説明

磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気メモリ、磁気ヘッド並びに磁気記録装置

【課題】高い磁気抵抗効果が得られるポイントコンタクトを有する磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気メモリ、磁気ヘッド並びに磁気記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁性の下地と、前記下地の主面上に設けられた第1の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と離間して設けられた第2の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とに接してこれらの間に設けられた接続部であって、強磁性体からなる第1の結晶粒と強磁性体からなる第2の結晶粒とを有し、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間を流れる電流の経路のうちの最も狭い部分は、前記第1の結晶粒と第2の結晶粒との結晶粒界である、接続部と、を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気メモリ、磁気ヘッド並びに磁気記録装置に関し、特に高い磁気抵抗効果が得られる磁気抵抗効果素子、磁気メモリ表示入力装置及びそれらの製造方法、磁気ヘッド並びにこの磁気ヘッドを備えた磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブにおける磁気記録密度は急激に上昇し、それに伴い、再生ヘッドに要求される再生感度・再生分解能も年々上昇している。スピン依存散乱を動作原理に用いたGMR(Giant MagnetoResistance effect)ヘッドの出現は飛躍的に出力を上げ高記録密度化に対応した。また、さらなる高記録密度化に対応するための再生素子構造が提案されている。
【0003】
最近、金属磁性体中の磁壁を情報として扱う不揮発性固体メモリ素子の報告がなされている。磁気モーメントは電子スピン情報に基づいて決められ、磁壁はそのスピン情報の境界に形成されることから、従来の磁界で磁壁をドライブするのではなく、より微細化に対応できる電子電流で磁壁をドライブする研究が精力的に進められている。
【0004】
ふたつの磁性体の間に、くびれた構造を有する磁性体を設けた磁気抵抗素子が開示されている(特許文献1)。
また一方、大小二つの磁性体の「くびれ」を有するワイヤに磁壁を閉じ込め、大きなくびれでは低抵抗(情報「0」)、小さなくびれでは高抵抗(情報「1」)、さらに「0」と「1」の書き換えは、磁壁を電流ドライブにてくびれ間を移動させる素子がある。本発明者は、スパッタNiFe(パーマロイ)膜をイオンミリングで2次元的および3次元的に絞り込んだ形状にしたポイントコンタクトにおいて、およそ10〜20%の磁気抵抗効果(MR)が生ずることを確認した(非特許文献1及び2)。
【0005】
これらの公知技術においては、磁性体をパターニングすることによりポイントコンタクトを形成している。しかし、最新のリソグラフィ技術をもってしても、理想的なポイントコンタクトを再現性よく形成することは容易ではなく、また磁気抵抗効果のさらなる向上は実現されていなかった。
【特許文献1】特開2002−270922号公報
【非特許文献1】Y. Ohsawa, “Current-driven resistance change and magnetoresistance measurements in NiFe films with a nanoconstriction," IEEE Trans. Magn., vol. 42, No. 10, p2615(2006)
【非特許文献2】Y. Ohsawa, “In-situ magnetoresistance measurements of a nanoconstricted NiFe film with in-plane configuration, "IEEE Trans. Magn., vol. 41, No. 10, p2577(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い磁気抵抗効果が得られるポイントコンタクトを有する磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気メモリ、磁気ヘッド並びに磁気記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、絶縁性の下地と、前記下地の主面上に設けられた第1の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と離間して設けられた第2の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とに接してこれらの間に設けられた接続部であって、強磁性体からなる第1の結晶粒と強磁性体からなる第2の結晶粒とを有し、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間を流れる電流の経路のうちの最も狭い部分は、前記第1の結晶粒と第2の結晶粒との結晶粒界である、接続部と、を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、絶縁性の下地と、前記下地の主面上に設けられた第1の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と離間して設けられた第2の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とに接してこれらの間に設けられた接続部であって、強磁性体からなる複数の結晶粒を有し、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間を流れる電流の経路のうちの最も狭い部分は、結晶粒界である、接続部と、を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、絶縁性の下地と、前記下地の主面上に設けられた第1の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と離間して設けられた第2の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とに接してこれらの間に設けられた接続部であって、強磁性体からなる第1の結晶粒と強磁性体からなる第2の結晶粒とを有し、前記第1の強磁性体層の磁化の方向と前記第2の強磁性体層の磁化の方向とが異なる場合に、前記第1の結晶粒と第2の結晶粒との結晶粒界に磁壁が形成される、接続部と、を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子が提供される。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、絶縁性の下地と、前記下地の主面上に設けられた第1の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と離間して設けられた第2の強磁性体層と、前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とに接してこれらの間に設けられた接続部であって、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間の前記下地の前記主面上に強磁性体を堆積することより形成された複数の結晶粒を有し、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間を流れる電流の経路のうちの最も狭い部分は、結晶粒界である、接続部と、を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子が提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、絶縁性の下地の主面上に、第1の強磁性体層と第2の強磁性体層とを形成し、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間の前記下地の前記主面上に強磁性体を堆積して前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とを電気的に接続する接続部を形成することを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、絶縁性の下地の主面上に、強磁性体からなる第1の層を形成し、前記第1の層と、その下の前記下地の少なくとも一部と、を選択的に除去し、前記第1の層をさらに選択的除去することにより、第1の強磁性体層と第2の強磁性体層とに分離し、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間の前記主面上に強磁性体を堆積して前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とを電気的に接続する接続部を形成することを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一態様によれば、上記のいずれかの磁気抵抗効果素子を備え、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間で電流を流すことにより書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする磁気メモリが提供される。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、上記のいずれかの磁気抵抗効果素子を備え、磁気記録媒体に磁気的に記録された情報の読み取りを可能としたことを特徴とする磁気ヘッドが提供される。
【0015】
また、本発明の他の一態様によれば、上記の磁気ヘッドを備えたことを特徴とする磁気記録装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い磁気抵抗効果が得られるポイントコンタクトを有する磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気メモリ、磁気ヘッド並びに磁気記録装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子の平面構造を表す概念図である。 本実施形態の磁気抵抗効果素子10は、絶縁性の下地20と、その主面上に併設された第1の強磁性体層30と、第2の強磁性体層40と、これら第1及び第2の強磁性体層30、40に接してその間に設けられた接続部50と、を有する。
【0018】
第1及び第2の強磁性体層30、40と接続部50とは、いずれも強磁性体により形成され、第1の方向Xに沿って配置されている。第1の強磁性体層30と第2の強磁性体層40との間の間隔は、例えば、10〜数10nm程度とすることができる。接続部50は、第1の方向Xに対して垂直な第2の方向Yに沿った幅が最も狭い最狭部50Pを有する。そして、最狭部50Pは、第1の結晶粒50Aと第2の結晶粒50Bとが接触した結晶粒界とされている。この最狭部50Pが、ポイントコンタクトとして作用する。なお、図1においては、ふたつの結晶粒50A、50Bのみを表したが、接続部50は3つ以上の結晶粒を含んでもよい。
最狭部50Pの近傍の磁性体は、下地20の主面上で異なる向きに配向した結晶粒50A、50Bを接続させた構造を有する。そして、結晶粒50A、50Bの結晶粒界が、磁壁を閉じ込めるポイントコンタクトとされている。結晶粒50A、50Bのサイズは、通常の形成条件によれば、10〜20nmであり、成長の初期段階でも3〜5nm程度である。従って、このようなふたつの結晶粒50A、50Bが接続された最狭部50Pの粒界の幅は、十分に小さく、狭いポイントコンタクトが形成される。その結果として、高い磁気抵抗効果が得られる。
【0019】
また、結晶粒同士を接続することで、その粒界には、原子距離オーダーの原子転位・欠陥が導入される。これにより、例えば1nm以下の長さで交換スティフネスの低下した領域が導入され、磁壁はその部分に閉じ込められる。
【0020】
また、結晶粒という物理的サイズがある程度決まった単位同士を接続させることにより、最狭部(ポイントコンタクト)50P付近の磁性体の断面積を急峻且つ不連続的に変化させることができる。こうすることで磁壁の面積に比例する磁壁エネルギーは、最狭部(ポイントコンタクト)50Pから離れると急激に上昇し、最狭部50Pへの局在性が上がり、より狭い磁壁を形成しやすくなる。また、最狭部50Pに移動してきた磁壁は、最狭部50Pに閉じ込められやすくなるため、安定した抵抗値を得やすくなる。
【0021】
また、結晶粒界には、結晶粒内には含まれない不純物が偏析することが多い。つまり、最狭部50Pが結晶粒50A、50Bの粒内とは組成を異にすることで、さらに交換スティフネスを低下させることが可能となり、また例えば最狭部50Pに酸素(O)が局在すると、2p軌道の電子による電子分極が向上して磁気抵抗効果の向上につながる。
【0022】
本実施形態の磁気抵抗効果素子を形成する方法としては、後に詳述するように、第1及び第2の強磁性体層30、40の間に長さおよび幅を規制した間隙を形成し、この隙間に露出した下地20の主面上に強磁性体材料を堆積させて接続部50を形成する方法を挙げることができる。この場合、接続部50を堆積する初期成長過程において島状〜網目状構造が形成される。つまり、島状に形成された結晶核がそれぞれ結晶粒として成長し、隣接する結晶粒が接触した部分を最狭部50Pとすることができる。
【0023】
従来のトップダウン的な形成方法を用いた場合、結晶粒同士の接続を途中で断裂させず不連続な形状で形成することは極めて困難であり、また 最もくびれた部分と結晶粒界とを一致させるのは偶然に頼るしかない。これに対して、本実施形態によれば、結晶粒同士の接続部すなわち結晶粒界を最狭部50Pとすることが容易となる。多結晶体による最狭部50Pの結晶粒界の接合は、急峻な絞込みと磁壁を得るために理想的であるが、例えば特許文献1などには、このような結晶粒界の接合の開示はされていない。
【0024】
ここで、下地20の材料としては、例えば、アルミナやMgOなど各種の絶縁性の材料を用いることができる。
また、第1及び第2の強磁性体層30、40と接続部50の材料としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、または、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む合金、酸化物、窒化物あるいはホイスラー合金、あるいは鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)の少なくともいずれかの元素を含む化合物半導体または酸化物半導体であり、強磁性を有するものを挙げることができる。
外部磁界に感応すべき強磁性体層40には、NiFe(パーマロイ)などの保磁力が相対的に低い材料を用い、電子散乱を起こす接続部50の材料としては電子分極率が高いFe系をベースにしたFe、FeCo、FeCoNiホイスラー合金などの材料を用いることで、高磁界感度と高抵抗変化を得ることができる。
また、反強磁性体層60の材料としては、例えばPtMnやIrMnなどの各種の反強磁性体を用いることができる。なお、反強磁性体層60の代わりに、CoPtやCoPtCrなどの500Oe(エルステッド)以上の高い保磁力を有する硬磁性体からなる硬磁性体層を設けて強磁性体層30(あるいは40)の磁化を固着してもよい。
【0025】
以下、本実施形態の磁気抵抗効果素子について、実施例を参照しつつさらに詳細に説明する。
(第1の実施例)
図2は、本発明の第1の実施例の磁気抵抗効果素子を表す模式図であり、図2(a)はその斜視図、図2(b)はその主要部の平面図である。なお、図2以降の図については、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して、詳細な説明は適宜省略する。
本実施例の磁気抵抗効果素子10は、絶縁性の材料からなる下地20の主面上に併設された第1の強磁性体層30及び第2の強磁性体層40と、これらの間に設けられた接続部50と、を有する。下地20には、その両側から溝Gが設けられ、これら一対の溝Gに挟まれた幅狭の下地の上に接続部50が形成されている。なお、溝Gは、下地20をその厚み方向に貫通している必要はなく、第1の強磁性体層30などが設けられている主面よりも下方に窪んだ凹部であってもよい。接続部50は、複数の結晶粒が互いに接続された多結晶構造を有し、これらのうちで、第1の結晶粒50Aと第2の結晶粒50Bとが接触した結晶粒界が最狭部50Pを構成している。
さらに、第1の強磁性体層30の上には、反強磁性体層60が積層され、第1の強磁性体層30の磁化方向が所定の方向に固定されている。一方、第2の強磁性体層40の磁化は固定されておらず、その方向は外部から印加される磁界により可変とされている。また、第1の強磁性体層30と第2の強磁性体層40には、それぞれ電極70が接続されている。
【0026】
この磁気抵抗効果素子10は、第1の強磁性体層30を磁化固定層(ピン層)、第2の強磁性体層40を磁化自由層(フリー層)として高い磁気抵抗効果を生ずる。
【0027】
図3は、本実施例の磁気抵抗効果素子10における磁気抵抗効果を説明するための要部模式図である。
ピン層としての第1の強磁性体層30の磁化Mは、図3に表した方向に固定されている。一方、フリー層としての第2の強磁性体層40の磁化Mは、外部磁界により回転可能とされている。なお、図3(a)は外部磁界(Hsig)がゼロの状態を表す。
【0028】
接続部50に形成された最狭部50Pの両側の結晶粒50A及び50Bの、第1の方向Xに沿ったグレインサイズ(GL)は、例えば、それぞれ数nm〜10nm程度とすることができる。このようにすると、結晶粒50Aと結晶粒50Bのグレインサイズ(GL)の和(2GL)は、電子の平均自由行程MFPよりも大きくなる(2GL>MFP)。結晶粒50Aと第1の強磁性体層30との間、及び結晶粒50と第2の強磁性体層40との間には、結晶粒50Cが介在している。これら結晶粒50Cは、強磁性体層30及び40の磁化Mの方向とセンス電流とを伝達する。すなわち、結晶粒50Cのうちで、第1の強磁性体層30と最狭部50Pとの間にあるものは、第1の強磁性体層30の磁化Mの方向を最狭部(ポイントコンタクト)50Pに伝達する。一方、第2の強磁性体層30と最狭部50Pとの間に設けられた結晶粒50Cは、第2の強磁性体層40の磁化Mの方向を最狭部(ポイントコンタクト)50Pに伝達する。
【0029】
なお、図3(a)に表した状態においては、フリー層としての第2の強磁性体層40の磁化Mは、ピン層としての第1の強磁性体層30の磁化Mと略垂直である。そして、第1及び第2の強磁性体層30、40の磁化Mは、矢印50Mで表したように、それぞれ隣接する接続部50の結晶粒に伝達され、最狭部50Pに形成された磁壁において隣接している。つまり、図3(a)に表した状態において、最狭部50Pの磁壁は90度とされている。
【0030】
図3(b)は、第1の強磁性体層30の磁化Mに対して反対方向の外部磁界(Hsig)が印加された状態を表す。
第1の強磁性体層30の磁化Mに対して反対方向の外部磁界(Hsig)が印加されると、第2の強磁性体層40の磁化Mは、その流入方向に向けて回転する。すると、この磁化は、矢印50Mで表したように、第2の強磁性体層40に隣接した接続部50の結晶粒50Cに伝達され、最狭部(ポイントコンタクト)50Pには、これに応じた急峻な磁壁が形成される。すなわち、第1の強磁性体層30の磁化Mとは反対方向に近い磁化が、第2の強磁性体層40の側から最狭部50Pに伝達されるため、最狭部50Pにおいては約180度の磁壁が形成される。
【0031】
つまり、図3(a)に表したように外部磁界(Hsig)がゼロの状態では、最狭部50Pには約90度の磁壁(スピン回転)が形成されていたのに対して、外部磁界が印加されることにより約180度の磁壁が入り、最狭部50P内でのスピン回転量が上昇する。その結果として、最狭部50Pでの電子散乱が上昇し、抵抗値が増加する。
【0032】
この場合、磁性体における電子の平均自由行程(MFP)が、結晶粒50Aと結晶粒50Bのグレインサイズの和(2GL)よりも小さいことが望ましい。結晶粒50Aと結晶粒50Bのうちの一方から最狭部50Pに流入する電子の散乱は、最狭部50Pに形成された磁壁の状態に依存する。すなわち、最狭部50Pにおけるスピン回転角が0度(磁壁無し)の場合には散乱は生ずることがなく、一方、最狭部50Pにおけるスピン回転角が180度(180度磁壁に対応する)の時に電子の散乱は最大となる。
【0033】
ここで、磁気抵抗効果は、次式による抵抗変化率(MR比)として与えられる。

MR比=100×(Rhigh−Rlow)/Rlow ・・・(1)

(1)式から分かるように、抵抗変化率を高くするためには、磁壁が無い状態で発生する付加的な抵抗であるRlowをできるだけ小さくすることが効果的である。Rlowの抵抗に大きく影響を及ぼすのは、形状的に最も絞り込まれている最狭部50Pの前後である。最狭部50Pの前後において、電子が平均自由行程(MFP)距離を移動する間に結晶粒界などによる散乱を極力おさえれば、ほぼ単結晶で素子を形成したのと近い低抵抗値を示す。電子の平均自由行程(MFP)よりも、結晶粒50Aと結晶粒50Bのグレインサイズの和(2GL)を大きくする(2GL>MFP)ことにより、電子が平均自由行程の距離を進む間に結晶粒界による散乱を受けることを抑制できる。つまり、電子が結晶粒50A、50Bをそれぞれ通過する際に、平均自由行程の移動の間に結晶粒界による散乱を受けることが抑制され、Rlowを下げることが可能となる。強磁性体における電子の平均自由行程は数ナノメータ程度であるので、上述した条件は容易に満足させることができる。これは、一般的な金属磁性体の平均自由行程が銅(Cu)など非磁性体の良導体と平均自由行程と比べて短いことに起因する、独特の効果である。
【0034】
なお、接続部50を構成する結晶粒50Cの数を減らして第1の強磁性体層30から最狭部50Pまでの抵抗と、第2の強磁性体層40から最狭部50Pまでの抵抗をそれぞれ低下させると、Rlowをさらに下げることができる。
【0035】
次に、本実施例の磁気抵抗効果素子の製造方法について説明する。
図4〜図6は、本実施例の磁気抵抗効果素子の製造方法を表す工程斜視図である。
まず、図4(a)に表したように、アルミナからなる下地20の上に、パーマロイ(NiFe合金)などからなる強磁性体層100を約10nmの厚みに形成する。そして、図4(b)に表したように、第1の強磁性体層30となる所定位置にPtMnからなる反強磁性体層60を約20nmの厚みに形成する。しかる後に、これらNiFe層100とPtMn反強磁性体層60の表面をエッチングプロセスから保護するため、図4(c)に表したように、マスク200を形成する。マスク200としては、例えば、厚みが0.1μm程度のSiO膜を形成することができる。
次に、図4(d)に表したように、センス電流を供給するための電極70として、厚みが0.2μm程度の金(Au)を形成する。なお、電極70は、これ以降の工程においては、説明の便宜上、図示を省略する。
【0036】
次に、図5(a)に表したように、反強磁性体層60のエッジ(マスク200の上には、段差として現れる)に沿って、マスク200から下地20までをエッチングし、幅が10nm程度の溝を形成する。このエッチングには、例えば、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)300を用いることができる。図5(b)は、エッチング後の下地20の表面を分離して表した概念図である。左右両端から集束イオンビーム300で溝Gを形成し、後に接続部50を形成する部分のみをブリッジ20Bとして残す。
【0037】
次に、図5(c)に表したように、イオンミリングによりブリッジ20Bの上に残存している磁性体層100を除去し、ブリッジ20Bの下地を露出させる。この時、それ以外の強磁性体層100はマスク200で保護される。これにより、溝Gの左右で、第1の強磁性体層30と第2の強磁性体層40とが分離される。なお、ブリッジ20Bの上に残存した磁性体層100を除去する工程は、例えば、図6(a)に関して後述する接続部50の形成の前に、スパッタエッチングなどにより実施してもよい。
【0038】
次に、NiFeなどの強磁性体を堆積させ、下地20のブリッジ20Bの上に、接続部50を形成する。堆積の方法としては、例えば、図6(a)に表したように、イオンビーム500をNiFeなどのターゲット600に照射して、スパッタリングさせる方法を用いることができる。また、堆積する量は、例えば、平均膜厚で3nm程度とすることができる。
【0039】
ただし、本発明はこの方法には限定されず、例えば真空蒸着法などでもよい。スパッタリングや真空蒸着などで強磁性材料を堆積すると、まず結晶粒の核が形成され、それらが結晶粒として成長し、隣接する結晶粒どうしがやがて接触する。また、第1の強磁性体層30や第2の強磁性体層40の端面は、堆積した材料の結晶核が形成され結晶粒の成長が優先的に生ずることも考えられる。従って、これら強磁性体層30、40の間で結晶粒50A、50Bを成長させ、これらを接触させて最狭部50Pを形成することができる。
【0040】
また、図6(a)に表した堆積の工程は、電極70(図4(d)参照)にセンス電流を流して素子の抵抗値を測定しながら行うとよい。すなわち、第1の強磁性体層30と第2の強磁性体層40とが分離している間は、電極70、70間の抵抗は無限大に近い。そして、ブリッジ20Bの上にNiFeなどの強磁性材料が堆積し、接続部50が形成されて第1の強磁性体層30と第2の強磁性体層40とが接続されると、電極70、70間の抵抗が急激に低下する。電極70、70間の抵抗が急激に低下するタイミングで強磁性材料の堆積を停止すると、図1あるいは図3に関して前述したように、結晶粒50A、50Bが成長して接触し最狭部50Pが形成されたタイミングで堆積を停止することが可能となる。
【0041】
最後に、図示しない保護膜として、例えばSiOを約0.1μm程度の厚みに堆積し、素子の全体を保護することで接続部50の酸化や物理的変質を抑制することができる。このようにして、図6(b)に表したように、本実施例の磁気抵抗効果素子が完成する。
【0042】
また、この場合、もし強磁性材料を堆積しすぎたら、再び図5(c)に表したエッチング工程に戻り、ブリッジ20Bの上に形成された接続部を除去する。そして再び図6(a)に表した堆積工程を実行すればよい。この時、図5(c)に表したエッチングの工程と、図6(a)に表した堆積の工程と、を同一の真空チャンバで実行すると、大気にさらすことがなく清浄な表面を維持できる。
図7は、以上説明した方法により本発明者が試作した磁気抵抗効果素子において得られた特性を表すグラフ図である。
図7においては、電極70、70間に印加したバイアス電圧に対するMR比をプロットした。なお、試作した磁気抵抗効果素子のデバイス抵抗は、およそ15kΩであった。バイアス電圧が+/−150mV程度では、MR比は1%以下であるが、バイアス電圧を +/−600mV程度まで上げると100%あるいはそれ以上の大きなMR比が得られた。
【0043】
本発明者がトップダウン的な手法を用いて、おなじNiFeをMR膜としてポイントコンタクトを形成した非特許文献1の先行例においては、素子の抵抗は約18kΩであり、MR比は、10〜20%であった。
【0044】
これに対して、本実施例においては、素子の抵抗値は約15kΩとやや低いながらも、得られたMR比は、140%と飛躍的に大きかった。これは、図1及び図3に関して前述したように、ボトムアップ的な手法でポイントコンタクトを形成し、結晶粒界を最狭部50Pとした磁気抵抗効果素子が実現できたからであると考えられる。
【0045】
また、電極間で電気的に電気導通路が途切れているトンネリングMR素子(TMR)の場合には、バイアス電圧を高くするとMR比は低下する傾向が表れる。これに対して、本実施例の磁気抵抗効果素子の場合には、バイアス電圧が高くなるにつれてMR比が上昇する。つまり、本実施例の磁気抵抗効果素子は、TMRとは本質的に異なる物理現象に基づくことが確認できた。また、本実施例の磁気抵抗効果素子は、バイアス電圧を高くする(センス電流を大きくする)とMR比が上昇するため、高出力化にとても有利である。すなわち、高い出力を得るためにセンス電流を増やすと、MR比が上昇しさらに高い出力が得られる。
【0046】
なお、図6(a)に関して前述した接続部50の形成工程において、強磁性体材料のみでなく、不純物として非磁性元素を添加してもよい。例えば、SiOからなるマスク200の端部が強磁性体材料のスパッタ粒子やイオンビームなどでスパッタされると、その構成成分である酸素(O)が接続部50に添加される。あるいは、接続部50の形成の際に、酸素ガスを添加したり、酸素プラズマを照射と、やはり酸素が接続部50に添加される。このようにして添加した元素は、粒界に偏析する傾向が大きいので、最狭部50Pすなわちポイントコンタクトに局在化させることが可能である。ポイントコンタクトに酸素などの不純物元素を局在させると、電子分極率を向上させることことが可能となる。これは大きな抵抗変化率を得る観点で好ましい。
【0047】
なお、添加する不純物としては、酸素だけでなく、他の非磁性元素(例えば、反強磁性体層60に含有される白金(Pt)や、マスク200に含有されるシリコン(Si)や、電極70に含有される(Au)などであってもよい。これらの不純物は、ポイントコンタクト)における交換スティフネスを低下させて狭い磁壁を形成することで、高MR化に寄与する。例えば、金(Au)の場合、数at(原子)%以下であれば、その電子分極率の低下よりも交換スティフネスの低下の効果のほうが大きく働き、その結果として、より高いMRを得ることが可能である。
【0048】
一方、本実施例においては、接続部50のマイグレーション効果を利用することも可能である。
図8は、マイグレーション効果を説明するための模式図である。
本実施例の磁気抵抗効果素子の最狭部50Pは、極めて幅が狭いので、高いバイアス電圧を印加することにより接続部50を構成する原子が可逆的にマイグレーションすることが考えられる。可逆的なマイグレーションを発生させる、バイアスポイントにて磁気抵抗効果素子を動作させることで、最狭部50Pすなわちポイントコンタクトをさらに絞り込むことが可能となる。最狭部50を絞り込んでその断面積を小さくすると、磁壁幅を狭くしてより大きな抵抗変化を得ることができる。図8(a)は、マイグレーションを起こす前の状態を表し、図8(b)はマイグレーションさせた後の状態を表す。図8(b)において、マイグレーション前の状態(破線)と適正な高いバイアス電圧を印加してマイグレレーションさせた状態(実線)をそれぞれ表した。バイアスにより接続部50の最狭部50近傍の原子が両側に引き寄せられ、最狭部50の接触面積が小さくなっている。その結果として、無バイアス時(マイグレーション前)よりも狭い磁壁を形成でき、大きなMR比が期待できる。これは磁壁を散乱体にして利用する磁性デバイス独特の効果であり、非磁性体金属による物理的スイッチのように接触面積の増減を伴わないので高信頼性も得られる。
なお、図6(a)に関して前述した接続部50の形成プロセスを、高真空中の電子線ビーム蒸着により実施すると、イオンビームスパッタで形成する場合よりも、成長した粒子がより大きくなるためバイアスによるマイグレーション効果が大きくなると考えられる。
【0049】
図9は、本実施形態の磁気抵抗効果素子の変型例を表す模式図であり、図9(a)は、図1(b)に対応する断面図、図9(b)はその一部拡大図である。
【0050】
本変型例においては、第1の強磁性体層30と第2の強磁性体層40との間の下地20の主面が凹状に窪んでいる。つまり、ブリッジ20Bに対応する部分が下方に後退している。このような形状は、例えば、図5(c)に関して前述したエッチング工程において、磁性体層100をエッチングした後に、下地20の主面もエッチングすることにより形成できる。または、図6(a)に関して前述した接続部50の形成に先立って、ブリッジ20Bの表面をエッチングすることによっても形成できる。
【0051】
凹状に窪んだ下地20の上には、接続部50が形成され、その最狭部50Pには結晶粒界が設けられ磁壁がトラップされている。このように凹状の下地20の上に接続部50を形成すると、最狭部50Pの断面積を狭く形成しやすくなる。その結果として、より高いMRが得られやすい。
【0052】
凹状に窪んだ下地20の上に形成した接続部50には、プラスのチャージが発生し、磁壁が形成されやすくなる。
【0053】
すなわち一般に、磁化の方向に沿って曲がったところや断面積の狭くなったところに磁化は発生し、磁化が発生すると反磁界が発生するので、磁壁が形成される。したがって、本変型例のように凹状に窪んだ主面上に形成した接続部50は、平坦な主面上に形成した接続部50に比べて磁化が発生しやすく、その中でも最もくびれた最狭部50Pにおいて磁壁が最も発生しやすい。つまり、最も抵抗値が高くなる最狭部50Pに磁壁が発生しやすくなる。
【0054】
本実施形態においては、接続部50は多結晶体であるので、電流の経路の断面積が結晶粒界を通過する時に不連続的に変化する。そのため最狭部50P以外にも上記の理由で磁化が発生し磁壁の局在性を増加させることとなる。その結果として、熱擾乱による磁壁の移動を防ぎ磁気抵抗効果素子あるいは磁気メモリの信頼性が増す。
【0055】
薄膜成長初期段階においては、薄膜の密度がバルクに比べて低く、引っ張り応力になる傾向がある。最も狭い接合部位である最狭部50Pはストレスマイグレーションによる劣化(幅サイズなどの変化)を受けやすい。接続部50の下の下地20の主面が凹状に窪んでることでストレスが分散し、最狭部50Pへの局所的な応力が緩和され、ストレスマイグレーションによる磁気抵抗効果素子の劣化を抑制することができる。
【0056】
本変型例においては、接続部50の形成前の下地20のエッチング量を制御することでその主面の凹状の窪み量をコントロールでき、それは接続部50の応力の制御につながる。すなわち、電子伝導方向に見た原子間距離を制御することで、バルクでは得られにくいスピン分極度などの電子状態を局所的に生成することができる。その結果、磁界感受は低保磁力の強磁性体層40のバルク的な特長を維持しつつ、電子依存散乱に関わる接続部50における局所的な電子状態を変化させて大きな抵抗変化を得ることができ、一般には難しい高磁界感度・高抵抗変化の両立を得ることができる。つまり、強磁性体層40と接続部50の材料を使い分けることなく、同一の材料を用いて高磁界感度と高抵抗変化とを両立させることができ、磁気抵抗効果素子のコストダウンにもつながる。
【0057】
(第2の実施例)
図10は、本発明の第2の実施例の磁気抵抗効果素子を表す模式図であり、図10(a)はその斜視図、図10(b)はその主要部の平面図である。
本実施例においては、第2の強磁性体層40の上にも反強磁性体層80が積層され、その磁化Mが第1の強磁性体層30の磁化Mとは反対方向に固着されている。第1及び第2の強磁性体層30、40は、例えば厚み10nm程度のNiFeにより形成できる。また、反強磁性体層60と反強磁性体層80をネール温度の異なる反強磁性体により形成すると、磁場中アニールにより互いに反対方向の磁化を付与することが容易となる。具体的には、反強磁性体層60をPtMnにより形成し、反強磁性体層80をIrMnにより形成することができる。
また、図10(b)においては、磁化Mの向きは、第1の方向Xに対して平行及び反平行とされているが、第2の方向Yに対して平行及び反平行としてもよい。またさらに、反強磁性体層60、80のいずれか一方または両方の代わりに、例えば保持力が500Oe以上の硬磁性体からなる硬磁性体層を設けてもよい。
【0058】
このような磁気抵抗効果素子を用いると、スピンカレントにより磁壁の位置を移動させて情報を蓄積するメモリが可能となる。
図11は、本実施例の磁気抵抗効果素子の動作を説明するための模式図である。
第1及び第2の磁性体層30、40の磁化が反対方向に固着されているので、これら強磁性体層に接続された接続部50の磁化は、図11(a)に矢印50Mで表したように、最狭部50Pを境に、それぞれ強磁性体層30、40の磁化Mと同じ方向を向く傾向にある。そして、最狭部50Pには、180度の磁壁が存在する。
【0059】
このような磁気抵抗効果素子に電流を流すと、磁壁を移動させることができ、これに伴って抵抗が変化する。例えば、図11(b)において、幅が最も狭い最狭部50Pの位置I0に磁壁が存在する時に磁壁抵抗は最も高い(例えば、情報「0」)。そして、結晶粒50Aと50Cとの間に磁壁が移動した場合には、磁壁の接合幅が広くなるため(位置I1)抵抗が下がる。このような磁壁の移動は、電極70に供給する電流により行われ、電源が符号Aの方向の接続では、第2の磁性体層40から供給されるスピンカレントによりある臨界電流密度Jc以上で最狭部50Pにある磁壁は押されて移動する。そして、磁壁は、断面積が不連続に変化する粒界(結晶粒50Aと50Cとの間)の接合点(位置I1)にとどまる。これは、位置I1では断面積が不連続的に急激に広がるため電流密度が低下して磁壁へのスピンカレントによる圧力が低下するためである。その結果、位置I1での接合面積は大きくなっているため磁壁幅は広がり、低抵抗を示すようになる(例えば、情報「1」)。さらに電流を大きくして流し続けても、磁化が反強磁性体層60により固着されている位置I3にて磁壁は停止するため、位置I3の低抵抗状態(例えば、情報「1」)は保持される。
【0060】
一方、電源の接続を符号Bのように極性を逆にし、電流密度をJcよりもあげることで位置I1にあった磁壁は位置I0へ戻り(高抵抗、例えば情報「0」)、さらに電圧を加えると結晶粒50Bと50Cとの間の位置I2(低抵抗、例えば情報「1」))へ移動する。さらに電流を大きくして流し続けても磁化が反強磁性体層80により固着さられている位置I4にて磁壁は停止するため、位置I4の低抵抗状態(例えば、情報「1」)は保持される。
【0061】
なお、接合面積の不連続な変化は、マクロな電流路(第1の強磁性体層30と第2の強磁性層40との間の直線L)に対して垂直に変化する必要はなく、位置I1に例示したように斜めでもよい。たとえば、位置I0、位置I2なども、位置I1のように斜めに入っても問題はなく、静磁気エネルギー的には安定となるため情報の安定性という意味では望ましい。
【0062】
本実施例においては、このように電流の極性を変えることで、磁壁の位置を移動させて記録を行うことができる。臨界電流密度Jc以下のセンス電流を流すことによって、その抵抗値を読み取り、情報「1」または「0」として取得できる。本実施例では、接続部50が複数の結晶粒が接続された構造を有し、これら結晶粒の粒界では必然的に接続面積の不連続に変化が生ずる。リソグラフィーなどのトップダウン的な手法を用いて形成した場合には、加工エッジの形状はなだらかとなり、また結晶粒界と磁壁位置を合致させることは極めて偶然となる。なお、磁壁エネルギーは、断面積が極小となる部分(結晶粒の接続部分のくびれた部分)において極小になるため、磁壁はこの部分にトラップされる傾向が強い。そのため、本実施例の磁気抵抗効果素子は、磁性粒子というボトムアップ的構造により結晶粒同士の接続部のくびれを利用しているので、粒子サイズスケールで情報を移動させることができ、記録(情報の書き換え)も早くできる。
【0063】
電子の平均自由行程(MFP)を、結晶粒50Aと結晶粒50Bのグレインサイズの和(2GL)よりも小さくする(2GL>MFP)ことで、ベースとなる低抵抗状態に不必要な上昇分を加えることがないため、大きな抵抗変化を有する素子を提供できる。
【0064】
(第3の実施例)
次に、本発明の第3の実施例として、メモリアレイについて説明する。
図12は、磁気抵抗効果素子をアレイ状に並べたメモリを表す模式図である。
互いに磁化Mの方向を逆向きにした一対の強磁性体層30、40の組み合わせがアレイ状に配列されている。強磁性体層30、40の間には、接続部50が設けられている。メモリのように、多数の磁気抵抗効果素子を形成する場合、電子線描画などの方法でポイントコンタクトをひとつずつ形成するのは非効率的であるが、本実施例によれば、一対の強磁性体層30、40の組み合わせをアレイ状に形成し、その後、図6(a)に関して前述したような方法で強磁性材料を堆積することにより、ボトムアップ的な方法で最狭部50Pを有する接続部50を全ての磁気抵抗効果素子について同時に形成することができる。つまり、製造に要する時間やコストと点でも極めて有利である。
【0065】
図13及び図14は、本実施例のメモリアレイの製造方法を表す工程図である。ここで、図13(a)及び(c)と図14(a)及び(c)は平面図であり、図13(b)及び(d)と図14(b)及び(d)はそれぞれ図13(a)のA−A線断面に対応する断面図である。
【0066】
まず、図13(a)及び(b)に表したように、アルミナなどの下地20の主面上に、パーマロイ(NiFe合金)などからなる強磁性体層100を厚み10nm程度形成する。そして、第1の強磁性体層30となる所定の位置に厚さ20nm程度のPtMnなどの反強磁性体層60を形成する。
次に、図13(c)及び(d)に表したように、第2の強磁性体層40となる位置に厚さ20nm程度のIrMnなどの反強磁性体層80を形成する。このように、反強磁性体層60、80にネール温度が異なる反強磁性体を用いると、反平行に磁化を固着することが容易となる。すなわち、磁場中アニールの際に、摂氏240度で磁界中熱処理をしながら温度を下げ、第1の強磁性体層30(PtMn側)のNiFeの磁化Mを一方向に磁化固着を行い、さらに温度を下げて摂氏120度程度で印加する磁界方向を逆転させて第2の強磁性体層40の側(IrMn側)のNiFeの磁化Mを第1の強磁性体層30とは反平行状態にする。ここで、第1の強磁性体層30及び第2の強磁性体層40のサイズは、例えば、幅X=100nm、長さY=500nm、隣接する第1の強磁性体層30同士の間隔S=500nm、第1及び第2の強磁性体層30、40の間隔G=10nm程度とすることができる。
【0067】
次に、図14(a)及び(b)に表したように、反強磁性体層60、80の周囲の強磁性体層100を除去し、さらに下地20をエッチングして溝Gを形成することにより、ブリッジ20Bを形成する。ブリッジ20Bの幅は、例えば、30nm程度とすることができる。
【0068】
しかる後に、図6(a)に関して前述したように、強磁性体を堆積して接続部50を形成する。たとえば、NiFeを平均膜厚3nmにて高真空中の電子線ビーム蒸着で堆積する。そのときの基板温度は、摂氏350度とすることができる。
【0069】
図6(c)及び(d)に表したるように、強磁性体は、ブリッジ20B以外の部分でも成長するが、隣接する第1の強磁性体層30の間隔を例えば500nmと大きくしているので、これらの間で強磁性体により接続されることはない。
【0070】
また、接続部50を形成するプロセスにおいて、ブリッジ20B以外をマスクで隠すようにすれば、ブリッジ20B以外の部分でのショートを抑制できる。従って、磁気抵抗効果素子の間隔を縮め、高密度化を図ることが可能となる。また、必要に応じ、図5(c)及び図6(a)のプロセスを繰り返すことにより、不要な強磁性体の堆積物を消去することも可能となる。
【0071】
(第4の実施例)
図15は、本発明の第4の実施例の磁気抵抗効果素子を表す模式図である。
本実施例においても、第1の強磁性体層30の磁化Mと第2の強磁性体層40の磁化Mとは反対方向に固着されている。そして、これら強磁性体層30、40の間に形成された接続部50は、結晶粒50Bと結晶粒50Aと結晶粒50Bとがこの順に接続した部分を有する。これら結晶粒の間には、それぞれ最狭部50Pが形成されている。つまり、本実施例の磁気抵抗効果素子は、2つの最狭部50Pすなわちポイントコンタクトを有する。これら2つの最狭部50Pの幅(断面積)はほぼ同一であるが、必ずしも厳密に同一である必要はない。これら最狭部50Pの断面積が、いずれも、接続部50の他の部分の断面積よりもある程度小さければよい。
【0072】
なお、これらふたつの最狭部50Pの間には、1つの結晶粒50Aの代わりに、複数の結晶粒が設けられていてもよい。また、それぞれの最狭部50Pの前後での電流経路の断面積が不連続となることで、不連続となる位置への磁壁の局在性が向上し、断面積が大きい位置に磁壁が保持されていたものが、熱擾乱による長期的な磁化の変化(磁壁位置が長期的に最も磁壁エネルギーの低い最狭位置に移動すること)に対して磁壁をトラップして変化を抑制し、熱耐性・信頼性が向上する。
【0073】
第2実施例と同様に、電源の極性が符号Aで表される場合には、位置I1と位置I3が低抵抗を示す磁壁の位置である。また、電源の極性が符号Bで表される場合には、位置I2と位置I4が低抵抗(例えば、情報「1」)を示す磁壁位置である。そして、本実施例では最狭部50Pが2箇所にあるので、これらの位置I01、I02に磁壁がある状態が、高抵抗(例えば、情報「0」)に対応する。これら位置I01、I02に磁壁がある時の抵抗は、これら最狭部50Pの断面積に依存し、同じような断面積であれば、同じような抵抗を示す。スピンカレントによって磁壁が位置I2や位置I3に移動した場合も、位置I01や位置I02に磁壁がある状態との差は明確にあり、情報「1」、「0」を判断することができる。
なお、図15には最狭部50Pがふたつの場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、最狭部50Pが3つ以上、すなわち、結晶粒50A、50Bが4つ以上接続した接続部50を有する磁気抵抗効果素子も本発明の範囲に包含される。
【0074】
(第5の実施例)
次に、本発明の第5の実施例として、本発明の磁気抵抗効果素子10を搭載した磁気再生装置について説明する。すなわち、図1〜図15に関して説明した本発明の磁気抵抗効果素子10は、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込まれ、磁気記録再生装置に搭載することができる。
【0075】
図16は、このような磁気記録再生装置の概略構成を例示する要部斜視図である。すなわち、本発明の磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、記録用媒体ディスク180は、スピンドル152に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本発明の磁気記録再生装置150は、複数の媒体ディスク180を備えたものとしてもよい。
【0076】
媒体ディスク180に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ153は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダ153は、例えば、前述したいずれかの実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子10をその先端付近に搭載している。
【0077】
媒体ディスク180が回転すると、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)は媒体ディスク180の表面から所定の浮上量をもって保持される。あるいはスライダが媒体ディスク180と接触するいわゆる「接触走行型」であってもよい。
【0078】
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
【0079】
アクチュエータアーム155は、スピンドル157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。
【0080】
図17は、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。すなわち、磁気ヘッドアッセンブリ160は、例えば駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155を有し、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。
【0081】
サスペンション154の先端には、図1〜図15に関して前述したいずれかの磁気抵抗効果素子10を具備するヘッドスライダ153が取り付けられている。サスペンション154は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164を有し、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165は磁気ヘッドアッセンブリ160の電極パッドである。
【0082】
本発明によれば、図1〜図15に関して前述したような本発明の磁気抵抗効果素子10を具備することにより、従来よりも高い記録密度で媒体ディスク180に磁気的に記録された情報を確実に読みとることが可能となる。
【0083】
(第6の実施例)
次に、本発明の第6の実施例として、本発明の磁気抵抗効果素子10を搭載した磁気メモリについて説明する。すなわち、図1〜図15に関して説明した本発明の磁気抵抗効果素子10を用いて、例えば、メモリセルがマトリクス状に配置されたランダムアクセス磁気メモリ(magnetic random access memory)などの磁気メモリを実現できる。
【0084】
図18は、本実施例の磁気メモリのマトリクス構成を例示する概念図である。
【0085】
すなわち、同図は、メモリセルをアレイ状に配置した場合の実施形態の回路構成を示す。アレイ中の1ビットを選択するために、列デコーダ350、行デコーダ351が備えられており、ビット線334とワード線332によりスイッチングトランジスタ330がオンになり一意に選択され、センスアンプ352で検出することにより磁気抵抗効果素子10を構成する磁気記録層に記録されたビット情報を読み出すことができる。
【0086】
ビット情報を書き込むときは、特定の書込みワード線323とビット線322に書き込み電流を流して発生する磁場により行われる。
【0087】
図19は、本実施例の磁気メモリのマトリクス構成のもうひとつの具体例を表す概念図である。すなわち、本具体例の場合、マトリクス状に配線されたビット線322とワード線334とが、それぞれデコーダ360、361により選択されて、アレイ中の特定のメモリセルが選択される。それぞれのメモリセルは、磁気抵抗効果素子10とダイオードDとが直列に接続された構造を有する。ここで、ダイオードDは、選択された磁気抵抗効果素子10以外のメモリセルにおいてセンス電流が迂回することを防止する役割を有する。
【0088】
書き込みは、特定のビット線322と書き込みワード線323とにそれぞれに書き込み電流を流して発生する磁場により行われる。
【0089】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、上述した各具体例に限定されるものではない。例えば、図1〜図19に関して前述した各具体例のいずれか2つあるいはそれ以上を技術的に可能な範囲で組み合わせたのも、本発明の範囲に包含される。
すなわち、本発明は各具体例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能であり、これらすべては本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子の平面構造を表す概念図である。
【図2】本発明の第1の実施例の磁気抵抗効果素子を表す模式図である。
【図3】本実施例の磁気抵抗効果素子10における磁気抵抗効果を説明するための要部模式図である。
【図4】本実施例の磁気抵抗効果素子の製造方法を表す工程斜視図である。
【図5】本実施例の磁気抵抗効果素子の製造方法を表す工程斜視図である。
【図6】本実施例の磁気抵抗効果素子の製造方法を表す工程斜視図である。
【図7】本発明者が試作した磁気抵抗効果素子において得られた特性を表すグラフ図である。
【図8】マイグレーション効果を説明するための模式図である。
【図9】本実施形態の磁気抵抗効果素子の変型例を表す模式図である。
【図10】本発明の第2の実施例の磁気抵抗効果素子を表す模式図であり、(a)はその斜視図、(b)はその主要部の平面図である。
【図11】本実施例の磁気抵抗効果素子の動作を説明するための模式図である。
【図12】磁気抵抗効果素子をアレイ状に並べたメモリを表す模式図である。
【図13】本実施例のメモリアレイの製造方法を表す工程図である。
【図14】本実施例のメモリアレイの製造方法を表す工程図である。
【図15】本発明の第4の実施例の磁気抵抗効果素子を表す模式図である。
【図16】磁気記録再生装置の概略構成を例示する要部斜視図である。
【図17】アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。
【図18】本実施例の磁気メモリのマトリクス構成を例示する概念図である。
【図19】本実施例の磁気メモリのマトリクス構成のもうひとつの具体例を表す概念図である。
【符号の説明】
【0091】
10 磁気抵抗効果素子、 20 下地、 20B ブリッジ、 30 第1の強磁性体層、 40 第2の強磁性体層、 50 接続部、 50A、50B、50C 結晶粒、 50M 磁化、 50P 最狭部、 60 反強磁性体層、 70 電極、 80 反強磁性体層、100 強磁性体層、150 磁気記録再生装置、152 スピンドル、153 ヘッドスライダ、154 サスペンション、155 アクチュエータアーム、156 ボイスコイルモータ、157 スピンドル、160 磁気ヘッドアッセンブリ、164 リード線、180 媒体ディスク、200 マスク、300 集束イオンビーム、322 ビット線、323 ワード線、330 スイッチングトランジスタ、332 ワード線、334 ビット線、334 ワード線、350 列デコーダ、351 行デコーダ、352 センスアンプ、360 デコーダ、500 イオンビーム、600 ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の下地と、
前記下地の主面上に設けられた第1の強磁性体層と、
前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と離間して設けられた第2の強磁性体層と、
前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とに接してこれらの間に設けられた接続部であって、強磁性体からなる第1の結晶粒と強磁性体からなる第2の結晶粒とを有し、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間を流れる電流の経路のうちの最も狭い部分は、前記第1の結晶粒と第2の結晶粒との結晶粒界である、接続部と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
絶縁性の下地と、
前記下地の主面上に設けられた第1の強磁性体層と、
前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と離間して設けられた第2の強磁性体層と、
前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とに接してこれらの間に設けられた接続部であって、強磁性体からなる複数の結晶粒を有し、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間を流れる電流の経路のうちの最も狭い部分は、結晶粒界である、接続部と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
絶縁性の下地と、
前記下地の主面上に設けられた第1の強磁性体層と、
前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と離間して設けられた第2の強磁性体層と、
前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とに接してこれらの間に設けられた接続部であって、強磁性体からなる第1の結晶粒と強磁性体からなる第2の結晶粒とを有し、前記第1の強磁性体層の磁化の方向と前記第2の強磁性体層の磁化の方向とが異なる場合に、前記第1の結晶粒と第2の結晶粒との結晶粒界に磁壁が形成される、接続部と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
絶縁性の下地と、
前記下地の主面上に設けられた第1の強磁性体層と、
前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と離間して設けられた第2の強磁性体層と、
前記下地の前記主面上において前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とに接してこれらの間に設けられた接続部であって、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間の前記下地の前記主面上に強磁性体を堆積することより形成された複数の結晶粒を有し、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間を流れる電流の経路のうちの最も狭い部分は、結晶粒界である、接続部と、
を備えたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記下地は、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間に設けられた溝と、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間において前記溝に隣接したブリッジと、を有し、
前記接続部は、前記ブリッジの上に設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記結晶粒界は、非磁性元素を含有してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
前記結晶粒界を通過する電流の経路の断面積は、前記結晶粒界の前後で不連続的に変化してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
前記第1の強磁性層に積層され、前記第1の強磁性体層の磁化を固着する第1の反強磁性体層または第1の硬磁性体層をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項9】
前記第2の強磁性層に積層され、前記第2の強磁性体層の磁化を前記第1の強磁性体層の前記磁化とは反対の方向に固着する第2の反強磁性体層または第2の硬磁性体層をさらに備えたことを特徴とする請求項8記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項10】
絶縁性の下地の主面上に、第1の強磁性体層と第2の強磁性体層とを形成し、
前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間の前記下地の前記主面上に強磁性体を堆積して前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とを電気的に接続する接続部を形成することを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項11】
前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間の前記下地に溝を形成し、
前記接続部を前記溝に隣接した前記主面上に形成することを特徴とする請求項10記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項12】
絶縁性の下地の主面上に、強磁性体からなる第1の層を形成し、
前記第1の層と、その下の前記下地の少なくとも一部と、を選択的に除去し、
前記第1の層をさらに選択的除去することにより、第1の強磁性体層と第2の強磁性体層とに分離し、
前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間の前記主面上に強磁性体を堆積して前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層とを電気的に接続する接続部を形成することを特徴とする磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1の強磁性体層と第2の強磁性体層とに分離する工程と、前記接続部を形成する工程と、を減圧雰囲気を維持しつつ実行することを特徴とする請求項12記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項14】
前記第1の強磁性体層と第2の強磁性体層とに分離する工程と、前記接続部を形成する工程と、を繰り返すことを特徴とする請求項12または13に記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子を備え、前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間で電流を流すことにより書き込み及び読み出しの少なくともいずれかを行うことを特徴とする磁気メモリ。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか1つ記載の磁気抵抗効果素子を備え、磁気記録媒体に磁気的に記録された情報の読み取りを可能としたことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項17】
請求項16記載の磁気ヘッドを備えたことを特徴とする磁気記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−166507(P2008−166507A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354696(P2006−354696)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度 文部科学省、科学技術試験研究「超小型大容量ハードディスクの開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】