説明

薄膜のパターニング方法、デバイス及びその製造方法

【課題】本発明は、表面エネルギーの低い薄膜に、ダメージなくパターニングを行う薄膜のパターニング方法、デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】薄膜20上に、蒸着膜30を積層する工程と、
前記蒸着膜上に、フォトレジスト層40を積層する工程と、
フォトリソグラフィにより、前記フォトレジスト層をパターニングし、パターニングされた前記フォトレジスト層を用いて前記蒸着膜をエッチングしてパターニングする工程と、
パターニングされた前記蒸着膜をパターンマスクとして、前記薄膜をエッチングしてパターニングを行う工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜のパターニング方法、デバイス及びその製造方法に関し、特に、フォトレジストを用いて薄膜のパターニングを行う薄膜のパターニング方法、デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薄膜層を高精細にパターニングする方法として、フォトリソグラフィ法が知られている。フォトリソグラフィ工程を実行するためには、薄膜層上にスピンコート、ダイコート、各種印刷法等を用いてフォトレジスト剤を塗布し、レジスト層を形成する必要がある。しかし、薄膜層の表面エネルギーが低いときには、フォトレジスト剤を塗布する際、薄膜層の表面の撥水性が高いため、フォトレジスト層がはじかれてしまうという問題があった。つまり、表面エネルギーの低い、濡れ性が悪い薄膜表面に、一般的なフォトレジスト剤を塗布することが困難であり、均一に所望の膜厚でフォトレジスト層の形成ができない。そのため、一般的なフォトリソグラフィ法の工程では、低表面エネルギー薄膜のパターニングが困難であった。
【0003】
そこで、低表面エネルギー薄膜の表面を、酸素プラズマ等で物理的に改質することで、表面エネルギーを大きくし、濡れ性を良くして一般的なフォトリソグラフィ法を適用する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、配線膜上に、撥水性樹脂膜(低表面エネルギー薄膜)として、シリル化ポリメチルシルセスキオキサン樹脂を塗布し、撥水性樹脂膜の表面に平行平板エッチング装置を用いて酸素プラズマ処理を行い、撥水性樹脂膜の表面をレジスト塗布可能な状態としてから、通常のリソグラフィ工程により、レジスト塗布、露光、現像の後、レジスト膜をエッチングマスクとして、配線層と撥水性樹脂膜を同時にパターニングして配線を形成する技術が開示されている。
【0004】
また、バーコード法やダイコート、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷法等により、フォトレジスト剤を低表面エネルギー薄膜上に塗布したり、或いはこれらの印刷法を用いて低表面エネルギー薄膜をパターニングしたりすることも可能な技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
更に、波長157〔nm〕のFレーザー光を、窒素雰囲気中で薄膜層表面に集光照射することによってアブレーションを誘起し、薄膜層を微細にエッチングし、パターニングする方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−21433号公報
【特許文献2】特開2005−126608号公報
【特許文献3】特開2007−72427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、酸素ブラズマにより薄膜表面改質を行うと、薄膜層表面の構造を破壊し、膜自体にダメージを与えてしまい、薄膜の耐圧等を含む電気的特性を著しく悪化させてしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の構成では、低表面エネルギー薄膜のパターニングを行うために、粘度の高い特殊なフォトレジスト剤やインキ剤等が必要となり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0009】
更に、特許文献3に記載の構成では、レーザー光を集光照射し、縮小投影露光を用いるため、広範囲のパターニングには不向きであるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、表面エネルギーの低い薄膜に、ダメージなくパターニングを行う薄膜のパターニング方法、デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る薄膜のパターニング方法は、
前記薄膜上に、蒸着膜を積層する工程と、
前記蒸着膜上に、フォトレジスト層を積層する工程と、
フォトリソグラフィにより、前記フォトレジスト層をパターニングし、パターニングされた前記フォトレジスト層を用いて前記蒸着膜をエッチングしてパターニングする工程と、
パターニングされた前記蒸着膜をパターンマスクとして、前記薄膜をエッチングしてパターニングを行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
これにより、薄膜上に直接的にフォトレジスト層を形成することが困難な場合であっても、蒸着膜を一旦薄膜上に積層することにより、蒸着膜を介して薄膜上にフォトレジスト層を積層することが可能となり、薄膜にダメージを与えることなく、フォトレジストを用いてパターニングを行うことができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に係る薄膜のパターニング方法において、
前記薄膜は、表面エネルギーが30mN/m以下である低表面エネルギー薄膜であることを特徴とする。
【0014】
これにより、フォトレジスト層の直接的積層が困難な、撥水性の高い低表面エネルギーの薄膜に対して、フォトレジストを用いて薄膜にダメージを与えることなくパターニングを行うことができる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明に係る薄膜のパターニング方法において、
前記低表面エネルギー薄膜は、フッ素が添加されたポリイミド、フッ素が添加されたポリパラキシレン、ポリスチレン、サイトップ(登録商標)、テフロン(登録商標)、テフロン(登録商標)AF、フルオロポリアリールエーテル、ポリメチルシルセスキオキサン、機能性高分子、π共役系高分子、導電性高分子、π共役系分子、電荷移動錯体、液晶性分子及び自己組織化単分子膜のいずれかを含むことを特徴とする。
【0016】
これにより、デバイス製造工程で頻繁に利用され、かつ濡れ性が悪くフォトレジスト層の直接的な積層が困難な低表面エネルギー薄膜に対して、薄膜の特性を変質させることなくパターニングを行うことができる。
【0017】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る薄膜のパターニング方法において、
前記蒸着膜は、金属、金属酸化物、π共役系分子、電荷移動錯体、液晶性分子、蒸着重合分子及びポリパラキシレンのいずれかを含むことを特徴とする。
【0018】
これにより、用途に応じて、種々の蒸着膜を用いて薄膜のパターニングを行うことができる。
【0019】
第5の発明に係るデバイスは、第1〜4のいずれかの発明に係る薄膜のパターニング方法により形成された薄膜パターンを含むことを特徴とする。
【0020】
これにより、薄膜のパターニング方法を利用して、用途に応じた種々のデバイスを構成することができる。
【0021】
第6の発明に係るデバイスの製造方法は、第1〜4のいずれかの発明に係る薄膜のパターニング方法を用いて、デバイスの薄膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0022】
これにより、薄膜のパターニングが必要なデバイスの製造プロセスにおいて、薄膜の材料の種類に関わらずデバイスの薄膜を形成することができ、用途に応じた種々のデバイスを製造することができる。
【0023】
第7の発明は、第6の発明に係るデバイスの製造方法において、
前記デバイスは、薄膜トランジスタであって、
前記デバイスの薄膜は、ゲート電極の周囲を覆うゲート絶縁膜であることを特徴とする。
【0024】
これにより、薄膜トランジスタの製造を、濡れ性の悪い薄膜を用いた場合であっても、薄膜にダメージを与えることなく行うことができ、良好な特性を有する薄膜トランジスタを製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、濡れ性の悪い薄膜も含めて、薄膜にダメージを与えることなくパターニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る薄膜のパターニング方法の前半の工程の一例を示す図である。図1(a)は、薄膜形成工程の一例を示した図である。図1(b)は、蒸着膜形成工程の一例を示した図である。図1(c)は、フォトレジスト層形成工程の一例を示した図である。図1(d)は、フォトレジスト層パターニング工程を示した図である。
【図2】本実施形態に係る薄膜のパターニング方法の後半の工程の一例を示す図である。図2(a)は、蒸着膜エッチング工程の一例を示した図である。図2(b)は、レジスト層剥離工程の一例を示した図である。図2(c)は、薄膜エッチング工程の一例を示した図である。図2(d)は、蒸着膜剥離工程の一例を示した図である。
【図3】表面張力と接触角の関係を示した図である。
【図4】接触角θと濡れ性の関係を示した図である。図4(a)は、濡れ性の高い状態を示した図である。図4(b)は、濡れ性の低い状態を示した図である。
【図5】接触角θの測定方法の一例について示した図である。
【図6】実施例2に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を示した図である。
【図7】実施例2に係る有機トランジスタの伝達特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る薄膜のパターニング方法の前半の部分工程の一例を示す図である。図1においては、薄膜形成工程から、レジストパターニング工程までが示されている。
【0029】
図1(a)は、薄膜形成工程の一例を示した図である。図1(a)において、基板10の上面全体に、薄膜20が積層形成されている。このように、薄膜形成工程においては、基板10の上に、薄膜20が積層形成される。
【0030】
基板10は、様々な材料の基板10が適用され得る。例えば、基板10には、ガラス、アルミナ焼結体、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンスルフィド膜、ポリパラキシレン膜等の各種絶縁性プラスチック等が用いられてもよい。但し、基板10は、用途に応じて種々の材料の基板10を適用することができ、これらの材料に限られるわけではない。また、これらの材料の2種類以上を使用してもよい。
【0031】
薄膜20は、種々の材料の薄膜20が適用され得るが、例えば、表面エネルギーの低い薄膜20層が適用されてもよい。ここで、表面エネルギーについて説明すると、固体の表面エネルギーは、その表面張力と実質的に同義である。表面エネルギーの高い固体表面は、一般に液体に濡れ易く(親水性)、表面エネルギーの低い固体表面は、液体に濡れ難い(疎水性)。例えば、表面エネルギーが30〔mN/m〕以下の低い表面は疎水性の表面であり、表面エネルギーが20〔mN/m〕以下の表面では、より疎水性が高い揮発性の表面である。
【0032】
表面エネルギーの低い薄膜20としては、例えば、フッ素が添加されたポリイミド、フッ素が添加されたポリパラキシレン、ポリスチレン、サイトップ(登録商標)、テフロン(登録商標、ポリテトラフルオロエチレン)、テフロン(登録商標)AF(アモルファス フルオロポリマー)、フルオロポリアリールエーテル、ポリメチルシルセスキオキサン、機能性高分子、π共役系分子、電荷移動錯体、液晶性分子、自己組織化単分子膜等が挙げられる。但し、薄膜20の材料は、これらに限られるわけではなく、また、これらの材料を2種類以上使用してもよい。
【0033】
基板10上に薄膜20を形成する方法としては、スピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、ダイコート法等の各種印刷法や、抵抗加熱真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタ蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposit)法、蒸着重合法等の公知の成膜方法が適用されてよい。
【0034】
また、薄膜20の厚さは、用途に応じて任意に定められてよく、例えば、数100〔nm〕〜数〔μm〕程度の厚さであってもよい。
【0035】
図1(b)は、蒸着膜形成工程の一例を示した図である。図1(b)において、基板10上に積層形成された薄膜20上の全面に、更に蒸着膜30が積層形成された状態が示されている。このように、蒸着膜形成工程においては、薄膜20の上に、蒸着膜30が積層形成される。
【0036】
蒸着膜30は、薄膜20が低表面エネルギーを有し、濡れ性が良好でない場合に、薄膜20の上にフォトレジスト層を直接形成しようとしても、疎水性のためうまく形成できないことから、一旦薄膜20の全体を覆い、フォトレジスト層を形成可能な状態とするために形成される膜である。よって、蒸着膜30は、その上にフォトレジスト層が形成可能な材料を選択して形成される。
【0037】
また、蒸着膜30は、後の工程で、薄膜20に対するパターンマスクとして利用されることから、特定のエッチング液に対して、パターンマスクとしての耐性を有する材料が選択される。なお、蒸着膜30がパターンマスクとして機能する内容の詳細は、後述する。
【0038】
蒸着膜30は、具体的には、例えば、アルミニウム、金、白金、クロム、モリブデン、パラジウム、インジウム等の金属や錫酸化物、酸化インジウム及びインジウム・錫酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)等の金属類やπ共役系分子、電荷移動錯体、液晶性分子、蒸着重合分子、ポリパラキシレン等が挙げられる。但し、蒸着膜30の材料は、これらに限られるわけではなく、種々の材料を用いてよい。また、蒸着膜30は、2種類以上の材料を使用してもよい。
【0039】
蒸着膜30を形成する方法としては、抵抗加熱真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、CVD法、蒸着重合法等が挙げられる。これらの蒸着法により、蒸着膜30の材料が蒸発し、薄膜20の上に確実に蒸着膜30が堆積形成される。蒸着法は、材料を蒸発させ、薄膜20上に沈着させるので、薄膜20の材料の如何に関わらず、確実に蒸着膜30を積層形成することができる。
【0040】
なお、蒸着膜30の形成に用いる蒸着法は、真空雰囲気下で蒸着が行われる真空蒸着法が適用されてもよい。これにより、蒸着膜30に不純物質が含まれ難くなり、また、薄膜20へのダメージを少なくすることができる。また、蒸着法は、蒸発系の蒸着法であってもよく、用途に応じて、適宜適切な蒸着法で蒸着膜30を形成することができる。
【0041】
本工程を行うことにより、薄膜20の表面エネルギーが低く撥水性を有していても、蒸着膜30の表面エネルギーが高ければ、蒸着膜30上にフォトレジスト層を形成することが可能な状態とすることができる。
【0042】
図1(c)は、フォトレジスト層形成工程の一例を示した図である。図1(c)において、蒸着膜30の上に、フォトレジスト層40が全面的に形成された状態が示されている。このように、フォトレジスト層形成工程においては、蒸着膜30の上に、フォトレジスト層40が積層形成される。
【0043】
フォトレジスト層40は、特に特殊なレジストが用いられる必要はなく、一般的なレジストを用いて形成されてよい。つまり、レジストは、光により反応する化学物質を溶媒に溶かした一般的なものを利用してよい。薄膜20の表面エネルギーが低いときには、薄膜20上に直接フォトレジスト層40を形成しようとしても、疎水性が高くフォトレジスト層40を十分に形成することができないが、蒸着膜30を介することにより、一般的なレジストを利用してフォトレジスト層40を形成することができる。また、レジストのポジ型、ネガ型等についても、用途に応じて適切な種類のレジストを利用してよい。
【0044】
また、フォトレジスト層40の形成は、スピンコート法や吹き付けにより、蒸着膜30上にレジストが塗布されることにより行われてよい。また、フォトレジスト層40の厚さも、用途に応じて任意に設定してよい。
【0045】
図1(d)は、フォトレジスト層パターニング工程を示した図である。フォトレジスト層パターニング工程においては、フォトレジスト層40を露光した後に現像し、フォトレジスト層40の必要な部分のみを残して、レジストパターンを形成する。
【0046】
露光は、フォトレジスト層形成工程において形成されたフォトレジスト層40に光を照射することにより行われてよい。
【0047】
現像は、露光後の基板10全体を現像液に浸し、フォトレジスト層40の不要な部分を除去することにより行われてよい。
【0048】
露光及び現像により、形成すべき回路パターンが明らかになる。また、露光及び現像は、一般的な公知のリソグラフィ法により行われてよい。なお、露光及び現像の後、リンスやポストベーク等は必要に応じて行われてよい。
【0049】
図2は、本発明の実施形態に係る薄膜のパターニング方法の後半の部分工程の一例を示す図である。なお、図1と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図2(a)は、蒸着膜エッチング工程の一例を示した図である。図2(a)において、フォトレジスト層40で覆われた部分以外の蒸着膜30が除去された状態が示されている。このように、蒸着膜エッチング工程では、不要な蒸着膜30の除去を行う。
【0051】
蒸着膜30のエッチングは、例えば、プラズマによる反応性イオンエッチング、反応性ガスエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンビームエッチング、反応性レーザービームエッチング等を用いたドライエッチング法や、酸溶液、アルカリ溶液、各種溶剤を用いたウェットエッチング法により行われてよい。但し、蒸着膜30のエッチングは、これらの方法以外で実行されてもよく、種々のエッチング方法を適用することができる。
【0052】
図2(b)は、レジスト層剥離工程の一例を示した図である。図2(b)において、蒸着膜30の上に形成されていたフォトレジスト層40が除去され、蒸着膜30が最上層となってパターニングされた状態となっている。このように、レジスト層剥離工程においては、蒸着膜30上のフォトレジスト層40が除去され、蒸着膜30のパターニングが完了する。つまり、次の工程においては、蒸着膜30がパターンマスクとしての役割を担うことになる。
【0053】
ここで、比較参考例として、表面エネルギーの高い、一般的な薄膜層を高精細にパターニングする方法として、一般的に使用されるフォトリソグラフィ法について説明する。親水性を有する、一般的な薄膜にパターニングを行うフォトリソグラフィ法は、以下の通りである。なお、本実施形態に対応する同様の構成要素には、同一の参照符号を付して、その比較を容易にする。
(1) 薄膜20上に、スピンコート法等でフォトレジスト剤を塗布する(フォトレジスト層40形成)。
(2) 加熱によりフォトレジスト層40の溶剤を除去する(プリベーク)。
(3) パターンが描画されたハードマスク(フォトマスク)を通して、紫外線を照射する(露光)。
(4) 現像液でフォトレジスト層40を除去する(現像、フォトレジスト層40のパターニング)。
(5) 各種エッチング方法により、フォトレジスト層40の無い部分の薄膜20を除去する(パターニング)。
(6) フォトレジスト層40を除去する(レジスト剥離)。
【0054】
上記(1)に示すように、薄膜20上に直接的にフォトレジスト剤を塗布し、フォトレジスト層40を形成することができれば、プリベーク、露光、現像、パターニングと直接的にパターンを形成することができる。しかしながら、薄膜20の表面エネルギーが低く、フォトレジスト層40を直接的に形成できない場合には、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法のように、薄膜20上に蒸着膜30を一旦形成することにより、蒸着膜30の上にフォトレジスト層40を形成することができる。そして、フォトレジスト層40を、蒸着膜30のパターニングに用いることにより、蒸着膜30をパターンマスクとして利用でき、上述の(5)、(6)のパターニングとレジスト剥離に対応する工程を行うことができる。以下、本実施形態における薄膜パターニングとパターンマスク剥離の内容について説明する。
【0055】
図2(c)は、薄膜エッチング工程の一例を示した図である。図2(c)において、蒸着膜30で覆われた部分以外の薄膜20が除去された状態となっている。このように、薄膜エッチング工程においては、蒸着膜30をパターンマスクとして、薄膜20のエッチングが行われ、薄膜20の不要部分が除去される。
【0056】
薄膜20のエッチングは、例えば、プラズマによる反応性イオンエッチング、反応性ガスエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンビームエッチング、反応性レーザービームエッチング等を用いたドライエッチング法や、酸溶液、アルカリ溶液、各種溶剤を用いたウェットエッチング法により行われてよい。但し、薄膜20のエッチングは、これらの方法以外で実行されてもよく、種々のエッチング方法を適用することができる。
【0057】
図2(d)は、蒸着膜剥離工程の一例を示した図である。図2(d)において、薄膜20の上に積層形成されていた蒸着膜30が剥離除去され、薄膜20のパターンが完成して形成された状態が示されている。このように、蒸着膜剥離工程で、パターンマスクとなっていた蒸着膜30を剥離除去することにより、薄膜のパターニングが終了する。
【0058】
このように、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法においては、低表面エネルギーの薄膜20に対し、薄膜20にダメージを与えることなく、通常のフォトリソグラフィ工程を利用することにより、パターニングを行うことができる。
【0059】
次に、図3乃至図5を用いて、表面エネルギーと同義の表面張力と、濡れ性を示す接触角について説明する。
【0060】
図3は、表面張力と接触角の関係を示した図である。図3において、固体70の上に、液体80が液滴として滴下供給された状態が示されている。
【0061】
図3において、固体70の表面張力をγ、液体(液滴)80の表面張力をγ、固体70と液体80の界面張力をγSLとすると、(A)式が成立する。この場合において、液滴80の接線と、固体70とのなす角度θを、接触角θという。
【0062】
【数1】

図4は、接触角θと濡れ性の関係を示した図である。図4(a)は、濡れ性の高い状態を示した図であり、図4(b)は、濡れ性の低い状態を示した図である。
【0063】
図4(a)、(b)に示すように、濡れ性が高いときには、接触角θは小さくなり、濡れ性が低いときには、接触角θは大きくなる。よって、濡れ性を示す指標として、接触角θを用いるようにしてもよい。例えば、固体70の表面エネルギーが低い状態には、接触角θは、100〜110°の値となる。この場合には、本実施形態において説明したように、フォトレジストの濡れ性が良好ではないので、蒸着膜30を形成してから、蒸着膜30の上に、フォトレジスト層40を形成する本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を適用することが好ましい。一方、例えば、接触角θが、例えば、40〜80°の範囲内にある場合には、上述の(1)〜(6)において説明した、薄膜20の上に直接フォトレジスト層40を形成するプロセスを実行するようにしてもよい。
【0064】
図5は、接触角θの測定方法の一例について示した図である。図5は、θ/2法による接触角θの測定方法を示している。θ/2法は、液滴80の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体70の表面に対する角度から接触角θを求める。つまり、微小液滴形状は、円の一部と仮定することができ、幾何の定理より、θ=2θが成り立つ。これを利用し、例えば、薄膜20の上にレジストの液滴を滴下供給し、θ/2法により接触角θを測定するようにすれば、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を用いてパターニングを行うか、通常の薄膜20の上に直接レジストを供給するパターニングを行うかを定めることができる。
【0065】
このように、薄膜20の濡れ性の評価は、表面エネルギーだけでなく、接触角θを用いて行うようにしてもよい。その場合、用いられる薄膜20とフォトレジストとの関係により、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を適用する接触角θの範囲は、適宜設定してよいが、例えば、接触角θが100°以上のときに、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を適用するようにしてもよい。
【0066】
なお、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法は、表面エネルギーが低い、又は接触角θが大きい濡れ性の低い薄膜20のパターンを形成する場合に適用することが好ましいが、濡れ性の高い薄膜20に対しても、同様に適用することができる。よって、薄膜20の濡れ性の評価が行われておらず、濡れ性が不明な場合にも、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法をそのまま適用することができる。本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法は、薄膜20の濡れ性の如何に関わらず適用できるので、濡れ性の評価が曖昧な場合には、確実に薄膜20のパターニングが可能な方法として利用することができる。
【実施例1】
【0067】
次に、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を実際に行った実施例について説明する。なお、説明は、図1及び図2を用いて行う。実施例1においては、基板10としてガラス基板を用い、薄膜20として、サイトップ(登録商標)を用いた。
【0068】
図1(a)に示す薄膜形成工程においては、ガラス基板10の上に、サイトップの薄膜20を、スピンコート法により、厚さ200〔nm〕に形成した。
【0069】
図1(b)に示す蒸着膜形成工程においては、蒸着膜30として、金薄膜を用いた。そして、金薄膜を、真空蒸着法により厚さ50〔nm〕に形成し、蒸着膜30とした。
【0070】
図1(c)に示すフォトレジスト層形成工程においては、フォトレジスト層40として、TSMR8900(東京応化工業製)を用い、スピンコート法により、厚さ1〜2〔μm〕に形成した。
【0071】
図1(d)に示すフォトレジスト層パターニング工程においては、フォトマスクを通した露光と現像により、フォトレジスト層40のパターニングを行った。
【0072】
図2(a)に示す蒸着膜エッチング工程においては、蒸着膜30として用いている金薄膜を、ヨウ素アルカリ溶液によりエッチングすることで、蒸着膜30である金薄膜のパターニングを行った。
【0073】
図2(b)に示すフォトレジスト層剥離工程においては、アセトン溶媒により、フォトレジスト層40を剥離した。
【0074】
図2(c)に示す薄膜エッチング工程においては、蒸着膜30である金薄膜のパターンをマスクとして、酸素プラズマによりサイトップ薄膜のエッチングを行った。このとき、エッチングレートは2〔nm〕であった。
【0075】
図2(d)に示す蒸着膜剥離工程においては、蒸着膜30の金薄膜をヨウ素アルカリ溶液で剥離することで、目的とするサイトップ薄膜のパターンを得ることができた。
【0076】
このように、実施例1に係る薄膜20のパターニング方法によれば、低表面エネルギー薄膜であるサイトップ薄膜に、ダメージを与えることなく、通常のフォトレジストを用いて、所望のパターンを形成することができた。
【実施例2】
【0077】
図6は、本発明の実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を用いて、低表面エネルギー薄膜であるサイトップをゲート絶縁膜21に用いた、実施例2に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を示した図である。
【0078】
図6において、ガラス基板11上に、ゲート電極12となるアルミニウムをスパッタリングにより形成した。そして、低表面エネルギー薄膜として、サイトップ薄膜をスピンコート法により厚さ200〔nm〕に形成した後、実施形態に示す方法でパターニングし、ゲート絶縁膜21を形成した。次に、ソース・ドレイン電極50となる金を、真空蒸着法を用いて形成し、最後に有機半導体膜60としてペンタセンを50〔nm〕、同じく真空蒸着法を用いて成膜した。
【0079】
このように、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を用いて、種々のデバイスを製造することができる。つまり、デバイスの一部を本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を用いて形成し、他の部分を別のプロセスを組み合わせることにより、ゲート絶縁膜21のような薄膜20を含む種々のデバイスを製造することができる。実施例2においては、デバイスとして、ゲート絶縁膜21を含む薄膜トランジスタの例を挙げているが、種々のデバイスについて、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を適用し、デバイスを製造することができる。
【0080】
図7は、図6のように作製した実施例2に係る有機トランジスタの伝達特性を示した図である。図7において、従来技術を用いたトランジスタの特性をP、実施例2に係る有機トランジスタの特性をQで示す。低表面エネルギーの薄膜20の表面を、プラズマ処理にて表面改質した後、レジストを塗布し、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングした従来技術のトランジスタの特性Pは、閾値電圧が大きくプラス側にシフトし、ドレイン電流の変調が少なく、またキャリア移動度として、μ<0.01〔Vm/Vs〕という低い値を示した。
【0081】
一方、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を用いて低表面エネルギー薄膜20をパターニングしてゲート絶縁膜21を形成した場合、プラズマ処理等による絶縁表面のダメージを受けない。その結果、図7の特性Qに示すように、閾値電圧シフトが殆ど見られずに、高い移動度μ>0.1〔cm/Vs〕を得ることができた。この結果により、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法が、デバイス製造に有効であることが分かる。
【0082】
このように、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法によれば、表面エネルギーの低い薄膜20を、ダメージなくパターニングすることができる。よって、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を用いることにより、絶縁性の撥水性が高い低表面エネルギー薄膜20は、パターニングされた層間絶縁膜、平坦化絶縁膜、ゲート絶縁膜、保護絶縁膜、キャパシタとして用いることが可能となる。また、機能性の撥水性が高い低表面エネルギー薄膜20は、パターニングされた機能性薄膜、導電性薄膜、半導体薄膜として用いることが可能となる。よって、本実施形態に係る薄膜20のパターニング方法を、デバイスの製造方法に好適に適用することができ、品質の高いデバイスを提供することができる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、薄膜のパターニングが必要な種々の加工に適用でき、例えば、半導体装置や液晶等の製造プロセスに利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 基板
11 ガラス基板
12 ゲート電極
20 薄膜
21 ゲート絶縁膜
30 蒸着膜
40 フォトレジスト層
50 電極
60 有機半導体膜
70 固体
80 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜のパターニング方法であって、
前記薄膜上に、蒸着膜を積層する工程と、
前記蒸着膜上に、フォトレジスト層を積層する工程と、
フォトリソグラフィにより、前記フォトレジスト層をパターニングし、パターニングされた前記フォトレジスト層を用いて前記蒸着膜をエッチングしてパターニングする工程と、
パターニングされた前記蒸着膜をパターンマスクとして、前記薄膜をエッチングしてパターニングを行う工程と、を含むことを特徴とする薄膜のパターニング方法。
【請求項2】
前記薄膜は、表面エネルギーが30mN/m以下である低表面エネルギー薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜のパターニング方法。
【請求項3】
前記低表面エネルギー薄膜は、フッ素が添加されたポリイミド、フッ素が添加されたポリパラキシレン、ポリスチレン、サイトップ(登録商標)、テフロン(登録商標)、テフロン(登録商標)AF、フルオロポリアリールエーテル、ポリメチルシルセスキオキサン、機能性高分子、π共役系高分子、導電性高分子、π共役系分子、電荷移動錯体、液晶性分子及び自己組織化単分子膜のいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載の薄膜のパターニング方法。
【請求項4】
前記蒸着膜は、金属、金属酸化物、π共役系分子、電荷移動錯体、液晶性分子、蒸着重合分子及びポリパラキシレンのいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薄膜のパターニング方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薄膜のパターニング方法によりパターニングされた薄膜パターンを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薄膜のパターニング方法を用いて、デバイスの薄膜を形成する工程を含むことを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項7】
前記デバイスは、薄膜トランジスタであって、
前記デバイスの薄膜は、ゲート電極の周囲を覆うゲート絶縁膜であることを特徴とする請求項6に記載のデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−283240(P2010−283240A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136678(P2009−136678)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】