー補給制御工程とを有することを特徴とする画像濃度制御方法。
【請求項9】
表面に静電潜像を担持するための像担持体に対して0VのDC電圧及び所定のAC電圧を印加して像担持体の表面電位を0Vに保持する帯電工程と、
前記像担持体の表面電位が0Vに保持された状態で所定の現像バイアスを印可し、少なくともキャリアとトナーとからなる現像剤により現像して現像像を形成する現像工程と、
前記現像像の濃度を検出する像濃度検出工程と、
前記現像剤のトナー濃度を検出するトナー濃度検出工程と、
前記現像剤の経時劣化状態を検出する現像剤劣化検出工程と、
前記現像剤の周囲の温湿度を検出する温湿度検出工程と、
前記像濃度検出工程において検出した現像像の濃度、前記トナー濃度検出工程において検出したトナー濃度、前記現像剤劣化検出工程において検出した現像剤の経時劣化状態、及び前記温湿度検出工程において検出した温湿度に基づき現像剤へのトナー補給を制御するトナー補給制御工程とを有することを特徴とする画像濃度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2005−316223(P2005−316223A)
【公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−135176(P2004−135176)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】